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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】検出カスケード
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6809 20180101AFI20240513BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20240513BHJP
   C12Q 1/6823 20180101ALI20240513BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20240513BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240513BHJP
   G01N 33/542 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C12Q1/6809 Z ZNA
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6823 Z
C12Q1/34
G01N33/53 M
G01N33/542 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019555928
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 AU2018000052
(87)【国際公開番号】W WO2018187829
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】2017901321
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519362723
【氏名又は名称】スピーディックス プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】アリソン ベリイアン トッド
(72)【発明者】
【氏名】ニコール ジェーン ハシック
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-500917(JP,A)
【文献】国際公開第96/027026(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/034130(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C12Q 1/00 - 1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の核酸標的配列の有無を判定する方法であって、
反応混合物を準備することであって、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団およびポリヌクレオチドB(PB)の集団であって、
各PA、触媒核酸Aと触媒核酸基質Aとを含み、
各PB、触媒核酸Bと触媒核酸基質Bとを含み、
前記触媒核酸Aが、前記触媒核酸基質Bを切断することが可能であり、かつ触媒核酸基質Aを切断することが不可能であり、
前記触媒核酸Bが、前記触媒核酸基質Aを切断することが可能であり、かつ触媒核酸基質Bを切断することが不可能である、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団およびポリヌクレオチドB(PB)の集団と、
前記PAと前記PBとを物理的に分離することが可能であり、前記PAおよび前記PBが透過することができず、前記PAおよび/または前記PBが、前記反応混合物中で可動性である、選択的透過バリアと、
(i)2つのオリゴヌクレオチドであって、それぞれPA前記触媒核酸基質Aと特異的にハイブリダイズし、それぞれが前記標的配列と特異的にハイブリダイズし、それにより、前記PA前記触媒核酸基質Aを切断することが可能な触媒核酸Cを形成することが可能な2つのオリゴヌクレオチドであって、前記触媒核酸Cが多成分核酸酵素(MNAzyme)であり、前記2つのオリゴヌクレオチドが、前記標的配列の存在下でのみ自己会合して前記MNAzymeを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドである、2つのオリゴヌクレオチド、または
(ii)前記標的配列と前記PAとのハイブリダイゼーションにより形成された核酸二本鎖の1つもしくは複数の鎖を切断することが可能な触媒酵素Dと
を含む、反応混合物を準備することと、
(i)前記PA、前記PBおよび前記2つのオリゴヌクレオチドと前記試料とを接触させ、前記選択的透過バリアを用いて前記PAと前記PBとを分離し、
前記試料中に前記標的配列が存在する場合、前記2つのオリゴヌクレオチドがそれぞれPA前記触媒核酸基質Aとハイブリダイズし、少なくとも一方がさらに前記標的配列とハイブリダイズし、それにより前記触媒核酸Cを形成し、それが前記PA切断し、それにより前記PA前記触媒核酸Aが遊離し、その結果、前記選択的透過リアを通過することが可能になること、または
(ii)前記PA、前記PBおよび前記触媒酵素Dと前記試料とを接触させ、前記選択的透過バリアを用いて前記PAと前記PBとを分離し、
前記試料中に前記標的配列が存在する場合、前記標的配列がPAハイブリダイズして、前記触媒酵素Dの認識/切断部位を含む前記核酸二本鎖を形成し、
前記触媒酵素Dの前記切断部位が前記触媒核酸A内に存在せず、
前記触媒酵素Dが前記核酸二本鎖の前記切断部位に結合して切断し、前記PA前記触媒核酸Aが遊離し、その結果、前記選択的透過リアを通過することが可能になることと
を含み、
遊離した前記触媒核酸Aが前記選択的透過リアを通過し、PB前記触媒核酸基質Bとハイブリダイズし、前記PB切断し、それにより前記PB前記触媒核酸Bが遊離し、その結果、前記選択的透過リアを通過することが可能になり、
遊離した前記触媒核酸Bが前記選択的透過リアを通過し、第二のPA前記触媒核酸基質Aとハイブリダイズし、前記第二のPA切断し、それにより前記第二のPA前記触媒核酸Aが遊離し、その結果、前記選択的透過リアを通過することが可能になり、
前記PAよび/または前記PB切断の検出が、前記試料中の前記標的配列の存在を示す、
方法。
【請求項2】
前記触媒核酸Cが、前記PB前記触媒核酸基質Bを切断することができない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応混合物中で可動性である前記PAおよび/または前記PBのいずれかが、前記ポリヌクレオチドの前記選択的透過バリアの透過を防ぐ、
結合成分および/または
二次構造をもたらす自己相補性領域および/または
荷電部分
を含み、
および任意に:
前記触媒核酸基質Aの切断により、前記PA前記触媒核酸Aから前記結合成分または前記自己相補性領域が遊離し、その結果、前記選択的透過リアを通過することが可能になり、かつ/または
前記触媒核酸基質Bの切断により、前記PB前記触媒核酸Bから前記結合成分または前記自己相補性領域が遊離し、その結果、前記選択的透過リアを通過することが可能になる、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒核酸Aおよび/または前記触媒核酸Bが、DNAzymeまたはリボザイムである、または
前記触媒核酸Aと前記触媒核酸Bが、それぞれ異なる種類のDNAzymeである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(i)前記触媒核酸Aが10-23 DNAzymeであり、前記触媒核酸Bが8-17 DNAzymeであり、かつ
前記触媒核酸基質Aが8-17 DNAzyme基質であり、前記触媒核酸基質Bが10-23 DNAzyme基質であるか、または
(ii)前記触媒核酸Aが8-17 DNAzymeであり、前記触媒核酸Bが10-23 DNAzymeであり、かつ
前記触媒核酸基質Aが10-23 DNAzyme基質であり、前記触媒核酸基質Bが8-17 DNAzyme基質である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒酵素Dがエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記検出が、
遊離した前記触媒核酸Aおよび/または遊離した前記触媒核酸Bを前記反応混合物から単離することと、
単離した前記触媒核酸(1つまたは複数)を前記触媒核酸による前記触媒核酸基質の切断に適した条件下で、触媒核酸基質Aおよび/または触媒核酸基質Bを含む第二の反応混合物に加えることと、
前記触媒核酸による前記触媒核酸基質の切断を検出することと
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
試料中の核酸標的配列の有無を判定する方法であって、
(a)反応混合物を準備することであって、
(i)ポリヌクレオチドA(PA)の集団、ポリヌクレオチドB(PB)の集団およびポリヌクレオチドC(PC)の集団であって、
各PA、触媒核酸Aと触媒核酸基質Aとを含み、
各PB、パートザイムオリゴヌクレオチドB1と触媒核酸基質Bとを含み、
各PC、パートザイムオリゴヌクレオチドB2を含み、
前記パートザイムオリゴヌクレオチドB1の基質アームが、前記触媒核酸基質Aとハイブリダイズすることが可能であり、
前記パートザイムオリゴヌクレオチドB2の基質アームが、前記触媒核酸基質Aとハイブリダイズすることが可能であり、
前記触媒核酸Aが、前記触媒核酸基質Bを切断することが可能であり、かつ前記触媒核酸基質Aを切断することが不可能である、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団、ポリヌクレオチドB(PB)の集団およびポリヌクレオチドC(PC)の集団と、
(ii)パートザイムオリゴヌクレオチドB1のセンサーアームおよびパートザイムオリゴヌクレオチドB2のセンサーアームとハイブリダイズすることが可能な会合促進オリゴヌクレオチドと、
(iii)前記PAと前記PBとを物理的に分離することが可能な選択的透過バリアであって、前記PAおよび前記PBが、前記選択的透過バリアを透過することができず、前記PA、前記PBおよび前記PCが、前記反応混合物中で可動性である選択的透過バリアと、
(iv)2つのパートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2であって、それぞれPA前記触媒核酸基質Aと特異的にハイブリダイズし、それぞれが前記標的配列と特異的にハイブリダイズし、それにより、前記PA前記触媒核酸基質Aを切断することが可能な触媒核酸Cを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2であって、前記触媒核酸Cが多成分核酸酵素(MNAzyme)であり、前記2つのパートザイムオリゴヌクレオチドが、前記標的配列の存在下でのみ自己会合して前記MNAzymeを形成することが可能である、2つのパートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2、または
(v)前記標的配列と前記PAとのハイブリダイゼーションにより形成された核酸二本鎖の1つもしくは複数の鎖を切断することが可能な触媒酵素D
のうちのいずれか1つと
を含む、反応混合物を準備することと、
(b)(i)前記パートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2と前記試料とを接触させ、前記選択的透過バリアを用いて前記PBと前記PAとを分離し、
前記試料中に前記標的配列が存在する場合、前記パートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2それぞれの基質アームが、PA前記触媒核酸基質Aとハイブリダイズし、前記パートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2のそれぞれが、前記標的配列とハイブリダイズして前記触媒核酸Cを形成し、それが前記PA切断し、それにより、前記PA前記触媒核酸Aが遊離し、その結果、前記選択的透過リアを通過することが可能になること、または
(ii)前記触媒酵素Dと前記試料とを接触させ、前記選択的透過バリアを用いて前記PBと前記PAとを分離し、
前記試料中に前記標的配列が存在する場合、前記標的配列がPAハイブリダイズして、前記触媒酵素Dの認識/切断部位を含む前記核酸二本鎖を形成し、
前記触媒酵素Dの前記切断部位が前記触媒核酸A内に存在せず、
前記触媒酵素Dが前記核酸二本鎖の前記切断部位に結合して切断し、前記PA前記触媒核酸Aが遊離し、その結果、前記選択的透過リアを通過することが可能になることと
を含み、
遊離した前記触媒核酸Aが、前記選択的透過リアを通過し、PB前記触媒核酸基質Bとハイブリダイズし、前記PB切断し、それにより前記PB前記パートザイムオリゴヌクレオチドB1が遊離し、その結果、前記選択的透過リアを通過することが可能になり、
遊離した前記パートザイムオリゴヌクレオチドB1が前記選択的透過リアを通過し、パートザイムオリゴヌクレオチドB1およびB2それぞれの前記センサーアームが前記会合促進オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、パートザイムオリゴヌクレオチドB1およびB2それぞれの前記基質アームが第二のPA前記触媒核酸基質Aとハイブリダイズし、それにより触媒核酸Bを形成し、それが前記第二のPA切断し、それにより前記第二のPA前記触媒核酸Aが遊離し、その結果、前記選択的透過リアを通過することが可能になり、前記触媒核酸Bが多成分核酸酵素(MNAzyme)であり、
前記PAよび/または前記PB切断の検出が、前記試料中の前記標的配列の存在を示す、
方法。
【請求項9】
各PC、パートザイムオリゴヌクレオチドB2と、触媒核酸Aによって切断可能な触媒核酸基質Bとを含み、
遊離した前記触媒核酸Aが、前記PC切断し、それにより前記PC前記パートザイムオリゴヌクレオチドB2を遊離させ、
PC切断の検出が、前記試料中の前記標的配列の存在を示し、または
各PCパートザイムオリゴヌクレオチドB2と触媒核酸基質Aとを含み、
前記試料中に前記標的配列が存在する場合、前記パートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2それぞれの前記基質アームが、前記PC前記触媒核酸基質Aとハイブリダイズし、前記パートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2のそれぞれが前記標的配列とハイブリダイズして前記触媒核酸Cを形成し、それが前記PC切断し、それにより、前記PC前記パートザイムオリゴヌクレオチドB2が遊離する;または
前記試料中に前記標的配列が存在する場合、前記標的配列がPCハイブリダイズして、前記触媒酵素Dの認識/切断部位を含む前記核酸二本鎖を形成し、
前記触媒酵素Dの前記切断部位が前記PC前記触媒核酸A内に存在せず、
前記触媒酵素Dが、前記核酸二本鎖と前記切断部位に結合して切断し、それにより、前記PC前記パートザイムオリゴヌクレオチドB2が遊離する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
試料中の核酸標的配列を検出する組成物であって、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団およびポリヌクレオチドB(PB)の集団であって、
各PA、触媒核酸Aと触媒核酸基質Aとを含み、
各PB、触媒核酸Bと触媒核酸基質Bとを含み、
前記触媒核酸Aが、前記触媒核酸基質Bを切断することが可能であり、かつ前記触媒核酸基質Aを切断することが不可能であり、
前記触媒核酸Bが、前記触媒核酸基質Aを切断することが可能であり、かつ前記触媒核酸基質Bを切断することが不可能であり、
前記PAおよび/またはPBが前記組成物中で可動性である、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団およびポリヌクレオチドB(PB)の集団と、
前記PAと前記PBとを分離することが可能な選択的透過バリアと
を含み、
前記触媒核酸Aと前記触媒核酸Bが、それぞれ異なる種類のDNAzymeである、
組成物。
【請求項11】
試料中の核酸標的配列を検出する組成物であって、
(i)ポリヌクレオチドA(PA)の集団、ポリヌクレオチドB(PB)の集団およびポリヌクレオチドC(PC)の集団であって、
各PA、触媒核酸Aと触媒核酸基質Aとを含み、かつ前記組成物中で可動性であり、
各PB、パートザイムオリゴヌクレオチドB1と触媒核酸基質Bとを含み、
各PC、パートザイムオリゴヌクレオチドB2を含み、
前記パートザイムオリゴヌクレオチドB1の基質アームが、前記触媒核酸基質Aとハイブリダイズすることが可能であり、
前記パートザイムオリゴヌクレオチドB2の基質アームが、前記触媒核酸基質Aとハイブリダイズすることが可能であり、
前記触媒核酸Aが、前記触媒核酸基質Bを切断することが可能であり、かつ触媒核酸基質Aを切断することが不可能である、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団、ポリヌクレオチドB(PB)の集団およびポリヌクレオチドC(PC)の集団と、
(ii)パートザイムオリゴヌクレオチドB1のセンサーアームおよびパートザイムオリゴヌクレオチドB2のセンサーアームとハイブリダイズすることが可能な会合促進オリゴヌクレオチドと、
(iii)前記PAと前記PBとを物理的に分離することが可能であり、前記PAおよび前記PBが通過することができない選択的透過バリアと
を含み、
前記パートザイムオリゴヌクレオチドB1の基質アームおよび前記パートザイムオリゴヌクレオチドB2の基質アームと前記触媒核酸基質Aとのハイブリダイゼーションならびに前記パートザイムオリゴヌクレオチドB1のセンサーアームと前記パートザイムオリゴヌクレオチドB2のセンサーアームと前記会合促進オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより、前記触媒核酸基質Aを切断することが可能な触媒核酸Bを形成し、前記触媒核酸Bが多成分核酸酵素(MNAzyme)であり、
各PC、パートザイムオリゴヌクレオチドB2と、触媒核酸Aによる切断が可能な前記触媒核酸基質Bとを含むか、または
各PC、パートザイムオリゴヌクレオチドB2と、前記触媒核酸基質Aとを含み、
前記組成物が、それぞれがPA前記触媒核酸基質Aに特異的にハイブリダイズすることが可能な2つのオリゴヌクレオチドをさらに含み、それぞれは、前記標的配列に特異的にハイブリダイズすることが可能であり、それによって前記PA前記触媒核酸基質Aを切断することができる触媒核酸Cを形成し、前記触媒核酸CがMNAzymeであり、前記2つのオリゴヌクレオチドが、前記標的配列の存在下でのみ自己会合して前記MNAzymeを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドである
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出アッセイによる標的分子の検出および発生した検出可能なシグナルの増幅のための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、触媒核酸酵素を用いて、標的分子(例えば、核酸およびタンパク質)の存在を示すシグナルを発生させ、かつ/または増幅する方法ならびにその方法に使用する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の標的核酸またはその他の分子を検出するのに現在用いることができるアッセイは多数ある。ほとんどのアッセイがタンパク質酵素の使用に依存するものであるが、以下に記載するように、核酸の修飾を触媒する核酸酵素を利用するものも少数存在する。
【0003】
触媒核酸酵素
触媒核酸酵素とは、特異的基質を修飾することが可能な非タンパク質酵素のことである。触媒核酸酵素には、DNA分子(当該技術分野ではDNAzyme、デオキシリボザイムまたはDNA酵素としても知られる)、RNA分子(当該技術分野ではリボザイムとしても知られる)ならびに複数のDNAおよび/またはRNA分子からなる多成分核酸酵素(当該技術分野ではMNAzymeまたはPlexZymeとしても知られる)が含まれる。触媒核酸酵素は、例えば切断または連結によって、特異的核酸基質配列を修飾することができる。ある特有のクラスの触媒核酸酵素(当該技術分野では西洋ワサビペルオキシダーゼ模倣DNAzymeとして知られる)は、特異的化学基質を、例えば色を変化させる、または蛍光シグナルもしくは化学発光シグナルを放出することができる、その酸化産物に変換するペルオキシダーゼ反応を触媒することができる。
【0004】
RNA基質、DNA基質および/またはキメラDNA/RNA基質を切断または連結することができるDNAzymeおよびリボザイムは一般に、最小限の配列条件を満たす標的核酸基質のみを修飾することができる。例えば、基質は、酵素の基質結合アームに対して十分な塩基対相補性を示すものでなければならず、また、触媒修飾部位にある特異的配列も必要とする。触媒切断部位でのこのような配列条件の例としては、DNAzyme切断(10-23タイプ)に対するプリン:ピリミジン配列の条件、ジヌクレオチド接合部(8-17タイプ)の条件およびハンマーヘッド型リボザイムに対する配列ウリジン:X(XはGではなくA、CまたはUであり得る)の条件が挙げられる。10-23 DNAzymeは、核酸基質を特定のRNAホスホジエステル結合の部分で切断することができるDNAzymeである。このDNAzymeは、2つの基質認識ドメイン(アーム)に隣接する15デオキシリボヌクレオチドの触媒ドメインを有する。8:17 DNAzymeは、10:23 DNAzymeとは触媒コア領域も切断部位選択性も異なるものである。8-17 DNAzymeには厳密な基質配列条件が一切なく、4種類の5’NGジヌクレオチド接合部(すなわち、5’GG、5’AG、5’CGおよび5’UG)のいずれでも核酸基質を切断することができる。関連する接合部のグループ間には全体として反応性の序列は一つあり、概ね5’NG>5’NA>5’NC>5’NTという順序に従い、NG接合部が最も切断されやすく、ピリミジン-ピリミジン接合部が最も切断されにくい。8-17 DNAymeは14~15デオキシヌクレオチドの触媒ドメインを有し、分子内にある3塩基対の短いステム-トリループおよび4~5一本鎖デオクスヌクレオチド(deoxunucleotide)領域を特徴とする。
【0005】
多成分核酸酵素(MNAzyme、PlexZymesとしても知られる)はまた別のカテゴリーの触媒核酸酵素である。これらの酵素は会合および触媒作用に会合促進因子(例えば、標的核酸)を必要とする。MNAzymeは、1つまたは複数の会合促進因子の存在下で自己会合し、基質を修飾することができる触媒的に活性なMNAzymeを形成する、複数の部分酵素、つまりパートザイムからなる。パートザイムは、会合促進因子(標的核酸など)と結合するセンサーアーム;基質と結合する基質アームおよび複数のパートザイム成分が会合すると組み合わさって完全な触媒コアになる部分的触媒コア配列を含む、複数のドメインを有する。MNAzymeは、例えば様々な標的核酸配列を含めた広範囲にわたる会合促進因子を認識するよう設計することができる。会合促進因子の存在下では、パートザイム成分から触媒的に活性なMNAzymeが組み立てられ、次いで基質と結合してこれを触媒的に修飾し出力シグナルを発生することができる。会合促進因子は、生体試料または環境試料中に存在する標的核酸であり得る。このような場合、MNAzymeの触媒活性が標的存在の指標となる。核酸基質を切断することができるMNAzymeがいくつか報告されており、核酸基質を連結することができる別のMNAzymeも当該技術分野で公知である(例えば、国際公開第2007/041774号、同第2008/040095号、同第2008/122084号ならびに関連する米国特許出願公開第2007-0231810号、同第2010-0136536号および同第2011-0143338号を参照されたい)。
【0006】
アプタザイムとは、核酸酵素をアロステリックに調節するアプタマードメインと連結されているため、その活性が、アプタマードメインと結合することができる標的分析物/リガンドの存在に依存する、特定のタイプの触媒核酸(DNAzyme、リボザイムまたはMNAzyme)のことである。これまで、標的分析物の不在下ではアプタザイム内にあるアプタマーおよび触媒核酸ドメインの一部分と結合することによりアプタザイムの活性を阻害するため、相補的な調節オリゴヌクレオチドが用いられてきた。アプタザイムの触媒活性の阻害は、標的リガンドがアプタマー部分と結合し、それにより調節オリゴヌクレオチドの除去を促進することによる可逆的なものであった。
【0007】
シグナル増幅技術
標的検出感度を増大させるため、標的またはシグナルを増幅する戦略が用いられてきた。標的の増幅を用いる既存の方法の例としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)およびループ介在等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、鎖侵入ベースの増幅(SIBA)、転写産物介在増幅(TMA)、自家持続配列複製法(3SR)または核酸配列ベースの増幅(NASBA)が挙げられる。増幅を鎖置換に依存する方法、例えばSDA、RCAおよびLAMPは、鎖置換活性を有するポリメラーゼを使用する必要がある。ニッキングエンドヌクレアーゼを含めたヌクレアーゼを用いるシグナル増幅カスケードも記載されている(例えば、NESA)。
【0008】
既存のシグナル増幅法には多数の制約があることは明らかである。例えば、いくつかの技術では、反応速度が最初に試料中に存在する標的DNA分子の数による制約を受ける。このため、これらおよびその他の方法は、臨床応用に必要な速度および感度に欠けることが多い。別の方法には、標的の不在下で偽陽性シグナルが発生するという問題がある。このため、シグナル増幅を組み込んだ核酸配列およびその他の標的の検出および定量化の方法が現在も必要とされている。
【0009】
触媒核酸を用いるシグナル増幅カスケードも記載されている。1つの例として、リボヌクレオチド接合部によって連結した2つの隣接するペルオキシダーゼ模倣DNAzymeからなるオリゴヌクレオチドを使用するものがある。このオリゴヌクレオチドの両端は、末端同士をハイブリダイズさせる短いリンカーDNAを介して連結し、準環状構造を形成する。この構造が形成されることにより、DNAzymeの触媒活性が一時的に阻害される。標的とする会合促進分子の存在下で会合するMNAzymeは、DNAzymeと直接ハイブリダイズし、その間のリボヌクレオチド接合部を切断する。DNAzymeが含まれるオリゴヌクレオチドの切断によって、2つのDNAzymeが互いに分離し、短いリンカーDNAからも分離して、DNAzymeが活性化される。この戦略の制約として、シグナルの増幅が各MNAzymeの切断事象で活性化される2つのDNAzymeに限られることに加え、これらのペルオキシダーゼ模倣DNAzymeは核酸基質を修飾することができないため、これらのDNAzymeがほかのDNAzyme分子を活性化させる機序が存在しないことが挙げられる。したがって、この戦略は、シグナルを指数関数的に増幅することが可能な環状フィードバックカスケードの最初の段階としては適していない。さらに、DNAzyme分子が準環状構造から遊離した後、最初の切断事象が起こるために必要なMNAzymeアームとDNAzymeとの間の相補性によってDNAzyme分子が隔離され、反応の感度が制限される可能性もある。
【0010】
DoCとして知られるまた別の方法では、一時的に不活性化したDNAzymeからなる準環状構造を用いる。DNAzymeはブロッカーフラグメントとのハイブリダイゼーションにより不活性化されている。MNAzymeによりブロッカーが切断されるとDNAzymeが活性化され、それによりシグナル増幅カスケードが開始される。ただし、ブロッカーの濃度をDNAzymeの濃度より高くする必要があり、それにより相当な割合のMNAzyme切断が無効となることから、この方法には制約がある。さらに、これらの準環状構造は不安定であり、標的の不在下でカスケードを開始させる可能性がある。
【0011】
固体/固定支持体に係留して固定化した触媒核酸酵素を用いるシグナル増幅戦略も記載されている。この方法で触媒核酸酵素、その個々の成分および/またはその基質を固定/不動支持体に係留する目的は、酵素をその基質から空間的に分離するのを促進し、それにより反応の効率および/または特異性を高めようとすることである。ただし、固定/不動固体支持体に係留した触媒核酸酵素、基質およびその他の成分に依存するシグナル増幅法は開発が困難であることが多く、多くの場合、固有の欠点により最適に至らないことが明らかにされている。例えば、(i)効率的な反応を駆動するのに相当な濃度の触媒核酸酵素、基質およびその他の成分を係留する必要があることと、(ii)分子が密集し、他の反応成分の接近が立体障害によって阻害されないようこれらの成分の密度が高くなり過ぎないようにする必要があることとのバランスを取るのに大きな困難が伴う。これ以外の困難な点としては、(iii)核酸触媒ドメインの活性を阻害し得る望ましくないコンホメーション変化および/または表面相互作用の可能性、(iv)拡散制限を原因とする反応速度の低下ならびに/あるいは(v)標的の不在下でのカスケード開始を防ぐため未結合の触媒核酸がすべて除去されるようにする必要があることが挙げられる。
【0012】
標的分子を検出する改善されたアッセイの必要性が存在する。好ましくは、改善されたアッセイは、シグナル増幅の改善により感度の増大を促進し得るものである。
【発明の概要】
【0013】
本明細書に記載される本発明は、固定/不動支持体に係留した反応成分を用いるシグナル増幅アッセイに関連する先行技術の問題点の少なくとも一部を軽減するものである。本発明者らは、固定/固定化支持体に依存するアッセイに固有の欠点を伴わずに核酸酵素およびその成分(例えば、MNAzymeのパートザイムオリゴヌクレオチド成分)とそれらの基質との空間的分離を維持することができるシステムを考案した。したがって、本明細書に記載されるアッセイにより、固定/不動支持体に係留した反応成分を用いるシグナル増幅アッセイで求められてきた反応の効率および/または特異性を増強される。本発明のアッセイでは一般に、選択的透過膜を用いて核酸酵素および/またはその成分とその基質とを分離する。成分はアッセイ混合物中で可動性が維持されるため、固定/不動支持体に依存するアッセイより優れた様々な利点がもたらされる。酵素/酵素成分が、標的分子が存在する場合にのみ引き起こされる修飾(例えば、可動性支持成分の切断、電荷および/または大きさの変化など)を受けると、膜を透過することが可能になり、それによりその基質と接触して基質を修飾し、シグナルを発生させる。
【0014】
より具体的には、本発明者らは、それぞれが触媒核酸基質成分と、触媒核酸成分(触媒核酸全体またはパートザイムオリゴヌクレオチドなどのその一部分)と、subZymeオリゴヌクレオチドがアッセイに使用する透過膜を通過するのを防ぐ成分および/または特性とを含むsubZymeオリゴヌクレオチドを用いる、迅速検出アッセイを考案した。subZymeオリゴヌクレオチドは、例えば平面状の表面に係留されているのではなく、溶液中で可動性である。これにより、特に限定されないが、触媒核酸とその基質の接近性が改善され、膜の反対側への拡散速度が増大して検出速度が速くなることを含めたいくつかの利点がもたらされる。subZymeオリゴヌクレオチドの触媒核酸成分は、例えば、その標的基質の存在下での触媒活性を低下させ得る、または妨げ得るいかなるコンホメーション拘束(1つまたは複数)(例えば、ハイブリダイズした阻害剤分子/オリゴヌクレオチド)もない触媒的に活性な形態で存在する。触媒核酸成分を阻害されていない形態で用いることにより、コンホメーション拘束を受けた酵素の使用に伴う触媒活性の低下が回避される。本明細書に記載されるアッセイでは、標的分子の存在がsubZymeオリゴヌクレオチドの切断を誘発し、subZymeオリゴヌクレオチドから触媒核酸成分を遊離させ、遊離した触媒核酸成分に膜を透過させる。遊離した触媒核酸成分が膜を通過すると、その基質を含む他のsubZymeオリゴヌクレオチドを切断し、それにより他の触媒核酸成分を遊離させることができる。次に、これらが膜を透過して反対側に移動し、別のsubZymeオリゴヌクレオチドを切断することができるなど。したがって、本発明のアッセイは、最初の標的認識事象に続いて触媒的に活性な核酸酵素および/またはそのパートザイムオリゴヌクレオチドなどの成分が膜を通って移動することに依存する。基質成分を含む残りの切断されたsubZymeは膜の一方にとどまり、依然として膜を透過することができない。したがって、本明細書に記載されるアッセイは、核酸酵素基質が膜を通って移動することに依存するものでも、それを必要とするものでもない。むしろ、触媒的に活性な核酸および/またはsubZymeオリゴヌクレオチドの成分などのその成分の準備ならびにそれに続く標的認識事象後のそれらの解離および膜を通る移動に依存するものである。
【0015】
本明細書に記載されるアッセイの標的認識事象では、標的を特異的に検出し、検出時にsubZymeオリゴヌレオチド(oligonuleotide)を切断する「開始」触媒核酸酵素を用いる。本発明者らは、本明細書に開示される方法で開始酵素を使用することにより、他の方法、例えば、触媒核酸の活性を促進するために触媒核酸から阻害成分(1つまたは複数)を除去するのに標的分子に依存する方法などと比較して検出アッセイの感度および/または特異性を増大させることができるのを観察した。
【0016】
本発明のアッセイは、フィードバックループを組み込むことにより、存在する標的分子の数とは無関係にシグナルを増幅することを可能にし得る。単一の標的分子によってカスケードを開始させることが可能であり、このカスケードでは、開始subZymeが開始酵素により標的依存性に切断される。これによりsubZymeの触媒核酸成分が遊離し、自由に膜を透過する。遊離した触媒的に活性な核酸および/またはその成分が膜を通過すると、別のsubZymeの成分として存在するその基質に接近し切断することができる。次に、この事象によって、切断されたsubZymeから別の触媒的に活性な核酸またはその成分(例えば、パートザイムオリゴヌクレオチド)が遊離し、透過膜を通過し、同じく別のsubZymeの成分であるその基質を切断することができる。したがって、このようにSubZyme切断事象を永続させることが可能であり、さらなる標的分子が存在することとは無関係にフィードバック増幅ループが確立される。これにより、例えば、発生するシグナルの量が標的分子の存在数による制約を受けやすい線形カスケードを上回る大きな利点がもたらされる。
