(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】コンクリートの養生方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
E04G21/02 104
(21)【出願番号】P 2020200557
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾口 佳丈
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昇
(72)【発明者】
【氏名】岡山 誠
(72)【発明者】
【氏名】増村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】金戸 崇史
(72)【発明者】
【氏名】坂井 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖
(72)【発明者】
【氏名】林 健二
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-010508(JP,A)
【文献】特開2004-339883(JP,A)
【文献】特開平10-121731(JP,A)
【文献】特開平02-190572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
C04B 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの養生方法であって、
外周に孔を有する有孔管をコンクリート打設領域に配置し、
前記有孔管にゲル状物を充填した状態で前記コンクリート打設領域にコンクリートを打設して前記有孔管の前記孔を前記コンクリートで覆い、
前記コンクリートの打設後、前記有孔管から前記ゲル状物を除去し、前記有孔管に水を供給して前記孔から前記コンクリートに水を浸透させる、
コンクリートの養生方法。
【請求項2】
前記有孔管を、前記コンクリートの打設によって形成される打継面から所定の離隔で前記打継面に沿うように配置する、
請求項
1に記載のコンクリートの養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の構築では、打設されたコンクリートにおける表面の乾燥を防止するために、コンクリートの表面を湿潤状態に保つ湿潤養生を施すことがある。特許文献1には、コンクリートの表面に散水管を設置し、散水管から散水してコンクリートの表面を湿潤状態に保つ養生方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される養生方法では、コンクリートの表面に散水管が設置される。そのため、コンクリートの表面近傍で架台を組立てる等の作業を行う際に、散水管を避けて作業を行わなければならない。また、散水された水がコンクリートの表面に溜まるため、コンクリートの表面近傍で作業を行う際に、作業員の足元が不安定になったり作業器機が濡れて故障したりするおそれがある。その結果、コンクリートの表面近傍における作業の効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、コンクリートの表面近傍での作業性を確保しつつコンクリートの表面を湿潤状態に保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリートの養生方法であって、外周に孔を有する有孔管をコンクリート打設領域に配置し、前記有孔管にゲル状物を充填した状態で前記コンクリート打設領域にコンクリートを打設して前記有孔管の前記孔を前記コンクリートで覆い、前記コンクリートの打設後、前記有孔管から前記ゲル状物を除去し、前記有孔管に水を供給して前記孔から前記コンクリートに水を浸透させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンクリートの表面近傍での作業性を確保しつつコンクリートの表面を湿潤状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る養生方法を用いて養生されるコンクリート構造体の断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るコンクリートの養生方法を説明するための図であり、
図1に示すII部に対応して示す。
【
図3】
図2(a)に示されるコンクリート構造体を鉛直上方から見た図である。
【
図4】(a)は、本発明の第2実施形態に係る養生方法を用いて養生されるコンクリート構造体の平面図であり、(b)は、
図4(a)に示すIVB-IVB線に沿う断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るコンクリートの養生方法を説明するための図である。
【
図6】
