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  • 特許-鋳物砂の再生方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】鋳物砂の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 5/00 20060101AFI20240513BHJP
   B22C 5/04 20060101ALI20240513BHJP
   B22C 1/18 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B22C5/00 C
B22C5/04 A
B22C1/18 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020130284
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2021178360
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/018936
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(73)【特許権者】
【識別番号】591149344
【氏名又は名称】伊藤忠セラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩
(72)【発明者】
【氏名】村田 証一
(72)【発明者】
【氏名】高井 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿一
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝太
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-015814(JP,A)
【文献】特開2011-025310(JP,A)
【文献】特開2016-150369(JP,A)
【文献】特開昭60-072637(JP,A)
【文献】特表2010-519042(JP,A)
【文献】特表2001-504040(JP,A)
【文献】特開2016-000413(JP,A)
【文献】特開2010-075937(JP,A)
【文献】特表2017-533295(JP,A)
【文献】特開2019-048329(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199498(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00
B22C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結法によって人工的に製造された球状の焼結粒子である球状耐火粒子からなる鋳物砂と水ガラスを主成分とする無機バインダとを用いて造型された鋳型からの、前記鋳物砂の再生方法にして、
前記鋳型を用いた鋳造工程から回収される使用済鋳型を解砕する一方、そこで生じた微粉を分離、除去せしめる解砕工程と、
かかる解砕工程より取り出された解砕物を整粒して、前記耐火粒子の平均粒子径の10分の1以下の平均粒子径を有する微粒子を除去することにより、所定の整粒砂を得る整粒工程と、
かくして得られた整粒砂を焙焼処理して、砂表面に付着する前記水ガラス成分を結晶化させる焙焼工程と、
かかる焙焼処理の施された整粒砂を機械研磨することにより、表面研磨処理を実施して、砂表面の結晶化水ガラス成分を分離せしめる一方、その分離せしめた結晶化水ガラス成分を集塵装置にて捕集して、除去する研磨工程とを、
有することを特徴とする鋳物砂の再生方法。
【請求項2】
前記整粒工程と前記焙焼工程との間に、前記整粒砂を機械研磨して、かかる整粒砂中に存在する固着粒子を更に小さく解砕すると共に、砂表面に付着する水ガラス成分の一部を分離せしめる一方、その分離された水ガラス成分を集塵装置にて捕集して、除去する予備研磨工程を、更に有していることを特徴とする請求項1に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項3】
前記予備研磨工程における機械研磨処理時間が、前記研磨工程における機械研磨処理時間よりも短い時間であることを特徴とする請求項2に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項4】
前記整粒砂が、前記球状耐火粒子の粒径以上、5mm以下の粒径を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項5】
前記人工的に製造された球状耐火粒子が、40重量%以上のAl23と60重量%以下のSiO2 を含む化学組成を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項6】
前記球状耐火粒子が、50~80重量%のAl23と50~20重量%のSiO2 を含む化学組成を有していることを特徴とする請求項に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項7】
前記人工的に製造された球状耐火粒子が、ムライト質又はムライト・コランダム質の球状粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項8】
前記焙焼処理が、前記整粒砂を流動せしめつつ、500℃以上の温度で、少なくとも10分間以上、加熱することにより、実施されることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項9】
前記機械研磨が、前記整粒砂を、軸回りに回転せしめられる円筒状砥石の周面に接触させることによって、実施されることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の鋳物砂の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物砂の再生方法に係り、特に、水ガラスを主成分とする無機バインダを用いて造型された鋳型から、鋳物砂を有利に再生し得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属溶湯の鋳造に用いられる鋳型の一つとして、耐火粒子(骨材)からなる鋳物砂と所定のバインダとを用いて、目的とする形状に造型されてなるものが知られており、そこでは、鋳物砂を結合するための粘結剤(バインダ)として、フェノール樹脂、フラン樹脂等の樹脂を主体とする有機バインダや、水ガラス、粘土等を主体とする無機バインダが、用いられている。
