(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】車両用シートのスライド装置、治具、および車両用シートの組付け方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
B60N2/07
(21)【出願番号】P 2020012545
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-07-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)展示日:令和元年(2019年)10月24日 (2)展示会名:第46回東京モーターショー2019 (3)開催場所:東京ビッグサイト青海・西/南展示棟(東京都江東区青海1丁目2-33)
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000151760
【氏名又は名称】株式会社東洋シート
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】井上 順介
(72)【発明者】
【氏名】白銀 秀基
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-087047(JP,U)
【文献】特開2006-298252(JP,A)
【文献】特開2012-001171(JP,A)
【文献】特開平05-124463(JP,A)
【文献】特表2009-502608(JP,A)
【文献】特開2001-277912(JP,A)
【文献】特開2016-107765(JP,A)
【文献】特開2017-065626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
A47C 1/00 - A47C 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのスライド装置であって、
シート前後方向に延びるように車体の床面に固定されたロアレールと、
前記車両用シートに取り付けられ、前記ロアレールに案内されて前記シート前後方向にスライド可能なアッパーレールと、
前記アッパーレールをシート幅方向に貫通するとともに、前記アッパーレールのスライド量を規制する規制位置とスライド量規制を解除する解除位置との間で前記シート幅方向に移動可能なストッパプレートと、
前記ストッパプレートが前記規制位置にあるときに前記ストッパプレートと当接することによって前記アッパーレールのスライド量を規制するロアレール側ストッパと、
前記ストッパプレートに対して前記解除位置から前記規制位置へ向かう方向の付勢力を与える付勢部材と、
前記ストッパプレートを前記規制位置から前記解除位置へ切り替えるための操作を受ける規制切替え部とを備え、
前記規制切替え部は、前記ストッパプレートに設けられ、前記操作を行うための治具が連結される治具連結部分と、前記アッパーレールと当接可能な規制解除ボルトとを有しており、
前記治具連結部分は、前記治具の一部が前記治具連結部分と前記アッパーレールとの間に介在した状態で前記治具が連結可能な構成を有し、
前記規制解除ボルトは、前記アッパーレールを押圧する方向の回転操作を受けることにより、前記ストッパプレートを前記付勢部材による付勢力に抗して前記ストッパプレートを前記規制位置から解除位置へ切り替え、
前記付勢部材は、前記アッパーレールの内部に配置され、前記ストッパプレートに対して前記付勢力を常時与える
車両用シートのスライド装置。
【請求項2】
前記ロアレールおよび前記アッパーレールによって構成されるシートスライド体は、前記シート幅方向に離間して一対設けられ、
前記規制切替え部は、各シートスライド体の前記アッパーレールに設けられた前記ストッパプレートにそれぞれ設けられ、かつ、一対の前記ストッパプレートを同時に操作可能な位置に配置されている、
請求項
1に記載の車両用シートのスライド装置。
【請求項3】
請求項
2記載の一対の前記ストッパプレートにそれぞれ設けられた前記規制切替え部を同時に操作するための治具であって、各規制切替え部に操作力を与える操作部と前記操作部同士を連結する連結部を有する治具。
【請求項4】
請求項
2記載のスライド装置を有する車両用シートの組付け方法であって、
一対の前記規制切替え部によって、前記シート幅方向に離間した一対の前記アッパーレールに設けられた前記ストッパプレートを前記規制位置から前記解除位置へ同時に切替え、一対の前記アッパーレールのスライド量規制が解除された状態で、一対の前記ロアレールを前記車体の前記床面に固定する第1ステップと、
前記一対の規制切替え部による一対の前記ストッパプレートの前記解除位置への切替えを同時に解除することによって、一対の前記ストッパプレートを前記付勢部材による付勢力により前記解除位置から前記規制位置へ同時に戻す第2ステップと
を備える、
車両用シートの組付け方法。
【請求項5】
前記第1ステップでは、一対の前記規制切替え部に治具を同時に連結することによって、一対の前記規制切替え部のそれぞれが前記ストッパプレートを前記規制位置から前記解除位置へ同時に切替え、一対の前記アッパーレールのスライド量規制が解除された状態で、一対の前記ロアレールを前記車体の前記床面に固定し、
前記第2ステップでは、前記一対の規制切替え部から前記治具を同時に取り外すことによって、一対の前記ストッパプレートを前記付勢部材による付勢力により前記解除位置から前記規制位置へ同時に戻す
請求項
4記載の車両用シートの組付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのスライド装置、治具、および車両用シートの組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シート、とくにフロント側のシートには、シートを前後方向にスライドさせて所望の位置に固定するスライド装置が設けられている。このようなスライド装置を備えたシートを車体に組み付ける作業では、シート組付け時の作業性を確保するために、スライド装置のスライド量規制を解除した状態で組付け可能な構造が特許文献1などによって知られている。
