(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】冷媒を含有する組成物及びその応用
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20240513BHJP
C10M 105/38 20060101ALI20240513BHJP
C10M 107/24 20060101ALI20240513BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20240513BHJP
C10M 107/38 20060101ALI20240513BHJP
C10M 131/00 20060101ALI20240513BHJP
C10M 131/02 20060101ALI20240513BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240513BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240513BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
C09K5/04 E
C09K5/04 C
C09K5/04 F
C10M105/38
C10M107/24
C10M107/34
C10M107/38
C10M131/00
C10M131/02
F25B1/00 396Z
C10N30:00 Z
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2020016887
(22)【出願日】2020-02-04
(62)【分割の表示】P 2019078360の分割
【原出願日】2019-04-17
【審査請求日】2020-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2018080436
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 瞬
(72)【発明者】
【氏名】板野 充司
(72)【発明者】
【氏名】黒木 眸
(72)【発明者】
【氏名】土屋 立美
(72)【発明者】
【氏名】午坊 健司
【合議体】
【審判長】関根 裕
【審判官】長谷川 真一
【審判官】門前 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-70571(JP,A)
【文献】特開2016-156001(JP,A)
【文献】特開2017-218508(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211283(WO,A1)
【文献】特表2018-508597(JP,A)
【文献】国際公開第2014/134821(WO,A1)
【文献】特表2016-531177(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/04
STN
JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、R23のドロップイン代替冷媒、R23のニアリー・ドロップイン代替冷媒又はR23のレトロフィット冷媒として用いられ、
前記冷媒が、
(a)パーフルオロカーボン(PFC)としてPFC-14を含有し、
(b)不飽和化合物としてHFO-1132aを含有し、
(c)HFCとしてHFC-23、HFC-32及びHFC-125を含有し、
前記冷媒100質量%中、HFC-23を5質量%以上20質量%以下含有し、
前記冷媒100質量%中、HFO-1132aを
5質量%以上10質量%以下含有する、組成物。
【請求項2】
前記(a)PFCが、更にPFC-116、PFC-c216、PFC-218、PFC-c318及びPFC-31-10からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(b)不飽和化合物が、更にHFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、HFO-1234ze(Z)、HFO-1225ye、FO-1114、HFO-1123、HFO-1132(E)、HFO-1132(Z)、HCFO-1233zd、HCFO-1224yd及びHCFO-1122aからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(c)HFCが、更にHFC-143a、HFC-134a及びHFC-134からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
更に、冷凍機油を含有し、冷凍装置用作動流体として用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記冷凍機油が、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
トレーサー、相溶化剤、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含有する、冷凍方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物を含有する冷凍装置。
【請求項10】
空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機及びスクリュー冷凍機からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を含有する組成物及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
HFC-32(ジフルオロメタン、CH2F2、R32、沸点-52℃)、HFC-125(ペンタフルオロエタン、CF3CHF2、R125、沸点-48℃)等に代表されるヒドロフルオロカーボン「HFC」は、オ
ゾン層を破壊する物質として知られるCFC、HCFC等に替わる重要な代替物質として広く用
いられている。
【0003】
このような代替物質として、単体冷媒である「HFC-23(トリフルオロメタン、CHF3、R23、沸点-82℃)」、HFC-32及びHFC-125の混合冷媒である「R410A」、HFC-125、HFC-134a
及びHFC-143aの混合冷媒である「R404A」等が知られている(特許文献1~3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9,029,616号公報
【文献】米国特許第8,168,077号公報
【文献】国際公開第2003/27206号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、R23と同等又はそれ以上の特性を有する冷媒を含有する組成物を提供するこ
とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.
冷媒を含有する組成物であって、
前記冷媒が、
(a)PFC-14、PFC-116、PFC-c216、PFC-218、PFC-c318及びPFC-31-10からなる群より選
択される少なくとも1種のパーフルオロカーボン(PFC)と、
(b)不飽和化合物と、
を含有する、組成物。
項2.
