(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ユニット
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240513BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
F16H57/04 G
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2023529735
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2022021517
(87)【国際公開番号】W WO2022270217
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2021105243
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】上原 弘樹
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-260898(JP,A)
【文献】国際公開第2020/032026(WO,A1)
【文献】特開2009-281446(JP,A)
【文献】特開2020-54066(JP,A)
【文献】特開2012-105457(JP,A)
【文献】特開2017-52335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車機構を収容するハウジングを有し、
前記ハウジングはクーラントが流れる流路を有し、
前記遊星歯車機構はステップドピニオンギアを有し、
前記ステップドピニオンギアはスモールピニオンとラージピニオンとを有し、
径方向視において前記流路は前記ラージピニオンとオーバーラップする部分を有し、
前記ハウジングは前記流路を有する流路付ケースと前記流路付ケースと対向する対向ケースと、を有し、
径方向視において前記流路は前記流路付ケースと前記対向ケースとの合わせ面から離れる方向に向かって延び、
前記遊星歯車機構のキャリアは差動歯車機構の入力要素と一体回転可能に接続され、
前記差動歯車機構は前記対向ケースに収容され、
径方向視において、前記スモールピニオンは前記対向ケースに固定されたリングギアと噛合する、ユニット。
【請求項2】
請求項
1において、
径方向視において前記流路はモータとオーバーラップする部分を有する、ユニット。
【請求項3】
請求項
1または請求項2において、
前記ハウジング内にキャッチタンクを有し、
前記キャッチタンクは前記流路と前記ラージピニオンの公転軌道とに挟まれた部分を有する、ユニット。
【請求項4】
遊星歯車機構を収容するハウジングを有し、
前記ハウジングはクーラントが流れる流路を有し、
前記遊星歯車機構はステップドピニオンギアを有し、
前記ステップドピニオンギアはスモールピニオンとラージピニオンとを有し、
径方向視において前記流路は前記ラージピニオンとオーバーラップする部分を有し、
前記ハウジング内にキャッチタンクを有し、
前記キャッチタンクは前記流路と前記ラージピニオンの公転軌道とに挟まれた部分を有する、ユニット。
【請求項5】
請求項
4において、
前記ハウジングは前記流路を有する流路付ケースと前記流路付ケースと対向する対向ケースと、を有し、
径方向視において前記流路は前記流路付ケースと前記対向ケースとの合わせ面から離れる方向に向かって延びる、ユニット。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
径方向視において前記流路はモータとオーバーラップする部分を有する、ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転電機、減速ギアを有するユニットを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユニットにおいて、熱交換効率を向上することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様におけるユニットは、
遊星歯車機構を収容するハウジングを有し、
前記ハウジングはクーラントが流れる流路を有し、
遊星歯車機構はステップドピニオンギアを有し、
前記ステップドピニオンギアはスモールピニオンとラージピニオンとを有し、
径方向視において前記流路は前記ラージピニオンとオーバーラップする部分を有し、
前記ハウジングは前記流路を有する流路付ケースと前記流路付ケースと対向する対向ケースと、を有し、
径方向視において前記流路は前記流路付ケースと前記対向ケースとの合わせ面から離れる方向に向かって延び、
前記遊星歯車機構のキャリアは差動歯車機構の入力要素と一体回転可能に接続され、
前記差動歯車機構は前記対向ケースに収容され、
径方向視において、前記スモールピニオンは前記対向ケースに固定されたリングギアと噛合する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、熱交換効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、車両に搭載されるユニットを説明するスケルトン図である。
【
図5】
図5は、ユニットにおける冷却水の循環システムを説明する図である。
【
図8】
図8は、遊星歯車機構の回転によるオイルの掻き上げを説明する図である。
【
図9】
図9は、キャッチタンクを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本明細書における用語の定義を説明する。
「ユニット」は、「モータユニット」、「動力伝達装置」等とも呼ばれる。モータユニットは、少なくともモータを有するユニットである。動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構及び/又は差動歯車機構である。モータ及び動力伝達機構を有する装置であるユニットは、モータユニット及び動力伝達装置の双方の概念に属する。
【0009】
「ハウジング」は、モータ、ギア、インバータを収容するものである。ハウジングは1つ以上のケースから構成される。
【0010】
「3in1」とは、モータを収容するモータケースの一部と、インバータを収容するインバータケースの一部とが、一体形成された形式を意味する。たとえば、カバーとケースが1つのケースを構成する場合、「3in1」では、モータを収容するケースとインバータを収容するケースが一体に形成されている。
【0011】
「モータ」は、電動機機能及び/又は発電機機能を有する回転電機である。
【0012】
第1要素(部品、部分等)に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の下流に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の上流に接続された第2要素(部品、部分等)と述べた場合、第1要素と第2要素とが動力伝達可能に接続されていることを意味する。動力の入力側が上流となり、動力の出力側が下流となる。また、第1要素と第2要素は、他の要素(クラッチ、他の歯車機構等)を介して接続されていても良い。
【0013】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0014】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0015】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0016】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0017】
「軸方向」とは、ユニットを構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、ユニットを構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0018】
