IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロレアルの特許一覧

特許7486943カチオン性多糖とアニオン性抗酸化剤とを含む組成物
<>
  • 特許-カチオン性多糖とアニオン性抗酸化剤とを含む組成物 図1
  • 特許-カチオン性多糖とアニオン性抗酸化剤とを含む組成物 図2
  • 特許-カチオン性多糖とアニオン性抗酸化剤とを含む組成物 図3
  • 特許-カチオン性多糖とアニオン性抗酸化剤とを含む組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】カチオン性多糖とアニオン性抗酸化剤とを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240513BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240513BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/04
A61K8/49
A61Q19/00
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019226589
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021095352
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
(72)【発明者】
【氏名】白谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】シンディ・シュオン
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和彦
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103961285(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0146438(US,A1)
【文献】特開2019-099552(JP,A)
【文献】特表2018-538351(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103893370(CN,A)
【文献】中国特許第105581917(CN,B)
【文献】中国特許出願公開第109430878(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第1683512(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第102058512(CN,A)
【文献】Age Protector Restorative Shampoo, ID# 5016917,Mintel GNPD[online],2017年08月,[検索日2023.10.24],<URL:http://www.gnpd.com>
【文献】Shampoo, ID# 4237291,Mintel GNPD[online],2016年08月,[検索日2023.10.24],<URL:http://www.gnpd.com>
【文献】Present Perfect Antioxidant Defense Lotion, ID# 2176019,Mintel GNPD[online],2013年09月,[検索日2023.10.24],<URL:http://www.gnpd.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)少なくとも1種の抗酸化剤と、
(c)水と
を含む組成物であって、
(a)カチオン性多糖が、ポリクオタニウム-67、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
(b)抗酸化剤が、バイカリン、ルチニル二硫酸二ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
(a)カチオン性多糖の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上であり、
(b)抗酸化剤の量が、組成物の総質量に対して、0.05質量%以上である、組成物。
【請求項2】
(a)カチオン性多糖と(b)抗酸化剤とが、錯体を形成することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の(a)カチオン性多糖の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%ある、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物中の(b)抗酸化剤の量が、組成物の総質量に対して、0.05質量%~10質量%ある、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して、50質量%~99質量%ある、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の油及び/又は少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
エマルションの形態である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
化粧用組成物ある、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ラチン物質のための美容方法であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に適用する工程と、
組成物を乾燥させてケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性多糖とアニオン性抗酸化剤との組合せを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
遊離ラジカルの形成は、皮膚老化につながる、広く受容されているピボタルメカニズムである。遊離ラジカルは、多様な細胞膜、脂質、タンパク質、RNA及びDNAを直接損傷しうる不対電子を有する高反応性分子である。これらの反応性酸素種の損傷作用は、内部で、正常な免疫の間に誘発され、且つ外部で、多種の酸化ストレスを通じて誘発される。UV曝露及び環境汚染は、皮膚内の遊離ラジカルを生成することによって皮膚老化を促進させうる。
【0003】
抗酸化剤は、遊離ラジカルを除去することによって、且つそれに続く酸化反応を抑制することによって、酸化ストレスの損傷から細胞を保護する。抗酸化剤の局所的適用は、皮膚老化を保護するためのスキンケア製品中で広く用いられている。
【0004】
しかしながら、いくつかの抗酸化剤は、局所的配合物中のビヒクルとして使用されることが多い水への溶解度が限定的である。したがって、水を含む組成物中でこのような水溶性の低い抗酸化剤の量を増加させる必要性が存在している。水溶性の抗酸化剤であっても、このような、より水溶性である抗酸化剤の量を更に増加させる必要性もまた存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】仏国特許第1492597号
【文献】米国特許第4131576号
【文献】米国特許第5240975号
【文献】欧州特許第669323号
【文献】米国特許第2463264号
【文献】米国特許第5237071号
【文献】米国特許第5166355号
【文献】英国特許第2303549号
【文献】独国特許第19726184号
【文献】欧州特許第893119号
【文献】WO93/04665
【文献】独国特許第19855649号
【非特許文献】
【0006】
【文献】CTFA辞典
【文献】Walter Noll著「Chemistry and Technology of Silicones」(1968) Academic Press
【文献】Cosmetics and Toiletries、91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers「Volatile Silicone Fluids for Cosmetics」
【文献】ASTM規格445付録C
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、本発明の目的は、相対的に多量の抗酸化剤を含むことができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)少なくとも1種の抗酸化剤と、
(c)水と
を含む組成物であって、
(b)抗酸化剤が、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基及びカルボキシレート基からなる群から選択される、少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有する、組成物によって達成することができる。
【0009】
(a)カチオン性多糖と(b)抗酸化剤とが錯体を形成できることが好ましい。
【0010】
(a)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有しうる。
【0011】
(a)カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマー、カチオン性デンプン、カチオン性ガム、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0012】
(a)カチオン性多糖は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、キトサン、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0013】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~2質量%でありうる。
【0014】
(b)抗酸化剤は、水に難溶性でありうる。
【0015】
(b)抗酸化剤は、フラボノイド、フラボノイドグリコシド、フラバノン、フラバノングリコシド、ケイ皮酸誘導体、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0016】
(b)抗酸化剤は、バイカリン、ルチン、ルニチル二硫酸二ナトリウム、フェルラ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0017】
本発明による組成物中の(b)抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.05質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~5質量%、より好ましくは0.15質量%~1質量%でありうる。
【0018】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~99質量%、好ましくは60質量%~98質量%、より好ましくは70質量%~97質量%でありうる。
【0019】
本発明による組成物は、少なくとも1種の油及び/又は少なとも1種の有機UV遮蔽剤を更に含んでよい。この組成物は、エマルションの形態でありうる。
【0020】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくは皮膚化粧用組成物、より好ましくはスキンケア化粧用組成物でありうる。
【0021】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程と、
該組成物を乾燥させてケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む、美容方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は、実施例4、比較例2又は比較例4による組成物がその上で適用されてすっかり乾かされた膜表面の、UV曝露の前と後とのb*値における変化を示すグラフである。(b)は、実施例5、比較例3又は比較例4による組成物がその上で適用されてすっかり乾かされた膜表面の、UV曝露の前と後とのb*値における変化を示すグラフである。
図2】実施例5、比較例3又は比較例4による組成物がその上で適用されてすっかり乾かされた膜表面の、煙との組合せにおける、UV曝露の前と後とのb*値における変化を示すグラフである。