【0003】
ところで、上述の如き鋳型を用いた鋳造の分野においても、資源枯渇や産業廃棄物の規制等の問題から、一旦、鋳造に使用された鋳型を構成する鋳物砂を再生して、再度、鋳造に使用することで、廃棄される鋳物砂(廃砂)量を減少せしめることが検討されており、例えば、有機バインダである樹脂にて耐火粒子の表面を被覆してなる樹脂被覆砂(RCS)を用いて得られた鋳型からの鋳物砂の再生方式として、特開昭63-180340号公報には、可燃物粘結剤(樹脂)を含む鋳物砂の古砂を流動焙焼炉で焙焼して、かかる可燃物粘結剤を燃焼せしめた後、必要に応じて、機械的方法で再生処理する手法が、明らかにされている。また、特開2016-150368号公報には、人工砂及び/又は天然砂に由来する骨材や粘結剤を含む鋳型用粘結剤含有砂を用いて、所定の形状に造型された鋳型の鋳造後に生じる鋳型廃砂を焙焼した後、乾式磨鉱することにより、鋳型用原料砂として再生する方式が明らかにされ、その実施例では、粘結剤としてノボラック系フェノール樹脂を用いて、鋳型用粘結剤含有砂(RCS)が製造され、そしてそれが再生工程に供されることにより、目的とする鋳型強度の低減の抑制効果が得られることが、明らかにされている。
【0004】
しかしながら、それら従来の再生方法にあっては、あくまでも、鋳物砂としての耐火粒子と共に、樹脂の如き有機バインダを用いて、造型された鋳型からの鋳物砂の再生処理において、その表面に付着している有機バインダ(樹脂)を、焙焼操作によって燃焼せしめることにより、その除去を図ることを前提としているに過ぎないものであって、そのような再生方式が、そのまま、燃焼せしめられることのない無機バインダを用いて、造型された鋳型からの鋳物砂の再生に適用され得るものでは、決してなかったのである。
【0005】
このため、特開2015-51446号公報においては、ケイ酸ソーダの如き無機バインダを用いて造型された鋳型の鋳造後のものを粉砕した後、5℃乃至70℃の水中において混合撹拌することにより、それに付着した無機バインダを分離せしめ、その後、バインダが分離された鋳物砂を回収して、加熱乾燥することからなる鋳物砂の再生処理方法が、明らかにされ、更に、特開2016-147287号公報においては、水ガラスを主体とするバインダにより被覆されている鋳物砂からなる鋳型を解砕した後、その解砕片に酸溶液を加えて、研磨を行なうことにより、鋳物砂を再生する方法が明らかにされているのであるが、そのような水中での混合撹拌処理や酸溶液を加えた研磨処理だけでは、鋳物砂(耐火粒子)の表面に強固に付着している無機バインダを剥離、除去せしめることは、容易ではなく、依然として、鋳物砂の表面には、無機バインダが少なからず残存し、その残存量が再生回数に比例して増大することにより、その再生鋳物砂を用いて得られる鋳型の物性に悪影響をもたらしている他、そこでは、水や酸溶液を用いた湿式処理が採用されるものであるところから、処理後の砂の洗浄や乾燥等の工程が増えることとなる実用上の問題も、内在しているのである。
【0006】
また、特許第5401325号公報においては、鋳物砂の熱的再生の方法として、水ガラスの付着した使用済の鋳物砂を、少なくとも200℃の温度にて加熱処理せしめ、鋳物砂の塩酸消費量が10%となるまで減少するように、そのような加熱処理を実施するようにした手法が、明らかにされているのであるが、このような熱的再生処理が、繰り返し実施されることを想定した場合において、鋳物砂に強固に付着している水ガラスが次第に蓄積されるようになって、塩酸消費量が10%まで減少するように加熱処理したところで、鋳物砂には、大量の水ガラスが残留するようになるものと考えられる。また、そこでは、砂粒にばらすための機械的処理が、前記した加熱処理の前又は後に実施されることも、明らかにされているのであるが、単に、砂粒にばらすだけでは、粒子表面に強固に付着している水ガラスを削り取ることが出来ないことは勿論のこと、機械的処理の前に熱処理を行なう場合と、機械的処理の後に熱処理を行なう場合とでは、得られる再生砂の性状が異なることとなるために、充分な鋳型性能を与える再生砂を得ることが困難であるという問題をも、内在している。
【0007】
一方、所定のバインダと共に、鋳型の造型に用いられる耐火粒子が、珪砂の如き天然砂である場合において、上述の如き従来の再生方法を適用したとき、焙焼工程では、熱膨張による熱割れの問題が有り、また研磨工程においては、粒子自体が粉砕されてしまうという問題等が惹起されるようになるところから、再生工程に耐え得る耐久性が認められ得ない天然砂に対して、実用的な再生を行なうことは、極めて困難なことであったのである。特に、焙焼操作では容易に燃焼、除去され得ない無機バインダが固着した天然砂からなる鋳物砂の再生に、研磨の如き機械的再生方式を採用した場合には、天然砂の粉末化が惹起される恐れが高くなり、そのために、天然砂と無機バインダとを用いた鋳型からの鋳物砂の再生は、実用的に、極めて困難なことであったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭63-180340号公報
【文献】特開2016-150368号公報
【文献】特開2015-51446号公報
【文献】特開2016-147287号公報
【文献】特許第5401325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、水ガラスを主成分とする無機バインダを用いて造型された鋳型の鋳造後のものから、そのような鋳型の造型に用いられた鋳物砂の実用的な再生方法を提供することにあり、また、他の課題とするところは、繰り返しの再生処理によっても、高い鋳型強度を維持することの出来る、鋳物砂の有効な再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握され得る発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0011】
