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特許7487025ジオポリマー成型体の製造方法及びその製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ジオポリマー成型体の製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/02 20060101AFI20240513BHJP
   C04B 18/30 20060101ALI20240513BHJP
   C04B 28/26 20060101ALI20240513BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B28B3/02 Z
C04B18/30
C04B28/26
G21F9/30 511B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020114310
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012467
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-02-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤山 類
(72)【発明者】
【氏名】川内 加苗
(72)【発明者】
【氏名】湯原 勝
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0204008(US,A1)
【文献】特開2018-65731(JP,A)
【文献】特開2012-167927(JP,A)
【文献】特開2008-254939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0007751(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B7/00-32/02
C04B40/00-40/06
C04B103/00-111/94
G21F9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム及びケイ素を主成分とする粉体材料を供給する工程と、
前記粉体材料を重合反応させるアルカリ刺激剤の水溶液を供給する工程と、
粉砕可能な固体からなる放射性廃棄物を供給する工程と、
前記粉体材料、前記放射性廃棄物及び前記水溶液を混合して湿気を帯びた湿潤粉体を生成する工程と、
前記湿潤粉体を圧縮し成型体を形成する工程と、を含み、
前記アルカリ刺激剤の水溶液は、ケイ酸塩の水溶液に水酸化物を溶解させたものであって、
前記ケイ酸塩は、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ルビジウム、ケイ酸セシウムのうち少なくとも一つであり、
前記水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムのうち少なくとも一つである、ジオポリマー成型体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のジオポリマー成型体の製造方法において、
前記粉体材料に混合される前記水溶液は、前記湿潤粉体の全体に占める割合が40wt%を上限とするジオポリマー成型体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のジオポリマー成型体の製造方法において、
温度及び湿度を調整した環境で前記成型体を養生する工程をさらに含むジオポリマー成型体の製造方法。
【請求項4】
アルミニウム及びケイ素を主成分とする粉体材料を供給する第1供給部と、
前記粉体材料を重合反応させるアルカリ刺激剤の水溶液を供給する第2供給部と、
粉砕可能な固体からなる放射性廃棄物を供給する第3供給部と、
前記粉体材料、前記放射性廃棄物及び前記水溶液を混合して湿気を帯びた湿潤粉体を生成する混合部と、
前記湿潤粉体を圧縮し成型体を形成する圧縮成型部と、を備え、
前記アルカリ刺激剤の水溶液は、ケイ酸塩の水溶液に水酸化物を溶解させたものであって、
前記ケイ酸塩は、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ルビジウム、ケイ酸セシウムのうち少なくとも一つであり、
前記水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムのうち少なくとも一つである、ジオポリマー成型体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ジオポリマー成型体の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などから発生する低レベルの放射性廃棄物は、セメント等の固化材料で固化してから処分することが一般的である。このセメントによる固化方法は、固化材料を均質に混合するために、ペースト状になるまで水を配合しさらに混練粘度が一定値よりも低くなるまで調整して混練する必要がある。このようにセメントによる固化方法は、混練水を多量に配合することにより、放射性廃棄物の減容性が低下する課題がある。さらにペースト状の混練体が、混練時には攪拌翼に移送時には配管等に固着する等のトラブルを招き易く、装置メンテナンスを頻繁化させる課題がある。
【0003】