前記(b)不飽和化合物が、HFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、HFO-1234ze(Z)、HFO-1225ye、FO-1114、HFO-1123、HFO-1132a、HFO-1132(E)、HFO-1132(Z)、HCFO-1233zd、HCFO-1224yd及びHCFO-1122aからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、項1に記載の組成物。
項3.
更に、(c)HFCを含有する、項1又は2に記載の組成物。
項4.
前記(c)HFCが、HFC-23、HFC-32、HFC-125、HFC-143a、HFC-134a及びHFC-134からな
る群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、項3に記載の組成物。
項5.
前記(a)PFCが、PFC-14を含有する、項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
項6.
前記(b)不飽和化合物が、HFO-1123、HFO-1132a及びHFO-1132(E)からなる群より選択
される少なくとも1種の化合物を含有する、項5に記載の組成物。
項7.
前記(c)HFCが、HFC-23、HFC-32及びHFC-125からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、項6に記載の組成物。
項8.
前記(b)不飽和化合物が、HFO-1132aを含有する、項6又は7に記載の組成物。
項9.
前記(b)不飽和化合物が、HFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、HFO-1123及びHFO-1132(E)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有し、
前記(c)HFCが、HFC-32、HFC-125及びHFC-134aからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、項5に記載の組成物。
項10.
前記(a)PFC-14を、前記冷媒全量に対して、1~15質量%含有する、項5~9のいず
れか1項に記載の組成物。
項11.
更に、冷凍機油を含有し、冷凍装置用作動流体として用いられる、項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
項12.
前記冷凍機油が、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、項11に記載の組成物。
項13.
R23、R404A又はR410Aの代替冷媒として用いられる、項1~12のいずれか1項に記載
の組成物。
項14.
トレーサー、相溶化剤、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含有する、項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
項15.
項1~14のいずれか1項に記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含有する、冷凍方法。
項16.
項1~14のいずれか1項に記載の組成物を含有する冷凍装置。
項17.
空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機及びスクリュー冷凍機からなる群より選択される少なくとも1種である、項16に記載の冷凍装置。
項18.
冷媒として用いられる、項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
項19.
冷凍装置における冷媒として用いられる、項18に記載の組成物。
項20.
前記冷凍装置が、空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機又はスクリュー冷凍機である、項19に記載の組成物。
項21.
冷媒としての、項1~14のいずれか1項に記載の組成物の使用。
項22.
冷凍装置における、項21に記載の使用。
項23.
前記冷凍装置が、空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷
凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機又はスクリュー冷凍機である、項22に記載の使用。
【発明の効果】
【0007】
本発明の冷媒を含有する組成物は、R23と同等又はそれ以上の特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を解決すべく、鋭意研究を行った結果、冷媒としてパーフルオロカーボン(PFC)、不飽和化合物等を含有する組成物が、所望の特性を有しているこ
とを見出した。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づき、更に研究を重ねた結果完成されたものである。本発明は、以下の実施形態を含む。
【0010】
<用語の定義>
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を夫々最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0011】
本明細書中、語句「含有」及び語句「含む」は、語句「実質的にからなる」及び語句「のみからなる」という概念を意図して用いられる。
【0012】
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、更
に冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。
【0013】
冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、二酸化炭素(R744)及びアンモニア(R717)等が挙げられる。
【0014】
本明細書において、用語「冷媒を含有する組成物」には、
(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物、すなわち「混合冷媒」を含む)と、
(2)その他の成分を更に含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍装置用作
動流体を得るために用いることのできる組成物と、
(3)冷凍機油を含有する冷凍装置用作動流体と、が少なくとも含まれる。
【0015】
本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(
混合冷媒を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、(3)の冷凍装置用作動
流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
【0016】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが
小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0017】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0018】
本明細書において、用語「冷凍装置」とは、広義には、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、広義には、冷凍装置は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。本発明において、広義には、冷凍装置はヒートポンプと同義である。
【0019】
本明細書において、狭義には、利用する温度領域及び作動温度の違いにより冷凍装置はヒートポンプとは区別して用いられる。この場合、大気温度よりも低い温度領域に低温熱源を置くものを冷凍装置といい、これに対して低温熱源を大気温度の近くに置いて冷凍サイクルを駆動することによる放熱作用を利用するものをヒートポンプということもある。なお、「冷房モード」及び「暖房モード」等を有するエアコン等のように、同一の機器であるにもかかわらず、狭義の冷凍装置及び狭義のヒートポンプの機能を兼ね備えるものも存在する。本明細書においては、特に断りのない限り、「冷凍装置」及び「ヒートポンプ」は全て広義の意味で用いられる。
【0020】
本明細書において、「車載用空調機器」とは、ガソリン車、ハイブリッド自動車、電気自動車、水素自動車などの自動車で用いられる冷凍装置の一種である。車載用空調機器とは、蒸発器にて液体の冷媒に熱交換を行わせ、蒸発した冷媒ガスを圧縮機が吸い込み、断熱圧縮された冷媒ガスを凝縮器で冷却して液化させ、さらに膨張弁を通過させて断熱膨張させた後、蒸発機に再び液体の冷媒として供給する冷凍サイクルからなる冷凍装置を指す。
【0021】
本明細書において、「ターボ冷凍機」とは、大型冷凍装置の一種であって、蒸発器にて液体の冷媒に熱交換を行わせ、蒸発した冷媒ガスを遠心式圧縮機が吸い込み、断熱圧縮された冷媒ガスを凝縮器で冷却して液化させ、さらに膨張弁を通過させて断熱膨張させた後、蒸発機に再び液体の冷媒として供給する冷凍サイクルからなる冷凍装置を指す。なお、上記「大型冷凍機」とは、建物単位での空調を目的とした大型空調機を指す。
【0022】
本明細書において、GWPは、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第4
次報告書の値に基づいた値を意味する。
【0023】
本明細書において、(b)不飽和化合物には(c)HFCが含まれない。
【0024】
本明細書において、HFO-1234yfとは2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、HFO-1234ze(E)
とはトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、HFO-1234ze(Z)とはシス-1,3,3,3-テト
ラフルオロプロペン、HFO-1225yeとは1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、FO-1114とは
テトラフルオロエチレン、HFO-1123とは1,1,2-トリフルオロエチレン、HFO-1132aとは1,1-ジフルオロエチレン、HFO-1132(E)とはトランス-1,2-ジフルオロエチレン、HFO-1132(Z)とはシス-1,2-ジフルオロエチレン、HCFO-1233zdとは1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロ
ペン、HCFO-1224ydとは、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、HCFO-1122aとは1,2-ジクロロフルオロエチレン、HFC-143aとは1,1,1-トリフルオロエタン、HFC-134aとは1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及びHFC-134とは1,1,2,2-ヘキサフルオロエタンである。
【0025】
1.組成物
本発明の組成物は冷媒を含有する。以下、当該冷媒について説明する。本明細書において、「本発明の冷媒」とは本発明の組成物に含まれる冷媒を意味する。
【0026】
1.1 冷媒
本発明の組成物に含まれる冷媒は、