【0003】
特許文献1記載のスライド装置は、ロアレールに対してスライド可能なアッパーレールと、該アッパーレール側に設けられたロックプレートと、ロアレール側に取り付けられた且つロアレールの側方に突出するU字溝を有するストッパブラケットとを備えている。ストッパーブラケットにおけるU字溝の外側壁に形成されたスライド方向に並ぶ多数の係合孔に対してロックプレートを選択的に係合することにより、シートの位置決めが行われる。
【0004】
アッパーレール側には、ストッパブラケットのU字溝内に垂下する係止部材が付設されている。一方、U字溝内には、ストッパスプリングが架設されている。ストッパスプリングは、係止部材と係合してアッパーレールのスライド範囲を規制する係合方向に付勢された状態で架設されている。具体的には、ストッパスプリングは、U字溝の外側壁の係合孔の一つと、これと対向すべくU字溝の内側壁に形成された挿通孔とを貫通するように架設されている。
【0005】
ストッパブラケットにおけるU字溝の内側壁には、スライド装置の車体組付時において、アッパーレールのスライド量規制を解除するために、ストッパスプリングをU字溝内から抜き出した状態で保持すべく挿通孔を閉塞する遮蔽部材が取り外し自在に付設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に示されるスライド装置では、構造が複雑化し、シートの取付け、取り外しの作業性が悪化するという問題がある。
【0008】
すなわち、上記のスライド装置では、ロアレール側のストッパブラケットには、ロアレールの側方に突出するU字溝が設けられ、U字溝の内部には、アッパーレール側の係止部材が垂下するように付設されるとともに、ストッパスプリングが、係止部材と係合してアッパーレールのスライド範囲を規制する係合方向に付勢された状態で架設されている。さらに、U字 溝の内側壁には、ストッパスプリ ングをU字溝内から抜き出した状態で保持すべく挿通孔を閉塞する遮蔽部材が取り外し自在に付設されている。したがって、ロアレールから外部に突出しているストッパブラケットのU字溝には多数の部品が組み付けられており、構造が複雑であり、かつ、ロアレール外部にこれらの部品のために占有スペースが必要であり、小型化が難しい。
【0009】
また、ストッパブラケットにおけるU字溝の内側壁には、上記のように、スライド装置の車体組付時において、アッパーレールのスライド量規制を解除するために、ストッパスプリングをU字溝内から抜き出した状態で保持すべく挿通孔を閉塞する手段として、遮蔽部材が取り外し自在に付設する必要があり、構造がさらに複雑であるとともに、遮蔽部材の着脱動作も複雑になり、作業性が悪い。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、簡単かつコンパクトな構造で、シートスライド量の規制状態と規制解除状態を容易に切替えることが可能な車両用シートのスライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の車両用シートのスライド装置は、車両用シートのスライド装置であって、シート前後方向に延びるように車体の床面に固定されたロアレールと、前記車両用シートに取り付けられ、前記ロアレールに案内されて前記シート前後方向にスライド可能なアッパーレールと、前記アッパーレールをシート幅方向に貫通するとともに、前記アッパーレールのスライド量を規制する規制位置とスライド量規制を解除する解除位置との間で前記シート幅方向に移動可能なストッパプレートと、前記ストッパプレートが前記規制位置にあるときに前記ストッパプレートと当接することによって前記アッパーレールのスライド量を規制するロアレール側ストッパと、前記ストッパプレートに対して前記解除位置から前記規制位置へ向かう方向の付勢力を与える付勢部材と、前記ストッパプレートを前記規制位置から前記解除位置へ切り替えるための操作を受ける規制切替え部とを備え、前記規制切替え部は、前記ストッパプレートに設けられ、前記操作を行うための治具が連結される治具連結部分と、前記アッパーレールと当接可能な規制解除ボルトとを有しており、前記治具連結部分は、前記治具の一部が前記治具連結部分と前記アッパーレールとの間に介在した状態で前記治具が連結可能な構成を有し、前記規制解除ボルトは、前記アッパーレールを押圧する方向の回転操作を受けることにより、前記ストッパプレートを前記付勢部材による付勢力に抗して前記ストッパプレートを前記規制位置から解除位置へ切り替え、前記付勢部材は、前記アッパーレールの内部に配置され、前記ストッパプレートに対して前記付勢力を常時与えることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、アッパーレールのスライド量を規制する可動部材として、ストッパプレートがシート幅方向に移動自在にアッパーレールを貫通し、付勢部材はアッパーレールの内部に配置されている。そのため、スライド装置は、簡単な構造であり、しかも、ストッパプレートの占有スペースが少ないのでコンパクトな構造になっている。
【0013】
上記のストッパプレートは、通常状態では、付勢部材からの付勢力を常時受けて規制位置に配置され、ロアレール側ストッパに当接することによってアッパーレールのスライド量を所定の長さに規制することが可能である。一方、規制切替え部が操作を受けてストッパプレートを規制位置から解除位置へ切替えることにより、ストッパプレートによるアッパーレールのスライド量規制を解除することが可能である。
【0014】
したがって、上記のスライド装置では、簡単かつコンパクトな構造で、シートスライド量の規制状態と規制解除状態を容易に切替えることが可能である。
【0015】
上記の車両用シートのスライド装置において、前記規制切替え部は、前記ストッパプレートに設けられ、前記操作を行うための治具が連結される治具連結部分を有しており、前記治具連結部分は、前記治具連結部分と前記アッパーレールとの間に介在する部分を有する前記治具が連結可能な構成を有しているのが好ましい。
