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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ねじ供給装置及びねじ締めロボット
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/10 20060101AFI20240513BHJP
   B07C 5/04 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B65G47/10
B07C5/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020145800
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040875
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】小俣 志貴
(72)【発明者】
【氏名】真船 潤
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特許第3281056(JP,B2)
【文献】特開2010-083664(JP,A)
【文献】特開2015-229595(JP,A)
【文献】特開平11-033500(JP,A)
【文献】特開2009-018276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/10
B07C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじを供給するねじ供給装置であって、
複数種類のねじが収められる収容部と、
前記収容部のねじを任意の順で待機位置に移送する移送部と、
前記移送部を制御する制御部と、
前記待機位置に移送される又は前記待機位置に移送されたねじの種類を検知する検知部と、
を備え、
前記移送部は、前記待機位置に移送される又は前記待機位置に移送されたねじを複数種類のねじが収められる前記収容部に直接戻す返却手段を有し、
前記制御部は、検知されたねじの種類が供給すべきねじの種類と異なる場合は前記返却手段にねじ返却作業を実行させる、ことを特徴とするねじ供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、供給すべきねじの種類に関する基準データを有し、前記基準データと前記検知部で検知した検知データとを比較することで供給すべきねじかどうかを判断することを特徴とする請求項1に記載のねじ供給装置。
【請求項3】
前記移送部は、
前記収容部のねじを整列及び前進させる供給レールと、
前記ねじが収まる切り欠き部を有し、前記切り欠き部を前記供給レールに対向する受け取り位置から移動させることで整列したねじから所定のねじを離間させる移動体と、を備え、
前記返却手段は、一端部は前記収容部に向けて開口し他端部は前記切り欠き部の移動経路に向けて開口する返却レールを含む、ことを特徴とする請求項2に記載のねじ供給装置。
【請求項4】
前記移動経路は、前記受け取り位置から前記待機位置を経て返却位置に至っていて、
前記返却レールの他端部は、前記返却位置で開口する、ことを特徴とする請求項3に記載のねじ供給装置。
【請求項5】
前記移動経路は、前記受け取り位置から返却位置を経て前記待機位置に至っていて、
前記検知部は、ねじが前記返却位置に至る前にねじの種類を検知するものであり、
前記返却手段は、前記返却位置において前記移動経路に対して進退移動可能であって、前記基準データと前記検知データのねじの種類が一致する場合は前記移動経路から退却し、異なる場合は前記移動経路に向けて進出して前記移動経路でのねじの移動を妨げる排出体を含み、
