(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】治具の製造方法、治具、3次元造形物製造装置、及び3次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240513BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240513BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240513BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240513BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240513BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240513BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2020132115
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】富永 亮二郎
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-084298(JP,A)
【文献】特開2018-024184(JP,A)
【文献】特開2010-094903(JP,A)
【文献】特開2020-111057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元積層造形により第1基板の上に積層造形される凹凸形状の表面を有する第一3次元造形物に対し
て近接する方向へプレスして、前記第一3次元造形物の反りを矯正する際に使用される治具の製造方法であって、
第2基板と、前記第2基板の上に設けられる凹凸形状の表面を有する第二3次元造形物とにより構成されるものを前記治具として製造し、
前記治具は、
前記第一3次元造形物の凹凸形状の表面と前記第二3次元造形物の凹凸形状の表面とを嵌め合わせた状態で加熱すると共に、前記第1基板と前記第2基板とを互いに近接する方向へプレスして、前記第一3次元造形物の反りを矯正するものであり、
前記第一3次元造形物の凹凸形状の表面と前記第二3次元造形物の凹凸形状の表面とを嵌め合わせた状態での前記第一3次元造形物
の凹凸形状の表面のうち少なくとも天面から前記第2基板までの距離を有する3Dデータを作成するデータ作成工程と、
前記3Dデータに基づいて前記第二3次元造形物を前記第2基板の上に樹脂材で3次元積層造形により積層造形することによって
前記治具を製造する製造工程と、を備える治具の製造方法。
【請求項2】
3次元積層造形により第1基板の上に積層造形される凹凸形状の表面を有する第一3次元造形物に対して近接する方向へプレスして、前記第一3次元造形物の反りを矯正する際に使用される治具であって、
前記治具は、
第2基板と、前記第2基板の上に設けられる凹凸形状の表面を有する第二3次元造形物とにより構成され、前記第一3次元造形物の凹凸形状の表面と前記第二3次元造形物の凹凸形状の表面とを嵌め合わせた状態で加熱すると共に、前記第1基板と前記第2基板とを互いに近接する方向へプレスして、前記第一3次元造形物の反りを矯正するものであり、
前記第二3次元造形物が前記第2基板の上に樹脂材で3次元積層造形により積層造形された治具。
【請求項3】
請求項1に記載する治具の製造方法で前記治具を製造すると共に、前記第一3次元造形物を3次元積層造形により前記第1基板の上に積層造形する3次元造形物製造装置であって、
前記第1基板の上に積層造形される前記第一3次元造形物の前記凹凸形状の表面に対して、前記第2基板の上に積層造形される前記第二3次元造形物の前記凹凸形状の表面を嵌め合わせた状態で加熱すると共に、前記第1基板と前記第2基板とを互いに近接する方向へプレスすることによって、前記第一3次元造形物の反りを前記治具を使用して矯正する矯正装置を備える3次元造形物製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載する治具の製造方法が備える前記データ作成工程及び前記製造工程と、
前記第一3次元造形物を3次元積層造形により前記第1基板の上に感温性粘着シートを介して積層造形する造形工程と、
