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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】検体検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240513BHJP
   G01N 21/552 20140101ALI20240513BHJP
【FI】
G01N33/543 595
G01N21/552
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020033393
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021135236
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 由透
(72)【発明者】
【氏名】山内 健資
(72)【発明者】
【氏名】縄田 功
(72)【発明者】
【氏名】金山 省一
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040795(JP,A)
【文献】特開2013-076666(JP,A)
【文献】特開2006-105912(JP,A)
【文献】特開2006-208035(JP,A)
【文献】特開2007-010439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物質と特異的に反応する物質が予め固定化された第1の検出面と、前記物質が固定化されていない第2の検出面とを有し、前記被検物質と試薬との混合液を収容するための反応容器を載置する載置部と、
前記反応容器内の反応を促進させるエネルギーを前記反応容器に印加する印加部と、
前記第1の検出面および前記第2の検出面には前記エネルギーが印加され、前記エネルギーが印加されている際および印加される期間の前後の前記第1の検出面における反応状態に基づいた第1の電気信号と、前記エネルギーが印加されている際および印加される期間の前後の前記第2の検出面における反応状態に基づいた第2の電気信号とを検出する検出部と、
前記第1の電気信号と前記第2の電気信号とに基づいて、第1の判定結果を求める第1の判定部と、
前記第1の判定結果を求めた後に、前記第1の電気信号に基づいて、第2の判定結果を求める第2の判定部と、
を備え
前記第1の判定部は、前記第1の判定結果として、前記印加部により前記エネルギーの印加状態が変更されたときに前記検出部により検出された前記第1の電気信号及び前記第2の電気信号に基づいて、非特異的な反応による影響の可能性を判定する、
検体検査装置。
【請求項2】
前記第1の判定部は、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号との差に基づいて、前記被検物質と特異的に反応する物質が含まれている可能性が高いか否かを示す判定結果を、前記第1の判定結果として求める、
請求項1に記載の検体検査装置。
【請求項3】
前記第1の判定部は、前記印加部により前記エネルギーの印加状態が変更されたときに前記検出部により検出された前記第1の電気信号及び前記第2の電気信号に基づいて、前記被検物質と特異的に反応する物質が含まれている可能性が高いか否かを示す判定結果を、前記第1の判定結果として求める、
請求項1に記載の検体検査装置。
【請求項4】
前記第1の判定部は、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号との演算結果と、前記第1の電気信号とに基づいて、前記被検物質と特異的に反応する物質が含まれている可能性が高いか否かを示す判定結果を、前記第1の判定結果として求める、
請求項1に記載の検体検査装置。
【請求項5】
前記演算結果は、前記第1の電気信号に基づく変動量と前記第2の電気信号に基づく変動量との差分値である、
請求項4に記載の検体検査装置。
【請求項6】
前記第1の判定部は、前記差分値が第1の規定値以上である場合、前記第1の電気信号に基づく変動量と、第2の規定値とに基づいて、前記第1の判定結果を求める、
請求項5に記載の検体検査装置。
【請求項7】
前記第1の判定部は、前記エネルギーの印加状態が切り替わった後に検出される前記第1の電気信号及び前記第2の電気信号に基づいて、前記第1の判定結果を求め、
前記第2の判定部は、前記エネルギーの印加状態が切り替わった後、前記反応容器内の反応が収束する所定の時間が経過すると、前記反応容器内の反応が収束した第1の電気信号に基づいて、前記第2の判定結果を求める、
請求項1~6のいずれか一項に記載の検体検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、検体検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検体と試薬とから調製された測定試料を、光学的又は電気的方法を用いて測定することで、検体中の目的物質の有無を判定する技術が知られている。例えば、上記技術では、検体と試薬との混合液が収容される容器内の反応状態に基づいた電気信号を検出し、検出される電気信号に基づいて検体中の目的物質の有無を判定する。しかし、検出される電気信号にノイズ成分が存在する場合、ノイズ成分の影響が出る可能性がある。例えば、上記技術をウイルス検査等に応用する際、検体に由来する成分(例えば、体液成分等)がノイズ成分となる場合がある。この場合、判定精度が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-40795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、判定精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る検体検査装置は、反応容器を載置する載置部と、印加部と、検出部と、第1の判定部と、第2の判定部とを備える。前記反応容器は、被検物質と特異的に反応する物質が予め固定化された第1の検出面と、前記物質が固定化されていない第2の検出面とを有し、前記被検物質と試薬との混合液を収容する。前記印加部は、前記反応容器内の反応を促進させるエネルギーを前記反応容器に印加する。前記検出部は、前記第1の検出面における反応状態に基づいた第1の電気信号と、前記第2の検出面における反応状態に基づいた第2の電気信号とを検出する。前記第1の判定部は、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号とに基づいて、第1の判定結果を求める。前記第2の判定部は、前記第1の判定結果を求めた後に、前記第1の電気信号に基づいて、第2の判定結果を求める。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る検体検査装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示す反応ユニットの構成の一例を示す図である。
図3図3は、出射光の光強度の時系列変化の一例を示すグラフである。
図4図4は、図3に示す曲線の一部である部分曲線の拡大図である。
図5図5は、図2におけるA-A’矢視断面図である。
図6A図6Aは、本実施形態に係る検体検査装置による処理の手順を示すフローチャートである。
図6B図6Bは、本実施形態に係る検体検査装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、検体検査装置の実施形態を詳細に説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0008】
図1は、本実施形態に係る検体検査装置1の構成の一例を示すブロック図である。図2は、図1に示す反応ユニット2の構成の一例を示す図である。図1に示すように、検体検査装置1は、反応ユニット2及び測定システム3を備える。反応ユニット2は、検体検査装置1に対して着脱可能である。
【0009】
まず、図2を用いて、反応ユニット2について説明する。
【0010】