(1) 人工的に製造された球状耐火粒子からなる鋳物砂と水ガラスを主成分とする無機 バインダとを用いて造型された鋳型からの、前記鋳物砂の再生方法にして、(a) 前記鋳型を用いた鋳造工程から回収される使用済鋳型を解砕する一方、そこで生じ た微粉を分離、除去せしめる解砕工程と、(b)かかる解砕工程より取り出された 解砕物を整粒して、前記耐火粒子の平均粒子径の10分の1以下の平均粒子径を有 する微粒子を除去することにより、所定の整粒砂を得る整粒工程と、(c)かくし て得られた整粒砂を焙焼処理して、砂表面に付着する前記水ガラス成分を結晶化さ せる焙焼工程と、(d)かかる焙焼処理の施された整粒砂を機械研磨することによ り、表面研磨処理を実施して、砂表面の結晶化水ガラス成分を分離せしめる一方、 その分離せしめた結晶化水ガラス成分を集塵装置にて捕集して、除去する研磨工程 とを、有することを特徴とする鋳物砂の再生方法。
(2) 前記整粒工程と前記焙焼工程との間に、前記整粒砂を機械研磨して、かかる整粒 砂中に存在する固着粒子を更に小さく解砕すると共に、砂表面に付着する水ガラス 成分の一部を分離せしめる一方、その分離された水ガラス成分を集塵装置にて捕集 して、除去する予備研磨工程を、更に有していることを特徴とする前記態様(1) に記載の鋳物砂の再生方法。
(3) 前記予備研磨工程における機械研磨処理時間が、前記研磨工程における機械研磨 処理時間よりも短い時間であることを特徴とする前記態様(2)に記載の鋳物砂の 再生方法。
(4) 前記焙焼工程に供される整粒砂が、前記焙焼処理条件下での熱間処理後の流動性 試験において、流動性を有していることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様 (3)の何れか1つに記載の鋳物砂の再生方法。
(5) 前記整粒砂が、前記球状耐火粒子の粒径以上、5mm以下の粒径を有しているこ とを特徴とする前記様態(1)乃至前記様態(4)の何れか1つに記載の鋳物砂の 再生方法。
(6) 前記人工的に製造された球状耐火粒子が、40重量%以上のAl23と60重量
%以下のSiO2 を含む化学組成を有していることを特徴とする前記態様(1)乃
至前記態様(5)の何れか1つに記載の鋳物砂の再生方法。
(7) 前記球状耐火粒子が、50~80重量%のAl23と50~20重量%のSiO
2 を含む化学組成を有していることを特徴とする前記態様(6)に記載の鋳物砂の
再生方法。
(8) 前記人工的に製造された球状耐火粒子が、ムライト質又はムライト・コランダム 質の球状粒子であることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(7)の何れか 1つに記載の鋳物砂の再生方法。
(9) 前記人工的に製造された球状耐火粒子が、焼結法によって人工的に製造された球 状の焼結粒子であることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか 1つに記載の鋳物砂の再生方法。
(10) 前記焙焼処理が、前記整粒砂をを流動せしめつつ、500℃以上の温度で、少 なくとも10分間以上、加熱することにより、実施されることを特徴とする前記態 様(1)乃至前記態様(9)の何れか1つに記載の鋳物砂の再生方法。
(11) 前記機械研磨が、前記整粒砂を、軸回りに回転せしめられる円筒状砥石の周面 に接触させることによって、実施されることを特徴とする前記態様(1)乃至前記 態様(10)の何れか1つに記載の鋳物砂の再生方法。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明に従う鋳物砂の再生方法にあっては、水ガラスを主成分とする無機バインダを用いて造型された鋳型の鋳造工程に供されたものから、そのような鋳型を構成する鋳物砂を再生するに際して、かかる鋳物砂として、珪砂の如き天然砂ではなく、人工的に製造された球状耐火粒子を用いると共に、鋳造工程から回収される使用済鋳型を解砕及び整粒し、そして、その得られた整粒砂を焙焼処理することにより、砂表面に付着する水ガラス成分を結晶化させた後、機械研磨により、砂表面の結晶化水ガラス成分を分離、除去せしめるようにしたことにより、鋳物砂の粒子自体が粉砕されて、微細化されるのを効果的に阻止しつつ、鋳物砂表面に付着する水ガラス成分を有利に除去せしめ得たのであり、これによって、鋳物砂が繰り返し再生されても、その再生砂から造型される鋳型の強度を高く維持することが、可能となったのである。
【0013】
しかも、本発明において、整粒工程と焙焼工程との間に、整粒砂を機械研磨して、かかる整粒砂中に存在する固着粒子を更に小さく解砕すると共に、砂表面に付着する水ガラス成分の一部を分離、除去せしめるようにした予備研磨工程を挿入することにより、更には、人工的に製造された球状耐火粒子として、焼結法によって人工的に製造された球状の焼結粒子を用いることにより、本発明の特徴は、より一層有利に発揮され得ることとなるのであり、特に、かかる球状の焼結粒子、中でも、ムライト質又はムライト・コランダム質の球状焼結粒子を用いることによって、繰り返し再生された再生砂の鋳型強度を、新砂を用いた場合における鋳型強度よりも高め、また、その強度を効果的に維持することが出来る特徴を発揮することが出来ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例2において、耐火粒子B及びCの疑似古砂に対して、それぞれ、適用される各種再生方式を示す工程概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ところで、本発明に係る再生方法が適用される鋳型は、鋳物砂とバインダとを用いて、従来と同様にして、造型されたものであるが、そこにおいて、本発明では、バインダとして、水ガラスを主成分とする無機バインダが用いられる一方、鋳物砂としては、珪砂の如き天然砂ではなく、人工的に製造された球状耐火粒子を用いるようにしたのであり、これにより、鋳物砂の再生が有利に行なわれ得ることとなったのである。
【0016】