前記第1基板の上に積層造形される前記第一3次元造形物の前記凹凸形状の表面に対して、前記第2基板の上に積層造形される前記第二3次元造形物の前記凹凸形状の表面を嵌め合わせた状態で加熱すると共に、前記第1基板と前記第2基板とを互いに近接する方向へプレスすることによって、前記第一3次元造形物の反りを前記治具を使用して矯正すると同時に、前記第一3次元造形物を前記感温性粘着シートで前記第1基板から剥離させる加熱プレス工程と、を備える3次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元造形物の反りを矯正する際に使用される治具の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元造形物の反りを抑制する技術に関し、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載の技術は、三次元モデルの形状データから生成されるスライスデータに基づいて、前記三次元モデルを構成する構造材料と、前記構造体の造形をサポートするためのサポート体を構成するサポート材料と、を配置した材料層を、ステージの上で順次積層して造形物を製造する造形方法であって、前記ステージの上に製造された造形物に変形が生じる荷重より小さい荷重を加えながら前記材料層を前記ステージの上に製造された造形物の上に積層することを特徴とする。
【0004】
下記特許文献1の記載によれば、この造形方法では、積層時に、造形物に過剰な荷重が加わり造形物の変形が生じるのを抑制し、安定的に立体物を製造することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この造形方法では、積層時に、造形物に変形が生じる荷重より小さい荷重を加えることから、これまでの造形方法を変更する必要がある。
【0007】
本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、3次元造形物の反りを矯正する際に使用される治具の製造方法を、3次元積層造形技術を変更することなく利用して提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、3次元積層造形により第1基板の上に積層造形される凹凸形状の表面を有する第一3次元造形物に対して近接する方向へプレスして、第一3次元造形物の反りを矯正する際に使用される治具の製造方法であって、第2基板と、第2基板の上に設けられる凹凸形状の表面を有する第二3次元造形物とにより構成されるものを治具として製造し、治具は、第一3次元造形物の凹凸形状の表面と第二3次元造形物の凹凸形状の表面とを嵌め合わせた状態で加熱すると共に、第1基板と第2基板とを互いに近接する方向へプレスして、第一3次元造形物の反りを矯正するものであり、第一3次元造形物の凹凸形状の表面と第二3次元造形物の凹凸形状の表面とを嵌め合わせた状態での第一3次元造形物の凹凸形状の表面のうち少なくとも天面から第2基板までの距離を有する3Dデータを作成するデータ作成工程と、3Dデータに基づいて第二3次元造形物を第2基板の上に樹脂材で3次元積層造形により積層造形することによって治具を製造する製造工程と、を備える治具の製造方法を、開示する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、3次元造形物の反りを矯正する際に使用される治具の製造方法を、3次元積層造形技術を変更することなく利用して提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】第1基板の上に積層造形された2個の3次元造形物と、治具とを示す断面図である。
【
図5】第1基板の上に積層造形された各3次元造形物と、治具とを示す断面図である。
【
図6】3次元造形物と治具の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】治具の製造方法のデータ作成工程を説明するための図である。
【
図8】治具の製造方法のデータ作成工程を説明するための図である。
【
図9】治具の製造方法のデータ作成工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1に3次元造形物製造装置10を示す。3次元造形物製造装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット24と、装着ユニット26と、制御装置(
図2,
図3参照)27を備える。さらに、3次元造形物製造装置10は、転写ユニット200と、加熱部214と、加熱プレス部130を備える。それら搬送装置20と第1造形ユニット22と第2造形ユニット24と装着ユニット26と転写ユニット200と加熱部214と加熱プレス部130とは、3次元造形物製造装置10のベース28の上に配置されている。ベース28は、概して長方形状をなしており、以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。なお、Z軸方向は、上下方向である。
【0013】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34とX軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ(
