(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240513BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240513BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20240513BHJP
D04H 1/542 20120101ALI20240513BHJP
D06M 13/292 20060101ALI20240513BHJP
D06M 13/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A61F13/15 144
A61F13/511 400
A61F13/511 200
A61F5/44 H
D04H1/542
D06M13/292
D06M13/00
(21)【出願番号】P 2020137963
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(72)【発明者】
【氏名】楊 玉▲亭▼
(72)【発明者】
【氏名】富田 美奈
(72)【発明者】
【氏名】幸田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】湊崎 真行
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-254662(JP,A)
【文献】特開2002-200112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
A61F 5/44
D04H 1/00-18/04
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、前記吸収体の肌対向面側に配された表面シートとを具備する吸収性物品であって、
前記表面シートは
、厚み方向と直交する面に亘って第1の繊維と第2の繊維が配された混合繊維領域を有する繊維層を含み、
前記繊維層は着用者の肌に対向するように位置し、
前記第1の繊維と
前記第2の繊維はそれぞれ熱融着性であって、
前記第1の繊維は親水化処理剤及び、着用者の肌に所定の機能をもたらし得る機能剤を含み、
前記第2の繊維は親水化処理剤を含み、
前記混合繊維領域における前記第2の繊維は、前記第1の繊維よりも含まれる機能剤の量が少なく、
前記第1の繊維と前記第2の繊維は熱融着部によって融着されて
おり、
前記第1の繊維と前記第2の繊維は、芯/鞘比が互いに異なる芯鞘構造繊維であり、
前記第2の繊維の芯/鞘比は、前記第1の繊維の芯/鞘比よりも高い
吸収性物品。
【請求項2】
吸収体と、前記吸収体の肌対向面側に配された表面シートとを具備する吸収性物品であって、
前記表面シートは
、厚み方向と直交する面に亘って第1の繊維と第2の繊維が配された混合繊維領域を有する繊維層を含み、
前記繊維層は着用者の肌に対向するように位置し、
前記第1の繊維と
前記第2の繊維はそれぞれ熱融着性であって、
前記第1の繊維は親水化処理剤及び、着用者の肌に所定の機能をもたらし得る機能剤を含み、
前記第2の繊維は親水化処理剤を含み、
前記第1の繊維に対して、前記第2の繊維は、水の接触角が小さく、
前記第1の繊維と前記第2の繊維は熱融着部によって融着されて
おり、
前記第1の繊維と前記第2の繊維は、芯/鞘比が互いに異なる芯鞘構造繊維であり、
前記第2の繊維の芯/鞘比は、前記第1の繊維の芯/鞘比よりも高い
吸収性物品。
【請求項3】
前記繊維層は、厚み方向で二等分した場合、肌対向面側よりも非肌対向面側に前記第2の繊維が多く存在する
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記繊維層の肌対向面は、前記第1の繊維のみから構成される
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1の繊維の繊度は、前記第2の繊維の繊度よりも大きい
請求項1から
4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第1の繊維の繊度は、前記第2の繊維の繊度よりも小さい
請求項1から
4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記表面シートは、前記繊維層からなる第1のシートと、前記第1のシートと前記吸収体との間に配置された、前記第1のシートよりも親水性が高い第2のシートとを備える
請求項1から
6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品を着用すると、蒸れ等によって皮膚にかぶれが生じることがある。そのため、スキンケア効果を付与してかぶれの発生を抑制するべく、吸収性物品に機能剤としてスキンケア剤を含有させた吸収性物品が提案されている。
例えば特許文献1には、おむつかぶれ防止のために、着用者の肌に接する表面シートにローション剤が配置された吸収性物品が記載されている。また、特許文献2には、吸収性物品において、表面シートにローション剤配置エリアと非配置エリアを設けてローション剤を局所的に配置することが記載されている。
また、特許文献3には、機能剤として血液改質剤が配置された吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-200112号公報
【文献】特開2002-172130号公報
【文献】特開2013-63247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品において、表面シートにスキンケア剤等の機能剤を添加する場合、表面シート本来の液透過性に影響を及ぼすことがある。表面シートの液透過性を考慮して機能剤の量を減らすことも考えられるが、このような構成では機能剤の効果が十分に得られにくい場合がある。このように、吸収性物品の表面シートに機能剤を添加する場合、改善の余地があった。
例えば、特許文献1及び特許文献2に開示の発明では、ローション剤を表面シート上に塗工する工程において、剤の配置ムラが生じやすく、その場合には十分なローション効果と液透過性能の両立が困難となる。
また、特許文献3に開示の発明では血液改質剤を表面シートの体液と接触することで通液性を良好にするものであるが、機能剤は体液との接触で吸収体へと流出するため、機能剤としての役割は通液によって損なわれてしまう。
せき
【0005】
本発明は、良好な液透過性能と機能剤効果の発現の両立が可能な表面シートを有する吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、吸収体と、表面シートとを具備する。
上記表面シートは、上記吸収体の肌対向面側に配される。
上記表面シートは、着用者の肌に対向するように位置する、厚み方向と直交する面に亘って第1の繊維と第2の繊維が配された混合繊維領域を有する繊維層を含み、該第1の繊維と該第2の繊維はそれぞれ熱融着性である。
上記第1の繊維は親水化処理剤及び、着用者の肌に所定の機能をもたらし得る機能剤を含む。
上記第2の繊維は親水化処理剤を含む。
上記混合繊維領域における上記第2の繊維は、上記第1の繊維よりも含まれる機能剤の量が少ない。
上記第1の繊維と上記第2の繊維は熱融着部によって融着されている。
【0007】
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、吸収体と、表面シートとを具備する。
上記表面シートは、上記吸収体の肌対向面側に配される。
上記表面シートは、着用者の肌に対向するように位置する、厚み方向と直交する面に亘って第1の繊維と第2の繊維が配された混合繊維領域を有する繊維層を含み、該第1の繊維と該第2の繊維はそれぞれ熱融着性である。
