(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ストラットマウント
(51)【国際特許分類】
F16F 9/54 20060101AFI20240513BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20240513BHJP
F16F 1/37 20060101ALI20240513BHJP
F16F 1/373 20060101ALI20240513BHJP
F16F 3/093 20060101ALI20240513BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20240513BHJP
B60G 13/06 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
F16F9/54
F16F1/36 E
F16F1/37 Z
F16F1/373
F16F3/093
F16F15/08 E
B60G13/06
(21)【出願番号】P 2020166229
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】服部 優三
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-024954(JP,U)
【文献】特開2007-100889(JP,A)
【文献】特開2011-084175(JP,A)
【文献】特開2009-264553(JP,A)
【文献】特開平08-150821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/54
F16F 1/36
F16F 1/37
F16F 1/373
F16F 3/093
F16F 15/08
B60G 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、外筒と、前記内筒と前記外筒との間に配置されている弾性部材と、を備えており、
前記弾性部材は、第1弾性部材と、前記第1弾性部材よりも剛性が高い第2弾性部材と、からなり、
前記第1弾性部材は、前記内筒の外周に配置されており、
前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材の外周に配置されており、
前記第1弾性部材の軸線方向一方端は、前記外筒と接触しており、
前記内筒は、環状のディスク状の部材であり、
前記外筒は、径方向に延びるとともに貫通孔が形成されたカバーと、当該カバーの軸線方向一方側に間隔を空けて配置された、径方向に延びるとともに貫通孔が形成された隔壁と、を有しており、
前記内筒、前記外筒の前記カバー及び前記外筒の前記隔壁は、軸線方向において前記外筒の前記カバーと前記外筒の前記隔壁との間に前記内筒を挟んで、互いに軸線方向に対向する部分を有しており、
前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材を軸線周りに取り囲む筒状部と、当該筒状部の軸線方向他方端を閉じ軸線周りに周回する環状の隔壁と、を備えており、
前記第2弾性部材の軸線方向一方端は、軸線方向に開放されており、
前記内筒と前記外筒の前記隔壁との間には、軸線方向において前記第1弾性部材が介在しており、軸線方向において全周にわたって前記第2弾性部材は介在していない、ストラットマウント。
【請求項2】
前記第1弾性部材の軸線方向他方端は、前記第2弾性部材によって覆われている、請求項1に記載されたストラットマウント。
【請求項3】
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との合わせ面には、互いに合わさる凹部及び凸部が形成されている、請求項1又は2に記載されたストラットマウント。
【請求項4】
前記第1弾性部材は、軸線周りに分割して配置された複数の分割片からなる、請求項1~
3のいずれか1項に記載されたストラットマウント。
【請求項5】
前記第1弾性部材は発泡ウレタン部材であり、前記第2弾性部材はゴム部材である、請求項1~