図2参照)38を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36がX軸方向の任意の位置に移動する。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50とステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。Y軸スライドレール50の一端部が、X軸スライダ36に連結されている。そのため、Y軸スライドレール50は、X軸方向に移動可能とされている。そして、そのY軸スライドレール50には、ステージ52が、Y軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、Y軸スライド機構32は、電磁モータ(
図2参照)56を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52がY軸方向の任意の位置に移動する。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上の任意の位置に移動する。
【0014】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面に第1基板(
図4参照)300が載置される。保持装置62は、基台60のX軸方向の両側部に設けられている。そして、基台60に載置された第1基板300のX軸方向の両縁部が、保持装置62によって挟まれることで、第1基板300が固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60をZ軸方向で昇降させる。
【0015】
なお、第1基板300には、鉄やステンレス等の金属で作られたものが使用される。
【0016】
第1造形ユニット22は、ステージ52の基台60に載置された第1基板300の上に回路配線308(
図4参照)を造形するユニットであり、第1印刷部72と、焼成部74とを有している。第1印刷部72は、インクジェットヘッド(
図2参照)76を有しており、基台60に載置された第1基板300の上に、金属インクを線状に吐出する。金属インクは、金属の微粒子が溶剤中に分散されたものである。なお、インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから金属インクを吐出する。
【0017】
焼成部74は、レーザ照射装置(
図2参照)78を有している。レーザ照射装置78は、第1基板300の上に吐出された金属インクにレーザを照射する装置であり、レーザが照射された金属インクは焼成し、回路配線308が形成される。なお、金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子保護膜の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。そして、金属インクが焼成することで、金属製の回路配線308が形成される。
【0018】
また、第2造形ユニット24は、ステージ52の基台60に載置された第1基板300の上に樹脂層306(
図4参照)を造形するユニットであり、第2印刷部84と、硬化部86とを有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド(
図2参照)88を有しており、基台60に載置された第1基板300の上に紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。なお、インクジェットヘッド88は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でもよい。
【0019】
硬化部86は、平坦化装置(
図2参照)90と照射装置(
図2参照)92とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって第1基板300の上に吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一にさせる。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、第1基板300の上に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、第1基板300の上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層306が形成される。
【0020】
また、装着ユニット26は、ステージ52の基台60に載置された第1基板300の上に、第1電子部品(
図4参照)310と、第2電子部品(
図4参照)312を装着するユニットであり、供給部100と、装着部102とを有している。供給部100は、テーピング化された第1電子部品310を1つずつ送り出す第1テープフィーダ(
図2参照)110と、テーピング化された第2電子部品312を1つずつ送り出す第2テープフィーダ(
