(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】パイライト処理装置及びパイライト処理方法
(51)【国際特許分類】
B02C 23/00 20060101AFI20240513BHJP
B02C 15/04 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
B02C23/00 D
B02C15/04
(21)【出願番号】P 2020115745
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】有地 大貴
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大記
(72)【発明者】
【氏名】竹野 豊
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 淳
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-025027(JP,A)
【文献】特開2001-225016(JP,A)
【文献】特開2006-150254(JP,A)
【文献】特開2003-245572(JP,A)
【文献】特開2000-005615(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0087548(KR,A)
【文献】特開2003-071415(JP,A)
【文献】特開2004-261733(JP,A)
【文献】実開昭48-54761(JP,U)
【文献】特開平11-347435(JP,A)
【文献】特開2009-119317(JP,A)
【文献】特開2001-29832(JP,A)
【文献】特開平6-32403(JP,A)
【文献】特開2002-370045(JP,A)
【文献】実開平2-12447(JP,U)
【文献】特開昭62-132557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 23/00
B02C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕機から導入されたパイライトを貯留する貯留空間を内部に区画するパイライトホッパと、
前記貯留空間と前記パイライトホッパの外部とを連通するノズル挿通空間と、
前記パイライトホッパの外部から前記ノズル挿通空間に抜取り可能に挿入される吸引ノズルと、を備え、
前記吸引ノズルは、前記ノズル挿通空間に挿入されたノズル挿入状態で、前記貯留空間に貯留されたパイライトを吸引して前記パイライトホッパの外部へ送出する
ことを特徴とするパイライト処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパイライト処理装置であって、
前記パイライトホッパに固定され、直線状に延びる筒状領域を有し、前記筒状領域の内側に前記ノズル挿通空間を区画するノズル挿入部を備えた
ことを特徴とするパイライト処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のパイライト処理装置であって、
前記ノズル挿通空間を開閉可能な開閉バルブを備え、
前記開閉バルブは、開状態で前記吸引ノズルの挿通を許容する
ことを特徴とするパイライト処理装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のパイライト処理装置であって、
前記吸引ノズルは、前記ノズル挿入状態で前記貯留空間に開口する複数の吸引口を有する
ことを特徴とするパイライト処理装置。
【請求項5】
前記貯留空間を前記粉砕機に対して閉止可能に開放するホッパ上部ゲートを備えた
ことを特徴とするパイライト処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパイライト処理装置であって、
前記ホッパ上部ゲートの開閉を検知するゲート開閉検知手段と、
前記パイライトホッパに設けられ、前記貯留空間を前記パイライトホッパの外部へ開放する点検開口と、
前記点検開口を開放可能に閉止する点検扉と、
前記点検扉を開移動不能なロック状態と開移動可能なロック解除状態とに設定する扉ロック手段と、
前記扉ロック手段の状態を検知する扉ロック検知手段と、
