(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ワイヤ偏向機構を有する脳動脈瘤用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
A61B17/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019195919
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-08-17
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-535208(JP,A)
【文献】特表2007-528254(JP,A)
【文献】米国特許第5823198(US,A)
【文献】特表2009-533077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0020908(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012104548(DE,A1)
【文献】特開2018-43000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0214071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
A61M 25/00―25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内で、動脈瘤を処置するための医療用デバイスであって、
前記血管内に挿入するための中空シャフトであって、前記動脈瘤内に挿入されることになるワイヤを導くためのワイヤ挿入用チャネルを含む、中空シャフトと、
前記ワイヤを前記ワイヤ挿入用チャネルから出して前記動脈瘤に入れるための、前記中空シャフトの遠位端部における出口ポートと、
前記出口ポートに隣接するように配置されている偏向要素であって、前記偏向要素の全体が前記ワイヤ挿入用チャネルの内部に配置されており、前記ワイヤを前記ワイヤ挿入用チャネルから前記出口ポートへと偏向させるよう構成されている、偏向要素と、
前記中空シャフトの前記遠位端部に連結されている位置センサであって、前記血管内の前記出口ポートの位置及び向きを表示する信号を発生させるよう構成されている、位置センサと、
前記遠位端部を定位置にロックするよう構成されている、ロック機構であって、第1のロック用バルーン、及び第2のロック用バルーンを含む、ロック機構と、
を備え
、
前記出口ポートは、前記第1のロック用バルーンと前記第2のロック用バルーンとの間に長手方向に挟まれるように置かれており、
前記位置センサは、前記遠位端部における前記出口ポートの遠位側に配置されており、
前記第1のロック用バルーンは、前記遠位端部における前記第2のロック用バルーン及び前記位置センサの遠位側に配置されている、医療用デバイス。
【請求項2】
前記出口ポートは、前記中空シャフトの側壁を貫通して形成された横方向に向けられた開口部を備える、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記中空シャフトは、閉じた遠位先端を有し、前記出口ポートは、前記閉じた遠位先端の近位側に位置付けられている、請求項
2に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記偏向要素は、前記中空シャフトの長手方向軸に対して斜めに向けられた表面を含む、請求項
2に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記偏向要素は、前記出口ポートに対して横方向に位置付けられている、請求項
2に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記位置センサは、前記出口ポートと前記閉じた遠位先端との間で長手方向に位置付けられている、請求項
3に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記位置センサは、前記偏向要素と前記閉じた遠位先端との間で長手方向に位置付けられている、請求項
3に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
血管内で、動脈瘤を処置するための医療システムであって、