反応ユニット2は、図2に示すように、載置台4に載置され、筐体21、透明基板22、光導波路23及び保護部材24を有する。筐体21の下面の一部は開口しており、その開口部内には、透明基板22上に、光導波路23及び保護部材24を薄膜技術で形成したチップが嵌め込まれる。保護部材24の一部は開口されている(開口端24a)。また、筐体21、光導波路23及び保護部材24等によって反応容器201が形成される。なお、反応ユニット2は、その内部、すなわち反応容器201に、被検対象(被検物質)を含む試料溶液を収容可能に構成される。載置台4は、「載置部」の一例である。
【0011】
筐体21は、例えば樹脂等で形成される。筐体21の下面には第1の凹部が形成されている。第1の凹部の上面の一部には反応容器201の上面及び側面を構成する第2の凹部が形成されている。そして、第1の凹部には上から順に保護部材24、光導波路23及び透明基板22が配置されている。また、第2の凹部の上面の一端部近傍に筐体21を上方に貫通してその内部の反応容器201に試料溶液及び試薬等を導入するための孔21aが形成され、他端部近傍に筐体21を上方に貫通して反応容器201から空気を逃がすための孔21bが形成されている。なお、孔21a及び孔21bは、それぞれ複数形成されてもよい。
【0012】
透明基板22は、例えば樹脂又は光学ガラス等で形成される。透明基板22は、測定システム3に設けられる光源311から入射された光を光導波路23へ通過させる。また、透明基板22は、光導波路23から入射された光を測定システム3に設けられる光検出器312へ通過させる。
【0013】
光導波路23は、光が透過する材料、例えば樹脂又は光学ガラス等により形成される。樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂等を用いることができる。光導波路23は、透明基板22から入射して透明基板22へと出射する光の光路となる。すなわち、光導波路23は、光ファイバーにおけるコア(心材)同様の役割機能を果たす。そして、保護部材24及び透明基板22は、光導波路23の素材とは異なった屈折率の素材で形成され、光導波路23との境界面で光を全反射させ、光を光導波路23内に閉じ込めるクラッドとしての機能役割を果たす。また、保護部材24及び透明基板22は、光導波路23を物理的に保護する。
【0014】
光導波路23は、測定システム3から透明基板22を介して入射された光を伝播させる。光導波路23では、反応容器201に収容された被検物質の濃度、すなわち反応状態により影響を受けた光が伝播される。
【0015】
また、光導波路23に光が入射する付近の保護部材24側にはグレーティング23aが配置される。グレーティング23aは、光導波路23に入射される入射光L1を所定の角度で回折させる。グレーティング23aにおいて回折された光は、光導波路23と、透明基板22、保護部材24、又は混合液202により構成される面との界面に対し、臨界角の補角以下の角度で入射する。これにより、入射光L1は、光導波路23の界面において光導波路23内で繰り返し反射しながら伝播(導波)する。
【0016】
光導波路23から光が出射する付近の保護部材24側にはグレーティング23bが配置される。グレーティング23bは、光導波路23により光導波された光を所定の角度で回折させる。グレーティング23bにおいて回折された光は、光導波路23から外部へ所定角度を有して出射される。
【0017】
保護部材24は、筐体21の第2の凹部の位置に開口を有する。保護部材24は、光導波路23の上面に密着して配置されている。保護部材24は、光導波路23の上面に密着して配置されることで、平面保護層を構成する。また、保護部材24は、図2に示すように、光導波路23の主面(例えば上面)を露出させるための開口端24aを有する。開口端24aは、保護部材24の内側の開口を形成する鉛直面である。この開口端24aにより、光導波路23の上面が露出される。
【0018】
反応容器201は、上面が筐体21の第2の凹部の上面により構成され、側面が筐体21の第2の凹部の側面及び保護部材24の開口端24aにより構成され、下面が光導波路23の上面により構成される。
【0019】
反応容器201は、試料溶液及び試薬を収容し、試料溶液に含まれる被検物質と試薬とを反応させる。反応容器201を形成する面のうちの下面、すなわち光導波路23の上面には、複数の第1抗体211が固定される。第1抗体211は、被検物質に含まれる抗原212と抗原抗体反応により特異的に反応する物質である。第1抗体211は、例えば光導波路23の上面との間に生じる疎水性相互作用又は化学結合等により、光導波路23の上面に固定される。
【0020】
反応容器201は、例えば、予め空の状態となっている。被検物質の測定時においては、例えば孔21aを介して、外部から反応容器201へ、試料溶液と試薬との混合液202が注入される。試料溶液には、抗原212を含む被検物質が含まれる。試薬には、試薬成分213が含まれる。試薬成分213には、例えば抗原212と抗原抗体反応により特異的に反応する第2抗体214と、第2抗体214が結合された磁性粒子215とが含まれる。磁性粒子215は、少なくとも一部がマグネタイト等の磁性体材料で形成されている。磁性粒子215は、例えば、磁性体材料から形成された粒子の表面が高分子材料で被覆されている。なお、磁性粒子215は、高分子材料で構成された粒子の表面を磁性体材料で被覆するように構成されてもよい。また、磁性粒子215は、混合液202において分散可能に構成されたものであればどのようなもので代替してもよい。
【0021】
混合液202を注入することで、反応容器201には、光導波路23の上面に固定された第1抗体211に加えて、試料溶液中の被検物質に含まれる抗原212及び試薬に含まれる試薬成分213が収容される。反応容器201に混合液202が注入されると、反応容器201内の空気は、孔21bから外部へ排出される。
【0022】
試薬成分213は、反応容器201に満たされた混合液202中を分散可能に移動する。このとき、磁性粒子215は、磁性粒子215に掛かる重力が、この重力と逆向きに掛かる混合液202中における浮力よりも大きくなるように選ばれる。第2抗体214が結合された磁性粒子215は、第2抗体214が、抗原212を介して第1抗体211と結合することで、光導波路23の上面近傍に固定される。なお、第2抗体214は、第1抗体211と同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0023】
反応ユニット2では、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と被検物質に含まれる抗原212が反応することにより、第2抗体214が結合された磁性粒子215が光導波路23の上面近傍に固定される。光導波路23を導波する光は、光導波路23の上面近傍に固定される磁性粒子215により散乱及び吸収等される。この結果、光導波路23を導波する光は、減衰されて光導波路23から出射されることになる。すなわち、入射光L1は、第1抗体211と、磁性粒子215に固定化される第2抗体214とを結びつける抗原212の量に応じて減衰される。換言すると、入射光L1は、反応容器201内に収容された抗原212の量に応じて減衰される。
【0024】
以下、反応容器201において、光導波路23の表面から鉛直上方向に距離Lだけ離れた領域、すなわち光導波路23の表面近傍に至る領域をセンシングエリア205と定義する。
【0025】
光が光導波路23内を伝播する場合、光導波路23の上面において近接場光(以下、エバネッセント光と記載する)が発生する。センシングエリア205は、エバネッセント光が発生し得る領域である。センシングエリア205において、光導波路23の上面に固定された第1抗体211は、試料溶液中の被検物質に含まれる抗原212を介し、試薬成分213に含まれる磁性粒子215に固定化された第2抗体214と結合する。これにより、光導波路23の上面の近傍に第2抗体214が結合された磁性粒子215が保持される。
【0026】
次に、反応容器201内において起こる抗原抗体反応等によって光導波路23を伝播する光が受ける影響ついて説明する。なお、第1抗体211、第2抗体214及び抗原212は、磁性粒子215と比較して、ごく小さい。図2では、結合反応を模式的に示すため、第1抗体211、抗原212、第2抗体214及び磁性粒子215を同様な大きさとして図示する。
【0027】
