(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】光飛行時間測定において距離決定をテストするためのテストデータを生成する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
G01S7/497
(21)【出願番号】P 2022534775
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2020076839
(87)【国際公開番号】W WO2021115652
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】102019219330.7
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505472816
【氏名又は名称】マイクロビジョン,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ボイシェル
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159921(JP,A)
【文献】国際公開第2019/115184(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0064329(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0044102(US,A1)
【文献】特開2005-156495(JP,A)
【文献】特開2011-259208(JP,A)
【文献】特開2019-060670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0041625(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03355133(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LIDARシステム(1)における、飛行時間の原理に基づき得る光学式ランタイム測定
の距離決定をテストするためのテストデータを生成する装置(7)であって、
少なくとも1つの入力パラメータに基づいて時系列のテストイベントを生成
するテストパターン生成器(8)と、
前記入力パラメータからビットベクトルを生成し、該ビットベクトルにハッシュ関数を適用して、バイナリシーケンスを生成するように設定されたハッシュ生成器(9)であって、前記ビットベクトルは、前記入力パラメータを表すバイナリシーケンスをストリング化又はマージしたものである、ハッシュ生成器(9)と、
を備え、
前記LIDARシステム(1)は、
前記テストパターン生成器(8)から提供された前記時系列のテストイベントを受信し、前記時系列のテストイベントに基づいて時間相関テストヒストグラムデータを生成するテストヒストグラムチャネル(10)と、
前記テストヒストグラムチャネル(10)から提供された前記時間相関テストヒストグラムデータから距離を決定するピーク検出部(12)と、
前記ピーク検出部(12)から出力された決定距離を受信し、前記決定距離と予め規定された基準距離とを比較することによって、光学式ランタイム測定の距離決定をテストするテスト部(15)とを備え、
生成された前記時系列のテストイベントにおける2つの時系列テストイベントの2つの時間の間の時間距離が、前記光学式ランタイム測定の時間分解能に基づいている、装置(7)。
【請求項2】
前記時系列のテストイベントは、さらに、前記バイナリシーケンスに基づいて生成される、請求項
1に記載の装置(7)。
【請求項3】
前記LIDARシステム(1)における、光学式ランタイム測定
の距離決定をテストするための測定装置であって、
請求項1
または2に記載の
前記装置(7)と、
前記テストパターン生成器(8)によって生成された前記時系列のテストイベントを受信してそれに基づいて時間相関テストヒストグラムデータを生成するように設定された少なくとも1つの
前記テストヒストグラムチャネル(10)と、
を備える測定装置。
【請求項4】
前記ピーク検出部(12)によって決定された前記
決定距離を受信し、前記時系列のテストイベントの各時間を受信して、該各時間から
前記基準距離を決定するように設定された
前記テスト部(15)をさらに備える請求項
3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記テスト部(15)が、さらに、前記決
定距離と前記基準距離との間の偏差に基づいて誤差信号を生成するように設定された、請求項
4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記誤差信号は、許容範囲外の偏差に基づいて生成される、請求項
5に記載の測定装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の装置(7)を使用して、飛行時間の原理に基づき得る
