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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/046 20140101AFI20240513BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20240513BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20240513BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20240513BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20240513BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/067
B23K26/53
B23K26/04
B23K26/03
H01L21/78 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020139238
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035132
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】荻原 孝文
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030139(JP,A)
【文献】特開2017-174941(JP,A)
【文献】特開2006-145810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z方向と交差する表面を有する対象物にレーザ光を照射することで、前記Z方向に垂直なX方向に延在し且つ前記Z方向及び前記X方向の両方向に垂直なY方向において隣り合う第1ライン及び第2ラインのそれぞれに沿って前記対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記レーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記レーザ光を変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器によって変調された前記レーザ光を集光する集光部と、
測距用の光を前記表面に照射し、前記表面で反射された前記測距用の光を検出する測距部と、
前記集光部及び前記測距部を前記支持部に対して相対的に移動させる移動部と、
前記集光部を前記Z方向に移動させる駆動部と、
前記レーザ光が第1加工光及び第2加工光に分岐して、前記第1加工光の第1集光点が前記第1ライン上に位置し且つ前記第2加工光の第2集光点が前記第2ライン上に位置するように、前記空間光変調器を制御し、前記表面における前記測距用の光の照射領域、並びに、前記第1集光点及び前記第2集光点が前記第1ライン及び前記第2ラインに沿って相対的に移動するように、前記移動部を制御し、前記第1集光点及び前記第2集光点のそれぞれが前記表面に対して所定位置に位置するように、前記測距部による前記測距用の光の検出結果に基づいて前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記測距部は、前記Y方向において少なくとも前記第1ラインと前記第2ラインとの間隔の分だけ前記照射領域の位置を調整することが可能となるように、構成されている、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記Y方向における前記第1集光点及び前記第2集光点のそれぞれの位置に関する第1情報の入力を受け付ける入力受付部を更に備え、
前記制御部は、前記第1集光点が前記第1ライン上に位置し且つ前記第2集光点が前記第2ライン上に位置するように、前記第1情報に基づいて前記空間光変調器を制御する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記入力受付部は、前記Y方向における前記照射領域の位置に関する第2情報の入力を更に受け付け、
前記制御部は、前記照射領域が前記第1ライン上若しくは前記第2ライン上、又は、前記第1ラインと前記第2ラインとの間に位置するように、前記第2情報に基づいて前記測距部を制御する、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記対象物は、基板と、前記基板上にマトリックス状に配置された複数の機能素子と、を含み、
前記入力受付部は、前記対象物に対する前記レーザ光の入射の側に関する第3情報の入力を更に受け付け、
前記制御部は、
前記複数の機能素子側から前記基板に前記レーザ光が入射する場合には、前記照射領域が前記第1ライン上又は前記第2ライン上に位置するように、前記第3情報に基づいて前記測距部を制御し、
前記複数の機能素子とは反対側から前記基板に前記レーザ光が入射する場合には、前記照射領域が前記第1ラインと前記第2ラインとの間の中心線上に位置するように、前記第3情報に基づいて前記測距部を制御する、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記入力受付部は、前記対象物、前記第1ライン及び前記第2ラインのそれぞれのグラフィックを表示する表示部を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記集光部の光軸が前記対象物に対して相対的に移動する軌跡に相当する基準ラインを更に表示する、請求項5に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記対象物の画像を取得する撮像部を更に備え、
前記表示部は、前記対象物の前記グラフィックとして前記対象物の前記画像を表示する、請求項5又は6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記測距部は、前記表面に照射される前記測距用の光及び前記表面で反射された前記測距用の光が前記集光部を通るように、構成されており、
前記測距部は、
前記測距用の光を前記表面に照射し、前記表面で反射された前記測距用の光を検出する本体部と、
前記表面に照射される前記測距用の光の光軸を調整するための調整部と、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記測距部は、前記表面に照射される前記測距用の光及び前記表面で反射された前記測距用の光が前記集光部を通らないように、構成されており、
前記測距部は、
前記測距用の光を前記表面に照射し、前記表面で反射された前記測距用の光を検出する本体部と、
前記Y方向における前記本体部の位置を調整するための調整部と、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物にレーザ光を照射することで対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置として、レーザ光が複数の加工光に分岐され且つ複数の加工光が互いに異なる箇所に集光されるようにレーザ光を変調する装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。このようなレーザ加工装置は、複数の加工光によって複数列の改質領域を形成することができるため、加工時間の短縮化を図る上で極めて有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-223620号公報
【文献】特開2015-226012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、基板と、基板上にマトリックス状に配置された複数の能素子と、を含む対象物においては、機能素子の微細化が進んでいる。機能素子の微細化が進むと、対象物を機能素子ごとに切断するためのラインの数が増加するため、複数のラインのそれぞれに沿って対象物に改質領域をいかに効率良く形成し得るかが、加工時間の短縮化を図る上で重要となる。
【0005】
本発明は、複数のラインのそれぞれに沿って対象物に改質領域を形成する場合に、加工時間の短縮化を図ることができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ加工装置は、Z方向と交差する表面を有する対象物にレーザ光を照射することで、Z方向に垂直なX方向に延在し且つZ方向及びX方向の両方向に垂直なY方向において隣り合う第1ライン及び第2ラインのそれぞれに沿って対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、対象物を支持する支持部と、レーザ光を出射する光源と、光源から出射されたレーザ光を変調する空間光変調器と、空間光変調器によって変調されたレーザ光を集光する集光部と、測距用の光を表面に照射し、表面で反射された測距用の光を検出する測距部と、集光部及び測距部を支持部に対して相対的に移動させる移動部と、集光部をZ方向に移動させる駆動部と、レーザ光が第1加工光及び第2加工光に分岐して、第1加工光の第1集光点が第1ライン上に位置し且つ第2加工光の第2集光点が第2ライン上に位置するように、空間光変調器を制御し、表面における測距用の光の照射領域、並びに、第1集光点及び第2集光点が第1ライン及び第2ラインに沿って相対的に移動するように、移動部を制御し、第1集光点及び第2集光点のそれぞれが表面に対して所定位置に位置するように、測距部による測距用の光の検出結果に基づいて駆動部を制御する制御部と、を備え、測距部は、Y方向において少なくとも第1ラインと第2ラインとの間隔の分だけ照射領域の位置を調整することが可能となるように、構成されている。