遊星歯車機構の回転要素(例えば、サンギア、キャリア、リングギア等)が他の要素と「固定されている」とは、直接固定されていても良いし、別部材を介して固定されていても良い。
【0019】
「回転方向の下流側」とは、車両前進時における回転方向または車両後進時における回転方向の下流側を意味する。頻度の多い車両前進時における回転方向の下流側にすることが好適である。遊星歯車機構における回転方向の下流側とは、ピニオンギアの公転方向の下流側を意味する。
【0020】
「キャッチタンク」は、オイルが導入されるタンク(コンテナ)の機能を有する要素(部品、部分等)である。タンクの外側からタンクにオイルが供給されることを、「キャッチ」と表現している。キャッチタンクは、たとえばハウジングの少なくとも一部を利用して設けられるか、ハウジングと別体で設けられる。キャッチタンクとハウジングとを一体形成することにより、部品点数削減に寄与する。
【0021】
「クーラント」は冷媒であり、たとえば、液体(冷却水等)、気体(空気等)等である。クーラントはオイルを含む概念であるが、本明細書においてオイルとクーラントとが併記されている場合は、クーラントはオイルとは異なる材料で構成されていることを意味する。
【0022】
「熱交換部」は異なる2つの熱交換媒体の間で熱交換を行う要素(部品、部分等)である。2つの熱交換媒体の組合せは、例えば、オイルと冷却水、冷却水と空気、空気とオイル等がある。
本発明のある態様では熱交換部として、例えばハウジングに形成されたクーラントの流れる流路を用いると好適である。ユニットの寸法の縮小に寄与することができるからである。
【0023】
「ハウジングに形成されたクーラントの流れる流路」とは、ハウジングと一体形成された部分である。例えば、クーラントと、ハウジング内のオイル及び/又は空気と、の熱交換がハウジングの壁部を介して行われる。
【0024】
「車室」は、車両において乗員が乗り込む部屋を意味する。
【0025】
以下、本実施形態を説明する。
図1は、車両に搭載されるユニットを説明するスケルトン図である。
図2は、ユニットの外観図である。
図3は、ユニットの断面模式図である。
図3は、インバータケースを取り除いた状態を示している。
図4は、遊星減速ギア周りの拡大図である。
図5は、ユニットにおける冷却水の循環システムを説明する図である。
図6は、冷却路を説明する図である。
図6は、
図2と同じ方向から見たユニットを示している。
図6では、第2ケース部材を破線で示すと共に、インバータケースを省略している。また、
図6の拡大図では、突起111cと、厚肉部118、119の領域にハッチングを付して示している。
図7は、冷却路を説明する図である。
図7では、
図2のユニットを上方から見たものを示している。
図7では、第2ケース部材を破線で示している。
図8は、遊星歯車機構の回転によるオイルの掻き上げを説明する図である。
図8は、
図4におけるA-A断面の模式図である。
図9は、キャッチタンクを説明する図である。
図9は、
図8のA領域の拡大図である。
図10は、キャッチタンクを説明する図である。
図10は、
図8のB-B断面の模式図である。なお、
図10では、配管P3も断面で示している。
【0026】
図1に示すように、ユニット1は、モータ2と、モータ2が出力した動力を車両の駆動輪K、Kに伝達する動力伝達機構3と、モータ2の電力変換装置であるインバータ7(
図2参照)を有する。
ユニット1のハウジングHSは、モータ2を収容するモータケース10の一部と、インバータ7を収容するインバータケース17が、一体に形成された形式の「3in1」ユニットである。
【0027】
本実施形態では、
図1に示すように、ユニット1は、動力伝達機構3として、遊星減速ギア4(減速歯車機構、遊星歯車機構)、差動機構5(差動歯車機構)および出力軸であるドライブシャフト9(9A、9B)を有する。
ユニット1では、モータ2の回転軸X回りの出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフト9(9A、9B)と、が設けられている。ドライブシャフト9(9A、9B)の軸線は、モータ2の回転軸Xと同軸であり、差動機構5はモータ2と同軸である。
【0028】
ユニット1では、モータ2の出力回転が、遊星減速ギア4で減速されて差動機構5に入力された後、ドライブシャフト9(9A、9B)を介して、ユニット1が搭載された車両の左右の駆動輪K、Kに伝達される。
ここで、遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されている。差動機構5は、遊星減速ギア4を介してモータ2の下流に接続されている。ドライブシャフト9(9A、9B)は、差動機構5の下流に接続されている。
【0029】
図2に示すように、ユニット1のハウジングHSは、3in1タイプのハウジングであり、モータ2と、動力伝達機構3およびインバータ7を収容する。ハウジングHSは、1つ以上のケースから構成される。ハウジングHSは、例えば、モータ2を収容するモータケース10と、動力伝達機構3を収容するギアケース14と、インバータ7を収容するインバータケース17と、を有する。回転軸X方向におけるモータケース10の一端側に、ギアケース14が接合されている。ユニット1を車両に搭載した状態における、モータケース10の鉛直線VL方向上方には、後記するキャッチタンク15を避けた位置で、インバータケース17が接合されている。
【0030】
インバータ7は、平滑コンデンサ、パワー半導体素子、ドライバ基板等を備えた電子部品である。インバータ7は、不図示の配線によってモータケース10内のモータ2と電気的に接続されている。
【0031】
モータ2は、軸方向視において、差動機構5(差動歯車機構)とオーバーラップする部分を有する(
図3参照)。ここで、「軸方向視において」とは、回転軸X方向から視て、という意味である。
軸方向視において、モータ2は、遊星減速ギア4(減速歯車機構)にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、遊星減速ギア4(減速歯車機構)は、差動機構5(差動歯車機構)にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、遊星減速ギア4(減速歯車機構)は、モータ2にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、差動機構5(差動歯車機構)は、遊星減速ギア4(減速歯車機構)にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、差動機構5(差動歯車機構)は、モータ2にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、モータ2は、差動機構5(差動歯車機構)とオーバーラップする部分を有する。
【0032】
図3に示すように、モータケース10は、第1ケース部材11と、第1ケース部材11に外挿される第2ケース部材12と、第2ケース部材12の一端に接合されるカバー部材13を有する。第1ケース部材11は、回転軸Xを間隔を空けて囲む支持壁部111と、支持壁部111の他端111bに設けられたフランジ状の接合部112と、を有している。
支持壁部111はモータ2の回転軸Xに沿わせた向きで設けられている。支持壁部111の内側には、モータ2と、後記する動力伝達機構3の一部とが収容される。
【0033】
第2ケース部材12は、回転軸Xを間隔を空けて囲む周壁部121と、周壁部121の一端121aに設けられたフランジ状の接合部122と、周壁部121の他端121bに設けられたフランジ状の接合部123と、を有している。
第2ケース部材12の周壁部121は、第1ケース部材11の支持壁部111に外挿可能な内径で形成されている。
第1ケース部材11と第2ケース部材12は、第1ケース部材11の支持壁部111に、第2ケース部材12の周壁部121を外挿して互いに組み付けられている。
【0034】
