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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/58 20060101AFI20240513BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B65H29/58 B
B65H5/06 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020086421
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021181342
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 篤史
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120221(JP,A)
【文献】特開2017-193414(JP,A)
【文献】特開2000-185863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/58
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流装置に接続され、前記下流装置に設けられた入口ローラ対にシートを受け渡す画像形成装置において、
シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって画像が形成されたシートをスイッチバックするために、第1方向に搬送した後に前記第1方向とは反対の第2方向に反転搬送する反転ローラ対と、
前記反転ローラ対によって反転搬送されたシートのカールを補正し搬送するデカーラと、
前記デカーラによってカールが補正されたシートを前記入口ローラ対に向けて搬送する搬送ローラ対と、
前記反転ローラ対、前記デカーラ及び前記搬送ローラ対によって搬送されるシートの搬送速度を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2方向に前記反転ローラ対によってシートを第1の速度で搬送する第1搬送処理と、前記第1の速度よりも遅い第2の速度でシートを前記デカーラよって搬送する第2搬送処理と、前記第1の速度及び前記第2の速度と異なる第3の速度で前記搬送ローラ対によってシートを前記入口ローラ対に搬送する第3搬送処理と、を実行可能であり
前記画像形成部は、シートに画像を転写しながら、前記第1の速度、前記第2の速度及び前記第3の速度よりも遅い第4の速度でシートを搬送する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第3の速度は、前記第2の速度よりも遅い、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記反転ローラ対によるシートの搬送速度、前記第搬送処理において前記第1の速度から前記第2の速度に設定、前記第搬送処理において前記第2の速度から前記第3の速度に設定る、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、シートの後端が前記画像形成部を通過した後、前記第4の速度よりも速い第5の速度で前記第1方向にシートを搬送するように前記反転ローラ対を駆動する、
ことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の速度、前記第2の速度及び前記第5の速度は、先行シートと後続シートが接触しないように設定される、
ことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記反転ローラ対は、第1反転ローラ及び第2反転ローラを有し、前記第1反転ローラ及び前記第2反転ローラが互いに当接してニップを形成する当接状態と、前記第1反転ローラと前記第2反転ローラとが離間した離間状態と、に遷移可能であり、
前記第1の速度、前記第2の速度及び前記第5の速度は、前記第2方向に搬送される先行シートと前記第1方向に搬送される後続シートとが、前記離間状態の前記反転ローラ対の前記第1反転ローラと前記第2反転ローラとの間で接触するように設定される、
ことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記デカーラは、第1の外径を有する第1搬送ローラと、前記第1の外径よりも大きい第2の外径を有する第2搬送ローラと、を有し、前記第1搬送ローラ及び前記第2搬送ローラによって形成されるニップによってシートのカールを補正する、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記画像形成部を通過したシートが前記反転ローラ対を経ずに前記デカーラへ搬送される第1排出モードと、前記画像形成部を通過したシートが前記反転ローラ対によって反転された後、前記デカーラへ搬送される第2排出モードと、を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1排出モードにおいて前記入口ローラ対に搬送されるシートの搬送速度と、前記第2排出モードにおいて前記入口ローラ対に搬送されるシートの搬送速度と、は同じである
