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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01D 67/00 20060101AFI20240513BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20240513BHJP
   B62D 33/06 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A01D67/00 G
A01D41/12 R
A01D67/00 C
A01D67/00 Z
B62D33/06 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020110202
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007304
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】森 敦紀
(72)【発明者】
【氏名】古井 利武
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-037460(JP,A)
【文献】特開2008-271871(JP,A)
【文献】特開2008-061543(JP,A)
【文献】特開平09-084443(JP,A)
【文献】特開2019-218058(JP,A)
【文献】特開2018-113992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 67/00
A01D 41/12
B62D 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置により支持された機体フレームを有する走行機体と、
前記走行機体の前部側に設けられてオペレータが操向操作を行う運転部と、
前記機体フレーム前部に載置されるとともに、前記運転部の下面側によって上方側から前方側が覆われたエンジンと、
前記エンジンの左右外側に配置されたラジエータと、
前記ラジエータの左右外側を覆い、該ラジエータを覆う状態と開放する状態とに開閉可能に支持された開閉カバーと、
前記運転部を、通常の使用位置から前記機体フレームに対して左右外方向に回動した回動位置へと回動可能に支持する回動支点を有する上下方向の支点フレーム部材とを備え、
前記支点フレーム部材は、前記エンジンの後側で且つ、前記ラジエータと前記開閉カバーとの間に配置され
前記支点フレーム部材に対して前記ラジエータを挟んだ反対側に、前記機体フレーム側から立設された第2縦フレーム部材を設け、
前記支点フレーム部材と、前記第2縦フレーム部材とを連結する左右方向の横フレーム部材を設け、
前記横フレーム部材側に設けられた取付部材を介して、前記エンジンから排出される排ガスを処理する排ガス処理装置を支持した
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行装置により支持された機体フレームを有する走行機体と、
前記走行機体の前部側に設けられてオペレータが操向操作を行う運転部と、
前記機体フレーム前部に載置されるとともに、前記運転部の下面側によって上方側から前方側が覆われたエンジンと、
前記エンジンの左右外側に配置されたラジエータと、
前記ラジエータの左右外側を覆い、該ラジエータを覆う状態と開放する状態とに開閉可能に支持された開閉カバーと、
前記運転部を、通常の使用位置から前記機体フレームに対して左右外方向に回動した回動位置へと回動可能に支持する回動支点を有する上下方向の支点フレーム部材とを備え、
前記支点フレーム部材は、前記エンジンの後側で且つ、前記ラジエータと前記開閉カバーとの間に配置され、
前記支点フレーム部材は、前記運転部が使用位置に固定された状態における側面視で前記ラジエータとラップする部分を取外すことができるように分割形成された
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
前記開閉カバーは、左右方向に回動可能に支持する上下方向の回動軸を有し、