図3】実施例5、実施例6、実施例7又は比較例3による組成物がその上で適用されてすっかり乾かされた膜表面の、煙との組合せにおける、UV曝露時間に応じた脂質ヒドロペルオキシド濃度における変化を示すグラフである。
図4】(a)は、実施例7による組成物でコーティングされたガラス表面の写真を示す。(b)は、比較例5による組成物でコーティングされたガラス表面の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
鋭意検討の結果、本発明者らは、相対的に多量の抗酸化剤を含むことができる組成物を提供することが可能であることを発見した。そのため、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)少なくとも1種の抗酸化剤と、
(c)水と
を含み、
(b)抗酸化剤が、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基及びカルボキシレート基からなる群から選択される、少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有する。
【0024】
本発明による組成物は、(a)カチオン性多糖なしで抗酸化剤を含む組成物よりも、相対的に多量の抗酸化剤を含むことができる。そのため、本発明による組成物は、美容用途等の局所的な適用にとって好ましい。
【0025】
(b)抗酸化剤は、アニオン性である、又はアニオン性になることができる。したがって、(c)水中において、(a)カチオン性多糖は、(b)抗酸化剤と、錯体を形成することができる。錯体の形成は、イオン結合又はイオン性相互作用に基づくことができる。そのため、錯体は、多価電解質錯体であることができる。
【0026】
本発明による組成物が相対的に多量の抗酸化剤を含むことができるため、組成物は、強化された抗酸化効果を及ぼすことができる。
【0027】
更に、(a)カチオン性多糖は、(b)抗酸化剤を、基材上に、好ましくはケラチン物質上に、より好ましく皮膚上に、均一に分布させるのに有用である皮膜を形成することができる。したがって、(b)抗酸化剤は、基材上に抗酸化効果を効果的に及ぼすことができる。抗酸化効果としては、UV照射及び/又は環境汚染によって促進されるおそれのある酸化を防止する又は減少させることが挙げられる。
【0028】
加えて、(a)カチオン性多糖と(b)抗酸化剤との組合せは、油を乳化するように機能することができる。そのため、本発明による組成物は、油又は有機UV遮蔽剤(これは油性である)を含むことができ、且つエマルションの形態であることができる。また、(a)カチオン性多糖は、本発明による組成物が油又は有機UV遮蔽剤を含む場合でさえ、基材上への、好ましくはケラチン物質上への、より好ましくは皮膚上への汚染物質の付着を減らすように機能することができる。
【0029】
以下、本発明による組成物、方法などを、より詳細に説明する。
【0030】
[カチオン性多糖]
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のカチオン性多糖を含む。2種以上の異なるタイプの(a)カチオン性多糖を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの(a)カチオン性多糖、又は異なるタイプの(a)カチオン性多糖の組合せを使用することができる。
【0031】
(a)カチオン性多糖は、正電荷密度を有する。(a)カチオン性多糖の電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gでありうる。
【0032】
(a)カチオン性多糖の分子量が、500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは5,000以上であることが好ましい場合がある。
【0033】
説明において別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味しうる。
【0034】
(a)カチオン性多糖は、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基及びピリジル基からなる群から選択される少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有しうる。用語(第一級)「アミノ基」は、本明細書では、-NH2基を意味する。
【0035】
(a)カチオン性多糖が、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、好ましくは第四級トリアルキルアンモニウム基、より好ましくは第四級トリメチルアンモニウム基を有することが好ましい。
【0036】
第四級アンモニウム基は、化学式(I):
【0037】
【化1】
【0038】
(式中、
R1及びR2のそれぞれは、C1~3アルキル基、好ましくはメチル又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
R3は、C1~24アルキル基、好ましくはメチル又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
X-は、アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン、より好ましくは塩化物イオンを示し、
nは、0~30、好ましくは0~10、より好ましくは0の整数を示し、
R4は、C1~4アルキレン基、好ましくはエチレン又はプロピレン基を示す)
により表すことができる第四級アンモニウム基含有基中に存在しうる。
【0039】
上記の化学式(I)の左端のエーテル結合(-O-)は、多糖の糖環に結合することができる。
【0040】
第四級アンモニウム基含有基が-O-CH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3であることが好ましい。
【0041】
(a)カチオン性多糖は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。用語「コポリマー」は、2種のモノマーから得られるコポリマーと、3種以上のモノマーから得られるもの、例えば3種のモノマーから得られるターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0042】
(a)カチオン性多糖は、天然の及び合成のカチオン性多糖から選択することができる。
【0043】
(a)カチオン性多糖がカチオン性セルロースポリマーから選択されることが好ましい場合がある。カチオン性セルロースポリマーの非限定的な例は、以下である。
【0044】
(1)カチオン性セルロースポリマー、例えば仏国特許第1492597号に記載されている、1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばDow Chemical社により名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典で、トリメチルアンモニウム基で置換されているエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0045】
(2)カチオン性セルロースポリマー、例えば米国特許第4131576号に記載されている、第四級アンモニウムの少なくとも1種の水溶性モノマーでグラフト化されたセルロースコポリマー及びセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、例としては、例えばメタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム及びジメチルジアリルアンモニウムから選ばれる少なくとも1つでグラフト化されたヒドロキシメチル-、ヒドロキシエチル-及びヒドロキシプロピルセルロース。これらのポリマーに相当する市販製品には、例えば、Akzo Novel社により名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が挙げられる。
【0046】
(3)少なくとも1つの脂肪鎖、例えば少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル又はアルキルアリール基を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有するカチオン性セルロースポリマー。カチオン性セルロースポリマーが、少なくとも1つの脂肪鎖、例えば少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル若しくはアルキルアリールの各基、又はこれらの混合物を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基で修飾された四級化ヒドロキシエチルセルロースであることが好ましい場合がある。第四級アンモニウム基が有するアルキル基は、好ましくは8~30個の炭素原子、特に10~30個の炭素原子を含有する。アリール基は、好ましくは、フェニル、ベンジル、ナフチル又はアントリルの各基を示す。より好ましくは、カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つのC8~C30炭化水素基を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含んでもよい。挙げることができるC8~C30脂肪鎖を含有する四級化アルキルヒドロキシエチルセルロースの例としては、Dow Chemical社により販売されている製品Quatrisoft LM 200、Quatrisoft LM-X 529-18-A、Quatrisoft LM-X 529-18B(C12アルキル)及びQuatrisoft LM-X 529-8(C18アルキル)又はSoftcat Polymer SL100、Softcat SX-1300X、Softcat SX-1300H、Softcat SL-5、Softcat SL-30、Softcat SL-60、Softcat SK-MH、Softcat SX-400X、Softcat SX-400H、SoftCat SK-L、Softcat SK-M及びSoftcat SK-H、並びにCroda社により販売されている製品Crodacel QM、Crodacel QL(C12アルキル)及びCrodacel QS(C18アルキル)が挙げられる。
【0047】
(a)カチオン性多糖が、カチオン性デンプンから選択されることもまた好ましい場合がある。
【0048】
カチオン性デンプンの例としては、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(例えばクロリド)で修飾されたデンプンを挙げることができ、例えばINCI命名法によりデンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドとして知られ、Ondeo社から名称SENSOMER Cl-50で、又はIngredion社から名称Pencare(商標)DP 1015で販売されている製品を挙げることができる。
【0049】
(a)カチオン性多糖が、カチオン性ガムから選択されることもまた好ましい場合がある。
【0050】
ガムは、例えば、カッシアガム、カラヤガム、コンニャクガム、トラガカントガム、タラガム、アカシアガム及びアラビアガムからなる群から選択することができる。
【0051】
カチオン性ガムの例としては、カチオン性ポリガラクトマンナン誘導体、例えばグアーガム誘導体及びカッシアガム誘導体、例えばCTFA:グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド及びカッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドが挙げられる。グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Rhodia Inc.社から商品名Jaguar(商標)シリーズで、及びAshland Inc.社から商品名N-Hanceシリーズで市販されている。カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Lubrizol Advanced Materials, Inc社から商品名Sensomer(商標)CT-250及びSensomer(商標)CT-400で、又はAshland Inc.社からClearHance(商標)で市販されている。
【0052】
(a)カチオン性多糖がキトサンから選択されることもまた好ましい場合がある。
【0053】
