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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】柱の構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/21 20060101AFI20240513BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240513BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
E04B1/21 A
E04B1/21 C
E04B1/58 503E
E04B1/58 511A
E02D27/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020057767
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156022
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】馬場▲崎▼ 宗之助
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 奈岐沙
(72)【発明者】
【氏名】吉武 謙二
(72)【発明者】
【氏名】波多野 正邦
(72)【発明者】
【氏名】久保 昌史
(72)【発明者】
【氏名】荒木 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】桐野 三郎
(72)【発明者】
【氏名】陸 剛
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋志
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特許第2729683(JP,B2)
【文献】実公平03-014483(JP,Y2)
【文献】特開2009-299325(JP,A)
【文献】特開2017-095915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/21
E04B 1/58
E02D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部と、
前記基礎部の上の柱基部に設けられるプレキャストコンクリート製の柱基部材と、
前記柱基部の上の柱中間部に設けられるプレキャストコンクリート製の柱中間部材と、を有し、
前記基礎部は、基礎部本体と、基礎部本体から上方に突出する第1鉄筋と、を有し、
前記柱基部材は、上下方向に貫通する第1貫通孔を有し、前記第1貫通孔に下側から前記第1鉄筋が挿通された状態で前記基礎部本体の上に設置され、
前記第1鉄筋は、前記柱基部材よりも上方に突出し、前記柱基部材よりも上方で前記柱中間部材と接合され
前記柱基部材には、鉄筋継手が配されていないことを特徴とする柱の構造。
【請求項2】
前記柱基部には、複数の前記柱基部材が上下方向に配列され、
前記第1鉄筋は、複数の前記柱基部材それぞれの前記第1貫通孔を貫通して、最上の前記柱基部材よりも上方に突出し、最上の前記柱基部材よりも上方で前記柱中間部材と接合されることを特徴とする請求項1に記載の柱の構造。
【請求項3】
前記柱中間部材は、柱中間部材本体と、前記柱中間部材本体に埋設される第2鉄筋と、を有し、
前記柱中間部材本体には、下側に開口し前記第2鉄筋が配置されたスリーブが設けられ、
前記スリーブには、前記第1鉄筋の上部側が下側から挿入され、
前記第1鉄筋と前記第2鉄筋とが、前記スリーブに充填されたグラウト材を介して接合されることを特徴とする請求項1または2に記載の柱の構造。
【請求項4】
前記柱中間部の上の柱頭部に設けられるプレキャストコンクリート製の柱頭部材と、
前記柱頭部材に形成された上下方向に貫通する第2貫通孔に挿通される第3鉄筋と、を有し、
