(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】レンズ装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20240513BHJP
【FI】
G02B7/04 D
(21)【出願番号】P 2020032718
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】野口 和宏
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-049443(JP,A)
【文献】特開2005-164621(JP,A)
【文献】特開2011-242443(JP,A)
【文献】特開2001-004892(JP,A)
【文献】特開2006-098595(JP,A)
【文献】特開2007-232889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子と、
固定部材と、
前記光学素子を保持し、前記固定部材に対して光軸方向に移動する可動部材と、
前記可動部材の前記光軸方向の移動を案内する案内部材と、
第一の支持部と、
該第一の支持部に対して前記光軸方向において離間して配置され
、且つ該第一の支持部とは別体である第二の支持部と、
前記第一の支持部および前記第二の支持部のそれぞれに保持された一対の回転素子と、
前記一対の回転素子と前記案内部材とを互いに接触させるように付勢する付勢部材と、を有し、
前記第一の支持
部は、前記可動部材および前記固定部材のうち一方
における物体側の面の一部に固定され、
前
記第二の支持部は、前記第一の支持部が固定された前記可動部材および前記固定部材のうちの一方に対して、像側の面の一部に固定され、
前記第一の支持部および前記第二の支持部のそれぞれの前記固定された位置により、前記光学素子の配置が決められ、
前記案内部材は、前記可動部材および前記固定部材のうち
、前記第一の支持部が固定されていない部材に固定されていることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記案内部材は、前記光軸方向に直交する断面において特定の形状を有する筒状部材を含むことを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記特定の形状は、円の形状であることを特徴とする請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記一対の回転素子の一対の回転軸にそれぞれ直交する第一の平面および第二の平面は、前記光軸方向に沿い、かつ互いに交差することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記光学素子の配置は、前記光学素子の傾き偏心の状態および平行偏心の状態を含むことを特徴とする請求項
1乃至4のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記第一の支持部および前記第二の支持部が固定されている前記可動部材または前記固定部材は、前記第一の支持部および前記第二の支持部の前記固定
された位置を決定するための基準形状を有することを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記第一の支持部および前記第二の支持部が固定されている前記可動部材または前記固定部材は、前記基準形状をなす基準穴が形成されていることを特徴とする請求項
6に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記固定部材に固定され、前記案内部材に沿って配された副案内部材と、
前記可動部材に固定され、前記案内部材の周りにおける前記可動部材の回転規制のための第二の回転素子と、
前記回転規制のための前記第二の回転素子と前記副案内部材とを互いに接触させるために付勢する第二の付勢部材と、を有し、
前記回転規制のための前記第二の回転素子の回転軸に直交する平面は、前記光軸方向に沿っていることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記副案内部材は、磁性材料を含み、
前記回転規制のための前記第二の付勢部材は、永久磁石を含み、前記可動部材に固定されていることを特徴とする請求項
8に記載のレンズ装置。
【請求項10】
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置により形成された像を撮る撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやスチルカメラ等に用いられるレンズ装置として、撮像光学系の光軸を挟んで平行に延伸して配置された二つの案内部材に沿って、レンズを保持する保持枠(移動枠または可動部材)の直動(直線運動または直線移動)を案内するものが知られている。このような構成は、大きな質量を有するレンズを直動案内するには、レンズ装置の姿勢変化による重力の影響の変化に対して安定した状態を維持しなければならない。その結果、レンズを移動させるのに、駆動抵抗が大きくなるため、大きな駆動力が必要になるとともに、細かな駆動を高精度に行うことが困難となる。特許文献1は、2本の案内ロッドと6つのボールベアリングとを有し、可動部材を小さな駆動抵抗で移動させることが可能なレンズ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、部品の出来上がり寸法の誤差や組み込み位置の誤差、組み立ての精度等により、可動部材の位置が目標位置(設計上の位置)からずれ、光軸(基準光軸)に対して可動部材のずれ(傾き偏心(倒れ)や平行偏心を含む偏芯等)が生じうる。本発明は、例えば、可動部材の直動案内に有利なレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、光学素子と、固定部材と、前記光学素子を保持し、前記固定部材に対して光軸方向に移動する可動部材と、前記可動部材の前記光軸方向の移動を案内する案内部材と、第一の支持部と、該第一の支持部に対して前記光軸方向において離間して配置され、且つ該第一の支持部とは別体である第二の支持部と、前記第一の支持部および前記第二の支持部のそれぞれに保持された一対の回転素子と、前記一対の回転素子と前記案内部材とを互いに接触させるように付勢する付勢部材とを有し、前記第一の支持部は、前記可動部材および前記固定部材のうち一方における物体側の面の一部に固定され、前記第二の支持部は、前記第一の支持部が固定された前記可動部材および前記固定部材のうちの一方に対して、像側の面の一部に固定され、前記第一の支持部および前記第二の支持部のそれぞれの前記固定された位置により、前記光学素子の配置が決められ、前記案内部材は、前記可動部材および前記固定部材のうち、前記第一の支持部が固定されていない部材に固定されている。
【0006】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、可動部材の直動案内に有利なレンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1におけるカメラシステムの模式図である。