上記第1の繊維は親水化処理剤及び、着用者の肌に所定の機能をもたらし得る機能剤を含む。
上記第2の繊維は、親水化処理剤を含む。
上記第1の繊維に対して、上記第2の繊維は、水の接触角が小さいく。
上記第1の繊維と上記第2の繊維は熱融着部によって融着されている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の吸収性物品によれば、機能剤効果の発現と良好な液透過性能の両立が可能な表面シートを有するものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の吸収性物品の一実施形態としての使い捨ておむつの一例を示す図であり、各部の弾性部材を伸張させて平面状に広げた状態を示す肌側(表面シート側)の模式平面図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した模式断面図であり、第1の実施形態に係る表面シートを備える使い捨ておむつの断面図に相当する。
【
図3】第1の実施形態に係る表面シートの模式部分拡大断面図である。
【
図4】第2の実施形態に係る表面シートの一部を拡大して示す模式斜視図である。
【
図5】第2の実施形態に係る表面シートの凸部の構成を説明するための表面シートの模式部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吸収性物品について、一実施形態である使い捨ておむつを例にあげ、図面を参照しながら説明する。
<使い捨ておむつの全体構成>
本実施形態の使い捨ておむつ1は、
図1に示すように、いわゆる展開型の使い捨ておむつである。使い捨ておむつ1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、使い捨ておむつ1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。本明細書では、各構成における「肌対向面」とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い面である。各構成における「非肌対向面」とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。また、厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上、着衣に近い側を下ということがある。使い捨ておむつ1は、以下、おむつ1と称する。
【0011】
おむつ1は、縦方向X腹側に位置する腹側領域Aと、縦方向X背側に位置する背側領域Bと、腹側領域Aと背側領域Bとの間に位置する股下領域Cと、に区分される。
背側領域Bは、股下領域Cから左右の横方向Y外方に突出した側部を含む。当該側部の横方向Yにおける側縁部には、ファスニングテープ6が設けられている。同様に、腹側領域Aは、股下領域Cから左右の横方向Y外方に突出した側部を含む。腹側領域Aの非肌対向面には、ファスニングテープ6を接着させるためのランディングテープ(図示せず)が設けられている。背側領域B及び腹側領域Aは、着用時に、ファスニングテープ6によって相互に接着され、一体となって着用者の腰周り及びウエスト周りに配置される。
股下領域Cは、腹側領域A及び背側領域Bよりも幅狭となるように、横方向Y内方に括れた脚繰りが形成され、着用時に着用者の排尿部及び肛門等を含む股間部に配置される。
なお、ここでいう「着用時」は、通常想定される適正な着用位置が維持された状態をいう。
【0012】
図1及び2に示すように、おむつ1は、表面シート2と、裏面シート3と、吸収体4と、サイドシート5と、一対のファスニングテープ6と、中間シート7と、防漏シート8と、を有する。おむつ1は、裏面シート3、防漏シート8、吸収体4、中間シート7及び表面シート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0013】
吸収体4は、縦方向Xに沿って延び、表面シート2と裏面シート3との間に配置される。吸収体4は、着用者の尿等の液状排泄物(以下、単に「液」ということがある。)を表面シート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該液を保持する。
吸収体4は、吸収性コア40と、コアラップシート41と、を有する。
吸収性コア40は、液を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、吸収性コア40は、親水性繊維の積繊体、当該積繊体に吸収性ポリマーを担持させた構成、又は吸水性ポリマーのみからなる構成等を有する。
コアラップシート41は、吸収性コア40を被覆し、例えば吸収性コア40の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート41は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。
吸収体4は、肌対向面4aと、肌対向面4aと反対側の非肌対向面4bとを有する。
【0014】
表面シート2は、吸収体4の肌対向面4a側(厚み方向Z上方)に配置され、例えば、おむつ1の肌対向面の横方向Y中央部を構成する。表面シート2は、液透過性のシート材として構成され、合成繊維又は天然繊維からなる織布や不織布等で形成される。表面シート2の詳細については後述する。
【0015】
中間シート7は、表面シート2と吸収体4との間に配置される。中間シート7には、各種製法によって得られる不織布を用いることができる。中間シート7は、表面シート2から吸収体4への液の吸液性の向上、吸収体4に吸収された液の表面シート2への液戻りの防止等の観点から配置される。
【0016】
裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面4b側(厚み方向Z下方)に配置され、例えば、おむつ1の非肌対向面のほぼ全体を構成し、着用時のおむつ1の外装を構成する。裏面シート3は、防漏性を有していることが好ましく、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。
【0017】
一対のサイドシート5は、表面シート2の横方向Y側部に配置され、例えば、おむつ1の肌対向面の横方向Y側部を構成する。サイドシート5は、防漏性を備えていることが望ましく、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。一対のサイドシート5では、横方向Y中央部側が表面シート2に重なって配置され、横方向Y側部が表面シート2の外側まで延出し、裏面シート3と接合される。
おむつ1では、サイドシート5は、立体ギャザー形成用シートを構成している。サイドシート5の横方向Y中央部側の側端部は、少なくとも股下領域Cにおいて、表面シート2等に接合されない自由端部となっており、弾性部材51が配されている。弾性部材51は、股下領域Cにおいて縦方向Xに延び、例えば腹側領域A及び背側領域Bの一部まで延びていてもよい。弾性部材51を設けることにより、立体ギャザーが構成される。
サイドシート5の横方向Y外方側の側端部近傍に、例えば縦方向Xに伸縮する弾性部材52が配置されることで、着用時に着用者の脚周りにフィットするレッグギャザーが構成される。
弾性部材51及び52は、縦方向Xに伸縮可能な糸状又は帯状の弾性部材である。
【0018】
一対のファスニングテープ6は、機械的面ファスナーの雄部材からなる止着部61を有する。おむつ1の腹側領域Aの非肌対向面には、機械的面ファスナーの雌部材からなるランディングテープが設けられている。当該ランディングテープには、ファスニングテープ6の止着部61が着脱自在に止着可能である。
【0019】
