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  • 特許-成形体および成形体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】成形体および成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240513BHJP
   C08L 59/04 20060101ALI20240513BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240513BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B32B27/00 103
C08L59/04
B29C45/14
B29C45/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019227412
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021094780
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤本 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】赤田 征之
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/021413(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/145165(WO,A1)
【文献】特開昭63-295255(JP,A)
【文献】特開2008-280397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0036118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 45/00-45/24,
45/46-45/63,
45/70-45/72,
45/74-45/84
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを含むポリオキシメチレン樹脂aを90質量%以上含む部材Aに接するように、ポリオキシメチレン樹脂bを90質量%以上含む樹脂組成物B1を溶融状態で供給することを含み、
前記ポリオキシメチレン樹脂aにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数から、ポリオキシメチレン樹脂bにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数を引いた値が、0.1~5.0モルである(但し、ポリオキシメチレン樹脂aがオキシメチレン基を100molとした場合のオキシエチレン基含有量が3.4molであり、ポリオキシメチレン樹脂bがオキシメチレン基およびオキシエチレン基の総質量に占めるオキシエチレン基の割合が1.7molである場合を除く)、成形体の製造方法。
【請求項2】
前記ポリオキシメチレン樹脂aにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0.3~7.0モルである、請求項に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオキシメチレン樹脂bにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0~6.9モルである、請求項またはに記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオキシメチレン樹脂bにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0~3.0モルである、請求項またはに記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオキシメチレン樹脂aと前記ポリオキシメチレン樹脂bの示差走査熱量計を用いて20℃/分、窒素雰囲気の条件下で測定した融点の差が、5~30℃である、請求項のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体および成形体の製造方法に関する。特に、ポリオキシメチレン樹脂(ポリアセタール樹脂)の成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレン樹脂は、機械的強度、耐薬品性および摺動性のバランスに優れ、かつ、その加工が容易であることから、代表的なエンジニアリングプラスチックとして、電気機器や電気機器の機構部品、自動車部品およびその他の機構部品を中心に広範囲に亘って用いられている。そして、このような用途の中には、2つのポリオキシメチレン樹脂部材を接合させるものもある。そのため、ポリオキシメチレン樹脂部材同士を接合させることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも、(A)ポリアセタール樹脂100質量部、(B)脂肪酸エステル0.01質量部~0.9質量部、および(C)酸化チタン0.3質量部~3.0質量部を含む樹脂組成物(I)と、(D)ポリアセタール樹脂100質量部、(E)脂肪酸エステル0.01質量部~0.9質量部、および(F)顔料を含む樹脂組成物(II)と、が一体に成形された、表面に2色以上の領域を有するボタンが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリアセタール樹脂(A1)を含むポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂(B3)を含むポリエチレン樹脂成形体と、前記ポリアセタール樹脂成形体および前記ポリエチレン樹脂成形体の間に設けられる中間層とを有する複合成形体であって、前記中間層が、ポリアセタール樹脂(A2)とポリエチレン樹脂(B2)とを含み、前記中間層のみ、前記ポリアセタール樹脂成形体のみ、前記ポリアセタール樹脂成形体および前記中間層のみ、前記ポリアセタール樹脂成形体および前記ポリエチレン樹脂成形体のみ、または、前記ポリアセタール樹脂成形体、前記ポリエチレン樹脂成形体および中間層の全てに無機充填材(C)が含まれ、前記ポリアセタール樹脂成形体、前記中間層および前記ポリエチレン樹脂成形体のうち、前記無機充填材(C)を含む樹脂成形体または中間層中の前記無機充填材(C)の含有率が各々1質量%より大きくかつ40質量%未満である複合成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4876024号