そして、そのような本発明において、鋳物砂として用いられる、人工的に製造された球状耐火粒子は、球状のものであれば、公知の如何なる耐火性の人工粒子(骨材)をも、その対象とすることが出来る。具体的には、スプレードライ手法によって造粒された後に、ロータリーキルンで焼成して得られる焼結砂や、転動造粒法により造粒された後、ロータリーキルンで焼成して得られる焼結砂の他、高温で溶融して得られた溶融物をエアーで吹き飛ばして製造される溶融砂、火炎溶融法と呼ばれる方法で得られる溶融砂等があり、また材質的には、焼結ムライト、電融ムライトや焼結アルミナ、電融アルミナ等の材質のものを用いることが可能であるが、それらの中でも、焼結法によって得られる球状の耐火性粒子は、粒子表面に微細な凹凸が存在しており、そこに、無機バインダ成分が入り込み、徐々に埋まって行くようになるために、再生砂としての繰り返しての再利用に際して、鋳型強度が新砂と同程度、更にはそれよりも向上した値を発現し得るものであるところから、好適に用いられることとなる。
【0017】
また、そのような本発明において用いられる球状の人工砂(骨材)は、有利には、40重量%以上のAl23と、60重量%以下のSiO2 とからなる化学組成を有していることが、望ましい。ここで、かかるAl23の含有量が40重量%未満となると、換言すればSiO2 の含有量が60重量%を超えるようになると、耐火粒子の熱膨張が大きくなって、SiO2 特有の異常膨張が惹起され、そのため、本発明に従う再生処理の工程において、自己崩壊の問題が惹起されるようになる。特に、本発明にあっては、そのような化学組成において、ムライト質又はムライト・コランダム質の材質からなる耐火粒子(骨材)が、好適に用いられることとなる。なお、ここで、ムライト・コランダム質とは、粒子中にムライトの結晶構造とコランダムの結晶構造とが共存乃至は分散した状態のことを意味している。
【0018】
さらに、上述の如き耐火粒子の化学組成において、本発明の目的を有利に達成すべく、Al23は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上の割合において含有せしめられ、その上限としては、一般に90重量%、好ましくは80重量%、より好ましくは70重量%程度の割合が採用されることとなる。一方、SiO2 は、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下の割合において含有せしめられ、その下限としては、一般に10重量%、好ましくは20重量%、更に好ましくは30重量%程度の割合が採用される。中でも、Al23:50~80重量%とSiO2 :50~20重量%の化学組成が有利に採用され、更にはAl23:60~70重量%とSiO2 :40~30重量%の化学組成が、より一層好適に採用されることとなる。ここで、そのような化学組成は、例えば、一般的な蛍光X線分析装置を用いて、容易に測定することが可能である。
【0019】
なお、かかる本発明において用いられる球状の人工砂は、従来から鋳型の造型に用いられてきている耐火粒子と同様な平均粒子径を有するものであって、一般に、その平均粒子径が、0.01~0.50mm程度、好ましくは0.05~0.40mm程度、より好ましくは0.07~0.30mm程度となる大きさを有するものである。この人工砂の平均粒子径が小さくなり過ぎると、その取り扱いが困難となり、回収砂の再生に困難を来たすようになる等の問題があり、また粒子径が大きくなり過ぎると、回収砂の再生上の問題に加えて、鋳造製品の品質低下の問題をも、惹起するようになる。ここで、平均粒子径は、レーザ回折・散乱法によって求められた粒度分布における積算値50%での粒径(D50)を意味するものである。
【0020】
また、そのような鋳物砂として用いられる人工の耐火粒子は、球状形状を呈する粒子として構成され、その真円度としては、一般に、0.70以上であることが望ましく、中でも0.75以上、特に0.80以上の真円度を有する球状の耐火粒子が、有利に用いられることとなる。このような真円度を有する球状の耐火粒子を用いることにより、本発明に従う再生工程において、耐火粒子表面に付着する付着物の剥離、除去が有利に行なわれ得て、その再生工程の実用性が、より一層高められ得るのである。
【0021】
ここで、人工耐火粒子の真円度は、公知の手法によって測定することが可能であり、例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製の粒子形状測定装置:PartAnSIによって、測定することが出来る。かかる装置は、サンプルセル、ストロボLED及び高感度CCDカメラから構成されており、その測定原理は、水をポンプにより循環させる一方、試料(耐火粒子)を投入することで、ストロボLED光源とCCDカメラとの間に配置されたサンプルセルを、試料粒子の混在する水が通過し、その際に得られる投影像を画像解析することにより、粒子毎の投影面積と最大フェレー径を求めることからなるものである。そして、その得られた最大フェレー径と投影面積の値から、下式:
真円度=[4×投影面積(mm2)]/[π×{最大フェレー径(mm)}2
により、粒子毎の真円度が算出される。具体的には、試料粒子を5000個以上投入し、粒子毎の真円度を算出した後、それぞれ得られた真円度の合計値を測定粒子個数で平均することにより、真円度(平均値)が、それぞれ求められることとなる。
【0022】
さらに、上記した鋳物砂と共に用いられる無機バインダの主成分となる水ガラスには、従来から、鋳型製造用組成物における粘結剤乃至は結合剤として用いられてきているケイ酸ソーダが、好適に用いられることとなる。なお、そのようなケイ酸ソーダは、一般式:Na2O・nSiO2(n=0.5~4.0)で表され、Na2OとSiO2とのモル比によって分類されて、一般に、ケイ酸ソーダ1号、2号、3号、4号等として呼称されるものがある。
【0023】
そして、そのようなケイ酸ソーダに対して、鋳型造型用として公知の、各種の添加剤や、他の無機乃至は有機のバインダ、更には硬化剤乃至は硬化促進剤等が、必要に応じて添加、配合せしめられて、水ガラスを主成分とする無機バインダとして、鋳型の造型に用いられることとなるのである。なお、硬化剤や硬化促進剤は、無機バインダ中に、直接に、添加、配合せしめられる他、鋳型の造型工程において、鋳物砂と無機バインダとの混練砂(無機バインダ被覆砂)を成形型内に充填した後、成形型内に別途供給されて、無機バインダの硬化を行なう手法も、適宜に採用されることとなる。