【0016】
かかる構成では、規制切替え部は、ストッパプレートに設けられ、操作を行うための治具と連結される治具連結部分を有している。この治具連結部分に治具が連結されることにより、治具が治具連結部分とアッパーレールとの間に部分的に介在してストッパプレートを前記付勢部材による付勢力に抗して規制位置から解除位置へ切り替えることが可能である。一方、治具を治具連結部分から取り外すだけで、ストッパプレートは付勢部材による付勢力により解除位置から規制位置へ戻り、アッパーレールのスライド量規制が可能になる。このように治具を治具連結部分に着脱するだけで、アッパーレールのスライド量規制の解除およびスライド量規制状態への復帰を容易かつ確実に行うこと可能になる。
【0017】
上記の車両用シートのスライド装置において、前記規制切替え部は、前記アッパーレールと当接可能な規制解除ボルトを有しており、前記規制解除ボルトは、前記アッパーレールを押圧する方向の回転操作を受けることにより、前記ストッパプレートを前記付勢部材による付勢力に抗して前記ストッパプレートを前記規制位置から解除位置へ切り替えるのが好ましい。
【0018】
かかる構成では、規制解除ボルトをアッパーレールを押圧する方向に回転操作を行うだけで、ストッパプレートを付勢部材による付勢力に抗してストッパプレートを規制位置から解除位置へ切り替えることが可能である。
【0019】
上記の車両用シートのスライド装置において、前記ロアレールおよび前記アッパーレールによって構成されるシートスライド体は、前記シート幅方向に離間して一対設けられ、 前記規制切替え部は、各シートスライド体の前記アッパーレールに設けられた前記ストッパプレートにそれぞれ設けられ、かつ、一対の前記ストッパプレートを同時に操作可能な位置に配置されているのが好ましい。
【0020】
かかる構成では、規制切替え部は、シート幅方向に離間した一対のストッパプレートにそれぞれ設けられ、かつ、一対のストッパプレートを同時に操作可能な位置に配置されている。そのため、ロアレールを車体の床面に固定した状態でアッパーレールのスライド量の規制をシート幅方向に離間した一対のシートスライド体で同時に行うことが可能であり、一対のアッパーレールのシート前後方向のずれを無くしてシートのねじれを防止することが可能である。
【0021】
本発明の治具は、上記のスライド装置における一対の前記ストッパプレートにそれぞれ設けられた前記規制切替え部を同時に操作するための治具であって、各規制切替え部に操作力を与える操作部と前記操作部同士を連結する連結部を有する。
【0022】
かかる構成では、治具を用いることによって、ロアレールを車体の床面に固定した状態でアッパーレールのスライド量の規制をシート幅方向に離間した一対のシートスライド体で同時に行うことが可能であり、一対のアッパーレールのシート前後方向のずれを無くしてシートのねじれを防止することが可能である。
【0023】
本発明の車両用シートの組付け方法は、上記のスライド装置を有する車両用シートの組付け方法であって、一対の前記規制切替え部によって、前記シート幅方向に離間した一対の前記アッパーレールに設けられた前記ストッパプレートを前記規制位置から前記解除位置へ同時に切替え、一対の前記アッパーレールのスライド量規制が解除された状態で、一対の前記ロアレールを前記車体の前記床面に固定する第1ステップと、前記一対の規制切替え部による一対の前記ストッパプレートの前記解除位置への切替えを同時に解除することによって、一対の前記ストッパプレートを前記付勢部材による付勢力により前記解除位置から前記規制位置へ同時に戻す第2ステップとを備えることを特徴とする。
【0024】
この組付方法では、第1ステップにおいて、一対の規制切替え部によって、一対のストッパプレートを規制位置から前記解除位置へ同時に切替え、一対のアッパーレールのスライド量規制が解除された状態で、一対のロアレールを車体の床面に固定する作業を容易にすることが可能である。
【0025】
さらに、第2ステップにおいて、一対の規制切替え部による一対のストッパプレートの解除位置への切替えを同時に解除することによって、一対のストッパプレートを付勢部材による付勢力により解除位置から規制位置へ同時に戻すことが可能である。これにより、第2ステップでは、ロアレールを車体の床面に固定した状態でアッパーレールのスライド量の規制をシート幅方向に離間した一対のシートスライド体で同時に行うことが可能であり、一対のアッパーレールのシート前後方向のずれを無くしてシートのねじれを防止することが可能である。
【0026】
上記の車両用シートの組付け方法において、前記第1ステップでは、一対の前記規制切替え部に治具を同時に連結することによって、一対の前記規制切替え部のそれぞれが前記ストッパプレートを前記規制位置から前記解除位置へ同時に切替え、一対の前記アッパーレールのスライド量規制が解除された状態で、一対の前記ロアレールを前記車体の前記床面に固定し、前記第2ステップでは、前記一対の規制切替え部から前記治具を同時に取り外すことによって、一対の前記ストッパプレートを前記付勢部材による付勢力により前記解除位置から前記規制位置へ同時に戻すのが好ましい。
【0027】
この組付方法では、第1ステップにおいて、一対の規制切替え部に治具を同時に連結するだけで、一対の規制切替え部のそれぞれがストッパプレートを規制位置から前記解除位置へ同時に切替えることが可能であり、一対のアッパーレールのスライド量規制が解除された状態で、一対のロアレールを車体の床面に固定する作業を容易にすることが可能である。
【0028】