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成した後、シートの表裏を反転するようにスイッチバックして排出する画像形成装置が提案されている(特許文献1参照)。この画像形成装置は、シートに画像を形成した後、シートの搬送速度を増速し、そのままの速度で搬送されて機外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-182475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スイッチバックされたシートが機外に排出される前に、デカーラローラ対のような駆動負荷の大きなローラ対によって搬送される場合がある。しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置のように、画像形成後に増速したままデカーラローラ対によってシートを搬送しようとすると、デカーラローラ対を駆動するモータ等の駆動源を大型化する必要がある。これにより、装置がコストアップしてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、コストダウン可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、画像形成装置において、下流装置に接続され、前記下流装置に設けられた入口ローラ対にシートを受け渡す画像形成装置において、シートに画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によって画像が形成されたシートをスイッチバックするために、第1方向に搬送した後に前記第1方向とは反対の第2方向に反転搬送する反転ローラ対と、前記反転ローラ対によって反転搬送されたシートのカールを補正し搬送するデカーラと、前記デカーラによってカールが補正されたシートを前記入口ローラ対に向けて搬送する搬送ローラ対と、前記反転ローラ対、前記デカーラ及び前記搬送ローラ対によって搬送されるシートの搬送速度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2方向に前記反転ローラ対によってシートを第1の速度で搬送する第1搬送処理と、前記第1の速度よりも遅い第2の速度でシートを前記デカーラよって搬送する第2搬送処理と、前記第1の速度及び前記第2の速度と異なる第3の速度で前記搬送ローラ対によってシートを前記入口ローラ対に搬送する第3搬送処理と、を実行可能であり前記画像形成部は、シートに画像を転写しながら、前記第1の速度、前記第2の速度及び前記第3の速度よりも遅い第4の速度でシートを搬送する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、コストダウン可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態に係るプリンタを示す全体概略図。
図2】分岐搬送ユニット及び反転搬送ユニットを示す断面図。
図3】デカーラユニットを示す断面図。
図4】第1の実施の形態に係る制御ブロックを示すブロック図。
図5】(a)はフェイスアップ排出制御におけるシートの様子を示す断面図、(b)はフェイスアップ排出制御におけるシートの様子を示す断面図。
図6】(a)はフェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図、(b)はフェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図。
図7】(a)はフェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図、(b)はフェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図。
図8】フェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図。
図9】フェイスダウン排出制御を示すフローチャート。
図10】第2の実施の形態に係るプリンタを示す全体概略図。
図11】冷却ユニットを示す断面図。
図12】第2の実施の形態に係る制御ブロックを示すブロック図。
図13】(a)はフェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図、(b)はフェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図。
図14】(a)はフェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図、(b)はフェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図。
図15】(a)はフェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図、(b)はフェイスダウン排出制御におけるシートの様子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
〔全体構成〕
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。画像形成装置としてのプリンタ1は、電子写真方式のフルカラーレーザビームプリンタである。プリンタ1は、下流装置としての排出アクセサリ120に接続されると共に、排出アクセサリ120に設けられた入口ローラ対121にシートを受け渡す。
【0010】
プリンタ1は、図1に示すように、給送ユニット10a,10bと、引き抜きユニット20a,20bと、レジストレーションユニット30と、画像形成ユニット90と、定着ユニット52と、分岐搬送ユニット60と、を有している。更に、プリンタ1は、デカーラユニット110と、反転搬送部としての反転搬送ユニット80と、両面搬送ユニット70と、を有している。
【0011】
画像形成ユニット90は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー画像を形成する4つのプロセスカートリッジ99Y,99M,99C,99Bkと、露光装置93,96,97,98と、を備えている。なお、4つのプロセスカートリッジ99Y,99M,99C,99Bkは、形成する画像の色が異なること以外は同じ構成である。このため、プロセスカートリッジ99Yの構成及び画像形成プロセスのみを説明し、プロセスカートリッジ99M,99C,99Bkの説明は省略する。
【0012】
プロセスカートリッジ99Yは、感光ドラム91と、不図示の帯電ローラと、現像器92と、クリーナ95と、を有している。感光ドラム91は、アルミシリンダの外周に有機光導電層を塗布して構成され、不図示の駆動モータによって回転する。また、画像形成ユニット90には、駆動ローラ42によって矢印T方向に回転する中間転写ベルト40が設けられ、中間転写ベルト40は、テンションローラ41、駆動ローラ42及び2次転写内ローラ43に巻き掛けられている。中間転写ベルト40の内側には、1次転写ローラ45Y、45M、45C、45Bkが設けられており、中間転写ベルト40の外側には、2次転写内ローラ43に対向して2次転写外ローラ44が設けられている。
