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特許7486861エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセス及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセス及び装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/48 20060101AFI20240513BHJP
   C07C 69/15 20060101ALI20240513BHJP
   B01D 3/40 20060101ALI20240513BHJP
   B01D 3/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C07C67/48
C07C69/15
B01D3/40
B01D3/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023133694
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】202211435930.0
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523095211
【氏名又は名称】天津大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】張 敏華
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 浩
(72)【発明者】
【氏名】董 賀
(72)【発明者】
【氏名】耿 中峰
(72)【発明者】
【氏名】余 英哲
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-263747(JP,A)
【文献】特開2000-063326(JP,A)
【文献】国際公開第2021/127682(WO,A1)
【文献】米国特許第06118021(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102936198(CN,A)
【文献】特開平08-117544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスであって、
(a)吸収塔凝縮器で精製ガスを凝縮し、凝縮液と非凝縮性ガスを分離する吸収塔気液分離タンクから非凝縮性ガスをエチレン回収膜組立体に送り、膜分離により非凝縮性ガス中のエチレンを回収する工程を含み、前記エチレン回収膜組立体は、凝集装置と膜設備の2つ部分を含み、前記エチレン回収膜組立体は、循環システム中の窒素等の不活性成分の含有量を制御し、非凝縮性ガス中のエチレンガスを回収し、非凝縮性ガス中で焼却に直接送られる原料エチレンのロスを低減し、膜組立体内の凝集装置には2つの作用があり、第1の作用はガスが下から上に流れることであり、凝集装置内のデミスターはストリーム中の水分が膜装置に侵入するのを防ぐことができ、第2の作用は、凝集装置から出るパイプラインにガスを3~5℃に過熱して膜に入るための加熱として使用する電気ヒートトレースがあるため、飽和ガスが膜装置に直接接触して凝縮することを避ける方法と、
(b)重合禁止剤及び高沸点不純物を含む酢酸ビニルを精製VAC塔に送り、精製VAC塔でサイドカットから抜き出し、高純度VAC製品を得る工程を含む方法と、
(c)酢酸塔の塔頂蒸気と粗VAC塔の塔頂蒸気をそれぞれ、循環水で直列に冷却される塔頂凝縮器と凝縮水冷却器及び冷水で冷却されたテールガス凝縮器を通過した後留出液相分離タンクに入る工程を含む方法と
を包括することを特徴とする、エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセス。
【請求項2】
前記方法(a)は、吸収塔気液分離タンク(107)とフレア装置との間にエチレン回収膜組立体(110)を追加することであることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセス。
【請求項3】
前記方法(b)は、精製VAC塔上部の理論段3段目から7段目までの位置にサイドカット流を追加することであることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセス。
【請求項4】
前記方法(c)は、酢酸塔(204)の塔頂と粗VAC塔(210)の塔頂において、それぞれ元の塔頂凝縮器と凝縮水冷却器の各自独立した冷却を前記循環水による直列冷却の冷却方法に改良することであることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセス。
【請求項5】
前記酢酸塔(204)及びアルデヒドエステル濃縮塔(221)の塔底部において、合成・精製システムからの精製ガスを吹き込み、前記酢酸塔(204)の塔底液の一部は合成区域に送られ、一部が合成・精製システムからの精製ガスと一緒に酢酸塔リボイラー(205)を経て前記酢酸塔(204)の下部に戻され、前記アルデヒドエステル濃縮塔(221)の塔底液の一部は抽出精留塔相分離タンク(237)の留出液と一緒に前記粗VAC塔(210)の塔頂に戻され、一部が合成精製システムからの精製ガスと一緒にアルデヒドエステル濃縮塔リボイラー(223)を経て前記アルデヒドエステル濃縮塔(221)の下部に戻されることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセス。
【請求項6】
請求項2に記載のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスを実現する装置であって、前記エチレン回収膜組立体(110)は、凝集装置と膜設備の2つの部分を含み、前記吸収塔気液分離タンク(107)の塔頂出口ストリームは2本に分かれ、前記エチレン回収膜組立体(110)の入口及び精製ガス熱交換器(109)の冷却側入口とそれぞれ接続し、前記エチレン回収膜組立体(110)の出口は前記フレア装置の入口及び回収ガス圧縮機(112)の入口とそれぞれ接続し、
精製VAC塔(211)の塔頂出口は、精製VAC塔凝縮器(214)の冷却側入口と接続し、前記精製VAC塔凝縮器(214)の冷却側出口が精製VAC塔凝縮水冷却器(218)の冷却側入口と接続し、前記精製VAC塔凝縮水冷却器(218)の冷却側出口は精製VAC塔還流タンク(219)と接続し、前記循環水は前記精製VAC塔凝縮水冷却器(218)の加熱側入口に流入し、前記精製VAC塔凝縮水冷却器(218)の加熱側出口は前記精製VAC塔凝縮器(214)の加熱側入口と接続し、前記循環水が前記精製VAC塔凝縮器(214)の加熱側出口から流出し、前記精製VAC塔(211)側部出口はVAC製品凝縮器(215)の冷却側入口と接続し、前記VAC製品凝縮器(215)の冷却側出口はVAC製品タンクと接続し、冷水は前記VAC製品凝縮器(215)の加熱側入口から流入し、前記VAC製品凝縮器(215)の加熱側出口から流出し、前記精製VAC塔(211)の釜部出口は前記酢酸塔(204)の上端の入口と接続し、
前記酢酸塔(204)の塔頂出口は、酢酸塔凝縮器(206)の冷却側入口と接続し、前記酢酸塔凝縮器(206)の冷却側出口は酢酸塔凝縮水冷却器(208)の冷却側入口及び酢酸塔テールガス凝縮器(209)の冷却側入口とそれぞれ接続し、前記酢酸塔テールガス凝縮器(209)の冷却側出口は前記回収ガス圧縮機(112)の入口及び酢酸塔留出液相分離タンク(207)の入口とそれぞれ接続し、前記酢酸塔凝縮水冷却器(208)の冷却側出口は前記酢酸塔留出液相分離タンク(207)の入口と接続し、循環水入口は前記酢酸塔凝縮水冷却器(208)の加熱側入口と接続し、前記酢酸塔凝縮水冷却器(208)の加熱側出口は前記酢酸塔凝縮器(206)の加熱側入口と接続し、前記酢酸塔凝縮器(206)の加熱側出口は循環水出口と接続し、冷水入口は前記酢酸塔テールガス凝縮器(209)の加熱側入口と接続し、前記酢酸塔テールガス凝縮器(209)の加熱側出口は冷水出口と接続し、
