(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】経路設定方法、自律走行方法、経路設定装置、自律走行システム、及び経路設定プログラム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240513BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240513BHJP
G05D 1/648 20240101ALI20240513BHJP
【FI】
A01B69/00 303Q
A01B69/00 303M
G05D1/43
G05D1/648
(21)【出願番号】P 2020211919
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/042853(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/055922(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/124174(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/124273(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/235471(WO,A1)
【文献】特開平11-299305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された作業経路に沿って圃場を移動している作業車両への指示を受け付け、前記作業車両の位置を取得することと、
前記指示と、前記作業車両が前記圃場内を移動することにより前記圃場において作業に使用される作業機械
の種類または機種とに基づき、前記作業車両が前記圃場において作業を行う作業領域から離脱するための離脱経路を生成することと、
を含
み、
前記離脱経路を生成することは、
前記作業機械の種類または機種に基づき、
前記圃場のうち、前記指示を受けたときに前記作業が終了している作業済み領域を含まない第1領域区分と、
前記圃場のうち、前記指示を受けたときに前記作業が終了していない未作業領域を含まない第2領域区分と、
を含む複数の領域区分から1つを走行領域として選択することと、
前記走行領域に全経路が含まれるように、前記離脱経路を生成することと、
を含む経路設定方法。
【請求項2】
前記作業経路のうち
、前記指示を受けたときの前記作業車両の位置
から終了位置までの
経路を含む領域を、前記未作業領域
として決定する
こと
をさらに含む請求項
1に記載の経路設定方法。
【請求項3】
前記作業経路のうち、
開始位置から前記指示を受けたときの前記作業車両の位
置までの
経路を含む領域を、前記作業済み領域
として決定
すること
をさらに含む請求項
1または2に記載の経路設定方法。
【請求項4】
前記複数の領域区分のうちの第3領域区分は、前記圃場
において、前記作業済み領域と、前記未作業領域とを含む全域を
表す
請求項
1から3のいずれか1項に記載の経路設定方法。
【請求項5】
前記離脱経路を生成することは、前記第3領域区分を選択したとき、前記指示を受けたときの前記作業車両の位置から前記作業領域から離脱する離脱位置までの最短経路を前記離脱経路として生成する
請求項
4に記載の経路設定方法。
【請求項6】
前記離脱経路を生成することは、前記離脱経路の終点において、前記作業車両が設定された離脱方向を向くように前記離脱経路を生成する
請求項1から
5のいずれか1項に記載の経路設定方法。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の経路設定方法と、
前記離脱経路または前記作業経路に沿って自動で前記作業車両を移動させることと、
を含む自律走行方法。
【請求項8】
予め設定された作業経路に沿って圃場を移動している作業車両への指示を受け付け、前記作業車両の位置を取得する状況確認部と、
前記指示と、前記作業車両が前記圃場内を移動することにより前記圃場において作業に使用される作業機械
の種類または機種とに基づき、前記作業車両が前記圃場において作業を行う作業領域から離脱するための離脱経路を生成する離脱経路設定部と、
を備え
、
前記離脱経路設定部は、
前記作業機械の種類または機種に基づき、
前記圃場のうち、前記指示を受けたときに前記作業が終了している作業済み領域を含まない第1領域区分と、
前記圃場のうち、前記指示を受けたときに前記作業が終了していない未作業領域を含まない第2領域区分と、
を含む複数の領域区分から1つを走行領域として選択し、
前記走行領域に全経路が含まれるように、前記離脱経路を生成する
経路設定装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の経路設定装置と、
前記離脱経路または前記作業経路に沿って自動で移動する前記作業車両と、
を備える自律走行システム。
【請求項10】
