(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240513BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20240513BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/318 A
H01L21/316 S
(21)【出願番号】P 2020202772
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 泰章
(72)【発明者】
【氏名】大森 麻央
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-031507(JP,A)
【文献】特開昭55-059729(JP,A)
【文献】特開平09-148325(JP,A)
【文献】特開昭63-172431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバーに収容された前記基板に加熱処理を行う加熱部と、
前記チャンバーに支燃性ガスを供給する支燃性ガスラインと、
前記チャンバーに可燃性ガスを供給する可燃性ガスラインと、
前記支燃性ガスラインに不活性ガスを送り込んで前記支燃性ガスライン内を不活性ガスに置換するとともに、前記可燃性ガスラインに不活性ガスを送り込んで前記可燃性ガスライン内を不活性ガスに置換する前記支燃性ガスラインおよび前記可燃性ガスラインに共通の不活性ガスラインと、
前記不活性ガスラインから分岐されて前記可燃性ガスラインに接続されるバイパスラインと、
を備え
、
前記支燃性ガスラインの終端が前記不活性ガスラインに接続されるとともに、前記バイパスラインは前記可燃性ガスラインの経路途中に接続され、
前記可燃性ガスラインから前記チャンバーに前記可燃性ガスを供給するときに、前記不活性ガスラインから前記バイパスラインを経て前記可燃性ガスラインに前記不活性ガスを送り込むことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記支燃性ガスラインには第1マスフローコントローラが設けられ、
前記可燃性ガスラインには第2マスフローコントローラおよびマスフローメータが設けられ、
前記不活性ガスラインには第3マスフローコントローラが設けられ、
前記バイパスラインは前記第2マスフローコントローラと前記マスフローメータとの間に接続されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項
2記載の熱処理装置において、
前記第2マスフローコントローラによって制御された前記可燃性ガスの流量および前記第3マスフローコントローラによって制御された前記不活性ガスの流量の合計値と前記マスフローメータによって得られた測定値とを比較する比較部と、
前記合計値と前記測定値とが一致しない場合は警報を発報する発報部と、
をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項
2または請求項
3記載の熱処理装置において、
前記第1マスフローコントローラを含む前記支燃性ガスラインに設けられた複数の機器は支燃性ガス供給ユニットとして集積され、
前記第2マスフローコントローラおよび前記マスフローメータを含む前記可燃性ガスラインに設けられた複数の機器は可燃性ガス供給ユニットとして集積され、
前記第3マスフローコントローラを含む前記不活性ガスラインに設けられた複数の機器は不活性ガス供給ユニットとして集積されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項
4記載の熱処理装置において、
少なくとも前記第2マスフローコントローラおよび前記マスフローメータは筐体内に収容され、
前記筐体内には窒素が供給されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記可燃性ガスは、アンモニアまたは水素であり、
前記支燃性ガスは、酸素、オゾンまたは亜酸化窒素であることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)を可燃性ガスまたは支燃性ガスの雰囲気中にて加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造する装置として、半導体ウェハーに光を照射して当該半導体ウェハーを加熱する熱処理装置が広く使用されている。このような熱処理装置においては、様々なガス雰囲気中にて半導体ウェハーの加熱処理が行われる。例えば、高誘電率膜(High-k膜)を形成した半導体ウェハーにアンモニア雰囲気中にて光照射加熱を行って高誘電率膜を窒化することが行われている。また、シリコンの半導体ウェハーに酸素雰囲気中にて光照射加熱を行って酸化膜を形成することも行われている。さらには、酸素雰囲気中で酸化処理を行ってからアンモニア雰囲気中で窒化処理を連続して行う、或いはアンモニア雰囲気中で窒化処理を行ってから酸素雰囲気中で酸化処理を連続して行うこともある。
【0003】