磁性粒子215がセンシングエリア205内に進入すると、磁性粒子215に固定化される第2抗体214は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。これにより、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、センシングエリア205に留まる。磁性粒子215がセンシングエリア205に留まった状態で光導波路23の上面においてエバネッセント光が発生すると、センシングエリア205に留まっている磁性粒子215がこのエバネッセント光を散乱及び吸収等し、エバネッセント光を減衰させる。このセンシングエリア205におけるエバネッセント光の散乱及び吸収等は、光導波路23内を伝播する光に対して影響を及ぼす。すなわち、センシングエリア205においてエバネッセント光が減衰されることにより、光導波路23内を光導波する光も減衰される。したがって、センシングエリア205においてエバネッセント光が強く散乱及び吸収等されると、光導波路23内を伝播する光の強度が低下する。換言すると、センシングエリア205内に留まる磁性粒子215の量が多いほど、光導波路23から出力される光の強度が低下する。
【0028】
ただし、センシングエリア205内に留まる磁性粒子215は、測定対象である抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と、磁性粒子215に固定化される第2抗体214とが結合したものに限られない。このため、被検物質に含まれる抗原212の正確な濃度を測定するためには、測定に関与しない、すなわち抗原212と結合していない第2抗体214が結合された磁性粒子215をセンシングエリア205から遠ざける必要がある。具体的な方法としては、例えば磁場による近接作用により、第2抗体214が抗原212と結合していない磁性粒子215を移動させる方法がある。
【0029】
これにより、最終的にセンシングエリア205に留まる磁性粒子215は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と、第2抗体214とが結合されているものとなる。このため、反応ユニット2から出射される光の強度の値及び強度の時系列変化は、センシングエリア205に留まる磁性粒子215の量及び濃度等に対応する。
【0030】
なお、反応ユニット2は、同一の測定項目について、同一の被検物質を複数チャンネルで同時に並行測定可能な構成であってもよい。このとき、反応ユニット2は、例えばチャンネル毎に独立した光導波路を有する。
【0031】
次に、図1を用いて、測定システム3について説明する。
【0032】
測定システム3は、図1に示すように、検知ユニット31、磁場発生器32、出力ユニット33、入力インタフェース回路34、記憶回路35及び処理回路36を有する。
【0033】
検知ユニット31は、光源311及び光検出器312を有する。
【0034】
光源311は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等のダイオードやキセノンランプ等のランプである。光源311は、グレーティング23aに向けて光導波路23内に光を入射可能な位置に配置される。光源311は、入射光L1を、反応ユニット2の透明基板22を介して光導波路23内に入射する。入射光L1は、光導波路23内に進入し、グレーティング23aにより回折される。グレーティング23aにより回折された入射光L1は、光導波路23内を全反射しながら伝播し、グレーティング23bに到達する。グレーティング23bに到達した光は、グレーティング23bにより回折され、光導波路23から外部へ所定角度を有して出射光L2として出射される。なお、光源311の代わりに、光以外の電磁波等を発生するものを用いてもよい。
【0035】
光検出器312は、混合液202が収容されている反応容器201内の反応状態に基づいた電気信号を出力する。具体的には、光検出器312は、光導波路23の外へ出射される出射光L2を検出し、検出された出射光L2の強度を示す電気信号、すなわち光検出強度に関するデジタルデータを生成する。光検出器312により生成された光検出強度に関するデジタルデータは処理回路36に供給される。光検出器312は、「検出部」の一例である。
【0036】
なお、検知ユニット31は、同一の測定項目について、同一の被検物質を複数チャンネルで同時に並行測定可能な構成であってもよい。このとき、検知ユニット31は、例えばチャンネル毎に光源及び光検出器を有するとしてもよいし、光源及び光検出器を共有することもできる。
【0037】
磁場発生器32は、反応容器201内の反応、すなわち磁性粒子215に固定された第2抗体214と光導波路23の上面に固定された第1抗体211との抗原212を介した結合を促進させるエネルギーを発生する。具体的には、磁場発生器32は、図2に示すように、上磁場発生器32a及び下磁場発生器32bを有する。また、磁場発生器32は、図示しない駆動回路を有する。磁場発生器32は、処理回路36の制御の下、反応容器201に対して磁場を印加する。磁場発生器32は、「印加部」の一例である。
【0038】
下磁場発生器32bは、例えば永久磁石及び電磁石等で構成される。下磁場発生器32bは、反応ユニット2の下方に設けられる。具体的には、下磁場発生器32bは、反応ユニット2を載置する載置台4の下方に設けられる。下磁場発生器32bは、反応容器201内の反応を促進させるエネルギーである鉛直下向きの磁場を水平方向に一様に発生させる。発生された鉛直下向きの磁場により、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、鉛直下方向の力を受けて下降する。このとき、下磁場発生器32bは、所定の強さの磁場を発生させることで、第2抗体214が結合された磁性粒子215を光導波路23に近づける。
【0039】
上磁場発生器32aは、例えば永久磁石及び電磁石等で構成される。上磁場発生器32aは、図2に示すように、反応ユニット2の上方に設けられる。上磁場発生器32aは、反応容器201において鉛直上向きの磁場を水平方向に一様に発生させる。発生された鉛直上向きの磁場により、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、鉛直上方向の力を受けて上昇する。このとき、上磁場発生器32aは、所定の強さの磁場を発生させることで、第2抗体214が結合された磁性粒子215を選択的にセンシングエリア205から遠ざける。すなわち、上磁場発生器32aは、発生させる磁場の強さを調整することで、光導波路23の上面に固定される、第1抗体211と抗原212を介して結合する第2抗体214が結合された磁性粒子215のみをセンシングエリア205に留めることが可能となる。
【0040】
出力ユニット33は、ディスプレイ331、スピーカ332、及びプリンタ333を有する。
【0041】
ディスプレイ331は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ331は、処理回路36によって生成された各種の画像を表示したり、操作者から各種の操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。例えば、ディスプレイ331は、液晶ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等である。ディスプレイ331は、処理回路36の制御に従い、各種操作画面、光検出器312から供給された出射光L2の光強度を示す情報、光強度を示す情報の時系列データ、及び被検物質の測定結果等を表示する。測定結果は、例えば抗原212の濃度、重量又は個数等である。
【0042】
スピーカ332は、処理回路36の制御の下、被検物質の判定結果等を操作者に報知する。
【0043】
プリンタ333は、処理回路36の制御の下、例えばディスプレイ331に表示される各種操作画面、光検出器312から供給された出射光L2の光強度を示す情報、光強度を示す情報の時系列データ、及び被検物質の測定結果等を印刷する。
【0044】
入力インタフェース回路34は、例えばトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース回路34は、操作者の操作に対応した操作入力信号を処理回路36に出力する。なお、本実施形態において入力インタフェース回路はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路36へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース回路の例に含まれる。