プローブであって、
前記血管内に挿入するための中空シャフトであって、前記動脈瘤内に挿入されることになるワイヤを導くためのワイヤ挿入用チャネルを含む、中空シャフトと、
前記ワイヤを前記ワイヤ挿入用チャネルから出して前記動脈瘤に入れるための、前記中空シャフトの遠位端部における出口ポートと、
前記出口ポートに隣接するように配置されている偏向要素であって、前記偏向要素の全体が前記ワイヤ挿入用チャネルの内部に配置されており、前記ワイヤを前記ワイヤ挿入用チャネルから前記出口ポートへと偏向させるよう構成されている、偏向要素と、
前記中空シャフトの前記遠位端部に連結されている
磁気位置センサであって、前記血管内の前記出口ポートの位置及び向きを表示する信号を発生させるよう構成されている、
磁気位置センサと、
を備える、プローブと、
前記信号を受信するよう構成されている追跡システムであって、
患者の頸部の周囲に置かれるカラーとして実装される位置パッドであって、
磁気位置追跡サブシステムと、
磁場放射器と、
を備える、位置パッド
を備える、追跡システムと、
プロセッサであって、
前記追跡システムの座標系を、前記動脈瘤を表示する1つ以上の医療用画像に登録するよう、
受信した前記信号に基づいて、前記動脈瘤の開口部に対する、前記血管内の前記出口ポートの前記位置及び向きを推定するよう、及び
前記出口ポートと前記動脈瘤の前記開口部との間の幾何学的関係をユーザーに表示するよう
構成されている、プロセッサと、
を備える、医療システム。
【請求項9】
前記プローブは、前記遠位端部を定位置にロックするよう構成されているロック機構をさらに備える、請求項8に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる、2018年10月30日出願の米国仮特許出願第62/752,825号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、全体的には、医療用デバイス、特に、脳血管用途向けプローブに関する。
【背景技術】
【0003】
侵襲性が最低限となるプローブなどのデバイスが、これまでに、脳動脈瘤を処置するために提案された。例えば、米国特許第5,980,554号は、脈管内部で使用するためのワイヤフレームステント又は閉塞用デバイスを記載している。これらのデバイスは、脈管内への配置を容易にするために、二重ワイヤ構成又は単一ワイヤ構成へと伸縮することができる。デバイスが適切に配置された後、遠位自由端部は、その記憶された輪状形状に戻り、その支柱及び閉塞部がその記憶された閉塞用形状に戻る。コイル位置への調節、輪又は支柱は、挿入用カテーテルを使用して、定位置まで進入させて押し込まれ得る。
【0004】
米国特許第9,579,104号は、インプラントを位置決めして脱着する、血管内インプラントシステム及び方法を記載している。このようなシステムの1つは、送達システムの遠位端部の隙間の近位の位置に、係合部材を保持させることによりインプラントを運搬する。この係合部材は、インプラントに連結されている細長い部材によって、隙間に近位で保持される。インプラントが、一旦、所望のインプラント位置にあると、上記の細長い部材は、係合部材から解除されて、インプラントは、移動して送達システムから離れることができる。一部の実施形態では、動脈瘤にインプラントを配置するためのアセンブリは、管状部材であって、(a)管状部材中にルーメン部材及び(b)管状部材の遠位端部に開口部を有する管状部材と、動脈瘤に留置するよう構成されているコイル状インプラントであって、(a)コイル、(b)長手方向にコイル内で延在しているコイル状ルーメン、及び(c)固定用部材であって、(i)コイル状ルーメン内に延在しており、(ii)固定用部材の遠位領域でコイルに連結されており、かつ(iii)開口部より大きな近位部分を有しており開口部に遠位に位置決めされている固定用部材を有するコイル状インプラントと、開口部からルーメン部材に延在しており、上記大きな部分に連結されている細長い部材とを備え、細長い部材が遠位端部の部分に対して近位に移動すると、大きな部分が遠位端部に接触して、細長い部材から分離する。
【0005】
