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特許7486928化粧品用水性分散体、分散保護剤、化粧品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】化粧品用水性分散体、分散保護剤、化粧品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20240513BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 8/03 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240513BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/73
A61K8/03
A61K8/81
A61K8/36
A61Q19/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019147861
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028308
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-05-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 悠子
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-063282(JP,A)
【文献】特開2007-009267(JP,A)
【文献】特開2002-180110(JP,A)
【文献】国際公開第2006/101106(WO,A1)
【文献】特開2005-139102(JP,A)
【文献】特開2006-282654(JP,A)
【文献】特開2016-094360(JP,A)
【文献】特許第6420518(JP,B1)
【文献】特開2010-110701(JP,A)
【文献】再公表特許第2004/039735(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/19
A61K 8/73
A61K 8/03
A61Q 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金ナノコロイド、酸性ムコ多糖類、及びポリビニルピロリドンを含む、化粧品用水性分散体。
【請求項2】
金ナノコロイドと、ヒアルロン酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、並びにそれらの塩、及びアセチル化物からなる群から選ばれる少なくとも一種と、ポリビニルピロリドンとを含む、化粧品用水性分散体。
【請求項3】
金ナノコロイド、酸性ムコ多糖の塩及び/又はアセチル化物、並びにポリビニルピロリドンを含む、化粧品用水性分散体。
【請求項4】
酸性ムコ多糖類及びポリビニルピロリドンからなる、金ナノコロイド用分散保護剤。
【請求項5】
ヒアルロン酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、酸性ムコ多糖の塩、及び酸性ムコ多糖のアセチル化物からなる群から選ばれる少なくとも一種、並びにポリビニルピロリドンからなる、金ナノコロイド用分散保護剤。
【請求項6】
金ナノコロイド水溶液と酸性ムコ多糖類とポリビニルピロリドンとを混合して水性分散体を得る工程と、
当該水性分散体と、硫酸マグネシウム、キレート剤、カルボマー及びクエン酸緩衝液からなる群から選ばれる少なくとも一種とを混合する工程と、を有する化粧品の製造方法。
【請求項7】
金ナノコロイド水溶液とヒアルロン酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、並びにそれらの塩、及びアセチル化物からなる群から選ばれる少なくとも一種とポリビニルピロリドンとを混合して水性分散体を得る工程と、
当該水性分散体と、硫酸マグネシウム、キレート剤、カルボマー及びクエン酸緩衝液からなる群から選ばれる少なくとも一種とを混合する工程と、を有する化粧品の製造方法。
【請求項8】
金ナノコロイド水溶液と酸性ムコ多糖の塩及び/又はアセチル化物とポリビニルピロリドンとを混合して水性分散体を得る工程と、
当該水性分散体と、硫酸マグネシウム、キレート剤、カルボマー及びクエン酸緩衝液からなる群から選ばれる少なくとも一種とを混合する工程と、を有する化粧品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品用水性分散体、分散保護剤、及び化粧品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金や白金等の貴金属のナノコロイドは、化粧品用材料としての利用が期待されている。特に、金ナノコロイドは、抗炎症、抗老化、肌の弾性回復等の各種生理機能が報告されており、化粧品用材料として有望である(非特許文献1)。
【0003】
この金ナノコロイドの安定性を向上させるために、特許文献1ではキトサンが、特許文献2では界面活性剤または水溶性高分子が、それぞれ金ナノコロイドの保護剤として提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-060815号公報
【文献】特開平4-178312号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of Pharmaceutics Volume2018, 19 pages
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者等が鋭意検討した結果、硫酸マグネシウム、キレート剤、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)、クエン酸緩衝液等の化粧品用途で一般的に用いられる所定の材料と貴金属のナノコロイドを混合した場合に、ナノコロイドの凝集・沈殿が生じる等、安定性に問題があることが明らかとなった。ナノコロイドの凝集・沈殿については、特許文献1又は2の保護剤を用いても、十分に防止することが難しい。