【0013】
定着ユニット52は、定着ローラ対54と、シートを定着ローラ対54のニップに案内する定着前ガイド53を有している。給送ユニット10aは、シートSを積載しつつ昇降するリフト板11aと、リフト板11aに積載されたシートSを給送するピックアップローラ12aと、給送されたシートを1枚ずつに分離する分離ローラ対13aと、を有している。同様にして、給送ユニット10bは、シートSを積載しつつ昇降するリフト板11bと、リフト板11bに積載されたシートSを給送するピックアップローラ12bと、給送されたシートを1枚ずつ分離する分離ローラ対13bと、を有している。
【0014】
次に、このように構成されたプリンタ1の画像形成動作について説明する。不図示のパソコン等から画像信号が露光装置93に入力されると、露光装置93から、画像信号に対応したレーザ光がプロセスカートリッジ99Yの感光ドラム91上に照射される。
【0015】
このとき感光ドラム91は、帯電ローラにより表面が予め所定の極性・電位に一様に帯電されており、露光装置93からミラー94を介してレーザ光が照射されることによって表面に静電潜像が形成される。感光ドラム91に形成された静電潜像は、現像器92により現像され、感光ドラム91上にイエロー(Y)のトナー像が形成される。
【0016】
同様にして、プロセスカートリッジ99M,99C,99Bkの各感光ドラムにも露光装置96,97,98からレーザ光が照射され、各感光ドラムにマゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)のトナー像が形成される。各感光ドラム上に形成された各色のトナー像は、1次転写ローラ45Y、45M、45C、45Bkにより中間転写ベルト40に転写される。そして、フルカラーのトナー像は、駆動ローラ42によって回転する中間転写ベルト40により2次転写内ローラ43及び2次転写外ローラ44によって形成される2次転写ニップT2まで搬送される。感光ドラム91に残ったトナーは、クリーナ95によって回収される。なお、各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト40上に1次転写された上流のトナー像に重ね合わせるタイミングで行われる。
【0017】
この画像形成プロセスに並行して、給送ユニット10a,10bのいずれかからシートSが給送され、引き抜きユニット20a,20bのいずれかによって、シートSはレジストレーションユニット30に搬送される。シートSは、レジストレーションユニット30により斜行が補正され、所定の搬送タイミングで画像形成部としての2次転写ニップT2に搬送される。シートSの第1シート面(表面)には、2次転写外ローラ44に印加された2次転写バイアスによって、2次転写ニップT2において中間転写ベルト40上のフルカラーのトナー像が転写される。中間転写ベルト40上に残存した残存トナーは、ベルトクリーナ46によって回収される。
【0018】
トナー像が転写されたシートSは、転写後ガイド45及び定着前搬送部51によって定着ユニット52に搬送される。そして、シートSは、定着前ガイド53によって定着ローラ対54のニップに案内され、所定の熱及び圧力が付与されてトナーが溶融固着(定着)される。定着ユニット52を通過したシートSは、分岐搬送ユニット60によって、デカーラユニット110に搬送されるか反転搬送ユニット80に搬送されるかの経路選択が行われる。なお、分岐搬送ユニット60及び反転搬送ユニット80は、2次転写ニップT2で画像が形成された第1シート面が下側となるようにシートSを反転させ、デカーラユニット110にシートSを搬送することもできる。
【0019】
シートSの片面のみに画像を形成する場合には、シートSは分岐搬送ユニット60からデカーラユニット110に搬送され、小径の硬質ローラ及び大径の軟質ローラによってシートのカールが補正される。続いて、デカーラユニット110を通過したシートSは排出アクセサリ120に搬送される。排出アクセサリ120ではシートSに処理を行った後、シートSを排出トレイ130に排出する。
【0020】
シートSの両面に画像形成する場合には、シートSは分岐搬送ユニット60によって反転搬送ユニット80に搬送され、反転搬送ユニット80においてスイッチバックされる。スイッチバックされたシートSは、反転搬送ユニット80から両面搬送ユニット70に搬送され、レジストレーションユニット30に案内される。この後、シートSは、2次転写ニップT2において第2シート面(裏面)に画像が形成され、デカーラユニット110及び排出アクセサリ120を経由して、排出トレイ130に排出される。
【0021】
[分岐搬送ユニット及び反転搬送ユニットの構成]
次に、分岐搬送ユニット60及び反転搬送ユニット80の構成について説明する。分岐搬送ユニット60は、図1及び図2に示すように、定着ユニット52によって搬送されたシートSを直線的に案内するストレート搬送路62と、ストレート搬送路62から下方に分岐する反転前搬送路63と、を有している。反転前搬送路63は、下方に延びる反転搬送路81に接続しており、反転搬送路81及びストレート搬送路62は、反転後搬送路65によって接続されている。
【0022】
ストレート搬送路62と反転前搬送路63の分岐部には、第1切替部材61が設けられている。第1切替部材61は、定着ユニット52を通過したシートSをストレート搬送路62に案内する位置と、反転前搬送路63に案内する位置と、に不図示の駆動源により切替え可能に構成されている。
【0023】
反転前搬送路63と反転後搬送路65の分岐部には、第2切替部材64が設けられている。第2切替部材64は、反転搬送路81を通過するシートSを反転後搬送路65に案内するように不図示の付勢部材によって位置決めされた状態で付勢されている。シートSが定着ユニット52から反転前搬送路63に搬送された場合には、シートSは、付勢部材の付勢力に抗して、第2切替部材64を押圧しつつ反転搬送路81に進む。
【0024】