前記ホッパ上部ゲートの開放を前記ゲート開閉検知手段が検知している状態で、前記ロック解除状態であると前記扉ロック検知手段が検知した場合、所定の報知を行う報知手段と、を備えた
ことを特徴とするパイライト処理装置。
【請求項7】
粉砕機から導入されたパイライトをパイライトホッパの貯留空間に貯留するパイライト貯留工程と、
前記パイライト貯留工程の途中又は終了後に、前記貯留空間と前記パイライトホッパの外部とを連通するノズル挿通空間に、前記パイライトホッパの外部から吸引ノズルを挿入するノズル挿入工程と、
前記パイライト貯留工程で貯留したパイライトを、前記吸引ノズルによって吸引して前記パイライトホッパの外部へ送出する吸引工程と、を備えた
ことを特徴とするパイライト処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載のパイライト処理方法であって、
前記ノズル挿通空間を開閉可能であり、開状態で前記吸引ノズルの挿通を許容する開閉バルブを、前記パイライト貯留工程よりも前に閉止するバルブ閉止工程と、
前記開閉バルブを、前記ノズル挿入工程よりも前に開放するバルブ開放工程と、を備えた
ことを特徴とするパイライト処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載のパイライト処理方法であって、
前記貯留空間を前記粉砕機に対して閉止可能に開放するホッパ上部ゲートを、前記パイライト貯留工程よりも前に開放するゲート開放工程と、
前記ホッパ上部ゲートを、前記バルブ開放工程よりも前に閉止するゲート閉止工程と、を備えた
ことを特徴とするパイライト処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載のパイライト処理方法であって、
前記貯留空間を大気に開放するエアベント弁を、前記パイライト貯留工程よりも前に閉止するエアベント弁閉止工程と、
前記エアベント弁を、前記ゲート閉止工程よりも後であって前記バルブ開放工程よりも前に開放するエアベント弁開放工程と、を備えた
ことを特徴とするパイライト処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイライト処理装置及びパイライト処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚きボイラでは、竪型ミルによって原炭を粉砕して微粉炭を生成し、得られた微粉炭を燃料として用いる。原炭には礫や木片や金属片などの異物(パイライト、スピレージ)が混在しており、竪型ミルにて微粉炭を生成する際にパイライトを排除している。
【0003】
原炭から排除したスピレージを処理するため、特許文献1には、竪型ミルとホッパとをスピレージ排出管で連結したスピレージ処理装置が開示されている。原炭から排除したスピレージは、堅型ミルからスピレージ排出管を介してホッパ内のスピレージ搬出用ボックスに送られて溜まる。スピレージ搬出用ボックスは、上方が開口した箱型形状をなし、下部に4つの車輪が装着されて走行可能であり、ホッパの搬出扉を開放することで搬出開口からホッパの外方に搬出することができる。スピレージ搬出用ボックス内に所定量のスピレージが溜まると、作業者はホッパ内のスピレージ搬出用ボックスを空のスピレージ搬出用ボックスに交換する。
【0004】
また、特許文献2には、ホッパのパイライト排出口下端に、排出弁を介してジェットポンプを接続し、ジェットポンプの吸込側に海水ポンプと開閉弁を備えた配管を接続し、ジェットポンプの吐出側に、ジェット水によりパイライトを灰捨場等の処理場へ圧送するための配管を接続したミルパイライト搬送処理装置が開示されている。ホッパの下部に溜ったパイライトを排出する際には、排出弁と開閉弁を開いた状態で、海水ポンプを駆動する。海水ポンプの駆動により、海水がジェットポンプへ導入され、ジェット水として排出され、ホッパ内下部のパイライトは、エジェクタ効果によりジェットポンプ内に導入され、ジェット水と共に灰捨場等の処理場へ圧送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-245572号公報
【文献】特開2006-150254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置では、ホッパ内にスピレージ搬出用ボックスを交換可能に設けるという二重構造であり、使用中のスピレージ搬出用ボックスの他に交換用のスピレージ搬出用ボックスを常備する必要があるため、設備負担が増大する。また、搬出したスピレージ搬出用ボックスからスピレージを排出しなければならず、煩雑な作業を要する可能性がある。