さらに、第2ステップにおいて、一対の規制切替え部から治具を同時に取り外すだけで、一対のストッパプレートを付勢部材による付勢力により解除位置から規制位置へ同時に戻すことが可能である。これにより、第2ステップでは、ロアレールを車体の床面に固定した状態でアッパーレールのスライド量の規制をシート幅方向に離間した一対のシートスライド体で同時に行うことが可能であり、一対のアッパーレールのシート前後方向のずれを無くしてシートのねじれを防止することが可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の車両用シートのスライド装置によれば、簡単かつコンパクトな構造で、シートスライド量の規制状態と規制解除状態を容易に切替えることができる。
【0030】
本発明の治具によれば、一対のアッパーレールのシート前後方向のずれを無くしてシートのねじれを防止することができる。
【0031】
本発明の車両用シートの組付け方法によれば、一対のロアレールを車体の床面に固定する作業を容易にすることができる。しかも、一対のアッパーレールのシート前後方向のずれを無くしてシートのねじれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートのスライド装置が装着されたシートの全体構成を示す側面図である。
【
図2】
図1のシートスライド体がシート幅方向に離間して一対配置された状態を示す平面図である。
【
図3】
図1のシートスライド、およびそれに設けられたストッパプレートならびにロアレール側ストッパを示す斜視図である。
【
図4】
図3のストッパプレートならびにロアレール側ストッパ付近の部分の拡大平面図である。
【
図6】
図4のストッパプレートならびにロアレール側ストッパ付近の部分の拡大斜視図である。
【
図7】
図5のストッパプレート、コイルスプリング、およびスプリングガイドの組立体を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【
図8】
図7(a)のストッパプレートを示す平面図である。
【
図9】本発明の車両用シートの組付け方法の第1ステップを説明するための図であって、
図2の一対のストッパプレートのそれぞれの治具連結部分に治具の一対の係合部が連結する直前の状態を示す平面説明図である。
【
図10】本発明の車両用シートの組付け方法の一連の第1~2ステップを説明するための平面説明図であって、(a)は第1ステップにおいてストッパプレートに設けられた治具連結部分に治具の係合部が連結された状態を示す図、(b)~(c)は、第2ステップにおいて治具連結部分から係合部が取り外されて、ストッパプレートが解除位置から規制位置へ戻る状態を示す図である。
【
図11】本発明の車両用シートの組付け方法の第1ステップを説明するための図であって、シートスライド体がスライド量規制解除状態で、ロアレールを車体床面にボルトで固定する動作を示す斜視説明図である。
【
図12】本発明の車両用シートの組付け方法の第1ステップを説明するための図であって、ロアレールの前端側を車体床面にボルトで固定する動作を示す斜視説明図である。
【
図13】本発明の車両用シートの組付け方法の第1ステップを説明するための図であって、ロアレールの後端側を車体床面にボルトで固定する動作を示す斜視説明図である。
【
図14】本発明の車両用シートの組付け方法の第2ステップを説明するための図であって、治具をストッパプレートの治具連結部分から取り外す動作を示す斜視説明図である。
【
図15】本発明の車両用シートの組付け方法の第2ステップを説明するための図であって、シートスライド体がスライド量規制状態に戻る動作を示す斜視説明図である。から
図1のII-II線断面図である。
【
図16】本発明の変形例に係る車両用シートのスライド装置であって、規制解除ボルトがストッパプレートの受け部のねじ孔に螺合した状態でアッパーレールの側壁を押圧することによって、ストッパプレートを規制位置から解除位置へ切り替える動作を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0034】
図1~5に示される車両用シート1のスライド装置は、シート前後方向Xに延びるように車体の床面に固定された一対のロアレール2と、シート1の下面に取り付けられ、ロアレール2に案内されてシート前後方向Xにスライド可能な一対のアッパーレール3と、一対のアッパーレール3のそれぞれにシート幅方向Yに移動自在に設けられたストッパプレート4と、ロアレール側ストッパ5、6と、ストッパプレート4を付勢する付勢部材としてのコイルスプリング8(
図5参照)と、アッパーレール3のスライド量規制状態を切り替える治具連結部分4b(
図7参照)から構成される規制切替え部とを備えている。この構成では、ロアレール2およびアッパーレール3によって構成されるシートスライド体20は、シート幅方向Yに離間して一対設けられている。
【0035】
図3に示されるように、ロアレール2は、上方に開放された断面C字状の長尺な部材であり、その底面には、ロアレール2の長手方向に複数の係合凹部7が形成されている。一方、アッパーレール3には、複数の係合凹部7のうちの一つに選択的に係合するラッチ機構Rが設けられている。例えば、アッパーレール3の内部には、ラッチ機構Rの構成部品として図示しない係合部材が上下方向に移動自在に設けられ、当該係合部が複数の係合凹部7のうちの一つに係合することにより、アッパーレール3を、シート前後方向Xにおける所望の位置に固定することが可能である。これにより、シート1は、シート前後方向Xに移動自在であり、かつ、所望の位置に固定可能である。
【0036】
図5~6に示されるように、ストッパプレート4は、アッパーレール3の両側の側壁3a、3bに形成された貫通孔3cを通して、当該側壁3a、3bをシート幅方向Yに貫通している。ストッパプレート4は、側壁3a、3bを貫通した状態で、アッパーレール3のスライド量を規制する規制位置(
図4~6に示されるストッパプレート4の位置)とスライド量規制を解除する解除位置(
図10(a)および
図11の位置)との間でシート幅方向Yに移動可能である。なお、規制位置および解除位置については、後段で詳細に説明する。
【0037】
図7~8に示されるように、ストッパプレート4は、具体的な構成として、一方の端部にロアレール側ストッパ5、6と当接することが可能な当接部4a1を有する矩形薄板状の本体部4aと、本体部4aにおける当接部4a1と反対側の端部から本体部4aの長手方向と直交する方向に延びる治具連結部分4bと、ねじ孔4eを有する受け部4cとを有する。