【0007】
そこで本発明は、上記所定の材料と混合した場合であっても、金又は白金ナノコロイドの凝集・沈殿を十分に防止することが可能な化粧品用分散体、分散保護剤、及び化粧品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[6]を提供する。
[1] 金又は白金ナノコロイド、及び酸性ムコ多糖類を含む、化粧品用水性分散体。
[2] ポリビニルピロリドンを更に含む、[1]に記載の化粧品用水性分散体。
[3] 酸性ムコ多糖類からなる、金又は白金ナノコロイド用分散保護剤。
[4] 酸性ムコ多糖類及びポリビニルピロリドンからなる、金又は白金ナノコロイド用分散保護剤。
[5] 金又は白金ナノコロイド水溶液と酸性ムコ多糖類とを混合して水性分散体を得る工程と、当該水性分散体と、硫酸マグネシウム、キレート剤、カルボマー及びクエン酸緩衝液からなる群から選ばれる少なくとも一種とを混合する工程と、を有する化粧品の製造方法。
[6] 水性分散体を得る工程において、ポリビニルピロリドンを更に混合する、[5]に記載の化粧品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧品用分散体、分散保護剤、及び化粧品の製造方法によれば、硫酸マグネシウム、キレート剤、カルボマー、クエン酸緩衝液等と混合した場合であっても、金又は白金ナノコロイドの凝集・沈殿を十分に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
(化粧品用水性分散体)
本実施形態の化粧品用水性分散体(以下、単に「水性分散体」ともいう。)は、金又は白金ナノコロイド、及び酸性ムコ多糖類を含む。かかる水性分散体によれば、ナノコロイドの安定性に優れ、硫酸マグネシウム、キレート剤、カルボマー、クエン酸緩衝液等の化粧品用途で一般的に用いられる所定の材料を配合した場合であっても、ナノコロイドの凝集を十分に防止することができる。
【0012】
水性分散体は金ナノコロイドを含むことが好ましい。金ナノコロイドは、赤紫色を呈しており、光や熱に対して安定であるため、化粧品の着色剤として活用されることも期待される。本実施形態の水性分散体は、化粧品用途で一般的に用いられる上記所定の材料と混合した場合であっても、凝集・沈殿が十分に防止され、配合時や保存時における変色の心配がない。同様の理由で、後述する分散保護剤、及び化粧品の製造方法に関しても、金ナノコロイドを適用することが好ましい。
【0013】
金又は白金ナノコロイドとしては、従来公知の方法で製造できるものや、市販のものを適用することができる。通常は、金又は白金ナノコロイドが水中に分散した金又は白金ナノコロイド水溶液(分散液)として入手可能である。
【0014】
金又は白金ナノコロイドの平均粒子径は、例えば500nm以下とすることができ、ナノコロイドの安定性を更に向上させる観点から、300nm以下であると好ましく、200nm以下であるとより好ましい。また、金又は白金ナノコロイドの平均粒子径の下限は、特に限定されないが、例えば1nm以上又は5nm以上とすることができる。ナノコロイドの平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができ、具体的な装置としては、Zetasizer Nano(Malvern社製)等を挙げることができる。粒子の平均粒子径は、個数基準での累積粒度分布における累積50%となる粒子径(d50)であってよい。
【0015】
水性分散体における金又は白金ナノコロイドの含有量は、配合性等の観点から、水性分散体の総量に対して0.00000001~1.0質量%であると好ましく、0.00000001~0.1質量%であるとより好ましく、0.0000001~0.01質量%であると更に好ましい。
【0016】
酸性ムコ多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン等の酸性ムコ多糖、及びそれらの塩、アセチル化物等が挙げられる。酸性ムコ多糖類は、ヒアルロン酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸又はそれらの塩であると好ましく、ヒアルロン酸又はその塩であると更に好ましい。
酸性ムコ多糖の塩としては、無機塩又は有機塩が挙げられる。無機塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられ、有機塩としては、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。酸性ムコ多糖の塩は、ナトリウム塩又はカリウム塩であると好ましい。
【0017】
水性分散体における酸性ムコ多糖類の含有量は、ナノコロイドの安定性をより向上させる観点から、0.0000001~1.0質量%であると好ましく、0.0000005~0.8質量%であるとより好ましく、0.000001~0.5質量%であると更に好ましい。
【0018】
水性分散体は、界面活性剤を更に含有していてもよい。界面活性剤としては、特に限定されず、一般的に化粧品で使用されるようなアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が使用できる。
【0019】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、PEG脂肪酸アミドMEA硫酸塩、アルキルメチルタウリン塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、脂肪酸塩、アシルアミノ酸塩、アルキル乳酸塩、アルキルイセチオン酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレンオレイルメチルアンモニウム、塩化ポリオキシエチレンベヘニルリルメチレンアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C12-18)ジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ジココイルエチルヒドロキシエチルアンモニウム、ヤシ油アルキルPGジモニウムクロリドリン酸、リノール酸アミドプロピルPGジモニウムクロリドリン酸、ステアラミドプロピルメチルアミン、ジメチルステアラミン、POEヤシ油アルキルアミン等が挙げられる。