防漏シート8は、液不透過性又は液難透過性の樹脂フィルムからなり、裏面シート3の肌対向面を被覆する。
【0020】
<表面シート>
[表面シートの構造説明1]
以下、第1実施形態に係る表面シート2及び第2実施形態に係る表面シート20について説明する。
【0021】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る表面シート2について説明する。
図2及び3に示すように、表面シート2は、肌対向面2aと非肌対向面2bを有する。
図3に示すように、表面シート2は、第1の繊維31と第2の繊維32を含む繊維層であり、おむつ1の着用時、着用者の肌に対向するように位置する。繊維同士は熱融着部25によって部分的に融着されている。
図3及び後述する
図5では、模式的に、第1の繊維31を太線で示し、第2の繊維32を細線で示しており、必ずしも図上の線の太さが繊維の太さを示すものではない。
図3及び5において、円形状の黒点は熱融着した熱融着部25を示す。
【0022】
表面シート2は繊維材料のシート状物からなる。このシート状物は実質的に非伸縮性である。シート状物としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0023】
表面シート2に用いられる第1の繊維31は、親水化処理剤及び機能剤を含む。詳細には、第1の繊維31には、親水化処理剤及び機能剤の混合物である表面処理剤が塗工されている。
第1の繊維31及び第2の繊維32は、熱融着性である。また、生の第1の繊維31及び第2の繊維32、すなわち、親水化処理剤及び機能剤を含まない状態の各繊維31,32は、疎水性、かつ非吸水性であることが好ましい。生の各繊維31,32が疎水性且つ非吸水性であると、表面シート2が体液を保持し難く、液残り性を抑えることが容易となるからである。
第1の繊維31としては、芯鞘繊維、サイド・バイ・サイド繊維等が好ましく使用でき、特に芯鞘繊維が好ましい。第1の繊維として代表的なものは、芯成分がPET(ポリエチレンテレフタレート)、鞘成分がPE(ポリエチレン)からなり、芯鞘比が質量比で20/80~80/20のものが好ましい。第1の繊維の繊度は、1.5dtex以上5.0dtex以下のものが好ましい。なお、芯鞘比は芯と鞘各々を構成する樹脂の質量比(芯/鞘)を示し、芯鞘構造を有する1本の繊維における、芯/鞘(前者/後者)の比率のことである。
親水化処理剤は、繊維表面の体液の透過性を制御する目的で親水性を調整するものであり、特に、疎水性である生の繊維の液弾きを抑制可能にするものである。親水化処理剤としては、親水性の界面活性剤等、公知のものを用いることができる。なお、繊維が疎水性とは、イオン交換水との接触角(以降、単に「接触角」ともいう)が90°以上のものを言い、好ましくは110°以上のものである。また、親水化処理剤は、疎水性繊維の疎水性を低くするものであって、疎水性繊維の接触角を低くすることが出来れば良く、好ましくは接触角を85°以下、より好ましくは80°以下に調整できるものが好ましい。
本発明で含まれる機能剤は、着用者の肌に対して所定の機能を奏し得るものである。より具体的には、表面シート2から機能剤が着用者の肌へ移行して機能を奏し得るものや、機能剤は表面シート2又は吸収性物品に少なくとも一部が残存して、所定の機能を発揮することで間接的に着用者の肌に影響を与えうるものが挙げられる。前者の機能剤の例としては、スキンケア剤、冷感剤等が挙げられ、後者の例としては、抗菌剤、匂い吸収又は抑制剤、芳香剤など、又はこれらの組み合わせがあげられる。本実施形態では、好ましい機能剤としてスキンケア剤が含まれる例をあげる。スキンケア剤を用いることにより、着用者の肌に対してスキンケア効果が発現され、長時間の使用時や排尿・排便後等の赤斑・かぶれ等の抑制を実現し得る。親水化処理剤及び機能剤の詳細については後述する。
【0024】
第2の繊維32は、親水化処理材を含む。詳細には、第2の繊維32には、親水化処理剤が塗工されている。
第2の繊維32としては、芯鞘繊維、サイド・バイ・サイド繊維等が好ましく使用でき、特に芯鞘繊維が好ましい。第2の繊維として代表的なものは、芯成分がPET(ポリエチレンテレフタレート)、鞘成分がPE(ポリエチレン)からなり、芯鞘比が質量比で20/80~80/20のものが好ましい。
【0025】
図3に示すように、表面シート2の肌対向面2aは、第1の繊維31のみが配されて構成される。表面シート2は、第1の繊維31と第2の繊維32とを含む下部27と、第1の繊維31と第2の繊維32の合計質量に対する第1の繊維31の質量の比率が、下部27よりも大きい上部26とからなっている。なお、
図3の実施形態においては、第1の繊維31のみからなる第1の繊維領域である上部26と、シートの厚み方向と直交する面に亘って第1の繊維31と第2の繊維32が混合して配された混合繊維領域である下部27とが積層された構成を有する。
【0026】
第2の繊維32に含まれる機能剤の、混合繊維領域(下部27)における単位面積当たりの量は、第1の繊維31よりも少ないものとなっている。「機能剤含有量が少ない」には、第2の繊維32に機能剤が含まれない場合を含むものとする。本実施形態では、第2の繊維32には機能剤が含まれていない例をあげている。また、以下、「単位面積当たりの機能剤の含有量が多い(又は、少ない)」を単に「機能剤の含有量が多い(又は、少ない)」という。
【0027】
表面シート2は、第1の繊維31と第2の繊維32との繊維間が複数の熱融着部25で融着されることにより自由度が小さい不織布となっており、下部27において、第1の繊維31及び第2の繊維32は表面シート2の面内で安定して分布し易くなっている。また、本実施形態の表面シート2では、上部26において、第1の繊維31の繊維間においても、複数の熱融着部25で融着されている。これにより、第1の繊維31に含まれる機能剤は表面シート2の全面及び厚み方向に亘って安定して配されることになり、十分な量の機能剤を表面シート2に含ませることができ、機能剤効果の発現を良好なものとすることができる。そのうえ、表面シート2では、第1の繊維31よりも機能剤の含有量が相対的に少ない第2の繊維32が全面に亘って配されているので、機能剤の添加による液透過性能への影響が抑制されて、面内に亘ってほぼ均一に良好な液透過性能が確保された表面シート2とすることができる。また、機能剤は熱融着部25にたまりやすいが、下部27では、第1の繊維31よりも機能剤含有量が少ない第2の繊維32を含んで表面シート2が構成されているので、第1の繊維31のみで構成する場合と比較して、熱融着部25での機能剤の偏在が抑制される。本実施形態においては、第2の繊維32には機能剤は含まれていないので、機能剤の偏在がより一層抑制される。これにより、面内でほぼ均一な液透過性能を有する表面シート2とすることができる。
このように、機能剤の含有量が異なる第1の繊維と第2の繊維が、シートの厚み方向と直交する面に亘って配された混合繊維領域を有することにより、良好な液透過性能と機能剤効果の発現の両立が可能な表面シート2とすることができる。
尚、本実施形態では、第2の繊維は機能剤を含まない構成としたが、第1の繊維に含まれる機能剤より少ない量の機能剤を含ませてもよく、同様の効果が得られる。より良好な液透過性能の観点から、第2の繊維32には機能剤を含ませない構成とすることがより好ましい。
【0028】