、LIDARシステム(1)における光学式ランタイム測定時の距離決定をテストするためのテストデータを生成する方法(20)であって、
前記光学式ランタイム測定時の前記距離決定をテストするための時間相関テストヒストグラムデータを生成するテストヒストグラムチャネルに時系列のテストイベントを提供するように、少なくとも1つの入力パラメータに基づいて該時系列のテストイベントを生成すること(21)
を含み、
生成された前記時系列のテストイベントにおける2つの時系列テストイベントの2つの時間の間の時間距離が、前記光学式ランタイム測定の時間分解能に基づいて
いる、方法(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略として、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするためのテストデータを生成する装置、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするための測定装置、及び光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするためのテストデータを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる飛行時間の原理に基づき得る光学式ランタイム測定のための種々の方法が一般に知られている。同方法では、ランタイムに基づいて物体までの距離を決定するために、物体に反射された送信光信号のランタイムが測定される。
【0003】
いわゆるLIDAR(光検知と測距)原理に基づくセンサが自動車環境での用途について知られている。同原理では、パルスが環境を走査するために周期的に送信され、反射パルスが検出される。対応する方法及び装置は、例えば、特許文献1により知られている。
【0004】
自動車環境でのLIDARシステムは、自律運転機能を可能とするために、通常、距離決定時にはISO26262 ASIL B(D)に従う少なくとも1つの安全要求レベルを満足しなければならない。この理由のため、通常は、システム誤動作をもたらし得る種々の潜在的な影響をテストする安全解析が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするソリューションは従来技術により知られているとしても、本発明の1つの課題は、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするためのテストデータを生成する装置、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするための測定装置、及び光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするためのテストデータを生成する方法を提供することである。
【0007】
この課題は、請求項1に記載の装置、請求項10に記載の測定装置及び請求項15に記載の方法によって達成される。
【0008】
第1の態様によると、本発明は、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするためのテストデータを生成する装置を提供し、装置は、
時系列のテストイベントを生成して、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするための時間相関テストヒストグラムデータを生成するテストヒストグラムチャネルに時系列のテストイベントを提供するように設定されたテストパターン生成器を備える。
【0009】
第2の態様によると、本発明は、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするための測定装置を提供し、測定装置は、
第1の態様による装置と、
テストパターン生成器によって生成された時系列のテストイベントを受信してそれに基づいて時間相関テストヒストグラムデータを生成するように設定された少なくとも1つのテストヒストグラムチャネルと、を備える。
【0010】
第3の態様によると、本発明は、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするためのテストデータを生成する方法を提供し、方法は、
光学式ランタイム測定時の距離決定をテストするための時間相関テストヒストグラムデータを生成するテストヒストグラムチャネルに時系列のテストイベントを提供するように、時系列のテストイベントを生成することを含む。
【0011】
本発明の更なる有利な構成は、従属請求項、図面及び以下の好適な例示的実施形態の説明から導かれ得る。
【0012】
上記のように、一部の例示的実施形態は、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするためのテストデータを生成する装置に関し、装置は、
時系列のテストイベントを生成して、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするための時間相関テストヒストグラムデータを生成するテストヒストグラムチャネルに時系列のテストイベントを提供するように設定されたテストパターン生成器を備える。
