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特許7487066無線基地局、制御システム、電子装置、および無線通信端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】無線基地局、制御システム、電子装置、および無線通信端末
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/14 20180101AFI20240513BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20240513BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20240513BHJP
   H04W 72/04 20230101ALI20240513BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H04W76/14
H04W92/18
H04W88/04
H04W72/04
H04M11/00 301
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020173299
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064584
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 綾子
(72)【発明者】
【氏名】小倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】秋田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】旦代 智哉
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 寿久
(72)【発明者】
【氏名】古川 剛志
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0092685(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0327760(US,A1)
【文献】国際公開第2020/030703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無線通信端末と第2無線通信端末との端末間通信を要求する信号の送信を指示する第1制御信号を前記第2無線通信端末に送信し、前記第1無線通信端末の少なくとも一部を操作するための1以上の第1操作信号を前記第2無線通信端末に送信する送信部と、
前記第1操作信号が送信された後に、前記第1無線通信端末から前記第2無線通信端末への応答信号またはデータ信号の少なくとも一方を受信可能である受信部とを具備し、
前記送信部は、
前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方を受信した場合、前記第1無線通信端末の少なくとも一部を操作するための第2操作信号を、前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方に応じて、前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末のいずれか一方に送信し、
前記応答信号または前記データ信号のいずれも受信していない場合、前記第2操作信号を前記第2無線通信端末に送信し、
前記第1制御信号によって開始されうる前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末との端末間通信とは、前記第2無線通信端末に送信された前記1以上の第1操作信号が、前記第2無線通信端末によって前記第1無線通信端末に送信され、前記第2無線通信端末に送信される前記第2操作信号が、前記第2無線通信端末によって前記第1無線通信端末に送信されることを含むと定められる、無線基地局。
【請求項2】
前記受信部は、さらに、前記第1制御信号が送信された後に、前記第2無線通信端末から、前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末との端末間通信を要求する第2制御信号を受信可能であり、
前記送信部は、さらに、前記第2制御信号を受信した場合、前記1以上の第1操作信号を前記第2無線通信端末に送信する、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項3】
前記第1制御信号は、前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末との端末間通信を要求する信号、または前記第1無線通信端末と第3無線通信端末との端末間通信を要求する信号の送信を指示し、
前記送信部は、さらに、前記第1制御信号を前記第2無線通信端末と前記第3無線通信端末とに送信し、
前記受信部は、さらに、前記第1制御信号が送信された後に、
前記第2無線通信端末から、前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末との端末間通信を要求する第制御信号を受信可能であり、
前記第3無線通信端末から、前記第1無線通信端末と前記第3無線通信端末との端末間通信を要求する第制御信号を受信可能であり、
前記送信部は、さらに、
前記第制御信号と前記第制御信号とを受信した場合、前記第2無線通信端末と前記第3無線通信端末のいずれか一方に、前記1以上の第1操作信号を送信し、
前記第1制御信号によって開始されうる前記第1無線通信端末と前記第3無線通信端末との端末間通信とは、前記第3無線通信端末に送信された前記1以上の第1操作信号が、前記第3無線通信端末によって前記第1無線通信端末に送信されることを含むと定められる、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項4】
前記送信部は、さらに、前記応答信号を受信した回数、前記データ信号を受信した回数、または前記応答信号を受信した回数と前記データ信号を受信した回数の和が、閾値を超えた場合、前記第2操作信号を前記第1無線通信端末に送信する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の無線基地局。
【請求項5】
前記送信部は、さらに、前記第1無線通信端末が第1位置に移動する場合、前記第2操作信号を前記第1無線通信端末に送信する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の無線基地局。
【請求項6】
前記送信部は、さらに、前記第1制御信号を前記第1無線通信端末に送信する、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の無線基地局。
【請求項7】
請求項1に記載の無線基地局と、
電子装置とを具備する制御システムであって、
前記電子装置は、
前記第1制御信号、前記1以上の第1操作信号、および前記第2操作信号を生成する生成部と、
前記第1無線通信端末の移動に関する情報、または前記第1無線通信端末と前記無線基地局との間の通信状況の少なくともいずれかを用いて、前記第1制御信号と前記1以上の第1操作信号とを、前記第2無線通信端末に送信することを決定し、
前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方を受信した場合、受信した前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方に応じて、前記第2操作信号を前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末のいずれに送信するかを決定し、
前記応答信号または前記データ信号のいずれも受信していない場合、前記第2操作信号を前記第2無線通信端末に送信することを決定する制御部と、を具備する制御システム。
【請求項8】
前記制御部は、さらに、前記第1無線通信端末の移動に関する情報、前記第1無線通信端末と前記無線基地局との間の通信状況、前記第2無線通信端末の移動に関する情報、または前記第2無線通信端末と前記無線基地局との間の通信状況の少なくともいずれかを用いて、前記第1制御信号と前記1以上の第1操作信号とを前記第2無線通信端末に送信することを決定する、請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記受信部は、さらに、前記第1制御信号が送信された後に、前記第2無線通信端末から、前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末との端末間通信を要求する第制御信号を受信可能であり、
前記制御部は、さらに、前記第制御信号が受信された場合、前記第2無線通信端末が前記第1無線通信端末との端末間通信に用いるリソースを割り当てる、請求項7または請求項8記載の制御システム。
【請求項10】
1つ以上の無線通信端末と無線通信可能な無線基地局と接続された電子装置であって、
第1無線通信端末と第2無線通信端末との端末間通信を要求する信号の送信を指示する第1制御信号と、前記第1無線通信端末の少なくとも一部を操作するための1以上の第1操作信号とを生成する生成部と、
前記無線基地局を介して前記第1制御信号を前記第2無線通信端末に送信し、前記無線基地局を介して前記1以上の第1操作信号を前記第2無線通信端末に送信する送信部と、
前記1以上の第1操作信号が送信された後に、前記無線基地局を介して前記第1無線通信端末から前記第2無線通信端末への応答信号またはデータ信号の少なくとも一方を受信可能である受信部とを具備し、
前記送信部は、
前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方を受信した場合、前記第1無線通信端末の少なくとも一部を操作するための第2操作信号を、前記応答信号および前記データ信号の少なくとも一方に応じて、前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末のいずれか一方に前記無線基地局を介して送信し、
前記応答信号または前記データ信号のいずれも受信していない場合、前記第2操作信号を前記第2無線通信端末に前記無線基地局を介して送信し、
前記第1制御信号によって開始されうる前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末との端末間通信とは、前記第2無線通信端末に送信された前記1以上の第1操作信号が、前記第2無線通信端末によって前記第1無線通信端末に送信され、前記第2無線通信端末に送信される前記第2操作信号が、前記第2無線通信端末によって前記第1無線通信端末に送信されることを含むと定められる、電子装置。
【請求項11】
無線通信端末であって、
第1無線通信端末と前記無線通信端末との端末間通信を要求する信号の送信を指示する第1制御信号を無線基地局から受信し、前記第1無線通信端末の少なくとも一部を操作するための1以上の第1操作信号を前記無線基地局から受信する受信部と、
前記1以上の第1操作信号を前記第1無線通信端末に送信する送信部と
前記第1無線通信端末の移動に関する情報と、前記無線通信端末の移動に関する情報とを用いて、前記第1無線通信端末と前記無線通信端末との端末間通信を要求する第2制御信号を前記無線基地局に送信するか否かを判定する制御部とを具備し、
前記送信部は、前記第1制御信号を受信した場合、前記第2制御信号を前記無線基地局に送信し、
前記受信部は、
前記第2制御信号が送信された後に、前記第1無線通信端末と前記無線通信端末との端末間通信のために割り当てられたリソースを示す第3制御信号と、前記1以上の第1操作信号とを前記無線基地局から受信し、
前記第1操作信号が前記第1無線通信端末に送信された後に、前記第1無線通信端末から前記無線通信端末への応答信号またはデータ信号の少なくとも一方を受信し、
前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方を受信した後に、前記第1無線通信端末の少なくとも一部を操作するための第2操作信号を前記無線基地局から受信し、
前記送信部は、
前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方を受信した場合、前記第2操作信号を、前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方に応じて、前記第1無線通信端末に送信する、無線通信端末。
【請求項12】
無線通信端末であって、
第1無線通信端末と前記無線通信端末との端末間通信を要求する信号の送信を指示する第1制御信号を無線基地局から受信し、前記第1無線通信端末の少なくとも一部を操作するための1以上の第1操作信号を前記無線基地局から受信する受信部と、
前記1以上の第1操作信号を前記第1無線通信端末に送信する送信部と、
前記無線通信端末の周囲の画像を取得する撮像部と、
前記画像を用いて、前記第1無線通信端末と前記無線通信端末との端末間通信を要求する第2制御信号を前記無線基地局に送信するか否かを判定する制御部とを具備し、
前記送信部は、さらに、前記第1制御信号を受信した場合、前記第2制御信号を前記無線基地局に送信し、
前記受信部は、
前記第2制御信号が送信された後に、前記第1無線通信端末と前記無線通信端末との端末間通信のために割り当てられたリソースを示す第3制御信号と、前記1以上の第1操作信号とを前記無線基地局から受信し、
前記第1操作信号が前記第1無線通信端末に送信された後に、前記第1無線通信端末から前記無線通信端末への応答信号またはデータ信号の少なくとも一方を受信し、
前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方を受信した後に、前記第1無線通信端末の少なくとも一部を操作するための第2操作信号を前記無線基地局から受信し、
前記送信部は、
前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方を受信した場合、前記第2操作信号を、前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方に応じて、前記第1無線通信端末に送信る無線通信端末。
【請求項13】
前記受信部は、さらに、第3無線通信端末と前記無線通信端末との端末間通信を要求する信号の送信を指示する第制御信号を前記無線基地局から受信し、前記無線通信端末の少なくとも一部を操作するための第3操作信号を前記第3無線通信端末から受信する、請求項11または請求項12に記載の無線通信端末。
【請求項14】
前記送信部は、さらに、前記第3操作信号を受信した後に、応答信号またはデータ信号の少なくとも一方を前記第3無線通信端末に送信し、
前記受信部は、さらに、
