(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】翼形部のインサートシステムおよびその設置方法
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
F01D9/02 102
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019228752
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ドワイト・ベリー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・トロイ・ハフナー
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル・ピアソン・デフォレ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0201487(US,A1)
【文献】特開昭58-187502(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0219788(US,A1)
【文献】特開平05-195705(JP,A)
【文献】特開昭63-068701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼形部(202)のためのインサートシステム(300)であって、前記翼形部(202)
が、前記翼形部(202)の後方部分(228)内に延びるプレナム(236)を含
んでおり、前記プレナム(236)
がプレナム入口(234)を含
んでおり、前記プレナム入口(234)の全体が前記後方部分(228)の軸方向前方に画定され
ており、前記インサートシステム(300)
が、
第1のインサート(302)と、
第2のインサート(304)と
を備えており、
前記第1のインサート(302)が、
前方に面する入口開口部(314)
と、
前方フランジ(356)と、
前記前方フランジ(356)を越えて軸方向前方に延びる前方延伸部分(360)と
を備えており、前記前方に面する入口開口部(314)が、前記前方延伸部分(360)に画定され、そこを通って延びており、
前記第2のインサート(304)
が、
内部に画定された半径方向に面する入口開口部(310)を備えるネック部(308)と、
後方開口部(306)と、
前記半径方向に面する入口開口部(310)と前記後方開口部(306)との間で流れ連通するキャビティ(312)
と
を備えており、前記第1のインサート(302)
及び前記第2のインサート(304)
が、内部に画定された複数の衝突開口部(316)を備え
ており、前記第2のインサート(304)
が、前記ネック部(308)が前記プレナム入口(234)に配置されるように、前記プレナム入口(234)を半径方向に通して前記プレナム(236)に挿入される大きさであり、前記第1のインサート(302)
が、前記半径方向に面する入口開口部(310)を介して半径方向に前記第2のインサート(304)に挿入される大きさであり、前記ネック部(308)が前記プレナム入口(234)に配置されると、前記第1のインサート(302)
が、前記後方開口部(306)を通って設置位置へと後方に移動可能であり、それにより、前記前方に面する入口開口部(314)
が前記キャビティ(312)に開口す
る、インサートシステム(300)。
【請求項2】
前記翼形部(202)が半径方向外壁(402)を含
んでおり、前記プレナム入口(234)が前記半径方向外壁(402)に画定され、前記第2のインサート(304)
が、前記半径方向に面する入口開口部(310)の周囲から外側に延在
する半径方向外側フランジ(372)であって、前記翼形部(202)の前記半径方向外壁(402)とインタフェースするように構成される半径方向外側フランジ(372)をさらに備える、請求項1に記載のインサートシステム(300)。
【請求項3】
前記前方フランジ(356)が、前記第2のインサート(304)と干渉するように構成され
ており、前記後方開口部(306)を通る前記第1のインサート(302)の前記設置位置を越えた後方への移動が禁止される、請求項1に記載のインサートシステム(300)。
【請求項4】
前記第2のインサート(304)が、前記後方開口部(306)から離間した少なくとも1つの取り付け部材(508)をさらに備え
ており、前記少なくとも1つの取り付け部材(508)
及び前記前方延伸部分(360)
が、前記第1のインサート(302)が前記設置位置にあるとき、それらの間に少なくとも1つの固定部材(512)を受け入れるように協働するように構成される、請求項
1に記載のインサートシステム(300)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの固定部材(512)が、半径方向内側固定部材(602)
及び半径方向外側固定部材(604)を備え
ており、前記半径方向内側固定部材(602)
が、前記前方延伸部分(360)の半径方向内方縁部(606)を取り囲んで半径方向外側に延在するように構成され、前記半径方向外側固定部材(604)
が、前記前方延伸部分(360)の半径方向外側縁部(608)を取り囲んで半径方向内側に延在するように構成される、請求項
4に記載のインサートシステム(300)。
【請求項6】
ガスタービンシステム(100)
であって、
当該ガスタービンシステム(100)が、
圧縮機部(104)と、
前記圧縮機部(104)と流れ連通して結合された燃焼システム(106)と、
前記燃焼システム(106)と流れ連通して結合されたタービン部(108)
と
を備え
ており、前記タービン部(108)
が、
翼形部(202)の後方部分(228)に延びるプレナム(236)を備えた翼形部(202)であって、前記プレナム(236)
がプレナム入口(234)を含
んでおり、前記プレナム入口(234)の全体
が、前記後方部分(228)の軸方向前方に画定される、翼形部(202)と、
前記プレナム(236)内に配置された
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のインサートシステム(300)と
を備え
ており、前記第2のインサート(304)の前記ネック部(308)が前記プレナム入口(234)に配置されるように前記第2のインサート(304)が前記プレナム(236)内に配置されており、前記第1のインサート(302)が前記設置位置に配置されている、ガスタービンシステム(100)。
【請求項7】
前記ガスタービンシステム(100)が、ケーシング(208)と、前記ケーシング(208)と前記翼形部(202)との間に結合された後方支持フランジ(226)とをさらに備え
ており、前記後方部分(228)