4のいずれか1項に記載されたストラットマウント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラットマウントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のストラットマウントには、軽量化を目的に、内筒(インナ部材)と外筒(アウタ部材)の間に介在させた弾性部材(弾性防振部材)が発泡ポリウレタン成形体からなるアッパーサポートがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のストラットマウントには、大きな荷重が入力されたときの変位抑制を行う点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、荷重が入力されたときの当該荷重の大きさに応じて、振動の変位を抑制することができる、新規のストラットマウントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るストラットマウントは、内筒と、外筒と、前記内筒と前記外筒との間に配置されている弾性部材と、を備えており、前記弾性部材は、第1弾性部材と、前記第1弾性部材よりも剛性が高い第2弾性部材と、からなり、前記第1弾性部材は、前記内筒の外周に配置されており、前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材の外周に配置されており、 前記第1弾性部材の軸線方向一方端は、前記外筒と接触している。本発明によれば、荷重が入力されたときの当該荷重の大きさに応じて、振動の変位を抑制することができる。
【0007】
本発明に係るストラットマウントにおいて、前記第1弾性部材の軸線方向他方端は、前記第2弾性部材によって覆われていることが好ましい。この場合、大きな荷重が入力されたときの振動の変位を効果的に抑制することができる。
【0008】
本発明に係るストラットマウントにおいて、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との合わせ面には、互いに合わさる凹部及び凸部が形成されていることが好ましい。この場合、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との相対移動を防止することができるとともに、振動吸収性能が所望の振動吸収性能に近づくようにチューニングすることができる。
【0009】
本発明に係るストラットマウントにおいて、前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材を軸線周りに取り囲む筒状部を備えていることが好ましい。この場合、ストラットマウントを製造する際の製造性が向上する。
【0010】
本発明に係るストラットマウントにおいて、前記第1弾性部材は、軸線周りに分割して配置された複数の分割片からなるものとすることができる。この場合、第1弾性部材を主体とした振動吸収性能が、所望の振動吸収性能に近づくようにチューニングすることができる。
【0011】
本発明に係るストラットマウントにおいて、前記第1弾性部材は発泡ウレタン部材であり、前記第2弾性部材はゴム部材であるものとすることができる。この場合、ゴム部材を使用した一般的なストラットマウントに比べて、弾性部材が外筒に対して摺動することによって生じる異音を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、荷重が入力されたときの当該荷重の大きさに応じて、振動の変位を抑制することができる、新規のストラットマウントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る、ストラットマウントを、当該ストラットマウントの軸線を含む断面で示す断面図である。
【
図2】
図1の断面状態を、上方から示す斜視断面図である。
【
図3】
図1のストラットマウントに設けられた2つの第1弾性部材を、軸線方向から示す平面図である。
【
図4】
図3の、一方の第1弾性部材を、他方の第1弾性部材との合わせ面側から示す側面図である。
【
図5】
図1の第2弾性部材を、下方から示す平面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る、ストラットマウントを、当該ストラットマウントの軸線を含む断面で示す断面図である。
【
図8】
図7の第1弾性部材を、内筒が組付けられた状態で、上方から示す斜視図である。
【
図9】
図7の第2弾性部材を、下方から示す平面図である。
【
図11】
図7の弾性部材を、下方から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態に係る、ストラットマウントについて、説明をする。
【0015】
図1には、本発明の第1実施形態に係る、ストラットマウント1Aを断面で示す。ここで、前記断面は、ストラットマウント1Aの軸線Oを含む断面である。また、
図2は、
図1の斜視断面図である。また、以下の説明において、軸線Oが延在する方向を「軸線方向」ともいう。また、軸線Оの周りを「軸線周り」ともいう。
【0016】
ストラットマウント1Aは、内筒2と、外筒3と、弾性部材4と、を備えている。弾性部材4は、内筒2と外筒3との間に配置されている。
【0017】
内筒2には、貫通孔A2が形成されている。貫通孔A2は、軸線Oに沿って延在している。本実施形態では、内筒2は、環状のディスク部材である。
【0018】
また、外筒3には、貫通孔A3が形成されている。貫通孔A3は、軸線Oに沿って延在している。本実施形態では、外筒3は、ハウジング31と、カバー32とを備えている。
【0019】
本実施形態では、ハウジング31には、貫通孔A3の一部として、貫通孔A31が形成されている。また、本実施形態では、ハウジング31の内部には、隔壁33が設けられている。隔壁33は、貫通孔A31を、第1貫通孔A31aと第2貫通孔A31bとに区画する。さらに、本実施形態では、隔壁33には、第3貫通孔A31cが形成されている。第3貫通孔A31cは、第1貫通孔A31aと第2貫通孔A31bとを連通させる。本実施形態では、第3貫通孔A31cの直径は、内筒2の貫通孔A2の直径よりも大きい。
【0020】
また、本実施形態では、カバー32にも、貫通孔A3の一部として、貫通孔A31を外界に通じさせる貫通孔A32が形成されている。
【0021】
本実施形態では、ハウジング31とカバー32との間に、収容空間S1が形成されている。本実施形態では、収容空間S1は、ハウジング31の隔壁33と、カバー32との間に形成された空間である。収容空間S1には、弾性部材4が収容されている。
【0022】
弾性部材4は、筒状部材である。弾性部材4には、貫通孔A4が形成されている。貫通孔A4は、軸線Oに沿って延在している。内筒2は、弾性部材4に形成された貫通孔A4に配置されている。本実施形態では、内筒2の外縁部2aが弾性部材4に埋設されている。
【0023】
弾性部材4は、第1弾性部材41と、第2弾性部材42と、からなる。第2弾性部材42は、第1弾性部材41よりも剛性が高い。
【0024】
本実施形態では、第1弾性部材41は、発泡ウレタン部材である。本実施形態では、発泡ウレタン部材は、ポリウレタンフォームからなる部材である。また、本実施形態では、第2弾性部材42は、ゴム部材である。ゴム部材は、ゴムからなる部材である。ゴムは、ポリウレタンフォームよりも剛性が高い。特に、ポリウレタンフォームは、ゴムよりも動倍率(動的バネ定数/静的バネ定数)が低い。言い換えれば、本実施形態では、第1弾性部材41は、第2弾性部材42よりも動倍率が低い。
【0025】
第1弾性部材41は、内筒2の外周に配置されている。
【0026】
本実施形態では、内筒2は、第1弾性部材41の内部に配置されている。本実施形態では、第1弾性部材41には、貫通孔A4の一部として、貫通孔A41が形成されている。貫通孔A41は、軸線Oに沿って延在している。本実施形態では、貫通孔A41の直径は、内筒2の貫通孔A2の直径よりも大きい。
【0027】
また、本実施形態では、第1弾性部材41は、周方向溝41gを備えている。周方向溝41gは、軸線周りに延在している。周方向溝41gは、第1弾性部材41の内面41f2に開放されている。内筒2は、当該内筒2の外縁部2aを周方向溝41gに嵌合させることによって、第1弾性部材41に対して固定されている。即ち、本実施形態では、内筒2は、貫通孔A41に配置されている。
【0028】
さらには、本実施形態では、第1弾性部材41は、軸線周りに配置された複数の分割片からなる。複数の分割片は、軸線周りに環状に配置されている。
図3を参照すれば、ストラットマウント1Aは、前記複数の分割片として、2つの第1弾性部材41を備えている。本実施形態では、第1弾性部材41は、円筒部材としての第1弾性部材を、軸線Oを含む断面で、2つに分割した半割の部材である。本実施形態では、一方の第1弾性部材41の合わせ面41f1と、他方の第1弾性部材41の合わせ面41f1とを合わせる(接触させる)ことによって、2つの第1弾性部材41の間に貫通孔A41が形成されている。本実施形態では、貫通孔A41は、2つの第1弾性部材41の内面41f2によって形作られている。
図4に示すように、本実施形態では、周方向溝41gは、第1弾性部材41の内面41f2に沿って軸線周りに延在しているとともに当該内面41f2に開放されている。また、本実施形態では、周方向溝41gは、合わせ面41f1に開放されている。
【0029】
また、
図2を参照すれば、第2弾性部材42は、第1弾性部材41の外周に配置されている。
