(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】におい嗅ぎ装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/62 20060101AFI20240513BHJP
G01N 30/80 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G01N30/62 M
G01N30/80 B
(21)【出願番号】P 2020072280
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390030188
【氏名又は名称】ジーエルサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085110
【氏名又は名称】千明 武
(72)【発明者】
【氏名】辰口 健
(72)【発明者】
【氏名】武田 まなみ
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/022226(WO,A1)
【文献】特開2016-080536(JP,A)
【文献】特開2012-207982(JP,A)
【文献】登録実用新案第3174671(JP,U)
【文献】登録実用新案第3218125(JP,U)
【文献】特開2014-048247(JP,A)
【文献】特開2020-016480(JP,A)
【文献】特開平11-044684(JP,A)
【文献】米国特許第9188568(US,B2)
【文献】イプロスものづくり,におい嗅ぎシステム Sniffer 9100 アルファ・モス・ジャパン,2018年11月29日,https://www.ipros.jp/product/detail/44271007/,[令和5年9月26日検索]
【文献】Brechbuhler,SNIFFER 9100 Series,https://www.scispec.co.th/brochure/GC/Sniffer9100_BR.pdf,[令和5年9月27日検索]
【文献】アルファ・モス・ジャパン株式会社,におい分析ツールの特徴と役割,https://www.alpha-mos.co.jp/solution/odor.html,[令和5年9月26日検索]
【文献】吉田浩一,におい分析各種ツールの特徴と役割,月刊フードケミカル,日本,2018年03月01日,Vol.34, No.3,pp.38-39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00,30/80,
G01N 1/00,
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された試料を試料成分に分離し溶出する分離カラムと、
前記分離カラムから溶出した試料成分を検出する検出器と、を備える試料を分析可能な分析装置と、
前記分離カラムから溶出した試料成分と加湿空気の混合気体を測定者の鼻へ導くスニフパイプと、
前記試料成分と前記加湿空気とを混合するミキシングブロックと、
前記分離カラムから溶出した試料成分が導入可能であり、加温可能であるにおい成分送出器と、
前記加湿空気を供給する加湿空気供給システムと、
を備えたにおい嗅ぎ装置において、
前記におい成分送出器を、
前記加湿空気供給システムに連通する
前記ミキシングブロックに導入孔を介して導通可能に配置し、
前記ミキシングブロック内に、
前記分離カラムから溶出した
前記試料成分と
前記加湿空気供給システムから供給した
前記加湿空気とを混合し
前記混合気体とする混合流路を設け、前記ミキシングブロックに前記スニフパイプを接続する一方、
前記ミキシングブロック内に前記混合気体を加温可能なヒータを配置し、
前記ミキシングブロックの
前記混合流路の表面と前記導入孔の表面、および前記におい成分送出器の内面と
前記スニフパイプの内面に、SiO
2を主成分とする第1不活性処理膜と、
前記第1不活性処理膜表面のシラノール基をアルキルシリル化した第2不活性処理膜とを配置し
、
前記ミキシングブロックは、アルミニウムで形成されていることを特徴とするにおい嗅ぎ装置。
【請求項2】
導入された試料を試料成分に分離し溶出する分離カラムと、前記分離カラムから溶出した試料成分を検出する検出器と、を備える試料を分析可能な分析装置と、
前記分離カラムから溶出した試料成分と加湿空気の混合気体を測定者の鼻へ導くスニフパイプと、
前記試料成分と前記加湿空気とを混合するミキシングブロックと、
前記分離カラムから溶出した試料成分が導入可能であり、加温可能であるにおい成分送出器と、
前記加湿空気を供給する加湿空気供給システムと、
を備えたにおい嗅ぎ装置において、
前記におい成分送出器を、前記加湿空気供給システムに連通する前記ミキシングブロックに導入孔を介して導通可能に配置し、
前記ミキシングブロック内に、前記分離カラムから溶出した前記試料成分と前記加湿空気供給システムから供給した前記加湿空気とを混合し前記混合気体とする混合流路を設け、前記ミキシングブロックに前記スニフパイプを接続する一方、前記ミキシングブロック内に前記混合気体を加温可能なヒータを配置し、前記ミキシングブロックの前記混合流路の表面と前記導入孔の表面、および前記におい成分送出器の内面と前記スニフパイプの内面に、SiO
2
を主成分とする第1不活性処理膜と、前記第1不活性処理膜表面のシラノール基をアルキルシリル化した第2不活性処理膜とを配置し、
前記分離カラムの出口部を、前記検出器と
前記におい成分送出器とに繋ぎ変え可能にしたにおい嗅ぎ装置。
【請求項3】
前記検出器による
前記試料成分の検出後、
前記分離カラムの出口部を前記検出器から前記におい成分送出器に繋ぎ変え、
前記分離カラムから溶出した試料成分を
前記におい成分送出器へ導入可能にした請求項
1又は2記載のにおい嗅ぎ装置。
【請求項4】
前記
ミキシングブロック内の
前記混合流路に、15~20L/minの
前記加湿空気を
前記加湿空気供給システムから導入可能にした請求項1~3のうちいずれか1項記載のにおい嗅ぎ装置。
【請求項5】
前記分析装置内に
前記分離カラムと検出器流路とにおい成分送出流路を配置し、
前記検出器流路の後部を前記検出器に配置し、
前記におい成分送出流路の後部を前記におい成分送出器内の接続部に配置するとともに、
前記分離カラムと
前記検出器流路と
前記におい成分送出流路との間に流路切換部を配置し、
前記流路切換部の切換動作を介して、
前記分離カラムと
前記検出器を導通または遮断可能にし、
前記分離カラムと
前記検出器の導通時に
前記試料成分を検出可能にし、
前記分離カラムと
前記検出器の遮断時に
前記分離カラムと
前記におい成分送出器とを導通可能にした請求項
1~4のうちいずれか1項記載のにおい嗅ぎ装置。
【請求項6】
前記第2不活性処理膜のアルキルシリル基が、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基の中のいずれか1種類またはこれらの組み合わせである請求項
1~5のうちいずれか1項記載のにおい嗅ぎ装置。
【請求項7】
前記第2不活性処理膜のアルキルシリル基がメチルシリル基のみである請求項
6記載のにおい嗅ぎ装置。
【請求項8】
高沸点のにおい成分であるバニリン、2,4,6-トリブロモアニソール、ラズベリーケトン、ソトロン、3-メルカプト-1-ヘキサノールの内、いずれか1種以上のにおい嗅ぎ測定を行うための、請求項1~7のうちいずれか1項記載のにおい嗅ぎ装置。
【請求項9】
前記ヒータを、前記導入孔の直上の前記ミキシングブロックに配置した請求項1~8のうちいずれか1項記載のにおい嗅ぎ装置。
【請求項10】
前記ヒータの近傍に温度センサを配置した請求項9記載のにおい嗅ぎ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離カラムから溶出したにおい成分を大流量の加湿空気と混合し、スニフパイプから吐出して測定者の鼻へ導き、においの切れを向上することにより、スニフパイプから吐出される間隔が近い複数のにおい成分を峻別して嗅ぎ分けることを可能とするとともに、分離カラムから溶出したにおい成分を大流量の加湿空気に混合する混合流路を加温することによって、高沸点のにおい成分の残留を低減するとともに、混合流路の表面と、導入孔の表面と、におい成分送出器の内面と、スニフパイプの内面に不活性処理膜を配置して、吸着活性の高いにおい成分の吸着を低減し、それらのにおい残りを抑制して測定者が微量なにおい成分を正確に嗅ぎ分けられ、しかも分離カラムから溶出したにおい成分の全量を測定者が嗅げるようにしてにおい嗅ぎ測定の精度を向上するようにした、におい嗅ぎ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフにおい嗅ぎ(Gas Chromatography Olfactometry、GC-O)装置の中に、ガスクロマトグラフの試料注入口から試料を導入して分離カラムに導き、分離カラムの出口から検出器とにおい嗅ぎポートへ分岐し、検出器でにおい成分を検出すると同時に、におい嗅ぎポートでにおい成分と加湿空気を合流させ、におい嗅ぎポートから吐出したにおい成分と加湿空気の混合気体を、測定者が嗅覚により嗅いで評価するようにしたものがある(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
しかし、前記(GC-O装置)は分離カラムから溶出したにおい成分を分岐してにおい嗅ぎポートへ導いているため、におい成分の全量を嗅ぐことができず、におい成分を正確に測定できないという問題があった。
また、におい成分は分岐後、トランスファーラインで加熱され、におい嗅ぎポートで加湿して吐出されるが、流量が7~15mL/minと少ないため測定者自らが積極的ににおいを嗅ぐ必要があり、測定者の負担が大きくなるという問題があった。
更に、流量が少ないため、におい嗅ぎポート出口周辺に、吐出されたにおい成分が留まり、においの切れが良くないという問題があった。
そのうえ、分岐部からにおい嗅ぎポートまでのにおい成分の流路であるトランスファーラインはステンレス製であり、流路表面に金属が露出していることから、におい成分の中の一部の金属配位性のにおい成分が流路内に吸着し、時間をかけて脱離するため、におい嗅ぎポート出口から特定のにおい成分が吐出され続けるにおい残りが生じて、においの切れが良くなかったため、測定者が微量のにおい成分を峻別し辛いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3218125号公報
【文献】特許第5287320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこれらの問題を解決し、分離カラムから溶出したにおい成分を大流量の加湿空気と混合し、スニフパイプから吐出して測定者の鼻へ導き、においの切れを向上することにより、スニフパイプから吐出される間隔が近い複数のにおい成分を峻別して嗅ぎ分けることを可能とするとともに、分離カラムから溶出したにおい成分を大流量の加湿空気に混合する混合流路を加温することによって、高沸点のにおい成分の残留を低減するとともに、混合流路の表面と、導入孔の表面と、におい成分送出器の内面と、スニフパイプの内面に不活性処理膜を配置して、吸着活性の高いにおい成分の吸着を低減し、それらのにおい残りを抑制して微量なにおい成分を正確に嗅ぎ分けられ、しかも分離カラムから溶出したにおい成分の全量を測定者が嗅げるようにしてにおい嗅ぎ精度を向上するようにした、におい嗅ぎ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、導入された試料を試料成分に分離し溶出する分離カラムと、分離カラムから溶出した試料成分を検出する検出器と、を備える試料を分析可能な分析装置と、分離カラムから溶出した試料成分と加湿空気の混合気体を測定者の鼻へ導くスニフパイプと、を備えたにおい嗅ぎ装置において、分離カラムから溶出した試料成分をにおい成分送出器へ導入可能にし、該におい成分送出器を加温可能に設けるとともに、該におい成分送出器を、加湿空気供給システムに連通するミキシングブロックに導入孔を介して導通可能に配置し、該ミキシングブロック内に、分離カラムから溶出した試料成分と加湿空気供給システムから供給した加湿空気とを混合し混合気体とする混合流路を設け、前記ミキシングブロックに前記スニフパイプを接続する一方、ミキシングブロック内に前記混合気体を加温可能なヒ-タを配置し、該ミキシングブロックの混合流路の表面と前記導入孔の表面、および前記におい成分送出器の内面とスニフパイプの内面に、SiO2を主成分とする第1不活性処理膜と、該第1不活性処理膜表面のシラノール基をアルキルシリル化した第2不活性処理膜とを配置して、分離カラムから溶出した試料成分をにおい成分送出器からミキシングブロックへ導入可能にするとともに、ミキシングブロック内のヒータによって、ミキシングブロックに導入した加湿空気と試料成分の混合気体を加温し、試料成分の特に高沸点のにおい成分の吸着によるにおい残りを低減し、また第1不活性処理膜と第2不活性処理膜によって、吸着活性が高いにおい成分(金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分)の吸着によるにおい残りを低減し、微量なにおい成分の測定を正確に行なえるようにしている。