が、前記後方支持フランジ(226)の真下に延びる、請求項
6に記載のガスタービンシステム(100)。
【請求項8】
前記ガスタービンシステム(100)が、前記圧縮機部(104)から前記プレナム入口(234)へ加圧ブリード空気(240)の流れを導くように構成される、請求項
6に記載のガスタービンシステム(100)。
【請求項9】
前記翼形部(202)が後縁(224)
及び後方ピンバンク(504)をさらに備え
ており、前記プレナム(236)が前記第1のインサート(302)と前記後縁(224)との間で軸方向に配置された後方プレナム部分(502)を備え
ており、前記後方ピンバンク(504)
が、前記後方プレナム部分(502)を通って延びる複数のピン(506)を備え
ている、請求項
6に記載のガスタービンシステム(100)。
【請求項10】
インサートシステム(300)を翼形部(202)に設置する方法(700)であって、前記翼形部(202)
が、前記翼形部(202)の後方部分(228)内に延びるプレナム(236)を含
んでおり、前記プレナム(236)
がプレナム入口(234)を含
んでおり、前記プレナム入口(234)の全体が前記後方部分(228)の軸方向前方に画定され、
当該方法(700)
が、
第2のインサート(304)のネック部(308)が前記プレナム入口(234)に位置するように、前記第2のインサート(304)を前記プレナム入口(234)を通して半径方向に前記プレナム(236)に挿入するステップ(702)であって、前記第2のインサート(304)の半径方向に面する入口開口部(310)
が前記ネック部(308)に画定され、前記第2のインサート(304)
が、後方開口部(306)
、及び前記半径方向に面する入口開口部(310)と前記後方開口部(306)との間で流れ連通するキャビティ(312)を含む、ステップ(702)と、
前記半径方向に面する入口開口部(310)を通して前記第2のインサート(304)に半径方向に第1のインサート(302)を挿入するステップ(704)
であって、前記第1のインサート(302)が、前方に面する入口開口部(314)と、前方フランジ(356)と、前記前方フランジ(356)を越えて軸方向前方に延びる前方延伸部分(360)を含んでおり、前記入口開口部(314)が前記前方延伸部分(360)に画定される、ステップと、
前記後方開口部(306)を通して前記第1のインサート(302)を設置位置に後方に移動させるステップ(706)であって、
前記入口開口部(314)が前記キャビティ(312)に開口し、前記第1のインサート(302)
及び前記第2のインサート(304)
が、内部に画定された複数の衝突開口部(316)を含む、ステップ(706)と
を含む、方法(700)。
【請求項11】
前記翼形部(202)が半径方向外壁(402)を含
んでおり、前記プレナム入口(234)が前記半径方向外壁(402)に画定され、前記第2のインサート(304)
が、前記半径方向に面する入口開口部(310)の周囲から外側に延在する半径方向外側フランジ(372)をさらに含み、前記方法(700)
が、前記半径方向外側フランジ(372)が前記翼形部(202)の前記半径方向外壁(402)とインタフェースするよう前記プレナム入口(234)を通して前記プレナム(236)に前記第2のインサート(304)を半径方向に挿入するステップをさらに含む、請求項
10に記載の方法(700)。
【請求項12】
前記後方開口部(306)を通して前記第1のインサート(302)を後方に移動させるステップ(706)が、前記前方フランジ(356)が前記第2のインサート(304)に干渉するまで、前記第1のインサート(302)を後方に移動させるステップ(706)を含む、請求項
10に記載の方法(700)。
【請求項13】
前記第2のインサート(304)
が、前記後方開口部(306)から離間した少なくとも1つの取り付け部材(508)をさらに含み、前記方法(700)が、前記少なくとも1つの取り付け部材(508)と前記前方延伸部分(360)との間の少なくとも1つの固定部材(512)を挿入するステップをさらに含む、請求項
12に記載の方法(700)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの固定部材(512)が、半径方向内側固定部材(602)
及び半径方向外側固定部材(604)を含
んでおり、前記少なくとも1つの固定部材(512)を挿入する前記ステップ
が、
前記半径方向内側固定部材(602)が前記前方延伸部分(360)の半径方向内側縁部(606)を取り囲み、半径方向外側に延在するように、前記半径方向内側固定部材(602)を挿入するステップと、
前記半径方向外側固定部材(604)が前記前方延伸部分(360)の半径方向外側縁部(608)を取り囲み、半径方向内側に延在するように、前記半径方向外側固定部材(604)を挿入するステップと
を含む、請求項
13に記載の方法(700)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、概して、翼形部の冷却に関し、より具体的には、回転機械構成要素の衝突冷却のためのインサートに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくともいくつかの既知の回転機械では、機械的負荷に動力を供給するタービン内のガス流からエネルギーが抽出される。回転機械の動作中には、様々な高温ガス経路構成要素が高温ガス流に曝され、高温ガス経路構成要素に磨耗を誘発する可能性がある。例えば、空気は圧縮機で加圧され、高温ガスの流れを生成するために燃焼器で燃料と混合される。一般に、より高温のガスは、回転機械の性能、効率、および動力出力を増加させる。したがって、少なくともいくつかの既知の高温ガス経路構成要素は、高温ガス流が増加した状態で回転機械の動作を促進するために冷却される。ただし、高温のガスは、回転機械構成要素の熱応力および/または熱劣化を増加させる可能性もある。
【0003】