【
図2】実施例1におけるカメラシステムのブロック図である。
【
図3】実施例1における直動案内機構の構成図である。
【
図4】実施例1における直動ガイドユニットの構成図である。
【
図5】実施例1における直動ガイドユニットと可動鏡筒との関係の説明図である。
【
図6(A)】実施例1における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図6(B)】実施例1における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図6(C)】実施例1における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図6(D)】実施例1における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図6(E)】実施例1における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図6(F)】実施例1における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図6(G)】実施例1における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図6(H)】実施例1における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図7】実施例1におけるメインガイドバーおよびサブガイドバー周りの説明図である。
【
図8】実施例2における直動案内機構の構成図である。
【
図9】実施例2における直動ガイドユニットの構成図である。
【
図10】実施例2におけるメインガイドバーおよびサブガイドバー周りの説明図である。
【
図11(A)】実施例2における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図11(B)】実施例2における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図11(C)】実施例2における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図11(D)】実施例2における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図11(E)】実施例2における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図12】実施例3における直動案内機構の構成図である。
【
図13】実施例3における直動ガイドユニットの構成図である。
【
図14(A)】実施例3における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図14(B)】実施例3における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図14(C)】実施例3における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図14(D)】実施例3における直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【
図15】実施例4における直動案内機構の構成図である。
【
図16(A)】実施例4における直動ガイドユニットの構成図である。
【
図16(B)】実施例4における直動ガイドユニットの構成図である。
【
図16(C)】実施例4における直動ガイドユニットの構成図である。
【
図16(D)】実施例4における直動ガイドユニットの構成図である。
【
図16(E)】実施例4における直動ガイドユニットの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0010】
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の実施例1におけるカメラシステム(撮像システム)100について説明する。カメラシステム100は、カメラ本体2と、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)1とを備えて構成される。
【0011】
図1は、カメラシステム100の模式図である。交換レンズ1は、不図示の撮像光学系および撮像光学系の少なくとも一部の光学素子を支持して駆動する構成を有する。カメラ本体2は、撮像素子21を有する。交換レンズ1とカメラ本体2は、不図示のマウントにより機械的に一体化されている。被写体からの光束は、交換レンズ1の撮像光学系により撮像素子21上に結像される。また交換レンズ1とカメラ本体2は、後述する電気接点により電気的に接続しており、交換レンズ1とカメラ本体2は相互に通信することで写真撮影を行う。撮像素子21は、画素に入射した光量に比例して発生した電荷量を電圧信号に変換するCMOSセンサなどの固体撮像素子であり、交換レンズ1の撮像光学系により形成された像を撮る。L101は、撮像光学系の一部を構成する光学素子であるフォーカスレンズであり、光軸OAに沿ってフォーカスレンズL101を前後に移動させることで最至近から無限遠の被写体の像を撮像素子21上に結像させることができる。
【0012】
図2は、カメラシステム100のブロック図である。カメラCPU22は、マイクロコンピュータにより構成され、カメラ本体2内の各部の動作を制御する。またカメラCPU22は、交換レンズ1の装着時には交換レンズ側の電気接点12とカメラ本体側の電気接点23を介して、交換レンズ1内に設けられたレンズCPU11との通信を行う。カメラCPU22がレンズCPU11に送信する情報は、フォーカスレンズL101の駆動量情報などを含む。また、レンズCPU11からカメラCPU22に送信する情報は、撮像倍率情報などを含む。なお、電気接点12および電気接点23には、カメラ本体2から交換レンズ1に電源を供給するための接点も含まれている。
【0013】
電源スイッチ24は、撮影者により操作可能なスイッチであり、カメラCPU22の起動やカメラシステム内のアクチュエータやセンサ等への電源供給を開始するために操作される。レリーズスイッチ25は、撮影者により操作可能なスイッチであり、第1ストロークスイッチSW1と第2ストロークスイッチSW2とを有する。レリーズスイッチ25からの信号は、カメラCPU22に入力される。カメラCPU22は、第1ストロークスイッチSW1からのON信号の入力に応じて、撮影準備状態に入る。撮影準備状態では、測光部26による被写体輝度の測定と焦点検出部27によって焦点検出が行われる。
【0014】
カメラCPU22は、測光結果に基づいて交換レンズ1内に実装されている不図示の絞りユニットの絞り値や撮像素子21の露光量(シャッタ秒時)等を演算する。またカメラCPU22は、焦点検出部27による撮像光学系の焦点情報に基づいて、被写体に対する合焦状態を得るためにフォーカスレンズL101の駆動量を決定する。駆動量の情報(フォーカスレンズ駆動量情報)は、レンズCPU11に送信される。レンズCPU11は、交換レンズ1の各構成部の動作を制御する。第2ストロークスイッチSW2からのON信号が入力されると、カメラCPU22はレンズCPU11に対して絞り駆動命令を送信し、絞りユニットを前述のように演算した絞り値に設定させる。