図2参照)111を複数有しており、各供給位置において、第1電子部品310と第2電子部品312を供給する。なお、第1電子部品310と第2電子部品312の供給は、第1テープフィーダ110と第2テープフィーダ111による供給に限らず、トレイによる供給でもよい。また、第1電子部品310と第2電子部品312の供給は、テープフィーダによる供給とトレイによる供給との両方、あるいはそれ以外の供給でもよい。
【0021】
装着部102は、装着ヘッド(
図2参照)112と、移動装置(
図2参照)114とを有している。装着ヘッド112は、第1電子部品310又は第2電子部品312(以下、第1電子部品310等という。)を吸着保持するための吸着ノズル(図示省略)を有している。吸着ノズルは、正負圧供給装置(図示省略)から負圧が供給されることで、エアの吸引により第1電子部品310等を吸着保持する。そして、正負圧供給装置から僅かな正圧が供給されることで、第1電子部品310等を離脱する。また、移動装置114は、第
1テープフィーダ110と第2テープフィーダ111の各供給位置と、基台60に載置された第1基板300との間で、装着ヘッド112を移動させる。これにより、装着部102では、第1電子部品310等が、吸着ノズルにより保持され、その吸着ノズルによって保持された第1電子部品310等が、第1基板300の上に装着される。
【0022】
転写ユニット200は、ステージ52の基台60に載置された第1基板300の上に、導電性接着剤(図示省略)を転写するユニットである。導電性接着剤は、加熱により硬化する導電性ペーストである。
【0023】
さらに、転写ユニット200は、供給部202と、転写部204とを有している。供給部202は、接着剤供給装置208(
図3参照)を有している。接着剤供給装置208は、導電性接着剤が吐出されたディップ皿(図示省略)を有し、そのディップ皿において、スキージ(図示省略)で押し広げられることによって厚みが均一にされた状態の導電性接着剤を供給する。
【0024】
転写部204は、転写ヘッド210(
図3参照)と、移動装置(
図3参照)212とを有している。転写ヘッド210は、導電性接着剤を転写するためのディップ針(図示省略)を複数有している。ディップ針は、接着剤供給装置208のディップ皿において、導電性接着剤にディップされる。これにより、ディップ針の先端には、導電性接着剤が付着する。なお、移動装置212は、接着剤供給装置208のディップ皿と、基台60に載置された第1基板300との間で、転写ヘッド210を移動させる。これにより、転写部204では、ディップ針の先端に付着された導電性接着剤が、第1基板300の上に転写される。
【0025】
加熱部214は、照射装置(
図3参照)216を有している。照射装置216は、赤外線ランプまたは赤外線ヒータを備えており、第1基板300の上に赤外線を照射する。これにより、第1基板300の上に転写された導電性接着剤が、加熱により硬化する。なお、加熱部214は、照射装置216に代えて、電気炉を備えてもよい。
【0026】
加熱プレス部130は、熱風乾燥炉である。その詳細な説明は後述する。
【0027】
また、制御装置27は、
図2及び
図3に示すように、コントローラ120と、複数の駆動回路122とを備えている。複数の駆動回路122は、
図2に示すように、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、インクジェットヘッド76、レーザ照射装置78、インクジェットヘッド88、平坦化装置90、照射装置92、第1テープフィーダ110、第2テープフィーダ111、装着ヘッド112、移動装置114に接続されている。さらに、複数の駆動回路122は、
図3に示すように、上記接着剤供給装置208、転写ヘッド210、移動装置212、照射装置216に接続されている。コントローラ120は、CPU124、ROM126、RAM128等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路122に接続されている。これにより、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、装着ユニット26、転写ユニット200、加熱部214の作動が、コントローラ120によって制御される。
【0028】
なお、上記加熱プレス部130は、単独で作動する熱風乾燥炉であるが、制御装置27に接続されることによって、コントローラ120で制御されてもよい。
【0029】
また、RAM128には、第1データD1と、第2データD2とが記憶されている。第1データD1と第2データD2の詳細な説明は後述する。
【0030】
3次元造形物製造装置10では、上述した構成によって、
図4に示すように、基台60
に載置された第1基板300の上において、3次元造形物302A,302Bが積層造形され、続いて、3次元造形物302A,302Bの反りが矯正される。そのために、3次元造形物302A,302Bには、その樹脂層306、第1電子部品310、及び第2電子部品312によって形成される凹凸形状の表面314に対して、その上方から治具400が下方向Z1へ移動して重ねられる。
【0031】