【文献】特開2017-080939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、2つのポリオキシメチレン樹脂部材を接合させる場合、両者の接着力が高いことが求められる。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、2つのポリオキシメチレン樹脂部材が接合している成形体であって、接着力が高い成形体および前記成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、2つのポリオキシメチレン樹脂部材における炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数の差を調整することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1> 炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを含むポリオキシメチレン樹脂aを90質量%以上含む部材Aと、ポリオキシメチレン樹脂bを90質量%以上含む樹脂組成物B1を前記部材Aに接するように溶融状態で供給して形成された部材Bを有し、前記ポリオキシメチレン樹脂aにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数から、ポリオキシメチレン樹脂bにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数を引いた値が、0.1~5.0モルである、成形体。
<2> 前記ポリオキシメチレン樹脂aにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0.3~7.0モルである、<1>に記載の成形体。
<3> 前記ポリオキシメチレン樹脂bにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0~6.9モルである、<1>または<2>に記載の成形体。
<4> 前記ポリオキシメチレン樹脂bにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0~3.0モルである、<1>または<2>に記載の成形体。
<5> 前記ポリオキシメチレン樹脂aと前記ポリオキシメチレン樹脂bの示差走査熱量計を用いて20℃/分、窒素雰囲気の条件下で測定した融点の差が、5~30℃である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の成形体。
<6> 炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを含むポリオキシメチレン樹脂aを90質量%以上含む部材Aに接するように、ポリオキシメチレン樹脂bを90質量%以上含む樹脂組成物B1を溶融状態で供給することを含み、前記ポリオキシメチレン樹脂aにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数から、ポリオキシメチレン樹脂bにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数を引いた値が、0.1~5.0モルである、成形体の製造方法。
<7> 前記ポリオキシメチレン樹脂aにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0.3~7.0モルである、<6>に記載の成形体の製造方法。
<8> 前記ポリオキシメチレン樹脂bにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0~6.9モルである、<6>または<7>に記載の成形体の製造方法。
<9> 前記ポリオキシメチレン樹脂bにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0~3.0モルである、<6>または<7>に記載の成形体の製造方法。
<10> 前記ポリオキシメチレン樹脂aと前記ポリオキシメチレン樹脂bの示差走査熱量計を用いて20℃/分、窒素雰囲気の条件下で測定した融点の差が、5~30℃である、<6>~<9>のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、接着力が高い成形体および前記成形体の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の成形体の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
【0011】
本発明の成形体は、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを含むポリオキシメチレン樹脂aを90質量%以上含む部材Aと、ポリオキシメチレン樹脂bを90質量%以上含む樹脂組成物B1を前記部材Aに接するように溶融状態で供給して形成された部材Bを有し、前記ポリオキシメチレン樹脂aにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数から、ポリオキシメチレン樹脂bにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数を引いた値が、0.1~5.0モルであることを特徴とする。
このような構成とすることにより、接着力(密着力)の高い成形体が得られる。より具体的には、ポリオキシメチレン樹脂aとポリオキシメチレン樹脂bのオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数の差を、0.1~5.0モルとすることにより、成形体に対し、引張試験等の負荷をかけても、部材Aと部材Bの剥離を効果的に抑制できる。
【0012】
図1は、本発明の成形体の一例を示す模式図であって、1は部材Aを、2は部材Aに接している部材Bを示している。
【0013】
本発明で用いる部材Aは、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを含むポリオキシメチレン樹脂aを90質量%以上含む。
ポリオキシメチレン樹脂aは、オキシメチレンユニットと、炭素数が2以上の(好ましくは炭素数が2~6の)オキシアルキレンユニットとを構成単位として含むコポリマーである。これらのユニットは、通常2価のユニットである。
【0014】
炭素数2以上のオキシアルキレンユニットとしては、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、および、オキシブチレンユニットなどが挙げられる。
【0015】