【0020】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型両性界面活性剤、ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン等のカルボイシベタイン型の両性界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等のアミドスルホベタイン型の両性界面活性剤、ココアンホジ酢酸ナトリウム等のイミダゾリニウムベタイン型の両性界面活性剤、ラウラミノプロピオン酸ナトリウム等のプロピオン酸型の両性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型の両性界面活性剤、N-[3-アルキル(12,14)オキシ-2-ヒドロキシプロピル]-L-アルギニン塩酸塩等のアミノ酸型の界面活性剤等が挙げられる。
【0021】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤、ソルビタン及びポリオキシエチレンソルビタン型の非イオン性界面活性剤、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤、ピロリドンカルボン酸(PCA)イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型の非イオン性界面活性剤、アルカノールアミド型の非イオン性界面活性剤、ショ糖エステル型の非イオン性界面活性剤、アルキルグリコシド型の非イオン性界面活性剤、ジステアリン酸PEG型の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
これらは、1種又は2種以上を用いることができる。水性分散体が界面活性剤を含む場合の含有量は、皮膚への刺激性及び配合性等の観点から、水性分散体の総量に対して0.001~60質量%であることが好ましく、0.01~50質量%であるとより好ましく、0.05~40質量%であると更に好ましい。
【0023】
水性分散体は、酸性ムコ多糖類に加えて分散剤を更に含有してもよい。分散剤としては、例えば、グアーガム、カラギーナン、アルギン酸塩、コーンスターチ、キサンタンガム等の天然物由来の水溶性高分子、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化グアーガムなどの天然物を原料に化学修飾をした半合成タイプの水溶性高分子、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール等の化学合成による水溶性高分子が挙げられる。これらの中で、ナノコロイドの安定性をより向上させる観点から、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0024】
これらは、1種又は2種以上を用いることができる。水性分散体が分散剤(特にポリビニルピロリドン)を含む場合の含有量は、皮膚への刺激性及び配合性等の観点から、水性分散体の総量に対して0.00001~10質量%であることが好ましく、0.0001~8質量%であるとより好ましく、0.001~5質量%であると更に好ましい。
【0025】
水性分散体は、連続相である水性媒体を含む。水性媒体としては、水自体であってもよいが、水と共に有機溶媒、添加剤等の他の成分等を含んでいてもよく、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含んでいてもよい。添加剤としては、酸化防止剤や防腐剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばトコフェロール等のビタミンE、アスコルビン酸等が挙げられる。防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、1,2ヘキサンジオール、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0026】
(金又は白金ナノコロイド用分散保護剤)
本実施形態の金又は白金ナノコロイド用分散保護剤(以下、単に「分散保護剤」ともいう。)は、酸性ムコ多糖類からなるものであるか、又は酸性ムコ多糖類およびポリビニルピロリドンからなるものである。かかる分散保護剤を金又は白金ナノコロイドに添加すると、ナノコロイドの安定性を向上させることができる。ナノコロイドの安定性をより向上させる観点から、分散保護剤は、酸性ムコ多糖類及びポリビニルピロリドンからなるものであると好ましい。
【0027】
酸性ムコ多糖類からなる、又は酸性ムコ多糖類及びポリビニルピロリドンからなる分散保護剤は、金又は白金ナノコロイドを含む水性媒体に、上述の水性分散体の場合と同様の含有量となるように添加されることが望ましい。また、酸性ムコ多糖類及びポリビニルピロリドンは、同時に添加されても、別々に添加されてもよい。
【0028】
(化粧品の製造方法)
本実施形態の化粧品の製造方法は、金又は白金ナノコロイド水溶液(分散液)と酸性ムコ多糖類とを混合して水性分散体を得る工程と、当該水性分散体と、硫酸マグネシウム、キレート剤、カルボマー及びクエン酸緩衝液からなる群から選ばれる少なくとも一種の所定の材料とを混合する工程とを有する。水性分散体を得る工程においては、ポリビニルピロリドンを更に混合することが好ましい。
【0029】
本実施形態の化粧品の製造方法は、上記工程を有するものであればよく、化粧品の製造方法に一般的に適用されるその他の工程、例えば加熱工程、中和工程等を有していてもよい。
【0030】
キレート剤としては、化粧品に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、ピロリドンカルボン酸、ポリリン酸、メタリン酸等の有機酸、また、有機酸の塩として、これらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム、バリウム塩等、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、フィチン酸、ヒドロキシイミノジコハク酸4Na等が挙げられる。
