(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】移動補助装置および杭材の移動方法
(51)【国際特許分類】
E02D 13/00 20060101AFI20240513BHJP
B66C 1/62 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
B66C1/62 E
(21)【出願番号】P 2020119164
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】田中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】横飛 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】伊東 良祐
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085845(JP,A)
【文献】実開平01-165761(JP,U)
【文献】特開平07-292602(JP,A)
【文献】特開平01-178075(JP,A)
【文献】実開昭59-055587(JP,U)
【文献】特開平02-144310(JP,A)
【文献】登録実用新案第3075068(JP,U)
【文献】特開2004-010175(JP,A)
【文献】特開平06-032558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00
B66C 1/62
B66B 7/02
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭材の長手方向における端部を把持する把持部と、
走行体を有する本体部と、
前記本体部の左右方向における両側に取り付けられた一対のサイドユニットと、を備え、
一対の前記サイドユニットはそれぞれ、前記走行体よりも下側に位置する少なくとも1つのサイド走行体を有する、移動補助装置。
【請求項2】
一対の前記サイドユニットは、前記本体部に対して着脱可能である、請求項1に記載の移動補助装置。
【請求項3】
一対の前記サイドユニットがそれぞれ有するサイド走行体の数は2つであり、
前記サイドユニットの2つの前記サイド走行体は、前後方向に並べて配置されている、請求項1または2に記載の移動補助装置。
【請求項4】
一対の前記サイドユニットがそれぞれ有する前記サイド走行体同士の、前記左右方向における間隔が可変である、請求項1から3のいずれか1項に記載の移動補助装置。
【請求項5】
前記走行体と、一対の前記サイドユニットのうち少なくとも一方が有する前記サイド走行体と、の間の上下方向における間隔が可変である、請求項1から4のいずれか1項に記載の移動補助装置。
【請求項6】
一対の前記サイドユニットのうち少なくとも一方が有する前記サイド走行体の、前記本体部に対する姿勢が可変である、請求項1から5のいずれか1項に記載の移動補助装置。
【請求項7】
対象杭材を、前記対象杭材の下側に位置する下側杭材に対して移動させる杭材の移動方法であって、
前記下側杭材が上側に凸であるか下側に凸であるかを判定する判定工程と、
前記判定工程に基づき、前記下側杭材が上側に凸である場合は移動補助装置の本体部における左右方向の両側に一対のサイドユニットが装着された状態とし、前記下側杭材が下側に凸である場合は前記本体部に前記一対のサイドユニットが装着されていない状態とする着脱工程と、
前記移動補助装置の把持部により前記対象杭材の長手方向における端部を把持させる把持工程と、
前記本体部が有する走行体を前記下側杭材上で走行させながら前記対象杭材を移動させる移動工程と、を有
し、
前記一対のサイドユニットはそれぞれ、前記走行体よりも下側に位置する少なくとも1つのサイド走行体を有する、杭材の移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動補助装置および杭材の移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、杭材を吊り上げる際および横倒しにする際に用いられる移動補助装置が開示されている。この移動補助装置は、移動の対象となる杭材(以下、対象杭材という)の後端部に取り付けられる取付部と、対象杭材の下側に配置された杭材(以下、下側杭材という)の上を走行する車輪(走行体)と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