周壁部121の他端121b側の接合部123は、回転軸X方向から、第1ケース部材11の接合部112に当接している。これら接合部123、112は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0035】
支持壁部111における一端111aと他端111bの間の領域には、内径側に延びる壁部110(カバー)が設けられている。壁部110は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。壁部110の回転軸Xと交差する領域に、ドライブシャフト9Aが挿通する開口110aが開口している。
【0036】
壁部110の、モータ2側(図中、右側)の面に、モータ2側に延びるモータ支持部115が設けられている。モータ支持部115は、開口110aを囲む筒状を成している。
モータ支持部115は、後記するコイルエンド253bの内側に挿入されている。モータ支持部115は、ロータコア21の端部21bに回転軸X方向の隙間をあけて対向している。モータ支持部115の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部115で支持されている。
【0037】
壁部110の、差動機構5側(図中、左側)の面に、筒壁部116が設けられている。筒壁部116は、開口110aを囲む筒状を成している。筒壁部116は、回転軸Xに沿って差動機構5側に延びている。筒壁部116の内周には、ベアリングB2が支持されている。ベアリングB2は、後記するデフケース50の筒壁部61の外周を支持している。
【0038】
ここで、支持壁部111の一端111a側と他端側111b側には、厚肉部118、119が設けられている(
図6参照)。厚肉部118、119は、支持壁部111の外周から径方向外側に膨出している。厚肉部118、119の径方向の厚みH2は、支持壁部111の径方向の厚みH1よりも厚くなっている。
【0039】
厚肉部118、119は、回転軸X周りの周方向における支持壁部111の全周に亘って設けられている。厚肉部118、119の外周面には、シール溝113、113がそれぞれ開口している。シール溝113、113は、回転軸X周りの周方向に沿って設けられており、厚肉部118、119の回転軸X周りの周方向の全周に亘ってそれぞれ設けられている。
【0040】
図3に示すように、シール溝113、113には、シール材C、Cが外嵌して取り付けられている。これらシール材C、Cは、支持壁部111に外挿された周壁部121の内周に圧接して、支持壁部111の外周と、周壁部121の内周との間の隙間を封止する。
【0041】
図6に示すように、第1ケース部材11の支持壁部111の外周には、突起111cが設けられている。突起111cは、回転軸X方向における厚肉部118、119の間の領域に設けられている。回転軸Xの径方向における突起111cの径方向の厚み(突出高さ)は、厚肉部118、119の径方向の厚みH2と同じである。
【0042】
突起111cは、回転軸X周りの周方向に延びると共に、回転軸Xを間隔を空けて囲む1つの壁である。突起111cは、回転軸X周りの周方向に沿って支持壁部111の全周に亘って設けられている。突起111cは、回転軸X周りの周方向で位相をずらして設けられており、支持壁部111の一端111a側から他端111b側に向うにつれて回転軸X方向の位置が異なる螺旋状に設けられている。径方向視において、突起111cは、回転軸Xに直交する直線Lpから傾いた直線Lqに沿って設けられている。直線Lpと直線Lqの成す角θは、螺旋を形成するリード角である。
【0043】
図7に示すように、支持壁部111の一端111a側では、突起111cは、接続壁111dを介して厚肉部118に接続されている。支持壁部111の他端111b側では、突起111cは、接続壁111eを介して厚肉部119に接続されている。接続壁111d、111eは、それぞれ回転軸Xに沿う向きに設けられている。回転軸Xの径方向における接続壁111d、111eの突出高さ(厚み)は、突起111c及び厚肉部118、119の厚みH2と同じである。
【0044】
図6、
図7に示すように、第1ケース部材11の支持壁部111に、第2ケース部材12の周壁部121が外挿される(
図6、
図7における破線参照)。
第2ケース部材12の周壁部121は、第1ケース部材11の支持壁部111の厚肉部118、119と、突起111cと、接続壁111d、111eとに当接する。
【0045】
これにより、周壁部121と支持壁部111の間には、支持壁部111の一端111a側から他端111b側に向かって連続する螺旋状の空間が形成される。この螺旋状の空間によって、クーラントである冷却水W(
図5参照)が通流する冷却路CP1が形成される。
冷却水Wは支持壁部111を介して、支持壁部111の内部に収容されたモータ2、オイルOLと熱交換を行う。なお、
図5では螺旋状の冷却路CP1を、簡略化して直線状に示している。
【0046】
図7に示すように、冷却路CP1は、支持壁部111の一端111a側において、突起111cと厚肉部118と接続壁111dとで囲まれた部分が冷却水Wの入口CP1aとなる。また、冷却路CP1は、支持壁部111の他端111b側において、突起111cと厚肉部119と接続壁111eとで囲まれた部分が冷却水Wの出口CP1bとなる。冷却水Wの入口CP1aと出口CP1bが、それぞれ螺旋状の空間の始点と終点に相当する。
【0047】
図6に示すように、冷却路CP1の入口CP1aには、配管P1の一端が接続されている。配管P1の他端は、後記するインバータケース17の冷却路CP2に接続されている。また、冷却路CP1の出口CP1bには、配管P2の一端が接続されている。配管P2の他端は、後記するオイルクーラ83に接続されている。
配管P1、P2は、それぞれ第2ケース部材12の周壁部121を貫通して設けられている。
【0048】
図3に示すように、カバー部材13は、回転軸Xに直交する壁部130と、接合部132とを有する。
第2ケース部材12から見てカバー部材13は、差動機構5とは反対側(図中、右側)に位置している。カバー部材13の接合部132は、第2ケース部材12の接合部122に回転軸X方向から接合されている。カバー部材13と第2ケース部材12は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。この状態において第2ケース部材12は、接合部122側(図中、右側)の開口が、カバー部材13で塞がれている。
【0049】
カバー部材13では、壁部130の中央部に、ドライブシャフト9Aの挿通孔130aが設けられている。
挿通孔130aの内周には、リップシールRSが設けられている。リップシールRSは、図示しないリップ部をドライブシャフト9Aの外周に弾発的に接触させている。挿通孔130aの内周と、ドライブシャフト9Aの外周との隙間が、リップシールRSにより封止されている。
壁部130における第2ケース部材12側(図中、左側)の面には、挿通孔130aを囲む周壁部131が設けられている。周壁部131の内周には、ドライブシャフト9AがベアリングB4を介して支持されている。
【0050】
接合部132の内径側には、モータ支持部135および接続壁136が設けられている。モータ支持部135は、周壁部131から見てモータ2側(図中、左側)に設けられている。モータ支持部135は、回転軸Xを間隔を空けて囲む筒状を成している。
モータ支持部135の外周には、円筒状の接続壁136が接続されている。接続壁136は、壁部130側(図中、右側)の周壁部131よりも大きい外径で形成されている。
接続壁136は、回転軸Xに沿う向きで設けられており、モータ2から離れる方向に延びている。接続壁136は、モータ支持部135と接合部132とを接続している。
【0051】
モータ支持部135の内側を、モータシャフト20の一端20a側が、モータ2側から周壁部131側に貫通している。
モータ支持部135の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部135で支持されている。