【0007】
請求項2の発明は、分離カラムの出口部を、前記検出器とにおい成分送出器とに繋ぎ変え可能にし、検出器とにおい成分送出器の使い分けを実現し、分離カラムの出口部を検出器に繋ぎ時、分離カラムから溶出した試料成分を検出器に導入し、検出器による試料成分の検出を実現し、また分離カラムの出口部をにおい成分送出器に繋ぎ時、試料成分をミキシングブロックへ送出可能にしている。
【0008】
請求項3の発明は、検出器による試料成分の検出後、分離カラムの出口部を前記検出器からにおい成分送出器に繋ぎ変え、分離カラムから溶出した試料成分をにおい成分送出器へ導入可能にし、前記試料成分をにおい成分送出器からミキシングブロックへ導入するとともに、その際検出器による検出結果を基ににおい嗅ぎ測定を合理的に行なえるようにしている。
【0009】
請求項4の発明は、ミキシングブロック内の混合流路に、従来の約1000倍の大流量である15~20L/minの加湿空気を加湿空気供給システムから導入可能にし、この大流量の加湿空気ににおい成分を混合した混合気体を測定者の鼻へ導き、鼻へのストレスを低減するとともに、大流量の加湿空気と混合し、におい成分を希釈することより、におい成分の吸着を防ぐとともに、におい残りを低減し、また大流量の混合気体によってスニフパイプ出口側端部ににおいが留まる事態を防ぎ、においの切れを向上して、微量なにおい成分や個々のにおい成分を峻別して嗅ぎ分けられるようにしている。
【0010】
請求項5の発明は、分析装置内に分離カラムと検出器流路とにおい成分送出流路を配置し、該検出器流路の後部を前記検出器に配置し、該におい成分送出流路の後部を前記におい成分送出器内の接続部に配置するとともに、分離カラムと検出器流路とにおい成分送出流路との間に流路切換部を配置し、該流路切換部の切換動作を介して、分離カラムと検出器を導通または遮断可能にし、分離カラムと検出器の導通時に試料成分を検出可能にし、分離カラムと検出器の遮断時に分離カラムとにおい成分送出器とを導通可能にし、分離カラムの繋ぎ変えによる煩雑さを解消し、それらの導通または遮断を簡便に行うようにしている。
【0011】
請求項6の発明は、前記SiO2を主成分とする第1不活性処理膜の一部が、該第1不活性処理膜の原料由来のアルキルシリル基であり、第1不活性処理膜の表面のシラノール基が減少することで、第2不活性処理膜が形成された後の残存シラノール基も減少し、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分の吸着とこれらのにおい残りを一層防ぐようにしている。
請求項7の発明は、前記第1不活性処理膜の一部のアルキルシリル基がメチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基の中のいずれか1種類またはこれらの組み合わせであることにより、第1不活性処理膜の表面のシラノール基が減少し、第2不活性処理膜が形成された後の残存シラノール基が減少することのみならず、第1不活性処理膜表面に残るアルキル基が短鎖で疎水性が低いことにより、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分の吸着とこれらのにおい残りをより防ぎつつ、疎水性の高いにおい成分の吸着とにおい残りを抑えるようにしている。
【0012】
請求項8の発明は、前記第1不活性処理膜の一部のアルキルシリル基がメチルシリル基のみであることにより、第1不活性処理膜の表面のシラノール基が減少し、第2不活性処理膜が形成された後の残存シラノール基が減少することのみならず、第1不活性処理膜表面に残るアルキル基が最も短鎖で疎水性が最も低いことにより、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分の吸着とこれらのにおい残りをより防ぎつつ、疎水性の高いにおい成分の吸着とにおい残りをより抑えるようにしている。
【0013】
請求項9の発明は、前記第2不活性処理膜のアルキルシリル基が、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基の中のいずれか1種類またはこれらの組み合わせであることにより、第1不活性処理膜表面のシラノール基をアルキル基同士の立体障害が少なくアルキルシリル化でき、アルキルシリル化によるシラノール基の被覆率が高まることで、第2不活性処理膜が形成された後の残存シラノール基が減少することのみならず、第2不活性処理膜表面のアルキル基が短鎖で疎水性が低いことにより、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分の吸着とこれらのにおい残りをより防ぎつつ、疎水性の高いにおい成分の吸着とにおい残りを抑えるようにしている。
【0014】
請求項10の発明は、前記第2不活性処理膜のアルキルシリル基がメチルシリル基のみであることにより、第1不活性処理膜表面のシラノール基をアルキル基同士の立体障害が少なくアルキルシリル化でき、アルキルシリル化によるシラノール基の被覆率が高まることで、第2不活性処理膜が形成された後の残存シラノール基が減少することのみならず、第2不活性処理膜表面のアルキル基が最も短鎖で最も疎水性が低いことにより、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分の吸着とこれらのにおい残りをより防ぎつつ、疎水性の高いにおい成分の吸着とにおい残りをより抑えるようにしている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、分離カラムから溶出した試料成分をにおい成分送出器へ導入可能にし、該におい成分送出器を加温可能に設けるとともに、該におい成分送出器を、加湿空気供給システムに連通するミキシングブロックに導入孔を介して導通可能に配置し、該ミキシングブロック内に、分離カラムから溶出した試料成分と加湿空気供給システムから供給した加湿空気とを混合し混合気体とする混合流路を設け、前記ミキシングブロックに前記スニフパイプを接続する一方、ミキシングブロック内に前記混合気体を加温可能なヒ-タを配置し、該ミキシングブロックの混合流路の表面と前記導入孔の表面、および前記におい成分送出器の内面とスニフパイプの内面に、SiO2を主成分とする第1不活性処理膜と、該第1不活性処理膜表面のシラノール基をアルキルシリル化した第2不活性処理膜とを配置したから、分離カラムから溶出した試料成分をにおい成分送出器からミキシングブロックへ導入可能にするとともに、ミキシングブロック内のヒータによって、ミキシングブロックに導入した加湿空気と試料成分の混合気体を加温し、試料成分の特に高沸点のにおい成分の吸着によるにおい残りを低減し、また第1不活性処理膜と第2不活性処理膜によって、吸着活性が高いにおい成分(金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分)の吸着によるにおい残りを低減し、微量なにおい成分の測定を行うことができる。
【0016】
請求項2の発明は、分離カラムの出口部を、前記検出器とにおい成分送出器とに繋ぎ変え可能にしたから、検出器とにおい成分送出器の使い分けを実現し、分離カラムの出口部を検出器に繋ぎ時、分離カラムから溶出した試料成分を検出器に導入し、検出器による試料成分の検出を実現し、また分離カラムの出口部をにおい成分送出器に繋ぎ時、試料成分をミキシングブロックへ送り出すことができる。
請求項3の発明は、検出器による試料成分の検出後、分離カラムの出口部を前記検出器からにおい成分送出器に繋ぎ変え、分離カラムから溶出した試料成分をにおい成分送出器へ導入可能にしたから、前記試料成分をにおい成分送出器からミキシングブロックへ導入することができ、その際検出器による検出結果を基ににおい嗅ぎを合理的に行うことができる。
【0017】
請求項4の発明は、ミキシングブロック内の混合流路に、従来の約1000倍の大流量である15~20L/minの加湿空気を加湿空気供給システムから導入可能にしたから、大流量の加湿空気ににおい成分を混合した混合気体を測定者の鼻へ導き、鼻へのストレスを低減するとともに、大流量の加湿空気と混合し、におい成分を希釈することより、におい成分の吸着を防ぎ、におい残りを低減し、また大流量の混合気体によってスニフパイプ出口側端部ににおいが留まることを防ぐことにより、においの切れを向上し、微量なにおい成分や個々のにおい成分を峻別して嗅ぎ分けることができる。
【0018】
請求項5の発明は、分析装置内に分離カラムと検出器流路とにおい成分送出流路を配置し、該検出器流路の後部を前記検出器に配置し、該におい成分送出流路の後部を前記におい成分送出器内の接続部に配置するとともに、分離カラムと検出器流路とにおい成分送出流路との間に流路切換部を配置し、該流路切換部の切換動作を介して、分離カラムと検出器を導通または遮断可能にし、分離カラムと検出器の導通時に試料成分を検出可能にし、分離カラムと検出器の遮断時に分離カラムとにおい成分送出器とを導通可能にしたから、分離カラムの繋ぎ変えによる煩雑さを解消し、それらの導通または遮断を簡便に行うことができる。
【0019】
請求項6の発明は、前記第1不活性処理膜の一部が、該第1不活性処理膜の原料由来のアルキルシリル基であるから、第1不活性処理膜の表面のシラノール基が減少するため、第2不活性処理膜が作製された後の残存シラノール基も減少することにより、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分の吸着とこれらのにおい残りをより防ぐことができる。
請求項7の発明は、前記第1不活性処理膜の一部のアルキルシリル基がメチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基の中のいずれか1種類またはこれらの組み合わせであるから、第1不活性処理膜の表面のシラノール基が減少し、第2不活性処理膜が作製された後の残存シラノール基が減少することのみならず、第1不活性処理膜表面に残るアルキル基が短鎖で疎水性が低いことにより、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分の吸着とこれらのにおい残りをより防ぎつつ、疎水性の高いにおい成分の吸着とにおい残りを抑えることができる。
【0020】
請求項8の発明は、前記第1不活性処理膜の一部のアルキルシリル基がメチルシリル基のみであるから、第1不活性処理膜の表面のシラノール基が減少し、第2不活性処理膜が作製された後の残存シラノール基が減少することのみならず、第1不活性処理膜表面に残るアルキル基が最も短鎖で疎水性が最も低いことにより、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分の吸着とこれらのにおい残りをより防ぎつつ、疎水性の高いにおい成分の吸着とにおい残りをより抑えることができる。
【0021】
請求項9の発明は、前記第2不活性処理膜のアルキルシリル基が、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基の中のいずれか1種類またはこれらの組み合わせであるから、第1不活性処理膜表面のシラノール基をアルキル基同士の立体障害が少なくアルキルシリル化でき、アルキルシリル化によるシラノール基の被覆率が高まることで、第2不活性処理膜が形成された後の残存シラノール基が減少することのみならず、第2不活性処理膜表面のアルキル基が短鎖で疎水性が低いことにより、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分の吸着とこれらのにおい残りをより防ぎつつ、疎水性の高いにおい成分の吸着とにおい残りを抑えることができる。
