(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20240513BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
F24F13/15 B
(21)【出願番号】P 2020128897
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】北方 立樹
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-009845(JP,A)
【文献】特開2019-202740(JP,A)
【文献】特開2019-093893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気方向に所定長さを有する筒状のケース体と、
前記ケース体の内部に配置され、前記ケース体の側壁に平行で且つ前記通気方向に交差する方向に沿った回動軸を有する風向調整羽根と、を備え、
前記風向調整羽根は、
前記通気方向の上流側において前記ケース体の側壁に向かって湾曲する上流側湾曲部と、
前記通気方向の下流側において前記ケース体の側壁から離れるように湾曲する下流側湾曲部とを有
し、
前記風向調整羽根は少なくとも2つ存在しており、
少なくとも前記ケース体の一方の側壁に最も近接する前記風向調整羽根は、前記上流側湾曲部が前記ケース体の他方の側壁に向かって湾曲し、前記下流側湾曲部が前記ケース体の他方の側壁から離れるように湾曲しており、
少なくとも前記ケース体の他方の側壁に最も近接する前記風向調整羽根は、前記上流側湾曲部が前記ケース体の一方の側壁に向かって湾曲し、前記下流側湾曲部が前記ケース体の一方の側壁から離れるように湾曲しており、
前記ケース体の一方の側壁に最も近接する前記風向調整羽根は、前記下流側湾曲部が前記ケース体の一方の側壁に近づくように回動させた際に、前記下流側湾曲部の一部が前記ケース体の一方の側壁に当接するように構成されており、
前記ケース体の他方の側壁に最も近接する前記風向調整羽根は、前記下流側湾曲部が前記ケース体の他方の側壁に近づくように回動させた際に、前記下流側湾曲部の一部が前記ケース体の他方の側壁に当接するように構成されている
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
前記風向調整羽根よりも前記ケース体の内部の中央側に配置される中央側風向調整羽根を備え、
前記風向調整羽根の前記上流側湾曲部は、前記中央側風向調整羽根の上流側端よりも通気方向の上流側に延びている、請求項1に記載の風向調整装置。
【請求項3】
前記風向調整羽根の前記上流側湾曲部の曲率半径は、前記下流側湾曲部の曲率半径よりも大きい、請求項1又は2に記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、風向調整装置が公知である(例えば、特許文献1)。
【0003】
この風向調整装置は、例えば、通気方向に所定長さを有する筒状のケース体と、ケース体の内部に配置され、ケース体の側壁に平行で且つ通気方向に交差する方向に沿った回動軸を有する風向調整羽根と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の風向調整装置では、風向調整羽根を回動軸が配置される中間部分において屈曲させることにより、風向調整羽根の作動角を大きくすることなく所望の吹出角が得られるようになっている。しかしながら、所謂はね返り風の影響を考慮すると、回動方向の一方側は風向調整羽根をある程度回動させられるが、回動方向の他方側は風向調整羽根を余り回動させることができないという問題点が存在する。また、風向調整羽根の回動角がケース体の側壁と平行に配置されるため、風向調整羽根を回動限界角まで回動させたとき、隣接する風向調整羽根間の隙間が狭くなる箇所ができてしまい、圧力損失が大きくなり得る。
【0006】
なお、「はね返り風」とは、一の風向調整羽根で向きを変えられた風がケース体に当たって反射する結果、他の風向調整羽根で向きを変えられた風を邪魔して、風向調整装置の風向調整性能を低下させる事象のことをいう。
【0007】
