(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】電池セルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/105 20210101AFI20240513BHJP
【FI】
H01M50/105
(21)【出願番号】P 2022529912
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(86)【国際出願番号】 KR2021009485
(87)【国際公開番号】W WO2022065652
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0122722
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ハンジュネ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・オ・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ジュネ・チ
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-031829(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0103473(KR,A)
【文献】特開2002-260600(JP,A)
【文献】登録実用新案第3070035(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段差部、および陥没形成されたフォーミング部を含み、前記フォーミング部の縁のうちの少なくとも一つの縁ラインが前記段差部の段差ラインを形成する金型に、前記段差ラインと対応するベンディングラインを基準として第1ベンディングされたパウチケースを安着させる段階;
前記パウチケースが前記フォーミング部の形状を有するようにフォーミングされて陥没部を形成する段階、および
前記パウチケースが前記ベンディングラインを基準として第2ベンディングされて前記パウチケースのケース面同士を接触させる段階を含む、電池セルの製造方法。
【請求項2】
前記パウチケースがフォーミングされて陥没部を形成する段階後、電極組立体を前記陥没部内に挿入する段階をさらに含む、請求項
1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項3】
前記パウチケースのケース面同士を接触させる段階後、接触させた前記ケース面を密封する段階をさらに含む、請求項
1または
2に記載の電池セルの製造方法。
【請求項4】
前記パウチケースがフォーミングされて陥没部を形成する段階において、前記陥没部は前記ベンディングラインが前記陥没部の縁のうちの一つになるようにフォーミングされる、請求項
1から
3のいずれか一項に記載の電池セルの製造方法。
【請求項5】
前記第1ベンディングおよび前記第2ベンディングは、それぞれ90度にベンディングされる、請求項
1から
4のいずれか一項に記載の電池セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)
本出願は、2020年9月23日付韓国特許出願第10-2020-0122722号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、電池セルおよびその製造方法に関し、より詳細にはパウチ型電池セルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池は、モバイル機器および電気自動車などの多様な製品群においてエネルギー源として大きな関心を集めている。このような二次電池は、化石燃料を使用する既存製品の使用を代替できる有力なエネルギー源であって、エネルギー使用による副産物が発生せず、環境にやさしいエネルギー源として脚光を浴びている。
【0004】
最近、二次電池のエネルギー貯蔵源としての活用をはじめとして大容量の二次電池構造に対する必要性が高まり、多数の二次電池が直列/並列に連結された電池モジュールを集合させたマルチモジュール構造の電池パックに対する需要が増加している。
【0005】
一方、複数個の電池セルを直列/並列に連結して電池パックを構成する場合、少なくとも一つの電池セルからなる電池モジュールを構成し、このような少なくとも一つの電池モジュールを利用してその他の構成要素を追加して電池パックを構成する方法が一般的である。
【0006】
電池モジュールに積層されるように挿入される電池セルは、正極、負極および分離膜を含む電極組立体、および電極組立体が収容される陥没部が形成されたパウチケースを含む。
【0007】
パウチ型電池セルの場合、アルミニウムまたは金属薄板で形成されたパウチケースに金型を利用して電極組立体が挿入され得るようにドローイングフォーミング(Drawing Forming)形状を適用してパウチケースに陥没部を形成している。前記陥没部の形成過程において、ドローイングフォーミングが適用されたパウチケースを180度ベンディングした後、外郭の平面部分を密封して電池セルを水密および気密されるように形成することができる。
【0008】
この時、パウチケースにフォーミングが適用されると、周辺エッジ部に残存応力が発生することがあるが、パウチをベンディングする過程で前記残存応力により設計と異なる形態の変形が発生することがある。これはいわゆるバットイヤ(Bat-ear)部と呼ばれ得る。またバットイヤ部を通じて一側に突出した程度はエッジロング(Edge-long)と呼ばれ得る。
【0009】
図1は従来の電池セルのパウチケースを製造する様子を示した図面である。
【0010】
図1を参照して従来のパウチケースの製造過程についてより詳細に説明すると、パウチケース20の製造時、フォーミングを通じて陥没部21を形成した後、パウチケース20のベンディングライン21aを基準として180度ベンディングして陥没部21を覆うことによってパウチケース構造を完成することができる。陥没部21上には電極組立体10が挿入される。
【0011】