【0015】
またカメラCPU22は、露光部28に露光開始命令を送信し、不図示のミラーの退避動作や不図示のシャッタの開放動作を行わせ撮像素子21を含む撮像部29にて被写体像の露光動作を行わせる。撮像部29(撮像素子21)からの撮像信号は、カメラCPU22内の信号処理部にてデジタル変換され、さらに各種補正処理が施されて画像信号として出力される。画像信号データは、画像記録部30において、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気ディスクや光ディスク等の記録媒体に書き込まれ保存される。
【0016】
ズーム操作量検出部18は、不図示のセンサにより不図示のズームリングの回転検出を行う。MF操作量検出部14は、不図示のセンサにより不図示のマニュアルフォーカスリングの回転検出を行う。像振れ補正駆動部15は、不図示の像振れ補正装置の駆動アクチュエータとその駆動回路を含む。電磁絞り駆動部16は、カメラCPU22からの絞り駆動命令を受けたレンズCPU11により絞りユニットを指定された絞り値相当の開口状態にする。フォーカス駆動部17は、カメラCPU22から送信されたフォーカス駆動量情報に応じて、不図示のフォーカス駆動手段でフォーカスレンズL101を駆動する。
【0017】
角速度検出部13は、不図示の角速度センサを含む。角速度検出部13は、角速度センサにより角度振れであるピッチ方向(縦回転)振れとヨー方向(横回転)振れを検出し、それぞれの角速度をレンズCPU11に出力する。レンズCPU11は、角速度センサからのピッチ方向およびヨー方向の角速度信号を積分し、それぞれの方向での角変位量を演算する。そして、レンズCPU11は、前述のピッチ方向およびヨー方向の角変位量に応じて像振れ補正駆動部15を制御して、像振れ補正を行う。
【0018】
次に、
図3を参照して、本実施例のフォーカスレンズL101の直動案内機構の構成について説明する。
図3は、本実施例の直動案内機構の構成図である。前述のように、フォーカスレンズL101は、カメラCPU22から送信されたフォーカス駆動量情報に応じてフォーカス駆動部17により駆動される。なお、フォーカス駆動部17の具体的構成の説明は省略する。フォーカス駆動部17としては、ステッピングモータや磁気回路と界磁コイルからなるいわゆるVCM、その他の駆動力を発生させてフォーカスレンズL101を駆動できるものであればよい。また、
図3において、本発明に直接関係しない一部の詳細形状は省略している。
【0019】
図3(A)は直動案内機構の全体の斜視図、
図3(B)は分解斜視図である。フォーカスレンズL101は、光学系の全部もしくは一部を構成する光学素子である。121は、光学素子を保持する可動鏡筒(可動部材)である。122は可動鏡筒121の光軸方向への移動の基盤となる前側固定枠(固定部材)、123は後側固定枠(固定部材)である。可動鏡筒121は、前側固定枠122および後側固定枠123に対して光軸方向に移動する。
【0020】
124は、可動鏡筒121の移動(直動)を案内するメインガイドバー(主案内部材)である。メインガイドバー124は、直動の方向に直交する断面において特定の形状を有する筒状部材を含む。本実施例において、特定の形状は円の形状(円筒の棒)であるが、これに限定されるものではない。本実施例において、メインガイドバー124は、磁性材料(軟磁性材料)を含む。SUS430等は耐食性が高く表面処理が不要であり、加工性が良好で真円度や真直度、表面粗さ等の機械的精度の高さの観点からも、メインガイドバー124に適して用いられる。125は、メインガイドバー124に平行に前側固定枠122および後側固定枠123に固定された同一の断面形状を延伸してなるサブガイドバー(副案内部材)であり、本実施例では円筒の棒である。サブガイドバー125は、前側固定枠122および後側固定枠123に固定され、メインガイドバー124に沿って配されている。ここで、前側固定枠122と後側固定枠123は互いに独立した部材として表現しているが、可動鏡筒121の移動を案内するメインガイドバー124とサブガイドバー125の両端を光軸OAに平行に精度よく位置決め保持する部材であればよい。従って、前側固定枠122と後側固定枠123のいずれかが可動鏡筒121の外側を覆うように光軸方向に延伸した図示しない形状を有し、ビス締結等で両者は精度よく一体化されていてもよい。
【0021】
126は光軸方向(可動鏡筒121の直動の方向)に離間して配置される第一の直動ガイドユニット(第一の支持部)および第二の直動ガイドユニット(第二の支持部)であり、締結ビス127により可動鏡筒121に一体化される。なお、直動ガイドユニット126の詳細構成については後述する。128は、2極マグネットユニットであり、可動鏡筒121に一体化される。これは、メインガイドバー124と協働して付勢部材を構成するが、詳細については後述する。
【0022】
次に、
図4を参照して、直動ガイドユニット126の構成について説明する。
図4は、直動ガイドユニットの構成図であり、
図4(A)は正面図、
図4(B)は分解斜視図、
図4(C)は要部断面図をそれぞれ示す。
【0023】
129は支持ベースである。130はボールベアリング(一対の回転素子)である。ボールベアリング130は、周知のように、内輪130a、外輪130b、ボールおよび保持器130cからなる。外輪130bは、内輪130aに対してボールおよび保持器130cのボールの転動に伴って回転するため、駆動抵抗は極めて小さい。なお、ボールベアリング130の詳細な内部構造は断面図では省略している。
【0024】
131は軸ビスである。軸ビス131は、ビス頭部131a、軸部131b、および、ネジ部131cからなる。132は六角ナットである。軸部131bは、ボールベアリング130の内輪130aと支持ベース129の穴部129aと係合し、ネジ部131cを六角ナット132と螺合させ締めこむことで、ボールベアリング130の内輪130aを支持ベース129の所定位置に固定する。133は金属ワッシャーである。支持ベース129は、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂の成型品が好適であり、ビス頭部131aで内輪130aを支持ベース129に締め込み固定する際に金属ワッシャー133を間に挟むことで、内輪130aの沈み込みを防ぎ緊密な固定を可能とする。
【0025】
図4(C)を参照して、メインガイドバー124と2個のボールベアリング130との関係を説明する。130dは、2個のボールベアリングの回転軸を示している。前述したように、メインガイドバー124は、前側固定枠122と後側固定枠123により光軸OAに平行に支持されている。