反転搬送ユニット80は、反転搬送路81に沿って配置されると共に正逆回転可能な反転上ローラ対82及び反転下ローラ対83を有している。反転上ローラ対82及び反転下ローラ対83は、同一の駆動源によって駆動され、シートをスイッチバックして搬送する。言い換えれば、反転上ローラ対82及び反転下ローラ対83は、シートを第1方向D1に搬送した後に第1方向D1とは反対の第2方向D2に搬送するスイッチバック搬送を行う。そして、反転搬送ユニット80は、シートをスイッチバックして入口ローラ対121に向けて搬送する反転搬送制御としてのフェイスダウン排出制御を実行可能である。反転後搬送路65には、排出前ローラ対66が設けられており、ストレート搬送路62と反転後搬送路65の合流部には、デカーラユニット110にシートSを搬送する排出ローラ対67が設けられている。
【0025】
[デカーラユニットの構成]
次に、デカーラユニット110の構成について説明する。デカーラユニット110は、図3に示すように、上流ローラ対111と、カール補正部115と、下流ローラ対114と、を有している。上流ローラ対111は、分岐搬送ユニット60によってデカーラユニット110に搬送されたシートSを受け取り、シートSをカール補正部115に搬送する。カール補正部115は、シートSのカールを補正し、下流ローラ対114にシートSを搬送する。下流ローラ対114は、搬送されたシートSを排出アクセサリ120に搬送する。
【0026】
図3に示すように、カール補正部115は、搬送ローラ対としての上流カール補正ローラ対112と、下流カール補正ローラ対113と、を有している。上流カール補正ローラ対112は、デカーラモータM3(図4参照)によって駆動される上流金属ローラ112aと、上流スポンジローラ112bと、を有している。第1搬送ローラとしての上流金属ローラ112aは、例えばSUS等の金属材料からなり、第2搬送ローラとしての上流スポンジローラ112bは、例えば発泡ウレタン等の軟質の弾性部材からなる。上流スポンジローラ112bの第2の外径としての外径r2は、上流金属ローラ112aの第1の外径としての外径r1よりも大きい(r2>r1)。上流スポンジローラ112bは、カールの向きやカールの量によって押圧力が可変となるように不図示のカム部材によって上流金属ローラ112aに押し付けられている。
【0027】
下流カール補正ローラ対113は、上流カール補正ローラ対112と同様に、デカーラモータM3(図4参照)によって駆動される下流金属ローラ113aと、下流スポンジローラ113bと、を有している。下流金属ローラ113aは、例えばSUS等の金属材料からなり、下流スポンジローラ113bは、例えば発泡ウレタン等の軟質の弾性部材からなる。下流スポンジローラ113bの外径r4は、下流金属ローラ113aの外径r3よりも大きい(r4>r3)。下流スポンジローラ113bは、カールの向きやカールの量によって押圧力が可変となるように不図示のカム部材によって下流金属ローラ113aに押し付けられている。
【0028】
上流カール補正ローラ対112、もしくは下流カール補正ローラ対113によってシートSがしごかれることにより、シートSのカールが補正される。上流カール補正ローラ対112の上流金属ローラ112a及び下流カール補正ローラ対113の下流金属ローラ113aは、搬送路を挟んで互いに反対向きに配置されている。そのため、カールの方向によって上流カール補正ローラ対112及び下流カール補正ローラ対113の押圧力を調整することにより、カールの方向に合わせてカールを補正できる。
【0029】
[制御ブロック]
図4は、本実施の形態に係る制御ブロック図である。図4に示すように、プリンタ1の制御部400は、CPU40と、メモリ402と、を有している。CPU40は、メモリ402から各種のプログラムを読み出し、これらのプログラムを実行する。また、CPU40は、画像形成ユニット90や操作パネル等のUI500を制御する。
【0030】
制御部400は、I/O600を介して、定着後センサ55やその他のセンサ並びに排出モータM1、反転モータM2、デカーラモータM3、第1切替モータM4、第2切替モータM5及び定着モータM6に接続されている。定着後センサ55は、シート搬送方向において、定着ローラ対54の下流に配置されている(図5(a)参照)。
【0031】
排出モータM1は、排出前ローラ対66及び排出ローラ対67を駆動する。反転モータM2は、反転上ローラ対82及び反転下ローラ対83を駆動する。デカーラモータM3は、上流カール補正ローラ対112及び下流カール補正ローラ対113を駆動する。第1切替モータM4は、第1切替部材61を駆動し、第2切替モータM5は、第2切替部材68を駆動する。定着モータM6は、定着ローラ対54を駆動する。なお、デカーラモータM3は、上流カール補正ローラ対112及び下流カール補正ローラ対113に加えて、上流ローラ対111及び下流ローラ対114を駆動してもよい。
【0032】
[フェイスアップ排出制御]
次に、本実施の形態におけるフェイスアップ排出制御について詳細に説明する。図5(a)(b)は定着ユニット52、分岐搬送ユニット60、反転搬送ユニット80、デカーラユニット110、及び排出アクセサリ120の一部の断面図である。まず図5(a)に示すように、シートSは定着ローラ対54にてカラー可視画像を定着されながら搬送される。定着ローラ対54は、画像形成速度V0で定着モータM6により定速回転する。画像形成速度V0は、2次転写ニップT2におけるシートの搬送速度と同一である。すなわち、2次転写ニップT2は、シートに画像を転写しながら第4の速度としての画像形成速度V0でシートを搬送する。本実施の形態においては、画像形成速度V0を300mm/sに設定している。シートSは定着後センサ55によって検知され、その検知タイミングからの搬送量に基づいて後述の制御が行われる。
【0033】
そして、第1切替部材61は、第1切替モータM4によって動作し、フェイスアップ排出時は、シートSをストレート搬送路62に案内する。その後、図5(b)に示すように、シートSの後端が定着ローラ対54を抜けると、排出アクセサリ120の入口ローラ対121にシートSを受け渡すために、シートSは受け渡し速度V4へと増速する。シートSの受け渡し速度V4への増速は、制御部400が排出モータM1及びデカーラモータM3を制御することで実行される。
【0034】