前記返却レールの他端部は、前記返却位置で開口する、ことを特徴とする請求項3に記載のねじ供給装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のねじ供給装置を備えたねじ締めロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向きがバラバラのねじを整列させつつ所定の位置に移動させ、作業者等にねじを提供することが可能なねじ供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業者やロボットがねじ締め作業を行うにあたっては、収容した複数のねじを一定の個数ずつ供給することが可能なねじ供給装置が使用される。例えば下記の特許文献1には、このようなねじ供給装置と、ねじを締めるドライバを備えるねじ締め手段と、ワークに対してねじ締め手段を三次元的に相対移動させる移動手段とを備えるねじ締めロボットが示されている。特許文献1のねじ供給装置は、向きがバラバラの状態で収容されたねじを整列レール上で整列させつつ一定の個数ずつねじ待機場所に供給するよう構成されている。またねじ締め手段及び移動手段は、ねじ待機場所へ供給されたねじに向けてドライバを移動させた後、磁力やエア吸引力を利用してドライバにねじを吸着させ、ワークのねじ締め場所へドライバを移動させてこれを回転させるものである。このようなねじ供給装置、ねじ締め手段及び移動手段を所定のタイミングで動作させることによって特許文献1のねじ供給装置は、ねじ締め作業を自動で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平3-44531号公報
【文献】特開2017-104942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1のものも含めて従来のねじ供給装置は、通常1種類のねじを供給することを前提としている。しかし、1種類のねじだけでねじ締め作業全体が完了するということは少なく、1つのワークにおいても複数種類のねじが使用されていることが大半である。
【0005】
一方、複数種類のねじを使用できるものとして、特許文献2に示されたねじ締めロボットが既知である。このねじ締めロボットは、ねじの種類に応じた複数のねじ供給装置を備えているため、複数種類のねじを自動で締め付けることが可能である。しかし特許文献2のように構成する場合は、使用するねじの種類に対応させてねじ供給装置を準備する必要があるため、装置の大型化、複雑化、高コスト化を招くことになる。
【0006】
なお、1種類のねじを供給する仕様のねじ供給装置はねじの選別機能を持たないため、仮にこの装置に複数種類のねじ(例えば長さのみが異なる2種類のねじ)を収容した場合、ねじ供給装置が備える整列レールには、長さの異なるねじが順不同で整列することになる。従って、ねじ待機場所には、長さの異なるねじがランダムに供給されることになるため、ねじ締め手段及び移動手段でねじ締め作業を実行すると、意図したものとは相違するねじでねじ締めが行われることになる。
【0007】
このような問題点に鑑み、本発明は、従来の装置が抱えていた大型化、複雑化、高コスト化の問題を解決しつつ、複数種類のねじを収容した場合でも意図したねじを供給することが可能なねじ供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ねじを供給するねじ供給装置であって、複数種類のねじが収められる収容部と、前記収容部のねじを任意の順で待機位置に移送する移送部と、前記移送部を制御する制御部と、前記待機位置に移送される又は前記待機位置に移送されたねじの種類を検知する検知部と、を備え、前記移送部は、前記待機位置に移送される又は前記待機位置に移送されたねじを複数種類のねじが収められる前記収容部に直接戻す返却手段を有し、前記制御部は、検知されたねじの種類が供給すべきねじの種類と異なる場合は前記返却手段にねじ返却作業を実行させる、ことを特徴とする。
【0009】
このようなねじ供給装置において、前記制御部は、供給すべきねじの種類に関する基準データを有し、前記基準データと前記検知部で検知した検知データとを比較することで供給すべきねじかどうかを判断することが好ましい。
【0010】
またねじ供給装置において前記移送部は、前記収容部のねじを整列及び前進させる供給レールと、前記ねじが収まる切り欠き部を有し、前記切り欠き部を前記供給レールに対向する受け取り位置から移動させることで整列したねじから所定のねじを離間させる移動体と、を備え、前記返却手段は、一端部は前記収容部に向けて開口し他端部は前記切り欠き部の移動経路に向けて開口する返却レールを含むことが好ましい。
【0011】