図4(C)は、2個のボールベアリング130とメインガイドバー124とが当接(接触)している状態の2個のボールベアリング130の回転軸130dを含む光軸OAに垂直な平面での断面図である。回転軸130dは、光軸OAと垂直な平面内にある。このため、一対のボールベアリング130のそれぞれの回転軸130dに垂直な第一の平面130eおよび第二の平面130fは、可動鏡筒121の移動方向に平行であって、かつ互いに交差する(交差点Pで交わる)。すなわち一対のボールベアリング130の一対の回転軸にそれぞれ直交する第一の平面130eおよび第二の平面130fは、直動の方向に沿い、かつ互いに交差する。より分かり易く表現すると、2個のボールベアリング130の外輪130bの外周面は角度をもってメインガイドバー124と当接しているため、安定した支持および案内が可能である。
【0026】
本実施例では、2個のボールベアリング130の外輪130bがメインガイドバー124を受けている角度は120度であるが、これに限定されるものではなく、他の角度であってもよい。また本実施例では、2個のボールベアリング130の回転軸130dは光軸方向に同一の位置に配置されているが、光軸方向にずれていてもよい。
【0027】
次に、
図5を参照して、第一の直動ガイドユニット126と可動鏡筒121との関係について説明する。
図5は、第一の直動ガイドユニット126と可動鏡筒121との関係の説明図である。
図5(A)は
図4(A)の直動ガイドユニット126の正面図に対応する背面図、
図5(B)は可動鏡筒121との関係の説明図である。
【0028】
支持ベース129は、締結ビス127で可動鏡筒121に固定するための貫通穴129bを有する。締結ビス127の外径と貫通穴129bの内径には径差があり、必要十分な隙間を設けている。121aは、直動ガイドユニット126の取り付け面と締結ビス127がねじ込まれる穴部を有するガイドユニット取り付け部である。支持ベース129の背面部には基準突起129cが設けられており、幅129cの平行壁を成している。可動鏡筒121には基準突起129cに対応して基準円筒部121bが形成されており、基準突起129cと基準円筒部121bは係合している。従って、直動ガイドユニット126の可動鏡筒121への組み込み時には、基準円筒部121bを基準として、矢印で示される並進Hと回転Rの取り付け位置の自由度を有する。すなわち直動ガイドユニット126は、直動の方向に直交する面の内において、固定位置の自由度を有し、直動ガイドユニット126の固定位置により、フォーカスレンズL101の配置が決められている。フォーカスレンズL101の配置は、フォーカスレンズL101の傾き偏心の状態および平行偏心の状態を含む。
【0029】
次に、
図6(A)~
図6(H)を参照して、可動鏡筒121が保持するフォーカスレンズL101の倒れおよび偏芯を抑制して精度よく保持案内するための第一の直動ガイドユニットおよび第二の直動ガイドユニットの組込み構成について説明する。
図6は、直動ガイドユニットの組込み構成の説明図である。
【0030】
図6(A)は、可動鏡筒121と組立て基準軸の斜視図である。K101は第一の組立て基準軸である。第一の組立て基準軸K101は、第一の軸部K101a、第二の軸部K101b、および、フランジ部K101cからなり、各部は旋盤等で同軸度が精度良く加工されている。121c、121dは、可動鏡筒121に設けられた第一の支持部および第二の支持部の固定位置を決定するための基準形状を成す基準穴である。本実施例では、基準穴121c、121dは同径であるが、これに限定されるものではない。
【0031】
本実施例において、可動鏡筒121のフォーカスレンズL101の保持部に対して、基準穴121c、121dは高精度に形成されている。第一の組立て基準軸K101の第一の軸部K101aは可動鏡筒121の基準穴121c、121dと同一径であり、第二の軸部K101bはメインガイドバー124と同一径である。
【0032】
図6(B)は、第一の組立て基準軸K101を挿入した可動鏡筒121と第一の直動ガイドユニット126の組込み前の斜視図である。可動鏡筒121の基準穴121c、121dは同軸に形成されているため、第一の組立て基準軸K101の第一の軸部K101aが両方の基準穴121c、121dに係合することで、第二の軸部K101bはメインガイドバー124と同等の位置付けになる。第二の軸部K101bに直動ガイドユニット126の2個のボールベアリング130を当接させて可動鏡筒121に組み込むことで、
図3(A)のメインガイドバー124に対する直動ガイドユニット126と同等の状態にすることができる。
【0033】
図6(C)は、可動鏡筒121への直動ガイドユニット126の組込み位置決定状態の斜視図である。可動鏡筒121と第一の組立て基準軸K101は、不図示の治具で適切に固定されている。直動ガイドユニット126は、基準突起129cと基準円筒部121b(
図5(B)参照)とが係合して、不図示の治具で可動鏡筒121へ押し付けられている。この状態で下方から矢印Kの方向に2個のボールベアリング130が第二の軸部K101bに当接せしめられる。この状態を保ったままで、
図6(D)に示されるように締結ビス127が可動鏡筒121にねじ込まれて直動ガイドユニット126はメインガイドバー124に対する適切な位置に固定される。
図6(E)および
図6(F)は、直動ガイドユニット126と可動鏡筒121が締結ビス127で結合された部分の断面図である。支持ベース129のビス止め部には内周が円錐状の縁部129dを有し、
図6(E)に示されるように、締結ビス127のビス頭との間に略三角の空間を形成している。この空間の全周に隙間埋め接着剤134が充填され硬化することで、直動ガイドユニット126と可動鏡筒121との位置ずれを積極的に防止する役割を果たす。接着剤134としては、紫外線を照射することにより短時間で硬化するUV接着剤などが適して用いられる。
【0034】
図6(G)および
図6(H)は、第二の直動ガイドユニット126の組込み手順を示す。K102は、第二の組立て基準軸である。第二の組立て基準軸K102は、第一の軸部K102a、第二の軸部K102b、フランジ部K102c、および、フランジ部K102dからなり、各部は旋盤等で同軸度および直角度が精度良く加工されている。第二の組立て基準軸K102の第一の軸部K102aは可動鏡筒121の基準穴121c同一径であり、第二の軸部K102bはメインガイドバー124と同一径である。
【0035】
図6(H)は、第二の組立て基準軸K102を挿入した可動鏡筒121と第二の直動ガイドユニット126の固定前の斜視図である。第二の直動ガイド軸126は第二の組立て基準軸K102を挿入すると組込めなくなるため、事前に所定位置に投入しておく。第一の軸部K102aを基準穴121cに係合させ、フランジ部K102dを可動鏡筒121の基準穴121cと垂直な面に当接させることで、第二の軸部K102bはメインガイドバー124と同等の位置付けになる。第二の直動ガイドユニット126を第一の直動ガイドユニット126と同等の手順で第二の軸部K102bに対して組み込むことで、第二の直動ガイドユニット126は、メインガイドバー124に対する適切な位置に固定される。
【0036】
次に、
図7を参照して、メインガイドバー124およびサブガイドバー125周りの構成について説明する。
図7は、メインガイドバー124およびサブガイドバー125周りの説明図である。
図7(A)は、後側固定枠123側から見たフォーカスレンズL101の直動案内機構の背面図である。説明のために、後側固定枠123を不図示としている。
図7(B)は、
