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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】加工装置用アダプタ
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/38 20060101AFI20240513BHJP
   B28D 7/04 20060101ALI20240513BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20240513BHJP
   B28D 1/14 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
A61C13/38
B28D7/04
B23Q7/00 Z
B28D1/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019202127
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021074203
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 涼
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0147225(US,A1)
【文献】特開2019-130286(JP,A)
【文献】特開2007-054651(JP,A)
【文献】特開2017-189340(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104339194(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1963519(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/00-13/38
B28D 7/04
B23Q 7/00
B28D 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成された被加工材を加工する加工装置の保持部によって保持可能に構成され、
前記被加工材の外周部に当接し、前記被加工材を支持する支持部と、
前記支持部と連結し、前記支持部とともに前記外周部を包囲し、前記被加工材を前記支持部が支持した状態で前記外周部との間に隙間を形成する連結部と、
を備え、
前記連結部は、前記被加工材の延びる方向において前記隙間を介して前記外周部と対向する対向部を有し、
前記対向部は、前記連結部が前記支持部と連結し前記支持部が前記被加工材を支持した状態における前記被加工材の厚さ方向に沿った断面において、前記外周部に向けて突出した山形の断面を有する、
加工装置用のアダプタ。
【請求項2】
板状に形成された被加工材を加工する加工装置の保持部によって保持可能に構成され、
前記被加工材の外周部に当接し、前記被加工材を支持する支持部と、
前記支持部と連結し、前記支持部とともに前記外周部を包囲し、前記被加工材を前記支持部が支持した状態で前記外周部との間に隙間を形成する連結部と、
を備え、
前記連結部は、前記被加工材の延びる方向において前記隙間を介して前記外周部と対向する対向部を有し、
前記隙間は、前記被加工材の厚さ方向の全長に亘って形成される、
加工装置用のアダプタ。
【請求項3】
前記連結部は、前記支持部と一体的に連結する、請求項1または2に記載のアダプタ。
【請求項4】
前記隙間は中心角を持ち、前記中心角の大きさは、90度以上120度以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のアダプタ。
【請求項5】
前記支持部は、前記保持部と係合可能な係合部を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のアダプタ。
【請求項6】
前記保持部は、前記支持部を取外し方向において取外し可能に保持し、
前記支持部が前記保持部に保持された状態において、前記連結部は前記取外し方向下流側に位置する、請求項1から5のいずれか1項に記載のアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加工装置用のアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