治具400は、第2基板402及び凹凸反転造形物404を有している。第2基板402は、第1基板300と同様にして、鉄やステンレス等の金属で作られたものが使用される。凹凸反転造形物404は、第2基板402の上において、樹脂層306と同様にして、積層造形によって紫外線硬化樹脂が硬化した樹脂層406で形成されている。さらに、治具400には、その凹凸反転造形物404の樹脂層406によって、凹凸形状の表面408が形成されている。凹凸反転造形物404の表面408の凹凸形状は、第1基板300の上に積層造形された状態にある、3次元造形物302A,302Bの表面314の凹凸形状と凹凸反転の関係にある。
【0032】
従って、
図5に示すように、第1基板300の上において3次元造形物302A,302Bに治具400が重ねられる場合には、3次元造形物302A,302Bの凹凸形状の表面314と、治具400の凹凸反転造形物404の凹凸形状の表面408とが嵌め合わされた状態にすることが可能である。そのような嵌合状態で3次元造形物302A,302Bに治具400が重ねられると、第1基板300が上方向Z2へ加圧され、第2基板402が下方向Z1へ加圧されることによって、第1基板300と第2基板402とが互いに近接する方向へプレスされる。これにより、3次元造形物302A,302Bは、平坦な状態にされる。さらに、3次元造形物302A,302Bは、第1基板300及び治具400と一緒に加熱される。これにより、3次元造形物302A,302Bは、その反りが矯正される。
【0033】
その後、
図4に示すように、治具400が、上方向Z2へ移動して、3次元造形物302A,302Bの凹凸形状の表面314から離された状態にされると、3次元造形物302A,302Bが、第1基板300から剥がされる。このようにして、3次元造形物製造装置10では、3次元造形物302A,302Bが製造される。
【0034】
以下では、3次元造形物302A,302Bを製造する方法と、治具400を製造する方法とについて、
図6に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。
図6に示すように、3次元造形物の製造方法140は、造形工程S10、データ作成工程S12、製造工程S14、及び加熱プレス工程S16で構成されている。なお、造形工程S10は、
図6に示すフローチャートとは異なり、データ作成工程S12と製造工程S14との間に行われてもよいし、製造工程S14と加熱プレス工程S16との間に行われてもよい。
【0035】
これに対して、治具の製造方法150は、上記データ作成工程S12及び製造工程S14で構成されている。つまり、
図6に示すフローチャートでは、治具の製造方法150は、3次元造形物の製造方法140に含まれている。
【0036】
しかしながら、治具の製造方法150は、上記造形工程S10及び加熱プレス工程S16が行われる3次元造形物製造装置10とは異なる3次元造形物製造装置で行われる場合、3次元造形物の製造方法140から切り離され、3次元造形物の製造方法140とは別個の方法となる。この点は、既存の治具400が使用される場合も、同様である。つまり、これらの場合、治具の製造方法150が3次元造形物の製造方法140から除外されるため、3次元造形物の製造方法140は、造形工程S10及び加熱プレス工程S16で構成される。
【0037】
造形工程S10では、3次元積層造形が行われる。これにより、
図4に示すように、基台60に載置された第1基板300の上において、3次元造形物302A,302Bが積層造形される。具体的には、ステージ52の基台60に第1基板300が載置され、その第1基板300の上面に、感温性粘着シート304が貼り付けられる。その後、ステージ52が、第2造形ユニット24の下方に移動される。第2造形ユニット24では、第1基板300の感温性粘着シート304の上面に対して、紫外線硬化樹脂がインクジェットヘッド88から薄膜状に吐出される。次に、紫外線硬化樹脂の膜厚が均一となるように、紫外線硬化樹脂が平坦化装置90によって平坦化される。続いて、照射装置92によって、紫外線硬化樹脂に紫外線が照射される。これにより、紫外線硬化樹脂が硬化し、第1基板300の上に薄膜状の樹脂層306が形成される。
【0038】
さらに、その薄膜状の樹脂層306の上面に対して、紫外線硬化樹脂がインクジェットヘッド88から薄膜状に吐出される。次に、紫外線硬化樹脂が平坦化装置90によって平坦化され、続いて、紫外線硬化樹脂に照射装置92から紫外線が照射されることで、薄膜状の樹脂層306の上面に薄膜状の樹脂層306が積層される。このようにして、薄膜状の樹脂層306の上面への紫外線硬化樹脂の吐出と、紫外線の照射とが繰り返され、複数の樹脂層306が積層されることで、積層体状の樹脂層306が形成される。なお、樹脂層306と第1基板300は、その間に介在する感温性粘着シート304の粘着力によって貼り付いている。
【0039】