【0045】
記憶回路35は、磁気的若しくは光学的記録媒体又は半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。記憶回路35は、本実施形態に係る検体検査装置1の回路で実行されるプログラムを記憶する。なお、記憶回路35の記憶媒体内のプログラム及びデータの一部又は全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0046】
記憶回路35は、光検出器312から供給された出射光L2の光強度を示す情報、光強度を示す情報の時系列データ、及び測定対象となる被検物質の測定結果等を記憶する。
【0047】
記憶回路35は、対象となる被検物質の測定を行うための設定情報を記憶する。設定情報は、例えば測定に必要な所定の処理を実行するタイミングを規定する情報を含む。測定に必要な所定の処理を実行するタイミングとは、例えば下磁場発生器32bにより発生される下磁場の印加が開始されるタイミング、検出区間が開始されるタイミング、算出タイミング(下磁場の印加が停止されるタイミング)、検出区間が終了されるタイミング、上磁場の印加が開始されるタイミング及び最終判定が実施されるタイミングである。これらのタイミングは、予め経験的、実験的に取得される。
【0048】
記憶回路35は、予め設定された規定値Tを記憶する。規定値Tは、被検物質の濃度に対応する光強度の変動量(以下、変動率の積算値と記載する)についての規定値である。規定値Tは、被検物質の測定結果として陽性の可能性が高いかどうかの判定をするために用いられる。
【0049】
記憶回路35は、予め設定された閾値Tを記憶する。閾値Tは、被検物質の濃度に対応する光強度についての閾値である。閾値Tは、被検物質の定性状態を判定するために用いられる。定性状態とは、例えば測定結果が示す陽性又は陰性の度合いである。閾値Tは、被検物質の測定結果として陽性の可能性が高いかどうかの最終判定をするために用いられる。なお、閾値Tは、複数の段階的な閾値であってもよい。すなわち、デジタルデータに含まれる光強度と複数の段階的な閾値を比較することで、より詳細な測定結果を表す判定を行うことが可能となる。
【0050】
処理回路36は、例えば検体検査装置1の各構成回路を制御するプロセッサである。処理回路36は、検体検査装置1の中枢として機能する。処理回路36は、記憶回路35から各動作プログラムを呼び出し、呼び出したプログラムを実行することで光源制御機能361、磁場制御機能362、演算機能363、判定機能364、最終判定機能365及び出力制御機能366を実現する。
【0051】
光源制御機能361は、光源311を制御し、所定の条件で光を発生させる機能である。光源制御機能361では、処理回路36は、少なくとも測定開始から測定終了までの間、連続的又は間欠的に光源311から入射光L1を発生させる。
【0052】
磁場制御機能362は、記憶回路35に予め記憶されているタイムスケジュールに従って磁場発生器32を制御し、反応容器201内の反応を促進させるエネルギーの印加状態を切り替える。具体的には、磁場制御機能362は、記憶回路35から設定情報を読出し、読み出した設定情報に基づいて磁場発生器32を制御し、磁場発生器32に磁場を発生させる。
【0053】
演算機能363は、光検出器312から供給される時系列の光強度のデジタルデータに基づいて各種演算を行う。具体的には、演算機能363は、供給される時系列の光強度のデジタルデータを用いて、光強度の平均値、光強度の変動率、変動率の積算値等の演算を行う。
【0054】
判定機能364は、演算機能363により演算された光強度の変動率の積算値(光強度の変動量)に基づいて、被検物質の測定結果として、第1の判定結果を求める。例えば、判定機能364は、第1の判定結果として、被検物質と特異的に反応する物質が含まれている可能性が高いか否かを示す判定結果を求める。すなわち、被検物質を含む試料溶液が陽性の可能性が高いかどうかを判定する。なお、判定機能364が行う判定は、前判定、又は、短時間測定と称する場合もある。具体的には、判定機能364は、例えば予め設定された規定値Tを記憶回路35から読み出す。判定機能364は、演算機能363により演算された光強度の変動率の積算値が規定値T以下であった場合、第1の判定結果として、試料溶液が陽性の可能性が高いと判定する。また、判定機能364は、演算機能363により演算された光強度の変動率の積算値が規定値Tより大きい場合、第1の判定結果として、陽性の可能性が高くない、すなわち弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。判定機能364は、「第1の判定部」の一例である。
【0055】
最終判定機能365は、後述する上磁場の印加中に光検出器312から供給される光強度のデジタルデータに基づいて、被検物質の測定結果として、第2の判定結果を求める。すなわち、最終判定機能365は、第2の判定結果として、被検物質と特異的に反応する物質が含まれている可能性が高いか否かを示す判定結果を求める。すなわち、被検物質を含む試料溶液が陽性又は陰性の可能性が高いかどうかを判定する。最終判定機能365は、判定機能364により判定が実施された後に、最終判定を実施する。なお、最終判定機能365における最終判定は、後判定、又は、通常時間測定と称する場合もある。具体的には、最終判定機能365は、記憶回路35から設定情報及び閾値Tを読出す。最終判定機能365は、読出した設定情報に含まれる実行タイミングに合わせて、第2の判定結果を求める。最終判定機能365は、供給された時系列の光強度のデジタルデータに含まれる光強度が閾値T以下であった場合、第2の判定結果として、試料溶液が陽性の可能性が高いと判定する。最終判定機能365は、デジタルデータに含まれる光強度が閾値Tより大きい場合、第2の判定結果として弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。最終判定機能365は、「第2の判定部」の一例である。
【0056】
ここで、前判定と後判定は、判定タイミングを時系列的に前後で表すものとし、判定機能364による判定が前判定、最終判定機能365による判定が後判定である。従って、後述するように最終判定機能365により最終判定を行わず、判定機能364による判定の結果が最終判定の結果となる場合には、当該判定機能364が行う判定が実質的に最終判定であっても前判定と表記する。
【0057】
出力制御機能366は、出力ユニット33を制御し、操作者に対して被検物質の判定結果等の測定結果を出力する。具体的には、出力制御機能366は、ディスプレイ331又はプリンタ333を制御し、測定結果を操作者に提示する。例えば、測定結果をディスプレイ331に表示したり、プリンタで印刷したりすることにより、操作者に提示する。出力制御機能366は、スピーカ332を制御し、測定結果を操作者に報知する。例えば、測定結果をスピーカ332から音等で知らせることにより、操作者に報知する。
【0058】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路60に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路60にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0059】
次に、図3図4を用いて、磁場が印加されるタイミングや、判定のタイミングについて説明する。
【0060】
図3は、出射光L2の光強度の時系列変化の一例を示すグラフである。図3において、横軸は時間tを示し、縦軸は出射光L2の光強度を示す。また、グラフに描かれる曲線は、光検出器312から出力される、反応ユニット2内の反応状態に基づいて取得されるデジタルデータが表す光強度Aの時間的な変化をプロットして得られる。図4は、図3に示す曲線Cの一部である部分曲線C1の拡大図である。
【0061】
まず、時間t=0において、反応容器201への試料溶液及び試薬から成る混合液202の注入が開始される。反応容器201への混合液202の注入は、自動で行われてもよいし、手動で行われてもよい。
【0062】