【0024】
本発明にあっては、上述の如き鋳物砂と無機バインダとを、常法に従って、配合・混練して、混練砂を形成した後、その混練砂を用いて、目的とする形状の鋳型を造型し、更にその鋳型を用いて、所定の金属溶湯を鋳造した後、その鋳造工程から回収される使用済の鋳型に対して、所定の再生処理を施すようにしたものであり、そこでは、先ず、かかる使用済鋳型を解砕する一方、そこで生じた微粉を分離、除去せしめることにより、解砕砂(解砕物)を得る解砕工程が実施される。
【0025】
なお、かかる解砕工程における使用済鋳型の解砕は、ジョークラッシャーの如き公知の解砕機を用いて実施され、そして、そこで生じた微粉が、集塵機等によって分離、除去せしめられることにより、解砕物としての解砕砂が取り出されるのである。この分離、除去される微粉は、一般に、平均粒子径が10μm以下程度のものである。
【0026】
また、かくして得られた解砕砂には、それから所定大きさの粒子を取り出すべく、篩等を用いた整粒(分級)操作が実施され、これによって、所定粒径の整粒砂が取り出されることとなる。この整粒操作を実施する工程において、整粒対象物である解砕砂から、鋳型の造型に用いられた球状耐火粒子(新砂)の平均粒子径の10分の1以下、好ましくは7分の1以下、より好ましくは5分の1以下の平均粒子径を有する微粒子が除去されるのである。具体的には、そのような平均粒子径を有する微粒子を除去するために、球状耐火粒子の平均粒子径の5分の1以下、好ましくは3分の1以下、より好ましくは2分の1以下の目開きを有する篩を用いて、整粒操作が実施されることとなるのである。
【0027】
そして、上記せる整粒工程において取り出される整粒砂は、一般に、球状耐火粒子(新砂)の粒径以上、5mm以下、望ましくは3mm以下の粒径の粒子として、取り出されるのが有効である。ここで、球状耐火粒子(新砂)の粒径とは、粒子個々の粒径であるが、そのような粒子が粒度分布を有する場合においては、実用的には、かかる粒度分布を有する粒子の平均粒子径の約1/3程度の粒径、好ましくは約1/2程度の粒径が採用されることとなる。なお、球状耐火粒子(新砂)よりも細粒のものは、解砕した際に発生する微粉であり、活性な水ガラス成分を多く含むものであるところから、後の焙焼処理工程において、熱負荷により、焙焼炉内で砂が固化する原因となるリスクを内在し、また整粒砂の粒度が、5mm以上となると、焙焼炉内において流動不良を惹起して、充分な熱負荷が伝わらなくなって、有効な焙焼処理を行ない難くなる問題を内在する。
【0028】
次いで、かくの如き解砕工程と整粒工程とを経て得られた、所定粒径の整粒砂には、焙焼処理が実施されて、加熱処理が施され、砂表面に付着する水ガラス成分が、結晶化せしめられることとなる。そして、この焙焼処理には、一般的に流動層炉が用いられて、炉内で砂を流動させながら、熱負荷をかける手法が、採用されることとなる。ところで、無機バインダの主成分である水ガラスは、鋳型の造型に供される無機バインダ被覆砂においては、Na2O・nSiO2・mH2O で表される含水形態において存在し、造型時の加熱による脱水反応で、Na2O・nSiO2・(m-x)H2O+xH2O↑となり、この状態の水ガラスは、大気中の水分と容易に反応して、元の水ガラスであるNa2O・nSiO2・mH2O に戻る可逆反応を惹起するものであるが、水ガラスを更に加熱すると、500~600℃で、β-Na2Si25 が生成するようになるのであって、その反応は、不可逆反応である。このため、焙焼処理における焙焼温度としては、かかるβ-Na2Si25 が生成する温度以上とする必要があるが、更に加熱されると、800~870℃で、α-Na2Si25 とシリケートとの溶融物が生成するようになるところから、焙焼温度は、そのような温度以下にする必要がある。溶融物が生成すると、流動焙焼炉やロータリーキルンでの加熱時に、溶融物の存在により、流動化不良や溶融固化が惹起される恐れがあるからである。
【0029】
従って、本発明に従う焙焼処理の際に採用される焙焼温度としては、一般に500℃以上、望ましくは600℃以上の温度が採用され、更に焙焼処理時間としては、一般に10分間以上、望ましくは30分間以上の時間が採用され、これによって、整粒砂粒子の表面に残留している活性な水ガラス成分を不活性化せしめて、再生砂として再度利用する際に、無機バインダとの混練物(鋳型造型用組成物)の可使時間を長く保つことが可能となるのである。なお、この焙焼温度が500℃未満となったり、焙焼処理時間が10分間未満となると、鋳物砂粒子表面に付着した活性な水ガラス成分を不活性化させるのに、充分な熱負荷をかけることが困難となり、再生砂として使用する際に、前記した可使時間が短くなって、鋳型の造型作業が困難となる問題を内在する。一方、かかる焙焼温度は高い程望ましく、更に焙焼処理時間は長い程望ましいものではあるが、そのような焙焼温度や時間が過剰に高く乃至は長くなると、焙焼炉内での砂の融着や流動化不良が惹起されるようになるところから、一般に、焙焼温度は800℃以下、好ましくは750℃以下が採用され、また焙焼処理時間としては、一般に5時間以下、好ましくは3時間以下が、採用されることとなる。
【0030】
ところで、本発明にあっては、前記した整粒工程と焙焼工程との間に、整粒砂を機械研磨して、かかる整粒砂中に存在する固着粒子を更に小さく解砕すると共に、砂表面に付着する水ガラス成分の一部を分離せしめる一方、その分離された水ガラス成分を、集塵装置にて捕集して、除去する予備研磨工程が、好適に採用されることとなる。この予備研磨工程の採用により、整粒工程において取り出された整粒砂には、更なる整粒作用が加わって、粒子の孤立化が進行せしめられることとなるところから、後の焙焼工程における流動性が充分に確保され得て、より効率よく熱負荷をかけることが可能となるのである。
【0031】
特に、繰り返しの再生回数が増加するようになると、残存する水ガラス成分により、再生前の砂(回収砂)が、解砕操作だけでは、所望の大きさの粒子にならなくなるからであり、また蓄積された水ガラス成分により、粒子同士が固着して、複数の粒子が一体化するようになり、それを、単に、解砕する(解す)だけでは、所望の大きさの粒子を得ることが出来ず、そのために、後の焙焼工程において、熱が充分に伝わらなくなる等の問題を惹起するようになるところから、上述の如き予備研磨工程を採用して、固着粒子の解砕、更には蓄積される水ガラス成分の部分的な除去を図ることが、望ましいのである。
