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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】エチレンアセタートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/05 20060101AFI20240513BHJP
   C07C 67/48 20060101ALI20240513BHJP
   C07C 69/15 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C07C67/05
C07C67/48
C07C69/15
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022576527
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2021119874
(87)【国際公開番号】W WO2022083396
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】202011127390.0
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523095211
【氏名又は名称】天津大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】張 敏華
(72)【発明者】
【氏名】耿 中峰
(72)【発明者】
【氏名】董 賀
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 浩
(72)【発明者】
【氏名】余 英哲
(72)【発明者】
【氏名】銭 勝華
(72)【発明者】
【氏名】董 秀芹
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-349534(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102936198(CN,A)
【文献】英国特許出願公告第01305367(GB,A)
【文献】PETROTECH,1997年,第20巻第6号,p.502-507
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ビニル合成プロセスと、酢酸ビニル精製プロセスと、酢酸ビニルと酢酸エチルの分離プロセスとを含み、前記酢酸ビニル合成プロセスは、順次接続されたエチレン回収塔(117)、酢酸蒸発器(103)、酸素混合器(106)、酢酸ビニル合成反応器(107)、第1ガス分離塔(108)、第2ガス分離塔(112)及び循環ガス圧縮機(101)を用い、前記第1ガス分離塔(108)及び前記第2ガス分離塔(112)は脱気缶(113)に接続されてから回収ガス圧縮機(114)、水洗塔(115)、吸収塔(116)、脱着塔(122)に順次接続され、前記酢酸ビニル精製プロセスは、順次接続された酢酸塔(201)、粗VAC塔(202)、精製VAC塔(203)、前記粗VAC塔(202)の塔頂の1つの分岐に順次接続されたアルデヒドエステル濃縮塔(204)及びアセトアルデヒド塔(205)、前記酢酸塔(201)と前記粗VAC塔(202)の塔頂の1つの分岐に順次接続された水相受槽(207)と脱水塔(206)から成り、前記酢酸ビニルと酢酸エチルの分離プロセスは、順次接続された抽出精留塔(401)、抽出精留塔凝縮器(402)、抽出精留塔サブクーラー(403)、抽出精留塔相分離器(404)、及び前記抽出精留塔(401)釜が順次接続する酢酸エチル塔(405)、酢酸エチル塔凝縮器(406)、酢酸エチル塔サブクーラー(407)、酢酸エチル塔相分離器(408)を用いるエチレンアセタートの製造方法であって、前記酢酸ビニルと酢酸エチルの分離プロセスは、抽出精留法を用い、
前記酢酸塔(201)の側線から抜き出された酢酸、酢酸ビニル、水及び酢酸エチルを含むストリームは、前記抽出精留塔(401)の中部に入り、酢酸を抽出剤として前記抽出精留塔(401)の上部から仕込み、前記抽出精留塔(401)の塔頂蒸気内の主成分は、酢酸ビニルと水、きれいに除去していない微量の酢酸エチルであり、前記抽出精留塔凝縮器(402)で凝縮して得られた凝縮液が前記抽出精留塔サブクーラー(403)に入り、さらに冷却された後前記抽出精留塔相分離器(404)に送り込まれて相分離を行い、相分離後の油相部分が還流され、残り部分が抜き出されて前システムの前記酢酸塔(201)に送られて処理され、水相が前記脱水塔(206)に送られて水相中の有機物を回収することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記酢酸ビニルと酢酸エチルの分離プロセスは、抽出精留法を用い、主要設備は前記抽出精留塔(401)と、前記酢酸エチル塔(405)と前記抽出精留塔凝縮器(402)と、前記抽出精留塔サブクーラー(403)と、前記抽出精留塔相分離器(404)と、前記酢酸エチル塔凝縮器(406)と、前記酢酸エチル塔サブクーラー(407)と、前記酢酸エチル塔相分離器(408)とを備え、前記抽出精留塔(401)の塔頂部は、前記抽出精留塔凝縮器(402)、前記抽出精留塔サブクーラー(403)、前記抽出精留塔相分離器(404)に順次接続され、前記抽出精留塔相分離器(404)の油相出口に2つの分岐が設けられ、各々前記抽出精留塔(401)及び前システムの前記酢酸塔(201)に戻され、水相出口が前記水相受槽(207)に接続され、前記抽出精留塔(401)の塔釜は、前記酢酸エチル塔(405)に接続され、前記酢酸エチル塔(405)の塔頂部が前記酢酸エチル塔凝縮器(406)、前記酢酸エチル塔サブクーラー(407)及び前記酢酸エチル塔相分離器(408)に順次接続され、前記酢酸エチル塔相分離器(408)の水相出口が前記酢酸エチル塔(405)に接続され、油相出口の原材料がシステムから送り出され、前記酢酸エチル塔(405)の塔釜出口に2つの分岐が設けられ、各々抽出精留塔及び前システムの前記酢酸塔(201)に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出精留塔(401)の塔釜には、酢酸エチル、少量の水と酢酸の混合物が含まれ、前記酢酸エチル塔(405)に入れられ精留され、前記酢酸エチル塔(405)の塔頂蒸気の主成分が酢酸エチルと水、微量の酢酸ビニルであり、前記酢酸エチル塔凝縮器(406)で凝縮して得られた凝縮液が前記酢酸エチル塔サブクーラー(407)に入れられ、されに冷却された後で前記酢酸エチル塔相分離器(408)に送り込まれて相分離を行い、相分離後の水相は還流され、油相が酢酸エチル不純物ストリームとしてシステムから排出され、前記酢酸エチル塔(405)の塔釜の主成分は、酢酸で、一部が前記抽出精留塔(401)に戻されて抽出剤となり、残りは前システムの前記酢酸塔(201)に戻されて仕込むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
抽出精留法による前記酢酸ビニルと酢酸エチルの分離プロセスでは、酢酸を抽出剤として用い、抽出剤は前記抽出精留塔(401)の上部から加えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
抽出剤の酢酸の質量流量と前記酢酸塔(201)の側線から抜き出された仕込みの質量流量の比率は、0.2~2:1であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抽出剤の酢酸の質量流量と前記酢酸塔(201)の側線から抜き出された仕込みの質量流量の比率は、1.2:1であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸ビニルを製造する方法及び装置に関し、特に、生成物の収率を高め、廃棄物の排出を削減し、原材料及びエネルギーの消費を削減することができるエチレンアセタートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンアセタート(VAC)は、別名酢酸ビニルで、重要な有機化学原料である。単独重合又は他のモノマーと共重合することにより、酢酸ビニルは、ポリエチレンアルコール(PVA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体 (EVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、酢酸ビニル塩化エチレン共重合体(EVC)等の生成物を生成できる。これらの生成物には幅広い用途があり、一般的に接着剤、紙又は織物のサイズ剤、油塗料、インク、皮革加工、乳化剤、水溶性フィルム、土壌改良剤などの面に用いられることができる。2018年中国の酢酸ビニルの生産能力は、331.8万トン/年程度で、世界の生産能力の40%程度を占め、世界最大の生産国となっている。
【0003】
一般的に酢酸ビニル製造工程には、エチレン法とアセチレン法の2種類がある。世界の範囲内において、現在エチレン法による製造が主導的な地位を占めている。特許文献1には、酢酸ビニルの製造方法が開示され、エチレン気相酸化による酢酸ビニルの製造方法を提供している。エチレン法による酢酸ビニル製造プロセスは、原料のエチレン、酸素及び酢酸ガスを反応器に送り込み触媒と接触させ、圧力0.5~1.4MPa(G)と温度130~220℃にて反応してVAC、水及び少量の副産物を生成させ、高温反応ガスは多段冷却、凝縮を経た後、第2ガス分離塔に入れられることで、気液分離の目的を達成する。未反応のエチレンガスは、圧縮機に戻され、リサイクルされる。ガス分離塔で凝縮された酢酸とVACなどの混合液は、減圧脱気された後、精留工程に送られる。脱気後の反応液は、酢酸塔に入れられ酢酸分離を行い、塔釜の酢酸が合成工程の酢酸蒸発器に戻ってリサイクルされ、塔頂のストリームは、粗VAC塔、精製VAC塔で分離精製された後でVAC製品が得られ、アセトアルデヒド、酢酸エチル、水等の副産物がアルデヒドエステル濃縮塔、アセトアルデヒド塔、重量除去塔及び脱水塔を経て分離された後でシステムから排出される。
【0004】
酢酸エチルは、エチレン法による酢酸ビニル製造プロセス中の主な副産物の一つで、酢酸ビニルと酢酸エチルの分子間相互作用が強く、相対揮発度が小さい。製品内の酢酸エチル不純物を除去するため、現在エネルギー消費を犠牲にして、還流比の大きい条件を用いて酢酸ビニルと酢酸エチルを分離しているが、やはり両者を明確に分離することはできず、酢酸エチル不純物を排出するストリーム内においてやはり酢酸ビニルを主とし、製品の収率が低く、エネルギー消費流が多いため、酢酸ビニル製造プロセス中の酢酸エチル除去技術の開発が急務となっている。
【0005】
本発明の目的は、プロセスの強化及びシステム統合により、製品の品質向上、原材料及びエネルギーの消費削減を実現する酢酸ビニル製造方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許第ZL201210385948.4号公報
【文献】中国特許第ZL201210240612.9号公報