【0007】
一方、特許文献2の装置では、作業負荷の軽減(プラント運用の簡略化)が可能であるが、ポンプ及び配管を設けなければならず、設備負担が増大する。
【0008】
そこで本発明は、設備負担の増大を抑制するとともに、粉砕機から導入したパイライトの処理作業の負荷を軽減することが可能なパイライト処理装置及びパイライト処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明のパイライト処理装置は、パイライトホッパとノズル挿通空間と吸引ノズルとを備える。パイライトホッパは、粉砕機から導入されたパイライトを貯留する貯留空間を内部に区画する。ノズル挿通空間は、貯留空間とパイライトホッパの外部とを連通する。吸引ノズルは、パイライトホッパの外部からノズル挿通空間に抜取り可能に挿入される。吸引ノズルは、ノズル挿通空間に挿入されたノズル挿入状態で、貯留空間に貯留されたパイライトを吸引してパイライトホッパの外部へ送出する。
【0010】
また、本発明のパイライト処理方法は、パイライト貯留工程とノズル挿入工程と吸引工程とを備える。パイライト貯留工程は、粉砕機から導入されたパイライトをパイライトホッパの貯留空間に貯留する工程である。ノズル挿入工程は、パイライト貯留工程の途中又は終了後に、貯留空間とパイライトホッパの外部とを連通するノズル挿通空間に、パイライトホッパの外部から吸引ノズルを挿入する工程である。吸引工程は、パイライト貯留工程で貯留したパイライトを、吸引ノズルによって吸引してパイライトホッパの外部へ送出する工程である。
【0011】
上記装置及び方法では、パイライトホッパの貯留空間とパイライトホッパの外部とを連通するノズル挿通空間を設け、パイライトホッパの外部からノズル挿通空間に吸引ノズルを挿入し、貯留空間に貯留されたパイライトを吸引ノズルによって吸引してパイライトホッパの外部へ送出する。このため、パイライトを送出するための配管やポンプを付設する必要がなく、設備負担の増大を抑制することができる。また、処理の開始時に吸引ノズルを挿入し、終了時に抜取ればよいので、作業負荷を軽減することができる。
【0012】
パイライト処理装置は、パイライトホッパに固定され、直線状に延びる筒状領域を有し、筒状領域の内側にノズル挿通空間を区画するノズル挿入部を備えてもよい。
【0013】
上記装置では、ノズル挿入状態でノズル挿入部の筒状領域の内周面が吸引ノズルの外周面と対向する。このため、吸引ノズルをノズル挿入部に対して固定せずにパイライトを吸引した場合であっても、ノズル挿入状態で筒状領域の内周面を吸引ノズルの外周面に近接又は接触させることにより、軸方向(吸引ノズルの挿入方向)と交叉する方向への吸引ノズルの移動(振動を含む)をノズル挿入部によって抑制することができ、パイライトの吸引を安定して行うことができる。
【0014】
パイライト処理装置は、ノズル挿通空間を開閉可能な開閉バルブを備えてもよい。開閉バルブは、開状態で吸引ノズルの挿通を許容する。
【0015】
また、パイライト処理方法は、バルブ閉止工程とバルブ開放工程とを備えてもよい。バルブ閉止工程は、ノズル挿通空間を開閉可能であり、開状態で吸引ノズルの挿通を許容する開閉バルブを、パイライト貯留工程よりも前に閉止する工程である。バルブ開放工程は、開閉バルブを、ノズル挿入工程よりも前に開放する工程である。
【0016】
上記装置及び方法では、開閉バルブによりノズル挿通空間を閉止した状態で貯留空間にパイライトを貯留することができる。
【0017】
パイライト処理装置の吸引ノズルは、ノズル挿入状態で貯留空間に開口する複数の吸引口を有してもよい。複数の吸引口を設けているので、パイライトを効率良く吸収することができる。
【0018】
パイライト処理装置は、貯留空間を粉砕機に対して閉止可能に開放するホッパ上部ゲートを備えてもよい。
【0019】
また、パイライト処理方法は、ゲート開放工程とゲート閉止工程とを備えてもよい。ゲート開放工程は、貯留空間を粉砕機に対して閉止可能に開放するホッパ上部ゲートを、パイライト貯留工程よりも前に開放する工程である。ゲート閉止工程は、ホッパ上部ゲートを、バルブ開放工程よりも前に閉止する工程である。
【0020】