【0032】
そして、本発明においては、前記した焙焼工程に続いて、焙焼処理の施された整粒砂を機械研磨することにより、表面研磨処理を実施して、砂表面に存在する結晶化水ガラス成分を分離せしめる一方、その分離せしめた結晶化水ガラス成分を集塵装置にて捕集して、除去する研磨工程が、実施されることとなるのである。なお、この研磨工程においては、焙焼(加熱)処理により結晶化せしめられた、粒子表面に付着する水ガラス成分を除去する必要があるところから、前記した予備研磨工程における機械研磨よりも、より重度な機械研磨処理が実施されることとなるが、鋳物砂として用いられている耐火粒子は、そのような機械研磨に耐えられる程の耐破砕性が高いものである必要がある。このため、本発明においては、そのような耐火粒子として、人工的に製造された球状耐火粒子が用いられているのである。
【0033】
ここにおいて、かくの如き研磨工程における機械研磨は、前記した予備研磨工程における機械研磨と共に、公知の各種の研磨装置を用いて実施され得、例えば、整粒砂を砥石に接触させて、その表面を研磨するようにした研磨装置を用いることが出来、有利には、軸回りに回転せしめられる円筒状砥石の周面に対して、整粒砂を供給して、接触させることによって、研磨が行なわれるようにした方式が、好適に採用されることとなる。具体的には、特開2016-413号公報に開示の如き構造の、鋳物砂の機械再生装置を用いることが出来、また、市販品であるサンドフレッシャー(株式会社清田鋳機)を用いることが出来る他、ロータリーリクレマーやサンドシャイナー等と称される研磨装置も用いることが出来る。更に、それら予備研磨工程における機械研磨と、研磨工程における機械研磨とは、同様な研磨装置を用いて行なうことが、実用上からして望ましいものではあるが、また、異なる研磨装置を用いて、それぞれの機械研磨を実施することも、可能である。
【0034】
そして、本発明においては、予備研磨工程と研磨工程の目的の相違から、整粒砂に対する研磨作用が、予備研磨工程では軽度なものとされ、一方、後の研磨工程では重度な研磨作用が加えられることとなる。ここで、それら研磨作用の差異は、研磨時間や研磨回数等を異ならしめることによって実現され、例えば、予備研磨工程における機械研磨処理時間を、後の研磨工程における機械研磨処理時間よりも短くしたり、予備研磨工程における機械研磨処理回数を少ない回数、例えば1回とする一方、後の研磨工程における機械研磨処理回数を、それよりも多い複数回、例えば3回とすること等によって、実現することが可能である。後の研磨処理のみでは、鋳物砂(耐火粒子)表面に付着した活性な水ガラス成分を完全に剥離することは困難であるところから、焙焼工程の前に採用される予備研磨工程における機械研磨は、単に、後の焙焼工程における整粒砂の流動不良や炉内での固化を防ぎつつ、かかる活性な水ガラス成分の不活性化が有利に行なわれ得るようにすることを目的としているものであり、一方、後の研磨工程においては、活性な水ガラス成分を焙焼により結晶化させて、不活性化された水ガラス成分を、強研磨により完全に剥離せしめて、再生砂として再利用された際における鋳型強度が充分に高められ得るようにすることを目的としているのである。
【0035】
なお、上記した予備研磨工程や研磨工程においては、機械研磨処理によって、微細な水ガラス成分の粉末が発生するようになるのであるが、そのような微細な粉末は、研磨処理の施された整粒砂から分離されて、集塵装置にて捕集され、系外に除去せしめられるようになっている。けだし、予備研磨工程において、研磨処理された整粒砂に微粉末が混在していると、後の焙焼工程における流動性の低下や砂同士の固着等の問題が惹起されるようになるからであり、また研磨工程において、機械研磨された整粒砂に、それより分離された結晶化水ガラス成分の微粉末が混在するようになると、そのような研磨工程を経て得られる再生砂の再利用時において、鋳型強度等の特性の充分な実現を図ることが困難となるからである。
【0036】
かくの如くして、本発明に従って、解砕工程と、整粒工程と、必要に応じて採用される予備研磨工程と、焙焼工程と、研磨工程とを経て、得られた鋳物砂の再生砂にあっては、その表面に固着していた水ガラス成分が効果的に除去せしめられたものとなり、更に、鋳物砂の繰り返しの再生処理によっても、表面固着水ガラス成分の除去作用が、有利に実現され得ることとなるものであるところから、そのような再生砂を用いて、再度、造型して得られる鋳型においては、その強度が効果的に高められ、また、再生操作を繰り返し実施して得られる再生砂を用いた鋳型にあっても、その鋳型強度を高く維持することが可能となったのである。
【実施例
【0037】
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。
【0038】
-実施例1-
鋳物砂として、各種材質の耐火粒子A,B及びCを、それぞれ、下記表1に示される公知の製造法に従って、準備した。
【0039】
【表1】
【0040】
次いで、それら耐火粒子A~Cに対して、それぞれ、水ガラスを主成分とした無機バインダ(チェコ:SAND TEAM社製Geopol W11)と硬化促進剤(チェコ:SAND TEAM社製Geotek W303)とを、下記表2に示される割合において配合せしめて、混練することにより、鋳型造型用の3種の混練砂を製造した。
【0041】
【表2】
【0042】
かくして得られた3種の混練砂を用い、それらに対して、それぞれ、150℃×1時間の熱処理を施すことにより、使用済鋳型から回収される古砂(鋳物砂)に模した疑似古砂を、それぞれ、作製した。その後、耐火粒子A,B及びCに対応して得られた3種の疑似古砂を、それぞれ、ジョークラッシャーにて解砕する一方、その際に発生する微粉を、集塵機にて除去した。次いで、そのような解砕操作にて得られた解砕物を、振動篩にて分級することにより、過大な粒子や過小な粒子を除去して、105μm~2mmの範囲内の粒子サイズを有する3種の整粒砂を取り出した。なお、耐火粒子Bにおいて、ジョークラッシャーにて解砕した際に発生する、集塵機にて除去した微粉の平均粒子径は6.29μmであり、また振動篩にて除去した過小な粒子の平均粒子径は、43.1μmであった。これらの平均粒子径は、マイクロトラック・ベル株式会社製の粒子径分布測定装置:MT3300EXIIにて測定して、得られたものである。このことから、集塵機で除去する微粉は著しく細かいのに対し、振動篩にて除去する微少な粒子は、上記解砕操作にて割れた粒子あるいは粒子表面に付着していた水ガラス成分であることが、認められる。
