(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ハンチング検知装置及びハンチング検知方法
(51)【国際特許分類】
F02M 1/10 20060101AFI20240513BHJP
F02D 41/06 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
F02M1/10 A
F02D41/06
(21)【出願番号】P 2020210956
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】317019683
【氏名又は名称】株式会社Willbe
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】成田 紘之
(72)【発明者】
【氏名】石山 明洋
(72)【発明者】
【氏名】牧田 健太朗
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-059859(JP,U)
【文献】特開昭51-007339(JP,A)
【文献】特開2012-193717(JP,A)
【文献】特開2005-083320(JP,A)
【文献】特開2007-032500(JP,A)
【文献】特開2007-162576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0000586(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 1/10
F02D 41/00 - 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化器を備えるエンジンのハンチングを検知するためのハンチング検知装置であって、
温度センサが計測した外気温度と前記エンジンの回転数とを取得するように構成された取得部と、
前記外気温度が第1基準値以下で前記回転数の変動状態が検出された場合に前記ハンチングを検知するように構成された検知部と、
前記エンジンの吸気通路に設けられたチョークバルブの開度を制御するように構成された開度制御部と、を備え、
前記開度制御部は、前記検知部が前記ハンチングを検知した場合には、前記チョークバルブの開度を小さくするための閉鎖制御を実行する
ハンチング検知装置。
【請求項2】
点火コイルの温度を計測する温度センサをさらに備え、
前記開度制御部は、前記閉鎖制御の実行時から所定時間が経過した場合又は前記点火コイルの温度が第2基準値に達した場合に、前記閉鎖制御を解除して前記チョークバルブの開度を大きくする
請求項1に記載のハンチング検知装置。
【請求項3】
前記第1基準値は、-5℃以上10℃以下の範囲内の温度に設定される
請求項1又は2に記載のハンチング検知装置。
【請求項4】
前記第2基準値は、30℃以上35℃以下の範囲内の温度に設定される
請求項
2に記載のハンチング検知装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記回転数の第1時間における変化において所定量以上の変動が所定回数以上発生したことを条件として前記変動状態を検出する
請求項1乃至4の何れか一項に記載のハンチング検知装置。
【請求項6】
前記第1時間は、1秒以上5秒以下の範囲内の時間に設定され、
前記所定量は、100rpm以上300rpm以下の範囲内の回転数に設定され、
前記所定回数は、2回以上5回以下の範囲内の回数に設定される
請求項5に記載のハンチング検知装置。
【請求項7】
前記検知部は、前記エンジンに点火するための点火コイルの一次線信号に基づいて回転数検出センサが検出した前記回転数に基づいて前記変動状態を検出する
請求項1乃至6の何れか一項に記載のハンチング検知装置。
【請求項8】
前記エンジンは、前記回転数に応じてスロットルを開閉動作するように構成された機械式の回転数制御装置を備える
請求項1乃至7の何れか一項に記載のハンチング検知装置。
【請求項9】
気化器を備えるエンジンのハンチングを検知するためのハンチング検知方法であって、
温度センサが計測した外気温度と前記エンジンの回転数とを取得するステップと、
前記外気温度が第1基準値以下で前記回転数の変動状態が検出された場合に前記ハンチングを検知するステップと、
前記エンジンの吸気通路に設けられたチョークバルブの開度を制御して、前記検知するステップで前記ハンチングを検知した場合には、前記チョークバルブの開度を小さくするための閉鎖制御を実行するステップと、
を含むハンチング検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気化器を備えるエンジンのハンチングを検知するためのハンチング検知装置及びハンチング検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの始動時にチョークバルブの開度を制御して空燃比を調整するように構成されたオートチョーク装置が提案されている。例えば、特許文献1には、エンジン始動時のエンジン温度を代表する温度情報を用いてチョークバルブの開度を決定するオートチョーク装置が開示されている。エンジン温度には、潤滑油温度、シリンダヘッド温度、冷却水温度等が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、気化器を備えるタイプのエンジンでは、気化器(キャブレター)から燃料が供給される。この場合、低温環境では、吸入空気の密度が上がることで相対的に燃料が不足する場合がある。結果、燃焼が不安定になったり、失火を繰り返してエンジンの回転数が安定しなくなり、ガバナが正しくスロットル制御を行えないため、ハンチングが発生する。