【0013】
最初に説明したように、自動車環境におけるLIDARシステムは、自律運転機能を可能とするために、通常、距離決定時にはISO26262 ASIL B(D)に従う少なくとも1つの安全要求レベルを満足しなければならない。このLIDARシステムでは、距離決定時に種々の誤動作の要因が存在し得る。この理由のため、基本的に、LIDARシステムにおける距離決定のための簡素かつ信頼性の高いテスト方法を提供することが望ましい。
【0014】
光学式ランタイム測定時の距離決定時、特に、LIDARに基づく距離決定時の誤動作の1つの考えられる要因は、システムの誤った時間スケール及び/又は誤った時間基準点を含むことがある。誤った時間スケールは、不正確にスケーリングされた距離をもたらすことになり、例えば、2倍だけずれた誤ったスケーリング因子は、距離決定時には10mではなく20mの結果をもたらし得る。一部の例示的実施形態では、例えば、誤った時間スケールは、時間-デジタルコンバータ(「TDC(time-to-digital converter)」ともいう)の誤った構成によってもたらされることがある。他の例示的実施形態では、同様にデータ処理部の誤った構成が要因となり得る。誤った時間基準点は、例えば、10mではなく15m、20mではなく25mなどといったような一定の距離のずれをもたらすことがある。例えば、一部の例示的実施形態における誤った時間基準点は、光学式ランタイム測定に対して不正確に決定された開始点によってもたらされることがある。距離決定時の誤動作の他の考えられる要因は、送信光を反射する物体までの距離を決定するために測定データを用いるピーク検出時における誤ったデータ処理を含むことがある。
【0015】
この理由のため、一部の例示的実施形態における装置は、LIDARシステムなどで使用され、例えば、自動車環境において利用される。ただし、本発明はこれらの場合に限定されない。
【0016】
一部の例示的実施形態では、したがって、テストデータを生成することは、種々の予め規定された時間に電気信号を生成することを含んでいてもよく、それらは光学式ランタイム測定時の反射光の検出を模擬する。
【0017】
一部の例示的実施形態では、距離決定をテストすることは、生成されたテストデータに基づいて決定された距離を、予め規定された時間から決定された基準(ノミナル)距離と比較することを含み得る。そのような例示的実施形態では、決定距離と基準距離の間の偏差が、距離決定時の誤動作についてのインジケータとなり得る。
【0018】
これは、ピーク検出のルーチン確認を可能として誤差のない機能性を保証するので、一部の例示的実施形態では有利である。
【0019】
一部の例示的実施形態では、光学式ランタイム測定は、いわゆるTCSPC(時間相関単-光子計数法)測定の原理に基づき、特に例示的実施形態ではLIDARに基づく。ここでは、通常は数ナノ秒の長さの光パルスが周期的に送信され、測定の開始点をマーキングする。次の光パルス(測定時間)までの期間中、物体に反射された光又は後方散乱光が光検出受光素子(例えば、単一光子アバランシェダイオード(SPAD))によって検出され、光は、同様に、光パルスを送信する前の短い時間範囲内で検出され得る。ここで、測定時間は、複数の短い時間間隔(例えば、30ps)に分割される。そして、各時間間隔は、開始時間からの時間距離に対応する時間を割り当てられ得る(例えば、時間間隔を30psとすると、15psの時間が第1の時間間隔に割り当てられ、45psの時間が第2の時間間隔に割り当てられ得る、など)。
【0020】
物体までの距離に応じて、光は、異なる時間に光検出受光素子に到達する。この過程において、それは、光検出受光素子に電気信号を発生させる。そして、時間-デジタルコンバータ(「TDC(time-to-digital converter)」ともいう)を用いて、電気信号が時間間隔の1つに割り当てられてもよい。時間間隔に割り当てられる電気信号(「イベント」)を計数することによって、いわゆるヒストグラム又は時間相関ヒストグラム(TCSPCヒストグラムともいう)が生じ、これらのヒストグラムはまた、例えば、単純なデータとしてのみ存在し、例えば、時間間隔及び付随する入力(発生又はイベント)の数からなる値の対として記憶され得る。これにより、各時間間隔に割り当てられたイベントの数とともに時間間隔が、基本的にはデジタル信号(又はアナログ信号も)によって表され得るヒストグラムデータを構成する。そのようなヒストグラムデータは、ヒストグラムチャネルにおいて生成可能である。一般に、一部の例示的実施例におけるLIDARデータは、通常は、後方散乱、物体の光反射、周囲光、環境における更なる光源からの干渉光信号などからの信号寄与度を含み得る。
【0021】
