(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240513BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A61F13/15 144
A61F13/511 100
A61F13/511 200
A61F13/511 400
(21)【出願番号】P 2020137962
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(72)【発明者】
【氏名】楊 玉▲亭▼
(72)【発明者】
【氏名】幸田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】富田 美奈
(72)【発明者】
【氏名】湊崎 真行
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06756520(US,B1)
【文献】特開2009-254662(JP,A)
【文献】特開2019-170534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の肌側に位置する繊維層を備える表面シートを具備する吸収性物品であって、
前記繊維層には、親水性成分、油性成分及び多価アルコールが混合状態にある表面処理剤が含まれ
、
前記親水性成分は親水性エキスを含み、前記油性成分は疎水性エキスを含み、
前記繊維層は、上層と下層を含む積層構造を有し、
前記上層は、前記表面処理剤を含む第1の繊維から構成され、
前記下層は、前記表面処理剤を含む第1の繊維と、親水性界面活性剤のみが塗工されている第2の繊維とが混繊されて構成され、
前記第1の繊維と前記第2の繊維は、芯/鞘比が互いに異なる芯鞘構造繊維であり、
前記第2の繊維の芯/鞘比は、前記第1の繊維の芯/鞘比よりも高い
吸収性物品。
【請求項2】
前記油性成分は不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸化合物を含む
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記多価アルコールの炭素数は2~4である
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記親水性成分は、親水性界面活性剤と前記親水性エキスとしての植物抽出エキスを含み、
前記油性成分及び前記多価アルコールは36℃において液体であり、
前記親水性界面活性剤は36℃において固体又は半固体である
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記下層は、
前記第1の繊維と
前記第2の繊
維が互いに融着して構成される
請求項
1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記親水性成分、前記油性成分及び前記多価アルコールのうち少なくとも1つはスキンケア剤であり、単位面積当たりの前記スキンケア剤は、前記下層より前記上層に多く含まれる
請求項
1から5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記表面シートは、前記繊維層からなる第1のシートと、前記第1のシートに重ね合わされた第2のシートを含み、
前記第1のシートと前記第2のシートとは部分的に固定され、前記第1のシートは前記第2のシートに固定されない部分により形成される複数の凸部を有する
請求項1から
6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品を着用すると、蒸れ等によって皮膚にかぶれが生じることがある。そのため、スキンケア効果を付与してかぶれの発生を抑制するべく、吸収性物品にスキンケア剤を含有させた吸収性物品が提案されている。スキンケア剤としては、親水性のものと疎水性のものが知られている。
例えば特許文献1乃至3には、着用者の肌に接する表面シートにスキンケア剤が用いられた吸収性物品が記載されている。特許文献1に記載の発明では、ハマメリスエキス、1,3-ブチレングリコール及び繊維処理剤を含む繊維を含有する吸収性物品用の表面シートが開示されている。特許文献2には、親水性を有する繊維処理剤からなる油層が植物油を含んでおり、該油層が肌側シートをなす不織布を構成する繊維の表面を覆っている吸収性物品が開示されている。特許文献3では、高密度部と低密度部が平面方向に分布した不織布製シートからなる表面シートの低密度部に、高密度部より多い量のスキンケア剤が適用されている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4548971号公報
【文献】実用新案登録第3219622号公報
【文献】特開2015-171649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、スキンケア剤に限らず、疎水性の剤を表面シートに用いる場合、排泄物が吸収体に吸収されにくく、液が拡がりにくくなる傾向がある。また、スキンケア剤に限らず、親水性の剤を表面シートに用いる場合、表面シートで吸収された排泄物の液が表面シートに残りやすい。
【0005】
本発明は、液拡がりやすさと液切れ速度のバランスがとれた表面シートを有する吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、表面シートを具備する。
上記表面シートは、着用者の肌側に位置する繊維層を備える。
上記繊維層には、親水性成分、油性成分及び多価アルコールが混合状態にある表面処理剤が含まれる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明の吸収性物品によれば、液拡がりやすさと液切れ速度のバランスがとれた表面シートを有するものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の吸収性物品の一実施形態としての使い捨ておむつの一例を示す図であり、各部の弾性部材を伸張させて平面状に広げた状態を示す肌側(表面シート側)の模式平面図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した模式断面図である。
【
図3】上記使い捨ておむつにおける表面シートの一部を拡大して示す模式斜視図である。
【
図4】表面シートの凸部の構成を説明するための表面シートの模式部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の吸収性物品について、一実施形態である使い捨ておむつを例にあげ、図面を参照しながら説明する。
<使い捨ておむつの全体構成>
本実施形態の使い捨ておむつ1は、
図1に示すように、いわゆる展開型の使い捨ておむつである。使い捨ておむつ1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、使い捨ておむつ1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。本明細書において、各構成を厚み方向Zの方向からみる場合、平面視という。なお、本明細書では、各構成における肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側に位置する側を示す。各構成における非肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側とは反対側に位置する側を示す。また、厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上、着衣に近い側を下ということがある。使い捨ておむつ1は、以下、おむつ1と称する。