【0022】
請求項10の発明は、前記第2不活性処理膜のアルキルシリル基がメチルシリル基のみであるから、第1不活性処理膜表面のシラノール基をアルキル基同士の立体障害が少なくアルキルシリル化でき、アルキルシリル化によるシラノール基の被覆率が高まることで、第2不活性処理膜が形成された後の残存シラノール基が減少することのみならず、第2不活性処理膜表面のアルキル基が最も短鎖で最も疎水性が低いことにより、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分および分子中に塩基を持つにおい成分の吸着とこれらのにおい残りをより防ぎつつ、疎水性の高いにおい成分の吸着とにおい残りをより抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のにおい嗅ぎ装置をガスクロマトグラフ(GC)に適用した実施形態の概要を示す説明図である。
【
図2】本発明のにおい嗅ぎ装置の実施形態に適用したミキシングブロックと、におい成分送出器の要部を拡大して示す断面図である。
【
図3】本発明のにおい嗅ぎ装置の実施形態に適用した加湿空気供給システムを示す正面図である。
【
図4】本発明のにおい嗅ぎ装置の実施形態に適用したミキシングブロック内の要部を拡大して示す断面図である。
【
図5】本発明のにおい嗅ぎ装置の実施形態に適用したスニフパイプ内の要部を拡大して示す断面図である。
【
図6】本発明のにおい嗅ぎ装置の実施形態に適用したにおい成分送出器内の要部を拡大して示す断面図である。
【0024】
【
図7】本発明のにおい嗅ぎ装置に適用したミキシングブロック、スニフパイプ、におい成分送出器への金属配位性のにおい成分の吸着によるにおい残りの推移を、第1不活性処理膜および第2不活性処理膜の有無を基に比較し、これらの不活性処理膜形成の効果を示す実験図である。
【
図8】本発明のにおい嗅ぎ装置に適用したミキシングブロック内のヒ-タによる効果を、高沸点のにおい成分の吸着によるにおい残りの推移を基に示す実験図である。
【
図9】本発明のにおい嗅ぎ装置の実施形態に適用したミキシングブロック内のヒータによる、ミキシングブロック表面、スニフパイプ表面、鼻周辺の各計測地点の温度状況を示す説明図である。
【
図10】前記温度状況を示す各計測地点を示す説明図である。
【0025】
【
図11】本発明の他の実施形態の概要を示す説明図で、GCに検出器とにおい成分送出器の切り換えシステムを適用した作動状況を示し、同図(a)は分離カラムから溶出したにおい成分を流路切換部により検出器に導入し、試料成分を検出しており、同図(b)は分離カラムから溶出したにおい成分を流路切換部によりにおい成分送出器に導入し、におい嗅ぎ測定している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を分析装置としてガスクロマトグラフ(GC)に適用した図示の実施形態について説明すると、
図1乃至
図11において1は分析装置であるGCで、カラムオーブン4の上端部に試料注入口2が設けられ、該試料注入口2にキャリアガスボンベ(図示略)からキャリアガスが供給され、この試料注入口2の上部からシリンジ3を介して試料を注入可能にしている。
前記分析装置1は、前記カラムオーブン4、試料注入口2、シリンジ3、および後述する分離カラム5、検出器6を含む構成としている。
【0027】
前記カラムオーブン4の上端部に試料注入口2が配置され、この試料注入口2に分離カラム5の入口部が接続され、その出口部を検出器6とにおい成分送出器7に接続可能にしている。
前記検出器6として水素炎イオン化検出器(FID)が使用され、この検出器6をカラムオーブン4の上部に設置し、試料成分の検出時、内部のノズル(図示略)の先端を点火して水素炎を形成可能にしている。
【0028】
前記検出器6と離間してステンレス製のにおい成分送出器7が配置され、このにおい成分送出器7は下部に接続部8が接続され、におい成分送出器内の接続部8は分離カラム5の出口部に接続可能にしている。
前記におい成分送出器7は、その内部を熱源(図示略)を介して所定温度に加温可能にされ、その温度によってにおい成分送出器7及び後述するミキシングブロック9を加温可能にしている。実施形態では、におい成分送出器7の加温温度を220℃に設定している。
【0029】
前記におい成分送出器7は検出器6と別個ににおい嗅ぎ測定時に使用され、その使用時に分離カラム5の出口部を検出器6のノズルから接続部8に繋ぎ変え、におい成分を後述するミキシングブロック9内に送出可能にしている。
前記におい成分送出器7の上端部にミキシングブロック9が載置して固定され、該ミキシングブロック9はアルミニウム製の箱形に形成され、その内部の長さ方向に混合流路10が形成されている。
【0030】
前記混合流路10の中間部より上流側に、におい成分送出器7内に連通する導入孔11が下面から上向きに形成されている。
前記混合流路10の上流側入口部に加湿空気導管12が接続され、該混合流路10の出口部にステンレス製のスニフパイプ13の一端が接続されている。
【0031】
前記加湿空気導管12は後述する加湿空気供給システムの終端部に接続され、該加湿空気供給システムは
図3のように、その始端部にエアーコンプレッサ15が配置され、その下流側に夾雑物を除去するレギュレータ付きフィルタ16と、圧縮空気中の水分を除去するエアードライヤ17が接続されている。
前記エアードライヤ17の下流側に、圧縮空気量を規制するニードルバルブ18と、圧縮空気量を計測するフローメータ19が配置され、その下流側に有機物を除去する有機物除去管20が配置されている。
【0032】
前記有機物除去管20の下流側に、内部の水21を加温、蒸発させ、圧縮空気と混合する加湿容器22が配置され、エアーコンプレッサ15で生成した大流量の圧縮空気を加湿容器22内の水蒸気を通過させて加湿空気を生成し、この加湿空気を下流側に配置したトラップ容器23へ導き、その移動中に冷却し液化した水分を捕捉して、調製した15~20L/minの大流量の加湿空気を、ミキシングブロック9内へ導入可能にし、ミキシングブロック9およびスニフパイプ13への水滴の流出と滞留を防止可能にしている。
【0033】
前記加湿空気供給システムでは最大50L/minの加湿空気を調製することができるが、流量が大きくなるにつれて風圧が強くなり、におい嗅ぎ測定において測定者のストレスとなるため、15~20L/minが最も適した流量となる。
【0034】
前記におい成分送出器7の内面、すなわち導通孔7aの表面、混合流路10と導入孔11の表面、すなわちミキシングブロック9の内面、スニフパイプ13の内面は、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする第1不活性処理膜および第1不活性処理膜表面のシラノール基がアルキルシリル化された第2不活性処理膜が形成され、それらを移動する試料成分中の吸着活性が高いにおい成分、例えば金属配位性のにおい成分であるソトロンや3-メルカプト-1-ヘキサノール、塩基性のにおい成分、分子中に塩基を含むにおい成分の吸着と残留を低減し、それらのにおい残りを防止するとともに、スニフパイプ13出口へのにおい残りの流出を防止するようにしている。
【0035】
このうち、ミキシングブロック9内の混合流路10と導入孔11の表面に、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする第1不活性処理膜24が作製され、該第1不活性処理膜24表面のSiO2表面のシラノール基をアルキルシリル化して、第2不活性処理膜25を作製している。
また、スニフパイプ13の内面に、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする第1不活性処理膜26が作製され、該第1不活性処理膜26表面のSiO2表面のシラノール基をアルキルシリル化して第2不活性処理膜27を作製している。
【0036】
また、におい成分送出器7の内面に、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする第1不活性処理膜28が作製され、該第1不活性処理膜28表面のSiO2表面のシラノール基をアルキルシリル化して、第2不活性処理膜29を作製している。
前記第1不活性処理膜は、二酸化ケイ素(SiO2)が100%である、二酸化ケイ素(SiO2)のみから成る膜だけでなく、主成分が二酸化ケイ素(SiO2)であればよく、その他に有機成分が含まれる膜も含まれる。
前記第1不活性処理膜24、26、28の膜厚は約200~300nmに作製され、第2不活性処理膜25、27、29は第1不活性処理膜24、26、28を被覆する程度の極薄膜に作製され、その膜厚は僅少に作製されている。
【0037】
実施形態では、前記第1不活性処理膜24、26、28は、真空度-0.099MPaの真空中下で、ジメチルジエトキシシランを拡散させて混合流路10と導入孔11の表面、におい成分送出器7の内面、スニフパイプ13の内面に接触させ、当該部に酸素またはオゾンを導入し、300℃の加熱を90分間行なって作製している。
【0038】
また、前記第2不活性処理膜25、27、29は、真空度-0.099MPaの真空中下で、ジメチルジエトキシシランを拡散させて、第1不活性処理膜24、26、28それぞれの表面に接触させ、300℃の加熱を1時間行なって作製し形成している。
【0039】
におい嗅ぎ測定時には、前記におい成分送出器7は内蔵した熱源(図示略)によって所定温度に加熱設定され、導通孔7aを移動する、高沸点のにおい成分の吸着を防ぐようにされている。
【0040】
前記ミキシングブロック9は、におい嗅ぎ測定時にはにおい成分送出器7に内蔵した熱源(図示略)によって所定温度に加熱設定され、導入孔11や混合流路10を移動する、高沸点のにおい成分の吸着を防ぐようにされている。
加えて、ミキシングブロック9内の導入孔11の直上にヒータ14を設置して加温し、ミキシングブロック9内の温度を調整可能にし、高沸点のにおい成分の吸着を防ぐようにしている。
【0041】
すなわち、前記ミキシングブロック9内の混合流路10の中で、におい成分が加湿空気と合流し始める空間であり、におい成分の希釈の均一化が不十分で、濃度の高い状態の高沸点のにおい成分が混合流路10の表面に接触する可能性のある領域を加温することが効果的と考え、ヒータ14を導入孔11の直上に設置している。
前記ヒータ14の設定温度は、におい嗅ぎ測定時に、におい嗅ぎ測定の対象とするにおい成分にあわせて変更可能にされ、におい嗅ぎ測定対象成分が低沸点のにおい成分の場合は低温、におい嗅ぎ測定対象成分が高沸点のにおい成分の場合は高温に設定される。
【0042】
そして、ミキシングブロック9ないし混合流路10を移動する加湿空気と試料成分の混合気体の温度を、ヒータ14の近傍に設けた温度センサ30によって検出し、その検出信号を温度制御装置(図示略)へ出力して、ヒータ14の設定温度を加減調整可能にしている。
実際のにおい嗅ぎ測定前に、分離カラム5の出口部を検出器6につないだ分析装置1を用いて試料成分のクロマトグラムを採取し、得られたクロマトグラムの保持時間を基に、におい嗅ぎ測定時に分離カラムから溶出した試料成分がミキシングブロックに達する時間を予測し、この予測時間にヒータ14の設定温度を調整可能にしている。
【0043】
なお、実施形態では水素炎イオン化検出器(FID)を検出器6としたガスクロマトグラフ(GC)を分析装置として採用しているが、この他に検出器6として熱伝導度検出器(TCD)、電子捕獲検出器(ECD)、炎光光度検出器(FPD)、熱イオン化検出器(TID)、光イオン化検出器(PID)、質量分析計(MS)を採用することも可能である。
【0044】