予め設定された作業経路に沿って圃場を移動している作業車両への指示を受け付け、前記作業車両の位置を取得することと、
前記指示と、前記作業車両が前記圃場内を移動することにより前記圃場において作業に使用される作業機械
の種類または機種とに基づき、前記作業車両が前記圃場において
作業を行う作業領域から離脱するための離脱経路を生成することと、
を演算装置に実行させ
、
前記離脱経路を生成することは、
前記作業機械の種類または機種に基づき、
前記圃場のうち、前記指示を受けたときに前記作業が終了している作業済み領域を含まない第1領域区分と、
前記圃場のうち、前記指示を受けたときに前記作業が終了していない未作業領域を含まない第2領域区分と、
を含む複数の領域区分から1つを走行領域として選択することと、
前記走行領域に全経路が含まれるように、前記離脱経路を生成することと、
を含む経路設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路設定方法、自律走行方法、経路設定装置、自律走行システム、及び経路設定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、圃場内を自動で移動して農作業を行う自律走行システムが研究されている。
【0003】
特許文献1には、圃場内に予め資材の補給や収穫物の排出を行う位置が設定され、作業者の指示に基づき、圃場内で作業中の作業車両を設定された位置に移動する制御装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、圃場内で作業中の作業車両を、作業者の指示に基づき、予め設定された退避領域に移動させる自動走行システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平09-154315号公報
【文献】特開2019-174890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載の技術では、補給位置や退避領域に移動するときに、作業の種類に応じて、走行可能な領域が設定されていない。しかし、圃場で行われている作業の種類によって、走行可能な領域は異なる。例えば、播種を行う作業においては、作業車両は作業済みの領域を走行すべきではない。また、収穫を行う作業においては、作業車両は未作業の領域を走行すべきてはない。
【0007】
上記の状況に鑑み、本開示は、作業の種類に応じて走行可能な領域を設定する経路設定装置を提供することを目的の1つとする。他の目的については、以下の記載及び実施の形態の説明から理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0009】
上記目的を達成するための一実施の形態による経路設定方法は、予め設定された作業経路に沿って圃場(10)を移動している作業車両(130)への指示を受け付け、作業車両(130)の位置を取得することを含む。また、経路設定方法は、指示と、作業車両(130)が圃場(10)内を移動することにより圃場(10)において作業に使用される作業機械とに基づき、作業車両(130)が圃場(10)において作業を行う作業領域(11)から離脱するための離脱経路を生成することを含む。
【0010】
上記目的を達成するための一実施の形態による自律走行方法は、前述の経路設定方法と、離脱経路または作業経路に沿って自動で作業車両(130)を移動させることとを含む。
【0011】
上記目的を達成するための一実施の形態による経路設定装置は、状況確認部(220)と離脱経路設定部(240)とを備える。状況確認部(220)は、予め設定された作業経路に沿って圃場(10)を移動している作業車両(130)への指示を受け付け、作業車両(130)の位置を取得する。離脱経路設定部(240)は、指示と、作業車両(130)が圃場(10)内を移動することにより圃場(10)において作業に使用される作業機械とに基づき、作業車両(130)が圃場(10)において作業を行う作業領域(11)から離脱するための離脱経路を生成する。
【0012】
上記目的を達成するための一実施の形態による自律走行システム(100)は、前述の経路設定装置と、離脱経路または作業経路に沿って自動で移動する作業車両(130)とを備える。
【0013】
上記目的を達成するための一実施の形態による経路設定プログラム(200)は、予め設定された作業経路に沿って圃場(10)を移動している作業車両(130)への指示を受け付け、作業車両(130)の位置を取得することにより演算装置(114)に実行させる。また、経路設定プログラム(200)は、指示と、作業車両(130)が圃場(10)内を移動することで圃場(10)において作業に使用される作業機械とに基づき、作業車両(130)が圃場(10)において作業を行う作業領域(11)から離脱するための離脱経路を生成することを演算装置(114)に実行させる。
【発明の効果】
【0014】
上記の形態によれば、走行車両は、作業の種類に応じた領域を走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】一実施の形態における自律走行システムの構成図である。