ポリオキシメチレン樹脂aにおいては、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量は、オキシメチレンユニット100モルあたり0.3モル以上であることが好ましく、1.0モル以上であることがより好ましく、2.0モル以上であることがさらに好ましく、3.1モル以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形体の接着力をより向上させることができる。ポリオキシメチレン樹脂aにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量は、オキシメチレンユニット100モルあたり、7.0モル以下であることが好ましく、5.0モル以下であることがより好ましく、4.2モル以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形体の機械的強度をより向上させることができる。
ポリオキシメチレン樹脂aは、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0016】
上記ポリオキシメチレン樹脂aを製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリオキシメチレン樹脂a中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを導入するには、環状ホルマールや環状エーテルを用いることができる。環状ホルマールの具体例としては、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキセパン、1,3-ジオキソカン、1,3,5-トリオキセパン、1,3,6-トリオキソカンなどが挙げられ、環状エーテルの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドなどが挙げられる。ポリオキシメチレン樹脂a中にオキシエチレンユニットを導入するには、主原料として、1,3-ジオキソランを用いればよく、オキシプロピレンユニットを導入するには、主原料として、1,3-ジオキサンを用いればよく、オキシブチレンユニットを導入するには、主原料として、1,3-ジオキセパンを用いればよい。なお、ポリオキシメチレン樹脂aにおいては、ヘミホルマール末端基量、ホルミル末端基量、熱や酸、塩基に対して不安定な末端基量が少ない方がよい。ここで、ヘミホルマール末端基とは、-OCH2OHで表されるものであり、ホルミル末端基とは-CHOで表されるものである。
【0017】
ポリオキシメチレン樹脂aの融点は、180℃以下であることが好ましく、175℃以下であることがより好ましく、170℃以下であることがさらに好ましく、165℃以下であることが一層好ましく、160℃以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、より高い密着性が達成できる。前記融点は、145℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形体の機械的強度をより向上させることができる。
前記部材Aがポリオキシメチレン樹脂aを2種以上含む場合、混合物の融点とする。また、融点は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0018】
ポリオキシメチレン樹脂aのメルトフローレートは、100cm3/10分以下であることが好ましく、45cm3/10分以下であることがより好ましく、15cm3/10分以下であることがさらに好ましく、9cm3/10分以下であることが一層好ましい。前記メルトフローレートの下限値としては、1.0cm3/10分以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形加工時の成形性がより向上する傾向にある。
前記部材Aがポリオキシメチレン樹脂aを2種以上含む場合、混合物のメルトフローレートとする。また、メルトフローレートは後述する実施例の記載に従って測定される。
【0019】
部材Aにおけるポリオキシメチレン樹脂aの割合は、90質量%以上であるが、95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であってもよい。部材Aは、ポリオキシメチレン樹脂aを、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0020】
また、部材Aは、本発明の目的を損なわない範囲内で、ポリオキシメチレン樹脂a以外の従来公知の任意の添加剤や充填剤を含んでいてもよい。本発明に用いる添加剤や充填剤としては、例えば、ポリオキシメチレン樹脂以外の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、耐光安定剤、帯電防止剤、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスフレーク、チタン酸カリウムウイスカー、一般顔料等が挙げられる。これらの詳細は、特開2017-025257号公報の段落0113~0124の記載を参酌することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0021】
部材Aは、ポリオキシメチレン樹脂aのみからなるまたはポリオキシメチレン樹脂aを含む樹脂組成物A1を用いて成形することができる。樹脂組成物A1の製造方法は任意であり、従来公知の任意の、樹脂組成物の製造方法を使用し、これらの原料を混合・混練すればよい。
【0022】
樹脂組成物A1の混練に用いる混練機は、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機等が例示される。混合・混練の各種条件や装置についても、特に制限はなく、従来公知の任意の条件から適宜選択して決定すればよい。混練はポリオキシメチレン樹脂が溶融する温度以上、具体的にはポリオキシメチレン樹脂の融解温度以上(一般的には180℃以上)で行うことが好ましい。
また、樹脂組成物A1はそのまま部材Aに成形してもよいし、樹脂組成物A1をペレタイズして得られたペレットを用いて部材Aに成形してもよい。
【0023】
部材Aの形状は、部材Bとの接合部位を有する限り特にその形状は定めるものではなく、成形体の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、シート状、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、歯車状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、キャップ状のもの等が挙げられる。部材Aは、板状、プレート状、シート状、フィルム状等の平板状が適している。
【0024】