ベアリングB1と隣り合う位置には、リップシールRSが設けられている。
【0052】
接続壁136の内周に、油孔136a、136bが開口している。接続壁136で囲まれた空間(内部空間Sc)に、油孔136aからオイルOLが流入する。内部空間Scに流入したオイルOLは、油孔136bから排出される。リップシールRSは、接続壁136内のオイルOLのモータ2側への流入を阻止するために設けられている。
【0053】
図3に示すように、ギアケース14は、周壁部141と、周壁部141におけるモータケース10側の端部に設けられたフランジ状の接合部142と、を有している。周壁部141における接合部142と反対側(図中左側)の端部には、後記するベアリングB2の支持部145が設けられている。周壁部141は、接合部142に接続する筒壁部141aと、支持部145に接続する傾斜部141b(傾斜面)と、を有する。傾斜部141bは、筒壁部141aから支持部145に向かって内径が小さくなる向きに傾斜している。動力伝達機構3である遊星減速ギア4と差動機構5は、周壁部141の内側に収容される。
【0054】
図3に示すように、ギアケース14は、モータケース10から見て差動機構5側(図中、左側)に位置している。ギアケース14の接合部142は、モータケース10の第1ケース部材11の接合部112に、回転軸X方向から接合されている。ギアケース14と第1ケース部材11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。ギアケース14の接合部142と、第1ケース部材11の接合部112との合わせ面Tは、回転軸Xに直交する。
回転軸Xの径方向からみて、冷却路CP1は、回転軸Xに沿って合わせ面Tからモータ2側に離れる方向に延びている。
【0055】
接合されたモータケース10およびギアケース14の内部に形成される空間は、第1ケース部材11の壁部110(カバー)によって、2つに区画される。具体的には、支持壁部111と、壁部110と、カバー部材13とで囲まれた空間がモータ室Saとなる。モータ室Saには、モータ2が収容される。また、支持壁部111と、壁部110と、ギアケース14とで囲まれた空間がギア室Sbとなる。ギア室Sbでは、動力伝達機構3が収容される。カバーである壁部110は、ハウジングHSの内部において、モータ2と差動機構5に挟まれる。
【0056】
図3に示すように、ギア室Sbは、合わせ面Tを境界として、第1ケース部材11側が第1ギア室Sb1、ギアケース14側が第2ギア室Sb2となっている。
【0057】
ここでいうカバーは、ハウジングHS内に収容された部分を有するものであれば良く、壁部110のように、全体がハウジングHSに収容されていても良い。また、カバーは、たとえば、第1ケース部材11とは別体としてもよい。この場合、カバーは、モータケース10とギアケース14で挟んで固定しても良い。なお、カバーの一部がハウジングHS外に露出しても良い。
【0058】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を間隔を空けて囲むステータコア25と、を有する。
【0059】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
ロータコア21から見てモータシャフト20の一端20a側(図中、右側)に位置するベアリングB1は、カバー部材13のモータ支持部135の内周に支持されている。他端20b側(図中、左側)に位置するベアリングB1は、第1ケース部材11の円筒状のモータ支持部115の内周に支持されている。
【0060】
モータ支持部135、115は、後記するコイルエンド253a、253bの内径側に配置されている。モータ支持部135、115は、ロータコア21の一方の端部21aと他方の端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置されている。
【0061】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものである。珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成している。珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0062】
ロータコア21の外周を囲むステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものである。ステータコア25は、第1ケース部材11の円筒状の支持壁部111の内周に固定されている。
電磁鋼板の各々は、支持壁部111の内周に固定されたリング状のヨーク部251と、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出するティース部252と、を有している。
【0063】
本実施形態では、巻線253を、複数のティース部252に跨がって分布巻きした構成のステータコア25を採用している。ステータコア25は、回転軸X方向に突出するコイルエンド253a、253bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X方向の長さが長くなっている。
【0064】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0065】
第1ケース部材11の壁部110(モータ支持部115)には、開口110aが設けられている。モータシャフト20の他端20b側は、開口110aを差動機構5側(図中、左側)に貫通して、第1ギア室Sb1内に位置している。
モータシャフト20の他端20bは、後記するサイドギア54Aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0066】
モータシャフト20と壁部110の開口110aの間にはリップシールRSが挿入されている。
ギア室Sb内には、遊星減速ギア4と差動機構5を潤滑するためのオイルOLが封入されている。
リップシールRSは、ギア室Sb内のオイルOLがモータケース10内に流入することを阻止するために設けられている。
【0067】
図4に示すように、第1ギア室Sb1内において、モータシャフト20の他端20b側には、遊星減速ギア4のサンギア41がスプライン嵌合している。
【0068】
サンギア41の外周には歯部41aが形成されており、歯部41aには段付きピニオンギア43の大径歯車部431が噛合している。
【0069】
段付きピニオンギア43は、サンギア41に噛合する大径歯車部431(ラージピニオン)と、大径歯車部431よりも小径の小径歯車部432(スモールピニオン)とを有している。
大径歯車部431と小径歯車部432は、回転軸Xに平行な軸線X1方向に並んで配置された、一体のギア部品である。
【0070】
小径歯車部432の外周は、リングギア42の内周に噛合している。リングギア42は、回転軸Xを間隔を空けて囲むリング状を成している。リングギア42の外周には、係合歯が設けられ、係合歯が筒壁部141aの内周に設けられた歯部146aにスプライン嵌合している。リングギア42は、回転軸X回りの回転が規制されている。
【0071】
大径歯車部431および小径歯車部432の内径側をピニオン軸44が貫通している。
段付きピニオンギア43は、ピニオン軸44の外周にニードルベアリングNB、NBを介して回転可能に支持されている。
【0072】
図4に示すように、段付きピニオンギア43は、第1ケース部材11とギアケース14との合わせ面Tを挟んで、第1ギア室Sb1と第2ギア室Sb2とに跨って設けられている。
【0073】
段付きピニオンギア43の大径歯車部431は、第1ギア室Sb1内に位置している。
大径歯車部431は、回転軸Xの径方向内径側でサンギア41と噛合している。大径歯車部431は、回転軸Xの径方向外側で支持壁部111の内周面111s(
図3参照)と間隔を空けて対向していると共に、冷却路CP1とオーバーラップしている。