前記第3鉄筋は、下部側が前記柱頭部材よりも下方に突出して前記柱中間部材と接合され、上部側が前記柱頭部材よりも上方に突出して前記柱頭部材の上に設けられる部材と接合され、前記下部側と前記上部側との間の上下方向の中間部が前記第2貫通孔に配置されて前記柱頭部材と接合されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の柱の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレキャストコンクリート部材を接合して構造物を構築する工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。プレキャストコンクリート部材毎に鉄筋継手が設けられ、隣り合うプレキャストコンクリート部材の鉄筋同士が鉄筋継手によって接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-95915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐震設計において柱基部の塑性化を許容する場合、柱基部の塑性化領域に鉄筋継手を設けない設計となっている。このため、耐震設計において柱基部の塑性化を許容する場合、基礎上端から柱幅の1.0倍から1.5倍の高さになる塑性化領域の柱基部に鉄筋継手が設けられたプレキャスト部材を使用することができず、柱基部のプレキャスト化ができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、耐震設計において柱基部の塑性化を許容する場合でも、柱基部にプレキャスト部材を使用することができる柱の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る柱の構造は、基礎部と、前記基礎部の上の柱基部に設けられるプレキャストコンクリート製の柱基部材と、前記柱基部の上の柱中間部に設けられるプレキャストコンクリート製の柱中間部材と、を有し、前記基礎部は、基礎部本体と、基礎部本体から上方に突出する第1鉄筋と、を有し、前記柱基部材は、上下方向に貫通する第1貫通孔を有し、前記第1貫通孔に下側から前記第1鉄筋が挿通された状態で前記基礎部本体の上に設置され、前記第1鉄筋は、前記柱基部材よりも上方に突出し、前記柱基部材よりも上方で前記柱中間部材と接合され、前記柱基部材には、鉄筋継手が配されていないことを特徴とする。
【0007】
本発明では、柱基部材は、上下方向に貫通する第1貫通孔を有し、基礎部の第1鉄筋が挿通され、第1鉄筋が柱基部材よりも上方で柱中間部材と接合されることにより、柱基部に鉄筋継手がない構造とすることができる。一般に、耐震設計において柱基部の塑性化を許容する場合には、柱基部に鉄筋継手がない構造としなければならない。本発明では、柱基部に鉄筋継手がない構造とすることができるため、柱基部をプレキャストコンクリート製の部材とした場合でも耐震設計において柱基部の塑性化を許容する設計とすることができる。すなわち、耐震設計において柱基部の塑性化を許容する場合でも、柱基部にプレキャスト部材を使用することができる。
【0008】
また、本発明に係る柱の構造では、前記柱基部には、複数の前記柱基部材が上下方向に配列され、前記第1鉄筋は、複数の前記柱基部材それぞれの前記第1貫通孔を貫通して、最上の前記柱基部材よりも上方に突出し、最上の前記柱基部材よりも上方で前記柱中間部材と接合されていてもよい。
このような構成とすることにより、柱基部が複数の柱基部材が配列される構造であっても、柱基部を鉄筋継手がない構造とすることができる。
【0009】
また、本発明に係る柱の構造では、前記柱中間部材は、柱中間部材本体と、前記柱中間部材本体に埋設される第2鉄筋と、を有し、前記柱中間部材本体には、下側に開口し前記第2鉄筋が配置されたスリーブが設けられ、前記スリーブには、前記第1鉄筋の上部側が下側から挿入され、前記第1鉄筋と前記第2鉄筋とが、前記スリーブに充填されたグラウト材を介して接合されることを特徴とする請求項1または2に記載の柱の構造。
このような構成とすることにより、第1鉄筋と第2鉄筋とをスリーブ内へのグラウト材充填によって接合し、鉄筋同士を直接接合しなくてよい。このため、第1鉄筋と第2鉄筋とを直接接合する重ね継手や溶接継手等を設ける作業がなく、柱基部材の第1貫通孔に挿通された第1鉄筋の定着と、第1鉄筋と第2鉄筋との接合を同時に施工することができる。その結果、柱の施工工期を短縮することができる。
【0010】
また、本発明に係る柱の構造では、前記柱中間部の上の柱頭部に設けられるプレキャストコンクリート製の柱頭部材と、前記柱頭部材に形成された上下方向に貫通する第2貫通孔に挿通される第3鉄筋と、を有し、前記第3鉄筋は、下部側が前記柱頭部材よりも下方に突出して前記柱中間部材と接合され、上部側が前記柱頭部材よりも上方に突出して前記柱頭部材の上に設けられる部材と接合され、前記下部側と前記上部側との間の上下方向の中間部が前記第2貫通孔に配置されて前記柱頭部材と接合さていてもよい。