前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方が前記無線基地局によって受信された場合、前記無線通信端末の少なくとも一部を操作するための第4操作信号を前記無線基地局から受信し、
前記応答信号または前記データ信号のいずれも前記無線基地局によって受信されていない場合、前記第4操作信号を前記第3無線通信端末から受信する、請求項13記載の無線通信端末。
【請求項15】
前記受信部は、さらに、前記無線通信端末が第1位置に移動する場合、前記無線通信端末の少なくとも一部を操作するための第5操作信号を前記無線基地局から受信する、請求項13または請求項14記載の無線通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線基地局、制御システム、電子装置、および無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5G)のような高速且つ低遅延の無線通信を用いて、自動走行ロボット(Automated Mobile Robot:AMR)の操作を、サーバで一括して制御するシステムが検討されている。このシステムでは、基地局と各AMRとの無線通信状況が常に良好である必要がある。
【0003】
システムを、例えば工場や物流倉庫に適用する場合、物の配置の変更や人の移動のような種々の要因によって、無線通信状況が変化することが想定される。したがって、基地局と各AMRとの無線通信状況を良好に保つことが難しい場合がある。
【0004】
ところで、3rd Generation Partnership Project(3GPP)では、5Gに関する標準化が検討されている。検討されている機能の1つに、サイドリンク、あるいはDevice-to-Device(D2D)と呼ばれる仕組みがある。サイドリンクは、基地局を介さずに、2つの無線通信端末間で(例えば2つのAMR間で)信号を送受信する仕組みである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/031397号
【文献】特開2019-148870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一形態は、無線通信端末を安定して操作できる無線基地局、制御システム、電子装置、および無線通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、無線基地局は、送信部と、受信部とを具備する。送信部は、第1無線通信端末と第2無線通信端末との端末間通信を要求する信号の送信を指示する第1制御信号を前記第2無線通信端末に送信し、前記第1無線通信端末の少なくとも一部を操作するための1以上の第1操作信号を前記第2無線通信端末に送信する。受信部は、前記第1操作信号が送信された後に、前記第1無線通信端末から前記第2無線通信端末への応答信号またはデータ信号の少なくとも一方を受信可能である。前記送信部は、前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方を受信した場合、前記第1無線通信端末の少なくとも一部を操作するための第2操作信号を、前記応答信号または前記データ信号の少なくとも一方に応じて、前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末のいずれか一方に送信する。前記送信部は、前記応答信号または前記データ信号のいずれも受信していない場合、前記第2操作信号を前記第2無線通信端末に送信する。前記第1制御信号によって開始されうる前記第1無線通信端末と前記第2無線通信端末との端末間通信とは、前記第2無線通信端末に送信された前記1以上の第1操作信号が、前記第2無線通信端末によって前記第1無線通信端末に送信され、前記第2無線通信端末に送信される前記第2操作信号が、前記第2無線通信端末によって前記第1無線通信端末に送信されることを含むと定められる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る制御システムを含む無線通信システムの構成例を示す図。
図2図1の無線通信システムにおける直接通信とサイドリンク通信の例を示す図。
図3】同実施形態の制御システムの構成例を示すブロック図。
図4】同実施形態の制御システムにおいて実行される制御プログラムの機能構成例を示すブロック図。
図5図1の無線通信システム内の無線通信端末の構成例を示すブロック図。
図6】比較例に係る無線通信システムにおける処理シーケンスの例を示す図。
図7図1の無線通信システムにおける処理シーケンスの第1の例を示す図。
図8図1の無線通信システムにおける処理シーケンスの第2の例を示す図。
図9図1の無線通信システムにおける処理シーケンスの第3の例を示す図。
図10】第2実施形態に係る無線通信システムにおける処理シーケンスの例を示す図。
図11図10の無線通信システムにおける処理シーケンスの別の例を示す図。
図12】第3実施形態に係る無線通信システムにおける処理シーケンスの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、第1実施形態に係る制御システムを含む無線通信システムの一構成例を説明する。無線通信システム1は、特定の空間内に存在する無線通信端末の少なくとも一部を無線で操作(制御)するためのシステムである。特定の空間は、多数の無線通信端末がネットワークを介して接続されたInternet of Things(IoT)による空間であり、例えば工場や物流倉庫である。無線通信システム1は、例えば3rd Generation Partnership Project(3GPP)で規定された第5世代移動通信システム(5G)を構成する。
【0011】
無線通信システム1は、制御システム2とN個の無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nとを含む。Nは2以上の整数である。無線通信システム1内の無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nの数は、任意に設定できる。制御システム2と各無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nとは、無線通信を実行し得る。
【0012】
制御システム2は無線通信により、無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nの少なくとも一部を操作する。制御システム2は、サーバ21と1つ以上の基地局22-1,22-2とを含む。サーバ21と1つ以上の基地局22-1,22-2の各々とは、有線(または無線)で接続される。なお、無線通信システム1には、任意の数のサーバ21と、任意の数の基地局22-1,22-2とが設けられ得る。図ではサーバと基地局は物理的に別であり、別の位置に設置されることを前提としているが、本特許で想定するシステムはその限りではなく、基地局とサーバが一体型になっていても良い。
【0013】
サーバ21はサーバコンピュータ(すなわち電子装置)として実現され得る。サーバ21は、モバイルエッジコンピューティング(MEC)サーバであってもよい。サーバ21は、各無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nの少なくとも一部を操作するための信号を生成する。また、サーバ21は、生成した信号を、各無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nに伝送するための経路を制御する。
【0014】
各基地局22-1,22-2は、無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nの各々と無線通信を実行し得る無線基地局である。
【0015】
具体的には、各基地局22-1,22-2は、サーバ21による要求に応じて、無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nの1つに信号を送信し得る。各基地局22-1,22-2は、サーバ21による要求に応じて、無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nの内の2つ以上に信号をマルチキャストで送信し得る。各基地局22-1,22-2は、サーバ21による要求に応じて、全ての無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nに信号をブロードキャストで送信し得る。
【0016】
また、各基地局22-1,22-2は、各無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nから信号を受信し得る。各基地局22-1,22-2は、受信した信号を、例えばサーバ21に送信する。
【0017】
以下では、複数の無線通信端末31-1,31-2,31-3,31-4,……,31-Nのいずれか1つを、無線通信端末31とも称する。また、1つ以上の基地局22-1,22-2のいずれか1つを、基地局22とも称する。
【0018】
無線通信端末31は、例えば自動走行ロボット(Automated Mobile Robot:AMR)である。この場合、無線通信端末31の移動が、制御システム2によって操作(制御)される。
【0019】
無線通信端末31は、一部分の移動と回転の少なくとも一方が可能な駆動機構を有する産業用ロボットであってもよい。この駆動機構は、例えば、産業用ロボットのロボットアームである。この場合、ロボットアームの移動と回転の少なくとも一方が、制御システム2によって操作される。
【0020】
なお、無線通信端末31は、AMRや産業用ロボットに限らず、少なくとも一部が遠隔操作可能な機器であればよい。無線通信端末31は、各種用途におけるロボット、運搬装置、工作機械、監視カメラ、自動運転機能を有する車両、無人搬送車(Automated Guided Vehicle:AGV)、無人航空機、ドローン、または仮想現実(Virtual Reality:VR)や拡張現実(Augmented Reality:AR)の表示装置であってもよい。
【0021】
より具体的には、無線通信端末31が自動運転機能を有する車両やAGVである場合、制御システム2は無線通信により、無線通信端末31の移動、加速、減速、方向指示器の表示(オンおよびオフ)、ワイパーのオンおよびオフ、等を操作し得る。無線通信端末31がカメラを備える場合、制御システム2は無線通信により、無線通信端末31のカメラの解像度、フレームレート、シャッタースピード、向き等を操作し得る。
【0022】
また、制御システム2は無線通信により、無線通信端末31による各種情報の発信のための発光部(例えばLED)のオンおよびオフ、明滅または表示形態の制御等を操作してもよい。情報の発信は、例えば、警報、アラート、異常通知、あるいは処理の開始、完了、実行中等の通知に用いられる。
【0023】
さらに、制御システム2は無線通信により、無線通信端末31の特定部分の温度や対象となる物体の温度を制御するように、無線通信端末31を操作し得る。また、制御システム2は無線通信により、環境やユーザの状態に応じて更新されるARまたはVRの表示を制御するように無線通信端末31を操作してもよい。
【0024】
なお、無線通信システム1は、1つ以上の監視カメラ32-1,32-2,32-3をさらに含んでいてもよい。各監視カメラ32-1,32-2,32-3は、周囲を撮影した画像を生成する撮像部を備える。各監視カメラ32-1,32-2,32-3は、制御システム2との無線通信を実行し得る。
【0025】
制御システム2は無線通信により、各監視カメラ32-1,32-2,32-3の少なくとも一部を操作し得る。制御システム2は、例えば、各監視カメラ32-1,32-2,32-3の解像度、フレームレート、シャッタースピード、向き等を操作する。
【0026】
以下では、各無線通信端末31がAMRである場合について主に例示する。制御システム2は無線通信により、各無線通信端末31の移動を操作する。
【0027】
図1に示すように、各無線通信端末31は、例えば通路35上を移動することで、工場や物流倉庫等における特定の作業を実現している。通路35の一部には、物体36による無線信号(すなわち電波)の減衰によって、無線通信端末31と基地局22との無線通信状況(電波状況)が悪化する領域37がある。そのため、領域37内を通過している無線通信端末31と基地局22との通信は、正常に行われない可能性がある。無線通信端末31との基地局22との通信を、直接通信と称する。図1に示す例では、領域37に向かって進行する無線通信端末31-1,31-4と基地局22-1との直接通信による通信状況が悪化することが予測される。
【0028】
無線通信システム1では、直接通信による通信状況の悪化が予測される場合、2つの無線通信端末31間でのサイドリンク通信(SL通信)が利用され得る。SL通信は、制御システム2(より詳しくは基地局22-1)を介さない端末間通信である。
【0029】
図2は、無線通信システム1における直接通信とSL通信の例を示す。
【0030】
第1無線通信端末31-1と基地局22-1とは、直接通信の無線リンク25を確立し得る。第2無線通信端末31-2と基地局22-1とは、直接通信の無線リンク26を確立し得る。また、第1無線通信端末31-1と第2無線通信端末31-2とは、SL通信の無線リンク27を確立し得る。無線リンク25,26は、Uuリンクとも称される。無線リンク27は、サイドリンク、あるいはPC5リンクとも称される。
【0031】
制御システム2は、無線リンク25の通信状況が良好である場合、無線リンク25を介して第1無線通信端末31-1の移動を操作する。より具体的には、制御システム2は、第1無線通信端末31-1に対する操作信号を、無線リンク25を介して第1無線通信端末31-1に送信する。第1無線通信端末31-1に対する操作信号は、例えば、第1無線通信端末31-1の移動を操作するための信号である。操作信号には、例えば、対応する無線通信端末31が移動すべき位置、移動速度、移動方向等を示す情報が含まれる。
【0032】
制御システム2は、無線リンク26による通信状況が良好である場合、無線リンク26を介して第2無線通信端末31-2の移動を制御する。より具体的には、制御システム2は、第2無線通信端末31-2に対する操作信号を、無線リンク26を介して第2無線通信端末31-2に送信する。第2無線通信端末31-2に対する操作信号は、例えば、第2無線通信端末31-2の移動を操作するための信号である。
【0033】
また、例えば第1無線通信端末31-1が領域37内を通過している間、物体36による無線信号の減衰によって、無線リンク25による通信状況が悪化する可能性がある。制御システム2は、無線リンク25による通信状況が悪化する場合、無線リンク26と無線リンク27とを介して、第1無線通信端末31-1の移動を制御する。
【0034】