図5(a)に示すVI-VI線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るコンクリートの養生方法について、図面を参照して説明する。
【0010】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るコンクリートの養生方法について説明する。
図1は、コンクリート構造体100の断面図である。ここでは、コンクリート構造体100がダムの堤体である場合について説明するが、コンクリート構造体100は、コンクリート橋脚やコンクリート壁等であってもよい。
【0011】
図1に示すように、コンクリート構造体100の内部には、放流路2及び監査廊3が設けられる。コンクリート構造体100の構築方法では、まず、コンクリートを一定の高さ毎(例えば、0.75m~2.0m毎)に打継面を設けながら打設を繰り返し所定の高さまで打設する。打継面では、コンクリート打設の中断後にレイタンスの除去を行い一定の高さ(例えば、0.75m~2.0m)の新たなコンクリートを打設する。所定の高さまでコンクリートを打設した後、新たなコンクリートの打設を比較的長期に一旦停止した状態で、コンクリートの表面(打継面)の上方に放流管2aを不図示の架台を介して据付ける。その後、放流管2aの外側の領域にコンクリートを打設し、放流管2aの周囲をコンクリートで覆う。これにより、放流管2aの内部が放流路2として確保され、放流路2が形成される。監査廊3は、放流路2と同様に形成される。
【0012】
コンクリートの打継面上で架台を組立てる等の作業を行う場合には、コンクリートの打設を停止するため、打継面は露出した状態で長期間(例えば3~6か月)放置される。放置時に打継面が乾燥すると、水が不足して水和反応が中断し、コンクリートの強度が発現しないおそれがある。このような理由から、コンクリートの打継面を湿潤状態に保つことが求められている。
【0013】
コンクリートの打継面を湿潤状態に保つ方法として、打継面の上方に散水管(ホース)を設置し散水管(ホース)から散水することが考えられる。この場合には、打継面上で作業を行う際に、散水管(ホース)を避けて作業を行わなければならない。また、散水された水が打継面に溜まるため、コンクリートの打継面上で作業を行う際に、作業員の足元が不安定になったり作業器機が濡れて故障したりするおそれがある。その結果、コンクリートの打継面上での作業の効率が低下するおそれがある。加えて、打継面に新たなコンクリートを打設する前に、散水により打継面上に溜まった水を拭き取る必要があり、コンクリート構造体100の工期が長くなる。
【0014】
本実施形態では、後述するように、打設されたコンクリートの内部から有孔管30を用いて水を浸透させてコンクリートの打継面を湿潤状態に保つ。そのため、打継面の上方への管の設置や打継面への散水が不要になり、打継面上での作業性を確保しつつ打継面を湿潤状態に保つことができる。また、散水によらずに打継面を湿潤状態に保つことができるため、打継面に新たなコンクリートを打設する前に水を拭き取る作業が不要になり、コンクリート構造体100の工期を短縮することができる。
【0015】
図2及び
図3を参照して、本実施形態に係るコンクリートの養生方法について詳述する。ここでは、打設済コンクリート10の上に新たに打設されるコンクリート20を養生する場合について説明する。
【0016】
図2(a)~(d)は、コンクリート20の養生方法を説明するための図であり、
図1に示すII部に対応して示す。なお、
図2(a)及び(b)において、2点鎖線は、コンクリート打設領域の上端面、すなわち新たなコンクリート20の打設によって形成される打継面20aを示す。
【0017】
まず、
図2(a)に示すように、打設済コンクリート10上に型枠21を配置してコンクリート打設領域を画定する。また、外周に孔31を有する有孔管30をコンクリート打設領域に配置する。有孔管30は、新たなコンクリート20の打設によって形成される打継面20aに沿うように不図示の架台や鉄筋を介して配置される。
【0018】
図3は、
図2(a)に示されるコンクリート構造体100を鉛直上方から見た図である。
図3に示すように、有孔管30は、有孔管30の両方の端部32,33がコンクリート打設領域の外側に位置するように配置される。
【0019】
図3では、有孔管30を上流側と下流側で交互に折り返して一続きとした例が示されているが、有孔管30を他の態様で配置してもよい。例えば、有孔管30を左岸側と右岸側で交互に折り返して一続きとした状態で配置してもよいし、複数の有孔管30を互いに間隔を空けて並列に配置してもよい。
【0020】
有孔管30は、コンクリート打設領域へ打設されるコンクリート20によって覆われるが、有孔管30が中空の状態でコンクリート20を打設すると、有孔管30の孔31からコンクリート20が流入し、有孔管30がコンクリート20によって閉塞されるおそれがある。