【0005】
エンジンには、電子式の回転数制御装置又は機械式の回転数制御装置が設けられる。機械式の回転数制御装置は、エンジンの回転数を遠心力で抽出して、回転数が高ければスロットルを自動的に閉じて、回転数が低ければスロットルを自動的に開いて回転数を一定に保つように構成されたガバナを含む。このような機械式の回転数制御装置では、特にハンチングが発生しやすい。
【0006】
ハンチングは空燃比を下げることで抑えられ(すなわち回転数が安定しやすくなり)、さらに暖機運転を継続すれば収束することが知られている。しかし、ハンチングは故障と誤認される場合があるため、ハンチングを短時間で抑制できなければ商品価値が低下する。特許文献1には、ハンチングを検知するための構成やハンチングを短時間で抑制するための構成が開示されていない。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本開示は、気化器を備えるエンジンのハンチングを検知することが可能なハンチング検知装置及びハンチング検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るハンチング検知装置は、
気化器を備えるエンジンのハンチングを検知するためのハンチング検知装置であって、
温度センサが計測した外気温度と前記エンジンの回転数とを取得するように構成された取得部と、
前記外気温度が第1基準値以下で前記回転数の変動状態が検出された場合に前記ハンチングを検知するように構成された検知部と、
前記エンジンの吸気通路に設けられたチョークバルブの開度を制御するように構成された開度制御部と、を備え、
前記開度制御部は、前記検知部が前記ハンチングを検知した場合には、前記チョークバルブの開度を小さくするための閉鎖制御を実行する。
【0009】
本開示に係るハンチング検知方法は、
気化器を備えるエンジンのハンチングを検知するためのハンチング検知方法であって、
温度センサが計測した外気温度と前記エンジンの回転数とを取得するステップと、
前記外気温度が第1基準値以下で前記回転数の変動状態が検出された場合に前記ハンチングを検知するステップと、
前記エンジンの吸気通路に設けられたチョークバルブの開度を制御して、前記検知するステップで前記ハンチングを検知した場合には、前記チョークバルブの開度を小さくするための閉鎖制御を実行するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、気化器を備えるエンジンのハンチングを検知することが可能なハンチング検知装置及びハンチング検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るハンチング検知装置を備えるエンジンの全体構成を例示する概略図である。
【
図2】一実施形態に係るハンチング検知装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3A】一実施形態に係るハンチング検知装置がハンチングを検知しない場合の回転数の時間的変化の一例を示す概念図である。
【
図3B】一実施形態に係るハンチング検知装置がハンチングを検知する場合の回転数の時間的変化の一例を示す概念図である。
【
図4】一実施形態に係るハンチング検知装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
(エンジンの全体構成)
図1は、一実施形態に係るハンチング検知装置100を備えるエンジン1の全体構成を例示する概略図である。エンジン1は、小型農機具、草刈り機、田植え機、耕運機等の作業機械のエンジンであってもよいし、車両のエンジンであってもよい。
【0014】
図1に示すように、エンジン1のシリンダヘッドには、エンジン1に点火するための点火プラグ3と、吸気量及び排気量を調整するための吸気弁4及び排気弁5とが設けられる。エンジン1は、エンジン1の回転数を検出するように構成された回転数検出センサ20と、外気温度を計測するための温度センサ10と、を備える。幾つかの実施形態では、エンジン1は、例えば
図1に示すように、点火コイル13の温度を計測するための温度センサ2をさらに備える。
【0015】
幾つかの実施形態では、回転数検出センサ20は、点火コイル13の一次線信号に基づいて、回転数を検出する。点火コイル13の一次線信号は、通電による信号ではなく、一回転ごとに発生する火花に基づくパルス信号である。なお、回転数検出センサ20は、点火コイル13の一次線信号ではなく、インバータから得られる信号に基づいて回転数を検出するように構成されてもよい。なお、回転数検知センサ200はハンチング検知の精度を向上させることが目的であるため、コストとの兼ね合いから、これを設けないことも可能である。