【0010】
おむつ1は、縦方向X腹側に位置する腹側領域Aと、縦方向X背側に位置する背側領域Bと、腹側領域Aと背側領域Bとの間に位置する股下領域Cと、に区分される。
背側領域Bは、股下領域Cから左右の横方向Y外方に突出した側部を含む。当該側部の横方向Yにおける側縁部には、ファスニングテープ6が設けられている。同様に、腹側領域Aは、股下領域Cから左右の横方向Y外方に突出した側部を含む。腹側領域Aの非肌側面には、ファスニングテープ6を接着させるためのランディングテープ(図示せず)が設けられている。背側領域B及び腹側領域Aは、着用時に、ファスニングテープ6によって相互に接着され、一体となって着用者の腰周り及びウエスト周りに配置される。
股下領域Cは、腹側領域A及び背側領域Bよりも幅狭となるように、横方向Y内方に括れた脚繰りが形成され、着用時に着用者の排尿部及び肛門等を含む股間部に配置される。
なお、ここでいう「着用時」は、通常想定される適正な着用位置が維持された状態をいう。
【0011】
図1及び2に示すように、おむつ1は、表面シート2と、裏面シート3と、吸収体4と、サイドシート5と、一対のファスニングテープ6と、中間シート7と、防漏シート8と、を有する。おむつ1は、裏面シート3、防漏シート8、吸収体4、中間シート7及び表面シート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0012】
吸収体4は、縦方向Xに沿って延び、表面シート2と裏面シート3との間に配置される。吸収体4は、着用者の尿等の液状排泄物(以下、単に「液」ということがある。)を表面シート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該液を保持する。
吸収体4は、吸収性コア40と、コアラップシート41と、を有する。
吸収性コア40は、液を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、吸収性コア40は、親水性繊維の積繊体、当該積繊体に吸収性ポリマーを担持させた構成、又は吸水性ポリマーのみからなる構成等を有する。
コアラップシート41は、吸収性コア40を被覆し、例えば吸収性コア40の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート41は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。
【0013】
表面シート2は、吸収体4の肌側(厚み方向Z上方)に配置され、例えば、おむつ1の肌側面の横方向Y中央部を構成する。表面シート2は、液透過性のシート材として構成され、合成繊維又は天然繊維からなる織布や不織布等で形成される。表面シート2の詳細については後述する。
【0014】
中間シート7は、表面シート2と吸収体4との間に配置される。中間シート7には、各種製法によって得られる不織布を用いることができる。中間シート7は、表面シート2から吸収体4への液の透過性の向上、吸収体4に吸収された液の表面シート2への液戻りの防止等の観点から配置される。
【0015】
裏面シート3は、吸収体4の非肌側(厚み方向Z下方)に配置され、例えば、おむつ1の非肌側面のほぼ全体を構成し、着用時のおむつ1の外装を構成する。裏面シート3は、防漏性を有していることが好ましく、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。
【0016】
一対のサイドシート5は、表面シート2の横方向Y側部に配置され、例えば、おむつ1の肌側面の横方向Y側部を構成する。サイドシート5は、防漏性を備えていることが望ましく、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。一対のサイドシート5では、横方向Y中央部側が表面シート2に重なって配置され、横方向Y側部が表面シート2の外側まで延出し、裏面シート3と接合される。
おむつ1では、サイドシート5は、立体ギャザー形成用シートを構成している。サイドシート5の横方向Y中央部側の側端部は、少なくとも股下領域Cにおいて、表面シート2等に接合されない自由端部となっており、弾性部材51が配されている。弾性部材51は、股下領域Cにおいて縦方向Xに延び、例えば腹側領域A及び背側領域Bの一部まで延びていてもよい。弾性部材51を設けることにより、立体ギャザーが構成される。
サイドシート5の横方向Y外方側の側端部近傍に、例えば縦方向Xに伸縮する弾性部材52が配置されることで、着用時に着用者の脚周りにフィットするレッグギャザーが構成される。
弾性部材51及び52は、縦方向Xに伸縮可能な糸状又は帯状の弾性部材である。
【0017】
一対のファスニングテープ6は、機械的面ファスナーの雄部材からなる止着部61を有する。おむつ1の腹側領域Aの非肌側面には、機械的面ファスナーの雌部材からなるランディングテープが設けられている。当該ランディングテープには、ファスニングテープ6の止着部61が着脱自在に止着可能である。
【0018】
防漏シート8は、液不透過性又は液難透過性の樹脂フィルムからなり、裏面シート3の肌側面を被覆する。
【0019】
<表面シート>
[表面シートの構造]
本実施形態のおむつ1では、
図2~4に示すように、表面シート2は、第2のシート22と、第2のシート22上に形成された第1のシート21とが積層されて構成される。
第1のシート21は、複数の凸部23を有する凹凸繊維層(以下、単に「繊維層」という。)から構成される。繊維層は不織布層である。凸部23は、着用者の肌側に向かってドーム状に突出する。第1のシート21と第2のシート22とは多数の接合部24において部分的に熱融着により接合固定されている。接合部24は、凹凸を有する表面シート2の凹部をなす。第1のシート21の接合部24以外の非接合部分は、凸部23を形成している。凸部23の内部は空洞となっている。
第1のシート21は、おむつ1の着用時に着用者の肌側に位置する肌側面21aと、肌側面21aと反対側の非肌側面21bを有する。
凸部23及び凹部をなす接合部24は、交互に且つ一方向(
図3中、縦方向X)に列をなすように配置されており、そのような列が、上記一方向に直交する方向(
図3中、横方向Y)に、多列に形成されている。
【0020】
第1のシート21及び第2のシート22はそれぞれ繊維材料のシート状物からなる。このシート状物は実質的に非伸縮性である。シート状物としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0021】
第1のシート21と第2のシート22が部分的に接合部24で熱融着により接合し、複数の凸部23を有する積層構造の表面シート2は、例えば特開2004-174234号公報に記載される製造方法を用いて製造することができる。