(a)カチオン性多糖が、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、キトサン、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0054】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0055】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下でありうる。
【0056】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~2質量%でありうる。
【0057】
[抗酸化剤]
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の抗酸化剤を含む。2種以上の異なるタイプの(b)抗酸化剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの(b)抗酸化剤、又は異なるタイプの(b)抗酸化剤の組合せを使用することができる。
【0058】
(b)抗酸化剤は、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基及びカルボキシレート基からなる群から選択される、少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有する。
【0059】
(b)抗酸化剤は、水に難溶性でありうる。
【0060】
用語「難水溶性」は、本明細書では、水への溶解度が不良であることを意味する。したがって、本明細書で使用される難水溶性抗酸化剤は、水に溶解しにくい。そのため、「難水溶性」抗酸化剤は、(a)カチオン性多糖なしで、pH7で、室温(20~25℃、好ましくは25℃)にて、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満の水溶解度を有する化合物でありうる。換言すれば、「難水溶性」抗酸化剤は、pH7で、室温(20~25℃、好ましくは25℃)にて、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満の純水への溶解度を有しうる。
【0061】
本発明において使用されうる(b)抗酸化剤は、1つの分子中に少なくとも1つのフェノール性ヒドロキシル基を有する難水溶性フェノール化合物であってもよく、又は1つの分子中に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する難水溶性ポリフェノール化合物であってもよい。
【0062】
少なくとも1つのフェノール性ヒドロキシル基を有する(b)抗酸化剤の例としては、マンギフェリン、ポリダチン、クルクミン及びレゼベラトールを挙げることができる。
【0063】
(b)抗酸化剤がエラグ酸ではないことが好ましい。
【0064】
本発明において使用されうる(b)抗酸化剤は、フラボノイド及び非フラボノイドから選択することができる。
【0065】
フラボノイドは、カルコン、フラボン、例えばルテオリン、バイカレイン及びジオスメチン、フラバノン、例えばヘスペレチン、フラバノール、フラボノール、ジヒドロフラボノール、イソフラボノイド、ネオフラボノイド、カテキン、アントシアニジン、タンニン、及びこれらの誘導体からなる群から選択することができる。
【0066】
(b)抗酸化剤は、塩の形態であってもグリコシドの形態であってもよい。
【0067】
フラボノイドは、フラボノイドグリコシドの形態でありうる。フラボノイドグリコシドの例としては、バイカリン、ルチン及びジオスミンを挙げることができる。
【0068】
フラバノンは、フラバノングリコシドの形態でありうる。フラバノングリコシドの例としては、グルコシルヘスペリジンを挙げることができる。
【0069】
非フラボノイドは、リグナン、オーロン、クルクミノイド、及び他のフェニルプロパノイド、並びにこれらの誘導体、例えばレゾルシノール誘導体からなる群から選択することができる。
【0070】
本発明において使用されうる(b)抗酸化剤は、ケイ皮酸誘導体から選択することができる。
【0071】
ケイ皮酸誘導体は、化学式(II):
【0072】
【化2】
【0073】
[式中、
Aは、
OR3基(式中、R3は、水素原子、フィチル基、ベンジル基、直鎖状又は分枝状のC1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及びアンモニウムイオンから選ばれる)
及び
NHR4基(式中、R4は、水素原子、フィチル基、ベンジル基、及び直鎖状又は分枝状のC1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基から選ばれる)
から選ばれ、
R1は、水素原子、ヒドロキシル基、C1~C6アルコキシ基、直鎖状又は分枝状のC1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基から選ばれ、
R2は、水素原子、ヒドロキシル基及びC1~C6アルコキシ基から選ばれる]
により表すことができる。
【0074】
直鎖状又は分枝状のC1~C18アルキル基、好ましくはC1~C12アルキル基、より好ましくはC1~C6アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基及び1-エチルブチル基を挙げることができる。
【0075】
C3~C8シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基を挙げることができる。
【0076】
C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基及びシクロヘキシルメチル基を挙げることができる。
【0077】
C1~C6アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、1-エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基及び1-エチルブトキシ基を挙げることができる。メトキシ基が好ましい。
【0078】
R1がヒドロキシル基であること、並びにR2が、ヒドロキシル基及びC1~C6アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基から選ばれることが好ましい場合がある。
【0079】
ケイ皮酸誘導体としては、例えば、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミル、メトキシケイ皮酸ジイソプロピル、コーヒー酸、フェルラ酸を挙げることができる。コーヒー酸及びフェルラ酸が好ましい場合があり、フェルラ酸がより好ましい場合がある。
【0080】
(b)抗酸化剤は、水溶性でありうる。
【0081】
用語「水溶性」は、本明細書では、水に溶けることを意味する。したがって、本明細書で使用される水溶性抗酸化剤は、水に溶解しにくいということがない。そのため、「水溶性」抗酸化剤は、(a)カチオン性多糖なしで、pH7で、室温(20~25℃、好ましくは25℃)にて、1質量%以上の水溶性を有する化合物でありうる。換言すれば、「水溶性」抗酸化剤は、pH7で、室温(20~25℃、好ましくは25℃)にて、1質量%以上の純水への溶解度を有しうる。
【0082】
本発明において使用されうる(b)抗酸化剤は、1つの分子中に少なくとも1つのフェノール性ヒドロキシル基を有する水溶性フェノール化合物であってもよく、又は1つの分子中に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する水溶性ポリフェノール化合物であってもよい。
【0083】
本発明において使用されうる水溶性抗酸化剤は、その両方が上で説明されているフラボノイド及び非フラボノイドの水溶性誘導体から選択することができる。
【0084】
フラボノイド及び非フラボノイドの水溶性誘導体は、フラボノイド及び非フラボノイドの、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート及びカルボキシレートから選択することができる。
【0085】
水溶性抗酸化剤は、フラボノイドのスルフェート、好ましくはフラボノイドグリコシドのスルフェート、より好ましくはルチニル二硫酸二ナトリウムから選択することができる。
【0086】
(b)抗酸化剤が、フラボノイド、フラボノイドグリコシド、フラバノン、フラバノングリコシド、ケイ皮酸誘導体、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい場合がある。
【0087】
(b)抗酸化剤が、バイカリン、ルチン、ルニチル二硫酸二ナトリウム、フェルラ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されることがより好ましい場合がある。
【0088】
本発明による組成物中の(b)抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上でありうる。
【0089】
本発明による組成物中の(b)抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下でありうる。
【0090】
本発明による組成物中の(b)抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.05質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~5質量%、より好ましくは0.15質量%~1質量%でありうる。
【0091】
[水]
本発明による組成物は、(c)水を含む。
【0092】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上でありうる。
【0093】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、99質量%以下、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下でありうる。
【0094】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50~99質量%、好ましくは60~98質量%、より好ましくは70~97質量%でありうる。
【0095】
[pH]
本発明による組成物のpHは、3~9、好ましくは3.5~8.5、より好ましくは4~8でありうる。
【0096】
3~9のpHで、本発明による組成物は、非常に安定であることができる。
【0097】
本発明による組成物のpHは、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。本発明による組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することができる。
【0098】
(アルカリ剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組合せを使用することができる。
【0099】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤でありうる。無機アルカリ剤が、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩及びモノヒドロゲノホスフェート、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0100】
無機アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例としては、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0101】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤でありうる。有機アルカリ剤が、モノアミン及びその誘導体、ジアミン及びその誘導体、ポリアミン及びその誘導体、塩基性アミノ酸及びその誘導体、塩基性アミノ酸のオリゴマー及びその誘導体、塩基性アミノ酸のポリマー及びその誘導体、尿素及びその誘導体、並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0102】
有機アルカリ剤の例としては、アルカノールアミン、例えばモノ-、ジ-及びトリエタノールアミン、及びイソプロパノールアミン; 尿素、グアニジン及びそれらの誘導体; 塩基性アミノ酸、例えばリジン、オルニチン又はアルギニン; 並びにジアミン、例えば下記の構造:
【0103】
【化3】
【0104】