本実施の形態では、受け渡し速度V4を600mm/sに設定している。なお、画像形成速度V0よりも受け渡し速度V4を速く設定したのは、プリンタ1においてシートSが給送されてから排出アクセサリ120の排出トレイ130に排出されるまでの時間を短くし、生産性を向上するためである。
【0035】
つまり、シートSは、後端が定着ローラ対54を抜けてから、入口ローラ対121に先端が突入するまでに、画像形成速度V0から受け渡し速度V4へ増速を行わなければならない。そのため、定着ローラ対54から入口ローラ対121までのシート搬送方向における長さは、プリンタ1に適用可能な最も長い仕様のシートSの長さと、シートSを増速するために必要な長さを合わせた分よりも長い必要がある。増速するための長さをとろうとすると、その分、定着ローラ対54から入口ローラ対121までの長さを長くする必要があり、装置自体の大きさが大きくなってしまうという問題がある。それ故に、受け渡し速度V4は画像形成速度V0との差が少ない方が、装置を小型化することができる。
【0036】
[フェイスダウン排出制御]
続いて、第1の実施の形態におけるフェイスダウン排出制御について詳細に説明する。図6(a)乃至図8は定着ユニット52、分岐搬送ユニット60、反転搬送ユニット80、デカーラユニット110、及び排出アクセサリ120の一部の断面図である。シートS1,S2はそれぞれ連続して搬送された転写材である。
【0037】
まず、図6(a)に示すように、先行するシートS1は、定着ローラ対54にてカラー可視画像を定着されながら画像形成速度V0で搬送される。ここでシートS1は、定着後センサ55によって検知され、その検知タイミングからの搬送量に基づいて後述の制御が行われる。
【0038】
フェイスダウン排出制御の場合には、シートS1は第1切替部材61により反転前搬送路63、及び反転搬送路81へと案内され、反転ローラ対としての反転上ローラ対82へと受け渡される。その後、図6(b)に示すように、シートS1の後端が定着ローラ対54を抜けると、制御部400は、反転モータM2によって反転上ローラ対82を増速回転し、シートS1の搬送速度を画像形成速度V0から反転前速度V1へと増速する。本実施の形態では、第5の速度としての反転前速度V1を1500mm/sに設定している。
【0039】
そして、シートS1は反転前速度V1で、図7(a)に示す反転位置まで搬送され停止する。本実施の形態における反転位置は、シートS1の後端位置が反転上ローラ対82のシート搬送方向における上流に30mm離れた位置に到達した位置とする。なお、反転位置においてシートS1の後端は、第2切替部材64の下方に位置している。また、このとき後続する2枚目のシートS2は画像形成速度V0で、すでに定着ローラ対54を通過中である。本実施の形態における画像形成中のシートS1,S2間の距離である紙間は40mmとする。
【0040】
シートS1が反転位置に到達した後には、反転上ローラ対82は定着ローラ対54からシートS1が搬送されてきた方向とは逆方向に反転後第1速度V2の速度で回転を開始し、排出前ローラ対66へとシートS1を搬送する。すなわち、反転上ローラ対82は、シートS1を第1方向D1に搬送した後に第1方向D1とは反対の第2方向D2に搬送する。本実施の形態においては、反転後第1速度V2を1500mm/sに設定している。
【0041】
ここで、画像形成速度V0よりも反転前速度V1及び反転後第1速度V2が速い理由は、シートS1とシートS1に後続するシートS2とが接触することを避けるためである。シートS1とシートS2が接触すると、シートのコバがもう一方のシートに接触し、トナー像に傷がついたり、ジャムになったりしてしまう場合がある。そのため、反転前速度V1及び反転後第1速度V2を画像形成速度V0に対して速くすることでシート同士の接触を防いでいる。言い換えれば、反転前速度V1、反転後第1速度V2及び反転後第2速度V3は、先行シートとしてのシートS1と後続シートとしてのシートS2が接触しないように設定される。
【0042】
続いて、制御部400は、図7(b)に示すように、シートS1が上流カール補正ローラ対112に突入する前に、シートS1の搬送速度を反転後第1速度V2から反転後第2速度V3に減速する。この時、シートS1の搬送速度は、排出モータM1、反転モータM2及びデカーラモータM3によって制御される。本実施の形態においては、反転後第2速度V3を1000mm/sに設定している。本実施の形態では、シート同士の接触を避けるために、反転後第2速度V3よりも反転後第1速度V2を速くした。しかしながら、例えばデカーラユニット110において反転後第1速度V2でシートS1を搬送しようとすると、上流カール補正ローラ対112及び下流カール補正ローラ対113を回転させるために必要な電力が大きくなりすぎてしまう。
【0043】
上流カール補正ローラ対112及び下流カール補正ローラ対113は、カールを補正するために、反転上ローラ対82や排出ローラ対67よりも大きな挟持力を有している。すなわち、上流カール補正ローラ対112の駆動負荷は、反転上ローラ対82よりも大きい。そのため上流カール補正ローラ対112及び下流カール補正ローラ対113を回転するための駆動負荷が大きく、速度が速いとデカーラモータM3に必要な電力が上がり、モータのサイズアップにもつながり、コストアップになってしまう。
【0044】
それ故、駆動負荷の大きい上流カール補正ローラ対112及び下流カール補正ローラ対113の手前でシートS1を減速することで、コストアップを抑えることができる。ただし、デカーラユニット110におけるシートS1の速度を受け渡し速度V4まで下げるとシート同士が接触してしまうため、シート同士が接触しないように反転後第2速度V3は決定されている。このとき、後続するシートS2は第2切替部材64の近傍まで画像形成速度V0の速度で搬送中の状態である。
【0045】
その後、図8に示すように、シートS1が入口ローラ対121に突入する前に、搬送速度を反転後第2速度V3から受け渡し速度V4に減速する。フェイスアップ排出制御と排出アクセサリの受け渡し速度を同一にすることで、フェイスアップ排出制御及びフェイスダウン排出制御を連続で実施する際にも、生産性を落とすことなくシートを排出アクセサリ120に受け渡すことができる。このとき、後続するシートS2は第2切替部材64に到達している状態である。
【0046】