いくつかの既知の高温ガス経路構成要素は、内部冷却システムを備えた翼形部を含み、圧縮機または蒸気から抽出された抽気などの冷却流体が、翼形部内に画定されたプレナムに押し込まれる。この強制冷却は、高温ガス経路構成要素が高温ガス流中で機能することを容易にする。少なくともいくつかの既知のプレナムは、入口開口部と、複数の衝突開口部を備えた統合構成要素またはインサートを含む。これらの構成要素またはインサートにより、プレナム入口開口部からプレナムに導かれた冷却流体が、衝突開口部によって翼形部の内面に衝突するように導かれ、したがって、翼形部の内部構成要素の冷却が高まる。ただし、少なくともいくつかの既知の統合構成要素の取り外しおよび交換には、翼形部全体の分解および/または交換が必要になるため、衝突開口部を備えた少なくともいくつかの既知の統合構成要素を簡単に交換することはできない。さらに、少なくともいくつかの既知の取り外し可能なインサートは、プレナムの入口開口部の寸法によって制約されるため、プレナムへの挿入深さの範囲が制限されている。そのため、これらのインサートは、翼形部の一部の内面の効果的な衝突冷却を提供しない場合がある。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、翼形部のためのインサートシステムが提供される。翼形部は、翼形部の後方部分に延びるプレナムを含む。プレナムは、プレナム入口を含み、プレナム入口の全体は、後方部分の軸方向前方に画定される。インサートシステムは、第1および第2のインサートを含む。第1のインサートは、前方に面する入口開口部を含む。第2のインサートは、内部に画定された半径方向に面する入口開口部、後方開口部、および半径方向に面する入口開口部と後方開口部との間で流れ連通するキャビティを備えたネックを含む。第1のインサートおよび第2のインサートは、内部に画定された複数の衝突開口部を備える。第2のインサートは、ネック部がプレナム入口に配置されるように、プレナム入口を通して半径方向にプレナムに挿入される大きさである。第1のインサートは、半径方向に面する入口を通して半径方向に第2のインサートに挿入される大きさである。ネック部がプレナム入口に配置されると、第1のインサートは、前方に面する入口開口部がキャビティに開口するように、後方開口部を通して設置位置に後方に移動可能である。
【0005】
別の態様では、ガスタービンシステムが提供される。ガスタービンシステムは、圧縮機部と、燃焼部と、タービン部と、を含む。燃焼システムは、圧縮機部と流れ連通して結合される。タービン部は、燃焼システムと流れ連通して結合される。タービン部は、翼形部、第1のインサート、および第2のインサートを含む。翼形部は、翼形部の後方部分に延びるプレナムを含む。プレナムにはプレナム入口が含まれる。プレナム入口の全体は、後方部分の軸方向前方に画定される。第1のインサートは、プレナム内に配置され、第1の本体部と前方に面する入口開口部とを含む。第2のインサートは、プレナム内に配置され、プレナム入口に配置されたネック部を含む。ネック部は、そこに画定された半径方向に面する入口開口部を含む。第2のインサートには、後方開口部も含まれる。第1のインサートは、第1の本体部が後方部分内に延びるように、後方開口部を通って延びる。第1のインサートおよび第2のインサートは、内部に画定された複数の衝突開口部を含む。
【0006】
別の態様では、インサートシステムを翼形部に設置する方法が提供される。翼形部は、翼形部の後方部分に延びるプレナムを含む。プレナムにはプレナム入口が含まれる。プレナム入口の全体は、後方部分の軸方向前方に画定される。この方法は、第2のインサートのネック部がプレナム入口に配置されるように、プレナム入口を通して半径方向にプレナムに第2のインサートを挿入するステップを含む。第2のインサートの半径方向に面する入口は、ネック部に画定されている。第2のインサートには、後方開口部が含まれる。この方法は、半径方向に面する入口開口部を通して第1のインサートを第2のインサートに半径方向に挿入するステップをさらに含む。この方法はまた、後方開口部を通して後方に設置位置に第1のインサートを移動させるステップを含む。第1のインサートおよび第2のインサートは、内部に画定された複数の衝突開口部を含む。
【0007】
本開示のこれらの、ならびに他の特徴、態様、および利点は、添付の図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読めば、よりよく理解されよう。添付の図面では、図面の全体にわたって、同様の符号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す回転機械の例示的なタービン段の拡大概略図である。
【
図3】
図2に示すタービン段の固定翼形部と共に使用する例示的なインサートシステムの2つの構成要素の側面図である。
【
図4】
図2に示す線4-4に沿った、
図3のインサートシステムが内部に設置された例示的な固定翼形部の断面図である。
【
図5】
図2に示す線5-5に沿った、
図3のインサートシステムが内部に設置された例示的な固定翼形部の一部の断面図である。
【
図6】
図5に示す線6-6に沿った、
図3のインサートシステムが内部に設置された例示的な固定翼形部の一部の断面図である。
【
図7】
図3のインサートシステムを設置する例示的な方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特に明記しない限り、本明細書において提供される図面は、本開示の実施形態の特徴を図示するものである。これらの特徴は、本開示の1つまたは複数の実施形態を含む多種多様なシステムで適用可能であると考えられる。したがって、図面は、本明細書に開示する実施形態の実施のために必要とされる当業者に知られているすべての従来の特徴を含むことを意図しない。
【0010】
以下の明細書および特許請求の範囲において、いくつかの用語に言及するが、それらは以下の意味を有すると規定する。
【0011】
単数形「1つの(a、an)」、および「この(the)」は、文脈が特に明確に指示しない限り、複数の言及を含む。
【0012】
別途指定のない限り、本明細書で使用される「一般に」、「実質的に」、および「およそ」などの近似を表す文言は、そのように修飾された用語が、絶対的または完全な程度ではなく、当業者によって認識されるようなおおよその程度にのみ適用され得ることを示している。したがって、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例において、近似を表す文言は、値を測定するための機器の精度に対応し得る。ここで、ならびに明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、範囲の限界が特定されてもよい。このような範囲は、組み合わせおよび/または置き換えが可能であり、文脈または文言が特に指示しない限り、本明細書に含まれるすべての部分範囲を含む。さらに、別途指定のない限り、「第1の」、「第2の」、などの用語は、本明細書において単に標識として使用されているにすぎず、これらの用語が言及する要素について順序、位置、または階層上の要件を加えることを意図するものではない。さらに、例えば、「第2の」要素への言及は、例えば、「第1の」要素またはより小さい数字で言及される要素あるいは「第3の」要素またはより大きな数字で言及される要素の存在を、必要とするものでも、排除するものでもない。
【0013】