上述した手順により樹脂層306が形成されると、ステージ52が、第1造形ユニット22の下方に移動される。第1造形ユニット22では、樹脂層306の上面に対して、金属インクが、回路パターンに応じて、インクジェットヘッド76から線状に吐出される。続いて、レーザ照射装置78によって、金属インクにレーザが照射される。これにより、金属インクが焼成され、樹脂層306の上面に金属製の回路配線308が形成される。
【0040】
このようにして、樹脂層306の層と回路配線308の層とが複数段形成される。さらに、その際には、樹脂層306の上面において、凹部313が形成される。凹部313内では、回路配線308の一部が露出し、その露出する回路配線308の上面に対して、第1電子部品310又は第2電子部品312が装着される。
【0041】
そのために、ステージ52が、転写ユニット200の下方に移動される。転写ユニット200では、接着剤供給装置208において供給された導電性接着剤が、転写ヘッド210のディップ針の先端に付着される。その付着された導電性接着剤は、転写ヘッド210が移動装置212で移動するに伴い、樹脂層306の凹部313内の回路配線308の上面における、複数の所定箇所に転写される。
【0042】
続いて、ステージ52が、装着ユニット26の下方に移動される。装着ユニット26では、第1テープフィーダ110又は第2テープフィーダ111により供給された第1電子部品310又は第2電子部品312が、装着ヘッド112の吸着ノズルに保持される。その保持された第1電子部品310又は第2電子部品312は、装着ヘッド112が移動装置114で移動するに伴い、樹脂層306の凹部313内の回路配線308の上面に対して、導電性接着剤を介して装着される。その後、ステージ52が、加熱部214の下方に移動される。加熱部214では、照射装置216が、第1基板300の上に赤外線を照射する。これにより、導電性接着剤が硬化し、第1電子部品310又は第2電子部品312が固定される。
【0043】
なお、上記造形工程S10は、コントローラ120が、そのRAM128に記憶されている第1データD1に基づいて、3次元造形物製造装置10を制御することによって行われる。その第1データD1には、樹脂層306と回路配線308の各層をスライスした3
Dプリンター用のデータに加えて、感温性粘着シート304、樹脂層306、回路配線308、第1電子部品310、及び第2電子部品312の各三次元データ等が含まれている。
【0044】
データ作成工程S12では、3次元積層造形で治具400を製造するためのデータが作成される。具体的には、先ず、感温性粘着シート304、樹脂層306、回路配線308、第1電子部品310、及び第2電子部品312の各三次元データが、複合した状態でソリッド化される。これにより、
図7に示すように、3次元造形物302A,302Bのソリッドモデルが、第1基板300の上に積層造形された状態で作成される。
【0045】
次は、凹凸反転造形物404のソリッドモデルが作成される。そのためには、
図8に示すように、凹凸反転造形物404の基となる直方体のソリッドモデルが第1基板300の上に載置された状態で用意され、その直方体のソリッドモデルから、3次元造形物302A,302Bのソリッドモデルが除去される。
【0046】
このようにして作成される凹凸反転造形物404のソリッドモデルには、凹凸反転造形物404の基となる直方体のソリッドモデルの高さL1から、3次元造形物302A,302Bの凹凸形状の表面314の各天面316の高さL2を減ずることによって算出される各値が、凹凸反転造形物404の凹凸形状の表面408の高さL3として含まれている。
【0047】
なお、凹凸反転造形物404の凹凸形状の表面408の高さL3は、3次元造形物302A,302Bが積層造形された第1基板300と、治具400の第2基板402とが互いに近接する方向へプレスされる際(つまり、後述する加熱プレス工程S16)において、3次元造形物302A,302Bの凹凸形状の表面314の各天面316から、治具400の第2基板402までの距離に等しい。
【0048】
さらに、
図9に示すように、凹凸反転造形物404のソリッドモデルは、例えば、凹凸反転造形物404のX軸方向中央を中心にして、Y軸まわりに180°回転した状態にされる。このような状態にされた凹凸反転造形物404のソリッドモデルの三次元データは、凹凸反転造形物404(つまり、樹脂層406)の各層をスライスした3Dプリンター用のデータに変換され、第2データD2として、コントローラ120のRAM128に記憶される。
【0049】
製造工程S14では、コントローラ120が、そのRAM128に記憶されている第2データD2に基づいて、3次元造形物製造装置10を制御することによって、治具400の製造が行われる。その際、
図10に示すように、治具400では、第2基板402の上面において、凹凸形状の表面408を有する凹凸反転造形物404(つまり、樹脂層406)が形成される。その形成手順は、上述した3次元造形物302A,302Bの樹脂層306の形成手順(つまり、3次元積層造形)と同様なため、その詳細な説明は省略する。但し、凹凸反転造形物404の形成では、感温性粘着シート304は使用されない。