上記装置及び方法では、ホッパ上部ゲートの閉止により貯留空間が粉砕機から遮断され、粉砕機側の高温の空気(熱風)は貯留空間へ流入しない。このため、作業者は、貯留空間を粉砕機から遮断し、貯留空間への熱風の流入を阻止した状態で、ノズル挿通空間を開放して吸引ノズルを挿入することができる。
【0021】
パイライト処理装置は、ゲート開閉検知手段と点検開口と点検扉と扉ロック手段と扉ロック検知手段と報知手段とを備えてもよい。ゲート開閉検知手段は、ホッパ上部ゲートの開閉を検知する。点検開口は、パイライトホッパに設けられ、貯留空間をパイライトホッパの外部へ開放する。点検扉は、点検開口を開放可能に閉止する。扉ロック手段は、点検扉を開移動不能なロック状態と開移動可能なロック解除状態とに設定する。扉ロック検知手段は、扉ロック手段の状態を検知する。報知手段は、ホッパ上部ゲートの開放をゲート開閉検知手段が検知している状態で、ロック解除状態であると扉ロック検知手段が検知した場合、所定の報知を行う。
【0022】
上記装置では、作業者がホッパ上部ゲートを閉止せずに扉ロック手段をロック状態からロック解除状態へ変更すると、ホッパ上部ゲートの開放をゲート開閉検知手段が検知している状態で、ロック解除状態であると扉ロック検知手段が検知するので、報知手段によって所定の報知が行われる。このため、作業者はホッパ上部ゲートが開放されていることに容易に気付くことができ、ホッパ上部ゲートが開放された状態での点検扉の開放を未然に防止することができる。
【0023】
パイライト処理方法は、エアベント弁閉止工程とエアベント弁開放工程とを備えてもよい。エアベント閉止工程は、貯留空間を大気に開放するエアベント弁を、パイライト貯留工程よりも前に閉止する工程である。エアベント弁開放工程は、エアベント弁を、ゲート閉止工程よりも後であってバルブ開放工程よりも前に開放する工程である。
【0024】
上記方法では、ホッパ上部ゲートを閉止し、エアベント弁を開放した後、開閉バルブを開放するので、ホッパ上部ゲートを閉止した状態で貯留空間が高圧である場合であっても、開閉バルブの開放時の貯留空間の内圧を大気圧又はその近傍まで降下させることができ、開閉バルブの開放時のノズル挿通空間からの空気の噴出を防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、設備負担の増大を抑制するとともに、粉砕機から導入されたパイライトの処理作業の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粉砕機及びパイライト処理装置の概略を模式的に示した構成図である。
【
図2】パイライトホッパの下部を断面で示した側面図である。
【
図3】ノズル挿入部及びパイライト吸込弁に吸引ノズルを挿入したノズル挿入状態の側断面図である。
【
図4】パイライト吸込弁及び吸引ノズルをノズル挿入部から取外した分解状態の側断面図である。
【
図5】パイライト吸込弁の開状態の平断面図である。
【
図6】パイライト吸込弁の閉状態の平断面図である。
【
図8】点検扉及び開閉ハンドルが閉状態で、ロックピンを差込んだ図である。
【
図9】点検扉及び開閉ハンドルが閉状態で、ロックピンを取外した図である。
【
図10】点検扉が閉状態でロックピンを取外し、開閉ハンドルを開状態とした図である。
【
図11】点検扉の監視システムのブロック構成図である。
【
図12】パイライトの吸引作業のフローチャートである。
【
図13】点検扉を開放する作業のフローチャートである。
【
図14】点検扉を閉止する作業のフローチャートである。
【
図15】警報装置が実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態に係るパイライト処理装置1について、
図1を参照して説明する。パイライト処理装置1は、石炭燃料やバイオマス燃料等の炭素含有の固体燃料を微粉状の微粉燃料に粉砕する粉砕機2に接続される。粉砕機2は、石炭燃料のみを粉砕する形式、再生可能な生物由来の有機性資源であるバイオマス燃料のみを粉砕する形式、或いは石炭燃料とともにバイオマス燃料を粉砕する形式の何れであってもよい。
【0028】