本明細書で用いる「軸方向の」および「軸方向に」という用語は、回転機械の長手方向軸に対して実質的に平行に延びる方向および向きを指す。また、「半径方向の」および「半径方向に」という用語は、回転機械の長手方向軸に対して実質的に垂直に延びる方向および向きを指す。さらに、本明細書で使用する「円周方向の」および「円周方向に」という用語は、回転機械の長手方向軸の周りに円弧状に延びる方向および向きを指す。さらに、本明細書で使用される「上流」という用語は、回転機械の前方端部または入口端部を指し、「下流」という用語は、回転機械の後方端部または排気端部を指す。
【0014】
本明細書で説明するシステムは、インサートシステムを使用した回転機械の冷却構成要素、およびその設置方法に関する。具体的には、例示的な実施形態では、構成要素は翼形部を含む。翼形部は、翼形部の後方部分に延びるプレナムを含み、プレナム入口開口部を含む。プレナム入口開口部は、翼形部の内部冷却のための冷却流体を受け入れるように構成されている。プレナム入口開口部の全体が、後方部分の軸方向前方に画定されている。インサートシステムは、それぞれが貫通する衝突開口部を有する第1のインサートと第2のインサートを含む。第2のインサートは、プレナム入口開口部からプレナムに半径方向に挿入可能である。第2のインサートは、半径方向に面する入口開口部、後方開口部、およびそれらの間に画定されたキャビティを含む。第1のインサートは、第2のインサートの半径方向に面する入口開口部を通してキャビティに半径方向に挿入可能であり、第1のインサートは第2のインサート内に入れ子にされる。次いで、第1のインサートは、キャビティ内で後方に移動し、後方開口部を通って設置位置に移動可能であり、第1のインサートの一部がプレナム内で後方に延びて翼形部の後方部分に延び、第1のインサートの前方に面する入口が第2のインサートのキャビティに開口する。動作中、翼形部のプレナム入口に導かれた冷却流体は、第2のインサートの半径方向に面する入口開口部を通ってキャビティに受け入れられる。受け入れられた冷却流体の第1の部分は、第2のインサートの衝突開口部を通って流れ、受け入れられた冷却流体の第2の部分は、前方に面する入口を通して第1のインサートに流れ、次に第1のインサートの衝突開口部を通って流れる。したがって、インサートシステムは、プレナム入口の後方に延びる翼形部の部分の効果的な衝突冷却を促進する。加えて、インサートシステムは、翼形部への設置の容易さ、およびいくつかの実施形態では、修理および交換のための翼形部からの取り外しの容易さを促進する。
【0015】
図1は、例示的な回転機械100、すなわちターボ機械、より具体的にはタービンエンジンの概略図である。例示的な実施形態では、回転機械100はガスタービンエンジンである。あるいは、回転機械は、蒸気タービンエンジン、ガスターボファン航空機エンジン、別の航空機エンジン、風力タービン、圧縮機、およびポンプを含むが、これらに限定されない、任意の他のタービンエンジンおよび/または回転機械であってもよい。この例示的な実施形態では、タービンエンジン100は、吸気部102、吸気部102の下流側に結合された圧縮機部104、圧縮機部104の下流側に結合された燃焼器部106、燃焼器部106の下流側に結合されたタービン部108、およびタービン部108の下流側に結合された排気部110を含む。タービン部108は、ロータシャフト112を介して圧縮機部104に結合されている。本明細書で使用される場合、「結合する」という用語は、構成要素間の直接的な機械的、熱的、電気的、および/または流れ連通接続に限定されず、複数の構成要素間の間接的な機械的、熱的、電気的、および/または流れ連通接続も含むことができることに留意されたい。例示的な実施形態では、燃焼器部106は、複数の燃焼器114を含む。燃焼器部106は、各燃焼器114が圧縮機部104と流れ連通するように、圧縮機部104に結合される。ロータシャフト112は、限定はしないが、発電機および/または機械的駆動用途などの負荷116にさらに結合される。例示的な実施形態では、圧縮機部104およびタービン部108のそれぞれは、ロータシャフト112に結合された少なくとも1つのロータアセンブリ118を含む。
【0016】
動作中、吸気部102は、空気120を圧縮機部104に向けて導く。圧縮機部104は、吸入空気120をより高い圧力に圧縮し、その後に圧縮空気122を燃焼器部106に向けて放出する。圧縮空気122は、燃焼器部106に導かれ、そこで燃料(図示せず)と混合され、燃焼されて高温燃焼ガス124を生成する。燃焼ガス124はタービン部108に向かって下流に導かれ、タービンブレード(図示せず)に衝突し、熱エネルギーは、ロータアセンブリ118を長手方向軸126の周りに駆動するために使用される機械的回転エネルギーに変換される。しばしば、燃焼器部106およびタービン部108は、タービンエンジン100の高温ガス部と呼ばれる。次いで、排気ガス128は、排気部110を通って大気に排出される。
【0017】
図2は、タービンエンジン100(
図1に示す)の例示的なタービン段200の拡大概略図である。段200は、長手方向軸126の周りに円周方向に間隔を置いて配置された複数の半径方向に延びる固定翼形部202と、固定翼形部202の下流で長手方向軸126の周りに円周方向に間隔を置いて配置された複数の半径方向に延びる回転翼形部204とを含む。各回転翼形部204は、ディスク230を介してロータシャフト112(
図1に示す)に結合され、ケーシング208に向かって半径方向外側に延びる。
【0018】
例示的な実施形態では、各固定翼形部202は、タービン部108のケーシング208に結合された第1の端部216を含み、半径方向218に沿って第2の端部214まで半径方向内側に延びる。例えば、固定翼形部202は、後方支持フランジまたはハンガ226を介してケーシング208に結合される。加えて、各固定翼形部202は、前縁222から対向する後縁224まで下流に軸方向に延びる。動作中、固定翼形部202および回転翼形部204は高温ガス流路232内に配置され、高温燃焼ガス124の流れがそこを通して導かれ、固定翼形部202および回転翼形部204の外面を高温および潜在的な対応する熱応力および/または熱劣化に曝す。そのような熱効果を緩和するために、内部キャビティまたはプレナム236は、固定翼形部202内、すなわち、固定翼形部202の正圧側壁210と反対側の負圧側壁212(
図4に示す)との間に画定され、外壁の内面の内部衝突冷却を促進する。例えば、プレナム236は、固定翼形部202の正圧側壁210および負圧側壁212(
図4に示す)の内面によって少なくとも部分的に画定される。プレナム236は、第1の端部216で固定翼形部202に画定されたプレナム入口234を介して冷却剤供給チャネル233と流れ連通している。例示的な実施形態では、冷却剤供給チャネル233は、圧縮機部104(
図1に示す)からプレナム入口234に向かう加圧ブリード空気の流れなどの冷却流体240を導く。あるいは、冷却流体240は、空気以外の適切な流体である。本明細書で使用する流体という用語は、空気および蒸気を含むがこれらに限定されない、流れる任意の媒体または材料を含む。