光源311は、例えば反応容器201に対する混合液202の注入が開始されると、光導波路23に対し、継続的に一定の強度の光を入射する。光導波路23には、光源311から出射された光が透明基板22を介して入射される。光導波路23に入射された光は、光導波路23内を全反射しながら伝播し、透明基板22を介して光検出器312へ出射される。光検出器312は、光導波路23から出射された光を受光し、処理回路36に対して、光強度のデータを所定の時間間隔で供給する。
【0063】
ここで、時間t=0からt=tの期間においては、測定される光強度は増加する。これは、試料溶液及び試薬で反応容器201が満たされると、保存安定性を高めるために予め光導波路23の上面に付着された糖を含有する水溶性の膜が溶解することによるものである。糖は、例えば二糖類である。
【0064】
時間t=tにおいて、下磁場発生器32bにより、下磁場の印加が開始される。
【0065】
下磁場の印加が開始された後、光強度は、時間t=tに達すると所定の値A01に収束する。
【0066】
このとき、試料溶液で満たされた反応容器201中の第2抗体214が結合された複数の磁性粒子215は、下磁場による鉛直下向きの磁力を受けて、その一部が磁力線に引き寄せられることで磁力線に沿って整列され始める。磁力線に沿って整列された第2抗体214が結合された磁性粒子215は、重力及び磁力に従って徐々に沈降し、センシングエリア205に進入する。センシングエリア205に進入した磁性粒子215に固定された第2抗体214は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。
【0067】
一方、磁力線に沿って整列されなかった第2抗体214が結合された磁性粒子215については、重力に従って徐々に沈降し、センシングエリア205に進入する。センシングエリア205に進入した磁性粒子215に固定された第2抗体214は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。
【0068】
時間t=tからt=tにおいて、センシングエリア205には、第2抗体214が結合された磁性粒子215が次々に進入するので光強度は減少する。光強度は、時間t=tの直後から大きな減少率(傾き)で減少し始める。光強度の減少率は、時間の経過とともに小さくなる。その後、光強度の減少は、時間t=tにおいて、ほとんどなく、光強度は、時間t=tにおいて強度A01に収束する。
【0069】
このように、センシングエリア205への第2抗体214が結合された磁性粒子215の進入が停止し、光強度は、時間t=tにおいて強度A01に収束する。なお、時間t=tからt=tにおいても、反応容器201に収容された抗原212の一部は、第2抗体214に順次結合される。
【0070】
時間t=tにおいて、下磁場発生器32bにより、下磁場の印加が停止される。ここで、下磁場の印加が停止されると、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、下磁場による束縛から解放されることで自然沈降を開始する。
【0071】
光強度Aは、図3及び図4に示すように、時間t=tからt=tにおいてオーバーシュートOS1が発生するため、グラフにおいて、増加から減少に転じるスパイク状の波形を描く。試薬成分213の一部は、センシングエリア205から一瞬離脱して浮き上がった後に沈降するため、図3及び図4に示すように、時間t=tからt=tにおいてオーバーシュートOS1が生じる。時間t=tは、オーバーシュートOS1の発生が収まった時間である。時間t=tは、オーバーシュートOSの発生が収まるまでに要する時間であり、予め経験的、実験的に取得される。
【0072】
なお、本実施形態では、図4に示すように、時間t=tからt=tの間の所定の時間を起点D(t=t)とし、オーバーシュートOS1の発生が収まった時間を終点D(t=t)とし、起点Dから終点Dまでの区間を検出区間と呼ぶ。
【0073】
そこで、処理回路36の判定機能364は、下磁場の印加が停止したときの検出区間において、被検物質の測定結果として、第1の判定結果を求める。例えば、判定機能364は、検出区間において、第1の判定結果として、測定対象となる被検物質を含む試料溶液が陽性の可能性が高いかどうかを判定する。この判定基準としては、時間t=tからt=tまでの間に生じるオーバーシュートの程度に着目する。
【0074】
第1の判定結果の一例として、判定機能364は、図4に示すように、例えば算出タイミングを示す点D(t=t)から検出区間の終了を表す点De1(t=t)までの間にプロットされるような急なスパイク状のオーバーシュートが生じた場合を、弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。
【0075】
また、第1の判定結果の一例として、判定機能364は、図4に示すように、例えば算出タイミングを示す点D(t=t)から検出区間の終了を表す点De2(t=t)までの間にプロットされるような緩やかなスパイク状のオーバーシュートが生じた場合を、陽性の可能性が高いと判定する。具体的には、判定機能364は、時間t=tからt=tまでの間の光強度変動率の累積積算を演算し、演算された光強度の変動率の積算値(光強度の変動量)が記憶回路35に記憶された規定値T以下であった場合、陽性の可能性が高いと判定する。
【0076】
また、第1の判定結果の一例として、判定機能364は、演算された光強度の変動率の積算値が記憶回路35に記憶された規定値Tより大きい場合、弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。
【0077】
ここで、光強度Aは、オーバーシュートOS1におけるノイズ電流の発生が収まると、時間t=tからt=tにおいて減少する。
【0078】
このとき、磁力線に沿って整列された第2抗体214が結合された磁性粒子215は、下磁場による束縛から解放されることで、整列された状態が崩され、光導波路23の上面に向けて無秩序に沈降する。光強度Aは、図3に示すように、時間t=tからt=tにおいてセンシングエリア205に第2抗体214が結合された磁性粒子215が次々に進入するため、大きな減少率で減少する。光強度Aの減少率は、時間の経過とともに小さくなる。その後、光強度Aの減少は、時間t=tにおいて、ほとんどなく、光強度は、時間t=tにおいて強度A03に収束する。
【0079】
このように、センシングエリア205への第2抗体214が結合された磁性粒子215の進入が停止し、光強度は、時間t=tにおいて強度A03に収束する。このとき、光導波路23の上面に接する第2抗体214が結合された複数の磁性粒子215の一部は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と特異的に結合する。このような第2抗体214が結合された磁性粒子215は、光導波路23の上面に整列して堆積される。すなわち、センシングエリア205内は、第2抗体214が結合された磁性粒子215によりほぼ隙間なく占められた状態となる。なお、時間t=tの段階で光導波路23の上面に固定された第1抗体211と抗原212を介して結合していなかった第2抗体214が結合された複数の磁性粒子215のうちの一部は、時間t=tからt=tにおいて、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と抗原212を介して結合する。
【0080】
時間t=tにおいて、上磁場発生器32aにより、上磁場の印加が開始される。
【0081】
ここで、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、光導波路23の上面に整列して堆積されている。このとき、光導波路23の上面と接する第2抗体214が結合された磁性粒子215の多くが光導波路23の上面に固定された第1抗体211と特異的に結合している。また、試料溶液で満たされた反応容器201中の第2抗体214が結合された磁性粒子215は、上磁場による鉛直上向きの磁力を受けて、センシングエリア205への進入が停止し、時間t=tからt=tにかけて、光強度AがA=A02に収束する。
【0082】
すなわち、光強度AがA=A02に収束されると、センシングエリア205には、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と特異的に結合した第2抗体214が結合された磁性粒子215のみが存在する状態となる。ここで、上磁場の磁場強度を適切な値とすることで、抗原抗体反応により抗原212を介してセンシングエリア205に結合された磁性粒子215は引き剥がさず、抗原212を介さずにセンシングエリア205に吸着した磁性粒子215を除去することができる。