このような構成とすることにより、柱頭部についても鉄筋継手のない構造とすることができる。このため、耐震設計において柱頭部の塑性化を許容する設計とする際にも、柱頭部にプレキャスト部材を使用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐震設計において柱基部の塑性化を許容する場合でも、柱基部にプレキャスト部材を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態による柱の構造の一例を示す鉛直断面図である。
図2】基礎部を構築する工程を示す図である。
図3】柱基部を構築する工程を示す図である。
図4】第1柱中間部材を設置する工程を示図である。
図5】第2柱中間部材および第3柱中間部材を設置する工程、柱頭部材を設置する工程を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態による柱の構造の一例を示す鉛直断面図である。
図7】第2柱中間部材を設置する工程を示す図である。
図8図7に続く第2柱中間部材を設置する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態による柱の構造について、図1図5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による柱1の構造は、橋脚柱の構造で、地盤11に支持される基礎部2と、基礎部2の上部に位置し柱1の基部となる柱基部3と、柱1の頭部となる柱頭部4と、柱基部3と柱頭部4との間の柱中間部5と、を有している。柱頭部4の上方には、桁12および床版(不図示)が設けられる。
【0014】
基礎部2は、鉄筋コンクリート造で、直方体のブロック状に形成された基礎部本体21と、上下方向に延び下部側が基礎部本体21に埋設され上部側が基礎部本体21の上面21aから上方に突出する基礎部鉄筋22(第1鉄筋)と、を有している。
基礎部本体21には、基礎部鉄筋22の他に適宜鉄筋が設けられている。
本実施形態では、基礎部鉄筋22は、基礎部本体21の上面21aから3m以上突出している。
【0015】
柱基部3は、プレキャストコンクリート部材で構築されている。柱基部3のプレキャストコンクリート部材を柱基部材31,32とする。本実施形態では2つの柱基部材31,32が上下に配列されている。
柱基部材31,32は、直方体のブロック状に形成されている。柱基部材31,32には、上下方向に貫通する第1貫通孔33が複数形成されている。第1貫通孔33は、柱基部材31,32のコンクリートに埋設されたシース管34によって形成されている。第1貫通孔33は、基礎部鉄筋22が挿通可能な径に形成されている。
【0016】
2つの柱基部材31,32のうち、下側の柱基部材を第1柱基部材31とし、上側の柱基部材を第2柱基部材32とする。
基礎部2の基礎部本体21の上に第1柱基部材31が設置され、第1柱基部材31の上に第2柱基部材32が設置される。基礎部本体21の上面21aから突出する基礎部鉄筋22は、第1柱基部材31の第1貫通孔33および第2柱基部材32の第1貫通孔33に挿通され、上端部22aが第2柱基部材32の上面32aよりも上方に位置している。
第1貫通孔33の内周面と基礎部鉄筋22と間には、グラウト材35が充填されている。
【0017】
柱中間部5は、プレキャストコンクリート部材で構築されている。柱中間部5のプレキャストコンクリート部材を柱中間部材51,52,53とする。本実施形態では複数の柱中間部材51が上下に配列されている。
上下方向に配列される柱中間部材51,52,53のうち、一番下側に設けられる柱中間部材を第1柱中間部材51とし、上下方向の中間部に設けられる柱中間部材を第2柱中間部材52とし、一番上側に設けられる柱中間部材を第3柱中間部材53とする。第2柱中間部材52は、第1柱中間部材51と第3柱中間部材53との間に設けられる。
本実施形態では、複数の第2柱中間部材52が上下方向に配列して設けられている。
【0018】
第1柱中間部材51は、直方体のブロック状に形成された第1柱中間部材本体511と、上下方向に延び下部側が第1柱中間部材本体511に埋設され上部側が第1柱中間部材本体511の上面から上方に突出する第1柱中間部材鉄筋512(第2鉄筋)と、を有している。
第1柱中間部材本体511には、下部側に下側に開口する第1柱中間部材鉄筋継手513が設けられている。