図7(A)のメインガイドバー124、フォーカスレンズL101、および、サブガイドバー125の中心を通るB-B断面図である。
【0037】
まず、
図7(B)の断面図を参照して、二組の一対の回転素子と主案内部材とを当接させる付勢部材について説明する。メインガイドバー124は、軟磁性材料で形成された主案内部材であり、2極マグネットユニット128は光軸方向に2極に着磁された永久磁石128aとバックヨーク128bとからなる支持用永久磁石である。詳細形状は省略するが、バックヨーク128bは、可動鏡筒121に挟み込み構造で固定されている。永久磁石128aは、バックヨーク128bに磁気的に吸着して結合しているが、接着の追加などで可動鏡筒121とより強固に一体化される。メインガイドバー124と2極マグネットユニット128との磁気的吸引力により、
図4(C)のように、二組の一対のボールベアリング130の4個がメインガイドバー124に当接する(付勢される)ことで可動鏡筒121を光軸方向に直動案内可能とする。
【0038】
図7(A)において、サブガイドバー125には、ボールベアリング140が当接している。本実施例では、直動ガイドユニット126に組み込まれているボールベアリング130と同じ構成でボールベアリング140を軸ビス141、六角ナット142、および、金属ワッシャー143で、可動鏡筒121の部位121eに組み込む。ボールベアリング140は、第二の回転素子である。ボールベアリング140の回転軸線140dに垂直な平面は可動部材の移動方向に対して平行である。すなわち回転規制のためのボールベアリング140の回転軸に直交する平面は、直動の方向に沿っている。本実施例では、第二の回転素子と副案内部材とを当接(接触または付勢)させる第二の付勢部材を明示していない。前述したように、フォーカス駆動部からメインガイドバー124に対して可動鏡筒121が反時計回り方向のトルクを受けて、ボールベアリング140の外輪140bは、サブガイドバー125に当接して案内される。
【0039】
121fは、サブガイドバー125を挟んでボールベアリング140の対向側に設けられた脱落防止壁である。サブガイドバー125にボールベアリング140が当接している状態では、脱落防止壁121fはサブガイドバー125に対して隙間を有し、可動鏡筒121が時計回り方向のトルクを受けた時にストッパーとして当接する。また、
図7(B)において、基準穴121c、121dとメインガイドバー124との間には、通常状態では隙間を有し、外部からの衝撃力などが作用した際にはストッパーとしての役割を果たす。
【0040】
本実施例において、直動ガイドユニット(第一の直動ガイドユニットおよび第二の直動ガイドユニット)126は、基準穴121c、121dを基準として可動鏡筒121に精度よく固定されている。ただし、メインガイドバー124周りの角度位置を決めるボールベアリング140は種々の位置誤差要因を含むため、メインガイドバー124とサブガイドバー125の位置関係に応じてフォーカスレンズL101は許容できる範囲内で偏芯している。
【0041】
本実施例において、直動ガイドユニット(第一の直動ガイドユニットおよび第二の直動ガイドユニット)126は可動鏡筒121に固定され、メインガイドバー124は前側固定枠122および後側固定枠123に固定されているが、これに限定されるものではない。直動ガイドユニット126を前側固定枠122および後側固定枠123に固定し、メインガイドバー124を可動鏡筒121に固定してもよい。すなわち、第一の直動ガイドユニットおよび第二の直動ガイドユニットは可動部材(可動鏡筒121)または固定部材(前側固定枠122、後側固定枠123)の一方に固定され、メインガイドバー124は可動部材または固定部材の他方に固定されていればよい。この点は、他の実施例でも同様である。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明の実施例2における直動案内機構(フォーカス直動案内機構)について説明する。
図8は、本実施例の直動案内機構の構成図である。実施例1と同様に、フォーカス駆動部の構成については省略する。
図8(A)は、直動案内機構の全体の斜視図、
図8(B)は分解斜視図である。フォーカスレンズL201は、光学系の全部もしくは一部を成す光学素子、221は光学素子を保持する可動鏡筒(可動部材)、222は可動鏡筒221の光軸方向への移動の基盤となる前側固定枠(固定部材)、223は後側固定枠(固定部材)である。可動鏡筒221は、前側固定枠222および後側固定枠223に対して光軸方向に移動する。224は、同一の断面形状を延伸してなり可動部材の移動を案内するメインガイドバー(主案内部材)である。225は、メインガイドバー224に平行に固定部材に固定された同一の断面形状を延伸してなるサブガイドバー(副案内部材)である。
【0043】
本実施例では、メインガイドバー224およびサブガイドバー225共に円筒の棒であり軟磁性材料からなり、SUS430等は耐食性が高く表面処理が不要であり、加工性が良好で真円度や真直度、表面粗さ等の機械的精度の高さの観点からも好適である。ここで、前側固定枠222と後側固定枠223は、実施例1と同様に、不図示の形状を有し、ビス締結等で両者は精度よく一体化され、メインガイドバー224とサブガイドバー225の両端を光軸に平行に精度よく位置決め保持している。226は、光軸方向に離間して配置される第一の直動ガイドユニット(第一の支持部)および第二の直動ガイドユニット(第二の支持部)であり、締結ビス227により可動鏡筒221に一体化される。
【0044】
次に、
図9を参照して、直動ガイドユニット226の構成について説明する。
図9は、直動ガイドユニット226の構成図である。
図9(A)は斜視図、
図9(B)は要部断面図、
図9(C)は
図9(A)とは異なる方向視の斜視図、
図9(D)は要部断面図である。
【0045】
229は支持ベース、230はボールベアリング(一対の回転素子)である。ボールベアリング230は、実施例1と同様に、内輪、外輪、ボールおよび保持器よりなり、駆動抵抗は極めて小さい。なお、ボールベアリング230の詳細な内部構造は断面図では省略している。231は軸ビスであり、六角ナット232と螺合させ締めこむことで金属ワッシャー233を介してボールベアリング230の内輪を支持ベース229の所定位置に固定する。
【0046】
図9(B)は、一対のボールベアリング230の回転軸を含む平面での直動ガイドユニット226の断面図である。メインガイドバー224とボールベアリング230との関係は実施例1の
図4(C)におけるメインガイドバー124とボールベアリング130との関係と同様のため、その詳細な説明は省略する。228は2極マグネットユニットであり、直動ガイドユニット226に保持されている。
【0047】
図9(D)は、2極マグネットユニット228の位置での断面図である。228aは光軸方向に2極に着磁された永久磁石、228bはバックヨークであり、支持用永久磁石を構成する。永久磁石228