(式中、Rは、ヒドロキシル又はC1~C4アルキル基で任意選択で置換されているプロピレン等のアルキレンを示し、R1、R2、R3及びR4は、独立に、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示す)
に記載されているものを挙げることができ、これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示することができる。アルギニン、尿素及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0105】
アルカリ剤は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0106】
(酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでよい。2種以上の酸を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組合せを使用することができる。
【0107】
酸としては、化粧料において一般に使用される任意の無機又は有機酸、好ましくは無機酸を挙げることができる。一価の酸及び/又は多価の酸を使用することができる。クエン酸、乳酸、硫酸、リン酸及び塩酸(HCl)等の一価の酸を使用することができる。HClが好ましい。
【0108】
酸は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0109】
(緩衝剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含んでよい。2種以上の緩衝剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの緩衝剤、又は異なるタイプの緩衝剤の組合せを使用することができる。
【0110】
緩衝剤としては、酢酸緩衝剤(例えば、酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸二水素ナトリウム+リン酸水素二ナトリウム)、クエン酸緩衝剤(例えば、クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸+ホウ酸ナトリウム)、酒石酸緩衝剤(例えば、酒石酸+酒石酸ナトリウム二水和物)、トリス緩衝剤[例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]、Hepes緩衝剤(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を挙げることができる。
【0111】
[油]
本発明による組成物は、少なくとも1種の油を含んでよい。2種以上の油が使用される場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0112】
本明細書では、「油」は、大気圧(760mmHg)下で室温(25℃)にて液状又はペースト状(非固体)の形態である脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油としては、化粧料において一般的に使用されるものを、単独で、又はそれらを組み合わせて使用することができる。これらの油は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0113】
油は、炭化水素油、シリコーン油などの非極性油、植物油若しくは動物油及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油、又はこれらの混合物でありうる。
【0114】
油は、植物又は動物起源の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油及び脂肪族アルコールからなる群から選択することができる。
【0115】
植物油の例としては、例えば、あんず油、亜麻仁油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、菜種油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0116】
動物油の例としては、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0117】
合成油の例としては、アルカン油、例えばイソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油、及び人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0118】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一酸又は多酸と、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、これらのエステルの合計炭素原子数は10以上である。
【0119】
好ましくは、モノアルコールのエステルの場合、本発明のエステルが由来するアルコール及び酸の中からの少なくとも1つは分枝状である。
【0120】
一酸とモノアルコールとのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルが挙げられる。
【0121】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、及びモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルもまた使用することができる。
【0122】
特に挙げることができるのは以下である:セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコール。
【0123】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルを使用することができる。用語「糖」が、いくつかのアルコール官能基を含み、アルデヒド又はケトン官能基を有し又は有さず、且つ少なくとも4個の炭素原子を含む、酸素含有炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖又は多糖でありうる。
【0124】
挙げることができる好適な糖の例としては、スクロース(又はサッカロース)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにそれらの誘導体、特にメチル誘導体等のアルキル誘導体、例としてはメチルグルコースがある。
【0125】
脂肪酸の糖エステルは、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状の、飽和又は不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22の脂肪酸とのエステル又はエステル混合物を含む群から特に選ぶことができる。これらの化合物は、不飽和である場合、1~3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有しうる。
【0126】
この変形によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びポリエステル、並びにこれらの混合物からも選択することができる。
【0127】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えば特にオレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルでありうる。
【0128】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、特にスクロース、グルコース又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0129】
挙げることができる例は、Amerchol社により名称Glucate(登録商標)DOで販売されている製品であり、これは、ジオレイン酸メチルグルコースである。
【0130】
好ましいエステル油の例としては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、(カプリル酸/カプリン酸)2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0131】
人工トリグリセリドの例としては、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0132】
シリコーン油の例としては、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなど、環状オルガノポリシロキサン、例えばシクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなど、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0133】
好ましくは、シリコーン油は、液状ポリジアルキルシロキサン、特に液状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液状ポリオルガノシロキサンから選ばれる。
【0134】
これらのシリコーン油はまた、有機変性されてもよい。本発明に従って使用されうる有機変性シリコーンは、上記で定義されて、それらの構造中に、炭化水素系基を介して結合されている1つ又は複数の有機官能基を含むシリコーン油である。
【0135】
オルガノポリシロキサンは、Walter Noll著「Chemistry and Technology of Silicones」(1968) Academic Pressにおいて、より詳細に定義されている。これらは、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0136】
それらが揮発性である場合、シリコーンは、より詳細には、沸点が60℃から260℃の間であるものから選ばれ、更により詳細には、以下から選ばれる:
(i)3~7個、好ましくは4~5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。それらは、例えば、特にUnion Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標)7207で、又はRhodia社により名称Silbione(登録商標)70045 V2で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標)7158で、Rhodia社により名称Silbione(登録商標)70045 V5で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社により名称Silsoft 1217で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。式:
【0137】
【化4】
【0138】
の、ジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン等のタイプのシクロコポリマー、例えばUnion Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109もまた挙げることができる。
環状ポリジアルキルシロキサンの有機ケイ素化合物との混合物もまた挙げることができ、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物である。並びに
(ii)2~9個のケイ素原子を含有し、25℃にて5×10-6m2/s以下の粘度を有する直鎖状揮発性ポリジアルキルシロキサン。例は、特にToray Silicone社により名称SH 200で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。この部類に属するシリコーン類はまた、Cosmetics and Toiletries、91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers「Volatile Silicone Fluids for Cosmetics」において公表されている論文にも記載されている。該シリコーンの粘度は、ASTM規格445付録Cに従って25℃にて測定されている。
【0139】
不揮発性ポリジアルキルシロキサンもまた使用することができる。これらの不揮発性シリコーンは、より詳細には、ポリジアルキルシロキサンから選ばれ、その中では、主としてトリメチルシリル末端基を含有するポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
