(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】干渉確認装置及びそれを備えた処理機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
H05K13/04 P
(21)【出願番号】P 2020188694
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】今田 光
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/138509(WO,A1)
【文献】特開2008-211051(JP,A)
【文献】特開2002-288256(JP,A)
【文献】特開2014-146728(JP,A)
【文献】特開2021-144971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を下方から支持するプッシュアップピンと前記基板の被支持面上の既搭載部品との干渉の確認に用いられる干渉確認装置であって、
前記基板の三次元立体を投影図で表した基板図形と、前記基板を支持するときの前記プッシュアップピンの三次元立体を投影図で表したピン図形と、前記基板の前記被支持面上における前記既搭載部品の三次元立体を投影図で表した既搭載部品図形とを含む図形データを作成する図形データ作成部と、
前記図形データを表示画面に表示する表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部と、
前記プッシュアップピンが前記基板を支持するときの支持位置のずれ量の許容範囲を示すピンずれ許容範囲のデータと、前記基板の前記被支持面上における前記既搭載部品の搭載位置のずれ量の許容範囲を示す搭載ずれ許容範囲のデータと、を取得するデータ取得部と、を備え、
前記図形データ作成部は、前記ピン図形からの前記ピンずれ許容範囲の領域を示し当該ピン図形を囲むピンずれ枠図形を作成するとともに、前記基板図形上の前記既搭載部品図形からの前記搭載ずれ許容範囲の領域を示し当該既搭載部品図形を囲む搭載ずれ枠図形を作成し、
前記表示制御部は、前記図形データにおいて前記ピン図形と前記既搭載部品図形とが重なる干渉部位が存在する場合、当該干渉部位が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御するとともに、前記ピンずれ枠図形及び前記搭載ずれ枠図形が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する、干渉確認装置。
【請求項2】
基板を下方から支持するプッシュアップピンと前記基板の被支持面上の既搭載部品との干渉の確認に用いられる干渉確認装置であって、
前記基板の三次元立体を投影図で表した基板図形と、前記基板を支持するときの前記プッシュアップピンの三次元立体を投影図で表したピン図形と、前記基板の前記被支持面上における前記既搭載部品の三次元立体を投影図で表した既搭載部品図形とを含む図形データを作成する図形データ作成部と、
前記図形データを表示画面に表示する表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部と、
前記プッシュアップピンが前記基板を支持するときの支持位置のずれ量の許容範囲を示すピンずれ許容範囲のデータと、前記基板の前記被支持面上における前記既搭載部品の搭載位置のずれ量の許容範囲を示す搭載ずれ許容範囲のデータと、を取得するデータ取得部と、を備え、
前記図形データ作成部は、前記プッシュアップピンによる前記基板の支持位置が前記ピンずれ許容範囲で異なる状態を示す前記ピン図形と、前記既搭載部品の搭載位置が前記搭載ずれ許容範囲で異なる状態を示す前記既搭載部品図形とをそれぞれ含む複数の前記図形データを作成し、
前記表示制御部は、前記図形データにおいて前記ピン図形と前記既搭載部品図形とが重なる干渉部位が存在する場合、当該干渉部位が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御するとともに、複数の前記図形データが連続的に前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する、干渉確認装置。
【請求項3】
基板を下方から支持するプッシュアップピンと前記基板の被支持面上の既搭載部品との干渉の確認に用いられる干渉確認装置であって、
前記基板の三次元立体を投影図で表した基板図形と、前記基板を支持するときの前記プッシュアップピンの三次元立体を投影図で表したピン図形と、前記基板の前記被支持面上における前記既搭載部品の三次元立体を投影図で表した既搭載部品図形とを含む図形データを作成する図形データ作成部と、
前記図形データを表示画面に表示する表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部と、
前記基板の反りに関する基板反り量を算出する反り量算出部と、を備え、
前記図形データ作成部は、前記基板反り量に応じて前記基板図形を変形させた反り基板図形と、前記ピン図形と、前記反り基板図形上に位置する前記既搭載部品図形とを含む反り想定図形データを作成し、
前記表示制御部は、前記図形データにおいて前記ピン図形と前記既搭載部品図形とが重なる干渉部位が存在する場合、当該干渉部位が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御するとともに、前記反り想定図形データが前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する、干渉確認装置。
【請求項4】
基板を下方から支持するプッシュアップピンと前記基板の被支持面上の既搭載部品との干渉の確認に用いられる干渉確認装置であって、
前記基板の三次元立体を投影図で表した基板図形と、前記基板を支持するときの前記プッシュアップピンの三次元立体を投影図で表したピン図形と、前記基板の前記被支持面上における前記既搭載部品の三次元立体を投影図で表した既搭載部品図形とを含む図形データを作成する図形データ作成部と、
前記図形データを表示画面に表示する表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部と、を備え、
前記プッシュアップピンは、その先端が前記基板の前記被支持面に当接可能な当接位置と、前記当接位置よりも下方の退避位置との間で昇降可能であり、
前記基板は、前記プッシュアップピンの昇降中における搬送によって、前記プッシュアップピンの上方の所定位置に搬入されるとともに、前記所定位置から搬出されるものであり、
前記図形データ作成部は、前記基板の搬送状態を示す前記基板図形と、前記プッシュアップピンの昇降状態を示す前記ピン図形とをそれぞれ含む複数の前記図形データを作成し、
前記表示制御部は、前記図形データにおいて前記ピン図形と前記既搭載部品図形とが重なる干渉部位が存在する場合、当該干渉部位が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御するとともに、複数の前記図形データが連続的に前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する、干渉確認装置。
【請求項5】
基板を下方から支持するプッシュアップピンと前記基板の被支持面上の既搭載部品との干渉の確認に用いられる干渉確認装置であって、
前記基板の三次元立体を投影図で表した基板図形と、前記基板を支持するときの前記プッシュアップピンの三次元立体を投影図で表したピン図形と、前記基板の前記被支持面上における前記既搭載部品の三次元立体を投影図で表した既搭載部品図形とを含む図形データを作成する図形データ作成部と、
前記図形データを表示画面に表示する表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部と、を備え、
前記図形データ作成部は、前記ピン図形に対する前記基板図形の水平方向の相対位置が異なる複数の前記図形データを作成し、
前記表示制御部は、複数の前記図形データにおいて前記ピン図形と前記基板図形上の前記既搭載部品図形とが重なる干渉部位が存在する場合、当該干渉部位が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する、干渉確認装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記図形データにおける前記干渉部位が、当該干渉部位以外の残余部位との区別が可能な特定の表示形態で前記表示画面に表示されるように、前記表示部を制御する、請求項1
~5のいずれか1項に記載の干渉確認装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、
前記図形データの視点の位置を設定する視点設定処理と、
前記視点から見た前記図形データが前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する表示制御処理と、を実行する、請求項1
~6のいずれか1項に記載の干渉確認装置。
【請求項8】
前記ピン図形と前記既搭載部品図形との間の距離を算出する距離算出部を、更に備え、
前記表示制御部は、前記距離算出部による前記距離の算出結果が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の干渉確認装置。
【請求項9】
前記基板図形の全体の表示を指令する全体表示指令と、前記ピン図形の近傍領域の拡大表示を指令する個別表示指令とを含む、前記表示画面の表示態様の指令の入力操作を受け付ける操作部を、更に備え、
前記表示制御部は、前記操作部に入力される指令に応じて前記表示画面の表示態様が切り替わるように前記表示部を制御する、請求項1~