【0038】
治具連結部分4bは、
図8に示されるように、当接部4a1を向く側(
図10(a)におけるアッパーレール3の側壁3aを向く側)に突出する突起4b1が形成されている。
【0039】
図8に示されるように、本体部4aの長手方向における中間付近の両側端部には、一対の切欠き4dが形成されている。これらの切欠き4dには、
図7(a)~(c)に示されるスプリングガイド9が係合している。スプリングガイド9は、コイルスプリング8の外径よりも大きいつば部を有する。
【0040】
図5および
図7に示されるように、コイルスプリング8は、圧縮ばねであり、ストッパプレート4の本体部4aの外周を覆うように当該本体部4aに取り付けられている。
図5に示されるように、コイルスプリング8は、その一端がスプリングガイド9に嵌合するとともにその他端がアッパーレール3の側壁3aの内側面に当接するように、アッパーレール3の内部に配置されている。これにより、コイルスプリング8は、スプリングガイド9と側壁3aとの間で圧縮され、スプリングガイド9およびストッパプレート4をロアレール側ストッパ6(
図5および
図10参照)へ向かう方向へ常時押圧する。したがって、コイルスプリング8は、ストッパプレート4に対して解除位置(
図10(a)、(b)参照)から規制位置(
図10(c)参照)へ向かう方向の付勢力を与える付勢部材として機能することが可能である。なお、付勢部材は、コイルスプリング以外の手段、例えば、板バネ、ゴム、空気バネなどの弾性変形可能な部材や、マグネットなどでもよい。
【0041】
ロアレール側ストッパ5、6は、
図3~6、
図10(c)および
図15に示されるように、ストッパプレート4が規制位置にあるときにストッパプレート4と当接することによってアッパーレール3のスライド量を規制するように構成されている。具体的には、ロアレール側ストッパ5、6は、
図3、11および15に示されるように、ロアレール2の長手方向において離間して配置されている。ロアレール側ストッパ5、6は、ロアレール2の上端よりも上方に突出する突起5a、6aを有している。ロアレール側ストッパ5、6は、突起5a、6aの間隔Sがシート1の所定のスライド量になるように配置されている。
【0042】
本実施形態における規制切替え部を構成する治具連結部分4b(
図7参照)は、ストッパプレート4を規制位置から解除位置へ切り替えるように構成されている。
【0043】
具体的には、治具連結部分4bは、上記のようにストッパプレート4に設けられ、上記の規制解除のための操作を行う治具10であって、治具10の一部(後述するフック10a1および側壁10a2)が治具連結部分4bとアッパーレール3との間に介在した状態で治具10と連結可能な構成を有する。
【0044】
治具連結部分4bは、治具10の係合部10aが治具連結部分4bに連結されることにより、治具10の後述するフック10a1および側壁10a2が治具連結部分4bとアッパーレール3との間に部分的に介在してストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力に抗して規制位置(
図10(c)参照)から解除位置(
図10(a)参照)へ切り替えることが可能な位置に配置されている。
【0045】
具体的には、ストッパプレート4の治具連結部分4bは、
図10(a)に示されるように、本体部4aの長手方向と直交する方向、すなわち、アッパーレール3と平行に延びるように配置されている。これにより、治具連結部分4bに治具10の係合部10aが係合した状態、すなわち、係合部10aのフック10a1が治具連結部分4bの突起4b1に係合した状態では、係合部10aのフック10a1および側壁10a2がアッパーレール3の側壁3aと治具連結部分4bとの間に挿入される。これにより、治具10の係合部10aのフック10a1および側壁10a2が治具連結部分4bとアッパーレール3との間に部分的に介在してストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力に抗して規制位置(
図10(c)参照)から解除位置(
図10(a)参照)へ切り替えることが可能になる。
【0046】
本実施形態では、
図9に示されるように、治具連結部分4bは、シート幅方向Yに離間した一対のアッパーレール3に設けられたストッパプレート4にそれぞれ設けられ、かつ、上記の治具10によって、一対のストッパプレート4を同時に操作可能な位置、すなわち、
図9に示される一対のアッパーレール3の互いに対向する側面(一対のアッパーレール3の内側を向く面)にそれぞれ配置されている。
【0047】
本実施形態の治具10は、
図9に示されるように、上記の一対のストッパプレート4にそれぞれ設けられた治具連結部分4bを同時に操作するための治具であって、各規制切替え部に操作力を与える操作部と操作部同士を連結する連結部を有する。
【0048】
具体的には、治具10は、一対の係合部10a(操作部)と、一対の係合部10aを連結する連結アーム10b(連結部)とから構成されている。一対の係合部10aは、一対のストッパプレート4にそれぞれ設けられた治具連結部分4bに同時に連結可能な間隔に設定されている。それぞれの係合部10aは、上記の治具連結部分4bの突起4b1(
図8および
図10(a)参照)が係合可能なフック10a1が設けられている。連結アーム10bは、
図14に示されるように、シート1の後方側に張り出すように曲がっており、シート1の下方から手で引っ張り出して治具10と治具連結部分4bとの連結を容易に解除できるようになっている。
【0049】
(シート1の組付け方法の説明)
つぎに、上記のように構成された本実施形態のシート装置を備えたシート1を車体に組み付けるシート1の組付け方法について説明する。
【0050】
シート1を組み付ける前のスライド装置の初期状態では、アッパーレール3およびそれを含むシートスライド体20は、