【0043】
その後、その取り出された3種の整粒砂に対して、それぞれ、焙焼処理(600℃×2時間)と機械式研磨処理(30分)とを順次実施することにより、それぞれの整粒砂の再生処理を行ない、3種の再生砂(耐火粒子)を得た。なお、焙焼処理は、流動焙焼炉を用いて実施する一方、機械式研磨処理としては、疑似古砂の30kgを、研磨機であるサンドフレッシャー(株式会社清田鋳機製BR-305)に投入して、砥石(砥石径:305mm)を周速40m/秒で高速回転させて、その外周面に接触せしめることによって、かかる疑似古砂を研磨して、疑似古砂に付着した、水ガラスを主体とする無機バインダ由来の物質を分離、除去せしめる一方、その除去した無機バインダ由来の物質(微粉末)を、かかるサンドフレッシャーに連結した集塵機(アマノ株式会社製パルスジェット集塵機:PiF-75U)により、風量:46m3 /分にて集塵して、除去せしめる方式を採用した。
【0044】
その結果、耐火粒子B及びCの疑似古砂からは、それぞれ、収率よく、再生砂を得ることが出来たが、耐火粒子Aの疑似古砂に対する再生処理においては、機械式研磨処理にて、耐火粒子自体の粉砕が惹起されることが認められ、また焙焼処理では、熱膨張による熱割れにより、粉砕された微粉が著しく発生して、実用的な再生処理を実施することが困難であることが認められた。
【0045】
-実施例2-
実施例1と同様な、解砕、整粒、焙焼処理及び機械式研磨処理の条件を採用して、前記耐火粒子B及びCの疑似古砂に対して、それぞれ、図1に示される各種の再生方式に従って再生操作を実施し、各種の再生耐火粒子を得た。なお、再生方式(6)における焙焼処理前の予備研磨処理は、研磨処理時間を10分間として、焙焼処理後の研磨処理の処理時間:30分よりも短い時間として、軽度の研磨処理が実施されるようにした。
【0046】
次いで、かくして得られた各種の再生耐火粒子を用いて、それら再生耐火粒子に対して、それぞれ、下記表3に示される配合組成において、水ガラスを主成分とする無機バインダ(Geopol W11)とその硬化促進剤(Geotek W303)とを配合せしめて混練し、更に、それら得られた混練砂を、造型機(株式会社清田鋳機製KMTPZ1019)に、エアーブロー:1.5秒/0.4MPaの条件下で吹き込み、そして、金型温度:150℃、ガッシングエアー:150℃/0.3MPa/30秒の条件下にて造型を行なうことにより、22.4mm×22.4mm×170mmの大きさの各種試験片を作製した。
【0047】
その後、かかる得られた各種試験片について、それぞれ、温度:25℃、湿度:50%RHの環境下で、1時間保管した後、縦型電動計測機(株式会社イマダ製MX2-2500N)を用いて、スパン:150mm、降下速度:5mm/分にて抗折強度を測定し、その結果を、下記表4に示した。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
かかる表4の結果から明らかなように、整粒砂に対して研磨処理のみを施すことからなる再生方式(1)において得られた再生耐火粒子(砂)は、鋳型の造型に用いられる前の耐火粒子である新砂と同等以上の抗折強度を発現しているが、粒子表面に活性な水ガラス成分が未だ残存するものであるところから、砂とバインダとを混練した後の混練砂の造型可能な時間である可使時間が短くなり、実用的ではないものと判断された。また、整粒砂に、焙焼処理のみを施すことからなる再生方式(2)や、研磨処理に続いて焙焼処理を施すことからなる再生方式(3)において得られた再生耐火粒子や、更に、解砕した際に、集塵や整粒を行なうことなく、焙焼処理及び研磨処理を施すことからなる再生方式(4)において得られた再生耐火粒子にあっては、新砂よりも抗折強度の低い試験片を与えるに過ぎないものであった。
【0051】
これに対して、焙焼処理に先立って、集塵(微粉の除去)と整粒を実施した再生方式(5)や、更に焙焼処理に先立って、予備研磨処理(処理時間10分)を採用した再生方式(6)において得られた再生耐火粒子は、何れも、新砂以上の抗折強度を有する試験片を与えるものであることが明らかとなり、それら再生方式が、鋳物砂の再生方法として有効であることが認められた。
【0052】
-実施例3-
実施例1において得られた耐火粒子B及びCの疑似古砂に対して、それぞれ、下記表5に示される各種の再生処理を実施し、そしてその得られた再生耐火粒子について、熱間流動性試験を実施した。ここで、熱間流動性試験は、400~800℃の所定温度に予め加熱された電気炉に、各再生耐火粒子を収容した耐火容器を10~60分の所定時間の間、放置することにより、所定の熱処理を施した。そして、そのような熱処理が実施された後に、耐火容器を炉外に取り出し、直ちに、耐火容器を傾けて、かかる耐火容器から再生耐火粒子が排出可能であるか、どうか、を評価した。そして、耐火容器を傾けただけで、そこに収容されている砂が排出可能であったものを○と評価し、また、耐火容器を傾けただけでは収容砂は排出不可であるが、耐火容器を叩くことにより排出可能となったものを△と評価し、更に、耐火容器から収容砂が排出不可であったものを×と評価して、その結果を、下記表5に示した。
【0053】
【表5】
【0054】