8のいずれか1項に記載の干渉確認装置。
【請求項10】
基板を下方から支持するプッシュアップピンを有する基板支持装置と、
前記基板に所定の処理を施す処理部と、
前記プッシュアップピンと前記基板の被支持面上の既搭載部品との干渉の確認に用いられる、請求項1~
9のいずれか1項に記載の干渉確認装置と、を備える、処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を下方から支持するプッシュアップピンと基板の被支持面上の既搭載物との干渉の確認に用いられる干渉確認装置、及び当該干渉確認装置を備えた処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線板等の基板上に電子部品(以下、単に「部品」という)を搭載する処理を施す処理機としての実装機が知られている。この種の実装機は、基板を支持する基板支持装置と、当該基板に部品を搭載するヘッドユニットとを備えている。基板支持装置は、プッシュアッププレートと、当該プッシュアッププレート上に配置されるプッシュアップピンと含む。基板支持装置は、プッシュアッププレート上に配置されたプッシュアップピンによって、基板を下方側から支持する。
【0003】
プッシュアップピンによって基板を支持する際において、当該基板の被支持面上に前工程にて搭載された既搭載部品が配置されている場合には、プッシュアップピンと既搭載部品との干渉が生じないようにする必要がある。この場合、基板の被支持面上において干渉の回避が可能なプッシュアップピンによる支持位置を特定し、当該支持位置に対応するように、プッシュアッププレート上におけるプッシュアップピンの配置を決定する必要がある。
【0004】
特許文献1には、プッシュアップピン(下受けピン)の配置の決定を支援する技術が開示されている。この技術では、既搭載部品が配置された基板を示す基板画像とプッシュアップピンを示すピン配置画像とを重ねた平面画像からなる合成画像を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される技術の場合、オペレータは、表示された合成画像に基づいて、基板上の既搭載部品とプッシュアップピンとの干渉を確認することになる。この場合、プッシュアップピンのどの部分が既搭載部品と干渉するかなどの、干渉部位の詳細を確認し難いという課題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基板上の既搭載部品とプッシュアップピンとの干渉をより精緻に確認することが可能な干渉確認装置、及びそれを備えた処理機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係る干渉確認装置は、基板を下方から支持するプッシュアップピンと前記基板の被支持面上の既搭載部品との干渉の確認に用いられる装置である。この干渉確認装置は、前記基板の三次元立体を投影図で表した基板図形と、前記基板を支持するときの前記プッシュアップピンの三次元立体を投影図で表したピン図形と、前記基板の前記被支持面上における前記既搭載部品の三次元立体を投影図で表した既搭載部品図形とを含む図形データを作成する図形データ作成部と、前記図形データを表示画面に表示する表示部と、前記表示部を制御する表示制御部と、を備える。そして、前記表示制御部は、前記図形データにおいて前記ピン図形と前記既搭載部品図形とが重なる干渉部位が存在する場合、当該干渉部位が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する。
【0009】
この干渉確認装置によれば、図形データ作成部が図形データを作成し、表示制御部により制御された表示部が図形データを表示画面に表示する。図形データ作成部により作成された図形データは、基板に対応した基板図形と、プッシュアップピンに対応したピン図形と、基板上の既搭載部品に対応した既搭載部品図形とを含み、これらの各図形は三次元立体を投影図で表したものである。そして、表示制御部は、図形データにおいてピン図形と既搭載部品図形とが重なる干渉部位が存在する場合、当該干渉部位が表示画面に表示されるように表示部を制御する。
【0010】
つまり、干渉部位が存在する場合には、当該干渉部位が表示画面上に現れた状態で、三次元立体を投影図で表したピン図形と基板図形上に配置された既搭載部品図形とが、表示部に表示される。このような、基板、プッシュアップピン及び既搭載部品の三次元立体を投影図で表した各図形によって構成される図形データは、既搭載部品が配置された基板をプッシュアップピンによって支持するときにおける、プッシュアップピンと既搭載部品との位置関係を精緻に表現したものとなる。このため、表示部に表示された図形データを見ることによって、オペレータは、プッシュアップピンと既搭載部品との干渉の有無を確認することができるとともに、干渉が発生する場合には、その干渉部位をより精緻に確認することができる。
【0011】
上記の干渉確認装置において、前記表示制御部は、前記図形データにおける前記干渉部位が、当該干渉部位以外の残余部位との区別が可能な特定の表示形態で前記表示画面に表示されるように、前記表示部を制御する。
【0012】
この態様では、表示画面に表示された図形データにおいて、干渉部位と残余部位との区別が容易となり、干渉部位の詳細をより容易に確認することができる。
【0013】
上記の干渉確認装置において、前記表示制御部は、前記図形データの視点の位置を設定する視点設定処理と、前記視点から見た前記図形データが前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する表示制御処理と、を実行する。
【0014】
この態様では、表示制御部による視点設定処理において図形データの視点の位置が設定される。これにより、干渉部位の有無の確認や、干渉部位が存在する場合にはその精緻な確認が容易となるような視点から見た図形データを、自動的に表示画面に表示することができる。
【0015】
上記の干渉確認装置は、前記プッシュアップピンが前記基板を支持するときの支持位置のずれ量の許容範囲を示すピンずれ許容範囲のデータと、前記基板の前記被支持面上における前記既搭載部品の搭載位置のずれ量の許容範囲を示す搭載ずれ許容範囲のデータと、を取得するデータ取得部を、更に備える。そして、前記図形データ作成部は、前記ピン図形からの前記ピンずれ許容範囲の領域を示し当該ピン図形を囲むピンずれ枠図形を作成するとともに、前記基板図形上の前記既搭載部品図形からの前記搭載ずれ許容範囲の領域を示し当該既搭載部品図形を囲む搭載ずれ枠図形を作成する。前記表示制御部は、前記ピンずれ枠図形及び前記搭載ずれ枠図形が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する。
【0016】
この態様では、表示部は、プッシュアップピンによる基板の支持位置が許容範囲内でずれた場合を表現したピンずれ枠図形と、基板上における既搭載部品の搭載位置が許容範囲内でずれた場合を表現した搭載ずれ枠図形とを、表示画面に表示する。表示画面に表示された各枠図形を見ることによって、オペレータは、プッシュアップピンによる支持位置のずれ量と干渉との関係性や、既搭載部品の搭載位置のずれ量と干渉の発生との関係性などを、簡単に確認することができる。
【0017】
上記の干渉確認装置は、前記プッシュアップピンが前記基板を支持するときの支持位置のずれ量の許容範囲を示すピンずれ許容範囲のデータと、前記基板の前記被支持面上における前記既搭載部品の搭載位置のずれ量の許容範囲を示す搭載ずれ許容範囲のデータと、を取得するデータ取得部を、更に備える。そして、前記図形データ作成部は、前記プッシュアップピンによる前記基板の支持位置が前記ピンずれ許容範囲で異なる状態を示す前記ピン図形と、前記既搭載部品の搭載位置が前記搭載ずれ許容範囲で異なる状態を示す前記既搭載部品図形とをそれぞれ含む複数の前記図形データを作成する。前記表示制御部は、複数の前記図形データが連続的に前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する。
【0018】
この態様では、表示部は、プッシュアップピンによる基板の支持位置が許容範囲内でずれた場合や、基板上における既搭載部品の搭載位置が許容範囲内でずれた場合を表現した複数の図形データを、動画のように連続的に表示画面に表示する。連続的に表示画面に表示される複数の図形データを見ることによって、オペレータは、プッシュアップピンによる支持位置のずれ量と干渉との関係性や、既搭載部品の搭載位置のずれ量と干渉の発生との関係性などを、簡単に確認することができる。
【0019】
上記の干渉確認装置は、前記ピン図形と前記既搭載部品図形との間の距離を算出する距離算出部を、更に備える。そして、前記表示制御部は、前記距離算出部による前記距離の算出結果が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する。
【0020】
この態様では、表示部は、図形データにおけるピン図形と既搭載部品図形との間の距離の算出結果を表示画面に表示する。表示画面に表示される算出結果を見ることによって、オペレータは、プッシュアップピンと既搭載部品との間の距離を、簡単に確認することができる。
【0021】
上記の干渉確認装置は、前記基板図形の全体の表示を指令する全体表示指令と、前記ピン図形の近傍領域の拡大表示を指令する個別表示指令とを含む、前記表示画面の表示態様の指令の入力操作を受け付ける操作部を、更に備える。そして、前記表示制御部は、前記操作部に入力される指令に応じて前記表示画面の表示態様が切り替わるように前記表示部を制御する。
【0022】
この態様では、オペレータは、操作部に対する入力操作によって手動で、基板図形の全体を表示させることや、ピン図形の近傍領域を拡大表示させることなどの表示態様の切り替えを行うことができる。