またねじ供給装置において前記移動経路は、前記受け取り位置から前記待機位置を経て返却位置に至っていて、前記返却レールの他端部は、前記返却位置で開口する、ことが好ましい。
【0012】
また前記移動経路は、前記受け取り位置から返却位置を経て前記待機位置に至っていて、前記検知部は、ねじが前記返却位置に至る前にねじの種類を検知するものであり、前記返却手段は、前記返却位置において前記移動経路に対して進退移動可能であって、前記基準データと前記検知データのねじの種類が一致する場合は前記移動経路から退却し、異なる場合は前記移動経路に向けて進出して前記移動経路でのねじの移動を妨げる排出体を含み、前記返却レールの他端部は、前記返却位置で開口するものでもよい。
【0013】
また本発明は、このようなねじ供給装置を備えたねじ締めロボットでもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明のねじ供給装置は、待機位置に移送される又は待機位置に移送されたねじを収容部に戻す返却手段を備えていて、制御部は、供給すべきねじの種類に関する基準データと、待機位置に移送される又は待機位置に移送されたねじの種類を検知した検知データとを比較し、基準データと検知データのねじの種類が異なる場合は返却手段にねじ返却作業を実行させることができる。従って、複数種類のねじを収容した場合でも、基準データと検知データが一致する意図したねじのみを供給することができる。また使用するねじの種類に対応させてねじ供給装置を準備する必要がないため、装置の大型化、複雑化、高コスト化の問題も解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るねじ供給装置を備えたねじ締めロボットの第一実施形態を示した外観図である。
図2図1に示したねじ締めロボットのブロック図である。
図3図1に示したねじ供給装置の外観図である。
図4】ねじ締め作業に関するフローチャートである。
図5】ねじの長さ検出に関する説明図である。
図6図5に示した検出結果に基づいて行われるねじの待機又は返却に関する説明図である。
図7】本発明に係るねじ供給装置の第二実施形態における部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、ねじ締めロボット1に搭載された、本発明に係るねじ供給装置6について説明する。以下の説明においては、便宜上、ねじ締めロボット1を図1に示す方向から見た状態での向きで説明することとする。また以下の説明におけるX、Y、Z方向とは、図面に示した矢印X、Y、Zに沿う方向であって、ねじ締めロボット1を正面から見た際の前後方向をX方向、左右方向をY方向、上下方向をZ方向とし、それぞれの矢印の方向を正方向する。
【0017】
まず、ねじ締めロボット1の概要について説明する。図1及び図2に示すように本実施形態のねじ締めロボット1は、ねじ締めユニット3を備えた3軸ロボット2と、ねじ供給装置6を備えている。ねじ締めロボット1は、教示・操作装置5を用いて作業者が与えた教示データ(ティーチングデータ)に基づき、ねじ締めユニット3を備えた3軸ロボット2と、ねじ供給装置6とを協働させ、ねじ供給装置6から供給されるねじSA等を、3軸ロボット2とねじ締めユニット3でワークWの所定の位置に締め付けるように構成されている。なお、ねじ締めロボット1が使用するねじは、図5(c)、(d)に示すように、ねじSA、SBの2種類とする。ねじSA、SBは、図示したように頭部S2のサイズは同一であるが、雄ねじ部S1の長さはねじSAの方がねじSBよりも長くなっている。
【0018】
以下、ねじ締めロボット1を構成する各部について詳細に説明する。
上述した3軸ロボット2は、図示したように、ワークWをX軸方向に移動せるXテーブル7と、ねじ締めユニット3をZ軸方向に移動させるZユニット8と、ねじ締めユニット3及びZユニット8をY軸方向に移動させるYユニット9とを備えている。
【0019】
ねじ締めユニット3は、図1の部分拡大図に示すように、ねじSA等を回転させるためのビット(ドライバ)10と、ビット10を取り囲む筒状のマウスピース部11とを備えている。ビット10は、ビット回転モータ(図示省略)によって回転する。またマウスピース部11は、本実施形態では上下方向中間部に設けられたエア吸引口12を備えている。エア吸引口12は、吸引装置(図示省略)につながっていて、吸引装置を作動させると、マウスピース部11内の空気がエア吸引口12から吸引される。これによりマウスピース部11内に吸引力が発生するため、ビット10の先端にねじSA等を吸着させることができる。