【0140】
これらのポリジアルキルシロキサンの中では、非限定的に、以下の市販製品を挙げることができる:
- Rhodia社により販売されているSilbione(登録商標)油の47及び70 047シリーズ又はMirasil(登録商標)油、例としては70 047 V 500 000油、
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油、
- Dow Corning社製の200シリーズの油、例えば粘度60,000mm2/sのDC200、並びに
- General Electric社製のViscasil(登録商標)油、及びGeneral Electric社製のSFシリーズの一定の油(SF 96、SF 18)。
【0141】
名称ジメチコノール(CTFA)で知られている、ジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製の48シリーズの油もまた挙げることができる。
【0142】
アリール基を含有するシリコーンの中でも、ポリジアリールシロキサン、特にポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0143】
フェニルシリコーン油は、式:
【0144】
【化5】
【0145】
(式中、
R1~R10は、互いに独立に、飽和又は不飽和の、直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基、好ましくはC1~C12炭化水素系基、より好ましくはC1~C6炭化水素系基、特にメチル、エチル、プロピル又はブチルの各基であり、
m、n、p及びqは、互いに独立に、端点を含む0~900、好ましくは端点を含む0~500、より好ましくは端点を含む0~100の整数であり、
但し、n+m+qの和は0以外である)
のフェニルシリコーンから選ぶことができる。
【0146】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品がある:
- Rhodia社製のSilbione(登録商標)油の70 641シリーズ、
- Rhodia社製のRhodorsil(登録商標)70 633及び763シリーズの油、
- Dow Corning社製のDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid油、
- Bayer社製のPKシリーズのシリコーン、例えばPK20製品、
- General Electric社製のSFシリーズの一定の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0147】
フェニルシリコーン油としては、フェニルトリメチコン(上記の式中、R1~R10は、メチルであり、p、q及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0148】
有機変性液状シリコーンは、特に、ポリエチレンオキシ基及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有しうる。そのため、信越化学工業株式会社によって提案されているシリコーンKF-6017、及びUnion Carbide社製のSilwet(登録商標)L722油及びL77油を挙げることができる。
【0149】
炭化水素油は、以下から選ぶことができる:
- 直鎖状又は分枝状の、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。挙げることができる例には、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカンがある。並びに
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン、液状ワセリン、ポリデセン及び水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、並びにスクアラン。
【0150】
炭化水素油の好ましい例としては、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えばイソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱物油(例えば、流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレンなど、水添ポリイソブテン、イソエイコサン及びデセン/ブテンコポリマー、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0151】
脂肪族アルコールにおける用語「脂肪族」は、比較的大きい数の炭素原子を包含することを意味する。そのため、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪族アルコールの範囲内に包含される。脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪族アルコールは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0152】
脂肪族アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4~40個の炭素原子、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは12~20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和の、直鎖及び分枝状の基から選ばれる)を有しうる。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル及びC12~C20アルケニル基から選ばれうる。Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0153】
脂肪族アルコールの例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0154】
脂肪族アルコールが飽和脂肪族アルコールであることが好ましい。
【0155】
そのため、脂肪族アルコールは、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和のC6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和のC6~C30アルコール、更に好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和のC12~C20アルコールから選択することができる。
【0156】
用語「飽和脂肪族アルコール」は、本明細書では、長鎖の脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪族アルコールが、任意の直鎖状又は分枝状の、飽和のC6~C30脂肪族アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の、飽和のC6~C30脂肪族アルコールの中でも、直鎖状又は分枝状の、飽和のC12~C20脂肪族アルコールが、好ましくは使用されうる。任意の直鎖状又は分枝状の、飽和のC16~C20脂肪族アルコールが、より好ましくは使用されうる。分枝状のC16~C20脂肪族アルコールが、更により好ましくは使用されうる。
【0157】
飽和脂肪族アルコールの例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)及びベヘニルアルコールが、飽和脂肪族アルコールとして使用されうる。
【0158】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中で使用される脂肪族アルコールは、好ましくは、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物から選ばれる。
【0159】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0160】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下でありうる。
【0161】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.05質量%~40質量%、より好ましくは0.1質量%~30質量%でありうる。
【0162】
[有機UV遮蔽剤]
本発明による組成物は、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含んでよい。2種以上の有機UV遮蔽剤を使用する場合、それらは、同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0163】
本発明のために使用される有機UV遮蔽剤は、UV-A及び/又はUV-B領域において活性でありうる。有機UV遮蔽剤は、親水性及び/又は親油性でありうる。
【0164】
有機UV遮蔽剤は、固体であっても液体であってもよい。用語「固体」及び「液体」は、それぞれ、1気圧下の25℃での固体及び液体を意味する。
【0165】
有機UV遮蔽剤は、アントラニル酸化合物、ジベンゾイルメタン化合物、ケイ皮酸化合物、サリチル酸化合物、カンファー化合物、ベンゾフェノン化合物、β,β-ジフェニルアクリレート化合物、トリアジン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ベンザルマロネート化合物、ベンゾイミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、ビス-ベンゾアゾリル化合物、p-アミノ安息香酸(PABA)化合物、メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物、ベンゾオキサゾール化合物、遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン、α-アルキルスチレンに由来するダイマー、4,4-ジアリールブタジエン化合物、グアイアズレン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0166】
有機UV遮蔽剤の例としては、以下にそのINCI名で示すもの、及びそれらの混合物を挙げることができる:
- アントラニル化合物: Haarmann and Reimer社により商標「Neo Heliopan MA」で市販されているアントラニル酸メチル、
- ジベンゾイルメタン化合物: 特にHoffmann-La Roche社により商標「Parsol 1789」で市販されているブチルメトキシジベンゾイルメタン、及びイソプロピルジベンゾイルメタン、
- ケイ皮酸化合物: 特にHoffmann-La Roche社により商標「Parsol MCX」で市販されているエチルヘキシルメトキシシンナメート、イソプロピルメトキシシンナメート、イソプロポキシメトキシシンナメート、Haarmann and Reimer社により商標「Neo Heliopan E 1000」で市販されているイソアミルメトキシシンナメート、シノキセート(2-エトキシエチル-4-メトキシシンナメート)、DEAメトキシシンナメート、ジイソプロピルメチルシンナメート、及びグリセリルエチルヘキサノエートジメトキシシンナメート、
- サリチル酸化合物: Rona/EM Industries社により商標「Eusolex HMS」で市販されているホモサレート(サリチル酸ホモメンチル)、Haarmann and Reimer社により商標「Neo Heliopan OS」で市販されているサリチル酸エチルヘキシル、サリチル酸グリコール、サリチル酸ブチルオクチル、サリチル酸フェニル、Scher社により商標「Dipsal」で市販されているサリチル酸ジプロピレングリコール、及びHaarmann and Reimer社により商標「Neo Heliopan TS」で市販されているサリチル酸TEA、
- カンファー化合物、特にベンジリデンカンファー誘導体: Chimex社により商標「Mexoryl SD」で製造されている3-ベンジリデンカンファー、Merck社により商標「Eusolex 6300」で市販されている4-メチルベンジリデンカンファー、Chimex社により商標「Mexoryl SL」で製造されているベンジリデンカンファースルホン酸、Chimex社により商標「Mexoryl SO」で製造されているカンファーベンザルコニウムメトスルフェート、Chimex社により商標「Mexoryl SX」で製造されているテレフタリリデンジカンファースルホン酸、及びChimex社により商標「Mexoryl SW」で製造されているポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー、