【0023】
上記の干渉確認装置は、前記基板の反りに関する基板反り量を算出する反り量算出部を、更に備える。そして、前記図形データ作成部は、前記基板反り量に応じて前記基板図形を変形させた反り基板図形と、前記ピン図形と、前記反り基板図形上に位置する前記既搭載部品図形とを含む反り想定図形データを作成する。前記表示制御部は、前記反り想定図形データが前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する。
【0024】
既搭載部品が配置された基板には、当該既搭載部品の搭載工程やその後のリフロー工程などにおいて、反りが発生する場合がある。このような反りが発生した基板をプッシュアップピンによって支持するときには、反りが無い平坦な基板を支持する場合には既搭載部品との干渉が生じない箇所でも、干渉が発生し得る。そこで、図形データ作成部は、基板反りが発生した場合を想定した反り基板図形と、ピン図形と、反り基板図形上に位置する既搭載部品図形とによって構成される反り想定図形データを作成する。そして、表示制御部によって制御された表示部は、反り想定図形データを表示する。表示部に表示された反り想定図形データを見ることによって、オペレータは、基板反りが発生した場合におけるプッシュアップピンと既搭載部品との干渉の有無を確認することができるとともに、干渉が発生する場合には、その干渉部位を精緻に確認することができる。
【0025】
上記の干渉確認装置において、前記プッシュアップピンは、その先端が前記基板の前記被支持面に当接可能な当接位置と、前記当接位置よりも下方の退避位置との間で昇降可能であり、前記基板は、前記プッシュアップピンの昇降中における搬送によって、前記プッシュアップピンの上方の所定位置に搬入されるとともに、前記所定位置から搬出されるものである。そして、前記図形データ作成部は、前記基板の搬送状態を示す前記基板図形と、前記プッシュアップピンの昇降状態を示す前記ピン図形とをそれぞれ含む複数の前記図形データを作成する。前記表示制御部は、複数の前記図形データが連続的に前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する。
【0026】
この態様では、表示部は、基板の搬送状態及びプッシュアップピンの昇降状態を表現した複数の図形データを、動画のように連続的に表示画面に表示する。連続的に表示画面に表示される複数の図形データを見ることによって、オペレータは、プッシュアップピンの昇降中において基板が搬送される際における、その基板の搬送開始のタイミングと干渉の発生との関係性などを、簡単に確認することができる。
【0027】
上記の干渉確認装置において、前記図形データ作成部は、前記ピン図形に対する前記基板図形の水平方向の相対位置が異なる複数の前記図形データを作成し、前記表示制御部は、複数の前記図形データにおいて前記ピン図形と前記基板図形上の前記既搭載部品図形とが重なる干渉部位が存在する場合、当該干渉部位が前記表示画面に表示されるように前記表示部を制御する。
【0028】
プッシュアップピンと基板との水平方向に関する位置関係は、一定であるとは限らない。例えば、基板がプッシュアップピンの上方の所定位置に搬入される際に、基板の停止位置にずれが生じる場合がある。この場合、プッシュアップピンに対する基板の水平方向の相対位置が一定とはならない。そこで、図形データ作成部は、ピン図形に対する基板図形の水平方向の相対位置が異なる複数の図形データを作成する。そして、表示制御部によって制御された表示部は、複数の図形データにおいてピン図形と基板図形上の既搭載部品図形とが重なる干渉部位が存在する場合、当該干渉部位を表示画面に表示する。これにより、オペレータは、プッシュアップピンに対する基板の水平方向の相対位置が変化した場合におけるプッシュアップピンと既搭載部品との干渉の有無を確認することができるとともに、干渉が発生する場合には、その干渉部位を精緻に確認することができる。
【0029】
本発明の他の局面に係る処理機は、基板を下方から支持するプッシュアップピンを有する基板支持装置と、前記基板に所定の処理を施す処理部と、前記プッシュアップピンと前記基板の被支持面上の既搭載部品との干渉の確認に用いられる、上記の干渉確認装置と、を備える。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、基板上の既搭載部品とプッシュアップピンとの干渉をより精緻に確認することが可能な干渉確認装置、及びそれを備えた処理機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係る干渉確認装置が適用された実装機のブロック図である。
【
図2】実装機における実装機本体の構成を示す平面図である。
【
図3】実装機本体に備えられるヘッドユニットの部分を拡大して示す図である。
【
図4】実装機本体に備えられる基板支持装置を示す図である。
【
図5】干渉確認装置における表示部の表示画面に図形データが表示された状態を示す図である。
【
図6】表示部の表示画面において図形データの干渉部位が表示された状態を示す図である。
【
図7】図形データにおける干渉部位の表示形態の第1変形例を示す図である。
【
図8】図形データにおける干渉部位の表示形態の第2変形例を示す図である。
【
図9】干渉確認装置の表示制御部が実行する視点設定処理を説明する図である。
【
図10】表示部が指令入力案内領域を含む表示画面を表示した状態を示す図である。
【
図11】表示部がピンずれ枠図形及び搭載ずれ枠図形を含む図形データを表示した状態を示す図である。
【
図12】表示部が複数の図形データを連続的に表示する状態を示す図である。
【
図13】干渉確認装置における操作部に全体表示指令及び個別表示指令が入力された場合における表示部の表示態様を説明する図である。
【
図14】表示部が反り想定図形データを表示した状態を説明する図である。
【
図15A】基板搬入時のプッシュアップピンの上昇を想定し、表示部が複数の図形データを連続的に表示する状態を示す図である。
【
図15B】基板搬出時のプッシュアップピンの下降を想定し、表示部が複数の図形データを連続的に表示する状態を示す図である。
【
図16】ピン図形に対して基板図形を移動させた場合の図形データにおける干渉部位の表示態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る干渉確認装置及びそれを備えた処理機について、図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る干渉確認装置5が適用された実装機1のブロック図である。実装機1は、プリント基板(以下、「基板」と称する)上に電子部品(以下、「部品」と称する)が搭載された電子回路基板を生産する装置である。実装機1は、基板に所定の処理を施す処理機の一例である。実装機1による生産対象の基板としては、当該基板の表裏をなす両面に部品が搭載されるものが含まれる。実装機1は、実装機本体2と、制御装置3と、記憶装置4と、干渉確認装置5とを備えている。実装機本体2は、部品搭載動作を行う構造部分を構成する。実装機本体2は、処理部の一例である。記憶装置4は、実装機本体2の部品搭載動作の際に参照される基板データ41を記憶する。制御装置3は、記憶装置4に記憶されている基板データ41を読み出し、当該基板データ41に基づいて実装機本体2の部品搭載動作を制御する。干渉確認装置5は、実装機本体2の部品搭載動作において基板支持装置28のプッシュアップピン282(後記の
図4参照)が基板を支持するときの、基板の被支持面上に前工程にて搭載された既搭載部品との干渉をオペレータが確認するときに用いられる。
【0034】
まず、実装機本体2について、
図1に加えて
図2~
図4を参照して説明する。なお、以下では、方向関係については水平面上において互いに直交するXY直交座標を用いて説明する。
【0035】
実装機本体2による部品の搭載前において基板PPには、半田ペーストのパターンが印刷されている。つまり、実装機本体2は、パターン形成装置により半田ペーストのパターンが印刷された基板PPに部品を搭載する。実装機本体2は、本体フレーム21と、コンベア23と、部品供給ユニット24と、ヘッドユニット25と、基板支持装置28とを備えている。
【0036】
本体フレーム21は、実装機本体2を構成する各部が配置される構造体であり、X軸方向及びY軸方向の両方向と直交する方向(鉛直方向)から見た平面視で略矩形状に形成されている。コンベア23は、X軸方向に延び、本体フレーム21に配置される。コンベア23は、基板PPをX軸方向に搬送する。コンベア23上を搬送される基板PPは、基板支持装置28におけるプッシュアップピン282の上方の所定位置に搬入されるとともに、前記所定位置から搬出される。
【0037】
前記所定位置に搬入された基板PPは、基板支持装置28によって位置決めされる。基板支持装置28は、
図4に示されるように、プッシュアッププレート281と、プッシュアップピン282と、昇降装置283とを含む。昇降装置283は、主に、エアシリンダなどにより上端が鉛直方向に昇降する支柱2831と、支柱2831の上端に略水平に固定された板状の固定台2832とを有し、本体フレーム21の所定の位置に設置されている。
【0038】
プッシュアッププレート281は、前記固定台2832に固定された平板状のプレートである。すなわち、プッシュアッププレート281は、固定台2832を介して本体フレーム21に配置されている。プッシュアッププレート281の上面には、プッシュアップピン282が立設状態で配置される。プッシュアッププレート281の上面は、平坦面であってもよいし、複数の凹部が形成されていてもよい。平坦面である場合には、プッシュアッププレート281の上面に直接的にプッシュアップピン282が立設状態で配置される。一方、複数の凹部が形成されている場合には、当該凹部に嵌め込まれた状態でプッシュアップピン282が配置される。