【0030】
図5を参照すれば、本実施形態では、第2弾性部材42は、第1弾性部材41を軸線周りに取り囲む筒状部42aを備えている。また、
図6に示すように、本実施形態では、第2弾性部材42は、筒状部42aの一端を閉じる隔壁42bを備えている。本実施形態では、隔壁42bは、軸線周りに周回する環状の隔壁である。本実施形態では、隔壁42bには、貫通孔A4の一部として、貫通孔A42が形成されている。貫通孔A42は、軸線Oに沿って延在している。
【0031】
本実施形態では、筒状部42aと隔壁42bとによって、収容空間S2が形成されている。収容空間S2には、
図2に示すように、第1弾性部材41が収容されている。これによって、第1弾性部材41と第2弾性部材42とは、
図1に示すように、軸線方向断面視において、互いに軸線方向に重なった部分を有している。
図1を参照すれば、本実施形態において、第1弾性部材41は、当該第1弾性部材41の全体が第2弾性部材42に対して軸線方向に重なるように、当該第2弾性部材42に収容されている。
図6を参照すれば、本実施形態では、第2弾性部材42の軸線方向一方端42e1が開放されている。本実施形態では、第1弾性部材41は、第2弾性部材42の軸線方向一方端42e1から収容空間S2に圧入させることができる。
【0032】
本実施形態では、第2弾性部材42の軸線方向一方端42e1は、筒状部42aの軸線方向一端によって形成されている。本実施形態では、第2弾性部材42の軸線方向一方端42e1は、
図6に示すように、軸直方向外側が面取りされている。前記面取りは、
図6に示すように、軸線方向断面視において、曲率半径rの曲線によって形成されている。また、本実施形態では、第2弾性部材42の軸線方向他方端42e2は、筒状部42aの軸線方向他方端(隔壁42bの軸線方向他方端)によって形成されている。本実施形態では、第2弾性部材42の軸線方向他方端42e2は、軸線周りを周回する環状の端面である。
【0033】
さらに、
図1を参照すれば、第1弾性部材41の軸線方向一方端41e1は、外筒3と接触している。
【0034】
図3を参照すれば、本実施形態では、第1弾性部材41の軸線方向一方端41e1は、半環状の端面である。2つの第1弾性部材41の合わせ面41f1を互いに合わせることによって、2つの第1弾性部材41の軸線方向一方端41e1には、貫通孔A41が開口している。
【0035】
図1を参照すれば、本実施形態では、第1弾性部材41の軸線方向一方端41e1は、第2弾性部材42とともに、外筒3に対して接触している。具体的には、第1弾性部材41の軸線方向一方端41e1は、弾性部材4が外筒3に収容されているとき、第2弾性部材42の軸線方向一方端42e1とともに、外筒3に設けられた隔壁33と接触している。ハウジング31に設けられた隔壁33は、貫通孔A31を、弾性部材4が収容される収容空間S1と、ショックアブソーバ(図示省略。)が収容される収容空間S3と、に区画している。
【0036】
さらに、第1弾性部材41の軸線方向他方端41e2は、第2弾性部材42によって覆われている。ここで、「覆われている」とは、軸線周りに覆われていることをいい、軸直方向については、軸線方向他方端42e2の全体が覆われていなくともよい。本実施形態では、第1弾性部材41の軸線方向他方端41e2は、軸線方向一方端41e1と同様、半環状の端面である。本実施形態では、第1弾性部材41の軸線方向他方端41e2は、第1弾性部材41が第2弾性部材42に収容されているとき、第2弾性部材42の隔壁42bの軸線方向一方端42e3と接触している。
【0037】
さらに、本実施形態では、第2弾性部材42の軸線方向他方端42e2は、外筒3によって覆われている。本実施形態では、第2弾性部材42の軸線方向他方端42e2は、軸直方向において、軸線方向他方端42e2の全体が覆われている。本実施形態では、第2弾性部材42の軸線方向他方端42e2は、弾性部材4が外筒3に収容されているとき、当該外筒3のカバー32によって覆われている。本実施形態では、第2弾性部材42の貫通孔A42は、第1弾性部材41の貫通孔A41と同一の直径を有している。また、本実施形態では、カバー32に形成された貫通孔A32の直径は、第2弾性部材42の貫通孔A42よりも大きい。
【0038】
本実施形態では、第2弾性部材42の軸線方向他方端42e2は、弾性部材4が外筒3に収容されているとき、当該外筒3のカバー32と接触している。
【0039】
ストラットマウント1Aを採用した車両サスペンションにおいて、当該ストラットマウント1Aは、例えば、内筒2をショックアブソーバに装着する一方、外筒3を車体に装着することができる。