【文献】中国特許第ZL201220336812.X号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】《エチレン誘導体工学》の第九章の第9.3.3節、化学工業出版社、1995年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、酢酸ビニルの製造方法に関し、特に、エチレン気相酸化による酢酸ビニルの製造方法に関する。本発明の目的は、酢酸ビニルの製造プロセス中に酢酸ビニルと酢酸エチルの分離を強化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエチレン気相酸化によるエチレンアセタートの製造方法は、酢酸ビニル合成プロセスと、酢酸ビニル精製プロセスと、酢酸ビニルと酢酸エチルの分離プロセスとを含み、前記酢酸ビニル合成プロセスは主に順次接続されたエチレン回収塔(117)、酢酸蒸発器(103)、酸素混合器(106)、酢酸ビニル合成反応器(107)、第1ガス分離塔(108)、第2ガス分離塔(112)及び循環ガス圧縮機(101)から成り、第1ガス分離塔(108)及び第2ガス分離塔(112)は脱気缶(113)に接続されてから回収ガス圧縮機(114)、水洗塔(115)、吸収塔(116)、脱着塔(122)に順次接続され、前記酢酸ビニル精製プロセスは、主に順次接続された酢酸塔(201)、粗VAC塔(202)、精製VAC塔(203)、粗VAC塔(202)の塔頂の1つの分岐に順次接続されたアルデヒドエステル濃縮塔(204)及びアセトアルデヒド塔(205)、酢酸塔(201)と粗VAC塔(202)の塔頂の1つの分岐に順次接続された水相受槽(207)と脱水塔(206)から成り、前記酢酸ビニルと酢酸エチルの分離プロセスは、主に順次接続される抽出精留塔(401)、抽出精留塔凝縮器(402)、抽出精留塔サブクーラー(403)、抽出精留塔相分離器(404)、及び抽出精留塔(401)釜が順次接続する酢酸エチル塔(405)、酢酸エチル塔凝縮器(406)、酢酸エチル塔サブクーラー(407)、酢酸エチル塔相分離器(408)から成る。
【0010】
本発明のエチレン気相酸化による酢酸ビニルの製造方法では、エチレン、酸素及び酢酸は、酢酸ビニル合成反応器(107)における触媒の作用の下で、酢酸ビニルを生成する。前記触媒としては、当技術分野内の既知のエチレン気相酸化による酢酸ビニル製造のための触媒、例えばUSI触媒とBayer触媒を使用することができる。当業者は、エチレン気相酸化による酢酸ビニルの製造を実現できる他の触媒を使用することもできることを理解し、Bayer触媒を使用することが好ましい。エチレン、酸素及び酢酸を反応して酢酸ビニルを製造するための反応器としては、当技術分野内の既知のエチレン気相酸化による酢酸ビニル製造のための反応器を使用することもできる。例えば特許文献2、特許文献3で提案された反応器を使用することができ、非特許文献1で記載されている反応器を使用することもできる。
【0011】
本発明の方法で使用される原料の1つは、エチレンで、前記エチレンは、石油資源、石炭資源又はバイオマス資源から変換することができる。
【0012】
本発明のエチレンアセタートの製造方法では、エチレンは酢酸ビニル反応器内で部分的にしか変換されず、大量の未転化のエチレンをリサイクルする必要がある。エチレン源又はエチレン製造区域からの新鮮なエチレンは、任意選択でリサイクルされたエチレンと混合されてから予熱され、底部から酢酸蒸発器(103)に入れられ、前記予熱は酢酸ビニル合成反応器(107)の出口ガスを用いることができる。酢酸蒸発器(103)内において、酢酸は、頂部から噴霧され、該蒸発器内のエチレンと酢酸が向流接触し、蒸発器の頂部からエチレンと酢酸の混合ガスを導出する。該混合ガス内の酢酸含有量は、該蒸発器の頂部温度を制御することによって達成することができる。
【0013】
エチレンと酢酸の混合ガスは、酢酸蒸発器(103)の塔頂部から出た後、まず予熱する。例えば先に酢酸ビニル反応器の出口ガスで加熱し、続いて蒸気でさらに加熱することができる。加熱された混合ガスは、酸素混合器(106)に送り込まれて酸素と混合される。該酸素混合器に関しては、当技術分野での公知のもので、当技術分野で公知の各種酸素混合器を用いることができる。
【0014】
酸素混合器(106)から出た混合ガスは、頂部から酢酸ビニル合成反応器(107)に送り込まれる。上述のように、当技術分野内の既知のエチレン気相酸化による酢酸ビニル製造のための反応器を使用することができる。前記酢酸ビニル合成反応器(107)は、管型固定層型反応器であり得る。エチレン、酸素及び酢酸は、反応器内の触媒作用の下で酢酸ビニルに変換される。上述のように、前記触媒は、例えばUSI触媒及びBayer触媒であり得る。一実施形態によれば、前記Bayer触媒の活性成分は、パラジウム及び金であり、担体は一般的にシリカゲルである。一実施形態によれば、反応温度は、138℃~185℃の範囲で、圧力は一般的に785kPa(ケージ)程度である。気相法でエチレン、酸素及び酢酸から酢酸ビニルを得る限り、本発明の方法は、使用される触媒、担体、温度及び圧力に関して特別な要件を有さないことを当業者は理解するであろう。
【0015】
酢酸ビニル合成反応器(107)は、管型固定層型反応器であり、前記管型固定層型反応器の管間に加圧水を有し、加圧水が反応熱を除去すると共に蒸気を発生するために用いられる。一実施形態によれば、本発明の酢酸ビニル製造方法において、前記管型固定層型反応器は運転初期に蒸気を発生し、発生した蒸気を反応生成物の分離精製に用いることができる。
【0016】
反応後に得られたガスには、対象生成物である酢酸ビニルを含有するだけではなく、未転化のエチレンと酢酸、及び二酸化炭素、水、酸素と窒素などが大量に含まれる。酢酸ビニルの合成プロセスでエチレンの1パス当たりの転化率が低いため、大量の未転化のエチレンをリサイクルする必要がある。反応器を出る反応後のガスは、まず反応ガス第1冷却器(エチレンと酢酸の混合ガスを加熱するために用いることができる)及び第2冷却器(仕込むエチレンガスを加熱するために用いることができる)を介して原料ガスと熱交換して、反応器出口の生成物ガスで運び出される熱を回収してから冷却することができる。
【0017】