【0007】
上記レーザ加工装置では、レーザ光が第1加工光及び第2加工光に分岐して、第1加工光の第1集光点が第1ライン上に位置し且つ第2加工光の第2集光点が第2ライン上に位置するように、制御部が空間光変調器を制御し、対象物の表面における測距用の光の照射領域、並びに、第1集光点及び第2集光点が第1ライン及び第2ラインに沿って相対的に移動するように、制御部が移動部を制御する。このとき、第1集光点及び第2集光点のそれぞれが対象物の表面に対して所定位置に位置するように、制御部が、測距部による測距用の光の検出結果に基づいて駆動部を制御する。これにより、改質領域が対象物の表面に対して所定位置に位置した状態で、第1ライン及び第2ラインのそれぞれに沿って対象物に改質領域が形成される。ここで、上記レーザ加工装置では、Y方向において少なくとも第1ラインと第2ラインとの間隔の分だけ測距用の光の照射領域の位置を調整することが可能となるように、測距部が構成されている。そのため、レーザ光の照射条件等に応じて、Y方向において測距用の光の照射領域の位置を調整することができ、対象物の表面に対して所定位置に精度良く改質領域を形成することができる。よって、上記レーザ加工装置によれば、複数のラインのそれぞれに沿って対象物に改質領域を形成する場合に、加工時間の短縮化を図ることができる。
【0008】
本発明のレーザ加工装置は、Y方向における第1集光点及び第2集光点のそれぞれの位置に関する第1情報の入力を受け付ける入力受付部を更に備え、制御部は、第1集光点が第1ライン上に位置し且つ第2集光点が第2ライン上に位置するように、第1情報に基づいて空間光変調器を制御してもよい。これにより、第1ライン及び第2ラインのそれぞれに沿って容易に且つ精度良く改質領域を形成することができる。
【0009】
本発明のレーザ加工装置では、入力受付部は、Y方向における照射領域の位置に関する第2情報の入力を更に受け付け、制御部は、照射領域が第1ライン上若しくは第2ライン上、又は、第1ラインと第2ラインとの間に位置するように、第2情報に基づいて測距部を制御してもよい。これにより、対象物の表面に対して所定位置に容易に且つ精度良く改質領域を形成することができる。
【0010】
本発明のレーザ加工装置では、対象物は、基板と、基板上にマトリックス状に配置された複数の機能素子と、を含み、入力受付部は、対象物に対するレーザ光の入射の側に関する第3情報の入力を更に受け付け、制御部は、複数の機能素子側から基板にレーザ光が入射する場合には、照射領域が第1ライン上又は第2ライン上に位置するように、第3情報に基づいて測距部を制御し、複数の機能素子とは反対側から基板にレーザ光が入射する場合には、照射領域が第1ラインと第2ラインとの間の中心線上に位置するように、第3情報に基づいて測距部を制御してもよい。これにより、複数の機能素子側から基板にレーザ光が入射する場合には、測距用の光が機能素子の影響を受けるのを防止して、対象物の表面に対して所定位置に改質領域を形成することができる。また、複数の機能素子とは反対側から基板にレーザ光が入射する場合には、第1ライン及び第2ラインのそれぞれに沿ってバランス良く改質領域を形成することができる。
【0011】
本発明のレーザ加工装置では、入力受付部は、対象物、第1ライン及び第2ラインのそれぞれのグラフィックを表示する表示部を含んでもよい。これにより、加工予定状態を視覚的に把握することができる。
【0012】
本発明のレーザ加工装置では、表示部は、集光部の光軸が対象物に対して相対的に移動する軌跡に相当する基準ラインを更に表示してもよい。これにより、集光部の光軸を基準とした加工予定状態を視覚的に把握することができる。
【0013】
本発明のレーザ加工装置は、対象物の画像を取得する撮像部を更に備え、表示部は、対象物のグラフィックとして対象物の画像を表示してもよい。これにより、対象物のグラフィックを容易に取得することができる。
【0014】
本発明のレーザ加工装置では、測距部は、表面に照射される測距用の光及び表面で反射された測距用の光が集光部を通るように、構成されており、測距部は、測距用の光を表面に照射し、表面で反射された測距用の光を検出する本体部と、表面に照射される測距用の光の光軸を調整するための調整部と、を含んでもよい。この構成は、測距用の光の照射領域を小さくすべき場合に有効である。
【0015】
本発明のレーザ加工装置では、測距部は、表面に照射される測距用の光及び表面で反射された測距用の光が集光部を通らないように、構成されており、測距部は、測距用の光を表面に照射し、表面で反射された測距用の光を検出する本体部と、Y方向における本体部の位置を調整するための調整部と、を含んでもよい。この構成は、テープ等の部材を介して対象物の表面に測距用の光を照射する場合に有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のラインのそれぞれに沿って対象物に改質領域を形成する場合に、加工時間の短縮化を図ることができるレーザ加工装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態のレーザ加工装置の斜視図である。
図2図1に示されるレーザ加工装置の一部分の正面図である。
図3図1に示されるレーザ加工装置のレーザ加工ヘッドの正面図である。
図4図3に示されるレーザ加工ヘッドの側面図である。
図5図3に示されるレーザ加工ヘッドの光学系の構成図である。
図6図5に示される空間光変調器の一部分の断面図である。
図7図1に示されるレーザ加工装置によって加工される対象物の平面図である。
図8図7に示される対象物の一部分の断面図である。
図9図1に示されるレーザ加工装置におけるレーザ加工の状態を示す模式図である。
図10図1に示されるレーザ加工装置におけるレーザ加工の状態を示す模式図である。
図11図1に示されるレーザ加工装置の表示部の構成図である。
図12図1に示されるレーザ加工装置によって実施されるレーザ加工方法のフローチャートである。
図13図1に示されるレーザ加工装置における基準ライン、第1ライン及び第2ラインの位置関係を示す模式図である。
図14図1に示されるレーザ加工装置における基準ライン、第1ライン及び第2ラインの位置関係を示す模式図である。
図15】変形例のレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
図16図15に示されるレーザ加工装置における基準ライン、第1ライン及び第2ラインの位置関係を示す模式図である。
図17図15に示されるレーザ加工装置における基準ライン、第1ライン及び第2ラインの位置関係を示す模式図である。
図18図1に示されるレーザ加工装置における基準ライン、第1ライン及び第2ラインの位置関係を示す模式図である。
図19図15に示されるレーザ加工装置における基準ライン、第1ライン及び第2ラインの位置関係を示す模式図である。
図20図18及び図19に示される場合における表示部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[レーザ加工装置の構成]
【0019】
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、複数の移動機構5,6と、支持部7と、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと、光源ユニット8と、制御部9と、を備えている。以下、第1方向をZ方向、第1方向に垂直な第2方向をX方向、第1方向及び第2方向の両方向に垂直な第3方向をY方向という。本実施形態では、Z方向は鉛直方向であり、X方向及びY方向は水平方向である。
【0020】
移動機構5は、固定部51と、移動部53と、取付部55と、を有している。固定部51は、装置フレーム1aに取り付けられている。移動部53は、固定部51に設けられたレールに取り付けられており、Y方向に沿って移動することができる。取付部55は、移動部53に設けられたレールに取り付けられており、X方向に沿って移動することができる。
【0021】
移動機構6は、固定部61と、1対の移動部63,64と、1対の取付部65,66と、を有している。固定部61は、装置フレーム1aに取り付けられている。1対の移動部63,64のそれぞれは、固定部61に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、Y方向に沿って移動することができる。取付部65は、移動部63に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。取付部66は、移動部64に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。