より具体的には、制御システム2は第1無線通信端末31-1に対する操作信号を、無線リンク26を介して第2無線通信端末31-2に送信する。第2無線通信端末31-2は操作信号を受信する。そして、第2無線通信端末31-2は、受信した操作信号を、無線リンク27を介して第1無線通信端末31-1に送信する。
【0035】
つまり、制御システム2は、第1無線通信端末31-1への操作信号の送信を、第2無線通信端末31-2に中継させる。なお、中継には、第2無線通信端末31-2のような移動可能な装置に限らず、監視カメラ32-1のような固定された装置が用いられてもよい。
【0036】
なお、操作信号の最終的な宛先となる無線通信端末31(図2では第1無線通信端末31-1)を、対象端末31とも称する。対象端末31に対して操作信号を中継する無線通信端末31(図2では第2無線通信端末31-2)を、中継端末31とも称する。また、中継端末31を介した制御システム2と対象端末31との通信を中継通信とも称する。中継通信は、制御システム2と中継端末31との間の直接通信(図2では無線リンク26)と、中継端末31と対象端末31との間のSL通信(図2では無線リンク27)とで構成される。
【0037】
次いで、制御システム2と無線通信端末31の構成についてそれぞれ説明する。
【0038】
(制御システム)
図3は、制御システム2を構成するサーバ21と基地局22のシステム構成例を示す。
【0039】
サーバ21は、例えば、CPU211、RAM212、不揮発性メモリ213、および通信デバイス214を備える。CPU211は、ストレージデバイスである不揮発性メモリ213からRAM212にロードされる様々なプログラムを実行する。これらプログラムには、オペレーティングシステム(OS)および様々なアプリケーションプログラムが含まれている。アプリケーションプログラムには、制御プログラム212Aが含まれている。制御プログラム212Aは、基地局22を介した無線通信により、無線通信システム1内の各無線通信端末31の少なくとも一部を操作するためのプログラムである。
【0040】
通信デバイス214は、有線通信を実行するように構成されたデバイスである。通信デバイス214は、信号(データ)を送信する送信部と、信号を受信する受信部とを含む。通信デバイス214は、無線通信を実行するように構成されたデバイスであってもよい。
【0041】
CPU211は通信デバイス214を介して、基地局22に信号を送信する。CPU211は通信デバイス214を介して、基地局22から信号を受信する。
【0042】
なお、図1に示したように、サーバ21は複数の基地局22-1,22-2と接続されていてもよい。その場合、CPU211は通信デバイス214を介して、複数の基地局22-1,22-2の各々との通信を実行し得る。
【0043】
基地局22は、例えば、制御部221、通信デバイス222、無線送信部223、および無線受信部224を備える。
【0044】
制御部221は、基地局22内の各部の動作を制御する。制御部221は、1つ以上のプロセッサとして実現されてもよいし、System-on-a-chip(SoC)のような回路として実現されてもよい。
【0045】
通信デバイス222は、有線通信を実行するように構成されたデバイスである。通信デバイス222は、信号(データ)を送信する送信部と、信号を受信する受信部とを含む。通信デバイス222は、無線通信を実行するように構成されたデバイスであってもよい。
【0046】
制御部221は通信デバイス222を介して、サーバ21に信号を送信する。制御部221は通信デバイス222を介して、サーバ21から信号を受信する。
【0047】
無線送信部223は、無線信号を送信するように構成された送信回路である。無線送信部223は、例えば、変調器、アンテナ等を含む。無線送信部223は、例えば3GPPの規格に対応する。無線送信部223は、通信デバイス222を介してサーバ21から受信した、ある無線通信端末31に送信すべき信号を、その無線通信端末31に送信する。
【0048】
無線受信部224は、無線信号を受信するように構成された受信回路である。無線受信部224は、例えば、復調器、アンテナ等を含む。無線受信部224は、例えば3GPPの規格に対応する。無線受信部224は無線通信端末31から信号を受信する。受信された信号は、通信デバイス222を介してサーバ21に送信され得る。
【0049】
図3に示した構成により、制御システム2は、例えば制御信号、操作信号、および応答信号を、無線通信端末31に送信可能である。つまり、サーバ21は制御信号、操作信号、および応答信号を、基地局22を介して無線通信端末31に送信可能である。
【0050】
制御信号は、無線通信端末31による通信を制御するための信号である。操作信号は、例えば無線通信端末31の少なくとも一部を操作するための信号である。
【0051】
応答信号はACKまたはNACKを含む。ACKは、信号を受信した機器が、その信号から正常なデータを取得できたことを示す。NACKは、信号を受信した機器が、その信号から正常なデータを取得できなかったことを示す。
【0052】
また、制御システム2は、例えば、制御信号、応答信号、およびデータ信号を、無線通信端末31から受信可能である。つまり、サーバ21は、制御信号、応答信号、およびデータ信号を、基地局22を介して無線通信端末31から受信可能である。
【0053】
制御システム2が受信するデータ信号は、例えば、操作信号に応じて行われた無線通信端末31の操作に関する情報を含むデータ信号である。データ信号は、例えば、操作信号に応じた無線通信端末31の移動に関するセンシング情報を含む。センシング情報は、無線通信端末31の位置、速度、移動方向等を含み得る。あるいは、データ信号は、無線通信端末31が操作信号に応じた移動を完了したことを示す情報を含んでいてもよい。
【0054】
図4は、制御システム2において実行される制御プログラム212Aの機能構成例を示す。制御プログラム212Aは、例えば、サーバ21のCPU211によって実行される。制御プログラム212Aは、例えば、制御部41、生成部42、送信部43、および受信部44を備える。
【0055】
制御部41は、各無線通信端末31との通信を制御すると共に、各無線通信端末31の少なくとも一部を操作するための操作信号の生成を制御する。
【0056】
制御部41は、例えば、無線通信端末31の移動に関する情報、または制御システム2と無線通信端末31との間の信号の送受信状況の少なくともいずれかに応じて、通信経路を制御する。
【0057】
具体的には、制御部41は、基地局22と無線通信端末31との直接通信の通信状況が悪化した場合、基地局22と無線通信端末31との通信を中継通信に変更する。制御部41は、基地局22と無線通信端末31(対象端末)との中継通信に用いる別の無線通信端末31(中継端末)を選択する。つまり、制御部41は、別の無線通信端末31を介した基地局22と無線通信端末31との中継通信の経路を決定する。中継端末の選択方法については、図7を参照して後述する。
【0058】
また、制御部41は、基地局22と無線通信端末31との中継通信を行っている間に、基地局22と無線通信端末31との直接通信の通信状況が改善した場合、基地局22と無線通信端末31との通信を直接通信に変更する。
【0059】
なお、制御部41は、基地局22と無線通信端末31との直接通信の通信状況が良好である間、基地局22と無線通信端末31との通信を直接通信に維持する。
【0060】
生成部42は、制御部41による要求に応じて、無線通信端末31に送信する信号を生成する。生成部42は、制御信号、操作信号、および応答信号を生成し得る。制御信号は、直接通信に用いるリソースの割り当てに関する情報を含む信号、中継通信の内のSL通信に用いるリソースの割り当てに関する情報を含む信号、送信先の無線通信端末31と別の無線通信端末31との端末間通信を要求する信号の送信を指示する信号、等である。リソースは、例えば時間と周波数帯域(チャネル)を含む。送信先の無線通信端末31(中継端末31)と別の無線通信端末31(対象端末31)との端末間通信を要求する信号を、SLReq信号とも称する。また、SLReq信号の送信を指示する信号を、SLReq指示信号とも称する。SLReq指示信号は、端末間通信を行うべき対象端末31の識別情報を含む。
【0061】
送信部43は、生成部42によって生成された信号を無線通信端末31に送信する。より詳しくは、送信部43は、例えば、サーバ21の通信デバイス214と、基地局22の通信デバイス222および無線送信部223とを介して、信号を無線通信端末31に送信する。送信された信号は、制御部41によって決定された経路で無線通信端末31に到達する。
【0062】
受信部44は、無線通信端末31によって送信された信号を受信する。より詳しくは、受信部44は、例えば、基地局22の無線受信部224および通信デバイス222と、サーバ21の通信デバイス214とを介して、信号を無線通信端末31から受信する。受信部44は、受信した信号を制御部41に送出する。受信部44は、例えば制御信号、応答信号、およびデータ信号を受信し得る。この制御信号は、例えばSLReq信号である。
【0063】
なお、SLReq指示信号によって開始されうる中継端末31と対象端末31との端末間通信とは、サーバ21から基地局22を介して中継端末31に送信された、対象端末31の少なくとも一部を操作するための1つ以上の操作信号が、中継端末31によって対象端末31に送信されることを含むと定められる。無線通信端末31が、サーバ21から基地局22を介してその無線通信端末31に送信された、別の無線通信端末31(対象端末31)の少なくとも一部を操作するための1つ以上の操作信号を、対象端末31に送信する機能を、中継機能とも称する。制御部41は、無線通信端末31が中継機能をサポートしているか否かを、生成部42、送信部43、および受信部44を用いて確認し得る。
【0064】
具体的には、制御部41は、例えば、生成部42および送信部43を用いて、SLReq指示信号を、基地局22を介して無線通信端末31に送信してみる。そして、受信部44が、その無線通信端末31からSLReq信号を受信した場合、制御部41は、無線通信端末31が中継機能をサポートしていると判断する。
【0065】
あるいは、制御システム2(基地局22)と各無線通信端末31との間で、Capability(例えば様々な機能のサポートの有無)に関するやり取りが行われる場合に、制御部41は、各無線通信端末31における中継機能のCapabilityを確認してもよい。
【0066】
また、制御部41は、受信部44によってSLReq信号が受信された場合、SLReq信号で要求されたSL通信のためのリソースを割り当てる。制御部41は、生成部42に、割り当てられたリソースを示す情報を含む制御信号を生成させる。送信部43は、生成された制御信号を、SLReq信号の送信元の無線通信端末31に送信する。
【0067】
また、制御部41は、受信部44によって受信された応答信号またはデータ信号の少なくとも一方に応じて、制御システム2と無線通信端末31との通信経路を変更し得る。
【0068】
ここで、制御部41が、基地局22と1つの無線通信端末31との通信経路を制御するための動作について説明する。一例として、第1無線通信端末31-1が対象端末となり、第2無線通信端末31-2が中継端末となる場合を想定する。
【0069】
制御部41は、例えば、第1無線通信端末31-1の移動に関する情報、または第1無線通信端末31-1と制御システム2との間の通信状況の少なくともいずれかを用いて、第1無線通信端末31-1との通信に中継通信を用いることを決定する。つまり、制御部41は、第1無線通信端末31-1の移動に関する情報、または第1無線通信端末と制御システム2との間の通信状況の少なくともいずれかを用いて、中継端末である第2無線通信端末31-2に、SLReq指示信号と、第1無線通信端末31-1に対する操作信号とを送信することを決定する。
【0070】
あるいは、制御部41は、例えば、第1無線通信端末31-1の移動に関する情報、第1無線通信端末と制御システム2との間の通信状況、第2無線通信端末31-2の移動に関する情報、または第2無線通信端末31-2と制御システム2との間の通信状況の少なくともいずれかを用いて、第1無線通信端末31-1との通信に中継通信を用いることを決定する。つまり、制御部41は、第1無線通信端末31-1の移動に関する情報、第1無線通信端末と制御システム2との間の通信状況、第2無線通信端末31-2の移動に関する情報、または第2無線通信端末31-2と制御システム2との間の通信状況の少なくともいずれかを用いて、中継端末である第2無線通信端末31-2に、SLReq指示信号と、第1無線通信端末31-1に対する操作信号とを送信することを決定する。
【0071】
以下では、制御部41が、基地局22と第1無線通信端末31-1との通信経路を制御する幾つかの具体例を説明する。
【0072】
(信号の送受信状況を用いる例)
制御部41は、基地局22と無線通信端末31との間の信号の送受信状況に応じて、無線通信端末31との通信に、直接通信と中継通信のいずれを用いるかを判断する。
【0073】
制御部41は、基地局22と無線通信端末31との直接通信を行っている間に、信号の送受信の状況が悪化している場合、あるいは信号の送受信の状況がこれから悪化する可能性がある場合、無線通信端末31との通信を中継通信に切り替えると判断する。制御部41は、例えば、直近の第1期間内において、無線通信端末31からNACKを受信したこと、無線通信端末31にNACKを送信したこと、無線通信端末31からNACKを受信した回数が閾値を超えたこと、無線通信端末31にNACKを送信した回数が閾値を超えたこと、無線通信端末31から受信した応答信号に占めるNACKの割合が閾値を超えたこと、無線通信端末31に送信した応答信号に占めるNACKの割合が閾値を超えたこと、無線通信端末31から受信した信号の電力(受信電力)が閾値未満であること、無線通信端末31から受信電力が第1閾値未満である信号を受信した回数が第2閾値を超えたこと、または無線通信端末31から信号を受信した回数に占める、受信電力が第1閾値未満である信号の受信回数の割合が第2閾値を超えたことの少なくともいずれかの条件を満たす場合、無線通信端末31との通信を中継通信に切り替えると判断する。制御部41は、これら条件の1以上の組み合わせのような種々のバリエーションに基づいて、無線通信端末31との通信を中継通信に切り替えるか否かを判断し得る。
【0074】
また、制御部41は、別の無線通信端末31(中継端末31)を介した基地局22と無線通信端末31(対象端末31)との中継通信を行っている間、基地局22と対象端末31との信号の送受信状況に応じて、対象端末31との通信を直接通信に切り替えるか、それとも中継通信に維持するかを判断する。制御部41は、基地局22と対象端末31との信号の送受信状況が改善した場合、対象端末31との通信を直接通信に切り替えると判断する。制御部41は、基地局22と対象端末31との信号の送受信状況が改善していない場合、対象端末31との通信を中継通信に維持すると判断する。
【0075】