本発明の機能剤が、親水化処理剤を含んだ第1の繊維31又は第2の繊維32の親水性を下げるものであるもの、言い換えれば、疎水性を高めるものである場合に、本実施形態の表面シート2は、親水性を維持した繊維を含んでいることから、液残り抑制の観点で好ましい。なお、「疎水性を高める」とは、各繊維31,32には親水化処理剤が含まれていて、その繊維表面が一定の親水性(例えば、イオン交換水との接触角が80°以下)であった場合に、機能剤を含ませることによって、その親水性が低くなったときに、疎水性が高められた、と言う。このとき、疎水性が高められた状態での繊維は、水との接触角が90°以上とならなくても良い。したがって、機能剤として、一般的な疎水性(水との接触角が90°以上)であることは必要ではなく、機能剤が付与される繊維又は繊維処理剤を含む繊維の親水性との関係において、低親水性を与えるものであれば良い。もちろん、機能剤を含む繊維における、水との接触角が90°以上の疎水性となっていても良い。
【0029】
本実施形態の表面シート2では、肌対向面2aは第1の繊維31のみが配されて構成される。換言すると、表面シート2の、機能剤を含まない第2の繊維32を有する混合繊維領域(下部27)よりも肌対向側に、機能剤を含む第1の繊維31を有する第1の繊維領域(上部26に相当する)が位置する。これにより、機能剤が着用者に移行しやすく、着用者に与える機能剤の効果を最適化することができる。
【0030】
本実施形態の表面シート2では、当該シートを厚み方向に二等分した場合、肌対向面2a側よりも非肌対向面2b側に第2の繊維32が多く存在している。第2の繊維32に含まれる機能剤の量は、第1の繊維31に含まれる機能剤よりも少なく、第2の繊維32は第1の繊維31よりも液透過性能が高い傾向にある。このため、表面シート2において、吸収体4により近い位置に位置する非肌対向面2b側に第2の繊維32が多く存在するように構成することにより、着用者からの液は肌対向面21a側から非肌対向面21b側へと引き込まれやすく、表面シート2の表面上での液残りを少なくすることができる。
【0031】
第1の繊維31及び第2の繊維32が芯鞘構造を有し、第2の繊維32が、第1の繊維31よりも薄鞘であり、芯鞘比が高いことが好ましい。
第2の繊維32が、第1の繊維31と比較して薄鞘であることにより、不織布化したときに繊維同士の熱融着部が少なく融着面積を小さくすることができる。すなわち、芯鞘比が互いに異なる少なくとも2種類の繊維を用いることにより、芯鞘比がより低い第1の繊維のみを用いる場合と比較して、表面シート2における繊維の融着面積を少なくすることができる。機能剤は繊維同士の熱融着部にたまりやすいため、融着面積を少なくすることにより機能剤の熱融着部での偏在が抑制される。これにより、上述した、第2の繊維32を含んで表面シート2を構成することによる熱融着部25での機能剤の偏在の抑制が更に抑制されることとなり、面内でより均一な液透過性能を有する表面シート2とすることができる。
また、融着面積が小さいことにより、第2の繊維32は動きやすく、肌との摩擦が低い肌に優しい表面シート2とすることができる。
また、第2の繊維32のように芯鞘比がより高い薄鞘繊維は、第1の繊維31のように芯鞘比がより低い繊維よりも繊維同士の摩擦が大きいが、第2の繊維32の機能剤含有量は第1の繊維31よりも少ないため、第2の繊維表面からの機能剤の剥離が抑制される。一方、繊維同士の摩擦がより小さい第1の繊維31に、機能剤がより多く含まれているので、機能剤を第1の繊維31に効率よく保持させることができる。これにより、機能剤効果が効率よく発現され得る表面シート2とすることができる。
このように、芯鞘比が互いに異なり、機能剤の含有量が異なる第1の繊維と第2の繊維を用いることにより、良好な液透過性能と良好な機能剤効果の発現の両立が可能となるとともに、肌触りのよい表面シート2とすることができる。
【0032】
第1の繊維31と第2の繊維32の繊度は同じであってもよいし、異なってもよい。
例えば、第1の繊維31の繊度が第2の繊維32よりも小さい、すなわち第1の繊維31が第2の繊維32よりも細い場合、より滑らかで肌に優しい表面シートとすることができる。
また、第2の繊維32の繊度が第1の繊維31よりも小さい、すなわち第2の繊維32が第1の繊維31よりも細い場合、繊維間の隙間がより狭くなり、この狭い隙間によって液がより引き込まれやすくなり、表面シート2上での液残りをより少なくすることができる。
【0033】
第1の繊維31と第2の繊維32の芯鞘比が異なる、或いは、繊度が異なる場合、電子顕微鏡(SEM)又は光学顕微鏡で繊維断面を観察することにより、芯鞘比又は繊度が異なることを確認することができる。
【0034】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る表面シート20について説明する。第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。
図4に示すように、表面シート20は、肌対向面が凹凸を有し、非肌対向面がほぼ平坦なシートであり、吸収性物品に適用可能である。吸収性物品の一例である上述のおむつ1において、表面シート2の代わりに表面シート20を用いることができる。
【0035】
図4及び5に示すように、表面シート20は、第1のシート21と第2のシート22とが積層されて構成される。おむつ1において、第1のシート21は表面シート2の肌対向面側に位置し、第2のシート22は表面シート2の非肌対向面側に位置する。
第1のシート21は、複数の凸部23を有する凹凸繊維層から構成され、おむつ1の着用時、着用者の肌に対向するように位置する。凹凸繊維層は不織布層である。凸部23は、着用者の肌側に向かってドーム状に突出する。
第2のシート22は、不織布から構成され、平坦な形状を有する。
第1のシート21と第2のシート22とは多数の接合部24において部分的に熱融着により接合固定されている。接合部24は、凹凸を有する表面シート2の凹部をなす。第1のシート21の接合部24以外の非接合部分は、凸部23を形成している。凸部23の内部は空洞となっている。
凸部23及び凹部をなす接合部24は、交互に且つ一方向(
図3中、縦方向X)に列をなすように配置されており、そのような列が、上記一方向に直交する方向(
図3中、横方向Y)に、多列に形成されている。
第1のシート21は、肌対向面21aと、肌対向面21aと反対側の非肌対向面21bを有する。
【0036】
第1のシート21及び第2のシート22はそれぞれ繊維材料のシート状物からなる。このシート状物は実質的に非伸縮性である。シート状物としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0037】
図5に示すように、第1のシート21は、第1実施形態の表面シート2と同様に、第1の繊維31と第2の繊維32を含む繊維層から構成され、繊維同士は熱融着部25によって部分的に融着されている。第1のシート21においても、その肌対向面21aは、第1の繊維31のみが配されて構成される。第1のシート21は、第1の繊維31のみからなる第1の繊維領域である上部26と、シートの厚み方向と直交する面に亘って第1の繊維31と第2の繊維32が混合して配された混合繊維領域である下部27とが積層された構成を有する。
第1のシート21は、全体が凹凸賦形加工されている以外は第1の実施形態の表面シート2と同様の基本構成を有し、同様の効果を有する。本実施形態の表面シート20の第1のシート21は、凹凸賦形加工されて構成されているので、クッション性のある柔らかな肌触りを有する表面シート20とすることができる。
【0038】
本実施形態の表面シート20において、第2のシート22は、第1のシート21よりも親水性が高いことが好ましい。これにより、第1のシート21で吸収された着用者からの液は、第2のシート22により引き込まれやすくなっており、吸収体4へ速やかに吸収されやすい。
従って、表面シート20での液残りが少なくなるので、例えば座位等の体勢による着用者からの圧によって表面シート20内に吸収された液が肌側へ戻る、いわゆる液戻りを抑制することができる。液戻りが抑制されることにより、機能剤の液への過剰な溶出が抑制され、機能剤が発現する効果を長時間持続させることができる。また、液戻りが抑制されることにより、肌の水和が抑制され、おむつ1内の肌が赤くなるといった肌トラブルの発生が抑制される。