被加工材を加工する加工装置に用いられ、被加工材を保持する機能を有するアダプタが従来知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6533319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記加工装置において、アダプタが被加工材を加工するための工具と干渉する場合が有った。そのため、加工物の大きさや形状が制限される虞があった。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、加工物の大きさや形状が制限される虞の少ない加工装置用のアダプタを提供することにある。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、板状に形成された被加工材を加工する加工装置の保持部によって保持可能に構成され、前記被加工材の外周部に当接し、前記被加工材を支持する支持部と、前記支持部と連結し、前記支持部とともに前記外周部を包囲し、前記外周部との間に隙間を形成する連結部と、を備える、加工装置用のアダプタを提供する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により本発明は、加工物の大きさや形状が制限される虞の少ない加工装置用のアダプタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】加工機本体の筐体及びローディング装置を示した、加工装置の縦断面図である。
図2】加工機本体の筐体及びローディング装置を示した、加工装置の横断面図である。
図3】被加工物を保持した状態におけるアダプタの上面図である。
図4】被加工物を保持した状態におけるアダプタの斜視図である。
図5】被加工物を保持した状態のアダプタ、及びアダプタを支持した状態の保持具を示す斜視図である。
図6】加工作業時におけるアダプタ及び保持具の斜視図である。
図7】加工作業時におけるアダプタの断面図であり、連結部と加工工具との関係を示す。
図8】保持具及びアダプタの着脱前後の状況を示す斜視図である。
図9】被加工物を保持した状態のアダプタ、及びアダプタを支持した状態の保持具を示す断面図である。
図10】被加工物の斜視図である。
図11】ピッカーとアダプタの上面図であり、ピッカーが(a)開位置にある状態、および(b)閉位置にある状態を示す。
図12】加工装置の動作を説明するための正面図である。
図13】加工装置の動作を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===実施形態===
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されている。そのため、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
<加工装置について>
図1はデンタル加工機の一例である加工装置1の正面図であり、図2は加工装置1の平面図である。図1及び図2において、方向を表す補助線としてX軸、Y軸及びZ軸を図示するが、これらX軸、Y軸及びZ軸は互いに直交し、X軸方向及びY軸方向は水平な方向であり、Z軸方向は鉛直な方向である。なお、X軸が水平面に対して傾斜し、Z軸が鉛直方向に対して傾斜してもよい。
【0011】
図1及び図2に示すように、加工装置1は、板状の被加工物(ワーク、ワークピース)8を加工する加工機本体2と、加工機本体2に対する被加工物8のローディング・アンローディングをするローディング装置3と、加工機本体2及びローディング装置3を制御する制御部4と、を備える。
【0012】
被加工物8は、図10に示すように、例えばセラミック材料(例えば、ジルコニアセラミック材料)、樹脂材料、ガラス材料、金属材料又はワックス材からなる材料である。被加工物8を加工することで得られる加工物は、例えば義歯、歯科用クラウン、ブリッジ又はアバットメント等である。被加工物8は円盤状の部材であり、その外周部において、被加工物8の径方向外方に突出した外周面82と、外周面82よりも被加工物8の径方向外方に突出した凸部81とを持つ。凸部81は外周面82よりも大きな外径を有し、被加工物8の外周部全体に亘って形成される。
【0013】
<加工機本体について>
加工機本体2は、筐体10と、スピンドルモーター32と、スピンドル34と、切削工具36と、チルト機構42と、保持具48と、三次元変位機構とを備える。三次元変位機構は、保持具48に対して相対的にスピンドル34をY軸方向、X軸方向及びZ軸方向に移動するよう駆動する機構である。具体的には、三次元変位機構は、スピンドルモーター32の回転軸に平行なZ軸方向にスピンドル34を移動するよう駆動するZ軸方向の直動駆動機構30と、Y軸方向にスピンドル34を移動するよう駆動するY軸方向の直動駆動機構20と、X軸方向に保持具48を移動するよう駆動するX軸方向の直動駆動機構40と、を有する。
【0014】