一部の例示的実施形態では、テストパターン生成器が、時系列のテストイベントを生成し得る。ここで、一部の例示的実施形態では、時系列は予め規定された時間に生成される複数の電気信号を有し、電気信号はテストイベントに対応し得る。一部の例示的実施形態では、生成された時系列のテストイベントは光学式ランタイム測定の開始時間(光パルスが送信される時間)と同期されるので、距離決定は通常の測定と並行にテスト可能である。他の例示的実施形態では、距離決定は、通常の測定から独立して(例えば、待機モードにおいて)テストされてもよい。生成された時系列のテストイベントは、基本的には経時的に変化し得るものであり、すなわち、1つの生成された時系列は、他の生成された時系列とは異なり得る。そのような例示的実施形態では、時系列のテストイベントは、少なくとも1つの入力パラメータに基づいて生成可能であり、それらはテストパターン生成器にとってアクセス可能である。一部の例示的実施形態では、テストイベント同士は同一であり、すなわち、電気信号同士は同一である。ただし、本発明はこの点に限定されない。生成された時系列のテストイベントにおけるテストイベント数は一定であることが好ましいが、一部の例示的実施形態ではテストイベント数は時系列間で変動し得る。
【0022】
ここで、テストパターン生成器は、基本的には電子回路構成又は電子回路であり得る。電子回路構成は、ここに記載される機能を実行するように、電子部品、デジタル記憶素子、(アナログ及び/又はデジタル信号を受信する)信号入力部、(アナログ及び/若しくはデジタル信号又は電気信号を出力する)信号出力部などを含み得る。一部の例示的実施形態では、電子回路構成は、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、マイクロプロセッサなどによって実現可能である。ここで、一部の例示的実施形態では、テストパターン生成器は、ナノ秒範囲の分解能で時間ドメインにおいて動作可能である。
【0023】
一部の例示的実施形態では、テストヒストグラムチャネルは、時間相関テストヒストグラムデータを生成し得る。一部の例示的実施形態では、時間相関ヒストグラムデータは、(付随する)測定時間内の光検出受光素子の電気信号に基づいて生成されるそれらのデータを備える。これと同様に、一部の例示的実施形態では、生成された時系列のテストイベント(テストパターン生成器の電気信号(生成された時系列のテストイベント))に基づいて生成された時間相関テストヒストグラムデータが生成され、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするために使用される。一部の例示的実施形態では、テストヒストグラムチャネルは、通常の測定と並行して、生成された時系列のテストイベントに基づいて時間相関テストヒストグラムデータを生成し得る。ただし、本発明はこの点に限定されない。
【0024】
ここで、テストヒストグラムチャネルは、基本的には通常のヒストグラムチャネルと同じ機能及び構成を有し得る。一部の例示的実施形態では、テストヒストグラムチャネルは、時間-デジタルコンバータを有し得る。ここで、テストヒストグラムチャネルは、基本的には電子回路構成又は電子回路であり得る。電子回路構成は、ここに記載される機能を実行するように、電子部品、デジタル記憶素子、(アナログ及び/又はデジタル信号を受信する)信号入力部、(アナログ及び/若しくはデジタル信号又は時間相関ヒストグラムデータを出力する)信号出力部などを含み得る。一部の例示的実施形態では、電子回路構成は、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、マイクロプロセッサなどによって実現可能である。
【0025】
一部の例示的実施形態では、生成された時系列のテストイベントにおける2つの時系列テストイベントの2つの時間の間の時間距離は、光学式ランタイム測定の時間分解能に基づく。
【0026】
一部の例示的実施形態では、光学式ランタイム測定の時間分解能は、明確に差異付け可能な2つの電気信号(イベント)間の最小時間距離に対応し得る。一部の例示的実施形態では、時間分解能は、光の入射に応じて光検出受光素子によって生成される電気信号の時間に対する長さによって制限され得る。他の例示的実施形態では、時間分解能は、時間-デジタルコンバータによって制限され得る。更なる例示的実施形態では、時間分解能は、データ処理によって制限され得る。
【0027】
したがって、一部の例示的実施形態では、時間分解能は、時系列のテストイベントを生成する際に考慮されなければならない。一部の例示的実施形態では、生成された時系列のテストイベントにおける2つの時系列テストイベントの2つの時間の間の時間距離は、結果として光学式ランタイム測定の時間分解能よりも大きくなり得る。時間分解能は、光の速度を超える光学式ランタイム測定の距離分解能に対応する。
【0028】
一部の例示的実施形態では、例えば、距離分解能(時間分解能に対応する)は、LIDARシステムにおいて10cmと測定することができる。そのような例示的実施形態では、生成された時系列のテストイベントにおける2つの時系列テストイベントの2つの時間の間の時間距離は、例えば、50cmと測定することができる。結果として、より大きな距離範囲が、LIDAR測定時にテスト可能となる。
【0029】
一部の例示的実施形態では、時系列のテストイベントは、少なくとも1つの入力パラメータに基づいてさらに生成される。
