(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】建物の換気システム
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
E04B1/70 E
(21)【出願番号】P 2020079291
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】西口 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓治
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-340382(JP,A)
【文献】特開2019-190026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04D 1/00 - 3/40
E04D 13/00 - 15/07
F24F 7/00 - 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外皮部位には、その外皮部位の面方向に延びて、空気が流通自在な通気部が備えられ、
建物外から建物内空間に空調空気を供給する外調機が備えられ、
前記通気部は、連通部を通して建物内空間に連通され、且つ、開放部を通して建物外に開放自在に構成され
、
前記通気部とは別に配設されて、建物内空間の空気を建物外に強制的に排出する排出装置と、
前記外調機、及び、前記排出装置の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記制御部は、
前記外調機を作動させ且つ前記排出装置を作動停止させて、前記通気部にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させる第1運転モードと、
前記外調機及び前記排出装置を作動停止させて、前記通気部にて建物内空間の空気を建物外に自然排出させる第2運転モードと、
前記外調機及び前記排出装置を作動させて、前記通気部での空気の流通を抑制して建物内空間と建物外との間に前記通気部の空気にて保温層を形成する状態で、前記排出装置にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させる第3運転モードとを択一的に実行自在に構成されている建物の換気システム。
【請求項2】
建物の外皮部位には、その外皮部位の面方向に延びて、空気が流通自在な通気部が備えられ、
建物外から建物内空間に空調空気を供給する外調機が備えられ、
前記通気部は、連通部を通して建物内空間に連通され、且つ、開放部を通して建物外に開放自在に構成され、
建物内空間の空気を建物外に強制的に排出する排出装置と、
前記外調機、及び、前記排出装置の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記制御部は、
前記外調機を作動させ且つ前記排出装置を作動停止させて、前記通気部にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させる第1運転モードと、
前記外調機及び前記排出装置を作動停止させて、前記通気部にて建物内空間の空気を建物外に自然排出させる第2運転モードと、
前記外調機及び前記排出装置を作動させて、前記通気部での空気の流通を抑制しながら、前記排出装置にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させる第3運転モードとを択一的に実行自在に構成され
、
建物内の特定換気対象空間に空調空気を供給する特定換気用の外調機と、
特定換気対象空間の空気を建物外に強制的に排出する特定換気用の排出装置とが備えられ、
前記制御部は、運転モード切替条件に基づいて、第1運転モードと第2運転モードと第3運転モードとに択一的に選択して実行自在に構成され、
前記運転モード切替条件は、前記特定換気用の外調機及び前記特定換気用の排出装置の作動状態にかかわらず、一定の条件が設定されている建物の換気システム。
【請求項3】
前記通気部は、上下二重の折板の間に備えられている請求項