【0031】
水性分散体を得る工程においては、金又は白金ナノコロイド水溶液、酸性ムコ多糖類及びポリビニルピロリドン以外に、ナノコロイドを凝集させることのない上述の界面活性剤、分散剤、酸化防止剤、防腐剤等を加えてもよく、金又は白金ナノコロイド水溶液以外に水性媒体を更に加えてもよい。
【0032】
水性分散体と上記所定の材料とを混合する工程においては、通常化粧品に配合される他の成分(化粧品用添加剤)を更に混合してもよく、上述の界面活性剤、分散剤、酸化防止剤、防腐剤等を本工程で混合してもよい。混合に際しては、各材料を個別に添加してもよく、まとめて添加してもよく、必要に応じて一部の材料を添加して混合した後に別の材料を加えて再度混合してもよい。また、クエン酸緩衝液に関しては、クエン酸緩衝液として混合してもよく、クエン酸緩衝液を構成する成分、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム等を個別に混合してもよい。
【0033】
上記化粧品用添加剤としては、例えば、油性成分、粉体成分、油ゲル化剤、水性成分、水溶性高分子、紫外線吸収剤、美容成分等が挙げられ、これらの添加剤は、各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0034】
油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、エステル油類、硬化油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、モクロウ、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、ロジン酸ペンタエリスリットエステル、ホホバ油、トリ2―エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類、オレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、トリメチルシロキケイ酸、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン等のシリコーン油類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上用いることができる。これらの中でもトリ2―エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソノニル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等の低分子量エステル油が、伸び広がりや付着性の観点から好ましい。
【0035】
粉体成分としては、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、シリカ等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄雲母、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリル共重合体等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン二酸化珪素、酸化亜鉛二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末のラメ剤、タール色素、天然色素等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。尚、これら粉体成分は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックスクワランス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0036】
油ゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、疎水性煙霧状シリカ、有機変性ベントナイト等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
【0037】
水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等が挙げられる。
【0038】
水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のものを挙げることができる。
【0039】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0040】
美容成分としては、例えばビタミン類、タンパク質、消炎剤、生薬等が挙げられる。
【0041】
また、上記以外の各種成分としては、例えば、保湿剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、消泡剤、香料、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタンなどのフッ素系油剤;多価アルコール、糖類、アミノ酸、各種ポリマー、エタノール、増粘剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、殺菌剤、皮膚賦活剤なども、本発明の効果を損なわない範囲内で配合可能である。
【0042】
本実施形態の方法により製造される化粧品における金又は白金ナノコロイドの含有量は、用途に応じて適宜設定することができるが、例えば0.0000001~0.01質量%とすることができる。
【0043】
本実施形態の方法により製造される化粧品は、その剤形や製品形態が特に限定されるものではなく、油中水型、水中油型、水分散型、プレス状、固形剤、パウダーなどの剤形とすることができ、また製品形態(化粧品)としては、洗顔フォーム、洗顔クリーム、クレンジングジェル、クレンジングリキッド、クレンジングオイル、マッサージクリーム、パック、化粧水、ジェル、乳液、クリーム、美容液、化粧下地、日焼け止めなどの皮膚用化粧品、ファンデーション、水白粉、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、コンシーラー、口紅、リップクリーム等の仕上げ用化粧品、ヘアミスト、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアトニック、ヘアクリーム、ポマード、チック、液体整髪料、セットローション、ヘアスプレー、染毛料等の頭髪用化粧品、パウダースプレー、ロールオン等の制汗剤などを例示することができる。