前記支点フレーム部材は、前記回動軸の前方に配置されるように構成された
請求項1又は2の何れかに記載に記載の作業車両。
【請求項4】
前記開閉カバーを前記機体フレーム側に支持する第1縦フレーム部材を設け、
前記支点フレーム部材と、前記第1縦フレーム部材とを連結する前後方向の連結部材を設けた
請求項1又は2の何れかに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転部が左右方向に回動可能に構成された作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行装置により支持された機体フレームを有する走行機体と、前記機体フレームの前部左右一方側に配置されてオペレータが操向操作を行う運転部と、前記運転部の下面側に覆われたエンジンと、該エンジンの左右外側に配置されたラジエータと、前記運転部を、通常の使用位置から前記機体フレームに対して左右外方向に回動した回動位置へと回動可能に支持する上下方向の支点フレーム部材とを備えた特許文献1に記載の作業車両が従来公知である。
【0003】
上記文献の作業車両によれば、前記運転部を前記回動位置へと回動作動させることにより、前記エンジンの前方及び上方側を大きく開放させてメンテナンス作業をよりスムーズに行うことができるものであるが、前記支点フレーム部材が平面視で前記エンジンルームの後端後方や、前記ラジエータの後方に配置されているため、前記運転部の回動範囲が広くなるとともに、前記ラジエータの設置スペースが限定されるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4675181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記エンジンの前方から上方を覆うように配置された前記運転部の前後方向を大型化させることなくコンパクトに回動可能に支持するとともに、前記エンジンの後方まで延設されるラジエータが設置可能な作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、走行装置により支持された機体フレームを有する走行機体と、前記走行機体の前部側に設けられてオペレータが操向操作を行う運転部と、前記機体フレーム前部に載置されるとともに、前記運転部の下面側によって上方側から前方側が覆われたエンジンと、前記エンジンの左右外側に配置されたラジエータと、前記ラジエータの左右外側を覆い、該ラジエータを覆う状態と開放する状態とに開閉可能に支持された開閉カバーと、前記運転部を、通常の使用位置から前記機体フレームに対して左右外方向に回動した回動位置へと回動可能に支持する回動支点を有する上下方向の支点フレーム部材とを備え、前記支点フレーム部材は、前記エンジンの後側で且つ、前記ラジエータと前記開閉カバーとの間に配置されたことを特徴としている。
【0007】
第2に、前記開閉カバーは、左右方向に回動可能に支持する上下方向の回動軸を有し、前記支点フレーム部材は、前記回動軸の前方に配置されるように構成されたことを特徴としている。
【0008】
第3に、前記開閉カバーを前記機体フレーム側に支持する第1縦フレーム部材を設け、
前記支点フレーム部材と、前記第1縦フレーム部材とを連結する前後方向の連結部材を設けたことを特徴としている。
【0009】
第4に、前記支点フレーム部材に対して前記ラジエータを挟んだ反対側に、前記機体フレーム側から立設された第2縦フレーム部材を設け、前記支点フレーム部材と、前記第2縦フレーム部材とを連結する左右方向の横フレーム部材を設け、前記横フレーム部材側に設けられた取付部材を介して、前記エンジンから排出される排ガスを処理する排ガス処理装置を支持したことを特徴としている。
【0010】
第5に、前記支点フレーム部材は、前記運転部が使用位置に固定された状態における側面視で前記ラジエータとラップする部分を取外すことができるように分割形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