【0030】
一部の例示的実施形態では、入力パラメータは、信号入力部を介してテストパターン生成器に送信可能である。例えば、入力パラメータは、画像カウンタ、行若しくは列インデックス、又はシステム時間であり得る。入力パラメータは、基本的にはアナログ及び/又はデジタル信号によって表され得る。したがって、一部の例示的実施形態では、テストイベント数及び各時間は、入力パラメータに基づいて符号化され、それに従って生成され得る。
【0031】
他の例示的実施形態では、時系列の各時間が、入力パラメータに基づいてハッシュ生成器において外部から符号化可能である。そのような例示的実施形態では、例えば、符号は、バイナリシーケンス(ビット列)として存在し、信号入力部を介してテストパターン生成器に送信されてもよく、テストパターン生成器は受信したバイナリシーケンスに基づいて時系列のテストイベントを生成する。他の例示的実施形態では、ハッシュ生成器は、テストパターン生成器に統合されてもよい。結果として、入力パラメータは、基本的には既知であり、又はテストパターン生成器に対して規定される。
【0032】
入力パラメータに基づいて時系列のテストイベントを生成することによって、その時系列が結果として時間毎に変化可能となるので、所定期間にわたって観察される可能な時間又は時間間隔の大部分がテスト可能となる。これにより、システム全体をテストし、距離決定の誤動作を発見し、信頼性を向上することが可能となる。
【0033】
ここに規定されるように、光学式ランタイム測定のためのシステム、特に、LIDARシステムは、一部の例示的実施形態では受光システムを有していてもよく、光検出受光素子の各々は光を検出し、それに応じて電気信号を生成するように設定される。
【0034】
一部の例示的実施形態では、受光マトリクスにおける光検出受光素子は(一般に知られているように)複数列及び複数行に配置され、一部の例示的実施形態では、一般性を失うことなく、同数の光検出受光素子が各行に設けられる。
【0035】
一部の例示的実施形態では、受光システムは複数のヒストグラムチャネルを備え、それぞれのヒストグラムチャネルは1列分の光検出受光素子に接続され、又はそれぞれのヒストグラムチャネルは1行分の光検出受光素子に接続される。
【0036】
一部の例示的実施形態では、ヒストグラムチャネルの各々は、光検出受光素子の電気信号に基づいて時間相関ヒストグラムを生成するように設定される。
【0037】
一部の例示的実施形態では、入力パラメータは、画像カウンタである。
【0038】
一部の例示的実施形態では、画像カウンタは、その時間までに実行された測定数であり得る。そのような例示的実施形態では、測定は、1又は複数の光パルスの送信及び時間相関ヒストグラムデータの受信に対応する。
【0039】
一部の例示的実施形態では、入力パラメータは、受光マトリクスの行インデックスである。
【0040】
上記のように、光学式ランタイム測定のためのシステムは、受光マトリクスを有する受光システムを有し得る。そのような例示的実施形態では、行インデックスは、1行の受信インデックスに対応し得る。
【0041】
一部の例示的実施形態では、入力パラメータは、システム時間である。
【0042】
一部の例示的実施形態では、システム時間は、光学式ランタイム測定のためのシステムにおいて設定される日時であり得る。他の例示的実施形態では、システム時間は、システムの試運転から又は他の基準時に関連して経過した時間であってもよい。
【0043】
一部の例示的実施形態では、装置は、バイナリシーケンスを生成するために、入力パラメータからビットベクトルを生成してそれにハッシュ関数を適用するように設定されたハッシュ生成器を備える。
【0044】
一部の例示的実施形態では、ハッシュ生成器は、入力パラメータを含み、入力パラメータからビットベクトルを生成することができる。一部の例示的実施形態では、ビットベクトルは、入力パラメータを表すバイナリシーケンスをストリング化又はマージしたものであり得る。一部の例示的実施形態では、ハッシュ生成器は、バイナリシーケンスを生成するために、このビットベクトルに一般に知られているハッシュ関数を適用することができる。そのような例示的実施形態では、時系列のテストイベントの各時間が符号化され、各時間は明確にバイナリシーケンスから生じる。ビットベクトルのビット数は、好ましくは、バイナリシーケンスのビット数(例えば、8又は16ビット)よりも大きい(例えば、64ビット)。ただし、本発明はこれらの場合に限定されない。
【0045】
ここで、ハッシュ生成器は、基本的には電子回路構成又は電子回路であり得る。電子回路構成は、ここに記載される機能を実行するように、電子部品、デジタル記憶素子、(アナログ及び/又はデジタル信号を受信する)信号入力部、(アナログ及び/又はデジタル信号を出力する)信号出力部などを含み得る。一部の例示的実施形態では、電子回路構成は、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、マイクロプロセッサなどによって実現可能である。一部の例示的実施形態では、ハッシュ生成器は、テストパターン生成器に統合されてもよい。