杭材が、長手方向から見て上側に凸の形状を有する場合、従来の構成では、走行体が下側杭材から脱落してしまい、スムーズに対象杭材を移動できない場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、走行体が下側杭材から脱落することを抑制可能な移動補助装置、または、対象杭材をスムーズに移動させることが可能な杭材の移動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る移動補助装置は、杭材の長手方向における端部を把持する把持部と、走行体を有する本体部と、前記本体部の左右方向における両側に取り付けられた一対のサイドユニットと、を備え、一対の前記サイドユニットはそれぞれ、前記走行体よりも下側に位置する少なくとも1つのサイド走行体を有する。
【0007】
上記態様によれば、下側杭材の凸部をサイド走行体同士の間に位置させることで、移動補助装置が下側杭材に対して左右方向にずれるように移動したとき、サイド走行体が下側杭材に対して左右方向における外側から当接する。したがって、移動補助装置が下側杭材から左右方向に脱落することを抑制可能となる。
【0008】
ここで、一対の前記サイドユニットは、前記本体部に対して着脱可能であってもよい。
【0009】
この場合、地面などに積み重ねられた杭材が上方に凸の姿勢である場合にはサイドユニットを本体部に装着し、杭材が下方に凸の姿勢であるなどサイドユニットが不要である場合にはサイドユニットを本体部から取り外して使用できる。すなわち、杭材の形状や姿勢に応じて、サイドユニットが本体部に装着された状態か否かを切り替えることが可能となる。
【0010】
また、一対の前記サイドユニットがそれぞれ有するサイド走行体の数は2つであり、前記サイドユニットの2つの前記サイド走行体は、前後方向に並べて配置されていてもよい。
【0011】
この場合、1つのサイドユニットにおいて、前後方向に離れた2点でサイド走行体が下側杭材に接することとなり、移動補助装置の下側杭材に対する姿勢がより安定する。
【0012】
また、一対の前記サイドユニットがそれぞれ有する前記サイド走行体同士の、前記左右方向における間隔が可変であってもよい。
あるいは、前記走行体と、一対の前記サイドユニットのうち少なくとも一方が有する前記サイド走行体と、の間の上下方向における間隔が可変であってもよい。
あるいは、一対の前記サイドユニットのうち少なくとも一方が有する前記サイド走行体の、前記本体部に対する姿勢が可変であってもよい。
【0013】
これらの場合、下側杭材の形状に合わせてサイド走行体の位置や姿勢を変化させ、よりスムーズにサイド走行体が下側杭材上を走行可能とすることができる。
【0014】
また、本発明の第2の態様に係る杭材の移動方法は、対象杭材を、前記対象杭材の下側に位置する下側杭材に対して移動させる杭材の移動方法であって、前記下側杭材が上側に凸であるか下側に凸であるかを判定する判定工程と、前記判定工程に基づき、前記下側杭材が上側に凸である場合は移動補助装置の本体部における左右方向の両側に一対のサイドユニットが装着された状態とし、前記下側杭材が下側に凸である場合は前記本体部に前記一対のサイドユニットが装着されていない状態とする着脱工程と、前記移動補助装置の把持部により前記対象杭材の長手方向における端部を把持させる把持工程と、前記本体部が有する走行体を前記下側杭材上で走行させながら前記対象杭材を移動させる移動工程と、を有する。
【0015】
上記態様の杭材の移動方法によれば、地面などに積み重ねられた杭材の姿勢が上側に凸であっても下側に凸であっても、走行体が下側杭材から脱落することを抑制し、対象杭材を下側杭材に対してスムーズに移動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、走行体が下側杭材から脱落することを抑制可能な移動補助装置、または、対象杭材をスムーズに移動させることが可能な杭材の移動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】サイドユニットが装着されていない状態の本実施形態の移動補助装置を前後方向から見た図である。
【
図2】ホルダーおよび
図1の移動補助装置を用いて対象杭材を移動させる様子を示す図である。
【
図5】
図2の移動補助装置が下側杭材上を前側に進行した状態を示す図である。
【
図6】サイドユニットが装着された状態の本実施形態の移動補助装置を前後方向から見た図である。
【
図7】ホルダーおよび