【0017】
したがって、本発明は、以下に挙げる実施形態1~59を少なくとも一部包含することにより、既存の標的分子検出および/またはシグナル増幅アッセイの少なくとも1つの明白な欠点に対処するものである。
【0018】
実施形態1:試料中の標的の有無を判定する方法であって、
反応混合物を準備することであって、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団およびポリヌクレオチドB(PB)の集団であって、
各PAポリヌクレオチドが、触媒核酸Aと触媒核酸基質Aとを含み、
各PBポリヌクレオチドが、触媒核酸Bと触媒核酸基質Bとを含み、
触媒核酸Aが、触媒核酸基質Bを触媒的に修飾することが可能であり、
触媒核酸Bが、触媒核酸基質Aを触媒的に修飾することが可能である、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団およびポリヌクレオチドB(PB)の集団と、
PAとPBとを物理的に分離することが可能であり、PAおよびPBが透過することができず、PAおよび/またはPBが、反応混合物中で可動性である、選択的透過バリアと、
(i)2つのオリゴヌクレオチドであって、それぞれPAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aと特異的にハイブリダイズし、少なくとも一方が標的と特異的にハイブリダイズし、それにより、PAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aを切断することが可能な触媒核酸Cを形成することが可能な2つのオリゴヌクレオチドまたは
(ii)標的とPAとのハイブリダイゼーションにより形成された核酸二本鎖の1つもしくは複数の鎖を切断することが可能な触媒酵素Dと
を含む、反応混合物を準備することと、
(i)PA、PBおよびオリゴヌクレオチド(1つまたは複数)と試料とを接触させ、選択的透過バリアを用いてPAとPBとを分離し、
試料中に標的が存在する場合、2つのオリゴヌクレオチドがそれぞれPAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aとハイブリダイズし、少なくとも一方がさらに標的とハイブリダイズし、それにより触媒核酸Cを形成し、それがPAポリヌクレオチドを切断し、それによりPAポリヌクレオチドの触媒核酸Aが遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になること、または
(ii)PA、PBおよび触媒酵素Dと試料とを接触させ、選択的透過バリアを用いてPAとPBとを分離し、
試料中に標的が存在する場合、標的がPAポリヌクレオチドとハイブリダイズして、触媒酵素Dの認識/切断部位を含む核酸二本鎖を形成し、
触媒酵素Dの切断部位が触媒核酸A内に存在せず、
触媒酵素Dが核酸二本鎖の切断部位に結合して切断し、PAポリヌクレオチドの触媒核酸Aが遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になることと
を含み、
遊離した触媒核酸Aが、透過性バリアを通過し、PBポリヌクレオチドの触媒核酸基質Bとハイブリダイズし、PBポリヌクレオチドを切断し、それによりPBポリヌクレオチドの触媒核酸Bが遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になり、
遊離した触媒核酸Bが、透過性バリアを通過し、第二のPAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aとハイブリダイズし、第二のPAポリヌクレオチドを切断し、それにより第二のPAポリヌクレオチドの触媒核酸Aが遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になり、
PAポリヌクレオチドおよび/またはPBポリヌクレオチドの切断の検出が、試料中の標的の存在を示す、
方法。
【0019】
実施形態2:触媒核酸Aが、触媒核酸基質Aを触媒的に修飾することができず、かつ/または
第二のポリヌクレオチドの触媒核酸Bが、触媒核酸基質Bを触媒的に修飾することができない、
実施形態1による方法。
【0020】
実施形態3:触媒核酸Cが、PBポリヌクレオチドの触媒核酸基質Bを切断することができない、実施形態1または実施形態2による方法。
【0021】
実施形態4:反応混合物ポリヌクレオチド中で可動性であるPAおよび/またはPBのいずれかが、ポリヌクレオチドの選択的透過バリアの透過を防ぐ、
結合成分および/または
二次構造をもたらす自己相補性領域および/または
荷電部分
を含む、実施形態1~3のいずれか1つによる方法。
【0022】
実施形態5:結合成分が、
リガンドとハイブリダイズしたアプタマー、
ビーズ(例えば、磁気ビーズ)、
微粒子、
ナノ粒子または
荷電部分
である、実施形態4による方法。
【0023】
実施形態6:触媒核酸基質Aの切断により、PAポリヌクレオチドの触媒核酸Aから結合成分または自己相補性領域が遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になり、かつ/または
触媒核酸基質Bの切断により、PBポリヌクレオチドの触媒核酸Bから結合成分または自己相補性領域が遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になる、
実施形態4または実施形態5による方法。
【0024】
実施形態7:触媒核酸Aおよび/または触媒核酸Bが、DNAzymeまたはリボザイムである、実施形態1~6のいずれか1つによる方法。
【0025】
実施形態8:触媒核酸Aおよび/または触媒核酸Bが、8-17 DNAzyme、10-23 DNAzyme、9-86 DNAzyme、12-91 DNAzyme、GR-5 DNAzyme、17E DNAzyme、RFD-EC1 DNAzyme、F-8 DNAzyme、39-E DNAzyme、E2 DNAzyme、Mg5 DNAzyme、A43 DNAzyme、DAB22 DNAzyme、PS2.M DNAzyme、ハンマーヘッド型リボザイム、L-ヒスチジン依存性DNAzymeおよびHRP DNAzymeからなる群より選択される、実施形態1~7のいずれか1つによる方法。
【0026】
実施形態9:触媒核酸Aと触媒核酸Bが、それぞれ異なる種類のDNAzymeである、実施形態1~8のいずれか1つによる方法。
【0027】
実施形態10:(i)触媒核酸Aが10-23 DNAzymeであり、触媒核酸Bが8-17 DNAzymeであり、かつ
触媒核酸基質Aが8-17 DNAzyme基質であり、触媒核酸基質Bが10-23 DNAzyme基質であるか、または
(ii)触媒核酸Aが8-17 DNAzymeであり、触媒核酸Bが10-23 DNAzymeであり、かつ
触媒核酸基質Aが10-23 DNAzyme基質であり、触媒核酸基質Bが8-17 DNAzyme基質である、
実施形態1~9のいずれか1つによる方法。
【0028】
実施形態11:実施形態1~10のいずれか1つによる方法であって、
2つのオリゴヌクレオチドであって、それぞれPAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aと特異的にハイブリダイズし、少なくとも一方が標的と特異的にハイブリダイズし、それにより、PAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aを切断することが可能な触媒核酸Cを形成することが可能な2つのオリゴヌクレオチドを準備し、
標的が、タンパク質、分析物、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、細胞、ウイルス、細菌、古細菌、真菌、抗体、代謝産物、病原体、毒素、汚染物質、毒物、小分子、ポリマー、金属イオン、金属塩、プリオンまたはその任意の誘導体、一部分もしくは組合せを含むか、これよりなるものであり、
触媒核酸Cが、標的と結合することが可能なアプタマーを含み、
この方法が、試料と、アプタマーとハイブリダイズする阻害剤とを接触させ、それにより触媒核酸Cを不活性にすることをさらに含み、
阻害剤が、アプタマー部分に対して標的より低い結合親和性を示し、
標的が試料中に存在する場合、標的がアプタマーと結合して阻害剤と置き換わり、触媒核酸Cを活性にし、それにより、PAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aの切断を促進する、
方法。
【0029】
実施形態12:触媒核酸Cが多成分核酸酵素(MNAzyme)であり、
2つのオリゴヌクレオチドが、標的の存在下でのみ自己会合してMNAzymeを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドである、
実施形態1~11のいずれか1つによる方法。
【0030】
実施形態13:触媒核酸Cが多成分核酸酵素(MNAzyme)であり、
2つのオリゴヌクレオチドが、標的の存在下でのみ自己会合してMNAzymeを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドであり、
標的が、ポリヌクレオチドを含むか、これよりなるものであり、
2つのパートザイムオリゴヌクレオチドが、自己会合時にそれぞれポリヌクレオチドとハイブリダイズしてMNAzymeを形成する、
実施形態1~10のいずれか1つによる方法。
【0031】
実施形態14:実施形態12による方法であって、
標的が、タンパク質、分析物、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、細胞、ウイルス、細菌、古細菌、真菌、抗体、代謝産物、病原体、毒素、汚染物質、毒物、小分子、ポリマー、金属イオン、金属塩、プリオンまたはその任意の誘導体、一部分もしくは組合せを含むか、これよりなるものであり、
2つのパートザイムオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方が、標的と特異的にハイブリダイズすることが可能なDNA、RNAまたはペプチドアプタマー部分を含み、
この方法が、試料と、2つのパートザイムオリゴヌクレオチドがMNAzymeに自己会合するのを促進するMNAzyme会合促進オリゴヌクレオチドおよびMNAzymeを触媒的に不活性にするアプタマーとハイブリダイズする阻害剤分子とを接触させることをさらに含み、
阻害剤が、アプタマー部分に対して標的より低い結合親和性を示し、
標的が、アプタマー部分とハイブリダイズして阻害剤を除去し、MNAzymeを触媒的に活性にする、
方法。
【0032】
実施形態15:標的がポリヌクレオチドであり、
触媒酵素Dがエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼである、
実施形態1~10のいずれか1つによる方法。
【0033】
実施形態16:触媒核酸AがPAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aから遊離することおよび/または触媒核酸BがPBポリヌクレオチドの触媒核酸基質Bから遊離することにより、フルオロフォアが消光剤から分離され、それにより、標的の検出を促進するシグナルが発生する、
実施形態1~15のいずれか1つによる方法。
【0034】
実施形態17:検出が、
遊離した触媒核酸Aおよび/または遊離した触媒核酸Bを反応混合物から単離することと、
単離した触媒核酸(1つまたは複数)を触媒核酸による触媒核酸基質の切断に適した条件下で、触媒核酸基質Aおよび/または触媒核酸基質Bを含む第二の反応混合物に加えることと、
触媒核酸による触媒核酸基質の切断を検出することと
を含む、実施形態1~16のいずれか1つによる方法。
【0035】
実施形態18:検出が、遊離した触媒核酸Aおよび/または遊離した触媒核酸Bをリアルタイムで定量化することを含む、実施形態1~17のいずれか1つによる方法。
【0036】
実施形態19:5個未満、6個未満、7個未満、8個未満、9個未満、10個未満、15個未満もしくは20個未満のPAポリヌクレオチドを切断し、かつ/または
5個未満、6個未満、7個未満、8個未満、9個未満、10個未満、15個未満もしくは20個未満のPBポリヌクレオチドを切断して、
標的の検出を促進することを含む、実施形態1~18のいずれか1つによる方法。
【0037】
実施形態20:試料中の標的の有無を判定する方法であって、
(a)反応混合物を準備することであって、
(i)ポリヌクレオチドA(PA)の集団、ポリヌクレオチドB(PB)の集団およびポリヌクレオチドC(PC)の集団であって、
各PAポリヌクレオチドが、触媒核酸Aと触媒核酸基質Aとを含み、
各PBポリヌクレオチドが、パートザイムオリゴヌクレオチドB1と触媒核酸基質Bとを含み、
各PCポリヌクレオチドが、パートザイムオリゴヌクレオチドB2を含み、
パートザイムオリゴヌクレオチドB1の基質アームが、触媒核酸基質Aとハイブリダイズすることが可能であり、
パートザイムオリゴヌクレオチドB2の基質アームが、触媒核酸基質Aとハイブリダイズすることが可能であり、
触媒核酸Aが、触媒核酸基質Bを触媒的に修飾することが可能である、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団、ポリヌクレオチドB(PB)の集団およびポリヌクレオチドC(PC)の集団と、
(ii)パートザイムオリゴヌクレオチドB1のセンサーアームおよびパートザイムオリゴヌクレオチドB2のセンサーアームとハイブリダイズすることが可能な会合促進オリゴヌクレオチドと、
(iii)PAとPBとを物理的に分離することが可能な選択的透過バリアであって、PAおよびPBが、選択的透過バリアを透過することができず、PA、PBおよびPCが、反応混合物中で可動性である選択的透過バリアと、
(iv)2つのパートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2であって、それぞれPAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aと特異的にハイブリダイズし、少なくとも一方が標的と特異的にハイブリダイズし、それにより、PAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aを切断することが可能な触媒核酸Cを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2、または
(v)標的とPAとのハイブリダイゼーションにより形成された核酸二本鎖の1つもしくは複数の鎖を切断することが可能な触媒酵素D
のうちのいずれか1つと
を含む、反応混合物を準備することと、
(b)(i)パートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2と試料とを接触させ、選択的透過バリアを用いてPBとPAとを分離し、
試料中に標的が存在する場合、パートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2それぞれの基質アームが、PAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aとハイブリダイズし、パートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2のうち少なくとも一方が、標的とハイブリダイズして触媒核酸Cを形成し、それがPAポリヌクレオチドを切断し、それにより、PAポリヌクレオチドの触媒核酸Aが遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になること、または
(ii)触媒酵素Dと試料とを接触させ、選択的透過バリアを用いてPBとPAとを分離し、
試料中に標的が存在する場合、標的がPAポリヌクレオチドとハイブリダイズして、触媒酵素Dの認識/切断部位を含む核酸二本鎖を形成し、
触媒酵素Dの切断部位が触媒核酸A内に存在せず、
触媒酵素Dが核酸二本鎖の切断部位に結合して切断し、PAポリヌクレオチドの触媒核酸Aが遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になることと
を含み、
遊離した触媒核酸Aが、透過性バリアを通過し、PBポリヌクレオチドの触媒核酸基質Bとハイブリダイズし、PBポリヌクレオチドを切断し、それによりPBポリヌクレオチドのパートザイムオリゴヌクレオチドB1が遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になり、
遊離したパートザイムオリゴヌクレオチドB1が透過性バリアを通過し、パートザイムオリゴヌクレオチドB1およびB2それぞれのセンサーアームが会合促進オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、パートザイムオリゴヌクレオチドB1およびB2それぞれの基質アームが第二のPAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aとハイブリダイズし、それにより触媒核酸Bを形成し、それが第二のPAポリヌクレオチドを切断し、それにより第二のPAポリヌクレオチドの触媒核酸Aが遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になり、
PAポリヌクレオチドおよび/またはPBポリヌクレオチドの切断の検出が、試料中の標的の存在を示す、
方法。
【0038】
実施形態21:各PCポリヌクレオチドが、パートザイムオリゴヌクレオチドB2と、触媒核酸Aによって切断可能な触媒核酸基質Bとを含み、
遊離した触媒核酸Aが、PCポリヌクレオチドを切断し、それによりPCポリヌクレオチドのパートザイムオリゴヌクレオチドB2を遊離させ、
PCポリヌクレオチドの切断の検出が、試料中の標的の存在を示す、
実施形態20による方法。
【0039】
実施形態22:各PCポリヌクレオチドがパートザイムオリゴヌクレオチドB2と触媒核酸基質Aとを含み、
試料中に標的が存在する場合、パートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2それぞれの基質アームが、PCポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aとハイブリダイズし、パートザイムオリゴヌクレオチドC1およびC2のうち少なくとも一方が、標的とハイブリダイズして触媒核酸Cを形成し、それがPCポリヌクレオチドを切断し、それにより、PCポリヌクレオチドのパートザイムオリゴヌクレオチドB2が遊離する、
実施形態20による方法。
【0040】
実施形態23:試料中に標的が存在する場合、標的がPCポリヌクレオチドとハイブリダイズして、触媒酵素Dの認識/切断部位を含む核酸二本鎖を形成し、
触媒酵素Dの切断部位が、PCポリヌクレオチドの触媒核酸A内に存在せず、
触媒酵素Dが、核酸二本鎖の切断部位に結合して切断し、それにより、PCポリヌクレオチドのパートザイムオリゴヌクレオチドB2が遊離する、
実施形態20による方法。
【0041】
実施形態24:反応混合物中で可動性であるPAポリヌクレオチド、PBポリヌクレオチドおよび/またはPCポリヌクレオチドのいずれかが、ポリヌクレオチドの選択的透過バリアの透過を防ぐ、
結合成分および/または
二次構造をもたらす自己相補性領域および/または
荷電部分
を含む、実施形態20~22のいずれか1つによる方法。
【0042】
実施形態25:結合成分が、
リガンドとハイブリダイズしたアプタマー、
ビーズ(例えば、磁気ビーズ)、
微粒子、
ナノ粒子または
荷電部分
である、実施形態24による方法。
【0043】
実施形態26:触媒核酸基質Aの切断により、PAポリヌクレオチドの触媒核酸Aから結合成分または自己相補性領域が遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になり、かつ/または
触媒核酸基質Bの切断により、PBポリヌクレオチドから結合成分または自己相補性領域が遊離し、その結果、透過性バリアを通過することが可能になる、
実施形態24または実施形態25による方法。
【0044】
実施形態27:触媒核酸Cが多成分核酸酵素(MNAzyme)であり、
2つのオリゴヌクレオチドが、標的の存在下でのみ自己会合してMNAzymeを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドである、
実施形態20~26のいずれか1つによる方法。
【0045】
実施形態28:実施形態27による方法であって、
標的が、タンパク質、分析物、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、細胞、ウイルス、細菌、古細菌、真菌、抗体、代謝産物、病原体、毒素、汚染物質、毒物、小分子、ポリマー、金属イオン、金属塩、プリオンまたはその任意の誘導体、一部分もしくは組合せを含むか、これよりなるものであり、
2つのパートザイムオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方が、標的と特異的にハイブリダイズすることが可能なDNA、RNAまたはペプチドアプタマー部分を含み、
この方法が、試料と、2つのパートザイムオリゴヌクレオチドがMNAzymeに自己会合するのを促進するMNAzyme会合促進オリゴヌクレオチドおよびMNAzymeを触媒的に不活性にするアプタマーとハイブリダイズする阻害剤分子とを接触させることをさらに含み、
阻害剤が、アプタマー部分に対して標的より低い結合親和性を示し、
標的が、アプタマー部分とハイブリダイズして阻害剤を除去し、MNAzymeを触媒的に活性にする、
方法。
【0046】
実施形態29:標的が、ポリヌクレオチドを含むか、これよりなるものであり、
2つのパートザイムオリゴヌクレオチドが、自己会合時にそれぞれポリヌクレオチドとハイブリダイズしてMNAzymeを形成する、
実施形態27による方法。
【0047】
実施形態30:反応混合物が、反応混合物中で可動性である触媒核酸基質Aの集団をさらに含み、集団の触媒核酸基質Aがそれぞれ、フルオロフォア分子と消光剤分子とを含み、
触媒核酸Bおよび/または触媒核酸Cが、触媒核酸基質Aの集団のメンバーを切断してフルオロフォアを消光剤から分離し、それにより、標的の検出を促進するシグナルを発生させる、
実施形態1~29のいずれか1つによる方法。
【0048】
実施形態31:試料中の標的を検出する組成物であって、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団およびポリヌクレオチドB(PB)の集団であって、
各PAポリヌクレオチドが、触媒核酸Aと触媒核酸基質Aとを含み、
各PBポリヌクレオチドが、触媒核酸Bと触媒核酸基質Bとを含み、
触媒核酸Aが、触媒核酸基質Bを触媒的に修飾することが可能であり、
触媒核酸Bが、触媒核酸基質Aを触媒的に修飾することが可能である、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団およびポリヌクレオチドB(PB)の集団と、
PAとPBとを分離することが可能な選択的透過バリアと
を含む、組成物。
【0049】
実施形態32:組成物であって、
(i)ポリヌクレオチドA(PA)の集団、ポリヌクレオチドB(PB)の集団およびポリヌクレオチドC(PC)の集団であって、
各PAポリヌクレオチドが、触媒核酸Aと触媒核酸基質Aとを含み、
各PBポリヌクレオチドが、パートザイムオリゴヌクレオチドB1と触媒核酸基質Bとを含み、
各PCポリヌクレオチドが、パートザイムオリゴヌクレオチドB2を含み、
パートザイムオリゴヌクレオチドB1の基質アームが、触媒核酸基質Aとハイブリダイズすることが可能であり、
パートザイムオリゴヌクレオチドB2の基質アームが、触媒核酸基質Aとハイブリダイズすることが可能であり、
触媒核酸Aが、触媒核酸基質Bを触媒的に修飾することが可能である、
ポリヌクレオチドA(PA)の集団、ポリヌクレオチドB(PB)の集団およびポリヌクレオチドC(PC)の集団と、
(ii)パートザイムオリゴヌクレオチドB1のセンサーアームおよびパートザイムオリゴヌクレオチドB2のセンサーアームとハイブリダイズすることが可能な会合促進オリゴヌクレオチドと、
(iii)PAとPBとを物理的に分離することが可能であり、PAおよびPBが通過することができない選択的透過バリアと
を含み、
パートザイムオリゴヌクレオチドB1の基質アームおよびパートザイムオリゴヌクレオチドB2の基質アームと触媒核酸基質AとのハイブリダイゼーションならびにパートザイムオリゴヌクレオチドB1のセンサーアームおよびパートザイムオリゴヌクレオチドB2のセンサーアームと会合促進因子とのハイブリダイゼーションにより、触媒核酸基質Aを切断することが可能な触媒核酸Bが形成される、
組成物。
【0050】
実施形態33:各PCポリヌクレオチドが、パートザイムオリゴヌクレオチドB2と、触媒核酸Aによる切断が可能な触媒核酸基質Bとを含むか、または
各PCポリヌクレオチドが、パートザイムオリゴヌクレオチドB2と、触媒核酸基質Aとを含む、
実施形態32による組成物。
【0051】
実施形態34:PAおよび/またはPBのいずれかが、ポリヌクレオチドの選択的透過バリアの透過を防ぐ、
結合成分および/または
二次構造をもたらす自己相補性領域および/または
荷電部分
を含む、実施形態31による組成物。
【0052】
実施形態35:いずれかのPCが、ポリヌクレオチドの選択的透過バリアの透過を防ぐ、
結合成分および/または
二次構造をもたらす自己相補性領域および/または
荷電部分
を含む、実施形態32または実施形態33による組成物。
【0053】
実施形態36:結合成分が、
リガンドとハイブリダイズしたアプタマー、
ビーズ(例えば、磁気ビーズ)、
微粒子、
ナノ粒子または
荷電部分
である、実施形態34または実施形態35による組成物。
【0054】
実施形態37:触媒核酸Aが、触媒核酸基質Aを触媒的に修飾することができず、かつ/または
第二のポリヌクレオチドの触媒核酸Bが、触媒核酸基質Bを触媒的に修飾することができない、
実施形態31~36のいずれか1つによる組成物。
【0055】
実施形態38:それぞれPAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aと特異的にハイブリダイズし、少なくとも一方が標的と特異的にハイブリダイズし、それにより、PAポリヌクレオチドの触媒核酸基質Aを切断することが可能な触媒核酸Cを形成することが可能な2つのオリゴヌクレオチドをさらに含む、実施形態31~37のいずれか1つによる組成物。
【0056】
実施形態39:触媒核酸Cが多成分核酸酵素(MNAzyme)であり、
2つのオリゴヌクレオチドが、標的の存在下でのみ自己会合してMNAzymeを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドである、
実施形態38による組成物。
【0057】
実施形態40:標的とPAとのハイブリダイゼーションにより形成された核酸二本鎖の1つまたは複数の鎖を切断することが可能な触媒酵素Dをさらに含み、
PAポリヌクレオチドの少なくとも一部分が、標的と配列相補性を共有しているため、標的とハイブリダイズして、触媒酵素Dの認識/切断部位を含む核酸二本鎖を形成することが可能であり、
触媒酵素Dの切断部位が、PAポリヌクレオチドの触媒核酸A内に存在しない、
実施形態31~36のいずれか1つによる組成物。
【0058】
実施形態41:標的がポリヌクレオチドであり、
触媒酵素Dがエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼである、
実施形態40による組成物。
【0059】
実施形態42:実施形態38による組成物であって、
標的が、タンパク質、分析物、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、細胞、ウイルス、細菌、古細菌、真菌、抗体、代謝産物、病原体、毒素、汚染物質、毒物、小分子、ポリマー、金属イオン、金属塩、プリオンまたはその任意の誘導体、一部分もしくは組合せを含むか、これよりなるものであり、
触媒核酸Cが、標的と結合することが可能なアプタマー部分を含み、
組成物が、アプタマーとハイブリダイズする阻害剤をさらに含み、
阻害剤が、アプタマー部分に対して標的より低い結合親和性を有する、
組成物。
PAとPBとを分離することが可能な選択的透過バリア。
【0060】
実施形態43:標的が、ポリヌクレオチドを含むか、これよりなるものであり、
標的の存在下でのみ自己会合してMNAzymeを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドが、それぞれ標的のポリヌクレオチドおよびPAポリヌクレオチドの触媒核酸A基質とハイブリダイズし、それにより、自己会合してMNAzymeを形成することができる、
実施形態38または実施形態39による組成物。
【0061】
実施形態44:実施形態39による組成物であって、
標的が、タンパク質、分析物、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、細胞、ウイルス、細菌、古細菌、真菌、抗体、代謝産物、病原体、毒素、汚染物質、毒物、小分子、ポリマー、金属イオン、金属塩、プリオンまたはその任意の誘導体、一部分もしくは組合せを含むか、これよりなるものであり、
標的の存在下でのみ自己会合してMNAzymeを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方が、標的と特異的にハイブリダイズすることが可能なDNA、RNAまたはペプチドアプタマー部分を含み、
組成物が、標的の存在下でのみ自己会合してMNAzymeを形成することが可能な2つのパートザイムオリゴヌクレオチドがそれぞれハイブリダイズしてMNAzymeの自己会合を促進することができる、MNAzyme会合促進オリゴヌクレオチドをさらに含み、
組成物が、アプタマーとハイブリダイズし、それによりMNAzymeを触媒的に不活性にすることができる阻害剤分子をさらに含み、
阻害剤が、アプタマー部分に対して標的より低い結合親和性を示し、
標的が、アプタマー部分とハイブリダイズして阻害剤を除去し、MNAzymeを触媒的に活性にすることができる、
組成物。
【0062】
実施形態45:触媒核酸Cおよび/または触媒核酸BによるPAポリヌクレオチドの切断によって遊離する触媒核酸Aをさらに含む、実施形態31~44のいずれか1つによる組成物。
【0063】
実施形態46:触媒核酸AによるPBポリヌクレオチドの切断によって遊離する触媒核酸Bをさらに含む、実施形態31~45のいずれか1つによる組成物。
【0064】
実施形態47:触媒核酸Aおよび/または触媒核酸Bが、DNAzymeまたはリボザイムである、実施形態31~46のいずれか1つによる組成物。
【0065】
実施形態48:触媒核酸Aおよび/または触媒核酸Bが、8-17 DNAzyme、10-23 DNAzyme、9-86 DNAzyme、12-91 DNAzyme、GR-5 DNAzyme、17E DNAzyme、RFD-EC1 DNAzyme、F-8 DNAzyme、39-E DNAzyme、E2 DNAzyme、Mg5 DNAzyme、A43 DNAzyme、DAB22 DNAzyme、PS2.M DNAzyme、ハンマーヘッド型リボザイム、L-ヒスチジン依存性DNAzymeおよびHRP DNAzymeからなる群より選択される、実施形態31~47のいずれか1つによる組成物。
【0066】
実施形態49:触媒核酸Aと触媒核酸Bが、それぞれ異なる種類のDNAzymeである、実施形態31~48のいずれか1つによる組成物。
【0067】
実施形態50:(i)触媒核酸Aが10-23 DNAzymeであり、触媒核酸Bが8-17 DNAzymeであり、かつ
触媒核酸基質Aが8-17 DNAzyme基質であり、触媒核酸基質Bが10-23 DNAzyme基質であるか、または
(ii)触媒核酸Aが8-17 DNAzymeであり、触媒核酸Bが10-23 DNAzymeであり、かつ
触媒核酸基質Aが10-23 DNAzyme基質であり、触媒核酸基質Bが8-17 DNAzyme基質である、実施形態31~49のいずれか1つによる組成物。
【0068】
実施形態51:PAおよび/またはPBおよび/またはPCが、組成物中で可動性である、実施形態31~50のいずれか1つによる組成物。
【0069】
実施形態52:PAポリヌクレオチドおよび/またはPBポリヌクレオチドおよび/またはPCポリヌクレオチドが、それぞれフルオロフォアと消光剤とを含む、実施形態31~51のいずれか1つによる組成物。
【0070】
実施形態53:組成物中で可動性である触媒核酸基質Aの集団をさらに含み、集団の触媒核酸基質Aがそれぞれ、フルオロフォア分子と消光剤分子とを含み、触媒核酸Bが、触媒核酸基質Aの集団のメンバーを切断してフルオロフォアを消光剤から分離し、それにより、標的の検出を促進するシグナルを発生させることが可能である、実施形態31~52のいずれか1つによる組成物。
【0071】
実施形態54:組成物中で可動性である触媒核酸基質Aの集団をさらに含み、集団の触媒核酸基質Aがそれぞれ、フルオロフォア分子と消光剤分子とを含み、触媒核酸Cが、触媒核酸基質Aの集団のメンバーを切断してフルオロフォアを消光剤から分離し、それにより、標的の検出を促進するシグナルを発生させることが可能である、実施形態38または実施形態39による組成物。
【0072】
実施形態55:ポリヌクレオチドであって、
触媒核酸またはその成分と、
触媒核酸基質と、
ポリヌクレオチドの選択的透過バリアの透過を防ぐことが可能な
(i)結合成分、
(ii)二次構造をもたらす自己相補性領域、
(iii)荷電部分
のうちのいずれか1つまたは複数のものと
を含み、
触媒核酸が、触媒核酸基質を触媒的に修飾することが不可能である、
ポリヌクレオチド。
【0073】
実施形態56:結合成分が、