すなわち、相互に噛み合う2つの、周面に凹凸形状を有するギアロール間に、第1のシート21となる不織布のシート状物を噛みこませることによって、当該シート状物が間欠的に延伸され、凹凸賦形加工がなされる。このように凹凸加工されたシート状物において、延伸された部分は凸部23を構成する。一方、延伸されない部分が、表面シート2としたときに、接合部24を構成する。このように複数の凸部23が形成された第1のシート21となるシート状物を、第2のシート22となるシート状物に重ね合わせ、その重ね合わせたものを、少なくとも一方が所定温度に加熱された2つのロール間で狭圧し、部分的に接合する。これにより、第1のシート21と第2のシート22とは、接合部24で熱融着によって部分的に接合され、表面シート2が製造される。表面シート2における第1のシート21側の面は凹凸を有する。一方、表面シート2の第2のシート22側の面はほぼ平坦である。
このように製造された第1のシート21の凸部23は、接合部24と比較して繊維密度が相対的に低い。従って、おむつ1の着用時、着用者の肌9には主に凸部23が接するので、表面シート2における着用者の肌との接触面を柔らかくすることができる。これにより、肌触りをよくすることができ、また、表面シート2との摩擦等によっておむつ1により覆われる肌9に赤みが生じるといった肌のトラブルの発生が抑制される。一方、接合部24は、凸部23と比較して、繊維密度が高く、液を引き込みやすく、液吸収性が高くなっている。
【0022】
図4に示すように、第1のシート21は、上層26と下層27が積層された積層構造を有する。
図4では、模式的に、上層26を太線で示し、下層27を細線で示す。
図4において、円形状の黒点は繊維同士の融着部を表す。
【0023】
上層26は、原料繊維として芯鞘構造を有する第1の繊維に後述する表面処理剤を塗工したものを用いて、不織布化したものである。
第1の繊維は、芯鞘繊維、サイド・バイ・サイド繊維等が好ましく使用でき、特に芯鞘繊維が好ましい。第1の繊維として代表的なものは、芯成分がPET(ポリエチレンテレフタレート)、鞘成分がPE(ポリエチレン)からなり、芯鞘比が質量比で20/80~80/20のものが好ましい。第1の繊維の繊度は、1.5dtex以上5.0dtex以下のものが好ましい。なお、芯鞘比は芯と鞘各々を構成する樹脂の質量比(芯/鞘)を示す。
表面処理剤とは、親水性成分、油性成分及び多価アルコールの3成分を含む混合液だけを意味するのではなく、親水性成分、油性成分及び多価アルコールの3成分が繊維の上又は内部において混合状態で存在している状態のものも含む概念である。本実施形態において、親水性成分として、親水性の界面活性剤や親水性エキス等が含まれうる。また本実施形態では、油性成分として疎水性の界面活性剤、撥水性の化合物や、疎水性エキスが含まれうる。本実施形態では、親水性成分として親水性エキス、及び、油性成分として疎水性エキスを用いることが好ましく、親水性エキス及び疎水性エキスとしてはスキンケア剤が含まれている。表面処理剤の詳細については後述する。なお、親水性の界面活性剤とは、後述する「親水性」の定義に属するものであって、例えばノニオン界面活性剤の場合であれば、グリフィン法のHLB(Hydrophilic-Lipophilic-Balance)において、3以上、好ましくは5以上であることが一つの目安となる。
【0024】
下層27は、原料繊維として芯鞘構造を有する第1の繊維に表面処理剤を塗工したものと、原料繊維として芯鞘構造を有する第2の繊維に親水性界面活性剤を塗工したもの、の2種類の繊維を混繊し、不織布化したものである。
第2の繊維としては、芯鞘繊維、サイド・バイ・サイド繊維等が好ましく使用でき、特に芯鞘繊維が好ましい。第2の繊維として代表的なものは、芯成分がPET(ポリエチレンテレフタレート)、鞘成分がPE(ポリエチレン)からなり、芯鞘比が質量比で20/80~80/20のものが好ましい。
【0025】
上層26に用いる第1の繊維と下層27に用いる第1の繊維は、塗工する表面処理剤の量は同じである。なお、第1の繊維量(坪量)は上層26と下層27で同じであっても、異なってもいても良い。
下層27に用いる第2の繊維は、第1の繊維よりも薄鞘であり、芯鞘比が高い。ここで「芯鞘比」とは、芯鞘構造を有する1本の繊維における、芯/鞘(前者/後者)の質量比率のことである。第2の繊維は、第1の繊維と比較して薄鞘であるため、不織布化したときに繊維同士の融着点が少なく融着面積が小さい。このため、芯鞘比が互いに異なる少なくとも2種類の繊維を用いることにより、芯鞘比がより低い第1の繊維のみを用いる場合と比較して、第1のシート21における繊維の融着面積を小さくすることができる。表面処理剤は繊維同士の融着点にたまりやすいため、融着面積を小さくすることにより表面処理剤の融着点での偏在が抑制される。これにより、第1のシート21において、局所的な表面処理剤の液残りが抑制され、第1のシート21の吸液性を向上させることができる。
また、第2の繊維のように芯鞘比がより高い繊維は、第1の繊維のように芯鞘比がより低い芯鞘繊維よりも繊維同士の融着点が少なくて、動きに追随し易い。このため、本実施形態の表面シート2では、第2の繊維を下層27に含有し、表面シート全体が動きやすくなり、着用時の羽毛立ちを抑えられるという長所を有する。
このように、芯鞘比が互いに異なる第1の繊維31と第2の繊維32を用いることにより、着用者の肌に優しく、かつ、吸液性に優れた第1のシート21とすることができる。
【0026】
更に、上層26及び下層27の一部を構成する第1の繊維には、親水性成分と、油性成分と、多価アルコールの混合液からなる表面処理剤が塗工されている。本実施形態では、親水性成分として親水性界面活性剤と親水性エキスを含み、油性成分として疎水性エキスを含むものである。
これに対し、下層27の一部を構成する第2の繊維には親水性界面活性剤のみが塗工されている。すなわち、第2の繊維には、油性成分としての疎水性エキスと、多価アルコールと、親水性成分の1つである親水性エキスは、含まれていない。薄鞘繊維である第2の繊維は繊維同士の摩擦が大きいため、第2の繊維に親水性界面活性剤のみを塗工することにより、下層27における疎水性エキスや親水性エキスの剥離が抑制される。
【0027】
本実施形態において、上層26及び下層27の双方に含まれる油性成分(疎水性エキス)及び親水性成分(親水性エキス)に、スキンケア剤を用いることができる。スキンケア剤の不織布単位面積あたりの含有量は、下層27より上層26の方が多い。これにより、おむつ1の着用初期におけるスキンケア効果は着用者の肌により近い上層26で実現され、スキンケア効果の持続性は下層27で実現され得る。スキンケア剤の単位面積あたりの含有量の測定方法については後述する。
【0028】
下層27は、表面処理剤含有量が相対的に多い第1の繊維と、少ない第2の繊維とが混繊して互いに融着して構成される。尚、ここで、「相対的に少ない」には、表面処理剤が含まれない場合を含む。
表面処理剤含有量が相対的に少ない第2の繊維を用いることにより、下層27における繊維結合力を調整することができる。すなわち、表面処理剤含有量が相対的に少ない第2の繊維を用いることにより、シートにスキンケア剤を配合することによる親水性界面活性剤の粘性の変化による影響を低減させることができる。親水性界面活性剤の粘性の変化による影響の例として、親水性界面活性剤の粘性増大によって繊維同士が粘着して動きにくくなって肌との摩擦が増大したり、親水性界面活性剤の粘性減少によって羽毛立ちが発生したりする場合がある。