【0022】
支持部7は、移動機構5の取付部55に設けられた回転軸に取り付けられており、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。支持部7は、対象物100を支持する。対象物100は、ウェハである。
【0023】
図1及び図2に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、移動機構6の取付部65に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光Lを照射する。レーザ加工ヘッド10Bは、移動機構6の取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光Lを照射する。
【0024】
光源ユニット8は、1対の光源81,82を有している。1対の光源81,82は、装置フレーム1aに取り付けられている。1対の光源81,82のそれぞれは、レーザ光Lを出射する。光源81の出射部81aから出射されたレーザ光Lは、光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Aに導光される。光源82の出射部82aから出射されたレーザ光Lは、別の光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Bに導光される。
【0025】
制御部9は、レーザ加工装置1の各部(複数の移動機構5,6、1対のレーザ加工ヘッド10A,10B、及び光源ユニット8等)を制御する。制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。これにより、制御部9は、各種機能を実現する。
【0026】
以上のように構成されたレーザ加工装置1による加工の一例について説明する。当該加工の一例は、ウェハである対象物100を複数のチップに切断するために、格子状に設定された複数のラインのそれぞれに沿って対象物100の内部に改質領域を形成する例である。
【0027】
まず、対象物100を支持している支持部7がZ方向において1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと対向するように、移動機構5が、X方向及びY方向のそれぞれに沿って支持部7を移動させる。続いて、対象物100において一方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0028】
続いて、一方向に延在する一のライン上に、レーザ加工ヘッド10Aから出射されるレーザ光L(以下、「レーザ加工ヘッド10Aのレーザ光L」という)の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、一方向に延在する他のライン上に、レーザ加工ヘッド10Bから出射されるレーザ光L(以下、「レーザ加工ヘッド10Bのレーザ光L」という)の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ加工ヘッド10Aのレーザ光Lの集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ加工ヘッド10Bのレーザ光Lの集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
【0029】
続いて、光源81がレーザ光Lを出射してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光Lを照射すると共に、光源82がレーザ光Lを出射してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光Lを照射する。それと同時に、一方向に延在する一のラインに沿ってレーザ加工ヘッド10Aのレーザ光Lの集光点が相対的に移動し且つ一方向に延在する他のラインに沿ってレーザ加工ヘッド10Bのレーザ光Lの集光点が相対的に移動するように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
【0030】
続いて、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0031】
続いて、他方向に延在する一のライン上にレーザ加工ヘッド10Aのレーザ光Lの集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、他方向に延在する他のライン上にレーザ加工ヘッド10Bのレーザ光Lの集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ加工ヘッド10Aのレーザ光Lの集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ加工ヘッド10Bのレーザ光Lの集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
【0032】
続いて、光源81がレーザ光Lを出射してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光Lを照射すると共に、光源82がレーザ光Lを出射してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光Lを照射する。それと同時に、他方向に延在する一のラインに沿ってレーザ加工ヘッド10Aのレーザ光Lの集光点が相対的に移動し且つ他方向に延在する他のラインに沿ってレーザ加工ヘッド10Bのレーザ光Lの集光点が相対的に移動するように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
【0033】
なお、上記加工の一例では、1対の光源81,82のそれぞれは、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光Lを出射する。そのようなレーザ光Lが対象物100の内部に集光されると、レーザ光Lの集光点に対応する部分においてレーザ光Lが特に吸収され、対象物100の内部に改質領域が形成される。改質領域は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。
【0034】
パルス発振方式によって出射されたレーザ光Lが対象物100に照射され、対象物100に設定されたラインに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられると、複数の改質スポットがラインに沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポットは、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域は、1列に並んだ複数の改質スポットの集合である。隣り合う改質スポットは、対象物100に対するレーザ光Lの集光点の相対的な移動速度及びレーザ光Lの繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
[レーザ加工ヘッドの構成]
【0035】
図3及び図4に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、筐体11と、入射部12と、レーザ光調整部13と、集光部14と、を備えている。
【0036】
筐体11は、第1壁部21及び第2壁部22、第3壁部23及び第4壁部24、並びに、第5壁部25及び第6壁部26を有している。第1壁部21及び第2壁部22は、X方向において互いに対向している。第3壁部23及び第4壁部24は、Y方向において互いに対向している。第5壁部25及び第6壁部26は、Z方向において互いに対向している。
【0037】
第3壁部23と第4壁部24との距離は、第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さい。第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも小さい。なお、第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離と等しくてもよいし、或いは、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも大きくてもよい。
【0038】
レーザ加工ヘッド10Aでは、第1壁部21は、移動機構6の固定部61とは反対側に位置しており、第2壁部22は、固定部61側に位置している。第3壁部23は、移動機構6の取付部65側に位置しており、第4壁部24は、取付部65とは反対側であってレーザ加工ヘッド10B側に位置している(図2参照)。第5壁部25は、支持部7とは反対側に位置しており、第6壁部26は、支持部7側に位置している。
【0039】