- ベンゾフェノン化合物: BASF社により商標「Uvinul 400」で市販されているベンゾフェノン-1(2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン)、BASF社により商標「Uvinul D50」で市販されているベンゾフェノン-2(テトラヒドロキシベンゾフェノン)、BASF社により商標「Uvinul M40」で市販されているベンゾフェノン-3(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)又はオキシベンゾン、BASF社により商標「Uvinul MS40」で市販されているベンゾフェノン-4(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸)、ベンゾフェノン-5(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム)、Norquay社により商標「Helisorb 11」で市販されているベンゾフェノン-6(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン)、American Cyanamid社により商標「Spectra-Sorb UV-24」で市販されているベンゾフェノン-8、BASF社により商標「Uvinul DS-49」で市販されているベンゾフェノン-9(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸二ナトリウム)、ベンゾフェノン-12、及びn-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート(BASF社によるUVINUL A+)、
- β,β-ジフェニルアクリレート化合物: 特にBASF社により商標「Uvinul N539」で市販されているオクトクリレン、及び特にBASF社により商標「Uvinul N35」で市販されているエトクリレン、
- トリアジン化合物: Sigma 3V社により商標「Uvasorb HEB」で市販されているジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、CIBA GEIGY社により商標「TINOSORB S」で市販されているビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及びBASF社により商標「UVINUL T150」で市販されているエチルヘキシルトリアゾン。
- ベンゾトリアゾール化合物、特にフェニルベンゾイミダゾール誘導体: 分枝状及び直鎖状の2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノ、並びに米国特許第5240975号に記載されているもの。
- ベンザルマロネート化合物: 4'-メトキシベンザルマロン酸ジネオペンチル、及びベンザルマロネート官能基を含むポリオルガノシロキサン、例えばHoffmann-LaRoche社により商標「Parsol SLX」で市販されているポリシリコーン-15、
- ベンゾイミダゾール化合物、特に、フェニルベンゾイミダゾール誘導体: 特にMerck社により商標「Eusolex 232」で市販されているフェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、及びHaarmann and Reimer社により商標「Neo Heliopan AP」で市販されているフェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、
- イミダゾリン化合物: エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオネート、
- ビス-ベンゾアゾリル化合物: 欧州特許第669323号及び米国特許第2463264号に記載の誘導体、
- パラ-アミノ安息香酸誘導体: PABA(p-アミノ安息香酸)、エチルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、ジメチルPABAペンチル、特にISP社により商標「Escalol 507」で市販されているジメチルPABAエチルヘキシル、グリセリルPABA、及びBASF社により商標「Uvinul P25」で市販されているPEG-25 PABA、
- メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物、例えばFairmount Chemical社により商標「Mixxim BB/200」で、固体形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-フェノール]、BASF社により商標「Tinosorb M」で、又はFairmount Chemical社により商標「Mixxim BB/100」で、水性分散体中の微粉化形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、及び米国特許第5237071号、同第5166355号、英国特許第2303549号、独国特許第19726184号及び欧州特許第893119号に記載されている誘導体、並びに
【0167】
【化6】
【0168】
により表されている、Rhodia Chimie社により商標「Silatrizole」で、又はL'Oreal社により商標「Mexoryl XL」で市販されているドロメトリゾールトリシロキサン、
- ベンゾオキサゾール化合物: Sigma 3V社により商標Uvasorb K2Aで市販されている2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、
- 遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン: WO93/04665に記載されているシリコーン、
- α-アルキルスチレン由来のダイマー: 独国特許第19855649号に記載されているダイマー、
- 4,4-ジアリールブタジエン化合物: 1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン。
【0169】
有機UV遮蔽剤が、以下からなる群から選択されることが好ましい:
ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、n-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、1,1'-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン4-メチルベンジリデンカンファー、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、エチルヘキシルトリアゾン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジイソブチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4-ビス-(n-ブチル4'-アミノベンザルマロネート)-6-[(3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリルオキシ]-ジシロキサニル}プロピル)アミノ]-s-トリアジン、2,4,6-トリス-(ジフェニル)-トリアジン、2,4,6-トリス-(ターフェニル)-トリアジン、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ドロメトリゾールトリシロキサン、ポリシリコーン-15、ジネオペンチル4'-メトキシベンザルマロネート、1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン、2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、メト硫酸カンファーベンジルコニウム、及びこれらの混合物。
【0170】
本発明による組成物中の有機UV遮蔽剤の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0171】
本発明による組成物中の有機UV遮蔽剤の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下でありうる。
【0172】
本発明による組成物中の有機UV遮蔽剤の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%でありうる。
【0173】
[任意選択の添加剤]
本発明による組成物は、前述の成分に加えて、化粧料に典型的に用いられる成分、具体的には、界面活性剤又は乳化剤、親水性又は親油性増粘剤、揮発性又は不揮発性有機溶媒、油以外のシリコーン及びシリコーン誘導体、動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックスなどを、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでよい。
【0174】
本発明による組成物は、上記の任意選択の添加剤を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.05質量%~30質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでよい。
【0175】
本発明による組成物は、少なくとも1種の界面活性剤又は乳化剤を含んでよい。界面活性剤又は乳化剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの界面活性剤、又は異なるタイプの界面活性剤の組合せを使用することができる。
【0176】
しかしながら、本発明による組成物が、非常に限られた量の界面活性剤又は乳化剤を含むことが好ましい。本発明による組成物中の界面活性剤又は乳化剤の量は、組成物の総質量に対して1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下でありうる。本発明による組成物が界面活性剤又は乳化剤を含まないことが特に好ましい。
【0177】
[組成物]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されうる。そのため、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質上への適用が意図されうる。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主要構成要素として含有する材料を意味し、その例としては、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪などが挙げられる。そのため、本発明による化粧用組成物が、ケラチン物質、詳細には皮膚のための、美容方法に使用されることが好ましい。
【0178】
そのため、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、詳細にはUV光及び/又は空気中の汚染物質から皮膚を保護するための組成物でありうる。
【0179】
本発明による組成物は、溶液、分散体、エマルション、ゲル及びペースト等の任意の形態でありうる。本発明による組成物が少なくとも1種の油及び/又は少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含む場合、本発明による組成物は、W/O、O/W、W/O/W及びO/W/O等のエマルション、好ましくはO/Wエマルションの形態でありうる。
【0180】
本発明による組成物は、当業者に周知の方法のいずれかに従って、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合することによって調製することができる。
【0181】
[皮膜]
本発明による組成物は、皮膜を容易に調製するのに使用することができる。
【0182】
そのため、本発明はまた、好ましくは0.1μm超、より好ましくは1.5μm以上、更により好ましくは2μm以上の厚さを任意選択で有する、皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製するための方法であって、