【0020】
ロボット制御部4aは、ねじ締めロボット1の各部と電気的に接続される。本実施形態のロボット制御部4aは、図2に示したブロック図のように、教示・操作装置5、プログラム・教示データ記憶部4c、ねじ締めユニット3のビット回転モータや吸引装置、3軸ロボット2に設けられたX軸方向、Y軸方向、Z軸方向へ移動するためのX駆動モータ、Y駆動モータ、Z駆動モータと接続され、更にねじ供給装置6が備えるねじ供給制御部4bと接続されている。
【0021】
教示・操作装置5は、使用するねじの種類に関する基準データ(本実施形態においてはねじSA、ねじSBの何れを使用するか)や、ねじSA等が締め付けられる位置に関するデータ(例えばXYZ座標)等の教示データを入力する際に使用される。入力された教示データは、図2に示したプログラム・教示データ記憶部4cに記憶される。
【0022】
本願発明のねじ供給装置6は、本実施形態では図2及び図3に示すように構成されている。図2のブロック図に示す通り、ねじ供給装置6は、供給装置用駆動モータ6aと、ねじ有無センサ21、ねじ長さセンサ22、そしてそれらが電気的に接続されているねじ供給制御部4bを備える。なお、ねじ供給制御部4bは本明細書における「制御部」に相当する。そして、ねじ供給制御部4bはロボット制御部4aと電気的に接続されている。一方、図3はねじ供給装置6の外観斜視図であるが、説明の都合上、手前側のカバーを一部省略して内部が表れる状態で示している。図示したようにねじ供給装置6は、上側に向けて開口するねじ投入口13と、ねじ投入口13から投入された複数のねじSA等を収容するねじ収容部14とを備えている。ねじ収容部14に収容されたねじSA等は、向きがバラバラの状態になっている。ねじ収容部14におけるX方向中間部分には、Y方向に沿って延在するとともに主にY方向に振動する振動レール15が設けられている。なお、ねじ収容部14は、本明細書における「収容部」に相当する。そして振動レール15は、本明細書における「移送部」の一部を構成するものであり、また「供給レール」に相当するものでもある。
【0023】
振動レール15は、図3の部分拡大図に示すように、所定の隙間Gを設け平行に設置されている一対の板状又はブロック状部材から構成される。隙間Gは、ねじSA等の雄ねじ部S1の幅よりも広く、頭部S2の幅よりも狭く設定されている。このような振動レール15によってねじSA等は、雄ねじ部S1が下方を向くとともに頭部S2が振動レール15の上面に引っ掛かった状態で支持され、また振動レール15の振動によって、Y正方向に向けて前進する。
【0024】
振動レール15の近傍には、ねじ収容部14の床部の一部を構成するとともに上下運動するブロック状の押上部16が設けられている。押上部16が上下運動することによって、ねじ収容部14に収容されたねじSA等は振動レール15の上方まで持ち上げられる。持ち上げられたねじSA等のうち、振動レール15の隙間Gに雄ねじ部S1が入り込まないものは振動レール15から落下する一方、これに入り込むねじSA等は、振動レール15上で整列する。なお、振動レール15に対してねじSA、ねじSBは無作為に入り込むため、ねじSAとねじSBが振動レールで整列する順番は不規則である。
【0025】
ねじ収容部14の内側と後述する基台18との間には、Y方向に沿って延在するレール17が設けられている。レール17は、振動レール15と同様に、所定の隙間Gを設け平行に設置されている一対の板状又はブロック状部材から構成される一方、本実施形態では振動機能は設けられていない。なお、レール17に関する詳細な説明は後述する。
【0026】
振動レール15とレール17のY正方向には、基台18と、基台18に対して上面が揃った状態で配置される円板19と、円板19の一部に被さるようにして基台18の上面に固定される排出チップ20が設けられている。
【0027】