この時、パウチケース20のベンディングライン21aは陥没部21の縁ラインと離隔(G)した部分に形成され得る。したがって、ベンディングライン21aを中心としてパウチケース20をベンディングする場合、
図1に示されているように縁ラインと隣接したベンディングライン21aの折畳部分が滑らかに形成されず、外側に突出する部分Pが形成され得る。これはバットイヤ(Bat-ear)部と呼ばれ得る。
【0012】
その結果、前記部分Pはベンディング時にエッジ部付近に残存応力が作用して
図1に示されているように当初設計されていたパウチ形状とは異なる形態の変形が発生することがある。前記部分Pの形態的変形は残存応力の方向および大きさにより多様であり、不必要な形態的変形をもたらすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は、残存応力によるパウチケースの形態的変形が起きないようにする電池セルおよびその製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解され得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を実現するための本発明の一実施形態による電池セルは、正極、負極および分離膜を含む電極組立体;および前記電極組立体が収容される陥没部が形成されたパウチケースを含み、前記パウチケースは前記陥没部が形成する縁のうちの少なくとも一つの縁ラインを基準としてベンディングされている。
【0016】
前記陥没部は六面体形状に陥没され、前記パウチケースは前記陥没部の六面体形状の12個の縁のうちの一つの縁ラインを基準としてベンディングされ得る。
【0017】
前記ベンディングされたパウチケースは、ケース面同士を接触させて前記陥没部内部に形成された電極組立体を密封することができる。
【0018】
前記パウチケースはアルミニウムを含むことができる。
【0019】
前記課題を実現するための本発明の一実施形態による電池セルの製造方法は、段差部、および陥没形成されたフォーミング部を含み、前記フォーミング部の縁のうちの少なくとも一つの縁ラインが前記段差部の段差ラインを形成する金型に、前記段差ラインと対応するベンディングラインを基準として第1ベンディングされたパウチケースを安着させる段階;前記パウチケースが前記フォーミング部の形状を有するようにフォーミング(Forming)されて陥没部を形成する段階;および前記パウチケースが前記ベンディングラインを基準として第2ベンディングされて前記パウチケースのケース面同士を接触させる段階を含む。
【0020】
前記パウチケースがフォーミングされて陥没部を形成する段階後、電極組立体を前記陥没部内に挿入する段階をさらに含むことができる。
【0021】
前記パウチケースのケース面同士を接触させる段階後、接触させた前記ケース面を密封する段階をさらに含むことができる。
【0022】
前記パウチケースがフォーミングされて陥没部を形成する段階において、前記陥没部は前記ベンディングラインが前記陥没部の縁のうちの一つになるようにフォーミングされ得る。
【0023】
前記第1ベンディングおよび前記第2ベンディングは、それぞれ90度にベンディングされ得る。
【0024】
本発明の他の一実施形態による電池モジュールは、前記電池セルを含むことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態による電池セルおよびその製造方法は、バットイヤ部を除去することができる金型およびパウチ形状を通じてパウチケースの製造時に不必要なケースの変形を防止する効果を提供する。
【0026】
本発明の効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていないまた他の効果は特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来の電池セルのパウチケースを製造する様子を示した図面である。
【
図2】本発明の一実施形態によりパウチケースを金型に安着させる様子を示した図面である。
【
図3】本発明の一実施形態によりパウチケースに陥没部を形成する様子を示した図面である。
【
図4】本発明の一実施形態によりパウチケースがベンディングされる様子を示した図面である。
【
図5】パウチケースのエッジ部が変形なしに予め設計された形態に製造された様子を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下で説明される実施形態は、発明の理解のために例示として示したものであって、本発明はここで説明される実施形態とは異なるように多様に変形して実施され得ることが理解されるべきである。ただし、本発明を説明するに当たり、関連した公知の機能あるいは構成要素に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明および具体的な図示を省略する。また、添付した図面は、発明の理解のために実際の縮尺のとおり図示されたものでなく、一部の構成要素の寸法が誇張して図示され得る。
【0029】
本出願で使用される第1、第2用語は、多様な構成要素を説明することに使用され得るが、構成要素は用語により限定されてはならない。用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0030】
また、本出願で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、権利範囲を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。本出願で「含む」、「なる」または「構成される」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0031】
以下、
図2乃至
図5を参照して本発明の一実施形態による電池セルについて説明する。
【0032】
図2は本発明の一実施形態によりパウチケースを金型に安着させる様子を示した図面である。
図3は本発明の一実施形態によりパウチケースに陥没部を形成する様子を示した図面である。
図4は本発明の一実施形態によりパウチケースがベンディングされる様子を示した図面である。