【0021】
そこで、本実施形態では、
図2(b)に示すように、コンクリート20を打設する前に有孔管30にゲル状物40を充填する。具体的には、有孔管30の端部32からゲル状物40を供給し、有孔管30の全体にゲル状物40が行き渡った後、有孔管30の端部32,33(
図3参照)を閉塞する。端部32,33は、例えば不図示のプラグにより閉塞される。ゲル状物40は、例えば、ベントナイトを主成分として水ガラス溶液を混合させた可塑性物である。
【0022】
ゲルは、分散系の一種で、液体分散媒のコロイドに分類される固体状のものをいう。ゲルは、分散質のネットワークにより高い粘性を持ち流動性を失い、系全体としては固体状である。ゲルは、固体分散媒のコロイドであるソリッドゾルを含む。
【0023】
次に、
図2(c)に示すように、コンクリート打設領域に新たなコンクリート20を打設し、有孔管30の孔31をコンクリート20で覆う。コンクリート20は、有孔管30にゲル状物40が充填された状態で打設されるため、コンクリート20が有孔管30の孔31から流入するのを防止することができる。したがって、コンクリート20による有孔管30の閉塞を防止することができる。
【0024】
次に、
図2(d)に示すように、有孔管30からゲル状物40を除去する。具体的には、有孔管30の端部32,33(
図3参照)を開放し、有孔管30の端部32を水槽34に接続する。不図示のモータを用いてポンプ35を駆動し、水槽34から水を有孔管30に供給する。その結果、ゲル状物40は、水圧により有孔管30の端部33から押し出される。
【0025】
次に、有孔管30の端部33(
図3参照)を閉塞すると共に、有孔管30へ水を供給して孔31からコンクリート20に浸透させる。コンクリート20に浸透した水は、毛細管現象により上昇して打継面20aに導かれる。したがって、コンクリート20の打継面20aの上方への管の設置や打継面20aへの散水が不要になり、コンクリート20の打継面20a上での作業性を確保しつつコンクリート20の打継面20aを湿潤状態に保つことができる。
【0026】
毛細管現象による液面の上昇高さは、液体の表面張力、壁面の濡れやすさ、液体の密度及び細管の内径によって決まり、コンクリートにおける毛細管現象による水の上昇高さは25cm程度である。そのため、有孔管30は、コンクリート20の打継面20aから下方に所定の離隔で、例えば25cm以下の範囲で配置されることが好ましい。この場合には、有孔管30内の水を打継面20aに到達させることができ、コンクリート20の打継面20aをより湿潤状態に保つことができる。また、有孔管30は打継面20aから下方に3cm以上の範囲で配置させることが好ましい。
【0027】
図示を省略するが、コンクリート20の打継面20a上での架台組立作業等の完了後、コンクリート20の打継面20a上に更にコンクリートを打設する。このとき、打継面20aは、散水によらずに湿潤状態に保たれているため、打継面20aに水が溜まっておらず、水を拭き取る作業が不要である。したがって、コンクリート構造体100の工期を短縮することができる。
【0028】
次に、有孔管30への水の供給を停止し、有孔管30に不図示のグラウトを充填する。以上により、コンクリート20の養生を終了する。
【0029】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0030】
本実施形態では、コンクリート20の打設によって形成される打継面20aに沿うように有孔管30を配置し、コンクリート20を打設して有孔管30の孔31をコンクリート20で覆い、有孔管30に水を供給して孔31からコンクリート20に水を浸透させる。コンクリート20に浸透した水は、毛細管現象により上昇して打継面20aに導かれる。したがって、打継面20aの上方への管の設置や打継面20aへの散水が不要になり、打継面20a上での作業性を確保しつつ打継面20aを湿潤状態に保つことができる。
【0031】
また、本実施形態では、有孔管30にゲル状物40を充填した状態でコンクリート打設領域に新たなコンクリート20を打設する。そのため、有孔管30の孔31からコンクリート20が流入するのを防止することができ、コンクリート20による有孔管30の閉塞を防止することができる。したがって、有孔管30に水を行き渡らせることができ、コンクリート20の打継面20aをより湿潤状態に保つことができる。
【0032】
上記実施形態では、有孔管30をコンクリート打設領域に配置した後にゲル状物40を有孔管30に充填しているが、ゲル状物40を有孔管30に充填した状態で有孔管30をコンクリート打設領域に配置してもよい。つまり、コンクリート20の打設時にゲル状物40が有孔管30に充填されていればよい。
【0033】