精留区域に送り込まれる反応液中の水の含有量を減らし、精留のエネルギー消費を低減するため、第1ガス分離塔(108)を設け、反応生成物ガスの余熱で反応液を予備脱水する。具体的に反応器出口の高温反応ガスは、第1と第2冷却器内で反応器の仕込みの低温反応ガスと熱交換した後、第1ガス分離塔(108)の底部に送り込まれ、塔内で還流液と物質移動と熱移動が行われ、塔釜には予備脱水した後の水含有量の少ない反応液で、脱気缶(113)で減圧された後、精留区域の酢酸塔(201)に処理のため送られる。塔頂の蒸気の主成分は、酢酸ビニルと水であり、凝縮後でさらに冷却され、相分離器に送り込まれて相分離を行い、相分離後の油相を還流として第1ガス分離塔(108)内に送り込み、水相を抽出して精留区域の水相受槽(207)に送る。
【0018】
第1ガス分離塔(108)の塔頂の蒸気は、空気凝縮器で凝縮されることで、循環水の循環量及び消耗量をさらに減らすことができる。一実施形態によれば、空気凝縮器の凝縮液出口温度は、70℃~110℃の範囲である。空気凝縮器は、周囲の空気を冷媒体とする冷却器で、「空気冷却器」と略称する。ここで、様々な既知の空気凝縮器を使用することができる。当業者は、適した空気凝縮器を選択して冷却ニーズを満たす方法を知り、習得している。例えばあるタイプの空気凝縮器では、動力を利用してインペラーを回転させ、発生された渦が継続的に空気を吸い込み、冷たい空気が熱い管と接触した後に熱を伝達し、管内の高温のプロセス流体が冷却又は凝縮される。例えば空気冷却器は、周波数変調モータの構成及びファンブレードの角度調整を介して冷却能力を調整することができる。一般的な空気冷却器は、主にチューブバンドル、ファン及びフィレ―むの3つの部分で構成されている。例えば国家規格GB/T 15386-94は、空気冷却器の構造及び性能の要件などについて詳細に説明している。
【0019】
第1ガス分離塔(108)で処理された反応ガス中には、エチレン、酸素などの非凝縮成分が多量に含まれているため、間接的な冷却方法だけで、酢酸と酢酸ビニルを全て凝縮することは困難である。分離が不完全である場合、循環するエチレン中に酢酸が含まれている可能性があり、微量の酢酸が存在しても循環ガス圧縮機(101)を腐食させる原因となる。したがって、酢酸ビニルの製造中に直接冷却設備である第2ガス分離塔(112)を使用する必要がある。
【0020】
上記のように空気凝縮器を使用して凝縮した後、未凝縮の反応ガスは、第2ガス分離塔(112)の下部に入れられる。第2ガス分離塔(112)は、上部、中部、下部に分かれている。下部は、循環水で冷却した後の塔釜反応液を循環し、上昇してきたエチレン、二酸化炭素、酢酸、酢酸ビニルなどのガスと向流接触し、その中に含まれる酢酸を凝縮する。中部は、低温水(凍結ブライン、メタノール水溶液など)で冷却された後の反応液を循環させ、上昇ガスと向流接触させ、その中に含まれる酢酸、酢酸ビニルなどの高沸点物質を凝縮させ、上部は、酢酸でガスをリンスして反応ガス中の酢酸ビニルをさらに除去する。
【0021】
第2ガス分離塔(112)の塔底液は、第2ガス分離塔の第1冷却器で冷却された後、塔底液の一部が分離塔の下部の頂部に入り、残りがさらに第2ガス分離塔の第2冷却器により低温水で冷却された後第2ガス分離塔(112)の中部の頂部に入り、上昇してきたガスとそれぞれ直接向流接触し、気相内の酢酸、VACを凝縮させることで、反応ガスからの除去を実現する。
【0022】
前記第2ガス分離塔(112)の第1冷却器は、プレート式熱交換器又は二重パスシェル固定シェルアンドチューブ熱交換器などの二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器を用いる。いかなる理論にも拘束されないが、おそらく二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器の使用は、冷熱媒体の完全対向流操作を実現し、冷却水を節約する。所望の冷却効果を奏する限り、当技術分野内の既知の二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器又は二重パスシェル固定シェルアンドチューブ熱交換器を使用することができる。当業者は、適した二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器又は二重パスシェル固定シェルアンドチューブ熱交換器を選択した冷却ニーズを満たす方法を知り、習得している。当業者に一般的に知られているように二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器は、チューブバンドルの中央に1枚の仕切板を配置し、バッフルが上下に分離され、パスシェルが2つに分けられる。シェルは、中央の仕切板で2つの部分に分割されているため、冷熱媒体の熱効果が純粋な向流条件下で実現でき、熱伝達効率は1パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器よりもはるかに大きい。いかなる理論にも拘束されないが、プレート式熱交換器の使用により完全対向流を実現し、熱交換温度差が増加し、冷却水の使用量を減少する。プレート式熱交換器は、一定の波形の一連の金属片を積層してから成る新型高効率熱交換器である。様々なプレート間に薄い矩形チャネルが形成され、プレートを介して熱が交換される。従来のシェルアンドチューブ熱交換器と比較すると、プレート式熱交換器の熱伝達係数がはるかに高い。プレート式熱交換器は、対数平均温度差が大きく、末端の温度差が小さいため、完全対向流の熱交換を実現できる。所望の冷却効果を奏する限り、当技術分野内の既知のプレート式熱交換器を使用することができる。当業者は、適したプレート式熱交換器を選択する方法を知り、習得している。
【0023】
第2ガス分離塔(112)の塔頂部から出たガスは、酢酸、酢酸ビニルなどの高沸点成分の除去を実現し、主成分は、エチレン、二酸化炭素及び酸素である。一般的に、該ガスは循環ガス圧縮機(101)で圧縮された後、ガスの大部分が循環して酢酸ビニル合成反応器(107)に戻られ、また側流ガスの少量を抜き出して二酸化炭素などの不活性成分を除去し、不活性成分の蓄積によりエチレン濃度が低下しないことで、合成反応をスムーズに進行できるようにする。