このように構成したにおい嗅ぎ装置は、カラムオーブン4と分離カラム5と、カラムオーブン4の上端部に設置する試料注入口2と、試料注入口2に試料を導入するシリンジ3と、分離カラム5で分離され、溶出した試料成分を検出する検出器6から成る分析装置1(実施形態ではガスクロマトグラフ、Gas Chromatograph、GC)と、大量の加湿空気を生成する加湿空気供給システムと、分離カラム5から溶出した試料成分(におい成分を含む)をミキシングブロック9へ導入可能にするにおい成分送出器7と、加湿空気供給システムから加湿空気導管12を経て供給される大流量の加湿空気とにおい成分送出器7から導入される試料成分とを混合するミキシングブロック9と、ミキシングブロック9で混合された試料成分と加湿空気の混合気体を測定者32の鼻33へ届けるスニフパイプ13と、を備える。
前記におい成分送出器7は、分離カラム5の出口部が接続される接続部8に連通可能に設置され、前記接続部8には、検出器6に使用可能なFIDのノズルと同部品を使用できる。
【0045】
前記加湿空気供給システムは
図3のように、その始端部にエア-コンプレッサ15を配置し、その下流側に夾雑物を除去するレギュレータ付きフィルタ16と、圧縮空気中の水分を除去するエアードライヤ17を接続する。
前記エアードライヤ17の下流側に圧縮空気量を規制するニードルバルブ18と、圧縮空気量を計測するフローメータ19を配置し、その下流側に有機物を除去する有機物除去管20を配置する。
【0046】
前記有機物除去管20の下流側に、内部の水21を加温、蒸発させ、圧縮空気と混合する加湿容器22を配置し、エアーコンプレッサ15で生成した大流量の空気を加湿容器22内の水蒸気を通過させて加湿空気を生成し、この加湿空気を下流側に配置したトラップ容器23に導き、その移動中に冷却し液化した水分を捕捉し、液化した水分を除去した15~20L/min程度の大流量の加湿空気を、ミキシングブロック9へ導入可能にする。
【0047】
前記ミキシングブロック9をアルミニウムによって箱形に形成し、その内部の長さ方向に混合流路10を形成し、該混合流路10の中間部より上流側に、におい成分送出器7内に連通する導入孔11を下側から上向きに形成している。
前記ミキシングブロック9は金属製であれば良く、ミキシングブロック9の材料の金属は特に限定はされず、ステンレスや真鍮等を用いることができるが、金属の中でも熱伝導率が高く、加工性と耐食性に優れたアルミニウムを材料としてミキシングブロック9を形成するのが最も好ましい。
前記混合流路10と導入孔11を形成後、それらの表面に二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする第1不活性処理膜および第1不活性処理膜表面のシラノール基がアルキルシリル化された第2不活性処理膜を作製ないし形成し、それらの内部を移動する試料成分中の吸着活性が高いにおい成分、例えば金属配位性のにおい成分であるソトロンや3-メルカプト-1-ヘキサノールまたは塩基性のにおい成分、分子中に塩基を含むにおい成分の吸着を低減し、スニフパイプ13出口部へのにおい残りの流出を抑制する。
【0048】
次に第1不活性処理膜24の原料と作製ないし形成方法について述べる。
第1不活性処理膜26、28の原料については第1不活性処理膜24の原料と同様であるので省略する。
【0049】
前記ミキシングブロック9内の混合流路10と導入孔11の表面に、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする第1不活性処理膜24が作製ないし形成され、該第1不活性処理膜24表面のSiO2表面のシラノール基をアルキルシリル化して、第2不活性処理膜25を作製ないし形成する。
前記第1不活性処理膜24の膜厚を約200~300nmに作製ないし形成し、第2不活性処理膜25は第1不活性処理膜24を被覆する程度の極薄膜に作製ないし形成し、その膜厚を僅少に作製ないし形成する。
【0050】
第1不活性処理膜24を作製ないし形成するための原料は、酸化及び加熱により、SiO2を主成分とする膜を作製出来るものであれば特に限定はされないが、無機ポリシラザン、テトラアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、トリメチルモノアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、ジエチルジアルコキシシラン、トリエチルモノアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシラン、トリプロピルモノアルコキシシラン、ヘキサメチルシクロトリシロキサンやオクタメチルシクロテトラシロキサン等のジメチル型環状シロキサン、ジエチル型環状シロキサン、ジプロピル型環状シロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンやデカメチルテトラシロキサン等の直鎖状ポリジメチルシロキサン、直鎖状ポリジエチルシロキサン、直鎖状ポリジプロピルシロキサンから選択される1種以上を用いることができる。これらの原料は入手し易く、一般的によく使用されているので、これらの使用が好ましい。
【0051】
前記無機ポリシラザンとしては特に限定はされないが、パーヒドロポリシラザンを用いることができる。また、前記テトラアルコキシシランとしては特に限定はされないが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランを用いることができる。
その場合、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第1不活性処理膜24を作製することができ、作製条件が同一であれば目的の厚みの膜をより短時間で作製できるので、テトラプロポキシシランよりテトラエトキシシランが好ましく、テトラエトキシシランよりテトラメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるテトラエトキシシランが好ましい。
【0052】
前記テトラアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシランについては、複数のアルコキシ基を持つため、複数の分子同士の脱アルコール縮合により、SiO2を主成分とする膜が作製し易い。したがって、この観点からは、テトラアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシランの順でSiO2を主成分とする膜が作製ないし形成し易い。
一方で原料由来のメチル基の一部が第1不活性処理膜の表面に残った方が、第1不活性処理膜の表面のSiO2表面のシラノール基の量が少なくなるため、この観点を合わせると、複数の分子同士の脱アルコール縮合のために分子内に複数のアルコキシ基を持ち、かつ分子内にSiに直接結合したメチル基を持つメチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシランが好ましい。
【0053】
前記テトラアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、ジエチルジアルコキシシランについては、複数のアルコキシ基を持つため、複数の分子同士の脱アルコール縮合により、SiO2を主成分とする膜が作製し易い。したがって、この観点からは、テトラアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、ジエチルジアルコキシシランの順でSiO2を主成分とする膜が作製ないし形成し易い。
一方で原料由来のエチル基の一部が第1不活性処理膜の表面に残った方が、第1不活性処理膜の表面のSiO2表面のシラノール基の量が少なくなるため、この観点を合わせると、複数の分子同士の脱アルコール縮合のために分子内に複数のアルコキシ基を持ち、かつ分子内にSiに直接結合したエチル基を持つエチルトリアルコキシシラン、ジエチルジアルコキシシランが好ましい。
【0054】
前記テトラアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシランについては、複数のアルコキシ基を持つため、複数の分子同士の脱アルコール縮合により、SiO2を主成分とする膜が作製し易い。したがって、この観点からは、テトラアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシランの順でSiO2を主成分とする膜が作製し易い。
一方で原料由来のプロピル基の一部が第1不活性処理膜の表面に残った方が、第1不活性処理膜の表面のSiO2表面のシラノール基の量が少なくなるため、この観点を合わせると、複数の分子同士の脱アルコール縮合のために分子内に複数のアルコキシ基を持ち、かつ分子内にSiに直接結合したプロピル基を持つプロピルトリアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシランが好ましい。
【0055】
前記メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、ジエチルジアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシランについては、原料由来のメチル基、エチル基、プロピル基の一部が第1不活性処理膜の表面のSiO2表面に残り、SiO2表面のシラノール基の量が少なくなり、第2不活性処理膜の作製としてアルキルシリル化した後の残存シラノール基の量も少なくなる利点があるが、一方で疎水性が高いアルキル基が第1不活性処理膜の表面に残ると、疎水性が高いにおい成分に対する疎水性相互作用が強くなり、疎水性吸着及びにおい残りの原因になる可能性が生じる。
【0056】
また、第1不活性処理膜に部分的に導入されるアルキル基が大き過ぎると、原料の脱アルコール縮合、いわゆる重合による第1不活性処理膜の生成を妨げる可能性が上がるため、プロピルトリアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシランよりもエチルトリアルコキシシラン、ジエチルジアルコキシシランが好ましく、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシランが更に好ましい。
【0057】
前記メチルトリアルコキシシランとしては特に限定はされないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシランを用いることができる。エトキシ基の方がプロポキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第1不活性処理膜24を作製することができ、作製条件が同一であれば目的の厚みの膜をより短時間で作製できるので、メチルトリプロポキシシランよりメチルトリエトキシシランが好ましく、メチルトリエトキシシランよりメチルトリメトキシシランが好ましい。
この一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるメチルトリエトキシシランが好ましい。
【0058】
前記ジメチルジアルコキシシランとしては特に限定はされないが、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシランを用いることができる。エトキシ基の方がプロポキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第1不活性処理膜24を作製することができ、作製条件が同一であれば目的の厚みの膜をより短時間で作製できるので、ジメチルジプロポキシシランよりジメチルジエトキシシランが好ましく、ジメチルジエトキシシランよりジメチルジメトキシシランが好ましい。
この一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0059】
実施形態では、前記第1不活性処理膜24は、ジメチルジエトキシシランを原料として作製している。ジメチルジエトキシシラン由来のメチル基の一部が第1不活性処理膜の表面に残ることにより、第2不活性処理膜の作製としてアルキルシリル化した後の残存シラノール基の量が少なくなる利点があり、疎水性が最も低いアルキル基が第1不活性処理膜の表面に残ることで、疎水性が高いにおい成分に対する疎水性相互作用が起こり難いことによる。
また、第1不活性処理膜に部分的に導入されるアルキル基が小さく、原料の脱アルコール縮合いわゆる重合による第1不活性処理膜の生成を妨げる可能性が低いからである。また、第1不活性処理膜作製時、脱アルコール縮合の副産物であるエタノールの毒性が低いからである。
【0060】