図6の移動補助装置を用いて対象杭材を移動させる様子を示す図である。
【
図8】
図7の移動補助装置が下側杭材上を前側に進行した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態の移動補助装置および杭材の移動方法について、図面に基づいて説明する。
まず、
図1を用いて、移動の対象となる杭材10について説明する。杭材10は、圧入施工などを行う施工現場の地面などに、上下方向Zに積み重ねられた状態で保管される。
図1の例では、圧入施工前にクレーンなどで吊り上げられる際に移動補助装置1により把持された杭材10Aと、杭材10Aの下側において上下方向Zに積み重ねられた杭材10B~10Dと、が表されている。なお、本明細書では、移動の対象となる杭材10を対象杭材10Aといい、対象杭材10Aの下側に位置して移動補助装置1が走行する対象となる杭材10を下側杭材10Bという。
【0019】
(方向定義)
本明細書では、下側杭材10Bの長手方向を「前後方向X」といい、上下方向Zおよび前後方向Xの双方に直交する方向を「左右方向Y」という。例えば、
図1は前後方向Xから見た図であり、
図2は左右方向Yから見た図である。各図において、+Z側を上側、-Z側を下側、+X側を前側、-X側を後側、+Y側を右側、-Y側を左側とする。
【0020】
各杭材10は、互いに同様の形状を有している。詳しくは、各杭材10は、底壁部11と、一対の側壁部12と、一対のフランジ部13と、を有している。
図1のように、前後方向Xから見て杭材10が下側に凸の姿勢で配置された場合について説明する。一対の側壁部12は、底壁部11の左右方向Yにおける両端部から上側に向けて延びている。各側壁部12は、上側に向かうに従って左右方向Yにおける外側に向かうように傾斜している。このため、側壁部12同士の左右方向Yにおける間隔は、上側に向かうに従って大きくなる。一対のフランジ部13は、各側壁部12の上端から、左右方向Yにおける外側に向けて延びている。
【0021】
一方のフランジ部13には第1継手部14が設けられ、他方のフランジ部13には第2継手部15が設けられている。第1継手部14はC字状である。第2継手部15は、C字状の第1継手部14の内側に嵌合可能な円柱状である。
各杭材10はそれぞれ、2つの部材が底壁部11において接続されることで構成されている。ただし、杭材10は1つの部材で構成されてもよい。また、杭材10の形状は適宜変更可能である。
【0022】
図2に示すように、移動補助装置1は、本体部20と、把持部30と、アーム40と、を備えている。本体部20の下部には、複数の走行体21が設けられている。走行体21は、下側杭材10B上を走行可能であれば、任意の態様を採用可能である。例えば走行体21は、
図2に示すような車輪であってもよいし、ボールローラであってもよい。
図1、
図2の例では、計4つの走行体21が、前後方向Xおよび左右方向Yに並べて配置されている。ただし、走行体21の数は適宜変更可能である。
【0023】
本体部20は、アーム40の回転軸41を回動可能に支持する回転支持部22を有している。アーム40は、回転軸41回りに回動可能に設けられている。アーム40のうち、回転軸41とは反対側の端部に、把持部30が配置されている。把持部30は、対象杭材10Aの後端部(
図1の形状の杭材10の場合、底壁部11の後端部)を把持可能に構成されている。
【0024】
図2~
図4を用いて、移動補助装置1の使用方法について説明する。複数の杭材10が積まれた状態から、最も上側に位置する杭材10(すなわち対象杭材10A)をクレーンなどで吊り上げる場合には、
図2に示すようなホルダー100を、移動補助装置1とともに用いることが好適である。
【0025】
ホルダー100は、
図2~
図4に示すように、一対の走行面101と、一対の側壁102と、一対の下側取付部103と、一対の上側取付部104と、を有する。走行面101は、移動補助装置1の走行体21が走行する部位である。側壁102は、走行面101の左右方向Yにおける外側の端部から上側に向けて延びている。一対の側壁102の間に移動補助装置1が配置されることで、移動補助装置1がホルダー100から左右方向Yに脱落することを抑制できる。
【0026】
下側取付部103および上側取付部104は、走行面101の前後方向Xにおける端部に配置されている。下側取付部103および上側取付部104により下側杭材10Bの後端部(