1又は2に記載の建物の換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内空間の換気を行う建物の換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような換気システムでは、建物の外皮部位に、空気が流通自在で上下方向に延びる通気部が備えられ、その通気部が、その下端部が連通部を通して建物内空間に連通され、且つ、その上端部が建物外に開放自在に構成されている。そして、建物外の外気を建物内空間に取り入れるために、建物の外壁等に外気取り込み口が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の換気システムでは、外気取り込み口を通して建物外の外気を建物内空間に取り込み、その取り込んだ外気を連通部を通して建物内空間から通気部に供給している。通気部の外気(空気)は、通気部を流通して、通気部の上端部から建物外に排出されている。このように、通気部を利用して、外気取り入れ口から取り入れた外気を通気部にて流通させて、建物内空間の換気を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の換気システムでは、通気部を利用して建物内空間の換気を行っているので、例えば、建物内空間の空気を建物外に強制的に排出するファン等の排出装置を作動させなくてもよく、省エネルギー化を図りながら、建物内空間の換気を行うことができる。
【0006】
しかしながら、このような換気システムでは、例えば、夏季や冬季等に、建物内空間の空気と建物外の外気との温度差が大きくなるので、空調負荷の軽減等のために、建物内空間の断熱性能を向上することが望まれている。特許文献1に記載の換気システムでは、外気取り入れ口から取り入れた外気を通気部に流通させているので、通気部を流通する空気は、建物外の外気との温度差がほとんどなく、建物内空間の空気との温度差が大きくなっている。よって、外気取り入れ口から取り入れた外気を通気部に流通させても、建物内空間の空気が有する温熱や冷熱が通気部の空気に放熱されてしまい、断熱性能の向上を図ることが難しいものとなっている。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、断熱性能の向上を図ることができる建物の換気システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、建物の外皮部位には、その外皮部位の面方向に延びて、空気が流通自在な通気部が備えられ、
建物外から建物内空間に空調空気を供給する外調機が備えられ、
前記通気部は、連通部を通して建物内空間に連通され、且つ、開放部を通して建物外に開放自在に構成され、
前記通気部とは別に配設されて、建物内空間の空気を建物外に強制的に排出する排出装置と、
前記外調機、及び、前記排出装置の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記制御部は、
前記外調機を作動させ且つ前記排出装置を作動停止させて、前記通気部にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させる第1運転モードと、
前記外調機及び前記排出装置を作動停止させて、前記通気部にて建物内空間の空気を建物外に自然排出させる第2運転モードと、
前記外調機及び前記排出装置を作動させて、前記通気部での空気の流通を抑制して建物内空間と建物外との間に前記通気部の空気にて保温層を形成する状態で、前記排出装置にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させる第3運転モードとを択一的に実行自在に構成されている点にある。
【0009】
本構成によれば、外調機は、建物内空間に空調空気を供給するので、その空調空気が、連通部を通して通気部に供給される。通気部では、空調空気が流通することになり、その空調空気が通気部の開放部から建物外に排出されている。このようにして、通気部を利用して、空調空気を通気部にて流通させて、建物内空間の換気を行っている。
【0010】
例えば、夏季や冬季等において、通気部に空調空気を流通させることで、建物内空間と建物外との間に空気層を形成できるだけでなく、その空気層を空調空気にて形成することができる。これにより、通気部を流通する空気と建物内空間の空気との温度差を小さくすることができ、建物内空間の空気が有する温熱や冷熱が通気部の空気に放熱されるのを抑制することができ、断熱性能の向上を図ることができる。
しかも、本構成によれば、第1運転モードでは、外調機を作動させて、通気部にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させるので、通気部を利用した建物内空間の換気を行うことができる。第2運転モードでは、外調機及び排出装置を作動停止させているので、通気部を利用した建物内空間の換気を行うことができるだけでなく、その換気を自然換気にて行うことができ、省エネルギー化を図ることができる。第3運転モードでは、通気部での空気の流通を抑制しながら、排出装置にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させるので、建物内空間の換気を行いながら、建物内空間と建物外との間に、通気部の空気にて保温層を形成することができる。