前記運転部の回動支点を有する前記支点フレーム部材を、平面視で前記開閉カバーと、前記ラジエータとの間に配置したことにより、前記運転部の前後方向を大型化させることなく、エンジンルーム内に前記エンジンの後方まで延設される大型のラジエータを設けることができる。また、大型のラジエータを採用して、前記ラジエータ後端がキャビン後端より後方に位置したとしても、従来のラジエータの後方に回動支点軸を配置したもののように、回動支点軸とキャビン後端との距離が長くなって支持部材の強度が必要になって複雑化することを防ぐことができる。
【0012】
また、前記開閉カバーは、左右方向に回動可能に支持する上下方向の回動軸を有し、前記支点フレーム部材は、前記回動軸の前方に配置されるように構成されたものによれば、前記運転部をコンパクトに回動させつつ、前記ラジエータが露出する前記開口部をより大きく形成することができる。
【0013】
また、前記開閉カバーを前記機体フレーム側に支持する第1縦フレーム部材を設け、前記支点フレーム部材と、前記第1縦フレーム部材とを連結する前後方向の連結部材を設けたものによれば、前記開閉カバーを支持する前記第1縦フレーム部材も前記運転部を回動支持する部材として利用できるため、該運転部をより安定的に機体フレーム側に支持することができる。
【0014】
また、前記支点フレーム部材に対して前記ラジエータを挟んだ反対側に、前記機体フレーム側から立設された第2縦フレーム部材を設け、前記支点フレーム部材と、前記第2縦フレーム部材とを連結する左右方向の横フレーム部材を設け、前記横フレーム部材側に設けられた取付部材を介して、前記エンジンから排出される排ガスを処理する排ガス処理装置を支持したものによれば、前記支点フレーム部材の剛性がより向上するとともに、排ガス処理装置の組付作業性も向上する。
【0015】
なお、前記支点フレーム部材は、前記運転部が使用位置に固定された状態における側面視で前記ラジエータとラップする部分を取外すことができるように分割形成されたものによれば、前記運転部を回動位置まで回動作動させることなく、前記開口部から前記ラジエータを全面的に露出させることができるため、前記ラジエータの交換やメンテナンス等の作業性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用した自脱式コンバインの平面図である。
図2】本発明を適用した自脱式コンバインの右側面図である。
図3】開閉カバーの開状態を示した要部右側面図である。
図4】キャビンが使用状態に切換えられたエンジンルーム下部側の配置構成を示した要部平断面図である。
図5】キャビンが回動状態に切換えられたエンジンルーム下部側の配置構成を示した要部平断面図である。
図6】処理装置支持機構を示した要部背面斜視図である。
図7】キャビンを回動状態に切換えた際のエンジンルームを示した要部斜視図である。
図8】キャビンを回動状態に切換えた際の要部底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2は、本発明を適用した自脱式コンバインの平面図及び右側面図である。図示されたコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置(走行装置)1,1を有する走行機体2と、該走行機体2の前部に昇降可能に連結された前処理部3とを備えている。
【0018】
前記前処理部3は、前記走行機体2の前進走行中に左右方向に往復作動することによって圃場の穀稈を刈取るレシプロ式の刈刃と、該刈刃によって刈取られた刈取穀稈を後方搬送する搬送装置6とを備え、該搬送装置6により刈取穀稈を前記走行機体2側に設けられた脱穀装置7まで後方搬送するように構成されている。
【0019】
前記走行機体2は、左右一対のクローラ式走行装置1,1に支持される機体フレーム8を有し、該機体フレーム8上には、オペレータが乗込む操縦部が設けられたキャビン(運転部)9と、穀粒を貯留するグレンタンク11と、前記脱穀装置7とが設置されている。前記脱穀装置7は、前記走行機体2の左部(進行方向左側、以下単に左)に配置され、前記グレンタンク11が前記走行機体2の右部(進行方向右側、以下単に右)に配置され、前記キャビン9は、前記グレンタンク11の前方に配置されている。
【0020】