より具体的には、制御部41は、例えば、直近の第1期間内において、対象端末31によって送信された応答信号とデータ信号の少なくとも一方を受信した場合、受信した応答信号とデータ信号の少なくとも一方に応じて、対象端末31との通信を直接通信に切り替えるか、それとも中継通信に維持するかを判断する。つまり、制御部41は、受信した応答信号とデータ信号の少なくとも一方に応じて、対象端末31に対する新たな操作信号を、中継通信のために中継端末31に送信するか、それとも直接通信で対象端末31に送信するかを決定する。なお、これら応答信号およびデータ信号は、対象端末31によって送信され、中継端末31によって中継されることなく、制御システム2によって受信された信号である。
【0076】
制御部41は、例えば、直近の第1期間内において、対象端末31から応答信号とデータ信号の少なくとも一方を受信したこと、対象端末31から応答信号を受信した回数が閾値を超えたこと、対象端末31からデータ信号を受信した回数が閾値を超えたこと、対象端末31から応答信号を受信した回数とデータ信号を受信した回数との和が閾値を超えたこと、対象端末31から受信した信号の電力(受信電力)が閾値以上であること、対象端末31から受信電力が第1閾値以上である信号を受信した回数が第2閾値を超えたこと、または対象端末31から信号を受信した回数に占める、受信電力が第1閾値以上である信号の受信回数の割合が第2閾値を超えたことの少なくともいずれかの条件を満たす場合、対象端末31との通信を直接通信に切り替えることを決定し得る。すなわち、対象端末31に対する新たな操作信号を、直接通信で対象端末31に送信することを決定する。制御部41は、これら条件の1以上の組み合わせのような種々のバリエーションに基づいて、対象端末31との通信を直接通信に切り替えるか否かを判断し得る。
【0077】
また、制御部41は、例えば、直近の第1期間内において、対象端末31から応答信号またはデータ信号のいずれも受信していない場合、対象端末31との通信を中継通信に維持することを決定する。つまり、制御部41は、対象端末31から応答信号またはデータ信号のいずれも受信していない場合、対象端末31に対する新たな操作信号を、中継通信のために中継端末31に送信することを決定する。
【0078】
さらに、制御部41は、基地局22と無線通信端末31との直接通信を行っている間に、基地局22と無線通信端末31との信号の送受信状況が良好である場合、無線通信端末31との直接通信を維持すると判断する。制御システム2は、例えば、直近の第1期間内において、無線通信端末31からACKを受信したこと、無線通信端末31にACKを送信したこと、無線通信端末31からACKを受信した回数が閾値を超えたこと、無線通信端末31にACKを送信した回数が閾値を超えたこと、無線通信端末31から受信した応答信号に占めるACKの割合が閾値を超えたこと、無線通信端末31に送信した応答信号に占めるACKの割合が閾値を超えたこと、無線通信端末31から受信した信号の電力(受信電力)が閾値以上であること、無線通信端末31から受信電力が第1閾値以上である信号を受信した回数が第2閾値を超えたこと、または無線通信端末31から信号を受信した回数に占める、受信電力が第1閾値以上である信号の受信回数の割合が第2閾値を超えたことの少なくともいずれかの条件を満たす場合に、無線通信端末31との直接通信を維持すると判断する。制御部41は、これら条件の1以上の組み合わせのような種々のバリエーションに基づいて、無線通信端末31との直接通信を維持するかを判断し得る。
【0079】
(無線通信端末の移動に関する情報を用いる例)
制御部41は、無線通信端末31の移動に関する情報と無線マップ45とを用いて、基地局22と無線通信端末31との通信に、直接通信と中継通信のいずれを用いるかを判断する。無線通信端末31の移動に関する情報は、例えば、無線通信端末31の位置、速度、または移動方向の少なくともいずれかを示す情報を含む。
【0080】
無線マップ45は、例えば、無線通信端末31が操作され得る空間を、特定のサイズで分割した複数の領域の各々に対する、制御システム2による通信状況を示す。無線マップ45は予め取得されていてもよいし、無線通信システム1の運用中に生成および更新されてもよい。または、あらかじめ取得したデータをもとに無線マップ45の運用を開始し、運用時にある特定領域にいる無線通信端末31と信号の送受信を行った場合には、その結果を踏まえて、無線マップ45において、その特定領域の通信状況を更新してもよい。
【0081】
具体的には、無線マップ45は、複数の領域の各々に関して、制御システム2(より詳しくは基地局22)によって送信される無線信号が当該領域に正常に到達する可能性(例えば確率)を示す値を含む。また、無線マップ45は、複数の領域の各々に関して、当該領域に位置する無線通信端末31によって送信される無線信号が制御システム2(より詳しくは基地局22)に正常に到達する可能性を示す値を含んでいてもよい。あるいは、無線マップ45は、複数の領域の各々に関して、制御部41によって送信される無線信号が当該領域に正常に到達する可能性と、当該領域に位置する無線通信端末31によって送信される無線信号が制御システム2に正常に到達する可能性とを統合した値を含んでいてもよい。
【0082】
なお、無線マップ45は、複数の領域の各々に関して、制御システム2によって送信される無線信号が当該領域に正常に到達しない可能性を示す値(以下、誤り率と称する)を含んでいてもよい。また、無線マップ45は、複数の領域の各々に関して、当該領域に位置する無線通信端末31によって送信される無線信号が制御システム2に正常に到達しない可能性を示す値を含んでいてもよい。あるいは、無線マップ45は、複数の領域の各々に関して、制御システム2によって送信される無線信号が当該領域に正常に到達しない可能性と、当該領域に位置する無線通信端末31によって送信される無線信号が制御システム2に正常に到達しない可能性とを統合した値を含んでいてもよい。
【0083】
また、制御部41は各無線通信端末31の位置を管理する。各無線通信端末31の位置の管理には、例えば、無線通信端末31でセンシングされ、制御システム2に送信された位置、速度、移動方向等の情報が用いられる。また、各無線通信端末31の位置の管理には、制御システム2から受信した操作信号に応じた操作を無線通信端末31が完了したことを示す情報が用いられてもよい。操作信号に応じた操作を完了したことを示す情報を無線通信端末31から受信した場合、制御部41は、無線通信端末31が、その操作信号で指示した位置に存在すると推定できる。
【0084】
さらに、制御部41は、無線通信端末31に搭載されたカメラで取得された画像や、監視カメラ32-1,32-2,32-3で取得された画像を処理することで、各無線通信端末31の位置を算出してもよい。なお、制御システム2は、画像に写る外観から、複数の無線通信端末31の各々を識別可能である。各無線通信端末31は、例えば、外観から認識可能なユニークな特徴(例えば形状、マーク、文字、色、等)を有している。
【0085】
また、制御部41は、無線通信端末31が良好に受信できた無線ビームが、いずれの基地局22から送信されたものであるかに基づいて、無線通信端末31の位置を推定してもよい。
【0086】
制御部41は、基地局22と無線通信端末31との直接通信を行っている間に、無線通信端末31が、無線マップ45上の、制御システム2との通信状況が悪い領域に移動する場合、無線通信端末31との通信を中継通信に切り替えると判断する。通信状況が悪い領域に移動する場合には、通信状況が悪い領域に既に移動した場合と、通信状況が悪い領域に特定時間内に移動する可能性が高い場合とが含まれ得る。制御部41は、例えば、無線通信端末31の位置が、無線マップ45上の誤り率が閾値を超えた領域内にある場合、あるいは無線通信端末31の位置と、無線マップ45に示される誤り率が閾値を超えた領域との距離が閾値未満である場合、無線通信端末31が制御システム2との通信状況が悪い領域に移動すると判断し得る。また、制御部41は、無線通信端末31の位置と、無線マップ45に示される誤り率が閾値を超えた領域との距離が閾値未満であって、無線通信端末31の移動方向がその領域に向かっている場合に、無線通信端末31が制御システム2との通信状況が悪い領域に移動すると判断してもよい。
【0087】
また、制御部41は、基地局22と無線通信端末31との中継通信を行っている間に、無線通信端末31が、無線マップ45上の、制御システム2との通信状況が良い領域(位置)に移動する場合、無線通信端末31との通信を直接通信に切り替えると判断する。通信状況が良い領域に移動する場合には、通信状況が良い領域に既に移動した場合と、通信状況が良い領域に特定時間内に移動する可能性が高い場合とが含まれ得る。制御部41は、例えば、無線通信端末31の位置が、無線マップ45上の誤り率が閾値以下である領域内にある場合、あるいは無線通信端末31の位置と、無線マップ45に示される誤り率が閾値以下である領域との距離が閾値未満である場合、無線通信端末31が制御システム2との通信状況が良い領域に移動すると判断し得る。また、制御部41は、無線通信端末31の位置と、無線マップ45に示される誤り率が閾値以下である領域との距離が閾値未満であって、無線通信端末31の移動方向がその領域に向かっている場合に、無線通信端末31が制御システム2との通信状況が良い領域に移動すると判断してもよい。
【0088】
さらに、制御部41は、基地局22と無線通信端末31との直接通信を行っている間に、無線通信端末31が、無線マップ45上の、制御システム2との通信状況が良い領域内にある場合、無線通信端末31との直接通信を維持すると判断する。制御部41は、例えば、無線通信端末31の位置が、無線マップ45上の誤り率が閾値以下である領域内にある場合に、無線通信端末31が制御システム2との通信状況が良い領域にあると判断し得る。
【0089】
なお、制御部41は、制御システム2から無線通信端末31への操作信号の送信頻度をさらに考慮して、基地局22と1つの無線通信端末31との間の通信経路を制御してもよい。制御部41は、例えば、無線通信端末31の移動距離、移動速度、移動方向等を細かく制御するために、高い頻度で操作信号が送信される場合、通信経路の切替に関する判定も高頻度に行ってもよい。
【0090】
(無線通信端末)
図5は無線通信端末31の構成例を示す。無線通信端末31は、例えば、制御部51、生成部52、送信部53、および受信部54を備える。制御部51、生成部52、送信部53、および受信部54は、例えば回路として実現され得る。
【0091】
制御部51は、無線通信端末31内の各部の動作を制御する。制御部221は、1つ以上のプロセッサとして実現されてもよいし、SoCのような回路として実現されてもよい。
【0092】
生成部52は、制御部51による要求に応じて、制御システム2(より詳しくは基地局22)または別の無線通信端末31に送信する信号を生成する。生成部52は、制御信号、応答信号、およびデータ信号を生成し得る。制御信号は、例えば、SLReq信号、SL通信に用いるリソースの割り当てに関する情報を含む信号等である。
【0093】
送信部53は、無線信号を送信するように構成された送信回路である。送信部53は、例えば、変調器、アンテナ等を含む。送信部53は、例えば3GPPの規格に対応する。送信部53は、生成部52によって生成された信号を、制御システム2(基地局22)または別の無線通信端末31に送信する。より詳しくは、送信部53は、制御システム2との直接通信により、制御システム2に信号を送信し得る。送信部53は、別の無線通信端末31を介した制御システム2との中継通信により、制御システム2に信号を送信し得る。また、送信部53は、別の無線通信端末31とのSL通信により、その別の無線通信端末31に信号を送信し得る。送信される信号は、例えば、制御信号、データ信号、応答信号等である。
【0094】
受信部54は、無線信号を受信するように構成された受信回路である。受信部54は、例えば、復調器、アンテナ等を含む。受信部54は、例えば3GPPの規格に対応する。受信部54は制御システム2(基地局22)または別の無線通信端末31から信号を受信する。より詳しくは、受信部54は、制御システム2との直接通信により、制御システム2から信号を受信し得る。受信部54は、別の無線通信端末31を介した制御システム2との中継通信により、制御システム2から信号を受信し得る。また、受信部54は、別の無線通信端末31とのSL通信により、その別の無線通信端末31から信号を受信し得る。受信される信号は、例えば、制御信号、操作信号、データ信号、応答信号等である。受信された信号は、例えば制御部51に送出される。
【0095】
制御部51は、受信部54によって受信された信号に応じて、無線通信端末31内の各部の動作を制御し得る。受信された信号の内容に応じた動作例について、以下に説明する。
【0096】
(SLReq指示信号を受信した場合)
制御部51は、受信部54によって受信された信号が、この無線通信端末31に対するSLReq指示信号である場合、生成部52および送信部53を介して、SLReq信号を制御システム2に送信する。具体的には、制御部51は、生成部52に対して、SLReq信号の生成を要求する。生成部52は、この要求に応じてSLReq信号を生成する。そして、送信部53は、生成されたSLReq信号を制御システム2に送信する。
【0097】
なお、SLReq指示信号は、SL通信を行うべき別の無線通信端末31(すなわち対象端末31)の識別情報を含んでいる。制御部51は、各無線通信端末31の位置や移動方向、速度といったいずれかの移動に関する情報を用いて、対象端末31とのSL通信を要求するSLReq信号を制御システム2に送信するか否かを判定してもよい。制御部51は、対象端末31が制御システム2や他端末向けに送信した信号を受信するか否かでSL通信の可否を判断し、可能である場合に、SLReq信号を制御システム2に送信する。
【0098】
あるいは、制御部51は、撮像部55で取得された画像を用いて、SLReq信号を制御システム2に送信するか否かを判定してもよい。撮像部55は、無線通信端末31に内蔵されていてもよいし、無線通信端末31に搭載され、有線または無線で接続されていてもよい。撮像部55は、無線通信端末31の周囲の画像を取得する。制御部51は、例えば、撮像部55で取得された画像に、SL通信を行うべき対象端末31が写っている場合に、SLReq信号を制御システム2に送信する。
【0099】
(操作信号を受信した場合)
制御部51は、受信部54によって受信された信号が、この無線通信端末31に対する操作信号である場合、操作信号に従って無線通信端末31の少なくとも一部を操作する。
【0100】
また、受信部54によって受信された信号が、別の無線通信端末31(対象端末31)に対する操作信号である場合、制御部51は送信部53を介して、操作信号を対象端末31に送信する。つまり、対象端末31に対する操作信号が、この無線通信端末31を中継端末とした中継通信で送信されている場合、制御部51は、送信部53を用いたSL通信により、操作信号を対象端末31に送信する。
【0101】