【0039】
プッシュアップピン282は、プッシュアッププレート281の上面に立設状態で配置されるピン状の部材である。プッシュアップピン282は、プッシュアッププレート281の上面に配置された状態において、先端部によって下方側から基板PPを支持する。プッシュアップピン282は、基板PPにおいて部品の搭載対象の搭載対象面PP2が上方を向いた状態で、その搭載対象面PP2とは反対の被支持面PP1を下方から支持する。この際、基板PPの被支持面PP1上に既搭載部品PTが配置されている場合が有り得る。プッシュアップピン282は、昇降装置283による固定台2832の昇降に応じたプッシュアッププレート281の昇降に基づいて、昇降可能である。すなわち、プッシュアップピン282は、プッシュアッププレート281上に配置された状態で、その先端部が基板PPの被支持面PP1に当接可能な当接位置と、当該当接位置よりも下方の退避位置との間で昇降可能である。プッシュアップピン282は、当接位置に配置された状態で基板PPを下方から支持し、退避位置に配置された状態で基板PPの支持を解除する。
【0040】
また、
図2に示されるように、本体フレーム21には、ピンステーション29が配置されている。ピンステーション29は、基板PPの支持に用いられていないプッシュアップピン282が、先端部とは反対の基端部を下にした立ち姿勢で格納される部分である。
【0041】
部品供給ユニット24は、本体フレーム21におけるY軸方向の両側のそれぞれの領域部分に、コンベア23を挟んで配置される。部品供給ユニット24は、本体フレーム21において、フィーダー24Fが複数並設された状態で装着される領域である。部品供給ユニット24は、後述のヘッドユニット25に備えられる搭載ヘッド251による保持対象の部品毎に、各フィーダー24Fのセット位置が区画されている。フィーダー24Fは、部品供給ユニット24に着脱自在に装着される。フィーダー24Fは、複数の部品を保持し、その保持した部品をフィーダー内に設定された所定の部品供給位置に供給できるものであれば特に限定されず、例えばテープフィーダーである。テープフィーダーは、部品を所定間隔おきに収納した部品収納テープが巻回されたリールを備え、そのリールから部品収納テープを送出することにより、部品を供給するように構成されたフィーダーである。
【0042】
ヘッドユニット25は、移動フレーム27に保持されている。本体フレーム21上には、Y軸方向に延びる固定レール261と、Y軸サーボモータ263により回転駆動されるボールねじ軸262とが配設されている。移動フレーム27は固定レール261上に配置され、この移動フレーム27に設けられたナット部分271がボールねじ軸262に螺合している。また、移動フレーム27には、X軸方向に延びるガイド部材272と、X軸サーボモータ274により駆動されるボールねじ軸273とが配設されている。このガイド部材272にヘッドユニット25が移動可能に保持され、このヘッドユニット25に設けられたナット部分がボールねじ軸273に螺合している。そして、Y軸サーボモータ263の作動により移動フレーム27がY軸方向に移動するとともに、X軸サーボモータ274の作動によりヘッドユニット25が移動フレーム27に対してX軸方向に移動するようになっている。すなわち、ヘッドユニット25は、移動フレーム27の移動に伴ってY軸方向に移動可能であり、且つ、移動フレーム27に沿ってX軸方向に移動可能である。
【0043】
ヘッドユニット25は、部品供給ユニット24とプッシュアップピン282に支持された基板PPとの間で移動可能であるとともに、プッシュアッププレート281とピンステーション29との間で移動可能である。ヘッドユニット25は、部品供給ユニット24と基板PPとの間で移動することにより、部品を基板PPに搭載する部品搭載動作を実行する。一の品種の基板PPに対する部品搭載動作が終了し、基板PPの品種が切り替えられるときには、ヘッドユニット25は、プッシュアッププレート281とピンステーション29との間で移動する。これにより、ヘッドユニット25は、ピンステーション29からプッシュアップピン282を取り出して、当該プッシュアップピン282をプッシュアッププレート281上に配置するピン配置動作を実行する。すなわち、ヘッドユニット25は、部品搭載動作とピン配置動作との2つの動作を実行する。なお、部品搭載動作用のヘッドユニットと、ピン配置動作用のヘッドユニットとを個別に設けるようにしてもよい。
【0044】
ヘッドユニット25は、
図3に示されるように、複数の搭載ヘッド251を備えている。搭載ヘッド251は、ヘッドユニット25のフレームに対して鉛直方向に昇降可能であるとともに、鉛直方向に延びるヘッド軸回りの回転が可能とされている。搭載ヘッド251は、前記部品搭載動作の実行時において、部品供給ユニット24から部品を取り出すとともに、その取り出した部品を基板PP上に搭載(実装)する。一方、前記ピン配置動作の実行時においては、各搭載ヘッド251は、ピンステーション29からプッシュアップピン282を取り出すとともに、その取り出したプッシュアップピン282をプッシュアッププレート281上に配置する。搭載ヘッド251には、その先端(下端)に吸着ノズル2511が装着されている。吸着ノズル2511としては、部品の吸着保持が可能な部品保持用のノズルと、プッシュアップピン282の吸着保持が可能なピン保持用のノズルとが存在する。吸着ノズル2511は、電動切替弁を介して負圧発生装置、正圧発生装置及び大気の何れかに連通可能とされている。つまり、吸着ノズル2511に負圧が供給されることで当該吸着ノズル2511による部品又はプッシュアップピン282の吸着保持(取り出し)が可能となり、その後、正圧が供給されることで当該部品又はプッシュアップピン282の吸着保持が解除される。
【0045】
実装機本体2は、
図2に示されるように、第1撮像部C1と、第2撮像部C2と、第3撮像部C3とを更に備えている。
【0046】
第1撮像部C1は、本体フレーム21上において部品供給ユニット24とコンベア23との間に設置され、例えばCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)やCCD(Charged-coupled device)等の撮像素子を備えた撮像カメラである。第1撮像部C1は、部品供給ユニット24からプッシュアップピン282により支持された基板PPへ向かってヘッドユニット25が移動している間において、搭載ヘッド251の吸着ノズル2511によって吸着保持された部品を、下方側から撮像して第1部品認識画像を取得する。第1撮像部C1により取得された第1部品認識画像は、吸着ノズル2511からの部品の落下の判定に用いられる。
【0047】
第2撮像部C2は、ヘッドユニット25に配置され、例えばCMOSやCCD等の撮像素子を備えた撮像カメラである。第2撮像部C2は、プッシュアップピン282により支持された基板PPの上面に付設されている各種マークを認識するために、当該マークを上方側から撮像する。第2撮像部C2による基板PP上のマークの認識によって、基板PPの原点座標に対する位置ずれ量が検知される。
【0048】
第3撮像部C3は、ヘッドユニット25に配置され、例えばCMOSやCCD等の撮像素子を備えた撮像カメラである。第3撮像部C3は、ヘッドユニット25による基板PPに対する部品の搭載直前において、吸着ノズル2511に吸着保持された部品を、側方から撮像して第2部品認識画像を取得する。第3撮像部C3により取得された第2部品認識画像は、吸着ノズル2511からの部品の落下の判定に用いられる。
【0049】
図1に示されるように、記憶装置4は、基板データ41を記憶する記憶部である。基板データ41は、例えば、基板三次元データ411と、部品三次元データ412と、ピン三次元データ413と、ピン配置位置データ414と、ピンずれ許容範囲のデータ415と、搭載ずれ許容範囲のデータ416とを含む。
【0050】
基板三次元データ411は、基板PPの三次元立体の形状情報を示すデータである。基板三次元データ411としては、例えば、基板PPの品種、X軸方向及びY軸方向の外形寸法、厚みなどが登録されている。
【0051】
部品三次元データ412は、基板PPの被支持面PP1に配置された既搭載部品PTの三次元立体の形状情報を示すデータである。部品三次元データ412としては、例えば、既搭載部品PTの種類、X軸方向及びY軸方向の外形寸法、厚みなどが登録されている。
【0052】
ピン三次元データ413は、プッシュアップピン282の三次元立体の形状情報を示すデータである。ピン三次元データ413は、例えば、プッシュアップピン282の外形を多数のドットの集合体として特定したデータである。
【0053】
ピン配置位置データ414は、ヘッドユニット25の部品搭載動作によって基板PPの搭載対象面PP2に部品を搭載する際における、当該基板PPを支持するプッシュアップピン282のプッシュアッププレート281上での配置位置の情報を示すデータである。ピン配置位置データ414においては、プッシュアップピン282のプッシュアッププレート281上での配置位置がXY座標を用いて示されている。すなわち、ピン配置位置データ414としては、プッシュアッププレート281上におけるプッシュアップピン282の配置位置を示すX座標及びY座標が登録されている。プッシュアップピン282のプッシュアッププレート281上での配置位置によって、プッシュアップピン282が基板PPを支持するときの被支持面PP1上での支持位置が決まる。
【0054】