(a)PFC-14(パーフルオロメタン:CF4)、PFC-116(パーフルオロエタン:C2F6)、PFC-c216(パーフルオロシクロプロパン:c-C3F6)、PFC-218(パーフルオロプロパン:C3F8)、PFC-c318(パーフルオロシクロブタン:C4F8)及びPFC-31-10(パーフルオロブタン:C4F10)からなる群から選ばれる少なくとも1種のパーフルオロカーボン(PFC)と、
(b)不飽和化合物と、
を含有する。
【0027】
本発明の冷媒は、このような構成を有することによって、(1)GWPが小さいこと(7000以下)、(2)R23と同等又はそれ以上の成績係数(Coefficient of Performance:COP)
を有すること、及び(3)R23と同等又はそれ以上の冷凍能力(Refrigeration Capacity:Cooling Capacity又はCapacityと表記されることもある)を有すること、という諸特性を有する。
【0028】
GWPを小さくすることによって、地球温暖化の観点から他の汎用冷媒と比べて顕著に環
境負荷を抑えることができる。GWPが小さいとは、GWPが通常7000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下であることを意味する。
【0029】
本発明の冷媒は、R23に対する冷凍能力が、R23に対して代替可能な冷凍能力であればよく、具体的にはR23に対して45%以上であることが好ましく、70%以上であることがより
好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0030】
本発明の冷媒は、R404Aに対する冷凍能力が、R404Aに対して代替可能な冷凍能力であればよく、具体的にはR404Aに対して80%以上であることが好ましく、90%以上であること
がより好ましく、100%以上であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明の冷媒は、R410Aに対する冷凍能力が、R410Aに対して代替可能な冷凍能力であればよく、具体的にはR410Aに対して80%以上であることが好ましく、90%以上であること
がより好ましく、100%以上であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明の冷媒は、冷凍サイクルで消費された動力と冷凍能力の比(成績係数(COP))
が高いことが好ましい。具体的には、本発明の冷媒は、R23に対するCOPについては90%以
上が好ましく、95%以上がより好ましく、100%以上がさらに好ましく、105%以上が特に好ましい。
【0033】
本発明の冷媒は、R404Aに対するCOPについては95%以上が好ましく、100%以上がより好
ましく、105%以上がさらに好ましい。
【0034】
本発明の冷媒は、R410Aに対するCOPについては95%以上が好ましく、100%以上がより好
ましく、105%以上がさらに好ましい。
【0035】
本発明の冷媒は、上記(b)不飽和化合物としてHFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、HFO-1234ze(Z)、HFO-1225ye、FO-1114、HFO-1123、HFO-1132a、HFO-1132(E)、HFO-1132(Z)、HCFO-1233zd、HCFO-1224yd及びHCFO-1122aからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。これらの化合物の中でも、HFO-1132aがより好ましい。
【0036】
本発明の冷媒は、上記(a)PFC及び上記(b)不飽和化合物に加えて、更に、(c)HFCを含有することが好ましい。当該(c)HFCとしてHFC-23、HFC-32、HFC-125、HFC-143a、HFC-134a及びHFC-134からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有するこ
とが好ましい。これらの化合物の中でも、HFC-23、HFC-32及びHFC-125がより好ましい。
【0037】
本発明の冷媒は、上記(a)PFCとしてPFC-14を含有することが好ましい。
【0038】
本発明の冷媒は、当該冷媒が、(a)PFC-14、並びに、PFC-116、PFC-c216、PFC-218、PFC-c318及びPFC-31-10からなる群から選ばれる少なくとも1種のPFCと、(b)不飽和化合物と、を含有することが好ましい。言い換えれば、本発明の冷媒は、当該冷媒が、(a)PFC-14と、PFC-116、PFC-c216、PFC-218、PFC-c318及びPFC-31-10からなる群から選ば
れる少なくとも1種のPFCと、(b)不飽和化合物と、を含有することが好ましい。本発
明の冷媒は、このような構成を有することによって、R23の代替冷媒として好適に使用す
ることができる。
【0039】
本発明の冷媒は、上記(a)PFCとしてPFC-14を含有し、且つ上記(b)不飽和化合物
としてHFO-1123、HFO-1132a及びHFO-1132(E)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。本発明の冷媒は、このような構成を有することによって、R23の代替冷媒としてより好適に使用することができる。
【0040】
本発明の冷媒は、上記(a)PFCとしてPFC-14を含有し、上記(b)不飽和化合物とし
てHFO-1123、HFO-1132a及びHFO-1132(E)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有し、且つ上記(c)HFCとしてHFC-23、HFC-32及びHFC-125からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。本発明の冷媒は、このような構成を有することによって、R23の代替冷媒として特に好適に使用することができる。
【0041】
本発明の冷媒は、上記(a)PFCとしてPFC-14を含有し、且つ上記(b)不飽和化合物
としてHFO-1132aを含有することが好ましい。
【0042】
本発明の冷媒は、上記(a)PFCとしてPFC-14を含有し、上記(b)不飽和化合物とし
てHFO-1132aを含有し、且つ上記(c)HFCとしてHFC-23、HFC-32及びHFC-125からなる群
より選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0043】
本発明の冷媒は、上記(a)PFCとしてPFC-14を含有し、前記(b)不飽和化合物とし
てHFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、HFO-1123及びHFO-1132(E)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有し、且つ上記(c)HFCとしてHFC-32、HFC-125及びHFC-134aからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。本発明の冷媒は、このような構成を有することによって、R410A又はR404Aの代替冷媒として特に好適に使用することができる。
【0044】
本発明の冷媒は、冷凍能力を向上させ、且つ、GWPを7000以下にする観点から、(a)PFCとしてPFC-14を当該冷媒全量に対して、1~15質量%含有することが好ましく、2~12.5質量%含有することがより好ましく、2.5~10質量%含有することがさらに好ましく、5~10質量%含有することが特に好ましい。
【0045】
本発明の冷媒は、当該冷媒が、(a)PFCとしてPFC-14と(b)不飽和化合物と(c)HFCとを含有し、且つ、(b)不飽和化合物がHFO-1132aであり、(c)HFCがHFC-23、HFC-32及びHFC-125であることが特に好ましい。言い換えれば、本発明の冷媒は、当該冷媒が
、(a)PFCとしてPFC-14を含有し、(b)不飽和化合物としてHFO-1132aを含有し、且つ
(c)HFCとしてHFC-23、HFC-32及びHFC-125を含有することが特に好ましい。
【0046】
本発明の冷媒は、このような構成を有することによって、(1)GWPが小さいこと(7000以下)、(2)R23と同等又はそれ以上のCOPを有すること、及び(3)R23と同等又はそれ
以上の冷凍能力を有すること、という諸特性を有する。
【0047】
本発明の冷媒を含有する組成物は、当該冷媒100質量%中、(a)PFC、(b)不飽和化合物及び(c)HFCの合計量が、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上
、更に好ましくは99.5質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0048】
本発明の冷媒を含有する組成物は、当該冷媒が(a)PFC、(b)不飽和化合物及び(
c)HFCのみからなることが特に好ましい。
【0049】
本発明の冷媒を含有する組成物は、(a)PFCとしてPFC-14、(b)不飽和化合物とし
てHFO-1132a、(c)HFCとしてHFC-23、HFC-32及びHFC-125を含有し、且つ、
PFC-14、HFO-1132a及び当該(c)HFCの合計量を100質量%として、
PFC-14を1~15質量%が含有し、
HFO-1132aを5~60質量%が含有し、
当該(c)HFCを25~94質量%含有することが好ましい。
【0050】
本発明の冷媒を含有する組成物は、(a)PFCとしてPFC-14、(b)不飽和化合物とし
てHFO-1132a、(c)HFCとしてHFC-23、HFC-32及びHFC-125を含有し、且つ、
PFC-14、HFO-1132a及び当該(c)HFCの合計量を100質量%として、
PFC-14を2~12.5質量%が含有し、
HFO-1132aを5~55質量%が含有し、
当該(c)HFCを32.5~93質量%含有することがより好ましい。
【0051】
本発明の冷媒を含有する組成物は、(a)PFCとしてPFC-14、(b)不飽和化合物とし
てHFO-1132a、(c)HFCとしてHFC-23、HFC-32及びHFC-125を含有し、且つ、
PFC-14、HFO-1132a及び当該(c)HFCの合計量を100質量%として、
PFC-14を2~12.5質量%が含有し、
HFO-1132aを5~55質量%が含有し、
当該(c)HFCを32.5~93質量%含有することがより好ましい。
【0052】
本発明の冷媒を含有する組成物は、(a)PFCとしてPFC-14、(b)不飽和化合物とし
てHFO-1132a、(c)HFCとしてHFC-23、HFC-32及びHFC-125を含有し、且つ、
PFC-14、HFO-1132a及び当該(c)HFCの合計量を100質量%として、
PFC-14を2.5~10質量%が含有し、
HFO-1132aを5~50質量%が含有し、
当該(c)HFCを40~92.5質量%含有することが更に好ましい。
【0053】
本発明の冷媒を含有する組成物は、(a)PFCとしてPFC-14、(b)不飽和化合物とし
てHFO-1132a、(c)HFCとしてHFC-23、HFC-32及びHFC-125を含有し、且つ、
PFC-14、HFO-1132a及び当該(c)HFCの合計量を100質量%として、
PFC-14を5~10質量%が含有し、
HFO-1132aを5~45質量%が含有し、
当該(c)HFCを45~90質量%含有することが特に好ましい。
【0054】
1.2 用途
本発明の冷媒を含有する組成物は、作動流体として、1)冷凍サイクルを運転する工程
を含む冷凍方法、2)冷凍サイクルを運転する冷凍装置の運転方法等における既存の冷媒の用途に幅広く利用することができる。
【0055】
ここで、上記冷凍サイクルは、圧縮機を介しての冷媒(本発明の冷媒)を当該冷媒のみの状態、又は後述する冷媒組成物或いは冷凍機油含有作動流体の状態で冷凍装置の内部を循環させてエネルギー変換することを意味する。
【0056】
本発明には、冷凍方法における本発明の冷媒(又は当該冷媒を含む組成物)の使用、冷凍装置などの運転方法における本発明の冷媒(又は当該冷媒を含む組成物)の使用、更には本発明の冷媒(又は当該冷媒を含む組成物)を有する冷凍装置等も包含されている。
【0057】
本発明において、圧縮機を介して本発明の冷媒を含有する組成物を循環させる冷凍サイクルを構成する装置とすることができる。
【0058】
本発明の冷媒(又は当該冷媒を含む組成物)が適用できる冷凍装置としては、例えば、空調機器、冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、車載用空調機器、ターボ冷凍機及びスクリュー冷凍機からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0059】
本発明の組成物は、R23、R404A又はR410Aの代替冷媒としての使用に適している。
【0060】
2.冷媒組成物
本発明の冷媒組成物は、本発明の冷媒を少なくとも含み、本発明の冷媒と同じ用途のために使用することができる。
【0061】
また、本発明の冷媒組成物は、更に少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍装置用作動流体を得るために用いることができる。
【0062】
本発明の冷媒組成物は、本発明の冷媒に加えて、更に少なくとも1種のその他の成分を含有する。本発明の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも1種を含有していてもよい。
【0063】
上述の通り、本発明の冷媒組成物を、冷凍装置における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。
【0064】
ここで、本発明の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本発明の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは0~1質量%であり、より好ましくは0~0.5質量%であり、更に好ましくは0~0.25質量%であり
、特に好ましくは0~0.1質量%である。
【0065】
2.1 酸素
本発明の冷媒組成物は酸素を含有することができる。酸素を含有する場合、酸素の含有量は、本発明の冷媒組成物100質量%に対して、0~0.5質量%が好ましく、0~0.3質量%が
より好ましく、0~0.1質量%が特に好ましい。
【0066】
酸素の含有量が上記範囲内であれば、本発明の冷媒組成物の安定性が向上する。
【0067】
2.2 水
本発明の冷媒組成物が酸素を含有する場合、本発明の冷媒組成物は、更に他の成分として水を含有することができる。冷媒組成物における含水割合は、冷媒全体に対して、0~0
.1質量%であることが好ましく、0~0.075質量%であることがより好ましく、0~0.05質量%であることが更に好ましく、0~0.025質量%であることが特に好ましい。
【0068】
水の含有量が上記範囲内であれば、本発明の冷媒組成物の化学的安定性が高まるという予想外の効果を発現することができる。これは、本発明の冷媒組成物が酸素を含有する場合、当該冷媒組成物が更に水を含有することによって、当該冷媒組成物中に含まれる不飽和化合物(不飽和のフッ素化炭化水素類)の分子内二重結合が安定に存在でき、また、不飽和のフッ素化炭化水素類の酸化も起こりにくくなる。よって、結果として本発明の冷媒組成物の化学的安定性が向上するものと考えられる。
【0069】
2.3 トレーサー
トレーサーは、本発明の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本発明の冷媒組成物に添加される。
【0070】
本発明の冷媒組成物は、上記トレーサーを1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0071】
上記トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。好ましくは、本発明の冷媒に不可避的に混入する不純物とはなり得ない化合物をトレーサーとして選択する。
【0072】
上記トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。これらの中でも、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロ
ロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが好ましい。
【0073】
上記トレーサーとしては、具体的には、以下の化合物(以下、トレーサー化合物とも称する)がより好ましい。
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-41(フルオロメタン、CH3F)
HFC-161(フルオロエタン、CH3CH2F)
HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2)
HFC-236fa(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3)
HFC-236ea(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2)
HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF2)
HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
CFC-1113(クロロトリフルオロエチレン、CF2=CClF)
HFE-125(トリフルオロメチル-ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2)