【0046】
したがって、一部の例示的実施形態では、時系列のテストイベントは、上述したように、バイナリシーケンスに基づいてさらに生成される。
【0047】
一部の例示的実施形態では、時系列のテストイベントにおけるテストイベント同士は同一である。
【0048】
これは、テストパターン生成器における対応する電子回路構成がより高いコスト効率で製造可能となるので有利である。さらに、距離決定をテストすることに対する同じ関連性が、そのような例示的実施形態における各テストイベントに起因することになる。
【0049】
以下に、入力パラメータに基づく時系列のテストイベントの各時間を符号化する実施例を説明する。
【0050】
時間を符号化する第1の実施例は、ハッシュ関数を介して入力パラメータのうちのビットベクトルから決定される2ビットからなるバイナリシーケンスを生成することを含む。一般性を失うことなく、可能なテストイベント間の時間距離は、ここでは1mの距離に対応する。テストイベントは開始時間には生成されず、1つの同期イベント(第1のテストイベント)が1mで生成される。そして、その2ビットが使用されて、さらに4個の可能なテストイベント:
・第1ビット=1、2mでのテストイベント;
・第1ビット=0、3mでのテストイベント;
・第2ビット=1、4mでのテストイベント;及び
・第2ビット=0、5mでのテストイベント;
を符号化することができる。
【0051】
時間を符号化する第2の実施例は、システムの時間分解能(距離分解能)、画像カウンタ、行インデックス及び同期イベントを考慮することを含む。例えば、システムの時間分解能は、10cmであり得る。2つの時間の間の時間距離は、例えば、0.5mであり得る。一般性を失うことなく、第1のテストイベントは、1mにおいて生成される(同期イベント)。例えば、画像カウンタは、モジュロ演算:画像カウンタmod16を計算する際に使用され得る。取得されたモジュロによると、第2のテストイベントが1.5m~7.5mの距離範囲で生成され、例えば、画像カウンタmod16=1は第2のテストイベントを1.5mなどで生成する。例えば、受光マトリクスにおける行インデックスが、100個の値であるとする。時間インデックスによると、第3のテストイベントは、8m~58mの距離範囲で生成され得る。同期イベントに対する距離の変位は、複数の距離範囲をもたらし得る。距離の変位は、先行するテストイベントに対して設定されてもよい。
【0052】
時間を符号化する第3の実施例は、ハッシュ関数を介して入力パラメータのうちのビットベクトルから決定される16ビットからなるバイナリシーケンスを生成することを含む。最初の8ビットが第1のハッシュベクトルを構成し、2番目の8ビットが第2のハッシュベクトルを構成する。システムの時間分解能は、例えば、10cmであり得る。2つの時間の間の時間距離は、例えば、0.5mであり得る。同期イベント(第1のテストイベント)は、1mにおいて生成される。第1及び第2のハッシュベクトルは、各々256個の時間を符号化する。これにより、第2のテストイベントは1.5m~129.5mの距離範囲で生成され、第3のテストイベントは130m~258mの距離範囲で生成される。
【0053】
一部の例示的実施形態は、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするための測定装置に関し、測定装置は、
ここに記載される装置と、
テストパターン生成器によって生成された時系列のテストイベントを受信してそれに基づいて時間相関テストヒストグラムデータを生成するように設定された少なくとも1つのテストヒストグラムチャネルと、を備える。
【0054】
ここで、測定装置は、基本的には、光学式ランタイム測定の距離決定をテストするように設定された、光学式ランタイム測定のためのシステムの一部であり得る。一部の例示的実施形態では、距離決定の連続的テストを保証するように時間相関テストヒストグラムデータを生成するための少なくとも1つのテストヒストグラムチャネルがあり得る。
【0055】
一部の例示的実施形態では、テストヒストグラムチャネルは、生成された時間相関テストヒストグラムデータをピーク検出部に提供し、ピーク検出部はそこから距離を決定する。
一部の例示的実施形態では、例えば、ピーク検出部は、一般に知られている、種々の信号寄与度の信号高さ及び/又は信号形状、信号寄与時間などに基づく時間相関(テスト)ヒストグラムデータから時間又は距離を決定することができる。一部の例示的実施形態では、時間相関テストヒストグラムデータは、通常の測定の時間相関ヒストグラムデータのようにピーク検出部によって解析される。一部の例示的実施形態では、ピーク検出部は、対応する時間相関(テスト)ヒストグラムデータからの決定距離をテスト部に出力する。
【0056】