【0019】
例示的な実施形態では、段200はタービン部108の第1段であり、固定翼形部202は、燃焼器部106(
図1に示す)のすぐ下流の第1段タービンノズルを画定する。代替実施形態では、段200は、タービン部108の任意の適切な段である。例示的な実施形態では、プレナム236は、固定翼形部202の後方部分228内に軸方向後方に延びる。プレナム入口234の全体は、後方部分228の前方に画定され、すなわち、プレナム入口234は、後方部分228にわたって軸方向に延在せず、これにより、後方部分228の外壁の内面に効果的に衝突するために冷却剤供給チャネル233から冷却流体を向ける既知のシステムの能力を制限する。例えば、後方部分228は、後方支持フランジ226の真下に相当な長さだけ延び、すなわち「張り出し」、プレナム入口234が後方部分228上に直接延びることを妨げている。いくつかの実施形態では、タービン部108の第1段で所望の回転角を実現するために、固定翼形部202にそのような張り出しが必要である。
【0020】
図3は、固定翼形部202と共に使用する例示的なインサートシステム300の2つの構成要素の側面図である。
図4は、
図2に示す線4-4に沿って、すなわち、固定翼形部202の第1の端部216に沿って取られた、インサートシステム300が内部に設置された例示的な固定翼形部202の断面図である。
図3および
図4を参照すると、インサートシステム300は、第1のインサート302および第2のインサート304を含む。例示的な実施形態では、第1のインサート302および第2のインサート304はそれぞれ、内部に画定され貫通して延びる複数の衝突開口部316を含む薄壁中空体である。代替実施形態では、第1のインサート302および第2のインサート304は、衝突開口部316を内部に画定することを可能にする任意の適切な構造を有する。衝突開口部316は、プレナム入口234を介して供給される冷却流体240を、固定翼形部202の正圧側壁210および負圧側壁212の内面に向けるように方向付けられている。
【0021】
第1のインサート302および第2のインサート304は、プレナム入口234からプレナム236に順次または入れ子構成で挿入される大きさであり、第1のインサート302が第2のインサート304の後方開口部306を通って軸方向に延びるようにプレナム236内に結合されるように構成される。より具体的には、第2のインサート304は、第2のインサート304のネック部308がプレナム入口234に位置する設置位置に半径方向にプレナム入口234を通ってプレナム236に挿入される大きさである。ネック部308は、第2のインサート304の半径方向に面する入口開口部310を画定する。半径方向に面する入口開口部310の半径方向内側には、半径方向に面する入口開口部310と後方開口部306との間で流れ連通するキャビティ312がある。第1のインサート302は、第2のインサート304のキャビティ312に半径方向に面する入口開口部310を通して半径方向に挿入される大きさであり、第2のインサート304の後方開口部306を通って、第1のインサート302が固定翼形部202の後方部分228に延びる設置位置に後方に移動することが可能であり、第1のインサート302の前方に面する入口開口部314がキャビティ312に開口している。
【0022】
例示的な実施形態では、第2のインサート304は、第1の端部320から半径方向内側に第2の端部322まで延びる。第2のインサート304は、第1の端部320に隣接するネック部308、第2の端部322に隣接する足部324、およびそれらの間に半径方向に延びる第2の本体部326を含む。第2の本体部326は、前方壁328から後方開口部306まで軸方向に延び、第2のインサート軸方向長さ330を画定する。例示的な実施形態では、第2のインサート軸方向長さ330は、プレナム入口234のプレナム入口軸方向長さ242よりも短いため、第1のインサート302は、プレナム入口234を通して半径方向にプレナム236に挿入可能であり、その後プレナム236から取り外し可能である。代替実施形態では、第2のインサート軸方向長さ330は、インサートシステム300が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な長さである。
【0023】
例示的な実施形態では、足部324は、前方壁328から第2の後方縁部332まで下流に軸方向に延び、その間に第2のインサート軸方向長さ330よりも短い足長さ334を画定する。同様に、ネック部308は、前方壁328から第2の後方縁部332まで下流に軸方向に延び、第2のインサート軸方向長さ330より短くかつ足長さ334と実質的に同じであるネック長さ336を画定する。代替実施形態では、長さ330,334,336は実質的に同じである。他の代替実施形態では、長さ330,334,336は、インサートシステム300が本明細書で説明されるように機能することを可能にする任意の適切な長さである。
【0024】
例示的な実施形態では、ネック部308は、第1の端部320に半径方向に面する入口開口部310を画定する。半径方向に面する入口開口部310は、冷却剤供給チャネル233(
図2に示す)から第2のインサート304の内部のキャビティ312に冷却流体240を導くように構成される。さらに、例示的な実施形態では、足部324は、第2の端部322でシールされる。代替実施形態では、第2のインサート304の第2の端部322に開口部(図示せず)が画定されており、受け入れた冷却流体240の一部が第2の端部322を通ってプレナム234に半径方向内側に導かれる。
【0025】
例示的な実施形態では、ネック部308、足部324、および第2の本体部326は、プレナム236の対応する第2の部分の形状に概ね一致する形状であり、第2のインサート304に画定される衝突開口部316は、第2のインサート304が設置位置にあるとき、所定の衝突オフセット238だけ正圧側壁210および負圧側壁212の内面から離間している。特に、設置位置では、ネック部308内に画定される半径方向に面する入口開口部310は、冷却剤供給チャネル233(
図2に示す)と整列し、そこから冷却流体240を受け入れるように構成される。キャビティ312は、半径方向に面する入口開口部310の半径方向内側に位置し、ネック部308から第2の端部322まで半径方向に、前方壁328から第2の後方縁部332および後方開口部306まで軸方向に延びる。キャビティ312は、半径方向に面する入口開口部310を通して導かれた冷却流体240を受け入れ、衝突開口部316および後方開口部306を通して冷却流体を導くように構成される。
【0026】