段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、第2ギア室Sb2内に位置している。
小径歯車部432は、回転軸Xの径方向外側でリングギア42と噛合している。
【0074】
図3に示すように、差動機構5は、入力要素であるデフケース50(デファレンシャルケース)と、出力要素であるドライブシャフト(出力軸)、差動要素である差動歯車セットを有する。詳細な説明は省略するが、デフケース50は、回転軸X方向に組み付けられた2つのケース部材から構成しても良い。
【0075】
デフケース50は、遊星減速ギア4の段付きピニオンギア43を支持するキャリアとしても機能する。
図4に示すように、段付きピニオンギア43は、ピニオン軸44を介して、デフケース50に回転可能に支持されている。
図8に示すように、本実施形態のデフケース50では、合計3つの段付きピニオンギア43が、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて配置されている。
【0076】
図3に示すように、デフケース50内には、差動歯車セットとして、傘歯車式のデファレンシャルギアであるピニオンメートギア52と、サイドギア54A、54Bが設けられている。ピニオンメートギア52は、ピニオンメートシャフト51に支持されている。
ピニオンメートシャフト51は、回転軸X上に配置された中心部材510と、中心部材510の外径側に連結されたシャフト部材511を有する。図示は省略するが、複数のシャフト部材511が回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられている。シャフト部材511は、デフケース50の径方向に延びる支持孔69に挿通され、支持されている。
【0077】
ピニオンメートギア52は、シャフト部材511の各々に1つずつ外挿され、回転可能に支持されている。
【0078】
デフケース50では、回転軸X方向における中心部材510の一方側にサイドギア54Aが位置し、他方側にサイドギア54Bが位置する。サイドギア54A、54Bは、それぞれデフケース50に回転可能に支持される。
サイドギア54Aは、回転軸X方向における一方側から、ピニオンメートギア52に噛合している。サイドギア54Bは、回転軸X方向における他方側から、ピニオンメートギア52に噛合している。
【0079】
デフケース50の一端側(図中、右側)の中央部には、開口60と、開口60を囲む筒壁部61が設けられている。筒壁部61は、モータケース10側に延びている。筒壁部61の外周は、ベアリングB2を介して、第1ケース部材11の壁部110に支持されている。
【0080】
デフケース50の内部には、開口60を挿通したドライブシャフト9Aが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフト9Aは、カバー部材13の壁部130の挿通孔130aを貫通し、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア4のサンギア41の内径側を回転軸X方向に横切って設けられている。
【0081】
図3に示すように、デフケース50の他端側(図中、左側)の中央部には、貫通孔65と、貫通孔を囲む筒壁部66が形成されている。筒壁部66に、ベアリングB2が外挿されている。筒壁部66に外挿されたベアリングB2は、ギアケース14の支持部145で保持されている。デフケース50の筒壁部66は、ベアリングB2を介して、ギアケース14で回転可能に支持されている。
【0082】
支持部145には、ギアケース14の開口部145aを貫通したドライブシャフト9Bが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフト9Bは、支持部145で回転可能に支持されている。筒壁部66は、ドライブシャフト9Bの外周を支持する軸支持部として機能する。
開口部145aの内周には、リップシールRSが固定されている。リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト9Bに外挿されたサイドギア54Bの筒壁部540の外周に弾発的に接触している。
これにより、サイドギア54Bの筒壁部540の外周と開口部145aの内周との隙間が封止されている。
【0083】
デフケース50の内部では、ドライブシャフト9(9A、9B)の先端部が、回転軸X方向に間隔を空けて対向している。
ドライブシャフト9(9A、9B)の先端部の外周に、デフケース50に支持されたサイドギア54A、54Bがそれぞれスプライン嵌合している。サイドギア54A、54Bとドライブシャフト9(9A、9B)とが、回転軸X回りに一体回転可能に連結されている。
【0084】
この状態においてサイドギア54A、54Bは、回転軸X方向で間隔をあけて、対向配置されている。サイドギア54A、54Bの間に、ピニオンメートシャフト51の中心部材510が位置している。
ピニオンメートシャフト51のピニオンメートギア52は、回転軸X方向の一方側に位置するサイドギア54Aおよび他方側に位置するサイドギア54Bに、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0085】
図4に示すように、デフケース50の一端側(図中、右側)の、開口60の外径側に、ピニオン軸44の一端44a側の支持孔62が形成されている。デフケース50の他端側(図中、左側)には、ピニオン軸44の他端44b側の支持孔68が形成されている。
【0086】
支持孔62、68は、回転軸X方向にオーバーラップする位置に形成される。支持孔62、68は、それぞれ、段付きピニオンギア43を配置する位置に合わせて、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて形成される。ピニオン軸44の一端44aが支持孔62に挿入され、他端44bが支持孔68に挿入される。ピニオン軸44は、他端44bが支持孔68に圧入されることで、ピニオン軸44はデフケース50に対して相対回転不能に固定されている。ピニオン軸44に外挿された段付きピニオンギア43は、回転軸Xに平行な軸線X1回りに回転可能に支持されている。
【0087】
図3に示すように、ギアケース14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。デフケース50が回転軸X回りに回転すると、オイルOLがデフケース50によって掻き上げられる。
詳細な説明は省略するが、デフケース50、ピニオン軸44等には、デフケース50に掻き上げられたオイルを導入するための油路、油孔等が設けられている。これによって、ベアリングB2、ニードルベアリングNB等の回転部材にオイルOLが導入されやすくなっている。
【0088】
ここで、
図8に示すように、ユニット1を搭載した車両の前進走行時に、ギアケース14側から見てデフケース50は、回転軸X周りの時計回り方向CWに回転する。
図4に示すように、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、ギアケース14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、
図8に示すように、段付きピニオンギア43の大径歯車部431は、軸線X1回りを反時計回り方向に自転しながら、回転軸X周りの時計回り方向CWに公転する。
【0089】
図8に示すように、第1ケース部材11における第1ギア室Sb1の上部には、キャッチタンク15が設けられている。キャッチタンク15は、回転軸Xと直交する鉛直線VLを挟んだ一方側(図中、右側)に位置している。
【0090】
図8に示すように、第1ケース部材11は、支持壁部111の一部を径方向外側に膨出して形成した膨出部151を有している。キャッチタンク15は、膨出部151の内側に形成された空間である。膨出部151は、回転軸Xを通る水平線HLに沿う向きに設けられた第1壁部151aと、鉛直線VLに沿う向きに設けられた第2壁部151bと、から構成されている。