リガンドとハイブリダイズしたアプタマー、
ビーズ(例えば、磁気ビーズ)、
微粒子、
ナノ粒子または
荷電部分
である、実施形態55によるポリヌクレオチド。
【0074】
実施形態57:触媒核酸がDNAzymeまたはリボザイムである、実施形態55または実施形態56によるポリヌクレオチド。
【0075】
実施形態58:DNAzymeが10-23 DNAzymeまたは8-17 DNAzymeである、実施形態57によるポリヌクレオチド。
【0076】
実施形態59:成分が、MNAzymeのパートザイムオリゴヌクレオチド成分である、実施形態55または実施形態56によるポリヌクレオチド。
【0077】
これより、添付の図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】本発明の実施形態による2種類の例示的SubZymeを示す図である。この図では、SubZymeは、(図1Aに示されるように)触媒核酸分子または(図1Bに示されるように)触媒核酸分子の成分である「Cat」と連結した酵素の基質である「Sub」を含む。例として、図1AのSubZyme Aは、10-23 DNAzymeであるCat Aと、8-17 DNAzymeによって切断可能なSub Aとを含むものであり得る。あるいは、SubZyme Aは、8-17 DNAzymeであるCat Aと、10-23 DNAzymeによって切断可能なSub Aとを含むものであり得る。SubZyme Bとして示される(図1B)他の実施形態では、Subzymeは、触媒核酸酵素によって切断可能なSub Bと連結した多成分核酸酵素(MNAzyme)のパートザイムB1成分であるCat B1を含むものであり得る。
図2】本発明の実施形態による交差触媒作用が可能な例示的SubZyme対を示す図である。SubZymeはともに、subZymeを操作するのに使用することができる任意選択の磁気ビーズ(MB)に付着したものとして示されている。例として、PA(SubZyme A-MB)はCat AとSub Aとを含み、PB(SubZyme B-MB)はCat BとSub Bとを含む。例として、PAは、Cat B(8-17 DNAzyme B)によって切断可能なsub Aと連結したCat A(10-23 DNAzyme A)を含み、PBは、Cat A(10-23 DNAzyme A)によって切断可能なsub Bと連結したCat B(8-17 DNAzyme B)を含む。これとは逆に、PAは、Cat B(10-23 DNAzyme B)によって切断可能な基質Aと連結したCat A(8-17 DNAzyme A)を含み、PBは、Cat A(8-17 DNAzyme A)によって切断可能な基質Bと連結したCat B(10-23 DNAzyme B)を含む。さらに、Sub Aおよび/またはSub Bは、MNAzyme、例えば開始MNAzymeによって切断可能なものであり得る。
図3】本明細書で「Tバッグ」とも呼ばれる、本発明の実施形態による透過性バリアの例示的な構成要素および構築を示す図である。Tバッグは、例えばろ紙、粘着テープ、接着剤および合成オリゴヌクレオチドを含めた安価な構成要素から構築することができる。図3Aは、図のようにろ紙に両面粘着テープを貼り付けて作製する「ウェル」を示している。次いで、磁気ビーズなどのかさ高い粒子に付着させたオリゴヌクレオチド(SubZyme)をウェル内にスポットし、乾燥させることができる。2つ目のろ紙の層を上に置き、Tバッグをトリミングすることができる。図3Bは、両面粘着テープを粘着側が折り畳まれ非粘着性のライナーのみが露出するように二つ折りにすることによって作製するTバッグを示している。「ウェル」は、図のように穴開けパンチを用いてろ紙片上にウェルを設けることにより作製することができる。次いで、磁気ビーズなどのかさ高い粒子に付着させたオリゴヌクレオチド(SubZyme)をウェル内にスポットし、乾燥させることができる。2つ目のろ紙の層を上に置き、Tバッグをトリミングすることができる。
図4】透過性バリア(「Tバッグ」と呼ぶ)およびSubZymeを用いて標的の検出後のシグナルを増幅する、本発明の実施形態による例示的スキームを示す図である。チューブには、PA(SubZyme A-MB)、PB(Tバッグ内のSubZyme B-MB)および選択した標的に対するパートザイムが入っている。標的の存在下では、パートザイムが整列しCat C(MNAzyme)を形成する。MNAzymeがPA内のSub A(例えば、10-23基質)を切断してCat A(例えば、8-17 DNAzyme A)をMBから分離し、それによりCat AがTバッグの壁を通過することが可能になり、そこでPB内のSub Bを切断し、それによりMBからCat B(例えば、10-23 DNAzyme B)を分離することができる。次にCat Bが自由にTバッグから溶液中に移動し、そこでPA内のSub Aを切断し、カスケードを開始させることができる。一定時間インキュベートした後、磁石を用いて未切断のSubZyme-MBおよび切断されたMBフラグメントを保持し、それにより、自由なDNAzyme(Cat AおよびCat B)を含んだ上清を標識されたSub Aおよび/またはSub Bの入った別のチューブに移すことができる。DNAzyme切断によりフルオロフォアと消光剤が分離して発生する蛍光をリアルタイムでモニターすることができる。
図5】ヒトTFRC遺伝子に相同なオリゴヌクレオチド標的を漸増させた本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。プロットは、TFRC標的(1pM、100fM、1fMおよび500aM)を含むか、または標的を含まないTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。この実験では、1pMおよび100fMの濃度が無標的オリゴヌクレオチドの不在下で発生したバックグラウンドシグナルを上回って容易に検出された。グラフは、Tバッグ内で15分間(5A)または20分間(5B)インキュベートした後の蛍光基質切断のリアルタイムモニタリングを示している。10分間のリアルタイムモニタリングの後、100fMの検出が明らかになった。これらの実験条件下では、標的濃度1fMおよび500aMではバックグラウンドを上回るシグナルは発生しなかった。
図6】TFRCに相同な1pMの合成オリゴヌクレオチド標的の検出に成功することを実証する本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。これに対し、1nMのオフターゲットオリゴ鋳型であるBla-KPCおよびCT_Cds2ではバックグラウンド(無標的)を上回るシグナルは得られなかった。プロットは、標的もしくはオフターゲットを含む、または標的を含まないTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。
図7】ベータ-ラクタマーゼ耐性をもたらすOXA遺伝子に対する10pMの合成オリゴ鋳型の検出に成功することを実証する本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。プロットは、標的を含む、または標的を含まないTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。
図8】ヒトゲノムDNA内のヒトTFRC遺伝子の検出に成功することを実証した本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。プロットは、標的を含む、または標的を含まないTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。実験は10%ヒト血清の存在下(8B)または不在下(8A)で実施した。
図9】ヒトゲノムDNA内のヒトTFRC遺伝子の検出に成功することを実証した本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。この実験では、ヒトTFRC遺伝子を標的とする3種類のMNAzymeを用いて反応を開始させた。プロットは、gDNA標的を含む、またはgDNA標的を含まない20分間のTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。
図10】ヒトゲノムDNA内のヒトTFRC遺伝子の検出に成功することを実証した本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。この実験では、ヒトTFRC遺伝子を標的とするMNAzymeを用いて反応を開始させた。プロットは、168,000コピーもしくは270,000コピーのTFRC遺伝子と推定されるgDNAを含む、またはgDNA標的を含まない20分間のTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。
図11】2種類の代表的なSubZymeを含む本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。実線は標的を含む反応であり、点線は標的を含まないものである。SubZyme A(11cおよび11d)は8-17触媒核酸成分と10-23触媒核酸基質成分とを含む。SubZyme C(11aおよび11b)は10:23触媒核酸成分と非相補的10-23触媒核酸基質成分とを含む。この結果から、8-17触媒核酸成分と10-23触媒核酸成分の混合物からなるSubZymeの方が、10-23触媒核酸成分のみからなるSubZymeより長期安定性が高いことがわかる。
図12】平面状のスライドガラス上に係留した本発明の実施形態による例示的SubZymeの結果を示す図である。この結果は、係留したSubZyme(混合物A)が核酸基質を加水分解し蛍光を発生させることができたのに対し、係留したSubZyme(混合物B)による検出は明白ではなかったことを示している。
図13】本発明の実施形態による、ともに交差触媒作用が可能な2種類の例示的SubZyme対を示す図である。ポリヌクレオチドA(PA)およびポリヌクレオチドB(PB)として表されるSubZyme対はともに、SubZymeを操作するのに使用することができる任意選択の磁気ビーズ(MB)に付着したものとして示されている。PAおよびPBは任意選択で、5’末端または3’末端のいずれかにより磁気ビーズ(MB)に付着していてよい。SubZyme A-MB(PA)は機能ドメイン、つまり、(i)Cat A(例えば、8-17 DNAzyme)、(ii)Sub A(例えば、10:23核酸酵素によって切断可能な基質A)および任意選択で(iii)リンカー配列(図13A)または標的核酸に相補的でありエンドヌクレアーゼもしくはエキソヌクレアーゼ、例えば制限酵素(RE)/ニッキング酵素(NE)の認識部位の一方の鎖をさらに含む配列(図13B)を含む。SubZyme B-MB(PB)は機能ドメイン、つまり、(i)Cat B(例えば、10:23 DNAzyme B)、(ii)Sub B(例えば、8:17 DNAzyme/Cat Aによって切断可能な基質B)および任意選択で(iii)リンカー配列(図13Aおよび13B)を含む。図13Aのスキームでは、標的核酸の存在によって、例えばSubAを切断することが可能な10:23 MNAzyme C(Cat C)が形成される。PA内のSubAの切断によってCat Aが遊離し、次いで、これが選択的透過バリアを通過することが可能になり、PB内のSub Bを切断してCat Bを遊離させる。次にCat Bが選択的透過バリアを通過することが可能になり、別のPA内にある新たなSub Aを切断し、さらに多くのCat Aを遊離させ、それにより交差触媒シグナル増幅カスケードを開始させる。図13Bのスキームでは、標的核酸の存在がPA内の標的特異的配列(iii)とハイブリダイズし、それにより、触媒酵素D/Cat D(例えば、RE/NE)の認識部位を形成する二本鎖の二本鎖領域が生じる。Cat DによるPAの切断によってCat Aが遊離することができ、次いで、Cat Aが選択的透過バリアを通過するが可能になり、PB内のSub Bを切断する。PBの切断によってCat Bが遊離し、次にこれが選択的透過バリアを通過することが可能になり、別のPA内にあるSub Aを切断してさらに多くのCat Aを遊離させ、それにより交差触媒シグナル増幅カスケードを開始させる。
図14】MNAzymeの別の方法として制限酵素を用いてアッセイ開始の第一段階を実証した本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。この戦略については図13Bに示されている。プロットは、ニッキングエンドヌクレアーゼNt.BstNBI(+/-4単位)およびompA標的(+/-2nM)を含むか、これを含まないTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。この実験では、ニッキングエンドヌクレアーゼとompA標的の両方の存在下でのみシグナルの増大が観察され、このことは、標的が誘導する表面結合DNAzyme(Cat A)の遊離にはニッキングエンドヌクレアーゼとompA標的がともに必要であることを示している。
図15】ビーズに係留したSubZymeを封入し、それがTバッグ透過性バリアの外側に限定される反応成分と相互作用できないよう空間的に閉じ込める機序として透過性バリア(「Tバッグ」と呼ぶ)を用いる、本発明の実施形態による例示的スキームを示す図である。チューブには、Tバッグの内側にあるPB(SubZyme/ビーズ)が入っている。開始DNAzyme(DNAzyme A)の不在下では、SubZyme-ビーズは半透過性バリアによってTバッグ内に封入されたままである。しかし、チューブに開始DNAzyme(DNAzyme A)を加えると、SubZyme-ビーズがTバッグの壁を通って移動できるようになり、そこでSubZyme-ビーズ内の基質Bを切断し、それによりDNAzyme Bをビーズから分離することができる。次に、DNAzyme Bが自由にTバッグから溶液中に移動する。磁気ビーズを用いる場合、一定時間インキュベートした後、任意選択で磁石を用いて、未切断のSubZyme-ビーズおよび切断されたビーズフラグメントを保持することができる。標識された基質の入った別のチューブに移す自由なDNAzyme(DNAzyme B)を含有する上清。DNAzyme B切断によるフルオロフォアと消光剤の分離後に発生する蛍光をリアルタイムでモニターすることができる。
図16】(パートA~F)様々なサイズの磁気ビーズに係留したSubZymeを様々な孔径からなる膜でできたTバッグの境界内に空間的に閉じ込める本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。プロットは、開始DNAzymeを含むか、これを含まないTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングの結果を示している。この戦略については図15に示されている。結果は、開始DNAzymeの不在下ではシグナルがほとんどみられないことを示しており、SubZymeが直径が膜の孔径より大きい磁気ビーズに係留しているときはTバッグ膜を透過することができないことがわかる。開始DNAzyme Aの存在下では強いシグナルがみられ、このことから、開始DNAzymeがTバッグ内に拡散し、SubZyme-MBを切断し、表面結合DNAzymeを遊離させることが可能であることがわかる。また、遊離したDNAzymeがTバッグの外側に移動し、蛍光標識した基質分子を切断することが可能であることもわかる。様々な磁気ビーズ径(2.8μm、6μmおよび8μm)および様々な孔径(0.8μmおよび2.0μm)で同様の結果がみられる。パートA~Fを参照されたい。
図17】SubZyme-MB反応へのPES膜/秒の添加がDNAzymeの触媒活性に及ぼす影響を明らかにするためこれを試験した本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。プロットは、PES膜(+/-膜)および/または 開始DNAzyme(+/-2nM Dz)を含むか、これを含まないSubZyme-MBインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。この実験では、SubZyme-MB反応へのPES膜の添加によりDNAzymeの活性が増強されるように思われる。このことは、PES膜を含む反応の方が膜を含まない反応よりも蛍光の経時的増大が速いという形で観察された。
図18】(パートA~C)SubZyme-MBをポリエーテルスルホン(PES)でできたTバッグの境界内に空間的に閉じ込められる本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。さらに、3種類の異なる孔径のPES膜を試験した。この戦略については図15に示されている。プロットは、開始DNAzyme(2nM)を含むか、これを含まないTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。結果は、開始DNAzymeの不在下ではシグナルがほとんどみられないことを示しており、SubZyme-MBは孔径が0.65μm(パートA)、0.8μm(パートB)および1.2μm(パートC)のPES膜から外に移動することが不可能であることがわかる。開始DNAzyme Aの存在下では強いシグナルがみられ、このことから、SubZyme-MBを封入し、他の反応成分から物理的に分離するのにPESなどの代替膜を用いることが可能であることがわかる。
図19】クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子に相同なオリゴヌクレオチド標的の漸増を実施した本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。プロットは、ompA標的(100fM、10fMおよび1fM)、オフターゲット(1nM)またはヒトゲノムDNA(約2×10の遺伝子コピー)を含むか、DNAを含まないTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。この実験では、100fM、10fMおよび1fMの濃度が標的オリゴヌクレオチドの不在下で発生したバックグラウンドシグナルを上回って容易に検出された。これとは対照的に、ヒトゲノムDNAならびに1nMのオフターゲットオリゴ鋳型PPIAおよびp273ではバックグラウンド(無DNA対照)を上回るシグナルは発生しなかった。
図20】クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)の全核酸(TNA)試料中のクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子の検出に成功することを実証した本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。プロットは、標的を含むか、これを含まないTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。
図21】クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子に相同なオリゴヌクレオチド標的の15分未満での迅速検出を実証した本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。プロットは、標的オリゴヌクレオチド(0pM、1pMまたは500pM)を含むか、これを含まない12分間のTバッグインキュベーション反応後の基質切断(3分間)のモニタリングを示している。
図22】透過性バリア(「Tバッグ」と呼ぶ)および2種類のSubZymeにより標的検出後のシグナル増幅を促進する本発明の実施形態による例示的スキームを示す図である。PA(SubZyme A)内の触媒成分はDNAzyme(Cat A)であり;PB(SubZyme B1)内の触媒成分はパートザイム(Cat B1)であり;PC(Subzyme B2)内の触媒成分はパートザイム(Cat B2)である。標的の存在下では、開始MNAzyme(Cat C)が形成され、これがPA内のSub Aを切断し、MBからCat Aを遊離させて、Cat AがTバッグ壁を通って移動することが可能になり、そこでPB内のSub Bを切断することができる。これによりCat B1がMBから遊離し、Tバッグの外に移動することが可能になり、そこでCat B2(PC)および会合促進因子(AF-B3)とハイブリダイズして活性なフィードバックMNAzyme(Cat B)を形成することができる。Cat BもPA内のSub Aを切断し、カスケードを継続することができる。インキュベーション後、磁石を用いて、SubZymeおよびフラグメントを依然としてMBに保持することができる。自由なCat A、Cat BおよびCat Cを含有する上清を標識したSub Aおよび/またはSub Bの入った別のチューブに移すことができる。DNAzymeおよび/またはMNAzymeによる基質切断後に発生する蛍光をモニターすることができる。
図23】透過性バリア(「Tバッグ」と呼ぶ)および3種類のSubZymeを用いて標的検出後のシグナルを増幅する本発明の実施形態による例示的スキームを示す図である。PA(SubZyme A)内の触媒成分はDNAzyme(Cat A)であり;PB(SubZyme B1)内の触媒成分はパートザイム(Cat B1)であり;PC(SubZyme B2)内の触媒成分はパートザイム(Cat B2)であり、PA、PBおよびPCはビーズをコンジュゲートされている。反応は図22に記載される通りに進行するが、ここでは、過剰なレベルの分離が実現され得るため、PAおよびPCがPBから分離する。
図24】例示的SubZyme対が交差触媒作用が可能なものである本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。この実験では、2つの異なる種類のSubZymeが交差触媒作用が可能であることを示し、PAは基質と連結したDNAzymeを含み、PBは基質によりビーズと連結したパートザイムを含む。この戦略については図22に示されている。プロットは、ompA標的(2nM、200pM、50pM、10pMおよび1pM)を含むか、標的を含まないTバッグインキュベーション反応後の基質切断のモニタリングを示している。この実験では、全濃度の標的が無標的オリゴヌクレオチドの不在下で発生したバックグラウンドシグナルを上回って容易に検出された。
図25】8-17成分のみからなるSubZymeを用いる交差触媒フィードバックカスケードを実証する本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。結果は、この方法により2nM、200pMおよび20pMの開始DNAzymeを検出することが可能であることを示している。シグナルには無DNAzyme対照と十分な差がみられる。
図26】(パートAおよびB)Tバッグアッセイに使用する代替的なかさ高い表面としてシリカビーズを用いる本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。この戦略については図15に示されている。結果は、開始DNAzyme Aの不在下ではシグナルがほとんどみられないことを示しており、SubZymeがシリカビーズ(直径1μm)に係留しているときはPES膜(26A)およびPES膜(26B)を通って拡散することができないことがわかる。開始DNAzyme Aの存在下では強いシグナルがみられ、このことから、開始DNAzymeがTバッグ内に拡散し、SubZymes-ビーズを切断し、表面結合DNAzymeを遊離させることができることがわかる。したがって、この結果から、ビーズおよび膜については、ビーズが膜孔の直径より大きいものである限り、様々な材料からなるものであってよいことがわかる。
図27】透過性バリア(「Tバッグ」と呼ぶ)およびSubZymeを用いて、標的検出後に単一のチューブ内でシグナルを増幅し、シグナルを検出する本発明の実施形態による例示的スキームを示す図である。PA(SubZyme A)内の成分はDNAzyme(Cat A)およびSub Aであり;PB(SubZyme B1)内の成分はパートザイム(Cat B1)およびSub Bであり;PC(SubZyme B2)内の成分はパートザイム(Cat B2)および任意選択でSub Bである。標的の存在下では、パートザイムC1およびC2から形成された開始MNAzyme(Cat C)がPA内のSub Aを切断してMBからCat Aを遊離させ、それによりCat AがTバッグの壁を通って移動することが可能になり、そこでPB内のSub Bを切断することができる。これによりCat B1がMBが遊離してTバッグの外に移動することが可能になり、そこでCat B2(PC)および会合促進因子(AF-B3)とハイブリダイズし、活性なフィードバックMNAzyme(Cat B)を形成することができる。Cat BはPA内のSub Aを切断し、カスケードを継続することができる。Cat Bは標識されたSub A-FQも切断し、蛍光を発生させることができる。
図28図27に示されるTバッグ法を用いて500pM、200pM、100pMおよび50pMの合成オリゴヌクレオチド標的の検出に成功することを示す、本発明の実施形態による例示的アッセイの結果を示す図である。これとは対照的に、MNAzyme対照反応ではバックグラウンド(無標的)を上回るシグナルは発生しなかった。
【発明を実施するための形態】
【0079】
(定義)
本明細書では、以下に記載する意味を有するものとする特定の用語および語句を使用する。
【0080】
本願で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の意味を表す場合を除き、複数の指示対象を包含する。例えば、「MNAzyme」(an MNAzyme)という用語は複数のMNAzymeを包含する。文脈上他の意味に解すべき場合または特にそうではないと記載する場合を除き、本明細書に単数の整数、段階または要素として記載される本発明の整数、段階または要素は、記載される整数、段階または要素の単数形および複数形をともに包含することは明らかである。
【0081】
そうではないと記載される場合を除き、「~を含む(comprising)」および「~を有する」という用語は、「主として~を含むが、必ずしもそれのみであるとは限らない」ことを意味する。さらに、「~を含む(comprising)」という単語の変化形、例えば「comprise」および「comprises」などは、それに応じて意味が変化する。したがって、例えば標的分子Aを「含む(comprising)」試料は、標的分子Aのみからなる場合もあれば、1つまたは複数の異なる種類(1つまたは複数)の標的分子(例えば、標的分子Bおよび/または標的分子C)を含む場合もある。
【0082】
本明細書で使用される「標的」および「標的分子」という用語は、本明細書に記載される分子複合体によって検出することが可能である、特に限定されないが、核酸、タンパク質、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、ウイルス、細菌、古細菌、真菌、抗体、代謝産物、病原体、毒素、汚染物質、毒物、小分子、ポリマー、金属イオン、金属塩、小分子有機化合物、全細胞および生体全体を含めた任意の分子を指す。例えば、標的は、MNAzymeの会合をさせる会合促進因子としての役割を果たす核酸、またはアプタマーと結合して、アプタマーを含む触媒核酸(例えば、アプタMNAzymeまたはその他のアプタザイム)を活性化させることが可能な任意の分子であり得る。標的核酸としては、特に限定されないが、DNAポリヌセロチド(polynucelotide)およびRNAポリヌクレオチドが挙げられる。
【0083】
「触媒核酸」、「触媒核酸分子」、「触媒核酸酵素」および「核酸酵素」という用語は、本明細書では互換的に使用され、同じ意味を有する。これらの用語は、1つまたは複数の基質(例えば、核酸基質)の特異的認識および触媒的修飾が可能な任意の核酸またはその一部分を包含する。例えば、1つまたは複数の基質は核酸であり得、触媒的修飾は連結または切断であり得る。本明細書で使用される触媒核酸酵素には、DNA分子またはDNA含有分子、RNAまたはRNA含有分子およびDNA-RNAまたはDNA-RNA含有分子が含まれる。触媒核酸酵素の非限定的な例としては、DNAzyme(DNA酵素およびデオキシリボザイムとしても知られる)、リボザイム(RNA酵素およびRNAザイムとしても知られる)および当該技術分野でPlexZymeとしても知られる多成分核酸酵素(MNAzyme)が挙げられる。
【0084】
本明細書で使用される「subZymeオリゴヌクレオチド」または「subZyme」という用語は、触媒核酸またはその一部分である成分(例えば、パートザイムオリゴヌクレオチド)と、触媒核酸基質である成分とを含む、オリゴヌクレオチドを指す。subZymeオリゴヌクレオチドの触媒核酸は、同じsubZymeオリゴヌクレオチドの触媒核酸基質成分を触媒的に修飾することができない。触媒核酸またはその一部分および触媒核酸基質は、subZymeオリゴヌクレオチドに沿った途切れることのない配列であっても、あるいは、例えば介在ヌクレオチドおよび/または当該技術分野で使用可能な任意の適切なリンカーによって、分離されていてもよい。subZymeオリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基および/またはリボヌクレオチド塩基ならびに/あるいはその類似体、誘導体、変異体、フラグメントまたは組み合わせを含み得る。
【0085】
subZymeオリゴヌクレオチドは任意選択で、非限定的な例として、(例えば、反応混合物からの)その分離または精製を補助する、1つまたは複数の追加の分子、特に限定されないが、ビーズ、微粒子および酵素を含めた分子を含み得る。SubZymeオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの表面への付着を可能にする追加の官能基を含み得る。本発明のいくつかの実施形態では、非限定的な例として、subZymeオリゴヌクレオチドは、10-23 DNAzymeと8-17 DNAzymeの基質、または8-17 DNAzymeと10-23 DNAzymeの基質を含み得る。非限定的な例として、SubZymeは、8-17 DNAzyme、10-23 DNAzyme、9-86 DNAzyme、12-91 DNAzyme、GR-5 DNAzyme、17E DNAzyme、RFD-EC1 DNAzyme、F-8 DNAzyme、39-E DNAzyme、E2 DNAzyme、Mg5 DNAzyme、A43 DNAzyme、DAB22 DNAzyme、PS2.M DNAzyme、ハンマーヘッド型リボザイム、L-ヒスチジン依存性DNAzymeおよびHRP DNAzymeからなる群より選択される触媒核酸を含み得る。本発明によるsubZymeオリゴヌクレオチド/subZymeは、触媒核酸の一部分、例えばパートザイムオリゴヌクレオチドなどを含み得る。触媒性触媒核酸の一部分は、それが由来する完全な核酸と比較して、部分的または完全な触媒作用が可能なものであり得る。あるいは、触媒核酸の一部分は、それが由来する親触媒核酸の1つまたは複数の他の部分(例えば、パートザイムオリゴヌクレオチド)と組み合わさるまで触媒作用が不可能なものであり得る。
【0086】
subZymeオリゴヌクレオチドは任意選択で、非限定的な例として検出を補助し得る、1つまたは複数の追加の分子を含み得る。例としては、特に限定されないが、蛍光検出のためのフルオロフォア部分および消光剤部分;SPR検出および/または比色検出のための金粒子または銀粒子;電気化学検出および/またはpH検出のための酵素ならびに発光検出のための酵素および官能基が挙げられる。
【0087】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、互換的に使用され、同じ意味を有するものであり、特に限定されないが、DNA、メチル化DNA、アルキル化DNA、RNA、メチル化RNA、マイクロRNA、siRNA、shRNA、mRNA、tRNA、snoRNA、stRNA、smRNA、プレマイクロRNA、プリマイクロRNA、その他の非コードRNA、リボソームRNA、ロックト核酸、架橋化核酸、ペプチド核酸、その誘導体、そのアンプリコンまたはその任意の組合せを含めたデオキシリボヌクレオチド塩基および/またはリボヌクレオチド塩基またはその類似体、誘導体、変異体、フラグメントもしくは組合せの一本鎖または二本鎖のポリマーを指す。非限定的な例として、本明細書に記載される所与の核酸の入手源は、合成、哺乳動物、ヒト、動物、植物、真菌、細菌、ウイルスまたは古細菌のうちいずれか1つまたは複数の入手源であり得る。
【0088】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」および「オリゴ」という用語は、互換的に使用され、同じ意味を有するものであり、デオキシリボヌクレオチド塩基および/またはリボヌクレオチド塩基またはその類似体、誘導体、変異体、フラグメントもしくは組合せの一本鎖ポリマーを指す。本発明によるオリゴヌクレオチドの非限定的な例としては、本明細書に記載される方法および組成物による検出のための核酸標的;触媒核酸酵素(例えば、DNAzyme、リボザイム、MNAzyme);パートザイムオリゴヌクレオチドなどのMNAzyme成分;アプタマー;SubZymeオリゴヌクレオチド;ならびに核酸酵素基質(例えば、MNAzyme、DNAzymeおよび/またはリボザイムによって修飾され得る基質)が挙げられる。オリゴヌクレオチドは、特に限定されないが、下の表1に記載するもののうちいずれか1つまたは複数のものを含めた少なくとも1つの付加または置換を含み得る。本明細書で言及されるオリゴヌクレオチドは、例えば化学合成(例えば、成分ヌクレオチドからの合成または既存のオリゴヌクレオチドフラグメントへのヌクレオチド(1つまたは複数)の付加)を含めた任意の方法により合成され得る。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの複数のフラグメントを連結する、またはその他の方法で結合することにより構築することもできる。本明細書で言及される「連結産物」とは、例えばリガーゼ酵素により互いに結合(連結)した2つ以上のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、核酸のことである。
【0089】