【
図3】一実施の形態における自律走行システムの機能ブロック図である。
【
図4】一実施の形態における経路設定プログラムによる処理を表すフローチャートである。
【
図5A】一実施の形態における領域区分を説明するための図である。
【
図5B】一実施の形態における領域区分を説明するための図である。
【
図6】一実施の形態における離脱位置と離脱方向とを説明するための図である。
【
図7A】一実施の形態における離脱経路を生成する処理を表すフローチャートである。
【
図7B】一実施の形態における離脱経路を生成する処理を表すフローチャートである。
【
図8A】一実施の形態における第1経路を生成する処理を説明するための図である。
【
図8B】一実施の形態における第1経路を生成する処理を説明するための図である。
【
図9】一実施の形態における離脱経路を生成する処理を説明するための図である。
【
図10】一実施の形態における離脱経路を生成する処理を説明するための図である。
【
図11】一実施の形態における離脱経路を生成する処理を説明するための図である。
【
図12】一実施の形態における離脱経路を生成する処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態)
本発明の本実施の形態による自律走行システム100を、図面を参照して説明する。本実施の形態において、作業車両130を用いて作業、例えば耕起、整地、施肥、収穫などが行われる圃場10は、
図1に示すように、中央の作業領域11と、作業領域11を囲むように枕地12とを有する。作業領域11は、作業を行って作物を栽培する領域を表す。枕地12は、例えば作業車両130が旋回するために設けられている。作業車両130は、作業機械を牽引する車両、例えばトラクターと、作業機械と一体に形成された車両、例えばコンバインとを含む。作業車両130は、圃場10内を移動することで、圃場10において作業機械を使用した作業を行う。作業車両130は、圃場10で作業を行っているとき、資材、例えば苗を補給するために、作業領域11から離脱して離脱位置13に移動する。このとき、作業の種類に応じて、作業車両130が走行できる走行領域が異なる。例えば、植付を行っている場合、作業車両130は、植付済みの領域に立ち入ることができない場合がある。また、収穫を行っている場合、作業車両130は、未収穫の領域に立ち入ることができない場合がある。このため、本実施の形態による自律走行システム100は、作業に使用される作業機械の機種に応じて、離脱位置13までの経路を生成する。
【0017】
(自律走行システムの構成)
自律走行システム100は、
図2に示すように、端末110と、作業車両130とを備える。端末110は、作業車両130が圃場内で移動する経路を生成する。
【0018】
端末110の構成を説明する。端末110は、入出力装置111と、通信装置112と、記憶装置113と、演算装置114とを備える。端末110は、例えば、コンピュータ、タブレット、携帯電話などを含む。入出力装置111には、演算装置114が処理を実行するための情報が入力される。また、入出力装置111は、演算装置114が処理を実行した結果を出力する。入出力装置111は、様々な入力装置と出力装置とを含み、例えば、キーボード、マウス、マイク、ディスプレイ、スピーカー、タッチパネルなどを含む。
【0019】
通信装置112は、作業車両130の通信装置131と通信を行う。通信装置112は、作業車両130から取得する各情報を演算装置114に転送する。また、演算装置114が生成した信号を作業車両130の通信装置131に転送する。通信装置112は、例えば、無線LAN(Local Area Network)の送受信機、NIC(Network Interface Card)、USB(Universal Serial Bus)などの種々のインタフェースを含む。
【0020】
記憶装置113は、作業車両130の経路を設定するための様々なデータ、例えば経路設定プログラム200を格納する。記憶装置113は、経路設定プログラム200を記憶する非一時的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)として用いられる。経路設定プログラム200は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体1に記録されたコンピュータプログラム製品(computer program product)として提供されてもよく、または、サーバからダウンロード可能なコンピュータプログラム製品として提供されてもよい。
【0021】
演算装置114は、経路設定プログラム200を記憶装置113から読み出し実行することで、作業車両130の経路を設定するための様々なデータ処理を行う。演算装置114は、経路設定プログラム200を実行することで、
図3に示すように、作業経路設定部210と、状況確認部220と、離脱位置設定部230と、離脱経路設定部240とを実現する。例えば、演算装置114は、中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)などを含む。