なお、制御部51は、生成部52に、受信した操作信号を、対象端末31を宛先としたSL通信での送信に適合するように処理させてもよい。送信部53は、生成部52によって処理された操作信号を、対象端末31に送信する。
【0102】
図3から図5を参照して前述した制御システム2および無線通信端末31の構成により、制御システム2は、無線通信端末31との通信状況に応じて切り替えられる直接通信と中継通信のいずれか一方により、無線通信端末31との間で信号を送受信できる。
【0103】
次いで、図6から図9を参照して、比較例に係る無線通信システムと本実施形態の無線通信システム1の各々における処理シーケンスの例を説明する。
【0104】
図6は、比較例に係る無線通信システムにおいて実行される処理シーケンスの例を示す。この処理シーケンスでは、第1無線通信端末31-1と第2無線通信端末31-2とのSL通信が行われる場合を例示する。
【0105】
まず、制御システム2は、Physical Broadcast Channel(PBCH)で、SL通信に関する情報を含む信号を第2無線通信端末31-2に送信する(S11)。SL通信に関する情報は、例えばSL通信のための無線設定の情報を含む。
【0106】
その後、第2無線通信端末31-2は、Physical Uplink Control Channel(PUCCH)でサイドリンクリクエスト信号(SLReq信号)を制御システム2に送信する(S12)。第2無線通信端末31-2は、SL通信で、例えばデータを第1無線通信端末31-1に送信したい場合に、SLReq信号を制御システム2に送信する。SLReq信号は、第1無線通信端末31-1とのSL通信を要求する信号である。
【0107】
制御システム2はSLReq信号を受信したことに応じて、SL通信のためのリソースを割り当て、Physical Downlink Control Channel(PDCCH)で、ダウンリンク制御情報(DCI5)を含む信号を第2無線通信端末31-2に送信する(S13)。ダウンリンク制御情報は、SL通信のために割り当てられたリソースを示す情報を含む。リソースは、例えば時間と周波数帯域を含む。
【0108】
第2無線通信端末31-2はダウンリンク制御情報を含む信号を受信する。第2無線通信端末31-2はダウンリンク制御情報に示される時間と周波数帯域に従って、第1無線通信端末31-1とのSL通信を実行する。
【0109】
具体的には、まず、第2無線通信端末31-2はPhysical Sidelink Control Channel(PSCCH)で、SL通信用の無線設定および割り当てられたリソースに関する情報を含む信号を第1無線通信端末31-1に送信する(S14)。次に、第2無線通信端末31-2はPhysical Sidelink Shared Channel(PSSCH)で、データを含む信号を第1無線通信端末31-1に送信する(S15)。
【0110】
そして、第1無線通信端末31-1はPSSCHで信号を受信したことに応じて、応答信号をPhysical Sidelink Feedback Channel(PSFCH)で第2無線通信端末31-2に送信する(S16)。なお、PSCCH、PSSCH、およびPSSCHは、SL通信で用いられるチャネルである。
【0111】
図6に示す処理シーケンスにより、第2無線通信端末31-2は第1無線通信端末31-1とのSL通信を実行する。この処理シーケンスでは、第2無線通信端末31-2が制御システム2にSLReq信号を送信することで(すなわちSLReq信号をトリガーとして)、2つの無線通信端末31-1,31-2間のSL通信が開始される。つまり、SL通信の開始は、第2無線通信端末31-2によって判断される。したがって、制御システム2は、例えばSL通信に用いられるリソースの割り当てを変更できるものの、無線通信端末31-1,31-2にSL通信を開始させることや、開始されたSL通信を終了させることはできない。
【0112】
これに対して、本実施形態の無線通信システム1では、制御システム2が2つの無線通信端末31間のSL通信の開始を判断する。制御システム2は、例えば、第1無線通信端末31-1と制御システム2(基地局22-1)との直接通信の通信状況が悪化した場合、第2無線通信端末31-2と第1無線通信端末31-1とのSL通信を開始させる。より詳しくは、制御システム2は、第2無線通信端末31-2にSLReq指示信号を送信して(すなわちSLReq指示信号をトリガーとして)、第2無線通信端末31-2に第1無線通信端末31-1とのSL通信の開始を指示する。これにより、制御システム2は、第1無線通信端末31-1との直接通信の通信状況が悪化した場合に、第2無線通信端末31-2を介した第1無線通信端末31-1との中継通信を実行できる。制御システム2は、第1無線通信端末31-1の移動を操作する操作信号を、中継通信で第1無線通信端末31-1に送信することにより、第1無線通信端末31-1を安定して操作できる。
【0113】
さらに、制御システム2はSL通信の終了も判断する。制御システム2は、例えば、悪化していた第1無線通信端末31-1と制御システム2との直接通信の通信状況が改善した場合に、第1無線通信端末31-1と第2無線通信端末31-2とのSL通信を終了させる。これにより、制御システム2は、第1無線通信端末31-1との直接通信の通信状況が改善した場合に、第1無線通信端末31-1との直接通信を再開できる。
【0114】
したがって、制御システム2は、直接通信と中継通信のいずれかを用いて、第1無線通信端末31-1の移動を操作する操作信号を、第1無線通信端末31-1に送達できる。よって、制御システム2は第1無線通信端末31-1を安定して操作できる。
【0115】
このように、制御システム2は、各無線通信端末31がSL通信に用いるリソースを管理するだけでなく、各無線通信端末31と直接通信を行うか、それとも中継通信を行うかを制御できる。つまり、比較例に係る無線通信システムでは、無線通信端末31がSL通信の開始および終了を主導するのに対して、本実施形態の無線通信システム1では、制御システム2がSL通信の開始および終了を主導する。
【0116】
図7は、本実施形態の無線通信システム1における処理シーケンスの第1の例を示す。この処理シーケンスでは、制御システム2と各無線通信端末31-1,31-2との直接通信が行われた後に、第2無線通信端末31-2(中継端末)を介した制御システム2と第1無線通信端末31-1(対象端末)との中継通信が行われる場合を例示する。
【0117】
まず、制御システム2はPhysical Downlink Shared Channel(PDSCH)で、第2無線通信端末31-2に対する操作信号を第2無線通信端末31-2に送信する(S201)。第2無線通信端末31-2に対する操作信号は、第2無線通信端末31-2の少なくとも一部を操作するための信号(例えば第2無線通信端末31-2を移動させるための信号)である。
【0118】
次に、制御システム2はPDSCHで、第1無線通信端末31-1に対する操作信号を第1無線通信端末31-1に送信する(S202)。第1無線通信端末31-1に対する操作信号は、第1無線通信端末31-1の少なくとも一部を操作するための信号(例えば第1無線通信端末31-1を移動させるための信号)である。
【0119】
第1無線通信端末31-1は操作信号を受信して、操作信号に対する応答信号をPUSCHで制御システム2に返す(S203)。そして、第1無線通信端末31-1はデータ信号を制御システム2に送信する(S204)。
【0120】
制御システム2はデータ信号を受信して、データ信号に対する応答信号をPDSCHで第1無線通信端末31-1に返す(S205)。なお、制御システム2と第2無線通信端末31-2との間でも、S203からS205と同様の信号の送受信が行われてもよい。
【0121】
次いで、制御システム2は、第1無線通信端末31-1との通信を、直接通信から中継通信に切り替えるかどうかを判断する(S206)。制御システム2は、例えば第1無線通信端末31-1との信号の送受信の状況が悪化している場合に、第1無線通信端末31-1との通信を、直接通信から中継通信に切り替えると判断する。制御システム2は、例えば、S203の応答信号とS204のデータ信号の少なくとも一方を受信していない場合、S203の応答信号とS204のデータ信号の少なくとも一方の再送を第1無線通信端末31-1に要求した場合、またはS202の操作信号とS205の応答信号の少なくとも一方を再送した場合(例えばS203の応答信号がNAKを含む場合)に、第1無線通信端末31-1との信号の送受信の状況が悪化すると判断する。
【0122】
また、制御システム2は、無線マップ45と、第1無線通信端末31-1の移動に関する情報とを用いて、第1無線通信端末31-1との通信を、直接通信から中継通信に切り替えるかどうかを判断してもよい。第1無線通信端末31-1の移動に関する情報は、例えば、第1無線通信端末31-1の位置、速度、または移動方向の少なくともいずれかを示す情報を含む。制御システム2は、例えば、第1無線通信端末31-1が、無線マップ45上の、制御システム2との通信状況が悪い領域に入ると推定される場合に、第1無線通信端末31-1との信号の送受信の状況が悪化すると判断する。
【0123】
以下では、制御システム2が第1無線通信端末31-1との信号の送受信の状況が悪化すると判断して、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信に切り替える場合について例示する。
【0124】
制御システム2は、制御システム2と第1無線通信端末31-1との通信を中継する中継端末を選択する(S207)。制御システム2は、例えば第2無線通信端末31-2を中継端末として選択する。
【0125】
中継端末は、制御システム2との直接通信による通信状況が良好であり、且つ第1無線通信端末31-1とSL通信可能な無線通信端末31である。制御システム2は、無線マップ45と、各無線通信端末31の移動に関する情報とを用いて、制御システム2と第1無線通信端末31-1との通信を中継する中継端末を選択する。各無線通信端末31の移動に関する情報は、例えば、その無線通信端末31の位置、速度、または移動方向の少なくともいずれかを示す情報を含む。制御システム2は、例えば、無線マップ45上の、制御システム2との通信状況が良い領域に位置し、且つ第1無線通信端末31-1との距離が閾値未満である無線通信端末31を、中継端末として選択する。制御システム2との通信状況が良い領域は、例えば、無線マップ45上の誤り率が閾値以下である領域である。
【0126】
また、制御システム2は、各無線通信端末31の撮像部55で取得された画像を用いて、中継端末を選択してもよい。より具体的には、各無線通信端末31の撮像部55は、対応する無線通信端末31の周囲の画像を生成する。各無線通信端末31は、生成された画像を制御システム2に送信する。制御システム2は、各無線通信端末31から受信した画像を処理して、画像に第1無線通信端末31-1が含まれるか否かを判定する。制御システム2は、第1無線通信端末31-1を含む画像を取得した無線通信端末31を、中継端末として選択する。
【0127】
なお、複数の無線通信端末31を中継端末として選択可能である場合には、制御システム2は、制御システム2との直接通信の通信状況と、第1無線通信端末31-1とのSL通信の通信状況とがより良好であると推定される無線通信端末31を、中継端末として選択する。制御システム2は、例えば、中継端末として選択可能な複数の無線通信端末31から、第1無線通信端末31-1により近い無線通信端末31を、あるいは第1無線通信端末31-1がより大きく写された画像を取得した無線通信端末31を、中継端末として選択する。また、制御システム2は、各無線通信端末31の移動の方向性が同一であることを考慮して、中継端末を選択してもよい。制御システム2による中継端末の選択条件には種々のバリエーションがあり、制御システム2は、ここに記載した1以上の条件を組み合わせて、中継端末を選択してもよい。
【0128】
また、制御システム2は、中継端末を選択する前に、各無線通信端末31が中継機能を有するか否かを確認してもよい。制御システム2は、例えば、SLReq指示信号を無線通信端末31に送信してみること、または無線通信端末31とのCapabilityに関するやり取りによって、無線通信端末31が中継機能を有するか否かを判断できる。
【0129】
制御システム2は、選択した第2無線通信端末31-2に、SL通信に関する情報を含む信号をPBCHで送信する(S208)。そして、制御システム2はSLReq指示信号を、例えばPDSCHによるユニキャストで、第2無線通信端末31-2に送信する(S209)。つまり、SLReq指示信号は、第2無線通信端末31-2を宛先として送信される。SLReq指示信号は、送信先の無線通信端末31(ここでは第2無線通信端末31-2)に対して、対象端末(ここでは第1無線通信端末31-1)とのSL通信を指示するための信号である。より詳しくは、SLReq指示信号は、対象端末とのSL通信を開始するためのSLReq信号を、送信先の無線通信端末31に送信させるための信号である。SLReq指示信号は、対象端末を特定する情報として、第1無線通信端末31-1の識別情報を含む。SLReq指示信号は、中継端末を特定する情報として、第2無線通信端末31-2の識別情報を含んでいてもよい。
【0130】
なお、制御システム2は、第2無線通信端末31-2に対するSLReq指示信号を、第2無線通信端末31-2(中継端末)と第1無線通信端末31-1(対象端末)とに、例えばマルチキャストで送信してもよい。つまり、SLReq指示信号の宛先を、第2無線通信端末31-2および第1無線通信端末31-1としてもよい。第1無線通信端末31-1は、受信したSLReq指示信号に、対象端末を特定する情報として、第1無線通信端末31-1の識別情報が含まれる場合、自身が中継通信(より詳しくはSL通信)の対象端末であることを認識できる。その場合、第1無線通信端末31-1は、SL通信での信号の受信を待ち受ける処理を実行する(S210)。これにより、第1無線通信端末31-1は、SL通信での信号の受信を効率的に行うことができる。
【0131】
また、第2無線通信端末31-2は、制御システム2から、第2無線通信端末31-2を宛先とするSLReq指示信号を受信したことに応じて、SLReq信号をPUCCHで制御システム2に送信する(S211)。第2無線通信端末31-2は、例えば、受信したSLReq指示信号に、対象端末を特定する情報として第1無線通信端末31-1の識別情報が含まれる場合、自身が中継通信の対象端末ではなく、中継端末であることを認識できる。あるいは、第2無線通信端末31-2は、例えば、受信したSLReq指示信号に、中継端末を特定する情報として第2無線通信端末31-2の識別情報が含まれる場合に、自身が中継端末であることを認識できる。
【0132】