例示的な実施形態では、第1のインサート302は、第1の端部340から半径方向内側に第2の端部342まで延びる。第1のインサート302は、第1の後方縁部346から前方に面する入口開口部314まで軸方向に延びる第1のインサート軸方向長さ344を有する。例示的な実施形態では、第1のインサート軸方向長さ344は、第2のインサート304のネック長さ336よりも短いため、第1のインサート302は、ネック部308内に画定される半径方向に面する入口開口部310を通して半径方向に挿入可能である。さらに、第1のインサート302は、第1の端部340と第2の端部342との間で半径方向に延び、第1の本体長さ352にわたって第1の後方縁部346から前方フランジ356に軸方向に延びる第1の本体部350を含む。例示的な実施形態では、第1の本体長さ352は、第1のインサート軸方向長さ344よりも短い。代替実施形態では、第1の本体長さ352は、第1のインサート軸方向長さ344と同じである。
【0027】
例示的な実施形態では、第1のインサート302は、第2のインサート304の半径方向に面する入口開口部310を通ってキャビティ312に半径方向に挿入可能であり、前方に面する入口開口部314がキャビティ312に開口するように、後方開口部306を通って設置位置に後方に移動可能である。例えば、図示の実施形態では、第1のインサート302は、後方開口部306を通って設置位置にスライドすることにより移動可能である。さらに、第1の本体部350は、固定翼形部202の後方部分228に対応する形状に概ね一致する形状であり、第1のインサート302に画定された衝突開口部316は、第1のインサート302が設置位置にあるとき、所定の衝突オフセット238だけ正圧側壁210および負圧側壁212の内面から離間している。特に、設置位置では、前方に面する入口開口部314は、後方部分228の効果的な衝突冷却のためにキャビティ312から冷却流体240を受け入れるように構成される。したがって、インサートシステム300は、例えば、後方部分228が後方支持フランジ226(
図2に示す)の真下に張り出す実施形態において、プレナム入口234から後方部分228に冷却流体を導く際の衝突冷却に関して既知のインサートよりも有利である。
【0028】
例示的な実施形態では、第1のインサート302は、前方に面する入口開口部314を少なくとも部分的に取り囲む前方フランジ356をさらに含む。例示的な実施形態では、前方フランジ356は、前方に面する入口開口部314から軸方向後方にオフセット358で離間され、その結果、第1のインサート302の前方延伸部分360がそれらの間に画定される。したがって、前方に面する入口開口部314は、前方延伸部分360に画定され、そこを通って延びる。代替実施形態では、前方フランジ356は、前方に面する入口開口部314から軸方向後方にオフセットされない。
【0029】
前方フランジ356は、第1の本体部350の外側表面362から外側に、横方向に延在する。例えば、図示の実施形態では、前方フランジ356は、前方に面する入口開口部314からオフセット358で第1のインサート302の全周囲の周りに表面362から延びる。前方フランジ356は、第1のインサート302が後方開口部306を通って設置位置に後方に移動したときに第2のインサート304と干渉するように構成される。代替実施形態では、前方フランジ356は、オフセット358で第1のインサート302の周囲の全部よりも少ない周囲で表面362から外側に延在し、連続的ではない。他の代替実施形態では、第1のインサート302は前方延伸部分360を含まず、前方フランジ356は前方に面する入口開口部314の周囲から外側に延在する。さらに他の代替実施形態では、第1のインサート302は前方フランジ356を含まない。例えば、別の適切な機構を使用して、第1のインサート302を第2のインサート304に対して設置位置に配置する。
【0030】
例示的な実施形態では、衝突開口部316は、正圧側壁210および負圧側壁212に面する第1のインサート302および第2のインサート304の部分にわたって配置される。例えば、衝突開口部316は、軸方向に延びる列370に配置され、各列370の衝突開口部316は、隣接する列370の衝突開口部316から半径方向にオフセットされ、すなわち「ずれている(staggered)」。代替実施形態では、衝突開口部316は、インサートシステム300が本明細書で説明されるように機能することを可能にする任意の適切な様式で配置される。
【0031】
例示的な実施形態では、固定翼形部202は、第1の端部216で正圧側壁210と負圧側壁212との間に画定される半径方向外壁402をさらに含み、プレナム入口234が半径方向外壁402に画定され貫通する。さらに、第2のインサート304は、半径方向外壁402とインタフェースするように構成された半径方向外側フランジ372を含む。例示的な実施形態では、半径方向外側フランジ372は、半径方向に面する入口開口部310の周囲から半径方向218に対して横方向に外側に延在する。例えば、図示された実施形態では、半径方向外側フランジ372は、半径方向に面する入口開口部310の全周囲の周りに延びる。半径方向外側フランジ372は、第2のインサート304がプレナム236内に適切に配置されているとき、半径方向外壁402に当接するように構成される。したがって、半径方向外側フランジ372は、第2のインサート304の設置を容易にする。代替実施形態では、第2のインサート304は、半径方向外側フランジ372を含まない。
【0032】
図5は、
図2に示す線5-5に沿って、すなわち、固定翼形部202に沿った中央スパン位置で、インサートシステム300が設置された固定翼形部202の断面図である。
図5に示されている実施形態は、
図3および
図4に示されている実施形態と実質的に類似しており、同様の部分には同じ番号が付けられている。例示的な実施形態では、正圧側壁210および負圧側壁212が互いに向かって先細りして後縁224で一緒に結合するため、第1のインサート302がプレナム236内で後方に延びるための空間が不十分である。より具体的には、プレナム236は、第1のインサート302と後縁224との間に軸方向に配置された後方プレナム部分502を含む。動作中、冷却流体240は、第2のインサート304および第1のインサート302に導かれ、複数の衝突開口部316を通って、正圧側壁210および負圧側壁212のそれぞれの内面に衝突する。衝突後、冷却流体の流れ240の少なくとも一部は、後方プレナム部分502に後方に導かれる。
【0033】