【0083】
処理回路36の最終判定機能365は、時間t=tから所定の経過時間が経過したとき、例えば、時間t=tに達したときに、被検物質の測定結果として、第2の判定結果を求める。例えば、最終判定機能365は、時間t=tにおいて、第2の判定結果として、試料溶液が陽性又は陰性の可能性が高いかどうかを判定する。具体的には、最終判定機能365は、取得した光強度のデータの値A02と記憶回路35に記憶された閾値Tを比較することで、最終判定を行う。
【0084】
第2の判定結果の一例として、最終判定機能365は、例えば、取得した光強度のデータの値A02が閾値T以下であった場合、被検物質の測定結果として陽性の可能性が高いと判定する。
【0085】
第2の判定結果の一例として、最終判定機能365は、例えば、取得した光強度のデータの値A02が閾値Tより大きい場合、被検物質の測定結果として弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。
【0086】
その後、上磁場の印加が停止される。
【0087】
このように、光検出器312は、混合液202が収容されている反応容器201内の反応状態に基づいた電気信号を出力する。処理回路36は、予め定められているスケジュールに従って磁場発生器32を制御し、反応ユニット2に下磁場を印加し、また、反応ユニット2への下磁場の印加を停止する。処理回路36は、下磁場の印加が停止された後に光検出器312から出力される電気信号に基づき、被検物質と特異的に反応する物質が含まれている可能性が高いか否かを示す判定結果を、第1の判定結果として出力する。これにより、検体検査装置1は、最終判定の実施として第2の判定結果の出力を待つことなく、被検物質の判定結果を操作者へ通知することが可能となる。このため、操作者は、最終判定が実施される前に被検物質の判定結果を認知し、認知した判定結果に基づいて次に行う治療の準備に早く取り掛かることができる。
【0088】
上述したように、光導波路23の上面には、被検物質に含まれる抗原212と抗原抗体反応により特異的に反応する物質である第1抗体211が固定される。そこで、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、重力及び下磁場の磁力に従って徐々に沈降してセンシングエリア205に進入し、被検物質に含まれる抗原212を介して、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。そこで、判定機能364は、下磁場の印加が停止したときの検出区間において、第1の判定結果として、測定対象となる被検物質を含む試料溶液が陽性の可能性が高いかどうかを判定する。例えば、判定機能364は、時間t=tからt=tまでの間の光強度変動率の累積積算を演算し、演算された光強度の変動率の積算値が記憶回路35に記憶された規定値T以下であった場合、陽性の可能性が高いと判定する。一方、判定機能364は、演算された光強度の変動率の積算値が記憶回路35に記憶された規定値Tより大きい場合、弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。
【0089】
ここで、判定機能364が行う判定では、例えば非特異的な吸着等による影響を受ける場合がある。例えば、下磁場が印加されたときに、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、検体に由来する成分(例えば、体液成分等)を介して、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と、吸着等によって結合する場合がある。すなわち、センシングエリア205には非特異的に吸着した磁性粒子215が存在する場合がある。この場合、判定機能364は、時間t=tからt=tまでの間の光強度変動率の累積積算を演算した結果、演算された光強度の変動率の積算値が記憶回路35に記憶された規定値T以下となり、陽性と判定される可能性がある。
【0090】
そこで、本実施形態に係る検体検査装置1は、判定精度を向上させることができるように、以下の処理を行う。本実施形態に係る検体検査装置1は、被検物質と試薬との混合液202を収容する反応容器201を載置する載置台4と、磁場発生器32と、光検出器312と、判定機能364と、最終判定機能365とを備える。反応容器201は、被検物質と特異的に反応する物質が予め固定化された第1の検出面と、上記物質が固定化されていない第2の検出面とを有する。磁場発生器32は、反応容器201内の反応を促進させるエネルギーを反応容器201に印加する。光検出器312は、第1の検出面における反応状態に基づいた第1の電気信号と、第2の検出面における反応状態に基づいた第2の電気信号とを検出する。判定機能364は、第1の電気信号と第2の電気信号とに基づいて、第1の判定結果を求める。最終判定機能365は、第1の判定結果を求めた後に、第1の電気信号に基づいて、第2の判定結果を求める。
【0091】
図5は、図2におけるA-A’矢視断面図である。図5に示すように、反応容器201は、第1の領域に設けられる検出面231と、第2の領域に設けられる検出面232とを有する。検出面231は、「第1の検出面」の一例であり、検出面232は、「第2の検出面」の一例である。
【0092】
第1の領域は、保護部材24を貫通する第1の孔部により露出した光導波路23の上面の一部分である。第1の領域に設けられる検出面231には、被検物質(抗原212)と特異的に反応する物質(第1抗体211)が予め固定されている。
【0093】
第2の領域は、保護部材24を貫通する第2の孔部により露出した光導波路23の上面の一部分である。第2の領域に設けられる検出面232には、上記物質(第1抗体211)が予め固定されていない。例えば、検出面232には、別の被検物質と特異的に反応する物質が予め固定されてもよい。また、検出面232には、特定の物質と特異的に反応しない物質、例えばブロッキング剤のみが固定されてもよい。
【0094】
また、検出面231及び検出面232に対して、それぞれ1組の光源と光検出器とが設けられている。具体的には、光源311及び光検出器312は、検出面231及び検出面232に対応して、2チャンネル構造であり、光源311は、光源部311a、311bを有し、光検出器312は、光検出部312a、312bを有する。
【0095】
光源部311aは、検出面231に対して、継続的に一定の強度の光を入射し、光検出部312aは、検出面231から出射された光を受光し、処理回路36に対して、電気信号として、光強度のデータを所定の時間間隔で供給する。光源部311bは、検出面232に対して、継続的に一定の強度の光を入射し、光検出部312bは、検出面232から出射された光を受光し、処理回路36に対して、電気信号として、光強度のデータを所定の時間間隔で供給する。
【0096】
図6A図6Bは、本実施形態に係る検体検査装置1による処理の手順を示すフローチャートである。
【0097】
図6AのステップSA1では、処理回路36の磁場制御機能362は、下磁場を印加するタイミングであるか否かを判定する。具体的には、磁場制御機能362は、例えば下磁場の印加が開始するタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、時間t=0から所定の経過時間が経過したか否か、すなわち下磁場を印加する時間t=tに達したか否か判定する。ステップSA1における経過時間とは、光強度AがA=0からA=A00に増加するまでの時間である。なお、磁場制御機能362は、下磁場を印加する時間t=tに達したか否かの判定を、例えば光検出器312から逐次供給される光強度の時系列変化を監視し、予め設定された判定ルールに基づいて行ってもよい。判定ルールとは、例えば光強度がピーク値であることを検出すると下磁場を印加する時間t=tに達したと判定するルールである。
【0098】
ここで、下磁場を印加するタイミングではないと磁場制御機能362が判定した場合(ステップSA1;No)、再度、ステップSA1の判定処理が行われる。
【0099】