また、前記トリメチルモノアルコキシシランとしては特に限定はされないが、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシランを用いることができる。
この場合、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第1不活性処理膜24を作製することができ、作製条件が同一であれば目的の厚みの膜をより短時間で作製できるので、トリメチルプロポキシシランよりトリメチルエトキシシランが好ましく、トリメチルエトキシシランよりトリメチルメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるトリメチルエトキシシランが好ましい。
【0061】
また、前記トリエチルモノアルコキシシランとしては特に限定はされないが、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシランを用いることができる。
この場合、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第1不活性処理膜24を作製することができ、作製条件が同一であれば目的の厚みの膜をより短時間で作製できるので、トリエチルプロポキシシランよりトリエチルエトキシシランが好ましく、トリエチルエトキシシランよりトリエチルメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるトリエチルエトキシシランが好ましい。
【0062】
また、前記トリプロピルモノアルコキシシランとしては特に限定はされないが、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリプロピルプロポキシシランを用いることができる。
この場合、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第1不活性処理膜24を作製することができ、作製条件が同一であれば目的の厚みの膜をより短時間で作製できるので、トリプロピルプロポキシシランよりトリプロピルエトキシシランが好ましく、トリプロピルエトキシシランよりトリプロピルメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるトリプロピルエトキシシランが好ましい。
【0063】
前記トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルエトキシシランについては、原料由来のメチル基、エチル基、プロピル基の一部が第1不活性処理膜の表面のSiO2表面に残り、SiO2表面のシラノール基の量が少なくなり、第2不活性処理膜の作製としてアルキルシリル化した後の残存シラノール基の量も少なくなる利点があるが、一方で疎水性が高いアルキル基が第1不活性処理膜の表面に残ると、疎水性が高いにおい成分に対する疎水性相互作用が強くなり、疎水性吸着およびにおい残りの原因になる可能性が生じる。
また、第1不活性処理膜に部分的に導入されるアルキル基が大き過ぎると、原料の脱アルコール縮合いわゆる重合による第1不活性処理膜の生成を妨げる可能性が上がるため、トリプロピルエトキシシランよりもトリエチルエトキシシランが好ましく、トリメチルエトキシシランが更に好ましい。
【0064】
前記第1不活性処理膜24の作製ないし形成に際しては、混合流路10と導入孔11を形成後のミキシングブロック9を真空度-0.099MPaの真空中またはこれより弱い真空中で、すなわち-0.099MPa以上の真空度の中から一定の真空度を選び、その真空中に置き、原料を拡散させて混合流路10と導入孔11の表面を含むミキシングブロック9の表面全体及び内面全体に接触させ、酸素および/またはオゾンを導入し、300℃以上の加熱を90分間以上行なって作製できる。
また、第1不活性処理膜26の作製に際しては、スニフパイプ13の表面全体および内面全体に対して同様の処理を行い作製できる。また、第1不活性処理膜28の作製に際しては、におい成分送出器7の表面全体および内面全体に対して同様の処理を行い作製できる。
【0065】
このような方法とすることで、絶対真空を含まない条件下であれば第1不活性処理膜の作製ができ、酸素および/またはオゾンによる酸化と300℃以上の加熱を行うことにより、縮合反応による第1不活性処理膜の作製を促進できる。
また、酸素および/またはオゾンによる酸化と300℃以上の加熱を90分間以上行うことにより、ミキシングブロック9内の混合流路10と導入孔11の表面、スニフパイプ13の内面、におい成分送出器7の内面の金属の、金属配位性のにおい成分への影響を低減できる。
【0066】
次に、第2不活性処理膜25の原料と作製ないし形成方法について述べる。
第2不活性処理膜27、29の原料については第2不活性処理膜25の原料と同様であるので省略する。
【0067】
第2不活性処理膜25を作製するための原料は、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基と原料の、加熱による縮合反応により、アルキルシリル化できるものであれば特に限定はされない。
また、ヘキサアルキルジシロキサン、ジアルキルポリシロキサン等の所謂直鎖状ポリジアルキルシロキサン、ジアルキル型環状シロキサン、アルキルトリハロシラン、ジアルキルジハロシラン、トリアルキルモノハロシラン、ヘキサメチルジシラザン、N-トリメチルシリルイミダゾール、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルモノアルコキシシランから選択される1種以上を用いることができるが、原料をミキシングブロック9内の混合流路10と導入孔11表面の第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基と縮合させ、緻密なアルキルシリル化を行うための条件の最適化には、不活性ガスで希釈した原料を拡散させて行い、原料の濃度や加熱時間を調整する方が最適化し易く、また縮合の副産物がハロゲン化水素、アンモニア、イミダゾールのような、酸や塩基等の危険性の高いものではない方が良いため、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルモノアルコキシシランから選択される1種以上を用いることが好ましい。
【0068】
前記アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルモノアルコキシシランとしては特に限定はされないが、原料となる分子中のSiに直接結合したアルキル基が短い方が、かさ高い分子同士の立体障害により反応効率が悪くなることが少なく、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基を立体障害が少なくアルキルシリル化でき、アルキルシリル化によるシラノール基の被覆率が高まるため、また、アルキルシリル化の結果第2不活性処理膜25の疎水性が高くなると、疎水性が高いにおい成分に対する疎水性相互作用が強くなり、疎水性吸着及びにおい残りの原因になる可能性が生じるため、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、トリメチルモノアルコキシシランが最も好ましく、次にエチルトリアルコキシシラン、ジエチルジアルコキシシラン、トリエチルモノアルコキシシランが好ましく、次にプロピルトリアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシラン、トリプロピルモノアルコキシシランが好ましい。
【0069】
前記メチルトリアルコキシシランとしては特に限定はされないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシランを用いることができる。
また、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第2不活性処理膜25を作製することができ、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基の被覆率を増加させることができ、これらの中ではメチルトリプロポキシシランが脱アルコール縮合の反応にエネルギーが一番必要であるので、メチルトリプロポキシシランよりメチルトリエトキシシランが好ましく、メチルトリエトキシシランよりメチルトリメトキシシランが好ましい。
この一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるメチルトリエトキシシランが好ましい。
【0070】
前記エチルトリアルコキシシランとしては特に限定はされないが、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシランを用いることができる。
また、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第2不活性処理膜25を作製することができ、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基の被覆率を増加させることができ、これらの中ではエチルトリプロポキシシランが脱アルコール縮合の反応にエネルギーが一番必要であるので、エチルトリプロポキシシランよりエチルトリエトキシシランが好ましく、エチルトリエトキシシランよりエチルトリメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるエチルトリエトキシシランが好ましい。
【0071】
前記プロピルトリアルコキシシランとしては特に限定はされないが、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシランを用いることができる。
また、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第2不活性処理膜25を作製することができ、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基の被覆率を増加させることができ、これらの中ではプロピルトリプロポキシシランが脱アルコール縮合の反応にエネルギーが一番必要であるので、プロピルトリプロポキシシランよりプロピルトリエトキシシランが好ましく、プロピルトリエトキシシランよりプロピルトリメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0072】
前記ジメチルジアルコキシシランとしては特に限定はされないが、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシランを用いることができる。
また、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第2不活性処理膜25を作製することができ、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基の被覆率を増加させることができるので、ジメチルジプロポキシシランよりジメチルジエトキシシランが好ましく、ジメチルジエトキシシランよりジメチルジメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0073】
前記ジエチルジアルコキシシランとしては特に限定はされないが、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシランを用いることができる。 また、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第2不活性処理膜25を作製することができ、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基の被覆率を増加させることができるので、ジエチルジプロポキシシランよりジエチルジエトキシシランが好ましく、ジエチルジエトキシシランよりジエチルジメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるジエチルジエトキシシランが好ましい。
【0074】
前記ジプロピルジアルコキシシランとしては特に限定はされないが、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシランを用いることができる。