前記粗VAC塔(210)の塔頂出口及び脱水塔(232)の塔頂出口は、いずれも粗VAC塔凝縮器(213)の冷却側入口と接続し、前記粗VAC塔凝縮器(213)の冷却側出口はそれぞれ粗VAC塔凝縮水冷却器(217)の冷却側入口及び粗VAC塔テールガス凝縮器(220)の冷却側入口と接続し、前記粗VAC塔テールガス凝縮器(220)の冷却側出口はそれぞれ回収ガス圧縮機(112)の入口及び粗VAC塔留出液相分離タンク(216)の入口と接続し、前記粗VAC塔凝縮水冷却器(217)の冷却側出口は前記粗VAC塔留出液相分離タンク(216)の入口と接続し、冷水入口は前記粗VAC塔テールガス凝縮器(220)の加熱側入口と接続し、前記粗VAC塔テールガス凝縮器(220)の加熱側出口は冷水出口と接続し、循環水入口は前記粗VAC塔凝縮水冷却器(217)の加熱側入口と接続し、前記粗VAC塔凝縮水冷却器(217)の加熱側出口は前記粗VAC塔凝縮器(213)の加熱側入口と接続し、前記粗VAC塔凝縮器(213)の加熱側出口は循環水出口と接続することを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸ビニルの製造プロセスに関し、特に、高純度製品のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセス及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸ビニルエステル(酢酸ビニル、Vacと略称する)は、分子式CHCOOCH=CHで表される不飽和カルボン酸エステルであり、化学工業において経済価値の高いビニルエステル類化合物である。酢酸ビニルは刺激臭のある無色透明の引火性液体である。様々な有機液体と完全に相溶し、水とは部分的に相溶することができる。空気中での爆発限界は2.65~38%(体積)で、水、メタノール、イソプロパノールと共沸混合物を形成することができる。
【0003】
現在、エチレン法による酢酸ビニルの製造技術は、世界の酢酸ビニル生成の主流エ方法となっている。中国はエチレン、酢酸ビニル、及びこれらの派生化学物質の大消費国であり生産国でもある。中国は長年にわたり、エチレンから酢酸ビニルへの先端な製造技術を習得していない。中国は1970年代に日本からエチレン法による酢酸ビニルの製造技術を導入し、製造装置を構築したが、現段階では、技術水準は国際的な先端技術に遠く及ばず、中国における酢酸ビニルの重要な下流製品であるポリビニルアルコール及び関連産業の開発を制限している。
【0004】
非特許文献1では、ポリビニルアルコールの製造過程における不純物成分は、主に反応物である酢酸ビニルによってもたらされると指摘している。重合反応は不純物に非常に敏感で、微量の不純物の存在でも製品の品質に重大な悪影響を与えることがよくある。エチレン法による酢酸ビニル製品は精製されているが、アセトアルデヒド、酢酸、酢酸メチル、酢酸エチルなどの不純物が依然として含まれている。非特許文献2では、これらの不純物には、重合反応において直接反応に関与するもの、連鎖移動に働くもの、重合阻害に働くものがあることが指摘されている。中でもアセトアルデヒドの阻害係数は非常に高く、アセトアルデヒドの含有量の増加に伴い、ポリビニルアルコールの平均重合度が低下し、アセトアルデヒド、酢酸メチル、酢酸は連鎖移動剤であり、これらの不純物含有量の増加に伴い、ポリビニルアルコールの平均重合度が低下する。なお、アセトアルデヒドのカルボニル基がポリビニルアルコールポリ酢酸ビニル高分子に結合して共役二重結合を形成するが、これがポリビニルアルコール製品の黄変の重要な原因の一つである。酢酸ビニルによってもたらされるアセトアルデヒドに加えて、ポリビニルアルコールの生成反応中にもアセトアルデヒド生成反応が発生し、すなわち、酢酸ビニルと水、酢酸ビニルと溶媒メタノールはいずれも反応してアセトアルデヒドを生成できる。酢酸ビニル製品の中に含まれる微量の水分も酢酸ビニルと反応してアセトアルデヒドを生成できる。
【0005】
ポリビニルアルコールメーカーは、エチレン法による酢酸ビニル中の不純物の含有量を定める。ポリビニルアルコールメーカーは、エチレン法による酢酸ビニル中の不純物の含有量を定める。非特許文献3では高品質酢酸ビニル製品の純度≧99.90%(w)以上、このうち酢酸≦40ppm、アセトアルデヒド≦40ppmであると定めている。非特許文献4では、高品質酢酸ビニル製品の純度≧99.96%(w)以上、このうち酢酸≦50ppm、アセトアルデヒド≦80ppmであると定めている。非特許文献5では、酢酸ビニル製品中の酢酸≦50ppm、アセトアルデヒド≦50ppmであると定めている。
【0006】
特許文献1では、高純度酢酸ビニル分離システムが開示されている。その発明は純度99.90%(w)以上の精製酢酸ビニル製品が得られ、酢酸ビニル製品中の酢酸を20mg/kg以下に、水を150mg/kg以下に制御している。
【0007】
非特許文献6では、上海石油化工股▲フン▼有限公司の従来のBayer法・エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスで得られる酢酸ビニル製品の純度が99.80%(w)であると述べている。
【0008】
なお、エチレン法による酢酸ビニルの製造過程では、原料の1パス転化率が低く、未反応のエチレンを多量に含む混合ガスが圧縮機で加圧されて反応器に戻されて再利用される。原料ガスに含まれる窒素、水素、メタンなどの不活性ガスがプロセス循環ガス中に徐々に蓄積し、反応の正常な進行に影響を与えるのを避けるため、循環ガスの一部をフレア装置に継続的に排出して焼却する必要がある。循環ガスにはエチレンが多く含まれているため、直接焼却すると経済的損失が発生するだけでなく、大量の温室効果ガスが発生して環境を汚染し、企業の環境保全負担が増大する。酢酸ビニル製品中の含水率が厳しく要求され、相分離と脱水の効果を確保するため、原料を冷却する必要があり、現在、工程ではプレート式熱交換器が使用され、循環水により完全対向流で熱交換する。
【0009】
要するに、現段階のエチレン法による酢酸ビニルの製造エ方法には主に次の問題がある。
【0010】
(1)現在、エチレン法による酢酸ビニルのプロセスから排出される3つの廃棄物は大量であり、合成区域から排出される非凝縮性ガスにはエチレンが多く含まれており、直接焼却すると経済的損失が発生するだけでなく、大量の温室効果ガスが発生し、環境を汚染する。
【0011】
(2)現在、既存のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスの製品純度は、各企業が要求する高品質酢酸ビニル製品の純度要件を満たすことが困難である。酢酸、アセトアルデヒドなどの不純物の含有量が高いと、下流製品の生産要件を満たすことができない。酢酸ビニル製品の含水率に対する要求が厳しい。
【0012】
(3)プレート式熱交換器の主な欠点は、漏れが起こりやすいこと、メンテナンスが頻繁であること、密封周辺が長いことである。プレート式熱交換器を頻繁に使用すると、原料が漏れやすくなり、環境汚染のみならず作業停止・生産停止が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】中国特許第ZL 201610553473.3号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】記事《ポリビニルアルコールの製造に対する微量不純物の影響に関する考察》
【文献】書籍《ポリビニルアルコールの製造技術》
【文献】中国石化グループ重慶川維化工有限公司の企業基準Q/SH 1115 104-2018《乙酸ビニルエステル》
【文献】内モンゴル双新環境保護材料有限公司の企業基準Q/NSXHB 3003-2020「工業用酢酸ビニル」