筐体11は、第3壁部23が移動機構6の取付部65側に配置された状態で筐体11が取付部65に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部65は、ベースプレート65aと、取付プレート65bと、を有している。ベースプレート65aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている(図2参照)。取付プレート65bは、ベースプレート65aにおけるレーザ加工ヘッド10B側の端部に立設されている(図2参照)。筐体11は、第3壁部23が取付プレート65bに接触した状態で、台座27を介してボルト28が取付プレート65bに螺合されることで、取付部65に取り付けられている。台座27は、第1壁部21及び第2壁部22のそれぞれに設けられている。筐体11は、取付部65に対して着脱可能である。
【0040】
入射部12は、第5壁部25に配置されている。入射部12は、筐体11内にレーザ光Lを入射させる。入射部12は、X方向においては第1壁部21側に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。つまり、X方向における入射部12と第1壁部21との距離は、X方向における入射部12と第2壁部22との距離よりも小さく、Y方向における入射部12と第4壁部24との距離は、X方向における入射部12と第3壁部23との距離よりも小さい。
【0041】
入射部12には、光ファイバ2の出射端部2aが接続されている。具体的には、入射部12は、第5壁部25に形成された孔25aを含む部分である。第5壁部25には、取付部25bが設けられている。取付部25bには、出射端部2aの本体部分2bがボルト等によって取り付けられている。この状態で、孔25aには、出射端部2aの先端部分2cが挿通されている。これにより、光ファイバ2の出射端部2aは、入射部12に対して着脱可能である。第5壁部25と本体部分2bとの間には、カバー25cが配置されている。カバー25cは、孔25aと先端部分2cとの間に形成された隙間を覆っている。一例として、出射端部2aにおいては、戻り光を抑制するアイソレータが本体部分2b内に配置されており、レーザ光Lをコリメートするコリメータレンズが先端部分2c内に配置されている。なお、入射部12は、光ファイバ2の出射端部2aが接続可能となるように構成されたコネクタ等であってもよい。
【0042】
レーザ光調整部13は、筐体11内に配置されている。レーザ光調整部13は、入射部12から入射したレーザ光Lを調整する。レーザ光調整部13は、筐体11内において、仕切壁部29に対して第4壁部24側に配置されている。レーザ光調整部13は、仕切壁部29に取り付けられている。仕切壁部29は、筐体11内に設けられており、筐体11内の領域を第3壁部23側の領域と第4壁部24側の領域とに仕切っている。仕切壁部29は、筐体11の一部分として構成されている。レーザ光調整部13が有する各構成は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。仕切壁部29は、レーザ光調整部13が有する各構成を支持する光学ベースとして機能している。
【0043】
集光部14は、第6壁部26に配置されている。具体的には、集光部14は、第6壁部26に形成された孔26a(図5参照)に挿通された状態で、第6壁部26に配置されている。集光部14は、レーザ光調整部13によって調整されたレーザ光Lを集光しつつ筐体11外に出射する。集光部14は、X方向においては第2壁部22側に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。つまり、X方向における集光部14と第2壁部22との距離は、X方向における集光部14と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における集光部14と第4壁部24との距離は、X方向における集光部14と第3壁部23との距離よりも小さい。
【0044】
図5に示されるように、レーザ光調整部13は、反射部31と、アッテネータ32と、反射部33と、を有している。反射部31、アッテネータ32及び反射部33は、X方向に沿って延在する第1直線A1上に配置されている。反射部31は、Z方向において入射部12と対向している。すなわち、反射部31は、Z方向において光ファイバ2の出射端部2aと対向している。反射部31は、入射部12から入射したレーザ光Lを第2壁部22側に反射する。アッテネータ32は、反射部31で反射されたレーザ光Lの出力を調整する。反射部33は、アッテネータ32によって出力が調整されたレーザ光Lを第6壁部26側に反射する。各反射部31,33は、例えば、ミラー又はプリズムである。
【0045】
レーザ光調整部13は、ビームエキスパンダ34と、反射部35と、を更に有している。反射部33、ビームエキスパンダ34及び反射部35は、Z方向に沿って延在する第2直線A2上に配置されている。ビームエキスパンダ34は、反射部33で反射されたレーザ光Lの径を拡大する。反射部35は、ビームエキスパンダ34で径が拡大されたレーザ光Lを第1壁部21側且つ第5壁部25側に反射する。反射部35は、例えば、ミラー又はプリズムである。
【0046】
レーザ光調整部13は、空間光変調器36と、結像光学系37と、を更に有している。空間光変調器36、結像光学系37及び集光部14は、Z方向に沿って延在する第3直線A3上に配置されている。空間光変調器36は、反射部35で反射されたレーザ光Lを変調しつつ第6壁部26側に反射する。空間光変調器36は、反射型の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。結像光学系37は、空間光変調器36の反射面36aと集光部14の入射瞳面14aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。結像光学系37は、3つ以上のレンズによって構成されている。このように、空間光変調器36は、光源81(図1参照)から出射されたレーザ光Lを変調し、集光部14は、空間光変調器36によって変調されたレーザ光Lを集光する。
【0047】
第1直線A1、第2直線A2及び第3直線A3は、Y方向に垂直な平面上に位置している。第2直線A2は、第3直線A3に対して第2壁部22側に位置している。レーザ加工ヘッド10Aでは、Z方向に沿って入射部12から筐体11内に入射したレーザ光Lは、反射部31で反射されて、第1直線A1上を進行する。第1直線A1上を進行したレーザ光Lは、反射部33で反射されて、第2直線A2上を進行する。第2直線A2上を進行したレーザ光Lは、反射部35及び空間光変調器36で順次に反射されて、第3直線A3上を進行する。第3直線A3上を進行したレーザ光Lは、Z方向に沿って集光部14から筐体11外に出射される。
【0048】
レーザ加工ヘッド10Aは、ダイクロイックミラー15と、測距部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を更に備えている。
【0049】
ダイクロイックミラー15は、第3直線A3上において、結像光学系37と集光部14との間に配置されている。つまり、ダイクロイックミラー15は、筐体11内において、レーザ光調整部13と集光部14との間に配置されている。ダイクロイックミラー15は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。ダイクロイックミラー15は、レーザ光Lを透過させる。ダイクロイックミラー15は、非点収差を抑制する観点では、例えば、キューブ型、又は、ねじれの関係を有するように配置された2枚のプレート型が好ましい。
【0050】
測距部16は、筐体11内において、第3直線A3に対して第1壁部21側に配置されている。つまり、測距部16は、X方向においては、集光部14に対して第1壁部21側に配置されている。測距部16は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。測距部16は、対象物100の表面(例えば、レーザ光Lが入射する側の表面)と集光部14との距離を測定するための測距用の光L10(例えば、測距用のレーザ光)を対象物100の表面に照射し、対象物100の表面で反射された光L10を検出する。
【0051】
本実施形態では、測距部16は、対象物100の表面に照射される光L10及び対象物100の表面で反射された光L10が集光部14を通るように、構成されている。つまり、測距部16から出射された光L10は、集光部14を通って対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された光L10は、集光部14を通って測距部16に入射する。測距部16は、受光センサとして4分割フォトダイオードを含む非点収差方式のセンサである。
【0052】