ちなみに、前記キャビン9と該キャビン9の後方に配置された前記グレンタンク11との間に形成されるスペースには、エンジン10と、該エンジン10に空気を供給する吸気管12と、前記エンジンから排出される排ガスを浄化する排ガス処理装置13,14と、該排ガス処理装置から排出される排ガスを機外に排出する排気管16とが収容されるエンジンルーム20が形成されている。
【0021】
前記キャビン9は、オペレータが着座する座席17と、該座席17の前方から左右内側(図示する例では右側)に操向操作や作業走行を行うための操作を行う操作パネルと、該座席17の前方下側に形成された床面である床板(フロアステップ)18とが設けられている。また、該キャビン9の後面から下面側を形成するフレーム(壁面)部材が、前記エンジン10を覆うエンジンルーム前部の一部を形成する隔壁を構成している。具体的には後述する。
【0022】
前記脱穀装置7は、前記前処理部3側の搬送装置6によって後方搬送された刈取穀稈を受取り、該刈取穀稈の脱穀・選別処理を行う。該脱穀装置7によって脱穀処理された穀稈は、排藁搬送体(図示しない)によって前記走行機体2の後端側に設けた後処理部19まで搬送され、前記後処理部19により切断処理された後に機外へと排出される。該脱穀装置7により選別された排出物は機外に排出される一方で、選別された穀粒は前記脱穀装置7から前記グレンタンク11内へと搬送される。
【0023】
前記グレンタンク11は、前記脱穀装置7によって脱穀・選別された穀粒を貯留することができるように構成され、該グレンタンク11内に貯留された穀粒は、前記走行機体2の後端部から延設されたオーガ21によって、機外に排出することができるように構成されている。
【0024】
上記オーガ21は、前記グレンタンク11の後部に配置された上下方向の縦筒22と、該縦筒22の上端側を基端部として該基端部から先端部に向かって一直線に延設した排出管23と、該排出管の先端側に設けられて搬送された穀粒が排出される排出口24とを有している。
【0025】
該オーガ21は、前記排出管24がその基端(縦筒の上端)側を支点として全体が上下揺動(昇降作動)可能であるとともに、前記縦筒22の軸回りに全体が左右揺動(左右旋回)可能に構成されている。該オーガ21の昇降及び左右旋回によって、前記排出口24の平面及び高さ位置を調整することができる。
【0026】
次に、図1乃至5に基づいて、前記エンジンルームの構成について説明する。図3は、開閉カバーの開状態を示した要部右側面図であり、図4は、キャビンが使用状態に切換えられたエンジンルーム下部側の配置構成を示した要部平断面図であり、図5は、キャビンが回動状態に切換えられたエンジンルーム下部側の配置構成を示した要部平断面図である。
【0027】
前記エンジンルーム20は、側面視で前記キャビン9の後面及び下面と、前記グレンタンク11前面との間に形成される前記機体フレーム8上の空間(スペース)であって、左右方向が開放されている。また、該エンジンルーム20の左右外(図示する例では右)側には、走行機体2の側方側から前記エンジンルーム20内を視認できる開口部が形成されるとともに、該開口部を開閉する開閉カバー26が設けられている(図2及び図3参照)。
【0028】
また、前記エンジンルーム20の後部側は、前記キャビン9後面と前記グレンタンク11前面との間に形成されるスペースによって上方が開放されており、前記排ガス処理装置13,14や、前記排気管16が設置されている。その一方で、該エンジンルーム20の前部側は、前記キャビン9の下面側によって上方側から前方側が覆われた状態で前記エンジン10等が載置固定されている。
【0029】
該エンジンルーム20(の前部)を構成する前記キャビン9の下部側について具体的に説明すると、該キャビン9は、側面視で座席17から足元の床板18に向かって(前方に向かって下方)傾斜した傾斜部9aが形成されており、該傾斜部9a前端の右部側は、該傾斜部の前端から前記床板に向かって下方に延設される一方で、該傾斜部9a前端の左部側は、さらに前方に向けて延設されている(図3及び図4参照)。
【0030】
該構成によれば、前記エンジンルーム20の前部、言い換えると、前記キャビン9の後端側から、前記キャビン9の傾斜部9a前端側までの間の空間には、前記機体フレーム8上に載置される前記エンジン10が収容されている(図3及び図4参照)。