一方、下磁場を印加するタイミングであると磁場制御機能362が判定した場合、すなわち、下磁場を印加する時間t=tに達した場合(ステップSA1;Yes)、ステップSA2が実行される。
【0100】
図6AのステップSA2では、磁場制御機能362は、下磁場発生器32bを制御して下磁場の印加を開始する。
【0101】
次に、図6AのステップSA3では、処理回路36の判定機能364は、検出区間が開始するタイミングであるか否かを判定する。具体的には、判定機能364は、下磁場の印加を開始した後、例えば検出区間が開始するタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、下磁場の印加が開始する時間t=tから所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時間t=tに達したか否かを判定する。なお、検出区間が開始するタイミングを規定する情報に含まれる経過時間は、時間t=0からの所定の経過時間であってもよい。
【0102】
ここで、検出区間が開始するタイミングではないと判定機能364が判定した場合(ステップSA3;No)、再度、ステップSA3の判定処理が行われる。
【0103】
一方、検出区間が開始するタイミングであると判定機能364が判定した場合(ステップSA3;Yes)、ステップSA4が実行される。
【0104】
次に、図6AのステップSA4では、判定機能364は、リファレンス値Rを取得する。具体的には、判定機能364は、検出区間の開始を示す時間である時間t=tに達すると、光検出器312から継続的に供給される光強度のデータの1つの値をリファレンス値R(=A01)として取得する。
【0105】
次に、図6AのステップSA5では、判定機能364は、光強度の値Aを取得する。具体的には、判定機能364は、リファレンス値Rの取得後、光検出器312から逐次供給される光強度のデータに含まれる光強度A(n=1、2、3…)の1つを測定値として取得する。なお、判定機能364は、ステップSA4で取得したリファレンス値Rを測定値として利用してもよい。
【0106】
次に、図6AのステップSA6では、判定機能364は、取得した測定値のデータをN個以上取得したか否かを判定する。例えば、判定機能364は、測定値Aを取得した後、取得した測定値のデータの数が3以上であるか否か判定する。
【0107】
ここで、取得した測定値のデータの数がN未満であると判定機能364が判定した場合(ステップSA6;No)、ステップSA5の処理が再度行われる。
【0108】
一方、取得した測定値のデータの数がN以上であった場合(ステップSA6;Yes)、ステップSA7が実行される。
【0109】
次に、図6AのステップSA7では、判定機能364は、算出タイミングであるか否かを判定する。具体的には、判定機能364は、例えば算出タイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、下磁場の印加を開始する処理が実施された時間t=tから所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時間t=tに達したか否かを判定する。ステップSA7における経過時間とは、ステップSA3における経過時間と同様に、下磁場の印加を開始する時間t=tからの相対的な経過時間であり、予め経験的、実験的に取得される時間である。なお、判定機能364は、例えば直近に取得したN個の光強度のデータのうち、(N-1)個の光強度のデータがリファレンス値Rを超えている場合を算出タイミングとしてもよい。なお、算出タイミングを規定する情報に含まれる経過時間は、時間t=0からの所定の経過時間であってもよい。
【0110】
ここで、算出タイミングではないと判定機能364が判定した場合(ステップSA7;No)、ステップSA5の処理が再度行われる。
【0111】
一方、算出タイミングであると判定機能364が判定した場合(ステップSA7;Yes)、すなわち、時間t=tに達した場合、ステップSA8が実行される。
【0112】
次に、図6AのステップSA8では、磁場制御機能362は、下磁場発生器32bを制御して下磁場の印加を停止する。
【0113】
次に、図6BのステップSA9では、処理回路36の演算機能363は、光検出器312から逐次供給された光強度のデータのうち、直近に取得したN個の光強度のデータの平均値Ave(n)を算出する。このときに光検出器312から逐次供給された光強度のデータは、エネルギーの印加状態が切り替わった後に出力される電気信号である。平均値Ave(n)の算出式は、例えば以下の式(1)で表される。
Ave(n)=(A+An-1+・・・+An-N+1)/N (n≧N) (1)
【0114】
次に、図6BのステップSA101では、演算機能363は、ステップSA4で取得したリファレンス値RとステップSA9で算出した光強度の平均値Ave(n)を用いて、光強度の変動率Hを算出する。変動率Hの算出式は、例えば以下の式(2)で表される。
=1-(R/Ave(n)) (n≧3) (2)
なお、1-(R/Ave(n))<0である場合、H=0である。
【0115】
ここで、上述したように、光検出器312において、光検出部312aは、被検物質(抗原212)と特異的に反応する物質(第1抗体211)が予め固定された検出面231から出射された光を受光し、光強度のデータを所定の時間間隔で供給する。すなわち、光検出部312aは、検出面231における反応状態に基づいた電気信号として、光強度のデータを供給する。検出面231における反応状態に基づいた電気信号は、「第1の電気信号」の一例である。そこで、第1の電気信号として光検出部312aから供給された光強度のデータに対する変動率Hを、変動率H1と記載する。
【0116】
また、光検出器312において、光検出部312bは、上記物質(第1抗体211)が予め固定されていない検出面232から出射された光を受光し、光強度のデータを所定の時間間隔で供給する。すなわち、光検出部312bは、検出面232における反応状態に基づいた電気信号として、光強度のデータを供給する。検出面232における反応状態に基づいた電気信号は、「第2の電気信号」の一例である。そこで、第2の電気信号として光検出部312bから供給された光強度のデータに対する変動率Hを、変動率H2と記載する。
【0117】
次に、図6BのステップSA111では、演算機能363は、光強度の変動率Hの積算値Sを算出する。積算値Sの算出式は、例えば以下の式(3)で表される。
=H+Hn-1+Hn-2・・・ (n≧N) (3)
【0118】
ここで、光検出部312aから供給された光強度のデータに対する積算値Sを、積算値S1と記載する。積算値S1は、「第1の電気信号に基づく変動量」の一例である。
【0119】
また、光検出部312bから供給された光強度のデータに対する積算値Sを、積算値S2と記載する。積算値S2は、「第2の電気信号に基づく変動量」の一例である。
【0120】
次に、図6BのステップSA12では、判定機能364は、検出区間が終了するタイミングであるか否かを判定する。具体的には、判定機能364は、光強度の変動率Hの積算値Sを算出した後、例えば検出区間が終了するタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、時間t=tから所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時間t=tに達したか否かを判定する。なお、検出区間が終了されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間は、時間t=0からの所定の経過時間であってもよい。
【0121】
ここで、検出区間が終了するタイミングではないと判定機能364が判定した場合(ステップSA12;No)、ステップSA13が実行される。
【0122】
図6BのステップSA13では、判定機能364は、光強度の値Aを取得する。具体的には、判定機能364は、次に供給される測定値を取得する。その後、再度、ステップSA9の判定処理が行われる。
【0123】
一方、検出区間が終了するタイミングであると判定機能364が判定した場合(ステップSA12;Yes)、ステップSA141が実行される。
【0124】