そこで、本発明は、はね返り風の影響を低減し、且つ、風向調整性能を向上させることができる風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る風向調整装置は、通気方向に所定長さを有する筒状のケース体と、ケース体の内部に配置され、ケース体の側壁に平行で且つ通気方向に交差する方向に沿った回動軸を有する風向調整羽根と、を備える。風向調整羽根は、通気方向の上流側においてケース体の側壁に向かって湾曲する上流側湾曲部と、通気方向の下流側においてケース体の側壁から離れるように湾曲する下流側湾曲部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る風向調整装置によれば、はね返り風の影響を低減し、且つ、風向調整性能を向上させることができる風向調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る風向調整装置の概略的な斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る風向調整装置の平断面図である。
【
図3】左右方向への動作状態を示す本発明の実施形態に係る風向調整装置の平断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る風向調整装置の平断面図である。
【
図5】左右方向への動作状態を示す本発明の他の実施形態に係る風向調整装置の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0012】
本発明の実施形態に係る風向調整装置は、例えば自動車等の車両に備えられた空調装置の空気吹出口に設けられて風向を調整する装置である。この風向調整装置は、ベンチレータ、エアアウトレット、レジスタ等とも称されるものであり、例えば、インストルメントパネル、センターコンソール等に設けられた開口部内に設置される。
【0013】
なお、以下、通気方向の下流側(風下側)を前側、通気方向の上流側(風上側)を奥側とし、左右方向及び上下方向については、車両に取り付けた状態を基準として説明する。図中、矢印Rは車両幅方向の右方向を示し、矢印Lは車両幅方向の左方向を示す。
【0014】
本発明の実施形態に係る風向調整装置10を
図1から
図3に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、風向調整装置10は、ケース体11と、風向調整羽根(第一風向調整羽根)12と、中央側風向調整羽根(第二風向調整羽根)13と、下流側風向調整羽根(第三風向調整羽根)14と、を備える。風向調整羽根12、中央側風向調整羽根13及び下流側風向調整羽根14は、後述する出口16から車室内へ吹き出される風Wの向き(風向)を調整するためのものである。
【0016】
ケース体11は、通気方向に所定長さを有する角筒状に形成されており、内部に空調装置(図示せず)からの風Wを後端側(
図1中の奥側)から前端側(
図1中の手前側)へ流通させる通気流路(通風路)が形成されている。また、ケース体11の後端部には、風Wの入口(開口)15が形成され、ケース体11の前端部には、風Wの出口(開口)16が形成されている(
図2及び
図3参照)。さらに、ケース体11には、風向調整羽根12、中央側風向調整羽根13及び下流側風向調整羽根14を支持するための軸受部(図示せず)が形成される。
【0017】
風向調整羽根12は、奥側フィンとも称されるものであり、ケース体11の内部における下流側風向調整羽根14よりも奥側(風上側の通気流路)に配設される。風向調整羽根12は、ケース体11の内部に左右方向に間隔をおいて複数並設される。各風向調整羽根12は、ケース体11の側壁17に平行で且つ通気方向に交差する方向に沿った回動軸18を有している。この回動軸18がケース体11の軸受部に挿通されることにより、風向調整羽根12が回動軸18を回動中心として回動可能にケース体11に取り付けられる。
【0018】
風向調整羽根12は、通気方向の上流側においてケース体11の側壁17に向かって湾曲する上流側湾曲部19と、通気方向の下流側においてケース体11の側壁17から離れるように湾曲する下流側湾曲部20とを有して、平面視においてS字状に形成される。
【0019】
換言すると、上流側湾曲部19は、ケース体11の側壁17から離れる方向に凸となるように湾曲しており、その一方、下流側湾曲部20は、ケース体11の側壁17に向かう方向に凸となるように湾曲している。
【0020】
左右方向の両端に配置される風向調整羽根12が上流側湾曲部19及び下流側湾曲部20を有する湾曲形状に形成されている。これらの風向調整羽根12は、上流側湾曲部19に対して下流側湾曲部20の位置においてケース体11の側壁17との隙間が狭くなっている(