制御システム2は、第2無線通信端末31-2からSLReq信号を受信したことに応じて、第1無線通信端末31-1と第2無線通信端末31-2とのSL通信のためのリソースを割り当て、PDCCHで、ダウンリンク制御情報(DCI5)を含む信号を第2無線通信端末31-2に送信する(S212)。そして、制御システム2はPDSCHで、第1無線通信端末31-1に対する操作信号を第2無線通信端末31-2に送信する(S213)。この操作信号は、第1無線通信端末31-1の少なくとも一部を操作するための信号である。
【0133】
第2無線通信端末31-2は、ダウンリンク制御情報を含む信号と、第1無線通信端末31-1に対する操作信号とを受信する。第2無線通信端末31-2はダウンリンク制御情報に示される時間と周波数帯域に従って、第1無線通信端末31-1とのSL通信を実行する。
【0134】
具体的には、まず、第2無線通信端末31-2はPSCCHで、SL通信用の無線設定および割り当てられたリソースに関する情報を含む信号を第1無線通信端末31-1に送信する(S214)。次に、第2無線通信端末31-2はPSSCHで、第1無線通信端末31-1に対する操作信号を第1無線通信端末31-1に送信(転送)する(S215)。
【0135】
第1無線通信端末31-1はPSSCHで操作信号を受信したことに応じて、応答信号をPSFCHで第2無線通信端末31-2に送信する(S216)。また、第1無線通信端末31-1は、受信した操作信号に従って、第1無線通信端末31-1の少なくとも一部を操作する。そして、第1無線通信端末31-1は、PSCCHでデータ信号を第2無線通信端末31-2に送信する(S217)。
【0136】
第2無線通信端末31-2は、第1無線通信端末31-1によって送信された応答信号およびデータ信号を受信する。第2無線通信端末31-2は、データ信号を受信したことに応じて、応答信号をPSFCHで第1無線通信端末31-1に送信する(S218)。また、第2無線通信端末31-2は、PUSCHで、第1無線通信端末31-1から受信したデータ信号を制御システム2に送信(転送)してもよい。
【0137】
なお、制御システム2と第1無線通信端末31-1との直接通信(無線リンク25)の通信状況が改善しているならば、制御システム2は、第1無線通信端末31-1からのS216の応答信号とS217のデータ信号とを受信可能である。また、制御システム2は、S209でSLReq指示信号を送信し、S211でSLReq信号を受信しているので、第2無線通信端末31-2と第1無線通信端末31-1とのSL通信で信号が送受信されるタイミングを予測できる。制御システム2は、第1無線通信端末31-1から第2無線通信端末31-2への応答信号およびデータ信号が送信されると予測される期間に、それら信号の受信を待ち受ける。制御システム2は、第1無線通信端末31-1から第2無線通信端末31-2への応答信号またはデータ信号の少なくとも一方に応じて、制御システム2と第1無線通信端末31-1との通信を、中継通信から直接通信に切り替えるかどうかを判断する(S219)。制御システム2は、例えば、応答信号またはデータ信号の少なくとも一方を受信した場合に、第1無線通信端末31-1との通信を直接通信に切り替えると判断する。制御システム2は、応答信号またはデータ信号を受信した回数が閾値を超えた場合に、第1無線通信端末31-1との通信を直接通信に切り替えると判断してもよい。また、制御システム2は、応答信号を受信した回数とデータ信号を受信した回数の和が閾値を超えた場合に、第1無線通信端末31-1との通信を直接通信に切り替えると判断してもよい。
【0138】
一方、制御システム2は、例えば、応答信号またはデータ信号のいずれも受信していない場合に、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信に維持すると判断する。制御システム2は、応答信号またはデータ信号のいずれか一方しか受信していない場合に、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信に維持すると判断してもよい。制御システム2は、応答信号またはデータ信号を受信した回数が閾値以下である場合に、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信に維持すると判断してもよい。また、制御システム2は、応答信号を受信した回数とデータ信号を受信した回数の和が閾値以下である場合に、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信に維持すると判断してもよい。
【0139】
なお、制御システム2と第1無線通信端末31-1との通信を直接通信に切り替える場合、無線通信システム1における処理シーケンスは、例えばS201に戻る。これにより、制御システム2は直接通信によって、第1無線通信端末31-1に対して新たな操作信号を送信できる。したがって、第1無線通信端末31-1は、第1無線通信端末31-1に対する新たな操作信号を、制御システム2から受信する。
【0140】
また、制御システム2と第1無線通信端末31-1との通信を中継通信のまま維持する場合、無線通信システム1における処理シーケンスは、例えばS212に戻る。これにより、制御システム2は第2無線通信端末31-2を介した中継通信によって、第1無線通信端末31-1に対して新たな操作信号を送信できる。つまり、制御システム2は、第1無線通信端末31-1に対する新たな操作信号を、第2無線通信端末31-2に送信する。第2無線通信端末31-2は、この操作信号を受信して、第1無線通信端末31-1に送信する。したがって、第1無線通信端末31-1は、第1無線通信端末31-1に対する新たな操作信号を、第2無線通信端末31-2から受信する。
【0141】
このように、SLReq指示信号によって開始されうる第1無線通信端末31-1と第2無線通信端末31-2との端末間通信とは、サーバ21から基地局22を介して第2無線通信端末31-2に送信された、第1無線通信端末31-1の少なくとも一部を操作するための操作信号が、第2無線通信端末31-2によって第1無線通信端末31-1に送信されることを含むと定められる。この操作信号は、S213およびS215で送信された操作信号と、後続して送信される操作信号とを含み得る。
【0142】
なお、制御システム2は、中継通信による第1無線通信端末31-1に対する操作信号の送信と、直接通信による第2無線通信端末31-2に対する操作信号の送信とを並行して行い得る。第2無線通信端末31-2は、中継通信による第1無線通信端末31-1に対する操作信号と、直接通信による第2無線通信端末31-2に対する操作信号とを並行して(例えば交互に)受信し得る。中継通信が開始された後に(例えば第2無線通信端末31-2がSLReq信号を送信した後に)、制御システム2が第1無線通信端末31-1に対する操作信号と第2無線通信端末31-2に対する操作信号とを送信する順序は、予め決められていてもよい。その場合、第2無線通信端末31-2は、受信した操作信号を、その受信した順序に基づいて、第1無線通信端末31-1を対象とする操作信号であるか、第2無線通信端末31-2を対象とする操作信号であるかを判別できる。あるいは、操作信号は、当該操作信号が操作の対象とする1つの無線通信端末31を識別するための情報を含んでいてもよい。
【0143】
以上の図7の処理シーケンスにより、第1無線通信端末31-1との直接通信の通信状況が悪化した場合にも、制御システム2は、第2無線通信端末31-2を介した中継通信により、第1無線通信端末31-1に操作信号を送信できる。したがって、制御システム2は、第1無線通信端末31-1の移動を安定して操作できる。
【0144】
図7の処理シーケンスでは、第1無線通信端末31-1が中継通信の対象端末となる例を示したが、他の無線通信端末31も同様に中継通信の対象端末となり得る。また、第1無線通信端末31-1が、中継通信の中継端末となる場合もある。
【0145】
なお、制御システム2は、第1無線通信端末31-1との直接通信の通信状況が改善するタイミングを予測して、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信から直接通信に切り替えてもよい。
【0146】
図8は、無線通信システム1における処理シーケンスの第2の例を示す。この処理シーケンスでは、図7に示した処理シーケンスに、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信から直接通信に切り替えるタイミングを決定し、決定したタイミングで第1無線通信端末31-1との通信を中継通信から直接通信に切り替えるための処理が加えられている。
【0147】
図8の処理シーケンスのS301からS304までの処理は、図7の処理シーケンスのS201からS207までの処理と同様である。なお、図8では、S203からS205までの処理の図示を省略している。
【0148】
制御システム2は、S304で中継端末として第2無線通信端末31-2を選択した後に、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信から直接通信に切り替えるタイミング(以下、切替タイミングと称する)を決定する(S305)。制御システム2は、例えば、無線マップ45と、第1無線通信端末31-1の移動に関する情報とを用いて、第1無線通信端末31-1との直接通信の通信状況が改善する切替タイミングを推定する。第1無線通信端末31-1の移動に関する情報は、例えば、第1無線通信端末31-1の位置、速度、または移動方向の少なくともいずれかを示す情報を含む。制御システム2は、例えば、第1無線通信端末31-1が、無線マップ45上の誤り率が閾値以下である領域内の位置に移動するタイミングを、切替タイミングとして決定する。
【0149】
切替タイミングは、制御システム2が、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信から直接通信に切り替えるタイミングを認識できれば、どのような値で表現されてもよい。切替タイミングは、例えば、時刻、S309でSLReq信号を受信してからの経過時間、またはS311で操作信号を送信してからの経過時間等で表される。
【0150】
後続するS306からS316までの処理は、図7の処理シーケンスのS208からS218までの処理と同様である。つまり、第1無線通信端末31-1に対する操作信号を、第2無線通信端末31-2を介して制御システム2から第1無線通信端末31-1に送信するための処理と、操作信号に対する応答のための処理とが行われる。
【0151】
次いで、制御システム2は、現在の時間がS305で決定した切替タイミングに達したか否かを判定する。現在の時間が切替タイミングに達している場合、制御システム2は第1無線通信端末31-1との通信を中継通信から直接通信に切り替える(S317)。そして、制御システム2は第1無線通信端末31-1に対する新たな操作信号を、直接通信により第1無線通信端末31-1に送信する(S318)。つまり、第1無線通信端末31-1が、無線マップ45上の誤り率が閾値以下である領域内の位置に移動する場合に、制御システム2は、第1無線通信端末31-1に対する新たな操作信号を、第1無線通信端末31-1に送信する。したがって、第1無線通信端末31-1は、第1無線通信端末31-1に対する新たな操作信号を、制御システム2から受信する。
【0152】
以上の図8の処理シーケンスにより、制御システム2は、無線マップ45と第1無線通信端末31-1の移動に関する情報とを用いて、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信から直接通信に戻すことができる。つまり、制御システム2は、操作信号に対する、第1無線通信端末31-1からの応答信号およびデータ信号を用いることなく、第1無線通信端末31-1との通信を中継通信から直接通信に戻すことができる。
【0153】
次いで、制御システム2が複数の無線通信端末31を中継端末の候補として用いる例について説明する。
【0154】
図9は、無線通信システム1における処理シーケンスの第3の例を示す。この処理シーケンスでは、図7に示した処理シーケンスに、複数の中継端末の候補から1つを選択するための処理が加えられている。ここでは、中継端末の候補として、第2無線通信端末31-2と第3無線通信端末31-3とが選択される場合を例示する。なお、中継端末の候補として選択される無線通信端末31の数は任意である。
【0155】
まず、制御システム2はPDSCHで、第2無線通信端末31-2に対する操作信号を第2無線通信端末31-2に送信する(S401)。制御システム2はPDSCHで、第1無線通信端末31-1に対する操作信号を第1無線通信端末31-1に送信する(S402)。制御システム2はPDSCHで、第3無線通信端末31-3に対する操作信号を第3無線通信端末31-3に送信する(S403)。第3無線通信端末31-3に対する操作信号は、第3無線通信端末31-3の少なくとも一部を操作するための信号(例えば第3無線通信端末31-3を移動させるための信号)である。
【0156】
なお、図9では図示を省略しているが、各無線通信端末31-1,31-2,31-3は、操作信号に対する応答信号およびデータ信号を、PUSCHで制御システム2に送信してもよい。また、制御システム2は、データ信号に対する応答信号を、PDSCHで各無線通信端末31-1,31-2,31-3に送信してもよい。
【0157】
次いで、制御システム2は、第1無線通信端末31-1との通信を、直接通信から中継通信に切り替えるかどうかを判断する(S404)。以下では、制御システム2が第1無線通信端末31-1との通信を中継通信に切り替えると判断した場合について例示する。
【0158】
制御システム2は、制御システム2と第1無線通信端末31-1との通信を中継する中継端末の候補を選択する(S405)。中継端末の候補は、制御システム2との直接通信による通信状況が良好であり、且つ第1無線通信端末31-1とSL通信可能な無線通信端末31である。制御システム2は、無線マップ45と、各無線通信端末31の移動に関する情報とを用いて、制御システム2と第1無線通信端末31-1との通信を中継する中継端末の候補を選択する。各無線通信端末31の移動に関する情報は、例えば、その無線通信端末31の位置、速度、または移動方向の少なくともいずれかを示す情報を含む。制御システム2は、例えば、無線マップ45上の、制御システム2との通信状況が良い領域に位置し、且つ第1無線通信端末31-1との距離が閾値未満である無線通信端末31を、中継端末の候補として選択する。制御システム2との通信状況が良い領域は、例えば、無線マップ45上の誤り率が閾値以下である領域である。
【0159】
また、制御システム2は、各無線通信端末31の撮像部55で取得された画像を用いて、中継端末の候補を選択してもよい。より具体的には、各無線通信端末31の撮像部55は、対応する無線通信端末31の周囲の画像を生成する。各無線通信端末31は、生成された画像を制御システム2に送信する。制御システム2は、各無線通信端末31から受信した画像を処理して、画像に第1無線通信端末31-1が含まれるか否かを判定する。制御システム2は、第1無線通信端末31-1を含む画像を取得した無線通信端末31を、中継端末の候補として選択する。