例示的な実施形態では、固定翼形部202は、後方ピンバンク504を含む。後方ピンバンク504は、後方プレナム部分502を通って正圧側壁210と負圧側壁212との間に延びる複数のピン506を含む。例示的な実施形態では、ピン506は、軸方向だけでなく後方プレナム部分502に沿って半径方向に分布し、衝突後冷却流体240と後縁224に近接した正圧側壁210および負圧側壁212との間の熱交換を促進する。代替実施形態では、ピン506は、固定翼形部202が本明細書で説明されるように機能することを可能にする任意の適切な様式で分布する。他の代替実施形態では、固定翼形部202は後方ピンバンク504を含まない。例示的な実施形態では、衝突後冷却流体240は、後縁224に沿った出口開口部(図示せず)を通って固定翼形部202から排出される。代替実施形態では、衝突後冷却流体240は、固定翼形部202が本明細書で説明するように機能することを可能にする任意の適切な方法で、他の任意の適切な場所に導かれる。
【0034】
例示的な実施形態では、
図5に示されるように、第2のインサート304は、後方開口部306から間隔を空けて反対側にある第2のインサート304の内面510に配置された対向する取り付け部材508をさらに含む。取り付け部材508は、第1のインサート302が設置位置にあるとき、取り付け部材508および前方延伸部分360が協働して、その間に固定部材512を受け入れるように構成されるように構成される。例示的な実施形態では、取り付け部材508は、内面510に固定された前方部分514と、前方部分514から後方に延びる後方部分516とを含む実質的に「S」形状を有する。例示的な実施形態では、後方部分516は弾性変形可能である。より具体的には、固定部材512が第2のインサート304の取り付け部材508と第1のインサート302の前方延伸部分360との間に配置されると、取り付け部材508と前方延伸部分360との間に固定部材512を受け入れて固定するために後方部分516が弾性変形する。他の実施形態では、取り付け部材508は、それらが本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の形状、弾性、および/または変形可能性を有し得る。いくつかの実施形態では、第2のインサート304の両側の取り付け部材508は、内面510に沿って半径方向にずれている。特定の実施形態では、それぞれの複数の取り付け部材508は、第2のインサート304の各側に配置される。他の代替実施形態では、インサートシステム300は、取り付け部材508を含まない。
【0035】
図6は、
図5に示す線6-6に沿った、第1のインサート302が設置された第2のインサート304の断面図である。
図6に示す実施形態は、
図3、
図4、および
図5に示す実施形態と実質的に同様であり、同様の部分には同じ番号が付けられている。
図6では、第2のインサート304の第2の端部322がシールされているように示されているが、代替実施形態では、上述のように、開口部(図示せず)が第2の端部322に画定される。
図6に示すように、例示的な実施形態では、固定部材512は、一対のU字型固定部材512、より具体的には、半径方向内側固定部材602および半径方向外側固定部材604を含む。半径方向内側固定部材602は、前方延伸部分360の半径方向内側縁部606を取り囲み、前方延伸部分360の対向する側面610に沿って半径方向外側に延在するように構成される。半径方向内側固定部材602は、半径方向内側縁部606の半径方向外側に、2つの対向する取り付け部材508によって対向する側面610に沿って固定される。同様に、半径方向外側固定部材604は、前方延伸部分360の半径方向外側縁部608を取り囲み、前方延伸部分360の対向する側面610に沿って半径方向内側に延在するように構成される。半径方向外側固定部材604は、半径方向外側縁部608の半径方向内側に、別の2つの対向する取り付け部材508によって対向する側面610に沿って固定される。半径方向内側固定部材602および半径方向外側固定部材604は、取り付け部材508と前方延伸部分360との間に配置されると、第2のインサート304に対する第1のインサート302の軸方向の動きを実質的に防止するように構成される。代替実施形態では、固定部材512は、インサートシステム300が本明細書で説明されるように機能することを可能にする任意の適切な形状を有する。例えば、固定部材512は、前方延伸部分360の対向する側面610に沿って挿入された2つのロッドを含むことができる。他の代替実施形態では、インサートシステム300は、取り付け部材508または固定部材512を含まない。
【0036】
図7は、インサートシステム300などのインサートシステムを、翼形部202(
図2~
図4に示す)などの翼形部に設置する例示的な方法700のフロー図である。翼形部は、翼形部の後方部分228などの後方部分に延びるプレナム236などのプレナムを含む。プレナムは、プレナム入口234などのプレナム入口を含み、プレナム入口の全体は、後方部分の軸方向前方に画定される。例示的な実施形態では、方法700は、第2のインサートのネック部308などのネック部がプレナム入口に配置されるように、プレナム入口を通して半径方向に第2のインサート304などの第2のインサートを挿入するステップ702を含む。第2のインサートの半径方向に面する入口開口部310などの半径方向に面する入口がネック部に画定される。第2のインサートは、後方開口部306などの後方開口部も含む。方法700はまた、半径方向に面する入口を通して第2のインサートに半径方向に第1のインサート302などの第1のインサートを挿入するステップ704を含む。いくつかの実施形態では、第2のインサート304をプレナム236に挿入する前に、第1のインサート302を第2のインサート304に挿入する。他の実施形態では、第2のインサート304をプレナム236に挿入した後、第1のインサート302を第2のインサート304に挿入する。方法700は、後方開口部を通して第1のインサートを設置位置に後方に移動させるステップ706をさらに含む。第1のインサートおよび第2のインサートの両方は、内部に画定された衝突開口部316などの複数の衝突開口部を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、翼形部は、半径方向外壁402などの半径方向外壁を含み、プレナム入口は、半径方向外壁に画定され、第2のインサートは、半径方向に面する入口開口部の周囲から外側に延在する半径方向外側フランジ372などの半径方向外側フランジを含む。いくつかのそのような実施形態では、方法700は、半径方向外側フランジが翼形部の半径方向外壁とインタフェースするように、プレナム入口を通してプレナムに第2のインサートを半径方向に挿入するステップをさらに含む。
【0038】