aは、支持ベース229の突き当て面229dに突き当てた状態で固定されている。メインガイドバー224は、軟磁性材料からなり、2極マグネットユニット228とは磁気的に吸着力が作用している。このため、一対のボールベアリング230とメインガイドバー224は当接状態となり付勢部材を構成する。本実施例では、メインガイドバー224に当接するボールベアリング230と磁気的に結合する2極マグネットユニット228が支持ベース229に設けられている。2極マグネットユニット228とメインガイドバー224との間隔は突き当て面229dにより設定されるため、より安定した磁気吸着力の設定が可能となる。
【0048】
次に、
図10を参照して、メインガイドバー224およびサブガイドバー225周りの構成について説明する。
図10は、メインガイドバー224およびサブガイドバー225周りの説明図である。
図10(A)は、後側固定枠223側から見たフォーカスレンズL201の直動案内機構の背面図である。説明のために、後側固定枠223を不図示としている。
図10(B)は、サブガイドバー225側からの斜視図である。
図10(C)は、
図10(A)のメインガイドバー224、フォーカスレンズL201およびサブガイドバー225の中心を通るC-C断面図である。
【0049】
まず、
図10(C)の断面図を参照して、二組の一対の回転素子と主案内部材とを当接させる付勢部材について説明する。メインガイドバー224は軟磁性材料で形成された主案内部材であり、2極マグネットユニット228は光軸方向に2極に着磁された永久磁石228aとバックヨーク228bよりなる支持用永久磁石であり、直動ガイドユニット226に設けられている。メインガイドバー224と2極マグネットユニット228との磁気的吸引力により、
図9(B)のように、二組の一対のボールベアリング230の4個がメインガイドバー224に当接する(付勢される)ことで、可動鏡筒221を光軸方向に直動案内可能とする。
【0050】
図10(A)および
図10(B)において、サブガイドバー225にはボールベアリング240が当接している。本実施例では、直動ガイドユニット226に組み込まれているボールベアリング230と同じ構成でボールベアリング240を軸ビス241、六角ナット242および金属ワッシャー243で可動鏡筒221の部位221eに組み込んでいる。ボールベアリング240は、第二の回転素子である。ボールベアリング240の回転軸線240dに垂直な平面は、可動鏡筒221の移動方向に対して平行である。250は、2極マグネットユニットである。250aは光軸方向に2極に着磁された永久磁石、250bはバックヨークであり、永久磁石を構成する。永久磁石250aは、バックヨーク250bが可動鏡筒221の挟み込み部221gにより保持されている。永久磁石250aは、バックヨーク250bに磁気的に吸着して結合しているが、接着の追加などで可動鏡筒221とより強固に一体化される。
【0051】
サブガイドバー225は、磁性材料(軟磁性材料)を含み、2極マグネットユニット250とは磁気的に吸着力が作用している。このため、ボールベアリング240とサブガイドバー225は当接状態となり、第二の付勢部材を構成する。221fは、サブガイドバー225を挟んでボールベアリング240の対向側に設けられた脱落防止壁である。サブガイドバー225にボールベアリング240が当接している状態では、脱落防止壁221fはサブガイドバー225に対して隙間を有し、可動鏡筒221が時計回り方向のトルクを受けた時にストッパーとして当接する。本実施例では、メインガイドバー224に対してストッパーを設けていないが、不図示の固定部材の形状で可動鏡筒221の動きを規制することや、メインガイドバー224に対して可動鏡筒221に実施例1と同様のストッパー部を設けてもよい。
【0052】
次に、
図11(A)~
図11(E)を参照して、可動鏡筒221が保持するフォーカスレンズL201の倒れおよび偏芯を抑制して精度よく保持案内するための直動ガイドユニット226の組込み構成について説明する。
【0053】
図11(A)は、可動鏡筒221と組立て基準部材の斜視図である。可動鏡筒221にはボールベアリング240が組み込まれており、フォーカスレンズL201は組み込まれていない。221hはフォーカスレンズL201が係合するレンズ係合径であり、221iはフォーカスレンズL201の光軸方向のレンズ突き当て面である。レンズ係合径221hの中心線とレンズ突き当て面221iとは直交している。K201は組立て基準部材である。K201aはレンズ係合径221hと同一径の円筒部であり、K201bはレンズ突き当て面221iを当接させる当接面である。円筒部K201aの中心線と当接面K201bとは直交している。K201cは、フォーカス直動案内機構におけるメインガイドバー224と位置および形状が同一のメイン基準軸である。K201dは、サブガイドバー225と位置および形状が同一のサブ基準軸である。
【0054】
図11(B)は、組立て基準部材K201と可動鏡筒221とを組み合わせた状態の斜視図である。両者は円筒部K201aとレンズ係合径221hとが係合し、当接面K201bとレンズ突き当て面221iとが当接している。
図11(C)は、メイン基準軸K201cの中心線、円筒部K201aの中心線、および、サブ基準軸K201dの中心線での
図11(B)の断面図である。可動鏡筒221と組立て基準部材K201は、不図示の治具により当接面K201bとレンズ突き当て面221iとが当接し、円筒部K201aとレンズ係合径221hとが相対回転自由な状態で適切に保持されている。本実施例において、可動鏡筒221のレンズ係合径221hとレンズ突き当て面221iが第一および第二の支持部の固定位置を決定するための基準形状である。レンズ係合径221hとレンズ突き当て面221iは、フォーカスレンズL201を保持する部分であるため、高い精度を有する。
【0055】
図11(D)は、
図11(B)と同じ状態での平面図である。可動鏡筒221は、図示する矢印Sの力を受けて、ボールベアリング240とサブ基準軸K201dが当接している。
図11(E)は、直動ガイドユニット(第一の直動ガイドユニットおよび第二の直動ガイドユニット)226の組付けの説明図である。ボールベアリング240をサブ基準軸サブ基準軸K201dに当接させた状態を維持しながら、直動ガイドユニット226を実施例1と同様の手順で可動鏡筒221に組み付ける。図に示されるように、直動ガイドユニット226を矢印Mの力を加えて1対のボールベアリング230がメイン基準軸K201cに当接した状態で支持ベース229を締結ビス227で可動鏡筒221に固定する。また実施例1と同様に、支持ベース229と締結ビス227のビス頭との隙間を隙間埋め接着剤234を充填して硬化させる。
本実施例でもメインガイドバー224周りの角度位置を決めるボールベアリング240は、可動鏡筒221のレンズ係合径221hに対して種々の位置誤差要因を有する。ただし、係合径221hの中心線に対して回転させてボールベアリング240をサブ基準軸K201dに当接させているため、種々の位置誤差要因によるフォーカスレンズL201の偏芯量は著しく軽減される。
【実施例3】
【0056】
次に、本発明の実施例3における直動案内機構(フォーカス直動案内機構)について説明する。
図12は、本実施例の直動案内機構の構成図である。実施例1と同様に、フォーカス駆動部の構成については省略する。
図12(A)は、直動案内機構の全体の斜視図、