本明細書で使用される「ヌクレオチド」および「ヌクレオチド残基」ならびに「塩基」という用語は、同じ意味を有し、塩基A、C、G、TまたはUおよびその誘導体または類似体(その非限定的な例を表1に挙げる)を含むヌクレオチドを包含する。
【0090】
本明細書で核酸またはヌクレオチドに関連して使用される「誘導体」という用語は、(例えば、組換え手段により)組み込んで作製した、または合成後に(例えば、化学的手段により)付加した任意の融合分子を含めた任意の機能的に等価な核酸またはヌクレオチドを包含する。このような融合物は、RNAもしくはDNAが付加された、またはポリペプチド(例えば、ピューロマイシンもしくはその他のポリペプチド)、小分子(例えば、ソラレン)もしくは抗体とコンジュゲートされた本発明のオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0091】
本明細書で核酸またはヌクレオチドに関連して使用される「類似体」という用語は、DNAまたはRNAの分子または残基に関連する物理的構造を有する化合物を包含し、DNA残基もしくはRNA残基またはその類似体と水素結合を形成することが可能な(すなわち、DNA残基もしくはRNA残基またはその類似体とアニールして塩基対を形成することが可能な)ものであり得るが、このような結合は、前記化合物が「類似体」という用語に包含されるのに必要とされるものではない。このような類似体は、構造的に関連するリボヌクレオチド残基またはデオキシリボヌクレオチド残基とは異なる化学的特性および生物学的特性を有し得る。メチル化、ヨウ素化、臭素化またはビオチン化された残基が類似体の例である。これまでに、デオキシイノシン、C-5-インミダゾール(immidazole)デオキシウリジン、3-(アミノプロピニル)-7-デアザ-dATP、2’-O-メチルRNA、2’O-メチルキャップを含めたヌクレオチド類似体が含まれる活性なDNAzymeが記載されている。その他の類似体についても、DNAzyme、リボザイムおよびMNAzymeなどの触媒核酸酵素の触媒活性と適合性がある可能性が考えられる。当業者には、触媒活性のある核酸を、例えば塩基同士の置換、塩基から類似体への置換または糖成分もしくはホスホジエステル主鎖の改変によって改変することは容易であろう。例えば、合成過程で、または合成後に特定の塩基を修飾することにより、改変を実施することができる。触媒核酸の塩基変化または塩基類似体などの組込み改変を実験的に検証することにより、改変した配列または特定の類似体が触媒活性に及ぼす影響を評価することができる。塩基A、C、G、TおよびUの類似体は当該技術分野で公知であり、一部を表1に挙げる。ヌクレアーゼ消化を阻害することができる類似体の非限定的な例も当該技術分野で周知である。このような類似体を戦略的にオリゴヌクレオチド内に配置して、エキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼによる切断を防ぐことができる。
【0092】
【表1-1】
【表1-2】
【0093】
「多成分核酸酵素」および「MNAzyme」という用語は、本明細書では互換的に使用され、同じ意味を有するものと解釈される。これらは、MNAzyme会合促進オリゴヌクレオチドまたはMNAzyme会合促進ポリヌクレオチド(例えば、標的核酸)の存在下でのみ会合して、1つまたは複数の基質を触媒的に修飾することが可能な触媒活性核酸酵素を形成する2つ以上のパートザイムオリゴヌクレオチドから形成される。例えば、パートザイムオリゴヌクレオチドAおよびBはそれぞれ、核酸標的との相補的塩基対形成により標的核酸と結合し得る。MNAzymeは、パートザイムAおよびBのセンサーアームが標的核酸上で互いに隣接してハイブリダイズする場合にのみ形成される。MNAzymeの基質アームは基質とかみ合い、その修飾(例えば、切断または連結)は、パートザイムオリゴヌクレオチドAおよびB上の部分的触媒ドメインの相互作用によって形成されるMNAzymeの触媒コアにより触媒される。本明細書で使用される「多成分核酸酵素」および「MNAzyme」という用語は、国際公開第2007/041774号、同第/2008/040095号、同第2008/122084号、同第2012/065231号、同第/2013/033792号、同第/2013/123552号および同第2013/188912号、関連する米国特許第8394946号、同第8945836号、同第9127311号、同第8962238号および同第9506108号ならびに関連する米国特許出願公開第20140017669号、同第20160348161号および同第20160083785号(上記の各文献の内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる)のいずれか1つまたは複数のものに開示されるものを含めたあらゆる既知のMNAzymeおよび改変MNAzymeを包含することが理解されよう。包含されるMNAzymeおよび改変MNAzymeの非限定的な例としては、(本明細書で例示されるように)切断触媒活性を有するもの、1つまたは複数の会合阻害剤を含み、会合していない、または一部が会合したMNAzyme、1つまたは複数のアプタマーを含むMNAzyme(「アプタMNAzyme」)、1つまたは複数の短縮センサーアームと、任意選択で1つまたは複数の安定化オリゴヌクレオチドとを含むMNAzyme、1つまたは複数の活性阻害剤を含むMNAzyme、多成分核酸不活性プロ酵素(MNAi)およびリガーゼ触媒活性のあるMNAzyme(「MNAzymeリガーゼ」)が挙げられる。
【0094】
本明細書で使用される「アプタザイム」という用語は、触媒核酸(例えば、DNAzyme、リボザイムまたはアプタMNAzyme)であって、改変してアプタマードメインを組み込み、その活性をアロステリックに調節してそれが標的分析物の存在に依存するようにした触媒核酸を指す。触媒核酸酵素または触媒核酸酵素成分にアプタマーを組み込む方法としては、特に限定されないが、アプタマーと、触媒核酸もしくは触媒核酸成分の1つもしくは複数のドメインとを直接コンジュゲートすること、触媒核酸の非機能性領域へのアプタマーの組込み、または触媒核酸の機能性領域に隣接させてアプタマーをコンジュゲートすることが挙げられる。分析物の不在下では、アプタザイムのアプタマーの全体または一部が阻害剤分子とハイブリダイズしてアプタザイムの触媒活性を阻害し得る。阻害剤分子は、アプタマーに対する結合親和性が標的分子と比較して低いものであり得る。
【0095】
「会合促進分子」、「会合促進因子」、「MNAzyme会合促進オリゴヌクレオチド」、「フィードバック会合促進因子」および「MNAzyme会合促進因子」という用語は、本明細書では互換的に使用され、1つまたは複数のパートザイムオリゴヌクレオチドのセンサーアームとハイブリダイズし、それにより触媒的に活性なMNAzymeの会合を促進することができる核酸を指す。会合促進は、切断活性、リガーゼ活性またはその他の酵素活性を有するMNAzymeの会合を促進し得る。会合促進因子は、1つまたは複数のパートザイムオリゴヌクレオチドのセンサーアームとハイブリダイズする単一の分子であっても、あるいは、別個のこのような分子を複数含むものであってもよい。会合促進因子は、検出または定量化する標的(例えば、DNA、メチル化DNA、アルキル化DNA、RNA、メチル化RNA、マイクロRNA、siRNA、shRNA、tRNA、mRNA、snoRNA、stRNA、smRNA、プレマイクロRNA、プリマイクロRNA、その他の非コードRNA、リボソームRNA、その誘導体、アンプリコンまたはその任意の組合せからなる群より選択される核酸)であり得る。
【0096】
本明細書で使用される「パートザイム」、「パートザイム成分」および「パートザイムオリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、同じ意味を有するものであり、それぞれ、MNAzyme会合促進因子の存在下で2つ以上のものが「MNAzyme」に自己会合することができるDNA含有オリゴヌクレオチドおよび/またはRNA含有オリゴヌクレオチドを指す。パートザイムオリゴヌクレオチドは、3つのドメイン、すなわち、基質の修飾を触媒するMNAzymeの触媒コアの一部を形成する「触媒」ドメイン、会合促進因子(例えば、標的核酸)と会合および/または結合する「センサーアーム」ドメインならびに基質と会合および/または結合する「基質アーム」ドメインを含む。
【0097】
「基質」および「基質分子」という用語は、本明細書では互換的に使用され、触媒分子(例えば、触媒核酸酵素またはタンパク質酵素)による認識および触媒的修飾が可能な任意の分子を指す。基質は、例えば、触媒核酸酵素による特異的認識および触媒的修飾が可能な一本鎖または二本鎖の核酸を含み得る。触媒的に修飾される基質は、間接的手段および/または直接的手段により検出し得る。例えば、カスケードに含まれ、触媒的に修飾される基質に依存する1つまたは複数の後続する段階により、基質の触媒的修飾を間接的に検出し得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、例えば、1つもしくは複数の修飾基質産物および/または基質の修飾により直接発生する他の任意のシグナル(例えば、基質を切断し、それにより、それまで未修飾基質上に対で存在していたフルオロフォア分子と消光剤分子を空間的に分離することにより発生する蛍光シグナル)を直接検出することにより、基質の触媒的修飾を検出し得る。本明細書では、触媒分子により触媒的に修飾されたときに直接検出することができる基質を「レポーター基質」、「レポータープローブ基質」、「レポータープローブ」または「プローブ」とも呼ぶ。
【0098】
本明細書で使用される「アプタマー」という用語は、核酸またはペプチドの配列であって、そのより高次の構造(例えば、3次元の結合ドメインまたは結合ポケット)により1つまたは複数のリガンドを高い親和性および特異性で認識し結合することが可能な配列を包含する。アプタマーは様々なリガンドと結合することができ、そのようなリガンドの非限定的な例としては、核酸、タンパク質、プリオン、小分子有機化合物または生体全体が挙げられる。本明細書で好ましいアプタマーには、例えば、複雑な合成核酸のライブラリーから吸着、回収および再増幅の反復工程により単離することができる、短い一本鎖のDNAオリゴマーまたはRNAオリゴマーがある。アミノ酸または抗生物質などの小分子からタンパク質、核酸構造または全細胞にわたるほぼすべての標的分子を認識するアプタマーを作製することができる。
【0099】
本明細書で使用される「リガンド」という用語は、アプタマーと高い親和性および特異性で結合することが可能な任意の分子を指し、このような分子としては、特に限定されないが、タンパク質、プリオン、ポリペプチド、ペプチドまたは核酸、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、ウイルス、細菌、古細菌、真菌、抗体、代謝産物、病原体、毒素、汚染物質、毒物、小分子、ポリマー、金属イオン、金属塩、小分子有機化合物、全細胞および生体全体が挙げられる。リガンドを「標的分析物」または「分析物」と呼ぶこともある。
【0100】
本明細書で2つ以上の核酸の間の「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズした」2つ以上の核酸と言う場合、それは核酸の全体または一部分の間で起こる相補的塩基対形成を必要とするものであることが理解される。
【0101】
「選択的透過バリア」という用語は、特定の物質を(一方向または両方向)に通過させ、それ以外の別の物質は通過させない材料(例えば、膜)を指す。したがって、選択的透過バリアは、2つの同一でない分子の間で物理的分離を維持するよう設計することができる。選択的透過バリアにより、特に限定されないが、電荷に基づく分離、重量に基づく分離、サイズに基づく分離、形状に基づく分離、脂質溶解性に基づく分離および/または膜内に存在する担体分子に対する親和性に基づく分離を促進する特性を含めた特性に基づく物理的分離がもたらされ得る。非限定的な例として、選択的透過バリアは、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ニトロセルロース、再生セルロース、酢酸セルロース、ポリアミド、プロピレン、ナイロン、酸化アルミニウムまたはポリテトラフルオロエチレンのいずれか1つまたは複数のものを含み得る。
【0102】
(略号)
本明細書全体を通して以下の略号を使用する:
RE:制限酵素/エンドヌクレアーゼ
NE:ニッキング酵素/エンドヌクレアーゼ
DSN:二本鎖特異的ヌクレアーゼ
LAMP:ループ介在等温増幅
RCA:ローリングサークル増幅
TMA:転写産物介在増幅
3SR:自家持続配列複製法
NASBA:核酸配列ベースの増幅
MNAzyme:多成分核酸酵素
DNAzymeまたはDz:デオキシリボ核酸酵素;
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応;
F:フルオロフォア色素分子;
Q:消光剤分子;
JOEまたは6-JOE:6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン;
FAMまたは6-FAM:6-カルボキシフルオレセイン
TxR:テキサスレッド
Oligo:オリゴヌクレオチド
IB:Iowa Black
IDT:Integrated DNA Technologies
SPR:表面プラズモン共鳴
Sub:基質
Pz:パートザイム
Cat:触媒核酸
PES:ポリエーテルスルホン
MB:磁気ビーズ
【0103】
(詳細な説明)
以下の詳細な説明は、当業者が本発明を実施することができる程度に本発明の例示的実施形態を詳細に伝えるものである。記載される様々な実施形態に関する特徴および限定は、必ずしも本発明の他の実施形態および本発明全体を限定するものではない。したがって、以下の詳細な説明は、請求項によってのみ定められる本発明の範囲を限定するものではない。
【0104】
上に記載した通り、標的分子を検出するアッセイおよびこのようなアッセイで発生するシグナルを増幅するよう設計された方法で現在用いることができるものには多数の制約があることは明らかである。これらの制約のうち1つまたは複数のものが、本発明の組成物、キットおよび方法により対処される。
【0105】
標的を検出、同定および/または定量化するための組成物、方法およびキットが提供される。
【0106】
組成物およびキット
本明細書には、本発明の方法を実施するための組成物およびキットが提供される。単なる非限定的な例として、組成物およびキットは、触媒核酸酵素(例えば、MNAzymeおよび/またはそのパートザイムオリゴヌクレオチド成分(1つまたは複数)、DNAzymeならびに/あるいはリボザイム)、subZymeオリゴヌクレオチド(1つまたは複数)、触媒核酸酵素の基質ならびに/あるいはタンパク質酵素の認識部位の鎖を1つ含むオリゴヌクレオチド)のうちいずれか1つまたは複数のものを含み得る。
【0107】
組成物およびキットの様々な成分を機能的に不活性な形態で提供し得る。上記のものに加えて、またはこれに代えて、組成物およびキット様々な成分を機能的に活性な形態で提供し得る。
【0108】
組成物およびキットに含めるのに適した成分の非限定的な例を以下に記載する。
【0109】
触媒核酸酵素
本発明の組成物およびキットは、1つまたは複数の異なる種類の触媒核酸酵素ならびに/あるいはその1つまたは複数の成分(例えば、1つまたは複数のパートザイムオリゴヌクレオチドおよび/または会合促進オリゴヌクレオチド)ならびに/あるいは触媒核酸酵素またはその成分の相補体を含み得る。
【0110】
触媒核酸の基質は、触媒的に修飾されたとき、検出可能なシグナルを発生することが可能なものであり得る。例えば、基質は、1つまたは複数の検出可能な標識(例えば、フルオロフォアと消光剤)を含み得る。
【0111】
組成物およびキットは、任意の適切な触媒核酸酵素(1つまたは複数)(その非限定的な例としては、DNAzyme、MNAzymes、リボザイムおよび/またはアプタザイムが挙げられる)および/またはその成分(例えば、パートザイム(1つまたは複数)および/または会合促進因子(1つまたは複数))および/またはsubZymeオリゴヌクレオチドなどのさらに大きい実体の成分であるものを含み得る。
【0112】
例えば、本発明の組成物およびキットはDNAzymeを含み得る。任意の適切なDNAzymeを使用し得る。DNAzymeは、既知/既存のDNAzymeであっても、in vitro選択により新たに作製したものであってもよい。DNAzymeは、RNA分子またはDNA分子を切断または連結することが可能なものであり得る。二価金属イオン、例えばBa2+、Sr2+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Co2+、Mn2+、Zn2+および/またはPb2+などをDNAzymeの補因子として提供し得る。DNAzymeは、基質と特異的に結合する配列領域である2つの保存されていない基質結合ドメイン(「ハイブリダイズアーム」)と隣接する、触媒ドメイン(触媒コア)を含み得る。適切なDNAzymeの非限定的な例としては、2つの基質認識アームと隣接する15デオキシリボヌクレオチドの触媒ドメインを含む10-23 DNAzymeおよび8-17 DNAzymeが挙げられる。
【0113】
上記のものに加えて、またはこれに代えて、組成物およびキットはリボザイムを含み得る。任意の適切なリボザイムを使用し得る。リボザイムは、天然のリボザイムであっても、人工的に作製したリボザイムであってもよい。リボザイムは、RNA分子またはDNA分子を切断または連結することが可能なものであり得る。二価金属イオン、例えばBa2+、Sr2+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Co2+、Mn2+、Zn2+および/またはPb2+ならびに/あるいは一価陽イオンをリボザイムの補因子として提供し得る。リボザイムは、基質と特異的に結合する配列領域である2つの保存されていない基質結合ドメイン(「ハイブリダイズアーム」)と隣接する、触媒ドメイン(触媒コア)を含み得る。あるいは、別個の標的結合アームおよび基質結合アームならびに触媒コアを含み得るその他のリボザイム構造が企図される。適切なリボザイムの非限定的な例としては、ハンマーヘッド型リボザイム、ヘアピン型リボザイム、分岐型リボザイム、マキシザイム、グループIリボザイム、グループIIイントロンリボザイム、HDVリボザイム、RNアーゼP、CPEB3リボザイム、glmSリボザイム、ペプチジルトランスフェラーゼ23S rRNA、VSリボザイム、CoTCリボザイムおよびGIR1リードザイムが挙げられる。
【0114】
上記のものに加えて、またはこれに代えて、本発明の組成物およびキットは、MNAzyme、触媒的に活性なMNAzymeを形成することが可能なパートザイムオリゴヌクレオチド成分、MNAzyme会合促進オリゴヌクレオチド/ポリヌクレオチドおよび/またはMNAzyme基質のいずれか1つまたは複数のものを含み得る。当業者には周知のように、MNAzymeは、適切な会合促進因子(例えば、標的)とハイブリダイズしたとき、2つ以上のパートザイムから自己会合する、触媒的に活性な核酸酵素である。各パートザイムオリゴヌクレオチド成分は、MNAzymeが会合したとき、組み合わさって基質を修飾することが可能な単一の触媒コアを形成する、部分的触媒コアを含む。
【0115】
適切なMNAzymeおよびその作製方法の非限定的な例が、例えば、国際公開第2007/041774号、同第2008/040095号、同第2008/122084号、同第2012/065231号、同第2013/033792号、同第2013/123552号および同第2013/188912号、関連する米国特許第8394946号、同第8945836号、同第9127311号、同第8962238号および同第9506108号ならびに関連する米国特許出願公開第20140017669号、同第20160348161号および同第20160083785号(上記の各文献の内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる)のいずれか1つまたは複数のものに開示されている。適切なMNAzymeとしては、切断触媒活性を有するもの、連結活性を有するもの、1つまたは複数の会合阻害剤を含み、会合していない、または一部が会合したMNAzyme、1つまたは複数のアプタマーを含むMNAzyme(「アプタMNAzyme」)、1つまたは複数の短縮センサーアームと、任意選択で1つまたは複数の安定化オリゴヌクレオチドとを含むMNAzyme、1つまたは複数の活性阻害剤を含むMNAzyme、多成分核酸不活性プロ酵素(MNAi)およびリガーゼ触媒活性のあるMNAzyme(「MNAzymeリガーゼ」)が挙げられ、それぞれ国際公開第2007/041774号、同第2008/040095号、同第2008/122084号、米国特許出願公開第2007-0231810号、同第2010-0136536号および/または同第2011-0143338号の1つまたは複数のものに詳細に記載されている。パートザイムオリゴヌクレオチドは、MNAzyme会合促進因子の存在下で自己会合してMNAzymeを形成する。いくつかの実施形態では、MNAzymeの存在を検出することができ、MNAzymeの存在は、MNAzymeが会合促進因子を含む標的の存在下でのみ形成されることから、標的の存在を示すものとなる。
【0116】
当業者に公知のように、MNAzymeの構造は1つまたは複数のDNAzyme(例えば、10-23 DNAzymeおよび8-17 DNAzyme)および/またはリボザイムを土台とするものである。MNAzymeは、リボヌクレオチド塩基および/またはデオキシリボヌクレオチド塩基および/またはその類似体を含み得る。例えば、MNAzymeのセンサーアーム、基質アームまたは触媒コアのうち1つまたは複数のものが、1つもしくは複数のリボヌクレオチド塩基および/または1つもしくは複数のデオキシリボヌクレオチド塩基および/または1つもしくは複数のその類似体を含み得る。いくつかの実施形態では、MNAzymeは、その触媒コア内に少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基またはその類似体を含む。デオキシリボヌクレオチド塩基またはその類似体は、触媒活性に必要とされるものであり得る。
【0117】
組成物およびキットのMNAzymeには、当業者に周知の1つもしくは複数の置換、例えば類似体、誘導体、修飾もしくは改変塩基、リボヌクレオチドなど、糖もしくはリン酸主鎖の改変、様々な欠失、挿入、置換、重複もしくはその他の修飾またはこれらの任意の組合せが含まれ得る。このような修飾、置換、欠失、挿入などを、分子が触媒活性を保持するようにセンサーアームおよび/または基質アーム内ならびに/あるいは触媒コア内に施し得る。基質または会合促進因子と結合するアームの置換および修飾は、耐性が高く、分子を様々な基質/会合促進因子に合わせることを可能にするものであり得る。例えば、センサーアームの修飾により様々な会合促進因子に合わせることが可能になり、基質アームの修飾により様々な基質に合わせることが可能になる。
【0118】
上記のものに加えて、またはこれに代えて、本発明の組成物およびキットは、触媒核酸酵素の1つまたは複数の成分を含み得る。例えば、組成物およびキットは、MNAzymeの個々の成分(1つまたは複数)(例えば、1つもしくは複数のパートザイムオリゴヌクレオチドおよび/または1つもしくは複数の会合促進オリゴヌクレオチド)を含み得る。
【0119】
非限定的な例として、組成物およびキットは、標的分子を認識したとき、自己会合して、1つまたは複数の基質を修飾することが可能な触媒的に活性なMNAzymeを形成することが可能である、個々のパートザイム(1つまたは複数)を含み得る。このように形成されるMNAzymeを、パートザイムセンサーアームが特定の会合促進因子(特異的標的分子(1つまたは複数)であり得る)とハイブリダイズしたときにのみ会合し、かつ/またはMNAzymeの基質アーム(1つまたは複数)とハイブリダイズすることが可能な特定の特異的基質(1つまたは複数)のみを触媒的に修飾するよう設計し得る。したがって、組成物およびキットに含まれるMNAzymeを、自己会合し、1つまたは複数の基質をカスケードが起こるのに必要な産物に触媒的に修飾するために標的分子の存在を必要とすることにより、本発明による検出および/またはシグナル増幅カスケードを開始させるよう設計し得る。
【0120】
例えば、パートザイムのセンサーアームのみを改変し、基質アームを改変せずにおくことにより、様々な標的に特異的であり、いずれも検出に汎用性のMNAzyme基質を使用し得る、多種多様なMNAzymeを設計することができる。当業者には、このことが、各標的に対して特別な基質も固有の基質も必要でなくなるという利点をもたらすことが理解されよう。新たな各標的に対しては、センサーアーム部分のうち1つまたは複数のものに1つまたは複数の改変を施すだけでよく、基質アーム部分および触媒コア部分は不変のままでよい。したがって、1つのMNAzymeを用いる単一の標的にも、改変したMNAzymeを用いる一連のアッセイの複数の標的にも単一のMNAzyme基質を使用することができる。MNAzyme基質が複数あれば、単一のアッセイに各標的に対してMNAzymeを1つ、つまり複数のMNAzymeを用いて、複数の標的の検出を多重することが可能になる。このようなMNAzymeを用いる多重化法は、溶液中で、または支持体システムに付着させて容易に実施される。本明細書では、1つまたは複数の基質、MNAzymeパートザイム、会合促進因子または追加の酵素活性を本明細書に記載される支持体に付着させるシステムで多重化アッセイを実施し得ることが企図される。
【0121】
同様に、MNAzymeを特定の基質と特異的にハイブリダイズして触媒的に修飾するよう設計し得る。例えば、パートザイムの基質アームのみを改変し、センサーアームは改変せずにおくことにより、所与の標的に特異的であり、一連の様々なMNAzyme基質を認識して触媒的に修飾する、多種多様なMNAzymeを設計することができる。基質は、MNAzymeによって触媒的に修飾されときに検出可能なシグナルを発生することが可能なレポーター基質であり得る。
【0122】
ある特定の実施形態では、組成物およびキットのMNAzymeを汎用性の基質または一般的な基質と特異的にハイブリダイズして触媒的に修飾するよう設計し得る。汎用性のMNAzyme基質を用いて、設計を変化させて様々な標的を認識する新たなMNAzymeを作出することを可能にすることにより迅速アッセイの開発を可能にし得る。パートザイムの基質アーム部分および触媒コア部分は不変のままであってよく、新たな標的に対して必要な1つまたは複数のパートザイムのセンサーアーム部分のみを改変する。汎用性の基質配列を準備し、それにより、多数の異なる標的に対するアッセイに同じ基質を組み込むことができる。さらに、基質が溶液中に遊離させるか、支持体に係留または付着させるアッセイを含めた本明細書の様々な実施形態の方法に同じ基質を組み込むことができる。多重反応に一連の汎用性の基質を使用して、複数の標的の同時検出を可能にすることができる。汎用性の基質を用いるMNAzyme戦略には、新たな標的それぞれに対して特異的なプローブを設計し使用する必要があるTaqMan(登録商標)、BeaconまたはHybridization probeなどの検出技術より優れた大きな利点がある。MNAzyme基質は汎用性であり、いかなる標的にも有用であるため、この汎用性のMNAzyme基質の切断により、いかなる標的の存在下でもシグナルの発生および増幅が可能になる。
【0123】
本発明の組成物およびキットに含まれるDNAzyme、SubZyme、リボザイム、パートザイム、会合促進オリゴヌクレオチド/ポリヌクレオチドおよび/またはMNAzyme基質は、標的分析物と結合することが可能なアプタマーを含み得る。好ましいアプタマーは、複雑な合成核酸またはペプチドのライブラリーから吸着、回収および再増幅の反復工程により単離することができる短い一本鎖のDNAオリゴマーもしくはRNAオリゴマーまたはペプチドを含み得る。したがって、アミノ酸または抗生物質などの小分子からタンパク質および核酸構造にわたるほぼすべての標的分析物に対してアプタマーを作製し得る。好ましい実施形態では、アプタマーは、例えば、好ましくは進化および選択技術によって作製される核酸結合分子を含む。アプタマーは、特に限定されないが、例えば上の表1に示されるヌクレオチド類似体を含めたDNA分子、RNA分子またはその両方の組合せを含み得る。
【0124】
アプタマーの使用とリボザイムまたはDNAzymeとを組み合わせるための戦略は当該技術分野で公知である。このような分子は一般に、キメラであり、アプタマードメインとDNAzymeドメインまたはリボザイムドメインをともに含み、標的リガンドの存在により活性化される。アプタマードメインとその分析物との結合に応答してアプタザイムの機能的活性のスイッチが入り得る。アプタザイムを作製するための戦略としては、特に限定されないが、連結ドメインを介するリボザイムまたはDNAzymeとアプタマードメインの融合が挙げられる。連結ドメインは、in vitro選択法により進化させて、それが標的分析物の存在下でのみリボザイムまたはDNAzymeの作用を可能にする能力を改善することができる。また別の例示的戦略では、リボザイムまたはDNAzymeで単に構造上の役割を果たすだけの非機能性のステムループまたはヘアピン内にアプタマーを組み込む。アプタマーをDNAzymeまたはリボザイムと連結し、アプタマードメインと酵素ドメインをともに、分析物の不在下で酵素ドメインの触媒的活性を阻害するのに用いられる調節オリゴヌクレオチドと部分的にハイブリダイズさせてもよい。分析物の存在下では、アプタマーは分析物と結合し、酵素ドメインから調節オリゴヌクレオチドを遊離させ、その触媒活性を回復させることができる。この場合、分析物の存在によりDNAzymeまたはリボザイムから調節オリゴヌクレオチドが除去され、その触媒活性が回復し得る。アプタマーを用いてDNAzymeまたはリボザイムの2つ以上の成分を架橋し、それにより、酵素がその基質を修飾することが可能になるようにすることもできる。ヘミンに対するアプタマーを含み、ヘミンの存在下でペルオキシダーゼの活性を模倣し、様々な化学基質を触媒して、蛍光シグナル、化学発光シグナルおよび比色シグナルを発生させることができる独特のクラスのDNAzymeも存在する。
【0125】
アプタマーの使用とMNAzymeとを組み合わせるための戦略も当該技術分野で公知である。アプタマーと連結したMNAzyme成分を含むアプタザイムをアプタMNAzymeと呼ぶこともある。例えば、MNAzymeの少なくとも1つのパートザイムと、アプタマー(アプタ-パートザイム)およびヘアピンを形成し、したがってMNAzyme会合を阻害することが可能な相補的配列とを組み込み得る。検出する分析物または標的はアプタ-パートザイムと結合し、したがって活性なMNAzymeの会合を可能にし得る。標的分析物の不在下では、アプタ-パートザイムがヘアピン構造をとり、それが活性なMNAzymeの会合を阻害する。標的分析物の存在下では、標的分析物がアプタ-パートザイムのアプタマードメインと結合し、したがってヘアピン構造を妨害し、アプタ-パートザイムを活性なMNAzymeの会合に関与させる。
【0126】
他の実施形態では、アプタマーは、アプタマーと、ヘアピン構造を形成することが可能な相補的阻害配列とを組み込んだ会合促進オリゴヌクレオチドの一部として存在し得る。標的分析物の不在下では、会合促進オリゴヌクレオチドがヘアピン構造をとり、それにより、この成分が活性なMNAzymeを会合させる能力が阻害される。標的分析物の存在下では、標的分析物が会合促進因子のアプタマードメインと結合し、したがってヘアピン構造を妨害し、成分が触媒的に活性なMNAzymeを会合させることが可能になる。当業者には、アプタマーを1つまたは複数の会合促進分子のいずれの末端にも組み込み得ることが理解されよう。さらに、1つまたは複数のパートザイムオリゴヌクレオチド成分に複数のアプタマーを組み込むことが可能であることが理解されよう。
【0127】
さらなる実施形態では、アプタマー配列を標的分析物の存在下でのみ活性な開始アプタMNAzymeが形成される立体配置で(「アプタ-パートザイム」を形成している)パートザイムの末端に組み込み得る。この場合、検出戦略に必要とされるパートザイムとしては、標準的なパートザイム;一方の末端にアプタマーが組み込まれたパートザイムであるアプタ-パートザイム;(標的分析物の存在下で)アプタ-パートザイムおよびパートザイムの両方と結合し、活性な開始アプタMNAzymeの会合を可能にする会合促進因子;基質;ならびにアプタ-パートザイムの少なくともアプタマー配列の一部分およびパートザイム配列の基質結合アームの一部分に及ぶ領域とハイブリダイズする会合阻害剤が挙げられる。標的の不在下では、会合阻害オリゴヌクレオチドがアプタ-パートザイムと結合し、レポータープローブ基質の切断を防ぐ。標的の存在下では、標的がアプタ-パートザイムのアプタマー配列と結合し、会合阻害剤の結合を防ぎ、開始アプタMNAzymeによるMNAzyme基質との結合およびその切断を可能にする。このため、標的分析物の存在下でのみ、活性な開始アプタMNAzymeが形成されMNAzyme基質を修飾することができる。
【0128】
当業者には、パートザイムオリゴヌクレオチド(1つまたは複数)、会合促進オリゴヌクレオチドまたはMNAzyme基質を含めたいずれのオリゴヌクレオチド成分にも1つまたは複数のアプタマーを組み込み得ることも理解されよう。
【0129】
本発明の組成物およびキットの触媒核酸酵素および/またはその成分(例えば、DNAzyme、リボザイム、MNAzyme、パートザイムオリゴヌクレオチド、会合促進オリゴヌクレオチド、基質および/またはアプタザイム)は、相補的塩基対形成により他の分子(1つまたは複数)とハイブリダイズした分子複合体の成分として提供され得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、組成物およびキットは、開始因子である触媒核酸酵素および/またはスイッチの触媒核酸酵素の触媒機能に必要な補因子(例えば、二価金属イオン、例えばBa2+、Sr2+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Co2+、Mn2+、Zn2+および/またはPb2+などならびに/あるいは一価陽イオン)を除く、本明細書に記載される分子スイッチを活性化するのに必要な成分をすべて含み得る。