HFE-134a(トリフルオロメチル-フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)
HFE-143a(トリフルオロメチル-メチルエーテル、CF3OCH3)
HFE-227ea(トリフルオロメチル-テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3)
HFE-236fa(トリフルオロメチル-トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3)
【0074】
上記トレーサー化合物は、10質量百万分率(ppm)~1000ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在し得る。上記トレーサー化合物は30ppm~500ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在す
ることが好ましく、50ppm~300ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することがより好ま
しく、75ppm~250ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが更に好ましく、100ppm
~200ppmの合計濃度で冷媒組成物中に存在することが特に好ましい。
【0075】
2.4 紫外線蛍光染料
本発明の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0076】
上記紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
【0077】
上記紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、ナフタルイミド及びクマリンが好ましい。
【0078】
2.5 安定剤
本発明の冷媒組成物は、安定剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0079】
上記安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
【0080】
上記安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類、アミン類等が挙げられる。
【0081】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、及びニトロベンゼン、ニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0082】
エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0083】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0084】
上記安定剤としては、上記ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類以外にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0085】
上記安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01~5質量%であり、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.25~1.5質量%が更に好
ましく、0.5~1質量%が特に好ましい。
【0086】
なお、本発明の冷媒組成物の安定性の評価方法は、特に限定されず、一般的に用いられる手法で評価することができる。そのような手法の一例として、ASHRAE標準97-2007にし
たがって遊離フッ素イオンの量を指標として評価する方法等が挙げられる。その他にも、全酸価(total acid number)を指標として評価する方法等も挙げられる。この方法は、
例えば、ASTM D 974-06にしたがって行うことができる。
【0087】
2.6 重合禁止剤
本発明の冷媒組成物は、重合禁止剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0088】
上記重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
【0089】
上記重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロ
キノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0090】
上記重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01~5質
量%であり、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.25~1.5質量%が更に好ましく、0.5~1質量%が特に好ましい。
【0091】
2.7 冷媒組成物に含み得るその他の成分
本発明の冷媒組成物は、以下の成分も含み得るものとして挙げられる。
【0092】
例えば、前述の冷媒とは異なるフッ素化炭化水素を含有することができる。他の成分としてのフッ素化炭化水素は特に限定されず、HCFC-1122及びHCFC-124、CFC-1113からなる
群より選択される少なくとも一種のフッ素化炭化水素が挙げられる。
【0093】
また、その他の成分としては、例えば、式(A):CmHnXp[式中、Xはそれぞれ独立してフ