より具体的には、測距部16は、本体部161と、調整部162と、を有している。本体部161は、光L10を対象物100の表面に照射し、対象物100の表面で反射された光L10を検出する。調整部162は、対象物100の表面に照射される光L10の光軸を調整するための部分である。調整部162は、第1ステアリングミラー162aと、第2ステアリングミラー162bと、を含んでいる。第1ステアリングミラー162a及び第2ステアリングミラー162bは、それぞれのミラー面の角度調整が可能となるように、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。
【0053】
本体部161から出射された光L10は、第1ステアリングミラー162a、第2ステアリングミラー162b、ビームスプリッタ20及びダイクロイックミラー15で順次に反射され、集光部14を通って筐体11外に出射され、対象物100の表面に照射される。対象物100の表面で反射された光L10は、集光部14を通って筐体11内に入射し、ダイクロイックミラー15、ビームスプリッタ20、第2ステアリングミラー162b及び第1ステアリングミラー162aで順次に反射され、本体部161に入射する。なお、ビームスプリッタ20は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。
【0054】
観察部17は、筐体11内において、第3直線A3に対して第1壁部21側に配置されている。つまり、観察部17は、X方向においては、集光部14に対して第1壁部21側に配置されている。観察部17は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。観察部17は、対象物100の表面(例えば、レーザ光Lが入射する側の表面)を観察するための観察用の光L20(例えば、可視光)を対象物100の表面に照射し、対象物100の表面で反射された光L20を検出する。
【0055】
本実施形態では、観察部17から出射された光L20は、ビームスプリッタ20を透過してダイクロイックミラー15で反射され、集光部14を通って筐体11外に出射され、対象物100の表面に照射される。対象物100の表面で反射された光L20は、集光部14を通って筐体11内に入射し、ダイクロイックミラー15で反射されてビームスプリッタ20を透過し、観察部17に入射する。なお、レーザ光L、光L10及び光L20のそれぞれの波長は、互いに異なっている(少なくともそれぞれの中心波長が互いにずれている)。
【0056】
駆動部18は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。駆動部18は、例えば圧電素子の駆動力によって、第6壁部26に配置された集光部14をZ方向に移動させる。
【0057】
回路部19は、筐体11内において、仕切壁部29に対して第3壁部23側に配置されている。つまり、回路部19は、筐体11内において、レーザ光調整部13、測距部16及び観察部17に対して第3壁部23側に配置されている。回路部19は、仕切壁部29から離間している。回路部19は、例えば、複数の回路基板である。回路部19は、測距部16から出力された信号及び空間光変調器36に入力する信号を処理する。回路部19は、測距部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。一例として、回路部19は、測距部16から出力された信号に基づいて、対象物100の表面と集光部14との距離が一定に維持されるように(すなわち、対象物100の表面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されるように)、駆動部18を制御する。
【0058】
なお、仕切壁部29には、測距部16、観察部17、駆動部18及び空間光変調器36のそれぞれと回路部19とを電気的に接続するための配線が通る切欠き、孔等(図示省略)が形成されている。また、筐体11には、回路部19と制御部9(図1参照)とを電気的に接続するための配線等が接続されるコネクタ(図示省略)が設けられている。
【0059】
レーザ加工ヘッド10Bは、レーザ加工ヘッド10Aと同様に、筐体11と、入射部12と、レーザ光調整部13と、集光部14と、ダイクロイックミラー15と、測距部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を備えている。ただし、レーザ加工ヘッド10Bの各構成は、図2に示されるように、1対の取付部65,66間の中点を通り且つY方向に垂直な仮想平面に関して、レーザ加工ヘッド10Aの各構成と面対称の関係を有するように、配置されている。
【0060】
例えば、レーザ加工ヘッド10Aの筐体11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10B側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部65に取り付けられている。これに対し、レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10A側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部66に取り付けられている。
【0061】
レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付部66側に配置された状態で筐体11が取付部66に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部66は、ベースプレート66aと、取付プレート66bと、を有している。ベースプレート66aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている。取付プレート66bは、ベースプレート66aにおけるレーザ加工ヘッド10A側の端部に立設されている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付プレート66bに接触した状態で、取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、取付部66に対して着脱可能である。
[空間光変調器の構成]
【0062】
図6に示されるように、空間光変調器36は、半導体基板41上に、駆動回路層42、画素電極層43、反射膜44、配向膜45、液晶層46、配向膜47、透明導電膜48及び透明基板49がこの順序で積層されることで、構成されている。空間光変調器36は、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器である。
【0063】
半導体基板41は、例えば、シリコン基板である。駆動回路層42は、半導体基板41上において、アクティブ・マトリクス回路を構成している。画素電極層43は、半導体基板41の表面に沿ってマトリックス状に配列された複数の画素電極43aを含んでいる。各画素電極43aは、例えば、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。各画素電極43aには、駆動回路層42によって電圧が印加される。
【0064】
反射膜44は、例えば、誘電体多層膜である。配向膜45は、液晶層46における反射膜44側の表面に設けられており、配向膜47は、液晶層46における反射膜44とは反対側の表面に設けられている。各配向膜45,47は、例えば、ポリイミド等の高分子材料によって形成されており、各配向膜45,47における液晶層46との接触面には、例えば、ラビング処理が施されている。配向膜45,47は、液晶層46に含まれる液晶分子46aを一定方向に配列させる。
【0065】
透明導電膜48は、透明基板49における配向膜47側の表面に設けられており、液晶層46等を挟んで画素電極層43と向かい合っている。透明基板49は、例えば、ガラス基板である。透明導電膜48は、例えば、ITO等の光透過性且つ導電性材料によって形成されている。透明基板49及び透明導電膜48は、レーザ光Lを透過させる。
【0066】
以上のように構成された空間光変調器36では、変調パターンを示す信号が制御部10から駆動回路層42に入力されると、当該信号に応じた電圧が各画素電極43aに印加され、各画素電極43aと透明導電膜48との間に電界が形成される。当該電界が形成されると、液晶層46において、各画素電極43aに対応する領域ごとに液晶分子216aの配列方向が変化し、各画素電極43aに対応する領域ごとに屈折率が変化する。この状態が、液晶層46に変調パターンが表示された状態である。
【0067】
液晶層46に変調パターンが表示された状態で、レーザ光Lが、外部から透明基板49及び透明導電膜48を介して液晶層46に入射し、反射膜44で反射されて、液晶層46から透明導電膜48及び透明基板49を介して外部に出射させられると、液晶層46に表示された変調パターンに応じて、レーザ光Lが変調される。このように、空間光変調器36によれば、液晶層46に表示する変調パターンを適宜設定することで、レーザ光Lの変調(例えば、レーザ光Lの強度、振幅、位相、偏光等の変調)が可能である。
[対象物の構成]
【0068】
図7及び図8に示されるように、対象物100は、基板101と、複数の機能素子102と、を有している。複数の機能素子102は、基板101上にマトリックス状に配置されている。
【0069】