【0022】
作業経路設定部210は、圃場10で作業が行われるときに作業車両130が移動する作業経路を生成する。状況確認部220は、圃場10における作業車両130の各時刻の位置を取得し、圃場内の作業状況を確認する。離脱位置設定部230は、資材の補給などにおいて、作業車両130が作業領域11から枕地12に離脱して停止する離脱位置13を設定する。離脱経路設定部240は、作業車両130が離脱位置13に移動するときの離脱経路を生成する。
【0023】
次に、作業車両130の構成を説明する。作業車両130は、
図2に示すように、通信装置131と、測位装置132と、制御装置133とを備える。通信装置131は、端末110の通信装置112と通信を行う。通信装置131は、端末110の演算装置114から取得する各情報を制御装置133に転送する。また、制御装置133が生成した信号を端末110の通信装置112に転送する。通信装置131は、例えば、無線LAN(Local Area Network)の送受信機、NIC(Network Interface Card)、USB(Universal Serial Bus)などの種々のインタフェースを含む。
【0024】
測位装置132は、作業車両130の位置を測定する。測位装置132は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)の受信機であり、人工衛星や地上の基地局から信号を受信して、作業車両130の各時刻における位置を測定する。測定された時刻と位置とを表す位置情報は、制御装置133に送信される。
【0025】
制御装置133は、作業車両130の各部を制御して、
図3に示す車両制御部260を実現する。車両制御部260は、測位装置132から作業車両130の位置情報を取得して、作業車両130の操作、例えば加速、操舵、制動などを行い、作業車両130を端末110から取得する経路に沿って移動させる。また、車両制御部260は、作業機械の操作を制御して、圃場10内の作業を行う。例えば、制御装置133は、中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)などの演算装置を含む。
【0026】
(自律走行システムの動作)
作業車両130が圃場10での作業を開始する位置に移動して、ユーザ、例えば圃場10の所有者や生産者が端末110に作業を開始するための操作を入力すると、端末110は、経路設定方法である
図4に示す処理を実行する。ステップS110において、端末110の演算装置114で実現される作業経路設定部210は、作業車両130の車両制御部260に作業経路と、作業の開始とを表す作業開始信号を生成する。車両制御部260は、作業開始信号を受信すると、作業開始信号に表された作業経路に沿って自動で移動するように作業車両130を制御する。また、車両制御部260は、作業開始信号に基づき、作業機械の操作を制御する。なお、作業経路は、作業を開始する前に設定されて、端末110の記憶装置113に格納されている。
【0027】
ステップS120において、状況確認部220は、作業車両130の車両制御部260から位置情報を取得し、取得した位置情報に基づき作業済みの領域と、未作業の領域とを決定する。具体的には、車両制御部260は、測位装置132が測定した位置情報を状況確認部220に送信する。状況確認部220は、取得した位置情報から各時刻における作業車両130の位置を取得して、取得した作業車両130の位置に基づき、作業が終了した領域を決定する。例えば、状況確認部220は、取得した作業車両130の位置の周辺、例えば取得した位置から所定の距離に含まれる範囲を作業が終了した作業済みの領域として決定する。このため、状況確認部220は、作業経路のうち、開始位置から作業車両130の位置までの領域を作業が終了している領域として決定する。また、状況確認部220は、作業経路のうち、作業車両130の位置から終了位置までの領域を作業が終了していない領域として決定する。
【0028】
ステップS130において、状況確認部220は、作業車両130を離脱位置13に離脱させるための離脱操作が端末110の入出力装置111に入力されたかを判定する。例えば、状況確認部220は、端末110の入出力装置111に離脱ボタンを表示して、ユーザによる離脱操作を受け付ける。ユーザが端末110の入出力装置111で離脱ボタンを選択すると、状況確認部220は離脱操作が入力されたと判定する。状況確認部220は、離脱操作が入力されていないと判定すると、ステップS120の処理に戻り、処理を繰り返す。離脱操作が入力されたと状況確認部220が判定すると、処理はステップS140に移行する。
【0029】