ピンずれ許容範囲のデータ415は、プッシュアップピン282が基板PPを支持するときの支持位置のずれ量の許容範囲を示すデータである。このピンずれ許容範囲は、プッシュアップピン282のプッシュアッププレート281上での配置位置のずれ量の許容範囲と同じである。ピンずれ許容範囲のデータ415としては、基板PPの被支持面PP1において、ピン配置位置データ414で示される配置位置に対応したプッシュアップピン282による支持位置を基準支持位置とし、当該基準支持位置に対して、X軸方向のずれ量の許容最大値、Y軸方向のずれ量の許容最大値などが登録されている。
【0055】
搭載ずれ許容範囲のデータ416は、基板PPの被支持面PP1上における既搭載部品PTの搭載位置のずれ量の許容範囲を示すデータである。搭載ずれ許容範囲のデータ416としては、基板PPの被支持面PP1における、予め設定された基準搭載位置に対するX軸方向及びY軸方向のずれ量の許容最大値がそれぞれ登録されている。更に、搭載ずれ許容範囲のデータ416としては、既搭載部品PTの搭載姿勢のずれ量の許容範囲として、既搭載部品PTの鉛直軸回りの回転角度の許容最大値が登録されている。
【0056】
制御装置3は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。制御装置3は、CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、記憶装置4に記憶されている基板データ41を参照して、実装機本体2の各構成要素の動作を制御する。制御装置3は、
図1に示すように、主たる機能構成として、基板搬送制御部31と、ヘッド制御部32と、基板支持制御部33とを含む。
【0057】
ヘッド制御部32は、ヘッドユニット25のX軸方向及びY軸方向の移動動作、搭載ヘッド251の昇降動作及び回転動作を制御する。これにより、ヘッド制御部32は、ヘッドユニット25による部品搭載動作とピン配置動作との2つの動作を実行させる。
【0058】
ヘッドユニット25による部品搭載動作を実行させる際には、ヘッド制御部32は、搭載ヘッド251による吸着保持対象の部品を供給するフィーダー24Fのセット位置を特定し、当該セット位置に向けてヘッドユニット25が移動するように、ヘッドユニット25の移動動作を制御する。ヘッドユニット25が当該セット位置の直上に到着すると、ヘッド制御部32は、搭載ヘッド251の昇降動作及び回転動作を制御し、搭載ヘッド251に部品を吸着保持させる。次に、ヘッド制御部32は、搭載ヘッド251によって吸着保持された部品の、基板PPの搭載対象面PP2上における搭載位置を特定し、当該搭載位置に向けてヘッドユニット25が移動するように、ヘッドユニット25の移動動作を制御する。そして、ヘッドユニット25が基板PPにおける搭載対象面PP2上の搭載位置の直上に到着すると、ヘッド制御部32は、搭載ヘッド251により吸着保持された部品が搭載位置に搭載されるように、搭載ヘッド251の昇降動作及び回転動作を制御し、基板PPの搭載対象面PP2上に部品を搭載させる。
【0059】
一の品種の基板PPに対する部品搭載動作が終了し、基板PPの品種が切り替えられる際に、ヘッド制御部32は、記憶装置4に記憶されるピン配置位置データ414を参照し、ヘッドユニット25によるピン配置動作を実行させる。ヘッド制御部32は、ピンステーション29に向けて移動するようにヘッドユニット25の移動動作を制御する。ヘッドユニット25がピンステーション29に到着すると、ヘッド制御部32は、搭載ヘッド251の昇降動作及び回転動作を制御し、搭載ヘッド251にプッシュアップピン282を吸着保持させる。次に、ヘッド制御部32は、ピン配置位置データ414に基づいて、プッシュアッププレート281上におけるプッシュアップピン282の配置位置を特定し、当該配置位置に向けてヘッドユニット25が移動するように、ヘッドユニット25の移動動作を制御する。そして、ヘッドユニット25がプッシュアッププレート281上の配置位置の直上に到着すると、ヘッド制御部32は、搭載ヘッド251により吸着保持されたプッシュアップピン282が配置位置に配置されるように、搭載ヘッド251の昇降動作及び回転動作を制御する。これにより、プッシュアップピン282が、ピン配置位置データ414で示されるプッシュアッププレート281上の配置位置に配置される。
【0060】
基板支持制御部33は、基板支持装置28による基板PPの支持動作を制御する。具体的には、基板支持制御部33は、ピン配置位置データ414に基づいてプッシュアップピン282がプッシュアッププレート281上に配置された状態で、基板支持装置28による基板PPの支持動作を制御する。基板支持制御部33は、基板PPの搭載対象面PP2への部品の搭載時には、プッシュアップピン282による基板PPの被支持面PP1の支持が可能となるように、昇降装置283によってプッシュアップピン282を退避位置から当接位置へ上昇させる。また、基板支持制御部33は、基板PPの搭載対象面PP2への部品の搭載完了時には、プッシュアップピン282による基板PPの支持が解除されるように、昇降装置283によってプッシュアップピン282を当接位置から退避位置へ下降させる。
【0061】
基板搬送制御部31は、コンベア23による基板PPの搬送動作を制御する。具体的には、基板搬送制御部31は、昇降装置283によるプッシュアップピン282の退避位置から当接位置への上昇中に、基板PPがプッシュアップピン282の上方の所定位置に搬入されるように、コンベア23による基板PPの搬送動作を制御する。また、基板搬送制御部31は、昇降装置283によるプッシュアップピン282の当接位置から退避位置への下降中に、基板PPが前記所定位置から搬出されるように、コンベア23による基板PPの搬送動作を制御する。
【0062】
プッシュアップピン282によって基板PPを支持する際において、当該基板PPの被支持面PP1上に既搭載部品PTが配置されている場合には、プッシュアップピン282と既搭載部品PTとの干渉が生じないようにする必要がある。この場合、基板PPの被支持面PP1上において干渉の回避が可能なプッシュアップピン282による支持位置を特定し、当該支持位置に対応するようなプッシュアッププレート281上におけるプッシュアップピン282の配置を示すデータにピン配置位置データ414を更新する必要がある。このようなピン配置位置データ414の更新を支援するのが干渉確認装置5である。
【0063】
干渉確認装置5は、基板PPの被支持面PP1上の既搭載部品PTとプッシュアップピン282との干渉の確認に用いられる装置である。干渉確認装置5を用いた干渉の確認は、オペレータによって行われる。干渉確認装置5は、
図1に示されるように、演算処理部51と、表示部52と、操作部53と、データ取得部54とを備えている。演算処理部51は、例えばマイクロコンピュータによって構成され、各種の演算処理を実行するものである。演算処理部51は、機能構成として、図形データ作成部511と、表示制御部512と、距離算出部513と、反り量算出部514とを含む。この演算処理部51に表示部52、操作部53及びデータ取得部54が接続されている。
【0064】
干渉確認装置5について、
図1に加えて
図5~
図9を参照して説明する。
図5~
図8は、表示部52の表示画面7に図形データ6が表示された状態を示す図である。
図9は、演算処理部51の表示制御部512が実行する視点設定処理を説明する図である。
【0065】
操作部53は、キーボードやマウス、タッチパネル等によって構成され、オペレータによる各種指令やデータの入力に関する入力操作を受け付ける。
【0066】
表示部52は、例えば液晶ディスプレイ等によって構成される。表示部52は、後記の図形データ作成部511によって作成される図形データ6を表示画面7に表示するとともに、操作部53を用いたオペレータの入力操作を案内する領域を表示画面7に表示する。オペレータは、表示画面7に表示された図形データ6を見ることによって、基板PPの被支持面PP1上の既搭載部品PTとプッシュアップピン282との干渉を確認することができる。表示部52は、後記の表示制御部512によって制御される。
【0067】
データ取得部54は、図形データ作成部511が図形データ6を作成する際に必要な各種データを、記憶装置4から読み出して取得する。
【0068】
図形データ作成部511は、既搭載部品PTが配置された基板PPの被支持面PP1をプッシュアップピン282によって支持する際における、基板図形61とピン図形62と既搭載部品図形63とを含む図形データ6を作成する。基板図形61は、基板PPの三次元立体を投影図で表した図形である。基板図形61は、基板PPの被支持面PP1に対応した第1面611と、基板PPの搭載対象面PP2に対応した第2面612とを有している。ピン図形62は、基板PPの被支持面PP1を支持するときのプッシュアップピン282の三次元立体を投影図で表した図形である。既搭載部品図形63は、基板PPの被支持面PP1上における既搭載部品PTの三次元立体を投影図で表した図形である。図形データ6においては、基板図形61の第1面611に対して、ピン図形62の先端が当接するとともに、既搭載部品図形63が配置されている。
【0069】
図形データ作成部511は、記憶装置4に記憶された基板データ41に含まれている基板三次元データ411、部品三次元データ412、ピン三次元データ413、及び、更新前の基準のピン配置位置データ414に基づいて、図形データ6を作成する。図形データ作成部511は、基板三次元データ411に基づいて基板PPの形状を認識したうえで、その形状に従った基板図形61を作成する。また、図形データ作成部511は、ピン三次元データ413に基づいてプッシュアップピン282の形状を認識したうえで、その形状に従ったピン図形62を作成する。そして、図形データ作成部511は、基準のピン配置位置データ414に基づいて、基板図形61の第1面611に対するピン図形62の位置を特定する。また、図形データ作成部511は、部品三次元データ412に基づいて既搭載部品PTの形状を認識したうえで、その形状に従った既搭載部品図形63を作成する。そして、図形データ作成部511は、既搭載部品PTの搭載位置のデータに基づいて、基板図形61の第1面611における既搭載部品図形63の位置を特定する。