基台18は、円板19が嵌まる円形の孔と、振動レール15のY正方向端部に対向する位置でこの孔を切り欠く切り欠きを備えている。また基台18は、この孔からレール17のY正方向端部に向けて延在してレール17と一続きになる溝18aを備えている。基台18の切り欠きと溝18aの幅は、振動レール15の隙間Gと略同一である。なお、レール17と溝18aは、本明細書における「返却手段」の一部を構成するものであり、また「返却レール」に相当するものでもある。
【0028】
円板19は、基台18と排出チップ20に対して回転(本実施形態では平面視で右回りに回転)するものである。また円板19は、その外縁部において半円状の切り欠き部19aを備えている。切り欠き部19aは、振動レール15の隙間Gと略同一の幅になるように形成されていて、また円板19に対して180度間隔で合計2個設けられている。なお円板19は、本明細書における「移動体」に相当する。
【0029】
なお、ねじ供給装置6は、図2に示した供給装置用駆動モータ6aの回転力を振動レール15、押上部16、円板19に伝達する駆動機構(不図示)を備えている。供給装置用駆動モータ6aを駆動させることにより、振動レール15を振動させ、且つ押上部16を上下動させることができる。また所定のタイミングで円板19を回転させることができる。
【0030】
排出チップ20は、上述した基台18における切り欠きと溝18aの間に設けられている。なお排出チップ20は、後述するように円板19を右回りに回転させた際に、切り欠き部19aに収まったねじSA等の頭部S2が押し当たり、ねじSA等を溝18aに向けて移動させる。
【0031】
ここで、切り欠き部19aが振動レール15のY正方向端部に対向する位置にあるとき、この切り欠き部19aの位置を「受け取り位置P1」と称し、受け取り位置P1に対して円板19の中心を基点として180度回転した位置を「待機位置P2」と称し、ねじSA等の頭部S2が排出チップ20に押し当たる際の切り欠き部19aの位置を「返却位置P3」と称することとする。本実施形態の切り欠き部19aは、回転する円板19によって、受け取り位置P1から待機位置P2を経て返却位置P3に至る円形の移動経路上を移動するものである。なお円板19は同一方向に回転するため、返却位置P3に至った後の切り欠き部19aは、再び受け取り位置P1へ移動する。
【0032】
待機位置P2付近には、基台18の上方に配置されるねじ有無センサ21が設けられている。ねじ有無センサ21は、光を発する第一発光部21aと、第一発光部21aからの光を受ける第一受光部21bとを備えていて、光を遮蔽する物体の有無を検知するものである。本実施形態のねじ有無センサ21は、第一発光部21aと第一受光部21bとを結ぶ光軸21cがX方向を指向し、且つ待機位置P2に重なる位置に設けられていて、円板19が回転する際に頭部S2が光を遮蔽することによって、ねじSA等が待機位置P2の近傍に移動したことを検知する。
【0033】
また基台18を挟んで、ねじ有無センサ21の下方には、ねじ長さセンサ22が設けられている。ねじ長さセンサ22は、第一発光部21a及び第一受光部21bと同様の構成になる第二発光部22a及び第二受光部22bを備えている。図5(c)、(d)に示すように本実施形態の第二発光部22aと第二受光部22bは、第二発光部22aと第二受光部22bとを結ぶ光軸22cが、ねじSAにおける長さの長い雄ねじ部S1によって遮られ、且つねじSBにおける長さの短い雄ねじ部S1によっては遮られない高さに設けられている。これにより、待機位置P2に移動したものがねじSAであるか、ねじSBであるかを検知する。なおねじ長さセンサ22は、本明細書における「検知部」に相当する。
【0034】
以上のように構成されるねじ締めロボット1は、図4に示すフローチャートに従って動作させることができる。なお、上述した教示データは、教示・操作装置5から予め入力されていて、プログラム・教示データ記憶部4cに記憶されている。
【0035】
まず、教示・操作装置5を操作してねじ締め作業を開始させる工程を実行する(図4のs1)。次いでロボット制御部4aは、プログラム・教示データ記憶部4cに記憶されている教示データから次にねじ締め作業が行われる位置のXYZ座標と、使用されるねじの種類(ねじの長さ)に関する基準データを読み込む工程を実行する(図4のs2)。このときロボット制御部4aは、上述したねじ供給装置6のねじ供給制御部4bにも信号及び基準データを送り、供給装置用駆動モータ6aも駆動させていて、これにより振動レール15が振動し、且つ押上部16が上下動するため、ねじSAとねじSBは振動レール15上で順不同で整列して、円板19に向けて前進する。これにより図5(a)に示すように、整列した際の先頭のねじSA(又はねじSB)を受け取り位置P1の切り欠き部19aに移動させることができる。