【0031】
また、該エンジン10の左右外側には、該エンジンルーム20の左右外側からエンジンに向けて送風するための冷却ファン27と、該冷却ファン27の左右外側に配置されたラジエータ28とが設けられており、該ラジエータ28の左右外側は、前記開閉カバー26によって開閉可能に構成されている。ちなみに、前記エンジン10左半部の前方側に形成されるスペースには、トランスミッション29が配置されている(図4参照)。
【0032】
さらに、前記エンジンルーム20は、該エンジンルームの後部側に前記排ガス処理装置13,14を縦方向に並べて支持する処理装置支持機構31と、前記キャビン9全体を左右外側に向けて水平回動可能となるように機体フレーム8側に支持するキャビン支持機構32とからなる支持機構が設けられている(図3及び図5等参照)。
【0033】
前記処理装置支持機構31は、前記エンジン10から排気される排ガスを浄化処理する前記排ガス処理装置として、前記エンジン10から排気された排ガスが供給されるディーゼル微粒子捕集装置(DPF)13と、該ディーゼル微粒子捕集装置13から排気された排ガスが供給される窒素酸化物還元装置(SCR)14とを、前記エンジンルーム20内にスペース効率良く支持することができる。具体的な構成は後述する。
【0034】
前記キャビン支持機構32は、前記キャビン9を、座席17上のオペレータが正面を向いて走行操作を行うことができる通常の姿勢である使用状態と、該使用状態から前記キャビン9を左右外側に回動させた姿勢である回動状態とに切換えることができるように構成されている。
【0035】
これにより、前記エンジンルーム20前部の天井面を構成する前記キャビン9を前記回動状態に切換えることにより、前記機体フレーム8上の前記エンジン10及びトランスミッション29の上方(前方)を開放することができるため、メンテナンス作業等をよりスムーズに行うことができるようになる。
【0036】
ちなみに、前記キャビン9は、使用状態時には、前記キャビン9の底面側が前記機体フレーム8の前端に載置されることによって安定した状態で姿勢が保持される一方で、回動状態時には、前記キャビン支持機構32によって前記キャビン9を強固に軸支することで、姿勢を安定させるようにように構成されている。具体的な構成については、以下説明する。
【0037】
次に、図3乃至8に基づいて、前記支持機構の構成について具体的に説明する。図6は、処理装置支持機構を示した要部背面斜視図である。
【0038】
前記処理装置支持機構31は、平面視で前記エンジン10の後側(後方)で且つ前記ラジエータ28の左右外(右)側に配置された上下方向の支点フレーム部材36と、該支点フレーム部材36の後方に配置された上下方向の第1縦フレーム部材37と、前記支点フレーム部材36に対して前記ラジエータ28を挟んだ左右反対側に配置された上下方向の第2縦フレーム部材38と、前記支点フレーム部材36と前記第1縦フレーム部材37とを連結する前後方向の連結フレーム部材39(連結部材)と、前記支点フレーム部材36(又は第1縦フレーム部材37)と前記第2縦フレーム部材38を連結する左右方向の横フレーム部材41とを有している。
【0039】
上記支点フレーム部材36は、機体フレーム8側から上方に向けて延設された柱状部材であって、側面視で前記キャビン9の後端側に位置するとともに、平面視で前記ラジエータ28と、閉状態の前記開閉カバー26との間に配置されており、特に、該支点フレーム部材36の上端側には、前記キャビン9を回動可能に支持するキャビン回動軸36Aが設けられている(図3及び図4参照)。前記キャビン支持機構32を構成する前記キャビン回動軸36Aについては後述する。
【0040】
また、該支点フレーム部材36は、上下方向中途部、より具体的には、側面視で前記ラジエータ28(又はエンジン10のより高い方)よりも上方に位置する箇所で分割形成されており、この分割位置で、前後方向の前記連結フレーム部材39の前端側が連結されている(図6参照)。
【0041】