【0050】
加熱プレス工程S16では、3次元造形物302A,302Bの反り矯正等が行われる。そのためには、先ず、
図4から
図5に示すように、第1基板300の上に積層造形された3次元造形物302A,302Bに治具400が重ねられる。その際、3次元造形物302A,302Bの凹凸形状の表面314に対して、治具400の第2基板402の上に積層造形された凹凸反転造形物404の凹凸形状の表面408が嵌め合わされる。さらに、第1基板300と第2基板402とが、クランプ等の工具によって締め付けられることによって、互いに近接する方向へプレスされる。つまり、第1基板300は上方向Z2へプレスされ、第2基板402は下方向Z1へプレスされる。このようなプレスによって、
3次元造形物302A,302Bは、平坦な状態にされる。なお、このような締め付け等の作業は、ステージ52の基台60において行われてもよいし、ベース28の外部に設けられた台座において行われてもよい。
【0051】
次に、3次元造形物302A,302Bは、第1基板300と第2基板402を介したプレスで平坦にされた状態のままで、加熱プレス部130内にセットされて熱風乾燥される。これにより、3次元造形物302A,302Bの反りが矯正される。さらに、熱風乾燥による温度上昇によって、感温性粘着シート304は、その粘着力を失い、第1基板300及び3次元造形物302A,302Bから剥がれやすい状態に変化する。
【0052】
その熱風乾燥が終了すると、3次元造形物302A,302Bは、第1基板300と第2基板402を介したプレスで平坦にされた状態のままで、加熱プレス部130内から取り出される。その後、第1基板300と第2基板402を締め付けていたクランプ等の工具が取り外され、さらに、
図5から
図4に示すように、治具400が3次元造形物302A,302Bから取り外される。このような状態において、3次元造形物302A,302Bは、第1基板300の上の感温性粘着シート304から剥がされる。なお、このような熱風乾燥後の作業は、ステージ52の基台60において行われてもよいし、ベース28の外部に設けられた台座において行われてもよい。
【0053】
以上詳細に説明したように、本実施形態では、治具の製造方法150が3次元造形物製造装置10で実行されることによって、3次元造形物302A,302Bの反りを矯正する際に使用される治具400の製造方法を、3次元積層造形技術を変更することなく利用して提供することが可能である。
【0054】
ちなみに、本実施形態において、加熱プレス部130は、「矯正装置」の一例である。3次元造形物302A,302Bは、「第一3次元造形物」の一例である。凹凸反転造形物404は、「第二3次元造形物」の一例である。樹脂層406の紫外線硬化樹脂は、「樹脂材」の一例である。第2データD2は、「3Dデータ」の一例である。高さL3は、「第1基板と第2基板とをプレスする際に、第一3次元造形物の凹凸形状の表面の…天面から第2基板までの距離」の一例である。下方向Z1又は上方向Z2は、「近接方向」の一例である。
【0055】
尚、本開示は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、データ作成工程S12では、感温性粘着シート304の薄さに鑑みて、感温性粘着シート304が存在しないものとして、3次元造形物302A,302Bのソリッドモデルが作成されてもよい。
【0056】
また、第1基板300の上に積層造形された3次元造形物302A,302Bに治具400が重ねられる際において、
図5とは異なり、第1基板300の上面に治具400の凹凸反転造形物404が接しない場合でも、3次元造形物302A,302Bの反り矯正は可能である。そのような場合、データ作成工程S12では、凹凸反転造形物404のソリッドモデルにおいて、第1基板300の上面に接触している領域から上方に存在する部分が除去される。
【0057】
また、加熱プレス部130は、プレス機能を有するものであってもよい。そのような場合、3次元造形物302A,302Bは、その第1基板300と治具400の第2基板402を介したプレスが行われることなく、治具400が重ねられた態で、加熱プレス部130内にセットされる。つまり、3次元造形物302A,302Bは、加熱プレス部130内において、加熱プレス部130のプレス機能により、第1基板300と第2基板402を介してプレスされる。
【符号の説明】
【0058】
10:3次元造形物製造装置、130:加熱プレス部、140:3次元造形物の製造方法、150:治具の製造方法、300:第1基板、302A:3次元造形物、302B:3次元造形物、304:感温性粘着シート、314:凹凸形状の表面、316:天面、400:治具、402:第2基板、404:凹凸反転造形物、406:樹脂層、408:凹凸形状の表面、D2:第2データ、L3:凹凸反転造形物の凹凸形状の表面の高さ、S10:造形工程、S12:データ作成工程、S14:製造工程、S16:加熱プレス工程、Z1:下方向、Z2:上方向