【0016】
また、幾つかの実施形態では、エンジン1は、例えば
図1に示すように、エンジン1の回転数に応じてスロットル(スロットルバルブ8)を開閉動作するように構成された回転数制御装置30をさらに備える。回転数制御装置30は、エンジン1の回転数に応じた遠心力を利用する機械式の回転数制御装置であってもよいし、インバータ及びモータを備える電子式の回転数制御装置であってもよい。回転数制御装置30は、回転数が高ければスロットルを自動的に閉じて、回転数が低ければスロットルを自動的に開くことで回転数を一定に維持するように構成されたガバナを含む。
【0017】
吸気弁4が設けられた吸気管6には、気化器(キャブレター)7が接続される。気化器7は下流側に配置されたスロットルバルブ8と、その上流に配置されたチョークバルブ9とを備える。気化器7には空気と燃料(不図示)が供給される。エンジン1の吸気通路に設けられたチョークバルブ9は、ステッピングモータ11によって開閉駆動される。
【0018】
図1に示すように、エンジン1は、エンジン1で駆動されることによって交流を発生するように構成された発電機12に連結されていてもよい。エンジン1のクランク軸には手動始動のためのリコイルスタータ(図示せず)を連結されてもよい。
【0019】
ハンチング検知装置100は、エンジン1のハンチングを検知するため装置である。ハンチング検知装置100は、オートチョーク装置であってもよいし、オートチョーク装置と通信可能な装置であってもよい。幾つかの実施形態では、ハンチング検知装置100は、ステッピングモータ11を駆動して、適度な空燃比が得られるようにチョークバルブ9の開度を制御する。
【0020】
(ハンチング検知装置の構成)
以下、ハンチング検知装置100の構成について説明する。ハンチング検知装置100は、例えば、プロセッサを含む中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、及びI/Oインターフェイス等を備え、マイクロコンピュータとして構成される。
【0021】
図2は、一実施形態に係るハンチング検知装置100の構成を概略的に示すブロック図である。
図2に示すように、ハンチング検知装置100は、外気温度とエンジン1の回転数とを取得するように構成された取得部110と、ハンチングを検知するように構成された検知部120と、チョークバルブ9の開度を制御するように構成された開度制御部130とを備える。
【0022】
取得部110は、温度センサ10が計測した外気温度を温度センサ10から取得する。また、取得部110は、回転数検出センサ20が計測したエンジン1の回転数を回転数検出センサ20から取得する。
【0023】
検知部120は、取得部110が取得した外気温度が第1基準値以下で、かつ取得部110が取得したエンジン1の回転数において変動状態が検出された場合にエンジン1のハンチングを検知する。第1基準値は、低温環境を推定可能な温度基準値に設定され、例えば、-5℃以上10℃以下の範囲内の温度に設定される。
【0024】
開度制御部130は、例えば、ステッピングモータ11への入力パルス数を制御することによってチョークバルブ9の開度を制御する。幾つかの実施形態では、開度制御部130は、検知部120がハンチングを検知した場合には、チョークバルブ9の開度を小さくするための閉鎖制御を実行する。幾つかの実施形態では、開度制御部130は、閉鎖制御の実行時から所定時間が経過した場合又は点火コイル13の温度が第2基準値に達した場合に、閉鎖制御を解除してチョークバルブ9の開度を大きくする。第2基準値は、例えば、30℃以上35℃以下の範囲内の温度に設定される。
【0025】
なお、ハンチング検知時の制御は、チョークバルブ9の開度制御に限られない。例えば、ハンチング検知時の制御は、燃料供給量の制御であってもよい。すなわち、ハンチング検知装置100は、チョークバルブ9以外の装置を制御して空燃比を調整し、ハンチングを抑制するように構成されてもよい。
【0026】
図3Aは、一実施形態に係るハンチング検知装置100がハンチングを検知しない場合の回転数の時間的変化の一例を示す概念図である。
図3Bは、一実施形態に係るハンチング検知装置100がハンチングを検知する場合の回転数の時間的変化の一例を示す概念図である。
図3Aと
図3Bを比較すると、
図3Aでは回転数の変動が大きいのに対し、
図3Bでは回転数の変動が小さいことがわかる。しかし、回転数の変動状態を検出するためには、判別基準が必要である。
【0027】
そこで、例えば、検知部120は、回転数の第1時間における変化において所定量以上の変動が所定回数以上発生したことを条件として変動状態を検出するように構成されてもよい。これにより、ハンチングと推定可能な条件を満たした場合にのみエンジンの回転数の変動状態を検出することができる。
【0028】