筐体10が箱状に設けられ、筐体10に内部空間10aが形成されている。筐体10のサイド部12には、搬送口12aが形成されている。
【0015】
Y軸方向の直動駆動機構20は、リニアガイド部材21、キャリッジ22、Y軸方向直動伝動機構23及びモーター24を有する。リニアガイド部材21の左右両端部が筐体10のサイド部12、13に支持され、リニアガイド部材21が左右に延在するようにサイド部12、13間に架設されている。リニアガイド部材21の延びる方向がY軸方向である。リニアガイド部材21には、キャリッジ22が摺動自在に取り付けられている。キャリッジ22はリニアガイド部材21に沿ってY軸方向に移動可能に設けられている。また、キャリッジ22にはY軸方向直動伝動機構23が連結され、Y軸方向直動伝動機構23にはモーター24が連結されている。Y軸方向直動伝動機構23はサイド部12、13間に設けられ、モーター24がサイド部12に設けられている。Y軸方向直動伝動機構23は例えばベルト伝動機構、チェーン伝動機構、ボールねじ伝動機構又はピニオンラック機構であり、モーター24の動力がY軸方向直動伝動機構23によってキャリッジ22に伝動し、モーター24によってキャリッジ22がY軸方向に移動する。
【0016】
キャリッジ22には、直動駆動機構30、スピンドルモーター32及びスピンドル34が搭載されている。具体的には、直動駆動機構30及びスピンドルモーター32がキャリッジ22に取り付けられ、スピンドル34が伝動機構を介してスピンドルモーター32及び直動駆動機構30に接続されている。直動駆動機構30によってスピンドル34がZ軸方向に移動するように駆動され、スピンドルモーター32によってスピンドル34がZ軸に平行な回転軸回りに回転駆動される。スピンドル34には、例えばエンドミル、ドリル、リーマー又はタップ等の切削工具36が取り付けられる。なお、切削工具36がスピンドル34に対して着脱可能であり、筐体10内には(例えば、後述の移動体41上には)、交換用の切削工具が収容されたマガジンが設けられている。
【0017】
X軸方向の直動駆動機構40は、X軸に対して平行となるように筐体10のサイド部13に取り付けられている。この直動駆動機構40には移動体41が連結されており、直動駆動機構40によって移動体41がX軸方向に移動するように駆動される。
【0018】
移動体41には、チルト機構42及び保持具48が取り付けられている(図8)。保持具48は、アダプタ9及び被加工物8を保持するものである。保持具48は、U字型の形状を有しており、アダプタ9と係合し、取り外し可能に、保持する機能を有する。詳細には、保持具48は、図8の白抜き矢印に示すように、アダプタ9を取付方向に受け入れ、装着することができる。また、アダプタ9を取付方向と反対の取外し方向に移動させることにより、アダプタ9の装着状態は解除される(図8)。取外し方向及び取付方向は、Y軸に平行である。保持具48は、本発明における保持部の一例である。
【0019】
チルト機構42は、Y軸に平行な第一回転軸回りに保持具48及び被加工物8を揺動するとともに、第一回転軸に直交する第二回転軸回りに保持具48及び被加工物8を揺動するものである。
【0020】
チルト機構42は第一揺動用モーター43、揺動杆44及び第二揺動用モーター45を備える。第一揺動用モーター43はその出力回転軸(第一回転軸)43aがY軸に対して平行になるようにして移動体41の内部に取り付けられ、その出力回転軸43aが移動体41の内側から外側へY軸方向に延在している。第一揺動用モーター43の出力回転軸43aにはアーチ状の揺動杆44の中間部が連結されている。揺動杆44の一端部の外周側には第二揺動用モーター45が取り付けられており、第二揺動用モーター45の出力回転軸(第二回転軸)45aが揺動杆44の一端部を内周側へ貫通している。この第二揺動用モーター45の出力回転軸45aは第一揺動用モーター43の出力回転軸43aに対して垂直である。第二揺動用モーター45の出力回転軸45aにはアーチ状の保持具48の一端部が連結されている。保持具48の他端部が、第二揺動用モーター45の出力回転軸45aと同軸の回転軸46を介して揺動杆44の他端部に連結されている。なお、第二揺動用モーター45による回転は、360度可能であるが、実際の加工作業では0±35度の範囲と、180±35度の範囲で搖動が行われる。換言すれば第二揺動用モーター45は、被加工物8の表面を加工する際には上下35度の範囲で搖動させ、裏面に対しても上下35度の範囲で搖動させる。
【0021】
第一揺動用モーター43が作動すると、その出力回転軸43a回りに揺動杆44、保持具48及び被加工物8が揺動される。第二揺動用モーター45が作動すると、その出力回転軸45a回りに保持具48、アダプタ9及び被加工物8が揺動される。
【0022】
<ローディング装置について>