本発明による組成物を、基材上に、好ましくはケラチン物質上に、より好ましくは皮膚上に適用する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む、方法にも関しうる。
【0183】
本発明による方法によって調製される皮膜の厚さの上限は限定されない。そのため、例えば、皮膜の厚さは、1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更により好ましくは100μm以下でありうる。
【0184】
本発明による皮膜を調製する方法が、本発明による組成物を、基材上に、好ましくはケラチン物質上に、より好ましくは皮膚上に適用する工程と、該組成物を乾燥させる工程とを含むことから、本発明による方法は、スピンコーティング又はスプレーすることを一切必要とせず、したがって、比較的厚い皮膜でさえ容易に調製することが可能である。そのため、本発明による皮膜を調製する方法は、スピンコーター及びスプレー機等の特殊な装置を一切用いずに比較的厚い皮膜を調製することができる。
【0185】
本発明による方法によって調製される皮膜が比較的厚い場合でさえ、該皮膜はそれでもなお薄く、透明であることができ、したがって、知覚しにくいものでありうる。そのため、本発明による方法によって調製される皮膜は、好ましくは化粧皮膜として使用することができる。
【0186】
基材が皮膚等のケラチン物質でない場合、本発明による組成物は、ケラチン以外の任意の材料から作製された基材上に適用することができる。非ケラチン基材の材料は限定されない。2種以上の該材料を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの該材料、又は異なるタイプの該材料の組合せを使用することができる。いずれにせよ、基材が可撓性又は弾性であることが好ましい。
【0187】
基材がケラチン物質でない場合、基材が水溶性であることが好ましく、その理由は、基材を水で洗浄することによって、本発明による方法によって調製される皮膜を残すことが可能であるからである。水溶性材料の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、デンプン、酢酸セルロースなどを挙げることができる。PVAが好ましい。
【0188】
非ケラチン基材がシートの形態である場合、該基材は、基材シートに付着している皮膜の取り扱いを容易にするために、本発明による方法により調製される皮膜の厚さを超える厚さを有することができる。非ケラチン基材シートの厚さは限定されないが、1μm~5mm、好ましくは10μm~1mm、より好ましくは50~500μmでありうる。
【0189】
本発明による方法によって調製される皮膜が、非ケラチン基材から取り外し可能であることがより好ましい。取り外し方法は限定されない。したがって、本発明による方法によって調製される皮膜は、非ケラチン基材から剥離してもよく、又は基材シートを水等の溶媒中に溶解することによって取り外してもよい。
【0190】
本発明はまた、
(1)好ましくは0.1μm超、より好ましくは1.5μm以上、更に好ましくは2μm以上の厚さを任意選択で有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
本発明による組成物を、基材上に、好ましくはケラチン物質上に、より好ましくは皮膚上に適用する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される、皮膜、
並びに
(2)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
少なくとも1種の抗酸化剤と、
任意選択で少なくとも1種の油と
を含む、好ましくは0.1μm超、より好ましくは1.5μm以上、更に好ましくは2μm以上の厚さを任意選択で有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
該抗酸化剤が、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基及びカルボキシレート基からなる群から選択される、少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有する、皮膜
にも関する。
【0191】
カチオン性多糖及び抗酸化剤並びに上記の油に関する上記の説明は、上記の皮膜(1)及び(2)におけるものに当てはめることができる。
【0192】
上記でこうして得た皮膜は、自立性であることができる。用語「自立性」は、本明細書では、皮膜がシートの形態であることができ、且つ基材又は支持体の補助なしで、独立したシートとして取り扱えることを意味する。そのため、用語「自立性」は、「自己支持性」と同じ意味を有することができる。
【0193】
本発明による皮膜が疎水性であることが好ましい。
【0194】
本明細書における用語「疎水性」は、20~40℃、好ましくは25~40℃、より好ましくは30~40℃でのポリマーの水(好ましくは1リットルの体積)に対する溶解度が、ポリマーの総質量に対して、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、更により好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。ポリマーが水溶性でないことが最も好ましい。
【0195】
本発明による皮膜が疎水性である場合、皮膜は、耐水特性を有することができ、したがって、ケラチン物質の表面が例えば汗及び雨により濡れている場合であっても、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。そのため、本発明による皮膜が何らかの美容効果を提供する場合、その美容効果は長時間持続することができる。
【0196】
一方、本発明による皮膜は、pH8~12、好ましくは9~11等のアルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、本発明による皮膜は、水で除去することは困難であるが、そのようなアルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0197】
本発明による皮膜は、少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性ポリマーの層を含んでよい。2種以上の生体適合性及び/又は生分解性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの生体適合性及び/若しくは生分解性ポリマー、又は異なるタイプの生体適合性及び/若しくは生分解性ポリマーの組合せを使用することができる。
【0198】
本明細書における用語「生体適合性」ポリマーは、ポリマーが、該ポリマーと、皮膚を含む生体内の細胞との間の過度の相互作用を有さず、ポリマーが、生体によって異物として認識されないことを意味する。
【0199】
本明細書における用語「生分解性」ポリマーは、ポリマーが、例えば生体自体の代謝又は生体内に存在しうる微生物の代謝に起因して、生体内で分解又は分割されうることを意味する。また、生分解性ポリマーは、加水分解によって分解されうる。
【0200】
本発明による皮膜が生体適合性及び/又は生分解性ポリマーを含む場合、該皮膜は、皮膚への刺激が少ないか又は刺激がなく、発疹を一切引き起こさない。加えて、生体適合性及び/又は生分解性ポリマーの使用により、本発明による美容シートは、皮膚によく接着することができる。
【0201】
本発明による皮膜は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、特に顔の美容処置に使用することができる。本発明による皮膜は、任意の形状又は形態であってよい。例えば、これは、フルフェイスマスクシート、又は頬、鼻、及び目の周り等の顔の一部用のパッチとして使用することができる。
【0202】
本発明による皮膜が、少なくとも1種の親水性又は水溶性UV遮蔽剤を含む場合、該皮膜は、親水性又は水溶性UV遮蔽剤に由来するUVシールド効果を提供することができる。通常、親水性又は水溶性UV遮蔽剤は、汗及び雨等の水によって皮膚等のケラチン物質の表面から除去されうる。しかしながら、親水性又は水溶性UV遮蔽剤が本発明による皮膜中に含まれることから、親水性又は水溶性UV遮蔽剤を水によって除去することは困難であり、それにより、長時間持続するUVシールド効果がもたらされる。
【0203】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程と、該組成物を乾燥させてケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程とを含む、美容方法、及び
本発明による組成物の、皮膚等のケラチン物質上に化粧皮膜を調製するための使用
にも関する。
【0204】
美容方法は、本明細書では、皮膚等のケラチン物質の表面をケアする及び/又はメイクアップするための非治療的美容法を意味する。
【0205】
上記の方法と使用との両方において、上記の化粧皮膜は、pH7以下の水に耐性があり、且つpH7超、好ましくは8以上、より好ましくは9以上の水で除去可能である。
【0206】
換言すると、上記の化粧皮膜は、pH7以下、好ましくは6以上且つ7以下の範囲、より好ましくは5以上且つ7以下の範囲等の中性又は酸性条件下で耐水性でありうるが、上記の化粧皮膜は、pH7超、好ましくは8以上、より好ましくは9以上等のアルカリ性条件下で除去することができる。pHの上限は、好ましくは13、より好ましくは12、更により好ましくは11である。
【0207】
したがって、上記の化粧皮膜は、耐水性であることができ、したがって、ケラチン物質の表面が例えば汗及び雨により濡れている場合であっても、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。一方、上記の化粧皮膜は、アルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、本発明による皮膜は、水で除去することは困難であるが、アルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0208】
上記の化粧皮膜が、本発明による組成物中に存在しうるUV遮蔽剤を含む場合、上記の化粧皮膜は、UV線から皮膚等のケラチン物質を保護し、それにより、皮膚の黒ずみを抑え、肌の色及び均一性を改善し、並びに/又は皮膚老化を処置することができる。
【0209】
更に、上記の化粧皮膜は、化粧皮膜が美容有効成分を一切含まない場合であってさえ、皮膜の性質に起因して、皮脂を捕獲する、皮膚等のケラチン物質の外観をつや消しする、悪臭を吸収する又は吸着する、及び/又は例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン物質を保護する等の美容効果を有することができる。
【0210】
加えて、上記の化粧皮膜は、化粧皮膜が美容有効成分を一切含まない場合であってさえ、皮膚上の光反射などを変化させることによって皮膚の外観を即座に変化させる又は修正することができる。したがって、上記の化粧皮膜が毛穴又はしわ等の皮膚の欠陥を隠すことが可能でありうる。更に、上記の化粧皮膜は、皮膚上の表面粗さなどを変化させることによって皮膚の触感を即座に変化させる又は修正することができる。更に、上記の化粧皮膜は、バリアーとして、環境ストレス、例えば汚染物質、夾雑物などから皮膚の表面を覆い、皮膚をシールドすることによって皮膚を即座に保護することができる。
【0211】
上記の美容効果は、上記の化粧皮膜の化学組成、厚さ及び/又は表面粗さを変化させることによって調整又は制御することができる。
【0212】
上記の化粧皮膜が、油及び有機UV遮蔽剤以外の少なくとも1種の追加の美容有効成分を含む場合、化粧皮膜は、その追加の美容有効成分によってもたらされる美容効果を有することができる。例えば、化粧皮膜が、抗老化剤、皮脂抑制剤、デオドラント剤、発汗抑制剤、美白剤、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、化粧皮膜は、皮膚の老化を処置し、皮膚上の皮脂を吸収し、皮膚上の匂いを制御し、皮膚上の発汗を制御し、且つ/又は皮膚を美白することができる。
【0213】
皮膚上に適用した後に、本発明による化粧皮膜又はシートに、メイクアップ化粧用組成物を塗布することもまた可能である。
【実施例
【0214】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明する。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0215】