具体的に説明すると、前記支点フレーム部材36は、前記機体フレーム8側から前記連結フレーム部材との連結位置まで延設された下部フレーム部材36Cと、該下部フレーム部材36Cの上端側からさらに上方に延設された中間フレーム部材36Bと、該中間フレーム部材36Bの上端側に設けられる前記キャビン回動支点軸36Aとから構成されており、前記中間フレーム部材36Bの下端側と前記連結フレーム部材39の前端上面側とは強固に固定される一方で、前記連結フレーム部材39の前端下面側と前記下部フレーム部材36C(の上端側)とは着脱可能な構成で取付けられている。
【0042】
該構成によれば、前記開閉カバーを26開いた際に、前記ラジエータ28の前面側にラップするように配置される支点フレーム部材36の一部(下部フレーム部材36C)を取外すことができる。これにより、前記キャビン回動支持軸36Aによる前記キャビン9の支持状態は継続しつつ、前記開口部から前記ラジエータ28の全体を露出させることができるため、ラジエータ28の掃除、点検、交換等のメンテナンス作業をよりスムーズに行うことができるようになる(図3参照)。
【0043】
ちなみに、前記下部フレーム部材36Cは、隣接する前記ラジエータ28側と着脱容易に連結される取付座を設け、該下部フレーム部材36C(支点フレーム部材36)を前記エンジン10側と連結することで、支持機構の剛性をより高めることができるように構成しても良い。
【0044】
また、前記支点フレーム部材36は、前記キャビン9が使用状態に切換えられている場合には、前記下部フレーム部材36Cを取外すことが可能となる一方で、前記キャビン9が回動状態に切換えられている場合には、前記支点フレーム部材36に負荷の掛かるため、前記下部フレーム部材36Cの取外し作業ができないように構成しても良い。
【0045】
上記第1縦フレーム部材37は、前記支持フレーム部材36の後方、言い換えると、前記エンジンルーム20の後端の左右外側端部に立設されており、該第1縦フレーム部材37の左右外側には、前記開閉カバー26を水平方向に開閉可能に支持する蝶番等からなるカバー取付軸42が取付固定されている(図4参照)。
【0046】
上記第2縦フレーム部材38は、前記支点フレーム部材36に対して前記ラジエータ28を挟んだ左右反対側で且つ前記エンジン10左部の後方に配置されている。言い換えると、該第2縦フレーム部材38は、その前後位置が平面視で前記支点フレーム部材36と前記第1縦フレーム部材37との間に配置され、その左右位置が前記エンジンルーム20の左右内(右)側端部寄りに配置されている(図4等参照)。
【0047】
また、該第2縦フレーム部材38は、上下方向中途部と、その上部側とに、左右外側に配置された前記第1縦フレーム部材37との間を架渡すように設けられる前記横フレーム部材41A,41Bが取付けられている。また、該第2縦フレーム部材38の上端側には、ブラケット43を介して初期位置に操作された前記オーガ21を下支えするようにY字状に形成されたオーガ保持部44が取付られている。
【0048】
このとき、前記オーガ保持部44を前記第2縦フレーム部材側に連結する前記ブラケット43は、左側の前記脱穀装置7側とも連結可能に構成されている。これにより、前記処理装置支持機構31が前記脱穀装置7側とも一体的に連結されることで、支持機構全体の剛性がより向上する。
【0049】
上記横フレーム部材41として、前記第2縦フレーム部材38と前記第1縦フレーム部材37との間の上端側同士を架渡すように配置された枠状、又は前方が開放されたコ字状に形成された上側横フレーム部材41Bと、該上側横フレーム部材41Bの下方に配置されたL字状の下側横フレーム部材41Aとを有し、各横フレーム部材41には、排ガス処理装置13,14を支持するための取付ブラケット46が設けられている。
【0050】
具体的に説明すると、該取付ブラケット46としては、前記下側横フレーム部材41A側に取付けられてディーゼル微粒子捕集装置13が支持される下側取付ブラケット46Aと、前記上側横フレーム部材41に取付けられて窒素酸化物還元装置14が支持される上側取付ブラケット46Bとを有する(図6及び図7参照)。
【0051】
なお、該下側取付ブラケット46Aは、前方に延設されるか、別途に前方に延設されるブラケットが設けられることにより、前記エンジン10の前部上方側に、該エンジン10に供給される空気中の塵等を除去するエアクリーナ15を支持することができるように構成されている(図6参照)。