粉砕機2は、例えば加圧式の竪型ミルであり、石炭燃料やバイオマス燃料などの固形物を粉砕する。粉砕機2は、竪型円筒中形状のハウジング3の内部に、上下方向に延びる回転軸を中心として回転する粉砕テーブル4と、粉砕テーブル4の上面に対向して設けられた複数の粉砕ローラ5とを備える。石炭燃料やバイオマス燃料は、粉砕テーブル4と粉砕ローラ5との間で粉砕される。ハウジング3の下部には、搬送用ガス(例えば空気)を供給する一次空気ダクト6が接続される。一次空気ダクト6から供給された搬送用ガスは、粉砕テーブル4とハウジング3の側面部との隙間から吹出し、粉砕された固体燃料を巻き上げる。巻き上げられた固体燃料は、ロータリセパレータ(図示省略)を通り、微粉の粒径サイズで分級された後に、ハウジング3の天井部に接続された微粉燃料供給管(図示省略)を通り、ボイラ(図示省略)へ導入される。粉砕機2の通常運転時には、粉砕機2で固体燃料を粉砕し、粉砕した固体燃料(微粉燃料)をボイラへ導入する。
【0029】
粉砕テーブル4の鉛直下方には、ハウジング3の底面部7に堆積した異物(パイライト、スピレージ)を粉砕機2の外部に排出するスクレーパ8が設けられている。スクレーパ8は、粉砕テーブル4の一部に固定されて、粉砕テーブル4と同軸に回転する。スクレーパ8の先端には、摺動部(図示省略)が設けられている。摺動部は、下端がハウジング3の底面部7の上面に当接するように配置され、底面部7の上面を摺動する。
【0030】
ハウジング3の底面部7には、摺動部の回転軌道上に位置するように排出開口9が形成されている。排出開口9には、管状の排出シュート10の上流端が接続され、排出開口9とハウジング3の外部に配置されるパイライトホッパ11の導入口12とは、排出シュート10を介して連通し、排出シュート10は、排出開口9から導入口12に向かって斜め下方に延びる。排出シュート10とパイライトホッパ11とは、本実施形態のパイライト処理装置1を構成し、スクレーパ8によって排出開口9へ導かれたパイライトは、排出シュート10を介して導入口12からパイライトホッパ11の貯留空間13に導入される。
【0031】
パイライトホッパ11は、パイライトを一時的に貯留する貯留空間13を内部に有する構造体である。
図1の例のパイライトホッパ11は、貯留空間13の上方を区画する円形の天井部14と、天井部14の外周端部から下方に延びて貯留空間13の側方を区画する側壁部15と、側壁部15の下端から下方に延びて貯留空間13の下方を区画する傾斜面を含む逆円錐台形状の底部16とを一体的に有する。側壁部15には導入口12が配設され、導入口12に排出シュート10の下流端が接続される。底部16の最下位置にはホッパ下部ゲート17が設けられ、ホッパ下部ゲート17には排出配管(図示省略)が接続される。ホッパ下部ゲート17は、通常時は閉止され、例えば貯留空間13を洗浄(水洗)する際に排水のために開放される。
【0032】
排出シュート10には、内部通路を開閉するホッパ上部ゲート18が設けられている。ホッパ上部ゲート18は、パイライトホッパ11の貯留空間13を粉砕機2に対して閉止可能に開放する。ホッパ上部ゲート18には、ホッパ上部ゲート18の開閉を検知するホッパ上部ゲートセンサ(ゲート開閉検知手段)19が設けられている(
図11参照)。例えばホッパ上部ゲート18をエアシリンダによって開閉する場合、エアシリンダの接点スイッチをホッパ上部ゲートセンサ19として用いてもよい。ホッパ上部ゲート18を配置する場所は排出シュート10に限定されず、例えば粉砕機2の排出開口9やパイライトホッパ11の導入口12などであってもよい。
【0033】
パイライトホッパ11には、エアベント弁20と大気吸入弁21が設けられる。エアベント弁20は、操作によって開閉し、開状態で貯留空間13を大気に開放する。大気吸入弁21は、パイライトホッパ11の外部から貯留空間13への空気の流入を許容し、貯留空間13から外部への空気の流出を禁止する逆止弁である。貯留空間13の内圧が大気よりも低い場合、エアベント弁20が閉状態であっても、大気吸入弁21によって貯留空間13は大気圧に維持される。一方、貯留空間13の内圧が大気よりも高い場合、エアベント弁20の開放によって貯留空間13が降圧する。
図1の例ではエアベント弁20を天井部14に、大気吸入弁21を側壁部15にそれぞれ設けているが、エアベント弁20及び大気吸入弁21を設ける場所はこれに限定されない。
【0034】
パイライトホッパ11の側壁部15には、作業者が入出可能な点検開口22と、点検開口22を開閉可能に閉止する点検扉23が設けられている。点検扉23を開放することにより、点検開口22が貯留空間13をパイライトホッパ11の外部へ開放する。
【0035】
図2~