第1柱中間部材鉄筋継手513は、上方から挿入された鉄筋と下方から挿入された鉄筋とを接合するように構成されている。第1柱中間部材鉄筋継手513には、上方から第1柱中間部材鉄筋512が挿入されている。
第1柱中間部材51は、第2柱基部材32の上に配置される。第1柱中間部材鉄筋継手513は、下方から第2柱基部材32の上面32aから突出する基礎部鉄筋22が挿入され、第1柱中間部材鉄筋512と基礎部鉄筋22とを接合している。第1柱中間部材鉄筋継手513は、例えば下側に開口するスリーブで、グラウト材が充填されることで、第1柱中間部材鉄筋512と基礎部鉄筋22とをグラウト材を介して接合する。
【0019】
第2柱中間部材52は、直方体のブロック状に形成された第2柱中間部材本体521と、上下方向に延び下部側が第2柱中間部材本体521に埋設され上部側が第2柱中間部材本体521の上面から上方に突出する第2柱中間部材鉄筋522と、を有している。
第2柱中間部材本体521には、下部側に下側に開口する第2柱中間部材鉄筋継手523が設けられている。
第2柱中間部材鉄筋継手523は、上方から挿入された鉄筋と下方から挿入された鉄筋とを接合するように構成されている。第2柱中間部材鉄筋継手523には、上方から第2柱中間部材鉄筋522が挿入されている。
【0020】
第2柱中間部材52のうちの一番下の第2柱中間部材52は、第1柱中間部材51の上に配置される。第2柱中間部材鉄筋継手523は、下方から第1柱中間部材51の上面から突出する第1柱中間部材鉄筋512が挿入され、第2柱中間部材鉄筋522と第1柱中間部材鉄筋512とを接合している。第2柱中間部材鉄筋継手523は、例えば下側に開口するスリーブで、グラウト材が充填されることで、第2柱中間部材鉄筋522と第1柱中間部材鉄筋512とをグラウト材を介して接合する。
第2柱中間部材52のうちの下から2番目よりも上側の第2柱中間部材52は、下側の第2柱中間部材52の上に配置される。第2柱中間部材鉄筋継手523は、下方から下側の第2柱中間部材52の上面から突出する第2柱中間部材鉄筋522が挿入され、上側から挿入された第2柱中間部材鉄筋522と下側から挿入された第2柱中間部材鉄筋522とを接合している。
【0021】
第3柱中間部材53は、直方体のブロック状に形成された第3柱中間部材本体531と、上下方向に延び第3柱中間部材本体531に埋設された第3柱中間部材鉄筋532と、を有している。
第3柱中間部材本体531には、下部側に下側に開口する第3柱中間部材下側鉄筋継手533が設けられ、上部側に上側に開口する第3柱中間部材上側鉄筋継手534が設けられている。
第3柱中間部材下側鉄筋継手533および第3柱中間部材上側鉄筋継手534は、それぞれ上方から挿入された鉄筋と下方から挿入された鉄筋とを接合するように構成されている。
第3柱中間部材鉄筋532は、下部側が第3柱中間部材下側鉄筋継手533に上側から挿入され、上部側が第3柱中間部材上側鉄筋継手534に下側から挿入されている。
第3柱中間部材53は、一番上の第2柱中間部材52の上に配置される。第3柱中間部材下側鉄筋継手533は、下方から第2柱中間部材本体521の上面から突出する第2柱中間部材鉄筋522が挿入され、第3柱中間部材鉄筋532と第2柱中間部材鉄筋522とを接合している。第3柱中間部材上側鉄筋継手534は、例えば下側に開口するスリーブで、グラウト材が充填されることで、第3柱中間部材鉄筋532と第2柱中間部材鉄筋522とをグラウト材を介して接合する。
【0022】
柱頭部4は、プレキャストコンクリート部材で構築されている。柱中間部5のプレキャストコンクリート部材を柱頭部材41とする。本実施形態では、1つの柱頭部材41が設けられている。
柱頭部材41は、直方体のブロック状に形成されている。柱頭部材41には、上下方向に貫通する第2貫通孔42が複数形成されている。第2貫通孔42は、柱頭部材41のコンクリートに埋設されたシース管によって形成されている。第2貫通孔42は、後述する柱頭部鉄筋43(第3鉄筋)が挿通可能な径に形成されている。
【0023】
柱頭部材41は、第3柱中間部材53の上に配置され、第2貫通孔42が、第3柱中間部材上側鉄筋継手534の上に配置されている。
柱頭部材41の第2貫通孔42に挿通される柱頭部鉄筋43は、上下方向に延び、下端部分が第3柱中間部材上側鉄筋継手534に上側から挿入されて第3柱中間部材鉄筋532と接合され、その上側の中間部分が第2貫通孔42の内部に配置され、更にその上側の上部側が柱頭部材41の上面41aよりも上方に突出している。
第2貫通孔42の内周面と柱頭部鉄筋43と間には、グラウト材44が充填されている。