【文献】欧州化学品報告《Joint Assessment of Commodity Chemicals》No.18
【文献】記事《気相エチレン法による酢酸ビニル製造の改良プロセスのシミュレーションと最適化》
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスに関し、特に、高純度製品のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセス及び装置に関する。本発明の目的は、同種の装置では実現しなかった高純度酢酸ビニル製品を得ると共に、3つの廃棄物の排出を削減し、原料の漏洩を防止し、環境を保全する新規高純度製品のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明が採用する技術的手段としては、
エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスであって、
(a)吸収塔気液分離タンクの非凝縮性ガスをエチレン回収膜組立体に送り、膜分離により非凝縮性ガス中のエチレンを回収する工程を含む方法と、
(b)重合禁止剤及び高沸点不純物を含む酢酸ビニルを精製VAC塔に送り、精製VAC塔でサイドカットから抜き出し、高純度VAC製品を得る工程を含む方法と、
(c)酢酸塔の塔頂蒸気と粗VAC塔の塔頂蒸気をそれぞれ、循環水で直列に冷却される塔頂凝縮器と凝縮水冷却器及び冷水で冷却されたテールガス凝縮器を通過した後留出液相分離タンクに入る工程を含む方法と
を包括する。
【0017】
前記方法(a)は、吸収塔気液分離タンク(107)とフレア装置との間にエチレン回収膜組立体(110)を追加することである。
【0018】
前記方法(b)は、精製VAC塔上部の理論段3段目から7段目までの位置にサイドカット流を追加することである。
【0019】
前記方法(c)は、酢酸塔(204)の塔頂と粗VAC塔(210)の塔頂において、それぞれ元の塔頂凝縮器と凝縮水冷却器の各自独立した冷却を循環水による直列冷却の冷却方法に改良することである。
【0020】
エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスの方法(a)を実現する装置であって、エチレン回収膜組立体(110)は、凝集装置と膜設備の2つの部分を含み、吸収塔気液分離タンク(107)の塔頂出口ストリームは2本に分かれ、エチレン回収膜組立体(110)の入口及び精製ガス熱交換器(109)の冷却側入口とそれぞれ接続し、エチレン回収膜組立体(110)の出口はフレア装置の入口及び回収ガス圧縮機(112)の入口とそれぞれ接続する。
【0021】
エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスの方法(b)を実現する装置であって、精製VAC塔(211)の塔頂出口は、精製VAC塔凝縮器(214)の冷却側入口と接続し、精製VAC塔凝縮器(214)の冷却側出口が精製VAC塔凝縮水冷却器(218)の冷却側入口と接続し、精製VAC塔凝縮水冷却器(218)の冷却側出口は精製VAC塔還流タンク(219)と接続し、循環水は精製VAC塔凝縮水冷却器(218)の加熱側入口に流入し、精製VAC塔凝縮水冷却器(218)の加熱側出口は精製VAC塔凝縮器(214)の加熱側入口と接続し、循環水が精製VAC塔凝縮器(214)の加熱側出口から流出し、精製VAC塔(211)側部出口はVAC製品凝縮器(215)の冷却側入口と接続し、VAC製品凝縮器(215)の冷却側出口はVAC製品タンクと接続し、冷水はVAC製品凝縮器(215)の加熱側入口から流入し、VAC製品凝縮器(215)の加熱側出口から流出し、精製VAC塔(211)の釜部出口は酢酸塔(204)の上端の入口と接続する。
【0022】
エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスの方法(c)を実現する装置であって、酢酸塔(204)の塔頂出口は、酢酸塔凝縮器(206)の冷却側入口と接続し、酢酸塔凝縮器(206)の冷却側出口は酢酸塔凝縮水冷却器(208)の冷却側入口及び酢酸塔テールガス凝縮器(209)の冷却側入口とそれぞれ接続し、酢酸塔テールガス凝縮器(209)の冷却側出口は回収ガス圧縮機(112)の入口及び酢酸塔留出液相分離タンク(207)の入口とそれぞれ接続し、酢酸塔凝縮水冷却器(208)の冷却側出口は酢酸塔留出液相分離タンク(207)の入口と接続し、循環水入口は酢酸塔凝縮水冷却器(208)の加熱側入口と接続し、酢酸塔凝縮水冷却器(208)の加熱側出口は酢酸塔凝縮器(206)の加熱側入口と接続し、酢酸塔凝縮器(206)の加熱側出口は循環水出口と接続し、冷水入口は酢酸塔テールガス凝縮器(209)の加熱側入口と接続し、酢酸塔テールガス凝縮器(209)の加熱側出口は冷水出口と接続する。
【0023】
エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスの方法(c)を実現する装置であって、粗VAC塔(210)の塔頂出口及び脱水塔(232)の塔頂出口は、いずれも粗VAC塔凝縮器(213)の冷却側入口と接続し、粗VAC塔凝縮器(213)の冷却側出口はそれぞれ粗VAC塔凝縮水冷却器(217)の冷却側入口及び粗VAC塔テールガス凝縮器(220)の冷却側入口と接続し、粗VAC塔テールガス凝縮器(220)の冷却側出口はそれぞれ回収ガス圧縮機(112)の入口及び粗VAC塔留出液相分離タンク(216)の入口と接続し、粗VAC塔凝縮水冷却器(217)の冷却側出口は粗VAC塔留出液相分離タンク(216)の入口と接続し、冷水入口は粗VAC塔テールガス凝縮器(220)の加熱側入口と接続し、粗VAC塔テールガス凝縮器(220)の加熱側出口は冷水出口と接続し、循環水入口は粗VAC塔凝縮水冷却器(217)の加熱側入口と接続し、粗VAC塔凝縮水冷却器(217)の加熱側出口は粗VAC塔凝縮器(213)の加熱側入口と接続し、粗VAC塔凝縮器(213)の加熱側出口は循環水出口と接続する。
【0024】
本発明のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスは、次のような技術的手段も含み、すなわち、酢酸塔(204)及びアルデヒドエステル濃縮塔(221)の塔底部において、合成・精製システムからの精製ガスを吹き込み、酢酸塔(204)の塔底液の一部は合成区域に送られ、一部が合成・精製システムからの精製ガスと一緒に酢酸塔リボイラー(205)を経て酢酸塔(204)の下部に戻され、アルデヒドエステル濃縮塔(221)の塔底液の一部は抽出精留塔相分離タンク(237)の留出液と一緒に粗VAC塔(210)の塔頂に戻され、一部が合成精製システムからの精製ガスと一緒にアルデヒドエステル濃縮塔リボイラー(223)を経てアルデヒドエステル濃縮塔(221)の下部に戻される。
【0025】
以下、具体的に説明する。
【0026】
(1)酢酸ビニルの合成工程
酢酸ビニルの合成は、主に合成反応及びガス精製の2つの部分から構成される。主にエチレン、酸素及び酢酸を原料として、固定床接触酸化反応により酢酸ビニルを合成し、循環ガスと反応液の分離を完成し、エチレン等の原料ガスの回収・利用を実現し、二酸化炭素等の反応ガス相産物及び不活性ガスを排出し、下流の精留区域に反応液を提供する。
【0027】