制御部は、第1~第3運転モードを択一的に実行できるので、換気環境等の各種の条件に応じて、実行する運転モードを切り替えることができ、換気環境等に柔軟に対応可能な使い勝手の良い換気システムとなる。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、建物の外皮部位には、その外皮部位の面方向に延びて、空気が流通自在な通気部が備えられ、
建物外から建物内空間に空調空気を供給する外調機が備えられ、
前記通気部は、連通部を通して建物内空間に連通され、且つ、開放部を通して建物外に開放自在に構成され、
建物内空間の空気を建物外に強制的に排出する排出装置と、
前記外調機、及び、前記排出装置の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記制御部は、
前記外調機を作動させ且つ前記排出装置を作動停止させて、前記通気部にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させる第1運転モードと、
前記外調機及び前記排出装置を作動停止させて、前記通気部にて建物内空間の空気を建物外に自然排出させる第2運転モードと、
前記外調機及び前記排出装置を作動させて、前記通気部での空気の流通を抑制しながら、前記排出装置にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させる第3運転モードとを択一的に実行自在に構成され、
建物内の特定換気対象空間に空調空気を供給する特定換気用の外調機と、
特定換気対象空間の空気を建物外に強制的に排出する特定換気用の排出装置とが備えられ、
前記制御部は、運転モード切替条件に基づいて、第1運転モードと第2運転モードと第3運転モードとに択一的に選択して実行自在に構成され、
前記運転モード切替条件は、前記特定換気用の外調機及び前記特定換気用の排出装置の作動状態にかかわらず、一定の条件が設定されている点にある。
【0015】
本構成によれば、外調機は、建物内空間に空調空気を供給するので、その空調空気が、連通部を通して通気部に供給される。通気部では、空調空気が流通することになり、その空調空気が通気部の開放部から建物外に排出されている。このようにして、通気部を利用して、空調空気を通気部にて流通させて、建物内空間の換気を行っている。
例えば、夏季や冬季等において、通気部に空調空気を流通させることで、建物内空間と建物外との間に空気層を形成できるだけでなく、その空気層を空調空気にて形成することができる。これにより、通気部を流通する空気と建物内空間の空気との温度差を小さくすることができ、建物内空間の空気が有する温熱や冷熱が通気部の空気に放熱されるのを抑制することができ、断熱性能の向上を図ることができる。
しかも、本構成によれば、第1運転モードでは、外調機を作動させて、通気部にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させるので、通気部を利用した建物内空間の換気を行うことができる。第2運転モードでは、外調機及び排出装置を作動停止させているので、通気部を利用した建物内空間の換気を行うことができるだけでなく、その換気を自然換気にて行うことができ、省エネルギー化を図ることができる。第3運転モードでは、通気部での空気の流通を抑制しながら、排出装置にて建物内空間の空気を建物外に強制排出させるので、建物内空間の換気を行いながら、建物内空間と建物外との間に、通気部の空気にて保温層を形成することができる。
制御部は、第1~第3運転モードを択一的に実行できるので、換気環境等の各種の条件に応じて、実行する運転モードを切り替えることができ、換気環境等に柔軟に対応可能な使い勝手の良い換気システムとなる。
また、本構成によれば、例えば、建物内空間に、生産設備等、換気が必要な設備が備えられる場合があるが、このような場合でも、単に、特定換気用の外調機と特定換気用の排出装置とを備えるだけで、換気が必要な設備が備えられた特定換気対象空間の換気を適切に行うことができる。
【0016】
しかも、特定換気用の外調機と特定換気用の排出装置とを備えた場合でも、運転モード切替条件を一定の条件に設定しているので、運転モード切替条件を簡易に設定できるだけでなく、換気システムをそのまま利用しながら、特定換気対象空間も含めて、建物内空間の換気を適切に行うことができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、前記通気部は、上下二重の折板の間に備えられている点にある。
【0018】