ローディング装置3は、ハウジング50と、ハウジング50内に設けられたストッカー55と、被加工物8及びアダプタ9をY軸方向に送るように被加工物8及びアダプタ9の移載を行う移載機70と、ハウジング50内において移載機70を昇降させる昇降機60と、を備える。
【0023】
ハウジング50が箱状に形成され、ハウジング50には内部空間50aが形成されている。ハウジング50のサイド部53が加工機本体2の筐体10のサイド部12に固定され、ハウジング50と筐体10が並設されている。ハウジング50のサイド部53には搬送口53aが形成されている。この搬送口53aが筐体10の搬送口12aに重なっており、ハウジング50の内部空間50aと筐体10の内部空間10aが搬送口12a、53aを通じて連通している。
【0024】
ハウジング50のサイド部53には、搬送口53aを開閉する扉57が設けられている。扉57は、ハウジング50の外側且つ筐体10の内側に向けて開く扉である。また、扉57は、ばね等の付勢手段により通常時に閉じられた状態となったノーマリークローズ型の扉である。
【0025】
ハウジング50内のサイド部53側には、ストッカー55が配設されている。ストッカー55には、複数の被加工物8を横に倒伏した姿勢で上下に並べて格納することができる。具体的には、ストッカー55には、複数の保持棚56が上下方向に並べられた状態に設けられている。これら保持棚56は上下二つのグループに分けられており、上側のグループの最下段の保持棚56と下側のグループの最上段の保持棚56との間隔は他の隣り合う保持棚56の間隔よりも広い。ハウジング50の搬送口53aの位置(高さ)は、上側のグループの最下段の保持棚56と下側のグループの最上段の保持棚56との間である。なお、本実施形態では、上側のグループの保持棚56の数(具体的には3)と下側のグループの保持棚56の数(具体的には3)が等しいが、これに限るものではない。
【0026】
保持棚56に対してはアダプタ9がY軸方向に挿抜可能であり、アダプタ9及びそれに装着された被加工物8を保持棚56に差し込んだり、保持棚56からカセット及び被加工物8を引き出したりすることができる。ここで、アダプタ9が保持棚56に差し込まれる向きはハウジング50から搬送口12a、53aを通じて筐体10に向かう向きと同じであり、アダプタ9が保持棚56から引き出される向きは筐体10から搬送口12a、53aを通じてハウジング50に向かう向きと同じである。磁着、吸着、挟持、係止又は係合等を利用したロック機構が保持棚56に設けられており、アダプタ9が保持棚56に差し込まれた状態ではロック機構によってアダプタ9が保持棚56にロックされるとともに、そのロックの解除が可能である。
【0027】
ハウジング50のフロント部54aには、アダプタ9及び被加工物8をストッカー55に装着したり、ストッカー55からアダプタ9及び被加工物8を取り外したりするために開閉ドア54cが設けられている。なお、開閉ドア54cは、フロント部54aではなく、サイド部52又はリア部54bに設けられてもよい。
【0028】
ハウジング50内のサイド部53の反対のサイド部52側には、昇降機60が設けられている。昇降機60は、リニアガイド部材61、昇降体62、直動伝動機構63及びモーター64を有する。リニアガイド部材61が上下方向(Z軸方向)に延在するようにハウジング50に取り付けられており、リニアガイド部材61には昇降体62が摺動自在に取り付けられている。昇降体62は、ストッカー55に関して搬送口12a、53aの反対側の位置(昇降位置)において、リニアガイド部材61に沿ってZ軸方向に移動可能に設けられている。また、昇降体62には直動伝動機構63が連結され、直動伝動機構63にはモーター64が連結されている。直動伝動機構63はハウジング50の頂部51bと底部51aの間に設けられ、モーター64がハウジング50の頂部51bに設けられている。直動伝動機構63は例えばボールねじ伝動機構、ピニオンラック機構、ベルト伝動機構又はチェーン伝動機構であり、モーター64の動力が直動伝動機構63によって昇降体62に伝動し、モーター64によって昇降体62がZ軸方向に移動する。
【0029】
なお、上述したようにZ軸が水平面に対して直交又は斜交するので、昇降体62が水平面に対して垂直に昇降するか、又は水平面に対して斜めに昇降する。
【0030】
昇降体62には移載機70が設けられている。移載機70はピッカー(例えば、クランパ)71、送り機構701及びモーター702等を有する。送り機構701がY軸方向に展開・折り畳み可能なアーム機構等からなり、送り機構701の基部が昇降体62に取り付けられており、送り機構701の先端部にはピッカー71が設けられている。モーター702が送り機構701に連結され、モーター702の動力が送り機構701に伝動する。送り機構701がモーター702により駆動され、モーター702の動力によって送り機構701が昇降体62からサイド部13に向かってY軸方向に展開・伸長したり、反対方向に折り畳み・収縮したりする。送り機構701の伸縮に伴うピッカー71の軌跡はY軸に対してほぼ平行な直線であり、送り機構701によるピッカー71の軌跡の範囲は昇降体62からY軸に沿って保持具48までの範囲である。