柱頭部鉄筋43における柱頭部材41の上面41aよりも上側に突出する部分は、柱頭部材41の上に設けられる桁12および床版(不図示)に埋設されている。
【0024】
第1実施形態による柱1の施工方法について説明する。
図2に示すように、基礎部2を構築し、基礎部本体21の上面21aから基礎部鉄筋22を突出させる。
【0025】
図3に示すように、基礎部本体21の上に第1柱基部材31を据え付けし、第1柱基部材31の第1貫通孔33に基礎部鉄筋22を挿通させる。第1柱基部材31の上に第2柱基部材32を据え付けし、第2柱基部材32の第1貫通孔33に基礎部鉄筋22を挿通させる。基礎部鉄筋22の上端部22aは、第2柱基部材32の上面32aよりも上方に突出させる。
基礎部本体21と第1柱基部材31との間の目地部、および第1柱基部材31と第2柱基部材32との間の目地部の型枠(不図示)を設ける。
第1柱基部材31および第2柱基部材32の第1貫通孔33にグラウト材35を充填し、基礎部鉄筋22と第1柱基部材31および第2柱基部材32とを接合する。目地部にモルタルなどの目地材を充填し、型枠を外す。
【0026】
図4に示すように、第2柱基部材32の上に第1柱中間部材51を据え付けし、第1柱中間部材51の第1柱中間部材鉄筋継手513に基礎部鉄筋22における第2柱基部材32の上面32aよりも上方に突出している部分を下方から挿入させる。第2柱基部材32と第1柱中間部材51との間の目地部の型枠(不図示)を設ける。
図4では、第1柱中間部材51の上に第2柱中間部材52が設けられているが、第2柱基部材32と第1柱中間部材51とを接合してから、第1柱中間部材51の上に第2柱中間部材52を設置して接合する。
第1柱中間部材鉄筋継手513にグラウト材54を充填して、基礎部鉄筋22と第1柱中間部材鉄筋512とを接合する。目地部にモルタルなどの目地材を充填し、型枠を外す。
【0027】
第1柱中間部材51の上に第2柱中間部材52を据え付けし、第2柱中間部材鉄筋継手523に第1柱中間部材鉄筋512における第1柱中間部材本体511の上面よりも上方に突出する部分を下方から挿入させる。
第1柱中間部材51と第2柱中間部材52との間の目地部の型枠(不図示)を設ける。
第2柱中間部材鉄筋継手523にグラウト材54を充填して、第1柱中間部材鉄筋512と第2柱中間部材鉄筋継手523とを接合する。目地部にモルタルなどの目地材を充填し、型枠を外す。
【0028】
図5に示すように、既に設置された第2柱中間部材52の上に、その上に配置される第2柱中間部材52を据え付ける。上側の第2柱中間部材52の第2柱中間部材鉄筋継手523に、下側の第2柱中間部材52の第2柱中間部材鉄筋522おける下側の第2柱中間部材52の第2柱中間部材本体521の上面から上方に突出している部分を下方から挿入させる。上側の第2柱基部材32と下側の第2柱基部材32との間の目地部の型枠(不図示)を設ける。
図5では、すべての第2柱中間部材52、第3柱中間部材53および柱頭部材41が設けられているが、1つずつ第2柱中間部材52を設置する。
第2柱中間部材鉄筋継手523にグラウト材54を充填して、下側の第2柱中間部材52の第2柱中間部材鉄筋522と上側の第2柱中間部材52の第2柱中間部材鉄筋522とを接合する。目地部にモルタルなどの目地材を充填し、型枠を外す。
【0029】
一番上の第2柱中間部材52の上に第3柱中間部材53を据え付けし、第3柱中間部材下側鉄筋継手533に下側の第2柱中間部材本体521の上面から上方に突出する第2柱中間部材鉄筋522を下方から挿入させる。
第2柱中間部材52と第3柱中間部材53との間の目地部の型枠(不図示)を設ける。
第3柱中間部材下側鉄筋継手533にグラウト材54を充填して、第2柱中間部材52の第2柱中間部材鉄筋522と第3柱中間部材53の第3柱中間部材鉄筋532とを接合する。目地部にモルタルなどの目地材を充填し、型枠を外す。
【0030】
第3柱中間部材53の上に柱頭部材41を据え付けし、柱頭部材41の第2貫通孔42を第3柱中間部材53の第3柱中間部材上側鉄筋継手534の上に配置する。
図1に示すように、柱頭部材41の上方から柱頭部材41の第2貫通孔42に柱頭部鉄筋43を挿通し、柱頭部鉄筋43の下端部分を第3柱中間部材上側鉄筋継手534に挿通する。
第3柱中間部材53と柱頭部材41との間の目地部の型枠(不図示)を設ける。
第3柱中間部材上側鉄筋継手534におよび第2貫通孔42にグラウト材44を充填して、第3柱中間部材鉄筋532と柱頭部鉄筋43とを接合する。目地部にモルタルなどの目地材を充填し、型枠を外す。