基板101は、表面101a及び裏面101bを有している。基板101は、例えば、シリコン基板等の半導体基板である。基板101には、結晶方位を示すノッチ101cが設けられている。なお、基板101には、ノッチ101cの替わりにオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。
【0070】
複数の機能素子102は、基板101の表面101aに設けられている。各機能素子102は、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。各機能素子102は、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合もある。
【0071】
対象物100は、複数のライン90のそれぞれに沿って機能素子102ごとに切断される。複数のライン90は、対象物100の厚さ方向(表面101a及び裏面101bと交差する方向)から見た場合に複数の機能素子102のそれぞれの間を通るように、格子状に延在している。対象物100では、ストリート領域103が複数の機能素子102のそれぞれの間を通るように格子状に延在しており、各ライン90がストリート領域103の中央を通っている。複数のライン90は、レーザ加工装置1によって対象物100に設定された仮想的なラインである。なお、複数のライン90は、対象物100に実際に引かれたラインであってもよい。
[制御部の機能]
【0072】
前提として、レーザ加工装置1は、図9及び図10に示されるように、Z方向と交差する表面(本実施形態では、基板101の表面101a又は裏面101b)を有する対象物100にレーザ光Lを照射することで、第1ライン91及び第2ライン92のそれぞれに沿って対象物100に改質領域Mを形成する。第1ライン91及び第2ライン92は、複数のライン90のうち、X方向に延在し且つY方向において隣り合う任意の1対のライン90である。
【0073】
また、各レーザ加工ヘッド10A,10Bにおいて、測距部16(図5参照)は、Y方向において少なくとも第1ライン91と第2ライン92との間隔の分だけ測距用の光L10の照射領域Rの位置を調整することが可能となるように、構成されている。光L10の照射領域Rは、対象物100の表面(本実施形態では、基板101の表面101a又は裏面101b)における光L10の照射領域である。本実施形態では、基板101の表面101a又は裏面101bに照射される光L10の光軸が調整部162によって調整されることで(図5参照)、Y方向において少なくとも第1ライン91と第2ライン92との間隔の分だけ光L10の照射領域Rの位置が調整される。
【0074】
以上の前提の下に、以下、X方向に延在し且つY方向において隣り合う第1ライン91及び第2ライン92に着目して、制御部9の機能について説明する。以下の説明では、対象物100にレーザ光Lを照射する主体が1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bのいずれであるかを明記しないが、当該主体は、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bのいずれか一方であってもよいし、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの両方であってもよい。また、以下の説明は、X方向に延在し且つY方向において隣り合う第1ライン91及び第2ライン92を最小単位として、全てのライン90に適用される。
【0075】
図9に示されるように、複数の機能素子102側から基板101にレーザ光Lが入射するように(ずなわち、基板101の表面101aのうちストリート領域103に対応する領域から基板101にレーザ光Lが入射するように)対象物100が支持部7によって支持されている場合(以下、「表面入射の場合」という)には、制御部9は、次のように機能する。制御部9は、レーザ光Lが第1加工光L1及び第2加工光L2に分岐して、第1加工光L1の第1集光点C1が第1ライン91上に位置し且つ第2加工光L2の第2集光点C2が第2ライン92上に位置するように、空間光変調器36を制御する。また、制御部9は、表面101aにおける測距用の光L10の照射領域R、並びに、第1集光点C1及び第2集光点C2が第1ライン91及び第2ライン92に沿って相対的に移動するように、移動機構5(図1参照)を制御する。更に、制御部9は、第1集光点C1及び第2集光点C2のそれぞれが表面101aに対して所定位置に位置するように(例えば、表面101aと第1集光点C1及び第2集光点C2のそれぞれのとの距離が一定に維持されるように)、測距部16による光L10の検出結果に基づいて駆動部18(図5参照)を制御する。
【0076】
表面入射の場合、表面101aに照射される光L10の光軸が調整部162によって調整されることで(図5参照)、照射領域Rが第1ライン91上又は第2ライン92上に位置させられる。調整部162による調整は、オペレータによって手動で実施されてもよいし、制御部9によって自動で実施されてもよい。
【0077】
図10に示されるように、複数の機能素子102とは反対側から基板101にレーザ光Lが入射するように(ずなわち、基板101の裏面101bから基板101にレーザ光Lが入射するように)対象物100が支持部7によって支持されている場合(以下、「裏面入射の場合」という)には、制御部9は、次のように機能する。制御部9は、レーザ光Lが第1加工光L1及び第2加工光L2に分岐して、第1加工光L1の第1集光点C1が第1ライン91上に位置し且つ第2加工光L2の第2集光点C2が第2ライン92上に位置するように、空間光変調器36を制御する。また、制御部9は、裏面101bにおける測距用の光L10の照射領域R、並びに、第1集光点C1及び第2集光点C2が第1ライン91及び第2ライン92に沿って相対的に移動するように、移動機構5(図1参照)を制御する。更に、制御部9は、第1集光点C1及び第2集光点C2のそれぞれが裏面101bに対して所定位置に位置するように(例えば、裏面101bと第1集光点C1及び第2集光点C2のそれぞれのとの距離が一定に維持されるように)、測距部16による光L10の検出結果に基づいて駆動部18(図5参照)を制御する。
【0078】
裏面入射の場合、裏面101bに照射される光L10の光軸が調整部162によって調整されることで(図5参照)、照射領域Rが第1ライン91と第2ライン92との間の中心線(すなわち、第1ライン91及び第2ライン92のそれぞれから等距離に位置するライン)上に位置させられる。調整部162による調整は、オペレータによって手動で実施されてもよいし、制御部9によって自動で実施されてもよい。
【0079】
なお、第1集光点C1、第2集光点C2又は照射領域Rが所定箇所(第1ライン91、第2ライン92、第1ライン91と第2ライン92との間の中心線、第1ライン91と第2ライン92との間等)上に位置するとは、Z方向から見た場合に第1集光点C1、第2集光点C2又は照射領域Rが当該所定箇所上に位置することを意味する。また、上記説明では、移動機構5が、集光部14及び測距部16を支持部7に対して相対的に移動させる移動部として機能したが、移動機構6が当該移動部として機能してもよいし、複数の移動機構5,6が当該移動部として機能してもよい(図1参照)。また、各レーザ加工ヘッド10A,10Bが備える回路部19(図5参照)が制御部9の少なくとも一部として機能してもよい。
[レーザ加工装置の動作]
【0080】
前提として、レーザ加工装置1は、図2に示されるように、撮像部3を備えている。撮像部3は、対象物100の画像を取得する。撮像部3は、例えば、InGaAsカメラによって構成されており、近赤外光による対象物100の像を取得する。撮像部3は、例えば、移動機構6の取付部65に取り付けられている。一例として、対象物100の基板101がシリコン基板であり、撮像部3が近赤外光による対象物100の像を取得する場合、撮像部3は、複数の機能素子102側からは勿論、基板101の裏面101b側からでも、複数の機能素子102及びストリート領域103(図7参照)の像を取得することが可能である。
【0081】
また、レーザ加工装置1は、図11に示されるように、表示部4aを含む入力受付部4を備えている。表示部4aは、撮像部3によって取得された対象物100の画像を、対象物100のグラフィックとして表示する。表示部4aは、GUI(Graphical User Interface)を構成している。なお、入力受付部4は、マウス、キーボード等の入力装置(図示省略)を更に含んでいる。
【0082】
以上の前提の下に、以下、X方向に延在し且つY方向において隣り合う第1ライン91及び第2ライン92に着目して、レーザ加工装置1の動作について説明する。以下の説明では、対象物100にレーザ光Lを照射する主体が1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bのいずれであるかを明記しないが、当該主体は、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bのいずれか一方であってもよいし、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの両方であってもよい。また、以下の説明は、X方向に延在し且つY方向において隣り合う第1ライン91及び第2ライン92を最小単位として、全てのライン90に適用される。