【0031】
ピッカー71は、図11に示すように、一対のフック72、73と、バネ74と、固定部76と、板バネ77と、本体部78と、を備えている。
【0032】
本体部78は、X軸方向及びY軸方向に延びる板状の部材である。本体部78は、2つの軸781及びZ軸方向に延びる突起782を備える。2つの軸781は、フック72、73をそれぞれ回動可能に支持する。
【0033】
フック72、73は、互いに対向するように、本体部78の上面に配置される。フック72、73それぞれの一端部には突起72A、73Aが形成され、他端部には屈曲して形成された係合部72B、73Bとが形成される。フック72、73は、それぞれ軸781を軸にして、開位置(図11(a))と閉位置(図11(b))との間を回動可能である。
【0034】
フック72、73の回動は、突起782と当接することによって規制される。詳細には、フック72、73が回動し、開位置に到達すると、突起72A、73Aがそれぞれ突起782と当接し、フック72、73の回動が規制される。また、フック72、73が閉位置に向かって回動するとき、突起782がフック72、73の後端部と当接し、フック72、73の回動を規制する。
【0035】
バネ74は、ねじりコイルバネであり、フック72、73に対して弾性力を付与する機能を有する。バネ74の一端部は本体部78と係合し、他端部はフック72またはフック73と係合する。バネ74は、フック72、73を、それぞれ開位置から閉位置に向かうように付勢する。
【0036】
固定部76は、本体部78からY軸方向に突出するように固定された板上の部材である。固定部76の端部には円弧状の切りが形成される。
【0037】
板バネ77は、固定部76からY軸方向に延び、固定部76上に1対設けられる。板バネ77はそれぞれ、固定部76に載置された部材をフック72、73へ向けて付勢する機能を有する。
【0038】
<制御部について>
直動駆動機構20(特にモーター24)、直動駆動機構30、スピンドルモーター32、直動駆動機構40、チルト機構42(特にモーター43、45)、昇降機60(特にモーター64)及び移載機70(特にモーター702)は制御部4によって制御される。この制御部4は例えば筐体10に設けられている。制御部4は各種の駆動回路(例えばモータードライバ)及びマイクロコンピュータ(例えばプログラムロジックコントローラ)等を有する制御回路である。
【0039】
<アダプタ>
被加工物8はアダプタ9に装着された状態で保持具48に保持される。アダプタ9は被加工物8の外周面の一部を囲むことで被加工物8と当接し、被加工物8を支持する。
【0040】
アダプタ9は、図3から図9に示すように、中心軸線9Aについて対称に形成された部材であり、フレーム90と、留め具91と、ネジ93とを備えている。留め具91は、フレーム90にネジ93によって取り外し可能に固定される。
【0041】
フレーム90は、支持部910と、連結部920とを備える。支持部910は、図3から図6に示すように略平板状の部材であり、平面視で中心軸線9Aについて対称な略U字型に形成される。支持部910は、平面視で円弧状に形成された支持面910A(図9)と、ガイド突起911A、911Bと、後部915とを有する。ガイド突起911A、911Bは、本発明における係合部の一例である。
【0042】
支持面910Aの曲率は、凸部81の曲率と略等しい。支持面910Aは、被加工物8の凸部81と当接し、支持する機能を有する。
【0043】
ガイド突起911A、911Bは、中心軸線9Aについて対称に形成、配置された、保持具48に係合するための突起である。ガイド突起911A、911Bは、いずれも略平板状に形成され、支持部910の側面から外方に突出するように設けられる。
【0044】
後部915は、フレーム90において、連結部920と反対側に形成され、連結部920と対向する部材である。後部915には、円弧状の後退部915Aが2か所において形成される(図3)。2つの後退部915Aは、中心軸線9Aに対して対称に配置される。後部915は保持具48と当接し、支持される機能を有する。後部915は、本発明における係合部の一例である。
【0045】