米国特許第6,463,317号は、X線透視画像案内又はリアルタイム磁気共鳴(MR)画像化案内のどちらかを使用して、とりわけ、頭蓋内及び頭蓋外の循環領域において、血行動態として深刻な動脈瘤を処置するための方法及びデバイスを記載している。例えば、記憶金属、エラストマーヒドロゲル又は他の伸縮可能な材料から作製された多重の細長いフィラメント状ループを含有する、MRで目視可能なパラシュート形状の閉塞用デバイスは、伸縮可能な材料を半径方向に拡張させて、内部動脈瘤表面に外側方向から接触させることにより、動脈瘤に配置させる。このデバイスは、内部動脈瘤表面に接着するコーティング剤を使用して、内部動脈瘤表面に強固に位置決めされる。輸送用カテーテルからの動脈瘤閉塞用デバイスの脱着は、機械的、電気的及び/又は化学的連結解除により達成される。このカテーテルシステムは、マイクロコイルに取り付けられてもよく、又はMR画像化システムにおいて、可視化を可能にするよう、MRで目視可能な薬剤を含侵させてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、血管中で、動脈瘤を処置するための医療用デバイスであって、血管に挿入するための中空シャフト、シャフトの遠位端部に出口ポート、偏向要素及び位置センサを含む、医療用デバイスを提供する。中空シャフトは、動脈瘤内に挿入されることになるワイヤを導くためのワイヤ挿入用チャネルを含む。出口ポートは、ワイヤをワイヤ挿入用チャネルから出して、動脈瘤に入れるよう構成されている。偏向要素は、出口ポートに隣接するように配置されており、ワイヤをワイヤ挿入用チャネルから出口ポートまで偏向させるよう構成されている。シャフトの遠位端部に連結されている位置センサは、血管内の出口ポートの位置及び向きを表示する信号を発生させるよう構成されている。
【0007】
一部の実施形態では、医療用デバイスは、遠位端部を定位置にロックするよう構成されている、ロック機構を更に含む。
【0008】
本発明の実施形態によれば、プローブ及びプロセッサを含む、血管内の動脈瘤を処置するための医療システムが更に提供される。プローブは、血管内に挿入するための中空シャフトであって、動脈瘤内に挿入されることになるワイヤを導くためのワイヤ挿入用チャネルを含む、中空シャフトを含む。プローブは、シャフトの遠位端部に、ワイヤをワイヤ挿入用チャネルから出して、動脈瘤に入れるための出口ポートを更に含む。プローブは、出口ポートに隣接するように配置されている偏向要素であって、ワイヤをワイヤ挿入用チャネルから出口ポートへと偏向させるよう構成されている、偏向要素を含む。プローブは、シャフトの遠位端部に連結されている位置センサであって、血管内の出口ポートの位置及び向きを表示する信号を発生させるよう構成されている位置センサを更に含む。プロセッサは、受信信号に基づいて、動脈瘤の開口部に対して、血管内の出口ポートの位置及び向きを推定して、ユーザーに、出口ポートと動脈瘤の開口部との間の幾何学的関係を表示するよう構成されている。
【0009】
本発明の実施形態によれば、血管内で動脈瘤を処置するための方法であって、血管内にプローブを挿入することを含む方法が更に提供される。プローブは、(a)血管内に挿入するための中空シャフトであって、動脈瘤内に挿入されることになるワイヤを導くためのワイヤ挿入用チャネルを含む中空シャフト、(b)ワイヤをワイヤ挿入用チャネルから出して動脈瘤に入れるための、シャフトの遠位端部における出口ポート、(c)出口ポートに隣接するように配置されている偏向要素であって、ワイヤをワイヤ挿入用チャネルから出口ポートへと偏向させるよう構成されている偏向要素、及び(d)シャフトの遠位端部に連結されている位置センサであって、血管内の出口ポートの位置及び向きを表示する信号を発生させるよう構成されている位置センサを含む。動脈瘤の開口部に対する、血管内での出口ポートの位置及び向きは、受信信号に基づいて推定される。出口ポートと動脈瘤の開口部との間の幾何学的関係が、ユーザーに表示される。
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の実施形態による、カテーテルをベースとする脳血管位置追跡システムの概略図である。
【
図1B】本発明の実施形態による、カテーテルをベースとする脳血管位置追跡システムの概略図である。
【
図2】脳動脈瘤、及び本発明の実施形態によるワイヤ偏向要素を備える脳動脈瘤用器具(BAT)の模式断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による、脳動脈瘤の処置を行う方法を概略的に例示しているフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