図6BのステップSA141では、判定機能364は、算出された光強度の変動率H1の積算値S1と、算出された光強度の変動率H2の積算値S2との差分の絶対値|S1-S2|を算出し、算出した値|S1-S2|と、記憶回路35に記憶された規定値Tである第1の規定値TS1とを比較し、値|S1-S2|が第1の規定値TS1以上であるか否かを判定する。
【0125】
ここで、値|S1-S2|が第1の規定値TS1より小さいと判定機能364が判定した場合(ステップSA141;No)、例えば非特異的な吸着等による影響を受けている可能性がある。この場合、ステップSA15がスキップされ、ステップSA16が実行される。
【0126】
一方、値|S1-S2|が第1の規定値TS1以上であると判定機能364が判定した場合(ステップSA141;Yes)、例えば非特異的な吸着等による影響を受けていない可能性がある。この場合、ステップSA142が実行される。
【0127】
図6BのステップSA142では、判定機能364は、算出された光強度の変動率H1の積算値S1と、記憶回路35に記憶された規定値Tである第2の規定値TS2とを比較し、積算値S1が規定値TS2以下であるか否かを判定する。
【0128】
ここで、積算値S1が第2の規定値TS2以下ではないと判定機能364が判定した場合(ステップSA142;No)、判定機能364は、被検物質を含む試料溶液が弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。この場合、ステップSA15がスキップされ、ステップSA16が実行される。
【0129】
一方、積算値S1が第2の規定値TS2以下であると判定機能364が判定した場合(ステップSA142;Yes)、ステップSA15が実行される。
【0130】
図6BのステップSA15では、判定機能364は、第1の判定結果を求め、当該第1の判定結果を出力する。具体的には、判定機能364は、第1の判定結果として、被検物質を含む試料溶液が陽性の可能性が高いと判定し、陽性の可能性が高い旨を表す判定結果を出力する。この場合、出力制御機能366は、当該第1の判定結果を、出力ユニット33により操作者に提示又は報知する。
【0131】
図6BのステップSA16では、時間t=t以降の測定が継続される。
【0132】
図6BのステップSA17では、処理回路36の磁場制御機能362は、上磁場を印加するタイミングであるか否かを判定する。具体的には、磁場制御機能362は、例えば上磁場の印加が開始するタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、時間t=tから所定の経過時間が経過したか否か、すなわち上磁場を印加する時間t=tに達したか否か判定する。なお、上磁場が印加されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間は、時間t=0からの所定の経過時間であってもよい。
【0133】
ここで、上磁場を印加するタイミングではないと磁場制御機能362が判定した場合(ステップSA17;No)、再度、ステップSA1の判定処理が行われる。
【0134】
一方、上磁場を印加するタイミングであると磁場制御機能362が判定した場合、すなわち、上磁場を印加する時間t=tに達した場合(ステップSA17;Yes)、ステップSA18が実行される。
【0135】
図6BのステップSA18では、磁場制御機能362は、上磁場発生器32aを制御して上磁場の印加を開始する。
【0136】
次に、図6BのステップSA19では、処理回路36の最終判定機能365は、最終判定タイミングであるか否かを判定する。具体的には、最終判定機能365は、例えば最終判定が実施されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、時間t=tから所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時間t=tに達したか否かを判定する。なお、最終判定が実施されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間は、時間t=0からの所定の経過時間であってもよい。
【0137】
ここで、最終判定タイミングではないと最終判定機能365が判定した場合(ステップSA19;No)、ステップSA19の処理が再度行われる。
【0138】
一方、最終判定タイミングであると最終判定機能365が判定した場合(ステップSA19;Yes)、すなわち、時間t=tに達した場合、ステップSA20が実行される。
【0139】
次に、図6BのステップSA20では、最終判定機能365は、光強度の値Aを取得する。具体的には、光検出器312から継続的に供給される、収束後の光強度のデータの値A02を取得する。
【0140】
図6BのステップSA21では、最終判定機能365は、最終判定結果として第2の判定結果を求め、当該第2の判定結果を出力する。具体的には、最終判定機能365は、取得した光強度のデータの値A02と記憶回路35に記憶された閾値Tを比較することで、最終判定を行い、最終判定の結果を第2の判定結果として出力する。この場合、出力制御機能366は、当該第2の判定結果を、出力ユニット33により操作者に提示又は報知する。なお、出力制御機能366は、第2の判定結果を出力する際、第1の判定結果を第2の判定結果と同時に同一のディスプレイ等に表示するようにしてもよい。また、第1の判定結果と第2の判定結果とが明確に識別可能な識別子、例えば「*」を第1の判定結果に付加して表示又は印刷するようにしてもよい。
【0141】
その後、磁場制御機能362は、上磁場発生器32aを制御して上磁場の印加を停止する。
【0142】
以上の説明により、本実施形態に係る検体検査装置1では、反応容器201は、被検物質と特異的に反応する物質が予め固定化された検出面231と、上記物質が固定化されていない検出面232とを有する。磁場発生器32は、反応容器201内の反応を促進させるエネルギーを反応容器201に印加する。光検出器312は、第1の検出面における反応状態に基づいた第1の電気信号と、第2の検出面における反応状態に基づいた第2の電気信号とを検出する。判定機能364は、第1の電気信号と第2の電気信号とに基づいて、第1の判定結果を求める。最終判定機能365は、第1の判定結果を求めた後に、第1の電気信号に基づいて、第2の判定結果を求める。
【0143】
ここで、判定機能364は、第1の電気信号と第2の電気信号との差に基づいて、被検物質と特異的に反応する物質が含まれている可能性が高いか否かを示す判定結果を、第1の判定結果として求める。具体的には、まず、判定機能364は、第1の電気信号に基づく変動量と、第2の電気信号に基づく変動量との差分値|S1-S2|を演算し、演算結果を得る。ここで、当該演算結果が第1の規定値TS1以上である場合、判定機能364が行う判定では、例えば非特異的な吸着等による影響を受けていない可能性がある。この場合、判定機能364は、第1の電気信号に基づく変動量と、第2の規定値TS2とに基づいて、第1の判定結果を求める。
【0144】
このように、判定機能364は、磁場発生器32によりエネルギーの印加状態が変更されたときに光検出器312により検出された第1の電気信号及び第2の電気信号に基づいて、被検物質と特異的に反応する物質が含まれている可能性が高いか否かを示す判定結果を、第1の判定結果として求める。すなわち、判定機能364は、エネルギーの印加状態が切り替わった後に検出される第1の電気信号及び第2の電気信号に基づいて、第1の判定結果を求める。そして、最終判定機能365は、エネルギーの印加状態が切り替わった後、反応容器201内の反応が収束する所定の時間が経過すると、反応容器201内の反応が収束した第1の電気信号に基づいて、第2の判定結果を求める。
【0145】
したがって、本実施形態に係る検体検査装置1は、上記構成により、非特異的な吸着等による影響を受けずに、判定を行うことができる。
【0146】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、判定精度を向上させることができる。
【0147】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0148】
1 検体検査装置
23 光導波路
32 磁場発生器
201 反応容器
231 検出面
232 検出面
364 判定機能
365 最終判定機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B