【0052】
ちなみに、前記取付ブラケット46は、枠状の前記横フレーム部材41内に排ガス処理装置13,14の左右端側を支持するように(前後方向に延設されたフレーム状に)形成されたことにより、左右方向の前記排ガス処理装置13,14が左右の支点フレーム部材(第1縦フレーム部材)と第2縦フレーム部材との間を架渡すように設けられるため、処理装置支持機構31全体の剛性がより向上する。
【0053】
該構成の前記処理装置支持機構31によれば、前記エンジン10の前部上方側に前記エアクリーナ15を支持し、前記エンジン10の後部上方側に前記ディーゼル微粒子捕集装置(DPF)13を支持し、該ディーゼル微粒子捕集装置13の上方側に前記窒素酸化物還元装置(SCR)14を支持することができるため、前記エアクリーナ15と、排ガス処理装置13,14とを、前記エンジン10の上面後側から、上方が開放された前記エンジンルーム20の後部に向けて上下方向に並べた状態でスペース効率良く配置することができる。
【0054】
また、該処理装置支持機構31によって、前記エアクリーナ15と、前記排ガス処理装置13,14とを、前記エンジンルーム内の所定位置に設置する組付作業をよりスムーズに行うことができるようになる。
【0055】
また、前記処理装置支持機構31は、前記機体フレーム8から縦方向に立設された前記第1縦フレーム部材37と、前記第2縦フレーム部材38と、前記支点フレーム部材36とを、前記連結フレーム部材39や前記横フレーム部材41を介して、一体的に連結されるように構成されたことにより、前記排ガス処理装置(及びエアクリーナ)を一括して支持するのに十分な剛性を得ることができる。
【0056】
さらに、前記処理装置支持機構31によれば、平面視で前記支点フレーム部材36と前記開閉カバー26の回動軸が支持される前記第1縦フレーム部材とが前後にオフセット配置したことにより、前記エンジンルーム20の後端側まで延設される大型の前記ラジエータ28を搭載しつつ(エンジンルーム20を広くとりつつ)、該エンジンルーム20内に前記キャビン9を回動可能に支持するキャビン回動軸36Aを設けることができる。
【0057】
次に、図7及び図8に基づき、前記キャビン支持機構について説明する。
図7は、キャビンを回動状態に切換えた際のエンジンルームを示した要部斜視図であり、図8は、キャビンを回動状態に切換えた際の要部底面斜視図である。
【0058】
前記キャビン支持機構32は、前記キャビン回動軸36Aと、該キャビン回動軸36Aの同一軸心上に回動軸が設けられた後側リンクアーム51と、該後側リンクアーム51の前方側に回動軸が設けられた前側リンクアーム52と、前記キャビン9の下面側に取付固定されて平面視で該キャビン9の床板18後端側に沿って左右方向に延設されたレール部材53とから構成されている。
【0059】
前記キャビン回動軸36Aは、前記支点フレーム部材36の上部側に設けられており、具体的には、前記中間フレーム部材36Bの上端側からさらに上方に向かって立設された軸状部材である。これに対し、前記キャビン後端の左右外(右)側には、前記キャビン回動軸36Aを軸に前記キャビン9を回動作動可能に支持するキャビン軸受部54が設けられている(図7参照)。
【0060】
該キャビン軸受部54は、前記キャビン回動軸が挿通される筒状のボス部材である軸受体54Aと、該軸受体54Aを前記キャビン9の後端側面側に強固に取付固定する取付ブラケット54Bとから構成されている。
【0061】
ちなみに、前記キャビン回動軸36Aを有する前記支点フレーム部材36は、上述の処理装置支持機構31により、前記第1縦フレーム部材37、第2縦フレーム部材38と一体的に連結される他、前記エンジン10や、前記脱穀装置側にも連結されることによって、前記キャビン9をより強固に軸支することができる。
【0062】
このとき、前記第2縦フレーム部材38は、前記エンジン10の左右内(左)側の後方に設けたことにより、前記キャビン9が回動状態に切換えられて、前記エンジン10の上方及び前方が開放された際に、該第2縦フレーム部材38が邪魔にならないため、メンテナンス作業等の効率がより向上する。
【0063】