【0040】
以下、通常の使用で想定される荷重が入力される通常振動時(以下、「通常走行時」ともいう。)と、悪路走行等の通常の使用で想定されない、大きな荷重が入力される過度振動時(以下、「過度走行時」ともいう。)と、を想定して、ストラットマウント1Aの基本的な動作について説明をする。
【0041】
通常走行時では、ストラットマウント1Aに入力される荷重は小さい。この場合、第2弾性部材42より剛性の低い第1弾性部材41が圧縮されるのみで、第2弾性部材42にはほとんど変形を生じない。このため、ストラットマウント1Aの防振性能には、第1弾性部材41の振動性能が支配的に寄与する。すなわち、本実施形態によれば、通常走行時の振動吸収は、主として、第1弾性部材41が受け持つ。言い換えれば、ストラットマウント1Aに入力される荷重が比較的小さい振動を生じさせるような荷重の場合、当該荷重が入力されたときに生じるストラットマウント1A全体の荷重たわみ(荷重によって生じた変位(mm))は、主として、第1弾性部材41によって制御される。本実施形態では、第1弾性部材41は、第2弾性部材42によりも剛性が低い。したがって、本実施形態によれば、通常振動時の乗り心地性能を向上させることができる。特に、本実施形態では、第1弾性部材41は、ポリウレタンフォームからなる。したがって、本実施形態によれば、通常振動時の乗り心地性能をさらに向上させることができる。
【0042】
これに対し、過渡走行時では、ストラットマウント1Aに入力される荷重は、通常走行時に入力される荷重よりも大きい。この場合、第2弾性部材42が第1弾性部材41とともに圧縮される。このため、ストラットマウント1Aの防振性能には、第2弾性部材42の振動性能が支配的に寄与する。すなわち、本実施形態によれば、過渡走行時の振動吸収は、主として、第2弾性部材42が受け持つ。言い換えれば、ストラットマウント1Aに入力される荷重が通常走行時よりも大きな振動を生じさせるような荷重の場合、当該荷重が入力されたときに生じるストラットマウント1A全体の荷重たわみ(荷重によって生じた変位(mm))は、主として、第2弾性部材42によって制御される。したがって、本実施形態によれば、大きな荷重の入力を吸収しつつ、弾性部材4の耐久性能を確保することができる。
【0043】
すなわち、ストラットマウント1Aによれば、例えば、小さな荷重が入力されるときは、第1弾性部材41を主体とする荷重たわみ特性に基いて、振動の変位を抑制することができる。また、ストラットマウント1Aによれば、例えば、大きな振動が入力されるときは、第2弾性部材42を主体とする荷重たわみ特性に基いて、振動の変位を抑制することができる。
【0044】
さらに、ストラットマウント1Aによれば、弾性部材4が、第1弾性部材41と第2弾性部材42との、剛性が異なる2つの弾性部材からなることから、第1弾性部材41と第2弾性部材42とが占める体積割合を調整することによって、第1弾性部材41を主体とする荷重たわみ特性から第2弾性部材42を主体とする荷重たわみ特性に移行する際に生じる荷重たわみ立ち上がり特性を制御することができる。
【0045】
したがって、ストラットマウント1Aによれば、荷重が入力されたときの当該荷重の大きさに応じて、振動の変位を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態において、第1弾性部材41の軸線方向他方端41e2は、第2弾性部材42によって覆われている。この場合、第1弾性部材41の軸線方向他方端41e2と第2弾性部材42の軸線方向他方端42e2との組み合わせによって振動の変位を抑制できる領域が軸線周りに加えて軸線方向にまで広がるによって広く確保される。したがって、この場合、大きな荷重が入力されたときの振動の変位を効果的に抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態において、第2弾性部材42は、第1弾性部材41を軸線周りに取り囲む筒状部42aを備えている。この場合、第1弾性部材41と第2弾性部材42との組付け作業は、第1弾性部材41を第2弾性部材42の内側に組み込むだけの簡単な作業となる。したがって、この場合、ストラットマウント1Aを製造する際の製造性が向上する。
【0048】
また、本実施形態において、第1弾性部材41は、軸線周りに分割して配置された複数の分割片からなる。この場合、第1弾性部材41を主体として、軸線周りの振動の変位を抑制する際の、当該振動の変位を、個々の分割片の材質として、所望の材質を適宜選択することによって、所望の変位にチューニングすることができる。したがって、この場合、第1弾性部材41を主体とした振動吸収性能が、所望の振動吸収性能に近づくようにチューニングすることができる。