また、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第2不活性処理膜25を作製することができ、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基の被覆率を増加させることができるので、ジプロピルジプロポキシシランよりジプロピルジエトキシシランが好ましく、ジプロピルジエトキシシランよりジプロピルジメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるジプロピルジエトキシシランが好ましい。
【0075】
前記トリメチルモノアルコキシシランとしては特に限定はされないが、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシランを用いることができる。
また、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第2不活性処理膜25を作製することができ、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基の被覆率を増加させることができるので、トリメチルプロポキシシランよりトリメチルエトキシシランが好ましく、トリメチルエトキシシランよりトリメチルメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるトリメチルエトキシシランが好ましい。
【0076】
前記トリエチルモノアルコキシシランとしては特に限定はされないが、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシランを用いることができる。
また、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第2不活性処理膜25を作製することができ、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基の被覆率を増加させることができるので、トリエチルプロポキシシランよりトリエチルエトキシシランが好ましく、トリエチルエトキシシランよりトリエチルメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるトリエチルエトキシシランが好ましい。
【0077】
前記トリプロピルモノアルコキシシランとしては特に限定はされないが、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリプロピルプロポキシシランを用いることができる。
また、エトキシ基の方がプロポキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、メトキシ基の方がエトキシ基よりも第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基との脱アルコール縮合の反応性が高く、脱アルコール縮合の反応性が高いほど、より容易に第2不活性処理膜25を作製することができ、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基の被覆率を増加させることができるので、トリプロピルプロポキシシランよりトリプロピルエトキシシランが好ましく、トリプロピルエトキシシランよりトリプロピルメトキシシランが好ましい。
その一方で、脱アルコール縮合の副産物であるアルコールの毒性を考慮すると、エタノールが副産物であるトリプロピルエトキシシランが好ましい。
【0078】
前記第2不活性処理膜25の作製に際しては、第1不活性処理膜24の作製後のミキシングブロック9を真空度-0.099MPaの真空中またはこれより弱い真空中に置き、すなわち-0.099MPa以上の真空度の中から一定の真空度を選び、その真空中に置き、原料を拡散させて、第1不活性処理膜24の表面に接触させ、300℃以上の加熱を1時間以上行なって作製できる。
【0079】
このような方法とすることで、絶対真空を含まない条件下であれば第2不活性処理膜25の作製ができ、300℃以上の加熱により、縮合反応による第2不活性処理膜25の作製を促進できることに加え、第1不活性処理膜24のSiO2表面のシラノール基同士が脱水縮合することも促進できる。また、300℃以上の加熱を1時間以上行うことにより、試料成分中の金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分、分子中に塩基を持つにおい成分の吸着を低減できる。
【0080】
また、第2不活性処理膜27の作製に際しては、スニフパイプ13の表面全体及び内面全体を被覆した第1不活性処理膜に対して同様の処理を行い作製できる。
また、第2不活性処理膜29の作製に際しては、におい成分送出器7の表面全体及び内面全体を被覆した第1不活性処理膜に対して同様の処理を行い作製できる。
第2不活性処理膜27、29により、スニフパイプ13の内面、におい成分送出器7の内面への試料成分中の金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分、分子中に塩基を持つにおい成分の吸着を低減できる。
【0081】
なお、前記混合流路10と導入孔11の形成と前後して、導入孔11の直上のミキシングブロック9内にヒータ14を埋設し、その近傍に温度センサ30を設置し、この温度センサ30を分析装置1内の温度制御装置(図示略)に接続する。
すなわち、ミキシングブロック9内の混合流路10の中で、におい成分が加湿空気と合流し始める空間であり、におい成分の希釈の均一化が不十分で、濃度の高い状態の高沸点のにおい成分の塊が混合流路10の表面に接触する可能性のある領域を加温することが効果的と考え、ヒータ14を導入孔11の直上に設置した。
【0082】
前記におい成分送出器7はステンレス製の筒状に形成し、その内部に導入孔11に連通する導通孔7aを形成し、該導通孔7aの下部に接続部8を配置し、接続部8の内部の貫通孔に分離カラム5の出口部を接続する。
【0083】
前記スニフパイプ13は外径12mm、内径9~10mmのステンレスパイプを長さ85~105cmに切断し、これを所定の形状に湾曲成形後、その内面に第1不活性処理膜、第2不活性処理膜を作製し、内部を移動するにおい成分中の吸着活性が高いにおい成分、例えば金属配位性のにおい成分であるソトロンや3-メルカプト-1-ヘキサノールや塩基性のにおい成分、分子中に塩基を持つにおい成分の吸着を低減し、それらのにおい残りを抑制する。
【0084】
前記スニフパイプ13の内面に二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする第1不活性処理膜26を作製し、該第1不活性処理膜26表面の二酸化ケイ素(SiO2)表面のシラノール基をアルキルシリル化して、第2不活性処理膜27を作製する。
前記第1不活性処理膜26の膜厚を約200~300nmに作製し、第2不活性処理膜27を第1不活性処理膜26を被覆する程度の極薄膜に作製し、その膜厚を僅少に作製する。
【0085】
前記第1不活性処理膜26の作製に際しては、湾曲成形後の前記スニフパイプ13を真空度-0.099MPaの真空中又はこれより弱い真空中に置き、すなわち-0.099MPa以上の真空度の中から一定の真空度を選び、その真空中に置き、原料を拡散させてスニフパイプ13の内面全体及び表面全体に接触させ、当該部に酸素および/またはオゾンを導入し、300℃以上の加熱を90分間以上行なって作製する。この場合の原料や作製方法は、ミキシングブロック9への第1不活性処理膜24と同様である。
【0086】
また、前記第2不活性処理膜27の作製に際しては、第1不活性処理膜26の作製後のスニフパイプ13を真空度-0.099MPaの真空中またはこれより弱い真空中に置き、すなわち-0.099MPa以上の真空度の中から一定の真空度を選び、その真空中に置き、原料を拡散させて、第1不活性処理膜26の表面に接触させ、300℃以上の加熱を1時間以上行なって作製する。原料や作製方法はミキシングブロック9への第2不活性処理膜25と同様である。
【0087】
前記第1不活性処理膜28の作製に際しては、前記におい成分送出器7を真空度-0.099MPaの真空中またはこれより弱い真空中に置き、すなわち-0.099MPa以上の真空度の中から一定の真空度を選び、その真空中に置き、原料を拡散させてにおい成分送出器7の内面全体及び表面全体に接触させ、当該部に酸素および/またはオゾンを導入し、300℃以上の加熱を90分間以上行なって作製する。この場合の原料や作製方法は、ミキシングブロック9への第1不活性処理膜24と同様である。
【0088】
また、前記第2不活性処理膜29の作製ないし形成に際しては、第1不活性処理膜28の作製後のにおい成分送出器7を真空度-0.099MPaの真空中またはこれより弱い真空中に置き、すなわち-0.099MPa以上の真空度の中から一定の真空度を選び、その真空中に置き、原料を拡散させて、第1不活性処理膜28の表面に接触させ、300℃以上の加熱を1時間以上行なって作製する。原料や作製方法はミキシングブロック9への第2不活性処理膜25と同様である。
【0089】
こうして各構成部材を作製後、これらを用いてにおい嗅ぎ装置を組み立てる場合は、例えばカラムオーブン4の上面に試料注入口2を配置し、該試料注入口2にカラムオーブン4の内側から分離カラム5の入口部を接続する。
また、カラムオーブン4の上面に検出器6とにおい成分送出器7を離間して固定し、それらの内部のノズル(図示略)と接続部8に、分離カラム5の出口部を繋ぎ変え可能に接続する。
そして、におい成分送出器7の上端部にミキシングブロック9を載置し、それらの導通孔7aと導入孔11とを位置合わせして、におい成分送出器7の上端部にミキシングブロック9を固定する。
【0090】
この後、ミキシングブロック9の混合流路10の一端に、加湿空気導管12を接続し、該導管12に加湿空気供給システムの各機器を
図3のように順次接続し、その上流側のレギュレータ付きフィルタ16にエアーコンプレッサ15を接続する。
また、ミキシングブロック9の混合流路10の他端に、スニフパイプ13の一端を接続する。
【0091】
こうしてにおい嗅ぎ装置を組み立て後、該装置の使用が可能になる。
その場合は、先ず分析装置1を用いて試料の分離、分析を行う。
前記試料の分離、分析は、検出器6にFIDを用いる場合は、分離カラム5の出口部を検出器6のノズル(図示略)に接続し、該ノズル(図示略)の先端を点火して水素炎を形成する。
このような状況の下で、シリンジ3を試料注入口2に差し込み、シリンジ3内部の試料を注入して、該試料を分離カラム5へ送り込む。
【0092】
前記試料中の試料成分は分離カラム5の固定相に保持・溶出されることにより分離し、その溶出後の各試料成分が検出器6に送られると、その溶出量に応じた大きさの電気信号が検出器6から出力され、この電気信号の処理後、クロマトグラムが描かれる。
【0093】
このような分析装置1による試料中の試料成分の分析後、分離カラム5の出口部をにおい成分送出器7の接続部8に繋ぎ変える。
前記混合流路10には、その上流側の加湿空気供給システム(
図3)から15~20L/minの大流量の加湿空気を導入し、この状態で安定させておく。
このような状況の下で、シリンジ3を試料注入口2に差し込み、前記分析時と同一の試料を注入し、該試料を分離カラム5へ送り込む。
【0094】
前記試料中の試料成分(におい成分を含む)は分離カラム5の固定相に保持・溶出されることにより分離し、その溶出後の各試料成分は、検出器6を経ることなくにおい成分送出器7に導かれ、すなわち接続部8から導通孔7aに放出され、該導通孔7aからミキシングブロック9の導入孔11を通り、混合流路10へ流入する。
前記混合流路10には、その上流側の加湿空気供給システム(
図3)から15~20L/minの大流量の加湿空気が導入され続けており、該加湿空気が、前記分離カラム5から溶出され、続いて接続部8から放出された試料成分とミキシングブロック9内で合流する。
【0095】
その際、加湿空気供給システムでは、有機物除去管20の下流側に、内部の水21を加温する加湿容器22を配置し、エア-コンプレッサ15で生成した圧縮空気を加湿容器22へ移動して、該容器22内の、前記加温により生じた水蒸気中を通過させ、大流量の加湿空気を生成する。