[フェイスダウン排出制御における制御]
次に、フェイスダウン排出制御における制御について、図9のフローチャートに沿って説明する。まず、フェイスダウン排出制御を実行するジョブが開始されると、制御部400は、シートS1の搬送速度が画像形成速度V0となるように定着モータM6を駆動する。
【0047】
次に、制御部400は、定着後センサ55の検知結果に基づいて、シートS1の後端が定着ローラ対54を抜けたか否かを判断する(ステップS2)。シートS1の後端が定着ローラ対54を抜けたと判断された場合(ステップS2:Yes)、制御部400は、シートS1の搬送速度が反転前速度V1となるように反転モータM2を正転方向に駆動する。
【0048】
次に、制御部400は、シートS1の後端が反転位置に到達したか否かを判断する(ステップS4)。シートS1の後端が反転位置に到達したと判断された場合(ステップS4:Yes)、制御部400は、シートS1の反転のために、反転モータM2を停止させることでシートS1を所定時間tだけ停止させる(ステップS5)。
【0049】
次に、制御部400は、シートS1の搬送速度が反転後第1速度V2となるように反転モータM2を逆転方向に駆動する(ステップS6)。次に、制御部400は、シートS1の先端がカール補正部115(図3参照)の手前の第1減速位置に到達したか否かを判断する(ステップS7)。シートS1の先端が第1減速位置に到達したと判断された場合(ステップS7:Yes)、制御部400は、シートS1の搬送速度を反転後第2速度V3に設定する(ステップS8)。この時、シートS1の搬送速度は、逆転方向に駆動する排出モータM1、反転モータM2及びデカーラモータM3によって制御される。
【0050】
次に、制御部400は、シートS1の先端が入口ローラ対121の手前の第2減速位置に到達したか否かを判断する(ステップS9)。シートS1の先端が第2減速位置に到達したと判断された場合(ステップS9:Yes)、制御部400は、シートS1の搬送速度が受け渡し速度V4となるように排出モータM1及びデカーラモータM3を逆転方向に駆動する(ステップS10)。シートS1は、受け渡し速度V4で排出アクセサリ120の入口ローラ対121に受け渡される。
【0051】
そして、制御部400は、次のページがあるか否かを判断する(ステップS11)。次のページがある場合(ステップS11:Yes)、ステップS1に戻る。次のページが無い場合(ステップS11:No)、制御を終了する。
【0052】
以上のように、本実施の形態のフェイスダウン排出制御は、以下のような第1搬送処理と、第2搬送処理と、第3搬送処理と、を有する。第1搬送処理は、第2方向D2に反転上ローラ対82によってシートS1を第1の速度としての反転後第1速度V2で搬送する処理である。第2搬送処理は、反転後第1速度V2よりも遅い第2の速度としての反転後第2速度V3でシートS1を上流カール補正ローラ対112に向けて搬送する処理である。第3搬送処理は、反転後第1速度V2及び反転後第2速度V3よりも遅い第3の速度としての受け渡し速度V4でシートS1を入口ローラ対121に搬送する処理である。そして、反転上ローラ対82によるシートS1の搬送速度は、第1搬送処理において反転後第1速度V2に設定され、第2搬送処理において反転後第2速度V3に設定され、第3搬送処理において受け渡し速度V4に設定される。
【0053】
そして、スイッチバック後のシートの搬送速度が反転後第1速度V2、反転後第2速度V3及び受け渡し速度V4の3つを有することで、シート同士の擦り合わせを防止してジャム及び画像不良を低減することができる。また、例えば上流カール補正ローラ対112及び下流カール補正ローラ対113のような駆動負荷の大きいローラを駆動するためのモータのサイズアップや電力アップを防ぐことによりコストアップを抑えることができる。
【0054】
また、画像形成速度V0は、反転後第1速度V2、反転後第2速度V3及び受け渡し速度V4よりも遅い。すなわち、シートS1は、定着ローラ対54によって画像形成速度V0で搬送された後に、反転前速度V1に増速され、反転後第1速度V2も、画像形成速度V0よりも速い。これにより、シートが反転搬送ユニット80においてスイッチバックする時間を確保することができ、生産性を向上すると共に装置を小型化することができる。
【0055】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態のデカーラユニット110に代えて冷却ユニット140を設けると共に、反転上ローラ対82を接離可能に構成したものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0056】
図10に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置としてのプリンタ1Bは、冷却ユニット140を有している。冷却ユニット140は、シートの熱を奪うことによりシートを冷却し、排出アクセサリ120にシートSを搬送する。
【0057】
[冷却ユニット]
冷却ユニット140は、図11に示すように、上流ローラ対141と、搬送ローラ対としての冷却ローラ対142と、下流ローラ対143と、を有している。上流ローラ対141は、分岐搬送ユニット60によって冷却ユニット140に搬送されたシートSを受け取り、シートSを冷却ローラ対142に搬送する。
【0058】
冷却ローラ対142は、第3搬送ローラとしての冷却駆動ローラ142aと、冷却駆動ローラ142aに従動回転する第4搬送ローラとしての冷却従動ローラ142bと、を有している。冷却駆動ローラ142aは、例えばシリコン等のゴム材料からなり、冷却モータM7(図12参照)によって駆動される。冷却従動ローラ142bは、外周が例えばアルミ等の金属材料により構成され、シートSと接触することにより、シートSから熱を冷却従動ローラ142bに移動させ、シートSを冷却する。
【0059】
シートSが熱いままプリンタ1から排出された場合、例えば排出トレイ130上で、固化されていないトナー像が、積載されたシートと接着して張り付いてしまう問題が発生することがある。そのため、冷却ローラ対142でシートSを冷却してトナー像を固化させることで、トナー像とシートの張り付きを防止することができる。冷却ローラ対142によって搬送されたシートSは、下流ローラ対143により排出アクセサリ120へと受け渡される。