ステップS140において、離脱経路設定部240は、作業機械に基づき、作業車両130が走行する走行領域300を決定する。具体的には、離脱経路設定部240は、作業機械、例えば作業機械の種類または機種に基づき、複数、例えば3つの領域区分から1つの領域区分を選択する。領域区分は、作業に応じて決定される走行可能な領域を表し、作業に使用される作業機械の種類または機種と関連付けられている。離脱経路設定部240は、選択された領域区分に基づき、走行領域300を決定する。なお、作業機械の種類または機種は、ユーザにより予め端末110の入出力装置111から入力されてもよく、作業車両130の車両制御部260から入手されてもよい。
【0030】
例えば、作業していない領域を作業車両130が走行すべきでないような作業、例えば耕耘作業や収穫作業のための作業機械が使用されていると仮定する。この場合、離脱経路設定部240は、使用されている作業機械の種類または機種に基づき、未作業の領域を走行禁止と設定し、作業済みの領域と枕地12とを走行可能な領域と設定する領域区分を選択する。このため、選択された領域区分に基づき、離脱経路設定部240は、
図5Aに示すように、未作業の領域を作業車両130の走行を禁止する走行禁止領域310に設定する。また、作業済みの領域、例えば作業車両130が移動した軌道140の周辺の領域と、枕地12とは、作業車両130が走行できる走行領域300に設定される。
【0031】
また、作業済みの領域を作業車両130が走行すべきでないような作業、例えば植付などのための作業機械が使用されていると仮定する。この場合、離脱経路設定部240は、使用されている作業機械の種類または機種に基づき、作業済みの領域を走行禁止と設定し、未作業の領域と枕地12とを走行可能な領域と設定する領域区分を選択する。このため、選択された領域区分に基づき、離脱経路設定部240は、
図5Bに示すように、作業済みの領域を作業車両130の走行を禁止する走行禁止領域310に設定する。また、未作業の領域と、枕地12とは、作業車両130が走行できる走行領域300に設定される。
【0032】
さらに、作業済みの領域と、未作業の領域との両方を作業車両130が走行できるような作業、例えば農薬散布などのための作業機械が使用されていると仮定する。この場合、離脱経路設定部240は、使用されている作業機械の種類または機種に基づき、圃場10の全体を走行可能な領域と設定する領域区分を選択する。このため、選択された領域区分に基づき、離脱経路設定部240は、圃場10全体を作業車両130が走行できる走行領域300に設定する。この場合、離脱経路設定部240は、作業車両130の位置から離脱位置13までの最短経路を離脱経路として生成してもよい。
【0033】
ステップS150において、離脱位置設定部230は、ユーザの入力に応じて、離脱位置13と、離脱位置13に停止したときの進行方向を表す離脱方向350とを選択する。例えば、ユーザは、
図6に示すように、端末110の入出力装置111に表示されている圃場10の地図上で離脱位置13を選択する。離脱位置設定部230は選択された離脱位置13を離脱する位置として設定する。さらに、ユーザは、離脱位置13に作業車両130が停止したときの進行方向を表す離脱方向350を選択する。離脱位置設定部230は、選択された離脱方向350を作業車両130が離脱位置13に到達したときの進行方向として設定する。
【0034】
ステップS160において、離脱経路設定部240は、現在の作業車両130から離脱位置13までの離脱経路を生成する。離脱経路は、全経路が走行領域300に含まれるように生成される。離脱経路の生成方法は、後述する。
【0035】
ステップS170において、離脱経路設定部240は、作業車両130の車両制御部260に離脱経路を表す離脱開始信号を生成する。車両制御部260は、離脱開始信号を受信すると、離脱開始信号に表された離脱経路に沿って自動で移動するように作業車両130を制御する。
【0036】
また、状況確認部220は、作業車両130の車両制御部260から位置情報を取得する。具体的には、車両制御部260は、測位装置132が測定した位置情報を状況確認部220に送信する。状況確認部220は、取得した位置情報から各時刻における作業車両130の位置を取得する。
【0037】
ステップS180において、状況確認部220は、作業車両130が離脱位置13に到達して、停止したことを確認する。状況確認部220は、作業車両130が停止したことを確認すると、処理を終了する。
【0038】
このように、演算装置114は、作業車両130が枕地12に離脱するとき、作業機械の種類または機種に応じて、離脱経路を生成する。生成された離脱経路に沿って、車両制御部260は、作業車両130を移動させる。このように、自律走行方法により、作業車両130は作業領域から離脱することができる。
【0039】
(離脱経路の生成方法)
次に、離脱経路の生成方法を説明する。端末110の演算装置114は、
図7A、7Bに示す処理を実行して、離脱経路を生成する。端末110の演算装置114で実現される離脱経路設定部240は、ステップS205において、作業車両130の位置に基づき、第1経路400を生成する。具体的には、離脱経路設定部240は、
図4のステップS140において選択された領域区分と、作業車両130の位置に基づき、現在の作業車両130の位置を始点として、作業車両130の進行方向に平行な第1経路400を生成する。