本構成によれば、建物の外皮部位に、上下二重の折板を備えることで、屋根等の建物の外皮構造物を構成することができる。通気部を、上下二重の折板の間に備えることで、建物の外皮構造物をそのまま利用しながら、通気部を構成することができ、コストの低減及び構成の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】運転モード切替条件と実行する運転モードとの関係を示す表
【
図4】運転モード切替条件と実行する運転モードとの関係を示す表
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る建物の換気システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
この建物の換気システム1は、
図1に示すように、建物2の内部の建物内空間3を換気するものであり、通気部4を利用して、建物内空間3を換気するように構成されている。
【0021】
通気部4は、建物2の屋根や屋根の内部空間等の外皮部位21に備えられ、その外皮部位21の横幅方向に全長に亘る状態で外皮部位21の面方向に延びて、通気が流通自在に構成されている。建物2の外皮部位21(屋根や屋根の内部空間)は、一端側から他端側に向かうほど上方側に位置する傾斜状に形成され、一端部21aが下端部となり、他端部21bが上端部となっている。通気部4も、一端側から他端側に向かうほど上方側に位置する傾斜状に形成され、一端部4aが下端部となり、他端部4bが上端部となっている。
【0022】
通気部4において、その下端部となる一端部4aが、連通部5を通して建物内空間3に連通され、且つ、その上端部となる他端部4bが開放部6を通して建物2の外部に開放自在に構成されている。連通部5は、通気部4の一端部4aと建物内空間3とを連通する開口部にて構成され、開放部6は、通気部4の他端部4bと建物2の外部とを連通する開口部にて構成されている。これにより、通気部4では、連通部5を通して一端部4aに建物内空間3の空気が供給されると、その空気が通気部4の長さ方向に流通して他端部4bに到達し、開放部6を通して建物外に排出されている。
【0023】
建物2の屋根や屋根の内部空間となる外皮部位21は、
図2に示すように、外側折板7と内側折板8とが所定の間隔を隔てる状態で配設された二重折板屋根構造を有している。そこで、通気部4は、外側折板7と内側折板8とを利用して、外側折板7と内側折板8との間に備えられている。外側折板7は、建物外に露出しているので、例えば、耐候性鋼板等から構成されている。内側折板8は、例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標)等から構成され、通気部4を流通する空気の結露水をドレン受け部17に導くようにしている。
【0024】
換気システム1は、
図1に示すように、通気部4に加えて、建物2の外部から建物内空間3に空調空気を供給する外調機9が備えられている。外調機9は、建物外の外気から空調処理部(例えば、コイル)にて所望の空調状態とする空調空気を生成し、その空調空気を給気ダクト10を通して建物内空間3に供給している。
【0025】
外調機9は、建物内空間3に空調空気を供給するので、その空調空気が、連通部5を通して通気部4に供給される。通気部4では、空調空気が流通することになり、その空調空気が通気部4の開放部6から建物外に排出される。このようにして、換気システム1は、通気部4を利用しながら、建物内空間3の換気を行っており、通気部4を流通する空調空気にて断熱性能の向上を図れることから、
図2に示すように、外側折板7と内側折板8との間の断熱材を省略している。
【0026】
換気システム1は、建物内空間3の空気を建物外に排出するために、通気部4を備えるだけでなく、建物内空間3の空気を建物外に強制的に排出する排出装置11が備えられている。排出装置11は、例えば、ルーフファン等から構成されている。排出装置11は、例えば、建物2の中央部や外周部等に通気部4とは別に配設されており、建物内空間3の空気を強制的に建物外に排出可能に構成されている。
【0027】
建物内空間3には、生産設備等、換気が必要な設備が備えられる場合があり、換気が必要な設備が配設される箇所を、特定換気対象空間31としている。そのために、換気システム1は、建物2内の特定換気対象空間31に空調空気を供給する特定換気用の外調機12と、特定換気対象空間31の空気を建物2の外部に強制的に排出する特定換気用の排出装置13とが備えられている。特定換気用の外調機12は、外調機9と同様に、建物外の外気から空調処理部(例えば、コイル)にて所望の空調状態とする空調空気を生成し、その空調空気を給気ダクト14を通して特定換気対象空間31に供給している。特定換気用の排出装置13は、特定換気対象空間31の空気を排出ダクト15を通して建物外に排出している。