【0131】
SubZymeオリゴヌクレオチド
本発明の組成物およびキットは、1つまたは複数のSubZymeオリゴヌクレオチドを含み得る。本発明によるsubZymeオリゴヌクレオチドは一般に、少なくとも1つの触媒核酸またはその一部分(例えば、パートザイムオリゴヌクレオチド)と、少なくとも1つの触媒核酸基質とを含む。多数の実施形態では、subZymeオリゴヌクレオチドの触媒核酸またはその一部分は、同じSubZymeオリゴヌクレオチドの触媒核酸基質成分を触媒的に修飾することができない。
【0132】
触媒核酸またはその一部分と触媒核酸基質は、介在配列もリンカー(1つまたは複数)も用いずにsubZymeオリゴヌクレオチド上に連続的に配置され得る。したがって、それらはsubZymeオリゴヌクレオチドに沿って中断のない配列を構成し得る。
【0133】
あるいは、subZymeオリゴヌクレオチドの触媒核酸またはその一部分および触媒核酸基質は、例えば介在ヌクレオチドおよび/または当該技術分野で使用可能な任意の適切なリンカーもしくはスペーサー分子によって分離されていてよい。
【0134】
介在ヌクレオチドの数に関して特に制限はなく、2ヌクレオチド以上、3ヌクレオチド以上、4ヌクレオチド以上、5ヌクレオチド以上、6ヌクレオチド以上、11ヌクレオチド以上、16ヌクレオチド以上、21ヌクレオチド以上、2ヌクレオチド未満、3ヌクレオチド未満、4ヌクレオチド未満、5ヌクレオチド未満、10ヌクレオチド未満、15ヌクレオチド未満、20ヌクレオチド未満、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、10ヌクレオチド、15ヌクレオチドまたは20ヌクレオチドであり得る。
【0135】
リンカーまたはスペーサーの具体的な形態および特徴に関して特に制限はなく、SubZymeオリゴヌクレオチドの触媒核酸またはその一部分と触媒核酸基質とを分離する形でSubZymeオリゴヌクレオチド中に存在し得る。スペーサーおよびリンカーを用いて、核酸基質成分と触媒核酸成分とを様々な大きさで分離することができる。例としては、特に限定されないが、炭素鎖、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリA、ポリT、脱塩基フラン、脱塩基オリゴヌクレオチドまたは光切断性PCによる修飾が挙げられる。
【0136】
オリゴヌクレオチドと、それを付着させる表面との間にリンカーおよびスペーサーを組み込むこともできる。所与のSubZymeオリゴヌクレオチドと所与の表面とを分離するリンカーまたはスペーサーの具体的な形状および特徴に関して特に制限はない。距離を大きくすることによって、リンカーおよびスペーサーにより立体効果または荷電効果が軽減され得る。SubZymeオリゴヌクレオチドと固体表面との間に使用することができるリンカーおよびスペーサーの例としては、特に限定されないが、炭素、デキストラン、TEG、PEG、ポリAテール、ポリTテール、PNA、DNAまたはLNAが挙げられる。
【0137】
SubZymeオリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基および/またはリボヌクレオチド塩基ならびに/あるいはその類似体、誘導体、変異体、フラグメント、リンカー、スペーサーまたは組合せを含み得る。
【0138】
付着に関する様々な化学的性質を利用してSubZymeを表面に付着させることができる。表面へのSubZymeの不動化を可能にする様々なオリゴヌクレオチド修飾があり、特に限定されないが、以下のオリゴヌクレオチド官能基、すなわち、アミン、カルボキシル、ジスルフィド、ヒドラジド、チオール、acrydite、ビオチン、NHSエステル(アジド)、コレステロールTEG、ジゴキシゲニン、アミノオキシ、アデニル化、デスチオビオチン、ヘキシニル、マレイミド、アルキン、ジチオール、オクタジイニル、アルデヒドおよびエポキシがこれに含まれる。あるいは、SubZymeを既に表面に不動化されたオリゴヌクレオチドと連結またはハイブリダイズさせてもよい。
【0139】
SubZymeオリゴヌクレオチドは任意選択で、非限定的な例として、(例えば、反応混合物からの)その分離または精製を補助し得る、追加の分子(1つまたは複数)を含み得るか、これに付着させ得る。これらには、非限定的な例として、磁気ビーズ、ラテックスビーズ、ガラスビーズ、アガロースビーズまたはシリカビーズが含まれ得る。本発明のいくつかの実施形態では、非限定的な例として、SubZymeオリゴヌクレオチドは、10-23 DNAzyme8-17 DNAzymeの基質、または8-17 DNAzymeと10-23 DNAzymeの基質を含み得る。本発明の他の実施形態では、SubZymeオリゴヌクレオチドは、パートザイムオリゴヌクレオチドと8-17 DNAzymeの基質、またはパートザイムオリゴヌクレオチドと10-23 DNAzymeの基質を含み得る。
【0140】
subZymeオリゴヌクレオチドは任意選択で、非限定的な例として、特に限定されないが、電気化学、蛍光、比色、pH、SPR、磁気共鳴および発光を含めた検出システムを用いる検出を補助し得る、追加の分子(1つまたは複数)を含み得るか、これに付着させ得る。追加の分子の非限定的な例としては、磁気ビーズ、金粒子、銀粒子、酵素、フルオロフォア、化学基、消光剤および量子ドットが挙げられる。
【0141】
subZymeオリゴヌクレオチドは任意選択で、検出する標的に相補的な追加の配列を含み得る。好ましい実施形態では、追加の標的特異的配列は、タンパク質エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼの認識部位を形成するのに必要とされるヌクレオチドを含み得る。非限定的な例として、追加の標的特異的配列は、制限酵素の二本鎖認識部位のうちの一方の鎖を含み得る。
【0142】
本発明によるsubZymeオリゴヌクレオチド/subZymeは、触媒核酸の一部分(例えば、パートザイムオリゴヌクレオチド)を含み得る。触媒核酸の一部分は、それが由来する完全な核酸と比較して、部分的または完全な触媒作用が可能なものであり得る。あるいは、触媒核酸の一部分は、それが由来する親触媒核酸の他の部分(1つまたは複数)(例えば、別のパートザイムオリゴヌクレオチドおよび/または会合促進因子)と組み合わさるまで触媒作用が不可能なものであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、非限定的な例として、SubZymeオリゴヌクレオチドは、10-23パートザイムオリゴヌクレオチドと別の異なる10-23 DNAzymeの基質、10-23パートザイムと8-17 DNAzymeの基質、8-17パートザイムと10-23 DNAzymeの基質、または8-17パートザイムと別の異なる8-17 DNAzymeの基質を含み得る。
【0143】
エクソンクレアーゼ(exonclease)およびエンドヌクレアーゼ
本発明の組成物およびキットは、1つまたは複数のエキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼを含み得る。適切なエンドヌクレアーゼの非限定的な例としては、制限酵素、マングビーンヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼIV(大腸菌(E.coli))、RNアーゼA、RNアーゼI(大腸菌(E.coli))、RNアーゼIII(大腸菌(E.coli))またはRNアーゼH(大腸菌(E.coli))が挙げられる。適切なエキソヌクレアーゼの非限定的な例としては、エキソヌクレアーゼI(大腸菌(E.coli))、エキソヌクレアーゼIII(大腸菌(E.coli))、エキソヌクレアーゼVIIおよびT7エキソヌクレアーゼが挙げられる。エンドヌクレアーゼは、二本鎖の核酸二本鎖の両方の鎖を認識し切断する制限酵素であるか、二本鎖の核酸二本鎖を認識するが、一方の鎖のみを切断するニッキング酵素であり得る。
【0144】
オリゴヌクレオチド
本発明の組成物およびキットに含まれるオリゴヌクレオチド、例えばDNAzyme、SubZymeオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタザイム、MNAzyme、これらのそれぞれの基質およびMNAzyme成分(例えば、パートザイムオリゴヌクレオチド、会合促進オリゴヌクレオチド)などには、当業者に周知の1つまたは複数の置換、例えば類似体(例えば、表1に記載されるもの)、誘導体、修飾もしくは改変塩基、リボヌクレオチドなど、糖もしくはリン酸主鎖の改変、様々な欠失、挿入、置換、重複もしくはその他の修飾またはこれらの任意の組合せが含まれ得る。このような修飾、置換、欠失、挿入などは、オリゴヌクレオチドがその機能を保持する限り、任意の位置に施し得る。オリゴヌクレオチドの置換および修飾は、耐性が高く、特定の条件下で機能するように、または反応効率が改善されるように分子を合わせることを可能にするものであり得る。当業者には、理解されよう。DNAzyme、リボザイム、SubZymeオリゴヌクレオチドおよびその基質、MNAzymeおよびその基質ならびにMNAzyme成分(例えば、パートザイム、会合促進オリゴヌクレオチド/ポリヌクレオチド)は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかまたはその両方を含み得る。オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドを含むものであり得、いくつかの場合には、デオキシリボヌクレオチドおよび/またはその類似体からなるものであり得る。
【0145】
触媒核酸基質
本発明の組成物およびキットは、触媒核酸酵素(例えば、DNAzyme、リボザイム、アプタザイムおよび/またはMNAzymeもしくはアプタMNAzyme)による修飾が可能な基質を含み得る。
【0146】
基質は、触媒核酸酵素を含めた酵素が認識する、作用する、または修飾することが可能なデオキシリボヌクレオチド塩基もしくはリボヌクレオチド塩基またはその類似体、誘導体、変異体、フラグメントもしくは組合せの任意の一本鎖または二本鎖ポリマーであり得る。
【0147】
基質は、特に限定されないが切断または連結を含めた様々な酵素作用によって修飾され得るものであり、酵素による基質の修飾により、酵素の触媒作用を示す検出可能な効果がもたらされ得る。
【0148】
核酸酵素の基質はまた、非核酸構成要素、例えばアミノ酸、ペプチドもしくはタンパク質など、または(「New strategies in Chemical synthesis and Catalysis」,B.Pignataro in Wiley-VCH,2012の)表6.1にまとめられている任意の化学的構成要素を含み得るか、これに付着させ得る。
【0149】
基質は、酵素の触媒作用によって生じる修飾型の基質の定量化および/または検出を促進する1つまたは複数の特徴を含む、レポーター基質であり得る。レポーター基質は、溶液中に遊離させるか、例えば表面または別の分子に結合させる(または「係留する」)ことができる。レポーター基質は、例えば、フルオロフォア(消光剤などの1つまたは複数の追加の成分の有無を問わない)、放射性標識、金粒子および/または銀粒子、ビオチン(例えば、ビオチン化)あるいは化学発光標識を含めた多種多様な手段のいずれかにより標識することができる。これらの様々な標識は、触媒核酸酵素による修飾(例えば、切断)時に検出可能なシグナルを発生させる手段となり得る。
【0150】
基質は、複数の触媒核酸酵素によって認識され、触媒作用を受ける汎用性の基質であり得る。汎用性の基質は固体支持体に係留し得る。本発明の組成物およびキットに含まれる基質は、触媒核酸による認識および修飾が可能な個別の成分として提供され得る。本発明のその他の態様は、2つ以上の触媒核酸によって認識され切断され得る基質に関するものである。例として、DNAzymeの基質結合アームおよびMNAzymeのパートザイム成分の基質結合アームがともに同じ前記単一の核酸基質に相補的なものである限り、単一の核酸基質はDNAzymeおよびMNAzymeの両方により切断され得る。このような場合、DNAzymeの特異的触媒コア配列およびMNAzymeのパートザイム対の触媒コア部分が、基質内の「切断」部位での切断に適合するものであり得る。
【0151】
選択的透過バリア
本発明の組成物およびキットは、本明細書に記載される方法に使用する様々な成分を分離するための選択的透過バリア(1つまたは複数)を含み得る。選択的透過バリアは一般に、その特性により、特定のアッセイ成分を通過させ、それ以外のものは通過させない。選択的透過バリアは、本明細書に記載される方法に使用する成分を二方向に通過させ得る。
【0152】
単なる非限定的な例として、選択的透過バリアは以下に挙げるアッセイ成分、すなわち、MNAzyme、MNAzyme成分(1つまたは複数)(例えば、会合促進オリゴヌクレオチド、パートザイムオリゴヌクレオチド)、MNAzyme基質、DNAzyme、DNAzyme基質、リボザイム、リボザイム基質、SubZymeオリゴヌクレオチドのうちいずれか1つまたは複数のものと、1つまたは複数のそれ以外のアッセイ成分とを分離する役割を果たし得る。
【0153】
ある特定の実施形態では、選択的透過バリアは、異なる種類のSubZymeオリゴヌクレオチドを互いに物理的に分離する役割を果たし得る。いくつかの実施形態では、選択的透過バリアを用いて、第一のSubZymeオリゴヌクレオチドと、これと同一ではない第二のSubZymeオリゴヌクレオチドとを物理的に分離する。
【0154】
第一のSubZymeオリゴヌクレオチドは、触媒核酸酵素配列(「cat A」)と、触媒核酸酵素の基質である成分(「sub A」)とを含み得る。第二のSubZymeオリゴヌクレオチドは、触媒核酸酵素配列(「cat B」)と、触媒核酸酵素の基質である成分(「sub B」)とを含み得る。cat Aは、sub Aを触媒的に修飾する(例えば、切断する)ことができず、sub Bを触媒的に修飾する(例えば、切断する)ことができるものであり得る。cat Bは、sub Bを触媒的に修飾する(例えば、切断する)ことができないが、sub Aを触媒的に修飾する(例えば、切断する)ことができるものであり得る。
【0155】
他の実施形態では、SubZymeオリゴヌクレオチドは、触媒核酸酵素の一部分(例えば、パートザイムオリゴヌクレオチド)と、触媒核酸酵素の基質である成分とを含み得る。触媒核酸酵素の一部分は、SubZymeオリゴヌクレオチドの基質とハイブリダイズすることができないものであり得る。
【0156】
選択的透過バリアにより、特に限定されないが、電荷に基づく分離、サイズに基づく分離、形状に基づく分離、重量に基づく分離、脂質溶解性に基づく分離、分子可動性に基づく分離および/または膜内に存在する担体分子に対する親和性に基づく分離を促進する特性を含めたバリアの特性に基づくアッセイ成分の物理的分離がもたらされ得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、選択的透過バリアは、サイズ制限によってアッセイ成分の物理的分離をもたらすことができる。例えば、バリアは、特定のアッセイ成分を通過させない特定の最大サイズの細孔を備えたものであり得る。例えば、SubZymeオリゴヌクレオチドなどのアッセイ成分は、物理的特徴(例えば、自己相補性領域から生じる二次構造)を有し、かつ/または大き過ぎてバリアの細孔を通過できない実体(例えば、ビーズまたは微粒子)に付着させたものであり得る。
【0158】
他の実施形態では、選択的透過バリアは、電荷特性によってアッセイ成分の物理的分離がもたらされ得る。例えば、バリアは、特定のアッセイ成分を通過させない特定の電荷を有する細孔(例えば、イオンチャネル)を備えたものであり得る。例えば、SubZymeオリゴヌクレオチドなどのアッセイ成分は、特定の電荷を有し、かつ/または同じまたは同程度の電荷を有するバリアの細孔を通過させない特定の電荷を有する実体(例えば、ビーズ)に付着させたものであり得る。
【0159】
さらに別の実施形態では、選択的透過バリアは、脂質溶解特性によってアッセイ成分の物理的分離をもたらすことができる。例えば、バリアは、特定のアッセイ成分が疎油性である場合にそれを通過させない脂質を含むものであり得る。例えば、SubZymeオリゴヌクレオチドなどのアッセイ成分は、疎油性の要素を含み、かつ/または親油性バリアを通過させない疎油性特性を有する実体(例えば、ビーズ)に付着させたものであり得る。
【0160】
さらに別の実施形態では、選択的透過バリアは、形状制限によってアッセイ成分の物理的分離をもたらすことができる。例えば、バリアは、特定のアッセイ成分を通過させない特定の形状の細孔を備えたものであり得る。例えば、SubZymeオリゴヌクレオチドなどのアッセイ成分は、ある物理的特徴(例えば、自己相補性領域から生じる二次構造)を有し、かつ/またはバリアの細孔の通過に適合性のない形状の実体(例えば、ビーズまたは微粒子)に付着させたものであり得る。
【0161】
さらなる実施形態では、選択的透過バリアは、バリア内に存在する担体分子に対する親和性によってアッセイ成分の物理的分離をもたらすことができる。例えば、バリアは、他の成分ではなく特定のアッセイ成分をバリアに通して輸送するのを促進する担体分子を含み得る。例えば、SubZymeオリゴヌクレオチドなどのアッセイ成分は、ある物理的特徴を有し、かつ/またはバリア内に存在する担体分子への付着を促進し、それにより、subZymeオリゴヌクレオチドをバリアに通して輸送するのを促進する特性を有する実体(例えば、ビーズ)に付着させたものであり得る。
【0162】
当業者には、選択的透過バリアによるアッセイ成分の物理的分離が、特に本明細書に具体的に記載される手段に限定されず、当該技術分野で公知の任意の標準的手段によってもたらされ得ることが認識されよう。
【0163】
選択的透過バリアは、当該技術分野で公知の任意の適切な材料(1つまたは複数)でできたものであり得る。材料(1つまたは複数)は一般に、アッセイで機能する成分と適合性のあるものとなる。適切な材料の非限定的な例としては、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ニトロセルロース、再生セルロース、酢酸セルロース、ポリアミド、プロピレン、ナイロン、酸化アルミニウムまたはポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0164】
検出可能な標識
本発明の組成物およびキットに含まれる成分は、蛍光分光法、表面プラズモン共鳴、質量分光測定法、電気化学、NMR、電子スピン共鳴、偏光蛍光分光法、円二色法、イムノアッセイ、クロマトグラフィー、放射測定、測光、シンチグラフィー、電子工学的方法、UV、可視光もしくは赤外線分光測定法、酵素法またはその任意の組合せによって求められる出力シグナルを発生することができる検出可能な標識を含み得る。
【0165】
オリゴヌクレオチドに付着させたナノスケールおよび顕微鏡レベルの金粒子を用いて比色シグナルを発生させることが可能であり、この場合、近接している金粒子は青色に見え、分離すれば赤色に見える。例えば、MNAzymeまたはDNAzymeによる基質またはSubZymeの切断によって分離させ得る。オリゴヌクレオチドを分離すると蛍光が増大し得るフルオロフォアと消光色素で標識することができる。例えば、MNAzymeまたはDNAzymeによる基質またはSubZymeの切断によって分離させ得る。
【0166】
オリゴヌクレチド(oligonucletide)の一方の末端を金粒子または銀粒子で標識し、他方の末端をセンサー表面に付着させて、表面プラズモン共鳴による測定を促進し得る。例えば、付着した粒子をMNAzymeまたはDNAzymeによる基質またはSubZyme切断によってセンサー表面から遊離させることにより、表面プラズモン共鳴に検出可能なシフトを生じさせ得る。オリゴヌクレオチドの一方の末端を表面に付着させ、他方の末端を電気化学反応に関与する酵素に付着させることができる。MNAzymeまたはDNAzymeによる基質またはSubZymeの切断によって、電気化学反応に関与することができるよう酵素を表面から遊離させ得る。
【0167】
検出およびシグナル増幅の方法
本発明は、少なくとも1つの標的を検出、同定および/または定量化するための様々な方法を提供する。さらに、本発明は、これらの方法により発生させたシグナルを増幅するための様々なカスケードを提供する。
【0168】
これらの方法は本発明の組成物およびその成分を用いるものである。多くの実施形態では、これらの方法はシグナル増幅カスケードを含むものである。
【0169】
本発明による例示的アッセイ
本発明の実施形態による例示的スキームを図4に示す。このスキームでは、特定のアッセイ成分を封入し他の成分から物理的に分離する選択的透過バリアを「Tバッグ」と呼ぶ。SubZymeを用いて標的検出後のシグナルを増幅する。例示的Subzyme対を図1および2に示し、例示的Tバッグの製造工程を図3に示す。SubZyme種PA(SubZyme A-MB)およびPB(SubZyme B-MB)をともに、選択的透過バリア/Tバッグを通過できない大きさの磁気ビーズ(MB)に付着させる。SubZymeはMBに付着しているが、溶液中では自由であり、Tバッグによって画定されるアッセイの分離区画内では可動性である。反応は、透過性バリアの一方の側、Tバッグの外部にあるSubZyme A-MBと、透過性バリアのもう一方の側、Tバッグの内部にあるSubZyme B-MBとを含む。さらに、Tバッグの外部には、検出する標的およびSubZyme A-MB内の基質配列に相補的なパートザイムオリゴヌクレオチドが存在する。標的の存在下では、パートザイムオリゴヌクレオチドが整列してCat C(例えば、MNAzyme)を形成し、これがSubZyme A-MB内に存在するSub Aを切断することによりMBからCat Aが遊離し、それにより、Cat AがTバッグを通過して中に入ることが可能になる。Tバッグ内では、遊離したCat AがSubZyme B-MB内のSub Bを切断する。その結果、Cat BがMBから分離される。Cat Bは、Tバッグの内側からTバッグの外側の溶液中に自由に移動し、そこではCat BがSubZyme A-MB内のSub Aを切断し、カスケード反応を開始させる。このシナリオでは、1つの標的分子が1つのMNAzymeのパートザイムオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることにより反応を開始させることができ、それによりMNAzymeが第一のSubZymeを切断することができ、第一のSubZymeは第二のSubZymeを切断することが可能であり、第二のSubZymeは、次いでさらの多くの第一のSubZymeを切断し、交差触媒カスケード反応を開始させることが可能であり、ここでは、単一の開始事象の後、第一および第二のsubZymeの多くが切断されて多数のDNAzymeを遊離させる。
【0170】
一定時間インキュベートした後、遊離したDNAzyme(Cat AおよびCat B)から未切断のSubZyme-MBと切断されたMBフラグメントを分離することができる。図4に示されるように、例えば磁石を用いることによりこの分離を実施して、未切断のSubZyme-MBおよび切断されたMBフラグメントを上清中に存在するDNAzyme(Cat AおよびCat B)から分離することができる。このDNAzymeを、DNAzymeが切断することができる標識された基質Aおよび/または基質Bが含まれるまた別のチューブまたは区画に移し得る。DNAzyme切断によるフルオロフォアと消光剤の分離後に発生する蛍光をリアルタイムでモニターすることができる。
【0171】
図2に示されるように、好ましい実施形態は、異なる種類のDNAzymeおよび異なる種類の基質配列を組み込んだSubZyme対を含み得る。例えば、以下の発明に有効なSubZyme対は、10-23 DNAzymeと8-17基質とを含むSubZyme B(PB)とともに使用する、8-17 DNAzymeと10-23基質とを含むSubZyme A(PA);またはその逆のものを含み得る。10:23 DNAzymeと8:17 DNAzymeは切断部位に必要な特異的配列が異なるため、ある種類のDNAzymeとまた別の種類の基質とを有するSubZymeであれば、低ストリンジェンシー条件下で保管またはインキュベートしても自己切断する可能性がない。しかし、図2に示されるように、Subzyme対は交差触媒的に互いに切断することができる。SubZymeは、標識されていなくても、あるいはSubZyme切断時にシグナルを発生させ、リアルタイムで、または反応終了時にモニターすることができるよう標識されていてもよい。標識された基質をSubZyme内に使用すれば、検出する標的の存在を示すシグナルを発生するだけの機能を有するDNAzyme基質が含まれる第二のチューブまたは区画に遊離DNAzymeを移す必要がなくなる。SubZyme内に存在する基質配列(1つまたは複数)は、DNAzymeおよび/またはMNAzymeによる切断に適したものであり得る。非限定的な例として、SubZymeは、DNAzymeおよび最初にDNAzymeを分割することによって得られたMNAzymeにより切断さるものであり得る。
【0172】
カスケードの開始
当業者には、本発明のシグナル増幅カスケードを用いて、核酸および非核酸標的(例えば、タンパク質、ペプチド、分析物など)を含めた任意の標的(1つまたは複数)を検出し得ることが認識されよう。標的の存在下でのカスケード開始機序も様々なものであり得る。非限定的な例として図13を参照すると、交差触媒作用が可能な2対の例示的SubZymeが別の反応開始様式とともに示されている。ポリヌクレオチドA(PA)およびポリヌクレオチドB(PB)として示されるSubZyme対はともに、SubZymeを操作に使用することができる任意選択の磁気ビーズ(MB)に付着した状態で示されている。SubZyme A-MB(PA)は、機能ドメイン、つまり、(i)触媒核酸A(例えば8-17 DNAzyme A)、(ii)触媒核酸B(例えば10-23 DNAzyme B)によって切断可能な基質Aおよび任意選択で(iii)リンカー配列(図13A)または標的核酸に相補的であり制限酵素もしくはニッキング酵素のエンドヌクレアーゼ認識部位の一方の鎖をさらに含む配列(図13B)を含む。SubZyme B-MB(PB)は、機能ドメイン、つまり、(i)触媒核酸B(例えば、10:23 DNAzyme B)、(ii)触媒核酸A(例えば、8-17 DNAzyme A)によって切断可能な基質Bおよび任意選択で(iii)リンカー配列を含む(図13Aおよび13B)。
【0173】
図13Aに示されるスキームでは、標的核酸が存在することにより、Sub A Aを切断することが可能な触媒核酸C(MNAzyme C)が形成される。PA内のSub Aが切断されることによってCat Aが遊離し、次いで、これが選択的透過バリアを通過することが可能になり、PB内のSub Bを切断してCat Bを遊離させる。当業者であれば、図13AにはMNAzyme(Cat C)によるPA切断によって可動性支持体からCat Aが遊離することが示されているが、MNAzymeによるPAの切断がこれ以外のPAの特性(1つまたは複数)、特に限定されないが、いずれも選択的透過バリアを透過する能力を与え得る電荷、サイズ、形状、重量、脂溶解性などを含めた特性を変化させ得ることが認識されよう。Cat Bは次いで、選択的透過バリアを通過することが可能になり、また別のPA内にある新たなSub Aを切断し、さらに多くのCat Aを遊離させ、それにより交差触媒によるシグナル増幅カスケードを開始させる。
【0174】
図13Bの例示的スキームでは、標的核酸がPA内の特異的配列(iii)とハイブリダイズし(最上部の図を参照されたい)し、それにより、触媒酵素D(例えば、制限酵素(RE)またはニッキング酵素(NE)などのヌクレアーゼ)の認識/切断部位を形成する二本鎖の二本鎖領域が生じる。標的PA二本鎖の両鎖の切断にはREを使用することが可能であるのに対し、標的PA二本鎖のPA鎖の切断にはNEを使用することが可能である。PA内にあり標的がハイブリダイズする配列(iii)は、形成される切断部位での触媒酵素Dによる切断によってCat Aが遊離するよう(図のように)DNAzyme A基質配列とMBの間に位置し得る。当業者には、例えば、形成される切断部位での触媒酵素Dによる切断によってCat Aが遊離するように、PA内にあり標的がハイブリダイズする配列(iii)がSub A配列(ii)とCatの間に位置する場合、あるいは、PA内にあり標的がハイブリダイズする配列(iii)がCat AとMBの間に位置する場合など、その他の配置を用いることも可能であることが認識されよう。当業者には、触媒酵素Dの切断部位が形成されることにより、標的核酸の成分がPAのSub A配列の一部または全部とハイブリダイズすることも、PAのCat A配列の一部または全部とハイブリダイズすることも妨げられることはないことが認識されよう。PAが触媒酵素Dによって切断されることにより、それが選択的透過バリアを透過することが可能になるように修飾され得る(図13Bに可動性支持体からのCat Aの遊離として示されている)。当業者であれば、図13Bでは触媒酵素D(ここではエンドヌクレアーゼ)によるPAの切断によってCat Aが可動性支持体から遊離することが示されているが、PAの切断がこれ以外のPAの特性1つまたは複数)、特に限定されないが、いずれも選択的透過バリアを透過する能力を与え得る電荷、サイズ、形状、重量、脂質溶解性などを含めた特性を変化させ得ることが認識されよう。遊離したCat Aは膜を透過し、PB内のSub Bと接触して切断する。PB内のSub Bの切断によりCat Bが遊離し、次いでこれが選択的透過バリアを通過することが可能になり、また別のPA内のSub Aを切断してさらに多くにCat Aを遊離させ、それにより交差触媒によるシグナル増幅カスケードを開始させる。
【0175】
当業者には、制限酵素およびそのサブタイプニッキング酵素に加えて、標的とPA内の任意選択の標的特異的領域とのハイブリダイゼーション後にPAを切断することが可能な酵素がほかにも多数存在することが認識されよう。非限定的な例として、PAが標的特異的領域内に例えば4つ以上のリボヌクレオチドを含む場合、リボヌクレアーゼH(RNアーゼH)を用いてカスケードを開始させることが可能である。RNアーゼHは、RNA/DNA二本鎖内のRNAの切断を触媒することができる非配列特異的エンドクレアーゼ(endoclease)酵素である。標的SubZymeハイブリッドを形成させることにより、RNアーゼH酵素によって切断可能なRNA/DNA二本鎖を生じさせる一方で、SubZymeおよび標的の他の一本鎖領域はインタクトにしておくことが可能である。
【0176】
2つ目の非限定的な例として、RNAまたssDNA標的の存在下では、二本鎖特異的ヌクレアーゼ(DSN)を用いてカスケードを開始させることが可能である。DSNは、DNA-RNA二本鎖および二本鎖DNA内のDNAの切断に対して強い選択性を示すが、一本鎖DNA、一本鎖RNAおよび二本鎖RNAに対しては本質的に不活性なヌクレアーゼ酵素である。標的とSubZymeのハイブリッドを形成させることにより、DSN酵素によって切断可能なRNA/DNA二本鎖を生じさせる一方で、SubZymeおよび標的の他の一本鎖領域はインタクトにしておくことが可能である。
【0177】
当業者には、制限酵素およびそのサブタイプニッキング酵素などのエンドヌクレアーゼに加えて、標的とのハイブリダイゼーション後にPAポリヌクレオチドを切断するのに使用し得る酵素がほかにも多数存在することが認識されよう。非限定的な例として、エキソヌクレアーゼIIIまたはT7などのエキソヌクレアーゼを用いてカスケードを開始させることができる。エキソヌクレアーゼIII酵素は、平滑末端もしくは陥凹末端またはDNA二本鎖の3’末端からヌクレオチドを除去するが、一本鎖DNAに対しては活性を示さない。T7エキソヌクレアーゼは、DNA二本鎖またはDNA/RNA二本鎖の5’末端からヌクレオチドを除去する。標的subZymeハイブリッドを形成させることにより、エキソヌクレアーゼIIIまたはT7によって切断可能な二本鎖を生じさせる一方で、subZymeの他の一本鎖領域をインタクトにしておくことが可能である。
【0178】
さらなる例示的実施形態
図22に示される例示的スキームでは、透過性バリア(「Tバッグ」と呼ぶ)およびSubZymeを用いて標的検出後のシグナルを増幅する。この戦略は、2つの異なる種類のSubZymeを用いる点で図4に示されるスキームとは異なる。PA(SubZyme A)は、Cat BおよびCat C(10-23 MNAzyme)によって切断可能な基質(Sub A)と連結したCat A(8-17 DNAzyme A)を含む。PB(SubZyme B1)は、Cat A(8-17 DNAzyme A)によって切断される基質(Sub B)とコンジュゲートしたCat B1(10:23パートザイムB1)を含む。PCはCat B2(10:23パートザイムB2)を含む。チューブには、MB(磁気ビーズ)に付着したPA(SubZyme A-MB)、PC、会合促進AF-B3、選択した標的に対するパートザイムC1とC2およびTバッグ内のMBに付着したPB(SubZyme B2-MB)が入っている。標的の存在下では、パートザイムC1とC2が整列し開始MNAzyme(Cat C)を形成する。MNAzymeがPA内のSub Aを切断してCat A(8-17 Dz)をMBから分離し、それによりCat AがTバッグの壁を通過することが可能になり、そこでPB内のSub Bを切断し、それによりMBからパートザイムCat B1を分離することができる。次にCat B1が自由にTバッグの内側から外側の溶液中に移動し、そこでCat B2(PC)および会合促進AF-B3とハイブリダイズして活性なフィードバックMNAzyme(Cat B)を形成することができる。Cat BはPA内のSub Aを切断し、カスケードを継続することができる。一定時間インキュベートした後、磁石を用いて未切断のSubZyme A-MBおよび切断されたMBフラグメントを保持し、それにより、自由なDNAzyme A、パートザイムB1およびB2、PC、AF-B3、パートザイムC1およびC2ならびに標的を含んだ上清を標識された基質Aおよび/またはSub Bの入った別のチューブに移すことができる。標識された基質のDNAzymeおよび/またはMNAzyme切断によりフルオロフォアと消光剤が分離した後に発生する蛍光をリアルタイムでモニターすることができる。