図2参照)。
【0021】
また、風向調整羽根12の上流側湾曲部19は、中央側風向調整羽根13の上流側端13aよりも通気方向の上流側に延びている。すなわち、風向調整羽根12の上流側端12aは、中央側風向調整羽根13の上流側端13aよりも通気方向の上流側に配置されている(
図2参照)。
【0022】
その一方、風向調整羽根12の下流側湾曲部20は、中央側風向調整羽根13の下流側端13bよりも通気方向の下流側には延びてはいない。すなわち、風向調整羽根12の下流側端12bと中央側風向調整羽根13の下流側端13bとで、通気方向に対する位置をほぼ一致させている(
図2参照)。
【0023】
風向調整羽根12の上流側湾曲部19の曲率半径R1は、下流側湾曲部20の曲率半径R2よりも大きい。風向調整羽根12の上流側湾曲部19の曲率半径R1が下流側湾曲部20の曲率半径R2よりも大きい場合、上流側湾曲部19の方が緩やかな曲線を描き、下流側湾曲部20の方がコンパクトな曲線を描く。なお、風向調整羽根12の上流側湾曲部19の曲率半径R1が、下流側湾曲部20の曲率半径R2と同じ曲率半径であってもよい。
【0024】
さらに、風向調整羽根12の回動軸18は、風向調整羽根12の通気方向の中間部から前側に所定距離ずれた(オフセットした)位置(
図2及び
図3の軸位置P)に配置されている。本実施形態では、風向調整羽根12と中央側風向調整羽根13とで、軸位置Pを通気方向に関して一致させている(
図2及び
図3参照)。
【0025】
中央側風向調整羽根13は、奥側フィンとも称されるものであり、ケース体11の内部における下流側風向調整羽根14よりも奥側(風上側の通気流路)に配設される。中央側風向調整羽根13は、風向調整羽根12よりもケース体11の内部の中央側に配置される。中央側風向調整羽根13は、ケース体11の側壁17に平行で且つ通気方向に交差する方向に沿った回動軸21を有している。この回動軸21がケース体11の軸受部に挿通されることにより、中央側風向調整羽根13が回動軸21を回動中心として回動可能にケース体11に取り付けられる。
【0026】
中央側風向調整羽根13は、平板状に形成される。また、中央側風向調整羽根13の回動軸21は、中央側風向調整羽根13の通気方向の中間部から前側に所定距離ずれた(オフセットした)位置(
図2及び
図3の軸位置P)に配置されている。前述のように、本実施形態では、風向調整羽根12と中央側風向調整羽根13とで、軸位置Pを通気方向に関して一致させている(
図2及び
図3参照)。
【0027】
本実施形態では、ケース体11の左側部分に2枚の風向調整羽根12を配置し、ケース体11における左右方向の中央部分に1枚の中央側風向調整羽根13を配置し、ケース体11の右側部分に2枚の風向調整羽根12を配置している。
【0028】
風向調整羽根12及び中央側風向調整羽根13は、図示しないリンク機構によって連結される。風向調整羽根12及び中央側風向調整羽根13がリンク機構によって連結されることにより、これらの風向調整羽根12及び中央側風向調整羽根13が互いに連動して回動することが可能になる。また、リンク機構を左右方向に関して操作することにより、風向調整羽根12及び中央側風向調整羽根13を左右方向に回動させることが可能である。
【0029】
下流側風向調整羽根14は、前側フィンとも称されるものであり、ケース体11の内部における風向調整羽根12及び中央側風向調整羽根13よりも前側(風下側の通気流路)に配設される。下流側風向調整羽根14は、奥側フィン(風向調整羽根12、中央側風向調整羽根13)の回動軸18,21に直交する方向に沿った回動軸(図示せず)を有している。この回動軸がケース体11の軸受部に挿通されることにより、下流側風向調整羽根14が回動軸を回動中心として回動可能にケース体11に取り付けられる。
【0030】
これらのケース体11、風向調整羽根12、中央側風向調整羽根13及び下流側風向調整羽根14は、例えば合成樹脂材料から形成されている。
【0031】
次に、本実施形態に係る風向調整装置10の動作について説明する。
【0032】
風向調整装置10は、
図2に示すように、風向調整羽根12及び中央側風向調整羽根13を左右方向の中立状態としたとき(ニュートラル時)、風軸がケース体11の中心軸線に対して平行となる。このため、風向調整羽根12及び中央側風向調整羽根13が中立状態のときには、出口16から吹き出される風Wは前側へと真っ直ぐに流れる。
【0033】
その一方、