上記構成において、第1時間は、1秒以上5秒以下の範囲内の時間に設定されることが好ましい。所定量は、100rpm以上300rpm以下の範囲内の回転数に設定されることが好ましい。所定回数は、2回以上5回以下の範囲内の回数に設定されることが好ましい。この場合、ハンチングと推定可能な回転数変動の条件が設定されているため、エンジン1の回転数の変動状態の検出精度を向上させることができる。
【0029】
(処理の流れ)
以下、ハンチング検知装置100が実行する処理の流れについて説明する。
図4は、一実施形態に係るハンチング検知装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、気化器7を備えるエンジン1の運転中において実行される。
【0030】
図4に示すように、ハンチング検知装置100の取得部110は、外気温度と回転数の計測値を取得する(ステップS1)。具体的には、ハンチング検知装置100の取得部110は、温度センサ10が計測した外気温度と、回転数検出センサ20が計測したエンジン1の回転数を取得する。なお、取得部110は、各々の計測値の時系列データをまとめて取得してもよいし、計測値が得られるたびに最新の計測値を取得してもよい。
【0031】
ハンチング検知装置100の検知部120は、エンジン1の回転数の計測値に基づいて回転数の変動状態を検知するための処理を行い、変動状態を検知したか否かを判別する(ステップS2)。例えば、ハンチング検知装置100の検知部120は、回転数の第1時間における変化において所定量以上の変動が所定回数以上発生したか否かによって、この判別を行う。
【0032】
変動状態を検知していないと判別した場合(ステップS2;No)、ハンチング検知装置100は、以後のステップS3~S5の処理をスキップする。一方、変動状態を検知したと判別した場合(ステップS2;Yes)、ハンチング検知装置100の検知部120は、取得部110が取得した外気温度が第1基準値以下であるか否かを判別する(ステップS3)。
【0033】
外気温度が第1基準値以下ではないと判別した場合(ステップS3;No)、ハンチング検知装置100は、以後のステップS4、S5の処理をスキップする。一方、外気温度が第1基準値以下であると判別した場合(ステップS3;Yes)、ハンチング検知装置100の検知部120は、ハンチング状態であることを検知する。また、ハンチング検知装置100の開度制御部130は、チョークバルブ9の開度を小さくするための閉鎖制御を実行する(ステップS4)。
【0034】
開度制御部130は、閉鎖制御の実行時から所定時間が経過したか、或いは点火コイル13の温度が第2基準値に達したかを終了条件として、終了条件を満たしたか否かを判別する(ステップS5)。終了条件を満たしていない場合(ステップS5;No)、開度制御部130は、ステップS4に戻り、閉鎖制御を継続する。一方、終了条件を満たしている場合(ステップS5;Yes)、開度制御部130は、閉鎖制御を解除してチョークバルブ9の開度を大きくする。
【0035】
以上説明した処理は、エンジン1の運転中に定期的に行われてもよい。なお、ハンチング検知装置100は、上記の開度制御を行う構成に限られない。ハンチング検知装置100は、ハンチングの有無を検知し、その検知結果を他の装置に送信するように構成されてもよい。
【0036】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、複数の実施形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0037】
(まとめ)
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0038】
(1)本開示に係るハンチング検知装置(100)は、
気化器(7)を備えるエンジン(1)のハンチングを検知するためのハンチング検知装置(100)であって、
温度センサ(10)が計測した外気温度と前記エンジンの回転数とを取得するように構成された取得部(110)と、
前記外気温度が第1基準値以下で前記回転数の変動状態が検出された場合に前記ハンチングを検知するように構成された検知部(120)と、
前記エンジン(1)の吸気通路に設けられたチョークバルブ(9)の開度を制御するように構成された開度制御部(130)と、を備え、
前記開度制御部(130)は、前記検知部(120)が前記ハンチングを検知した場合には、前記チョークバルブ(9)の開度を小さくするための閉鎖制御を実行する。
【0039】
上記構成によれば、外気温度が第1基準値以下(すなわち低温環境下)で回転数が所定の変動状態である場合にハンチングを検知する。そのため、気化器(7)を備えるエンジン(1)のハンチングを検知することが可能となる。また、ハンチングを短時間で抑制するための制御(例えば、空燃比を調整する制御)にハンチングの検知結果を利用することも可能である。また、ハンチング検知時にチョークバルブ(9)の開度を小さくして空燃比を下げるため、ハンチングを抑えることができる。また、この状態でエンジン(1)を暖機運転することによりハンチングを短時間で収束させること可能となる。
【0040】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