【0029】
本実施形態では、上層26及び下層27の双方に、親水性成分と、油性成分と、多価アルコールを含む表面処理剤が含まれることにより、表面シート2において、吸液性を良好に維持しつつ、液残りの少ない状態を持続させることができる。
【0030】
第1のシート21と第2のシート22からなる、凸部23を有する表面シート2をおむつ1に用いることにより、着用時、表面シート2において、着用者からの液は凸部23の頂部から凸部23内へ侵入し、凸部23内部で液が更に拡散、液切れすることで、吸収体4への液の吸液速度を向上させることができる。
【0031】
(表面処理剤)
上述したように、表面処理剤は、親水性成分と、油性成分と、多価アルコールを含む。以下、具体例をあげる。「スキンケア剤」は、スキンケア効果を着用者に対して付与するものである。「スキンケア効果」とは、皮膚のかぶれ防止、消炎、傷つき防止、抗菌等の皮膚の状態を正常にする効能全般を意味する。
【0032】
親水性成分とは、水溶性又は水分散性を有する親水性成分のことである。より具体的には、親水性成分とは、成分の剤10gをイオン交換水1L中で混合した後に24時間静置したときの溶解量又は分散量が1g以上のものを言い、好ましくは、5g以上の溶解量又は分散量のものであり、より好ましくは、1g以上溶解するもの、一層好ましくは5g以上溶解するもので、最も好ましいのは、完全に溶解するものである。
【0033】
親水性成分としては、親水性の界面活性剤や、親水性の植物抽出エキス等が好ましく使用できる。なお、本発明においては、親水性成分には、多価アルコール成分は含まれない。親水性成分として、親水性の界面活性剤を含む場合には、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が代表的なものとして挙げられる。
【0034】
アニオン系界面活性剤の例としては、疎水性基としてアルキル鎖長が12~32のアルキル基、アルキレン基、を含み、親水性基としてスルホン酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩等を有する構造が好ましい。親水性基の塩はナトリウム及びカリウムであることが好ましい。
【0035】
ノニオン系界面活性剤としては、疎水性基としてアルキル基、アルキレン基、シリコーン基等を含み、親水基の構造として、ポリエチレンオキシド型、ポリオール(多価アルコール)型、ブロックポリマー型、含窒素型などを含むことが好ましい。ポリエチレンオキシド型ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどを含むことが好ましい。ポリオール(多価アルコール)型ノニオン界面活性剤としては、ソルビタンモノアルキレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレート、グリセロールモノアルキレート、ポリグリセリルモノアルキレート、アルキルグルコシド、ペンタエリスリトールモノアルキレートなどを含むことが好ましい。ブロックポリマー型ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどを含むことが好ましい。
なお、ノニオン系界面活性剤としては、親水性・疎水性の指標として度々HLB(Hydrophilic-Lipophilic-Balance)が使用されるが、本明細書の親水性の指標を満たす範囲において、グリフィン法のHLBが3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0036】
両性界面活性剤としては、イミダゾリン型、ベタイン型、アミンオキシド型のものが挙げられるが、アミドベタイン型、アミドスルホベタイン型、カルボベタイン型のものが好適に使用できる。
【0037】
また、親水性成分として植物抽出エキスを含む場合には、桃の葉エキス、ハマメリエキス、竹の葉エキス等といった、スキンケア効果を有するものを含むことが好ましい。表面シート2に供給された尿等の液に親水性成分である植物抽出エキスが溶解又は分散し、肌に移行することによりスキンケア効果を得られることが可能となる。特に、桃の葉エキスは、抗菌作用、抗炎症作用を有し、親水性スキンケア剤として機能することから、好ましい。
【0038】
油性成分として、脂肪酸及び脂肪酸グリセリドや、シリコーンオイル等を使用することができるが、好ましくは、不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸グリセリドを含む。不飽和脂肪酸グリセリドとしては、炭素数12~30の、不飽和結合を1~6個含む脂肪酸とグリセリンのモノエステル、ジエステル又はトリエステルを含むことが好ましく、特に、トリエステルが好ましい。このような不飽和脂肪酸を含む油性成分としては、アルガンオイル、シアバター等の天然物抽出成分である疎水性エキスやスキンケア等の機能を有する疎水性化合物等を用いることができる。不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸グリセリドを含む疎水性の植物油は、スキンケア効果が高いので好ましい。また、アルガンオイルは、肌の水分と油分のバランスを保ち乾燥を防ぎ、疎水スキンケア剤として機能することが可能であって、殊更好ましい。また、アルガンオイルは、オレイン酸、リノール酸といった不飽和脂肪酸を多くふくみ、活性酸素除去力が強く、例えば日焼けによる肌のダメージを軽減させることができる。また、不飽和脂肪酸は、肌バリア効果が期待され、親水性スキンケア剤と共に肌へ移動しスキンケア効果を向上させることができる。
油性成分とは、水溶性及び水分散性を有さないか、又は極めて低い組成物又は化合物のことである。より具体的には、油性成分とは、成分の剤10gをイオン交換水1L中で混合した後に24時間静置したときの溶解量が1g未満のものを言い、好ましくは、0.1g以下の溶解量のものであり、特に好ましくは完全に溶解しないものである。
【0039】
多価アルコールとして、炭素数が2~4のアルコールを用いることができる。典型的には、1,3-ブチレングリコールである。1,3-ブチレングリコールを用いることにより、保湿効果と潤滑性が向上する。潤滑性が向上することにより、肌と不織布との摩擦を低減することができ、肌へのダメージが抑制される。1,3-ブチレングリコールは、保湿性のある液状の水溶性基剤成分で、さらっとした使用感でべたつきが少なく、肌の潤いを保ち、親水性スキンケア剤として機能する。また、1,3-ブチレングリコールは、保湿剤として用いられる他、溶剤としても用いられる。本実施形態では、桃の葉エキスの抽出溶媒に1,3-ブチレングリコールを用いる。1,3-ブチレングリコールは、各成分の相溶性を促進する。これにより、本実施形態に係る表面処理剤を用いて製造された不織布では、アルガンオイル等の油性成分が相分離して剥離するといったことが抑制されるので、表面処理剤を構成する親水性成分と、油性成分と、多価アルコールを不織布に効率よく含有させることができる。尚、ここでは、1,3-ブチレングリコールを例にあげたが、炭素数が2~4の多価アルコールであれば同様の効果を示し、例えばプロピレングリコールを用いてもよい。プロピレングリコールも親水性エキスの抽出溶媒として用いることができる。
【0040】