【0060】
[制御ブロック]
図12は、本実施の形態に係る制御ブロック図である。図12に示す制御ブロックは、図4で既述した制御ブロックのデカーラモータM3に代えて、冷却モータM7を備えている。冷却モータM7は、冷却駆動ローラ142aを駆動する。
【0061】
[フェイスダウン排出制御]
続いて、第2の実施の形態におけるフェイスダウン排出制御について詳細に説明する。図13(a)乃至図15(b)は定着ユニット52、分岐搬送ユニット60、反転搬送ユニット80、冷却ユニット140、及び排出アクセサリ120の一部の断面図である。シートS1,S2はそれぞれ連続して搬送された転写材である。
【0062】
まず、図13(a)に示すように、シートS1は、定着ローラ対54にてカラー可視画像を定着されながら画像形成速度V0で搬送される。ここでシートS1は、定着後センサ55によって検知され、その検知タイミングからの搬送量に基づいて後述の制御が行われる。
【0063】
フェイスダウン排出制御の場合には、シートS1は第1切替部材61により反転前搬送路63、及び反転搬送路81へと案内され、反転上ローラ対82へと受け渡される。その後、図13(b)に示すように、シートS1の後端が定着ローラ対54を抜けると、制御部400は、反転モータM2によって反転上ローラ対82を増速回転し、シートS1の搬送速度を画像形成速度V0から反転前速度V1へと増速する。本実施の形態では、反転前速度V1を1500mm/sに設定している。
【0064】
そして、シートS1は反転前速度V1で、図14(a)に示す反転位置まで搬送され停止する。本実施の形態における反転位置は、シートS1の後端位置が反転上ローラ対82のシート搬送方向における上流に30mm離れた位置に到達した位置とする。また、このとき後続する2枚目のシートS2は画像形成速度V0で、すでに定着ローラ対54を通過中である。本実施の形態における画像形成中のシートS1,S2間の距離である紙間は20mmとする。
【0065】
シートS1が反転位置に到達した後には、反転上ローラ対82は定着ローラ対54からシートS1が搬送されてきた方向とは逆方向に反転後第1速度V2の速度で回転を開始し、排出前ローラ対66へとシートS1を搬送する。本実施の形態においては、反転後第1速度V2を1500mm/sに設定している。
【0066】
ここで、画像形成速度V0よりも反転前速度V1及び反転後第1速度V2が速い理由は、シートS1とシートS1に後続するシートS2との接触時間を短くするためである。シートS1とシートS2が接触すると、シートのコバがもう一方のシートに接触し、トナー像に傷がついたり、ジャムになったりしてしまう場合がある。そのため、反転前速度V1及び反転後第1速度V2を画像形成速度V0に対して速くすることでシート同士の接触時間を短くし、トナー像の傷やジャムのリスクを低減している。
【0067】
続いて、制御部400は、図14(b)に示すように、シートS1が冷却ローラ対142に突入する前に、シートS1の搬送速度を反転後第1速度V2から反転後第2速度V3に減速するように排出モータM1、反転モータM2及び冷却モータM7を制御する。本実施の形態においては、反転後第2速度V3を1000mm/sに設定している。
【0068】
冷却ローラ対142は、金属材料で構成された冷却従動ローラ142bが重いため、例えば反転上ローラ対82等の他のローラ対よりも回転させるために必要なトルクが大きい。すなわち、冷却ローラ対142の駆動負荷は、反転上ローラ対82よりも大きい。上述したように、シート同士の接触時間を短くするために、反転後第2速度V3よりも反転後第1速度V2を速くした。しかしながら、反転後第1速度V2で冷却ユニット140でもシートS1を搬送しようとすると、冷却ローラ対142を回転させるために必要な電力が大きくなりすぎてしまい、モータのサイズアップやコストアップの要因となってしまう。
【0069】
それ故、駆動負荷の大きい冷却ローラ対142の手前でシートS1を減速することで、コストアップを抑えることができる。ただし、冷却ユニット140におけるシートS1の速度を受け渡し速度V4まで下げるとシート同士が接触する時間が長くなってしまうため、シート同士が接触する時間が比較的短くなるように反転後第2速度V3は決定されている。このとき、後続するシートS2は反転上ローラ対82まで到達している。
【0070】
本実施の形態では、反転上ローラ対82は接離可能に構成されている。より具体的には、反転上ローラ対82は、第1反転ローラとしての反転駆動ローラ82a及び第2反転ローラとしての反転従動ローラ82bを有し、反転従動ローラ82bは、反転駆動ローラ82aに対して接離可能かつ従動回転可能に構成されている。そして、反転上ローラ対82は、反転駆動ローラ82a及び反転従動ローラ82bが互いに当接してニップ82N(図14(a)参照)を形成する当接状態と、反転駆動ローラ82aと反転従動ローラ82bとが離間した離間状態と、に遷移可能である。
【0071】
反転上ローラ対82は、シートS1の先端が排出前ローラ対66に到達してから所定距離進むと、当接状態から離間状態に遷移する。反転上ローラ対82を離間状態にすることにより、先行するシートS1と後続するシートS2とを、反転駆動ローラ82aと反転従動ローラ82bとの間で互いに摺擦するように搬送することができる。そして、シートS1とシートS2の紙間が短い場合でもスイッチバック搬送することができ、装置を小型化できると共に生産性を向上することができる。
【0072】
本実施の形態では、シートS1の先端が排出前ローラ対66のシート搬送方向における下流30mmに位置したところで、反転上ローラ対82が当接状態から離間状態へ遷移開始する。そして、シートS1の後端が反転下ローラ対83を通過したタイミングで、反転上ローラ対82及び反転下ローラ対83の駆動を停止し、その後再び正回転することで、反転上ローラ対82が後続するシートS2を受け入れ可能な状態となる。
【0073】
図14(b)に示すように、先行するシートS1が反転上ローラ対82の間を第2方向D2に搬送されている際に、後続するシートS2は反転上ローラ対82の間を第1方向D1に搬送される。すなわち、シートS1,S2は、互いに重なった状態で逆方向に搬送される。