かかる表5の結果から明らかなように、解砕処理のみが実施される再生処理の場合にあっては、耐火粒子B及びCの何れもが、400℃での熱処理から熱間流動性が悪いことが認められる。また、解砕・集塵処理が施される再生処理の場合にあっては、400℃での熱間流動性には改善が見られたものの、500℃からの熱間流動性は悪いことが認められる。この熱間流動性の悪化は、焙焼処理する際に、流動不良を起こす原因ともなり、充分な焙焼処理を施すことが出来ないことを示しており、このことから、集塵処理による微粉末除去だけでは、充分な熱間流動性を発揮することが出来ないことが理解される。これに対して、解砕・集塵処理と共に、整粒処理を実施することにより、複数の粒子が凝集した大きな複粒子や微小な粒子、更には解砕時に発生する割れた粒子、あるいは粒子表面に付着していた水ガラス成分を除去することが出来るところから、熱間流動性が改善され、加えて、そのような整粒処理を行なった整粒砂に対して、更に研磨処理(処理時間10分)を施すことにより、加熱温度が800℃となっても、充分な熱間流動性を発揮するものであることが認められた。熱間流動性を悪化させる原因となる微粉末及び微粒子サイズは、具体的には、耐火粒子Bにおいては、解砕・集塵処理では、平均粒子径が6μm程度、整粒処理では、平均粒子径は40μm程度である。いずれも、熱間流動性に悪影響を及ぼすため、それらは、可能な限り除去することが望ましく、平均粒子径が、一般に20μm以下、望ましくは30μm以下、さらに望ましくは45μm以下の微粉末及び微粒子を取り除くことが、望ましいのである。
【0055】
-実施例4-
実施例2における耐火粒子B及びCの古砂に対する再生方式(1)又は(6)により得られた再生耐火粒子に対して、砂と無機バインダとを混練した後、その得られた混練砂について、鋳型の造型が可能な時間である可使時間の評価試験を実施した。ここで、可使時間の評価試験は、再生耐火粒子と無機バインダ、硬化促進剤とを、前記表3に示した配合割合において配合して、混練せしめた後、その得られた混練砂を、温度:25℃、湿度:50%RHの環境下において、所定時間(0~2時間)の間保管し、その後、実施例2に記載の方法にて、それぞれの試験片を造型した。そして、その得られた試験片の重量を測定し、その重量測定値と試験片の体積(22.4mm×22.4mm×170mm/1000)とから、次式:
充填度(g/cm3)=[試験片重量(g)]/[試験片体積(cm3)]
により、充填度を求めて、その結果を、下記表6に示した。
【0056】
【表6】
【0057】
かかる表6の結果から明らかなように、耐火粒子B及びCにおいて、新砂と再生方式(6)にて得られた再生耐火粒子は、保管時間が2時間であっても、充填度は、可使時間が0時間である場合との比較において略変化がなく、充分な可使時間を有していることが認められる。一方、研磨処理のみにより再生処理を行なう再生方式(1)によって得られた再生耐火粒子は、保管時間:1時間において、試験片の造型が不可能となり、そのために、可使時間が不充分であって、再生方法としては実用的でないことが認められる。
【0058】
-実施例5-
実施例2において採用された再生方式(6)にて、耐火粒子B及びCの古砂を再生処理して、得られた再生耐火粒子について、更に、繰り返し同じ再生処理を施して得られた再生耐火粒子について、再生回数毎に、実施例2と同様にして試験片を作製して、その試験片についての抗折強度を測定し、その結果を、下記表7に示した。
【0059】
【表7】
【0060】
かかる表7の結果から明らかなように、耐火粒子Bにあっては、再生方式(6)による再生処理を施すことで、新砂以上の抗折強度が発現され、その後、繰り返し再生処理を実施しても、その抗折強度の変化はほとんど認められず、充分な抗折強度を有しているものであるところから、水ガラスを主成分とする無機バインダを用いて作製される鋳型に使用される鋳物砂において、繰り返しの使用と再生が可能であると判断された。一方、耐火粒子Cにあっては、再生回数が1回の場合には、新砂と同等の抗折強度を有しているが、再生回数が2回、3回と増えることにより、抗折強度は低下傾向にあり、更に、再生回数が3回以上となると、抗折強度の変化は認められなかった。なお、再生処理後の粒子形状を観察するために、再生耐火粒子Cについての粒子形態を顕微鏡写真にて調べたところ、半球状の粒子形状を呈しており、機械式研磨処理によって、粒子自体が割れていることが認められた。
【0061】
-実施例6-
実施例1において得られた耐火粒子B及びCの古砂に対して、各種の再生処理を施して得られた解砕砂又は整粒砂について、700℃までの所定温度で、2時間の焙焼処理を施した後、それぞれの焙焼処理砂の電気伝導度(mS/m)を測定し、その結果を、下記表8に示した。なお、かかる電気伝導度は、砂20gと蒸留水50gとを、撹拌子とスターラーを用いて30分間撹拌した後、デカンテーションにより、その上澄み液を採取して、東亜ディーケーケー株式会社製のマルチ水質計(pH/ORP/イオン/電気伝導率/溶存酸素)MM-43Xを用いて、かかる上澄み液の電気伝導度を測定する方法によって、求めた。ここで、そのような電気伝導度の値が低ければ低い程、再生耐火粒子の表面に残存している活性な水ガラス成分が少ないことを意味している。また、再生処理が解砕だけ又は解砕・集塵だけである耐火粒子B及びCの焙焼温度として、600℃又は700℃を採用した場合にあっては、焙焼処理後の砂が固化し、塊状となったために、電気伝導度の有効な測定を行なうことが出来なかった。
【0062】
【表8】
【0063】
かかる表8の結果から明らかなように、再生処理の方法の如何に関わらず、焙焼温度が高くなればなる程、再生耐火粒子の電気伝導度は低下しており、このことより、焙焼温度が高くなる程、粒子表面に残留している活性な水ガラス成分がより一層不活性化されていることが認められる。また、焙焼温度が400℃から500℃になると、著しく電気伝導度が低下することとなることにより、500℃以上の焙焼温度の採用にて、活性な水ガラス成分が有利に不活性化され得ることとなることが認められるのである。これは、水ガラスに含まれるNa2O やSiO2 が反応して、Na2Si25 が生成するためであり、活性な水ガラス成分を充分に不活性化させるには、500℃以上の焙焼温度が必要であると言うことが出来る。
【0064】
これに対して、再生処理が解砕のみ又は解砕・集塵のみである場合にあっては、実施例3で明らかにされているように、焙焼温度が500℃以上となると、熱間流動性が低下乃至は喪失するようになるために、500℃以上の温度での焙焼処理は困難であると言うことが出来る。このため、再生処理が解砕のみ又は解砕・集塵のみである耐火粒子を、活性な水ガラス成分が充分に不活性化せしめられる温度にまで、焙焼温度を上げて、焙焼処理することは出来ず、そのために、再生処理に際して、整粒を行なうことなく、解砕又は解砕・集塵の工程から、直ちに焙焼処理を行なう再生方式では、それによって得られる再生耐火粒子(再生砂)の特性が充分でないものとなるのである。
図1