図1の形状の杭材10の場合、底壁部11の後端部)を挟むことで、ホルダー100が下側杭材10Bに取り付けられる。ホルダー100が下側杭材10Bに取り付けられた状態において、下側取付部103は下側杭材10Bの底壁部11の下側に位置し、上側取付部104は下側杭材10Bの底壁部11の上側に位置する(
図2参照)。
【0027】
積み重ねられた杭材10から、最上部の対象杭材10Aを移動させる際には、まず、ホルダー100を下側杭材10Bの後端部に取り付ける。次に、移動補助装置1を対象杭材10Aの後端部に取り付ける。これにより、
図2に示す状態とする。
【0028】
次に、対象杭材10Aの前端部を、クレーンなどで吊り上げる。これにより、対象杭材10Aは、移動補助装置1が取り付けられた部分を中心として下側杭材10Bに対して上側に回動するとともに、下側杭材10Bに対して前側に移動しようとする。このとき、把持部30およびアーム40が本体部20の回転支持部22回りに上側に回動する。これと同時に、移動補助装置1の走行体21がホルダー100の走行面101上を走行し、移動補助装置1がホルダー100に対して前側に移動する。移動補助装置1が所定量前側に移動すると、走行体21が走行面101から下側杭材10Bの底壁部11の上面に乗り上げる。
【0029】
対象杭材10Aの吊り上げが進行することに従って、移動補助装置1が下側杭材10B上を前側に進むとともに、回転支持部22を中心としてアーム40が上側に回動し、
図5に示す状態となる。
図5に示すように、対象杭材10Aが略鉛直な姿勢になった後、把持部30を対象杭材10Aから取り外す。これにより、対象杭材10Aの吊り上げ作業が完了する。このように、移動補助装置1を用いることで、杭材10同士が擦り付けられることによる杭材10の変形や破損等を抑制し、スムーズに吊り上げ作業を行うことができる。また、逆の手順を行うことで、吊り上げられた杭材10(対象杭材10A)を他の杭材10(下側杭材10B)上に積み上げたり、地面に載置したりすることも可能である。
【0030】
なお、ホルダー100を用いることは必須ではない。例えば、単なる金属製の板などの一端を対象杭材10Aの後端部と下側杭材10Bの後端部との間の隙間に挿入し、当該板などの他端を地面に置き、スロープを形成してもよい。スロープ上に移動補助装置1を載置することで、ホルダー100を用いた場合と同様に作業を行うことができる。
【0031】
ところで、杭材10は、圧入施工などの作業現場において積み重ねられて保管される場合が多いが、保管時の杭材10の姿勢は一定ではない。例えば
図1に示すように、最下部の杭材10Dの底壁部11が地面に接する状態で、各杭材10が積み重ねられる場合がある。この場合、各杭材10は、前後方向Xから見て、下側に凸の姿勢となる。あるいは、
図6に示すように、最下部の杭材10Dのフランジ部13が地面に接する状態で、各杭材10が積み重ねられる場合がある。この場合、各杭材10は、前後方向Xから見て、上側に凸の姿勢となる。
【0032】
図1のように、杭材10が下側に凸の姿勢で積み重ねられている場合には、移動補助装置1が一対の側壁部12の間に位置することとなり、移動補助装置1が下側杭材10Bから左右方向Yに脱落する可能性は低い。これに対して、
図6のように、杭材10が上側に凸の姿勢で積み重ねられている場合には、移動補助装置1が底壁部11から左右方向Yに脱落する可能性があり、対象杭材10Aをスムーズに移動させることが難しい。
【0033】
そこで本実施形態の移動補助装置1は、
図6に示すように、本体部20の左右方向Yにおける両側に一対のサイドユニット50を装着可能となっている。各サイドユニット50は、第1部材51と、第2部材52と、少なくとも1つのサイド走行体53と、を有している。なお、本実施形態のサイドユニット50は別体として構成された第1部材51および第2部材52を有するが、1つの部材によって第1部材51および第2部材52を置換してもよい。あるいは、第1部材51と第2部材52との間に他の接続部材を設けてもよい。
【0034】
図6の例では、前後方向Xから見て、第1部材51は略L字状に形成されている。詳しくは、第1部材51は、左右方向Yに延びる第1連結部51aと、上下方向Zに延びる取付部51bと、補強リブ51cと、を有している。第1連結部51aの左右方向Yにおける内側の端部と、取付部51bの下端部と、が接続されている。取付部51bには不図示の挿通孔が形成されており、当該挿通孔を通してボルトBが本体部20のネジ孔23に締め込まれることで、第1部材51(あるいはサイドユニット50)が本体部20に固定される。また、ボルトBを緩めることで、第1部材51(あるいはサイドユニット50)を本体部20から取り外すことができる。このように、サイドユニット50は、本体部20に対して着脱可能となっている。補強リブ51cは、第1連結部51aの上面から取付部51bの左右方向Yにおける外側を向く側面にかけて形成されており、第1部材51の強度を高めている。