【0036】
その後、ねじ供給制御部4bは、図5(b)に示すように、切り欠き部19aのねじSA(又はねじSB)がねじ有無センサ21の光を遮蔽するまで円板19を右回りに回転させることによって、ねじSA(又はねじSB)を待機位置P2へ移動させる工程を実行する(図4のs3)。待機位置P2にはねじ長さセンサ22が設けられているため、待機位置P2に移動したのはねじSAか、ねじSBかを検知することができる(図4のs4)。なお、先頭のねじSA(又はねじSB)を待機位置P2へ移動させた際、円板19に設けたもう一つの切り欠き部19aは受け取り位置P1に移動しているため、図5(b)に示すように整列時における2番目のねじSA(又はねじSB)は、この切り欠き部19aに移動している。
【0037】
その後は、ねじ供給制御部4bは、ねじ長さセンサ22で検知した検知データと上記の工程s2で読み込んだ基準データが同じか否かを判断する工程を実行する(図4のs5)。ここで、上記の工程s2で読み込んだ使用されるねじの種類が、雄ねじ部S1の長さが長いねじSAであって、待機位置P2にも図5(c)に示すようにねじSAが移動しているとする。この場合は、検知したねじの種類と読み込んだねじの種類が同じであると判別されるため(図4のs5においてYES)、ねじ供給制御部4bから判別信号を受けたロボット制御部4aは、図6(a)に示すように3軸ロボット2を動作させて、ねじ締めユニット3のビット10を待機位置P2のねじSAまで移動させ、上述した吸引装置を作動させてビット10にねじSAを吸着させる工程を実行する(図4のs6)。なお、工程s6が終了するまでは、円板19は停止させたままとし、ねじSAを待機位置P2に留めておく。
【0038】
意図したねじSAをビット10に吸着した後は、上記の工程s2で読み込んだねじ締め作業が行われる位置へねじ締めユニット3を移動させ、上述したビット回転モータを駆動させてビット10を回転させてねじ締め作業を実行する(図4のs7)。なお、ねじSAを締め込んだ後は、ビット10での吸着を停止する。その後は、ねじ締め作業が終了したか判断を行い(図4のs8)、作業終了の場合(図4のs8でYES)は、ねじ締め作業を終了し(図4のs9)、作業が終了していない場合(図4のs8でNO)は、上記s2からの工程を実行する。
【0039】
ここで、上記工程s5において、ねじ長さセンサ22で検知したねじの種類と上記の工程s2で読み込んだ使用されるねじの種類が異なっている場合(図4のs5でNO)について説明する。例えば、上記の工程s2で読み込んだ使用されるねじの種類が、雄ねじ部S1の長さが長いねじSAであって、待機位置P2には図5(d)に示すようにねじSBが移動しているとする。この場合は図6(b)に示すように、ねじ供給制御部4bは、円板19を右回りに半回転させて、待機位置P2にある先頭のねじSBを溝18aに排出し、また受け取り位置P1にある2番目のねじSA(又はねじSB)を待機位置P2に移動させる工程を実行する(図4のs10)。円板19を右回りに回転させると、待機位置P2にある先頭のねじSBは円板19とともに回転し、返却位置P3でねじSBの頭部S2が排出チップ20に押し当たるため、先頭のねじSBを溝18aに向けて移動させることができる。そして空になった切り欠き部19aが受け取り位置P1へ移動するため、整列時における3番目のねじSA(又はねじSB)をこの切り欠き部19aに移動させることができる。また円板19を半回転させることにより、2番目のねじSA(又はねじSB)を待機位置P2まで移動させることができる。
【0040】
このような工程を実行することにより、意図したねじSA(又はねじSB)でねじ締め作業を行うことができる。なお、溝18aに移動したねじSA(又はねじSB)は、意図しない次のねじSA(又はねじSB)が溝18aに移動することによって押し出され、次第にレール17に向かって移動する。図3に示すようにレール17は、ねじ収容部14に通じているため、これらのねじSA(又はねじSB)は、最終的にねじ収容部14に落下し、その後は上下動する押上部16によって、再び振動レール15上に整列させることができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0042】