【0049】
また、本実施形態において、第1弾性部材41は発泡ウレタン部材であり、第2弾性部材42はゴム部材である。ゴム部材が外筒3に対して摺動する場合、異音(スティックスリップ音)を生じることがある。これに対し、発泡ウレタン部材が外筒3に対して摺動する場合、前記異音を生じにくい。本実施形態の場合、発泡ウレタン部材としての第1弾性部材41が外筒3と接触する分、ゴム部材としての第2弾性部材42が外筒3と接触する部分を削減することできる。これによって、ゴム部材を使用した一般的なストラットマウントに比べて、第2弾性部材42が外筒3に対して摺動することによって生じる異音を抑制することができる。したがって、この場合、弾性部材4が外筒3に対して摺動することによって生じる異音を抑制することができる。
【0050】
図7は、本発明の第2実施形態に係る、ストラットマウント1Bを、軸線Oを含む断面で示す断面図である。以下の説明において、ストラットマウント1Aと実質的に同一の部分は、同一の符号を用いる。
【0051】
ストラットマウント1Bにおいて、第1弾性部材41と第2弾性部材42との合わせ面には、互いに合わさる凹部及び凸部が形成されていることが好ましい。
【0052】
図7を参照すれば、ストラットマウント1Bは、2つの第1弾性部材41を備えている。前述のストラットマウント1Aでは、2つの第1弾性部材41は、互いの合わせ面41f1を接触させることによって、互いにズレを生じないように組み付けられている。また、第2弾性部材42に対する第1弾性部材41のズレは、第1弾性部材41を外筒3に対して接着させることによって防止することができる。
【0053】
これに対し、本実施形態に係るストラットマウント1Bは、第1弾性部材41と第2弾性部材42との合わせ面に、互いに合わさる凹部n及び凸部pを設けている。
【0054】
本実施形態では、第1弾性部材41と第2弾性部材42との合わせ面は、第1弾性部材41の軸直方向外面41f3と、第2弾性部材42の軸直方向内面42f2との2つの面である。本実施形態では、
図8に示すように、凹部nが第1弾性部材41の軸直方向外面41f3に形成されている。本実施形態では、凹部nは、軸線方向に延在している。また、
図9に示すように、本実施形態では、凸部pが第2弾性部材42の軸直方向内面42f2に形成されている。
図10に示すように、本実施形態では、凸部pは、軸線方向に延在している。これによって、2つの第1弾性部材41の合わせ面41f1を互いに接触させることなく、当該2つの第1弾性部材41を軸線周りに位置決めすることができる。したがって、この場合、
図7に示すように、2つの第1弾性部材41は、互いの合わせ面41f1が隙間cを空けた状態になるように、配置することができる。
【0055】
ここで、ストラットマウント1Bに採用可能な弾性部材4を得るための方法の一例を、図面を用いて説明をする。
【0056】
図11には、2つの第1弾性部材41を、内筒2とともに、第2弾性部材42に対して組み付けた状態を示している。本実施形態では先ず、
図8に示すように、2つの第1弾性部材41を内筒2に対して組み付ける。2つの第1弾性部材41は、それぞれ、当該第1弾性部材41の周方向溝41gに内筒2の外縁部2aを嵌合させることによって、当該内筒2に対して組み付けられる。次いで、
図8の組付体を、第1弾性部材41の凹部nが第2弾性部材42の凸部pと一致するように、
図9の第2弾性部材42の軸線方向一方端42e1に形成された開口を通して収容空間S2内に組み付ける。これによって、
図11に示すような、弾性部材4を得ることができる。
【0057】
ストラットマウント1Bにおいて、第1弾性部材41と第2弾性部材42との合わせ面には、互いに合わさる凹部n及び凸部pが形成されている。この場合、第1弾性部材41と第2弾性部材42とが軸線周りに相対移動することを防止することができる。また、この場合、凹部n及び凸部pの大きさ、形状を変更することによって、第1弾性部材41と第2弾性部材42とが占める体積割合を調整することができる。これによって、振動の変位を所望の変位にチューニングすることができる。したがって、本実施形態によれば、第1弾性部材41と第2弾性部材42との相対移動を防止することができるとともに、振動吸収性能が所望の振動吸収性能に近づくようにチューニングすることができる。
【0058】