ゲル状物40の除去において、有孔管30へ薬品を供給しゲル状物40を溶かしてもよい。ただし、この場合には、コンクリート20が薬品により変質するおそれがある。上記実施形態のように水圧によりゲル状物40を除去する場合には、有孔管30への薬品の供給が不要になり、コンクリート20が薬品により変質するのを防止することができる。
【0034】
<第2実施形態>
次に、
図4から
図6を参照して、本発明の第2実施形態に係るコンクリートの養生方法について説明する。
図4(a)は、コンクリート構造体200の平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示すIVB-IVB線に沿う断面図である。
図4(a)及び
図4(b)では、
図1に示す放流路2及び監査廊3の図示を省略している。
【0035】
図4(a)及び(b)に示すように、コンクリート構造体200は、上流側から見て左側に構築される左岸側堤体201と、右側に構築される右岸側堤体202と、を備えている。コンクリート構造体200の構築方法では、まず、左岸側堤体201を構築し、その後、左岸側堤体201の右側面201aに隣接して右岸側堤体202を構築する。つまり、左岸側堤体201の右側面201aは、打継面である。
【0036】
右岸側堤体202の構築は、左岸側堤体201の構築完了から十分な時間が経過した後(例えば3年後)に開始される。そのため、左岸側堤体201の右側面201aは露出した状態で長期間放置される。放置時に右側面201aが乾燥すると、水が不足して水和反応が中断し、左岸側堤体201におけるコンクリートの強度が発現しないおそれがある。このような理由から、左岸側堤体201の右側面201aを湿潤状態に保つことが求められている。
【0037】
左岸側堤体201の右側面201aを湿潤状態に保つ方法として、右側面201aの右方に散水管を設置し散水管から散水することが考えられる。この場合には、右岸側堤体202の構築作業を左岸側堤体201の右側面201aの近傍で行う際に、散水管を避けて作業を行わなければならない。また、散水された水が左岸側堤体201の右側面201aを伝って流れ落ち地盤上に溜まるため、右岸側堤体202の構築作業を行う際に、作業員の足元が不安定になったり作業器機が濡れて故障したりするおそれがある。その結果、右岸側堤体202の構築作業の効率が低下するおそれがある。
【0038】
本実施形態では、後述するように、左岸側堤体201におけるコンクリートの内部から水を浸透させて左岸側堤体201の右側面201aを湿潤状態に保つ。そのため、右側面201aの右方への管の設置や右側面201aへの散水が不要になり、右側面201aの近傍での作業性を確保しつつ右側面201aを湿潤状態に保つことができる。
【0039】
図5及び
図6を参照して、本実施形態に係るコンクリートの養生方法について詳述する。ここでは、地盤上に打設され左岸側堤体201の一部となるコンクリート220を養生する場合について説明する。
【0040】
図5(a)~(d)は、コンクリート220の養生方法を説明するための図であり、
図4に示すV-V線に沿う断面に対応して示す。
【0041】
コンクリート220の養生方法では、まず、
図5(a)に示すように、中央枠体261aを左岸から離して地盤上に配置し、上流側枠体261bを左岸と中央枠体261aとの間に渡って配置し、不図示の下流側枠体を左岸と中央枠体261aとの間に渡って上流側枠体261bよりも下流側に配置する。左岸、中央枠体261a、上流側枠体261b及び下流側枠体によって、コンクリート220を打設するためのコンクリート打設領域が画定される。中央枠体261a、上流側枠体261b及び下流側枠体は、それぞれ、左岸側堤体201の右側面201a(
図4参照)、上流側面及び下流側面を形成する側面形成型枠である。
【0042】
また、外周に孔31を有する有孔管30を中央枠体261aに沿って配置する。
図6は、
図5(a)に示されるVI-VI線に沿う断面図である。
図6において、2点鎖線は、コンクリート打設領域の上端面、すなわちコンクリート220の打設によって形成される打継面220aを示す。
図6に示すように、有孔管30は、有孔管30の両方の端部32,33がコンクリート打設領域の外側に位置するように配置される。
【0043】
図6では、有孔管30を上流側と下流側で交互に折り返して一続きとした例が示されているが、有孔管30を他の態様で配置してもよい。例えば、有孔管30を上側と下側で交互に折り返して一続きとした状態で配置してもよいし、複数の有孔管30を互いに間隔を空けて並列に配置してもよい。
【0044】
次に、
図5(b)に示すように、有孔管30にゲル状物40を充填する。具体的には、有孔管30の端部32からゲル状物40を供給し、有孔管30の全体にゲル状物40が行き渡った後、有孔管30の端部32,33(
図6参照)を閉塞する。端部32,33は、例えば不図示のプラグにより閉塞される。ゲル状物40は、例えば、ベントナイトを主成分として水ガラス溶液を混合させた可塑性物である。
【0045】
次に、