脳の血管内の大きな脳動脈瘤は、深刻な医療的状態と考えられる。処置されない大きな動脈瘤は、漏出又は破裂して、医療的に緊急性のある、出血性脳卒中を引き起こすおそれがある。
【0013】
脳内の動脈瘤の位置は、コンピュータ断層撮影法(CT)、X線透視画像化又は磁気共鳴画像化(MRI)で検出することができる。次に、医師は、動脈瘤に、接着剤などの他の材料と一緒になった非常に薄い白金製ワイヤを案内して、ウェブ又はメッシュを形成させるために、カテーテルなどのプローブを挿入して進入させることができる。しかし、この処置法は、集中的なX線透視画像化を必要とし、この画像化は、部分的に、挿入過程が、試行錯誤に基づく傾向があるために、高用量のX線照射に患者が曝露されることになる。
【0014】
本明細書のこれ以降に記載されている本発明の実施形態は、システム、医療用デバイス(例えば、プローブ)、及び脳動脈瘤を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本明細書のこれ以降に「脳動脈瘤用器具」(brain aneurysm tool;BAT)と称する医療用デバイス(例えば、カテーテルのタイプ)は、血管に挿入するための中空シャフトであって、動脈瘤内に挿入されることになるワイヤを導くためのワイヤ挿入用チャネルを含む中空シャフトを備える。BATは、ワイヤをワイヤ挿入用チャネルから出して、動脈瘤に入れるための出口ポートを、シャフトの遠位端部に更に備える。BATは、出口ポートに隣接するように配置されている偏向要素であって、ワイヤをワイヤ挿入用チャネルから出口ポートへと偏向させるよう構成されている偏向要素を更に備える。BATのシャフトの遠位端部に連結されている位置センサは、血管内の出口ポートの位置及び向きを表示する信号を発生させるよう構成されている。
【0015】
通常、使用されるワイヤは、薄い白金製ワイヤである。一部の実施形態では、位置センサは、CARTO(登録商標)システム(Biosense-Webster(Irvine、California)製)などの、カテーテルをベースとする磁気位置及び向き追跡システムに、位置及び向きの表示信号を伝送する磁気位置センサである。この追跡システムは、カテーテル操作の間に、表示信号を使用して、追跡システムの座標系で、脳内の出口ポートの位置及び向きを医師に提供する。
【0016】
開示されているBATはまた、空気注入可能なバルーンなどの1種以上のロックを備え、操作者は、ワイヤで動脈瘤を処置する前に、定位置にBATを固定するため、上記のバルーンを膨らませることができる。
【0017】
一部の実施形態では、カテーテル操作手技の開示時に、プロセッサが、追跡システムの座標系を医療用画像に登録して、動脈瘤を表示する、動脈瘤処置システム及び方法が提供される。登録が一旦、完了すると、医師は、動脈瘤の近傍にBATを挿入し、ここで、プロセッサが、磁気センサにより提供される位置及び向きの表示に基づいて、遠位端部の位置及び向きを調節し、BATの出口ポートを動脈瘤の開口部の向かい側に運ぶ。更に一般には、実施形態では、プロセッサは、受信信号に基づいて、動脈瘤の開口部からのBATの出口ポートの距離などの、出口ポートと動脈瘤の開口部との間の幾何学的関係をユーザーに表示するよう構成されている。BATは、正確に位置決めされると、例えば、1つ以上のロック用バルーンを膨らませることにより、定位置にロックされる。
【0018】
次に、操作者は、BATに薄い白金製ワイヤを挿入して、開示されている偏向要素を使用して、動脈瘤にワイヤを直接、偏向させる。一部の実施形態では、この挿入は、プローブに含まれているワイヤ挿入チャネルであって、ワイヤが医師によって遠位に挿入されるにつれて、BATに沿って遠位方向にワイヤを導くよう構成されている、ワイヤ挿入チャネルなどのワイヤ挿入機構によって支援される。
【0019】
通常、プロセッサは、プロセッサが、上で概略を述べたプロセッサ関連工程及び機能の各々を実行することを可能にする、特定のアルゴリズムを含むソフトウェアにプログラム化されている。
【0020】
操作者は、ワイヤが動脈瘤内に正確に位置決めされて挿入が継続されていることを確認するために、X線透視法を使用してもよい。しかし、X線透視法の全面的な使用は、ワイヤ挿入の試行錯誤の局面が、開示されているシステム及び方法では提供されないので、実質的に低減される。
【0021】