表面シート20の親水性の度合いは、前述した第1及び第2の繊維における親水性と同様に、接触角により示すことができ、接触角は後述する接触角測定方法により測定することができる。例えば、第1のシート21の肌対向面21aの接触角を75°以上90°以下程度、第1のシート21の非肌対向面21bの接触角を72°以上85°以下程度とし、これらの接触角よりも小さくなるように第2のシート22の接触角を70°以上83°以下程度とすることが好ましい。
【0039】
[表面処理剤]
上述の通り、第1の繊維には、親水化処理剤と機能剤を含む表面処理剤が塗工されている。第2の繊維32には、親水化処理材が塗工されている。用いられる親水化処理剤及び機能剤の例を以下に示す。
【0040】
(親水化処理剤)
親水化処理剤は、繊維表面の親水性を調整するものであり、公知のものを用いることができる。例えば、親水化処理剤として、繊維表面を親水化させる親水性の界面活性剤等を用いることができる。
親水化処理剤は、36℃において、固体脂質状の活性剤の塊であるものが好ましいのに対し、後述する機能剤である疎水性成分のスキンケア剤や、多価アルコールは36℃で液体であるものが好ましい。疎水性である生の第1及び第2の繊維が親水化処理材剤を含むことにより、液体の疎水性成分のスキンケア剤や親水性成分のスキンケア剤(例えば桃の葉エキス)を繊維に対して安定的に付着させることができる。また、その際に、36℃で液体の多価アルコールを含むと、疎水性スキンケア剤と親水性スキンケア剤は、混合し易くなり、第1及び第2の繊維に対して混合状態で安定的に付着し易くなるので好ましい。
【0041】
(機能剤)
機能剤の例としては、スキンケア剤、冷感剤、抗菌剤、匂い吸収又は抑制剤、芳香剤など、又はこれらの組み合わせがあげられる。機能剤は、典型的にはスキンケア剤であり、以下の説明では機能剤としてスキンケア剤を例にあげて説明する。
「スキンケア剤」は、スキンケア効果を着用者に対して付与するものである。「スキンケア効果」とは、皮膚のかぶれ防止、保湿、消炎、傷つき防止、抗菌、防菌等の皮膚の状態を正常にする効能全般を意味する。
スキンケア剤としては、疎水性成分としての疎水性スキンケア剤、親水性成分としての親水性スキンケア剤、多価アルコールからなるスキンケア剤等がある。スキンケア剤は、1種類又は2種類以上用いてもよい。
【0042】
疎水性スキンケア剤とは、水溶性及び水分散性を有さないか、また極めて溶解性が低いものであって、且つ着用者の肌に対して保護、治癒等の効能を有する組成物又は化合物のことである。例えば、スキンケア剤10gを、100mLイオン交換水(液温25℃)に浸漬し、24時間放置した後に、上記スキンケア剤が10質量%未満の溶解度及び分散度のものを言い、好ましくは、1質量%以下の溶解度及び分散度のものであり、特に好ましくは完全に溶解せず、且つ分散しないものである。
疎水性スキンケア剤としては、炭素鎖長12~28の脂肪酸又は該脂肪酸とグリセリンのエステル化合物や、ワックス、ワセリン等が挙げられ、特に、炭素鎖長12~28の不飽和脂肪酸又は該不飽和脂肪酸のグリセリンエステル化合物を含むことが好ましい。当該グリセリンエステルは、グリセリンと前述の不飽和脂肪酸のモノエステル、ジエステル又はトリエステルであるが、特に、トリエステルであることが好ましい。脂肪酸又は脂肪酸化合物を含む剤としては、アルガンオイル、シアバター等の天然物抽出成分が好ましく使用できる。特に、不飽和脂肪酸を含む疎水性の植物油であるアルガンオイルは、肌の水分と油分のバランスを保ち乾燥を防ぎ、スキンケア剤として機能する。また、アルガンオイルは、オレイン酸、リノール酸といった不飽和脂肪酸を多く含み、活性酸素除去力が強く、例えば日焼けによる肌のダメージを軽減させることができる。
【0043】
多価アルコールのスキンケア剤として、炭素数が2~4のアルコールを用いることができる。典型的には、1,3-ブチレングリコールである。1,3-ブチレングリコールを用いることにより、保湿効果と潤滑性が向上する。潤滑性が向上することにより、肌と不織布との摩擦を低減することができ、肌へのダメージが抑制される。1,3-ブチレングリコールは、保湿性のある液状の水溶性基剤成分で、さらっとした使用感でべたつきが少なく、肌の潤いを保ち、スキンケア剤として機能する。
また、1,3-ブチレングリコールは、保湿剤として用いられる他、溶剤としても用いられる。例えば、後述する桃の葉エキスの抽出溶媒に1,3-ブチレングリコールを用いることができる。1,3-ブチレングリコールは、各成分の相溶性を促進する。機能剤として親水性成分のスキンケア剤及び疎水性成分のスキンケア剤の双方を用いる場合、多価アルコールを用いることによって親水性成分及び疎水性成分のスキンケア剤を均一に分散させることができる。このように均一分散された表面処理剤が塗工された繊維を用いて製造された不織布では、アルガンオイル等の疎水性成分のスキンケア剤が相分離して剥離するといったことが抑制される。
尚、ここでは、1,3-ブチレングリコールを例にあげたが、炭素数が2~4の多価アルコールであれば同様の効果を示し、例えばプロピレングリコールを用いてもよい。プロピレングリコールも親水性エキスの抽出溶媒として用いることができる。
【0044】
一方、親水性スキンケア剤とは、水溶性又は水分散性を有するスキンケア成分のことであり、かぶれや炎症の発生を抑制し、かぶれや炎症が生じた場合には、当該かぶれや炎症の進行を抑制するか、又は当該かぶれや炎症を緩和させることができるものであることが好ましい。例えば、スキンケア剤10gを、100mLのイオン水(液温25℃)に浸漬し、24時間放置した後に、10質量%以上溶解又は分散する場合、スキンケア剤は水溶性又は水分散性を有する、とする。なお、上述した「溶解又は分散」する量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。
親水性スキンケア剤としては、桃の葉エキス、ハマメリスエキス等の天然物抽出成分や炭素数が2~4の多価アルコール、ポリエチレングリコール、スキンケア等の機能を有する親水性化合物等を用いることができる。
これらの中でも、植物抽出エキスである桃の葉エキス(親水性エキス)は、抗菌作用、抗炎症作用を有することから好ましい。表面シート2に供給された液に親水性成分である桃の葉エキスがとけ、肌に移行することによりスキンケア効果が生じる。
【0045】
表面処理剤に含まれる成分として、天然物抽出成分を用いることが好ましい。例えば、おむつ1を着用する乳幼児の肌は、成人と比較して薄く、バリア機能も劣るため、天然物抽出成分を用いることによりアレルギー反応等が発生しにくい。また、天然物抽出成分を用いることにより、おむつ内の肌が赤みを生じるといった肌トラブルが発生しにくい。また、天然物抽出成分を用いることにより、消費者に安心感や爽やかなイメージを付与することができる。
【0046】
例えば、第1の繊維に塗工される表面処理剤として、親水化処理剤と、親水性スキンケア剤と、疎水性スキンケア剤と、多価アルコールとの混合物を用いることができる。親水性スキンケア剤、疎水性スキンケア剤、及び、多価アルコールは、機能剤である。表面処理剤中に、多価アルコールを含ませることにより、親水性成分のスキンケア剤及び疎水性成分のスキンケア剤の相溶性が促進され、親水化処理剤を用いることによりスキンケア剤を繊維に付着させやすくすることができる。このような表面処理剤を含む繊維を用いて製造された不織布は、その厚み方向及び当該厚み方向と直交する面内に亘って親水性スキンケア剤及び疎水性スキンケア剤が存在するものとなる。
【0047】
用いる機能剤の具体例として、親水性スキンケア剤として桃の葉エキスを、疎水性成分のスキンケア剤としてアルガンオイルを、多価アルコールとして1,3-ブチレングリコールを用いてもよい。