前記加湿空気は、この後、加湿容器22とミキシングブロック9の間に配置したトラップ容器23へ移動し、その移動中に冷却されて液化した水分が捕捉されて調製され、15~20L/minの大流量の加湿空気になってミキシングブロック9へ導かれる。
【0096】
前記ミキシングブロック9内の導入孔11と混合流路10の表面は、第1および第2不活性処理膜24、25が作製され、前記導入孔11と混合流路10の表面を被覆して金属部の露出を回避しているため、金属配位性のにおい成分の吸着を防止する。
【0097】
また、第2不活性処理膜により、第1不活性処理膜のSiO2表面の酸性のシラノール基がアルキルシリル化されることで、前記導入孔11と混合流路10の表面が中性になっているため、塩基性のにおい成分、分子中に塩基を持つにおい成分の吸着を防ぐことができるとともに、加湿空気中や分離カラムでの分離に用いる移動相中に微量に含まれる金属が第1不活性処理膜のSiO2表面のシラノール基に配位結合し、更にこの金属に金属配位性のにおい成分が吸着することを防止する。
前記分離カラム5から溶出した試料成分は、におい成分送出器7を経て導入孔11の内部を移動し、これが混合流路10に導入された大量の加湿空気と合流する。
【0098】
その際、におい成分送出器7は220℃に加温設定され、におい成分送出器7及び導通孔7aを加温するとともに、その温熱をミキシングブロック9の下側からミキシングブロック9へ伝えて導入孔11と混合流路10を移動する試料成分およびにおい成分を加温し、これにヒ-タ14の加温が加わって、高沸点の試料成分および高沸点のにおい成分の吸着を低減し、それらのにおい残りを抑制する。
【0099】
すなわち、におい嗅ぎ測定時には、前記におい成分送出器7は、内蔵した熱源(図示略)によって一定の設定温度、実施形態では220℃に加温設定され、これによって導通孔7aに放出されたにおい成分を加温するとともに、載置したミキシングブロック9を下側から加温し、混合流路10を移動する大流量の加湿空気とにおい成分を加温する。
【0100】
こうしてミキシングブロック9の加温に、におい成分送出器7の熱源のみを用いたにおい嗅ぎ装置を用いてにおい嗅ぎ測定を行うと、高沸点のにおい成分のにおい残りが確認された。
このにおい嗅ぎ測定の試料注入容量は1μL、試料は高沸点のにおい成分であるバニリン(沸点:285℃)、2,4,6-トリブロモアニソール(沸点:299℃)、ラズベリーケトン(沸点:200℃)、ソトロン(沸点:184℃)、3-メルカプト-1-ヘキサノール(沸点:250℃)の混合物とし、各成分濃度は1μg/mLとした。
【0101】
そこで、発明者が鋭意検討し、ミキシングブロック9内の混合流路10の中で、におい成分が加湿空気と合流し始める空間であり、におい成分の希釈の均一化が不十分で、濃度の高い状態の高沸点のにおい成分が混合流路10の表面に接触する可能性のある領域を加温することが効果的と考え、ミキシングブロック9をにおい成分送出器7の熱源により220℃に加温することに加え、更にヒータ14を導入孔11の直上に設置してヒータ14で200℃に加温したにおい嗅ぎ装置を用いてにおい嗅ぎ測定を行うと、前記高沸点のにおい成分のにおい残りは確認されなくなった。
【0102】
この場合、ヒータ14の温度は、その近傍に設けた温度センサ30によって検出し、その検出信号を分析装置1内の温度制御装置(図示略)へ出力して、ヒータ14の設定温度を加減調整できるようにした。
そして、におい嗅ぎ測定の前に分析装置1で試料のクロマトグラムを採取し、試料成分に含まれる高沸点のにおい成分の保持時間を確認しておき、におい嗅ぎ測定の際は、高沸点のにおい成分がミキシングブロック9に達する時間を予測して、その時間に温度センサ30が、高沸点のにおい成分のミキシングブロック9への吸着を防止できる温度になるように、ヒータ14の設定温度を設定する。
【0103】
その際、ヒータ14の加温により、ミキシングブロック9からスニフパイプ13に熱が伝わり、測定者32の鼻33近くを温めるため、測定者のストレスにならない温度(60℃以下)でにおい嗅ぎ測定ができるようにヒータ14の設定温度を設定する。
【0104】
こうしてにおい成分を含む試料成分が適宜加温調整されて混合流路10を移動し、その下流側からスニフパイプ13へ移動し、測定者32の鼻33によって測定される。
その際、スニフパイプ13の内面全体および表面全体は、第1および第2不活性処理膜26、27が作製され、前記スニフパイプ13の内面の金属部の露出を回避し、また、第2不活性処理膜により、シラノール基がアルキルシリル化されて表面が中性になっているため、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分、分子中に塩基を含むにおい成分の吸着を防ぐことができ、それらのにおい残りを抑制する。
【0105】
ミキシングブロック9内の混合流路10の表面と導入孔11の表面、およびスニフパイプ13の内面と、におい成分送出器7の内面に、前記第1不活性処理膜と第2不活性処理膜を作製したことにより、におい嗅ぎ測定中にこれらに試料成分が吸着した場合、主な要因は疎水性相互作用になるので、におい嗅ぎ測定後に、メタノールやアセトニトリル等、試料成分を溶解できる有機溶媒でこれらを洗浄することで、吸着した試料成分を簡単に除去できる。
また、におい嗅ぎ測定後に、これらに窒素等の不活性ガスを流しながら、前記ヒータ14を適宜温度、例えば250℃~300℃に加熱することで、吸着した試料成分を脱離させ、除去できる。
【0106】
発明者は、ミキシングブロック9とスニフパイプ13、におい成分送出器7の第1不活性処理膜24、第2不活性処理膜25および26、27および28、29による不活性処理膜の効果を検証したところ、
図7の結果を得られた。
実施形態では、ミキシングブロック9の内面全体および表面全体への化学蒸着を利用した第1不活性処理膜24の作製のため、ミキシングブロック9を真空チャンバー内に入れ、真空チャンバーの扉を閉め、真空チャンバーを加熱し、300℃で安定させた。
また、真空チャンバーの真空度を-0.099MPaで安定させ、続いて、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)を窒素で0.05%に希釈したガスを200sccmで真空チャンバー内に導入し、またオゾン発生機に酸素を2000sccmで導入し、酸素とオゾンの比率が98:2になったガスを真空チャンバー内に導入し、90分間反応させた。
【0107】
続いて、ミキシングブロック9の第1不活性処理膜24上への化学蒸着を利用した第2不活性処理膜25の作製、すなわち第1不活性処理膜表面の二酸化ケイ素(SiO2)表面のシラノール基のメチルシリル化のため、上記第1不活性処理膜の作製後、DMDESを窒素で0.05%に希釈したガスを200sccmで真空チャンバー内に導入し、酸素とオゾンの混合ガスの導入は止め、300℃、真空度-0.099MPaで2時間反応させた。
【0108】
第2不活性処理膜25の生成は、第1不活性処理膜24と同じ製造設備で行うことができるため、第2不活性処理膜25の原料に第1不活性処理膜の原料と同じ原料を用いてメチルシリル化を行うと作業工程上効率が良い。
【0109】
前記スニフパイプ13、におい成分送出器7の内面全体および表面全体への第1不活性処理膜26、28と第2不活性処理膜27、29の作製ないし形成については、上記のミキシングブロック9の内面全体および表面全体への第1不活性処理膜24と第2不活性処理膜25の作製方法と同様に、真空チャンバーを用いて化学蒸着を利用して行った。
【0110】
前記第1不活性処理膜及び第2不活性処理膜作製による効果の検証は、金属配位性のにおい成分であるソトロンを用い、結果を
図7に示した。
すなわち、0.1mg/mLの高濃度のソトロンを試料とし、該試料を分離カラム5の出口部をにおい成分送出器7の接続部8に繋ぎ変えたにおい嗅ぎ装置で検証用の実験を行い、カラムオーブン4の温度が昇温した温度(180℃)から初期温度(45℃)に戻った時間を起点として、5、15、30、45分後にスニフパイプ13出口側端部より2.5cm離れた位置でにおいを嗅ぎ、そのにおい残りの強度を年齢20~50代の10人の検証者で5段階の官能評価を行い、その平均を評価値とした。
また、上記ミキシングブロック9、スニフパイプ13、におい成分送出器7に第1不活性処理膜及び第2不活性処理膜作製を行わない場合と比較した。検証用の実験条件は以下の通りである。
【0111】
[検証用の実験条件]
GC装置:GC-2010(島津製作所)
分離カラム:InertCap(登録商標)5(ジーエルサイエンス社)
30m×0.25mmI.D.,0.25μm
カラムオーブン温度:45℃(4min)→昇温12℃/min→180℃
注入口温度:250℃、スプリット1:20
試料注入容量:1μL
試料:ソトロン
試料濃度:0.1mg/mL
キャリアガス:ヘリウム(線速度:36.3cm/sec)
におい成分送出器温度:220℃
加湿空気流量:15L/min
【0112】
前記におい残りの強度は、
図7の棒グラフの縦軸に示しており、5段階でにおい残りを「強く感じる」、4段階でにおい残りを「やや強く感じる」、3段階でにおい残りを「感じる」、2段階でにおい残りを「弱く感じる」、1段階でにおい残りを「微かに感じる」、0段階でにおい残りを「無感」、とした。
【0113】
前記検証結果から、ミキシングブロック9、スニフパイプ13、におい成分送出器7への第1不活性処理膜及び第2不活性処理膜作製の有無に拘わらず、カラムオーブン4の温度が初期温度(45℃)に戻った後の時間の経過とともににおい残りが低下する傾向にあり、不活性処理膜の作製を行わない場合は、5分経過後のにおい残りの強度が3.7、不活性処理膜の作製を行った場合は、5分経過後のにおい残りの強度が1.9で、両者に統計学的(t検定)な有意差が認められた(p<0.01)。すなわち、5分経過後では不活性処理膜の作製の有無によって差異があることが判明した。
また、不活性処理膜の作製を行わない場合は、15分経過後のにおい残り強度が1.4、不活性処理膜の作製を行った場合は、15分経過後のにおい残りが0.5で、両者に統計学的(t検定)な有意差が認められた(p<0.05)。
【0114】
また、不活性処理膜の作製を行わない場合は、30分経過後のにおい残りの強度が0.2、不活性処理膜の作製を行った場合は、30分経過後のにおい残りの強度が0で、におい残りを感じなくなることが分かり、45分経過後には、不活性処理膜の作製の有無に拘わらず、におい残りを感じなくなることが分かった。
上記結果より、不活性処理膜を作製したミキシングブロック9とスニフパイプ13、におい成分送出器7を用いることにより、金属配位性のにおい成分の吸着を防ぎ、そのにおい残りを低減できることを確認した。
【0115】
次に、発明者はミキシングブロック9内に設置したヒータ14の加温効果を、高沸点のにおい成分によるにおい残り強度の推移を基に検証したところ、
図8の結果を得られた。 前記検証は、高沸点のにおい成分である2,4,6-トリブロモアニソールを用いて行った。
すなわち、1mg/mLの高濃度の2,4,6-トリブロモアニソールを試料とし、該試料を、分離カラム5の出口部をにおい成分送出器7のノズル8に繋ぎ変えたにおい嗅ぎ装置で検証用の実験を行い、カラムオーブン4の温度が昇温した温度(210℃)から初期温度(125℃)に戻った時点でヒータ14の250℃の加温を開始し、この時点を起点として、5、15、30、45、60分経過後にスニフパイプ13出口側端部より2.5cm離れた位置でにおいを嗅ぎ、そのにおい残りの強度を年齢20~50代の10人の検証者で5段階の官能評価を行い、その平均を評価値とした。
また、ヒータ14の250℃の加温を行わない場合と比較した。検証用の実験条件は以下の通りである。
【0116】
[検証用の実験条件]
GC装置:GC-2010(島津製作所)
分離カラム:InertCap(登録商標)5(ジーエルサイエンス社)
30m×0.25mmI.D.,0.25μm
カラムオーブン温度:125℃(2min)→昇温15℃/min→210℃
注入口温度:250℃、スプリットレス
試料注入容量:1μL
試料:2,4,6-トリブロモアニソール
試料濃度:1mg/mL
キャリアガス:ヘリウム(線速度:36.3cm/sec)
におい成分送出器温度:220℃
加湿空気流量:15L/min
【0117】
前記におい残りの強度は、