したがって、脳動脈瘤を処置するための開示された器具及び方法は、単純化して、それにより、臨床的手技を一層安全にすると同時に、X線照射への患者の曝露を低減することができる。
【0022】
システムの説明
図1A及び
図1Bは、本発明の実施形態による、カテーテルをベースとする脳血管位置追跡システム20a及び20bの概略図である。
【0023】
いくつかの実施形態では、カテーテル操作手技を実行する前に、患者22のCT画像が取得される。CT画像は、プロセッサ40によって、その後の検索のためにメモリ42内に記憶される。プロセッサは、画像を使用して、例えば、ディスプレイ56に動脈瘤60を示す脳断面画像59を提示する。別の実施形態では、開示されているカテーテル操作の間、手技システム20a及び20bは、患者の脳の内部におけるBAT28の遠位端部の位置を、本明細書では、例として、動脈瘤60を表示するリアルタイムX線透視画像を含むよう想定される、患者32の脳画像の参照フレームに登録する。BAT28の遠位端部の位置は、遠位端部に装着された磁気センサの位置及び向きの座標を追跡する磁気追跡サブシステム23を使用して追跡される。
【0024】
医師54は、磁気位置追跡サブシステム23を使用して、血管、通常、動脈からBAT28の遠位端部を動脈瘤60まで進入させて、動脈瘤60を処置するための侵略的治療手技を行う。
【0025】
図1Aに示されているシステム20aでは、磁気追跡サブシステム23を構成する位置パッド24aは、患者32の頸部の周囲に置かれるカラーとして実装される。位置パッド24aを頸部に置くことによって、位置パッド24aは、患者の頭部の動きを自動的に補正するように構成されている。ロケーションパッド24aは、磁場放射器26aを備え、この磁場放射器は、患者32の頭部に対して定位置に固定され、かつ患者32の頭部が位置する領域30に交番正弦波磁場を送信する。コンソール50は、ケーブル25を介して放射器26aを電気的に駆動する。実施形態では、頭部の動きは、基準センサ21を患者の額に取り付けることによって更に補正される。コンソール50は、ケーブル27を介して基準センサ21から信号を受信するように構成されている。頸部カラー位置パッドを備える位置追跡システムは、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、「Position Sensor on Brain Clot Sheath and Location Pad Collar」と題する2018年に5月24日に出願された米国仮特許出願第62/675,952号に記載されている。
【0026】
システム20aを操作する医師54は、BAT28の近位端部に接続されているBATコントローラハンドル29を保持する。コントローラ29により、医師は、例えば、患者32の大腿部の動脈における入口点22から、脳内にBAT28を前進させナビゲートすることが可能になる。上記及び後述するように、医師54は、BAT28の遠位端部に装着されている磁気位置センサからの位置信号及び向き信号を使用して、BAT28の遠位端部をナビゲートする。コンソール50は、ハンドル29を介してBAT28に接続するケーブル19を介して、位置信号を受信する。
【0027】
放射器26aを含むシステム20aの要素は、1つ以上のメモリと通信する処理ユニットを備えるシステムプロセッサ40によって制御される。プロセッサ40は、キーパッド、及び/又はマウス若しくはトラックボールなどのポインティングデバイスを、通常、含む、操作制御装置58を備えるコンソール50内に搭載され得る。医師54は、ハンドル29上の操作制御装置を使用して、システム20の登録を行うと同時に、プロセッサと相互作用する。登録過程の中、動脈瘤60を示す脳断面画像59が、ディスプレイ56上に提示される。上記の登録過程に続いて、医師54は、操作制御装置を使用して、BAT28の遠位端部を、脳内の動脈瘤60の位置まで進入させる。プロセッサは、ディスプレイ56上にBAT追跡手技の結果を提示する。
【0028】
プロセッサ40は、メモリ42内に記憶されたソフトウェアを使用してシステム20aを操作する。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、プロセッサ40に電子形態でダウンロードすることができるか、又は代替として、又は更には、磁気メモリ、光学メモリ又は電子メモリなどの、非一時的な有形媒体上で提供及び/又は記憶されてもよい。特に、プロセッサ40は、開示された工程をプロセッサ40が実行することを可能にする専用アルゴリズムを稼働させる。