部材Aを成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、射出成形法、押出成形法が好ましい。
【0025】
本発明で用いる部材Bは、ポリオキシメチレン樹脂bを90質量%以上含む樹脂組成物B1を、前記部材Aに接するように溶融状態で供給して形成された部材である。前記部材Aに接するように溶融状態で供給して形成された部材とは、例えば、部材Aの表面に溶融したポリオキシメチレン樹脂bを含む樹脂組成物B1を射出または押出することが例示される。このような構成とすることにより、部材Aと部材Bの密着性が向上する。本発明では、射出成形により樹脂組成物B1を部材Aに溶融状態で供給することが好ましい。
ポリオキシメチレン樹脂bは、オキシメチレンユニットを構成単位として含むポリマーである。オキシメチレンユニットは、通常、2価のユニットである。また、ポリオキシメチレン樹脂bは、炭素数が2以上の(好ましくは炭素数が2~6の)オキシアルキレンユニットを含んでいてもよい。オキシアルキレンユニットとしては、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、および、オキシブチレンユニットなどが挙げられる。炭素数が2以上のオキシアルキレンユニットは、通常、2価のユニットである。
【0026】
ポリオキシメチレン樹脂bにおいては、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量は、オキシメチレンユニット100モルあたり、6.9モル以下であることが好ましく、5.0モル以下であることがより好ましく、3.0モル以下であることがさらに好ましく、2.0モル以下であることが一層好ましく、0モルであってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形体の機械的強度をより向上させることができる。また、ポリオキシメチレン樹脂bにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量の下限値は、オキシメチレンユニット100モルあたり0モルであることが好ましい。
ポリオキシメチレン樹脂bは、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0027】
上記ポリオキシメチレン樹脂bを製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリオキシメチレン樹脂b中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを導入する場合の詳細は、上記ポリオキシメチレン樹脂aで述べた事項を参酌できる。
【0028】
ポリオキシメチレン樹脂bの融点は、150℃以上であることが好ましく、160℃超であることがより好ましく、170℃超であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、部材Aとの密着性により優れた成形体が得られる。前記融点は、180℃以下であることが好ましく、178℃以下であることがより好ましい。
前記部材Bがポリオキシメチレン樹脂bを2種以上含む場合、混合物の融点とする。また、融点は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0029】
ポリオキシメチレン樹脂bのメルトフローレートは、1.0cm3/10分以上であることが好ましく、10cm3/10分超であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形加工時の成形性がより向上する傾向にある。前記メルトフローレートの上限値としては、100cm3/10分以下であることが好ましい。上記上限値以下とすることにより、機械的強度を高く維持できる。
前記部材Bがポリオキシメチレン樹脂bを2種以上含む場合、混合物のメルトフローレートとする。また、メルトフローレートは後述する実施例の記載に従って測定される。
【0030】
部材Bにおけるポリオキシメチレン樹脂bの割合は、90質量%以上であるが、95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であってもよい。部材Bは、ポリオキシメチレン樹脂bを、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0031】
また、部材Bは、本発明の目的を損なわない範囲内で、ポリオキシメチレン樹脂b以外の従来公知の任意の添加剤や充填剤を含んでいてもよい。本発明に用いる添加剤や充填剤の詳細は、部材Aで述べた事項を参酌できる。
【0032】
部材Bは、ポリオキシメチレン樹脂bのみからなるまたはポリオキシメチレン樹脂bを含む樹脂組成物B1を用いて成形することができる。樹脂組成物B1の製造方法は任意であり、従来公知の任意の、樹脂組成物の製造方法を使用し、これらの原料を混合・混練すればよい。これらの詳細は、部材Aで述べた記載を参酌できる。
【0033】
部材Bの形状は、部材Bとの接合部位を有する限り特にその形状は定めるものではなく、成形体の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、シート状、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、歯車状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、キャップ状のもの等が挙げられる。部材Bは、板状、プレート状、シート状、フィルム状等の平板状が適している。
【0034】
次に、ポリオキシメチレン樹脂aとポリオキシメチレン樹脂bにおけるオキシアルキレンユニットの数の差について述べる。
本発明では、ポリオキシメチレン樹脂aにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数から、ポリオキシメチレン樹脂bにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数を引いた値が、0.1~5.0モルである。このような構成とすることにより、機械的強度に優れた成形体が得られる。前記値の下限値は、0.3モル以上であることが好ましく、0.8モル以上であることがより好ましく、1.5モル以上であることがさらに好ましく、2.0モル以上であることが一層好ましい。前記値の上限値は、4.5モル以下であることが好ましく、4.1モル以下であることがより好ましい。
【0035】