図5(c)に示すように、コンクリート打設領域にコンクリート220を打設し、有孔管30の孔31をコンクリート220で覆う。コンクリート220は、有孔管30にゲル状物40が充填された状態で打設されるため、コンクリート220が有孔管30の孔31から流入するのを防止することができる。したがって、コンクリート220による有孔管30の閉塞を防止することができる。
【0046】
次に、
図5(d)に示すように、有孔管30からゲル状物40を除去する。具体的には、有孔管30の端部32,33(
図6参照)を開放し、有孔管30の端部32を水槽34に接続する。不図示のモータを用いてポンプ35を駆動し、水槽34から水を有孔管30に供給する。その結果、ゲル状物40は、水圧により有孔管30の端部33から押し出される。
【0047】
次に、有孔管30の端部33(
図3参照)を閉塞すると共に、有孔管30へ水を供給して孔31からコンクリート220に水を浸透させる。コンクリート20に浸透した水は、毛細管現象により右側面201aに導かれる。したがって、左岸側堤体201の右側面201aの右方への管の設置や右側面201aへの散水が不要になり、左岸側堤体201の右側面201aの近傍での作業性を確保しつつ左岸側堤体201の右側面201aを湿潤状態に保つことができる。
【0048】
有孔管30は、コンクリート220の打継面となる右側面201aから左岸側に所定の離隔で、例えば25cm以下の範囲で配置されることが好ましい。この場合には、有孔管30内の水を右側面201aに到達させることができ、コンクリート220の右側面201aをより湿潤状態に保つことができる。また、有孔管30は打継面となる右側面201aから左岸側に3cm以上の範囲で配置させることが好ましい。
【0049】
図示を省略するが、コンクリート220の硬化後、中央枠体261a、上流側枠体261b及び下流側枠体を上方にスライドさせて新たなコンクリート打設領域をコンクリート220上に画定し、新たなコンクリートをコンクリート220上に打設する。コンクリート打設領域の画定、及びコンクリートの打設を繰り返すことにより、左岸側堤体201におけるコンクリートの打設が完了する。コンクリート打設領域を画定する毎に新たな有孔管30を中央枠体261aに沿って配置し、コンクリートの打設後に新たな有孔管30に水を供給することにより、左岸側堤体201の右側面201aの全体を養生することができる。
【0050】
左岸側堤体201におけるコンクリートの打設完了後、中央枠体261a、上流側枠体261b及び下流側枠体を撤去し、左岸側堤体201の右側面201aに隣接するように右岸側堤体202(
図4参照)を構築する。右岸側堤体202の構築後、有孔管30への水の供給を停止し、有孔管30に不図示のグラウトを充填する。以上により、コンクリート220の養生を終了する。
【0051】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0052】
本実施形態では、コンクリート220の打設によって形成される打継面となる右側面201aに沿うように有孔管30を配置し、コンクリート220を打設して有孔管30の孔31をコンクリート220で覆い、有孔管30に水を供給して孔31からコンクリート220に水を浸透させる。コンクリート220に浸透した水は、毛細管現象により右側面201aに導かれる。したがって、右側面201aの右方への管の設置や右側面201aへの散水が不要になり、右側面201a近傍での作業性を確保しつつ右側面201aを湿潤状態に保つことができる。
【0053】
また、本実施形態では、有孔管30にゲル状物40を充填した状態でコンクリート打設領域に新たなコンクリート220を打設する。そのため、有孔管30の孔31からコンクリート220が流入するのを防止することができ、コンクリート220による有孔管30の閉塞を防止することができる。したがって、有孔管30に水を行き渡らせることができ、コンクリート220の右側面201aをより湿潤状態に保つことができる。
【0054】
上記の実施形態では、左岸側堤体201を構築した後に右岸側堤体202を構築する場合について説明したが、本発明は、右岸側堤体202を構築した後に左岸側堤体201を構築する場合についても適用可能である。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0056】
上記の実施形態では、コンクリート20の打継面20a(
図2参照)又はコンクリート220の右側面201a(
図5参照)を養生する場合について説明した。本発明は、新たなコンクリートを打継ぐことのない打設済コンクリートの表面の養生にも本発明を適用可能であり、コンクリートの表面近傍での作業性を確保しつつコンクリートの表面を湿潤状態に保つことができる。
【符号の説明】
【0057】
20,220・・・コンクリート
20a・・・打継面
30・・・有孔管
31・・・孔
40・・・ゲル状物
201a・・・右側面(打継面)