【0070】
図形データ6を構成する基板図形61、ピン図形62及び既搭載部品図形63は、三次元立体の形状の把握が容易な投影図であれば特に限定されるものではなく、中心投影図(透視投影図)及び平行投影図から選ばれる。平行投影図としては、軸測投影図などを含む垂直投影図や斜投影図などが挙げられる。
【0071】
図形データ作成部511によって作成された図形データ6は、表示部52の表示画面7に表示される。なお、通常、基板PPの被支持面PP1には複数の既搭載部品PTが配置され、当該基板PPは複数のプッシュアップピン282によって支持される。このため、
図5に示されるように、1つの図形データ6において、1つの基板図形61が存在し、ピン図形62及び既搭載部品図形63については複数存在している。
【0072】
表示制御部512は、表示部52を制御する。表示制御部512は、図形データ6においてピン図形62と既搭載部品図形63とが重なる干渉部位64が存在する場合、当該干渉部位64が表示画面7に表示されるように表示部52を制御する(
図6参照)。つまり、干渉部位64が存在する場合には、当該干渉部位64が表示画面7上に現れた状態で、三次元立体を投影図で表したピン図形62と基板図形61の第1面611上に配置された既搭載部品図形63とが、表示部52に表示される。
【0073】
このような、基板PP、プッシュアップピン282及び既搭載部品PTの三次元立体を投影図で表した各図形61,62,63によって構成される図形データ6は、既搭載部品PTが配置された基板PPの被支持面PP1をプッシュアップピン282によって支持するときにおける、プッシュアップピン282と既搭載部品PTとの位置関係を精緻に表現したものとなる。このため、表示部52に表示された図形データ6を見ることによって、オペレータは、プッシュアップピン282と既搭載部品PTとの干渉の有無を確認することができるとともに、干渉が発生する場合には、その干渉部位の詳細を、表示画面7に表示された図形データ6における干渉部位64を通じて精緻に確認することができる。
【0074】
表示制御部512は、図形データ6における干渉部位64が、当該干渉部位64以外の残余部位との区別が可能な特定の表示形態で表示画面7に表示されるように、表示部52を制御する。この際、表示制御部512は、前記特定の表示形態として干渉部位64の色が残余部位の色とは異なる特定色(例えば赤色)で表示されるように、表示部52を制御する構成であってもよい。図形データ6において干渉部位64が特定の表示形態で表示されることにより、表示画面7に表示された図形データ6において、干渉部位64と残余部位との区別が容易となり、干渉部位64の詳細をより容易に確認することができる。特に、干渉部位64の色が残余部位の色とは異なる特定色で表示されると、干渉部位64の確認の容易性がより顕著となる。
【0075】
具体的には、表示制御部512は、
図6に示されるように、干渉部位64に相当する部分をピン図形62から切り欠いた表示形態で当該干渉部位64が表示されるように、表示部52を制御する。この際、ピン図形62の切り欠き部分と既搭載部品図形63との境界線、すなわち、切り欠かれたピン図形62と干渉部位64との境界線を示す枠線が、残余部位の輪郭線との区別が可能となるように、特定の線種や太線で表示されてもよいし、前記特定色で表示されてもよい。なお、表示制御部512は、干渉部位64に相当する部分を既搭載部品図形63から切り欠いた表示形態で当該干渉部位64が表示されるように、表示部52を制御してもよい。また、表示制御部512は、
図7に示されるように、図形データ6において干渉部位64の全体が前記特定色で表示されるように、表示部52を制御する構成であってもよい。この際、
図8に示されるように、干渉部位64の輪郭線が、残余部位の輪郭線との区別が可能となるように、前記特定色とされることに加えて、特定の線種や太線で表示されてもよい。
【0076】
また、表示制御部512は、図形データ6の視点71の位置を設定する視点設定処理と、その設定した視点71から見た図形データ6が表示画面7に表示されるように表示部52を制御する表示制御処理とを実行する。表示制御部512は、視点設定処理において、表示画面7上で互いに直交する第1軸AX1及び第2軸AX2を回転軸として所定の角度ずつ回転させることにより、視点71を移動させる(
図9参照)。表示制御部512は、視点71を移動させることにより、図形データ6の視点71の位置を設定する。これにより、図形データ6における干渉部位64の有無の確認や、干渉部位64が存在する場合にはその精緻な確認が容易となるような視点71から見た図形データ6を、自動的に表示画面7に表示することができる。
【0077】
図10は、表示部52が指令入力案内領域72を含む表示画面7を表示した状態を示す図である。表示画面7上に表示される指令入力案内領域72は、操作部53を用いてオペレータが表示に関する各種指令の入力操作を行うときに、その入力操作を案内するための表示領域である。指令入力案内領域72は、視点変更案内領域721と、倍率変更案内領域722と、位置変更案内領域723とを含む。
【0078】
視点変更案内領域721は、オペレータによる操作部53を用いた視点71の位置の変更を指令する視点変更指令の入力操作を案内するための領域である。視点変更案内領域721に案内された入力操作によって操作部53を介して前記視点変更指令が入力された場合、表示制御部512は、視点設定処理において視点71の位置を、前記視点変更指令に応じた位置に設定する。これにより、オペレータは、操作部53を用いた入力操作によって手動で、表示画面7上における図形データ6の視点71の位置を変更することができる。
【0079】
倍率変更案内領域722は、表示画面7上の図形データ6の拡大及び縮小の倍率の変更を指令する倍率変更指令の入力操作を案内するための領域である。倍率変更案内領域722に案内された入力操作によって操作部53を介して前記倍率変更指令が入力された場合、表示制御部512は、表示制御処理において、図形データ6が前記倍率変更指令に応じた大きさで表示画面7に表示されるように、表示部52を制御する。これにより、オペレータは、操作部53を用いた入力操作によって手動で、表示画面7上における図形データ6の大きさを変更することができる。
【0080】
位置変更案内領域723は、表示画面7上の図形データ6の位置の変更を指令する位置変更指令の入力操作を案内するための領域である。位置変更案内領域723に案内された入力操作によって操作部53を介して前記位置変更指令が入力された場合、表示制御部512は、表示制御処理において、図形データ6が前記位置変更指令に応じた表示画面7上の位置に表示されるように、表示部52を制御する。これにより、オペレータは、操作部53を用いた入力操作によって手動で、表示画面7上における図形データ6の位置を変更することができる。
【0081】
実装機本体2においては、プッシュアップピン282のプッシュアッププレート281上での配置位置が、ピン配置位置データ414で示される配置位置に対してずれる場合がある。また、基板PPの被支持面PP1に対する既搭載部品PTの搭載位置についても、基準の搭載位置に対してずれる場合がある。
【0082】
図形データ作成部511は、上記のようなプッシュアップピン282の配置位置の位置ずれ、及び既搭載部品PTの搭載位置の位置ずれを想定した図形データ6を作成するように構成されていてもよい。この場合、図形データ作成部511は、データ取得部54が記憶装置4から取得するピンずれ許容範囲のデータ415と搭載ずれ許容範囲のデータ416とに基づいて、図形データ6を作成する。この場合の図形データ作成部511の動作、並びに表示制御部512の動作について、
図11及び
図12を参照して以下に説明する。
【0083】
まず、
図11に示される例について説明する。図形データ作成部511は、ピンずれ許容範囲のデータ415に基づいて、ピン図形62からのピンずれ許容範囲の領域を示し、且つピン図形62を囲むピンずれ枠図形62Aを作成する。更に、図形データ作成部511は、搭載ずれ許容範囲のデータ416に基づいて、基板図形61における第1面611上の既搭載部品図形63からの搭載ずれ許容範囲の領域を示し、且つ既搭載部品図形63を囲む搭載ずれ枠図形63Aを作成する。
【0084】
図形データ作成部511によってピンずれ枠図形62A及び搭載ずれ枠図形63Aが作成されると、表示制御部512は、ピンずれ枠図形62A及び搭載ずれ枠図形63Aが表示画面7に表示されるように表示部52を制御する。この場合、表示部52は、プッシュアップピン282による基板PPの支持位置が許容範囲内でずれた場合を表現したピンずれ枠図形62Aと、基板PPの被支持面PP1上における既搭載部品PTの搭載位置が許容範囲内でずれた場合を表現した搭載ずれ枠図形63Aとを、表示画面7に表示する。表示画面7に表示された各枠図形62A,63Aを見ることによって、オペレータは、プッシュアップピン282による支持位置のずれ量と干渉との関係性や、既搭載部品PTの搭載位置のずれ量と干渉の発生との関係性などを、簡単に確認することができる。
【0085】
なお、表示画面7に図形データ6が表示された状態において、操作部53を介した入力操作に基づいて、ピン図形62がピンずれ枠図形62Aの範囲内で移動可能であってもよい。同様に、操作部53を介した入力操作に基づいて、既搭載部品図形63が搭載ずれ枠図形63Aの範囲内で移動可能であってもよい。
【0086】
次に、