図12(B)は分解斜視図である。フォーカスレンズL301は、光学系の全部もしくは一部を成す光学素子、321は光学素子を保持する可動鏡筒(可動部材)、322は可動鏡筒321の光軸方向への移動の基盤となる前側固定枠(固定部材)、323は後側固定枠(固定部材)である。可動鏡筒321は、前側固定枠322および後側固定枠323に対して光軸方向に移動する。
【0057】
326は、光軸方向に離間して配置される第一の直動ガイドユニット(第一の支持部)および第二の直動ガイドユニット(第二の支持部)であり、締結ビス327により前側固定枠322および後側固定枠323に一体化される。322cは、前側固定枠322への支持部の固定位置を決定するための基準形状を成す基準穴である。323cは、後側固定枠323への支持部の固定位置を決定するための基準形状を成す基準穴である。
【0058】
324は同一の断面形状を延伸してなり可動部材の移動を案内するメインガイドバー(主案内部材)であり、本実施例では円筒の棒であり軟磁性材料からなる。可動鏡筒321に設けられた321c、321dは、メインガイドバー324をフォーカスレンズL301に対して、倒れおよび偏芯を高精度に位置決めするためのガイドバー保持穴である。メインガイドバー324は、保持穴321c、321dに換装され、凹み部321aで可動鏡筒321と接着固定される。本実施例では、可動鏡筒321とメインガイドバー324は一体で光軸方向に移動する。
【0059】
325はメインガイドバー324に平行に固定部材に固定された同一の断面形状を延伸してなるサブガイドバー(副案内部材)である。ここで、前側固定枠322と後側固定枠323は、実施例1と同様に不図示の形状を有し、ビス締結等で両者は精度よく一体化されている。メインガイドバー324が貫通する基準穴322cと基準穴323cの中心を結ぶ仮想線は精度よく位置決めされ、サブガイドバー325の両端を光軸に平行に精度よく位置決め保持している。
【0060】
次に、
図13を参照して、直動ガイドユニット326の構成について説明する。
図13は、直動ガイドユニット326の構成図である。
図13(A)は斜視図、
図13(B)は要部断面図、
図13(C)は
図13(A)とは異なる方向視の斜視図、
図13(D)は要部断面図である。
【0061】
329は支持ベース、330はボールベアリング(一対の回転素子)である。ボールベアリング330は、実施例1と同様に、内輪、外輪、ボールおよび保持器よりなり、駆動抵抗は極めて小さい。なお、ボールベアリング330の詳細な内部構造は省略している。331は軸ビスであり、六角ナット332と螺合させ締めこむことで金属ワッシャー333を介してボールベアリング330の内輪を支持ベース329の所定位置に固定する。
【0062】
図13(B)は、一対のボールベアリング330の回転軸を含む平面での直動ガイドユニット326の断面図である。メインガイドバー324とボールベアリング330との関係は、実施例1の
図4(C)におけるメインガイドバー124とボールベアリング130との関係と同様であるため、その詳細な説明は省略する。328は、マグネットユニットであり、直動ガイドユニット326に保持されている。
【0063】
図13(D)は、マグネットユニット328の位置での断面図である。328a、328bは永久磁石であり、着磁方向が逆に配置されている。328cはバックヨークであり、支持用永久磁石を構成する。永久磁石328a、328bは、支持ベース329の突き当て面329dに突き当てた状態で固定されている。メインガイドバー324は軟磁性材料よりなり、マグネットユニット328とは磁気的に吸着力が作用しているので、一対のボールベアリング330とメインガイドバー324は当接状態となり、付勢部材を構成する。本実施例では、メインガイドバー324に当接するボールベアリング330と磁気的に結合するマグネットユニット328が支持ベース329に設けられている。マグネットユニット328とメインガイドバー324との間隔は、突き当て面329dにより設定されるため、より安定した磁気吸着力の設定が可能となる。
【0064】
次に、
図14を参照して、可動鏡筒321が保持するフォーカスレンズL301の倒れおよび偏芯を抑制して精度よく保持案内するための直動ガイドユニット326の組込み構成について説明する。
図14(A)は、固定枠と組立て基準軸の斜視図である。K301は、組立て基準軸である。組立て基準軸K301は、第一の軸部K301a、第二の軸部K301b、および、フランジ部K301cからなり、各部は旋盤等で同軸度が精度良く加工されている。前側固定枠322は、直動ガイドユニット326の固定位置の基準となる基準穴322cを有する。組立て基準軸K301の第一の軸部K301aは前側固定枠322の基準穴322cと同一径であり、第二の軸部K301bはメインガイドバー324と同一径である。
【0065】
図14(B)は、組立て基準軸K301を挿入した前側固定枠322と第一の直動ガイドユニット326の組込み前の斜視図である。第一の軸部K301aは前側固定枠322の基準穴322cと同軸に形成されている。このため、組立て基準軸K301の第一の軸部K301aが基準穴322cに係合することで、第二の軸部K301bはメインガイドバー324と同等の位置付けになる。第二の軸部K301bに直動ガイドユニット326の2個のボールベアリング330を当接させて前側固定枠322に組み込むことで、
図12(A)のメインガイドバー324に対する直動ガイドユニット326と同等の状態にすることができる。
【0066】
支持ベース329は、締結ビス327で前側固定枠322に固定するための貫通穴329bを有する。締結ビス327の外径と貫通穴329bの内径には径差があり、必要十分な隙間を設けている。322aは、直動ガイドユニット326の取り付け面と締結ビス327がねじ込まれる穴部を有するガイドユニット取り付け部である。322e、329dは、実施例1の
図6(E)および
図6(F)を参照して説明した直動ガイドユニットの固定を補強するための接着に関する形状であり、322eは前側固定枠322に設けた円錐状突起であり、329dは支持ベース329に設けた円錐斜面である。
【0067】
図14(C)は、前側固定枠322への直動ガイドユニット326の組込み位置決定状態の斜視図である。前側固定枠322と組立て基準軸K301は図示しない治具で適切に固定されており、直動ガイドユニット326は図示しない治具で前側固定枠322へ押し付けられている。この状態で下方から矢印K方向に2個のボールベアリング330が第二の軸部K301bに当接せしめられる。この状態を保ったままで、
図14(D)に示されるように、締結ビス327が前側固定枠322にねじ込まれて直動ガイドユニット126はメインガイドバー324に対する適切な位置に固定される。円錐状突起322eと円錐面329dの作る空間に隙間埋め接着剤334を充填して硬化させることで、直動ガイドユニット326と前側固定枠322との位置ずれをより積極的に防止することができる。後側固定枠323に第二の直動ガイドユニット326も同様の手順で精度良く固定することで、可動鏡筒321の倒れおよび偏芯の精度を向上させることができる。なお、可動鏡筒321のメインガイドバー324周りの角度位置をサブガイドバー325で規制する構成は実施例1もしくは実施例2のいずれでもよく、他の構成でもよい。
【0068】