そこで、ジオポリマーの固化材料を粉体のまま少量の水と混合し圧縮成型して固化することにより、水の配合量を抑制する技術が検討されている。この圧縮成型による固化処理によれば、水を大量に配合する必要が無いため、上述した放射性廃棄物の減容性の低下やその他のトラブルを回避するとともに、混合プロセスを簡易化することが期待される。なおジオポリマーにおいても、多量の水を配合しペースト状にしてから固化する方法が一般的に採用されているが、上述したセメントによる固化方法と共通の課題を持つ。
【0004】
ここでジオポリマーは、アルミニウム及びケイ素などを主成分とするアルミノケイ酸塩と呼ばれる非晶質の無機固化材料で構成され、セメントと異なり分子構造に水和水が含まれない。また、ペースト状態から成型された固化体は、相当量の水が包含される事態が不可避であるが、圧縮成型による固化体はそのような事態を回避できる。
【0005】
固化体に含まれる水は、混合された放射性廃棄物の放射能により分解され、水素を発生する要因となる。そして廃棄体の保管時に水素ガス濃度が上昇した場合、水素爆発の発生が懸念される。一方において、ジオポリマーの圧縮固化体は、水分の含有量が少なくさらにはその大部分を乾燥処理で除去することができ、放射能による水素発生量を低減させるという利点を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-65731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したジオポリマーの圧縮成型体は、ペースト化しない程度の少量の水を配合して固化材料の混合処理をする。しかし、そのようにして成型されたジオポリマーの圧縮固化体は、ペースト化させてから固化体とする一般的な処理方法と比較して、発現する機械的強度が低く耐久性に劣るという課題がある。これは、固化材料のうち反応開始に必要なアルカリ刺激材と水分との接触が不十分で、固化反応が均質に進行しないためと考えられている。また、このアルカリ刺激材として用いられる水酸化物またはケイ酸塩は、粉末の状態で吸湿性が高く潮解し易いという性質を持ち、保管管理が難しいという課題がある。
【0008】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、水分の含有量が少なくさらに機械的強度が高いジオポリマー成型体の製造技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係るジオポリマー成型体の製造方法は、アルミニウム及びケイ素を主成分とする粉体材料を供給する工程と、前記粉体材料を重合反応させるアルカリ刺激剤の水溶液を供給する工程と、粉砕可能な固体からなる放射性廃棄物を供給する工程と、前記粉体材料、前記放射性廃棄物及び前記水溶液を混合して湿気を帯びた湿潤粉体を生成する工程と、前記湿潤粉体を圧縮し成型体を形成する工程と、を含み、前記アルカリ刺激剤の水溶液は、ケイ酸塩の水溶液に水酸化物を溶解させたものであって、前記ケイ酸塩は、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ルビジウム、ケイ酸セシウムのうち少なくとも一つであり、前記水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムのうち少なくとも一つである
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態により、水分の含有量が少なくさらに機械的強度が高いジオポリマー成型体の製造技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るジオポリマー成型体の製造装置を示す概略図。
図2】第2実施形態に係るジオポリマー成型体の製造装置の一部を示す概略図。
図3】本発明に係るジオポリマー成型体の製造方法の実施形態を説明する工程図。
図4】各実施形態の効果を確認した実施例の条件を示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るジオポリマー成型体の製造装置(以下、単に「製造装置10A」という)を示す概略図である。このように製造装置10A(10)は、アルミニウム及びケイ素を主成分とする粉体材料21を供給する第1供給部11と、この粉体材料21を重合反応させるアルカリ刺激剤の水溶液22を供給する第2供給部12と、これら粉体材料21及び水溶液22を混合して湿気を帯びた湿潤粉体25を生成する混合部15と、この湿潤粉体25を圧縮し成型体26を形成する圧縮成型部16と、を備えている。
【0013】
ジオポリマーとは、後述するアルミナシリカとアルカリ刺激剤との縮重合反応で生じる非晶質の無機重合体の総称である。粉体材料21は、アルミニウム(Al)及びケイ素(Si)が含まれる化合物(アルミナシリカ)を主成分とする非晶質の粉体である。具体的に粉体材料21としては、メタカオリン、高炉スラグ、焼却灰、飛灰、フライアッシュ、ゼオライト、シリカフューム、非晶質の二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が採用される。
【0014】
アルカリ刺激剤は、粉体材料21を重合反応させるもので水酸化物及びケイ酸塩のうち少なくとも一方を採用することができる。具体的に水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が採用される。また、ケイ酸塩には、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ルビジウム、ケイ酸セシウム等が採用される。なお、ケイ酸塩には、オルト、メタなど様々な化学形態のものが存在するが、特定の化学形態に限定されることなく何れの化学形態のケイ酸塩であってもアルカリ刺激剤として採用することができる。