図12に示される例について説明する。図形データ作成部511は、ピンずれ許容範囲のデータ415と搭載ずれ許容範囲のデータ416とに基づいて、複数の図形データ6を作成する。複数の図形データ6は、それぞれ、基板図形61と、プッシュアップピン282による基板PPの支持位置がピンずれ許容範囲で異なる状態を示すピン図形62と、既搭載部品PTの搭載位置が搭載ずれ許容範囲で異なる状態を示す既搭載部品図形63と、を含む。すなわち、複数の図形データ6においては、基板図形61の第1面611に対して、ピンずれ許容範囲内でピン図形62の位置が異なっており、搭載ずれ許容範囲内で既搭載部品図形63の位置が異なっている。
【0087】
図形データ作成部511によって複数の図形データ6が作成されると、表示制御部512は、複数の図形データ6が連続的に表示画面7に表示されるように表示部52を制御する。この場合、表示部52は、プッシュアップピン282による基板PPの支持位置が許容範囲内でずれた場合や、基板PPの被支持面PP1上における既搭載部品PTの搭載位置が許容範囲内でずれた場合を表現した複数の図形データ6を、動画のように連続的に表示画面7に表示する。連続的に表示画面7に表示される複数の図形データ6を見ることによって、オペレータは、プッシュアップピン282による支持位置のずれ量と干渉との関係性や、既搭載部品PTの搭載位置のずれ量と干渉の発生との関係性などを、簡単に確認することができる。
【0088】
干渉確認装置5において、演算処理部51に含まれる距離算出部513は、図形データ6を構成するピン図形62と既搭載部品図形63との間の距離(マージン)を算出する。距離算出部513は、ピン図形62と既搭載部品図形63との間における、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの距離を算出する。距離算出部513は、ピン図形62と既搭載部品図形63とが重なる干渉部位64については、ピン図形62と既搭載部品図形63との間の距離として、「0.00mm」を算出する。
【0089】
既述の通り、1つの図形データ6には、複数のピン図形62と複数の既搭載部品図形63とが存在している。距離算出部513は、複数のピン図形62及び既搭載部品図形63について、操作部53を介した入力操作に基づいてピン図形62及び既搭載部品図形63が1つずつ選定された場合に、当該選定されたピン図形62と既搭載部品図形63との間の距離を算出する。また、図形データ作成部511によって複数の図形データ6が作成された場合には、距離算出部513は、複数の図形データ6の各々に対応して、ピン図形62と既搭載部品図形63との間の距離を算出する。距離算出部513は、ピン図形62と既搭載部品図形63との間の距離を算出すると、その算出結果を示す距離算出データ73(
図12参照)を生成する。
【0090】
距離算出部513によって距離算出データ73が生成されると、表示制御部512は、当該距離算出データ73が表示画面7に表示されるように表示部52を制御する(
図12参照)。なお、
図12の例では、連続的に表示画面7に表示される複数の図形データ6の各々に対応して、距離算出データ73が表示されている。表示画面7に表示される距離算出データ73を見ることによって、オペレータは、プッシュアップピン282と既搭載部品PTとの間の距離を、簡単に確認することができる。
【0091】
表示制御部512は、操作部53に入力される指令に応じて表示画面7の表示態様が切り替わるように表示部52を制御する構成であってもよい。
図13は、操作部53に全体表示指令及び個別表示指令が入力された場合における表示部52の表示態様を説明する図である。
図13の例では、表示部52は、全体表示指令領域74とピンリスト表示領域75とを含む表示画面7を表示している。
【0092】
全体表示指令領域74は、オペレータによる操作部53を用いた全体表示指令の入力操作を案内するための領域である。全体表示指令は、図形データ6における基板図形61の全体を表示画面7に表示させる指令である。全体表示指令領域74に対する入力操作によって操作部53を介して全体表示指令が入力された場合、表示制御部512は、図形データ6における基板図形61の全体が表示画面7に表示されるように表示部52を制御する。
【0093】
ピンリスト表示領域75は、1つの図形データ6における複数のピン図形62を一覧で示す領域である。ピンリスト表示領域75では、複数のピン図形62の各々の、基板図形61の第1面611に対する位置を示すX座標752及びY座標753が、番号751の順に並べられている。ピンリスト表示領域75において、例えば番号751の欄は、オペレータによる操作部53を用いた個別表示指令の入力操作を案内するための領域となる。個別表示指令は、図形データ6における1つのピン図形62の近傍領域を表示画面7に拡大表示させる指令である。ピンリスト表示領域75における1つの番号751を選定する入力操作によって操作部53を介して個別表示指令が入力された場合、表示制御部512は、図形データ6における1つのピン図形62の近傍領域が表示画面7に拡大表示されるように表示部52を制御する。
【0094】
上記のように、オペレータは、操作部53に対する入力操作によって手動で、基板図形61の全体を表示させることや、1つのピン図形62の近傍領域を拡大表示させることなどの表示態様の切り替えを行うことができる。
【0095】
既搭載部品PTが配置された基板PPには、当該既搭載部品PTの搭載工程やその後のリフロー工程などにおいて、反りが発生する場合がある。このような反りが発生した基板PPの被支持面PP1をプッシュアップピン282によって支持するときには、反りが無い平坦な基板PPを支持する場合には既搭載部品PTとの干渉が生じない箇所でも、干渉が発生し得る。
【0096】
そこで、干渉確認装置5において、演算処理部51に含まれる反り量算出部514は、基板PPの反りに関する基板反り量を算出する。反り量算出部514は、被支持面PP1側が内側に湾曲するように基板PPが反ることを想定し、基板PPの中心が最大反り量となり、その中心から外側に向かって均一に反りが発生するものとして、基板反り量を算出する。なお、反り量算出部514は、基板反り量に関する過去の実測値に基づいて、基板反り量を算出してもよい。反り量算出部514は、基板反り量を算出すると、その算出結果を示す反り量算出データ76(
図14参照)を生成する。
【0097】
反り量算出部514によって反り量算出データ76が生成されると、図形データ作成部511は、
図14に示される反り想定図形データ6Aを作成する。反り想定図形データ6Aは、基板反り量に応じて基板図形61を変形させた反り基板図形61Aと、ピン図形62と、反り基板図形61Aの第1面611上に位置する既搭載部品図形63とを含む図形データである。
【0098】
図形データ作成部511によって反り想定図形データ6Aが作成されると、距離算出部513は、反り想定図形データ6Aを構成するピン図形62と既搭載部品図形63との間の距離を算出し、その算出結果を示す距離算出データ73を生成する。
【0099】
表示制御部512は、反り想定図形データ6Aが表示画面7に表示されるように表示部52を制御する。この際、
図14に示されるように、表示制御部512は、反り想定図形データ6Aとともに、距離算出データ73と反り量算出データ76とが表示画面7に表示されるように表示部52を制御してもよい。
【0100】
表示部52に表示された反り想定図形データ6Aを見ることによって、オペレータは、基板反りが発生した場合におけるプッシュアップピン282と既搭載部品PTとの干渉の有無を確認することができるとともに、干渉が発生する場合には、その干渉部位の詳細を、表示画面7に表示された反り想定図形データ6Aにおける干渉部位64を通じて精緻に確認することができる。
【0101】
既述の通り、基板支持装置28における昇降装置283によるプッシュアップピン282の昇降中に、コンベア23によって基板PPが搬送される。この場合、プッシュアップピン282の昇降中、且つ基板PPの搬送中において、基板PPの被支持面PP1に配置された既搭載部品PTとプッシュアップピン282との干渉が生じ得る。
【0102】
干渉確認装置5は、プッシュアップピン282の昇降状態及び基板PPの搬送状態を想定して、その状態における既搭載部品PTとプッシュアップピン282との干渉の確認が可能となるように構成されていてもよい。この場合の具体的な構成について、
図15A及び
図15Bを参照して説明する。
図15Aは、基板PPの搬入時のプッシュアップピン282の上昇を想定し、表示部52が複数の図形データ6を連続的に表示する状態を示す図である。
図15Bは、基板PPの搬出時のプッシュアップピン282の下降を想定し、表示部52が複数の図形データ6を連続的に表示する状態を示す図である。
【0103】
図形データ作成部511は、基板PPの搬送状態を示す基板図形61と、プッシュアップピン282の昇降状態を示すピン図形62と、基板図形61の第1面611に配置された既搭載部品図形63とをそれぞれ含む複数の図形データ6を作成する。
【0104】
図15Aの例では、図形データ作成部511は、基板PPがプッシュアップピン282の上方の所定位置に搬入されるときの搬送状態を示す基板図形61と、プッシュアップピン282が退避位置から当接位置へ上昇するときの状態を示すピン図形62とを含む複数の図形データ6を作成する。
【0105】
プッシュアップピン282の上昇中における基板PPの搬入を想定した複数の図形データ6が図形データ作成部511によって作成されると、距離算出部513は、複数の図形データ6の各々に対応して、ピン図形62と既搭載部品図形63との間の距離を算出する。そして、距離算出部513は、その算出結果に基づいて、ピン上昇開始推奨データ77を生成する。ピン上昇開始推奨データ77は、基板PPの搬入時における既搭載部品PTとプッシュアップピン282との干渉の回避が可能となるような、基板PPの搬入開始後におけるプッシュアップピン282の上昇開始タイミングに関する推奨値を示すデータである。具体的には、ピン上昇開始推奨データ77は、基板PPの搬入開始後におけるプッシュアップピン282の上昇開始タイミングの推奨値を規定したデータである。すなわち、基板PPの搬入が開始された後に、ピン上昇開始推奨データ77で示される上昇開始タイミングでプッシュアップピン282の上昇が開始されることにより、基板PPの搬入時における既搭載部品PTとプッシュアップピン282との干渉の回避が可能となる。