図4に示すように、パイライトホッパ11の下部には、ノズルスリーブ24及びパイライト吸込弁25が固定される。ノズルスリーブ24は、両端が開口する円筒形状であり、略水平に延びる。ノズルスリーブ24の一端は、底部16に固定され、ノズルスリーブ24の内径部は、貯留空間13と連通する。ノズルスリーブ24の他端には、鍔状のスリーブフランジ部26が固定される。パイライト吸込弁25の一端には、一端側フランジ部27が設けられ、一端側フランジ部27をスリーブフランジ部26に締結固定することにより、パイライト吸込弁25がノズルスリーブ24に固定される。
【0036】
図2~
図6に示すように、パイライト吸込弁25は、操作レバー28と弁体29とを有し、操作レバー28を回転操作することにより、球体状の弁体29が回転軸30を中心として略90°の範囲で回転し(
図5及び
図6参照)、パイライト吸込弁25の内部通路が開閉される。開状態のパイライト吸込弁25の内部通路とノズルスリーブ24の内径部とは、略水平に直線状に貫通するノズル挿通空間31を形成する。ノズル挿通空間31は、貯留空間13とパイライトホッパ11の外部とを連通する。ノズルスリーブ24とパイライト吸込弁25とは、直線状に延びる筒状領域を有し、筒状領域の内側にノズル挿通空間31を区画するノズル挿入部32を構成する。
【0037】
図2~
図4に示すように、ノズル挿通空間31には、パイライトホッパ11の外部から吸引ノズル33が抜取り可能に挿入される。吸引ノズル33は、両端が開口する円筒形状であり、ノズル挿通空間31の内径は、吸引ノズル33の外径よりも僅かに大きく設定される。パイライト吸込弁25は、ノズル挿通空間31を開閉可能な開閉バルブを構成し、開状態で吸引ノズル33の挿通を許容する。
【0038】
ノズルスリーブ24の中間部の外周面は、ノズルサポート38を介してパイライトホッパ11の底部16に固定される。ノズルサポート38は、ノズルスリーブ24、パイライト吸込弁25及び吸引ノズル33を安定して支持することが可能な構造及び材料によって構成される。
【0039】
吸引ノズル33をノズル挿通空間31に挿入したノズル挿入状態で貯留空間13に位置する吸引ノズル33の一端側には、貯留空間13に開口する複数(本実施形態では3箇所)の吸引口34が設けられている。吸引口34の1つは、斜め上方を向いて開口する吸引ノズル33の一端開口であり、他の2つの吸引口34は、上方を向いて開口する矩形状の孔である(
図7参照)。
【0040】
吸引ノズル33の他端には、鍔状のノズルフランジ部35が設けられ、パイライト吸込弁25の他端には、他端側フランジ部36が設けられる。ノズルフランジ部35を他端側フランジ部36に突き当てることにより、ノズル挿通空間31に対する吸引ノズル33の挿入位置(挿入限界位置)が規定される。なお、本実施形態ではノズル挿入状態の吸引ノズル33をノズル挿入部32に対して固定しないが、ボルト等によって取外し可能に固定してもよい。
【0041】
吸引ノズル33のノズルフランジ部35には、真空清掃車40(
図1参照)から延びる吸引ダクト37が接続される。吸引ダクト37は、例えば可撓性を有するホース等である。真空清掃車40が装備する真空ポンプ(図示省略)を駆動することにより、貯留空間13に貯留されたパイライトは、ノズル挿入状態の吸引ノズル33によって吸引され、吸引ダクト37を介して真空清掃車40へ送出される。吸引ノズル33に複数の吸引口34を設けているので、パイライトを効率良く吸収することができる。
【0042】
このように、本実施形態のパイライト処理装置1では、パイライトホッパ11に一時的に貯留されたパイライトを、注水による湿式ではなく乾式で取出して排出する。真空清掃車40は、パイライトホッパ11から取出した乾燥状態のパイライトを、例えば貯炭場へ運んで排出する。
【0043】
図8~
図10に示すように、点検扉23は、側壁部15にヒンジ41を介して開閉移動可能に支持されている。点検扉23には、開閉ハンドル42が設けられ、点検扉23を閉じ、開閉ハンドル42を起立させて閉方向へ回転させることにより、点検扉23の閉状態が保持される(
図8参照)。点検扉23を開く際には、開閉ハンドル42を開方向へ回転させて側壁部15に向けて倒す(
図10参照)。また、点検扉23と側壁部15の間には、閉状態の点検扉23の開移動を阻止するロックピン43が着脱可能に装着される。図示の例では、点検扉23と側壁部15とに、ピン挿通プレート44,45をそれぞれ固定し、ピン挿通プレート44,45にピン挿通孔(図示省略)を形成し、ピン挿通孔にロックピン43を挿通する(差込む)ことにより、点検扉23の開移動が阻止される。