【0040】
例えば、未作業の領域を走行可能と設定する領域区分が選択されたとき、離脱経路設定部240は、
図8Aに示すように、現在の作業車両130の位置を始点として、進行方向に所定の距離、例えば1m延びる線分を第1経路400として設定する。この場合、第1経路400は、作業車両130が第1経路400に沿って前進することを表す。また、未作業の領域を走行禁止と設定する領域区分が選択されたとき、離脱経路設定部240は、
図8Bに示すように、現在の作業車両130の位置を始点として、進行方向の逆方向である後方に所定の距離、例えば1m延びる線分を第1経路400として設定する。この場合、第1経路400は、作業車両130が第1経路400に沿って後進することを表す。
【0041】
図7Aに示すステップS210において、離脱経路設定部240は、離脱位置13に基づき、第2経路410を生成する。具体的には、離脱経路設定部240は、
図9に示すように、離脱位置13を終点として、離脱方向350の逆方向に所定の距離、例えば1m延びる線分を第2経路410として設定する。第2経路410は、設定された線分に沿って作業車両130が離脱方向350に進むことを表す。
【0042】
図7Aに示すステップS215において、離脱経路設定部240は、第2経路410の第2始点411が走行領域300に含まれる作業領域11に隣接しているかを判定する。具体的には、離脱経路設定部240は、作業車両130が第2経路410の第2始点411に作業領域11から直接移動できるかを判定する。例えば、
図9に示すように、第2経路410の第2始点411に隣接する作業領域11が走行禁止領域310であるとき、離脱経路設定部240は、作業車両130が第2経路410の第2始点411に作業領域11から直接移動できないと判定し、ステップS220の処理を実行する。第2経路410の第2始点411に隣接する作業領域11が走行領域300であるとき、離脱経路設定部240は、作業車両130が第2経路410の第2始点411に作業領域11から直接移動できると判定し、ステップS225の処理を実行する。
【0043】
ステップS220において、離脱経路設定部240は、第2経路410の第2始点411から枕地12に沿って、走行領域300に含まれる作業領域11に隣接するまで第2経路410を延長する。例えば、離脱経路設定部240は、
図9に示すように、第2経路410の始点から、枕地12に沿った延長経路412を生成する。延長経路412は、延長経路412の終点から、延長経路412の延長始点413が走行領域300に含まれる作業領域11に隣接する位置まで延ばされる。このため、延長経路412の延長始点413は、作業車両130が作業領域11から直接移動できる位置に設定される。離脱経路設定部240は、第2経路410に延長経路412を加えた経路を第2経路410として以降の処理を行う。
【0044】
ステップS225において、離脱経路設定部240は、第2経路410に接する第1円420を生成して、作業車両130が第2経路410に進入する経路を生成する。
図9に示すように、離脱経路設定部240は、第2経路410の始点、この場合、第2経路410を延長した延長経路412の延長始点413を接点とし、第2経路410、この場合、延長経路412に接する第1円420を生成する。より詳細には、第1円420は、延長経路412の延長始点413において作業車両130の進行方向に延びる直線に接するように生成される。
図9の例において、作業車両130は、第1円420の円周に沿って右方向に進行方向を変更するように、第1円420の円周に沿って時計周りに移動することで、延長経路412に沿って移動する。ここで、第1円420は、作業車両130が旋回可能な最小半径を表す最小回転半径を有する。
【0045】
図7Bに示すステップS230において、離脱経路設定部240は、第1経路400の第1終点401を通り第1円420に接する第1接線430と、第1経路400との成す角度が閾値未満であるかを判定する。具体的には、離脱経路設定部240は、
図9に示すように、第1経路400の第1終点401を通り、第1円420に接する第1接線430を生成する。次に、
図10に示すように、第1経路400と第1接線430との成す第1角度450が算出される。離脱経路設定部240は、算出された第1角度450を閾値と比較して、第1角度450が閾値より小さいとき、ステップS235の処理を実行する。離脱経路設定部240は、第1角度450が閾値以上のとき、ステップS240の処理を実行する。なお、閾値は、作業車両130が進行方向を変更するときに回転半径を無視できる角度に基づき決定される。例えば作業車両130の進行方向を変更する角度が45度以下であれば作業車両130の回転半径を無視できるとき、閾値は135度である。
【0046】
ステップS235において、離脱経路設定部240は、作業車両130が第1円420に向かって旋回するように、第1経路400の第1終点401を接点とする第2円440を生成する。