親水化処理剤を含む繊維処理材組成物として、以下の組成のものを用いてもよい。
・アルキルリン酸エステルカリウム塩(花王株式会社製 グリッパー4131の水酸化カリウム中和物) 30質量%
・アルキル(ステアリル)ベタイン(花王株式会社製 アンヒトール86B) 15質量%
・ポリオキシエチレン(付加モル数:2)ステアリルアミド(川研ファインケミカルズ製 アミゾールSDE) 30質量%
・ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン変性シリコーン(信越化学工業株式会社製X-22-4515、グリフィン法のHLB:5) 25質量%
【0048】
[親水化処理剤及び機能剤の付着量]
第1の繊維31に対する親水化処理剤及び機能剤の付着量は、以下の通りである。
親水化処理剤は、繊維に所望の親水性を付与する観点から、繊維質量に対して0.1質量%以上150質量%以下が好ましい。
機能剤は、本発明の効果をより高める観点から、繊維質量に対して1×10-4質量%以上1質量%以下が好ましい。
機能剤として、親水性成分、疎水性成分及び多価アルコールを用いる場合、繊維質量に対して、親水性成分は0.1質量%以上150質量%以下が本発明の効果をより高める観点から好ましく、使用感とのバランスからは0.2質量%以上50質量%以下が好ましい。疎水性成分は、繊維質量に対して、1×10-4質量%以上0.5質量%以下、特に2×10-4質量%以上0.1質量%以下であると、本発明の効果と使用感とのバランスがとり易く好ましい。多価アルコールは、繊維質量に対して、3×10-4質量%以上、特に8×10-4質量%以上であると、本発明の効果を高いレベルで実現できるが、使用感とのバランスの観点からは上限値は1質量%以下、特に0.5質量%以下であることが好ましい。
【0049】
第2の繊維32に対する親水化処理剤及び機能剤の付着量は、以下の通りである。
親水化処理剤は、繊維に所望の親水性を付与する観点から、繊維質量に対して0.1質量%以上150質量%以下が好ましい。
第2の繊維32に対する機能剤の付着量は、本発明の効果をより高める観点から、第1の繊維31に付着する機能剤の付着量よりも少なく、第1の繊維31に含まれる機能剤の10質量%以下であることが好ましく、機能剤を含まないことがより好ましい。
【0050】
機能剤として、親水性成分、疎水性成分及び多価アルコールを用いる場合、親水化処理剤、親水性成分、疎水性成分及び多価アルコールの合計質量に対して、親水化処理剤と親水性成分とをあわせた質量は50質量%以上100質量%未満、特に70質量%以上98質量%であることが液拡がり性の観点から好ましい。液拡がりとは、不織布を構成する繊維間への液拡がりのことである。疎水性成分は前記合計質量に対して、0.05質量%以上20質量%以下が液透過性と使用感の観点から好ましく、同様の観点から上限値は5質量%以下であることが好ましい。多価アルコールは、前記合計量に対して、0.1質量%以上98質量%であると、親水成分と疎水性成分を混合し易くなるととともに使用感が良く、より混合状態を均一に近くなるようにする観点からは0.2質量%以上96質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
[第1の繊維と第2の繊維の配合比]
良好な液透過性と機能剤(スキンケア効果有する剤)が着用者肌に機能し易いという観点から、上記表面シート2及び20それぞれの、第1の繊維31と第2の繊維32が混合して含まれる下部27における第1の繊維31と第2の繊維32の配合比は重量比で、95:5以上50:50以下であることが好ましく、80:20以上55:45以下であることがより好ましい。
同様の観点から、上記表面シート2及び第1のシート21それぞれの、第1の繊維31と第2の繊維32の配合比は重量比で98:2以上60:40以下であることが好ましい。
【0052】
[表面シートの製造方法]
第1実施形態に係る表面シート2の製造方法の一例について説明する。
表面処理剤を塗工した第1の繊維をエアスルー製法により不織布化した上部用ウエブを製造する。表面処理剤を塗工した第1の繊維と、親水化処理剤を塗工した第2の繊維とを混合し、エアスルー製法により不織布化した下部用ウエブを製造する。そして、上部用ウエブと下部用ウエブとを重ね合わせた積層ウエブをエアスルー化して不織布化することによって表面シート2を製造する。
【0053】
第2実施形態に係る表面シート20の製造方法の一例について説明する。
凹凸を有する多層の表面シート20は、常法に従って製造可能である。代表的には、上述の表面シート2のような、上部用ウエブと下部用ウエブとを重ね合わせた積層ウエブをエアスルー化して不織布化してなるシートを第1のシート21とし、特開2004―174234号公報に従って、凹凸を形成した第1のシート21と平坦な第2のシート22を重ね合わせ、接合することによって、表面シート20を製造することができる。
【0054】
[補足説明1]
(繊維中の機能剤量(スキンケア剤)の測定方法)
繊維の繊度や繊維長が異なる場合には、その繊度又は繊維長によって繊維を表面シートから分別して収集する。収集した繊維の繊維長を測定する。次いで、収集した繊維(好ましくは2g)を下部に小さな開孔がある所定の容器にいれる。その後、蓋で繊維を抑え、繊維を容器の下部に押し込み、蓋を取り除く。そこへ、疎水性スキンケア剤用抽出溶媒としての10ccのエーテル、又は、主に水溶性スキンケア剤用の抽出溶媒としての10ccのエタノール/メタノール(体積比率1:1)混合の溶液を投入し、6時間静置する。その後、再び蓋をのせて、溶液を含む繊維を強く押し付けることで、繊維に含まれている液である、エーテルまたはエタノール/メタノール成分を絞り、絞りとった液を秤量皿にいれる。そして、秤量皿を熱することで溶媒を除去した後、この秤量皿の重量を測定し、液をいれる前の元の秤量皿の重量との差から、スキンケア剤の量を測定する。3つのサンプルにおけるスキンケア剤の量を測定し、その平均をスキンケア剤付着量とする。得られたスキンケア量と繊維長(合計値)から単位長さ当たりのスキンケア量を算出し繊維1本あたりの質量とする。なお、エタノール/メタノールの抽出溶媒に疎水性スキンケア剤が抽出されることがあるので、各繊維に含まれる全てのスキンケア剤がエタノール/メタノールの抽出溶媒で抽出された場合には、エーテルでの抽出は行わなくて良い。なお、全スキンケア剤がエタノール/メタノール混合溶媒で抽出できる場合には、スキンケア剤の極性に起因して、着用者の肌表面との親和性が高いと言え、良好なスキンケア効果が期待できるので好ましい。
【0055】
(機能剤(スキンケア剤)の単位面積当たりの量の測定方法)
上部26及び下部27に含まれる機能剤としてのスキンケア剤の単位面積当たりの量の測定方法について説明する。
表面シート2から、第1のシートと第2のシートを分離後、第1のシートについて更に上層と下層を分離し、上層、下層のそれぞれ縦方向50mm×横方向50mmのサンプルを切り出し、サンプルの面積を算出した。ほぼ平坦な下層から切り出したサンプルの平面積は2500mm2である。複数の凸部を有する上層の平面積の算出においては、走査型電子顕微鏡(例えば日本電子(株)社製のJCM-5100(商品名))により断面を拡大観察し(例えば、倍率150~500倍)、当該断面画像から凹凸寸法を測定し、これに基づき上層の凹凸面の面積を算出する。