本実施形態においては、繊維に、親水性成分、油性成分及び多価アルコールが混合状態で含まれているが、油性成分及び多価アルコールは36℃において液体等の流動性の高いものが好ましい。特に、親水性成分、油性成分として、着用者の肌へ移行して、スキンケア等特定の機能を発揮し得る機能剤を選択した場合には、これら成分は混合物状態において流動性が高いことが肌への移行性の観点から好ましい。その場合、36℃で固体又は半固体状の親水性界面活性剤を親水性成分として用いることにより、36℃で液体の油性成分や多価アルコールを溶剤として用いた親水性の植物抽出エキスを繊維に対して安定的に付着させることができるので、使用場面において上述した成分が表面シート2から、吸収性物品を構成する他の部材へ移行し過ぎることを抑制可能となる点で好ましい。特に、上述した液体の機能剤又は液体の機能剤含有混合物である場合には、使用場面において、該機能剤が表面シート2から、吸収性物品を構成する他の部材への移動が抑制されると、着用者の肌への移行する量が維持され易くなる点で好ましい。
【0041】
表面処理剤に含まれる成分として、天然物抽出成分を用いることが好ましい。例えば、おむつ1を着用する乳幼児の肌は、成人と比較して薄く、バリア機能も劣るため、天然物抽出成分を用いることによりアレルギー反応等が発生しにくい。また、天然物抽出成分を用いることにより、おむつ内の肌が赤みを生じるといった肌トラブルが発生しにくい。また、天然物抽出成分を用いることにより、消費者に安心感や爽やかなイメージを付与することができる。
【0042】
本実施形態では、親水性成分と、油性成分と、多価アルコールの混合液から構成される表面処理剤を用いて表面シート2を製造している。このように、表面処理剤中に、多価アルコールを含ませることにより、親水性成分及び油性成分の相溶性が促進される。このような表面処理剤を用いて不織布を製造することにより、不織布における液拡がりやすさと液切れ速度のバランスをとることができ、吸液性が良好で、かつ、シート上の液残りが少ない表面シート2を得ることができる。これにより、肌の水和が抑制され、おむつ1内の肌が赤くなるといった肌トラブルの発生が抑制され、着用者に対し快適な着用感を与えることができる。
ここで、液拡がりとは、不織布を構成する繊維間への液拡がりをいう。不織布に液が滴下されると繊維間に液が拡がって繊維間に液膜が形成される。液切れ速度は、繊維間に液が拡がってから液膜が破れて消えるまでの時間で表される。液切れした状態とは、液膜が破れ、繊維間に液が残らない状態である。
更に、表面処理剤に含まれる親水性成分及び油性成分として機能剤、本実施形態ではスキンケア剤を用いているので、スキンケア効果が発現され、より肌トラブルの発生が抑制され得る。
【0043】
親水性成分、油性成分及び多価アルコール各々の繊維に対する付着量としては、以下の通りである。繊維質量に対して、親水性成分は0.1質量%以上150質量%以下が本発明の効果をより高める観点から好ましく、使用感とのバランスからは0.2質量%以上50質量%以下が好ましい。油性成分は、繊維質量に対して、1×10-4質量%以上0.5質量%以下、特に2×10-4質量%以上0.1質量%以下であると、本発明の効果と使用感とのバランスがとり易く好ましい。多価アルコールは、繊維質量に対して、3×10-4質量%以上、特に8×10-4質量%以上であると、本発明の効果を高いレベルで実現できるが、使用感とのバランスの観点からは上限値は1質量%以下、特に0.5質量%以下であることが好ましい。
【0044】
親水性成分、油性成分及び多価アルコールの合計質量に対して、親水性成分は50質量%以上100質量%未満、特に70質量%以上98質量%であることが液拡がり性の観点から好ましい。油性成分は前記合計質量に対して、0.05質量%以上20質量%以下が液透過性と使用感の観点から好ましく、同様の観点から上限値は5質量%以下であることが好ましい。多価アルコールは、前記合計量に対して、0.1質量%以上98質量%であると、親水成分と油性成分を混合し易くなるととともに使用感が良く、より混合状態を均一に近くなるようにする観点からは0.2質量%以上96質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
(表面シートの製造方法)
表面シート2の製造方法の一例について説明する。
まず、凹凸加工前の第1のシート21の製造方法について説明する。
表面処理剤を塗工した第1の繊維をエアスルー製法により不織布化した上層用ウエブを製造する。表面処理剤を塗工した第1の繊維と、親水性界面活性剤を塗工した第2の繊維とを混繊し、エアスルー製法により不織布化した下層用ウエブを製造する。上層用ウエブと下層用ウエブとを重ね合わせた積層ウエブをエアスルー化して第1のシート21が作成される。
用いる第1の繊維、第2の繊維及び表面処理剤については前述のとおりである。表面処理剤は、親水性成分と、油性成分と、多価アルコールの各成分が均一に混合した状態となっている。上層用ウエブと下層用ウエブには、親水性成分と、油性成分と、多価アルコールとが混合状態にある表面処理剤が含まれる。ここで、「混合状態にある表面処理剤が含まれる」とは、上述したように、繊維層に対して混合液状の表面処理剤が塗工されて得られたことに限定するものではなく、繊維層の、表面処理剤が含まれる領域において、親水性成分(親水性界面活性剤及び親水性エキス)及び油性成分(疎水性エキス)の間に界面が存在する場合を除く趣旨である。「混合状態」の好ましい形態は、表面処理剤の各成分が均一に分散されて存在する状態であるが、これに限られず、親水性成分/油性成分比率が高い領域と、油性成分/親水性成分比率が高い領域それぞれが界面を有さずに存在し、各領域で親水性成分が存在しない、又は油性成分が存在しないということが無ければ良い。ここで「界面」は、表面シート1を縦方向又は横方向に切断して現れる断面において、光学顕微鏡等を使い、適切な倍率で観測することで、界面の有無を決定することができる。
なお、凹凸を有する多層表面シート(本実施形態における表面シート2)は、常法に従って製造可能であるが、代表的には、特開2004-174234号公報に従って、凹凸を形成した第1のシートと平坦な第2のシートを重ね合わせ、接合することによって作成することができる。
【0046】
ここでは、第1のシート21の製造において、表面処理剤を塗工した繊維を不織布化する例をあげたが、親水性界面活性剤が塗工してある繊維を不織布化した後、上記表面処理剤の成分から親水性界面活性剤を除いた成分の混合物を塗工してもよい。
例えば、親水性界面活性剤が塗工してある第1の繊維をエアスルー製法により不織布化した後、アルガンオイル等の疎水性エキスと、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコールと、桃の葉エキス等の親水性エキスとの混合物を、例えばスプレー塗工し、長時間放置することにより表面処理剤の各成分を不織布にいきわたらせて上層用ウエブシを製造する。
次に、親水性界面活性剤が塗工してある第1の繊維及び第2の繊維を混合してエアスルー製法により不織布化した後、アルガンオイル等の疎水性エキスと、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコールと、桃の葉エキス等の親水性エキスとの混合物を、例えばスプレー塗工し、所定時間(例えば、室温で5時間等)放置することにより表面処理剤の各成分をシート中にいきわたらせて下層用ウエブを製造することができる。