【0015】
アルカリ刺激剤の水溶液22は、上述したアルカリ刺激剤を、水溶媒に対し、飽和溶解度又はこれよりも低い濃度で溶解させたものである。ここで、水溶液22におけるアルカリ刺激剤の濃度は、湿潤粉体25に所望の湿潤状態を均質に与える水溶媒の量に対し、所望するポリマー組成が化学量論的に過不足の無く得られるように設定される。
【0016】
第1供給部11は、予め定められた分量の粉体材料21を混合部15に供給するものである。第2供給部12は、予め定められた分量のアルカリ刺激剤の水溶液22を混合部15に供給するものである。混合部15は、供給された粉体材料21及び水溶液22を混合して湿気を帯びた湿潤粉体25にするものである。
【0017】
ここで湿気を帯びたとは、湿潤粉体25がスラリー化していない程度に、水分を含んでいる状態を指す。具体的には、粉体材料21を形成する粒子の表面にアルカリ刺激剤の水溶液22が一様に行き渡った程度で、かつ、圧縮して成型体26にした際に湿潤粉体25から水溶液22が分離されない程度の状態を指す。
【0018】
粉体材料21に混合される水溶液22は、湿潤粉体25の全体に占める割合が40wt%を上限とすることでスラリー化を防止することができる。なお好ましい上限は35wt%に設定され、さらに好ましくは25wt%に設定される。他方において、粉体材料21に混合される水溶液22の下限は、この水溶液22が飽和水溶液であることを前提に、重合反応に必要な量のアルカリ刺激剤を含む値が設定される。
【0019】
成型体26は、型枠18に投入した湿潤粉体25を、圧縮成型部16で加圧し圧縮して形成する。なお、湿潤粉体25を圧縮するための圧力は、1.0MPa以上であることが望ましい。これにより成型体26の形状安定性を維持することができる。なお湿潤粉体25の圧縮圧力の上限値は、特に制限されないが、圧縮成型部16で達成可能な範囲で設定される。なお型枠18は、成型体26の型抜きを容易にするために、組み立て式であることが望ましい。
【0020】
さらに製造装置10は、温度及び湿度を調整した環境で成型体26を養生する養生部17を備えている。この養生部17は、型枠18から型抜きされた成型体26において、粉体材料21中のアルミナシリカと水溶液22中のアルカリ刺激剤との重合反応を促進させる。さらに、養生部17は、温度や湿度の調整により、成型体26を乾燥させ、含有する水分を減少させることも可能である。なお養生部17を用いずとも成型体26の内部では自然に重合反応が進むが、養生部17を用いて成型体26の雰囲気の温度や湿度を調整することで重合反応を促進させることができる。これにより、成型体26の機械的強度が向上する。
【0021】
(第2実施形態)
次に図2を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図2は第2実施形態に係るジオポリマー成型体の製造装置(以下、単に「製造装置10B」という)の一部を示す概略図である。なお、図2において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0022】
このように第2実施形態の製造装置10B(10)は、第1実施形態の製造装置10Aの構成に加えて、さらに放射性廃棄物23を供給する第3供給部13を備えている。そして、この第3供給部13から混合部15に供給された放射性廃棄物23は、粉体材料21及び水溶液22と混合して湿潤粉体25を生成する。このように第2実施形態の製造装置10Bでは、湿潤粉体25に放射性廃棄物も共に含まれている。
【0023】
なお湿潤粉体25に含まれる放射性廃棄物としては、例えば、水浄化の際に用いられた放射性核種吸着剤が挙げられる。その他、粉砕可能な固体からなる様々な放射性廃棄物も湿潤粉体25に含ませることができる。
【0024】
(第3実施形態)
図3の工程図を参照して本発明に係るジオポリマー成型体の製造方法の実施形態を説明する(適宜、図1又は図2参照)。アルミニウム及びケイ素を主成分とする粉体材料21を供給する(S11)。この場合の粉体材料21の供給は、貯蔵タンク(図示略)から規定量を秤量して行うか、流通用の袋から直接取り出して行うか、といった供給手段の区別は問わない。また、粉体材料21が複数の素材を混合させたものとする場合、これら素材を予め混合して供給する場合もあるし、それぞれを別々に分けて単独で供給する場合もある。
【0025】
次に、粉体材料21を重合反応させるアルカリ刺激剤の水溶液22を供給する(S12)。この水溶液22は、アルカリ刺激剤を水溶媒に溶解させて所定の濃度に設定したものを予め準備している。そして、この水溶液22の供給量は、粉体材料21の供給量に応じて設定される。
【0026】
次に、粉体材料21及び水溶液22を混合して湿気を帯びた湿潤粉体25を生成する(S13)。この混合作業は、粉体材料21の全体にアルカリ刺激剤の水溶液22がむらなく行き渡るまで継続される。
【0027】
次に、湿潤粉体25を圧縮し成型体26を形成する(S14)。この圧縮により流動性を持つ湿潤粉体25は、固形化した成型体26となる。なお、この圧縮により湿潤粉体25から水溶液22が分離することはない。
【0028】