連結部920は平面視において、中心軸線9Aについて対称な略U字型に形成されており、その両端部は支持部910の端部と一体的に連結する。被加工物8がアダプタ9に装着された状態(以下、「装着時」ともいう)において、連結部920は、支持部910と共に、被加工物8の外周部を包囲する。また、アダプタ9が保持具48に取り付けられた状態(以下「取付時」ともいう)において、連結部920は、支持部910に対して取付方向の上流側、換言すれば取外し方向下流側に位置する。連結部920は、略円弧状に形成されて被加工物8と対向する内周部921と、内周部921を支持するととともにピッカー71と係合する外周部922と、外周部922から外方に突出する被係合部923と、底板924とを備える。
【0046】
内周部921は、装着時において、被加工物8の外周部と対向する。また隙間921aは、取付時、被加工物8に対して取外し方向下流側に位置する。内周部921が平面視において形成する円弧の中心は、装着時における被加工物8の軸心8Aの位置と略一致する。内周部921は、装着時、被加工物8に対して一定の距離を空けて被加工物8の外周部と対向し、被加工物8との間に隙間921aを形成する。隙間921aは円弧状に形成され、その中心角921Bは、本実施形態においては略105度である(図3)。ただし、中心角921Bの大きさは105度に限定されず、適宜設定されうるものである。中心角921Bは、例えばデンタル加工機において加工される、歯型の大きさ及び形状に基づいて設定され、90度以上120度以下の範囲に収まることが望ましい。
【0047】
また、内周部921は、図7に示すように、連結部920の径方向内方に突出する山形の断面形状を備えている。この断面の頂点の角度921Cは、本実施形態において110度である。上述のようにチルト機構42によるアダプタ9の搖動範囲は、本実施形態では上方向及び下方向に35度、すなわち上下70度の搖動角に設定されている。角度921Cは、この搖動角に適応したものであり、第二揺動用モーター45が限界までアダプタ9を搖動させても、アダプタ9が切削工具36に干渉して加工作業の妨げとなってしまうことを防止するように設計されている。詳細には、本実施形態において、角度921Cは、「180-搖動角」という式に基づいて定められている。
【0048】
一方で、連結部920の断面は、強度、剛性または耐久性等の観点より、できるだけ大きいことが望ましい。そのため、角度921Cの大きさは、望ましくは、90度以上120度以下の範囲において設定される。例えば、作業時への余裕を持たせて、角度921Cを90度とし、連結部920には強度及び剛性に優れた材料を用いることとしてもよい。またはその逆に、連結部920を肉薄とし、角度921Cを120度とすることも考えられる。
【0049】
底板924は、外周部922から突出するように設けられた平板状の部材である。底板924は、平面視において略三角形状に形成される。底板924は、ピッカー71と係合する機能を有する。
【0050】
留め具91は、U字型に形成された平板状の部材であり、円弧状の内周部91Aを有する。被加工物8のアダプタ9への装着及び取り外しは、留め具91を支持部910から着脱することにより行われる。内周部91Aの曲率半径は、外周面82の曲率半径と略等しい。被加工物8の装着時において、留め具91は、4つのねじ93によってフレーム90、本実施形態では支持部910に固定される。これにより凸部81は、留め具91及び支持部910によって狭持される(図9)。また、内周部91Aが被加工物8の外周面82と当接することによって、被加工物8の径方向への移動を防止する。
【0051】
<加工装置の動作及び使用方法>
加工装置1の動作及び加工装置1の使用方法について説明する。
(1) 初期状態
加工装置1を起動すると、制御部4が加工装置1の各部を初期状態にまで動作させる。具体的には、保持具48がスピンドル34の下にまで移動するように直動駆動機構20、30、40が制御部4によって作動される。また、保持具48が横に倒伏した状態(Y軸及びX軸に対して平行な状態)になるようにチルト機構42が制御部4によって作動される。また、ピッカー71が昇降体62に引き込まれるように移載機70が制御部4によって収縮動作させられる。また、昇降機60が制御部4によって作動されて、昇降体62が所定の待機位置(例えば、ハウジング50内の上端部、或いは、最上段の保持棚56よりも上の位置)にまで移動する。
【0052】
(2) 保持棚の高さにまで移動
次に、昇降機60が制御部4によって制御される。これにより、図13に示すように、昇降体62が何れかの保持棚56の高さにまでモーター64によって移動する。
【0053】
(3) ピックアップ
昇降体62が何れかの保持棚56の高さにまでモーター64によって移動し、移載機70の送り機構701がモーター702により展開・伸長されて、ピッカー71がY軸方向に保持棚56へ近接する。
【0054】