【0035】
前後方向Xから見て、第2部材52は略L字状に形成されている。詳しくは、第2部材52は、左右方向Yに延びる第2連結部52aと、上下方向Zに延びる脚部52bと、脚部52bの下端部に設けられた支持部52cと、補強リブ52dと、を有している。第2連結部52aの左右方向Yにおける外側の端部と、脚部52bの上端部と、が接続されている。第1部材51の第1連結部51aに、第2部材52が連結される。補強リブ52dは、第2連結部52aの下面から脚部52bの左右方向Yにおける内側を向く側面にかけて形成されており、第2部材52の強度を高めている。
【0036】
サイド走行体53は、各サイドユニット50の下端部に位置する支持部52cにより、回転可能に支持されている。サイド走行体53は、走行体21よりも下側に位置する。
図6の例では、支持部52cが左右方向Yにおける外側に向かうに従って上側に向かうように傾斜しており、当該傾斜した支持部52cにサイド走行体53が支持されている。このため、サイド走行体53の回転中心軸Oも、左右方向Yにおける外側に向かうに従って下側に向かうように傾斜している。回転中心軸Oは、下側杭材10Bの側壁部12と略平行であるとよい。これにより、サイド走行体53が側壁部12に当接した際に、スムーズにサイド走行体53を回転させることができる。
【0037】
第2連結部52aが第1連結部51aに連結されることで、第1部材51と第2部材52とが固定される。連結の方法は特に限定されないが、例えば溶接であってもよいし、ネジ留めであってもよい。溶接の場合、第1連結部51aと第2連結部52aとを溶接する。ネジ留めの場合、第1連結部51aおよび第2連結部52aのうち、一方にネジ孔を形成し、他方には当該ネジ孔に対応する位置に貫通孔を形成し、貫通孔を通してネジ孔にボルトなどを締め込む。
【0038】
なお、この貫通孔を長孔とすることで、第2部材52の第1部材51に対する位置を可変としてもよい。長孔が、例えば左右方向Yに延びていれば、第2部材52の第1部材51に対する左右方向Yにおける位置が可変となる。これにより、左側のサイド走行体53と右側のサイド走行体53との間の間隔P1(
図6参照)を可変とすることができる。あるいは、長孔に代えて複数の貫通孔またはネジ孔を形成し、いずれの貫通孔またはネジ孔を選択するかによって、間隔P1を可変としてもよい。
【0039】
また、走行体21とサイド走行体53との間の、上下方向Zにおける間隔P2が可変であってもよい。このような構成は、例えば、第1部材51の本体部20に対する上下方向Zにおける取り付け位置を可変とすることで実現できる。具体的には、取付部51bに上下方向Zに延びる長孔を形成してもよいし、取付部51bに複数の貫通孔を上下方向Zに並べて形成してもよい。あるいは、間隔P2を調整する調整部材(プレート等)を用いてもよい。調整部材は、例えば本体部20と第1部材51との間に設けてもよいし、第1部材51と第2部材52との間に設けてもよいし、第2部材52とサイド走行体53との間に設けてもよい。
【0040】
また、サイド走行体53の、本体部20に対する姿勢(例えば回転中心軸O)が可変であってもよい。このような構成は、例えば、第1部材51と第2部材52との間に、他の接続部材を設けることで実現できる。なお、このような接続部材を用いて、先述の間隔P1、P2を可変とすることも可能である。
なお、上記したサイドユニット50の形状や構成は一例であり、適宜変更してもよい。
【0041】
図7に示すように、各サイドユニット50は、2つのサイド走行体53を有している。2つのサイド走行体53は、前後方向Xにおいて間隔を空けて配置されている。なお、サイドユニット50が有するサイド走行体53の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。なお、
図7の例では、サイド走行体53は車輪であるが、下側杭材10B上を走行可能であれば、サイド走行体53は車輪でなくてもよい。例えば、ボールローラをサイド走行体53として採用してもよい。杭材10には様々な種類があり、側壁部12の底壁部11に対する角度も杭材10の種類によって異なる。サイド走行体53としてボールローラを用いた場合、側壁部12の底壁部11に対する角度が異なる杭材10に対しても、移動補助装置1を設計変更することなく(あるいはわずかな設計変更により)使用できる。つまり、サイド走行体53としてボールローラを用いた場合には、様々な種類の杭材10に対応しやすいという効果が得られる。