図11に示すように、離脱経路設定部240は、第1経路400の第1終点401を接点とし、第1経路400に接する第2円440を生成する。より詳細には、第2円440は、第1経路400を含む直線に接するように生成される。
図9の例において、作業車両130は、第2円440の円周に沿って右方向に進行方向を変更するように、第2円440の円周に沿って時計周りに移動することで、作業車両130の進行方向を第1円420に向ける。ここで、第2円440は、作業車両130が旋回可能な最小半径を表す最小回転半径を有する。
【0047】
ステップS240において、離脱経路設定部240は、第1円420と第2円440とに接する第2接線460を生成する。
図11に示すように、第2接線460は、作業車両130が第2円440から第1円420に移動するときの経路を表す。第2円440の円周は、作業車両130が時計回りに移動する経路である。このため、離脱経路設定部240は、作業車両130が第2接線460に沿って移動するとき、第2円440が作業車両130の右方向に位置するように、第2接線460を生成する。また、第1円420の円周も、作業車両130が時計回りに移動する経路である。このため、離脱経路設定部240は、作業車両130が第2接線460に沿って移動するとき、第1円420が作業車両130の右方向に位置するように、第2接線460を生成する。このように、第2接線460は、作業車両130が第1円420の円周上と第2円440の円周上とを移動するときに旋回する方向に応じて、生成される。
【0048】
ステップS245において、離脱経路設定部240は、生成された各円、線分をつなぐような離脱経路500を生成する。
図12に示す例において、離脱経路設定部240は、第1経路400と、第2円440の円周と、第2接線460と、第1円420の円周と、延長経路412と、第2経路410とをつなぐ経路を離脱経路500として設定する。具体的には、
図11に示す第2円440の円周うち、第1経路400との接点(第1終点401)を始点とし、第2接線460との接点を終点として時計回りにつないだ円弧が
図12に示す離脱経路500の一部として設定される。
図11に示す第2接線460のうち、第2円440との接点を始点とし、第1円420との接点を終点とした線分が離脱経路500の一部として設定される。第1円420の円周のうち、第2接線460との接点を始点とし、延長経路412との接点(延長始点413)を終点として時計回りにつないだ円弧を離脱経路500の一部として設定される。このように、離脱経路設定部240は、第1経路400と、第2円440のうち経路として設定される円弧と、第2接線460のうち経路として設定される線分と、第1円420のうち経路として設定される円弧と、延長経路412と、第2経路410とをつなぐ経路を
図12に示す離脱経路500として生成する。
【0049】
なお、ステップS230においてNOと判定されたとき、具体的には第1接線430と第1経路400との成す第1角度450が閾値以上であるとき、離脱経路設定部240は、第2円440を生成しない。このため、離脱経路設定部240は、例えば生成された第1経路400と、第1接線430と、第1円420の円周と、延長経路412と、第2経路410とをつなぐ経路を離脱経路500として生成する。
【0050】
また、ステップS215においてYESと判定されたとき、具体的には第2経路410の第2始点411に作業車両130が作業領域11から直接移動できるとき、離脱経路設定部240は、延長経路412を生成しない。このため、離脱経路設定部240は、例えば生成された第1経路400と、第2円440の円周と、第2接線460と、第1円420の円周と、第2経路410とをつなぐ経路を離脱経路500として生成する。
【0051】
ステップS250において、離脱経路設定部240は、生成された離脱経路500が走行禁止領域310を通過するかを判定する。離脱経路500が走行禁止領域310を通過するとき、離脱経路500を変更するため、離脱経路設定部240は、ステップS255を実行する。離脱経路500が走行禁止領域310を通過しないとき、離脱経路設定部240は、生成された離脱経路500を、作業車両130が離脱位置13に離脱するための経路として決定して、離脱経路500の生成を終了する。
【0052】
ステップS255において、離脱経路設定部240は、生成された離脱経路500のうち、走行禁止領域310に含まれる経路を、走行禁止領域310と走行領域300との境界に沿った経路に変更する。具体的には、離脱経路設定部240は、生成された離脱経路500に沿って作業車両130が移動するとき、走行禁止領域310に進入する位置を始点として抽出し、走行禁止領域310から走行領域300に進入する位置を終点として抽出する。離脱経路設定部240は、抽出した始点から終点までを、走行禁止領域310と走行領域300との境界に沿って結ぶ迂回経路を生成する。離脱経路設定部240は、離脱経路500のうち、走行禁止領域310に含まれる経路を、生成した迂回経路に変更する。これにより、走行禁止領域310を通過しない離脱経路500が生成される。離脱経路設定部240は、新たに生成された離脱経路500を、作業車両130が離脱位置13に離脱するための経路として決定して、離脱経路500の生成を終了する。