ッ素原子、塩素原子又は臭素原子を表し、mは1又は2であり、2m+2≧n+pであり、p≧1である。]で表される少なくとも一種のハロゲン化有機化合物を含有することができる。上記ハロゲン化有機化合物は特に限定されず、例えば、ジフルオロクロロメタン、クロロメタン、2-クロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、2-クロロ-1,1-ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン等が好ましい。
【0094】
また、その他の成分としては、例えば、式(B):CmHnXp[式中、Xはそれぞれ独立してハ
ロゲン原子ではない原子を表し、mは1又は2であり、2m+2≧n+pであり、p≧1である。]で表される少なくとも一種の有機化合物を含有することができる。上記有機化合物は特に限定されず、例えば、プロパン、イソブタン等が好ましい。
【0095】
これらのフッ素化炭化水素、上記式(A)で表わされるハロゲン化有機化合物、及び上記
式(B)で表わされる有機化合物の含有量は限定的ではないが、これらの合計量として、冷
媒組成物の全量に対して0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質
量%以下が特に好ましい。
【0096】
3.冷凍機油含有作動流体
本発明の冷凍機油含有作動流体は、本発明の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍装置における作動流体として用いられる。具体的には、本発明の冷凍機油含有作動流体は、冷凍装置の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。
【0097】
上記冷凍機油の含有割合は、特に限定されず、冷凍機油含有作動流体全体に対して、通常、10~50質量%であり、12.5~45質量%が好ましく、15~40質量%がより好ましく、17.5
~35質量%が更に好ましく、20~30質量%が特に好ましい。
【0098】
3.1 冷凍機油
本発明の組成物は、冷凍機油を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0099】
上記冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、本発明の冷媒の混合物(本発明の混合冷媒)との相溶性(miscibility)及び本発明の混合冷媒の安定性等を向上する作用等の点
でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0100】
上記冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオー
ルエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0101】
上記冷凍機油は、上記基油に加えて、更に添加剤を含んでいてもよい。
【0102】
上記添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0103】
上記冷凍機油としては、潤滑の点から、40℃における動粘度が5~400cStであるものが
好ましい。
【0104】
本発明の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、更に少なくとも1種の添加剤を含ん
でもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
【0105】
3.2 相溶化剤
本発明の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤を一種単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0106】
上記相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
【0107】
上記相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテル、1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが好ましい。
【実施例】
【0108】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【0109】
実施例1~21及び比較例2~3で調製した混合冷媒のGWP、並びに、比較例1(R23)のGWPは、IPCC第4次報告書の値に基づいて評価した。
【0110】
また、実施例1~21及び比較例2~3で調製した混合冷媒のCOP及び冷凍能力、並び
に比較例1(R23)のCOP及び冷凍能力は、National Institute of Science and Technology(NIST)、Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使用し、下記条件で冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。
蒸発温度 -70℃
凝縮温度 -35℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
【0111】
これらの結果をもとに算出したGWP、COP及び冷凍能力を後掲の表1及び表2に示す。表1及び表2中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R23に対する割合(%)を示す。
【0112】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP=(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0113】
以下の実施例及び比較例の結果から、本発明の冷媒を含有する組成物は、GWPが小さい
こと、並びにR23と比較してCOP及び冷凍能力が同等又はそれ以上であること、という特性を有することが示された。
【0114】
【0115】