ピッカー71がアダプタ9にまで到達すると、固定部76に連結部920が載置された状態となり、さらにピッカー71はアダプタ9を把持する。詳細には、フック72、73を開位置とした状態でピッカー71はアダプタ9に到達し、次にフック72、73を閉位置に移動させる。係合部72B、73Bは、底版924上に移動する。また、被係合部923と、係合部72B、73Bとがそれぞれ係合する。
【0055】
このとき連結部920は、板バネ77によってフック72、73へ向けて付勢される。連結部920は、板バネ77及びフック72、73によって狭持される。
【0056】
上記のように、被係合部923との係合を行い、連結部920を狭持することにより、ピッカー71は、アダプタ9を把持し、移動させることが可能となる。
【0057】
(4) 抜き取り
これにより、移載機70の送り機構701がモーター702により折り畳み・収縮されて、ピッカー71が保持棚56からY軸方向に離間する(図12)。そして、アダプタ9及び被加工物8が保持棚56から抜き取られて、ピッカー71が昇降体62にまで到達すると、移載機70及びモーター702が停止される。次に、昇降体62が搬送口12a、53aの高さにまでモーター64によって移動(上昇又は下降)する。
【0058】
次に、保持具48のX軸方向の位置が搬送口12a、53aに揃うまで、保持具48が直動駆動機構40によってX軸方向に移動する(図12の矢印A参照)。
【0059】
(5) 装填
図13及び図8に示すように、移載機70の送り機構701がモーター702により展開・伸長されて、ピッカー71は、Y軸方向、かつ取付方向に移動し、保持具48に向かって移動する。ピッカー71が搬送口12a、53aを通過する際には、送り機構701、ピッカー71又はアダプタ9によって扉57が押し開かれる(図13)。
【0060】
そして、アダプタ9が保持具48に到達し、保持具48に保持される。このとき、後部915は、保持具48と当接し、保持具48によって支持される。また、保持具48は、ガイド突起911A、911Bを上下に狭持するようにして係合し、支持する(図9)。
【0061】
保持具48によるアダプタ9の保持が完了すると、ピッカー71とアダプタ9との係合が解除される。詳細には、ピッカー71はフック72、73をそれぞれ開位置へと移動させ、被係合部923との係合を解除する。
【0062】
(6) 引き込み
次に、移載機70が制御部4によって制御される。これにより、移載機70の送り機構701がモーター702により折り畳み・収縮されて、ピッカー71が保持具48からY軸方向に離間する。固定部76、フック72、73及び板バネ77は、アダプタ920に対してY軸方向に沿って離間する。このようにして、ピッカー71は完全にアダプタ9と非接触の状態となる。
【0063】
そして、ピッカー71が搬送口12a、53aを通って昇降体62にまで到達すると、移載機70及びモーター702が停止される。また、ピッカー71がハウジング50内に入ると、扉57が付勢手段の付勢力により閉じられる。
【0064】
(7) 加工
次に、スピンドルモーター32が制御部4によって作動される。そうすると、スピンドル34及び切削工具36がスピンドルモーター32により回転駆動される。スピンドルモーター32が作動された状態で、制御部4が直動駆動機構20、30、40を制御する。これにより、スピンドル34及び切削工具36が直動駆動機構20によりY軸方向に移動するともに直動駆動機構30により昇降し、被加工物8及び保持具48が直動駆動機構40によりX軸方向に移動する。従って、被加工物8の中心点(チルト機構42の第一回転軸と第二回転軸の交点)に対する切削工具36の先端の相対的な三次元位置が変位する。そのような変位中に切削工具36が被加工物8に当接すると、被加工物8が切削工具36によって切削される。また、被加工物8の切削中に制御部4がチルト機構42を制御すると、保持具48及び被加工物8がチルト機構42によってモーター43、45の出力回転軸43a、45a回りに揺動される。これにより切削工具36と被加工物8との成す接触角度が変位する。
【0065】
連結部920が山形の断面を備え、被加工物8との間には隙間921aが形成されているため、アダプタ9が搖動しても、切削工具36との干渉が防止される。図7に示すように、大きな歯型を加工する場合においても、切削工具36は隙間921aを通じて被加工物8に接触し、余裕をもって加工作業を実行することができる。
【0066】
(8) 受け取り
作業を完了すると、アダプタ9は、ピッカー71によってピックアップされ、保持棚56へと戻される。すなわち上記(1)~(6)までの作業が逆順で行われ、保持棚56への移管が完了する。
【0067】