図1に示されるようにシート1の下面に固定されている。また、初期状態におけるストッパプレート4は、
図3~6および
図10(c)に示されるように、コイルスプリング8からの付勢力を受けて本体部4aの当接部4a1(
図7(a)参照)が突出した規制位置に配置されている。この規制位置では、当該当接部4a1がロアレール側ストッパ5、6に当接可能な位置に突出しているため、当接部4a1がロアレール側ストッパ5、6に当接することによってアッパーレール3のスライド量を所定の長さ(すなわち、ロアレール側ストッパ5、6の突起5a、6aの間隔S)に規制されている。
【0051】
上記の初期状態からシート1を組み付ける場合、まず、第1ステップとして、一対の治具連結部分4bによって、シート幅方向Yに離間した一対のアッパーレール3に設けられたストッパプレート4を規制位置から解除位置へ同時に切替える。本実施形態では、
図9および
図10(a)に示されるように、一対の治具連結部分4bに治具10の一対の係合部10aを同時に連結することによって、一対の治具連結部分4bのそれぞれがストッパプレート4を規制位置(
図10(c)参照)から解除位置(
図10(a))へ同時に切替える操作を行う。これにより、一対のアッパーレール3はスライド量規制が解除された状態になる。このとき、ストッパプレート4は、
図11に示されるように、シート幅における内向きY1に移動することにより、ロアレール側ストッパ5、6の突起5a、6aに当たらない解除位置へ移動する。このようなスライド量規制が解除された状態で一対のロアレール2を車体の床面に固定する作業を行う。
【0052】
ロアレール2を車体の床面に固定する場合、具体的には、
図11~13に示されるように、スライド量規制が解除されたアッパーレール3をシート1とともに一対のロアレール2のそれぞれの前端部2aおよび後端部2bに形成された貫通孔11が露出する位置まで移動させ、ボルト21を貫通孔11に挿入する。これにより、ロアレール2の前端部2aおよび後端部2bを、ボルト21によって容易に固定することが可能になる。
【0053】
ボルト21によるロアレール2の固定が完了した後、第2ステップとして、一対の治具連結部分4bによる一対のストッパプレート4の解除位置への切替えを同時に解除することによって、一対のストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力により解除位置から規制位置へ同時に戻す。
【0054】
具体的には、
図9および
図14に示されるように、治具10の連結アーム10bを作業者が手で持ってシート1の後方へ引っ張り出すことにより、一対の治具連結部分4bから治具10の一対の係合部10aを同時に取り外す。これによって、一対のストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力により解除位置(
図10(a)、(b)および
図11参照)から規制位置(
図10(c)および
図15参照)へ同時に戻す。その結果、スライド装置をスライド量規制状態に復帰させることが可能である。このとき、ストッパプレート4は、
図15に示されるように、シート幅における外向きY2に移動することにより、ロアレール側ストッパ5、6の突起5a、6aに当接可能な規制位置へ移動する。
【0055】
スライド量規制状態では、
図15に示されるように、ストッパプレート4(具体的には当接部4a1(
図7参照))がロアレール側ストッパ5、6の突起5a、6aの間に突出しているので、ストッパプレート4およびアッパーレール3は、突起5a、6a間の間隔Sにスライド量が規制される。これにより、シート1のスライド量を規制することが可能になる。
【0056】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の車両用シート1のスライド装置は、シート前後方向Xに延びるように車体の床面に固定されたロアレール2と、車両用シート1に取り付けられ、ロアレール2に案内されてシート前後方向Xにスライド可能なアッパーレール3と、アッパーレール3をシート幅方向Yに貫通するとともに、アッパーレール3のスライド量を規制する規制位置とスライド量規制を解除する解除位置との間でシート幅方向Yに移動可能なストッパプレート4と、ストッパプレート4が規制位置にあるときにストッパプレート4と当接することによってアッパーレール3のスライド量を規制するロアレール側ストッパ5、6と、ストッパプレート4に対して解除位置から規制位置へ向かう方向の付勢力を与えるコイルスプリング8と、ストッパプレート4を規制位置から解除位置へ切り替えるための操作を受ける治具連結部分4b(
図7参照)から構成される規制切替え部とを備える。
コイルスプリング8は、アッパーレール3の内部に配置され、ストッパプレート4に対して付勢力を常時与える。
【0057】
この構成によれば、アッパーレール3のスライド量を規制する可動部材として、ストッパプレート4がシート幅方向Yに移動自在にアッパーレール3を貫通している。さらに、コイルスプリング8は、アッパーレール3の内部に配置されている。そのため、スライド装置は、簡単な構造であり、しかも、ストッパプレート4の占有スペースが少ないのでコンパクトな構造になっている。
【0058】
上記のストッパプレート4は、通常状態では、コイルスプリング8からの付勢力を常時受けて規制位置に配置され、ロアレール側ストッパ5、6に当接することによってアッパーレール3のスライド量を所定の長さに規制することが可能である。一方、規制切替え部としての治具連結部分4bが治具10の係合部10aとの連結による操作を受けてストッパプレート4を規制位置から解除位置へ切替えることにより、ストッパプレート4によるアッパーレール3のスライド量規制を解除することが可能である。
【0059】
したがって、上記のスライド装置では、簡単かつコンパクトな構造で、シートスライド量の規制状態と規制解除状態を容易に切替えることが可能である。
【0060】
(2)