【0179】
図23に示される例示的スキームでは、透過性バリア(「Tバッグ」と呼ぶ)およびSubZymeを用いて標的検出後のシグナルを増幅する。この戦略は、2つの異なる種類のSubZymeを用いる点で図4に示されるスキームとは異なる。PA(SubZyme A)は、Cat BおよびCat C(10-23 MNAzyme)によって切断可能な基質(Sub A)と連結したCat A(8-17 DNAzyme A)を含む。PB(SubZyme B1)は、Cat A(8-17 DNAzyme A)によって切断可能なSub B(8-17基質)とコンジュゲートしたCat B1(10:23パートザイムB1)を含む。PCは、Cat Aによって切断可能な同じSub BとコンジュゲートしたCat B2(10:23パートザイムB2)を含む。PA、PBおよびPCは任意選択で、ビーズ、例えば図のように磁気ビーズ(MB)とコンジュゲートされている。チューブには、PA(SubZyme A-MB);PC(SubZyme B2-MB)、会合促進AF-B3、溶液中で自由な選択した標的に対するパートザイムC1とC2および図3Bに概説されるように構築したTバッグ内のPB(SubZyme B1-MB)が入っている。標的の存在下では、パートザイムC1とC2が整列し、開始MNAzyme C(Cat C)を形成する。MNAzyme CがPA内のSub Aを切断してCat AをMBから分離し、それによりCat AがTバッグの壁を通過することが可能になり、そこでPB内のSub Bを切断し、それによりMBからCat B1(パートザイムB1)を分離することができる。Cat Aは、PCのSub Bも切断してCat B2(パートザイムB2)をMBから遊離させることができる。次にパートザイムB1が自由にTバッグの内側から外側の溶液中に移動し、そこでパートザイムB2および会合促進AF-B3とハイブリダイズして、活性なフィードバックMNAzyme(Cat B)を形成することができる。Cat Bは、PA内のSub Aを切断しカスケードを継続することができる。一定時間インキュベートした後、磁石を用いて未切断のSubZyme-MBおよび切断されたMBフラグメントを保持し、それにより、自由なDNAzyme A(Cat A)、パートザイムC1、C2、B1およびB2、AF-B3ならびに標的を含んだ上清を標識されたSub Aおよび/またはSub Bの入った別のチューブに移すことができる。標識された基質のDNAzymeおよび/またはMNAzyme切断によりフルオロフォアと消光剤が分離した後に発生する蛍光をリアルタイムでモニターすることができる。
【0180】
図27に示される例示的スキームでは、透過性バリア(「Tバッグ」と呼ぶ)およびSubZymeを用いて標的検出後のシグナルを増幅する。この戦略は、最初のインキュベーション時に反応チューブ内に蛍光標識した基質(Sub A-FQ)が存在し、それにより反応が単一の段階に簡略化され、遊離したDNAzymeを第二のチューブに移す必要がなくなるという点で、図4図22および図23に示されるスキームとは異なる。PA(SubZyme A)は、Cat BおよびCat Cによって切断可能なSub Aと連結したCat Aを含む。PB(SubZyme B1)は、Cat Aによって切断可能なSub BとコンジュゲートしたCat B1(パートザイムB1)を含む。PC(SubZyme B2)は、Cat Aによって切断可能な同じSub BとコンジュゲートしたCat B2(パートザイムB2)を含む。PA、PBおよびPCは、ビーズ、例えば図のように磁気ビーズ(MB)とコンジュゲートされている。Sub A-FQは、フルオロフォアで5’標識し消光剤で3’標識したSub Aを含み、Cat BおよびCat Cによって切断可能である。透過性バリア(Tバッグ)を用いてPB(Cat B1)をPC(Cat B2)から分離することにより、会合促進因子 B3(AF-B3)との活性なMNAzyme B(Cat B)の形成が阻害されるため、Sub A-FQとハイブリダイズすることができない。これにより反応中にSub A-FQが存在し、インキュベーション段階と検出段階を単一の段階にまとめることが可能になる。Sub A-FQは、標的の存在下で開始MNAzyme(Cat C)によって、またPBの切断時にMNAzyme B(Cat B)によってのみ切断され、Tバッグ内からCat B2を遊離させることができる。チューブには、Sub A-FQ、PA、PC、AF-B3、選択した標的に対するパートザイムC1とC2および図3Bに概説されるように構築したTバッグ内のPBが入っている。標的の存在下では、パートザイムC1とC2が整列し、開始MNAzyme C(Cat C)を形成する。MNAzyme CがPA内のSub Aを切断してCat AをMBから分離し、それによりCat AがTバッグの壁を通過することが可能になり、そこでPB内のSub Bを切断し、それによりMBからCat B1を分離することができる。Cat Aは、PCのSub Bも切断してCat B2をMBから遊離させることができる。次にCat B1が自由にTバッグの内側から外側の溶液中に移動し、そこでCat B2およびAF-B3とハイブリダイズして、活性なCat Bを形成することができる。Cat BはPA内のSub Aを切断しカスケードを継続することができる。インキュベーション時、Cat BおよびCat C切断によりSub A-FQ内のフルオロフォアと消光剤が分離した後に発生する蛍光を測定することができる。別の実施形態では、PBまたはPCをビーズに付着させる代わりに、会合促進因子、例えばCat BのAF-B3成分をビーズ、例えばMBに付着させてもよい。
【0181】
複数の酵素を用いて複数の標的を解析する方法
当業者には、本明細書に提供される方法を用いて、1つの反応で単一の標的を検出しても、単一の反応で複数の標的を検出してもよいことが認識されよう。複数の標的を検出する場合、アッセイおよび検出対象に応じて1つまたは複数のMNAzymeを使用し得る。例えば、複数の関連する構造、例えば、(MNAzymeによって認識される)重要な配列は共通であり、例えば長さまたは重要な配列の外側にある配列のみが異なる1群の配列などを検出する場合、単一のMNAzymeで十分であると思われる。重要な配列を有する任意の配列を検出することが可能である。わずか1個のヌクレオチドが異なる関連配列を検出するか、場合によっては大きく異なる標的を検出する場合であって、それぞれの有無を明らかにすることが望まれる場合、複数のMNAzymeが有用であることが企図される。
【0182】
イオン化合物の検出
また別の戦略では、試料中(例えば、環境試料または生体試料中)のイオン化合物の不在を明らかにする、イオン化合物の存在を検出する、および/またはイオン化合物を定量化する方法が提供される。イオン化合物は一価イオンまたは二価イオンであり得る。イオン化合物は、触媒核酸酵素の活性に必要とされる金属イオン補因子であり得る。
【0183】
この方法は、本明細書に記載される分子複合体(分子スイッチ)と、スイッチを活性化させ、それにより検出可能なシグナルを発生させることが可能な少なくとも1つの追加の成分とを準備することを含む。追加の成分の機能的活性は、被験試料中のイオン化合物の存在に依存するものであり得る。例えば、この方法は、イオン化合物を含有することが疑われる試料を、ブロッカーオリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、それにより機能的に不活性化される第一の触媒核酸酵素と、開始触媒核酸酵素(例えば、DNAzyme、リボザイム、会合MNAzymeまたはMNAzymeに会合することが可能な成分)とを含む分子スイッチと接触させることを含み得る。
【0184】
イオン化合物はさらに、複合体の第一の触媒核酸酵素の触媒作用に必要とされる補因子であり得る。
【0185】
したがって、この方法では、触媒作用に特定の金属イオン補因子を必要とする触媒核酸(例えば、DNAzyme、リボザイム、アプタザイムおよび/またはMNAzyme)を用いて、試料中(例えば、環境試料または生体試料中)の金属イオンの存在を検出する、または金属イオンの不在を明らかにし得る。例えば、この方法は、DNAzymeを介して水などの環境試料中のPb2+を検出するのを促進し得る。
【0186】
アプタマー
当業者には、アプタマーを用いて本明細書に記載される方法を実施してもよく、前記アプタマーは、核酸以外の標的を含めた標的の検出、同定および/または定量化を促進し得るものであり得ることが容易に理解されよう。
【0187】
MNAzymeを用いて非核酸実体を含めた標的を検出する方法が企図される。このような方法では、1つまたは複数のリガンドを認識する能力を有する核酸、タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドまたはその組合せを含み得るアプタマーを使用し得る。アプタマーは、標的リガンド、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドもしくは核酸、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、細胞、ウイルス、細菌、古細菌、真菌、抗体、代謝産物、病原体、毒素、汚染物質、毒物、生体全体、小分子、ポリマー、金属イオン、金属塩、プリオンまたはその任意の誘導体、一部分もしくは組合せ、あるいはその他の任意の実体と結合し得る。
【0188】
本明細書の好ましいアプタマーは、複雑な合成核酸またペプチドのライブラリーから吸着、回収および再増幅の反復工程により単離することができる短い一本鎖のDNAオリゴマーもしくはRNAオリゴマーまたはペプチドを含み得る。したがって、アミノ酸または抗生物質などの小分子からタンパク質および核酸構造にわたるほぼすべての標的/リガンドに対してアプタマーを作製し得る。いくつかの実施形態では、アプタマーは、例えば、好ましくは進化および選択技術によって作製される核酸結合分子を含む。アプタマーは、特に限定されないが、例えば上の表1によるヌクレオチド類似体を含めたDNA分子もしくはRNA分子またはその両方の組合せを含み得る。
【0189】
当業者には、DNAzyme、リボザイムまたはいずれかのMNAzyme成分にアプタマーを組み込み得ることが理解されよう。アプタマーと結合したDNAzymeおよびリボザイムは、当該技術分野ではアプタザイムとして知られている。このようなアプタザイムは、そのアプタマー成分に対して親和性を有するリガンドの存在によって、その触媒作用がオンまたはオフになり得る。さらに、パートザイムオリゴヌクレオチド成分のうちの1つまたは複数のものに複数のアプタマーを組み込むことができることが理解されよう。
【0190】
さらなる例示的実施形態では、アプタマー配列を標的分析物の存在下でのみ活性なMNAzymeが形成される立体配置でパートザイム(アプタ-パートザイム)の末端に組み込み得る。この場合、MNAzyme検出戦略のためのパートザイムとしては、標準的なパートザイム;一方の末端にアプタマーが組み込まれたパートザイムであるアプタ-パートザイム;(標的の存在下で)アプタ-パートザイムおよびパートザイムの両方を結合し、活性なMNAzymeの会合を可能にする会合促進因子;基質;ならびにアプタ-パートザイムの少なくともアプタマー配列の一部分およびパートザイム配列の一部分に及ぶ領域とハイブリダイズする会合阻害剤が挙げられる。標的の不在下では、会合阻害剤がアプタ-パートザイムと結合し、それによりレポータープローブ基質の結合(および切断)を遮断する。標的の存在下では、標的がアプタ-パートザイムのアプタマー配列と結合し、会合阻害剤の結合を防ぎ、MNAzyme基質の結合および切断を可能にする。このため、標的の存在下でのみ、活性なMNAzymeが形成されMNAzyme基質を修飾することができる。
【0191】
不溶性の支持体を用いる方法
本発明の方法では一般に、subZyme、DNAzyme、MNAzyme成分(基質、パートザイムまたは会合促進因子/標的)などの1つまたは複数の反応成分を付着させる不溶性の支持体を使用し得ることも理解されるべきである。例えば、MNAzymeを用いて標的を検出する方法であって、反応成分(例えば、SubZyme、DNAzyme、MNAzymeまたはその成分(1つまたは複数))を支持体に係留し得る方法が本明細書で企図される。支持体は、反応成分を保持し、それを反応混合物のバルク中での自由な移動から排除する不溶性の材料またはマトリックスであり得る。あるいは、支持体は、反応成分を保持するが、それが別の表面に固定されることがないため、別の方法で反応混合物中での反応成分の移動を可能にする不溶性の材料またはマトリックスであり得る。触媒核酸酵素、基質およびその他の成分を支持体/表面に固定化するのではなく、移動性の実体、例えばビーズ上に不動化させるシグナル増幅法を用いることには利点がある。例えば、ビーズは体積に対する表面積比が大きいため、係留する成分の表面密度を向上させることが可能になる。その他の利点としては、(i)拡散を速めることによる反応速度の増大および(ii)最終的に試薬のコストを下げる反応体積の削減を促進し得る小型化が挙げられる。さらに、ビーズには、その生産および装置内への組込みの点で高い実用性がある。当業者には、マイクロアレイに使用するのに便利なビーズおよび反応条件に適合性のあるその他の材料を含めた様々な形態の多種多様なマトリックス、ポリマーなどから支持体を選択し得ることが理解されよう。ある特定の実施形態では、支持体は、プラスチックビーズもしくはプラスチックウエハなどのプラスチック材料、金属材料、磁性材料または特定のアッセイを実施するウェルもしくはチューブの材料であり得る。ある特定の実施形態では、支持体はマイクロ担体またはナノ担体であり得る。ある特定の実施形態では、支持体はコードされたものであり得る。
【0192】
方法の最適化
当業者には、標的の検出、同定および/または定量化を増強するため、様々な実験パラメータを用いて本明細書に記載される方法を最適化し得ることが容易に理解されよう。最適化する具体的な実験パラメータおよびこのような最適化のレベルは、用いる具体的方法ならびに検出、同定および/または定量化しようとする具体的な標的によって決まる。このようなパラメータとしては、特に限定されないが、時間、温度、pH、塩および緩衝剤の濃度および属性、オリゴヌクレオチド、補因子、界面活性剤、陽イオンおよび特に限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、EDTA、ATP、グリセロールを含めたその他の試薬の濃度、MNAzyme、SubZyme、DNAzyme、基質の核酸成分の相補性の長さ、GC含有量および融点(Tm)が挙げられる。
【0193】
いくつかの実施形態、例えば、特定の核酸配列を検出する上記の方法では、MNAzyme成分と、配列変異を含むまたは含まない標的核酸との結合を識別できるよう、その方法を実施する温度を含めた実験パラメータを最適化し得る。このような方法を実施し得る温度は、約20℃~約96℃、約20℃~約75℃、20℃~約60℃または約20~約55℃の範囲内にあり得る。
【0194】
ある特定の実施形態では、本発明の方法を実施するのに最適化した反応を提供する。このように最適化した反応は、検出するシグナルを、最適化していない反応の最大10%、20%または30%増大させる。より好ましい反応条件は、検出されるシグナルを少なくとも35%または40%、好ましくは最大50%以上改善し得る。他の実施形態では、最適化した反応は、触媒作用を50%超、最大で66%、75%または場合によっては100%増大させ得る。さらに別の実施形態では、完全に最適化した反応方法によりシグナル検出の100%、200%または場合によっては300%の増大が得られる。他の好ましい反応条件では、触媒作用を、最適化していない反応条件で実施する方法より最大1000%以上改善することができる。本明細書に提供される方法を最適化するのに極めて好ましい反応条件として、特定の二価陽イオンを含めるというものがある。ほとんどの核酸酵素およびタンパク質核酸修飾酵素の触媒作用が、濃度依存性に二価陽イオンの濃度に影響され得る。好ましい最適化した反応は、Ba2+、Sr2+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、CO2+、Mn2+、Zn2+およびPb2+の1つまたは複数のものに最適化したものである。
【0195】
キット
本発明は、本明細書に開示される方法を実施するキットも提供する。本発明の方法を実施するキットは通常、その方法を実施するのに必要なあらゆる試薬を含む。
【0196】
キットは、本発明による任意の組成物またはその成分を含み得る。単なる非限定的な例として、キットは、触媒核酸酵素(例えば、MNAzymeおよび/またはそのパートザイム成分、DNAzyme、SubZyme、アプタザイムならびに/あるいはリボザイム)を含み得る。キットは任意選択で、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼを含み得る。
【0197】
キットは、本明細書で定義される細分化キットまたは組合せキットであり得る。細分化キットとは、別個の容器に納められた試薬を含むものであり、小型のガラス製容器、プラスチック製容器またはプラスチック製もしくは紙製の小板を含み得る。このような容器は、試料と試薬の相互汚染を避けながら試薬をある区画から別の区画を効率的に移し、各容器の薬剤または溶液をある区画から別の区画に定量的方法で添加することを可能にするものであり得る。このようなキットは、被験試料を入れる容器、アッセイに使用する試薬の入った容器、洗浄試薬の入った容器および検出試薬の入った容器も含み得る。本発明のキットは通常、キットの構成要素を用いて適切な方法を実施するための指示書も含む。本発明のキットおよび方法を、例えば特に限定されないが、リアルタイムPCR機器、分光光度計、電気化学プラットフォームまたは表面プラズモン共鳴プラットフォームを含めた自動解析装置およびシステムとともに用い得る。
【0198】
例えば、キットは、第一の容器と第二の容器とを含み得る。第一の容器は、触媒核酸および/またはその一部分(例えば、MNAzyme、DNAzyme、パートザイムオリゴヌクレオチドおよび/またはSubZyme)を含み得る。第二の容器は、触媒核酸基質ならびに/あるいは第一の容器の内容物とは異なる種類(1つまたは複数)の触媒核酸および/またはその一部分および/または異なる種類のSubZymeを含み得る。キットは、本明細書で定義される細分化キットまたは組合せキットであり得る。
【0199】
キットは、例えば本発明の方法の実施に必要とされる洗浄試薬および/またはその他の試薬の入った1つまたは複数の容器も含み得る。
【0200】
異なる標的の検出、同定または定量化という用途には、本発明の単一のキットを適用すること可能であり得るか、あるいは、例えば各標的に特異的な試薬の入った異なるキットが必要とされ得る。本発明の方法およびキットは、任意の実体を検出、同定または定量化するのが望ましい任意の状況に適用される。
【実施例
【0201】
これより、以下の具体例を参照することにより本発明をさらに詳細に説明するが、これらの具体例は、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
【0202】
実施例1:材料および方法
配列およびアノテーション
以下の実施例では、多くの場合、配列識別番号(配列番号)により様々なヌクレオチド配列に言及する。以下の実施例で用いる具体的な配列を下の表2に記載する。
【0203】
【表2-1】
【表2-2】
NB:オリゴヌクレオチドの配列は5’から3’に向かって記載されており、大文字はDNA塩基を表し、小文字はRNA塩基を表す(rG、rUおよびrAはDNAzyme切断部位に対応するRNA塩基を表す)。iFluorTはチミンと結合した内部フルオレセインを表し、5TexRd-XNはテキサスレッド標識を表し、RHO101NはAtto Rho 101フルオロフォアを表し、56-FAMは5’FAMフルオロフォアを表す。ZENは内部消光剤分子を表し、3IABkFQおよび3IAbRQSpは3’Iowa Black消光剤部分を表す。52Bioは5’二重ビオチン部分を表し、3BioTEGはトリエチレングリコールリンカーとコンジュゲートした3’ビオチン官能基を表し、3AmMC6Tは3’アミノモディファー(modifer)を表し、3Phosは3’リン酸部分を表す。
【0204】
試薬
ストレプトアビジン官能化Dynabeads(M-270)をInvitrogen社から購入した。製造業者により記載されているストレプトアビジン官能化Dynabeads(M-270)の特徴および特性は以下の通りである:超常磁性親水性のビーズ表面、直径2.8μm、サイズ分布(CV<3%)、ブロッキングタンパク質不使用、等電点pH4.5、高電荷(pH7で-50mV)、鉄含有量14%、高塩溶液中でのビーズ凝集性が低い。
【0205】
ストレプトアビジン官能化BioMAG Plusビーズ(1.5μm)、ProMagビーズ(1μm)、ProMag HPビーズ(3μm)およびCOMPEL磁気ビーズ(6μmおよび8μm)をBangs Laboratories社から購入した。製造業者により記載されているこれらのビーズの特徴および特性は以下の通りである:球状、ポリマーマトリックスに分散させた酸化鉄結晶、磁鉄鉱含有量はそれぞれ26.5重量%、16重量%、90重量%超、5.7重量%および重量%、密度はそれぞれ1.8g/cm、1.4g/cm、2.5g/cm、1.1g/cmおよび1.1g/cm。ビーズは、5.0mg/mLの固体として提供されるBioMAG Plusビーズを除いて、いずれも1%の固体(w/v)として提供されるものである。
【0206】
NaOH(5M)をAustralian Chemical Reagents(ACR)社から購入した。トリス緩衝液(pH8.0)、NaCl(5M)、MgCl(1M)および無ヌクレアーゼ水をAmbion社から購入した。10×PCR緩衝液IIをApplied Biosystems社から購入した。ニトロセルロース膜をBio-Rad社から購入し、ポリエーテルスルホン膜およびポリカーボネート膜をSterlitech社から購入し、両面粘着テープをSellotape社から購入した。
【0207】
ヒトゲノムDNAをPromega社から購入した(193ng/μL)。合成オリゴヌクレオチドをいずれもIntegrated DNA Technologies(IDT)社から購入し、無ヌクレアーゼ水を用い20μMストック溶液として調製した。下に記載する通りに標準的な組織培養技術を用いて、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)(CT)(血清型D)TNA試料をin vitroで得た。
【0208】
10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)(Sigma Aldrich社)、100mg/mLストレプトマイシン(Gibco(登録商標)、Invitrogen社)、50mg/mLゲンタマイシン(Life Technologies社製のGibco(登録商標))および20mMグルタミン(Sigma Aldrich社)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma Aldrich社)でヒト上皮細胞系(HEp-2)(ATCC(登録商標)CCL-23(商標))を5%CO、37℃でインキュベートして増殖させた。
【0209】
クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)をT75フラスコ(Nunc(商標)、Thermo Fisher社)に存在するHEp-2単層上に感染多重度(MOI)1で接種した。遠心分離を用いた接種を500g、温度28℃で30分間実施することにより感染を完了させ、次いでインキュベートした。感染後(PI)4時間、DMEMを交換し1mg/mLのシクロヘキサミド(Sigma Aldrich社)を添加し、回収まで37℃、5%COで再びインキュベートした。PI24時間の対数増殖期にセルスクレーパーおよびスクロース-リン酸-グルタミン酸(SPG)緩衝液(250mMスクロース、10nMリン酸ナトリウムおよび5mM L-グルタミン酸)を用いて細胞を手作業で回収した。回収した材料をのちの処理まで-80℃で保管した。QIAamp MinElute Virus Spin Kit(QIAgen社)を標準的プロトコルに従って用い、全核酸試料(TNA)を抽出した。
【0210】
SubZymeBead複合体(SubZyme_Bead)の調製
下の実施例に記載するアッセイでは、以下の2種類のプロトコルのうちの1つを用いてビーズに付着させたSubZyme A~K(配列番号1~12)を用いた。実施例2~7では付着法1(3A)を用い、実施例10~11および実施例13~20では付着法2(3B)を用いた。SubZyme配列がビーズに付着したものである場合、その名称には「-Bead」が含まれる。SubZyme配列が磁気ビーズに付着したものである場合、その名称には「-MB」が含まれる(例えば、磁気ビーズに付着したSubZyme Aは「SubZyme A-MB」と称される)。
【0211】
付着法1:磁気ビーズ(MB)が均一に分散するようM270 Dynabead保管バイアルをボルテックスして十分にかき混ぜた。Dynabeadsを「洗浄緩衝液A」(100mM NaOH、50mM NaCl)100μLで2回、それぞれ3分間洗浄し、「洗浄緩衝液B」(100mM NaOH)100μLで1回、3分間洗浄することにより3回洗浄して保存剤を除去し、あらゆるリボヌクレアーゼを変性させた。高特異的ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を用いて、SubZyme AおよびSubZyme BをMB上に不動化させた。洗浄したMBを、「インキュベーション緩衝液」(2M NaCl、10mMトリス-HCl、pH7.5)と5μMのSubZyme AまたはSubZyme Bとを含む最終体積50μLで1時間、室温にてインキュベートした。インキュベーション前とインキュベーション後に分光光度計(Trinean Xpose)を用いてA260でインキュベーション混合物を測定し不動化効率を求めた。インキュベーション溶液を取り出して捨て、SubZyme-MB複合体を十分に洗浄して過剰のSubZyme分子を除去した。55℃の「インキュベーション緩衝液」200μLを用いた5分間の洗浄を3回、次いで、55℃の「反応緩衝液」(15mM MgCl、1×PCR緩衝液II)200μLを用いた5分間の洗浄を2回、連続して実施した。
【0212】
最後の洗浄溶液を収集し、未結合のSubZyme鎖が完全に除去されるよう相補的な基質200nMとインキュベートした。官能化ビーズを用いて、付着したSubZyme-MB複合体の濃度を推定し、残ったDNAzyme成分が触媒的に活性であることを確認することにより、品質管理試験を実施した。最後に、SubZyme-MBを冷蔵庫に入れ乾燥状態で5℃にて保管した。
【0213】
付着法2:ビーズが均一に分散するようビーズ保管バイアルをボルテックスして十分にかき混ぜた。緩衝液C(1.5M NaCl、10mMトリス-HCl、pH7.5)150μLを用いてビーズを3回洗浄して保存剤を除去した。高特異的ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を用いて、SubZymeをビーズ上に不動化させた。洗浄したビーズを、「緩衝液C」(1.5M NaCl、10mMトリス-HCl、pH7.5)と150nMのSubZymeとを含有する最終体積50μLで5分間、室温にてインキュベートした。インキュベーション溶液を取り出して捨て、SubZyme-ビーズ複合体を十分に洗浄して過剰のSubZyme分子を除去した。SubZyme-ビーズを緩衝液C(1.5M NaCl、10mMトリス-HCl、pH7.5)400μLで1回洗浄し、次いで、無ヌクレアーゼ水400μLで5回洗浄し、55℃の「反応緩衝液」(45mM MgCl、1×PCR緩衝液II)150μLで2回洗浄した。最後に、SubZyme-ビーズを無ヌクレアーゼ水20μLに再懸濁させ、冷蔵庫で5℃にて保管した。磁気ラックを用いて磁気ビーズを洗浄して磁気ビーズを保持し、上清を捨てた。シリカビーズ溶液を10,000rpmで3分間遠心分離することにより非磁気ビーズを洗浄してビーズをペレット化した後、上清を取り出して捨てた。
【0214】
透過性バリア(「Tバッグ」)の調製
下の実施例に記載する一部のアッセイでは、以下の2種類のプロトコルのうちの1つを用いて調製した透過性バリア(Tバッグ)を用いた。実施例2~7ではTバッグ法1(3A)を用い、実施例10~20ではTバッグ法2(3B)を用いた。
【0215】
Tバッグ法1:一部の透過性バリア(Tバッグ)は、図3Aに示される略図に従い、以下の材料、すなわち、ニトロセルロース膜(0.45μm)、両面粘着テープおよびSubZyme-MBを用いて手作業で調製した。図3Aに概説するように、ニトロセルロースのシート上に粘着テープ4片を配置して小さいウェルを作製した。SubZyme-MB複合体を「不動化緩衝液」10μLで戻し、軽くたたいて再分散させた。SubZyme-MB複合体溶液のアリコート1μLを壁の内側に加え、室温で2分間乾燥させた。ウェルを小さい円形のニトロセルロースディスク(直径約7mm)で覆い、鋏でTバッグをトリミングした。最後に、ディスク状のTバッグを2mLのエッペンドルフチューブの中に入れて保管した。
【0216】
Tバッグ法2:一部の透過性バリア(Tバッグ)は、図3Bに示される略図に従い、以下の材料、すなわち、ポリカーボネート材料またはポリエーテルスルホン材料(PES)でできた膜、両面粘着テープおよびSubZyme-ビーズを用いて手作業で調製した。最初に、両面粘着テープを粘着側が折り畳まれ非粘着性のライナーが外表面に曝されるように二つ折りにした。穴開けパンチを用いて、折り畳んだ粘着テープに直径6mmの小さいウェルの穴を開けた。片側のライナーを取り除いた後、粘着テープのウェルを膜片の上に置き、圧力を加えた後、粘着テープのもう片側の保護ライナーを取り除いた。SubZyme-ビーズ複合体のアリコート(0.5μL)をウェルの内側に加え、室温で約30秒間乾燥させた。ウェルをまた別の膜片で覆い、鋏でTバッグを円形のディスクにトリミングした。最後に、ディスク状のTバッグを2mLのエッペンドルフチューブの中に入れて保管した。
【0217】
実施例2:合成ヒトTFRC遺伝子ホモログの検出
この実験では、図4に概説される戦略を用いて、ヒトTFRC遺伝子に対する標的オリゴヌクレオチドホモログの存在下で標的を検出し、シグナルを増幅した。付着法1(実施例1)を用いてSubZyme-MBを調製し、Tバッグ法1(実施例1;図3A)を用いてTバッグを調製した。得られた結果を図5Aおよび5Bに示す。
【0218】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme A)(配列番号1)、PB(SubZyme B)(配列番号2)、基質A(配列番号13)、基質B(配列番号14)、TFRCパートザイムA1(配列番号15)、TFRCパートザイムB1(配列番号16)および標的TFRC Oligo(配列番号17)が含まれる。配列表に配列が記載されている。図4を参照すると、SubZyme AはPAであり、SubZyme BはPBであり、パートザイムA1およびB1はTFRC標的上で会合すると開始MNAzyme(Cat C)を形成する。
【0219】
各反応には、0.2μM TFRCパートザイムA1、0.2μM TFRCパートザイムB1、1×PCR緩衝液II、SubZyme A-MB 5.6μL、SubZyme B-MBを含むTバッグ1つおよび15mM MgClが最終体積125μLで含まれている。反応は、最終濃度1pM、100fM、1fMおよび500aMの標的TFRCオリゴを含むか、標的を含まない(無DNA対照)かのいずれかであった。反応を2mLの反応チューブ(エッペンドルフ社)中、加熱ブロック上で15分間(図5A)または20分間(図5B)、断続的に手で上下を反転させてかき混ぜながら50℃でインキュベートした。
【0220】
最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグを取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme-MBおよび切断された部分的基質-MBフラグメントと、上清中に存在する切断された「自由な」DNAzyme1および2とを分離した。上清の48μLのアリコート2つを96ウェルプレート(Bio-Rad社)の別個のウェルに移した。これらのウェルそれぞれに二重標識した等モル濃度の基質Aおよび基質Bを含有する基質混合物2μLを加えた(図5Aおよび5Bの最終濃度はそれぞれ0.15μMおよび0.2μM)。ストリップキャップ(Bio-Rad社)を用いてプレートを密閉し、短時間遠心分離した後、蛍光の変化をリアルタイムで45分間モニターした。
【0221】
図5Aに示される結果には、1pMのOligo AF-TFRC(細い二重線)、100fMのAF-TFRC(破線)および無標的(太い黒線)から得られたシグナルが示されている。リアルタイムモニタリングの10分後の位置にある縦線は、25分間の総反応時間(すなわち、15分間のTバッグインキュベーションと10分間のリアルタイムモニタリング)に相当し、1pMおよび100fMの標的の検出に要した時間を示している。図5Bに示される反応は、20分間インキュベートしたものであり、標的を含まない(太い黒線)か、100fMのAF-TFRC(細い二重線)、1fMのAF-TFRC(点線)または0.5fMのAF-TFRC(破線)のいずれかを含むものである。この実験では、得られた検出限界は100fMであり、これより低い標的濃度(1fMおよび500aM)では、バックグラウンド(無標的での反応)を上回るシグナルは得られなかった。
【0222】
以上の結果は以下のシナリオと一致する。標的オリゴヌクレオチドの存在下では、パートザイムが整列しMNAzymeを形成する。MNAzymeが溶液中のSubZyme A-MBを切断し、8-17 DNAzymeをMBの表面から分離させる。次いで、「自由な」8-17 DNAzymeがTバッグの選択的透過膜を通って移動できるようになり、そこでSubZyme B-MBを切断し、10-23 DNAzymeをMBの表面から分離させる。次いで、10-23 DNAzymeが自由にTバッグの透過膜から出て溶液中に移動し、そこでSubZyme A-MBを切断し、カスケードを継続することができる。一定時間インキュベートした後、磁石を用いて、未切断のSubZyme-MBおよび切断された部分的基質-MBフラグメントと、切断された「自由な」DNAzymeとを分離する。