図3に示すように、リンク機構を左右方向に関して操作した場合には、風向調整羽根12及び中央側風向調整羽根13は、回動軸18,21を回動中心として左右方向に回動する。このとき、風向調整羽根12及び中央側風向調整羽根13は、風軸がケース体11の中心軸線に対して左右方向に傾斜した状態となり、風Wを左右方向に偏向させて出口16から吹き出させることができる。
【0034】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0035】
(1)本実施形態に係る風向調整装置10は、通気方向に所定長さを有する筒状のケース体11と、ケース体11の内部に配置され、ケース体11の側壁17に平行で且つ通気方向に交差する方向に沿った回動軸18を有する風向調整羽根12と、を備える。風向調整羽根12は、通気方向の上流側においてケース体11の側壁17に向かって湾曲する上流側湾曲部19と、通気方向の下流側においてケース体11の側壁17から離れるように湾曲する下流側湾曲部20とを有する。
【0036】
図3に示すように、風向調整羽根12を左右方向の回動限界角まで回動させたとき、左右方向の一方端に配置される風向調整羽根12はケース体11の側壁17に当接して風Wが流れないように閉じる(シャットする)。その一方、左右方向の他方端に配置される風向調整羽根12からは、上流側湾曲部19及び下流側湾曲部20の湾曲形状に沿って風Wが流れることにより、はね返り風の影響を低減し、且つ、風向調整装置10の風向調整性能を向上させることができる。
【0037】
また、
図3に示すように、風向調整羽根12を左右方向の回動限界角まで回動させたとき、隣接する風向調整羽根12間の隙間が狭くなる箇所が生じないため、圧力損失が大きくなることを抑制することができる。
【0038】
(2)風向調整装置10は、風向調整羽根12よりもケース体11の内部の中央側に配置される中央側風向調整羽根13を備え、風向調整羽根12の上流側湾曲部19は、中央側風向調整羽根13の上流側端13aよりも通気方向の上流側に延びている。
【0039】
風向調整羽根12の上流側端12aは、中央側風向調整羽根13の上流側端13aよりも通気方向の上流側に配置されている(
図2参照)。このように風向調整羽根12を構成することにより、通気方向の上流側のシャット幅S(
図3参照)を十分に確保することができる。
【0040】
(3)風向調整羽根12の上流側湾曲部19の曲率半径R1は、下流側湾曲部20の曲率半径R2よりも大きい。
【0041】
風向調整羽根12の上流側湾曲部19の曲率半径R1が下流側湾曲部20の曲率半径R2よりも大きい場合、上流側湾曲部19の方が緩やかな曲線を描き、下流側湾曲部20の方がコンパクトな曲線を描く。このように風向調整羽根12を構成することにより、通気方向の上流側のシャット幅S(
図3参照)を十分に確保することができる。
【0042】
[本発明の他の実施形態]
本発明の他の実施形態に係る風向調整装置10Aを
図4及び
図5に基づいて説明する。
【0043】
この実施形態に係る風向調整装置10Aは、
図1から
図3に示した実施形態に係る風向調整装置10に対し、ケース体11の開口幅が狭く、風向調整羽根12を多く配置できない状態であった場合を示すものである。
【0044】
図4及び
図5に示す実施形態では、中央側風向調整羽根13の回動軸21は、中央側風向調整羽根13の前後方向の中間部の位置(
図4及び
図5の軸位置P)に配置されている。
【0045】
図4及び
図5に示す実施形態では、ケース体11の左側部分に1枚の風向調整羽根12を配置し、ケース体11における左右方向の中央部分に1枚の中央側風向調整羽根13を配置し、ケース体11の右側部分に1枚の風向調整羽根12を配置している。
【0046】
ケース体11の開口幅が狭く、風向調整羽根12を多く配置できない場合であっても、風向調整羽根12の幅、湾曲部の曲率半径R1,R2、軸位置Pを適宜に調整することにより、湾曲部により風Wを誘導し、風向調整装置10Aの風向調整性能を向上させ得る。
【0047】
ところで、本発明の風向調整装置は前述の実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10,10A 風向調整装置
11 ケース体
12 風向調整羽根(第一風向調整羽根)
13 中央側風向調整羽根(第二風向調整羽根)
13a 上流側端
17 側壁
18 回動軸
19 上流側湾曲部
20 下流側湾曲部
R1 曲率半径
R2 曲率半径