このように、親水性界面活性剤が塗工してある繊維からなる不織布に、多価アルコールと、油性成分である疎水性エキスと、親水性成分である親水性エキスとの混合物を塗工し、所定時間放置することにより、親水性エキス、疎水性エキス、多価アルコールを不織布にほぼいきわたらせることができる。このように製造された不織布は、親水成分である親水性界面活性剤及び親水性エキスと、疎水性エキスと、多価アルコールの混合物からなる表面処理剤を塗工した繊維を用いて製造される不織布とほぼ同等の効果を有し、このような状態の不織布においても、親水性成分と、油性成分と、多価アルコールとが混合状態にある表面処理剤が含まれる。このように製造された不織布を表面シートに用いることにより、不織布における液拡がりやすさと液切れ速度のバランスをとれた、吸液性が良好で、かつ、シート上の液残りが少ない表面シートを得ることができる。
【0047】
以上のように、おむつの表面シートの、着用者の肌に接する肌側面を構成する繊維層に、親水性成分と油性成分と多価アルコールが混合状態で含まれることにより、液拡がりやすさと液切れ速度のバランスがとれた表面シートとすることができる。これにより、おむつ着用時の表面シート上の液残りが抑制され、着用者に対し快適な着用感を与えることができる。
【0048】
<補足説明>
[表面処理剤(スキンケア剤)の単位面積当たりの量の測定方法]
上層及び下層に含まれるスキンケア剤の単位面積当たりの量の測定方法について説明する。
表面シート2から、第1のシートと第2のシートを分離後、第1のシートについて更に上層と下層を分離し、上層、下層のそれぞれ縦方向50mm×横方向50mmのサンプルを切り出し、サンプルの面積を算出した。ほぼ平坦な下層から切り出したサンプルの平面積は2500mm2である。複数の凸部を有する上層の平面積の算出においては、走査型電子顕微鏡(例えば日本電子(株)社製のJCM-5100(商品名))により断面を拡大観察し(例えば、倍率150~500倍)、当該断面画像から凹凸寸法を測定し、これに基づき上層の凹凸面の面積を算出する。
サンプルを下部に小さな開孔がある所定の容器にいれる。その後、蓋で繊維を抑え、繊維を容器の下部に押し込み、蓋を取り除く。そこへ10ccのエーテル又は10ccのエタノール/メタノール(体積比率1:1)混合の溶液を投入し、10分間静置する。エーテルは主に油性成分の抽出目的の溶媒であり、エタノール/メタノール混合溶媒は親水性成分及び多価アルコールの抽出目的の溶媒である。その後、再び蓋をのせて、溶液を含む繊維を強く押し付けることで、繊維に含まれている液(エーテル又はエタノール/メタノール成分)を絞り、絞りとった液を秤量皿にいれる。そして、秤量皿を熱することで溶媒を除去した後、この秤量皿の重量を測定し、液をいれる前の元の秤量皿の重量との差から、スキンケア剤の量を測定した。3つのサンプルにおけるスキンケア剤の量を測定し、その平均をスキンケア剤付着量とした。
上述の算出した面積とスキンケア剤付着量とから、単位面積当たりのスキンケア剤の量を算出した。
なお、エタノール/メタノールの抽出溶媒に油性成分が抽出されることがあるので、各繊維に含まれる全ての油性成分がエタノール/メタノールの抽出溶媒で抽出された場合には、エーテルでの抽出は行わなくて良い。親水性成分、油性成分及び多価アルコールの全てがエタノール/メタノールで抽出される場合、各成分が極性を有することを意味するが、親水性成分及び油性成分がスキンケア剤である場合には、着用者肌表面との親和性の観点で有利であるといえ、好ましい。
【0049】
表面シート中に、表面処理剤含有量が互いに異なる第1の繊維と第2の繊維が存在することは、表面処理剤含有量の違いによる繊維の接触角の違いによって確認することができる。具体的には、測定対象となる表面シートから複数の繊維を取り出し、各繊維の接触角を測定することによって確認する。接触角の測定は次の接触角の測定方法によって行う。
尚、第1の繊維と第2の繊維の芯鞘比が異なる、或いは、繊度が異なる場合、電子顕微鏡(SEM)又は光学顕微鏡で繊維断面を観察することにより、芯鞘比又は繊度が異なることを確認することができる。従って、このような場合は、芯鞘比が異なる、或いは、繊度が異なる繊維を複数取り出し、それらの接触角を測定することによって、表面処理剤含有量が互いに異なる第1の繊維と第2の繊維が存在することを確認することができる。
接触角の測定は次のように行った。キーエンス製マイクロスコープVH-8000に中倍率ズームレンズ(照明リング付)を90°に倒した状態で使用し、500倍の条件に設定して計測を行った。測定用サンプルは、表面シートを、縦方向150mm×横方向70mmの大きさにカットしたものを用いた。測定環境は、20℃/50%RHであり、測定用サンプルは、測定面を上向きにした状態として、ウエブ(不織布)のCD方向から観察できるように測定ステージにセットした。次いで、セットされた測定用サンプルに、マイクロピペットにて2μlのイオン交換水を付着させ、付着5秒以内(なるべく2~3秒)に画像を取り込む。付着後短時間で画像取り込みが必要な理由は、付着した水滴がマイクロスコープの測定部から出る光によって蒸発してしまうことと、界面活性剤による接触角変化をおこさないようにするためである。水滴の両端もしくは片端の焦点が鮮明な観察結果10点の接触角を計測し、それらの平均値を「接触角」とした。接触角は、画像または印刷した写真に対して、水滴の繊維との接線を引き、画像解析または分度器等によって、計測を行う。
【0050】
<他の構成例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、以上の実施形態では、吸収性物品として使い捨ておむつの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、例えば、尿取りパットやおりものシート、生理用ナプキン等であってもよい。吸収性物品は、一般に、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有して構成される。
【0051】
また、以上の実施形態では、第1のシートの下層の一部を構成する第2の繊維には親水性界面活性剤のみが含まれる例をあげたが、第2の繊維に、親水性界面活性剤、親水性エキス、疎水性エキス及び多価アルコールの混合液からなる表面処理剤が含まれるように構成されてもよい。
【0052】
また、以上の実施形態では、第1のシートを構成する上層及び下層に含まれる繊維の繊度が同じ例をあげたが、異なってもよい。例えば、上層を構成する繊維の繊度が、下層を構成する繊維よりも細くてもよい。これにより、疎水性エキス及び親水性エキスと、肌との接触面積を大きくすることができる。
【0053】
また、以上の実施形態では、第1のシートを構成する下層は、芯/鞘比が互いに異なる芯鞘構造の第1の繊維と第2の繊維を含むように構成される例をあげたが、これに限定されない。上層及び下層の少なくも一方に含まれる繊維が、芯/鞘比が互いに異なる、少なくとも2種類の芯鞘構造繊維を含んでいてもよい。このような構成においても、芯/鞘比がより高い繊維が含まれることにより、表面処理剤の融着点での偏在を減らすことができ、肌との摩擦を低減することができる。
【0054】