また、凹部n及び凸部pを設けるときには、第1弾性部材41と第2弾性部材42との合わせ面は、第1弾性部材41の軸線方向他方端41e2と、第2弾性部材41の隔壁42bの軸線方向一方端42e3との2つの面とすることもできる。さらに、凹部n及び凸部pを設けるときには、第1弾性部材41と第2弾性部材42との合わせ面は、第1弾性部材41の軸直方向外面41f3と、第2弾性部材42の軸直方向内面42f2との2つの面と、第1弾性部材41の軸線方向他方端41e2と、第2弾性部材41の隔壁42bの軸線方向一方端42e3との2つの面との、2組の面とすることもできる。
【0059】
さらに、本実施形態では、凹部n及び凸部pは、第1弾性部材41及び第2弾性部材42に対して、軸線周りに配置された4組である。ただし、本発明によれば、凹部n及び凸部pは、第1弾性部材41及び第2弾性部材42に対して、少なくとも1組設けることができる。また、凹部n及び凸部pは、第1弾性部材41及び第2弾性部材42に対して、本実施形態とは逆(反対)となるように設けることができる。特に、本実施形態では、凹部n及び凸部pは、
図8等に示すように、第1弾性部材41の分割面(合わせ面41f1)の近傍に設けることが好ましい。この場合、第1弾性部材41が2つの分割面(合わせ面41f1)から開いてしまうことを効果的に抑制することができる。ここで、第1弾性部材41の分割面の近傍とは、例えば、第1弾性部材41の2つの合わせ面41f1のそれぞれと、当該第1弾性部材41の2つの合わせ面41f1の中心位置と、の中間位置(半割の第1弾性部材41の1/4の位置)よりも、第1弾性部材41の合わせ面41f1に近い部分をいう。
【0060】
ところで、上記ストラットマウント1A及び1Bにおいて、第2弾性部材42は、第1弾性部材41と同様に、軸線周りに配置された複数の分割片からなるものとすることができる。この場合、大きな荷重が入力される際に生じ得る、第2弾性部材42を主体としたショック感が、個々の分割片の材質として、所望の材質を適宜選択することによって、所望のショック感にチューニングすることができる。
【0061】
また、ストラットマウント1A及び1Bでは、弾性部材4において、例えば、
図1を参照すれば、第2弾性部材42は、外筒3に組み付けたときに、当該第2弾性部材42の下方(軸線方向一方端42e1)が開放されるように、外筒3に組み付けられている。ただし、本発明によれば、第2弾性部材42は、外筒3に組み付けたときに、当該第2弾性部材42の上方(軸線方向他方端42e2)が開放されるように、外筒3に組み付けることができる。この場合、第2弾性部材42の軸線方向一方端41e1が隔壁42bとなる一方、当該第2弾性部材42の軸線方向他方端41e2が開放されることによって、外筒3に組み付けられる。或いは、第2弾性部材42を軸線方向に対して逆さまにして、当該第2弾性部材42に対して第1弾性部材41を組み付けることができる。
【0062】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。例えば、第1弾性部材は、軸線方向に分割して配置された複数の分割片とすることができる。前記複数の分割片は、それぞれ、軸線周りに周回する環状の第1弾性部材とすることができる。この場合、内筒2は、当該内筒2の外縁部2aを軸線方向に配置された2つの分割片によって挟持することができる。上述した各実施形態に採用された様々な構成は、適宜、相互に置き換えることができ、又は、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0063】
1A:ストラットマウント(第1実施形態), 1B:ストラットマウント(第2実施形態), 2:内筒, 2a:内筒の外縁部, 3:外筒, 31:ハウジング, 32:カバー, 33:隔壁, 4:弾性部材, 41:第1弾性部材, 41e1:第1弾性部材の軸線方向一方端, 41e2:第1弾性部材41の軸線方向他方端, 41f1:第1弾性部材の合わせ面, 41f2:第1弾性部材の内面, 41f3:第1弾性部材41の軸直方向外面, 41g:周方向溝, 42:第2弾性部材, 42a:筒状部, 42b:隔壁, 42e1:第2弾性部材の軸線方向一方端, 42e2:第2弾性部材の軸線方向他方端, 42e3:第2弾性部材の隔壁の軸線方向一方端, 42f2:第2弾性部材42の軸直方向内面, A2:内筒の貫通孔, A3:外筒の貫通孔, A31:ハウジングの貫通孔, A31a:第1貫通孔, A31b:第2貫通孔, A31c:第3貫通孔, A32:カバーの貫通孔, A4:弾性部材の貫通孔, A41:第1弾性部材の貫通孔, A42:第2弾性部材の隔壁の貫通孔, n:凹部, p:凸部