【0083】
まず、対象物100が支持部7にセットされる。続いて、図11に示されるように、オペレータが入力受付部4を操作することで、表示部4aにおいて「2ライン分岐加工」が選択されると、表示部4aが、対象物100、第1ライン91、第2ライン92及び基準ライン93のそれぞれのグラフィックを表示する。対象物100のグラフィックは、撮像部3によって取得された対象物100の画像である。基準ライン93は、集光部14の光軸が対象物100に対して相対的に移動する軌跡に相当するラインである。
【0084】
続いて、オペレータが入力受付部4を操作することで、表示部4aにおいて「分岐間隔」の欄に数値が入力されると、グラフィックにおける第1ライン91と第2ライン92との距離が当該数値となるように、表示部4aが、グラフィックにおいて、基準ライン93を中心線として第1ライン91及び第2ライン92をY方向に移動させる。また、オペレータが入力受付部4を操作することで、グラフィックにおいて、基準ライン93を中心線として第1ライン91及び第2ライン92がY方向に移動させられると、表示部4aが、グラフィックにおける第1ライン91と第2ライン92との距離を「分岐間隔」の欄に表示する。分岐間隔の数値は、第1加工光L1の第1集光点C1と第2加工光L2の第2集光点C2との距離(Y方向における距離)である。このように、入力受付部4は、「Y方向における第1集光点C1及び第2集光点C2のそれぞれの位置に関する情報」(第1情報)の入力を受け付ける。なお、レーザ加工の対象となる第1ライン91及び第2ライン92を変更するために、制御部9は、Y方向において分岐間隔の数値の2倍の距離だけ集光部14及び測距部16が移動するように、入力された分岐間隔の数値に基づいて移動機構5を制御する。
【0085】
更に、オペレータが入力受付部4を操作することで、表示部4aにおいて「測距位置」として「基準ライン」、「第1ライン側に調整」及び「第2ライン側に調整」のいずれかが選択される。測距位置は、測距用の光L10の照射領域Rの位置(Y方向における位置)である。図9に示される表面入射の場合のように、照射領域Rを第1ライン91上又は第2ライン92上に位置させるべき場合には、オペレータは、「第1ライン側に調整」又は「第2ライン側に調整」を選択すればよい。図10に示される裏面入射の場合のように、照射領域Rを第1ライン91と第2ライン92との間の中心線上に位置させるべき場合には、オペレータは、「基準ライン」を選択すればよい。このように、入力受付部4は、「Y方向における照射領域Rの位置に関する情報」(第2情報)の入力を受け付ける。
【0086】
続いて、図12に示されるように、制御部9が、「分岐間隔」の欄に入力された数値を含むレーザ光Lの照射条件に応じて、空間光変調器36に入力する変調パターンを決定する処理(ステップS01)、「測距位置」として選択された「基準ライン」、「第1ライン側に調整」及び「第2ライン側に調整」のいずれかに応じて、照射領域Rの位置を調整する処理(ステップS02)、並びに、レーザ加工を実施する処理(ステップS03)を順次に実施する。このように、制御部9は、第1集光点C1が第1ライン91上に位置し且つ第2集光点C2が第2ライン92上に位置するように、「Y方向における第1集光点C1及び第2集光点C2のそれぞれの位置に関する情報」に基づいて空間光変調器36を制御する。また、制御部9は、照射領域Rが第1ライン91上若しくは第2ライン92上、又は、第1ライン91と第2ライン92との間の中心線上に位置するように、「Y方向における照射領域Rの位置に関する情報」に基づいて測距部16を制御する。
【0087】
図13は、図1に示されるレーザ加工装置1によって表面入射(図9参照)でレーザ加工が実施される場合における基準ライン93、第1ライン91及び第2ライン92の位置関係を示す模式図である。図13の(a)及び(b)に示されるように、第1ライン91及び第2ライン92は、基準ライン93を中心線としてY方向における基準ライン93の両側に位置している。図13の(a)に示されるように、集光部14は、基準ライン93上に位置している。図13の(b)に示されるように、第1集光点C1及び照射領域Rは、第1ライン91上に位置しており、第2集光点C2は、第2ライン92上に位置している。
【0088】
図14は、図1に示されるレーザ加工装置1によって裏面入射(図10参照)でレーザ加工が実施される場合における基準ライン93、第1ライン91及び第2ライン92の位置関係を示す模式図である。図14の(a)及び(b)に示されるように、第1ライン91及び第2ライン92は、基準ライン93を中心線としてY方向における基準ライン93の両側に位置している。図14の(a)に示されるように、集光部14は、基準ライン93上に位置している。図14の(b)に示されるように、第1集光点C1は、第1ライン91上に位置しており、第2集光点C2は、第2ライン92上に位置しており、照射領域Rは、基準ライン93(第1ライン91と第2ライン92との間の中心線)上に位置している。
【0089】
なお、入力受付部4は、「対象物100に対するレーザ光Lの入射の側に関する情報」(第3情報)の入力を受け付けてもよい。そして、図9に示される表面入射の場合には、制御部9は、照射領域Rが第1ライン91上又は第2ライン92上に位置するように、「Y方向における照射領域Rの位置に関する情報」に基づいて測距部16を制御する。一方、図10に示される裏面入射の場合には、制御部9は、照射領域Rが第1ライン91と第2ライン92との間の中心線上に位置するように、「Y方向における照射領域Rの位置に関する情報」に基づいて測距部16を制御する。
【0090】
また、調整部162による調整がオペレータによって手動で実施されることで、照射領域Rが、第1ライン91上若しくは第2ライン92上、又は、第1ライン91と第2ライン92との間の中心線上に位置させられてもよい。その場合には、制御部9が照射領域Rの位置を調整する処理(ステップS02)は省略される。
[作用及び効果]
【0091】
レーザ加工装置1では、レーザ光Lが第1加工光L1及び第2加工光L2に分岐して、第1加工光L1の第1集光点C1が第1ライン91上に位置し且つ第2加工光L2の第2集光点C2が第2ライン92上に位置するように、制御部9が空間光変調器36を制御し、測距用の光L10の照射領域R、並びに、第1集光点C1及び第2集光点C2が第1ライン91及び第2ライン92に沿って相対的に移動するように、制御部9が移動機構5を制御する。このとき、第1集光点C1及び第2集光点C2のそれぞれが対象物100の表面101a又は裏面101bに対して所定位置に位置するように、制御部9が、測距部16による測距用の光L10の検出結果に基づいて駆動部18を制御する。これにより、改質領域Mが対象物100の表面101a又は裏面101bに対して所定位置に位置した状態で、第1ライン91及び第2ライン92のそれぞれに沿って対象物100に改質領域Mが形成される。ここで、レーザ加工装置1では、Y方向において少なくとも第1ライン91と第2ライン92との間隔の分だけ測距用の光L10の照射領域Rの位置を調整することが可能となるように、測距部16が構成されている。そのため、レーザ光Lの照射条件等に応じて、Y方向において測距用の光L10の照射領域Rの位置を調整することができ、対象物100の表面101a又は裏面101bに対して所定位置に精度良く改質領域Mを形成することができる。よって、レーザ加工装置1によれば、複数のラインのそれぞれに沿って対象物100に改質領域Mを形成する場合に、加工時間の短縮化を図ることができる。
【0092】
また、レーザ加工装置1では、入力受付部4が「Y方向における第1集光点C1及び第2集光点C2のそれぞれの位置に関する情報」の入力を受け付け、制御部9が、第1集光点C1が第1ライン91上に位置し且つ第2集光点C2が第2ライン92上に位置するように、当該情報に基づいて空間光変調器36を制御する。これにより、第1ライン91及び第2ライン92のそれぞれに沿って容易に且つ精度良く改質領域Mを形成することができる。
【0093】
また、レーザ加工装置1では、入力受付部4が「Y方向における照射領域Rの位置に関する情報」の入力を受け付け、制御部9が、照射領域Rが第1ライン91上若しくは第2ライン92上、又は、第1ライン91と第2ライン92との間の中心線上に位置するように、当該情報に基づいて測距部16を制御する。これにより、対象物100の表面101a又は裏面101bに対して所定位置に容易に且つ精度良く改質領域Mを形成することができる。
【0094】
また、レーザ加工装置1では、入力受付部4が「対象物100に対するレーザ光Lの入射の側に関する情報」の入力を受け付け、制御部9が、図9に示される表面入射の場合には、照射領域Rが第1ライン91上又は第2ライン92上に位置するように、当該情報に基づいて測距部16を制御し、図10に示される裏面入射の場合には、照射領域Rが第1ライン91と第2ライン92との間の中心線上に位置するように、当該情報に基づいて測距部16を制御する。これにより、表面入射の場合には、測距用の光L10が機能素子102の影響を受けるのを防止して、対象物100の表面101a又は裏面101bに対して所定位置に改質領域Mを形成することができる。また、裏面入射の場合には、第1ライン91及び第2ライン92のそれぞれに沿ってバランス良く改質領域Mを形成することができる。