また、以上の実施形態では、表面シートが、複数の凸部を有する繊維層からなる第1のシートと、ほぼ平坦な第2のシートとが重ね合わさった2層からなる積層構造である例をあげたが、これに限定されない。表面シートは、複数の凸部を有する繊維層の1層からなる第1のシートのみから構成されてもよい。
また、以上の実施形態では、第1のシートが上層と下層を含む積層構造を有しているが、単層で構成されてもよい。
また、表面シートは、凹凸を有していない、肌側面が平坦なものであっても本発明の効果を奏する。
このように、積層構造等に限定されず、吸収性物品の表面シートの肌側面側を構成する繊維層に、親水性成分、油性成分及び多価アルコールが混合した状態で表面処理剤が含まれていればよい。
【0055】
また、以上の実施形態では、親水性成分及び油性成分がスキンケア剤である例をあげたが、表面処理剤に含まれる、親水性成分、油性成分及び多価アルコールのうち少なくとも1つがスキンケア剤であってもよい。
【0056】
<1>
着用者の肌側に位置する繊維層を備える表面シートを具備する吸収性物品であって、
前記繊維層には、親水性成分、油性成分及び多価アルコールが混合状態にある表面処理剤が含まれる、吸収性物品。
<2>
前記油性成分は不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸化合物を含む、<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記多価アルコールの炭素数は2~4である、<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記繊維層は、上層と下層を含む積層構造を有し、前記上層及び前記下層はそれぞれ前記表面処理剤を含有する繊維を含む、<1>から<3>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<5>
前記下層は、前記表面処理剤の含有量が相対的に多い第1の繊維と、少ない第2の繊維とを含み、これら繊維が互いに融着して構成される、<4>に記載の吸収性物品。
<6>
前記上層及び前記下層の少なくも一方に含まれる繊維は、芯/鞘比が互いに異なる、少なくとも2種類の芯鞘構造繊維を含む、<4>又は<5>に記載の吸収性物品。
<7>
前記親水性成分、前記油性成分及び前記多価アルコールのうち少なくとも1つはスキンケア剤であり、単位面積当たりの前記スキンケア剤は、前記下層より前記上層に多く含まれる、<4>から<6>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<8>
前記親水性成分として、親水性の界面活性剤を含む、<1>から<7>のいずれか1つの記載の吸収性物品。
<9>
前記親水性の界面活性剤が36℃で固体又は半固体である、<8>に記載の吸収性物品。
<10>
前記親水性成分として、親水性の植物抽出エキスを含む、<9>に記載の吸収性物品。
<11>
前記表面シートは、前記繊維層からなる第1のシートと、前記第1のシートに重ね合わされた第2のシートを含み、前記第1のシートと前記第2のシートとは部分的に固定され、前記第1のシートは前記第2のシートに固定されない部分により形成される複数の凸部を有する、<1>から<10>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<12>
前記表面処理剤は、前記親水性成分、前記油性成分及び前記多価アルコールの3成分を含む混合液である、<1>から<11>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<13>
前記親水性成分、前記油性成分及び前記多価アルコールの3成分は、前記繊維層を構成する繊維の上又は内部において混合状態で存在している、<1>から<11>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<14>
前記油性成分及び前記多価アルコールは36℃において液体である、<1>から<13>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<15>
前記親水性成分として植物抽出エキスを含み、植物抽出エキスが多価アルコールに溶解している、<1>から<14>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<16>
前記親水性成分の1Lのイオン交換水に対する溶解量は1g以上であり、好ましくは5g以上である、<1>から<15>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<17>
前記油性成分の1Lのイオン交換水に対する溶解量は1g未満であり、好ましくは0.1g以下である、<1>から<16>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<18>
前記繊維層の、前記表面処理剤が含まれる領域において、前記親水性成分及び前記油性成分の間に界面が存在しない、<1>から<17>のいずれか1つに記載の吸収性物品。<19>
前記親水性成分、前記多価アルコール及び前記油性成分が均一に分散されて存在する、<18>に記載の吸収性物品。
<20>
前記親水性成分及び前記油性成分を含み、前記油性成分に対して前記親水性成分の比率が高い領域と、前記親水性成分に対して前記油性成分が高い領域それぞれが界面を有さずに存在している、<18>に記載の吸収性物品。
<21>
前記親水性成分が、桃の葉エキス、ハマメリエキス及び竹の葉エキスの少なくとも1種を含む、<1>から<20>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<22>
前記油性成分が、不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸グリセリドを含む、<1>から<21>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<23>
前記不飽和脂肪酸グリセリドとしては、炭素数12~30の、不飽和結合を1~6個含む脂肪酸とグリセリンのモノエステル、ジエステル又はトリエステルを含む、<22>に記載の吸収性物品。
<24>
前記不飽和脂肪酸を含む油性成分が、アルガンオイル又はシアバターである、<22>に記載の吸収性物品。
<25>
前記油性成分と前記親水性成分がスキンケア剤であって、エタノール/メタノールの体積率で1:1の混合溶媒中に全て抽出されるものである、<1>から<24>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0057】
<実施例>
以下、実施例により本発明を更に説明する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0058】
(実施例1)
不織布として、芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンからなる芯鞘構造の繊維(芯鞘比が50質量%:50質量%、繊度が2.3dtex)のエアスルー不織布を用いた。