【0042】
次に、サイドユニット50を備えた状態の移動補助装置1を使用して杭材10を移動させる方法について説明する。以下の説明では、
図6に示すように、杭材10が上側に凸の状態で積み重ねられるものとする。
まず、先述のホルダー100を下側杭材10Bの後端部に取り付ける。次に、移動補助装置1を対象杭材10Aの後端部に取り付ける。移動補助装置1およびホルダー100の取付方法の詳細は先述の通りであるため省略する。移動補助装置1およびホルダー100を、対象杭材10Aおよび下側杭材10Bにそれぞれ取り付けると、
図7に示す状態となる。
【0043】
図7に示すように、サイド走行体53は、ホルダー100よりも左右方向Yおける外側に位置する。このため、図示は省略するが、一対のサイドユニット50の各サイド走行体53はホルダー100を左右方向Yにおいて挟むように配置される。
【0044】
次に、対象杭材10Aの前端部を、クレーンなどで吊り上げる。これにより、対象杭材10Aは、移動補助装置1が取り付けられた部分を中心として下側杭材10Bに対して上側に回動するとともに、下側杭材10Bに対して前側に移動しようとする。このとき、把持部30およびアーム40が本体部20の回転支持部22回りに上側に回動する。これと同時に、移動補助装置1の走行体21がホルダー100の走行面101上を走行し、移動補助装置1がホルダー100に対して前側に移動する。移動補助装置1が所定量前側に移動すると、走行体21が走行面101から下側杭材10Bの底壁部11の上面に乗り上げる。
【0045】
走行体21が下側杭材10Bの底壁部11の上面に乗り上げると、
図6に示す状態となる。
図6に示すように、一対のサイドユニット50がそれぞれ有するサイド走行体53は、左右方向Yにおいて、下側杭材10Bを挟むように配置される。このため、移動補助装置1の下側杭材10Bに対する位置が左右方向Yにずれたとしても、サイド走行体53が下側杭材10B(
図6の例では側壁部12)に当接し、移動補助装置1が底壁部11から左右方向Yに脱落することが抑制される。また、サイド走行体53が下側杭材10Bに当接した状態で、対象杭材10Aの吊り上げを進行させると、サイド走行体53が下側杭材10B上を走行する。これにより、対象杭材10Aの移動が安定する。
【0046】
対象杭材10Aの吊り上げが進行することに従って、移動補助装置1が下側杭材10B上を前側に進むとともに、回転支持部22を中心としてアーム40が上側に回動し、
図8に示す状態となる。
図8に示すように、対象杭材10Aが略鉛直な姿勢になった後、把持部30を対象杭材10Aから取り外す。これにより、対象杭材10Aの吊り上げ作業が完了する。このように、移動補助装置1を用いることで、杭材10同士が擦り付けられることによる杭材10の変形や破損等を抑制し、スムーズに吊り上げ作業を行うことができる。また、逆の手順を行うことで、吊り上げられた杭材10(対象杭材10A)を他の杭材10(下側杭材10B)上に積み上げたり、地面に載置したりすることも可能である。
【0047】
先述の通り、施工現場において、杭材10が積み重ねて保管される際の姿勢は一定ではない。また、杭材10が下側に凸の姿勢(
図1)であると、本体部20にサイドユニット50が装着された状態では、移動補助装置1が下側杭材10Bの内側(側壁部12同士の間)に収まらない場合がある。そこで、対象杭材10Aを下側杭材10Bに対して移動させる際には、以下の移動方法を採用するとよい。
【0048】
まず、地面などに積み重ねられた杭材10の姿勢が、上側に凸であるか下側に凸であるかを判定する(判定工程)。この判定は、作業者が目視により行ってもよい。
【0049】
次に、判定工程に基づき、下側杭材10Bが上側に凸である場合は移動補助装置1の本体部20に一対のサイドユニット50が装着された状態とし、下側杭材10Bが下側に凸である場合は本体部20に一対のサイドユニット50が装着されていない状態とする(着脱工程)。
次に、移動補助装置1の把持部30により、対象杭材10Aの後端部を把持させる(把持工程)。把持工程において、必要に応じて、ホルダー100を下側杭材10Bの後端部に取り付けても良い。
【0050】
次に、本体部20が有する走行体21を下側杭材10B上で走行させながら、クレーンなどを用いて、対象杭材10Aを下側杭材10Bに対して移動させる(移動工程)。