図5はパウチケースのエッジ部が変形なしに予め設計された形態に製造された様子を示した図面である。
【0033】
図2乃至
図5を参照すると、本発明の一実施形態による電池セルは、正極、負極および分離膜を含む電極組立体、および電極組立体が収容される陥没部210が形成されたパウチケース200を含み、パウチケース200は、陥没部210が形成する縁のうちの少なくとも一つの縁ラインを基準としてベンディングされて形成される。
【0034】
電極組立体は、正極、分離膜、負極の順序に積層されており、スタック型、ジェリーロール型またはスタックフォルディング型構造で形成され得るが、本実施形態によると、直六面体形状のスタック型で形成され得る。パウチケース200の内部には電解液が挿入され、電極組立体はパウチケース200の内部に前記電解液と共に密封され得る。本実施形態によると、パウチケースはアルミニウムで形成され得る。
【0035】
陥没部210はパウチケース200上に形成され得る。陥没部210はフォーミング工程を通じて形成され得る。陥没部210は六面体形状に陥没形成され、陥没部210内部には前記電極組立体が挿入され得る。
【0036】
パウチケース200はベンディングを通じて陥没部210を覆うように形成され得る。ベンディングされたパウチケース200はケース面同士を接触させて陥没部210内部に形成された電極組立体を密封することができる。
【0037】
本実施形態によると、パウチケース200は陥没部210の六面体形状の12個の縁のうちの一つの縁ラインを基準としてベンディングされて形成され得る。従来は陥没部の縁ラインと離れた部分のベンディングラインを基準としてパウチケースをベンディングしたが、そのような場合、ベンディングが完了されたパウチケースの折畳部分にバットイヤ部が形成されるなど折畳部の残存応力により折畳部形状の変形が発生して予め設計されたパウチセルの形状のとおりパウチセルを製造することが困難であった。
【0038】
そこで、本実施形態によると、陥没部の縁ラインのうち、折畳部と隣接した縁ラインをベンディングラインにしてパウチケース200をベンディングすることによって、折畳部の残存応力を最小化し、予め設計されたパウチセルの形状のとおりパウチセルが製造され得るようにすることで、電池セルの品質を向上させ、生産性を確保することができる。
【0039】
以下、
図2乃至
図5を参照して本発明の一実施形態による電池セルの製造方法について説明する。
【0040】
図2乃至
図5を参照すると、本発明の一実施形態による電池セルの製造方法は、
図2に示された段差部、および陥没形成されたフォーミング部Fを含み、フォーミング部Fの縁のうちの少なくとも一つの縁ラインが段差部の段差ラインLを形成する金型Mに、段差ラインLと対応するベンディングライン210aを基準として第1ベンディングされたパウチケース200を安着させる段階を含む。
【0041】
次に、
図3に示されたパウチケース200が
図2のフォーミング部Fの形状を有するようにフォーミング部材Aの加圧によりフォーミング(Forming)されて陥没部210を形成する段階、および
図4に示されたパウチケース200がベンディングライン210aを基準として第2ベンディングされてパウチケース200のケース面同士を接触させる段階を含む。
【0042】
この時、前記第1ベンディングおよび前記第2ベンディングは、それぞれ90度にベンディングされ得る。これは段差部の角度が90度に形成されてパウチケース200が金型Mに向かって90度の第1ベンディングをなしたまま段差部に対応するように垂直に安着され得、その後、追加的な90度の第2ベンディングを通じて合計180度のベンディング角度をなしながらパウチケース200のケース面が互いに完全に折り畳まれ得る。
【0043】
前記段階を通じてパウチ型電池セルを製造するようになる場合、
図5に示されているようにパウチケース200のベンディングライン210a部分には、
図1に示されたようなバットイヤ部Pが形成されないことを確認することができる。
【0044】
本実施形態によると、パウチケース200がフォーミングされて陥没部210を形成する段階後、電極組立体100を陥没部210内に挿入する段階をさらに含むことができる。またパウチケース200のケース面同士を接触させる段階後には、接触させたケース面を密封する段階をさらに含むことができる。
【0045】
またパウチケース200がフォーミングされて陥没部210を形成する段階において、陥没部210はベンディングラインLが陥没部210の縁のうちの一つになるようにフォーミングされ得る。ベンディングラインLと陥没部の縁ラインが一体に形成されることによって、パウチケース200のベンディング工程時に折畳部上の形態的変形が発生しなくなる。
【0046】
前記電池セルは、複数個が集まって電池モジュールを構成することができる。また前記電池モジュールが複数個が集合された電池パック構造が形成され得る。
【0047】
前記電池パックは、前記電池モジュールを一つ以上集めて電池の温度や電圧などを管理する電池管理システム(Battery Management System;BMS)と冷却装置などを追加してパッキングした構造であり得る。
【0048】
前記電池パックは、多様なデバイスに適用され得る。このようなデバイスには、電気自転車、電気自動車、ハイブリッド自動車などの運送手段に適用され得るが、本発明はこれに制限されず、電池モジュールを使用することができる多様なデバイスに適用可能であり、これも本発明の権利範囲に属する。
【0049】
以上では本発明の好ましい実施形態について図示して説明したが、本発明は前述した特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱せずに当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により多様な変形実施が可能であることはもちろん、このような変形実施は本発明の技術的な思想や展望から個別的に理解されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
100:電極組立体
200:パウチケース
200a:ケース面
210:陥没部
210a:ベンディングライン
M:金型
F:フォーミング部
L:段差ライン