特定の実施形態では、第1のインサート302は、表面362などの第1のインサートの外側表面の周りに延びる前方フランジ356などの前方フランジを含む。いくつかのそのような実施形態では、後方開口部を通して第1のインサートを設置位置に後方に移動させるステップ706は、前方フランジが第2のインサートと干渉するまで第1のインサートを後方に移動させるステップをさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1のインサートは、前方フランジを超えて軸方向前方に延びる前方延伸部分360などの前方延伸部分を含み、前方に面する入口開口部が前方延伸部分に画定され、第2のインサートは、後方開口部から離間した取り付け部材508などの少なくとも1つの取り付け部材を含む。いくつかのそのような実施形態では、方法700は、少なくとも1つの取り付け部材と前方延伸部分との間に、固定部材512などの少なくとも1つの固定部材を挿入するステップをさらに含む。さらに、そのようないくつかの実施形態では、少なくとも1つの固定部材は、半径方向内側固定部材602などの半径方向内側固定部材と、半径方向外側固定部材604などの半径方向外側固定部材とを含む。いくつかのそのような実施形態では、少なくとも1つの固定部材を挿入するステップは、半径方向内側固定部材が半径方向内側縁部606などの前方延伸部分の半径方向内側縁部を取り囲んで半径方向外側に延在するように半径方向内側固定部材を挿入するステップと、半径方向外側固定部材が半径方向外側縁部608などの前方延伸部分の半径方向外側縁部を取り囲んで半径方向内側に延在するように半径方向外側固定部材を挿入するステップをさらに含む。
【0040】
プレナムの開口部を通して挿入するための上記のインサートシステムは、翼形部の後方部分の効果的な衝突冷却を促進し、したがって、後方部分の継続的な高温露出に関連する劣化を減らし、翼形部の寿命を延ばす。インサートシステムは、後端に向かってより大きな回転部を備えた翼形部などの、翼形部の後方部分が翼形部支持フランジの真下に張り出す翼形部において特に有利であり得る。2インサートシステムにより、衝突インサートを翼形部の既存のプレナム開口部に挿入し、簡単なプロセスで翼形部のオーバーハング部分に後方に移動し、この後方部分がより効果的な衝突冷却を受けることができる。本開示のインサートシステムがない場合、インサート構成は、プレナムの開口部の寸法によって実質的に制限され得る。
【0041】
加えて、本明細書に開示される特定の実施形態では、2つのインサートは、単一の冷却流体供給チャネルから供給されてもよい。そのため、回転機械の他の構成要素を構成して、2つの異なるインサートに別々に冷却流体を供給する必要はない。さらに、いくつかの実施形態では、インサートシステムは簡単なプロセスで取り外し可能であり、修理および交換の容易さを促進する。
【0042】
本明細書に記載のシステムおよび方法の例示的な技術的効果は、(a)翼形部を含む回転機械構成要素から熱を除去すること;(b)構成要素効率を改善するために翼形部の一定の温度勾配を維持すること;(c)圧縮機から抽出される冷却流体の量を減少させること;(d)従来から冷却することが困難である構成要素領域の冷媒流効率を高めること;(e)回転機械の効率を高めること、のうちの少なくとも1つである。
【0043】
以上、回転機械の翼形部を冷却するシステムおよび方法の例示的な実施形態を詳細に説明した。本方法およびシステムは、本明細書に記載した特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ、システムの構成要素および/または方法のステップは、本明細書に記載した他の構成要素および/またはステップから独立に、かつ別個に利用することができる。例えば、本方法は、他のタービン構成要素と組み合わせて使用することもでき、本明細書に記載したガスタービンエンジンの固定翼形部のみで実施することに限定されない。むしろ、例示的な実施形態は、他の多くの回転機械用途と関連して実現および利用することができる。
【0044】
本開示の様々な実施形態の具体的な特徴がいくつかの図面には示されており、他の図面には示されていないが、これは単に便宜上のものである。本開示の実施形態の原理によれば、図面の任意の特徴は、他の任意の図面の任意の特徴と組み合わせて参照および/または請求することができる。
【0045】
この明細書は、本開示の実施形態を開示するために実施例を用いており、最良の形態を含んでいる。また、いかなる当業者も本開示の実施形態を実施することができるように実施例を用いており、任意の装置またはシステムを製作し使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含んでいる。本明細書に記載した実施形態の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定められ、当業者が想到する他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、特許請求の範囲の文言との差がない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言との実質的な差がない等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0046】
100 回転機械、タービンエンジン
102 吸気部
104 圧縮機部
106 燃焼器部
108 タービン部
110 排気部
112 ロータシャフト
114 燃焼器
116 負荷
118 ロータアセンブリ
120 空気
122 圧縮空気
124 高温燃焼ガス
126 長手方向軸
128 排気ガス
200 タービン段
202 固定翼形部
204 回転翼形部
208 ケーシング
210 正圧側壁
212 負圧側壁
214 第2の端部
216 第1の端部
218 半径方向
222 前縁
224 後縁
226 後方支持フランジまたはハンガ
228 後方部分
230 ディスク
232 高温ガス流路
233 冷却剤供給チャネル
234 プレナム入口、プレナム
236 プレナム
238 衝突オフセット
240 冷却流体
242 プレナム入口軸方向長さ
300 インサートシステム
302 第1のインサート
304 第2のインサート
306 後方開口部
308 ネック部
310 入口開口部
312 キャビティ
314 入口開口部
316 衝突開口部
320 第1の端部
322 第2の端部
324 足部
326 第2の本体部
328 前方壁
330 第2のインサート軸方向長さ
332 第2の後方縁部
334 足長さ
336 ネック長さ
340 第1の端部
342 第2の端部
344 第1のインサート軸方向長さ
346 第1の後方縁部
350 第1の本体部
352 第1の本体長さ
356 前方フランジ
358 オフセット
360 前方延伸部分
362 外側表面
370 列
372 半径方向外側フランジ
402 半径方向外壁
502 後方プレナム部分
504 後方ピンバンク
506 ピン
508 取り付け部材
510 内面
512 固定部材
514 前方部分
516 後方部分
602 半径方向内側固定部材
604 半径方向外側固定部材
606 半径方向内側縁部
608 半径方向外側縁部
610 側面
700 方法