ところが、アンモニアは可燃性ガスであり、酸素は支燃性ガス(助燃性ガス)である。よって、酸化処理と窒化処理とを連続して行う際に、装置内にて可燃性ガスであるアンモニアと支燃性ガスである酸素とが混合することは危険である。このため、例えば特許文献1には、可燃性ガスおよび支燃性ガスのそれぞれのガス供給ラインに2つのバルブを設け、それらの間に不活性ガスを供給する技術が開示されている。また、特許文献2には、装置内に残留する可燃性ガスと支燃性ガスとを個別に排気してそれらが混合して反応するのを防止する技術が開示されている。さらに、特許文献3には、排気配管内での可燃性ガスと支燃性ガスとの混合を避けるために、排気配管に不活性ガスを供給して希釈する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5274557号公報
【文献】特開2003-31507号公報
【文献】特開平9-909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可燃性ガスと支燃性ガスとの混合を避けるために、それぞれのガス供給ラインに不活性ガスを供給することは有効な手段である。しかし、可燃性ガス供給ユニットおよび支燃性ガス供給ユニットのそれぞれに個別に不活性ガス供給ラインを設けると、両ガス供給ユニットの設置スペースが大きくなり過ぎるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ガス供給関連要素の設置スペースを小さくすることができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバーに収容された前記基板に加熱処理を行う加熱部と、前記チャンバーに支燃性ガスを供給する支燃性ガスラインと、前記チャンバーに可燃性ガスを供給する可燃性ガスラインと、前記支燃性ガスラインに不活性ガスを送り込んで前記支燃性ガスライン内を不活性ガスに置換するとともに、前記可燃性ガスラインに不活性ガスを送り込んで前記可燃性ガスライン内を不活性ガスに置換する前記支燃性ガスラインおよび前記可燃性ガスラインに共通の不活性ガスラインと、前記不活性ガスラインから分岐されて前記可燃性ガスラインに接続されるバイパスラインと、を備え、前記支燃性ガスラインの終端が前記不活性ガスラインに接続されるとともに、前記バイパスラインは前記可燃性ガスラインの経路途中に接続され、前記可燃性ガスラインから前記チャンバーに前記可燃性ガスを供給するときに、前記不活性ガスラインから前記バイパスラインを経て前記可燃性ガスラインに前記不活性ガスを送り込むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記支燃性ガスラインには第1マスフローコントローラが設けられ、前記可燃性ガスラインには第2マスフローコントローラおよびマスフローメータが設けられ、前記不活性ガスラインには第3マスフローコントローラが設けられ、前記バイパスラインは前記第2マスフローコントローラと前記マスフローメータとの間に接続されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る熱処理装置において、前記第2マスフローコントローラによって制御された前記可燃性ガスの流量および前記第3マスフローコントローラによって制御された前記不活性ガスの流量の合計値と前記マスフローメータによって得られた測定値とを比較する比較部と、前記合計値と前記測定値とが一致しない場合は警報を発報する発報部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る熱処理装置において、前記第1マスフローコントローラを含む前記支燃性ガスラインに設けられた複数の機器は支燃性ガス供給ユニットとして集積され、前記第2マスフローコントローラおよび前記マスフローメータを含む前記可燃性ガスラインに設けられた複数の機器は可燃性ガス供給ユニットとして集積され、前記第3マスフローコントローラを含む前記不活性ガスラインに設けられた複数の機器は不活性ガス供給ユニットとして集積されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る熱処理装置において、少なくとも前記第2マスフローコントローラおよび前記マスフローメータは筐体内に収容され、前記筐体内には窒素が供給されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記可燃性ガスは、アンモニアまたは水素であり、前記支燃性ガスは、酸素、オゾンまたは亜酸化窒素であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1から請求項6の発明によれば、支燃性ガスラインおよび可燃性ガスラインに共通の不活性ガスラインを備えるため、不活性ガスラインが最小限で足り、ガス供給関連要素の設置スペースを小さくすることができる。
【0016】
特に、請求項3の発明によれば、第2マスフローコントローラによって制御された可燃性ガスの流量および第3マスフローコントローラによって制御された不活性ガスの流量の合計値とマスフローメータによって得られた測定値とを比較し、それらが一致しない場合は警報を発報するため、マスフローコントローラの異常を適切に検知することができる。