例えば上記の実施形態では、基台18に円板19が嵌まる円形の孔を設けて円板19を回転させるように構成したが、図7に示すように構成してもよい。図7(a)に示したねじ供給装置6は、基台18、円板19に替えて基台23とスライド部材24を備える。
【0043】
基台23は、スライド部材24が嵌まる矩形状の孔と、この孔に通じるとともに振動レール15とレール17のそれぞれが嵌まる2つの切り欠きを備えている。
【0044】
スライド部材24は、基台23に設けた矩形状の孔の内側でX方向(前後方向)に沿って移動するものである。スライド部材24には、振動レール15の隙間Gと略同一の幅になるように形成された半円状の切り欠き部24aが設けられている。スライド部材24が移動することによって、切り欠き部24aは、図7(a)に示した振動レール15のY正方向端部に対向する「受け取り位置P1」から、図7(b)に示した振動レール15とレール17の間に位置する「待機位置P2」を経て、図7(c)に示したレール17のY正方向端部に対向する「返却位置P3」に至る直線状の移動経路上を移動する。
【0045】
本実施形態の排出チップ20は、図示したように、レール17の近傍において振動レール15が位置する側とは逆側に設けられている。またねじ有無センサ21は、基台23の上方において、第一発光部21aと第一受光部21bとを結ぶ光軸21cがY方向を指向し、且つ待機位置P2に重なる位置に設けられている。なお図示は省略するが、基台23の下方においてねじ有無センサ21の直下には、ねじ長さセンサ22が設けられている。本実施形態のねじ長さセンサ22も、図5(c)、(d)を参照しながら説明した先の実施形態と同様に、第二発光部22aと第二受光部22bとを結ぶ光軸22cが、ねじSAにおける長さの長い雄ねじ部S1によって遮られ、且つねじSBにおける長さの短い雄ねじ部S1によっては遮られない高さに設けられている。
【0046】
図7に示したねじ供給装置6を用いる場合も、図4に示したフローチャートと同様の手順で動作させることができる。すなわち、図7(a)に示すように切り欠き部24aを受け取り位置P1に移動させた状態で工程s1~s3を実行することによって、振動レール15で整列した先頭のねじSA(又はねじSB)を受け取り位置P1の切り欠き部24aに移動させることができる。
【0047】
その後はスライド部材24を移動させて、図7(b)に示すように切り欠き部24aを待機位置P2へ移動させる工程s3を実行する。待機位置P2にはねじ長さセンサ22(不図示)が設けられているため、待機位置P2に移動したのはねじSAか、ねじSBかを検知することができる。その後は、ねじ長さセンサ22で検知した検知データと工程s2で読み込んだ基準データが同じか否かを判断する工程を実行し、両者が同じであればねじ締めユニット3を待機位置P2まで移動させ、吸引装置を作動させてビット10にねじSA等を吸着させる工程を実行し、更にねじ締め作業が行われる位置へねじ締めユニット3を移動させ、ビット10を回転させてねじ締め作業を実行する。
【0048】
一方、ねじ長さセンサ22で検知した検知データと工程s2で読み込んだ基準データが異なっている場合は、スライド部材24を移動させて、図7(c)に示すように切り欠き部24aを返却位置P3へ移動させる。これにより、ねじSA等の頭部S2が排出チップ20に押し当たるため、基準データに対して検知データが異なるねじSA等をレール17に排出することができる。その後は、図7(a)に示すようにスライド部材24を移動させた後に図7(b)に示す位置までスライド部材24を移動させることによって、整列時における2番目のねじSA(又はねじSB)を待機位置P2まで移動させることができる。
【0049】