親水性界面活性剤を含む繊維処理剤組成物が塗工された繊維を不織布化し、該繊維処理剤組成物が0.35質量%付着した不織布を得た。不織布は単層で、表面は平滑なものとした。10cm×10cmに切り出した当該不織布に、1,3-ブチレングリコール、桃の葉エキス、及びアルガンオイルを混合したエタノール溶液又は水溶液の処理液を付け、不織布に処理液をいきわたらせ、その後室温22℃、湿度65RH%で5時間放置して乾燥処理して、実施例1の不織布を得た。実施例1の不織布における各成分の付着量は、親水性界面活性剤が70.397質量%、桃の葉エキスが0.603質量%、1,3-ブチレングリコールが28.396質量%、アルガンオイルが0.603質量%であった。
実施例1の不織布の繊維は、親水性成分である親水性界面活性剤及び桃の葉エキスと、油性成分であるアルガンオイルと、多価アルコールとしての1,3-ブチレングリコールの混合物を含む。
尚、処理後の不織布に付着した各成分の組成は、繊維に付着した処理液の量から算出した。付着した処理液の量は、処理直後と処理前の不織布の重量差から得た。以下の各実施例及び各比較例においても同様の方法で組成を測定した。
また、各実施例及び各比較例では、それぞれ不織布に付着させる処理液の濃度、組成を調整して処理をし、処理後の不織布に付着する各成分が異なるようにした。
なお、繊維処理剤組成物は以下の組成である。
・アルキルリン酸エステルカリウム塩(花王株式会社製 グリッパー4131の水酸化カリウム中和物) 30質量%
・アルキル(ステアリル)ベタイン(花王株式会社製 アンヒトール86B) 15質量%
・ポリオキシエチレン(付加モル数:2)ステアリルアミド(川研ファインケミカルズ製 アミゾールSDE) 30質量%
・ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン変性シリコーン(信越化学工業株式会社製X-22-4515、HLB:5) 25質量%
【0059】
(実施例2から実施例8)
繊維処理剤組成物、桃の葉エキス、1,3-ブチレングリコール及びアルガンオイルの含有量を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして実施例2から実施例8のサンプルを得た。
【0060】
(比較例1から比較例4)
繊維処理剤組成物、桃の葉エキス、1,3-ブチレングリコール及びアルガンオイルの各付着量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1から比較例4のサンプルを得た。
【0061】
(比較例5)
実施例1と同様の繊維処理剤組成物が0.35質量%付着した10cm×10cmに切り出した不織布に、1,3-ブチレングリコール、桃の葉エキスを混合したエタノール溶液又は水溶液の処理液を付け、不織布に処理液をいきわたらせ、その後5時間放置して乾燥した。この乾燥した不織布に対し、更にアルガンオイルのエタノール溶液をつけ、数分放置し、比較例5の不織布を得た。比較例5の不織布における各成分の付着量は、繊維処理剤組成物が69.531質量%、桃の葉エキスが0.6190質量%、1,3-ブチレングリコールが29.127質量%、アルガンオイルが0.722質量%であった。
比較例5の不織布の繊維は、親水性成分と多価アルコールの混合物を付着させた後、アルガンオイルを付着させて製造されており、親水性成分と油性成分と多価アルコールとの混合物を表面処理剤として用いて製造される実施例と製造工程が異なる。当該製法により、アルガンオイルが、親水性成分及び多価アルコール混合物と混合状態にない。
【0062】
[評価方法]
(液切れ評価)
上記実施例1から実施例8及び比較例1から比較例5の不織布について、次の方法で液切れ速度を測定した。2枚のキムワイプ(登録商標)(日本製紙クレシア社製、S-200)上に、測定対象の不織布を配置した。不織布に、人口尿とグリセリンを5:1で混合した液体をピペットで0.02ml滴下し、液体の挙動を、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-5000を用いて観察した。液が滴下されてから、液が繊維間に拡がって液膜が形成され、当該液膜が破膜して消えるまでの時間を測定した。この測定時間を液切れ速度として、液切れを評価した。時間が短いほど、液切れが良好であることを示す。
なお、人工尿は、尿素1.940質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.111質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.198質量%、赤色2号(染料)0.005質量%、水(96.882質量%)及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(0.007質量%)を混合して得たもので、表面張力を53±1dyne/cm(23℃)に調整したものである。
【0063】
(液濡れやすさ評価)
上記実施例1から実施例8及び比較例1から比較例5の不織布について、次の方法で接触角を測定し、液濡れやすさを評価した。不織布に、人工尿をピペットで一滴滴下してマイクロスコープで側面の画像を取得し、当該画像を用いて接触角を測定した。接触角の数値が小さいほど液が拡がりやすいことを示す。
【0064】
[結果]
各実施例における不織布に用いる処理剤の成分、上記評価結果を表1に示す。各比較例における不織布に用いる処理剤の成分、上記評価結果を表2に示す。表中、BGは1,3-ブチレングリコールを示す。AOはアルガンオイルを示す。表中、液切れ評価において、液切れ速度(秒)が65秒未満を評価A、65秒以上75秒以下を評価B、75秒超を評価Cとした。液濡れやすさ評価において、液濡れやすさ(°)が70°未満を評価A、70°以上90°以下を評価B、90°超を評価Cとした。
【0065】
【0066】
【0067】
表1及び2に示すように、親水性成分、油性成分及び多価アルコールが混合してなる表面処理剤を用いて不織布を製造することにより、液拡がりやすさと液切れ速度のバランスがとれた不織布とすることができることが確認された。
【0068】
いずれの実施例1から実施例8も、液切れ速度が比較例1よりも向上し、液拡がりやすさも比較例1と同等以上であることが判った。
親水性成分及び多価アルコールを含み、油性成分を含まない比較例2、及び、親水性界面活性剤及び多価アルコールを含み、油性成分を含まない比較例4の不織布では、液拡がりやすさが比較例1よりも向上しているが、液切れ速度は比較例1と同様に遅い傾向にあることが判った。
また、親水性界面活性剤(親水性成分)を含む繊維処理剤組成物及び油性成分を含み、多価アルコールを含まない比較例3の不織布では、液切れ速度は比較例1よりも向上しているが、比較例1よりも液が拡がりにくい傾向にあることが判った。
また、比較例5の不織布は、親水性界面活性剤(親水性成分)を含む繊維処理剤組成物をベースに多価アルコールと親水性成分が加えられた処理剤で処理した後、油性成分を付着して製造され、油性成分が他の成分と混合状態にないものである。比較例5の不織布は、液切れ速度が比較例1よりも向上しているが、比較例1よりも液が拡がりにくい傾向にあることが判った。すなわち、実施例1~8に示すように、親水性成分、油性成分及び多価アルコールの混合液を表面処理剤として用いて不織布を製造することにより、液拡がりやすさと液切れ速度のバランスがとれた不織布とすることができることが確認された。
【符号の説明】
【0069】
1…使い捨ておむつ(吸収性物品)
2…表面シート
21…第1のシート(繊維層)