サンプルを下部に小さな開孔がある所定の容器にいれる。その後、蓋で繊維を抑え、繊維を容器の下部に押し込み、蓋を取り除く。そこへ10ccのエーテル又は10ccのエタノール/メタノール(体積比率1:1)混合の溶液を投入し、10分間静置する。エーテルは主に油性成分の抽出目的の溶媒であり、エタノール/メタノール混合溶媒は親水性成分及び多価アルコールの抽出目的の溶媒である。その後、再び蓋をのせて、溶液を含む繊維を強く押し付けることで、繊維に含まれている液(エーテル、又は、エタノール/メタノール成分)を絞り、絞りとった液を秤量皿にいれる。そして、秤量皿を熱することで溶媒を除去した後、この秤量皿の重量を測定し、液をいれる前の元の秤量皿の重量との差から、スキンケア剤の量を測定した。3つのサンプルにおけるスキンケア剤の量を測定し、その平均をスキンケア剤付着量とする。
上述の算出した面積とスキンケア剤付着量とから、単位面積当たりのスキンケア剤の量を算出する。
なお、エタノール/メタノールの抽出溶媒に油性成分が抽出されることがあるので、各繊維に含まれる全ての油性成分がエタノール/メタノールの抽出溶媒で抽出された場合には、エーテルでの抽出は行わなくて良い。スキンケア剤の全てがエタノール/メタノールで抽出される場合、各成分が極性を有することを意味するが、親水性成分及び油性成分がスキンケア剤である場合には、着用者肌表面との親和性の観点で有利であるといえ、好ましい。
【0056】
[表面シートの構造説明2]
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の使い捨ておむつに用いられる表面シートについて説明する。特に説明しない事項については、第1の実施形態及び第2の実施形態の説明が適用される。本実施形態では、第1の繊維は親水化処理剤と機能剤を含有しており、第2の繊維は親水化処理剤を含有している。そして、第1の繊維と第2の繊維は熱融着部によって融着されている点では第1及び第2の実施形態と共通するが、水の接触角が、第1の繊維より第2の繊維の方が小さい点に特徴を有するものである。すなわち、第1の繊維は第2の繊維に対して疎水的であって、第2の繊維は第1の繊維に対して親水的である。
【0057】
上述した第1及び第2の実施形態と同様に、上述した第1の繊維と第2の繊維の水との接触角の関係が、第1の繊維と第2の繊維の繊維間が融着されていることと相俟って、液透過性能への影響が抑制されて、面内に亘ってほぼ均一に良好な液透過性能が確保された表面シート2及び第1のシート21とすることができる。また、第1の繊維よりも親水性の高い第2の繊維の存在によって、表面シートに排泄された体液の引き込み性が確保されて、表面シート上への液残りを抑制することが容易となる。更に、表面シート及び第1のシートが上部26と下部27を有する構造である場合には、上部26から下部27への液透過性が良好となるとともに、上部26は液残りが抑制されてサラッとした感触が得られやすい。特に、本実施形態においては、第2の繊維32には機能剤は含まれていないので、機能剤の融着部への偏在がより一層抑制されるので、面内でほぼ均一な液透過性能を有する表面シート2及び第1のシート21とすることができる。
このように、親水度が異なる第1の繊維と第2の繊維が、シートの厚み方向と直交する面に亘って配された混合繊維領域を有することにより、良好な液透過性能と機能剤効果の発現の両立が可能な表面シート2及び第1のシート21とすることができる。
【0058】
このように、第1の繊維と第2の繊維の、水との接触角の関係を本実施形態のようにするには、例えば、第1の繊維と第2の繊維に含まれる機能剤として、疎水性の高い剤の含有量を第1の繊維よりも第2の繊維で少なくする方法や、第1の繊維に含まれる親水性の成分量を第2の繊維に含まれる親水性の成分量より少なくする方法、等が挙げられる。しかしながら、第1及び第2の実施形態で説明したように、機能剤の含有量を第1の繊維と第2の繊維で異ならせる方法の方が、着用者の肌への機能剤(特に、スキンケア効果を有する剤)の作用が効果的に得られやすいという点と、良好な液透過性という点が両立できる点から好ましいと言える。
【0059】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態の使い捨ておむつに用いられる表面シートについて説明する。特に説明しない事項については、第1の実施形態及び第2の実施形態の説明が適用される。本実施形態では、第1の繊維は親水化処理剤と機能剤を含有しており、第2の繊維は親水化処理剤を含有している。そして、第1の繊維と第2の繊維は熱融着部によって融着されている点では第1及び第2の実施形態と共通するが、水の接触角が、第1の繊維より第2の繊維の方が大きい点に特徴を有するものである。すなわち、第1の繊維は第2の繊維に対して親水的であって、第2の繊維は第1の繊維に対して疎水的である。第1の繊維より疎水的な第2の繊維を含むことによって、第1の繊維に体液が維持され難くなり、吸収体への体液の移行がスムーズになり得る。特に、第1の繊維量が第2の繊維量より多い場合には、有効である。
【0060】
[補足説明2]
表面シート中に、水の接触角が互いに異なる第1の繊維と第2の繊維が存在することは、以下の方法によって確認することができる。具体的には、測定対象となる表面シートから複数の繊維を取り出し、各繊維の接触角を測定することによって確認する。接触角の測定は次の接触角の測定方法によって行う。
尚、第1の繊維と第2の繊維の芯鞘比が異なる、或いは、繊度が異なる場合、電子顕微鏡(SEM)又は光学顕微鏡で繊維断面を観察することにより、芯鞘比又は繊度が異なることを確認することができる。従って、このような場合は、芯鞘比が異なる、或いは、繊度が異なる繊維を複数取り出し、それらの接触角を測定することによって、水の接触角が互いに異なる第1の繊維と第2の繊維が存在することを確認することができる。
【0061】
(接触角の測定方法)
接触角は、繊維や第1及び第2のシート等の構成物の疎水性、親水性の程度を示す指標となるもので、以下に説明する測定方法により測定される。接触角の値が小さいほど繊維や構成物の親水性が高いと判断できる。一般に、親水性に分類される繊維や構成物の接触角θは90°以下(好ましくは85°以下であり、小さいほど親水性は高い。)、疎水性に分類される繊維の接触角θは90°超(好ましくは90°超~140°)である。
測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA-Jを用いる。接触角測定には蒸留水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC-25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に、画像が録画される。録画された映像において、繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.62、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシュホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維とのなす角を算出し、接触角とする。尚、測定用サンプル(表面シートから取り出して得られる繊維)は、表面シートの測定対象部位に位置する繊維を、最表層から繊維長1mmで裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持し、該繊維1本につき異なる2箇所の位置で接触角を測定する。当該測定対象部位において、N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10か所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、該測定対象部位での接触角と定義する。
第1のシートと第2のシートを有する積層構造の表面シートにおける1のシートの接触角の測定では、第1のシートと第2のシートとを分離した後、第1のシートの肌対向面と非肌対向面をそれぞれ測定対象部位とし、その最表層に位置する繊維を取り出して測定を行う。この測定結果を、第1のシートの肌対向面及び非肌対向面それぞれの接触角とする。この測定結果は、第1のシートの疎水性、親水性の度合いを示すものである。