【0095】
また、レーザ加工装置1では、入力受付部4が、対象物100、第1ライン91及び第2ライン92のそれぞれのグラフィックを表示する表示部4aを含んでいる。これにより、加工予定状態を視覚的に把握することができる。
【0096】
また、レーザ加工装置1では、表示部4aが、集光部14の光軸が対象物100に対して相対的に移動する軌跡に相当する基準ライン93を表示する。これにより、集光部14の光軸を基準とした加工予定状態を視覚的に把握することができる。
【0097】
また、レーザ加工装置1では、撮像部3が対象物100の画像を取得し、表示部4aが対象物100のグラフィックとして対象物100の画像を表示する。これにより、対象物100のグラフィックを容易に取得することができる。
【0098】
また、レーザ加工装置1では、測距用の光L10が集光部14を通るように構成された測距部16において、本体部161が、光L10を表面101a又は裏面101bに照射しつつ、表面101a又は裏面101bで反射された光L10を検出し、調整部162が、表面101a又は裏面101bに照射される光L10の光軸を調整する。この構成は、測距用の光L10の照射領域Rを小さくすべき場合(例えば、表面入射の場合であって、ストリート領域103の幅が狭いとき)に有効である。
[変形例]
【0099】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、測距部16は、測距用の光L10が集光部14を通らないように、構成されていてもよい。具体的には、図15に示されるように、測距部16は、集光部14とは別軸で装置フレーム1aに取り付けられていてもよい。その場合、測距部16は、本体部163と、調整部164と、を含んでいてもよい。本体部163は、光L10を表面101a又は裏面101bに照射しつつ、表面101a又は裏面101bで反射された光L10を検出する。調整部164は、Y方向における本体部163の位置を調整するための部分である。調整部164は、Y方向において少なくとも第1ライン91と第2ライン92との間隔の分だけ測距用の光L10の照射領域Rの位置を調整することが可能となるように、Y方向に本体部163を移動させる。この構成は、テープ等の部材を介して対象物100の表面に測距用の光L10を照射する場合に有効である。なお、図15に示される測距部16には、三角測距方式、レーザ共焦点方式、白色共焦点方式、分光干渉方式、非点収差方式等のセンサを利用することができる。
【0100】
図16は、図15に示されるレーザ加工装置1によって表面入射(図9参照)でレーザ加工が実施される場合における基準ライン93、第1ライン91及び第2ライン92の位置関係を示す模式図である。図16の(a)及び(b)に示されるように、第1ライン91及び第2ライン92は、基準ライン93を中心線としてY方向における基準ライン93の両側に位置している。図16の(a)に示されるように、集光部14は、基準ライン93上に位置しており、本体部163は、第1ライン91上に位置している。図16の(b)に示されるように、第1集光点C1及び照射領域Rは、第1ライン91上に位置しており、第2集光点C2は、第2ライン92上に位置している。
【0101】
図17は、図15に示されるレーザ加工装置1によって裏面入射(図10参照)でレーザ加工が実施される場合における基準ライン93、第1ライン91及び第2ライン92の位置関係を示す模式図である。図17の(a)及び(b)に示されるように、第1ライン91及び第2ライン92は、基準ライン93を中心線としてY方向における基準ライン93の両側に位置している。図17の(a)に示されるように、集光部14及び本体部163は、基準ライン93上に位置している。図17の(b)に示されるように、第1集光点C1は、第1ライン91上に位置しており、第2集光点C2は、第2ライン92上に位置しており、照射領域Rは、基準ライン93(第1ライン91と第2ライン92との間の中心線)上に位置している。
【0102】
また、図1に示されるレーザ加工装置1、及び図15に示されるレーザ加工装置のいずれにおいても、第1ライン91は、基準ライン93上に位置していてもよい。
【0103】
図18は、図1に示されるレーザ加工装置1によって表面入射(図9参照)又は裏面入射(図10参照)でレーザ加工が実施される場合における基準ライン93、第1ライン91及び第2ライン92の位置関係を示す模式図である。図18の(a)及び(b)に示されるように、第1ライン91は、基準ライン93上に位置しており、第2ライン92は、Y方向における基準ライン93の一方の側に位置している。図18の(a)に示されるように、集光部14は、基準ライン93上に位置している。図18の(b)に示されるように、第1集光点C1及び照射領域Rは、基準ライン93上(第1ライン91上)に位置しており、第2集光点C2は、第2ライン92上に位置している。
【0104】
図19は、図15に示されるレーザ加工装置1によって表面入射(図9参照)又は裏面入射(図10参照)でレーザ加工が実施される場合における基準ライン93、第1ライン91及び第2ライン92の位置関係を示す模式図である。図19の(a)及び(b)に示されるように、第1ライン91は、基準ライン93上に位置しており、第2ライン92は、Y方向における基準ライン93の一方の側に位置している。図19の(a)に示されるように、集光部14及び本体部163は、基準ライン93上に位置している。図19の(b)に示されるように、第1集光点C1及び照射領域Rは、基準ライン93上(第1ライン91上)に位置しており、第2集光点C2は、第2ライン92上に位置している。
【0105】
図20は、図18及び図19に示される場合における表示部4aの構成図である。図18及び図19に示される場合には、照射領域Rが常に基準ライン93上(第1ライン91上)に位置することになる。そのため、図20に示される表示部4aには、図11に示される表示部4aのように「測距位置」を選択する欄が設けられていない。
【0106】
また、図1に示されるレーザ加工装置1では、本体部161において、受光センサ(表面101a又は裏面101bで反射された光L10を検出する受光センサ)の位置及び角度が調整可能となっていてもよい。調整部162によって光L10の光軸が調整された場合に、表面101a又は裏面101bで反射された光L10を受光センサに確実に検出させるためである。
【0107】
また、図15に示されるレーザ加工装置1では、X方向における集光部14の両側に1対の測距部16が設けられていてもよい。第1ライン91及び第2ライン92に沿ってX方向における一方の側に第1集光点C1及び第2集光点C2を相対的に移動させる場合には、一方の測距部16を用い、第1ライン91及び第2ライン92に沿ってX方向における他方の側に第1集光点C1及び第2集光点C2を相対的に移動させる場合には、他方の測距部16を用いることができる。
【0108】
また、測距部16は、対象物100においてZ方向と交差する表面であれば、表面101a及び裏面101b以外の表面に光L10を照射し、当該表面で反射された光L10を検出してもよい。
【0109】
また、図1及び図15に示される各レーザ加工装置1によって表面入射(図9参照)でレーザ加工が実施される場合には、照射領域Rは、例えばZ方向から見た場合にストリート領域103内に位置していれば、第1ライン91上又は第2ライン92上から多量ずれてもよい。
【0110】
また、図1及び図15に示される各レーザ加工装置1によって裏面入射(図10参照)でレーザ加工が実施される場合には、照射領域Rは、第1ライン91上若しくは第2ライン92上、又は、第1ライン91と第2ライン92との間に位置していてもよい。
【0111】
また、入力受付部4が対象物100に関する情報(各機能素子102のサイズ、ストリート領域103の幅等)の入力を受け付け、制御部9が当該情報に基づいて対象物100のグラフィックを作成し、表示部4aが当該グラフィックを表示してもよい。
【符号の説明】
【0112】
1…レーザ加工装置、3…撮像部、4…入力受付部、4a…表示部、5…移動機構(移動部)、7…支持部、9…制御部、14…集光部、16…測距部、161,163…本体部、162,164…調整部、18…駆動部、36…空間光変調器、81,82…光源、91…第1ライン、92…第2ライン、93…基準ライン、100…対象物、101…基板、101a…表面(表面)、101b…裏面(表面)、102…機能素子、L…レーザ光、L1…第1加工光、L2…第2加工光、C1…第1集光点、C2…第2集光点、L10…測距用の光、R…照射領域、M…改質領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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