膨出部151の第1壁部151aは、キャッチタンク15の底壁を構成する。膨出部151の第2壁部151bは、キャッチタンク15の側壁を構成する。
【0091】
キャッチタンク15と第1ギア室Sb1とは、仕切壁152で仕切られている。
仕切壁152は、膨出部151の下側で支持壁部111から分岐した1つの壁である。
仕切壁152は、大径歯車部431の最外周が描く公転軌跡である仮想円Im(
図8参照)よりも大径の仮想円Im’(
図9参照)に沿う向きに設けられている。仕切壁152は、鉛直線VLから水平線方向(
図8における右方向)に離れるにつれて、水平線HLに近づく向きに傾斜している。
【0092】
図8に示すように、キャッチタンク15は、仕切壁152に設けられた連通口152aを介して第1ギア室Sb1と連通している。連通口152aは、大径歯車部431の公転方向上流側に向けて開口している。
【0093】
図4に示すように、仕切壁152は、壁部110の第1ギア室Sb1側の面から回転軸X方向のギアケース14側に延びている。
【0094】
図9に示すように、膨出部151の第2壁部151bには、貫通孔155が設けられている。貫通孔155は、鉛直線VL方向における仕切壁152近傍に設けられている。また、第2壁部151bには、貫通孔155を囲むボス部156が設けられている。貫通孔155には、回転軸Xの径方向から配管P3の一端が内嵌している。配管P3と貫通孔155との間には、不図示のシールリングが介在している。
【0095】
図10に示すように、配管P3は、冷却路CP1を回転軸Xの径方向に貫通すると共に、第2ケース部材12の外側を通ってカバー部材13(
図2参照)まで及んでいる。配管P3の他端は、カバー部材13に設けた油孔136a(
図3参照)に連通している。
【0096】
ここで、
図6、
図7に示すように、キャッチタンク15を構成する膨出部151は、第1ケース部材11の支持壁部111の他端111b側に設けられている。
支持壁部111における膨出部151が設けられた領域では、突起111cは、膨出部151の外形に沿って支持壁部111の外周から突出している。
【0097】
また、
図6、
図7の破線で示すように、第2ケース部材12は、径方向外側に膨出した膨出部125を有している。膨出部125は、周壁部121の他端121b側に設けられている。膨出部125は、第1ケース部材11の膨出部151の外形に沿う形状を有している。
【0098】
具体的には、
図8に示すように、膨出部125は、水平線HLに沿う向きに設けられた第1壁部125aと、鉛直線VLに沿う向きに設けられた第2壁部125bと、から構成されている。
【0099】
図9に示すように、膨出部125は、配管P3が貫通する貫通孔126と、当該貫通孔126を囲むボス部127を有している。なお、配管P3と貫通孔126との間には、不図示のシールリングが介在している。
【0100】
本実施形態では、第1ケース部材11の支持壁部111に、第2ケース部材12の周壁部121を外挿してモータケース10とする際に、第1ケース部材11の膨出部151に第2ケース部材12の膨出部125が重なるようになっている。
これにより、モータケース10に形成される螺旋状の冷却路CP1は、モータ室Saと、第1ギア室Sb1と、キャッチタンク15とに跨る回転軸X方向の範囲に形成される(
図6参照)。
【0101】
図9に示すように、モータケース10におけるキャッチタンク15が設けられた領域では、冷却路CP1は、キャッチタンク15の構成する膨出部151の第1壁部151a(底壁)に隣接する部分を有する。また、冷却路CP1は、キャッチタンク15を構成する膨出部151の第2壁部151b(側壁)に隣接する部分を有する。
【0102】
図5に示すように、ユニット1には、冷却水Wの循環システム80が設けられている。
循環システム80は、前記したモータケース10の冷却路CP1とインバータケース17の冷却路CP2との間で、冷却水Wを循環させる。循環システム80は、さらに、オイルクーラ83、ウォーターポンプWPおよびラジエータ82を備えており、これらは冷却水Wが通流する配管等で接続されている。
【0103】
ウォーターポンプWPは、冷却水Wを循環システム80内において圧送する。
ラジエータ82は、冷却水Wの熱を放熱して冷却する装置である。
オイルクーラ83は、冷却水Wと、オイルOLとの熱交換を行う熱交換器である。
【0104】
ウォーターポンプWPに圧送された冷却水Wは、インバータケース17内の冷却路CP2を通流した後に、モータケース10内の冷却路CP1を通って、オイルクーラ83に供給される。オイルクーラ83は、冷却水Wと、オイルOLとの熱交換を行うことで、オイルOLを冷却する。オイルクーラ83を通流した冷却水Wは、ラジエータ82で冷却されたあと、再びインバータケース17の冷却路CP2に供給される。
【0105】
ここで、
図6に示すように、冷却路CP1は、入口CP1aで配管P1と接続されている。配管P1は、インバータケース17の冷却路CP2にも接続されている。また、冷却路CP1は、出口CP1bで第2ケース部材12を貫通する配管P2と接続されている。配管P2は、オイルクーラ83にも接続されている。
【0106】
インバータケース17の冷却路CP2から排出された冷却水Wは、配管P1を通って冷却路CP1の入口CP1aに供給される。冷却路CP2内では、冷却水Wは、入口CP1aから出口CP1bに向かって、モータケース10内を螺旋状に移動する。
冷却水Wは、モータケース10内を螺旋状に移動する過程で、モータ2の冷却と第1ギア室Sb1内のオイルOLの冷却と、キャッチタンク15内のオイルOLの冷却とを行う。
そして、冷却路CP1の出口CP1bに到達した冷却水Wは、配管P2からオイルクーラ83へ排出される。
【0107】
かかる構成のユニット1の作用を説明する。
図1に示すように、ユニット1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフト9A、9Bと、が設けられている。
【0108】
図3に示すように、モータ2が駆動されて、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体にモータシャフト20が回転する。モータシャフト20の回転は、遊星減速ギア4のサンギア41に入力される。
【0109】
遊星減速ギア4では、サンギア41が、モータ2の出力回転の入力部となっており、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、入力された回転の出力部となっている。
【0110】
図4に示すように、サンギア41が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア43(大径歯車部431、小径歯車部432)が、サンギア41側から入力される回転で、軸線X1回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、ギアケース14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X周りに公転する。
【0111】
ここで、段付きピニオンギア43では、小径歯車部432の外径が大径歯車部431の外径よりも小さくなっている。
これにより、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、モータ2側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
そのため、遊星減速ギア4のサンギア41に入力された回転は、段付きピニオンギア43により、大きく減速されたのちに、デフケース50(差動機構5)に出力される。
【0112】
図3に示すように、デフケース50が入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、デフケース50内で、ピニオンメートギア52と噛合するドライブシャフト9A、9Bが回転軸X回りに回転する。これによりユニット1が搭載された車両の左右の駆動輪K、K(
図1参照)が、伝達された回転駆動力で回転する。