このような移動方法により、杭材10の姿勢が上側に凸であっても下側に凸であっても、対象杭材10Aを下側杭材10Bに対してスムーズに移動させることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の移動補助装置1は、杭材10(対象杭材10A)の長手方向における端部を把持する把持部30と、走行体21を有する本体部20と、本体部20の左右方向Yにおける両側に取り付けられた一対のサイドユニット50と、を備え、一対のサイドユニット50はそれぞれ、走行体21よりも下側に位置する少なくとも1つのサイド走行体53を有する。
【0052】
このような移動補助装置1によれば、下側杭材10Bの凸部(一対の側壁部12)をサイド走行体53同士の間に位置させることで、移動補助装置1が下側杭材10Bに対して左右方向Yにずれるように移動したとき、サイド走行体53が下側杭材10Bに対して左右方向Yにおける外側から当接する。したがって、移動補助装置1が下側杭材10Bから左右方向Yに脱落することを抑制可能となる。
【0053】
また、一対のサイドユニット50は、本体部20に対して着脱可能であってもよい。この場合、地面などに積み重ねられた杭材10が上方に凸の姿勢である場合にはサイドユニット50を本体部20に装着し、杭材10が下方に凸の姿勢であるなどサイドユニット50が不要である場合にはサイドユニット50を本体部20から取り外して使用できる。すなわち、杭材10の形状や姿勢に応じて、サイドユニット50が本体部20に装着された状態か否かを切り替えることが可能となる。
【0054】
また、一対のサイドユニット50がそれぞれ有するサイド走行体53の数は2つであり、サイドユニット50の2つのサイド走行体53は、前後方向Xに並べて配置されていてもよい。この場合、1つのサイドユニット50において、前後方向Xに離れた2点でサイド走行体53が下側杭材10Bに接することとなり、移動補助装置1の下側杭材10Bに対する姿勢がより安定する。
【0055】
また、一対のサイドユニット50がそれぞれ有するサイド走行体53同士の、左右方向Yにおける間隔P1が可変であってもよい。
あるいは、走行体21と、一対のサイドユニット50のうち少なくとも一方が有するサイド走行体53と、の間の上下方向における間隔P2が可変であってもよい。
あるいは、一対のサイドユニット50のうち少なくとも一方が有するサイド走行体53の、本体部20に対する姿勢が可変であってもよい。具体例としては、支持部52cの角度が可変であってもよいし、第1部材51または第2部材52を取り換えることでサイド走行体53の姿勢を可変としてもよい。
これらの構成によれば、下側杭材10Bの形状に合わせてサイド走行体53の位置や姿勢を変化させ、よりスムーズにサイド走行体53が下側杭材10B上を走行可能とすることができる。
【0056】
また、本実施形態は、対象杭材10Aを、対象杭材10Aの下側に位置する下側杭材10Bに対して移動させる杭材の移動方法を提供する。この移動方法は、下側杭材10Bが上側に凸であるか下側に凸であるかを判定する判定工程と、判定工程に基づき、下側杭材10Bが上側に凸である場合は移動補助装置1の本体部20の左右方向Yにおける両側に一対のサイドユニット50が装着された状態とし、下側杭材10Bが下側に凸である場合は本体部20に一対のサイドユニット50が装着されていない状態とする着脱工程と、移動補助装置1の把持部30により対象杭材10Aの長手方向における端部を把持させる把持工程と、本体部20が有する走行体21を下側杭材10B上で走行させながら対象杭材10Aを移動させる移動工程と、を有する。
【0057】
このような移動方法によれば、地面などに積み重ねられた杭材10の姿勢が上側に凸であっても下側に凸であっても、走行体21が下側杭材10Bから脱落することを抑制し、対象杭材10Aを下側杭材10Bに対してスムーズに移動させることができる。
【0058】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0059】
例えば、杭材10が上側に凸の姿勢で積み重ねられることが予め分かっている場合などでは、サイドユニット50は本体部20に着脱可能である必要はなく、例えば溶接されていてもよい。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…移動補助装置 10…杭材 10A…対象杭材 10B…下側杭材 20…本体部 21…走行体 30…把持部 50…サイドユニット 53…サイド走行体 X…前後方向 Y…左右方向 Z…上下方向