図8の棒グラフの縦軸に示しており、5段階でにおい残りを「強く感じる」、4段階でにおい残りを「やや強く感じる」、3段階でにおい残りを「感じる」、2段階でにおい残りを「弱く感じる」、1段階でにおい残りを「微かに感じる」、0段階でにおい残りを「無感」とした。
【0118】
前記検証結果を示す
図8では、カラムオーブン4の温度が初期温度(125℃)に戻った時点から時間が経過する程、ヒータ14により加温した場合のにおい残りが加温しない場合よりも低くなることが判明した。
前記カラムオーブン4が初期温度(125℃)に戻った後の5分後では、ヒータ14により250℃に加温した場合はにおい残りの強度が4.1、加温しない場合はにおい残りの強度が3.6でヒータ14により加温した場合の方がにおい残りが強かった。その理由としては、加温により高沸点のにおい成分が短時間で脱離し、におい残りとして出現したためである。
そして、15分後では、ヒータ14により250℃に加温した場合はにおい残りの強度が1.9、加温しない場合はにおい残りの強度が3.7で、両者に統計学的(t検定)な有意差が認められた(p<0.01)。
【0119】
また、カラムオーブン4の温度が初期温度(125℃)に戻った時点から30分後では、ヒータ14により250℃に加温した場合はにおい残りの強度が0.7、加温しない場合のにおい残りの強度が1.9で、両者に統計学的(t検定)な有意差が認められた(p<0.01)。
更に、45分後では、ヒータ14により250℃に加温した場合はにおい残りの強度が0でにおい残りを感じなくなり、加温しない場合のにおい残りの強度が0.9であった。
また、60分後では、ヒータ14により250℃に加温した場合はにおい残りの強度が0でにおい残りを感じず、加温しない場合のにおい残りの強度が0.2であった。
上記結果より、におい成分送出器7を220℃に加温し、更にミキシングブロック9に設置したヒータ14でミキシングブロック9を250℃に加温することにより、高沸点のにおい成分のにおい嗅ぎ装置への残留を防ぎ、そのにおい残りを低減できることを確認した。
【0120】
分離カラム5から溶出した試料成分(におい成分を含む)は、前述のように加湿空気供給システムで調整された加湿空気とミキシングブロック9で合流して希釈され、加温されてスニフパイプ13を移動するから、加湿空気の冷却に伴う水滴の生成や滞留が防止され、測定者32のにおい嗅ぎ時に水滴が飛散し火傷する事態を防止でき、におい嗅ぎ測定を安全に行なえる。
しかも、におい成分は加湿されて測定者32の鼻33へ届けられ、その温度はヒータ14により調整することが可能なため、鼻33の粘膜へのストレスがなく、におい嗅ぎ作業を快適に行なえる。
【0121】
また、前記におい嗅ぎ測定時には、分離カラム5の出口部を終始接続部8に接続して行っているから、におい成分をミキシングブロック9とスニフパイプ13を介して測定者32の鼻33へ届け、その全量を嗅ぐことができるから、におい成分を正確ににおい嗅ぎして精度を向上することができる。
【0122】
更に、におい成分送出器7、ミキシングブロック9やスニフパイプ13内面への第1不活性処理膜および第2不活性処理膜の作製ないし形成によって、それらを移動する試料成分、特に吸着活性が高いにおい成分、例えば金属配位性のにおい成分であるソトロンや3-メルカプト-1-ヘキサノールや塩基性のにおい成分、分子中に塩基を含むにおい成分の残留を防止ないし低減し、それらのにおい残りを抑制するから、微量なにおい成分を嗅ぎ分けられる。
【0123】
また、ミキシングブロック9内の導入孔11の直上にヒータ14を設置して加温することによって、高沸点のにおい成分であるバニリン(沸点:285℃)、2,4,6-トリブロモアニソール(沸点:299℃)、ラズベリーケトン(沸点:200℃)、ソトロン(沸点:184℃)、3-メルカプト-1-ヘキサノール(沸点:250℃)等の残留を防止ないし低減し、それらのにおい残りを抑制するから、微量なにおい成分を嗅ぎ分けられる。
しかも、スニフパイプ13に大流量の加湿空気を供給して、におい成分を測定者32の鼻33に高速に届けられるから、鼻33付近ににおい嗅ぎ測定を終えたにおい成分が滞留することを無くし、すなわちにおい成分の切れを向上することにより、スニフパイプ13から放出される間隔が近い複数のにおい成分を峻別して嗅ぎ分けることが可能になる。
【0124】
図9はにおい嗅ぎ装置におけるヒータ14の設定温度と、ミキシングブロック9表面の各計測地点、スニフパイプ出口側端部の計測地点、鼻周辺(スニフパイプ出口端部より2.5cmの地点)の計測地点の温度状況の測定結果を示している。各計測地点の位置は
図10に示す通りである。
その結果、におい嗅ぎ測定時と同様に、におい成分送出器7が220℃、加湿空気供給システムの加湿容器22が100℃で、加湿空気は流量15L/minで供給している状態において、ヒータ14の加温がない場合は、各計測地点とも大きな温度差はないが、ヒータ14の設定温度を上昇させると、各計測地点の温度差が大きくなり、特にミキシングブロック9の導入孔11とヒータ14の真上の表面と、ミキシングブロック9の下部側面と、ミキシングブロック9の表面出口側は温度上昇が大きく、ミキシングブロック9の裏面出口側の温度上昇がこれに次いでいた。
【0125】
一方、スニフパイプ13の出口側端部と、この出口側端部より2.5cm離れた鼻周辺(におい嗅ぎ測定時に鼻33がある位置)は、ヒータ14の加温による影響が小さく、ヒータ14の設定温度が100~150℃の場合に、測定者32の鼻周辺は、におい嗅ぎ測定において人の鼻にとって良好とされる40~50℃になることが確認された。
なお、ヒータ14の設定温度が250℃の場合も、鼻周辺の温度は60℃であり、におい嗅ぎ測定時に人の鼻にとって許容できる温度であることが確認された。
【0126】
図11は本発明の他の実施形態を示し、前述の構成と対応する構成部分に同一の符号を用いている。
すなわち、分離カラム5の出口部は流路切換部35に接続し、流路切換部35は検出器6へ通じる検出器流路36と、におい成分送出器7へ通じるにおい成分送出流路34への流路の切換えを可能にしている。
【0127】
前記流路切換部35は、分析装置1に設けた操作スイッチ(図示略)によってON・OFF可能にされ、そのON時に
図11(a)のように分離カラム5と検出器流路36を導通させて分離カラム5から溶出した試料成分(におい成分を含む)を検出器6に導入し、試料成分を検出させるとともに、そのOFF時に
図11(b)のように検出器流路36の導通を遮断し、におい成分送出流路34を導通させて、試料成分をにおい成分送出器7へ移動可能にしている。
【0128】
このような検出器6とにおい成分送出器7の切り換えシステムによって、分離カラム5の出口部を検出器6またはにおい成分送出器7への接続部8にいちいち繋ぎ変える面倒を解消し、検出器6による試料成分(におい成分を含む)の検出、分析とにおい成分送出器7による作動を簡便に切り換え可能にして、におい嗅ぎ測定を簡便かつ速やかに実行可能にしている。
【0129】
前述した他の実施形態のように、分離カラム出口部の下流側に流路切換部35、検出器流路36、におい成分送出流路34が設置される場合、これらは金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分、分子中に塩基を持つにおい成分の吸着を抑制できるものを使用する。
例えば、検出器流路36、におい成分送出流路34に内径0.25mm程度のステンレス製配管等、金属製の配管を用いる場合は、その内面に前記第1不活性処理膜と第2不活性処理膜の作製を行って用いることができる。或いは、検出器流路36、におい成分送出流路34に内径0.25mm程度のフューズドシリカキャピラリーチューブの内面のシラノール基をメチルシリル化処理した配管を用いることができる。
【0130】
前記流路切換部35には、例えば、内部流路径0.25mm程度のステンレス製の切り換えバルブを用いる場合は、その流路表面に前記第1不活性処理膜と第2不活性処理膜の作製を行って用いることができる。該切り換えバルブのローターシールには、耐熱性があり、金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分、分子中に塩基を持つにおい成分の吸着が少ない樹脂、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK、耐熱温度:260℃)を用いることができる。
【0131】
図11に示す他の実施形態では、スニフパイプ13の出口に測定者32の好みや鼻33の形に対応させたノーズコーン31を設置している。
前記ノーズコーン31にも金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分、分子中に塩基を持つにおい成分が吸着することを抑制するため、ノーズコーン31の材質はその内面および表面に前記第1不活性処理膜、第2不活性処理膜を作製できるものが望ましく、またノーズコーン31は測定者32の顔や鼻33に接触するため、ノーズコーン31の材質は、成形加工がし易く、熱伝導率の低いステンレスやガラスとすることが望ましい。
【0132】
前記ステンレス製のノーズコーンの内面や表面には、スニフパイプ13の内面や表面に作製した原料、方法と同様の原料、方法で第1不活性処理膜と、第2不活性処理膜を作製ないし形成することが望ましい。
また、ガラス製のノーズコーンの内面及び表面にも、前述と同様に第1不活性処理膜と、第2不活性処理膜を作製することが望ましいが、該ガラスの純度が高く、不純物として金属を含有していなければ、第2不活性処理膜のみを作製してもよい。
【0133】
また、分離カラム出口部より下流の流路を成す構成部材、例えば流路切換部35、検出器流路36、におい成分送出流路34、におい成分送出器7、ミキシングブロック9、スニフパイプ13の互いの接続に別途部品が必要な場合は、その部品が金属製の場合、その表面全体及び内面全体に前記第1不活性処理膜と第2不活性処理膜を作製して金属配位性のにおい成分、塩基性のにおい成分、分子中に塩基を持つにおい成分の吸着を防ぐことが望ましい。
【0134】
なお、試料によって、分離カラムから溶出する試料成分の中には、におい成分とにおい成分以外の成分が含まれるが、におい成分以外の成分の中にも吸着活性が高い成分(金属配位性の成分、塩基性の成分、分子中に塩基を持つ成分)があり、該吸着活性が高い成分が分離カラム出口部より下流の流路を成す構成部材の内面に吸着すると、におい成分が二次吸着を起こし、におい残りの要因となる。
また、分離カラム出口部より下流の流路を成す構成部材の内面に第1不活性処理膜と第2不活性処理膜を作製することで、吸着活性が高いにおい成分の吸着防止のみならず、におい成分以外の吸着活性が高い成分の吸着防止も行うことで、におい残りを低減する効果がある。
【0135】
なお、高沸点のにおい成分は分子を構成する炭素の数が多くなる傾向があり、高沸点のにおい成分が疎水性の高いにおい成分でもある場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明のにおい嗅ぎ装置は、分離カラムから溶出したにおい成分を大流量の加湿空気と混合し、スニフパイプから吐出して測定者の鼻へ導き、においの切れを向上することにより、スニフパイプから吐出される間隔が近い複数のにおい成分を峻別して嗅ぎ分けることを可能とするとともに、分離カラムから溶出したにおい成分を大流量の加湿空気に混合する混合流路を加温することにより、高沸点のにおい成分の残留を低減するとともに、混合流路の表面と、におい成分送出器の内面と、スニフパイプの内面に不活性処理膜を作製して、吸着活性の高いにおい成分の吸着を低減し、それらのにおい残りを抑制して微量なにおい成分を正確に嗅ぎ分けられ、しかも分離カラムから溶出したにおい成分の全量を測定者が嗅ぎ分けられるようにしてにおい嗅ぎ測定の精度を向上するようにしている。
【符号の説明】
【0137】
1 分析装置(GC)
2 試料注入口
3 シリンジ
4 カラムオーブン
5 分離カラム
6 検出器
7 におい成分送出器
8 接続部
9 ミキシングブロック
10 混合流路
11 導入孔
【0138】
13 スニフパイプ
24、26、28 第1不活性処理膜
25、27、29 第2不活性処理膜
14 ヒータ
31 ノーズコーン
32 測定者
33 鼻
34 におい成分送出流路
35 流路切換部
36 検出器流路