新鮮な酢酸が、境界領域外から酢酸蒸発器(116)塔頂に入る。境界領域外からの新鮮なエチレンは、循環ガス圧縮機(118)の出口で循環エチレンと混合される。合成反応器(122)の入口圧力に応じて、新鮮なエチレンの仕込み流量を調整する。新鮮なエチレンと混合された循環ガスは、反応ガス第2冷却器(115)及び合成反応器(122)から排出された反応ガスとの連成熱交換を経て、酢酸蒸発器(116)の釜部に入る。酢酸蒸発器(116)の釜部の酢酸は送り出され、精留区域の酢酸回収ユニットに少量が残渣として排出されることで、蒸留酢酸循環システムでタール等の高沸点不純物の蓄積を防止し、その大部分は酢酸加熱器(117)を経て低圧蒸気で加熱された後、酢酸蒸発器(116)の中部に循環して戻る。酢酸塔(204)の釜部からの高温蒸留酢酸も酢酸蒸発器(116)の中部に入る。酢酸蒸発器(116)の頂部に新鮮な酢酸が注がれ、酢酸蒸発器(116)内で上昇ガス流と向流的に接触させ、蒸発した酢酸の精製が完了する。酢酸蒸発器(116)の頂部では、酢酸で飽和した循環ガスが取り出される。酢酸加熱器(117)の加熱蒸気量を調整することにより、酢酸蒸発器(116)の塔頂温度を設定値に制御することで、循環ガス中の酢酸含有量をプロセスに必要な範囲内に制御する。
【0028】
酢酸蒸発器(116)頂部から排出された酢酸で飽和した循環ガスは、反応ガス第1冷却器(121)に入って合成反応器(122)から排出された反応ガスと連成して熱交換され、昇温後装置運転段階の違いに従い、循環エチレン予熱器(120)を経て中圧蒸気で指定温度まで加熱される。該ガスは、酸素混合器(119)内で酸素と混合され、酸素の添加量を調整することにより循環ガス中の酸素濃度をプロセスに必要な範囲内に制御する。酸素混合器(119)から出てくるガスに霧化された助触媒酢酸カリウム溶液を添加して反応器(122)内で失われた助触媒を補充する。酢酸カリウムを補充した循環ガスは、合成反応器(122)の頂部から酢酸ビニル合成触媒床に入り、触媒反応を行う。合成反応器(122)は、加圧水による熱除去の管型固定床反応器であり、反応原料ガス中のエチレン、酸素及び酢酸が触媒表面で化学反応を行って酢酸ビニルに変換し、一部の副反応が起こる。合成反応器(122)のシェル側は加圧水であり、合成反応器(122)のシェル側での受熱蒸発と反応器の蒸気ドラム内での蒸気と液体の分離に依存して熱サイフォン自然循環を形成する。反応熱を除去する。生成された二次蒸気は、このプロセスで使用するために対応するレベルの蒸気管網に入る。
【0029】
反応後のガスは、合成反応器(122)の底部から排出され、その中に目的産物である酢酸ビニルを含有する以外に、大量の未転化エチレンと酢酸,及び二酸化炭素、水、酸素と窒素等も含有し、凝縮・冷却及び洗浄等の操作により分離する必要がある。
【0030】
反応器(122)から排出された反応ガスは、まず反応ガス第1冷却器(121)及び第2冷却器(115)において循環原料ガスと熱交換を行って反応ガスに同伴する熱を回収する。反応ガス第2冷却器(115)からの反応ガスは第1ガス分離塔(123)に入り、塔頂から排出されたガスが第1ガス分離塔凝縮器(124)及び第1ガス分離塔アフタークーラー(127)で一部凝縮し、未凝縮ガスは第2ガス分離塔(130)へ送られる。凝縮液は、第1ガス分離塔凝縮水冷却器(126)によってさらに冷却された後、第1ガス分離塔相分離タンク(125)に入る。第1ガス分離塔(123)塔頂の凝縮器(124)、テールガス凝縮器(127)及び凝縮水冷却器(126)は、いずれも冷却媒体として循環水を使用する。第1ガス分離塔相分離タンク(125)で分離された後水相受槽(222)及び脱気缶(201)にそれぞれ入る。第1ガス分離塔相分離タンク(125)によって分離された有機相は、第1ガス分離塔(123)の塔頂ガス中に酢酸が含まれないように、第1ガス分離塔(123)の塔頂に返送れる。
【0031】
第1ガス分離塔アフタークーラー(127)から排出されたガスには、大量の凝縮性成分がまだ含まれており、第2ガス分離塔(130)に送入されてさらに分離する必要がある。第2ガス分離塔(130)は上段部と下段部に分かれ、下段部は反応液循環冷却区域、上段部は酢酸洗浄区域である。第2ガス分離塔(130)の塔底液の一部は、反応液として連続的に抜き出されて脱気缶(201)に送られ、残りは第2ガス分離塔第1冷却器(129)及び第2ガス分離塔第2冷却器(128)を順次経由して循環水及び冷水により冷却された後、第2ガス分離塔(130)に戻され、上昇ガスと向流的に接触してその中の大部分の凝縮性成分を凝縮する。酢酸塔(204)の釜部からの蒸留酢酸は、循環エチレン熱交換器(132)及び第2ガス分離塔酢酸冷却器(131)で冷却された後第2ガス分離塔(130)の上段部に入り、塔内の上昇ガスをリンスして、さらにガス中の酢酸ビニルを回収し、第2ガス分離塔(130)の頂部から出てくるガスは、基本的に酢酸ビニル等の凝縮性成分を含まないことを保証する。該ガスは、循環エチレン熱交換器(132)で酢酸塔(204)の釜部からの蒸留酢酸と熱交換した後で精製ガスと合流し、循環ガス圧縮機(118)で圧縮・昇圧された後、一部を側流ガスとして二酸化炭素等の不活性成分を除去し、循環ガス中のエチレン濃度は不活性成分の蓄積により低下せず、合成反応が円滑に進行するようにする。残りの循環ガスは、境界領域外からの新鮮なエチレンと混合した後酢酸蒸発器(116)に循環して戻される。
【0032】
精留区域の脱気缶テールガス凝縮器(203)からのテールガス及び酢酸塔のテールガス、粗VAC塔テールガス、アルデヒドエステル濃縮塔のテールガスは、回収ガス圧縮機ユニット(112)で昇圧された後、循環圧縮機(118)からの側流ガスと混合され、精製ガス熱交換器(109)で精製ガスと熱交換した後洗浄塔(111)に入って洗浄して酸を除去する。回収ガス圧縮機ユニット(112)は、二段液封圧縮機であり、密封作動流体として希酢酸を使用し、補助作動流体として洗浄塔(111)の塔底液を使用し、排出された作動流体は脱気缶(201)に送られる。
【0033】
洗浄塔(111)は3段に分かれ、下段部は循環冷却区域であり、大部分の塔底液は、洗浄塔冷却器(114)で冷却され洗浄塔(111)の下段部に送り返され、循環冷却として使用し、残りは回収ガス圧縮機ユニット(112)の作動流体として送り出され、第2酢酸分離塔酢酸冷却器(131)からの冷精留酢酸は洗浄塔(111)の中段部に入り、上昇ガス中の酢酸ビニル等の凝縮性有機成分を除去し、脱塩水は純水冷却器(113)で冷却された後洗浄塔(111)の塔頂に入り、塔内上昇ガス流をリンスしてその中の酢酸を除去する。
【0034】
洗浄塔(111)の塔頂から排出されたガスは、吸収塔(108)に入り、炭酸カリウム水溶液の化学吸収によりガス中の二酸化炭素を除去して、循環ガス中の二酸化炭素含有量を制御する。吸収塔(108)の塔頂から排出された精製ガスは、吸収塔凝縮器(106)で凝縮された後吸収塔気液分離タンク(107)に入る。該タンク内の凝縮液は、脱着塔(103)の釜部に入り、循環システム内の窒素等の不活性成分の含有量を制御するため、非凝縮性ガスの一部をエチレン回収膜組立体(110)に送り、回収されたエチレンは回収ガス圧縮機ユニット(112)に戻され、排出されたテールガスがフレア装置に送られて焼却処理する。残りの非凝縮性ガスが精製ガス熱交換器(109)に送られて側流ガス及び回収ガスと熱交換する。加熱後の精製ガスの大部分は、循環ガスと混合した後循環ガス圧縮機(118)に入り、一部はエチレン回収膜組立体(110)のテールガスと直接混合して、フレア装置に送られて焼却することで、循環ガス中のエタン含有量を制御し、もう一部は精留区域の酢酸塔(204)及びアルデヒドエステル濃縮塔(221)に送られる。
【0035】
吸収塔(108)の釜部から排出された吸収液(リッチ液)は、リーン・リッチ液熱交換器(104)でリーン液と熱交換した後脱着塔(103)の仕込みフラッシュ蒸発缶に入り、減圧・フラッシュ蒸発を経たエチレン含有ガスは脱気缶(201)に送られ、フラッシュ蒸発後の液相は脱着塔(103)に入り、減圧・昇温により重炭酸カリウムを分解させ、二酸化炭素を放出する。排出された水分を含む二酸化炭素ガスは、脱着塔凝縮器(102)で凝縮された後脱着塔気液分離タンク(101)に入り、気相二酸化炭素が境界領域外に連続的に排出され、凝縮液が吸収塔(108)に送られ、脱着塔(103)の釜部から排出された炭酸カリウム溶液(リーン液)は吸収液循環ポンプにより送り出される。リーン・リッチ液熱交換器(104)でリッチ液と熱交換してからカリウムアルカリ液冷却器(105)で冷却された後吸収塔(108)の塔頂に入って、精製ガス中の二酸化炭素の含有量を制御する。