本実施形態の車両用シート1のスライド装置では、規制切替え部は、ストッパプレート4に設けられ、治具10が連結可能な治具連結部分4bを有している。治具連結部分4bは、治具10の一部(フック10a1および側壁10a2)が治具連結部分4bとアッパーレール3との間に介在した状態で治具10が連結可能な構成を有している。
【0061】
この構成では、規制切替え部が、ストッパプレート4に設けられ、治具10が連結される治具連結部分4bを有している。この治具連結部分4bに治具10が連結されることにより、治具10のフック10a1および側壁10a2が治具連結部分4bとアッパーレール3との間に部分的に介在してストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力に抗して規制位置から解除位置へ切り替えることが可能である。一方、治具10を治具連結部分4bから取り外すだけで、ストッパプレート4はコイルスプリング8による付勢力により解除位置から規制位置へ戻り、アッパーレール3のスライド量規制が可能になる。このように治具10を治具連結部分4bに着脱するだけで、アッパーレール3のスライド量規制の解除およびスライド量規制状態への復帰を容易かつ確実に行うこと可能になる。
【0062】
(3)
本実施形態の車両用シート1のスライド装置では、ロアレール2およびアッパーレール3によって構成されるシートスライド体20は、シート幅方向Yに離間して一対設けられている。治具連結部分4bは、各シートスライド体20のアッパーレール3に設けられたストッパプレート4にそれぞれ設けられ、かつ、一対のストッパプレート4を同時に操作可能な位置に配置されている。
【0063】
この構成では、治具連結部分4bは、シート幅方向Yに離間した一対のストッパプレート4にそれぞれ設けられ、かつ、一対のストッパプレート4を同時に操作可能な位置に配置されている。そのため、ロアレール2を車体の床面に固定した状態でアッパーレール3のスライド量の規制をシート幅方向Yに離間した一対のシートスライド体20で同時に行うことが可能であり、一対のアッパーレール3のシート前後方向Xのずれを無くしてシート1のねじれを防止することが可能である。
【0064】
(4)
本実施形態の治具10は、上記実施形態の一対のストッパプレート4にそれぞれ設けられた治具連結部分4b(規制切替え部)を同時に操作可能な構成として、各治具連結部分4bに操作力を与える係合部10a(操作部)と前記係合部10a同士を連結する連結アーム10b(連結部)を有する。
【0065】
この構成では、治具10を用いることによって、ロアレール2を車体の床面に固定した状態でアッパーレール3のスライド量の規制をシート幅方向Yに離間した一対のシートスライド体20で同時に行うことが可能であり、一対のアッパーレール3のシート前後方向Xのずれを無くしてシート1のねじれを防止することが可能である。
【0066】
(5)
本実施形態の車両用シート1の組付け方法は、上記実施形態のスライド装置を有する車両用シート1の組付け方法であって、一対の治具連結部分4bによって、シート幅方向Yに離間した一対のアッパーレール3に設けられたストッパプレート4を規制位置から解除位置へ同時に切替え、一対のアッパーレール3のスライド量規制が解除された状態で、一対のロアレール2を車体の床面に固定する第1ステップと、一対の治具連結部分4bによる一対のストッパプレート4の解除位置への切替えを同時に解除することによって、一対のストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力により解除位置から規制位置へ同時に戻す第2ステップとを備える。
【0067】
この組付方法では、第1ステップにおいて、一対の治具連結部分4bによって、一対のストッパプレート4を規制位置から解除位置へ同時に切替え、一対のアッパーレール3のスライド量規制が解除された状態で、一対のロアレール2を車体の床面に固定する作業を容易にすることが可能である。
【0068】
さらに、第2ステップにおいて、一対の治具連結部分4bによる一対のストッパプレート4の解除位置への切替えを同時に解除することによって、一対のストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力により解除位置から規制位置へ同時に戻すことが可能である。これにより、第2ステップでは、ロアレール2を車体の床面に固定した状態でアッパーレール3のスライド量の規制をシート幅方向Yに離間した一対のシートスライド体20で同時に行うことが可能であり、一対のアッパーレール3のシート前後方向Xのずれを無くしてシート1のねじれを防止することが可能である。
【0069】
(6)
本実施形態の車両用シート1の組付け方法は、さらに具体的に言えば、一対の治具連結部分4bに治具10を同時に連結することによって、一対の治具連結部分4bのそれぞれがストッパプレート4を規制位置から解除位置へ同時に切替え、一対のアッパーレール3のスライド量規制が解除された状態で、一対のロアレール2を車体の床面に固定する第1ステップと、一対の治具連結部分4bから治具10を同時に取り外すことによって、一対のストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力により解除位置から規制位置へ同時に戻す第2ステップとを備える。
【0070】
この組付方法では、第1ステップにおいて、一対の治具連結部分4bに治具10を同時に連結するだけで、一対の治具連結部分4bのそれぞれがストッパプレート4を規制位置から解除位置へ同時に切替えることが可能であり、一対のアッパーレール3のスライド量規制が解除された状態で、一対のロアレール2を車体の床面に固定する作業を容易にすることが可能である。
【0071】
さらに、第2ステップにおいて、一対の治具連結部分4bから治具10を同時に取り外すだけで、一対のストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力により解除位置から規制位置へ同時に戻すことが可能である。これにより、第2ステップでは、ロアレール2を車体の床面に固定した状態でアッパーレール3のスライド量の規制をシート幅方向Yに離間した一対のシートスライド体20で同時に行うことが可能であり、一対のアッパーレール3のシート前後方向Xのずれを無くしてシート1のねじれを防止することが可能である。