【実施例
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
<硫酸マグネシウム、キレート剤又はクエン酸緩衝液との配合>
(実施例1~4、比較例1~5)
原料(1A)~(10A)を表1に示す処方(単位:質量%)で、以下の手順で配合し、以下の基準で初期配合性及び経時安定性を評価した。その結果を表1に示す。
[手順]
(I) 原料(2A)に、予め混合した原料(3A)~(7A)を添加して均一混合する。
(II) (I)で得られた混合液に、原料(1A)を添加して均一混合する。
(III) (II)で得られた混合液に、原料(8A)~(10A)を添加して均一混合する。
【0046】
[初期配合性]
手順(III)で得られた混合液を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:きれいな赤紫色であり、変色は確認されなかった。
B:ごく僅かに紫色に変色したが、沈殿は確認されなかった。
C:紫色に変色した。
【0047】
[経時安定性]
手順(III)で得られた混合液を50℃で1ヶ月保管した後に目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:きれいな赤紫色であり、変色は確認されなかった。
B:ごく僅かに紫色に変色したが、沈殿は確認されなかった。
C:僅かに紫色に変色したが、沈殿は確認されなかった。
D:紫色に変色したが、沈殿は確認されなかった。
E:紫色に変色し、沈殿が確認された。
【0048】
【表1】
【0049】
<カルボマーとの配合>
(実施例5~6、比較例6~8)
原料(1B)~(9B)を表2に示す処方(単位:質量%)で、以下の手順で配合し、以下の基準で初期配合性及び経時安定性を評価した。その結果を表2に示す。
[手順]
(I) 原料(1B)及び(2B)を均一混合する。
(II) (I)で得られた混合液に、原料(3B)を添加して均一混合する。
(III) 原料(4B)に、予め均一溶解させた原料(5B)~(9B)を添加し、均一混合する。
(IV) (II)で得られた混合液に、(III)で得られた混合液を添加して均一混合する。
【0050】
[初期配合性]
手順(IV)で得られた混合液を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:凝集物は観察されなかった。
B:凝集物が観察された。
【0051】
[経時安定性]
手順(IV)で得られた混合液を50℃で1ヶ月保管した後に目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:凝集物は観察されなかった。
B:凝集物が観察された。
【0052】
【表2】
【0053】
<実施例A-化粧水の調製>
原料(1C)~(11C)を表3に示す処方(単位:質量%)で、以下の手順で配合し、化粧水を調製した。得られた化粧水を50℃で一ヶ月保管、又は5℃、室温及び40℃で三ヶ月保管して色の変化を観察したが、外観色に変化は見られなかった。また、得られた化粧水を一ヶ月日光に曝露したが、外観色に変化は見られなかった。これらの結果から、得られた化粧水は、耐光性や耐熱性に優れるものであることが分かる。
【0054】
[手順]
(I) 原料(1C)~(3C)を均一混合した後、予め均一混合した原料(4C)及び(5C)を添加して均一混合する。
(II) 原料(6C)に、予め混合した原料(7C)~(9C)を添加して均一混合する。
(III) (II)で得られた混合液に、(I)で得られた混合液、及び原料(10C)及び(11C)を添加して均一混合する。
【表3】
【0055】
<実施例B-ジェルの調製>
原料(1D)~(9D)を表4に示す処方(単位:質量%)で、以下の手順で配合し、ジェルを調製した。得られたジェルを50℃で一ヶ月保管、又は5℃、室温及び40℃で三ヶ月保管して色の変化を観察したが、外観色に変化は見られなかった。また、得られたジェルを一ヶ月日光に曝露したが、外観色に変化は見られなかった。これらの結果から、得られたジェルは、耐光性や耐熱性に優れるものであることが分かる。
【0056】
[手順]
(I) 原料(1D)及び(2D)を均一混合した後、原料(3D)を添加して均一混合する。
(II) (I)で得られた混合液に、原料(4D),(5D)及び(6D)を順次添加し、均一混合する。
(III) 原料(7D)に、予め混合した原料(8D)及び(9D)を添加して均一混合する。
(IV) (II)で得られた混合液に、(III)で得られた混合液を添加して均一混合する。
【表4】
【0057】
<実施例C-クリームの調製>
原料(1E)~(13E)を表5に示す処方(単位:質量%)で、以下の手順で配合し、クリームを調製した。得られたクリームを50℃で一ヶ月保管、又は5℃、室温及び40℃で三ヶ月保管して色の変化を観察したが、外観色に変化は見られなかった。また、得られたクリームを一ヶ月日光に曝露したが、外観色に変化は見られなかった。これらの結果から、得られたクリームは、耐光性や耐熱性に優れるものであることが分かる。
【0058】
[手順]
(I) 原料(1E)~(3E)を75~80℃に加温して均一溶解する。
(II) 原料(4E)~(7E)を75~80℃に加温して均一溶解する。
(III) 原料(8E)及び(9E)を75~80℃に加温して均一溶解する。
(IV) (I)で得られた混合液に、(II)で得られた混合液を添加し、均一混合する(75~80℃)。
(V) (IV)で得られた混合液に、(III)で得られた混合液をゆっくり添加し、乳化する(75~80℃)。
(VI) (V)で得られた乳化物をゆっくり冷却した後、原料(10E)を添加して均一混合する。
(VII) 原料(11E)に、予め溶解した原料(12E)及び(13E)を添加して均一混合する。
(VIII) (VI)で得られた混合物に、(VII)で得られた混合液を添加して均一混合する。
【0059】
【表5】