【0036】
(2) 酢酸ビニルの精製工程
酢酸ビニルの精製には、主に合成反応液及び酢酸蒸発器(116)の塔底液の処理が含まれる。合成区域からの原料には、酢酸ビニル、酢酸、水及びその他の低沸点・高沸点の不純物が含まれる。精留方法によりその中の酢酸を分離して合成区域の循環使用に供し、酢酸ビニルを高純度製品要件に合わせて精製して、装置の製品外部販売又は自社使用とし、分離された高沸点廃液及び低沸点廃液を境界領域外に送って焼却処理する。
【0037】
酢酸ビニルの第1(123)及び第2ガス分離塔(130)の釜部からの反応液、回収されたガス圧縮機ユニット(112)の封液、第1ガス分離塔相分離タンク(125)の水相の一部及び精留区域の酢酸回収塔(243)で回収された酢酸は、脱気缶(201)に入る。
【0038】
脱気缶(201)から出た気相は、脱気缶凝縮器(202)及び脱気缶テールガス凝縮器(203)で凝縮された後、凝縮液は脱気缶(201)に戻り、気相は合成区域の回収ガス圧縮機(112)に送られる。脱気後の反応液は酢酸塔(204)に送られて仕込む。
【0039】
酢酸塔(204)において、酢酸ビニルと水との共沸作用により酢酸ビニルと酢酸との分離を実現する。釜部では酢酸ビニル等の軽質成分を含まない酢酸が得られ、精留酢酸として精留酢酸ポンプにより合成区域に返送され、酢酸蒸発器(116)の仕込みと第2ガス分離塔(130)及び洗浄塔(111)のリンス用酢酸に使用される。
【0040】
酢酸塔(204)の塔頂蒸留液は、共沸組成に近い酢酸ビニルと水の混合物であり、酢酸塔凝縮器(206)及び酢酸塔テールガス凝縮器(209)で凝縮された後、テールガスは精留区域の各塔排出されたエチレン含有テールガスと一緒に合成区域の回収ガス圧縮機ユニット(112)に戻される。凝縮液は、酢酸塔凝縮水冷却器(208)でさらに冷却された後酢酸塔留出液相分離タンク(207)に入り、テールガス凝縮器(209)の凝縮液も酢酸塔留出液相分離タンク(207)に入り、分離された水相は水相受槽(222)に流れ、油相の一部は還流され、残りは粗VAC塔(210)に送られて仕込む。塔頂凝縮器(206)及び凝縮水冷却器(208)はどちらも冷却媒体として同じ循環水を使用する。酢酸塔(204)中の酢酸エチル濃縮領域から一部の液相原料を抜き出して、抽出精留塔(231)に送って酢酸エチルを分離し、サイドカット原料中の酢酸ビニル及び酢酸を回収する。なお、合成精製システムからの精製ガスを塔底から吹き込み、重合を抑制する。
【0041】
粗VAC塔(210)において、軽質不純物を除去しながら、酢酸ビニルと水の共沸作用を利用して粗VACに含まれる水分を除去し、釜部で水を含まない酢酸ビニルを得、精製VAC塔(211)に送って仕込む。粗VAC塔(210)の塔頂蒸気は、粗VAC塔凝縮器(213)及び粗VAC塔テールガス凝縮器(220)で凝縮された後、テールガスは各塔のエチレン含有テールガスと合流した後、回収ガス圧縮機ユニット(112)に送られる。凝縮液は、粗VAC塔凝縮水冷却器(217)でさらに冷却された後粗VAC塔留出液相分離タンク(219)に入り、テールガス凝縮器の凝縮液も粗VAC塔留出液相分離タンク(219)に入り、分離された水相は水相受槽(222)に流れ、油相の一部が還流し、残りはアルデヒドエステル濃縮塔(221)に送られ軽質不純物を濃縮する。塔頂凝縮器(213)及び凝縮水冷却器(217)はどちらも冷却媒体として同じ循環水を使用する。
【0042】
精製VAC塔(211)において、塔底液は重合禁止剤及び高沸点不純物を含む酢酸ビニルであり、酢酸塔(204)に送られて仕込む。塔頂で高純度酢酸ビニル製品を蒸留する。精製VAC塔(211)の塔頂で蒸留された精製VAC蒸気は、精製VAC塔凝縮器(214)及び精製VAC塔凝縮水冷却器(218)で凝縮冷却された後精製VAC塔還流タンク(219)に入り、一部が還流し、一部が酢酸塔(204)に入る。精製VAC塔(211)のサイドカットは、凝縮器(215)で冷却された後VAC製品領域に送られる。塔頂凝縮器(214)及び凝縮水冷却器(218)は、どちらも冷却媒体として同じ循環水を使用する。
【0043】
酢酸塔(204)のサイドカットから抜き出された酢酸エチル成分に富んだストリームは、抽出精留塔(231)の中部に入る。酢酸を抽出剤として抽出精留塔(231)の上部に加え、酢酸と酢酸ビニル中の微量酢酸エチルとの強い相互作用を利用して、抽出精留技術により酢酸ビニルと酢酸エチルの分離を実現する。
【0044】
抽出精留塔(231)の釜部では酢酸エチルに富んだ酢酸が得られ、酢酸エチル塔(239)に送られる。抽出精留塔(231)の塔頂で酢酸エチルを除去した酢酸ビニルと水の共沸混合物蒸気を得て抽出蒸留塔凝縮器(235)及び抽出蒸留塔凝縮水冷却器(236)で凝縮冷却させた後抽出蒸留塔相分離タンク(237)に入り、分離された水相が水相受槽(222)に流れ、油相の一部が還流し、残りは回収酢酸ビニルとして粗VAC塔(210)に戻されて仕込む。塔頂凝縮器(235)及び凝縮水冷却器(236)は、どちらも冷却媒体として同じ循環水を使用する。
【0045】
酢酸エチル塔(239)において、酢酸エチルと酢酸の分離を行う。釜部で酢酸エチルを除去した水分を含む酢酸が得られ、一部は抽出剤として抽出精留塔(231)の上段部に戻され、残りは酢酸塔(204)に返送して仕込む。酢酸エチル塔(239)の塔頂から蒸発する酢酸エチルに富んだ蒸気は、酢酸エチル塔凝縮器(240)及び酢酸エチル塔凝縮水冷却器(244)で凝縮冷却された後酢酸エチル塔相分離タンク(241)に入り、分離された水相が酢酸エチル塔還流タンク(242)に入り、全て還流され、油相が抜き出され、境界領域外に送られて焼却する。塔頂凝縮器(240)及び凝縮水冷却器(244)は、どちらも冷却媒体として同じ循環水を使用する。
【0046】
アルデヒドエステル濃縮塔(221)は、加圧の操作を用い、釜部のVACに富んだ原料が粗VAC塔(210)の塔頂に返送されて仕込む。アルデヒドエステル濃縮塔(221)の塔頂ガスは、アルデヒドエステル濃縮塔凝縮器(224)で凝縮された後、テールガスが各塔のエチレンを含むテールガスと合流した後、回収ガス圧縮機ユニット(112)に送られる。凝縮液は、還流タンクを通過して、一部が還流され、一部が抜き出されてアセトアルデヒド塔(226)に送って仕込む。
【0047】
アセトアルデヒド塔(226)の塔底液は、低沸点廃液として境界領域外に送られて焼却される。アセトアルデヒド塔(226)の塔頂ガスは、塔頂凝縮器(229)で凝縮された後、還流タンク(230)に入り、一部が還流され、一部が副製品であるアセトアルデヒドとしてタンク領域に送られる。
【0048】
第1ガス分離塔相分離タンク(125)、酢酸塔留出液相分離タンク(207)、粗VAC塔留出液相分離タンク(216)、抽出蒸留塔相分離タンク(237)で得られた水相は、水相受槽(222)に入り、脱水塔仕込液予熱器(227)を経て脱水塔底液と熱交換した後、脱水塔(232)に入る。塔頂で水分を含む酢酸ビニル蒸気を得て、粗VAC塔凝縮器(213)に送られて凝縮する。釜部のプロセス廃水は、脱水塔仕込液予熱器(227)によって熱を回した後汚水処理に送られる。
【0049】
合成区域酢酸蒸発器(116)から排出されたタール含有酢酸は、酢酸回収塔仕込みタンク(238)に入り、フラッシュ蒸発するエチレン含有ガスは脱気缶(201)に送られ、残液は酢酸回収塔(243)に入る。
【0050】
酢酸回収塔(243)において、減圧蒸留操作を用い、塔頂で酢酸蒸気を得て、酢酸回収凝縮器(245)で凝縮された後酢酸回収塔還流タンク(246)に入り、一部は還流され、残りは回収酢酸として脱気缶(201)に送られる。釜部の高沸点廃液は境界領域外へ送り出される。
【0051】
このプロセス装置において、酢酸ビニルに富んだストリーム及び装置中に重合禁止剤を添加して酢酸ビニルの自己重合を防止する。