【0072】
(変形例)
(A)
上記実施形態のスライド装置では、規制切替え部が治具10に連結される治具連結部分4bを有している例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0073】
本発明のスライド装置の変形例として、規制切替え部は、
図16に示されるように、ストッパプレート4に設けられ、アッパーレール3と当接可能な規制解除ボルト12を有する構成であってもよい。
図16では、規制切替え部が規制解除ボルト12とともに、シート幅方向Y(
図2参照)に延びるねじ孔4eを有する受け部4cを有している。
【0074】
規制解除ボルト12は、受け部4cのねじ孔4eに螺合している。ストッパプレート4は、上記のコイルスプリング8により規制位置(
図15参照)へ向けて付勢されているので、規制解除ボルト12の先端部12aは、アッパーレール3の側壁3aに常時当接している。
【0075】
規制解除ボルト12が、アッパーレール3(具体的には、側壁3a)を押圧する方向に回転することにより、受け部4cを含むストッパプレート4が側壁3aを押圧する力の反力を規制解除ボルト12から受けて側壁3aから離れる方向へ移動する。したがって、規制解除ボルト12の回転によって、ストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力に抗してストッパプレート4を規制位置から解除位置へ切り替えることが可能である。
【0076】
この構成では、規制解除ボルト12は、ストッパプレート4に設けられた受け部4cのねじ孔4eに螺合している。規制解除ボルト12をアッパーレール3を押圧する方向に回転させる操作を行うだけで、ストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力に抗してストッパプレート4を規制位置から解除位置へ切り替えることが可能である。
【0077】
上記の変形例におけるねじ孔4eを有する受け部4cおよび規制解除ボルト12は、一対のアッパーレール3に設けられたストッパプレート4にそれぞれ設けられる。
【0078】
(B)
上記の変形例(A)のような規制切替え部が規制解除ボルト12を備えた構成において、シート組付け方法を行う場合、第1ステップとして、一対の規制解除ボルト12をアッパーレール3の側壁3aを押圧する方向に同時に回転操作することによって、受け部4cを含むストッパプレート4は側壁3aを押圧する力の反力を規制解除ボルト12から受けて側壁3aから離れる方向へ移動する。これによって、シート幅方向Yに離間した一対のアッパーレール3に設けられたストッパプレート4を規制位置から解除位置へ同時に切替える。その後、一対のアッパーレール3のスライド量規制が解除された状態で、一対のロアレール2を車体の床面に固定する。なお、一対の規制解除ボルト12を同時に回転させる操作は、専用の工具を用いるか、一対の作業ロボットなどを用いるなどによって実行可能である。
【0079】
ついで、第2ステップとして、一対の規制解除ボルト12を第1ステップとは反対方向へ回転操作することによって、規制解除ボルト12によるアッパーレール3の側壁3aの押圧を解除する。これにより、一対のストッパプレート4の解除位置への切替えを同時に解除することによって、一対のストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力により解除位置から規制位置へ同時に戻すことが可能である。
【0080】
この組付方法によっても、一対の規制解除ボルト12を用いることによって、一対のストッパプレート4を規制位置から解除位置へ同時に切替え、一対のアッパーレール3をスライド量規制が解除された状態で、一対のロアレール2を車体の床面に固定する作業を容易にすることが可能である。
【0081】
さらに、第2ステップにおいて、一対の規制解除ボルト12を用いて一対のストッパプレート4の解除位置への切替えを同時に解除することによって、一対のストッパプレート4をコイルスプリング8による付勢力により解除位置から規制位置へ同時に戻すことが可能である。これにより、第2ステップでは、ロアレール2を車体の床面に固定した状態でアッパーレール3のスライド量の規制をシート幅方向Yに離間した一対のシートスライド体20で同時に行うことが可能であり、一対のアッパーレール3のシート前後方向Xのずれを無くしてシート1のねじれを防止することが可能である。
【0082】
(C)
本発明のさらに他の変形例として、本発明の規制切替え部として、上記の本実施形態の治具連結部分4bと、変形例(A)、(B)の規制解除ボルト12との両方を備えた構成であってもよい。このような構成では、車両製造工程では治具10を用いてスライド量規制および解除を容易に切り替えることが可能であり、シート組付け作業の作業性の向上が可能であり、さらに、車両製造後にシート1の交換等をする場合には、治具10を用いなくても、規制解除ボルト12を用いてスライド量規制および解除を容易に切り替えることが可能である。したがって、車両製造工程におけるシートの組付けおよび車両製造後のシートの交換等の両方の作業における作業性が向上する。
【0083】
しかも、この変形例の構成であれば、ストッパプレート4における治具連結部分4bおよびねじ孔4eを有する受け部4c、ならびに規制解除ボルト12を設けるだけでよいので、車両の重量増加を抑えることが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 シート
2 ロアレール
3 アッパーレール
4 ストッパプレート
4b 治具連結部分(規制切替え部)
4e ねじ孔
5、6 ロアレール側ストッパ
8 コイルスプリング(付勢部材)
10 治具
12 規制解除ボルト(規制切替え部)
20 シートスライド体