点火コイル(13)の温度を計測する温度センサ(2)をさらに備え、
前記開度制御部(130)は、前記閉鎖制御の実行時から所定時間が経過した場合又は前記点火コイルの温度が第2基準値に達した場合に、前記閉鎖制御を解除して前記チョークバルブ(9)の開度を大きくする。
【0041】
閉鎖制御の実行時から所定時間が経過した場合又は点火コイル(13)の温度が第2基準値に達した場合には、エンジン温度の上昇によりハンチングが収束することが考えられる。上記構成によれば、そのような場合に閉鎖制御を解除するため、閉鎖制御の実行時間が過度に長くなる虞を低減することができる。
【0042】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の構成において、
前記第1基準値は、-5℃以上10℃以下の範囲内の温度に設定される。
【0043】
上記構成によれば、ハンチングが発生しやすい低温環境を第1基準値で判別することが可能となる。
【0044】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか一つに記載の構成において、
前記第2基準値は、30℃以上35℃以下の範囲内の温度に設定される。
【0045】
上記構成によれば、適切なタイミングで閉鎖制御を解除することが可能となる。
【0046】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか一つに記載の構成において、
前記検知部(120)は、前記回転数の第1時間における変化において所定量以上の変動が所定回数以上発生したことを条件として前記変動状態を検出する。
【0047】
上記構成によれば、ハンチングと推定可能な条件を満たした場合にのみエンジン(1)の回転数の変動状態を検出するため、過検知を抑制することができる。
【0048】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の構成において、
前記第1時間は、1秒以上5秒以下の範囲内の時間に設定され、
前記所定量は、100rpm以上300rpm以下の範囲内の回転数に設定され、
前記所定回数は、2回以上5回以下の範囲内の回数に設定される。
【0049】
上記構成によれば、ハンチングと推定可能な回転数変動の条件が設定されているため、エンジン(1)の回転数の変動状態の検出精度を向上させることができる。
【0050】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れか一つに記載の構成において、
前記検知部(120)は、前記エンジン(1)に点火するための点火コイル(13)の一次線信号に基づいて回転数検出センサ(20)が検出した前記回転数に基づいて前記変動状態を検出する。
【0051】
上記構成によれば、エンジン(1)に汎用されている点火コイル(13)の一次線信号を利用する。この場合、エンジン(1)の回転数を検出するための専用センサを別途で追加する必要がない点で有利である。
【0052】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れか一つに記載の構成において、
前記エンジン(1)は、前記回転数に応じてスロットルを開閉動作するように構成された機械式の回転数制御装置(30)を備える。
【0053】
上記構成によれば、ハンチングが発生しやすい機械式の回転数制御装置(30)を備えるエンジン(1)に適用されるため、有意義である。
【0054】
(9)本開示に係るハンチング検知方法は、
気化器(7)を備えるエンジン(1)のハンチングを検知するためのハンチング検知方法であって、
温度センサ(10)が計測した外気温度と前記エンジン(1)の回転数とを取得するステップと、
前記外気温度が第1基準値以下で前記回転数の変動状態が検出された場合に前記ハンチングを検知するステップと、
前記エンジン(1)の吸気通路に設けられたチョークバルブ(9)の開度を制御して、前記検知するステップで前記ハンチングを検知した場合には、前記チョークバルブ(9)の開度を小さくするための閉鎖制御を実行するステップと、
を含む。
【0055】
上記方法によれば、外気温度が第1基準値以下(すなわち低温環境下)で回転数が所定の変動状態である場合にハンチングを検知する。そのため、気化器(7)を備えるエンジン(1)のハンチングを検知することが可能となる。また、ハンチングを短時間で抑制するための制御にハンチングの検知結果を利用することも可能である。また、ハンチング検知時にチョークバルブ(9)の開度を小さくして空燃比を下げるため、ハンチングを抑えることができる。また、この状態でエンジン(1)を暖機運転することによりハンチングを短時間で収束させること可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン
2,10 温度センサ
3 点火プラグ
4 吸気弁
5 排気弁
6 吸気管
7 気化器
8 スロットルバルブ
9 チョークバルブ
11 ステッピングモータ
12 発電機
13 点火コイル
20 回転数検出センサ
30 回転数制御装置
100 ハンチング検知装置
110 取得部
120 検知部
130 開度制御部