【0017】
特に、請求項5の発明によれば、第2マスフローコントローラおよびマスフローメータは筐体内に収容され、その筐体内には窒素が供給されるため、電気式のマスフローコントローラおよびマスフローメータに起因した可燃性ガスの火災または爆発を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る熱処理装置の要部構成を示す図である。
【
図5】熱処理装置における処理動作の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の要部構成を示す図である。
図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0021】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー10と、チャンバー10内の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射するフラッシュ照射部60と、半導体ウェハーWにハロゲン光を照射するハロゲン照射部70と、チャンバー10内に処理ガスを供給するガス供給部20と、チャンバー10から排気を行う排気部80と、を備えている。また、熱処理装置1は、これらの各部を制御してフラッシュ光照射を実行させる制御部90を備える。
【0022】
チャンバー10は処理対象となる半導体ウェハーWを収容し、チャンバー10内にて半導体ウェハーWの熱処理が行われる。チャンバー10の上部開口には上側チャンバー窓11が装着されて閉塞されるとともに、チャンバー10の下部開口には下側チャンバー窓12が装着されて閉塞されている。チャンバー10の側壁、上側チャンバー窓11および下側チャンバー窓12によって囲まれる空間が熱処理空間15として規定される。チャンバー10の天井部を構成する上側チャンバー窓11は、石英により形成された板状部材であり、フラッシュ照射部60から出射されたフラッシュ光を熱処理空間15に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー10の床部を構成する下側チャンバー窓12も、石英により形成された板状部材であり、ハロゲン照射部70からの光を熱処理空間15に透過する石英窓として機能する。
【0023】
チャンバー10の側壁には、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部14が設けられている。搬送開口部14は、図示を省略するゲートバルブによって開閉可能とされている。搬送開口部14が開放されると、図外の搬送ロボットによってチャンバー10に対する半導体ウェハーWの搬入および搬出が可能となる。また、搬送開口部14が閉鎖されると、熱処理空間15が外部との通気が遮断された密閉空間となる。
【0024】
チャンバー10の内部には、半導体ウェハーWを保持するサセプタ18が設けられている。サセプタ18は、石英により形成された円板形状部材である。サセプタ18の径は、半導体ウェハーWの径よりも少し大きい。サセプタ18によって半導体ウェハーWはチャンバー10内にて水平姿勢(主面の法線方向が鉛直方向と一致する姿勢)で保持される。
【0025】
フラッシュ照射部60は、チャンバー10の上方に設けられている。フラッシュ照射部60は、複数本のフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ62と、を備えて構成される。フラッシュ照射部60は、チャンバー10内にてサセプタ18に保持される半導体ウェハーWに石英の上側チャンバー窓11を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射して当該半導体ウェハーWの表面を加熱する。
【0026】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向がサセプタ18に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0027】
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された円筒形状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0028】
リフレクタ62は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ62の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間15の側に反射するというものである。リフレクタ62はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0029】
ハロゲン照射部70は、チャンバー10の下方に設けられている。ハロゲン照射部70は、複数本のハロゲンランプHLを内蔵する。ハロゲン照射部70は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー10の下方から下側チャンバー窓12を介して熱処理空間15への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0030】