【0052】
この装置領域において、各中圧及び低圧蒸気ユーザーによって発生された蒸気凝縮水は、蒸気凝縮水フラッシュ蒸発缶に入り、0.1MPaの圧力の下でフラッシュ蒸発する。二次蒸気は、粗VAC塔及びアルデヒドエステル濃縮塔の加熱の熱源として使用され、不足分は低圧蒸気で補われ、フラッシュ蒸発後の凝縮水は凝縮水フラッシュ蒸発缶出料ポンプによって送り出され、蒸気ドラム補給水熱交換器は一部の熱を回収し、或いは該熱交換器は低圧凝縮水タンクに直接入るチャネルとしてのみ使用される。
【0053】
低圧凝縮水タンクに入り減圧の下で操作し、発生した二次蒸気は精製VAC塔リボイラーの加熱の熱源として使用され、不足分は低圧蒸気で補われる。熱交換後に発生した凝縮水は、凝縮水タンクに入ってから低圧凝縮水タンクに返送される。
【0054】
低圧凝縮水タンク内の凝縮水は、低圧凝縮水ポンプにより送り出され、一部は蒸気ドラムの補給水として脱気器に送られ、残りは境界領域外に送り出される。
【0055】
本発明の利点及び有利な効果は、次の通りである。
【0056】
1、本発明に係る新規高純度製品のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスは、吸収塔気液分離タンクとフレア装置との間に凝集装置と膜設備の2つ部分を含むエチレン回収膜組立体を増設するという利点を有する。エチレン回収膜組立体は、循環システム中の窒素等の不活性成分の含有量を制御し、非凝縮性ガス中のエチレンガスを回収し、非凝縮性ガス中で焼却に直接送られる原料エチレンのロスを低減する。エチレン回収膜組立体を用いることで、排出ガスから大部分のエチレンを回収でき、エチレンの回収率は58%以上に達することができ、3つの廃棄物の排出を削減し、環境を保全する。同時に、膜組立体内の凝集装置には2つの作用があり、1つはガスが下から上に流れることであり、凝集装置内のデミスターはストリーム中の水分が膜装置に侵入するのを防ぐことができる。2つ目は、凝集装置から出るパイプラインにガスを3~5℃に過熱して膜に入るための加熱として使用する電気ヒートトレースがあるため、飽和ガスが膜装置に直接接触して凝縮することを避ける。
【0057】
2、本発明に係る新規高純度製品のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスは、精製VAC塔の上部理論段3段目から7段目までの位置にサイドカット流を追加し、純度99.98%を超える酢酸ビニル製品が得られ、酢酸の質量分率≦20ppm、アセトアルデヒドの質量分率≦20ppm、水の質量分率≦100ppmとなるという利点を有する。
【0058】
3、本発明に係る新規高純度製品のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスは、酢酸ビニル合成及び精製工程中で、いずれも循環水直列冷却塔頂凝縮器と凝縮水冷却器及び冷水並列冷却テールガス凝縮器の冷却方式を用い、循環水冷却能力のカスケード使用熱交換プロセスを実現し、エネルギーを節約すると共にプレート熱交換器の使用によって引き起こされる原料漏れなどの問題を避け、熱交換器の体積を縮小するという利点を有する。
【0059】
4、本発明に係る新規高純度製品のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスは、合成・精製システムからの精製ガスを酢酸塔及びアルデヒドエステル濃縮塔の塔底部から吹き込むことで、重合を抑制できるという利点を有する。
【0060】
5、本発明に係る新規高純度製品のエチレン法による酢酸ビニルの製造プロセスは、装置領域内の各中圧及び低圧蒸気ユーザーによって発生された蒸気凝縮水が一定の圧力下でフラッシュ蒸発され、得られた二次蒸気が粗VAC塔及びアルデヒドエステル濃縮塔の加熱の熱源として使用され、フラッシュ蒸発後の凝縮水及び二次蒸気凝縮水を再度減圧フラッシュ蒸発して、発生した二次蒸気は精製VAC塔の加熱の熱源として使用される。熱交換後に発生する凝縮水は、脱気器に送られて反応器汽蒸気ドラムの補給水とするという利点を有する。上記の措置は、システムの蒸気消費量を効果的に削減し、製造コストが削減される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明の省エネ高純度製品のエチレン法による酢酸ビニル合成プロセス及び装置のフローチャートである。
図2】本発明の省エネ高純度製品のエチレン法による酢酸ビニル精製プロセス及び装置のフローチャートである。
図3】エチレン回収膜組立体にけるプロセス及び装置のフローチャートである。
図4】精製VAC塔におけるプロセス及び装置のフローチャートである。
図5】酢酸塔及び粗VAC塔におけるプロセス及び装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、添付の図面を参照しつつ具体的実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例はあくまで例示であり、本発明の保護範囲に対する限定と理解してはいけない。
【0063】
以下、具体的な実施例を挙げて本出願の方法の具体的な実施過程を説明する。
【実施例
【0064】
図1の本発明の省エネ高純度製品のエチレン法による酢酸ビニル合成プロセス及び装置のフローチャートに示すように、原料酢酸の仕込み量は179000kg/hである。新鮮な酢酸が、境界領域外から酢酸蒸発器116の塔頂に入る。境界領域外からの新鮮なエチレンは、仕込み量が8700kg/hであり、循環ガス圧縮機118の出口で循環エチレンと混合される。新鮮なエチレンと混合された循環ガスは、反応ガス第2冷却器115及び合成反応器122から排出された反応ガスとの連成熱交換を経た後、酢酸蒸発器116の釜部に入る。酢酸蒸発器116の釜部の酢酸は送り出され、少量が残渣として精留区域の酢酸回収ユニットに排出され、その大部分は酢酸加熱器117を経て低圧蒸気で加熱された後、酢酸蒸発器116の中部に循環して戻る。酢酸塔204の釜部からの高温蒸留酢酸も酢酸蒸発器116の中部に入る。酢酸蒸発器116の頂部に新鮮な酢酸が注がれる。酢酸蒸発器116の頂部では、酢酸で飽和した循環ガスが取り出される。酢酸蒸発器116の塔頂温度は123℃、塔底温度は109℃、運転圧力は0.85MPaである。
【0065】
酢酸蒸発器116頂部から排出された酢酸で飽和した循環ガスは、反応ガス第1冷却器121に入って合成反応器122から排出された反応ガスと連成して熱交換され、循環エチレン予熱器120で指定温度まで加熱される。該ガスは、酸素混合器119内で酸素と混合される。酸素混合器119から出てくるガスに霧化された助触媒酢酸カリウム溶液を添加し、合成反応器122の頂部から酢酸ビニル合成触媒床に入る。酸素混合器119の入口温度は156℃、出口温度は155℃、運転圧力は0.83MPaである。合成反応器122の入口温度は155℃、出口温度は160℃、運転圧力は0.80MPaである。
【0066】
反応後のガスは、合成反応器122の底部から排出される。反応器122から排出された反応ガスは、まず反応ガス第1冷却器121及び第2冷却器115において循環原料ガスと熱交換を行う。反応ガス第2冷却器115からの反応ガスは第1ガス分離塔123に入り、塔頂から排出されたガスが第1ガス分離塔凝縮器124及び第1ガス分離塔アフタークーラー127で一部凝縮し、未凝縮ガスは第2ガス分離塔130へ送られる。凝縮液は、第1ガス分離塔凝縮水冷却器126によってさらに冷却された後、第1ガス分離塔相分離タンク125に入る。第1ガス分離塔相分離タンク125で分離された後水相受槽222及び脱気缶201にそれぞれ入る。第1ガス分離塔相分離タンク125によって分離された有機相は、第1ガス分離塔123の塔頂に返送される。第1ガス分離塔123の塔頂温度は、81℃、塔底温度は115℃、運転圧力は0.65MPaである。
【0067】