【0031】
柱頭部材41の上部に桁12および床版(付図示)を構築し、柱頭部鉄筋43を桁12および床版に埋設して接合する。
このようにして柱1が構築される。
【0032】
次に、上記の第1実施形態による柱1の構造の作用・効果について説明する。
上記の第1実施形態による柱1の構造では、柱基部材31は、上下方向に貫通する第1貫通孔33を有し、基礎部2の基礎部鉄筋22が挿通され、基礎部鉄筋22が柱基部材31よりも上方で柱中間部5の第1柱中間部材鉄筋512と接合されることにより、柱基部3に鉄筋継手がない構造とすることができる。一般に、耐震設計において柱基部3の塑性化を許容する場合には、柱基部3に鉄筋継手がない構造としなければならない。本実施形態では、柱基部3に鉄筋継手がない構造とすることができるため、柱基部3をプレキャストコンクリート部材とした場合でも耐震設計において柱基部3の塑性化を許容する設計とすることができる。すなわち、耐震設計において柱基部3の塑性化を許容する場合でも、柱基部3にプレキャストコンクリート部材を使用することができる。
【0033】
また、上記の第1実施形態による柱1の構造では、柱基部3は、複数の柱基部材31が上下方向に複数配列され、基礎部鉄筋22は、複数の柱基部材31それぞれの第1貫通孔33を貫通して、最上の柱基部材31よりも上方に突出し、最上の柱基部材31よりも上方で柱中間部5の第1柱中間部材鉄筋512と接合されている。
このような構成とすることにより、柱基部3が複数の柱基部材31が配列される構造であっても、柱基部3を鉄筋継手がない構造とすることができる。
【0034】
また、上記の第1実施形態による柱1の構造では、第1柱中間部材51は、第1柱中間部材本体511と、柱中間部材本体511に埋設される第1柱中間部材鉄筋512と、を有している。柱中間部材本体511には、下側に開口し第1柱中間部材鉄筋512が配置されたスリーブ(第1柱中間部材鉄筋継手513)が設けられている。スリーブにグラウト材が充填されることで、基礎部鉄筋22と第1柱中間部材鉄筋512とをグラウト材を介して接合される。
このような構成とすることにより、基礎部鉄筋22と第1柱中間部材鉄筋512とを直接接合しなくてよい。このため、基礎部鉄筋22と第1柱中間部材鉄筋512とを直接接合する重ね継手や溶接継手等を設ける作業がなく、第1柱基部材31および第2柱基部材32の第1貫通孔33に挿通された基礎部鉄筋22の定着と、基礎部鉄筋22と第1柱中間部材鉄筋512との接合を同時に施工することができる。その結果、柱1の施工工期を短縮することができる。
【0035】
また、上記の第1実施形態による柱1の構造では、柱頭部材41は、上下方向に貫通する第2貫通孔42を有し、第2貫通孔42に下側から柱頭部鉄筋43が挿通された状態で第3柱中間部材本体531の上に設置され、柱頭部鉄筋43は、柱頭部材41よりも上方に突出し、柱頭部材41よりも上方において柱頭部材41の上に設けられる部材(桁12および床版)と接合されている。
このような構成とすることにより、柱頭部4についても鉄筋継手のない構造とすることができる。このため、耐震設計において柱頭部4の塑性化を許容する設計とする際にも、柱頭部4にプレキャストコンクリート部材を使用することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
図6に示すように、第2実施形態による柱1Bの構造は、第1実施形態による柱1の構造と、第1柱中間部材51および第2柱中間部材52の形態が異なっている。
【0037】
第2実施形態の第1柱中間部材51Bは、第3柱中間部材53と同様に、下部側と上部側とに鉄筋継手が設けられている。第1柱中間部材51Bの下部側に設けられる鉄筋継手を第1柱中間部材下側鉄筋継手515とし、上部側に設けられる鉄筋継手を第1柱中間部材上側鉄筋継手516とする。第2実施形態の第1柱中間部材鉄筋512Bは、下部側が第1柱中間部材下側鉄筋継手515の上部側に挿入され、上部側が第1柱中間部材上側鉄筋継手516の下部側に挿入されている。
【0038】
第2実施形態の第2柱中間部材52Bは、鉄筋継手が設けられておらず、第2柱中間部材本体521Bに上下方向に貫通する第3貫通孔527が形成されている。第3貫通孔527は、第2柱中間部材本体521Bのコンクリートに埋設されたシース管によって形成されている。第3貫通孔527は、第3鉄筋55が挿通可能な径に形成されている。
複数の第2柱中間部材52Bが上下方向に配列されると、それぞれの第3貫通孔527が上下方向に重なって配置される。