【0029】
図1Bに示すシステム20bは、異なる磁気位置パッド設計、すなわち位置パッド24bを有する。図示されるように、位置パッド24bは、ベッドに固定されており、照射器26bが患者のヘッドレストを水平に取り囲んでいる。この例では、システム20bには、基準センサ21がなく、したがって、患者の頭部は動かないように固定されなければならない。システム20bの他の構成要素は、システム20aの構成要素と概ね同一である。位置パッド24bと同様の位置パッドを使用する位置追跡システムは、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、「ENT Image Registration」と題する2017年8月10日に出願された米国特許出願第15/674,380号に記載されている。
【0030】
図1A及び
図1Bに示されるシステム20a及び20bは、単に概念を明確化する目的のために選択されているに過ぎない。他のシステム要素、例えば、薬物送達のためなどの追加の装置を制御するための追加の制御装置がハンドル29上に含まれてもよい。システム20a及び20bによって適用される技術と同様の技術を使用して、身体の器官内にある磁気位置センサの位置及び向きを追跡するCARTO(登録商標)磁気追跡システムが、Biosense-Websterによって製造されている。
【0031】
ワイヤ偏向機構を有する脳動脈瘤用器具
図2は、脳動脈瘤60、及び本発明の実施形態によるワイヤ偏向要素72を備える脳動脈瘤用器具(BAT)28の模式断面図である。通常、BAT28は、約1ミリメートルの直径を有する。
【0032】
分かるとおり、動脈瘤60は、動脈34から外側に膨らんでいる。一部の実施形態では、医師54は、動脈34内に遠位に、動脈瘤60をわずかに超える位置まで、BAT28(例えば、中空シャフト35)を遠位に進入させる。
図2で分かるとおり、BAT28の遠位端部31は、磁気位置センサ33を備え、このセンサは、下記のとおり、脳内の遠位端部31の位置及び向きを追跡するために使用されて、遠位端部31を動脈瘤60までナビゲートし、動脈瘤60の開口部70に対して遠位端部31を一致させる。
【0033】
ほぼ定位置にくると、医師54は、遠位端部31の位置及び向きを更に調節し、その結果、出口ポート71は、動脈留の開口部70の向かい側に正確にくる。正確に位置決めされた後に、医師54によって膨らまされたロック用バルーン74により、遠位端部31が定位置に固定される。
【0034】
遠位端部31に含まれている偏向要素72は、出口ポート71まで遠位方向に進入し、動脈瘤の開口部70から動脈瘤60に直接入るにつれて、白金製ワイヤ76を偏向させるよう構成されている。
【0035】
図2に示されている例示は、単に概念を分かりやすくする目的で選択されている。一部の実施形態では、例えば、偏向要素は、示されている単純なプレート形状よりもむしろ屈曲したチャネルを備える。代替的な実施形態では、ワイヤ76は、ニチノールなどの形状記憶合金から作製されている。別の実施形態では、ワイヤ76は、生体適合性の粘着性材料によりコーティングされている。
【0036】
図3は、本発明の実施形態による、脳動脈瘤の処置を行う方法を概略的に例示しているフローチャートである。この方法は、医師54が、登録工程80において、動脈瘤60を表示する医療用画像の座標系に、カテーテルをベースとする磁気追跡システムの座標系を登録することから始まる。次に、医師54は、BAT進入工程82において、動脈瘤60の近傍に、BAT28の遠位端部31を進入させる。
【0037】
次に、医師54は、遠位端部調節工程84において、専用アルゴリズムによって得られた空間情報を使用して、動脈瘤60の開口部70の向かい側に出口ポート71がくるように、遠位端部31の位置及び向きを調節する。次に、医師54は、遠位端部ロック工程86において、例えば、ロック用バルーン74を膨らませることにより、遠位端部を定位置にロックする。次に、医師54は、ワイヤ挿入工程88において、BAT28に白金製ワイヤ76を挿入する。最後に、医師54は、動脈瘤処置工程90において、ワイヤ76が、遠位に更に挿入されるにつれて、偏向要素72を使用して、白金製ワイヤ76を偏向させる。
【0038】