ここで、ピーク検出部は、基本的には電子回路構成又は電子回路であり得る。電子回路構成は、ここに記載される機能を実行するように、電子部品、デジタル記憶素子、(アナログ及び/又はデジタル信号を受信する)信号入力部、(アナログ及び/又はデジタル信号を出力する)信号出力部などを含み得る。一部の例示的実施形態では、電子回路構成は、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、マイクロプロセッサなどによって実現可能である。追加の例示的実施形態では、ピーク検出部はソフトウェアによって実現され、そのような例示的実施形態における信号入力部はソフトウェア機能/方法のパラメータ/属性に対応する。そして、距離の決定はコンピュータで特定の演算動作を実行するための一連のコマンドの実行に対応するので、距離は全てのコマンドが実行された後に与えられる。一部の例示的実施形態では、ピーク検出部はまた、ここに記載する機能が対応して分散されるハードウェア及びソフトウェアベースの構成要素の混成物によっても実現される。
【0057】
一部の例示的実施形態では、測定装置は、ピーク検出部によって決定された距離を受信し、時系列のテストイベントの各時間を受信して、それらの時間から基準距離を決定するように設定されたテスト部をさらに備える。
【0058】
ここで、テスト部は、基本的には電子回路構成又は電子回路であり得る。電子回路構成は、ここに記載される機能を実行するように、電子部品、デジタル記憶素子、(アナログ及び/又はデジタル信号を受信する)信号入力部、(アナログ及び/又はデジタル信号を出力する)信号出力部などを含み得る。一部の例示的実施形態では、電子回路構成は、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、マイクロプロセッサなどによって実現可能である。追加の例示的実施形態では、テスト部はソフトウェアによって実現され、そのような例示的実施形態における信号入力部はソフトウェア機能/方法のパラメータ/属性に対応する。そして、基準距離の決定はコンピュータで特定の演算動作を実行するための一連のコマンドの実行に対応するので、距離は全てのコマンドが実行された後に与えられる。一部の例示的実施形態では、ピーク検出部はまた、ここに記載する機能が対応して分散されるハードウェア及びソフトウェアベースの構成要素の混成物によっても実現される。
【0059】
一部の例示的実施形態では、テスト部は、信号入力部においてピーク検出部から(時間相関テストヒストグラムデータから決定された)決定距離を受信することができる。一部の例示的実施形態では、テスト部は、テストパターン生成器から時系列のテストイベントの各時間を受信することができる。他の例示的実施形態では、テスト部は、入力パラメータを受信し、そこからの時系列のテストイベントの各時間を取得することができる。追加の例示的実施形態では、テスト部は、ハッシュ生成器からバイナリシーケンスを受信し、そこから時系列のテストイベントの各時間を取得することができる。
【0060】
テスト部は、時系列のテストイベントの取得された各時間から基準距離を決定することができる。ここで、基準距離は、時系列のテストイベントの各時間によって予め規定された距離に対応する。ピーク検出部によって特定された距離と基準距離との間の偏差によって、光学式ランタイム測定時に距離を決定しつつ誤動作を推定することが可能となる。
【0061】
一部の例示的実施形態では、テスト部は、この理由のため、決定距離と基準距離の間の偏差に基づいて誤差信号を生成するように設定される。
【0062】
ここで、誤差信号は、ピーク検出部によって決定された距離と基準の偏差との間の偏差が許容範囲にあるか否かを示し得る。許容範囲は、実験的に決定されたものでもよいし、経験から導かれたものでもよいし、システムパラメータ(ジッタ、時間分解能など)から決定されたものでもよい。
【0063】
したがって、一部の例示的実施形態では、誤差信号は、許容範囲外の偏差に基づいて生成される。
【0064】
時系列のテストイベントに基づいて光学式ランタイム測定の距離決定をテストすることは、システムの種々の誤動作、例えば:
・時間スケールの誤った構成;
・距離スケーリングの誤った構成;
・ピーク検出部の誤った構成又は誤動作;
・不正確な時間基準点;又は
・虚偽の行インデックス又は画像カウンタ(例えば、反復データ)
を顕在化させることができる。
【0065】
一部の例示的実施形態は、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするためのテストデータを生成する方法に関し、方法は、
光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするための時間相関テストヒストグラムデータを生成するテストヒストグラムチャネルに時系列のテストイベントを提供するように、時系列のテストイベントを生成することを含む。
【0066】
本発明の例示的実施形態を、添付図面を参照してここに例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】時系列のテストイベントの各時間の符号化を示す。
【
図2】光学式ランタイム測定のためのシステムの例示的実施形態をブロック図で示す。
【