次に、ポリオキシメチレン樹脂aとポリオキシメチレン樹脂bの融点の差について述べる。本発明では、ポリオキシメチレン樹脂aとポリオキシメチレン樹脂bの示差走査熱量計を用いて20℃/分、窒素雰囲気の条件下で測定した融点の差が、5~30℃であることが好ましい。このような構成とすることにより、密着性により優れ、機械的強度もより優れた成形体が得られる。前記値の下限値は、6℃以上、7℃以上であってもよい。前記値の上限値は、25℃以下であってもよい。本発明では、ポリオキシメチレン樹脂bの方が、融点が高いことが好ましい。すなわち、ポリオキシメチレン樹脂bの融点-ポリオキシメチレン樹脂aの融点が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0036】
また、部材Aと部材Bの接合面積は、1cm2以上であることが好ましく、5~1,000,000cm2であることがより好ましい。
【0037】
次に、本発明の成形体の製造方法について説明する。
本発明の成形体の製造方法は、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを含むポリオキシメチレン樹脂aを90質量%以上含む部材Aに接するように、ポリオキシメチレン樹脂bを90質量%以上含む樹脂組成物B1を溶融状態で供給することを含み、前記ポリオキシメチレン樹脂aにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数から、ポリオキシメチレン樹脂bにおけるオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数を引いた値が、0.1~5.0モルである。
【0038】
本発明の成形体において、部材Bは、溶融状態で供給し成形される。具体的には、部材Aの表面に樹脂組成物B1が射出成形または押出成形されることが例示され、射出成形が好ましい。本発明では、部材Aと部材Bがシリンダーで同時成形(2色成形)されることが好ましい。さらに、他の樹脂部材も一緒に成形する3色成形であってもよい。また、本発明は、部材Aと部材Bがインサート成形されていてもよい。本発明では、2色成形が好ましい。
【0039】
上記樹脂組成物B1は、上述した部材Bの構成材料と同義であり、好ましい範囲も同様である。その他、部材A、ポリオキシメチレン樹脂a等の詳細も、上記成形体の所で説明した事項と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0040】
本発明の成形体は、2つのポリオキシメチレン樹脂部材が接合している成形体に広く用いることができる。成形体は、完成品であってもよいし、部品であってもよい。
本発明の成形体の利用分野としては、電気機器や電気機器の機構部品、自動車部品およびその他の機構部品、水周り部品、玩具、筆記用具、建築用品等に用いることができる。
【実施例
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0042】
[原料]
POM-1:ポリオキシメチレン樹脂、ポリオキシメチレン樹脂aにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり3.9モル、融点156℃、MVR=8.0
POM-2:ポリオキシメチレン樹脂、ポリオキシメチレン樹脂aにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり1.6モル、融点166℃、MVR=8.0
POM-3:ポリオキシメチレン樹脂、ポリオキシメチレン樹脂aにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0.5モル、融点173℃、MVR=12.0
POM-4:ポリオキシメチレン樹脂、Du pont社製、品番:デルリン500P、ポリオキシメチレン樹脂aにおける炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの含有量が、オキシメチレンユニット100モルあたり0モル、融点178℃、MVR=13.0
POM-1~POM-3は、オキシメチレン基の環状オリゴマーと、オキシアルキレン基を含む環状オリゴマーとを共重合することによって製造した。このようなポリオキシメチレン樹脂は、三菱エンジニアリングプラスチックス社より入手できる。
【0043】
<融点の測定>
ポリオキシメチレン樹脂aとポリオキシメチレン樹脂bの融点(単位:℃)は、以下の方法により測定した。
示差走査熱量計を用い、窒素雰囲気下で、20℃/分の速度で、40℃から210℃まで昇温し、得られた溶融ピーク温度を融点として測定した。
結果を表1に示す。
【0044】
<MVRの測定>
ポリオキシメチレン樹脂のメルトボリュームレート(単位:cm3/10分)は、ISO-1133規格に従い、190℃、2.16kgで測定した。
結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例1~6、比較例1~9
実施例および比較例の部材A用の樹脂ペレット(樹脂組成物A1)を、シリンダー温度200℃、金型温度90℃の条件にて2色成形用の射出成形機で射出成形し、123mm×13mm×0.8mm(厚さ)の部材Aを成形した。次いで、部材Aの表面に部材B用の樹脂ペレット(樹脂組成物B1)を射出し、63mm×13mm×2.0mm(厚さ)の部材Bを成形し、成形体を得た。
【0047】
<接着力>
得られた成形体における部材Aと部材Bの接着力(単位:N)は以下の通り測定した。
上記成形体を、引張試験機(インストロン社製、製品名「5544」)の上側治具(固定側)に部材Bを固定し、下側治具(可動側)に部材Aを固定した。次いで、上側治具を上方向に速度200mm/分で変位させることにより成形体において部材Aから部材Bを剥離させた。この時、引張試験機のロードセルに検出される最大引張力を成形体の接着力とした。
結果を表2~表4に示す。
【0048】
<密着性(剥離耐性)>
上記引張試験後の成形後の剥離耐性について、目視にて剥離部を観察し、以下の通り評価した。評価は専門家5人で行い、多数決で判断した。
A:剥離なし(材料破壊)
B:AおよびC以外(僅かに剥離有り等)
C:完全に剥離
結果を表2~表4に示す。
【0049】
【表2】
上記における融点の差は、ポリオキシメチレン樹脂aとポリオキシメチレン樹脂bの融点の差(単位:℃)を意味する(表3、表4についても同じ)。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
上記結果から明らかな通り、本発明の成形体は、接着力が高いものであった(実施例1~6)。これに対し、ポリオキシメチレン樹脂aとポリオキシメチレン樹脂bのオキシメチレンユニット100モルあたりの炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの数の差が0.1~5.0モルの範囲を外れる場合、接着力が低かった(比較例1~9)。
【符号の説明】
【0053】
1 部材A
2 部材B
図1