次に、温度及び湿度を調整した環境で成型体26を養生する(S15)。これにより、成型体26を構成するアルミナシリカとアルカリ刺激剤との重合反応がすすみ、成型体26の機械的強度の向上が促進される。
【実施例
【0029】
次に本実施形態の効果を確認した実施例について説明する。図4は各実施形態の効果を確認した実施例の条件を示すテーブルである。このテーブルにおいて、メタカリオン、シリカヒューム及び高炉スラグのいずれかの混合体は粉体材料21に該当する。そして、メタケイ酸カリウム水溶液に水酸化カリウムを溶解させたものがアルカリ刺激剤の水溶液22に該当する。
【0030】
(比較例1)
比較例1では、アルカリ刺激剤(メタケイ酸ナトリウム無水物、水酸化カリウム)を粉体のまま(水溶液22とはせずに)、微量の水分とともに粉体材料(メタカオリン)と混合した場合を示している。具体的には、各々の配合物の全体に占める混合割合を、メタカオリン58wt%、ケイ酸ナトリウム無水物28wt%、水酸化カリウム11wt%(以上が粉体)、及び、水3wt%として調製し混合物とした。
【0031】
得られた混合物を30mmφの型枠に入れ、成型圧力56MPaで10分間圧縮を行った。そして、型枠から混合物を脱型し、圧縮成型体を得た。さらに、気温25℃、相対湿度90%の条件で15日間養生を行った。養生後のジオポリマー成型体について、一軸圧縮強度を計測し6.7MPaを得た。
【0032】
(比較例2)
比較例2では、実質的にアルカリ刺激剤(メタケイ酸カリウム、水酸化カリウム)を、大量の水溶媒とともに粉体材料(メタカオリン)と混合しペースト状にした場合を示している。具体的には、各々の配合物の全体に占める混合割合を、メタカオリン31wt%、シリカヒューム16wt%、濃度30%のメタケイ酸カリウム水溶液12wt%、粉体の水酸化カリウム18wt%、水23wt%として調製し混合物とした。
【0033】
得られたペースト状の混合物を50mmφの型枠に入れ、気温25℃、相対湿度97%の条件で14日間養生を行った。養生後のジオポリマー成型体について、一軸圧縮強度を計測し29MPaを得た。このように、混合物をペースト状にしてからジオポリマー成型体とすることにより、比較例1よりも機械的強度を向上させることができる。しかし、ペースト状態から成型された固化体は、相当量の水が包含される事態が不可避であるため、放射能による水素発生量の増大が避けられない。
【0034】
(実施例1)
実施例1では、アルカリ刺激剤(メタケイ酸カリウム、水酸化カリウム)の水溶液22を、粉体材料21(メタカオリン、シリカヒューム)と混合し湿潤粉体25にした場合を示している。具体的には、各々の配合物の全体に占める混合割合を、メタカオリン45wt%、シリカヒューム24wt%、濃度30%のメタケイ酸カリウム水溶液17wt%、粉体の水酸化カリウム14wt%として調製し湿潤粉体25とした。
【0035】
なお粉体の水酸化カリウムは、準備されたメタケイ酸カリウム水溶液に予め溶解させた水溶液22にしている。得られた湿潤粉体25に対し、比較例2と共通の圧縮条件及び養生条件で処理を行った。養生後のジオポリマー成型体について、一軸圧縮強度を計測し48MPaを得た。このように、湿潤粉体25を圧縮して成型したジオポリマー成型体は、比較例1,2で成型されたものよりも、機械的強度の向上が認められる。
【0036】
(実施例2)
実施例2では、アルカリ刺激剤(メタケイ酸カリウム、水酸化カリウム)の水溶液22を、粉体材料21(メタカオリン、シリカヒューム、高炉スラグ)と混合し湿潤粉体25にした場合を示している。具体的には、各々の配合物の全体に占める混合割合を、メタカオリン31wt%、シリカヒューム13wt%、高炉スラグ31wt%、濃度30%のメタケイ酸カリウム水溶液19wt%、粉体の水酸化カリウム6.0wt%として調製し湿潤粉体25とした。
【0037】
なお粉体の水酸化カリウムは、準備されたメタケイ酸カリウム水溶液に予め溶解させた水溶液22にしている。得られた湿潤粉体25に対し、比較例2と共通の圧縮条件及び養生条件で処理を行った。養生後のジオポリマー成型体について、一軸圧縮強度を計測し28MPaを得た。このように、湿潤粉体25を圧縮して成型したジオポリマー成型体は、比較例1で成型されたものよりも、機械的強度の向上が認められる。
【0038】
さらに実施例1,2は、比較例2と対比して、粉体材料21等をペースト化させずに混合するため、この粉体材料21等の混合部15への付着状況を改善し、装置メンテナンスの頻度を低減させ、製造効率を高めることが可能である。さらに実施例1,2は、比較例2と対比して、湿潤粉体25から成型された固化体は、包含される水が少量であるため、放射能による水素発生量を抑制できる。さらに実施例1,2は、比較例1,2と対比して、吸湿性が高く潮解し易いアルカリ刺激剤を水溶液22で保存しておくことができるので、取り扱いが容易となり保安管理上の負担軽減となる。
【0039】
以上述べた少なくともひとつの実施形態のジオポリマー成型体の製造方法によれば、アルカリ刺激剤の水溶液と粉体材料とを混合した湿潤粉体を圧縮することにより、水分の含有量が少なくさらに機械的強度が高いジオポリマー成型体を得ることが可能となる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
10(10A,10B)…ジオポリマー成型体の製造装置(製造装置)、11…第1供給部、12…第2供給部、13…第3供給部、15…混合部、16…圧縮成型部、17…養生部、18…型枠、21…粉体材料、22…アルカリ刺激剤の水溶液、23…放射性廃棄物、25…湿潤粉体、26…成型体。
図1
図2
図3
図4