一方、第2のシートの接触角の測定では、第2のシートの肌対向面を測定対象部位とし、その最表層に位置する繊維を取り出して、測定を行う。この測定結果を、第2のシートの接触角とする。この測定結果は、第2のシートの疎水性、親水性の度合いを示すものである。
【0062】
<他の構成例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、以上の実施形態では、吸収性物品として使い捨ておむつの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、尿取りパットやおりものシート、生理用ナプキン等であってもよい。吸収性物品は、一般に、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有して構成される。
【0063】
<1>
吸収体と、前記吸収体の肌対向面側に配された表面シートとを具備する吸収性物品であって、
前記表面シートは、着用者の肌に対向するように位置する、厚み方向と直交する面に亘って第1の繊維と第2の繊維が配された混合繊維領域を有する繊維層を含み、該第1の繊維と該第2の繊維はそれぞれ熱融着性であって、
前記第1の繊維は親水化処理剤及び、着用者の肌に所定の機能をもたらし得る機能剤を含み、
前記第2の繊維は親水化処理剤を含み、
前記混合繊維領域における前記第2の繊維は、前記第1の繊維よりも、含まれる機能剤の質量が少なく、
前記第1の繊維と前記第2の繊維は熱融着部によって融着されている、吸収性物品。
<2>
吸収体と、前記吸収体の肌対向面側に配された表面シートとを具備する吸収性物品であって、
前記表面シートは、着用者の肌に対向するように位置する、厚み方向と直交する面に亘って第1の繊維と第2の繊維が配された混合繊維領域を有する繊維層を含み、該第1の繊維と該第2の繊維はそれぞれ熱融着性であって、
前記第1の繊維は親水化処理剤及び、着用者の肌に所定の機能をもたらし得る機能剤を含み、
前記第2の繊維は親水化処理剤を含み、
前記第1の繊維に対して、前記第2の繊維は、水の接触角が小さく、
前記第1の繊維と前記第2の繊維は熱融着部によって融着されている、吸収性物品。
<3>
吸収体と、前記吸収体の肌対向面側に配された表面シートとを具備する吸収性物品であって、
前記表面シートは、着用者の肌に対向するように位置する、厚み方向と直交する面に亘って第1の繊維と第2の繊維が配された混合繊維領域を有する繊維層を含み、該第1の繊維と該第2の繊維はそれぞれ熱融着性であって、
前記第1の繊維は親水化処理剤及び、着用者の肌に所定の機能をもたらし得る機能剤を含み、
前記第2の繊維は親水化処理剤を含み、
前記第1の繊維に対して、前記第2の繊維は、水の接触角が大きく、
前記第1の繊維と前記第2の繊維は熱融着部によって融着されている、吸収性物品。
<4>
前記繊維層は、厚み方向で二等分した場合、肌対向面側よりも非肌対向面側に前記第2の繊維が多く存在する、<1>から<3>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<5>
前記繊維層の肌対向面は、前記第1の繊維のみから構成される、<1>から<4>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<6>
前記第1の繊維と前記第2の繊維は、芯/鞘比が互いに異なる芯鞘構造繊維である、<1>から<5>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<7>
前記第2の繊維の芯/鞘比は、前記第1の繊維の芯/鞘比よりも高い、<6>に記載の吸収性物品。
<8>
前記第1の繊維の繊度は、前記第2の繊維の繊度よりも大きい、<1>から<7>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<9>
前記第1の繊維の繊度は、前記第2の繊維の繊度よりも小さい、<1>から<7>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<10>
前記表面シートは、前記繊維層からなる第1のシートと、前記第1のシートと前記吸収体との間に配置された、前記第1のシートよりも親水性が高い第2のシートとを備える、<1>から<9>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<11>
前記第1のシートの肌対向面の接触角を75°以上90°以下、前記第1のシートの非肌対向面の接触角を72°以上85°以下とし、これらの接触角よりも小さくなるように前記第2のシートの接触角を70°以上83°以下とする、<10>に記載の吸収性物品。
<12>
前記機能剤はスキンケア剤である、<1>から<11>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<13>
前記スキンケア剤は、親水性スキンケア剤と疎水性スキンケア剤とを含む、<12>に記載の吸収性物品。
<14>
前記スキンケア剤は、更に、炭素数2~4の多価アルコールを含む、<13>に記載の吸収性物品。
<15>
前記スキンケア剤は、疎水性スキンケア剤として、炭素鎖長12~28の脂肪酸又は該脂肪酸とグリセリンのエステル化合物や、ワックス、ワセリンから選ばれる1種以上を含む、<12>から<14>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<16>
前記疎水性スキンケア剤は、炭素鎖長12~28の不飽和脂肪酸又は該不飽和脂肪酸のグリセリンエステル化合物を含む、<15>に記載の吸収性物品。
<17>
前記疎水性スキンケア剤は、アルガンオイルを含む、<16>に記載の吸収性物品。
<18>
全ての前記スキンケア剤がエタノール/メタノール(体積比率1:1)の混合溶媒で抽出可能である、<12>から<17>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<19>
前記親水化処理剤は、親水性の界面活性剤である、<1>から<18>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<20>
生の前記第1及び第2の繊維のイオン交換水との接触角は90°以上、好ましくは110°以上である、<1>から<19>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<21>
前記親水化処理剤を含む前記第1及び第2の繊維の接触角が85°以下、より好ましくは80°以下である、<1>から<20>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<22>
前記表面シートの、前記混合繊維領域における第1の繊維31と第2の繊維32の配合比は重量比で、好ましくは95:5以上50:50以下、より好ましくは80:20以上55:45以下である、<1>から<21>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<23>
前記繊維層の、前記第1の繊維31と前記第2の繊維32の配合比は重量比で98:2以上60:40以下である、<1>から<22>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
【符号の説明】
【0064】
1…使い捨ておむつ(吸収性物品)
2…表面シート(繊維層)
4…吸収体
4a…肌対向面
20…表面シート
21…第1のシート(繊維層)
25…熱融着部
27…下部(混合繊維領域)
31…第1の繊維
32…第2の繊維