【0044】
ロックピン43の差込み位置には、ロックピン43の差込み及び取外しに応じて動作するロックピンリミットスイッチ46が設けられている。このように、ロックピン43は、点検扉23を開移動不能なロック状態と開移動可能なロック解除状態とに設定する扉ロック手段を構成し、ロックピンリミットスイッチ46は、ロックピン43の状態を検知する扉ロック検知手段を構成する。
【0045】
図11に示すように、本実施形態のパイライト処理装置1には警報装置(報知手段)47が設けられている。警報装置47は、ホッパ上部ゲートセンサ19からの信号入力とロックピンリミットスイッチ46からの検出入力とを逐次受付け、ホッパ上部ゲート18の開放をホッパ上部ゲートセンサ19が検知している状態で、ロック解除状態であるとロックピンリミットスイッチ46が検知した場合、所定の報知(例えば、警告音の出力や警告ランプの点灯等)を行う。
【0046】
次に、パイライトの処理方法について、
図12を参照して説明する。
粉砕機2の運転により、パイライトが排出シュート10からパイライトホッパ11に導入され、貯留空間13に堆積して貯留される(S1:パイライト貯留工程)。パイライト貯留工程では、ホッパ上部ゲート18は開状態に、エアベント弁20は閉状態に、パイライト吸込弁25は閉状態にそれぞれ設定されている。
【0047】
貯留空間13に貯留されたパイライトが所定量に達すると、パイライト排出作業を実行する。パイライト排出作業では、真空清掃車40を所定の場所に停車し(S2:真空清掃車準備工程)、手動操作によってホッパ上部ゲート18を閉止する(S3:ゲート閉止工程)。ホッパ上部ゲート18の閉止により、パイライトがパイライトホッパ11に導入されない状態となり、パイライト貯留工程が一時的に中断する。パイライト貯留工程が中断している間は、ホッパ上部ゲート18の上流側の排出シュート10内にパイライトが一時的に溜まる。なお、ホッパ上部ゲート18を閉止する前に、粉砕機2の運転を停止して、パイライト貯留工程を終了してもよい。
【0048】
ホッパ上部ゲート18を閉止した後、エアベント弁20を手動操作によって開放し(S4:エアベント弁開放工程)、パイライト吸込弁25を手動操作によって開放する(S5:バルブ開放工程)。
【0049】
パイライト吸込弁25を開放した後、ノズル挿通空間31にパイライトホッパ11の外部から吸引ノズル33を挿入して、吸引ノズル33に吸引ダクト37を接続する(S6:ノズル挿入工程、吸引ダクト接続工程)。吸引ノズル33の挿入と吸引ダクト37の接続とは、何れを先に行ってもよい。また、吸引ダクト37に吸引ノズル33を予め接続しておいてもよい。
【0050】
最後に、真空清掃車40の真空ポンプを駆動して、貯留空間13からパイライトを吸引して除去する(S7:パイライト吸引工程)。
【0051】
パイライトの排出(除去)が終了すると、真空ポンプを停止し、吸引ノズル33をノズル挿通空間31から抜取り、パイライト吸込弁25を手動操作によって閉止し(バルブ閉止工程)、エアベント弁20を手動操作によって閉止し(エアベント弁閉止工程)、手動操作によってホッパ上部ゲート18を開放する(ゲート開放工程)。ホッパ上部ゲート18の開放により、中断したパイライト貯留工程が再開され、パイライトが貯留空間13へ導入される。
【0052】
次に、点検作業等のために点検扉23を開閉してパイライトホッパ11の貯留空間13へ立ち入る場合の作業について、
図13及び
図14を参照して説明する。
【0053】
閉状態の点検扉23を開放する場合、
図13に示すように、開状態のホッパ上部ゲート18を手動操作によって閉止する(S11)。続いて、閉状態のエアベント弁20を手動操作によって開放し(S12)、ロックピン43を取外した後(S13)、点検扉23を開放する(S14)。ロックピン43の取外しに応じてロックピンリミットスイッチ46が動作する。
【0054】
点検作業等が終了して開状態の点検扉23を閉止する場合、
図14に示すように、点検扉23を閉止し(S21)、ロックピン43を差込む(S22)。ロックピン43の差込みに応じてロックピンリミットスイッチ46が動作する。続いて、開状態のエアベント弁20を手動操作によって閉止し(S23)、閉状態のホッパ上部ゲート18を手動操作によって開放する(S24)。
【0055】
警報装置47(
図11参照)は、