【0024】
一般的に、第2ガス分離塔(112)の塔釜から反応液(酢酸と酢酸ビニルの混合液)から連続的に抜き出されて、脱気缶(113)に送られる。減圧により液相に溶解したガスを吸着し、回収ガス圧縮機(114)及び循環ガス圧縮機(101)で圧縮された後、二酸化炭素を除去した側流ガスと合流した後で水洗塔(115)に送り込まれる。
【0025】
一般的に、水洗塔(115)に送り込まれたガスは、水洗により含まれる酢酸及びアセトアルデヒドを除去した後、吸収塔(116)内に送り込まれ、熱炭酸カリウム水溶液で二酸化炭素を吸収し、吸収塔(116)の塔頂部から出てきたガスの大部分が循環ガス圧縮機に送られ、加圧された後、合成反応器に戻され、少量が重合禁止剤や防腐剤として精留装置に送られ、残りはエチレン回収塔(117)に送られ、その中のエチレンを回収した後トーチで燃焼されて、反応システム内の不活性ガスのバランスがとられる。吸収塔(116)の底部の吸収液は、脱着塔(122)に送られ、減圧及び昇温条件において二酸化炭素を脱着させ、二酸化炭素が脱着塔(122)から排出される。脱着後の炭酸カリウム溶液は、吸収塔(116)に戻されて吸収液として使用され、上述のシステムは循環ガス脱炭素システムと呼ばれる。
【0026】
本発明の酢酸ビニルの製造方法は、循環ガス内の適切な不活性ガス含有量を制御することにより、製造プロセスを安定化させることが有利である。具体的には、一定の不活性ガス含有量を制御することにより、酸素の爆発下限界を上げ、反応システムの安定領域を拡大させ、反応システムの酸素濃度を上げて反応温度を下げて、触媒の寿命を延ばし、酢酸ビニルの選択性を高めることができる。この分野の従来手法は、循環ガス脱炭素システムを通じて脱炭素の程度を制御し、二酸化炭素をシステム内で一定の濃度に維持させることで、安定化の役割を果たすことである。ただし、二酸化炭素の分子量は高く、同じ体積分率に達する場合において、総質量が高いほど、循環ガス圧縮機(101)の消費電力が高くなる。本発明者らは、気液相平衡解析により、エチレン回収吸収剤が原料ガスによって運び込まれた不純物成分であるエタンを良好に吸収できることを見出した。エタンは二酸化炭素よりも分子量が小さいことを考慮すると、同じ安定化効果を奏する場合の消費電力は低い。以上の見出しに基づき、本発明者らは、原料に運び込まれたエタンを安定剤として使用する方法を提案し、これに基づき、エタンを安定剤として使用する新たなプロセスを開発した。具体的には、脱炭装置から送られた精製ガスをエチレン回収塔(117)に送り、適切な吸収液でエチレンガスとエタンガスを回収した後、その中の窒素ガス、好ましくは酢酸を排出する。循環ガス中のエタン含有量を調整するため、脱炭装置から送られた精製ガスがエチレン回収塔(117)に送られる前に、不純物除去のための分岐ストリームを設け、この不純物排出ストリームの量を調整することによりエチレン含有量を調整する。
【0027】
当業者が理解するように、酢酸ビニル合成の反応液には、酢酸ビニルの他に、酢酸、水、低沸点成分及び高沸点成分が含まれる。各成分の沸点に明らかな違いがある液体混合物では、特定の温度で部分的に気化した後、気相組成は液相組成とは異なり、気相の揮発性物質の割合は液相の揮発性物質の割合よりも大きく、精留法により分離・精製することができる。酢酸ビニル精留は、反応液中の各成分の相対揮発度の違いを利用して、一連の精留操作を経て各成分を分離させることである。
【0028】
本発明で提案される酢酸ビニルの製造方法の酢酸ビニル精製プロセスは、順次接続された酢酸塔(201)、粗VAC塔(202)、精製VAC塔(203)、粗VAC塔(202)の頂部の1つの分岐に順次接続されたアルデヒドエステル濃縮塔(204)とアセトアルデヒド塔(205)、酢酸塔(201)と粗VAC塔(202)の頂部の1つの分岐に順次接続された水相受槽(207)及び脱水塔(206)から成る。
【0029】
酢酸ビニル合成区域の脱気缶(113)からの反応液を仕込みとして、酢酸塔(201)に送る。塔底から回収酢酸を抜き出し、大部分は酢酸ビニル合成区域の酢酸蒸発器(103)に送られ、残りは各々第2ガス分離塔(112)及び水洗塔(115)に送られリンス酢酸として使用される。
【0030】
酢酸塔(201)塔頂部から蒸気を導出し、該蒸気の主成分は酢酸ビニルと水である。該蒸気は、凝縮器で凝縮された後、酢酸塔(201)の相分離缶に送り込まれ、成層される。上層の有機相の一部は還流され、一部が抜き出されて粗VAC塔(202)に送られ、下層の水相は水相受槽(207)に送られる。
【0031】
酢酸塔相分離缶の有機相の一部は、粗VAC塔(202)に送られる。該粗VAC塔(202)は、酢酸ビニル内に溶解している水及び低沸点不純物を分離するための精留塔である。粗VAC塔(202)の塔釜から取り出したものは、低沸分を除いた酢酸ビニルであり、精製VAC塔(203)に送られる。
【0032】
粗VAC塔(202)の塔頂より水、低沸点成分及び少量の酢酸ビニルが留出され、凝縮器で凝縮された後、粗VAC塔(202)相分離缶に入り、成層される。上層の有機相は、酢酸ビニル及び低沸点成分であり、一部が還流され、一部がアルデヒドエステル濃縮塔(204)に送られ、下層の水相が水相受槽(207)に送られ、中のVACを回収する。
【0033】
粗VAC塔の凝縮液冷却器は、プレート式熱交換器又は二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器を用い、プレート式熱交換器を用いることが好ましい。所望の冷却効果を奏する限り、当技術分野内の既知のプレート式熱交換器又は二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器を使用することができる。当業者は、適したプレート式熱交換器又は二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器を選択する方法を知り、習得している。例えば前述と同じプレート式熱交換器又は二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器を用いることができる。おそらくプレート式熱交換器又は二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器を用いた後、完全対向流を実現し、熱交換の温度差を増大させ、冷却水の使用量を減らすことができる。
【0034】
粗VAC塔(202)の塔底液は、精製VAC塔(203)に送られ仕込まれる。該精製VAC塔(203)は、高沸点成分を除去するために用いられる。該精製VAC塔(203)の塔頂より酢酸ビニル製品の蒸気が留出し、凝縮、冷却された後貯槽に送ることができる。塔底液は、酢酸ビニル及び高沸点成分であり、酢酸塔(201)に送られる。
【0035】
アルデヒドエステル濃縮塔(204)の仕込みは、粗VAC塔相分離缶から分離された有機相である。該アルデヒドエステル濃縮塔(204)の塔頂よりアセトアルデヒドを主成分とする低沸点分が留出し、凝縮と冷却された後、一部が還流され、一部がアセトアルデヒド塔(205)に送られる。塔底液は、主に酢酸ビニルを含み、粗VAC塔(202)に送られ塔頂還流を行う。アセトアルデヒド塔(205)の塔頂より純粋なアセトアルデヒドが留出し、例えば濃度が少なくとも99%に達することができる。凝縮器で凝縮された後、副産物のアセトアルデヒドが得られる。該アセトアルデヒド塔(205)の塔釜は、残りの軽質不純物成分であり、廃液処理装置に送られて処理される。
【0036】
上記酢酸塔相分離缶と粗VAC塔相分離缶の下層の水相から分離あれた水の中に一定量の酢酸ビニルが溶解されている。酢酸ビニルを回収するため、この部分の原材料を水相受槽(207)に送り、脱水塔(206)に仕込み、塔頂より酢酸ビニルと水の共沸混合物が留出し、凝縮器で凝縮された後、上述の粗VAC塔相分離缶に戻され、成層される。該脱水塔(206)の塔底原料は、酢酸ビニルをほぼ含まれていない水であり、廃水処理後に排出される。
【0037】
上記酢酸塔相分離缶と粗VAC塔相分離缶の下層の水相から分離された水相原料は、予熱を経た後で水相受槽(207)に入る。該水相原料の予熱は、脱水塔(206)の塔底原料で実施され、該予熱はプレート式熱交換器又は二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器で実施され、プレート式熱交換器で実施することが好ましい。所望の冷却効果を奏する限り、当技術分野内の既知のプレート式熱交換器又は二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器を使用することができる。当業者は、適したプレート式熱交換器又は二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器を選択する方法を知り、習得している。例えば前述と同じプレート式熱交換器又は二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器を用いることができる。おそらくプレート式熱交換器又は二重パスシェルシェルアンドチューブ熱交換器を用いた後、冷熱媒体の完全対向流操作を実現し、熱交換の温度差を増大させ、仕込み温度を上げ、脱水塔(206)リボイラーの新鮮な蒸気の使用量を減少する。
【0038】
本発明者らは、プロセス全体のコンピュータシミュレーション結果によると、酢酸塔(201)の下部に酢酸エチルが豊富に含まれていることを発見した。これにより酢酸塔(201)の下部に側線抜き出し口を設け、側線から酢酸エチル濃縮ストリームを抜き出すことを提案する。本発明者らの厳密なコンピュータシミュレーション計算結果では、このストリームの主成分が酢酸、酢酸ビニル、水及び酢酸エチルであることを示している。酢酸ビニルと酢酸エチルの分子間の相互作用が強く、相対揮発度が低く、従来の精留方法を用い、還流比が大きい条件下でも両者を明確に分離することができない。本発明者らは、分離強化媒体として分離プロセスを強化するため、酢酸ビニルと酢酸エチル成分間の相互作用を変更させることができる抽出剤を見つける構想を提案する。この構想に基づき、本発明者らは計算量子力学方法で酢酸ビニル、酢酸エチルの分子構造の特性を研究し、成分間の相互作用を変更させることができる第3の成分である酢酸を見出した。上述の基礎研究の見出しに基づいて、本発明者らは、抽出精留塔システム及び酢酸エチル塔システムの厳密な数学モデルを確立し、プロセス全体の計算とシミュレーションを実行し、酢酸を抽出剤とする酢酸ビニルと酢酸エチルの抽出精留分離工程を開発し、酢酸を抽出剤として酢酸ビニルから酢酸エチルを除去する方法及び設備を提案する。
【0039】
特に、本発明で提案される酢酸ビニルと酢酸エチルの分離プロセスの主要設備は、抽出精留塔(401)と、抽出精留塔凝縮器(402)と、抽出精留塔サブクーラー(403)と、抽出精留塔相分離器(404)と、酢酸エチル塔(405)と、酢酸エチル塔凝縮器(406)と、酢酸エチル塔サブクーラー(407)と、酢酸エチル塔相分離器(408)とを備える。
【0040】
抽出精留塔(401)の塔頂部は、抽出精留塔凝縮器(402)、抽出精留塔サブクーラー(403)、抽出精留塔相分離器(404)に順次接続され、抽出精留塔相分離器(404)の油相出口に2つの分岐が設けられ、各々抽出精留塔(401)及び前システムの酢酸塔(201)に戻され、水相出口が水相受槽(207)に接続される。抽出精留塔(401)の塔釜は、酢酸エチル塔(405)に接続され、酢酸エチル塔(405)の塔頂部が酢酸エチル塔凝縮器(406)、酢酸エチル塔サブクーラー(407)及び酢酸エチル塔相分離器(408)に順次接続され、酢酸エチル塔相分離器(408)の水相出口が酢酸エチル塔(405)に接続され、油相出口の原材料がシステムから送り出される。酢酸エチル塔(405)の塔釜出口に2つの分岐が設けられ、各々抽出精留塔及び前システムの酢酸塔(201)に接続される。
【0041】
酢酸塔(201)の側線から抜き出された酢酸、酢酸ビニル、水及び酢酸エチルを含むストリームは、抽出精留塔(401)の中部に入り、酢酸を抽出剤として抽出精留塔(401)の上部から仕込む。抽出精留塔(401)の塔頂蒸気内の主成分は、酢酸ビニルと水、きれいに除去していない微量の酢酸エチルであり、抽出精留塔凝縮器(402)で凝縮して得られた凝縮液が抽出精留塔サブクーラー(403)に入り、さらに冷却された後抽出精留塔相分離器(404)に送り込まれて相分離を行い、相分離後の油相部分が還流され、残り部分が抜き出されて前システムの酢酸塔(201)に送られて処理され、水相が脱水塔(206)に送られて水相中の有機物を回収する。
【0042】
抽出精留塔(401)の塔釜には、酢酸エチル、少量の水と酢酸の混合物が含まれ、酢酸エチル塔(405)に入れられ精留され、酢酸エチル塔(405)の塔頂蒸気の主成分が酢酸エチルと水、微量の酢酸ビニルであり、酢酸エチル塔凝縮器(406)で凝縮して得られた凝縮液が酢酸エチル塔サブクーラー(407)に入れられ、されに冷却された後で酢酸エチル塔相分離器(408)に送り込まれて相分離を行い、相分離後の水相は還流され、油相が酢酸エチル不純物ストリームとしてシステムから排出される。酢酸エチル塔(405)の塔釜の主成分は、酢酸で、一部が抽出精留塔(401)に戻されて抽出剤となり、残りは前システムの酢酸塔(201)に戻されて仕込む。
【0043】
抽出精留法による酢酸ビニルと酢酸エチルの分離プロセスでは、酢酸を抽出剤として用い、抽出剤は抽出精留塔(401)の上部から加えられる。
【0044】
好ましくは、抽出剤の酢酸は、酢酸塔(201)の側線から抜き出されたストリーム中に運び込まれ、酢酸エチル塔(405)によって精製された後の酢酸を用いる。
【0045】
抽出剤の酢酸の質量流量と酢酸塔(201)の側線から抜き出された仕込みの質量流量の比率は、0.2~2:1である。
【0046】
好ましくは、抽出剤の酢酸の質量流量と酢酸塔(201)の側線から抜き出された仕込みの質量流量の比率は、1.2:1である。
【発明の効果】
【0047】
本発明の有利な技術効果としては、酢酸を抽出剤として用い、酢酸ビニルと酢酸エチルとの間の相互作用を変更し、両者の相対揮発度を向上し、酢酸エチル不純物を除去したストリーム中の酢酸ビニルの含有量を90%以上から5%以下に削減し、原材料の消費を大幅に削減する。用いる抽出剤は、仕込みストリーム中に運び込まれた酢酸で、新しい成分を導入せず、分離効率を向上した後抽出剤を処理するためのシステムのタスクが増えない。この方法は、装置の運転コストを大幅に削減する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の酢酸ビニル合成区域のフローチャートである。
図2】本発明の酢酸ビニル精留区域のフローチャートである。
図3】本発明の酢酸ビニルと酢酸エチルの抽出精留分離フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明で提案される酢酸ビニルの製造プロセスにおける酢酸エチルの除去方法及び装置は、主に抽出精留塔システムと、酢酸エチル塔405システムとを備える。以下、添付の図面を参照しつつ本発明の方法及び装置を説明する。
【0050】
本発明は、図1図2図3に示す方法によって実現され、
具体的には、新鮮なエチレンは、循環ガス圧縮機101からの循環ガスと混合された後で酢酸蒸発器103の下部に入り、精留区域酢酸塔201からの循環酢酸及びエチレン回収塔117の新鮮な酢酸と向流接触する。酢酸蒸発器103の頂部で得られたエチレンと酢酸の混合ガスは、さらに酸素混合器106内で新鮮な酸素と混合した後で酢酸ビニル合成反応器107に入り、反応生成物が冷却された後、第1ガス分離塔108及び第2ガス分離塔112に順次入って気液分離が行われ、分離された後のガスが循環ガス圧縮機101で昇圧された後酢酸蒸発器103に戻されてリサイクルされる。第1ガス分離塔108の塔頂の凝縮液の水相は、水相受槽207に送られる。第1ガス分離塔108及び第2ガス分離塔112の塔底液は、脱気缶113に送り込まれて減圧された後、減圧ガスが回収ガス圧縮機114で昇圧された後で循環ガス圧縮機101後の側流ガスと合流した後、水洗塔115及び吸収塔116に送り込まれて処理され、主要部分は循環ガス圧縮機101の入口に戻され、一部がエチレン回収塔117内で新鮮な酢酸と向流接触し、一部が不純物として直接排出される。吸収塔116の塔底液は、脱着塔122に送られて脱着される前、先にフラッシュ蒸発を行い、フラッシュ蒸気が脱気缶113に戻されて、その中のエチレンを回収する。脱着塔122の塔頂からCO2が排出される。脱気缶113の液相である反応液は、精留区域の酢酸塔201に送られる。
【0051】
反応区域からの反応液は、酢酸塔201に入り分離され、塔釜の酢酸が合成区域の酢酸蒸発器103に送られリサイクルされ、塔頂の原料は粗VAC塔202及び精製VAC塔203を順次経由して分離されて酢酸ビニル製品が得られた。粗VAC塔202の塔頂の油相原料がアルデヒドエステル濃縮塔204及びアセトアルデヒド塔205によって精製された後でアセトアルデヒド製品及び低沸点廃液が得られた。酢酸塔201及び粗VAC塔202の塔頂の凝縮液の水相は、水相受槽207に送られ、水相受槽207の原料が脱水塔206に送られ、留出された有機物を粗VAC塔202に戻し、塔釜が廃水である。酢酸塔201の下部側線から抜き出された酢酸エチルを含む不純物ストリームを抽出精留塔401に送って分離する。
【0052】
好ましくは、酢酸ビニルと酢酸エチルを分離するための主要設備は、抽出精留塔401と、抽出精留塔凝縮器402と、抽出精留塔サブクーラー403と、抽出精留塔相分離器404と、酢酸エチル塔405と、酢酸エチル塔凝縮器406と、酢酸エチル塔サブクーラー407と、酢酸エチル塔相分離器408とを備える。
【0053】
抽出精留塔401の塔頂部は、抽出精留塔凝縮器402、抽出精留塔サブクーラー403、抽出精留塔相分離器404に順次接続され、抽出精留塔相分離器404の油相出口に2つの分岐が設けられ、各々抽出精留塔401及び前システムの酢酸塔201に戻され、水相出口が水相受槽207に接続される。抽出精留塔401の塔釜は、酢酸エチル塔405に接続され、酢酸エチル塔405の塔頂部が酢酸エチル塔凝縮器406、酢酸エチル塔サブクーラー407及び酢酸エチル塔相分離器408に順次接続され、酢酸エチル塔相分離器408の水相出口が酢酸エチル塔405に接続され、油相出口の原材料がシステムから送り出される。酢酸エチル塔405の塔釜出口に2つの分岐が設けられ、各々抽出精留塔401及び前システムの酢酸塔201に接続される。
【0054】
酢酸塔201の側線から抜き出された酢酸、酢酸ビニル、水及び酢酸エチルを含むストリームは、抽出精留塔401の中部に入り、酢酸を抽出剤として抽出精留塔401の上部から仕込む。抽出精留塔401の塔頂蒸気内の主成分は、酢酸ビニルと水、きれいに除去していない微量の酢酸エチルであり、抽出精留塔凝縮器402で凝縮して得られた凝縮液が抽出精留塔サブクーラー403に入り、さらに冷却された後抽出精留塔相分離器404に送り込まれて相分離を行い、相分離後の油相部分が還流され、残り部分が抜き出されて前システムの酢酸塔201に送られて処理され、水相が脱水塔206に送られて水相中の有機物を回収する。
【0055】
抽出精留塔401の塔釜には、酢酸エチル、少量の水と酢酸の混合物が含まれ、酢酸エチル塔405に入れられ精留され、酢酸エチル塔405の塔頂蒸気の主成分が酢酸エチルと水、微量の酢酸ビニルであり、酢酸エチル塔凝縮器406で凝縮して得られた凝縮液が酢酸エチル塔サブクーラー407に入れられ、されに冷却された後で酢酸エチル塔相分離器408に送り込まれて相分離を行い、相分離後の水相は還流され、油相が酢酸エチル不純物ストリームとしてシステムから排出される。酢酸エチル塔405の塔釜の主成分は、酢酸で、一部が抽出精留塔401に戻されて抽出剤となり、残りは前システムの酢酸塔201に戻されて仕込む。
【0056】
抽出精留法による酢酸ビニルと酢酸エチルの分離プロセスでは、酢酸を抽出剤として用い、抽出剤は抽出精留塔401の上部から加えられる。
【0057】
好ましくは、抽出剤の酢酸は、酢酸塔201の側線から抜き出されたストリーム中に運び込まれ、酢酸エチル塔405によって精製された後の酢酸を用いる。
【0058】
抽出剤の酢酸の質量流量と酢酸塔201の側線から抜き出された仕込みの質量流量の比率は、0.2~2:1である。
【0059】
好ましくは、抽出剤の酢酸の質量流量と酢酸塔201の側線から抜き出された仕込みの質量流量の比率は、1.2:1である。
【0060】
本発明の有利な技術効果としては、酢酸を抽出剤として用い、酢酸ビニルと酢酸エチルとの間の相互作用を変更し、両者の相対揮発度を向上し、酢酸エチル不純物を除去したストリーム中の酢酸ビニルの含有量を90%以上から5%以下に削減し、原材料の消費を大幅に削減する。用いる抽出剤は、仕込みストリーム中に運び込まれた酢酸で、新しい成分を導入せず、分離効率を向上した後抽出剤を処理するためのシステムのタスクが増えない。この方法は、装置の運転コストを大幅に削減する。
【0061】
本発明の一実施形態として、抽出剤の酢酸は、酢酸塔201の側線から抜き出されたストリーム中に運び込まれ、酢酸エチル塔405によって精製された後の酢酸を用い、抽出剤の質量流量と酢酸塔201の側線から抜き出された仕込みの質量流量の比率は、1.2:1である。
【0062】
酢酸を抽出剤として用いることで、酢酸ビニルと酢酸エチルとの間の相互作用を変更し、両者の相対揮発度を向上し、酢酸エチル不純物を除去したストリーム中の酢酸ビニルの含有量を91%から4%に削減し、原材料の消費を大幅に削減する。用いる抽出剤は、仕込みストリーム中に運び込まれた酢酸で、新しい成分を導入せず、分離効率を向上した後抽出剤を処理するためのシステムのタスクが増えない。
【0063】
本発明で特に指摘されていない設備は、従来の設備であり、当業者に知られている方法及び設備を用いて実現することができる。
【0064】
特定の実施形態及び図面を参照しつつ本発明を説明してきたが、本発明は、本明細書に記載された特定の形態に限定されることは意図されていない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。なお、個別の特徴は異なる請求項に含まれることができるが、これらの特徴は有利に組み合わされることができ、かつ異なる請求項に含まれることは、特徴の組み合わせが実現可能ではない、及び/又は有利ではないことを意味するものではない。「第1」、「第2」などの引用は、複数複数形を排除するものではない。
【符号の説明】
【0065】
103 酢酸蒸発器
106 酸素混合器
107 酢酸ビニル合成反応器
108 第1ガス分離塔
112 第2ガス分離塔
113 脱気缶
115 水洗塔
116 吸収塔
122 脱着塔
117 エチレン回収塔
101 循環ガス圧縮機
114 回収ガス圧縮機
201 酢酸塔
202 粗VAC塔
203 精製VAC塔
204 アルデヒドエステル濃縮塔
205 アセトアルデヒド塔
206 脱水塔
207 水相受槽
401 抽出精留塔
405 酢酸エチル塔
402 抽出精留塔凝縮器
403 抽出精留塔サブクーラー
404 抽出精留塔相分離器
406 酢酸エチル塔凝縮器
407 酢酸エチル塔サブクーラー
408 酢酸エチル塔相分離器
図1
図2
図3