【0223】
CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)を用いてテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で5秒毎に計201サイクルまたは150サイクルにわたって取得を実施した(それぞれ図5Aおよび5B)。図5Aおよび5Bの結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものである。図5は、オリゴヌクレオチド標的の例示的漸増を示している。この実験では、濃度1pMおよび100fMは容易に検出されたが、濃度1fMおよび500aMではバックグラウンド(無標的)を上回るシグナルが得られなかった。
【0224】
実施例3:合成ヒトTFRC遺伝子ホモログの検出およびオフターゲット配列の解析
この実験では、図4に概説される戦略を用いて、最初にヒトTFRC遺伝子に相同な標的オリゴヌクレオチドの存在下で標的を検出してシグナルを増幅し、次に、オフターゲット配列(カルバペナム耐性細菌およびクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)にそれぞれ相同なBla_KPC遺伝子およびCTcds2_2遺伝子)を解析して反応の特異性を検討した。付着法1(実施例1)を用いてSubZyme-MBを調製し、Tバッグ法1(実施例1;図3A)を用いてTバッグを調製した。この実験の結果を図6に示す。
【0225】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme A)(配列番号1)、PB(SubZyme B)(配列番号2)、基質A(配列番号13)、基質B(配列番号14)、TFRCパートザイムA1(配列番号15)、TFRCパートザイムB1(配列番号16)、標的TFRC Oligo(配列番号17)、オフターゲットOligo Bla_KPC(配列番号18)およびオフターゲットOligo AF-CTcds2_2(配列番号19)が含まれる。配列表に配列が記載されている。図4を参照すると、SubZyme AはPAであり、SubZyme BはPBであり、パートザイムA1およびB1はTFRC標的上で会合すると開始MNAzyme(Cat C)を形成する。
【0226】
各反応には、0.2μM TFRCパートザイムA1、0.2μM TFRCパートザイムB1、1×PCR緩衝液II、2.5μLのSubZyme A-MB、SubZyme B-MBを含む1×Tバッグおよび15mM MgClが最終体積125μLで含まれていた。反応にはさらに、1pMの標的TFRC Oligo、1nMのオフターゲットOligo Bla_KPCまたは1nMのオフターゲットOligo CTcds2_2が含まれているか、DNA標的が含まれていないかのいずれかであった。反応を2mLの反応チューブ中、加熱ブロック上で20分間、断続的に手で上下を反転させてかき混ぜながら50℃でインキュベートした。最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグを取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme-MBおよび切断された部分的基質-MBフラグメントと、切断された「自由な」DNAzymeとを分離した。上清の48μLのアリコート2つを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、各ウェルに等モル濃度の基質Aおよび基質B(最終濃度0.15μM)を含有する基質混合物2μLを加えた。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。プレートをCFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)に設置し、50℃の一定温度で5秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。テキサスレッドのチャンネルの蛍光をリアルタイムでモニターした。図6に示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものである。
【0227】
図6の結果は、無標的対照(黒色の実線)、1pMのマッチするTFRC標的(細い二重線)を含有する反応および1nMのオフターゲットOligo Bla-KPCオリゴ(点線)または1nMのオフターゲットOligo CT_CDS(破線)を含有する2つの反応を含む4種類の反応を示している。
【0228】
図6に示される結果から、Tバッグシグナル増幅反応は特異性が高く、マッチする核酸配列(標的会合促進因子)とともに形成されるMNAzymeの存在下でのみ誘発されることがわかる。この実験では、ヒトゲノムDNA(TFRC遺伝子)を検出するよう設計したTバッグアッセイに細菌遺伝子(Bla-KPCおよびCt-Cds2)と相同な高濃度の合成オリゴヌクレオチドを加えた。結果から、細菌オリゴヌクレオチドの添加によってカスケードが誘発されることはなく、バックグラウンドシグナル(無標的対照)を上回るシグナルは発生しないことがわかる。
【0229】
実施例4:異なる標的配列の検出へのアッセイの適合
この実験では、図4に概説される戦略を任意の核酸標的の検出に容易に適合させ得ることがわかった。実施例1(3A)に記載される通りに、付着法1を用いてSubZyme-MBを調製し、Tバッグ法1を用いてTバッグを調製した。図4を参照すると、SubZyme AはPAであり、SubZyme BはPBであり、パートザイムA1およびB1はTFRC標的上で会合すると開始MNAzyme(Cat C)を形成する。
【0230】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme A)(配列番号1)、PB(SubZyme B)(配列番号2)、基質A(配列番号13)、基質B(配列番号14)、OXAパートザイムA(配列番号20)、OXAパートザイムB(配列番号21)および標的OXA Oligo(配列番号22)が含まれる。配列表に配列が記載されている。
【0231】
各反応には、0.2μM OXAパートザイムA、0.2μM OXAパートザイムB、1×PCR緩衝液II、2.45μLのSubZyme A-MB、SubZyme-MBを含む1×Tバッグおよび15mM MgClが最終体積125μLで含まれていた。反応を2mLの反応チューブ中、加熱ブロック上で20分間、断続的に手で上下を反転させてかき混ぜながら50℃でインキュベートした。反応には、10pMの標的OXA Oligoが含まれているか、DNAが含まれていないかのいずれかであった。
【0232】
最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグをチューブから取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme A-MBおよび切断された部分的基質-MBフラグメントと、切断され溶液中で自由になったDNAzymeとを分離した。上清の48μLのアリコート2つを96ウェルプレートの別個のウェルに移し、各ウェルに等モル濃度の基質Aおよび基質B(最終濃度0.2μM)を含有する基質2μLを加えた。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で5秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。図7に示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものであり、OXA標的の存在下での強いシグナルを示している。この実験で、実施例3でTFRCを検出したプロトコルに施した唯一の変更が、TFRCではなくOXAに特異的な標的結合アームを有するMNAzymeを使用したことであることから、SubZymeを用いる増幅カスケードが任意の標的核酸の検出に汎用できるものであることがわかる。
【0233】
実施例5:ヒト血清存在下でのヒトゲノムDNAのヒトTFRC遺伝子検出
この実験では、図4に概説される戦略を用いて、ヒトゲノムDNA内にヒトTFRC遺伝子の存在下で標的を検出し、シグナルを増幅した。さらに、10%ヒト血清の存在が反応に影響を及ぼすかどうかを明らかにすることを目的とした。付着法1(実施例1)を用いてSubZyme-MBを調製し、Tバッグ法1(実施例1)を用いてTバッグを調製した。図4を参照すると、SubZyme AはPAであり、SubZyme BはPBであり、パートザイムA1およびB1はTFRC標的上で会合すると開始MNAzyme(Cat C)を形成する。
【0234】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme A)(配列番号1)、PB(SubZyme B)(配列番号2)、基質A(配列番号13)、基質B(配列番号14)、TFRCパートザイムA1(配列番号15)およびTFRCパートザイムB1(配列番号16)が含まれる。配列表に配列が記載されている。
【0235】
各反応には、0.2μM TFRCパートザイムA1、0.2μM TFRCパートザイムB1、1×PCR緩衝液II、1μLのSubZyme A-MB、SubZyme B-MBを含む1×Tバッグおよび5mM MgClが最終体積70μLで含まれていた。反応には、95℃で2分間熱変性させたゲノムDNA 772ngも含まれていた。予め70℃で5分間加熱してあらゆるリボヌクレアーゼを変性させたヒト血清7μLの不在下(図8Aの反応)または存在下(図8Bの反応)で反応を実施した。
【0236】
最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグをチューブから取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme A-MBおよび部分的な切断基質A-MBフラグメントと、切断され溶液中で自由になったDNAzymeとを分離した。各反応の48μLの上清のアリコート1つを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、次いで、等モル濃度の基質Aおよび基質B(最終濃度0.2μM)を含有する基質2μLと混合し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に111サイクルにわたって取得を実施した。
【0237】
図8Aに示される結果から、この方法によって約223,500コピーの遺伝子(2×10の遺伝子コピー)に相当するヒトゲノムDNA772ngにヒトTFRC遺伝子(実線)を検出することが可能であることがわかる。シグナルには無gDNA対照(破線)と十分な差がみられる。10%血清が含まれていた反応(図8B)は、血清の不在下で実施した反応とほぼ同じであり、この方法が血清の混入に耐え得るものであることが示唆された。
【0238】
実施例6:3種類のパートザイムを用いたヒトゲノムDNAのヒトTFRC遺伝子検出
この実験では、図4に概説される戦略を用いて、ヒトゲノムDNA中に存在するヒトTFRC遺伝子から標的を検出し、シグナルを増幅した。この実施例では、TFRC遺伝子の異なる領域で会合する3種類のMNAzyme(6種類のパートザイム)を用いて反応を誘発した。実施例1に記載した通りに、付着法1を用いてSubZyme-MBを調製し、Tバッグ法1を用いてTバッグを調製した。図4を参照すると、SubZyme AはPAであり、SubZyme BはPBであり、パートザイムA1およびB1はTFRC標的上で会合すると開始MNAzyme(Cat C)を形成する。パートザイムA2およびB2はTFRC標的上で会合すると第二の開始MNAzyme(Cat E)を形成し、パートザイムA3およびB3はTFRC標的上で会合すると第三の開始MNAzyme(Cat F)を形成する。
【0239】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme A)(配列番号1)、PB(SubZyme B)(配列番号2)、基質A(配列番号13)、基質B(配列番号14)、TFRCパートザイムA1(配列番号15)、TFRCパートザイムB1(配列番号16)、TFRCパートザイムA2(配列番号23)、TFRCパートザイムB2(配列番号24)、TFRCパートザイムA3(配列番号25)およびTFRCパートザイムB3(配列番号26)が含まれる。配列表に配列が記載されている。
【0240】
反応には、0.2μM TFRCパートザイムA1、0.2μM TFRCパートザイムB1、0.2μM TFRCパートザイムA2、0.2μM TFRCパートザイムB2、0.2μM TFRCパートザイムA3、0.2μM TFRCパートザイムB3、1×PCR緩衝液II、1μLのSubZyme A-MB、SubZyme B-MBを含む1×Tバッグおよび15mM MgClが最終体積70μLで含まれていた。反応には、反応に加える前に95℃で2分間変性を実施したヒトゲノムDNAも含まれているか、含まれていなかった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で20分間、断続的に手で上下を反転させてかき混ぜながら50℃でインキュベートした。
【0241】
最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグをチューブから取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme A-MBおよび切断された部分的基質A-MBフラグメントと、溶液中で自由になったDNAzymeとを分離した。上清の48μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、等モル濃度の基質Aおよび基質B(最終濃度0.2μM)を含有する基質2μLと混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に120サイクルにわたって取得を実施した。
【0242】
図9に示される結果は、Tバッグ形式でシグナル増幅を用いてヒトゲノムDNAのヒトTFRC遺伝子を検出した結果を示している。実験はヒトゲノムDNA(280,000または2.8×10の遺伝子コピー)の存在下(実線)または不在下(点線)で実施した。
【0243】
実施例7:ヒトゲノムDNAのヒトTFRC遺伝子の検出
この実験では、図4に概説される戦略を用いて、最初にヒトTFRC遺伝子の存在下で標的を検出し、シグナルを増幅した。実施例1に記載した通りに、付着法1を用いてSubZyme-MBを調製し、Tバッグ法1を用いてTバッグを調製した。図4を参照すると、SubZyme AはPAであり、SubZyme BはPBであり、パートザイムA1およびB1はTFRC標的上で会合すると開始MNAzyme(Cat C)を形成する。
【0244】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme A)(配列番号1)、PB(SubZyme B)(配列番号2)、基質A(配列番号13)、基質B(配列番号14)、TFRCパートザイムA1(配列番号15)およびTFRCパートザイムB1(配列番号16)が含まれる。配列表に配列が記載されている。
【0245】
各反応には、0.2μM TFRCパートザイムA1、0.2μM TFRCパートザイムB1、1×PCR緩衝液II、2.5μLのSubZyme A-MB、SubZyme B-MBを含む1×Tバッグおよび15mM MgClが最終体積125μLで含まれている。反応エーテルには、ゲノムDNAが含まれていないか、あるいは95℃で2分間熱変性させたヒトゲノムDNA965ngまたは579ngが含まれていた。反応を2mLの反応チューブ中、加熱ブロック上で20分間、断続的に手で上下を反転させてかき混ぜながら50℃でインキュベートした。実験は、965ng(実線)もしくは579ng(破線)のヒトゲノムDNAの存在下、またはヒトゲノムDNAの不在下(点線)で実施した。
【0246】
最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグをチューブから取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme A-MBおよび切断された部分的基質A-MBフラグメントと、溶液中で自由になったDNAzymeとを分離した。上清の48μLのアリコート2つを96ウェルプレート(Bio-Rad社)の別個のウェルに移し、等モル濃度の基質Aおよび基質B(最終濃度0.2μM)を含有する基質2μLと混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で5秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものである。図10は、Tバッグ形式でシグナル増幅を用いたこのヒトゲノムDNAの例示的漸増を示している。この実験では、濃度270,000コピーおよび168,000コピーのTFRC遺伝子がバックグラウンドシグナル(無標的)を上回って検出された。
【0247】
実施例8:8-17触媒核酸と10-23触媒核酸の組合せによる安定性の改善
この実験では、2種類の例示的SubZymeの長期安定性を比較した。SubZyme Aは、8-17触媒核酸成分と10-23触媒核酸基質成分とからである。SubZyme Cは、10-23触媒核酸成分と10-23触媒核酸基質成分とからなる。得られた結果を図11に示す。
【0248】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme A)(配列番号1)、PA(SubZyme C)(配列番号3)、TFRCパートザイムA1(配列番号15)、TFRCパートザイムB1(配列番号16)、標的TFRC Oligo(配列番号17)、標的TFRC Oligo 4(配列番号27)およびDNAzyme A(配列番号28)が含まれる。配列表に配列が記載されている。
【0249】
SubZyme Cは10-23触媒核酸成分と10-23触媒核酸基質成分とからなり、基質成分は内部フルオレセインと2つの内部ZEN Quencher部分とを含む。反応A、B、CおよびDには、0.2μM TFRCパートザイムA1、0.2μM TFRCパートザイムB1、0.2μM SubZyme C、1×PCR緩衝液IIおよび25mM MgClが最終反応体積20μLで含まれている。いずれの反応もBio-Rad(登録商標)CFX96サーモサイクラーで52℃にて二重反復で実施し、FAMチャンネルで蛍光を測定し、反応AおよびBについては計201サイクル、反応CおよびDについては200サイクルにわたって、5秒毎に取得を実施した(スキャンモード:SYBR/FAMのみ)。反応AおよびCには標的TFRC Oligoが含まれていない。反応Bには1581pg(5nM)の標的TFRC Oligo 4が含まれ、反応Dには512pg(2nM)の標的TFRC Oligoが含まれている。
【0250】
SubZyme Aは8-17触媒核酸成分と10-23触媒核酸基質成分とからなり、基質成分は内部フルオレセインと2つの内部ZEN Quencher部分とを含む。反応E、F、GおよびHには、0.2μM SubZyme A、1×PCR緩衝液IIおよび25mM MgClが最終反応体積20μLで含まれている。いずれの反応もBio-Rad(登録商標)CFX96サーモサイクラーで50℃にて二重反復で実施し、FAMチャンネルで蛍光シグナルを測定し、5秒毎に計201サイクルにわたって取得を実施した(スキャンモード:全チャンネル)。反応EおよびGには開始DNAzymeが一切含まれておらず、反応FおよびHにはそれぞれ503pg(2.5nM)の開始DNAzymeが含まれている。
【0251】
反応AおよびBの結果を図11Aに示し、これらは、SubZyme Cオリゴヌクレオチドを戻した直後に実施したインキュベーションでの10-23MNAzymeによるSubZyme Cの基質成分の標的依存性の切断を示している。反応Bでの切断事象によって内部フルオロフォアと消光剤の物理的分離が起こり、蛍光の経時的増大がみられる。反応Aでは切断事象はみられず、蛍光の経時的増大は最小限にとどまっている。図11Bに示される結果は、SubZyme Cを-20℃で43日間保管した後も、その基質成分が標的依存性に切断されたことを示している。反応CおよびDでは、保管期間中のSubZyme Cの自己切断および/または分解を示すFAMシグナルの経時的増大がみられる。図11に示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものである。
【0252】
反応EおよびFの結果を図11Cに示し、これらは、SubZyme Aオリゴヌクレオチドを戻した直後に実施したインキュベーションでの10-23 DNAzymeによるSubZyme Aの基質成分の切断を示している。反応Fでの切断事象によって内部フルオロフォアと消光剤の物理的分離が起こり、FAMシグナルの経時的増大がみられる。反応Eでは切断事象はみられず、FAMシグナルの経時的増大は最小限にとどまっている。図11Dに示される結果は、SubZyme Aを-20℃で5か月にわたって保管した後も、その基質成分がDNAzymeによって切断されたことを示している。反応GおよびHでは、それぞれ反応EおよびFと同程度のシグナルがみられた。このことは、SubZyme Aが保管期間中に分解も自己切断もしなかったことを示している。この安定性の改善は、8-17触媒核酸成分と10-23触媒核酸成分とを含む設計によるものであると考えられる。図11に示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものである。
【0253】
実施例9:SubZymeの平面マイクロアレイスライド上への不動化
以下の実施例では、SubZymeを平面状(不動性)の表面に係留する際に直面するが、特に限定されないが磁気ビーズを含めた可動性の三次元表面にSubZymeを係留する際には明らかではなかったいくつかの問題点に注目する。この実験では、スライドガラス上に不動化させた後のSubZymeの活性をモニターする。不動化させたSubZyme(反応B)の活性を係留していない(自由な)DNAzyme(反応A)と比較し、得られた結果を図12に示す。
【0254】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、SubZyme D(配列番号4)、基質C(配列番号29)およびDNAzyme B(配列番号30)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。
【0255】
Stralis-Paveseら(2011),Nat Protoc.2011;6(5):609-24に記載されている洗浄方法に従って洗浄したブランクアルデヒドスライドを用いて対照反応(反応A)を実施した。同じくStralis-Paveseら(2011)Nature Protocols,6(5),609-624に記載されている方法を用いてSubZyme Dで官能化したVSS-25 Vantage Silyated Aldehydeスライド上で試験反応(反応B)を実施した。各反応には、0.4μM基質C、0.02%Tween-20、25mM MgClおよび1×PCR緩衝液IIが最終体積25μLで含まれている。反応Aには、SubZyme Dの触媒核酸成分に相同な50nMのDNAzyme Dが含まれていた。いずれの反応もスライド上に置いたHybriwell付着チャンバ(Grace Bio-Labs社、611204)内で実施した。スライドを54℃に設定した加熱ブロック上でインキュベートした。30分間のインキュベーションの前と後にLeica蛍光顕微鏡を以下の設定;GFP2発光、PMT Gain設定3.5および露出時間59.7秒で用いて蛍光を測定した。Image J解析ソフトウェアを用いて画像を処理し、ここでは、8ビット緑色チャンネルを分離し、RGB値を測定した。その画像を図12Aおよび図12Bに示す。図12Cには相対RGB値をプロットし、この図では、「インキュベーション後」のRGB値から「インキュベーション前」のRGB値が減算されている。
【0256】
図12Aに示される結果は、対照DNAzymeと基質を54℃でインキュベートする前には最小の蛍光が観察され、30分間のインキュベーション後には強い傾向が発生したことを示している。図12Bに示される結果は、不動化させたSubZyme Dを含むスライドでは30分間のインキュベーション後も顕著な蛍光の増大はみられなかったことを示している。不動化させたSubZymeは、平面状の表面に十分なSubZymeが係留されなかった、かつ/またはSubZymeを平面状のガラス表面に不動化させると触媒活性がなくなるという理由を含めたいくつかの理由により、基質を加水分解することができないものと思われる。
【0257】
実施例10:ニッキングエンドヌクレアーゼを用いた開始の第一段階の実証
この実験では、図13Bに概説される戦略を用いて、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子に相同な合成オリゴヌクレオチド標的の存在下で標的を検出し、シグナルを増幅した。この実施例では、MNAzymeに代わる生化学的トリガーとしてニッキングエンドヌクレアーゼNt.BstNBIを用いて反応を誘発した。目的とする標的に相補的であるとともにニッキングエンドヌクレアーゼのニッキング部位を含む標的特異的配列を含むようSubZymeを設計した。
【0258】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme E)(配列番号5)、基質D(配列番号31)および標的ompA Oligo 1(配列番号32)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。SubZyme Eを実施例1の付着法2に記載した通りに磁気ビーズに付着させる(SubZyme E-MB)。
【0259】
いずれの反応にも、1×NEB緩衝液3.1、5mM MgClおよび0.5μLのSubZyme E-MBが最終体積55μLで含まれていた。反応Aには、4単位のNt.BstNBIと2nMの標的ompA oligo 1が含まれていた。反応Bには、2nMの標的ompA oligo 1が含まれ、Nt.BstNBIは含まれていなかった。反応Cには、4単位のNt.BstNBIが含まれ、標的ompA oligo 1は含まれていなかった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で20分間、55℃でインキュベートした。最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、試料を短時間遠心分離した。反応溶液の48μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、0.2μM(最終濃度)の基質Dを含有する基質2μLと混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でFAMのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。
【0260】
図14に示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものである。ompA標的およびNt.BstNBIの存在下ではFAMのチャンネルの強いシグナルが明白であった。Nt.BstNBIおよび/またはompA標的の不在下ではシグナルは検出されなかった。このことは、標的とSubZymeが結合してNt.BstNB1に対する二本鎖制限酵素認識部位が上手く形成され、Nt.BstNBIがSubZyme鎖の切断を触媒することが可能になり、それによりビーズから活性な8-17 DNAzymeが遊離したことを示している。ompA標的の不在下でもNt.BstNBIの不在下でもシグナルは発生せず、標的が誘導するDNAzymeの遊離にはその両方が必要であることが確認された。標的鎖はニッキングエンドヌクレアーゼによって切断されることがないため、依然として再利用されて他のSubZymeとハイブリダイズし、それによりさらにDNAzymeを遊離することが可能である。このことは、シグナル発生を増強し標的検出感度を増大させる機序となり得る。結果から、MNAzymeおよびニッキングエンドヌクレアーゼなどの制限酵素を含めた様々な異なる生化学的トリガーを使用して、Subzymeを用いて表面結合DNAzymeを遊離させる増幅カスケードを開始させることが可能であることがわかる。
【0261】
実施例11:DNAzyme-SubZyme、MBおよびポリカーボネート膜の空間的閉込めおよび拡散
この実施例では、図15に概説される戦略を用いて、SubZyme-ビーズが様々な孔径の半透膜を通って拡散するか、そのような半透膜に保持される能力の間の関係を明らかにした。次に、この戦略を用いて、自由なDNAzymeが膜を通ってTバッグ内に拡散し、次いでSubZyme内の基質領域を切断して表面結合DNAzymeを遊離させる能力を明らかにした。さらに、自由になったDNAzymeがTバッグから出て拡散し、蛍光基質を切断してシグナルを発生させることができるかどうかを明らかにすることも目的とした。PB(SubZyme F)を実施例1の付着法2に記載した通りに磁気ビーズに付着させる(SubZyme F-MB)。図3Bに記載される略図に従い、ポリカーボネート膜を用いて、Tバッグの構築に用いる透過性バリアを手作業で調製した。様々なビーズ径(2.8μm、6μmおよび8μm)のMBおよび2種類の異なる膜孔径(0.8μmおよび2.0μm)を用いて反応を実施した。
【0262】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、SubZyme F(配列番号6)、基質E(配列番号33)および開始DNAzyme A(配列番号28)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。
【0263】
反応には1×PCR緩衝液II、45mM MgClが最終体積60μLで含まれていた。反応には、SubZyme F-MBが含まれるポリカーボネート材料でできた1×Tバッグ(0.8μmまたは2μm)が含まれていた。反応には、2nMのDNAzyme Aが含まれているか、含まれていないかのいずれかであった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で20分間、50℃でインキュベートした。最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、試料を短時間遠心分離した。反応溶液の48μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、基質E 2μL(最終濃度0.2μM)と混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。
【0264】
図16A~16Fに示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものであり、開始DNAzymeの不在下ではシグナルがほとんどみられない。このことは、磁気ビーズの直径が膜の孔径より大きい場合、SubZymeは磁気ビーズに係留されている間、Tバッグ膜を通って拡散することができないことを示している。開始DNAzyme Aの存在下では強いシグナルが観察されたことから、開始DNAzymeはTバッグ内に拡散し、Subzyme-MBを切断し、表面結合DNAzyme Bを遊離させることができることがわかる。このことからさらに、遊離したDNAzyme BはTバッグから出て拡散することが可能であり、上清とともに新たなチューブに移すと、遊離したDNAzyme Bは蛍光標識基質分子Eを切断することができることがわかる。様々な磁気ビーズ径(2.8μm、6μmおよび8μm)および様々な孔径(0.8μmおよび2.0μm)で同様の結果がみられる。
【0265】
実施例12:PES膜によりSubZymeおよびDNAzymeの活性を増強することができる
以下の実施例では、Tバッグの構築への様々な膜材料の使用を実験的に試験して、材料そのものが反応構成要素の触媒活性に影響を及ぼし得るかどうかを明らかにすることの重要性に注目する。さらに、この実施例では、ポリエーテルスルホン(PES)などの一部の膜材料の存在がDNAzymeの触媒活性を増強し得ることを示す。
【0266】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme G)(配列番号7)、基質F(配列番号34)およびDNAzyme C(配列番号35)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。この実施例では、PA(SubZyme G)を実施例1の付着法2に記載した通りに磁気ビーズに付着させる(SubZyme G-MB)。
【0267】
反応には、1×PCR緩衝液II、1μL SubZyme G-MB、45mM MgClが最終体積60μLで含まれており、かつ2nMのDNAzyme Cが含まれていないか、含まれているかのいずれかであった。反応は、2×3mmのPES膜のディスクを含むか、含まないかのいずれかであり、2mLチューブ中、加熱ブロック上で20分間、50℃でインキュベートした。最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、試料を短時間遠心分離した。磁気ラックを用いて磁気ビーズ(未切断のSubZyme G-MBおよび切断されたSubZyme G-MBのMB-部分的基質)を保持し、反応溶液の45μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、基質F 5μL(最終濃度0.2μM)と混合した。PES膜を捨てた。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。いずれの反応も二重反復で実施し、その結果を図17に示す。
【0268】