複数のハロゲンランプHLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向がサセプタ18に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、ハロゲンランプHLの配列によって形成される平面も水平面である。なお、複数のハロゲンランプHLを上下2段に格子状に配列するようにしても良い。
【0031】
各ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。
【0032】
排気部80は、真空ポンプ81および排気バルブ82を備えており、真空ポンプ81を作動させつつ排気バルブ82を開放することによってチャンバー10内の雰囲気を排気する。ガス供給部20から何らのガス供給を行うことなく密閉空間である熱処理空間15の雰囲気を真空ポンプ81によって排気すると、チャンバー10内を真空雰囲気にまで減圧することができる。
【0033】
ガス供給部20は、支燃性ガス供給ユニット30、可燃性ガス供給ユニット40および不活性ガス供給ユニット50の3つのガス供給ユニットを備える。
図2は、ガス供給部20の構成を示す図である。
【0034】
チャンバー10にはガス供給ライン21が接続されている。ガス供給ライン21の基端側は3つのガスラインに分岐されている。すなわち、ガス供給ライン21には、支燃性ガスライン31、可燃性ガスライン41および不活性ガスライン51の3本のガスラインが接続されている。支燃性ガスライン31、可燃性ガスライン41、不活性ガスライン51およびガス供給ライン21はいずれもガスを送給する配管である。
【0035】
支燃性ガスライン31の先端はガス供給ライン21に接続されるとともに基端は酸素供給源32に接続される。本実施形態においては、支燃性ガスライン31は支燃性ガスとして酸素(O2)をチャンバー10に供給する。支燃性ガスライン31の経路途中には、第1マスフローコントローラ33、バルブ34およびバルブ35が介挿されている。
【0036】
可燃性ガスライン41の先端はガス供給ライン21に接続されるとともに基端はアンモニア供給源42に接続される。本実施形態においては、可燃性ガスライン41は可燃性ガスとしてアンモニア(NH3)をチャンバー10に供給する。可燃性ガスライン41の経路途中には、第2マスフローコントローラ43、バルブ44、マスフローメータ45およびバルブ46が介挿されている。
【0037】
不活性ガスライン51の先端はガス供給ライン21に接続されるとともに基端は窒素供給源52に接続される。不活性ガスライン51の先端は、可燃性ガスライン41および支燃性ガスライン31の終端にも接続されていることとなる。本実施形態においては、不活性ガスライン51は不活性ガスとして窒素(N2)を供給する。不活性ガスライン51の経路途中には、第3マスフローコントローラ53およびバルブ54が介挿されている。
【0038】
また、不活性ガスライン51の経路途中からはバイパスライン25が分岐されて可燃性ガスライン41の経路途中に接続されている。バイパスライン25は、不活性ガスライン51の経路における第3マスフローコントローラ53よりも下流側の位置から分岐される。バイパスライン25は、可燃性ガスライン41の経路における第2マスフローコントローラ43とマスフローメータ45との間に接続される。バイパスライン25の経路途中にはバルブ26が介挿されている。
【0039】
支燃性ガス供給ユニット30は、支燃性ガスライン31に設けられた第1マスフローコントローラ33およびバルブ34を含んで構成される。可燃性ガス供給ユニット40は、可燃性ガスライン41に設けられた第2マスフローコントローラ43、バルブ44、マスフローメータ45およびバルブ46並びにバイパスライン25に設けられたバルブ26を含んで構成される。不活性ガス供給ユニット50は、不活性ガスライン51に設けられた第3マスフローコントローラ53およびバルブ54を含んで構成される。
【0040】
支燃性ガス供給ユニット30、可燃性ガス供給ユニット40および不活性ガス供給ユニット50のそれぞれは、マスフローコントローラ等の複数の機器を板状部材に組み込んで集積化して構成されている。これにより、ガス供給関連要素の設置スペースを小さくすることができる。厳密には、例えば第2マスフローコントローラ43とマスフローメータ45との間は配管によって接続されているものではないが、実質的にはこれらは配管によって接続されているのと同等であるため、本実施形態においてはこれらは可燃性ガスライン41に設けられているとして扱う。
【0041】
また、