【0028】
換気システム1は、外調機9、排出装置11、特定換気用の外調機12、及び、特定換気用の排出装置13等の各種の機器の作動状態を制御する制御部16が備えられている。制御部16は、運転モード切替条件に基づいて、第1運転モードと第2運転モードと第3運転モードを択一的に選択して実行自在に構成されている。
【0029】
第1運転モードでは、制御部16が、外調機9を作動させ且つ排出装置11を作動停止させて、
図1中の実線矢印にて示すように、通気部4にて建物内空間3の空気を建物外に強制排出させている。外調機9は、建物内空間3に空調空気を供給するので、その空調空気が、連通部5を通して通気部4に供給される。通気部4では、空調空気が流通することになり、その空調空気が通気部4の開放部6から建物外に排出される。第1運転モードでは、建物内空間3に対して外調機9にて空調空気を押し込み供給することで、建物内空間3の空気を通気部4を通して建物外に強制的に排出して、建物内空間3の換気を強制的に行っている。
【0030】
第2運転モードでは、制御部16が、外調機9及び排出装置11を作動停止させて、
図1中の点線矢印にて示すように、通気部4にて建物内空間3の空気を建物外に自然排出させている。建物内や建物内外の温度差による浮力等を利用して、通気部4にて建物内空間3の空気を建物外に自然排出することで、建物内空間3と建物外との外気連通部(図示省略)を通して、建物外の外気を建物内空間3に取り込む重力換気を行っている。第2運転モードでは、温度差等を用いて通気部4を通して建物外に排出することで、重力換気を利用して、建物内空間3の自然換気を行っている。
【0031】
第3運転モードでは、制御部16が、外調機9及び排出装置11を作動させて、
図1中黒塗り矢印にて示すように、通気部4での空気の流通を抑制しながら、排出装置11にて建物内空間3の空気を建物外に強制排出させている。外調機9を作動させることで、建物内空間3に空調空気が供給されているが、排出装置11が作動されているので、建物内空間3の空気が建物外に強制的に排出されている。第3運転モードでは、通気部4での空気の流通を抑制しながら、排出装置11にて建物内空間3の空気を建物外に強制排出させて、建物内空間3と建物2の外部との間に、通気部4の空気にて保温層を形成している。
【0032】
制御部16は、外調機9及び排出装置11の作動状態に加えて、特定換気用の外調機12、及び、特定換気用の排出装置13の作動状態も制御している。例えば、特定換気対象空間31に設置される設備が作動状態である場合等、特定換気対象空間31の換気が必要な場合には、制御部16が、特定換気用の外調機12を作動させ且つ特定換気用の排出装置13を作動させている。逆に、特定換気対象空間31に設置される設備が作動停止状態である場合等、特定換気対象空間31の換気が不必要な場合には、制御部16が、特定換気用の外調機12を作動停止させ且つ特定換気用の排出装置13を作動停止させている。
【0033】
以下、
図3及び
図4に基づいて、制御部16が、運転モード切替条件に基づいて、第1運転モードと第2運転モードと第3運転モードとのうち、どの運転モードを選択して実行するかについて説明する。
図3は、特定換気用の外調機12及び特定換気用の排出装置13を作動停止状態とした場合を示しており、
図4は、特定換気用の外調機12及び特定換気用の排出装置13を作動状態とした場合を示している。ちなみに、換気回数については、例えば、送風能力を4200CMHとした場合に、0.3回/hとしている。
【0034】
運転モード切替条件は、外気温度条件と日射条件とを含む条件となっている。制御部16は、外気温度センサ及び日射センサの検出情報に基づいて、外気温度条件及び日射条件を判別している。
【0035】
図3及び
図4に示すように、外気温度条件が第1設定範囲(例えば、30℃以上の範囲)であれば、季節が夏期であるとして、制御部16が、第1運転モードを選択して実行している。第1運転モードでは、制御部16が、外調機9を作動させ且つ排出装置11を作動停止させて、通気部4にて空調空気を流通させて、建物内空間3の換気を強制的に行っている。
【0036】
図3及び
図4に示すように、外気温度条件が第2設定範囲(例えば、26℃以上且つ30℃未満の範囲)であれば、季節が中間期であるとして、第1設定範囲と同様に、制御部16が、第1運転モードを選択して実行している。第1運転モードでは、制御部16が、外調機9を作動させ且つ排出装置11を作動停止させて、通気部4にて空調空気を流通させて、建物内空間3の換気を強制的に行っている。
【0037】
また、
図3及び