第1ガス分離塔アフタークーラー127から排出されたガスは、第2ガス分離塔130に送入される。第2ガス分離塔130の塔底液の一部は、反応液として連続的に抜き出されて脱気缶201に送られ、残りは第2ガス分離塔第1冷却器129及び第2ガス分離塔第2冷却器128を順次経由して冷却された後、第2ガス分離塔130に戻される。酢酸塔204の釜部からの蒸留酢酸は、循環エチレン熱交換器132及び第2ガス分離塔酢酸冷却器131で冷却された後第2ガス分離塔130の上段部に入る。該ガスは、循環エチレン熱交換器132で酢酸塔204の釜部からの蒸留酢酸と熱交換した後で精製ガスと合流し、循環ガス圧縮機118で圧縮・昇圧された後、一部を側流ガスとして二酸化炭素等の不活性成分を除去する。残りの循環ガスは、境界領域外からの新鮮なエチレンと混合した後酢酸蒸発器116に循環して戻される。第2ガス分離塔130の塔頂温度は、30℃、塔底温度は48℃、運転圧力は0.59MPaである。
【0068】
精留区域の脱気缶テールガス凝縮器203からのテールガス及び酢酸塔のテールガス、粗VAC塔テールガス、アルデヒドエステル濃縮塔のテールガスは、回収ガス圧縮機ユニット112で昇圧された後、循環圧縮機118からの側流ガスと混合され、精製ガス熱交換器109で精製ガスと熱交換した後洗浄塔111に入って水洗して酸を除去する。洗浄塔111の大部分の塔底液は、洗浄塔冷却器114で冷却され洗浄塔111の下段部に送り返され、循環冷却として使用し、残りは回収ガス圧縮機ユニット112の作動流体として送り出され、第2酢酸分離塔酢酸冷却器131からの冷精留酢酸は洗浄塔111の中段部に入り、脱塩水は純水冷却器113で冷却された後洗浄塔111の塔頂に入る。洗浄塔111の塔頂温度は、35℃、塔底温度は43℃、運転圧力は0.82MPaである。
【0069】
洗浄塔111の塔頂から排出されたガスは、吸収塔108に入る。吸収塔108の塔頂から排出された精製ガスは、吸収塔凝縮器106で凝縮された後吸収塔気液分離タンク107に入る。該タンク内の凝縮液は、脱着塔103の釜部に入る。図3のエチレン回収膜組立体にけるプロセス及び装置のフローチャートに示すように、非凝縮性ガスの一部をエチレン回収膜組立体110に送り、回収されたエチレンは回収ガス圧縮機ユニット112に戻され、排出されたテールガスがフレア装置に送られて焼却処理する。残りの非凝縮性ガスが精製ガス熱交換器109に送られる。加熱後の精製ガスの大部分は、循環ガスと混合した後循環ガス圧縮機118に入り、一部はエチレン回収膜組立体110のテールガスと直接混合して、フレア装置に送られて焼却し、もう一部は精留区域の酢酸塔204及びアルデヒドエステル濃縮塔221に送られる。吸収塔108の塔頂温度は、75℃、塔底温度は80℃、運転圧力は0.82MPaである。
【0070】
吸収塔108の釜部から排出された吸収液は、リーン・リッチ液熱交換器104でリーン液と熱交換した後脱着塔103の仕込みフラッシュ蒸発缶に入り、減圧・フラッシュ蒸発を経たエチレン含有ガスは脱気缶201に送られ、フラッシュ蒸発後の液相は脱着塔103に入る。排出された水分を含む二酸化炭素ガスは、脱着塔凝縮器102で凝縮された後脱着塔気液分離タンク101に入り、気相二酸化炭素が境界領域外に連続的排出され、凝縮液が吸収塔108に送られ、脱着塔103の釜部から排出された炭酸カリウム溶液は吸収液循環ポンプにより送り出される。リーン・リッチ液熱交換器104でリッチ液と熱交換してからカリウムアルカリ液冷却器105で冷却された後吸収塔108の塔頂に入る。脱着塔103の塔頂温度は、105℃、塔底温度は115℃、運転圧力は0.05MPaである。
【0071】
図2の本発明の省エネ高純度製品のエチレン法による酢酸ビニル精製プロセス及び装置のフローチャートに示すように、酢酸ビニルの第123及び第2ガス分離塔130の釜部からの反応液、回収されたガス圧縮機ユニット112の封液、第1ガス分離塔相分離タンク125の水相の一部及び精留区域の酢酸回収塔243で回収された酢酸は、脱気缶201に入る。脱気缶201から出た気相は、脱気缶凝縮器202及び脱気缶テールガス凝縮器203で凝縮された後、凝縮液は脱気缶201に戻り、気相は合成区域の回収ガス圧縮機112に送られる。脱気後の反応液は酢酸塔204に送られて仕込む。
【0072】
図5の酢酸塔及び粗VAC塔におけるプロセス及び装置のフローチャートに示すように、酢酸塔204の釜部では酢酸ビニル等の軽質成分を含まない酢酸が得られ、精留酢酸として精留酢酸ポンプにより合成区域に返送され、酢酸蒸発器116の仕込みと第2ガス分離塔130及び洗浄塔111のリンス用酢酸に使用される。酢酸塔204の塔頂蒸留液は、酢酸塔凝縮器206及び酢酸塔テールガス凝縮器209で凝縮された後、テールガスは精留区域の各塔排出されたエチレン含有テールガスと一緒に合成区域の回収ガス圧縮機ユニット112に戻される。凝縮液は、酢酸塔凝縮水冷却器208でさらに冷却された後酢酸塔留出液相分離タンク207に入り、テールガス凝縮器209の凝縮液も酢酸塔留出液相分離タンク207に入り、分離された水相は水相受槽222に流れ、油相の一部は還流され、残りは粗VAC塔210に送られて仕込む。酢酸塔204中の酢酸エチル濃縮領域から一部の液相原料を抜き出して、抽出精留塔231に送って酢酸エチルを分離し、サイドカット原料中の酢酸ビニル及び酢酸を回収する。酢酸塔204の塔頂温度は、69℃、塔底温度は125℃、運転圧力は0.011MPaである。
【0073】
図5の酢酸塔及び粗VAC塔におけるプロセス及び装置のフローチャートに示すように、粗VAC塔210の釜部で水を含まない酢酸ビニルを得、精製VAC塔211に送って仕込む。粗VAC塔210の塔頂蒸気は、粗VAC塔凝縮器213及び粗VAC塔テールガス凝縮器220で凝縮された後、テールガスは各塔のエチレン含有テールガスと合流した後、回収ガス圧縮機ユニット112に送られる。凝縮液は、粗VAC塔凝縮水冷却器217でさらに冷却された後粗VAC塔留出液相分離タンク219に入り、テールガス凝縮器の凝縮液も粗VAC塔留出液相分離タンク219に入り、分離された水相は水相受槽222に流れ、油相の一部が還流し、残りはアルデヒドエステル濃縮塔221に送られ軽質不純物を濃縮する。粗VAC塔210の塔頂温度は、70.7℃、塔底温度は81℃、運転圧力は0.011MPaである。
【0074】
図4の精製VAC塔におけるプロセス及び装置のフローチャートに示すように、精製VAC塔211の塔底液は重合禁止剤及び高沸点不純物を含む酢酸ビニルであり、酢酸塔204に送られて仕込む。塔頂で高純度酢酸ビニル製品を蒸留する。精製VAC塔211の塔頂で蒸留された精製VAC蒸気は、精製VAC塔凝縮器214及び精製VAC塔凝縮水冷却器218で凝縮冷却された後精製VAC塔還流タンク219に入り、一部が還流し、一部が酢酸塔204に入る。精製VAC塔211のサイドカットは、凝縮器215で冷却された後VAC製品領域に送られる。精製VAC塔211の塔頂温度は、73℃、塔底温度は74℃、運転圧力は0.003MPaである。
【0075】
酢酸塔204のサイドカットから抜き出された酢酸エチル成分に富んだストリームは、抽出精留塔231の中部に入る。酢酸を抽出剤として抽出精留塔231の上部に加える。抽出精留塔231の釜部では酢酸エチルに富んだ酢酸が得られ、酢酸エチル塔239に送られる。抽出精留塔231の塔頂で酢酸エチルを除去した酢酸ビニルと水の共沸混合物蒸気を得て抽出蒸留塔凝縮器235及び抽出蒸留塔凝縮水冷却器236で凝縮冷却させた後抽出蒸留塔相分離タンク237に入り、分離された水相が水相受槽222に流れ、油相の一部が還流し、残りは回収酢酸ビニルとして粗VAC塔210に戻されて仕込む。抽出精留塔231の塔頂温度は、68℃、塔底温度は109℃、運転圧力は0.011MPaである。
【0076】