この実験では、DNAzymeのSubZyme-MB切断反応にPES膜を加えることにより、DNAzymeの活性が増強されるように思われる。このことは、PES膜を含む反応の方が膜を含まない反応よりも蛍光の経時的増大が速いという形で観察された。このことは、蛍光基質が磁気ビーズの表面から遊離すると、DNAzymeによる蛍光基質の切断が速くなることを示している。
【0269】
実施例13:代替的Tバッグ材料の実証
この実験では、図15に概説される戦略を用いて、Tバッグの構築に代替的半透膜としてポリエーテルスルホン(PES)を用いるTバッグ概念の普遍性を明らかにした。さらに、その目的を、PES膜を用いてSubZyme-MBの閉込め、DNAzymeの拡散および表面結合DNAzymeの遊離が可能であるかどうかを明らかにすることとした。PB(SubZyme F)を実施例1の付着法2に記載した通りに磁気ビーズに付着させる(SubZyme F-MB)。図3Bに示される略図に従い、PES膜を用いてTバッグを手作業で調製し、様々な膜孔径(0.65μm、0.8μmおよび1.2μm)を用いて反応を実施した。
【0270】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PB(SubZyme F)(配列番号6)、基質E(配列番号33)およびDNAzyme A(配列番号28)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。
【0271】
反応には1×PCR緩衝液II、45mM MgClが最終体積60μLで含まれていた。反応には、0.6μLのSubZyme F-MBが含まれているPES材料でできた1×Tバッグ(0.65μm、0.8μmまたは1.2μm)が含まれていた。反応には、2nMのDNAzyme Aが含まれているか、含まれていないかのいずれかであった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で20分間、50℃でインキュベートした。最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、試料を短時間遠心分離した。反応溶液の48μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、基質E 2μL(最終濃度0.2μM)と混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。
【0272】
図18A~18Cに示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものであり、開始DNAzyme Aの不在下ではシグナルがほとんどみられない。このことは、SubZymeが、磁気ビーズ(Dynabeads M270 2.8μm)に係留されている間はPES膜を通って拡散することができないことを示している。開始DNAzyme Aの存在下では強いシグナルがみられ、開始DNAzymeがPES膜でできたTバッグの中に拡散し、次いでSubZymeを切断し、表面結合DNAzymeを遊離させることができることがわかる。また、遊離したDNAzymeがPES Tバッグから出て拡散し、蛍光標識基質分子を切断することが可能であることもわかる。孔径が異なる(0.65μm、0.8μmおよび1.2μm)膜で同様の結果が観察され、孔径がSubZyme-MBの直径より小さいものである限り、孔径はそれほど重要ではないことがわかる。図18に示される結果は、SubZyme-MBを封入し他の反応成分から物理的に分離するのにPESなどの代替膜を用いることができることを示している。
【0273】
実施例14:クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子ホモログの検出およびオフターゲット配列の解析
この実験では、図4に概説される戦略を用いて、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子に相同な合成オリゴヌクレオチド標的の存在下で標的を検出し、シグナルを増幅して、この戦略が任意の核酸標的の検出に容易に適合され得ることを示す。第二の目的は、オフターゲット配列(ヒト遺伝子に相同なPPIA遺伝子およびp273遺伝子)を解析して反応の特異性を検討することである。PA(SubZyme H)およびPB(SubZyme I)を実施例1の付着法2に記載した通りに磁気ビーズに付着させた(SubZyme H-MBおよびSubZyme I-MB)。図3Bに示される略図に従い、ポリカーボネート膜(0.8μm)を用いてTバッグを手作業で調製した。得られた結果を図19に示す。図4を参照すると、SubZyme HはPAであり、SubZyme IはPBであり、ompAパートザイムA1およびB1はompA標的上で会合すると開始MNAzyme(Cat C)を形成する。
【0274】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme H)(配列番号8)、PB(SubZyme I)(配列番号9)、基質G(配列番号36)、基質H(配列番号37)、ompAパートザイムA1(配列番号38)、ompAパートザイムB1(配列番号39)、標的ompA Oligo 2(配列番号40)、オフターゲットOligo p273(配列番号41)およびオフターゲットOligo PPIA(配列番号42)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。
【0275】
反応には、5nM ompAパートザイムA1、5nM ompAパートザイムB1、1×PCR緩衝液II、0.5μLのSubZyme H-MB、0.5μLのSubZyme I-MBを含む1×Tバッグおよび45mM MgClが最終体積70μLで含まれていた。Tバッグは孔径0.8μmのポリカーボネート膜製のものとした。反応には、最終濃度100fM、10fMおよび1fMの標的ompA oligo 2、1nMのオフターゲットOligo p273または1nMのオフターゲットOligo PPIAが含まれているか、標的が含まれていない(無DNA対照)かのいずれかであった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で20分間、50℃でインキュベートした。最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグをチューブから取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme H-MBおよび切断された部分的基質H-MBフラグメントと、溶液中で自由になったDNAzymeとを分離した。上清の48μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、等モル濃度の基質Gおよび基質H(最終濃度0.2μM)を含有する基質混合物2μLと混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でFAMのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。
【0276】
図19に示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものであり、オリゴヌクレオチド標的の例示的漸増を示している。図19の結果には、100fMの標的ompA Oligo 2(黒線)、10fMの標的ompA Oligo 2(黒色の破線)、1fMの標的ompA Oligo 2(短い黒色の破線)、1nM PPIAオフターゲット(灰色の破線)、1nM p273オフターゲット(灰色の点線)、約200,000コピーのヒトゲノムDNA(灰色の実線)を含む反応およびDNAを含まない反応(灰色の二重線)から得られたシグナルが示されている。図19に示されるリアルタイムモニタリングの5分間は、25分間の総反応時間(すなわち、20分間のTバッグインキュベーションと5分間の蛍光基質切断のリアルタイムモニタリング)に相当し、100fM、10fMおよび1fMのompA標的の検出に要した時間を示している。この実験では、このプロトコルにより試験した最低濃度、すなわち1fMのompA標的を検出することができた。試料中の総ompA濃度は約4,200コピーの遺伝子(4.2×10の遺伝子コピー)に相当する。さらに、高濃度のオフターゲット対照(PPIA、p273およびHu gDNA)を加えても無標的対照(無DNA)を上回るシグナルは発生せず、このことから、Tバッグシグナル増幅反応は特異性が高く、マッチする標的核酸配列(この実施例ではompA Oligo 2)とともに形成されるMNAzymeの存在下でのみ誘発されることがわかる。
【0277】
以上の結果は以下のシナリオと一致する。標的オリゴヌクレオチドの存在下では、パートザイムが整列し活性な開始MNAzymeを形成する。MNAzymeが溶液中のSubZyme H-MBを切断し、8-17 DNAzymeをMBの表面から分離させる。次いで、「自由な」8-17 DNAzymeがTバッグの選択的透過膜を通って移動できるようになり、そこでSubZyme I-MBを切断し、10-23 DNAzymeをMBの表面から分離させることができる。次いで、10-23 DNAzymeが自由にTバッグの透過膜から出て溶液中に移動し、そこでSubZyme H-MBを切断し、カスケードを継続することができる。一定時間インキュベートした後、磁石により、未切断のSubZyme-MBおよび切断された部分的基質-MBフラグメントと、切断された「自由な」DNAzymeとを分離することができる。自由なDNAzyme(10:23および8:17)を蛍光基質の入った第二の反応チャンバに移すことができ、その中で、自由なDNAzymeが基質を切断し、蛍光シグナルを発生させることができる。
【0278】
実施例15:クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)の全核酸(TNA)試料中のクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子の検出
この実験では、図4に概説される戦略を用いて、実施例1に記載した培養法および抽出法を用いて得たクラミジアの全核酸試料(TNA)中に存在するクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子から標的を検出し、シグナルを増幅した。SubZyme HおよびSubZyme Iを実施例1の付着法2に記載した通りに磁気ビーズに付着させた(SubZyme H-MBおよびSubZyme I-MB)。図3Bに示される略図に従い、ポリカーボネート膜(0.8μm)を用いてTバッグを手作業で調製した。得られた結果を図20に示す。図4を参照すると、SubZyme HはPAであり、SubZyme IはPBであり、ompAパートザイムA1およびB1はompA標的上で会合すると開始MNAzyme Cat Cを形成する。
【0279】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme H)(配列番号8)、PB(SubZyme I)(配列番号9)、基質G(配列番号36)、基質H(配列番号37)、ompAパートザイムA1(配列番号38)、ompAパートザイムB1(配列番号39)および標的ompA Oligo 2(配列番号40)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。
【0280】
反応には、5nM ompAパートザイムA1、5nM ompAパートザイムB1、1×PCR緩衝液II、0.5μLのSubZyme H-MB、0.5μLのSubZyme I-MBを含む1×Tバッグおよび25mM MgClが最終体積70μLで含まれていた。Tバッグは孔径0.8μmのポリカーボネート膜製のものとした。反応には、DNAが含まれていない(無DNA対照)か、2fMの標的ompA oligoが含まれているか、あるいは反応に加える前に95℃で2分間熱変性させたTNAであるクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)TNAが含まれているかのいずれかであった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で20分間、50℃でインキュベートした。
【0281】
最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグをチューブから取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme H-MBおよび切断された部分的基質H-MBフラグメントと、溶液中で自由になったDNAzymeとを分離した。上清の48μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、等モル濃度の基質Gおよび基質H(最終濃度0.2μM)を含有する基質混合物2μLと混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)FAMのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。
【0282】
図20に示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものであり、この方法によりクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)の全核酸(TNA)試料からクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子(黒色の実線)を検出することが可能であることを示している。試料中の総ompA濃度は約3,500,000コピーの遺伝子(3.5×10の遺伝子コピー)に相当する。シグナルには、無DNA対照(灰色の実線)と十分な差がみられ、2fMの合成標的ompAオリゴヌクレオチドを含む反応(黒色の破線)と類似したシグナルが得られる。
【0283】
実施例16:ompA遺伝子ホモログの15分間での迅速検出
この実験では、図4に概説される戦略を用いて、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子と相同な合成オリゴヌクレオチド標的の存在下で標的を検出し、シグナルを増幅した。ここでは、試料をTバッグとわずか12分間インキュベートし、核酸標的の迅速検出を実証した。PA(SubZyme H)およびPB(SubZyme I)を実施例1の付着法2に記載した通りに磁気ビーズに付着させた(SubZyme H-MBおよびSubZyme I-MB)。図3Bに示される略図に従い、ポリカーボネート膜(0.8μm)を用いてTバッグを手作業で調製した。得られた結果を図21に示す。図4を参照すると、SubZyme HはPAであり、SubZyme IはPBであり、ompAパートザイムA1およびB1はompA標的上で会合すると開始MNAzyme(Cat C)を形成する。
【0284】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme H)(配列番号8)、(PB)SubZyme I(配列番号9)、基質H(配列番号37)、ompAパートザイムA1(配列番号38)、ompAパートザイムB1(配列番号39)および標的ompA Oligo 2(配列番号40)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。
【0285】
反応には、5nM ompAパートザイムA1、5nM ompAパートザイムB1、1×PCR緩衝液II、0.5μLのSubZyme H-MB、0.5μLのSubZyme I-MBを含む1×Tバッグおよび25mM MgClが最終体積60μLで含まれていた。Tバッグは孔径0.8μmのポリカーボネート膜製のものとした。反応には、DNAが含まれていない(無DNA対照)であるか、500pMまたは2pMの標的ompA oligoが含まれているかのいずれかであった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で12分間、50℃でインキュベートした。
【0286】
最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグをチューブから取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme H-MBおよび切断された部分的基質H-MBフラグメントと、溶液中で自由になったDNAzymeとを分離した。上清の46μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、基質である基質H(最終濃度0.2μM)4μLと混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でFAMのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。
【0287】
図21に示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものであり、この方法により、500pM(灰色の線)および1pM(黒色の線)の合成標的ompAオリゴヌクレオチドを15分未満の総反応時間で検出することが可能であることを示している。図21に示される3分間のリアルタイムモニタリングは、合計時間が15分(すなわち、12分間のTバッグインキュベーションと3分間のリアルタイムモニタリング)の反応の最終段階であり、500pMおよび1pMの合成標的ompAオリゴヌクレオチドの検出に要した時間を示している。シグナルには無DNA対照(黒色の破線)と十分な差がみられる。
【0288】
実施例17:DNAzymeおよびパートザイムを組み込んだSubZymeを用いた交差触媒カスケード
この実験では、図22に概説される戦略を用いて、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子に相同な合成オリゴヌクレオチド標的の存在下で標的を検出し、シグナルを増幅した。この実験では、SubZyme J(PA)およびSubZyme K1(PB)を実施例1の付着法2に記載した通りに磁気ビーズに付着させた(SubZyme J-MBおよびSubZyme K1-MB)。図3Bに示される略図に従い、ポリカーボネート膜(0.8μm)を用いてTバッグを手作業で調製した。開始MNAzyme C(Cat C)は、ompAパートザイムA1およびB1(図22のC1およびC2に相当する)と標的ompAとを含むものとした。得られた結果を図24に示す。
【0289】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme J)(配列番号10)、PB(SubZyme K1)(配列番号11)、PC(SubZyme K2)(配列番号12)、基質E(配列番号33)、ompAパートザイムA1(配列番号38)、ompAパートザイムB1(配列番号39)、標的ompA Oligo 2(配列番号40)およびAF-B3(フィードバック会合促進因子)(配列番号43)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。
【0290】
反応には、50nM ompAパートザイムA1、50nM ompAパートザイムB1、1×PCR緩衝液II、45mM MgCl、2nM SubZyme K2、2nMフィードバック会合促進因子、0.6μLのPA(SubZyme J-MB)、0.6μLのPB(SubZyme K1-MB)を含む1×Tバッグが最終体積60μLで含まれていた。反応には、DNAが含まれていない(無DNA対照)か、2nM、200pM、50pM、10pMまたは1pMの標的ompA oligoが含まれているかのいずれかであった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で20分間、50℃でインキュベートした。
【0291】
最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグをチューブから取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme J-MB、切断された部分的基質J-MBフラグメントおよび未切断のSubZyme K1-MBと、溶液中で自由になったDNAzymeおよびパートザイムとを分離した。上清の48μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、基質である基質E2μL(最終濃度0.2μM)と混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。
【0292】
図24に示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて、5分後の蛍光から0分後の蛍光を減算することによりプロットした二重反復の平均値である。結果から、この方法により2nM、200pM、50pM、10pMおよび1pMの合成標的ompA オリゴヌクレオチドを検出することが可能であることがわかる。シグナルには無DNA対照と十分な差がみられる。以上の結果は以下のシナリオと一致する。標的オリゴヌクレオチドの存在下では、パートザイムが整列し活性な開始MNAzymeを形成する。MNAzymeが溶液中のSubZyme J-MBを切断し、8-17 DNAzymeをMBの表面から分離させる。次いで、「自由な」8-17 DNAzymeがTバッグの選択的透過膜を通って移動できるようになり、そこでPB内のSub B(SubZyme K1-MB)を切断し、パートザイムK1(Cat B1)をMBの表面から分離させることができる。次いで、Cat B1が自由にTバッグの透過膜から出て溶液中に移動し、そこで自由なパートザイムK1(Cat B2)およびフィードバック会合促進因子(AF-B3)とハイブリダイズして活性なフィードバックMNAzyme(Cat B)を形成することができ、フィードバックMNAzymeがPA内のSub A(SubZyme J-MB)を切断することができ、それによりフィードバックカスケードを継続することができる。一定時間インキュベートした後、磁石を用いて、未切断のSubZyme-MBおよび切断された部分的基質-MBフラグメントと、切断された「自由な」DNAzymeおよびパートザイムとを分離する。自由なDNAzyme(Cat A)およびパートザイム(Cat B)を蛍光基質が含まれる第二の反応チャンバに移し、そこでは、自由なDNAzymeが切断して蛍光シグナルを発生させることができる。
【0293】
実施例18:8-17成分のみからなるSubZymeを用いた交差触媒カスケード
この実験は、8-17触媒核酸成分のみからなるSubZymeを用いて、SubZymeおよび選択的透過バリアを用いる交差触媒シグナル増幅カスケードを実施することが可能であることを示すものである。8-17 DNAzyme Dである開始Cat Cを使用することによって図4に概説される戦略に修正を施し、ここでは、PA(SubZyme L)およびPB(SubZyme M)はともに、交差触媒的に切断可能な基質配列によって結合した8:17 DNAzymeを含むものとした。
【0294】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme L)(配列番号44)、PB(SubZyme M)(配列番号45)、基質E(配列番号33)およびDNAzyme D(配列番号46)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。SubZyme LおよびSubZyme Mを実施例1の付着法2に記載した通りに磁気ビーズに付着させた(SubZyme L-MBおよびSubZyme M-MB)。図3Bに示される略図に従い、ポリカーボネート膜(0.8μm)を用いてTバッグを手作業で調製した。得られた結果を図25に示す。
【0295】
反応には、1×PCR緩衝液II、1.5倍濃度のSubZyme L-MB、1.5倍濃度のSubZyme M-MBを含む1×Tバッグおよび45mM MgClが最終体積60μLで含まれていた。反応には、開始DNAが含まれていない(無DNAzyme対照)か、2nM、200pMまたは20pMの開始DNAzyme(DNAzyme D)が含まれているかのいずれかであった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で60分間、48℃でインキュベートした。
【0296】
最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、Tバッグをチューブから取り出して捨てた。試料を短時間遠心分離し、チューブを磁気ラックの上に置いて、未切断のSubZyme L-MBおよび切断された部分的基質L-MBフラグメントと、溶液中で自由になったDNAzymeとを分離した。上清の48μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、基質である基質E2μL(最終濃度0.2μM)と混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、48℃の一定温度で10秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。
【0297】
図25に示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものであり、この方法より2nM(黒色の実線)、200pM(黒色の破線)および20pM(黒色の点線)の開始DNAzymeを検出することが可能であることを示している。シグナルには無DNAzyme対照(灰色の線)と十分な差がみられる。
【0298】
実施例19:代替的ビーズ材料の実証
この実験では、図15に概説される戦略を用いて、Tバッグの構築に代替的ビーズ材料としてシリカビーズ(孔径1μm)を用いるTバッグ概念の普遍性を明らかにした。さらに、その目的を、磁気ビーズに代えてシリカビーズを用いてSubZymeの閉込め、DNAzymeの拡散および表面結合DNAzymeの遊離が可能であるかどうかを明らかにすることとした。PB(SubZyme F)を実施例1の付着法2に記載した通りに1μmのシリカビーズに付着させる(SubZyme F-Bead)が、洗浄方法は磁気ラックの代わりに遠心分離を用いて実施した。各洗浄段階は、シリカビーズ溶液を10,000rpmで3分間遠心分離してビーズをペレット化した後、上清を取り出して捨てる操作を伴うものであった。図3Bに示される略図に従い、ポリカーボネート膜(孔径0.8μm)またはPES膜(孔径0.8μm)を用いてTバッグを手作業で調製した。
【0299】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PB(SubZyme F)(配列番号6)、基質E(配列番号33)およびDNAzyme A(配列番号28)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。
【0300】
反応には1×PCR緩衝液II、45mM MgClが最終体積60μLで含まれていた。反応には、0.6μLのSubZyme F-SBが含まれるポリカーボネート材料(0.8μm)またはPES材料(0.8μm)でできた1×Tバッグが含まれていた。反応には、2nMのDNAzyme Aが含まれているか、含まれていないかのいずれかであった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で20分間、50℃でインキュベートした。最初のインキュベーション後、試料を加熱ブロックから移動させ、試料を短時間遠心分離した。反応溶液の48μLのアリコートを96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、基質E 2μL(最終濃度0.2μM)と混合した。プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に150サイクルにわたって取得を実施した。
【0301】
図26Aおよび26Bに示される結果は、Microsoft Excel(Version 14)を用いて二重反復の平均値をプロットしたものであり、開始DNAzyme Aの不在下ではシグナルがほとんどみられない。このことは、SubZymeが、シリカビーズ(直径1μm)に係留されている間は膜を通って拡散することができないことを示している。開始DNAzyme Aの存在下では強いシグナルがみられ、開始DNAzymeがポリカーボネート膜またはPES膜ででたTバッグの中に拡散し、次いでSubZymes-SBを切断し、表面結合DNAzymeを遊離させることができることがわかる。また、遊離したDNAzymeがTバッグから出て拡散し、蛍光標識基質分子を切断することが可能であることもわかる。異なる材料(PESおよびポリカーボネート)でできた膜でも同様の結果が観察される。この結果から、ビーズ材料および膜材料については、ビーズが膜孔の直径より大きいものである限り、様々な材料からなるものであってよいことがわかる。図26に示される結果は、SubZymeを封入し他の反応成分から物理的に分離するのにシリカなどの代替的ビーズ材料を用いることができることを示している。
【0302】
実施例20:エンドポイント検出を実施するSubZymeおよびパートザイムを用いた交差触媒カスケード
この実験では、図27に概説される戦略を用いて、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ompA遺伝子に相同な合成オリゴヌクレオチド標的の存在下で標的を検出し、シグナルを増幅した。この実験では、PA(SubZyme J)、PB(SubZyme K1)およびPC(SubZyme K2)を実施例1の付着法2に記載した通りに磁気ビーズに付着させた(SubZyme J-MB、SubZyme K1-MBおよびSubZyme K2-MB)。図3Bに示される略図に従い、ポリカーボネート膜(0.8μm)を用いてTバッグを手作業で調製した。開始MNAzyme C(Cat C)は、ompAパートザイムA1およびB1(図27のC1およびC2に相当する)と標的ompAとを含むものとした。得られた結果を図28に示す。
【0303】
この実験に特有のオリゴヌクレオチドには、PA(SubZyme J)(配列番号10)、PB(SubZyme K1)(配列番号11)、PC(SubZyme K2)(配列番号12)、基質E(配列番号33)、ompAパートザイムA1(配列番号38)、ompAパートザイムB1(配列番号39)、標的ompA Oligo 2(配列番号40)およびAF-B3(フィードバック会合促進因子)(配列番号43)が含まれる。配列表にその配列が記載されている。
【0304】
Tバッグ反応には、50nM ompAパートザイムA1、50nM ompAパートザイムB1、1×PCR緩衝液II、45mM MgCl、2nMフィードバック会合促進因子(AF-B3)、0.6μLのPA(SubZyme J-MB)、0.6μLのPC(SubZyme K2-MB)および0.6μLのPB(SubZyme K1-MB)を含む1×Tバッグが最終体積60μLで含まれていた。MNAzyme対照反応には、50nM ompAパートザイムA1、50nM ompAパートザイムB1、1×PCR緩衝液IIおよび45mM MgClが最終体積60μLで含まれていた。反応には、DNAが含まれていない(無DNA対照)か、500pM、200pM、100pMまたは50pMの標的ompA oligoが含まれているかのいずれかであった。反応を2mLのチューブ中、加熱ブロック上で20分間、50℃でインキュベートした。
【0305】
インキュベーション後、試料を加熱ブロックから取り出し、短時間遠心分離した。溶液のアリコート(40μL)を96ウェルプレート(Bio-Rad社)に移し、プレートを密閉し、短時間遠心分離した。CFX96リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)でテキサスレッドのチャンネルの蛍光を測定し、50℃の一定温度で10秒毎に5サイクルにわたって取得を実施した。
【0306】
図27の結果を、各試料の反応の蛍光から無標的対照(NTC)の反応の蛍光を減算することによって算出し正規化した蛍光値として示す。結果は、Microsoft Excel(Version 14)に2つ組の反応をそれぞれ5回測定した結果から算出した平均値および標準偏差を用いてプロットしたものである。この結果は、図27に示されるTバッグ法により500pM,200pM,100pMおよび50pMの合成標的ompAオリゴヌクレオチドを検出することが可能であることを示している。シグナルには無標的対照と十分な差がみられる。同じ標的濃度の検出についてもMNAzyme対照反応を用いた無標的対照と大きな差はみられず、図27に示される戦略によってシグナル増幅の増強がもたらされることがわかる。以上の結果は以下のシナリオと一致する。標的オリゴヌクレオチドの存在下では、パートザイムが整列し活性な開始MNAzyme(Cat C)を形成する。Cat CがPA内のSub Aを切断し、Cat AをMBの表面から分離させる。次いで、Cat AがTバッグの選択的透過膜を通って移動できるようになり、そこでPB内のSub Bを切断し、Cat B1をMBの表面から分離させることができる。次いで、Cat B1が自由にTバッグの透過膜から出て溶液中に移動し、そこでCat B2およびフィードバック会合促進因子(AF-B3)とハイブリダイズして活性なフィードバックMNAzyme(Cat B)を形成することができ、フィードバックMNAzymeがPA内のSub Aを切断してフィードバック増幅を継続することができる。この結果はまた、フィードバック増幅を開始させることに加えて、Cat BおよびCat Cは同時にSub A-FQを切断して蛍光を発生させ、それによりリアルタイムで標的の存在を示すこともできることを示している。
【0307】
(相互参照による組込み)
本願は、2017年4月11日に出願されたオーストラリア仮出願第2017901321号の優先権を主張するものであり、上記出願の全内容は相互参照により本明細書に組み込まれる。
図1
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