【0160】
以下では、制御システム2が第2無線通信端末31-2と第3無線通信端末31-3とを中継端末の候補として選択した場合について、例示する。
【0161】
制御システム2は、選択した第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3に、SL通信に関する情報を含む信号をPBCHで送信する(S406)。そして、制御システム2はSLReq指示信号を、例えばPDSCHによるマルチキャストで、第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3に送信する(S407)。つまり、SLReq指示信号は、第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3を宛先として送信される。SLReq指示信号は、第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3に対して、第1無線通信端末31-1とのSL通信を指示するための信号である。より詳しくは、SLReq指示信号は、第1無線通信端末31-1とのSL通信を開始するためのSLReq信号を、第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3にそれぞれ送信させるための信号である。SLReq指示信号は、対象端末を特定する情報として、第1無線通信端末31-1の識別情報を含む。SLReq指示信号は、中継端末の候補を特定する情報として、第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3の識別情報を含んでいてもよい。
【0162】
なお、制御システム2は、第2無線通信端末31-2に対するSLReq指示信号を、第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3(中継端末の候補)と、第1無線通信端末31-1(対象端末)とに、例えばマルチキャストで送信してもよい。第1無線通信端末31-1は、受信したSLReq指示信号に、対象端末を特定する情報として第1無線通信端末31-1の識別情報が含まれる場合、自身が中継通信の対象端末であることを認識できる。その場合、第1無線通信端末31-1は、SL通信での信号の受信を待ち受ける処理を実行し得る(S408)。これにより、第1無線通信端末31-1は、SL通信での信号の受信を効率的に行うことができる。
【0163】
第2無線通信端末31-2は、制御システム2から、第2無線通信端末31-2を宛先とするSLReq指示信号を受信したことに応じて、PUCCHでSLReq信号を制御システム2に送信する(S409)。また、第3無線通信端末31-3は、制御システム2から、第3無線通信端末31-3を宛先とするSLReq指示信号を受信したことに応じて、PUCCHでSLReq信号を制御システム2に送信する(S410)。
【0164】
制御システム2は、第2無線通信端末31-2と第3無線通信端末31-3とからそれぞれSLReq信号を受信したことに応じて、中継端末を選択する(S411)。制御システム2は、第2無線通信端末31-2と第3無線通信端末31-3とから、制御システム2との直接通信の通信状況と、第1無線通信端末31-1とのSL通信の通信状況とがより良好であると推定される一方を、中継端末として選択する。中継端末の選択には、S405で中継端末の候補を選択した処理と同様にして、無線マップ45、無線通信端末31-1,31-2,31-3の各々の移動に関する情報、無線通信端末31-1,31-2,31-3の撮像部55で取得された画像等が用いられる。制御システム2は、例えば、第2無線通信端末31-2と第3無線通信端末31-3とから、第1無線通信端末31-1により近い一方を、あるいは第1無線通信端末31-1がより大きく写された画像を取得した一方を、中継端末として選択する。さらに、制御システム2は、SLReq指示信号を送信してからの特定期間内に、例えば第2無線通信端末31-2からSLReq信号を受信し、第3無線通信端末31-3からSLReq信号を受信しなかった場合、第2無線通信端末31-2を中継端末として選択してもよい。また、制御システム2は、より早く受信したSLReq信号の送信元である無線通信端末31を、中継端末として選択してもよい。
【0165】
以下では、制御システム2が第2無線通信端末31-2を中継端末として選択した場合について、例示する。
【0166】
後続するS412からS419までの処理は、図7の処理シーケンスのS212からS219までの処理と同様である。つまり、第1無線通信端末31-1に対する操作信号を、第2無線通信端末31-2を介して制御システム2から第1無線通信端末31-1に送信するための処理と、操作信号に対する応答信号およびデータ信号を用いて第1無線通信端末31-1との通信を中継通信から直接通信に切り替えるかを判断するための処理とが行われる。
【0167】
以上の図9の処理シーケンスにより、制御システム2は、複数の中継端末の候補にSLReq指示信号をマルチキャストして、それら中継端末の候補の1つを中継端末として、第1無線通信端末31-1との中継通信を行うことができる。複数の中継端末の候補にSLReq指示信号をマルチキャストすることで、制御システム2と第1無線通信端末31-1との中継通信を実施できる可能性を高めることができる。
【0168】
(第2実施形態)
第1実施形態では、制御システム2はSLReq指示信号を、制御システム2と対象端末との通信を中継する中継端末または中継端末の候補として選択した1つ以上の無線通信端末31に送信する。これに対して、第2実施形態では、制御システム2はSLReq指示信号をブロードキャストで送信する。つまり、制御システム2は宛先となる無線通信端末31を限定することなく、SLReq指示信号を送信する。
【0169】
第2実施形態に係る無線通信システム1の構成は第1実施形態の無線通信システム1と同様であり、第2実施形態と第1実施形態とでは、制御システム2からSLReq指示信号をブロードキャストするための処理と、ブロードキャストされたSLReq指示信号に応じた処理のみが異なる。以下、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0170】
図10は、第2実施形態に係る無線通信システム1において実行される処理シーケンスの例を示す。この処理シーケンスでは、制御システム2はSLReq指示信号をブロードキャストで送信する。したがって、制御システム2は、SLReq指示信号を送信する前に、中継端末または中継端末の候補を選択していない。
【0171】
図10の処理シーケンスのS501からS505までの処理は、図9の処理シーケンスのS401からS404、およびS406の処理と同様である。
【0172】
次いで、制御システム2はSLReq指示信号をブロードキャストで送信する(S506)。ブロードキャストされたSLReq指示信号は、制御システム2との直接通信が可能な無線通信端末31によって受信される。SLReq指示信号は、対象端末を特定する情報として、第1無線通信端末31-1の識別情報を含んでいる。なお、制御システム2は幾つかの無線通信端末31に、SLReq指示信号をマルチキャストで送信してもよい。
【0173】
第1無線通信端末31-1は、SLReq指示信号を受信し、SLReq指示信号に、対象端末を特定する情報として第1無線通信端末31-1の識別情報が含まれる場合、自身が中継通信(SL通信)の対象端末であることを認識できる。その場合、第1無線通信端末31-1は、SL通信での信号の受信を待ち受ける処理を実行し得る(S507)。
【0174】
第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3は、SLReq指示信号を受信し、SLReq指示信号に、対象端末を特定する情報として第1無線通信端末31-1の識別情報が含まれる場合、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であるか否かを判定する。第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能である場合、第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3は、制御システム2にSLReq信号を送信する。一方、第1無線通信端末31-1とのSL通信が不可能である場合、第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3は、制御システム2にSLReq信号を送信しない。つまり、第2無線通信端末31-2および第3無線通信端末31-3は、SLReq指示信号を受信した場合、第1無線通信端末31-1とのSL通信を行うために、制御システム2にSLReq信号を送信するか否かを判定する。第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であるか否かの判定には、例えば、以下の(1)~(3)の方法が用いられる。
【0175】
(1)無線通信端末31の移動に関する情報を用いる方法
第2無線通信端末31-2は、制御システム2から第2無線通信端末31-2の移動に関する情報を受信する。第2無線通信端末31-2は、センシングにより、第2無線通信端末31-2の移動に関する情報を取得していてもよい。また、第2無線通信端末31-2は、例えばSLReq指示信号に含まれる、第1無線通信端末31-1の移動に関する情報を取得する。移動に関する情報は、対応する無線通信端末31の位置、速度、移動方向等の、移動に関連する様々な情報を含み得る。第2無線通信端末31-2は、第2無線通信端末31-2の移動に関する情報と、第1無線通信端末31-1の移動に関する情報とを用いて、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であるか否かを判定する。
【0176】
より具体的には、第2無線通信端末31-2は、例えば、第2無線通信端末31-2の位置と第1無線通信端末31-1の位置とに基づいて、第2無線通信端末31-2と第1無線通信端末31-1との距離を算出する。第2無線通信端末31-2は、算出した距離が閾値未満である場合に、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であると判断する。一方、算出した距離が閾値以上である場合、第2無線通信端末31-2は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が不可能であると判断する。
【0177】
なお、第2無線通信端末31-2は、第2無線通信端末31-2の移動方向と第1無線通信端末31-1の移動方向とをさらに考慮して、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であるか否かを判定してもよい。第2無線通信端末31-2は、例えば、第2無線通信端末31-2と第1無線通信端末31-1との距離が閾値未満であって、第2無線通信端末31-2の移動方向と第1無線通信端末31-1の移動方向とが、当該距離を維持するか、あるいは近付ける方向である場合に、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であると判断する。また、第2無線通信端末31-2は、第2無線通信端末31-2と第1無線通信端末31-1との距離が閾値未満であっても、第2無線通信端末31-2の移動方向と第1無線通信端末31-1の移動方向とが、当該距離を遠ざける方向である場合に、第1無線通信端末31-1とのSL通信が不可能であると判断してもよい。
【0178】
また、第3無線通信端末31-3は、制御システム2から第3無線通信端末31-3の移動に関する情報を受信する。第3無線通信端末31-3は、センシングにより、第3無線通信端末31-3の移動に関する情報を取得していてもよい。また、第3無線通信端末31-3は、例えばSLReq指示信号に含まれる、第1無線通信端末31-1の移動に関する情報を取得する。第3無線通信端末31-3は、第3無線通信端末31-3の移動に関する情報と、第1無線通信端末31-1の移動に関する情報とを用いて、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であるか否かを判定する。移動に関する情報を用いた具体的な判定方法については、第2無線通信端末31-2について前述した方法と同様である。
【0179】
(2)無線通信端末31がヒアリングした信号を用いる方法
各無線通信端末31は、他の無線通信端末31によって送受信される信号を常にヒアリング(受信)する。各無線通信端末31は、ヒアリングした信号の送信元を示す識別情報(例えば信号アドレス)を一定期間保持する。ある無線通信端末31は、識別情報を保持している一定期間、その識別情報に対応する無線通信端末31と通信可能であると判断する。
【0180】
より具体的には、第2無線通信端末31-2は、SLReq指示信号に示される第1無線通信端末31-1の識別情報が、保持している識別情報の1つと一致する場合、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であると判断する。一方、SLReq指示信号に示される第1無線通信端末31-1の識別情報が、保持しているいずれの識別情報とも一致しない場合、第2無線通信端末31-2は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が不可能であると判断する。
【0181】
同様に、第3無線通信端末31-3は、SLReq指示信号に示される第1無線通信端末31-1の識別情報が、保持している識別情報の1つと一致する場合、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であると判断する。一方、SLReq指示信号に示される第1無線通信端末31-1の識別情報が、保持しているいずれの識別情報とも一致しない場合、第3無線通信端末31-3は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が不可能であると判断する。
【0182】
(3)無線通信端末31の撮像部55で取得した画像を用いる方法
各無線通信端末31は、撮像部55を備える場合、撮像部55で取得した画像を用いて、対象端末とのSL通信が可能であるか否かを判定する。撮像部55は、無線通信端末31の周囲の画像を生成する。無線通信端末31は、撮像部55で取得した画像を処理して、画像に対象端末(ここでは第1無線通信端末31-1)が含まれるか否かを判定する。すなわち、無線通信端末31は、撮像部55で取得した画像に対象端末31が写っている場合、対象端末31とのSL通信が可能であると判断する。一方、撮像部55で取得した画像に対象端末31が写っていない場合、無線通信端末31は、対象端末31とのSL通信が不可能であると判断する。