また上述した2つの実施形態において、ねじSA等を移動させる切り欠き部19a、24aは、受け取り位置P1、待機位置P2、返却位置P3の順に移動していくものであったが、受け取り位置P1、返却位置P3、待機位置P2の順に移動するように構成してもよい。具体的に説明すると、図3に示す実施形態においては、振動レール15に対してX負方向に設けていたレール17と溝18aとを、振動レール15に対してX正方向に設けるものとする。また排出チップ20は、円板19を右回りに回転させた際に切り欠き部19aが通過していく移動経路に対して進退移動できるように構成し、その取り付け位置は、排出チップ20を移動経路に向けて前進させて円板19を右回りに回転させると、切り欠き部19aに収まったねじSA等の頭部S2が押し当たってねじSA等が溝18aに排出される一方、排出チップ20を移動経路から後退させると、頭部S2には押し当たらない位置とする。なお、本実施形態の排出チップ20は、本明細書における「排出体」に相当する。またこのように構成する場合においても、切り欠き部19aが振動レール15のY正方向端部に対向する位置が受け取り位置P1であり、頭部S2が排出チップ20に押し当たる際の位置が返却位置P3であり、受け取り位置P1に対して円板19の中心を基点として180度回転した位置が待機位置P2である。また、このように構成したねじ供給装置6においてねじ長さセンサ22は、例えば振動レール15の近傍に設けておき、ねじSA等が返却位置P3に至る前でねじの種類(ねじ長さ)が検知できるようにしておく。
【0050】
このように構成したねじ供給装置6においては、振動レール15で整列した段階でねじSA等の種類を検知して検知データを取得しておく。そして、受け取り位置P1の切り欠き部19aに移動させたねじSA等を待機位置P2に移動させるにあたり、供給すべきねじの種類に関する基準データと検知データが同じであれば、排出チップ20を後退させた状態で円板19を右回りに回転させて、ねじSA等を待機位置P2に移動させる。一方、基準データと検知データが異なっている場合は、排出チップ20を前進させた状態で円板19を右回りに回転させると、ねじSA等の頭部S2が排出チップ20に押し当たるため、基準データに対して検知データが異なるねじSA等を溝18aに排出することができる。
【0051】
またこれまでに述べた実施形態では、ねじ長さセンサ22によって、雄ねじ部S1の長さが異なる2種類のねじSA、SBを検知するように構成したが、ねじ長さセンサ22の数を増やすとともにこれらを上下方向にずらして配置することによって、雄ねじ部S1の長さが異なる3種類以上のねじを検知することができる。またねじ長さセンサ22の上下方向の位置を可変できるように構成し、ねじ長さセンサ22が移動した位置に応じて雄ねじ部S1の長さを検出してねじの種類を検知してもよい。またねじ長さセンサ22は1つの光軸を持つ非接触センサであったが、光軸を上下方向に複数持つセンサであってもよい。このようなセンサであれば、一つのセンサであってもねじの種類をより多く検知することができる。またセンサの種類も非接触センサに限られず、接触センサ、超音波センサ、金属探知センサ等を使用してもよい。またカメラでねじを撮像し、その画像に基づいてねじの種類を特定してもよい。
【0052】
またこれまでに述べた実施形態では、ねじの基準データは3軸ロボット2のプラグラム・教示データ記憶部4cに記憶されており、必要に応じねじ供給装置6のねじ供給制御部4bに送信される構成であったが、ねじ供給装置6のねじ供給制御部4b内部にあらかじめ基準データが記憶されていても良い。またこれまでに述べた実施形態では、ロボット制御部4aとねじ供給制御部4bと分かれていたが、統一された一つの制御装置を持つねじ締めロボット1と構成しても良い
【0053】
また検知するねじの種類は、雄ねじ部S1の長さが相違するものに限られず、例えば雄ねじ部S1の直径が異なるものや、雄ねじ部S1におけるねじ山のピッチが異なるものも含まれる。また頭部S2の外径や形状(なべ型か皿型か等)が異なるものも含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1:ねじ締めロボット
4b:ねじ供給制御部(制御部)
6:ねじ供給装置
14:ねじ収容部(収容部)
15:振動レール(移送部、供給レール)
17:レール(返却手段、返却レール)
18a:溝(返却手段、返却レール)
19:円板(移送部、移動体)
19a:切り欠き部
20:排出チップ(排出体)
22:ねじ長さセンサ(検知部)
P1:受け取り位置
P2:待機位置
P3:返却位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7