図3】光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするためのテストデータを生成する方法についての例示的実施形態をフローチャートで示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1は、時系列のテストイベントの各時間の符号化を示す。
【0069】
図1のグラフの横軸は、距離(時間)である。縦軸は、無次元であり、各時間を示す役割のみを果たす。縦線は、テストイベントが生成された距離(時点)を示す。
【0070】
この例示的実施形態では、3ビットからなるバイナリシーケンスが、ハッシュ生成器(不図示)によって生成される。バイナリシーケンスは、画像カウンタ及び行インデックスから生成されたビットベクトルにハッシュ関数を適用することによって決定された。バイナリシーケンスの第1ビットは0に等しく、第2及び第3ビットは各々1に等しい。テストイベント間の時間距離は一定であり、距離1mに対応する。テストイベントは開始点では生成されず、同期イベント(第1のテストイベント)が1mにおいて生成される。バイナリシーケンスに基づいて、第2のテストイベントが3mにおいて生成され、第3のテストイベントが4mにおいて生成され、第4のテストイベントが6mにおいて生成される。
【0071】
図2は、光学式ランタイム測定のためのシステム1の例示的実施形態をブロック図で示す。
【0072】
光学式ランタイム測定のためのシステム1は、LIDARシステムであり、以下のように動作する。パルス生成器2が、光学式ランタイム測定を開始するための電子開始信号を出力する。電子開始信号に応じて、送信システム3は光パルスを送出し、それは物体4で反射される。反射光は、128行及び256列に配列された光検出受光素子(ここではSPAD)を用いた受光マトリクス(不図示)を有する受光システム5に到達する。入射光に応じて、光検出受光素子は電気信号を生成し、それはヒストグラムチャネル6によって受信される。ヒストグラムチャネル6はまた、同期のための電子開始信号を受信し、受信電気信号に基づいて時間相関ヒストグラムデータを生成する。
【0073】
装置7は、光学式ランタイム測定に並行して時系列のテストイベントを生成する。この例示的実施形態では、テストイベント同士は同一であり、
図1による各時間に生成される。装置7は、同期のためにテストパターン生成器8において電子開始信号を受信する。装置7は、画像カウンタ及び行インデックスに基づいて
図1からバイナリシーケンスを生成するハッシュ生成器9をさらに有する。ハッシュ生成器9は、バイナリシーケンスをテストパターン生成器8に転送し、テストパターン生成器8はバイナリシーケンスに基づいて時系列のテストイベントを生成する。時系列のテストイベントは、テストパターン生成器8によってテストヒストグラムチャネル10に転送され、テストヒストグラムチャネル10は受信した時系列のテストイベントに基づいて時間相関テストヒストグラムデータを生成する。テストヒストグラムチャネル10は、同期のための電子開始信号を受信する。
【0074】
この例示的実施形態では、スイッチ11は、画像カウンタが4だけ再度増加すると、時間相関ヒストグラムデータと時間相関テストヒストグラムデータとの間で切り替わる。スイッチ11が時間相関ヒストグラムデータを有効化し続ける場合、それらはピーク検出部12に転送され、ピーク検出部12は時間相関ヒストグラムデータから物体の距離を決定する。他のスイッチ13は、決定された物体の距離をプロセッサ14に切り替え、プロセッサ14は物体の距離から物体4の3次元画像を生成する。
【0075】
スイッチ11が時間相関テストヒストグラムデータを有効化し続ける場合、それらはピーク検出部12に転送され、ピーク検出部12は時間相関テストヒストグラムデータから距離を決定する。スイッチ13は、決定された距離をテスト部15に切り替える。テスト部15は、テストパターン生成器8から時系列のテストイベントの各時間を受信し、そこから基準距離を決定する。テスト部15は、決定距離と基準距離とを比較し、誤差信号を出力する。
【0076】
フローチャートにおいて、
図3は、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするためのテストデータを生成する方法20についての例示的実施形態を示す。
【0077】
ここに記載するように、21において、光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするための時間相関テストヒストグラムを生成するテストヒストグラムチャネルに時系列のテストイベントを提供するように、時系列のテストイベントが生成される。
【符号の説明】
【0078】
1 システム
2 パルス生成器
3 送信システム
4 物体
5 受光システム
6 ヒストグラムチャネル
7 装置
8 テストパターン生成器
9 ハッシュ生成器
10 テストヒストグラムチャネル
11、13 スイッチ
12 ピーク検出部
14 プロセッサ
15 テスト部
20 方法
21 光学式ランタイム測定時に距離決定をテストするための時間相関テストヒストグラムデータを生成するテストヒストグラムチャネルに時系列のテストイベントを提供するように、時系列のテストイベントを生成する