【0113】
ギア室Sbの内部には、潤滑用のオイルOLが貯留される。ギア室Sb内のオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
図3および
図4に示すように、掻き上げられたオイルOLにより、サンギア41と大径歯車部431との噛合部と、小径歯車部432とリングギア42との噛合部と、ピニオンメートギア52とサイドギア54A、54Bとの噛合部とが潤滑される。
【0114】
図8に示すように、デフケース50の回転に伴って、大径歯車部431は、第1ギア室Sb1内を回転軸X周りの時計回り方向CWに回転(公転)する。大径歯車部431が回転軸X周りの時計回り方向CWに公転すると、第1ギア室Sb1内のオイルOLもまた、回転軸X周りの時計回り方向CWに流れる。
【0115】
具体的には、第1ギア室Sb1内のオイルOLのうち、鉛直線VL方向の下側に貯留されたオイルOLは、支持壁部111の内周面111s上を、回転軸X周りの時計回り方向CWに移動する(
図8における白抜き矢印a)。第1ギア室Sb1内のオイルOLのうち、鉛直線VL方向の上側に掻き上げられたオイルOLは、回転軸X周りの時計回り方向CW(
図8における白抜き矢印b)に移動しつつ、回転軸Xの径方向外側に飛散する。
【0116】
第1ギア室Sb1の上部には、キャッチタンク15が設けられている。キャッチタンク15は、大径歯車部431の公転方向における下流側に位置している。大径歯車部431の公転で掻き上げられて飛散したオイルOLの一部は、連通口152aからキャッチタンク15内に流入する。
【0117】
キャッチタンク15は、鉛直線VLを挟んだ右側、すなわち大径歯車部431の公転方向における下流側に位置している。これにより、回転軸X回りに公転する大径歯車部431で掻き上げられたオイルOLの多くが、キャッチタンク15内に流入できるようになっている(
図8参照)。なお、
図8では、大径歯車部431が軸線X1回りの反時計回り方向に自転すると共に回転軸X周りの時計回り方向CWに公転する場合を例示したが、大径歯車部431の自転方向及び公転方向は、
図8に示す回転方向とは逆回転としてもよい。すなわち、大径歯車部431は軸線X1回りの時計回り方向に自転すると共に回転軸X周りの反時計回り方向に公転しても良い。この場合、大径歯車部431の軸線X1回りの時計回り方向の自転を利用してキャッチタンク15へオイルOLが導入される。
【0118】
ここで、
図9に示すように、仕切壁152は、回転軸X周りに回転する大径歯車部431の最外周が通る仮想円Imの径方向外側に位置している。仕切壁152は、仮想円Im’に沿う弧状を成している。そして、仕切壁152は、鉛直線VLから水平線方向HL外側に離れるにつれて、鉛直線VL方向の高さが低くなる向きに(水平線HLに近づく向き)に傾斜している。従って、キャッチタンク15に流入したオイルOLは、仕切壁152の傾斜に沿って鉛直線VL方向下側に移動する。よって、キャッチタンク15内に流入したオイルOLは、仕切壁152と第2壁部151bとで囲まれたキャッチタンク15の領域に溜まるようになっている。
【0119】
仕切壁152と第2壁部151bとで囲まれた領域に溜まったオイルOLは、第2壁部151bを貫通してキャッチタンク15内に開口する配管P3に流入する。配管P3に流入したオイルOLは、配管P3の他端が接続されたカバー部材13側の油孔136a(
図2参照)から、内部空間Scへ排出される(
図3参照)。内部空間Scに供給されたオイルOLは、ベアリングB4を潤滑したのち、油孔136bから排出される。油孔136bから排出されたオイルOLは、不図示の配管を介して、油孔Haから再びギア室Sb内に供給される。
【0120】
ここで、動力伝達機構3では、大径歯車部431の回転半径(公転半径)が最も大きい。第1ギア室Sb1内のオイルOLは、大径歯車部431に掻き上げられることで周方向に大きく移動する(飛散する)。掻き上げられたオイルOLが、キャッチタンク15に導入されることで、第1ギア室Sb1内のオイルレベルが下がる。これにより、大径歯車部431の公転時のオイルOLの撹拌抵抗を下げることができる。
【0121】
また、本実施形態では、大径歯車部431と、支持壁部111の内周面111sと、冷却路CP1とが、径方向でオーバーラップしている(
図3参照)。そのため、内周面111sに沿って移動するオイルOLと、冷却路CP1内を通流する冷却水Wとが、支持壁部111の領域を介して熱交換可能となっている。
ユニット1を搭載した車両の走行時に、大径歯車部431が回転軸X回りに公転すると、第1ギア室Sb1内のオイルOLのうち、鉛直線VL方向の下側に貯留されたオイルOLは、支持壁部111の内周面111sに沿って回転軸X周りの時計回り方向CWに大きく移動する。この過程で、オイルOLは、冷却路CP1の冷却水Wとの熱交換により冷却される。
【0122】
また、第1ギア室Sb1内のオイルOLのうち、掻き上げられたオイルOLの一部は、膨出部151の第1壁部151aに衝突した後、キャッチタンク15内に導入される。
ここで、冷却路CP1は、キャッチタンク15を構成する膨出部151の第1壁部151a(底壁)に隣接する部分を有している。掻き上げられたオイルOLのうち、第1壁部151aの内周に沿って流れるオイルOLは、膨出部151における第1壁部151aの領域を介して、冷却路CP1を通流する冷却水の熱交換により冷却される(
図9参照)。よって、キャッチタンク15へ流入されるオイルOLの温度を予め低くすることができる。
【0123】
また、冷却路CP1は、キャッチタンク15を構成する膨出部151の第2壁部151b(側壁)に隣接する部分を有している。これにより、キャッチタンク15内に貯留されたオイルOLについても、膨出部151における第2壁部151bの領域を介して、冷却路CP1を通流する冷却水Wと熱交換により冷却される。
よって、キャッチタンク15から配管P3を通って、カバー部材13側の内部空間Scへ供給されるオイルOLを、効率的に冷却することができる。
【0124】
このように、本実施形態にかかる冷却路CP1は、モータ室Saと、第1ギア室Sb1と、キャッチタンク15に跨る範囲に設けられている。そのため、モータ室Sa周りのみに冷却路を設ける場合よりも、冷却路の全長が長くなっており、冷却水Wとモータケース10(ハウジングHS)との接触面積が多くなっている。これにより、ユニット1における熱交換効率を向上させている。
【0125】
以下に、本発明のある態様におけるユニット1の例を列挙する。
(1)ユニット1は、
モータ2と遊星歯車機構4を収容するハウジングHSを有する。
ハウジングHSは、モータ2を冷却する冷却水W(クーラント)が流れる冷却路CP1(流路)を有する。
遊星歯車機構4は、段付きピニオンギア43(ステップドピニオンギア)を有する。
段付きピニオンギア43は、小径歯車部432(スモールピニオン)と大径歯車部431(ラージピニオン)とを有する。
モータ2と遊星歯車機構4は、回転軸X方向に並んでいる。
回転軸Xの径方向から視て(径方向視において)、冷却路CP1は、回転軸X方向に延びる。
冷却路CP1は、回転軸Xの径方向で、大径歯車部431とオーバーラップする部分を有する。
【0126】
このように構成すると、ハウジングHSと冷却水Wとの接触面積が増加する。これにより、ユニット1における熱交換効率が向上する。
具体的には、モータ2を冷却する冷却路CP1を、大径歯車部431を収容する第1ギア室Sb1側まで及ばせることで、モータ2だけを冷却する場合よりも、冷却路CP1の全長を長くできる。冷却路CP1の全長を長くできる分、冷却水WとハウジングHSとの接触面積が増加するので、ユニット1における熱交換効率が向上する。
また、冷却路CP1でモータ2の冷却と、オイルOLの冷却とを兼ねることができる。これにより、オイルOLを冷却するために、モータ2の冷却路とは別の冷却路を設けて、配管等で接続する必要がない。
また、遊星歯車機構4では、大径歯車部431の回転半径が最も大きい。ハウジングHS内のオイルOLは、大径歯車部431で掻き上げられることで周方向に大きく移動する(飛散する)。