図3に示すように、少なくとも第2マスフローコントローラ43およびマスフローメータ45を含む機器は筐体47の内部に収容されている。筐体47内には窒素供給部48から窒素が供給されて充填されている。第2マスフローコントローラ43およびマスフローメータ45は電気によって作動する機器であり、発火源となるおそれがある。すなわち、可燃性ガスライン41の継ぎ手等から可燃性ガスであるアンモニアが漏出していた場合には、第2マスフローコントローラ43またはマスフローメータ45から発した火花によって火災または爆発が発生するおそれがある。これを防ぐために、少なくとも第2マスフローコントローラ43およびマスフローメータ45は筐体47内に収容され、その筐体47には窒素が充填されているのである。火災または爆発が発生するには、燃焼物である可燃性ガス自体の存在、発火源、および、支燃性ガスである酸素等の存在が必要とされている。第2マスフローコントローラ43およびマスフローメータ45を収容した筐体47の内部を窒素で充填すれば、支燃性ガスの存在が欠けることとなるため、火災または爆発を防止することができる。なお、窒素供給部48から供給する窒素は、防爆の目的であるため、窒素供給源52から供給する窒素より純度が低くても良い。
【0042】
図1に戻り、制御部90は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。
図4は、制御部90の構成を示すブロック図である。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用アプリケーションやデータなどを記憶しておく磁気ディスク等を備えて構成される。制御部90のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0043】
図4に示すように、制御部90は比較部91および発報部92を備える。比較部91および発報部92は、制御部90のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。比較部91および発報部92の処理内容についてはさらに後述する。
【0044】
また、制御部90には、第1マスフローコントローラ33、第2マスフローコントローラ43、第3マスフローコントローラ53、マスフローメータ45およびガス供給部20に設けられたバルブ等が電気的に接続されている。制御部90は、各マスフローコントローラにガス流量を所定の設定値に制御させるとともに、マスフローメータ45の測定値を取得する。制御部90は、各バルブの開閉を制御する。
【0045】
さらに、制御部90には表示部99および入力部98が接続されている。制御部90は、表示部99に種々の情報を表示する。熱処理装置1のオペレータは、表示部99に表示された情報を確認しつつ、入力部98から種々のコマンドやパラメータを入力することができる。入力部98としては、例えばキーボードやマウスを用いることができる。表示部99としては、例えば液晶ディスプレイを用いることができる。本実施形態においては、表示部99および入力部98として、熱処理装置1の外壁に設けられた液晶のタッチパネルを採用して双方の機能を併せ持たせるようにしている。
【0046】
次に、熱処理装置1における処理動作について説明する。
図5は、熱処理装置1における処理動作の手順を示すフローチャートである。ここでは、主に熱処理装置1のチャンバー10に対するガス供給の手順について説明する。
【0047】
まず、チャンバー10内に半導体ウェハーWが搬入される(ステップS1)。処理対象となる半導体ウェハーWはシリコンの半導体基板である。半導体ウェハーWは図外の搬送ロボットによって搬送開口部14からチャンバー10内に搬入されてサセプタ18に保持される。半導体ウェハーWをサセプタ18に渡した搬送ロボットがチャンバー10から退出し、搬送開口部14がゲートバルブによって閉じられることにより、チャンバー10内の熱処理空間15は密閉空間となる。
【0048】
チャンバー10内に半導体ウェハーWが搬入された後、チャンバー10および支燃性ガスライン31が真空排気される(ステップS2)。ステップS2では、バルブ35を開放するとともにバルブ34,44,46,54,26を閉止した状態で真空ポンプ81によって排気を行うことにより、チャンバー10および支燃性ガスライン31のバルブ34よりも下流側が真空排気される。支燃性ガスライン31を真空排気することによって、支燃性ガスライン31のバルブ34とバルブ35との間に残留していた酸素が排出される。
【0049】
次に、真空ポンプ81による真空排気が停止され、支燃性ガスライン31内が窒素に置換される(ステップS3)。ステップS3では、バルブ54を開放することにより、不活性ガスライン51からチャンバー10に窒素を供給するとともに、不活性ガスライン51から支燃性ガスライン31にも窒素が送り込まれる。これにより、支燃性ガスライン31のバルブ34とバルブ35との間に窒素が充填され、バルブ34とバルブ35との間に残留していた酸素が窒素に置換されることとなる。支燃性ガスライン31を真空排気してから支燃性ガスライン31内を窒素に置換するのは、続く工程でアンモニアを供給したときに可燃性ガスであるアンモニアと支燃性ガスである酸素とが混合するのを確実に防止するためである。
【0050】
支燃性ガスライン31内が窒素に置換された後、バルブ35およびバルブ54を閉止し、真空ポンプ81によってチャンバー10内を再度真空排気する。その後、チャンバー10にアンモニアを供給する(ステップS4)。ステップS4では、バルブ44およびバルブ46を開放することにより、可燃性ガスライン41からチャンバー10にアンモニアを供給する。アンモニア供給に先立って支燃性ガスライン31を真空排気してから支燃性ガスライン31内を窒素に置換しているため、供給されるアンモニアと支燃性ガスライン31からの酸素とが混合することは確実に防止される。