【0183】
図10に示す例では、第3無線通信端末31-3は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が不可能であると判断する(S508)。第3無線通信端末31-3は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が不可能であるので、制御システム2にSLReq信号を送信しない。
【0184】
これに対して、第2無線通信端末31-2は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であると判断する(S509)。第2無線通信端末31-2は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であるので、制御システム2にSLReq信号を送信する(S510)。
【0185】
後続するS511からS518までの処理は、図7の処理シーケンスのS212からS219までの処理と同様である。つまり、第1無線通信端末31-1に対する操作信号を、第2無線通信端末31-2を介して制御システム2から第1無線通信端末31-1に送信するための処理と、操作信号に対する応答を用いて第1無線通信端末31-1との通信を中継通信から直接通信に切り替えるかを判断するための処理とが行われる。
【0186】
以上の図10の処理シーケンスにより、制御システム2は、SLReq指示信号をブロードキャストする。ブロードキャストされたSLReq指示信号を受信した無線通信端末31の内、SLReq指示信号で示された対象端末31とSL通信可能な無線通信端末31は、SLReq信号を制御システム2に送信する。つまり、SLReq指示信号を受信した無線通信端末31は、対象端末とSL通信可能かどうかを判断する。したがって、制御システム2は、中継端末や中継端末の候補を選択する処理を行うことなく、SLReq指示信号をブロードキャストして、中継端末を決定できる。
【0187】
なお、制御システム2は、SLReq指示信号をブロードキャストしたことに応じて、複数の無線通信端末31からSLReq信号を受信する場合がある。
【0188】
図11は、無線通信システム1において実行される処理シーケンスの別の例を示す。この処理シーケンスでは、制御システム2はSLReq指示信号をブロードキャストで送信して、SLReq信号を複数の無線通信端末31からそれぞれ受信する。
【0189】
図11の処理シーケンスのS601からS607までの処理は、図10の処理シーケンスのS501からS507までの処理と同様である。
【0190】
SLReq指示信号を受信した第2無線通信端末31-2は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であると判断する(S608)。第2無線通信端末31-2は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であるので、制御システム2にSLReq信号を送信する(S609)。
【0191】
SLReq指示信号を受信した第3無線通信端末31-3は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であると判断する(S610)。第3無線通信端末31-3は、第1無線通信端末31-1とのSL通信が可能であるので、制御システム2にSLReq信号を送信する(S611)。
【0192】
制御システム2は、複数の無線通信端末31-2,31-3からSLReq信号を受信した場合、それら複数の無線通信端末31-2,31-3の1つを中継端末として選択する(S612)。複数の無線通信端末31-2,31-3の1つを中継端末として選択する方法は、図9の処理シーケンスのS411において前述した通りである。
【0193】
以上の図11の処理シーケンスにより、制御システム2がブロードキャストしたSLReq指示信号に応じて、対象端末31とSL通信可能な複数の無線通信端末31がSLReq信号をそれぞれ送信した場合、制御システム2は、それら複数の無線通信端末31から、制御システム2と対象端末31との中継通信により適した1つの無線通信端末31を選択できる。したがって、制御システム2は、SLReq指示信号をブロードキャストすることにより、良好な中継通信を実施できる中継端末31を決定できる。
【0194】
(第3実施形態)
第1および第2実施形態では、中継端末31を選択(決定)した後、中継端末31を介して制御システム2から対象端末31に、対象端末31に対する操作信号を送信する。第3実施形態ではさらに、対象端末31に操作信号が到達するタイミングを制御する。
【0195】
第3実施形態に係る無線通信システム1の構成は第1および第2実施形態の無線通信システム1と同様であり、第3実施形態と第1および第2実施形態とでは、操作信号が対象端末に到達するタイミングを制御するための処理のみが異なる。以下、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。
【0196】
図12は、第3実施形態に係る無線通信システム1において実行される処理シーケンスの例を示す。制御システム2は、ある無線通信端末31に、特定の制御周期毎に、その無線通信端末31に対する操作信号が到達するように、操作信号が送信(伝送)されるタイミングを制御する。特定の制御周期は、複数の無線通信端末31で同一の値であってもよいし、それぞれ異なる値であってもよい。また、特定の制御周期は、一定であってもよいし、無線通信端末31の位置や移動速度に応じて変動してもよい。
【0197】
以下では、説明を分かりやすくするために、特定の制御周期が一定である場合を例示する。図12に示す処理シーケンスでは、特定の制御周期で、無線通信端末31(対象端末31)に対する操作信号が、その無線通信端末31に到達する。制御システム2は、1周期の間に、無線通信端末31との直近の信号の送受信状況や、無線通信端末31の移動に関する情報を用いて、無線通信端末31との通信に、直接通信と中継通信のいずれを用いるかを判断する。
【0198】
図12の処理シーケンスのS701からS706までの処理は、図7の処理シーケンスのS201からS206までの処理と同様である。
【0199】
S706で第1無線通信端末31-1との通信を直接通信のままで維持すると判断した場合、制御システム2は、制御周期に従って、第1無線通信端末31-1に対する新たな操作信号を、PDSCHで第1無線通信端末31-1に送信する(S707)。S702で操作信号が第1無線通信端末31-1に到達した時刻から、S707で次の操作信号が第1無線通信端末31-1に到達した時刻までの期間は、制御周期に相当する。なお、S702で制御システム2が操作信号を第1無線通信端末31-1へ送信した時刻から、S707で制御システム2が操作信号を第1無線通信端末31-1へ送信した時刻までの期間が、制御周期に相当してもよい。制御システム2は、制御周期毎に操作信号が第1無線通信端末31-1に到達するように、操作信号の送信を制御する。
【0200】
後続するS708からS716までの処理は、図7の処理シーケンスのS203からS211までの処理と同様である。
【0201】
制御システム2は、第2無線通信端末31-2(中継端末)によるSL通信での第1無線通信端末31-1への信号の送信タイミングを把握している。これは例えば、制御システム2が、送信タイミングを指定する信号を第2無線通信端末31-2に送信しているためである。送信タイミングを指定する信号は、例えば、第2無線通信端末31-2と第1無線通信端末31-1とのSL通信において、第2無線通信端末31-2が第1無線通信端末31-1に信号を送信するタイミングを指定する。第2無線通信端末31-2は、制御システム2が第2無線通信端末31-2に送信した、第2無線通信端末31-2が第1無線通信端末31-1に中継すべき信号を、指定された送信タイミングに第1無線通信端末31-1に送信する。したがって、制御システム2は、ある信号が特定の送信タイミングに第2無線通信端末31-2から第1無線通信端末31-1に送信されるように、スケジューリングできる。
【0202】
具体的には、制御システム2は、S716で第2無線通信端末31-2からSLReq信号を受信した後に、PDCCHで、ダウンリンク制御情報(DCI5)を含む信号を第2無線通信端末31-2に送信する(S717)。
【0203】
第2無線通信端末31-2は、ダウンリンク制御情報を含む信号を制御システム2から受信する。第2無線通信端末31-2はダウンリンク制御情報に示される時間と周波数帯域に従って、第1無線通信端末31-1とのSL通信を実行する。第2無線通信端末31-2は、SL通信における直後の送信タイミングに、PSCCHで、SL通信用の無線設定に関する情報を含む信号を第1無線通信端末31-1に送信する(S718)。
【0204】
次いで、制御システム2は、第1無線通信端末31-1に対する操作信号が、制御周期に応じたタイミングで第1無線通信端末31-1に到達するように、当該操作信号をPDSCHで第2無線通信端末31-2に送信する(S719)。つまり、制御システム2は、第2無線通信端末31-2による第1無線通信端末31-1とのSL通信における次の送信タイミングが、制御周期に対応するタイミングである場合に、操作信号を第2無線通信端末31-2に送信する。
【0205】
第2無線通信端末31-2は、制御システム2から操作信号を受信して、SL通信における直後の送信タイミングに、PSCCHで、受信した操作信号を第1無線通信端末31-1に送信する(S720)。これにより、操作信号が中継通信で制御システム2から第1無線通信端末31-1に送信される場合にも、制御周期に対応するタイミングに、操作信号を第1無線通信端末31-1に到達させることができる。
【0206】
あるいは、送信タイミングを指定する信号は、第2無線通信端末31-2と第1無線通信端末31-1とでSL通信が行われる期間を指定する信号であってもよい。その場合、制御システム2は、第2無線通信端末31-2に対して、指定された期間内において第1無線通信端末31-1に信号を送信するタイミングを予め通知する。第2無線通信端末31-2は、制御システム2から受信した信号を、通知された送信タイミングに送信するようにスケジューリングする。
【0207】
なお、SL通信が行われる期間が指定される場合、制御システム2と第1無線通信端末31-1との通信を中継する中継端末は、第2無線通信端末31-2ではなく、監視カメラ32-1,32-2,32-3のような別の種類の無線通信端末であってもよい。つまり、中継端末として、SL通信での送信タイミングのスケジューリングを担うことを前提とした無線通信端末(例えばSL通信専用の無線通信端末)が用いられてもよい。
【0208】
後続するS721からS724までの処理は、図7の処理シーケンスのS216からS219までの処理と同様である。
【0209】
図12に示す処理シーケンスにより、制御システム2は、制御システム2と第1無線通信端末31-1との通信が直接通信と中継通信のいずれで行われる場合にも、第1無線通信端末31-1に対する操作信号が、制御周期毎に第1無線通信端末31-1に到達するように、スケジューリングできる。これにより、第1無線通信端末31-1は制御周期毎に、第1無線通信端末31-1に対する操作信号を受信する。したがって、制御システム2は、制御周期毎に到達する操作信号を用いて、第1無線通信端末31-1を安定して操作できる。
【0210】
以上説明したように、第1乃至第3実施形態によれば、無線通信端末31を安定して操作できる。基地局22の無線送信部223は、第1無線通信端末31-1と第2無線通信端末31-2との端末間通信を要求する信号の送信を指示するSLReq指示信号を第2無線通信端末31-2に送信し、第1無線通信端末31-1の少なくとも一部を操作するための1以上の第1操作信号を第2無線通信端末31-2に送信する。無線受信部224は、第1操作信号が送信された後に、第1無線通信端末31-1から第2無線通信端末31-2への応答信号またはデータ信号の少なくとも一方を受信可能である。無線送信部223は、応答信号またはデータ信号の少なくとも一方を受信した場合、第1無線通信端末31-1の少なくとも一部を操作するための第2操作信号を、それら応答信号またはデータ信号の少なくとも一方に応じて、第1無線通信端末31-1と第2無線通信端末31-2のいずれか一方に送信する。無線送信部223は、応答信号またはデータ信号のいずれも受信していない場合、第2操作信号を第2無線通信端末31-2に送信する。SLReq指示信号によって開始されうる第1無線通信端末31-1と第2無線通信端末31-2との端末間通信とは、第2無線通信端末31-2に送信された1以上の第1操作信号が、第2無線通信端末31-2によって第1無線通信端末31-1に送信され、第2無線通信端末31-2に送信される第2操作信号が、第2無線通信端末31-2によって第1無線通信端末31-1に送信されることを含むと定められる。
【0211】
以上の構成により、例えば基地局22(制御システム2)と第1無線通信端末31-1との直接通信の通信状況が悪化している場合にも、第1無線通信端末31-1に対する操作信号を、第2無線通信端末31-2を介した中継通信により、基地局22から第1無線通信端末31-1に送信できる。したがって、制御システム2は、第1無線通信端末31-1を安定して操作できる。
【0212】
また、第1乃至第3実施形態に記載された様々な機能の各々は、回路(処理回路)によって実現されてもよい。処理回路の例には、中央処理装置(CPU)のような、プログラムされたプロセッサが含まれる。このプロセッサは、メモリに格納されたコンピュータプログラム(命令群)を実行することによって、記載された機能それぞれを実行する。このプロセッサは、電気回路を含むマイクロプロセッサであってもよい。処理回路の例には、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、コントローラ、他の電気回路部品も含まれる。これら実施形態に記載されたCPU以外の他のコンポーネントの各々もまた処理回路によって実現されてもよい。
【0213】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0214】
1…無線通信システム、2…制御システム、21…サーバ、22-1,22-2…基地局、31-1,31-2,31-3,31-4,31-N…無線通信端末、32-1,32-2,32-3…監視カメラ、35…通路、36…物体、37…通信状況が悪化する領域、211…CPU、212…RAM、212A…制御プログラム、213…不揮発性メモリ、214…通信デバイス、221…制御部、222…通信デバイス、223…無線送信部、224…無線受信部、41…制御部、42…生成部、43…送信部、44…受信部、45…無線マップ、51…制御部、52…生成部、53…送信部、54…受信部。
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