図3に示す例示的なフローチャートは、単に概念を明確化する目的のために選ばれたものである。追加的な実施形態では、例えば、医師54は、ポリマー製メッシュで動脈瘤60を膨らます。一部の実施形態では、工程80~86は、CT画像などの以前に取得された凝塊の医療用画像を使用して、医師54によってX線透視法なしに行うことができる。
【0039】
本明細書に記載されている実施形態は、主に、脳血管用途に対処するものであるが、本明細書に記載されている方法及びシステムはまた、開示されている器具を収容することができる、身体内の任意の位置における、十分に大きな血管内の、動脈瘤の処置などの別の用途に使用することもできる。
【0040】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述のさまざまな特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0041】
〔実施の態様〕
(1) 血管内で、動脈瘤を処置するための医療用デバイスであって、
前記血管内に挿入するための中空シャフトであって、前記動脈瘤内に挿入されることになるワイヤを導くためのワイヤ挿入用チャネルを含む、シャフトと、
前記ワイヤを前記ワイヤ挿入用チャネルから出して前記動脈瘤に入れるための、前記シャフトの遠位端部における出口ポートと、
前記出口ポートに隣接するように配置されている偏向要素であって、前記ワイヤを前記ワイヤ挿入用チャネルから前記出口ポートへと偏向させるよう構成されている、偏向要素と、
前記シャフトの前記遠位端部に連結されている位置センサであって、前記血管内の前記出口ポートの位置及び向きを表示する信号を発生させるよう構成されている、位置センサと、
を備える、医療用デバイス。
(2) 前記遠位端部を定位置にロックするよう構成されている、ロック機構を備える、実施態様1に記載の医療用デバイス。
(3) 血管内で、動脈瘤を処置するための医療システムであって、
プローブであって、
前記血管内に挿入するための中空シャフトであって、前記動脈瘤内に挿入されることになるワイヤを導くためのワイヤ挿入用チャネルを含む、シャフトと、
前記ワイヤを前記ワイヤ挿入用チャネルから出して前記動脈瘤に入れるための、前記シャフトの遠位端部における出口ポートと、
前記出口ポートに隣接するように配置されている偏向要素であって、前記ワイヤを前記ワイヤ挿入用チャネルから前記出口ポートへと偏向させるよう構成されている、偏向要素と、
前記シャフトの前記遠位端部に連結されている位置センサであって、前記血管内の前記出口ポートの位置及び向きを表示する信号を発生させるよう構成されている、位置センサと、
を備える、プローブと、
プロセッサであって、
前記受信信号に基づいて、前記動脈瘤の開口部に対する、前記血管内の前記出口ポートの前記位置及び向きを推定するよう、及び
前記出口ポートと前記動脈瘤の前記開口部との間の幾何学的関係をユーザーに表示するよう
構成されている、プロセッサと、
を備える、医療システム。
(4) 血管内で動脈瘤を処置するための方法であって、
プローブを前記血管に挿入することであって、前記プローブは、
前記血管内に挿入するための中空シャフトであって、前記動脈瘤内に挿入されることになるワイヤを導くためのワイヤ挿入用チャネルを含む、シャフトと、
前記ワイヤを前記ワイヤ挿入用チャネルから出して前記動脈瘤に入れるための、前記シャフトの遠位端部における出口ポートと、
前記出口ポートに隣接するように配置されている偏向要素であって、前記ワイヤを前記ワイヤ挿入用チャネルから前記出口ポートへと偏向させるよう構成されている、偏向要素と、
前記シャフトの前記遠位端部に連結されている位置センサであって、前記血管内の前記出口ポートの位置及び向きを表示する信号を発生させるよう構成されている、位置センサと、
を備える、ことと、
前記受信信号に基づいて、前記動脈瘤の開口部に対する、前記血管内の前記出口ポートの前記位置及び向きを推定することと、
前記出口ポートと前記動脈瘤の前記開口部との間の幾何学的関係をユーザーに表示することと、
を含む、方法。
(5) ロック機構を使用して、前記遠位端部を定位置にロックすることを含む、実施態様4に記載の方法。
【0042】
(6) ユーザーに幾何学的関係を表示することは、前記プローブの前記出口ポートが、前記動脈瘤の前記開口部の向かい側にきたときを表示することを含む、実施態様4に記載の方法。
(7) 前記ワイヤ挿入用チャネルを通して遠位方向にワイヤを挿入すること、及び前記偏向要素を使用して、前記出口ポートを通して、遠位に挿入された前記ワイヤを偏向させることを含む、実施態様4に記載の方法。