本実施例では、直動ガイドユニット326を前側固定枠322および後側固定枠323に固定するため、メインガイドバー324に対する光軸方向の支持部を長く設定可能であり、フォーカスレンズL301の倒れに対する精度向上に有利な構成である。
【実施例4】
【0069】
次に、本発明の実施例4における直動案内機構(フォーカス直動案内機構)について説明する。
図15は、本実施例の直動案内機構の構成図である。実施例1と同様に、フォーカス駆動部の構成については省略する。
図15(A)は、直動案内機構の全体の斜視図、
図15(B)は説明のために後側固定枠を不図示にした全体の斜視図、
図15(C)は分解斜視図である。
【0070】
フォーカスレンズL401は、光学系の全部もしくは一部を構成する光学素子である。421は、フォーカスレンズL401を保持する可動鏡筒(可動部材)である。422は可動鏡筒421の光軸方向への移動の基盤となる前側固定枠(固定部材)、423は後側固定枠(固定部材)である。可動鏡筒421は、前側固定枠422および後側固定枠423に対して光軸方向に移動する。426は、光軸方向に離間して配置される第一の直動ガイドユニット(第一の支持部)および第二の直動ガイドユニット(第二の支持部)あり、締結ビス427により前側固定枠422および後側固定枠423に一体化される。422cは、前側固定枠422への支持部の固定位置を決定するための基準形状を成す基準穴である。423cは、後側固定枠423への支持部の固定位置を決定するための基準形状を成す基準穴である。
【0071】
424は、同一の断面形状を延伸してなり可動鏡筒421の移動を案内するメインガイドバー(主案内部材)であり、本実施例では円筒の棒である。可動鏡筒421に設けられた421c、421dは、メインガイドバー424をフォーカスレンズL401に対して、倒れおよび偏芯を高精度に位置決めするためのガイドバー保持穴である。メインガイドバー424は、保持穴421c、421dに換装され、凹み部421aで可動鏡筒421と接着固定される。本実施例では、可動鏡筒421とメインガイドバー424は一体的に光軸方向に移動する。
【0072】
425は、メインガイドバー424に平行に固定部材に固定された同一の断面形状を延伸してなるサブガイドバー(副案内部材)である。ここで、前側固定枠422と後側固定枠423は、実施例1と同様に、不図示の形状を有し、ビス締結等で両者は精度よく一体化されている。メインガイドバー424が貫通する基準穴422cと基準穴423cの中心を結ぶ仮想線は精度よく位置決めされ、サブガイドバー425の両端を光軸に平行に精度よく位置決め保持している。
【0073】
実施例1~3では、第一の支持部および第二の支持部のそれぞれに保持される一対の回転素子と、二組の一対の回転素子と主案内部材とを当接させる付勢部材は、磁性体と磁石との磁気的吸引力である。一方、本実施例の付勢部材は、バネを用いた機械的な構成を有する。
【0074】
次に、
図16(A)~
図16(E)を参照して、直動ガイドユニット426の構成について説明する。
図16(A)~
図16(E)は、直動ガイドユニット426の構成図である。
図16(A)は直動ガイドユニット426の斜視図、
図16(B)は要部断面図、
図16(C)は
図16(A)の分解斜視図、
図16(D)は
図16(A)とは異なる方向視の斜視図、
図13(E)は分解斜視図である。
【0075】
429は支持ベース、430はボールベアリング(一対の回転素子)である。ボールベアリング430は、実施例1と同様に、内輪、外輪、ボールおよび保持器よりなり、駆動抵抗は極めて小さい。ボールベアリング430の詳細な内部構造は断面図では省略している。431は軸ビスであり、六角ナット432と螺合させ締めこむことで金属ワッシャー433を介してボールベアリング430の内輪を支持ベース429の所定位置に固定する。459は付勢部材、460は付勢部材の一部を構成するボールベアリングである。ボールベアリング460は、ボールベアリング430の同じ構成で、軸ビス461、六角ナット462、および、金属ワッシャー463で、付勢部材459に組み付けられている。
【0076】
図16(B)は、一対のボールベアリング430の回転軸を含む平面での直動ガイドユニット426の断面図である。メインガイドバー424とボールベアリング430との関係は、実施例1の
図4(C)におけるメインガイドバー124とボールベアリング130との関係と同様であるため、その詳細な説明は省略する。ボールベアリング460は、メインガイドバー424が一対のボールベアリング430に当接するように押し付けている。この点に関して、
図16(A)、(C)、(D)、(E)を参照して更に説明する。458は回転軸であり、支持ベース429の支持穴429fに保持され、付勢部材459を回転穴部459bに対して揺動可能に支持している。457は、付勢用の圧縮コイルバネである。圧縮コイルバネ457は支持ベース429の穴部429eに収納され、付勢部材459の突起部459cと係合して押し上げる。従って、回転軸458を回転軸としてボールベアリング460を一対のボールベアリング430の方向に押し下げることで、メインガイドバー424が挟み込まれて保持される。
【0077】
本実施例では、実施例3と同様に、第一の直動ガイドユニットおよび第二の直動ガイドユニット426は、基準穴422cと基準穴423cを基準に、前側固定枠422および後側固定枠423に固定される。この点は、繰り返しになるので説明は省略する。また、サブガイドバー425に関連する構成も、実施例3と同様である。
【0078】
本実施例は、バネを用いた機械的な付勢部材を構成している。本実施例は直動案内機構に関し、駆動手段や位置検出手段については限定されるものではない。駆動手段としては、VCMなど磁力を駆動力発生に直接利用し周辺に漏れ磁束を発生するもの、位置検出手段では磁石の磁束変化をMR素子などで検出するものなどがある。本実施例では、付勢部材として永久磁石を使わないことで駆動手段や位置検出手段の種類の選択や配置位置の制約が小さくなり全体構成の自由度が高い。
【0079】
以上のように、各実施例のレンズ装置は、光軸方向に移動する光学素子を倒れおよび偏芯を抑制して精度よく保持案内するとともに、小さな駆動抵抗で移動可能とする直動案内機構を有する。各実施例によれば、例えば、光軸方向に移動する光学素子を高精度に保持して案内するとともに、小さな駆動抵抗で移動させる点で有利なレンズ装置および撮像装置を提供することができる。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0081】
例えば、各実施例ではレンズ装置として交換レンズについて説明したが、本発明は、レンズ装置がカメラ本体に一体的に設けられた撮像装置や、デジタルスチルカメラおよびビデオカメラなどにも適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 交換レンズ(レンズ装置)
121 可動鏡筒(可動部材)
122 前側固定枠(固定部材)
123 後側固定枠(固定部材)
124 メインガイドバー(主案内部材)
126 直動ガイドユニット(第一の支持部、第二の支持部)
128 2極マグネットユニット(付勢部材)
130 ボールベアリング(一対の回転素子)
L101 フォーカスレンズ(光学素子)