図15に示す監視処理を所定時間毎に繰り返して実行する。監視処理では、ロックピンリミットスイッチ46からの信号に基づいて、ロックピン43が差込まれているか否か(ロックピン機能中か否か)を判定し(S31)、ロックピン43が差込まれている場合(S31:YES)には、本処理を終了する。ロックピン43が差込まれてない場合(S31:NO)には、ホッパ上部ゲート18が開状態であるか否かを判定し(S32)、ホッパ上部ゲート18が閉状態である場合(S32:NO)には、本処理を終了する。ホッパ上部ゲート18が開状態である場合(S32:YES)には、所定の報知(警報の出力)を実行する(S33)。このため、作業者がホッパ上部ゲート18を閉止せずにロックピン43を取外すと、警報装置47から警報が出力される。
【0056】
本実施形態によれば、パイライトホッパ11の下部に、貯留空間13とパイライトホッパ11の外部とを連通するノズル挿通空間31を設け、パイライトホッパ11の外部からノズル挿通空間31に吸引ノズル33を挿入し、貯留空間13に貯留されたパイライトを吸引ノズル33によって吸引してパイライトホッパ11の外部へ送出する。このため、パイライトを送出するための配管やポンプを付設する必要がなく、設備負担の増大を抑制することができる。また、処理の開始時に吸引ノズル33を挿入し、終了時に抜取ればよいので、作業負荷を軽減することができる。
【0057】
ノズル挿入状態では、ノズル挿入部32の筒状領域の内周面(ノズルスリーブ24の内周面を含む)が吸引ノズル33の外周面に近接又は接触する。このため、吸引ノズル33をノズル挿入部32に対して固定せずにパイライトを吸引した場合であっても、軸方向(吸引ノズル33の挿入方向)と交叉する方向への吸引ノズル33の移動(振動を含む)をノズル挿入部32によって抑制することができ、パイライトの吸引を安定して行うことができる。
【0058】
貯留空間13にパイライトを導入している間は、パイライト吸込弁25を閉状態とするので、ノズル挿通空間31を閉止した状態で貯留空間13にパイライトを貯留することができる。
【0059】
ホッパ上部ゲート18を閉止することにより、貯留空間13が粉砕機2から遮断され、粉砕機2側の高温の空気(熱風)は貯留空間13へ流入しない。このため、作業者は、貯留空間13を粉砕機2から遮断し、貯留空間13への熱風の流入を阻止した状態で、ノズル挿通空間31を開放して吸引ノズル33を挿入することができる。
【0060】
ホッパ上部ゲート18を閉止し、エアベント弁20を開放した後、パイライト吸込弁25を開放するので、ホッパ上部ゲート18を閉止した状態で貯留空間13が高圧である場合であっても、パイライト吸込弁25の開放時の貯留空間13の内圧を大気圧又はその近傍まで降下させることができ、パイライト吸込弁25の開放時のノズル挿通空間31からの空気の噴出を防止することができる。
【0061】
また、作業者がホッパ上部ゲート18を閉止せずにロックピン43を取外すと、警報装置47から警報が出力されるので、作業者はホッパ上部ゲート18が開放されていることに容易に気付くことができ、ホッパ上部ゲート18が開放された状態での点検扉23の開放を未然に防止することができる。
【0062】
なお、本発明は、一例として説明した上述の実施形態及び変形例に限定されることはなく、上述の実施形態等以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:パイライト処理装置
2:粉砕機
3:ハウジング
4:粉砕テーブル
5:粉砕ローラ
6:一次空気ダクト
7:ハウジングの底面部
8:スクレーパ
9:排出開口
10:排出シュート
11:パイライトホッパ
12:導入口
13:貯留空間
14:天井部
15:側壁部
16:底部
17:ホッパ下部ゲート
18:ホッパ上部ゲート
19:ホッパ上部ゲートセンサ(ゲート開閉検知手段)
20:エアベント弁
21:大気吸入弁
22:点検開口
23:点検扉
24:ノズルスリーブ
25:パイライト吸込弁(開閉バルブ)
26:スリーブフランジ部
27:一端側フランジ部
28:操作レバー
29:弁体
30:回転軸
31:ノズル挿通空間
32:ノズル挿入部
33:吸引ノズル
34:吸引口
35:ノズルフランジ部
36:他端側フランジ部
37:吸引ダクト
38:ノズルサポート
40:真空清掃車
41:ヒンジ
42:開閉ハンドル
43:ロックピン(扉ロック手段)
44,45:ピン挿通プレート
46:ロックピンリミットスイッチ(扉ロック検知手段)
47:警報装置(報知手段)