前記後側リンクアーム51は、その基端側が前記開閉カバー26下方の前記機体フレーム8側に設けられた後側リンク回動軸56を軸に左右方向に回動可能に支持されており、該後側リンク回動軸56は、前記キャビン回動軸36Aと同一軸心上に配置されている(図5及び図8等参照)。
【0064】
該後側リンク回動軸56は、前記機体フレーム8を左右内側に向けてコ字状に凹設した凹部8aを形成することにより、その上端側が前記機体フレーム8側に取付固定され、前記後側リンクアーム51の基端側に溶着等により設けられたボス部51aが軸回動可能に外装され、該ボ後側リンク回動軸56の下端側には前記ボス部51aが抜けることを防止する円板部材55がボルト固定されている(図8参照)。
【0065】
また、該後側リンクアーム51は、その先端側に上方に延設された棒状のキャビン支持体57が設けられており、該キャビン支持体57は、前記キャビン9底面側にある前記レール部材53の左右外側端部の近傍を下支えするように連結されている(図8等参照)。
【0066】
該構成によれば、前記後側リンクアーム51は、前記キャビン9が使用状態の場合には、前記後側リンク回動軸56から機体フレーム8に沿った前後方向に延設された位置で保持され、前記キャビン9が回動状態に切換えられる場合には、前記後側リンク回動軸56を軸に左右外側に回動される。
【0067】
前記前側リンクアーム52は、その基端側が閉状態の前記開閉カバー26の前端側近傍に設けられた前側リンク回動軸58を軸に水平方向に回動可能に構成されており、その先端側は、前記キャビン9下面側に取付固定された前記レール部材53上をスライド移動可能な構成で、該レール部材53側に連結されている(図8参照)。
【0068】
該構成の該前側リンクアーム52及びレール部材53によれば、前記キャビン9の使用状態から回動状態、回動状態から使用状態に切換える水平(左右)回動作動を案内できるため、該キャビン9の姿勢切換がよりスムーズになる。
【0069】
上述のように構成されたキャビン支持機構32によれば、前記キャビン9は、平面視でその後端左右外側に設けられた前記キャビン回動軸36A(後側リンク回動軸56)を軸に左右方向外側に回動可能な状態で前記機体フレーム8側に支持することができる(図5及び図8参照)とともに、前記キャビン9は、前後方向中央側で該キャビン9の下面側に設けられた左右方向の前記レール部材53を、前記前側リンクアーム52と、前記後側リンクアーム51とで、該キャビン9の左右回動を許容した構成で下支えするようにして支持しているため、前記機体フレーム8の左右外側に回動作動される前記キャビン9をより安定した状態で支持することができる。
【0070】
また、該構成によれば、前記キャビン9は、その回動支点が、前記支点フレーム部材36上部側の前記キャビン回動軸36Aと、該支点フレーム部材36下方の前記後側リンク回動軸56とで上下に分けたことにより、前記キャビン9が回動作動中に傾斜することを抑制するとともに、キャビン支持機構の強度も確保することができる。このため、該キャビンの回動作動がよりスムーズ且つ安定する。
【0071】
また、前記キャビン回動軸36Aを支持する前記支点フレーム部材36は、前記処理装置支持機構31を構成する各フレーム部材(第1縦フレーム部材37、第2縦フレーム部材38)と連結されることにより剛性が向上しているため、前記キャビン9が回動状態に切換えられることにより、該キャビン9を前記支点フレーム部材36(キャビン支持機構32)で片持ち支持するような態勢となっても、該キャビン9を安定的に支持することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 クローラ式走行装置(走行装置)
2 走行機体
8 機体フレーム
9 キャビン(運転部)
10 エンジン
13 ディーゼル微粒子捕集装置(排ガス処理装置)
14 窒素酸化物還元装置(排ガス処理装置)
26 開閉カバー
28 ラジエータ
36 支点フレーム部材
37 第1縦フレーム部材
38 第2縦フレーム部材
39 連結フレーム部材(連結部材)
41 横フレーム部材
42 カバー取付軸(回動軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8