【0039】
複数の第2柱中間部材52それぞれの第3貫通孔527には、第3鉄筋55が挿入される。第3鉄筋55は、上下方向に延び、下端部分が第1柱中間部材上側鉄筋継手516に上側から挿入されて第1柱中間部材鉄筋512Bと接合され、その上側の中間部分が複数の第2柱中間部材52それぞれの第3貫通孔527の内部に配置され、更にその上側の上端部分が第3柱中間部材下側鉄筋継手533に下側から挿入されて第3柱中間部材鉄筋532と接合されている。
【0040】
第2実施形態による柱1Bの施工方法について説明する。
第2実施形態では、第1実施形態と同様に基礎部2、柱基部3およびを施工し、第1実施形態の第1柱中間部材51と同様に柱基部3の上側に第1柱中間部材51Bを施工する。
【0041】
図7に示すように、第1柱中間部材51Bの上に複数の第2柱中間部材52Bを据え付ける。複数の第2柱中間部材52Bそれぞれの第3貫通孔527を上下方向に重なって配置する。
図8に示すように、複数の第2柱中間部材52Bそれぞれの第3貫通孔527に第3鉄筋55を挿通させる。第3鉄筋55の下端部分は、第1柱中間部材上側鉄筋継手516に挿入する。第3鉄筋55の上端部分は、一番上の第2柱中間部材52Bの上面から上方に突出させる。
第1柱中間部材上側鉄筋継手516にグラウト材56を充填して、第1柱中間部材鉄筋512Bと第3鉄筋55とを接合する。複数の第2柱中間部材52Bそれぞれの第3貫通孔527にグラウト材57を充填して、第3鉄筋55を複数の第2柱中間部材52Bそれぞれと接合する。
【0042】
図6に示すように、第2柱中間部材52Bの上に第3柱中間部材53を据え付ける。第3鉄筋55の上端部分を第3柱中間部材下側鉄筋継手533に挿入する。第3柱中間部材下側鉄筋継手533にグラウト材54を充填して、と第3鉄筋55と第3柱中間部材鉄筋532とを接合する。
柱頭部材41および柱頭部材41の上側の桁12および床版(不図示)を第1実施形態と同様に施工する。
このようにして柱1Bが構築される。
【0043】
上記の第2実施形態による柱1Bの構造では、第1実施形態による柱1の構造と同様の効果を奏する。
更に、第2実施形態による柱1Bの構造では、複数の第2柱中間部材52に鉄筋継手を設けず、複数の第2柱中間部材52それぞれの第3貫通孔527に第3鉄筋55を挿通して接合する構造とすることにより、第2柱中間部材52の接合を容易に行うことができる。
【0044】
以上、本発明による柱1の構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、柱基部3は、2つの柱基部材31が上下方向に複数配列されているが、1つの柱基部材31や、3つ以上の柱基部材31で構成されていてもよい。柱基部材31、柱中間部材51および柱頭部材41の数や形状は適宜設定されてよい。
【0045】
上記の実施形態では、第3柱中間部材53は、下部側に下側に開口する第3柱中間部材下側鉄筋継手533が設けられ、上部側に上側に開口する第3柱中間部材上側鉄筋継手534が設けられている。第3柱中間部材鉄筋532は、下部側が第3柱中間部材下側鉄筋継手533に上側から挿入され、上部側が第3柱中間部材上側鉄筋継手534に下側から挿入されている。
これに対し、第3柱中間部材53は、下部側に下側に開口する第3柱中間部材下側鉄筋継手533のみが設けられ、第3柱中間部材鉄筋532の上部側が第3柱中間部材本体531の上面よりも上方に突出して、柱頭部材41の第2貫通孔42を貫通し、上端部分が柱頭部材41の上方で桁12および床版と接合されていてもよい。
【0046】
上記の実施形態では、柱頭部材41には、鉄筋継手が設けられていないが、鉄筋継手が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1,1B 柱
2 基礎部
3 柱基部
4 柱頭部
5 柱中間部
11 地盤
12 桁(柱頭部材の上に設けられる部材)
21 基礎部本体
22 基礎部鉄筋(第1鉄筋)
31 第1柱基部材(柱基部材)
32 第2柱基部材(柱基部材)
33 第1貫通孔
41 柱頭部材
42 第2貫通孔
43 柱頭部鉄筋(第3鉄筋)
51,51B 第1柱中間部材(柱中間部材)
52,52B 第2柱中間部材(柱中間部材)
53 第3柱中間部材(柱中間部材)
511 第1柱中間部材本体(柱中間部材本体)
512 第1柱中間部材鉄筋(第2鉄筋)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8