ピックアップ時において、移載機70の送り機構701がモーター702により展開・伸長されて、ピッカー71が、Y軸方向かつ取付方向に沿ってアダプタ9の連結部920へ近接する。ピッカー71がアダプタ9にまで到達すると、固定部76に連結部920が載置された状態となる。フック72、73を開位置とした状態でピッカー71はアダプタ9に到達し、次にフック72、73を閉位置に移動させる。係合部72B、73Bは、底版924上に移動する。また、被係合部923と、係合部72B、73Bとがそれぞれ係合する。
【0068】
このとき連結部920は、板バネ77によってフック72、73へ向けて付勢される。連結部920は、板バネ77及びフック72、73によって狭持される。被係合部923との係合を行い、連結部920を狭持することにより、ピッカー71は、アダプタ9を把持し、移動させることが可能となる。
【0069】
次に、移載機70の送り機構701がモーター702により収縮されて、ピッカー71は、Y軸方向、かつ図8の取外し方向に移動し、保持具48から離間する。このとき、ピッカー71と係合する連結部920は取外し方向の下流側に位置し、ピッカー71ととともに移動する。ガイド突起911A、911Bは、保持具48の側面に沿って取外し方向に摺動し、係合を解除して、やがて離間する。また、後部915は保持具48から離間して保持具48との係合を解除する。このようにして、アダプタ9は、保持具48から完全に離間した状態となるまで取外し方向に移動する。その後、アダプタ9及び被加工物8は、保持棚56へ戻される。
【0070】
<効果>
上記実施形態においてアダプタ9は、板状に形成された被加工材8を加工する加工装置1の保持具48によって保持可能に構成される。アダプタ9は、被加工材8の外周部に当接し、被加工材8を支持する支持部910を備える。さらにアダプタ9は、支持部910と連結し、支持部910とともに被加工材8の外周部を包囲し、外周部との間に隙間921aを形成する連結部920を備える。
【0071】
上記構成では、隙間921aを介して加工作業を実施することが可能である。そのため、仕上がり形状が大きなものである場合においても、加工作業を実行することができる。また、複雑な形状を加工する場合にも、加工することができる。
【0072】
連結部920は、被加工材8の外周部に向けて突出した山形の断面を有する。そのため、大きな断面形状を確保しつつ、隙間921aを形成することができる。アダプタ9を搖動させた場合においても、図7に示すように、連結部920と切削工具36との干渉が回避され、作業を実施することができる。また、大きな断面形状を有するため、アダプタ9の強度または剛性を確保することが可能である。
【0073】
連結部920は、支持部910と一体的に連結する。そのため、簡易な構成によってアダプタ9の製作が可能となる。接続部がないため、アダプタ9の強度または剛性が確保される。
【0074】
隙間921aの中心角921Bの大きさは、90度以上120度以下であるため、人間の歯型のような形状を加工する際に、切削工具36が隙間921aを介して前歯周辺の複雑な形状加工を実施することができる。
【0075】
支持部910は、保持具48と係合可能なガイド突起911A、911B、または後部915を有する。支持部910が保持具48によって支持されることにより、連結部920は、係合部を設けたりするなどの必要がなく、簡易な構成とすることができる。連結部920が保持される構成とする必要がなくなるため、加工装置1内部において、連結部920周辺に機械や部材を配置する必要がなく、切削工具36は余裕をもって、被加工材8にアクセスすることができる。そのため、周辺機材等との干渉が防止され、加工作業が容易に実施される。
【0076】
保持具48は、支持部910を取外し方向において取外し可能に保持する。支持部910が保持具48に保持された状態において、連結部920は取外し方向下流側に位置する。
【0077】
このように連結部920が取外し方向下流側に位置することによって、ピッカー71は保持具48との干渉を避けつつ連結部920を把持することができる。そのため、ピッカー71によるアダプタ9の把持、または移動が容易となる。また、保持具48は、ピッカー71との干渉を避けつつ、アダプタ9の取付け、取り外しを行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1…加工装置、 1A…加工装置、 2…加工機本体、 3…ローディング装置、 8…被加工物、9…アダプタ、 10…筐体、 36…工具、 32…回転駆動機、 48…保持具、 55…ストッカー、 60…昇降機、 70…移載機、 71…ピッカー
図1
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図5
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