【0053】
以上のように、自律走行システム100は、作業車両130が作業領域11から離脱するときに、作業機械の種類または機種に応じて離脱位置13までの経路を生成し、生成した経路に沿って作業車両130を移動させることができる。また、離脱方向350が設定されることで、自律走行システム100は、ユーザが指定する方向、例えば作業車両130から乗り降りしやすい方向を向いて、作業車両130を離脱位置13に停止させることができる。
【0054】
(変形例)
実施の形態において説明した構成は一例であり、機能を阻害しない範囲で構成を変更することができる。状況確認部220は、離脱操作の入力に基づき、作業車両130を作業領域11から離脱する例を示したが、これに限定されない。状況確認部220は、所定の指示に基づき、作業車両130を作業領域11から離脱させてもよい。例えば、状況確認部220は、作業車両130に搭載された資材、例えば苗、肥料、農薬などを補給することを表す補給指示により、作業車両130を離脱させてもよい。この場合、状況確認部220は、作業車両130から搭載されている資材の量を取得する。取得した資材の量が閾値より小さいとき、状況確認部220は、資材を補給するための補給指示が入力されたと判定する。また、ユーザが資材を補給するための操作を入力することで、状況確認部220は、補給指示が入力されたと判断してもよい。
【0055】
また、状況確認部220は、収穫された作物を排出することを表す排出指示に基づき、作業車両130を作業領域11から離脱させてもよい。例えば、状況確認部220は、作業車両130から貯留されている作物の量を取得する。取得した作物の量が閾値より大きいとき、状況確認部220は、作物を排出するための排出指示が入力されたと判定する。また、ユーザが資材を補給するための操作を入力することで、状況確認部220は、排出指示が入力されたと判断してもよい。
【0056】
状況確認部220は、作業車両130が作業経路に沿って移動しているときに作業済み領域を判定する例を示したが、これに限定されない。状況確認部220は、離脱操作が入力されたときに、作業済み領域と、未作業の領域とを区別できればよい。例えば、状況確認部220は、離脱操作が入力されたときの作業車両130の位置に基づき、作業済み領域と、未作業の領域とを区別してもよい。例えば、状況確認部220は、作業経路のうち、開始位置から作業車両130の位置までの領域を作業済み領域として決定する。また、状況確認部220は、作業経路のうち、作業車両130の位置から終了位置までの領域を未作業の領域として決定する。
【0057】
離脱経路設定部240は、作業機械の種類または機種に基づき、3つの領域区分から1つの領域区分を選択する例を示したが、これに限定されない。離脱経路設定部240は、2つ以上の領域区分から1つの領域区分を選択してもよい。例えば、領域区分がユーザにより予め設定されてもよい。ユーザは、圃場10内の所定の領域を走行禁止領域310とする領域区分を設定され、作業機械の種類または機種と関連付けられてもよい。設定された領域区分は、記憶装置113に格納される。
【0058】
測位装置132は、作業車両130の位置を測定できれば、任意に選択されてもよい。例えば、測位装置132は、作業車両130の速度、進行方向などを取得して、作業車両
130の移動経路を算出することで、作業車両130の位置を測定してもよい。
【0059】
以上において説明した実施の形態および変形例は一例であり、各実施の形態および変形例で説明した構成は、機能を阻害しない範囲で、任意に変更してもよく、または/および、任意に組み合わせてもよい。さらに、必要となる機能を実現できれば、実施の形態および変形例で説明した一部の機能を省略してもよい。例えば、端末110は、複数の端末110で実現してもよく、端末110は、状況確認部220と離脱経路設定部240とを備える経路設定装置であってもよい。また、端末110は、車両制御部260を備える自律走行システムであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 :記憶媒体
10 :圃場
11 :作業領域
12 :枕地
13 :離脱位置
100 :自律走行システム
110 :端末
111 :入出力装置
112 :通信装置
113 :記憶装置
114 :演算装置
130 :作業車両
131 :通信装置
132 :測位装置
133 :制御装置
140 :軌道
200 :経路設定プログラム
210 :作業経路設定部
220 :状況確認部
230 :離脱位置設定部
240 :離脱経路設定部
260 :車両制御部
300 :走行領域
310 :走行禁止領域
350 :離脱方向
400 :第1経路
401 :第1終点
410 :第2経路
411 :第2始点
412 :延長経路
413 :延長始点
420 :第1円
430 :第1接線
440 :第2円
450 :第1角度
460 :第2接線
500 :離脱経路