そこで、上記のように構成して、ハウジングHS内の冷却路CP1の一部を大径歯車部431と径方向にオーバーラップさせることで、周方向に大きく移動するオイルOLとの冷却水Wとの熱交換が行われる距離を長くできる。
【0127】
(2)ハウジングHSは、冷却路CP1を有するモータケース10(流路付ケース)とモータケース10と対向するギアケース14(対向ケース)と、を有する。
回転軸Xの径方向から視て、冷却路CP1は、モータケース10とギアケース14との合わせ面Tから回転軸X方向に離れる方向に延びる。
合わせ面Tは、回転軸X方向における大径歯車部431からオフセットした位置に設けられている。
【0128】
このように構成すると、冷却水WとハウジングHSとの接触面積が増加する。これにより、ユニット1における熱交換効率が向上する。
具体的には、冷却路CP1を有するモータケース10を大径歯車部431と径方向にオーバーラップする位置まで延ばすことで、合わせ面Tから回転軸X方向に離れる方向に延びる冷却路CP1の全長を長くすることができる。これにより、冷却路CP1内を通る冷却水WとハウジングHSとの接触面積が増加するので、ユニット1における熱交換効率が向上する。
また、合わせ面Tを大径歯車部431から回転軸X方向にオフセットさせることで、大径歯車部431で掻き上げられたオイルOLが、合わせ面T近辺からリークすることを低減できる。
【0129】
(3)遊星歯車機構4のキャリアであるデフケース50は、差動歯車機構5の入力要素を構成する。
デフケース50は、遊星歯車機構4の段付きピニオンギア43と一体回転可能に接続される。
差動歯車機構5はギアケース14に収容されている。
回転軸Xの径方向から視て、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、ギアケース14に固定されたリングギア42と噛合する。
【0130】
例えば、冷却路CP1を小径歯車部431の外径側まで延ばした場合、合わせ面Tは、周壁部141の筒壁部141aと傾斜部141bとの境界部(
図3参照)となる。そうすると、組付け時にギア室Sb内に遊星歯車機構4、差動歯車機構5をセットすることが難しくなる。
そこで、上記のように構成して、合わせ面Tの位置を、大径歯車部431と小径歯車部432との間の位置とすることで、小径歯車部432、デフケース50、差動歯車機構5をギアケース14にまとめてセットできる。ユニット1における熱交換効率を向上しつつ、ユニット1の構成部品の組付性も損なわない点で有利である。
【0131】
(4)回転軸Xの径方向から視て、冷却路CP1は、モータ2とオーバーラップする部分を有する。
【0132】
このように構成すると、冷却路CP1を大径歯車部431及びモータ2と回転軸Xの径方向でオーバーラップする範囲に設けることで、冷却路CP1の全長が長くなる。これにより、ハウジングHSと冷却水Wとの接触面積が増加するので、ユニット1における熱交換効率が向上する。
【0133】
(5、6)ハウジングHS内にキャッチタンク15を有する。
キャッチタンク15は、冷却路CP1と大径歯車部431の公転軌道である仮想円Imとに挟まれた部分を有する。
【0134】
このように構成すると、大径歯車部431の公転に伴い飛散したオイルOLがキャッチタンク15に導入されるため、ハウジングOL内のオイルレベルが下がる。これにより、大径歯車部431の公転時のオイルOLの撹拌抵抗を下げることができる。
また、キャッチタンク15に導入されたオイルOLも冷却路CP1によって冷却することができるため、ユニット1における熱交換効率が向上する。
【0135】
なお、
図6、
図7に示すように、本実施形態では、ユニット1を車両に搭載した状態において、冷却路CP1の入口CP1aと出口CP1bを、モータ2の回転軸X(水平線HL)よりも鉛直線VL方向上方に設けたものを例示したが、この態様に限定されない。例えば、入口CP1aをモータ2の回転軸X(水平線HL)よりも鉛直線VL方向上方に設け、出口CP1bをモータ2の回転軸X(水平線HL)よりも鉛直線VL方向下方に設けても良い。これにより、重力を利用して冷却水Wの流れをスムーズにすることができる。
【0136】
本発明のある態様は、少なくとも動力伝達機構3を収容するハウジングHSを例示した。本発明の他の態様として、少なくともモータを収容するハウジングとしても良い。この場合、同一のハウジング内に動力伝達機構が収容されていても良いし、収容させていなくても良い。
また、本発明の他の態様として、少なくともインバータを収容するハウジングとしても良い。この場合、同一のハウジング内に動力伝達機構が収容されていても良いし、収容させていなくても良い。
また、本発明の他の態様として、少なくともバッテリを収容するハウジングとしても良い。この場合、同一のハウジング内に動力伝達機構が収容されていても良いし、収容させていなくても良い。
【0137】
動力伝達機構3は、例えば、歯車機構、環状機構等を有する。
歯車機構は、例えば、減速歯車機構、増速歯車機構、差動歯車機構(差動機構)等を有する。
減速歯車機構及び増速歯車機構は、例えば、遊星歯車機構、平行歯車機構等を有する。
環状機構は、例えば、無端環状部品等を有する。
無端環状部品等は、例えば、チェーンスプロケット、ベルト&プーリ等を有する。
【0138】
差動機構は、例えば、傘歯車式のデファレンシャルギア、遊星歯車式のデファレンシャルギア等である。
差動機構は、入力要素であるデファレンシャルケースと、出力要素である2つの出力軸と、差動要素である差動歯車セットと、を有する。
傘歯車式のデファレンシャルギアにおいて、差動歯車セットは傘歯車を有する。
遊星歯車式のデファレンシャルギアにおいて、差動歯車セットは遊星歯車を有する。
【0139】
ユニット1は、デファレンシャルケースと一体回転するギアを有するものであってもよい。
例えば、平行歯車機構のうちのファイナルギア(デフリングギア)は、デファレンシャルケースと一体に回転する。例えば、遊星歯車機構のキャリアとデファレンシャルケースとが接続している場合、ピニオンギアがデファレンシャルケースと一体に回転(公転)する。
【0140】
例えば、モータ2の下流に減速歯車機構が接続されている。減速歯車機構の下流に差動歯車機構が接続されている。即ち、モータ2の下流には、減速歯車機構を介して差動歯車機構が接続されている。なお、減速歯車機構に替えて増速歯車機構としても良い。
シングルピニオン型の遊星歯車機構は、例えば、サンギアを入力要素とし、リングギアを固定要素とし、キャリアを出力要素とすることができる。
ダブルピニオン型の遊星歯車機構は、例えば、サンギアを入力要素とし、リングギアを出力要素とし、キャリアを固定要素とすることができる。
シングルピニオン型又はダブルピニオン型の遊星歯車機構のピニオンギアは、例えば、ステップドピニオンギア、ノンステップドピニオンギア等を用いることができる。
ステップドピニオンギアは、ラージピニオンおよびとスモールピニオンとを有する。例えば、ラージピニオンをサンギアに噛合させると好適である。例えば、スモールピニオンをリングギアに嵌合させると好適である。
ノンステップドピニオンギアは、ステップドピニオンギアではない形式である。
【0141】
なお、本実施形態では、一例として、車両に搭載されたユニットを例示したが、この態様に限定されない。ユニットは、車両以外にも適用することができる。
【0142】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 :ユニット
2 :モータ
10 :モータケース(流路付きケース)
14 :ギアケース(対向ケース)
15 :キャッチタンク
4 :遊星歯車機構
42 :リングギア
43 :段付きピニオンギア(ステップドピニオンギア)
431 :大径歯車部(ラージピニオン)
432 :小径歯車部(スモールピニオン)
5 :差動機構(差動歯車機構)
50 :デフケース(キャリア)
CP1 :冷却路(流路)
HS :ハウジング
T :合わせ面
W :冷却水(クーラント)
X :回転軸