図4に示すように、外気温度条件が第3設定範囲(例えば、22℃以上且つ26℃未満の範囲)であれば、季節が中間期であるとして、制御部16が、第2運転モードを選択して実行している。第2運転モードでは、制御部16が、外調機9を作動停止させ且つ排出装置11を作動停止させて、重力換気を利用して、通気部4にて空気を流通させて、建物内空間3の自然換気を行っている。
【0038】
また、
図3及び
図4に示すように、外気温度条件が第4設定範囲(例えば、12℃以上且つ22℃未満の範囲)であれば、季節が中間期であるとして、制御部16が、第1運転モードを選択して実行している。第1運転モードでは、制御部16が、外調機9を作動させ且つ排出装置11を作動停止させて、通気部4にて空調空気を流通させて、建物内空間3の換気を強制的に行っている。
【0039】
図3及び
図4に示すように、外気温度条件が第5設定範囲(例えば、12℃未満の範囲)であれば、季節が冬期であるとし、しかも、日射条件が直達日射あり(例えば、日射センサによる検出日射強度が300W/m
2以上)であれば、制御部16が、第3運転モードを選択して実行している。第3運転モードでは、制御部16が、外調機9を作動させ且つ排出装置11を作動させて、通気部4に保温層を形成しながら、建物内空間3の空気を強制的に排出している。
【0040】
また、
図3及び
図4に示すように、外気温度条件が第5設定範囲(例えば、12℃未満の範囲)でれば、季節が冬期であるとし、日射条件が直達日射なし(例えば、日射センサによる検出日射強度が300W/m
2未満)であれば、制御部16が、第1運転モードを選択して実行している。第1運転モードでは、制御部16が、外調機9を作動させ且つ排出装置11を作動停止させて、通気部4にて空調空気を流通させて、建物内空間3の換気を強制的に行っている。
【0041】
上述の如く、制御部16は、運転モード切替条件に基づいて、第1運転モードと第2運転モードと第3運転モードを択一的に選択して実行しているが、運転モード切替条件は、特定換気用の外調機12及び特定換気用の排出装置13の作動状態にかかわらず、一定の条件が設定されている。
【0042】
ちなみに、上述の実施形態では、
図4に示すように、特定換気用の外調機12及び特定換気用の排出装置13を作動状態とした場合に、外調機9から建物内空間3への空調空気の供給量を所定量となるように、外調機9の作動状態を制御している。特定換気用の外調機12及び特定換気用の排出装置13を作動状態とした場合には、特定換気用の外調機12から建物内空間3に空調空気が供給されている。そこで、その分を建物内空間3の換気に考慮することで、上述の構成に代えて、例えば、制御部16が、特定換気用の外調機12から建物内空間3への空調空気の供給量に応じて、外調機9から建物内空間3への空調空気の供給量を所定量よりも低減するように、外調機9の作動状態を制御することも可能である。
【0043】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0044】
(1)上記実施形態では、通気部4が、一端部4aから他端部4bに向かうほど上方側に位置する傾斜状に形成されているが、通気部4は、必ずしも傾斜状に形成する必要がなく、例えば、水平方向に延びる形状とすることもできる。また、通気部4を傾斜状に形成する場合でも、一端部4aから他端部4bに向かって階段状で上方側に位置する形状に形成することもでき、その形状をどのような形状とするかは適宜変更が可能である。
【0045】
(2)上記実施形態では、建物2の外皮部位21(屋根や屋根の内部空間)が、一端側から他端側に向かうほど上方側に位置する傾斜状に形成されているものに適用した場合を示したが、例えば、一端部から中央部に向かうほど上方側に位置し且つ他端部から中央部に向かうほど上方側に位置する山形形状に形成され、建物2の中央部が一番上方側に位置する外皮部位(屋根、屋根の内部空間や壁の内部空間)に適用することもできる。この場合には、一端部から中央部に向かうほど上方側に位置する傾斜状の通気部と他端部から中央部に向かうほど上方側に位置する傾斜状の通気部との2つの通気部を外皮部位(屋根、屋根の内部空間や壁の内部空間)に備えることができる。
【0046】
(3)上記実施形態では、外調機9と特定換気用の外調機12とを別々に備えているが、例えば、外調機と特定換気用の外調機とを兼用する外調機を備えることもできる。この場合には、特定換気対象空間31に空調空気を供給するか否かによって、外調機の送風能力や空調能力を変更することで、対応することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 建物の換気システム
2 建物
3 建物内空間
4 通気部
5 連通部
6 開放部
7 外側折版
8 内側折版
9 外調機
11 排出装置
12 特定換気用の外調機
13 特定換気用の排出装置
16 制御部
21 外皮部位
31 特定換気対象空間