(実施例1~3及び比較例1)
(調製)
実施例1~3及び比較例1による組成物を、表1に示す成分を混合して調製した。表1に示す成分の量についての数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0216】
【表1】
【0217】
実施例1~3では、ポリクオタニウム-67(PQ-67)を水に溶解してPQ-67水性溶液を調製した。次いで、該溶液のpHを、1M NaOH水性溶液を添加して10に調整した。次に、バイカリンをできるだけ多くアルカリ溶液へ添加した。実施例1~3による組成物では、PQ-67は、組成物の総質量に対して、それぞれ、0.1質量%、0.2質量%及び0.25質量%の最大量まで溶解することができた。
【0218】
他方、PQ-67を含んでいない比較例1による組成物では、可溶化されたバイカリンの量は、組成物の総質量に対して0.025質量%のみに限られた。
【0219】
バイカリンの溶解度は、PQ-67の量の増加に従って上がり、その理由は、PQ-67に起因する正電荷が上がり、PQ-67の正電荷とバイカリンの負電荷との間の静電気的相互作用もまた増加したことによる。そのため、静電気的相互作用による錯体の形成によって、バイカリンの溶解度は、最大で10倍上がった。
【0220】
PQ-67等のカチオン性ポリマーの存在によって、バイカリンの水への溶解度を上げることは可能である。
【0221】
上記の評価は、バイカリンの水への溶解度が限定的であるという問題が、バイカリンと、PQ-6等のカチオン性ポリマーとの間の高分子電解質錯体を形成することによって解決されうることを示している。
【0222】
(評価)
実施例1~3及び比較例1による組成物を基材上に落としてすっかり乾かした。実施例1~3による組成物は、そこでバイカリンが皮膜中に均一に分散された皮膜を形成した。他方、比較例1による組成物は皮膜を形成しなかったが、基材上の液滴の周辺において、バイカリンの微細結晶を形成した。
【0223】
PQ-67等のカチオン性ポリマーの皮膜に起因して、ケラチン物質等の基材上のバイカリン等の抗酸化剤を均一に分布させることが可能である。
【0224】
(実施例4~7及び比較例2~4)
(調製)
実施例4~7及び比較例2~4による組成物を、表2及び表3に示す成分を混合して調製した。表2及び表3に示す成分の量についての数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0225】
【表2】
【0226】
【表3】
【0227】
(評価1)
抗酸化剤(バイカリン又はルチニル二硫酸二ナトリウム)とカチオン性ポリマー(PQ-67)との錯体の、酸化ストレスに対する効果を、β-カロテン脱色を用いて評価した。
【0228】
UV照射は、酸化ストレスの主要な源である。そのため、この評価は、β-カロテンコーティング膜をUV照射に曝露することによって、及び膜の脱色を分光比色計で追跡することによって、実施した。
【0229】
最初に、膜を、溶液の総質量に対して0.5質量%の量にある、β-カロテンのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド中溶液でコーティングした。β-カロテンが高度に共役した分子であるため、該溶液は鮮明な赤色/橙色を有していた。
【0230】
次に、実施例4及び5並びに比較例2~4による組成物のそれぞれ100mgを、β-カロテンコーティング膜上に適用してすっかり乾かした。
【0231】
膜の表面の色を、分光比色計(コニカミノルタ株式会社によるCM-3600d)で測定し、膜表面のCIE1976に基づいてb*値を決定した。
【0232】
次いで、膜表面をUV光へ曝露した。UV光による作用により、β-カロテンは酸化した。そのため、β-カロテンの色は次第に消失して淡黄色の色調となった。UV光への曝露後、膜表面の色を同一の方法で再び測定し、膜表面のCIE1976に基づいてb*値を決定した。
【0233】
UV光への曝露の前と後とのb*値の差を、b*測定値から決定した。
【0234】
β-カロテンの酸化は、CIE1976下のL*a*b*システムにおけるb*軸(青色/黄色軸)に沿ったb*値の変化をもたらした。
【0235】
評価の結果を図1に示す。
【0236】
比較例4に示すように、β-カロテンはUV光によって分解され、その結果、β-カロテンコーティング膜は退色した。
【0237】
比較例2及び3に示すように、バイカリン及びルチニル二硫酸二ナトリウムによる抗酸化効果はβ-カロテンの分解を減少させ、その結果、β-カロテンコーティング膜の退色は減少した。
【0238】
実施例4及び5に示すように、バイカリン及びルチニル二硫酸二ナトリウムによる抗酸化効果はPQ-67によって強化され、その結果、β-カロテンの分解は更に減少し、β-カロテンコーティング膜の退色もまた更に減少した。
【0239】
上記の結果は、PQ-67によって形成された皮膜中のバイカリン又はルチニル二硫酸二ナトリウムの均質な分布に起因したものであり得、これは、β-カロテンの分解の更なる減少に寄与した。
【0240】
(評価2)
抗酸化剤(ルチニル二硫酸二ナトリウム)とカチオン性ポリマー(PQ-67)との錯体の、酸化ストレスと大気汚染との組合せに対する効果を、β-カロテン脱色を用いて評価した。
【0241】
上記の通り、UV照射は、酸化ストレスの主要な源である。更に、環境汚染曝露と組み合わされることによって、酸化ストレスにより引き起こされる損傷は増幅されうる。
【0242】
環境汚染と類似の化学組成を有するタバコの煙は、炎症性カスケードを作り上げる生物学的経路の引き金となりうる。そのため、環境汚染のシミュレーションモデルとしてタバコの煙を使用することは好都合である。
【0243】
最初に、セルロース膜を、溶液の総質量に対して0.5質量%の量にある、β-カロテンのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド中溶液でコーティングした。
【0244】
次に、実施例5並びに比較例3及び4による組成物のそれぞれ200mgを、β-カロテンコーティング膜上に適用してすっかり乾かした。
【0245】
各膜を、タバコ3本で生成した煙を収容している密封型ボックス中に30分間入れた。次いで、各膜をUV光により照射し、β-カロテン脱色を反射するCIE1976下、L*a*b*システムにおけるb*値の変化を、一定のインターバルにて分光比色計(コニカミノルタ株式会社によるCM-3600d)により追跡した。
【0246】
結果を図2に示す。
【0247】
図2中の比較例4の行に示す通り、UV照射に長く曝露するほど、β-カロテンの脱色はより顕著であった。β-カロテンコーティング膜を、比較例3による組成物によるルチニル二硫酸二ナトリウム溶液でコーティングすることは、図2中の比較例3の行に示している通り、β-カロテンの分解を10%~25%制限することができた。β-カロテンコーティング膜を、実施例5による組成物によるルチニル二硫酸二ナトリウム/PQ-67溶液でコーティングすることは、図2中の比較例5の行に示す通り、β-カロテンの分解を更に限定することができた。
【0248】
実施例5におけるβ-カロテンの分解における上記の更なる減少は、PQ-67の皮膜中の抗酸化剤(ルチニル二硫酸二ナトリウム)の、より均質な分布によってもたらされ得、これは、抗酸化剤の、膜上への均等な広がりを維持する。
【0249】
(評価3)
抗酸化剤(ルチニル二硫酸二ナトリウム)と多種のカチオン性ポリマーとの錯体の、酸化ストレスと空気汚染との組合せに対する効果を、異なる方法で評価した。
【0250】
スクアレンはヒト皮脂の15質量%を構成し、その主要構成要素である。タバコ及びUV曝露によるこの不飽和炭化水素の酸化は、脂質ヒドロペルオキシドを創製しうる。脂質ヒドロペルオキシドの濃度は、第二鉄を生成する第一鉄とのレドックス反応により測定することができる。これらのイオンは、チオケイ皮酸イオンと反応するために作製されて色の変化を誘発することができる。そのため、UV可視化分光測定法は、脂質ヒドロペルオキシド濃度を間接的に測定するのに適当な分析技術でありうる。
【0251】
最初にスクアレン(300mg)を2つのワットマングラスファイバー膜上にコーティングし、続いて実施例5~7及び比較例3による組成物のそれぞれ(150mg)を膜のそれぞれの上に広げて、スクアレンヒドロペルオキシドを調製した。第2に、全体の膜を、タバコ3本で生成した煙を収容している密封型ボックス中、タバコの煙に30分間曝露した。次いで、膜を、一定の間隔をおいてUV光へ曝露した。
【0252】
各照射のインターバルの後、クロロホルム中の超音波によって、等サイズの膜片を切断し、脂質ヒドロペルオキシドをそれらから抽出した。次いで、脂質ヒドロペルオキシドを作製し、第1鉄イオンと反応させて第2鉄イオンを生成した。次いで、第2鉄イオンを、チオケイ皮酸イオンとの反応を通して、UV可視化分光測定法により四級化した。脂質ヒドロペルオキシドアッセイキットは、Cayman chemical社から購入した。
【0253】
結果を図3に示す。
【0254】
任意のUV曝露の前に、実施例5~7による組成物のための膜におけるヒドロペルオキシド濃度は、既に、比較例3による組成物のための膜における濃度よりも高かった。これは、カチオン性ポリマーによって付与されるルチニル二硫酸二ナトリウムのコーティングが、より良好である又はより均質であることに起因しうる。
【0255】
UV曝露期間が長くなるほど、ヒドロペルオキシド濃度は上がった。しかしながら、ルチニル二硫酸二ナトリウム/カチオン性ポリマーの錯体は、抗酸化/抗汚染の、より良好な保護を付与した。
【0256】
(実施例7及び8並びに比較例5及び6)
(調製)
実施例7及び8並びに比較例5及び6による組成物を、表4に示す成分を混合して調製した。表4に示す成分の量の数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0257】
【表4】
【0258】
(評価1)
汚染粒子の付着、より具体的にはこの現象における油の役割を、カーボンブラック堆積試験を通して研究した。
【0259】
ガラスプレート上に、その両方がエマルションの形態である実施例7と比較例5とによる組成物のそれぞれ30mgを適用した。該組成物を、インキュベータ中45℃にて5分間すっかり乾かした後、汚染粒子のモデルとして活性炭粒子4mgもまた、ガラスプレート上に適用した。次いで、過剰量の活性炭粒子を振って取り除き、その後、ガラスプレートを再び5分間インキュベートした。次いで、ガラスプレートの表面を顕微鏡で観察し、その画像をソフトウェアImage Jで更に分析して、吸着した活性炭粒子の百分率を決定した。
【0260】
ガラス表面の写真を図4に示す。左の写真は、実施例7による組成物でコーティングしたガラス表面を示す。右の写真は、比較例5による組成物でコーティングしたガラス表面を示す。
【0261】
直接の観察によると、実施例7による組成物でコーティングしたガラス表面は、比較例5による組成物でコーティングしたものよりも少量の、吸着された炭素粒子を有していると見受けられた。
【0262】
Image Jでの画像分析の結果は、以下の通りである。
【0263】
【表5】
【0264】
油が汚染粒子の堆積を通常引きつけるため、上記の結果は、カチオン性ポリマーが、ケラチン物質等の基材上の汚染粒子の堆積を減少させうることを明示している。これは、カチオン性ポリマーと抗酸化剤との錯体の、注目に値する、油を捕捉する収容能力に基づきうる。
【0265】
(評価2)
実施例8及び比較例6による組成物を、透明ボトル中へ装入した。各ボトルの外観を目視で観察した。
【0266】
実施例8による組成物は、それが均一であり相分離が引き起こされていないエマルションの形態であった。
【0267】
比較例6による組成物は、相分離を引き起こしており、エマルションの形態でなかった。
【0268】
上記の結果は、カチオン性ポリマーと抗酸化剤とから構成されている錯体が、乳化能力を有していたことを明示している。カチオン性ポリマーのカチオン部分と抗酸化剤のアニオン部分とが、これらの部分が油を乳化できるように疎水性部分でありうるイオン錯体を作製した。他方で、抗酸化剤なしで、エマルションを作製することは可能ではなく、相分離が引き起こされた。
【0269】
次に、実施例8による組成物もまた、顕微鏡での観察に供した。油滴が形成され、したがって組成物がO/Wエマルションの形態であることが見出された。
【0270】
カチオン性ポリマーと抗酸化剤とが天然起源のものであることができるため、上記の結果は、エマルションが、人工的な界面活性剤等の人工的化学材料なしで、天然材料で調製されうることを示唆している。
図1
図2
図3
図4