【0074】
その後、図15(a)に示すように、シートS1の後端が反転上ローラ対82を通過すると、反転上ローラ対82は離間状態から当接状態に遷移する。この状態で、反転上ローラ対82及び反転下ローラ対83は、シートS2をスイッチバック搬送する。
【0075】
そして、図15(b)に示すように、シートS1が入口ローラ対121に突入する前に、搬送速度を反転後第2速度V3から受け渡し速度V4に減速する。フェイスアップ排出制御と排出アクセサリの受け渡し速度を同一にすることで、フェイスアップ排出制御及びフェイスダウン排出制御を連続で実施する際にも、生産性を落とすことなくシートを排出アクセサリ120に受け渡すことができる。このとき、後続するシートS2は反転下ローラ対83に到達している状態である。
【0076】
以上のように、本実施の形態のフェイスダウン排出制御は、以下のような第1搬送処理と、第2搬送処理と、第3搬送処理と、を有する。第1搬送処理は、第2方向D2に反転上ローラ対82によってシートS1を第1の速度としての反転後第1速度V2で搬送する処理である。第2搬送処理は、反転後第1速度V2よりも遅い第2の速度としての反転後第2速度V3でシートS1を冷却ローラ対142に向けて搬送する処理である。第3搬送処理は、反転後第1速度V2及び反転後第2速度V3よりも遅い第3の速度としての受け渡し速度V4でシートS1を入口ローラ対121に搬送する処理である。そして、反転上ローラ対82によるシートS1の搬送速度は、第1搬送処理において反転後第1速度V2に設定され、第2搬送処理において反転後第2速度V3に設定され、第3搬送処理において受け渡し速度V4に設定される。
【0077】
そして、スイッチバック後のシートの搬送速度が反転後第1速度V2、反転後第2速度V3及び受け渡し速度V4の3つを有することで、シート同士の擦り合わせ時間を低減してジャム及び画像不良を低減することができる。言い換えれば、反転前速度V1、反転後第1速度V2及び反転後第2速度V3は、第2方向D2に搬送されるシートS1と第1方向D1に搬送されるシートS2が反転駆動ローラ82aと反転従動ローラ82bとの間で接触するように設定される。また、例えば冷却ローラ対142のような駆動負荷の大きいローラを駆動するためのモータのサイズアップや電力アップを防ぐことによりコストアップを抑えることができる。
【0078】
<その他の実施形態>
なお、既述の実施の形態では、反転上ローラ対82よりも駆動負荷の大きい搬送ローラ対として、上流カール補正ローラ対112及び冷却ローラ対142を例に説明したが、これに限定されない。例えば、上記搬送ローラ対として2つのローラが軸方向に視て重なって配置される櫛歯ローラ対を適用してもよい。
【0079】
また、既述のいずれの形態においても、受け渡し速度V4は反転後第1速度V2及び反転後第2速度V3よりも遅く設定されていたが、これに限定されない。例えば、受け渡し速度V4は、反転後第1速度V2よりも遅く、反転後第2速度V3よりも早く設定されていてもよい。また、例えば、受け渡し速度V4は、は反転後第1速度V2及び反転後第2速度V3よりも速く設定されていてもよい。
【0080】
また、第2の実施の形態では、反転従動ローラ82bが反転駆動ローラ82aに対して接離可能に構成されていたが、これに限定されない。例えば、反転駆動ローラ82aが反転従動ローラ82bに対して接離可能に構成されてもよく、反転駆動ローラ82a及び反転従動ローラ82bが互いに接離可能に構成されていてもよい。
【0081】
また、第2の実施の形態では、反転従動ローラ82bの外周が金属材料により構成されていたが、これに限定されない。例えば、反転駆動ローラ82aの外周が金属材料により構成されていてもよく、反転駆動ローラ82a及び反転従動ローラ82bの両方の外周が金属材料により構成されていてもよい。すなわち、反転駆動ローラ82a及び反転従動ローラ82bの少なくとも一方は、外周が金属材料により構成される。
【0082】
また、既述のいずれの形態においても、各モータと、各モータにより駆動される各ローラ対と、の関係は、図4図12で説明した関係に限らず、任意に設定してよい。また、シートの搬送速度の変更タイミングは、定着後センサ55の検知結果に基づかず、他のセンサやモータ負荷等に基づいて制御されてもよい。
【0083】
また、第1の実施の形態では、シートS1,S2が接触しないように構成されていたが、第2の実施の形態のようにシートS1,S2がすれ違うように搬送されてもよい。また、第2の実施の形態の冷却ユニット140に代えて、第1の実施の形態のデカーラユニット110を適用してもよい。
【0084】
また、既述のいずれの形態においても、電子写真方式のプリンタを用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ノズルからインク液を吐出させることでシートに画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置にも本発明を適用することが可能である。
【0085】
本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0086】
1,1B:画像形成装置(プリンタ)/80:反転搬送部(反転搬送ユニット)/82:反転ローラ対(反転上ローラ対)/82a:第1反転ローラ(反転駆動ローラ)/82b:第2反転ローラ(反転従動ローラ)/112:搬送ローラ対(上流カール補正ローラ対)/112a:第1搬送ローラ(上流金属ローラ)/112b:第2搬送ローラ(上流スポンジローラ)/120:下流装置(排出アクセサリ)/121:入口ローラ対/142:搬送ローラ対(冷却ローラ対)/142a:第3搬送ローラ(冷却駆動ローラ)/142b:第4搬送ローラ(冷却従動ローラ)/400:制御部/D1:第1方向/D2:第2方向/r1:第1の外径(外径)/r2:第2の外径(外径)/S1:シート/T2:画像形成部(2次転写ニップ)/V0:第4の速度(画像形成速度)/V1:第5の速度(反転前速度)/V2:第1の速度(反転後第1速度)/V3:第2の速度(反転後第2速度)/V4:第3の速度(受け渡し速度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15