【0051】
このときに、可燃性ガスであるアンモニアの火災または爆発を防ぐ観点からは、支燃性ガスライン31からの酸素との混合の他に、チャンバー10の構成部品の損傷等に起因したチャンバー10内への大気流入を考慮しておく必要がある。本実施形態においては、チャンバー10内に大気が流入したときにも爆発性混合気体が生成されるのを防止するために、アンモニア濃度が爆発限界未満となるようにアンモニアを窒素で希釈してチャンバー10に供給している。具体的には、バルブ26を開放してバイパスライン25から可燃性ガスライン41に窒素を送り込む。これにより、可燃性ガスライン41を流れるアンモニアにバイパスライン25から送り込まれた窒素が混合され、アンモニアが希釈されてチャンバー10に供給される。
【0052】
アンモニアと窒素との混合気体がチャンバー10に供給されるときに、当該混合気体におけるアンモニア濃度が爆発限界未満となるように、アンモニアおよび窒素の流量がそれぞれ第2マスフローコントローラ43および第3マスフローコントローラ53によって制御される。本実施形態においては、第2マスフローコントローラ43または第3マスフローコントローラ53の異常等によって混合比が異常となってアンモニア濃度が爆発限界以上となるのを確実に防止するために、可燃性ガスライン41にマスフローメータ45を設けて混合気体の流量を監視している。
【0053】
制御部90の比較部91は、第2マスフローコントローラ43によって制御されたアンモニアの流量と第3マスフローコントローラ53によって制御された窒素の流量との合計値を算出する。マスフローメータ45は、アンモニアに窒素が混合された混合気体の流量を測定する。比較部91は、当該合計値とマスフローメータ45によって得られた測定値とを比較する。第2マスフローコントローラ43および第3マスフローコントローラ53が正常に動作していれば、上記の合計値とマスフローメータ45によって得られた測定値とは一致するはずである。合計値と測定値とが一致しない場合は、第2マスフローコントローラ43または第3マスフローコントローラ53に異常が生じていると考えられる。このため、比較部91による比較の結果、上記の合計値とマスフローメータ45によって得られた測定値とが予め設定された閾値以上に乖離している場合には、制御部90の発報部92が警報を発報する。
【0054】
アンモニアと窒素との混合気体がチャンバー10に供給されてチャンバー10内にアンモニア雰囲気が形成された後、半導体ウェハーWの熱処理が実行される(ステップS5)。半導体ウェハーWの熱処理時には、まずハロゲン照射部70のハロゲンランプHLが点灯して半導体ウェハーWの予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射された光は石英にて形成された下側チャンバー窓12およびサセプタ18を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。半導体ウェハーWの温度が上昇して所定の予備加熱温度に到達した後、半導体ウェハーWの温度は数秒程度その予備加熱温度に維持される。
【0055】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度に到達して所定時間が経過した時点でフラッシュ照射部60のフラッシュランプFLがサセプタ18に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された強い閃光である。フラッシュ光の照射時間は0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度である。このような極めて照射時間が短く、かつ、強度の強いフラッシュ光が半導体ウェハーWに照射されることにより、半導体ウェハーWの表面温度は瞬間的に処理温度にまで上昇した後、急速に下降する。アンモニア雰囲気中にて半導体ウェハーWが予備加熱およびフラッシュ加熱されることにより、半導体ウェハーWの表面に窒化シリコン(Si3N4)の薄膜が形成される。
【0056】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度からも降温する。続いて、チャンバー10および可燃性ガスライン41が真空排気される(ステップS6)。ステップS6では、バルブ44およびバルブ26を閉止して真空ポンプ81によって排気を行うことにより、チャンバー10および可燃性ガスライン41のバルブ44よりも下流側が真空排気される。可燃性ガスライン41を真空排気することによって、可燃性ガスライン41のバルブ44よりも下流側に残留していたアンモニアが排出される。
【0057】