【0106】
表示制御部512は、図形データ作成部511により作成された複数の図形データ6が連続的に表示画面7に表示されるように表示部52を制御する。この際、
図15Aに示されるように、表示制御部512は、図形データ6とともに、ピン上昇開始推奨データ77が表示画面7に表示されるように表示部52を制御してもよい。
【0107】
表示制御部512により制御された表示部52は、基板PPの搬入状態及びプッシュアップピン282の上昇状態を表現した複数の図形データ6を、動画のように連続的に表示画面7に表示する。連続的に表示画面7に表示される複数の図形データ6を見ることによって、オペレータは、プッシュアップピン282の上昇中において基板PPが搬入される際における、その基板PPの搬入開始後のプッシュアップピン282の上昇開始タイミングと干渉の発生との関係性などを、簡単に確認することができる。
【0108】
一方、
図15Bの例では、図形データ作成部511は、基板PPが所定位置から搬出されるときの搬送状態を示す基板図形61と、プッシュアップピン282が当接位置から退避位置へ下降するときの状態を示すピン図形62とを含む複数の図形データ6を作成する。
【0109】
プッシュアップピン282の下降中における基板PPの搬出を想定した複数の図形データ6が図形データ作成部511によって作成されると、距離算出部513は、複数の図形データ6の各々に対応して、ピン図形62と既搭載部品図形63との間の距離を算出する。そして、距離算出部513は、その算出結果に基づいて、搬出開始推奨データ78を生成する。搬出開始推奨データ78は、基板PPの搬出時における既搭載部品PTとプッシュアップピン282との干渉の回避が可能となるような、基板PPの搬出開始タイミングに関する推奨値を示すデータである。具体的には、搬出開始推奨データ78は、基板PPの搬出開始タイミングの推奨値を、プッシュアップピン282の当接位置からの下降量を示すピン下降量によって規定したデータである。すなわち、プッシュアップピン282が搬出開始推奨データ78で示されるピン下降量に応じて下降したタイミングで、基板PPの搬出が開始されることにより、基板PPの搬出時における既搭載部品PTとプッシュアップピン282との干渉の回避が可能となる。
【0110】
表示制御部512は、図形データ作成部511により作成された複数の図形データ6が連続的に表示画面7に表示されるように表示部52を制御する。この際、
図15Bに示されるように、表示制御部512は、図形データ6とともに、搬出開始推奨データ78が表示画面7に表示されるように表示部52を制御してもよい。
【0111】
表示制御部512により制御された表示部52は、基板PPの搬出状態及びプッシュアップピン282の下降状態を表現した複数の図形データ6を、動画のように連続的に表示画面7に表示する。連続的に表示画面7に表示される複数の図形データ6を見ることによって、オペレータは、プッシュアップピン282の下降中において基板PPが搬出される際における、その基板PPの搬出開始のタイミングと干渉の発生との関係性などを、簡単に確認することができる。
【0112】
プッシュアップピン282と基板PPとの水平方向(X軸方向及びY軸方向)に関する位置関係は、一定であるとは限らない。例えば、基板PPがプッシュアップピン282の上方の所定位置に搬入される際に、基板PPの停止位置にずれが生じる場合がある。この場合、プッシュアップピン282に対する基板PPの水平方向の相対位置が一定とはならない。
【0113】
干渉確認装置5は、基板PPの停止位置のずれを想定して、その状態における既搭載部品PTとプッシュアップピン282との干渉の確認が可能となるように構成されていてもよい。この場合の具体的な構成について、
図16を参照して説明する。
図16は、ピン図形62に対して基板図形61を移動させた場合の図形データ6における干渉部位64の表示態様を示す図である。
【0114】
図形データ作成部511は、ピン図形62に対する基板図形61の水平方向(X軸方向及びY軸方向)の相対位置が異なる複数の図形データ6を作成する。この際、図形データ作成部511は、基板図形61と既搭載部品図形63との位置関係については一定に維持しつつ、ピン図形62に対する基板図形61の相対位置が異なる複数の図形データ6を作成する。具体的に、図形データ作成部511は、ピン図形62に対して基板図形61を、X軸方向及びY軸方向に移動させるとともに鉛直軸回りに回転移動させることにより、ピン図形62に対する基板図形61の相対位置が異なる複数の図形データ6を作成する。
【0115】
ピン図形62に対する基板図形61の相対位置が異なる複数の図形データ6が図形データ作成部511によって作成されると、距離算出部513は、複数の図形データ6の各々に対応して、ピン図形62と既搭載部品図形63との間の距離を算出する。そして、距離算出部513は、その算出結果に基づいて、干渉リストデータ79を生成する。干渉リストデータ79は、ピン図形62と既搭載部品図形63とが重なる場合(算出距離が0.00mmの場合)における、ピン図形62に対する基板図形61の移動量を一覧で示すデータである。具体的には、干渉リストデータ79は、互いに重なるピン図形62及び既搭載部品図形63を特定するための情報となるピン識別番号793と部品搭載位置794とが、ピン図形62に対する基板図形61の移動量を示す基板移動量792と関連付けられた状態で、番号791の順に並べられたデータである。
【0116】
表示制御部512は、図形データ作成部511により作成された複数の図形データ6において、基板図形61の第1面611上の既搭載部品図形63とピン図形62とが重なる干渉部位64が存在する場合、当該干渉部位64が表示画面7に表示されるように表示部52を制御する。この際、
図16に示されるように、表示制御部512は、図形データ6とともに、干渉リストデータ79が表示画面7に表示されるように表示部52を制御する。
【0117】
表示画面7に表示された干渉リストデータ79において、例えば番号791の欄は、オペレータによる操作部53を用いた干渉部位表示指令の入力操作を案内するための領域となる。干渉部位表示指令は、干渉リストデータ79で示される、互いに重なるピン図形62及び既搭載部品図形63の近傍領域である干渉部位64を、表示画面7に表示させる指令である。干渉リストデータ79における1つの番号791を選定する入力操作によって操作部53を介して干渉部位表示指令が入力された場合、表示制御部512は、干渉リストデータ79において選定された番号791に対応したピン図形62と既搭載部品図形63との干渉部位64が表示画面7に表示されるように表示部52を制御する。
【0118】
表示画面7に表示される干渉部位64を見ることによって、オペレータは、基板PPの停止位置のずれなどに起因してプッシュアップピン282に対する基板PPの水平方向の相対位置が変化した場合における、プッシュアップピン282と既搭載部品PTとの干渉の有無を確認することができるとともに、干渉が発生する場合には、その干渉部位の詳細を、表示画面7に表示された図形データ6における干渉部位64を通じて精緻に確認することができる。
【0119】
オペレータは、干渉確認装置5を用いてプッシュアップピン282と既搭載部品PTとの干渉を確認することによって、基板PPの被支持面PP1上において干渉の回避が可能なプッシュアップピン282による支持位置を特定することができる。そして、オペレータは、特定した支持位置に対応するようなプッシュアッププレート281上におけるプッシュアップピン282の配置を示すデータにピン配置位置データ414を更新することができる。なお、干渉確認装置5が、基板PPの被支持面PP1上において干渉の回避が可能なプッシュアップピン282による支持位置を特定し、ピン配置位置データ414を自動的に更新するように構成されていてもよい。
【0120】
ピン配置位置データ414が更新されると、その更新後のピン配置位置データ414に基づいて、ヘッドユニット25は、プッシュアップピン282をプッシュアッププレート281上に配置するピン配置動作を実行する。これにより、プッシュアップピン282を、既搭載部品PTとの干渉を回避可能な位置に自動配置することができる。
【0121】
以上、本発明の実施形態に係る干渉確認装置5及び実装機1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0122】
上記の実施形態では、干渉確認装置5が実装機1に適用される構成について説明したが、この構成に限定されない。干渉確認装置5は、例えば、基板PPに半田ペーストのパターンを印刷する、処理機の一例であるパターン形成装置に適用されてもよい。この場合、干渉確認装置5は、パターンの形成対象の基板PPを支持するプッシュアップピン282と、基板PPの被支持面PP1に配置された既搭載部品PTとの干渉の確認に用いられる。
【符号の説明】
【0123】
1 実装機(処理機)
2 実装機本体(処理部)
28 基板支持装置
281 プッシュアッププレート
282 プッシュアップピン
5 干渉確認装置
51 演算処理部
511 図形データ作成部
512 表示制御部
513 距離算出部
514 反り量算出部
52 表示部
53 操作部
54 データ取得部
6 図形データ
6A 反り想定図形データ
61 基板図形
61A 反り基板図形
62 ピン図形
62A ピンずれ枠図形
63 既搭載部品図形
63A 搭載ずれ枠図形
64 干渉部位
7 表示画面
71 視点