酢酸エチル塔239の釜部で酢酸エチルを除去した水分を含む酢酸が得られ、一部は抽出剤として抽出精留塔231の上段部に戻され、残りは酢酸塔204に返送して仕込む。酢酸エチル塔239の塔頂から蒸発する酢酸エチルに富んだ蒸気は、酢酸エチル塔凝縮器240及び酢酸エチル塔凝縮水冷却器244で凝縮冷却された後酢酸エチル塔相分離タンク241に入り、分離された水相が酢酸エチル塔還流タンク242に入り、全て還流され、油相が抜き出され、境界領域外に送られて焼却する。酢酸エチル塔239の塔頂温度は、100℃、塔底温度は110℃、運転圧力は0.011MPaである。
【0077】
アルデヒドエステル濃縮塔221の釜部のVACに富んだ原料が粗VAC塔210の塔頂に返送されて仕込み、塔頂ガスは、アルデヒドエステル濃縮塔凝縮器224で凝縮された後、テールガスが各塔のエチレンを含むテールガスと合流した後、回収ガス圧縮機ユニット112に送られる。凝縮液は、還流タンクを通過して、一部が還流され、一部が抜き出されてアセトアルデヒド塔226に送って仕込む。アルデヒドエステル濃縮塔221の塔頂温度は、38.8℃、塔底温度は81.3℃、運転圧力は0.055MPaである。
【0078】
アセトアルデヒド塔226の塔底液は、低沸点廃液として境界領域外に送られて焼却され、塔頂ガスは塔頂凝縮器229で凝縮された後、還流タンク230に入り、一部が還流され、一部が副製品であるアセトアルデヒドとしてタンク領域に送られる。アセトアルデヒド塔226の塔頂温度は、23.6℃、塔底温度は58℃、運転圧力は0.011MPaである。
【0079】
第1ガス分離塔相分離タンク125、酢酸塔留出液相分離タンク207、粗VAC塔留出液相分離タンク216、抽出蒸留塔相分離タンク237で得られた水相は、水相受槽222に入り、脱水塔仕込液予熱器227を経て脱水塔底液と熱交換した後、脱水塔232に入る。塔頂で水分を含む酢酸ビニル蒸気を得て、粗VAC塔凝縮器213に送られて凝縮する。釜部のプロセス廃水は、脱水塔仕込液予熱器227によって熱を回した後汚水処理に送られる。脱水塔232の塔頂温度は、90℃、塔底温度は103℃、運転圧力は0.011MPaである。
【0080】
合成区域酢酸蒸発器116から排出されたタール含有酢酸は、酢酸回収塔仕込みタンク238に入り、フラッシュ蒸発するエチレン含有ガスは脱気缶201に送られ、残液は酢酸回収塔243に入る。酢酸回収塔243の塔頂で酢酸蒸気を得て、酢酸回収凝縮器245で凝縮された後酢酸回収塔還流タンク246に入り、一部は還流され、残りは回収酢酸として脱気缶201に送られる。釜部の高沸点廃液は境界領域外へ送り出される。酢酸回収塔243の塔頂温度は、89.6℃、塔底温度は102.5℃、運転圧力は0.011MPaである。
【0081】
本実施例は、現段階のエチレン法により酢酸ビニルプロセスにおける次のような主な問題を最終的に解決した。
【0082】
(1)エチレン回収膜組立体を用いることで、排出ガスから大部分のエチレンを回収でき、エチレンの回収率は58%以上に達することができ、3つの廃棄物の排出を削減し、環境を保全する。
【0083】
(2)精製VAC塔のサイドカットは、冷却された後質量分数99.98%の酢酸ビニル製品が得られ、酢酸の質量分数≦20ppm、アセトアルデヒドの質量分数≦20ppm、水の質量分数≦100ppmとなる。
【0084】
(3)酢酸ビニル合成及び精製工程中で、いずれも循環水直列冷却塔頂凝縮器と凝縮水冷却器及び冷水並列冷却テールガス凝縮器の冷却方式を用い、循環水冷却能力のカスケード使用熱交換プロセスを実現し、エネルギーを節約すると共にプレート熱交換器の使用によって引き起こされる原料漏れなどの問題を避け、熱交換器の体積を縮小する。
【0085】
特定の実施形態及び図面を参照しつつ本発明を説明してきたが、本発明は、本明細書に記載された特定の形態に限定されることは意図されていない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。なお、個別の特徴は異なる請求項に含まれることができるが、これらの特徴は有利に組み合わされることができ、かつ異なる請求項に含まれることは、特徴の組み合わせが実現可能ではない、及び/又は有利ではないことを意味するものではない。「第1」、「第2」などの引用は、複数複数形を排除するものではない。
【符号の説明】
【0086】
101 脱着塔気液分離タンク
102 脱着塔凝縮器
103 脱着塔
104 リーン・リッチ液熱交換器
105 カリウムアルカリ液冷却器
106 吸収塔凝縮器
107 吸収塔気液分離タンク
108 吸収塔
109 精製ガス熱交換器
110 エチレン回収膜組立体
111 洗浄塔
112 回収ガス圧縮機
113 純水冷却器
114 洗浄塔冷却器
115 反応ガス第2冷却器
116 酢酸蒸発器
117 酢酸加熱器
118 循環ガス圧縮機
119 酸素混合器
120 循環エチレン予熱器
121 反応ガス第1冷却器
122 合成反応器
123 第1ガス分離塔
124 第1ガス分離塔凝縮器
125 第1ガス分離塔相分離タンク
126 第1ガス分離塔凝縮水冷却器
127 第1ガス分離塔アフタークーラー
128 第2ガス分離塔第2冷却器
129 第2ガス分離塔第1冷却器
130 第2ガス分離塔
131 第2ガス分離塔酢酸冷却器
132 循環エチレン熱交換器
201 脱気缶
202 脱気缶凝縮器
203 脱気缶テールガス凝縮器
204 酢酸塔
205 酢酸塔リボイラー
206 酢酸塔凝縮器
207 酢酸塔留出液相分離タンク
208 酢酸塔凝縮水冷却器
209 酢酸塔テールガス凝縮器
210 粗VAC塔
211 精製VAC塔
212 粗VAC塔リボイラー
213 粗VAC塔凝縮器
214 精製VAC塔凝縮器
215 VAC製品凝縮器
216 粗VAC塔留出液相分離
217 粗VAC塔凝縮水冷却器
218 精製VAC塔凝縮水冷却器
219 精製VAC塔還流タンク
220 粗VAC塔テールガス凝縮器
221 アルデヒドエステル濃縮塔
222 水相受槽
223 アルデヒドエステル濃縮塔リボイラー
224 アルデヒドエステル濃縮塔凝縮器
225 アルデヒドエステル濃縮塔還流タンク
226 アセトアルデヒド塔
227 脱水塔仕込液予熱器
228 アセトアルデヒド塔リボイラー
229 アセトアルデヒド塔凝縮器
230 アセトアルデヒド塔還流タンク
231 抽出精留塔
232 脱水塔
233 抽出精留塔リボイラー
234 脱水塔リボイラー
235 抽出精留塔凝縮器
236 抽出精留塔凝縮水冷却器
237 抽出精留塔相分離タンク
238 酢酸回収塔仕込みタンク
239 酢酸エチル塔
240 酢酸エチル塔凝縮器
241 酢酸エチル塔相分離タンク
242 酢酸エチル塔還流タンク
243 酢酸回収塔
244 酢酸エチル塔凝縮水冷却器
245 酢酸回収凝縮器
246 酢酸回収塔還流タンク
301冷水出
302循環水出
303循環水入
304新鮮なエチレン
305二酸化炭素を境界領域外に送り出す
306冷水入
307脱塩水
308VAC製品
309低点廃液を境界領域外に送り出す
310高沸点廃液を境界領域外に送り出す
311 アセトアルデヒド製品
312廃水処理
【要約】      (修正有)
【課題】エチレン法による酢酸ビニルの製造プロセス及び装置を提供する。
【解決手段】酢酸ビニル合成区域でエチレン膜回収組立体を増設することにより、循環システム中の窒素等の不活性成分の含有量を制御し、非凝縮性ガス中のエチレンガスを回収し、エチレンの回収率は58%以上に達する。酢酸ビニル精製区域の精製VAC塔でサイドカットを追加し、純度99.98%を超える酢酸ビニル製品が得られ、酢酸の質量分率≦20ppm、アセトアルデヒドの質量分率≦20ppm、水の質量分率≦100ppmとなる。酢酸ビニル合成及び精製工程中で、循環水直列冷却塔頂凝縮器と凝縮水冷却器及び冷水並列冷却テールガス凝縮器の冷却方式を用い、循環水冷却能力のカスケード使用熱交換プロセスを実現する。合成・精製システムからの精製ガスを酢酸塔及びアルデヒドエステル濃縮塔の塔底部から吹き込むことにより、重合を抑制でき、かつ一定の防食効果を奏する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5