次に、真空ポンプ81による真空排気が停止され、可燃性ガスライン41内が窒素に置換される(ステップS7)。ステップS7では、バルブ26を開放することにより、不活性ガスライン51からバイパスライン25を経て可燃性ガスライン41に窒素を送り込むとともに、その可燃性ガスライン41を経由してチャンバー10に窒素が供給される。これにより、バルブ26,44とバルブ46との間に窒素が充填され、可燃性ガスライン41のバルブ44とバルブ46との間に残留していたアンモニアが窒素に置換されることとなる。可燃性ガスライン41を真空排気してから可燃性ガスライン41内を窒素に置換するのは、続く工程で酸素を供給したときに可燃性ガスであるアンモニアと支燃性ガスである酸素とが混合するのを確実に防止するためである。
【0058】
可燃性ガスライン41内が窒素に置換された後、チャンバー10に酸素を供給する(ステップS8)。ステップS8では、バルブ26およびバルブ46を閉止するとともに、バルブ34およびバルブ35を開放することにより、支燃性ガスライン31からチャンバー10に酸素を供給する。酸素供給に先立って可燃性ガスライン41を真空排気してから可燃性ガスライン41内を窒素に置換しているため、供給される酸素と可燃性ガスライン41からのアンモニアとが混合することは確実に防止される。チャンバー10に酸素を供給する際に、バルブ54を開放して酸素と窒素との混合気体をチャンバー10に供給するようにしても良い。
【0059】
酸素がチャンバー10に供給されてチャンバー10内に酸素雰囲気が形成された後、半導体ウェハーWの2度目の熱処理が実行される(ステップS9)。ステップS9での半導体ウェハーWの熱処理は、上述したステップS5での熱処理と概ね同じである。酸素雰囲気中にて半導体ウェハーWが予備加熱およびフラッシュ加熱されることにより、先に形成された窒化シリコン膜の下地に酸化シリコン(SiO2)の薄膜が形成される。
【0060】
半導体ウェハーWの2度目の熱処理が完了した後、ハロゲンランプHLも消灯して半導体ウェハーWの温度が降温する。また、チャンバー10内の酸素雰囲気は真空ポンプ81によってチャンバー10から排出されるとともに、バルブ34,35を閉止してバルブ54を開放することにより、チャンバー10内が窒素に置換される。半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、搬送開口部14から熱処理後の半導体ウェハーWが搬出されて加熱処理が完了する(ステップS10)。
【0061】
本実施形態においては、支燃性ガスライン31に不活性ガスライン51から窒素を送り込んで支燃性ガスライン31内を窒素に置換するとともに、可燃性ガスライン41にも同じ不活性ガスライン51から窒素を送り込んで可燃性ガスライン41内を窒素に置換している。すなわち、支燃性ガスライン31および可燃性ガスライン41のそれぞれに個別に不活性ガスラインを設けるのではなく、支燃性ガスライン31および可燃性ガスライン41に共通の1本の不活性ガスライン51を設けているのである。このため、ガス供給関連要素の設置スペースを小さくすることができる。
【0062】
また、支燃性ガスライン31、可燃性ガスライン41および不活性ガスライン51に設けられたマスフローコントローラ等のガス供給関連要素をユニットとして集積している。これによっても、ガス供給関連要素の設置スペースを小さくすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、可燃性ガスとしてアンモニアを用いていたが、これに限定されるものではなく、可燃性ガスは水素(H2)等であっても良い。また、上記実施形態においては、支燃性ガスとして酸素を用いていたが、これに限定されるものではなく、支燃性ガスはオゾン(O3)または亜酸化窒素(N2O)等であっても良い。さらに、上記実施形態においては、不活性ガスとして窒素を用いていたが、これに限定されるものではなく、不活性ガスはアルゴン(Ar)またはヘリウム(He)等であっても良い。
【0064】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)を連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。
【0065】
また、熱処理装置1によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。
【0066】
また、上記実施形態においては、チャンバー10内にて半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射して加熱処理を行っていたが、これに限定されるものではなく、チャンバー10内に収容した半導体ウェハーWにハロゲンランプHLのみから光を照射して加熱処理を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 熱処理装置
10 チャンバー
25 バイパスライン
30 支燃性ガス供給ユニット
31 支燃性ガスライン
33 第1マスフローコントローラ
40 可燃性ガス供給ユニット
41 可燃性ガスライン
43 第2マスフローコントローラ
45 マスフローメータ
47 筐体
48 窒素供給部
50 不活性ガス供給ユニット
51 不活性ガスライン
53 第3マスフローコントローラ
60 フラッシュ照射部
70 ハロゲン照射部
90 制御部
91 比較部
92 発報部
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー