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特許7487110HSP90標的化コンジュゲート及びその製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】HSP90標的化コンジュゲート及びその製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20240513BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 51/02 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240513BHJP
   C07D 403/04 20060101ALN20240513BHJP
   C07D 403/14 20060101ALN20240513BHJP
   C07D 249/12 20060101ALN20240513BHJP
   C07D 249/10 20060101ALN20240513BHJP
   C07D 401/10 20060101ALN20240513BHJP
   C07D 209/44 20060101ALN20240513BHJP
   C07D 261/18 20060101ALN20240513BHJP
   C07D 473/34 20060101ALN20240513BHJP
   C07D 471/04 20060101ALN20240513BHJP
   C07D 231/56 20060101ALN20240513BHJP
   C07D 225/06 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K31/454
A61K31/496
A61K31/4196
A61K51/02
A61K51/00 100
A61K51/02 100
A61P35/00
A61P43/00 121
C07D403/04
C07D403/14
C07D249/12
C07D249/10
C07D401/10
C07D209/44
C07D261/18
C07D473/34
C07D471/04 107E
C07D231/56 A
C07D225/06
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020554483
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019025524
(87)【国際公開番号】W WO2019195384
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】62/653,106
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/731,543
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/787,799
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519210572
【氏名又は名称】フュージョン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Fusion Pharmaceuticals Inc.
【住所又は居所原語表記】270 Longwood Road South Hamilton,Ontario L8P 0A6,Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ビロドー、マーク ティ.
(72)【発明者】
【氏名】モロー、ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】カディヤラ、スダカル
(72)【発明者】
【氏名】ウースター、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、ブライアン エイチ.
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/158644(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/068412(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/147240(WO,A1)
【文献】YAKUGAKU ZASSHI,2015年,Vol. 135, No. 4,pp. 551-556
【文献】YAKUGAKU ZASSHI,2008年,Vol. 128, No. 3,pp. 323-332
【文献】Nuclear Medicine and Biology,2010年,Vol. 37,pp. 741-750
【文献】J Radioanal Nucl Chem,2011年,Vol. 287,pp. 199-209
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
31/00-33/44
51/00-51/12
A61P 1/00-43/00
C07D 201/00-521/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンカーを介して少なくとも1つのHSP90標的化部分に結合した活性薬剤を含むコンジュゲートであって、前記活性薬剤は放射性物質を含むか又は放射性物質に任意選択で結合するキレート剤を含み、
前記HSP90標的化部分は下記式
【化1】

のものであり、式中、X、Y、及びZは、独立に、適切な置換を有しかつ環の対応する原子及び芳香族性の価数を満たすCH又はNであり;Rは、アルキル、アリール、ハロゲン化物、カルボキサミド又はスルホンアミドであり;Rは、前記リンカーを介して前記活性薬剤に結合された、任意選択で置換されているアルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり;Rは、SH、OH、NR又は-CONHRであり、R及びRは、独立に、H、アルキル、アリール、又はヘテロアリールであり;Rは、アルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、
前記放射性物質は、I-124、I-131、In-111、Re-186、Re-188、Y-90、Bi-212、At-211、Sr-89、Ho-166、Sm-153、Cu-60、Lu-177、Ac-225、Bi-213、Th-227、Pb-212、Ra-223、P-32、Sc-47、Br-76、Br-77、Rh-105、Pd-103、Ag-111、Tc-99m、Co-57、Ga-66、Ga-67、Ga-68、Kr-81m、Rb-82、Sr-92、Tl-201、Y-86、Zr-89、C-11、N-13、O-15、F-18、Y-86、Cu-67、Cu-64、Pb-203、Pr-142、Pm-149、Gd-159、Ir-194及びPt-199からなる群から選択される放射性同位元素を含み、
前記キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA);DOTA誘導体であるDO3A、C-DOTA、PA-DOTA、DODASA、lys-DOTA、DOTASA、及びDOTAGA;ジエチレントリアミン-N,N,N’,N”,N”-ペンタ酢酸(DTPA);DTPA誘導体である2-(p-SCN-Bz)-6-メチル-DTPA、CHX-A”-DTPA、及びDTPAの環状無水物(CA-DTPA);1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-7-三酢酸(NOTA);NOTA誘導体であるBCNOTA、p-NCS-Bz-NOTA、及びBCNOT;6-ヒドラジノニコチンアミド(HYNIC);エチレンジアミン四酢酸(EDTA);N,N’-エチレン-ジ-L-システイン;N,N’-ビス(2,2-ジメチル-2-メルカプトエチル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(6SS);1-(4-カルボキシメトキシベンジル)-N,N’-ビス[(2-メルカプト-2,2-ジメチル)エチル]-1,2-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(B6SS);デフェロキサミン(DFO);1,1,1-トリス(アミノメチル)エタン(TAME);トリス(アミノメチル)エタン-N,N,N’,N’,N”,N”-六酢酸(TAME Hex);O-ヒドロキシベンジルイミノ二酢酸;1,4,7-トリアザシクロノナン(TACN);1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(サイクレン);1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA);1-(1-カルボキシ-3-カルボキシプロピル)-4,7-ビス-(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン(NODAGA);1,4,7-トリス(2-メルカプトエチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン(トリアザシクロノナン-TM);1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N”-トリス(メチレンホスホン)酸(NOTP);1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N”,N”’-テトラ酢酸(TETA);1,4,7,10,13-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N”,N”’,N””-ペンタ酢酸(PEPA)、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-N,N’,N”,N”’,N””,N””’-ヘキサ酢酸(HEHA);及び1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(TCMC)からなる群から選択される非環式又は大環状物質である、コンジュゲート。
【請求項2】
前記放射性物質は、Cu-64、Cu-67、Ga-66、Ga-67、Ga-68、Zr-89、Y-90、In-111、Lu-177、Bi-212、Bi-213、Pb-212、Ra-223、Ac-225、及びTh-227からなる群から選択される放射性同位元素を含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記放射性同位元素はIn-111、Y-90、Lu-177、Ac-225、又はZr-89である、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記活性薬剤は、前記放射性同位元素に結合するキレート剤を含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記キレート剤はポリアミノカルボン酸塩剤である、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N,N’,N”,N”’-四酢酸(DOTA)、又はDOTAGAである、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記キレート剤は、1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N”-三酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N”,N”’-四酢酸(DOTA)、1,4,7,10,l3-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N”,N”’,N””-五酢酸(PEPA)、及び1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-N,N’,N”,N”’,N””,N””’-六酢酸(HEHA)からなる群から選択される大環状物質である、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
2つのHSP90標的化部分を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記HSP90標的化部分は、下記に示すTM1~TM5及びTM8
【化2-1】

【化2-2】

からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記リンカーは、エステル基、ジスルフィド基、アミド基、アシルヒドラゾン基、エーテル基、カルバメート基、カーボネート基、又は尿素基を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記リンカーは切断可能なリンカーである、請求項1~10のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
50,000Da未満、40,000Da未満、30,000Da未満、20,000Da未満、15,000Da未満、10,000Da未満、8,000Da未満、5,000Da未満、3,000Da未満、2000Da未満、1500Da未満、1000Da未満、又は500Da未満の分子量を有する請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記HSP90標的化部分として
【化3】

及び放射性同位元素Lu-177又はAc-225を含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
下記に示すコンジュゲート1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【化4-1】

【化4-2】

【化4-3】
【請求項15】
それぞれ放射性物質を含む、下記に示すコンジュゲート1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【化5-1】

【化5-2】

【化5-3】
【請求項16】
Lu177(177Lu)をキレートした、下記に示すコンジュゲート1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択されるコンジュゲートである、請求項15に記載のコンジュゲート。
【化6-1】

【化6-2】

【化6-3】
【請求項17】
血清タンパク質に結合する反応基を含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
前記血清タンパク質はアルブミンである、請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
下記に示すコンジュゲート10又はその薬学的に許容される塩である、請求項17に記載のコンジュゲート。
【化7】
【請求項20】
Lu177(177Lu)をキレートした、下記に示すコンジュゲート10である、請求項19に記載のコンジュゲート。
【化8】
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載のコンジュゲート及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項22】
細胞増殖を低減するための医薬の製造における、請求項1~20のいずれか一項に記載のコンジュゲートの使用。
【請求項23】
前記細胞ががん細胞である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記がん細胞が、小細胞肺がん細胞、非小細胞肺がん細胞、肉腫細胞、膵臓がん細胞、乳がん細胞、又は結腸がん細胞である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
がんを治療するための医薬の製造における、請求項1~20のいずれか一項に記載のコンジュゲートの使用。
【請求項26】
前記がんが、小細胞肺がん細胞、非小細胞肺がん細胞、肉腫細胞、膵臓がん細胞、乳がん細胞、又は結腸がん細胞である、請求項25に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ショックタンパク質90(HSP90)を含めた熱ショックタンパク質を標的とする分子の、例えば癌治療への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱ショックタンパク質90(HSP90)は、多数のクライアントタンパク質の安定性及び機能を維持するために重要な分子シャペロンである。それは、抗癌薬開発の主要な治療標的と考えられる。
【発明の概要】
【0003】
本願は、リンカーによってHSP90標的化部分にカップリングした活性薬剤を含むコンジュゲート及びかかるコンジュゲートを含む医薬組成物を提供する。かかるコンジュゲートを作製及び使用する方法もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】NCI-H460腫瘍におけるコンジュゲート1の生体内分布を示す。
図1B】NCI-H69腫瘍におけるコンジュゲート1の生体内分布を示す。
図1C】H460腫瘍におけるコンジュゲート1の生体内分布を示す。
図2A】NCI-H69腫瘍におけるコンジュゲート2の生体内分布を示す。
図2B】NCI-H460腫瘍におけるコンジュゲート2の分布を示す。
図3A】NCI-H69腫瘍におけるコンジュゲート3の生体内分布を示す。
図3B】NCI-H460腫瘍におけるコンジュゲート3の生体内分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本出願人らは、活性薬剤を含むHSP90標的化コンジュゲートを設計した。かかる標的化は、例えば、部位における活性薬剤の量を改善し、対象に対する活性薬剤毒性を低下させることができる。本発明のHSP90標的化コンジュゲートは腫瘍への浸透が深く且つ速い。HSP90標的化コンジュゲートの蓄積性が高く、滞留時間が長いことにより、放射性核種、化学療法剤、キナーゼ阻害薬、又は免疫腫瘍学的修飾因子など、細胞毒性及び非細胞毒性のペイロードの使用が可能になる。
【0006】
本明細書で使用されるとき、「毒性」は、物質又は組成物が細胞、組織、生物又は細胞環境にとって有害又は有毒となる能力を指す。低毒性とは、物質又は組成物が細胞、組織、生物又は細胞環境にとって有害又は有毒となる能力の低下を指す。かかる毒性の低下又は低毒性は、標準測定値を基準としたものか、治療を基準としたものか、又は治療がない場合を基準としたものであり得る。
【0007】
毒性は、更に対象の体重減少を基準として計測されてもよく、ここでは体重の15%超、20%超又は30%超の体重減少が毒性の指標となる。嗜眠及び全身倦怠感を含む患者の症状呈示の尺度など、毒性の他の尺度が計測されてもまたよい。好中球減少又は血小板減少もまた毒性の尺度であり得る。
【0008】
毒性の薬理学的指標としては、AST/ALT値の上昇、神経毒性、腎損傷、GI障害などが挙げられる。
加えて、HSP90を過剰発現しない細胞に対する活性薬剤に連結されたHSP90標的化部分を含むコンジュゲートの毒性は、その活性薬剤単独の毒性と比較して低下していると予想される。いかなる特定の理論にも拘束されないが、本出願人らは、この特徴が、コンジュゲートされた活性薬剤の正常細胞における滞留能力が腫瘍細胞と比べて低下していることに起因すると考える。
【0009】
いくつかの実施形態において、活性薬剤及び標的化部分は、リンカーによって連結されてコンジュゲートとなった場合、相乗効果を有する。コンジュゲートの有効性は、活性薬剤及び/又は標的化部分単独よりも優れる。
【0010】
いくつかの実施形態において、活性薬剤の効力は、それが切断可能なリンカーによって標的化部分に連結されると低下する。腫瘍部位などの標的部位でリンカーが切断されると、活性薬剤が放出され、完全な効力が回復する。
【0011】
本発明の目的は、時間空間的薬物送達のための改良された化合物、組成物、及び製剤を提供することである。
更に、本発明の目的は、時間空間的薬物送達のための改良された化合物、組成物、及び製剤を作製する方法を提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、改良された化合物、組成物、及び製剤をそれを必要としている個体に投与する方法を提供することでもある。
I.コンジュゲート
コンジュゲートは、標的化部分、例えばHSP90に結合することのできる分子にリンカーによって付加された活性薬剤又はそのプロドラッグを含む。本コンジュゲートは、単一の活性薬剤と単一の標的化部分との間のコンジュゲート、例えば、構造X-Y-Z[式中、Xは標的化部分であり、Yはリンカーであり、及びZは活性薬剤である]を有するコンジュゲートであり得る。
【0013】
一部の実施形態において、本コンジュゲートは、2つ以上の標的化部分、2つ以上のリンカー、2つ以上の活性薬剤、又はこれらの任意の組み合わせを含有する。本コンジュゲートは任意の数の標的化部分、リンカー、及び活性薬剤を有し得る。本コンジュゲートは、構造X-Y-Z-Y-X、(X-Y)-Z、X-(Y-Z)、X-Y-Z、X-Y-Z、(X-Y-Z)、(X-Y-Z-Y)-Z[式中、Xは標的化部分であり、Yはリンカーであり、Zは活性薬剤であり、及びnは1~50、2~20、例えば、1~5の整数である]を有し得る。X、Y、及びZは出現毎に同じ又は異なってもよく、例えば本コンジュゲートは2種類以上の標的化部分、2種類以上のリンカー、及び/又は2種類以上の活性薬剤を含有し得る。
【0014】
本コンジュゲートは、単一の活性薬剤に付加された2つ以上の標的化部分を含有し得る。例えば、本コンジュゲートは、複数の標的化部分が各々異なるリンカーを介して付加された活性薬剤を含有し得る。本コンジュゲートは、構造X-Y-Z-Y-X[式中、各Xは、同じであっても又は異なってもよい標的化部分であり、各Yは、同じであっても又は異なってもよいリンカーであり、及びZは活性薬剤である]を有し得る。
【0015】
本コンジュゲートは、単一の標的化部分に付加された2つ以上の活性薬剤を含有し得る。例えば本コンジュゲートは、複数の活性薬剤が各々異なるリンカーを介して付加された標的化部分を含み得る。本コンジュゲートは、構造Z-Y-X-Y-Z[式中、Xは標的化部分であり、各Yは、同じであっても又は異なってもよいリンカーであり、及び各Zは、同じであっても又は異なってもよい活性薬剤である]を有し得る。
【0016】
A.活性薬剤
本明細書に記載されるとおりのコンジュゲートは、少なくとも1つの活性薬剤(第1の活性薬剤)を含有する。本コンジュゲートは、第1の活性薬剤と同じであることも又は異なることもある2つ以上の活性薬剤を含有し得る。活性薬剤は、治療用、予防用、診断用、又は栄養用薬剤であってもよい。種々の活性薬剤が当該技術分野において公知であり、それら又はそれらの類似体及び誘導体は、本明細書に記載されるコンジュゲートに使用され得る。活性薬剤は、タンパク質又はペプチド、小分子、核酸又は核酸分子、脂質、糖、糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、又はこれらの組み合わせであってもよい。一部の実施形態において、活性薬剤は、抗原、アジュバント、放射性物質、イメージング剤(例えば蛍光部分)又はポリヌクレオチドである。一部の実施形態において、活性薬剤は有機金属化合物又は放射性元素である。活性薬剤は、リンカーへの共有結合のための化学的機能を有するか、又はリンカーへの共有結合のために類似体又は誘導体に改変されている。
【0017】
特定の実施形態において、本コンジュゲートの活性薬剤は、コンジュゲートの構成成分のモル重量百分率の合計が100%になるようにして約1%~約10%、又は約10%~約20%、又は約20%~約30%、又は約30%~約40%、又は約40%~約50%、又は約50%~約60%、又は約60%~約70%、又は約70%~約80%、又は約80%~約90%、又は約90%~約99%の所定のモル重量百分率を占める。コンジュゲートの1つ又は複数の活性薬剤の量はまた、1つ又は複数の標的化リガンドに対する比率として表してもよい。例えば、本教示は、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4;1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、又は1:10の活性薬剤対リガンド比を提供する。
【0018】
放射性物質
いくつかの実施形態では、活性薬剤Zは、放射性核種(放射性同位元素など)に結合する放射性物質又は化学部分、例えば金属キレート基である。様々な放射性核種には、α、β、γ、及びオージェ放射を含む放射特性があり、治療及び/又は診断目的で使用され得る。例えば、活性薬剤Zは、Y-90、Y-86、1-311、Re-186、Re-188、Y-90、Bi-212、At-211、Zr-89、Sr-89、Ho-166、Sm-l53、Cu-67、Cu-64、Lu-l77、Ac-225、Pb-203、Bi-213、Th-227、Pb-2l2、Ra-223、P-32、Sc-47、Br-77、Rh-l05、Pd-l03、Ag-111、Pr-142、Pm-149、Gd-159、Ir-194及びPt-199などの放射性同位元素を含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、活性薬剤は、放射性標識(例えば、放射性同位元素)などの画像化プローブを含む。イメージング用の放射性同位元素の非限定的な例には、I-124、I-131、In-111、Re-186、Re-188、Y-90、Bi-212、At-211、Sr-89、Ho-166、Sm-153、Cu-60、Cu-67、Cu-64、Lu-177、Ac-225、Bi-213、Th-227、Pb-212、Ra-223、P-32、Sc-47、Br-76、Br-77、Rh-105、Pd-103、Ag-111、Pr-142、Pm-149、Gd-159、In-111、Ir-194、Pt-199、Tc-99m、Co-57、Ga-66、Ga-67、Ga-68、Kr-81m、Rb-82、Sr-92、Tl-201、Y-86、Zr-89、C-11、N-13、O-15及びF-18が含まれる。
【0020】
いくつかの実施形態において、活性薬剤Zは、放射性物質、キレート剤、又はキレート剤に結合した放射性物質を含む。キレート剤に結合した放射性物質(例えば、放射性同位元素)を含むコンジュゲートは、キレート剤のみと、又は非放射性同位体に結合したキレート剤とのコンジュゲートの放射性アナログである。
【0021】
キレート剤は、金属核種を含む金属に結合する金属キレート剤であり得る。キレート剤はまた、非金属活性薬剤に結合する部分(moiety)であり得る。キレート剤は、非環式又は大環状であってもよい。キレート剤の非限定的な例には、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA);DOTA誘導体:DO3A;ジエチレントリアミン-N,N,N’,N”,N”-ペンタ酢酸(DTPA);DTPA誘導体:2-(p-SCN-Bz)-6-メチル-DTPA、CHX-A”-DTPA、及びDTPAの環状無水物(CA-DTPA);1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-7-三酢酸(NOTA);NOTA誘導体(例えば、BCNOTA、p-NCS-Bz-NOTA、BCNOT);6-ヒドラジノニコチンアミド(HYNIC);エチレンジアミン四酢酸(EDTA);N,N’-エチレン-ジ-L-システイン;N,N’-ビス(2,2-ジメチル-2-メルカプトエチル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(6SS);1-(4-カルボキシメトキシベンジル)-N,N’-ビス[(2-メルカプト-2,2-ジメチル)エチル]-1、2-エチルエンジエイン-N,N’-二酢酸(B6SS);デフェロキサミン(DFO);1,1,1-トリス(アミノメチル)エタン(TAME);トリス(アミノメチル)エタン-N,N,N’,N’,N”,N”-六酢酸(TAME Hex);O-ヒドロキシベンジルイミノ二酢酸;1,4,7-トリアザシクロノナン(TACN);1,4,7,10-トレトラアザシクロドデカン(サイクレン);1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA);1-(1-カルボキシ-3-カルボキシプロピル)-4,7-ビス-(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン(NODAGA);1,4,7-トリス(2-メルカプトエチル)-1,4,7-トリアザシルクロナン(トリアザシクロノナン-TM);1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N”-トリス(メチレンホスホン)酸(NOTP);1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N”,N”’-テトラ酢酸(TETA);1,4,7,10,13-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N”,N”’,N””-ペンタ酢酸(PEPA)、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-N,N’,N”,N”’,N””,N””-ヘキサ酢酸(HEHA);1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(TCMC);及びそれらの誘導体又は類似体が含まれる。
【0022】
いくつかの実施形態において、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N、N’、N”、N”’-四酢酸(DOTA)、又はその誘導体などのポリアミノカルボン酸塩剤である。それらは、Fe、In、Ga、Zr、Y、Bi、Pb、又はAcなどの金属と配位することができる。
【0023】
【化1】
【0024】
いくつかの実施形態において、キート剤は大環状物質である:1,4,7-トリアザシクロノナン-N、N’、N”-三酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N”,N”’-四酢酸(TETA)、1,4,7,10,l3-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N”,N”’,N””-五酢酸(PEPA)、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-N,N’,N”,N”’,N””,N””’-六酢酸(HEHA)、又はそれらの誘導体。
【0025】
DTPA及びその誘導体の非限定的な例は次のとおりである。
【0026】
【化2】
【0027】
DOTA及びその誘導体の非限定的な例は次のとおりである。
【0028】
【化3】
【0029】
いくつかの実施形態において、本開示のコンジュゲートは、キレート剤として、DOTA、DOTAGA、又はそれらの任意の誘導体/類似体を含む。Eisenwienerら、Bioorg Med Chem Lett.vo1.10(18):2133(2000)(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)、に開示されている任意のキレート剤、例えば1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸、α-(2-カルボキシエチル)(DOTAGA)又は1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸、10-(1,2-ジカルボキシエチル)(DOTASA)を、キレート剤として使用することができる。
【0030】
【化4】
【0031】
キレート剤の他の非限定的な例は次のとおりである。
【0032】
【化5】
【0033】
B.リンカー
本コンジュゲートは、活性薬剤と標的化部分とをつなぐ1つ以上のリンカーを含有する。リンカーYが1つ以上の活性薬剤と1つ以上の標的化リガンドとに結合することによってコンジュゲートが形成される。リンカーYは、エステル結合、ジスルフィド、アミド、アシルヒドラゾン、エーテル、カルバメート、カーボネート、スルホンアミド、アルキル、アリール、ヘテロアリール、チオエーテル、及び尿素から独立して選択される官能基によって、標的化部分X及び活性薬剤Zに結合される。あるいは、リンカーは、チオールとマレイミド、アジドとアルキンとの間の結合によって提供されるような基によって、標的化リガンド又は活性薬剤のいずれかに結合させることができる。リンカーは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここでアルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、任意選択で、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換されており、ここでカルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルの各々は、任意選択で、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換されている。
【0034】
いくつかの実施形態において、リンカーは、切断可能である切断可能官能基を含む。切断可能官能基はインビボで加水分解され得るか、又は酵素的に、例えばカテプシンBによって加水分解されるように設計され得る。「切断可能」リンカーとは、本明細書で使用されるとき、物理的又は化学的に切断されることのできる任意のリンカーを指す。物理的切断の例は、光、放射線放射又は熱による切断であり得る一方、化学的切断の例には、酸化還元反応による切断、加水分解、pH依存的切断又は酵素による切断が含まれる。例えば、切断可能官能基はジスルフィド結合又はカルバメート結合であってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態においてリンカーのアルキル鎖は、任意選択で、-O-、-C(=O)-、-NR、-O-C(=O)-NR-、-S-、-S-S-から選択される1つ以上の原子又は基によって分断されていてもよい。リンカーは、コハク酸、グルタル酸又はジグリコール酸のジカルボン酸誘導体から選択され得る。一部の実施形態において、リンカーYはX’-R-Y’-R-Z’であってもよく、及び本コンジュゲートは式Ia:
【0036】
【化6】
【0037】
[式中、Xは上記に定義した標的化部分であり;Zは活性薬剤であり;X’、R、Y’、R及びZ’は本明細書に定義するとおりである]に係る化合物であり得る。
X’は存在しないか、又はカルボニル、アミド、尿素、アミノ、エステル、アリール、アリールカルボニル、アリールオキシ、アリールアミノ、1つ以上の天然又は非天然アミノ酸、チオ又はスクシンイミドから独立して選択されるかのいずれかであり;R及びRは存在しないか、又はアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ポリエチレングリコール(2~30単位)で構成されるかのいずれかであり;Y’は存在しないか、置換又は非置換1,2-ジアミノエタン、ポリエチレングリコール(2~30単位)又はアミドであり;Z’は存在しないか、又はカルボニル、アミド、尿素、アミノ、エステル、アリール、アリールカルボニル、アリールオキシ、アリールアミノ、チオ又はスクシンイミドから独立して選択されるかのいずれかである。一部の実施形態において、リンカーは、1つの活性薬剤分子を2つ以上のリガンドに連結させること、又は1つのリガンドを2つ以上の活性薬剤分子に連結させることを可能にし得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、リンカーYはAであり、及び本コンジュゲートは式Ib:
【0039】
【化7】
【0040】
[式中、Aは本明細書で定義され、m=0~20]に係る化合物であり得る。
式IaのAはスペーサ単位であり、存在しないか、又は以下の置換基から独立して選択されるかのいずれかである。各置換基について、破線は、X、Z又はAの別の独立して選択される単位との置換部位を表し、ここでX、Z、又はAは置換基のいずれの側にも付加され得る:
【0041】
【化8】
【0042】
[式中、z=0~40、RはH又は任意選択で置換されているアルキル基であり、及びR’は天然又は非天然のいずれかのアミノ酸に見られる任意の側鎖である]。
一部の実施形態において、本コンジュゲートは、式Ic:
【0043】
【化9】
【0044】
[式中、Aは上記に定義され、m=0~40、n=0~40、x=1~5、y=1~5、及びCは本明細書に定義される分枝状要素である]に係る化合物であり得る。
式IcのCは、リジン、2,3-ジアミノプロパン酸、2,4-ジアミノ酪酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びシステインなどのアミノ酸を含めた、アミン類、カルボン酸類、チオール類、又はスクシンイミド類から選択される、スペーサ単位、リガンド、又は活性薬物を共有結合的に付加するための3~6個の官能基を含有する分枝状単位である。
【0045】
C.HSP90標的化部分
本明細書に記載されるとおりの標的化リガンド(標的化部分とも称される)には、1つ以上のHSP90タンパク質に結合することのできる任意の分子が含まれる。かかる標的化リガンドは、ペプチド、抗体ミメティクス、核酸(例えばアプタマー)、ポリペプチド(例えば抗体)、糖タンパク質類、小分子、炭水化物、又は脂質であってもよい。
【0046】
標的化部分Xは、限定はされないが、天然化合物(例えば、ゲルダナマイシン及びラディシコール)、及び合成化合物、例えば、ゲルダナマイシン類似体17-AAG(即ち、17-アリルアミノゲルダナマイシン)、プリンスキャフォールドHSP90阻害薬シリーズ、例えば、PU24FC1(ホー・H.(He H.)ら著、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、第49巻、p.381、2006年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、BIIB021(ラングレン・K.(Lundgren K.)ら著、モレキュラー・キャンサー・セラピューティクス(Mol.Cancer Ther.)、第8巻、第4号、p.921、2009年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、4,5-ジアリールピラゾール類(チャン・K.M.(Cheung K.M.)ら著、バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorg.Med.Chem.Lett.)、第15巻、p.3338、2005年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、3-アリール,4-カルボキサミドピラゾール類(ブラフ・P.A.(Brough P.A.)ら著、バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorg.Med.Chem.Lett.)、第15巻、p.5197、2005年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、4,5-ジアリールイソオキサゾール類(ブラフ・P.A.(Brough P.A.)ら著、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、第51巻、p.196、2008年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、3,4-ジアリールピラゾールレソルシノール誘導体(ディモク・B.W.(Dymock B.W.)ら著、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、第48巻、p.4212、2005年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、チエノ[2,3-d]ピリミジン(ベルナリス(VERNALIS)らに対する国際公開第2005034950号、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、ジャンニーニ(Giannini)らに対する欧州特許第2655345号明細書(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)の式Iのアリールトリアゾール誘導体、又はHSP90結合リガンドの任意の他の例又はその誘導体/類似体など、任意のHSP90結合部分であってよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、HSP90結合部分は、3つのヘテロ原子を含む複素環式誘導体であってもよい。マトゥリス(MATULIS)らに対する国際公開第2009134110号(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)は、良好なHSP90結合親和性を実証する4,5-ジアリールチアジアゾールを開示している。これはどちらかと言えば中程度の細胞成長阻害であるものの、本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用し得る。別のクラスのアザ複素環付加物、即ちトリアゾール誘導体又はその類似体も、本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用し得る。例えば、1,2,4-トリアゾールスキャフォールドは、HSP90阻害特性を有するとの文献が豊富に出ている。バーリソン(BURLISON)ら(シンタ・ファーマシューティカルズ・コーポレイション(Synta Pharmaceuticals Corp.))に対する国際公開第2009139916号(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)は、高いマイクロモル濃度でHSP90を阻害する三環式1,2,4-トリアゾール誘導体を開示している。国際公開第2009139916号に開示される任意の三環式1,2,4-トリアゾール誘導体又はその誘導体/類似体を本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用し得る。国際公開第2010017479号及び国際公開第2010017545号(シンタ・ファーマシューティカルズ・コーポレイション(Synta Pharmaceuticals Corp.))に開示される任意の三置換1,2,4-トリアゾール誘導体又はその誘導体/類似体(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)を本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用し得る。別の例では、国際公開第2006055760号(シンタ・ファーマシューティカルズ・コーポレイション(Synta Pharmaceuticals Corp.))(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)に開示されるガネテスピブ(旧称STA-9090、又はその高度に可溶性のリン酸塩プロドラッグSTA-1474)と称されるトリアゾロン含有HSP90阻害薬、又はその誘導体/類似体を本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用し得る。
【0048】
【化10】
【0049】
いくつかの実施形態において、ガネテスピブ又はその誘導体/類似体が標的化部分として使用され得る。ガネテスピブ誘導体/類似体の非限定的な例を以下に示す。
【0050】
【化11-1】
【0051】
【化11-2】
【0052】
いくつかの実施形態において、オナレスピブ(AT13387)又はその誘導体/類似体は、本発明のコンジュゲートにおける標的化部分として使用され得る。オナレスピブ及びオナレスピブ誘導体/類似体の非限定的な例を以下に示す。
【0053】
【化12】
【0054】
国際公開第2013158644号、国際公開第2015038649号、国際公開第2015066053号、国際公開第2015116774号、国際公開第2015134464号、国際公開第2015143004号、国際公開第2015184246号(これらの内容は全体として参照により本明細書に援用される)に開示される任意のHSP90リガンド又はHSP90阻害薬、又はその誘導体/類似体を本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用してもよく、例えば以下である:
式I
【0055】
【化13】
【0056】
式中、R1は、アルキル、アリール、ハロゲン化物、カルボキサミド又はスルホンアミドであってもよく;R2は、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってもよく、ここでR2が6員アリール又はヘテロアリールであるとき、R2は、それを介してリンカーLが結合するトリアゾール環上の結合点に対して3位及び4位で置換され;及びR3は、SH、OH、-CONHR4、アリール又はヘテロアリールであってもよく、ここでR3が6員アリール又はヘテロアリールであるとき、R3は3又は4位で置換される;
式II
【0057】
【化14】
【0058】
式中、R1は、アルキル、アリール、ハロ、カルボキサミド、スルホンアミドであってもよく;及びR2は、任意選択で置換アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってもよい。かかる化合物の例としては、5-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-N-(2-モルホリノエチル)-4-(4-(モルホリノメチル)フェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド及び5-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-4-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドが挙げられる;
式III
【0059】
【化15】
【0060】
式中、X、Y、及びZは、独立に、CH、N、O又はSであってもよく(適切な置換を有する、及び環の対応する原子及び芳香族性の価数を満たす);R1は、アルキル、アリール、ハロゲン化物、カルボキサミド又はスルホンアミドであってもよく;R2は、置換アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってもよく、ここでリンカーLは直接結合するか、又はこれらの環上の伸びた置換に結合する;R3は、SH、OH、NR4R5及び-CONHR6であってもよく、それにエフェクター部分が結合し得る;R4及びR5は、独立に、H、アルキル、アリール、又はヘテロアリールであってもよく;及びR6は、エフェクター部分が結合し得る最低1つの官能基を有するアルキル、アリール、又はヘテロアリールであってもよい;又は
式IV
【0061】
【化16】
【0062】
式中、R1は、アルキル、アリール、ハロ、カルボキサミド又はスルホンアミドであってもよく;R2及びR3は、独立に、ヒドロキシ、ハロゲン、C1~C2アルコキシ、アミノ、モノ-及びジ-C1~C2アルキルアミノのうちの1つ以上によって任意選択で置換されているC1~C5ヒドロカルビル基;5員~12員アリール又はヘテロアリール基であり;又は、R2及びR3は、それらが結合している窒素原子と一緒になって4員~8員単環式複素環基を形成し、そのうち最大5環員がO、N及びSから選択される。かかる化合物の例としては、AT-13387が挙げられる。
【0063】
HSP90標的化部分は、ガネテスピブ、ルミネスピブ(AUY-922、NVP-AUY922)、デビオ-0932、MPC-3100、オナレスピブ(AT-13387)、SNX-2112、17-アミノ-ゲルダナマイシンヒドロキノン、PU-H71、又はそれらの誘導体/類似体であってもよい。
【0064】
【化17-1】
【0065】
【化17-2】
【0066】
HSP90標的化部分は、SNX5422(PF-04929113)、又は米国特許第8080556号明細書(ファイザー(Pfizer))、国際公開第2008096218号(ファイザー(Pfizer))、国際公開第2006117669号(ファイザー(Pfizer))、国際公開第2008059368号(ファイザー(Pfizer))、国際公開第2008053319号(ファイザー(Pfizer))、国際公開第2006117669号(ファイザー(Pfizer))、欧州特許第1885701号明細書(ノバルティス(Novartis))、欧州特許第1776110号明細書(ノバルティス(Novartis))、欧州特許第2572709号明細書(ノバルティス(Novartis))、国際公開第2012131413号(デビオファーム(Debiopharm))、又は国際公開第2012131468号(デビオファーム(Debiopharm))(これらの各々の内容は、全体として参照により本明細書に援用される)に開示される任意の他のHSP90阻害薬であってもよい。
【0067】
【化18】
【0068】
HSP90標的化部分はまた、PETイメージング用に124I放射性標識されたHSP90阻害薬であるPU-H71又はその誘導体/類似体であってもよい。
SNX-2112、17-アミノ-ゲルダナマイシンヒドロキノン、PU-H71、又はAT13387を含むコンジュゲートは、以下の構造を有し得る:
【0069】
【化19】
【0070】
いくつかの実施形態において、標的化部分は、放射性標識(例えば、放射性同位元素)などの画像化プローブを含む。放射性同位元素の非限定的な例には、I-131、Re-l86、Re-l88、Y-90、Bi-212、At-211、Sr-89、Ho-166、Sm-153、Cu-67、Cu-64、Lu-l77、Ac-225、Bi-213、Th-227、Pb-2l2、Ra-223、P-32、Sc-47、Br-77、Rh-105、Pd-l03、Ag-111、Pr-142、Pm-149、Gd-159、Ir-194、Pt-199、Tc-99m、Co-57、Ga-67、Kr-81m、Rb-82、Sr-92、Tl-201、C-11、N-13、O-15及びF-18がある。
【0071】
いくつかの実施形態において、本開示のコンジュゲートは、2つ以上の標的化部分を含む。例えば、コンジュゲートは、2、3、4、又は5つのHSP90標的化部分を含み得る。
【0072】
細胞外HSP90(eHSP90)
正常な細胞では、HSP90の分泌は、細胞が熱、薬物、サイトカイン、UV、及び/又はガンマ線などの環境ストレス下にあるときに生じる。細胞外HSP90(eHSP90)の主な機能は、損傷した組織の端にある細胞が損傷した領域に移動するのを促進することにより、組織の修復を助けることである。ただし、腫瘍では、構成的に活性化された癌遺伝子は、環境ストレスがなくてもHSP90分泌を引き起こす。腫瘍によって分泌されたHsp90、eHSP90αは、浸潤及び転移中に腫瘍細胞と腫瘍間質細胞の両方の遊走を促進する。HSP90αの細胞外促進機能は、HSP90の表面にある115アミノ酸のフラグメント(F-5)に依存する(Liら、Int Rev Cell Mol Biol.,vol.303:203-235(2013)、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。eHSP90は腫瘍細胞の表面に存在し、内在化もできることが示されている(Croweら、ACS Chem.Biol,,vol.12:1047-1055(2017))。したがって、腫瘍細胞におけるeHSP90の表面発現は、健康な細胞よりも腫瘍に選択的に治療を届けるための標的を表す。したがって、eHSP90(特にeHSP90α)は腫瘍を治療するための優れた標的となり得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、標的化部分は、eHSP90に選択的に結合する。いくつかの実施形態において、標的化部分は、eHSP90のF-5領域に結合する。
いくつかの実施形態において、標的化部分は、低い細胞透過性を有し、細胞表面eHSP90に優先的に結合する。いくつかの実施形態において、標的化部分は、細胞不透過性であり、eHSP90に排他的に結合する。いくつかの実施形態において、標的化部分を含むコンジュゲートは、低い細胞透過性を有するか、又は細胞不透過性である。
【0074】
いくつかの実施形態において、標的化部分は、HS-23、HS-131(Croweら、ACS Chem.Biol.,vol.12:1047-1055(2017)に開示され、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)又はDMAG-N-オキシド(Tsutsumiら,Oncogene,vol.27(l7):2478-2487(2008)に開示された17-AAGの細胞不透過性であり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、又はその類似体/誘導体を含み、構造を以下に示す。
【0075】
【化20】
【0076】
特定の実施形態において、本コンジュゲートの1つ又は複数の標的化部分は、コンジュゲートの構成成分のモル重量百分率の合計が100%になるようにして、約0.1%~約10%、又は約1%~約10%、又は約10%~約20%、又は約20%~約30%、又は約30%~約40%、又は約40%~約50%、又は約50%~約60%、又は約60%~約70%、又は約70%~約80%、又は約80%~約90%、又は約90%~約99%の所定のモル重量百分率で存在する。本コンジュゲートの標的化部分の量はまた、活性薬剤に対する比率として、例えば、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4;1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、又は1:10のリガンド対活性薬剤比で表すこともできる。
【0077】
コンジュゲートの非限定的な例
いくつかの例では、コンジュゲートは、ガネテスピブ類似体又は誘導体など(TM1、TM2、TM3、TM4、TM5又はTM8など)のHSP90標的化部分、及び放射性物質用のキレート剤を含む。放射性物質は、ルテチウム177(Lul77又は177Lu)などの任意の放射性同位元素を含み得る。コンジュゲート中のルテチウム同位体177(177Lu)は、コンジュゲートに放射能を与える。キレート剤はDOTAであり得る。
【0078】
1つの非限定的な例は、化合物1(又はコンジュゲート1)であり、ここで、標的化部分はTM5であり、活性薬剤はDOTA及びルテチウム原子を含む:
【0079】
【化21】
【0080】
ここで、Luは175Luを指し、コンジュゲートの放射性アナログを提供するために177Luで置き換えることができる。
いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、放射性物質用のキレート剤にリンカーで結合されたガネテスピブ類似体又は誘導体など(TM1、TM2、TM3、TM4、TM5又はTM8など)のHSP90標的化部分を含む。リンカーは、少なくとも1つのアミノ酸又はその類似体、例えば2つのアミノ酸又はその類似体、3つのアミノ酸又はその類似体、4つのアミノ酸又はその類似体、又は5つのアミノ酸又はその類似体からなるスペースを含み得る。アミノ酸又はその類似体は、Dアミノ酸であり得る。アミノ酸又はその類似体は、アニオン性(例えば、DGlu)、カチオン性(例えば、DLys)、又は非荷電(例えば、Sar、ここで、Sar=N-メチルグリシン)であり得る。スペーサは、DGlu-DGlu-DLys、DLys-DLys-DGlu、DGlu-DGlu-DGlu、DLys-DLys-DLys、Sar-DLys-Sar、Sar-Sar-Sar、及びSar-DGlu-Sarからなる群から選択され得る。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、スペーサはコンジュゲートの生体内分布に影響を及ぼし、コンジュゲートの肝臓への取り込みを減少させ得る。HSP90の結合親和性は、スペーサにどのような電荷が存在するかに関係なく維持される。
【0081】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、式Aの構造を有する:
【0082】
【化22】
【0083】
ここで、AA1、AA2、及びAA3はアミノ酸である。式Aの構造を含むコンジュゲートの非限定的な例には、以下が含まれる:
【0084】
【表1】
【0085】
化合物の構造は以下のとおりである。
【0086】
【化23-1】
【0087】
【化23-2】
【0088】
【化23-3】
【0089】
一実施形態では、コンジュゲートは化合物2(又はコンジュゲート2)であり、これは、標的化部分としてのTM5、スペーサとしてのDGlu-DGlu-DGlu、キレート剤としてのDOTA、及びルテチウム原子を含む:
【0090】
【化24】
【0091】
ここで、Luは175Luを指し、コンジュゲートの放射性アナログを提供するために177Luで置き換えることができる。
一実施形態では、コンジュゲートは、2つのHSP90標的化部分を含む。コンジュゲートは、2つのTM5部分を含み、キレート剤としてDOTAGA誘導体を含む化合物9(又はコンジュゲート9)であり得る。
【0092】
【化25】
【0093】
ここで、Luは175Luを指し、コンジュゲートの放射性アナログを提供するために177Luで置き換えることができる。
コンジュゲート2、3、4、5、6、7、8、9又は10のルテチウム(Lu)を、Lul77(177LU)又はその他の放射性同位元素に置き換えて、コンジュゲートの放射性アナログにすることができる。
【0094】
D.薬物動態調節ユニット
本発明のコンジュゲートは、タンパク質又は人工タンパク質またはその誘導体/類似体/模倣物の官能基と反応する反応基に結合された少なくとも1つの外部リンカーをさらに含み得るか、又は薬物動態調節ユニット(PMU)に結合された少なくとも1つの外部リンカーを含み得る。コンジュゲートと反応基又は薬物動態調節ユニットを連結する外部リンカーは、コンジュゲートの放出を可能にする切断可能なリンカーであり得る。したがって、必要に応じてタンパク質又は薬物動態調節ユニットからコンジュゲートを分離することができる。
【0095】
国際公開第2017/197241号に開示されている任意の反応基又はPMU(ポリマーを含むPMUなど)(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)を、本開示のコンジュゲートに結合させることができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、その活性薬剤に結合したタンパク質結合反応基を含む。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、その標的化部分に結合したタンパク質結合反応基を含む。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、そのリンカーに結合したタンパク質結合反応基を含む。反応基は、タンパク質に可逆的又は不可逆的に結合する。タンパク質は、血清又は血漿タンパク質などの天然に存在するタンパク質、又はそれらの断片であり得る。特定の例には、胎児性Fc受容体(FcRn)、チロキシン結合タンパク質、トランスサイレチン、α1-酸性糖タンパク質(AAG)、トランスフェリン、フィブリノーゲン、アルブミン、免疫グロブリン、α-2-マクログロブリン、リポタンパク質、又はそれらの断片が含まれる。反応基は、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用、及び疎水性結合などの共有結合又は非共有相互作用を介してそのようなタンパク質に結合し得る。
【0097】
いくつかの実施形態において、タンパク質結合反応基は、非共有相互作用を介して血清タンパク質に結合し得る。例えば、反応基は、弱い親和性(10-4~10-5M)でアルブミンに結合する飽和脂肪酸であり得る。そのような脂肪酸の非限定的な例には、ミリスチン酸(14個の炭素原子を有する脂肪酸)及びパルミチン酸(16個の炭素原子を有する脂肪酸)が含まれ得る。反応基の他の非限定的な例には、ナフタレンアシルスルホンアミド基、ジフェニルシクロヘキサノールリン酸エステル基、6-(4-(4-ヨードフェニル)ブタンアミド)ヘキサノエート基(「Albu」タグ)、Dennisら、in.J.Biol.Chem.,vol.277:35035(2002)(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されたSA21(18アミノ酸Ac-RLIEDICLPRWGCLWEDD-NHを有する環状ペプチド)を含むコア配列DICLPRWGCLWを有する一連のペプチドが含まれる。
【0098】
タンパク質結合反応基は、以下の構造を含み得る:
【0099】
【化26】
【0100】
いくつかの実施形態において、タンパク質結合反応基は、Zorziら、Nature Communications,vol.8:16092,(2017)(その内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれる)に開示される任意のペプチド-脂肪酸アルブミン結合リガンドを含み得る。これらのペプチド-脂肪酸アルブミン結合リガンドは、アミノ酸側鎖を介して短いペプチド、例えば、ヘプタペプチドに結合した脂肪酸を含む。脂肪酸は、そのカルボン酸基を介してリジンの側鎖に短いペプチドに結合されてもよい。脂肪酸はマイクロモーラーレベルの親和性でアルブミンに結合し、短いペプチドはアルブミンへの追加の接触点を形成することによって親和性を高める。ペプチド-脂肪酸リガンドは、以下の一般構造を有し得る:
【0101】
【化27】
【0102】
ここで、X=任意のアミノ酸(GlyやSerなど)、K=Lys、n=l2(ミリスチン酸)、14(パルミチン酸)、又は16(ステアリン酸)。
いくつかの実施形態において、米国特許第9670482号明細書(二環式治療薬)(その内容全体が本明細書に組み込まれる)に開示される任意のアルブミン結合官能基が、本願におけるタンパク質結合反応基として使用され得る。いくつかの実施形態において、タンパク質結合反応基は、フルオレン環を含み、非共有結合的及び/又は可逆的にアルブミンに結合する。非限定的な例として、タンパク質結合反応基は、フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)基を含む。任意選択で、タンパク質結合反応基は、Lys、Trp、Gly、又はPheなどの、FMOCに結合した少なくとも1つのアミノ酸を含む。例えば、小分子は、Fmoc-Lys-、Fmoc-Gly-、Fmoc-Phe-、Fmoc-GGSGD-、Fmoc-FGGGD-、Fmoc-FGSGD-、Fmoc-WGSGD-、Fmoc-WGGGA、又はFmoc-Trp-GGGを含み得る。
【0103】
【化28】
【0104】
一実施形態では、コンジュゲートは、アルブミンに非共有結合的に結合する反応基を含む。アルブミンへの結合は可逆的である。コンジュゲートは、HSP90標的化部分としてTM5を、及びキレート剤としてDOTAGA誘導体を含み得る。コンジュゲートは、化合物10(又はコンジュゲート10)であり得る。コンジュゲート10のルテチウム(Lu)をLul77(177Lu)又はその他の放射性同位元素に置き換えて、コンジュゲートの放射性アナログにすることができる。
【0105】
【化29】
【0106】
II.製剤
一部の実施形態において、組成物がヒト、ヒト患者又は対象に投与される。本開示の目的上、語句「活性成分」は、概して、本明細書に記載されるとおりのコンジュゲートを指す。
【0107】
本明細書に提供される医薬組成物の説明は、主としてヒトへの投与に好適な医薬組成物に関するが、当業者は、かかる組成物が概して任意の他の動物、例えば非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳類への投与に好適であることを理解するであろう。ヒトへの投与に好適な医薬組成物を様々な動物への投与に好適な組成物にするための改良は十分に理解されており、通常の技能を有する獣医薬理学者は、例えあったとしても単に通常の実験をもってかかる改良を設計及び/又は実施することができる。医薬組成物の投与が企図される対象としては、限定はされないが、ヒト及び/又は他の霊長類;哺乳類、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、及び/又はラットなどの商業的に関連性のある哺乳類;及び/又は鳥類、例えば、家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/又はシチメンチョウなどの商業的に関連性のある鳥類が挙げられる。
【0108】
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の技術分野で公知の又は今後開発される任意の方法によって調製し得る。一般に、かかる調製方法は、活性成分を賦形剤及び/又は1つ以上の他の補助的成分と共にまとめ合わせ、次に、必要である及び/又は望ましい場合にはその製剤を所望の単回又は複数回投与単位に分割し、成形し、及び/又は包装するステップを含む。
【0109】
本発明に係る医薬組成物は、バルクで、単一単位用量として、及び/又は複数の単一単位用量として調製、包装、及び/又は販売され得る。本明細書で使用されるとき、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、概して対象に投与され得る活性成分の投薬量及び/又はかかる投薬量の好都合な一部、例えばかかる投薬量の2分の1又は3分の1に等しい。
【0110】
本発明に係る医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容可能な賦形剤、及び/又は任意の追加的な成分の相対量は、治療対象のアイデンティティ、大きさ、及び/又は状態に依存するとともに、組成物を投与する経路にも更に依存して変わり得る。例として、本組成物は0.1%~100%、例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0111】
本発明のコンジュゲートは、1つ以上の賦形剤を用いて製剤化することにより、(1)安定性を増加させる;(2)持続又は遅延放出(例えばモノマレイミドのデポー製剤から)を可能にする;(3)体内分布を変化させる(例えば、モノマレイミド化合物を特異的組織又は細胞型に標的化する);(4)インビボでのモノマレイミド化合物の放出プロファイルを変化させることができる。賦形剤の非限定的な例としては、あらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体媒体、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、及び保存剤が挙げられる。本発明の賦形剤としてはまた、限定なしに、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体及びこれらの組み合わせも挙げることができる。従って、本発明の製剤には、1つ以上の賦形剤が、各々一緒になってモノマレイミド化合物の安定性を増加させる量で含まれ得る。
【0112】
賦形剤
医薬製剤は、薬学的に許容可能な賦形剤を更に含むことができ、賦形剤には、本明細書で使用されるとき、所望の特定の剤形に適するとおりのあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体媒体、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などが含まれる。「レミントンの薬学の科学と実践(Remington’s The Science and Practice of Pharmacy)」、第21版、A.R.ジェナーロ(A.R.Gennaro)(リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott,Williams & Wilkins)、メリーランド州ボルチモア(Baltimore,MD)、2006年;全体として参照により本明細書に援用される)が、医薬組成物の製剤化に用いられる様々な賦形剤及びその公知の調製技法を開示している。任意の望ましくない生物学的効果の発生又はその他、医薬組成物の任意の他の1つ又は複数の構成成分との有害な形での相互作用によるなど、任意の従来の賦形剤媒体が物質又はその誘導体と不適合である場合を除き、その使用は本発明の範囲内にあることが企図される。
【0113】
一部の実施形態において、薬学的に許容可能な賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の純度である。一部の実施形態において、賦形剤はヒトへの使用及び動物への使用が承認されている。一部の実施形態において、賦形剤は米国食品医薬品局によって承認されている。一部の実施形態において、賦形剤は医薬品グレードである。一部の実施形態において、賦形剤は米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方の規格に適合している。
【0114】
医薬組成物の製造に使用される薬学的に許容可能な賦形剤としては、限定はされないが、不活性希釈剤、分散剤及び/又は造粒剤、界面活性剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、潤滑剤、及び/又は油が挙げられる。かかる賦形剤は任意選択で医薬組成物中に含まれ得る。
【0115】
例示的希釈剤としては、限定はされないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉末糖等、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0116】
例示的造粒剤及び/又は分散剤としては、限定はされないが、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類果肉、寒天、ベントナイト、セルロース及び木産物、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポビドン)、ナトリウムカルボキシメチルデンプン(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(スターチ1500)、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミウニムマグネシウム(ビーガム(登録商標)(VEEGUM(登録商標)))、ラウリル硫酸ナトリウム、第4級アンモニウム化合物等、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0117】
例示的界面活性剤及び/又は乳化剤としては、限定はされないが、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、及びレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]及びビーガム(登録商標)(VEEGUM(登録商標))[ケイ酸アルミウニムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、及びモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸重合体、及びカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン[ツイーン(登録商標)(TWEEN(登録商標))20]、ポリオキシエチレンソルビタン[ツイーン(登録商標)60(TWEEN(登録商標)60)]、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン[ツイーン(登録商標)80(TWEEN(登録商標)80)]、モノパルミチン酸ソルビタン[スパン(登録商標)40(SPAN(登録商標)40)]、モノステアリン酸ソルビタン[スパン(登録商標)60(SPAN(登録商標)60)]、トリステアリン酸ソルビタン[スパン(登録商標)65(SPAN(登録商標)65)]、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン[スパン(登録商標)80(SPAN(登録商標)80)])、ポリオキシエチレンエステル類(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレン[エムワイアールジェイ(登録商標)45(MYRJ(登録商標)45)]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシメチレン、及びコリフォール(Kolliphor(登録商標))(ソルトール(登録商標)(SOLUTOL(登録商標)))、スクロース脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類(例えばクレモフォール(登録商標)(CREMOPHOR(登録商標)))、ポリオキシエチレンエーテル類(例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル[ビーアールアイジェイ(登録商標)30(BRIJ(登録商標)30)])、ポリ(ビニルピロリドン)、モノラウリン酸ジエチレングリコール、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、プルロニック(登録商標)F 68(PLUORINC(登録商標)F 68)、ポロキサマー(登録商標)188(POLOXAMER(登録商標)188)、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウム等及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0118】
例示的結合剤としては、限定はされないが、デンプン(例えばコーンスターチ及びデンプンペースト);ゼラチン;糖類(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然及び合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモス抽出物、パンワーガム、ガッティガム、イサポール殻の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸アルミウニムマグネシウム(ビーガム(登録商標)(Veegum(登録商標)))、及びカラマツのアラビノガラクタン(arabogalactan));アルギン酸;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート類;ワックス;水;アルコール等;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0119】
例示的保存剤としては、限定はされないが、抗酸化剤、キレート剤、抗微生物性保存剤、抗真菌性保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、及び/又は他の保存剤を挙げることができる。例示的抗酸化剤としては、限定はされないが、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル(acorbyl palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び/又は亜硫酸ナトリウムが挙げられる。例示的キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、及び/又はエデト酸三ナトリウムが挙げられる。例示的抗微生物性保存剤としては、限定はされないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミドウレア、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、及び/又はチメロサールが挙げられる。例示的抗真菌性保存剤としては、限定はされないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、及び/又はソルビン酸が挙げられる。例示的アルコール保存剤としては、限定はされないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシ安息香酸塩、及び/又はフェニルエチルアルコールが挙げられる。例示的酸性保存剤としては、限定はされないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及び/又はフィチン酸が挙げられる。他の保存剤としては、限定はされないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシムメシレート(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluened)(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、グリダント・プラス(登録商標)(GLYDANT PLUS(登録商標))、フェノニップ(登録商標)(PHENONIP(登録商標))、メチルパラベン、ジャーモール(登録商標)115(GERMALL(登録商標)115)、ジャーマベン(登録商標)II(GERMABEN(登録商標)II)、ネオロン(商標)(NEOLONE(商標))、カトン(商標)(KATHON(商標))、及び/又はユーキシル(登録商標)(EUXYL(登録商標))が挙げられる。
【0120】
例示的緩衝剤としては、限定はされないが、クエン酸塩緩衝溶液、酢酸塩緩衝溶液、リン酸塩緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、リン酸水素カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張生理食塩水、リンゲル溶液、エチルアルコール等、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0121】
例示的潤滑剤としては、限定はされないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル(glyceryl behanate)、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0122】
例示的油としては、限定はされないが、扁桃油、杏仁油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、クロスグリ種子(black current seed)油、ルリヂサ油、カデ油、カモミール油、キャノーラ油、カラウェー油、カルナウバ、ヒマシ油、桂皮油、ココアバター、ココナツ油、タラ肝油、コーヒー油、トウモロコシ油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、月見草油、魚油、亜麻仁油、ゲラニオール油、ゴード油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、ヒソップ油、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、リツェアクベバ油、マカダミアナッツ(macademia nut)油、ゼニアオイ油、マンゴー種子油、メドウフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、桃仁油、ピーナッツ油、ケシ種子油、カボチャ種子油、菜種油、米糠油、ローズマリー油、ベニバナ油、ビャクダン油、サザンカ(sasquana)油、セイボリー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター、シリコーン油、ダイズ油、ヒマワリ油、チャノキ油、アザミ油、ツバキ油、ベチバー油、クルミ油、及びコムギ胚芽油が挙げられる。例示的油としては、限定はされないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコーン、セバシン酸ジエチル、ジメチコーン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0123】
組成物中には、配合者の判断に従い、ココアバター及び坐薬ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び/又は芳香剤などの賦形剤が存在し得る。
投与
本発明のコンジュゲートは、治療上有効な結果をもたらす任意の経路によって投与され得る。そのような経路としては、限定はされないが、経腸、胃腸、硬膜外、経口、経皮、硬膜外(硬膜周囲)、脳内(大脳の中に)、脳室内(脳室の中に)、皮膚上(皮膚の上への適用)、皮内(皮膚それ自体の中に)、皮下(皮膚の下に)、鼻腔投与(鼻を通じて)、静脈内(静脈の中に)、動脈内(動脈の中に)、筋肉内(筋肉の中に)、心臓内(心臓の中に)、骨内注入(骨髄の中に)、髄腔内(脊柱管の中に)、腹腔内(腹膜の中への注入又は注射)、膀胱内注入、硝子体内(眼を通じて)、陰茎海綿体内注射(陰茎の基部の中に)、腟内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身に分布させるための無傷の皮膚を通じた拡散)、経粘膜(粘膜を通じた拡散)、インサフレーション(鼻からの吸い込み)、舌下、唇下、浣腸、点眼薬(結膜上に)、又は点耳薬が挙げられる。具体的な実施形態において、組成物は、それが血液脳関門、血管関門、又は他の上皮性関門を通り抜けることを可能にする方法で投与され得る。
【0124】
本明細書に記載される製剤は、それを必要としている個体への投与に適切な医薬担体中に有効量のコンジュゲートを含有する。本製剤は、非経口的に(例えば注射又は注入によって)投与され得る。本製剤又はその変形例は、経腸、局所(例えば眼に)、又は肺内投与によることを含め、いかなる方法で投与されてもよい。一部の実施形態において本製剤は局所投与される。
【0125】
A.非経口製剤
本コンジュゲートは、注射又は注入などの非経口送達用に溶液、懸濁液又はエマルションの形態で製剤化することができる。本製剤は、全身的に、局部的に、又は治療しようとする器官又は組織に直接、投与することができる。
【0126】
非経口製剤は、当該技術分野において公知の技法を用いて水性組成物として調製することができる。典型的には、かかる組成物は、注射用製剤、例えば溶液又は懸濁液;注射前に再構成媒体を加えて溶液又は懸濁液の調製に使用するのに好適な固体形態;エマルション、例えば、油中水(w/o)型エマルション、水中油(o/w)型エマルション、及びこれらのマイクロエマルション、リポソーム、又はエマルソームとして調製することができる。
【0127】
担体は、例えば、水、エタノール、1つ以上のポリオール類(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、油、例えば植物油(例えば、ピーナッツ油、トウモロコシ油、ゴマ油等)、及びこれらの組み合わせを含有する溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によるか、分散液の場合に必要な粒径の維持によるか及び/又は界面活性剤の使用によって維持することができる。ある場合には、等張剤、例えば、1つ以上の糖類、塩化ナトリウム、又は当該技術分野において公知の他の好適な薬剤が含まれる。
【0128】
コンジュゲートの溶液及び分散液は、限定はされないが、界面活性剤、分散剤、乳化剤、pH改変剤、及びこれらの組み合わせを含めた1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤と好適に混合された水又は別の溶媒若しくは分散媒中に調製することができる。
【0129】
好適な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性界面活性剤であり得る。好適なアニオン性界面活性剤としては、限定はされないが、カルボン酸、スルホン酸及び硫酸イオンを含有するものが挙げられる。アニオン性界面活性剤の例としては、長鎖アルキルスルホネート及びアルキルアリールスルホネートのナトリウム、カリウム、アンモニウム、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、例えばナトリウムビス-(2-エチルチオキシル)-スルホスクシネート;及び硫酸アルキル、例えばラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、限定はされないが、第4級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ポリオキシエチレン及びヤシアミンが挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、モノステアリン酸エチレングリコール、ミリスチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸ポリグリセリル-4、ソルビタンアシレート、スクロースアシレート、ラウリン酸PEG-150、モノラウリン酸PEG-400、モノラウリン酸ポリオキシエチレン、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG-1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、ポロキサマー(登録商標)401(Poloxamer(登録商標)401)、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、及びポリオキシエチレン水添タロウアミドが挙げられる。両性界面活性剤の例としては、N-ドデシル-β-アラニンナトリウム、N-ラウリル-β-イミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリストアンホアセテート、ラウリルベタイン及びラウリルスルホベタインが挙げられる。
【0130】
本製剤は、微生物の増殖を防ぐ保存剤を含有し得る。好適な保存剤としては、限定はされないが、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、及びチメロサールが挙げられる。本製剤はまた、1つ又は複数の活性薬剤の分解を防ぐ抗酸化剤も含有し得る。
【0131】
本製剤は、典型的には非経口投与用に再構成時に3~8のpHに緩衝される。好適な緩衝液としては、限定はされないが、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、及びクエン酸塩緩衝液が挙げられる。10%スクロース又は5%デキストロースを使用する場合、緩衝液は不要であり得る。
【0132】
非経口投与用の製剤中には多くの場合に水溶性ポリマーが使用される。好適な水溶性ポリマーとしては、限定はされないが、ポリビニルピロリドン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0133】
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒又は分散媒中に必要量の本コンジュゲートを、必要に応じて上記に列挙する賦形剤のうちの1つ以上と共に配合し、続いてろ過滅菌することにより調製さてもよい。概して、分散液は、基礎分散媒及び上記に列挙するものからの必要な他の成分を含有する無菌媒体中に様々な滅菌コンジュゲートを配合することにより調製される。
【0134】
非経口投与用の医薬製剤は、1つ以上のポリマー-薬物コンジュゲートから形成されたコンジュゲートの滅菌水溶液又は懸濁液の形態であってもよい。許容可能な溶媒としては、例えば、水、リンゲル溶液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。本製剤はまた、1,3-ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌溶液、懸濁液、又はエマルションであってもよい。
【0135】
一部の例では、本製剤は液体形態で配布又は包装される。或いは、非経口投与用の製剤は、例えば好適な液体製剤を凍結乾燥することによって得られる固体として包装されてもよい。この固体は、投与前に適切な担体又は希釈剤で再構成され得る。
【0136】
非経口投与用の溶液、懸濁液、又はエマルションは、眼球投与に好適なpHを維持するのに必要な有効量の緩衝液で緩衝され得る。好適な緩衝液は当業者に周知であり、有用な緩衝液の幾つかの例は、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩緩衝液である。
【0137】
非経口投与用の溶液、懸濁液、又はエマルションはまた、製剤の等張範囲を調整する1つ以上の等張化剤も含有し得る。好適な等張化剤は当該技術分野において周知であり、幾つかの例としては、グリセリン、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、及び他の電解質が挙げられる。
【0138】
非経口投与用の溶液、懸濁液、又はエマルションはまた、眼科用薬剤の細菌汚染を防ぐ1つ以上の保存剤も含有し得る。好適な保存剤は当該技術分野において公知であり、ポリヘキサメチレンビグアニジン(PHMB)、塩化ベンザルコニウム(BAK)、安定化オキシクロロ錯体(別名ピュライト(登録商標)(Purite(登録商標))として知られる)、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、ソルビン酸、クロルヘキシジン、ベンジルアルコール、パラベン類、チメロサール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0139】
非経口投与用の溶液、懸濁液、又はエマルションはまた、分散剤、湿潤剤、及び懸濁剤など、当該技術分野において公知の1つ以上の賦形剤も含有し得る。
B.粘膜用局所製剤
本コンジュゲートは、粘膜表面への局所投与用に製剤化することができる。局所投与に好適な剤形としては、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、スプレー、ゲル、ローション、エマルション、液体、及び経皮パッチが挙げられる。本製剤は、経粘膜、経上皮、又は経内皮投与用に製剤化し得る。本組成物は、1つ以上の化学的浸透促進剤、膜透過剤、膜輸送剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、安定剤、及びこれらの組み合わせを含有する。一部の実施形態において、本コンジュゲートは、溶液又は懸濁液などの液体製剤、ローション又は軟膏などの半固形製剤、又は固形製剤として投与することができる。一部の実施形態において、本コンジュゲートは、点眼薬など、溶液及び懸濁液を含めた液体として、又は眼又は経腟的若しくは経直腸的など、粘膜に対する半固形製剤として製剤化される。
【0140】
「界面活性剤」は、表面張力を低下させて、それにより製剤の乳化、発泡、分散、展着及び湿潤特性を増加させる界面活性剤である。好適な非イオン性界面活性剤としては、乳化ワックス、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベート、ソルビタンエステル類、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、シクロデキストリン類、モノステアリン酸グリセリン、ポロキサマー、ポビドン及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、非イオン性界面活性剤はステアリルアルコールである。
【0141】
「乳化剤」は、ある液体の別の液体中への懸濁を促進し、且つ油と水との安定した混合物、又はエマルションの形成を促進する界面活性物質である。一般的な乳化剤は、金属せっけん、ある種の動物油及び植物油、及び様々な極性化合物である。好適な乳化剤としては、アカシア、アニオン性乳化ワックス、ステアリン酸カルシウム、カルボマー類、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、パルミトステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxpropyl cellulose)、ヒプロメロース、ラノリン、含水ラノリンアルコール類、レシチン、中鎖トリグリセリド類、メチルセルロース、鉱油及びラノリンアルコール類、一塩基性リン酸ナトリウム、モノエタノールアミン、非イオン性乳化ワックス、オレイン酸、ポロキサマー、ポロキサマー類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ステアリン酸ポリオキシエチレン類、アルギン酸プロピレングリコール、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、無水クエン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル類、ステアリン酸、ヒマワリ油、トラガカント、トリエタノールアミン、キサンタンガム及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、乳化剤はステアリン酸グリセロールである。
【0142】
浸透促進剤の好適なクラスは当該技術分野において公知であり、限定はされないが、脂肪アルコール類、脂肪酸エステル類、脂肪酸、脂肪アルコールエーテル類、アミノ酸、リン脂質、レシチン類、コール酸塩類、酵素、アミン類及びアミド類、錯化剤(リポソーム、シクロデキストリン、変性セルロース、及びジイミド類)、大環状化合物、例えば、大環状ラクトン類、ケトン類、及び無水物及び環状尿素、界面活性剤、N-メチルピロリドン及びその誘導体、DMSO及び関連化合物、イオン化合物、アゾン及び関連化合物、及び溶媒、例えば、アルコール類、ケトン類、アミド類、ポリオール類(例えばグリコール類)が挙げられる。これらのクラスの例は当該技術分野において公知である。
【0143】
用量決定
本発明は、本明細書に記載されるとおりのコンジュゲートを、それを必要としている対象に投与することを含む方法を提供する。本明細書に記載されるとおりのコンジュゲートは、疾患、障害、及び/又は病態(例えば、作業記憶欠損に関連する疾患、障害、及び/又は病態)の予防又は治療又はイメージングに有効な任意の量及び任意の投与経路を用いて対象に投与され得る。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、及び全身状態、疾患の重症度、詳細な組成物、その投与様式、その活性様式などに応じて対象毎に異なり得る。
【0144】
本発明に係る組成物は、典型的には、投与の容易さ及び投薬量の均一性のため投薬量単位形態に製剤化される。しかしながら、本発明の組成物の1日の使用総量は主治医が妥当な医学的判断の範囲内で判断し得ることは理解されるであろう。任意の特定の患者についての具体的な治療有効用量、予防有効用量、又は適切なイメージング用量レベルは、治療下の障害及び障害の重症度;用いられる具体的な化合物の活性;用いられる具体的な組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康、性別及び食事;用いられる具体的な化合物の投与タイミング、投与経路、及び排泄速度;治療継続期間;用いられる具体的な化合物と併用して又は同時に使用される薬物;及び医学の技術分野で周知の同様の要因を含め、種々の要因に依存し得る。
【0145】
一部の実施形態において、本発明における組成物は、1日に約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.001mg/kg~約0.05mg/kg、約0.005mg/kg~約0.05mg/kg、約0.001mg/kg~約0.005mg/kg、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、又は約1mg/kg~約25mg/kg、約25mg/kg~約50mg/kg、約50mg/kg~約100mg/kg、約100mg/kg~約125mg/kg、約125mg/kg~約150mg/kg、約150mg/~約175mg/kg、約175mg/kg~約200mg/kg、約200mg/kg~約250mg/kgの対象体重を送達するのに十分な投薬量レベルで1日1回以上投与されることにより、所望の治療上、診断上、予防上、又はイメージング上の効果が達成され得る。所望の投薬量は、1日3回、1日2回、1日1回、隔日、3日毎、毎週、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に送達されてもよい。一部の実施形態において、所望の投薬量は、複数回の投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回、又はそれ以上の投与)を用いて送達されてもよい。複数回の投与が利用される場合、本明細書に記載されるものなどの分割投与レジメンが用いられてもよい。
【0146】
コンジュゲートの濃度は医薬組成物中約0.01mg/mL~約50mg/mL、約0.1mg/mL~約25mg/mL、約0.5mg/mL~約10mg/mL、又は約1mg/mL~約5mg/mLであり得る。
【0147】
本明細書で使用されるとき、「分割用量」とは、単一単位用量又は1日総用量を2用量以上、例えば単一単位用量の2回以上の投与に分けることである。本明細書で使用されるとき、「単一単位用量」とは、1用量/1回/単一経路/単一接触点、即ち単一投与イベントで投与される任意の治療薬の用量である。本明細書で使用されるとき、「1日総用量」は、24時間の間に与えられる又は処方される量である。これは単一単位用量として投与されてもよい。
【0148】
剤形
本明細書に記載される医薬組成物は、局所、鼻腔内、気管内、又は注射用(例えば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、心臓内、腹腔内、皮下)など、本明細書に記載される剤形に製剤化することができる。
【0149】
液体剤形
非経口投与用の液体剤形としては、限定はされないが、薬学的に許容可能なエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、及び/又はエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、限定はされないが、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(詳細には、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ソルビタンのポリエチレングリコール類及び脂肪酸エステル類、及びこれらの混合物を含めた、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含み得る。非経口投与用の特定の実施形態において、組成物は、クレモフォール(登録商標)(CREMOPHOR(登録商標))、アルコール類、油、変性油、グリコール類、ポリソルベート類、シクロデキストリン類、ポリマー、及び/又はこれらの組み合わせなどの可溶化剤と混合されてもよい。
【0150】
注射剤
注射用製剤、例えば滅菌注射用水性又は油性懸濁液は公知の技術により製剤化することができ、好適な分散剤、湿潤剤、及び/又は懸濁剤を含み得る。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤及び/又は溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液、及び/又はエマルション、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であってもよい。利用し得る許容可能な媒体及び溶媒の中には、限定はされないが、水、リンゲル溶液(U.S.P.)、及び等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。滅菌固定油は、従来、溶媒又は懸濁媒として用いられている。この目的上、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含め、任意の無刺激性固定油を用いることができる。注射剤の調製には、オレイン酸などの脂肪酸を使用することができる。
【0151】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルタでろ過することによって、及び/又は使用前に滅菌水又は他の無菌注射用媒体中に溶解し又は分散させることのできる無菌固体組成物の形態の滅菌剤を配合することによって滅菌し得る。
【0152】
活性成分の効果を持続させるため、皮下又は筋肉内注射による活性成分の吸収を遅延させることが望ましい場合もある。これは、難水溶性の結晶性又は非晶質材料の液体懸濁物の使用によって達成し得る。このとき化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、ひいては結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。或いは、非経口投与される化合物の遅延吸収は、その化合物を油性媒体中に溶解又は懸濁することにより達成し得る。注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に化合物のマイクロカプセルカプセル化マトリックスを形成することにより作られる。化合物とポリマーの比率及び用いられる詳細なポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、限定はされないが、ポリ(オルトエステル)類及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、生体組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロエマルション中に化合物を封じ込めることにより調製し得る。
【0153】
肺内
肺内送達に有用であるとして本明細書に記載される製剤はまた、医薬組成物の鼻腔内送達にも使用し得る。鼻腔内投与に好適な別の製剤は、活性成分を含み且つ約0.2μm~500μmの平均粒子を有する粗末であり得る。かかる製剤は、嗅ぐようにして、即ち鼻の近くに保持した粉末容器から鼻道を介して急速吸入することによって投与され得る。
【0154】
鼻腔投与に好適な製剤は、例えば、約0.1%(w/w)に過ぎない程度から100%(w/w)に至るまでの活性成分を含むことができ、本明細書に記載される追加的な成分の1つ以上を含み得る。医薬組成物は、頬側投与に好適な製剤として調製され、包装され、及び/又は販売され得る。かかる製剤は、例えば、従来の方法を用いて作製された錠剤及び/又はロゼンジの形態であってもよく、及び例えば約0.1%~20%(w/w)の活性成分を含有することができ、ここで残りは口腔内で溶解可能な及び/又は分解性の組成物、及び任意選択で、本明細書に記載される追加的な成分の1つ以上が占め得る。或いは、頬側投与に好適な製剤は、活性成分を含む粉末及び/又はエアロゾル化及び/又は微粒化された溶液及び/又は懸濁液を含み得る。かかる粉末化、エアロゾル化、及び/又はエアロゾル化された製剤は、分散時に約0.1nm~約200nmの範囲の平均粒径及び/又は液滴径を有することができ、さらに、本明細書に記載される任意の追加的な成分の1つ以上を含み得る。
【0155】
医薬薬剤の製剤化及び/又は製造における一般論については、例えば、レミントン:薬学の科学と実践(Remington:Science and Practice of Pharmacy)、第21版、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)、2005年(全体として参照により本明細書に援用される)を参照し得る。
【0156】
コーティング又はシェル
錠剤、糖衣剤、カプセル、丸薬、及び顆粒の固形投薬形態は、コーティング及びシェル、例えば腸溶性コーティング及び医薬品製剤化の技術分野において周知の他のコーティングで調製することができる。コーティングは任意選択で乳白剤を含んでもよく、任意選択で遅延する形で腸管の特定の部分において1つ又は複数の活性成分のみを放出する又はそれを優先的に放出する組成物のコーティングであってもよい。使用し得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物が、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール類などの賦形剤を使用する軟充填及び硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いられてもよい。
【0157】
VI.コンジュゲートの使用方法
本明細書に記載されるとおりのコンジュゲートは、適宜、任意の過剰増殖性疾患、代謝疾患、感染症、又は癌を治療するため投与することができる。製剤は、注射により、経口的に、又は局所的に、典型的には粘膜表面に(肺内、鼻腔、経口、頬側、舌下、腟内に、直腸に)又は眼に(眼内に又は経眼的に)投与し得る。
【0158】
様々な実施形態において、癌を有する対象の治療方法が提供され、この方法は、癌を有する、癌を有する疑いがある、又は癌素因を有する対象に本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート、その塩形態の治療有効量を投与することを含む。本発明によれば、癌は、制御されない細胞増殖、例えば過剰増殖を特徴とする任意の疾患又は病気を包含する。癌は、腫瘍、例えば固形腫瘍又は任意の新生物を特徴とし得る。
【0159】
一部の実施形態において、癌は固形腫瘍である。大型薬物分子は固形腫瘍における浸透が限られている。大型薬物分子の浸透は遅い。他方で、本発明のコンジュゲートのような小分子は固形腫瘍に迅速に且つより深く浸透し得る。薬物の浸透深さに関して、大型分子ほど耐久性の高い薬物動態を有するものの、浸透しにくい。本発明のコンジュゲートのような小分子は、より深く浸透する。ドレハー(Dreher)ら(ドレハー(Dreher)ら著、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(JNCI)、第98巻、第5号、p.335、2006年(この内容は全体として参照により本明細書に援用される))は、種々のサイズのデキストランの腫瘍異種移植片への浸透を研究した。
【0160】
一実施形態において、本発明のコンジュゲートは、腫瘍の血管表面から固形腫瘍の少なくとも約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約75μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、約1000μm、約1100μm、約1200μm、約1300μm、約1400μm又は約1500μm中まで達する。距離ゼロは腫瘍の血管表面として定義され、ゼロより大きい距離はいずれも、最も近い血管表面まで三次元で計測した距離として定義される。
【0161】
別の実施形態において、本発明のコンジュゲートは腫瘍の中心部に浸透する。腫瘍の「中心部」は、本明細書で使用されるとき、腫瘍の中央範囲を指す。腫瘍の中心範囲の任意の部分から腫瘍の血管表面までの距離は、腫瘍の長さ又は幅の約30%~約50%である。腫瘍の中心範囲の任意の部分から腫瘍の中心点までの距離は、腫瘍の長さ又は幅の約20%未満である。腫瘍の中心範囲はおよそ腫瘍の中心1/3である。
【0162】
別の実施形態において、本発明のコンジュゲート本発明のコンジュゲートは固形腫瘍の中間部まで浸透する。腫瘍の「中間部」は、本明細書で使用されるとき、腫瘍の中間範囲を指す。腫瘍の中間範囲の任意の部分から腫瘍の血管表面までの距離は、腫瘍の長さ又は幅の約15%~約30%である。腫瘍の中間範囲の任意の部分から腫瘍の中心点までの距離は腫瘍の長さ又は幅の約20%~約35%である。腫瘍の中間範囲はおよそ腫瘍の中心1/3から腫瘍の外側1/3までの間である。
【0163】
一部の実施形態において、対象は、他の場合であれば本コンジュゲートによる治療の適応がないものであり得る。一部の実施形態において、方法は、限定はされないが哺乳類癌細胞を含め、癌細胞の使用を含む。一部の例では、哺乳類癌細胞はヒト癌細胞である。
【0164】
一部の実施形態において、本教示のコンジュゲートは癌及び/又は腫瘍成長を阻害することが分かった。それらはまた、細胞増殖を含め、侵襲、及び/又は転移も低減し、従ってそれらは癌の治療に有用なものとなる。
【0165】
一部の実施形態において、本教示のコンジュゲートを使用して腫瘍又は癌の成長を防ぎ、及び/又は腫瘍又は癌の転移を防ぎ得る。一部の実施形態において、本教示の組成物を使用して癌を縮小させ又は破壊し得る。
【0166】
一部の実施形態において、本明細書に提供されるコンジュゲートは癌細胞の増殖の阻害に有用である。一部の実施形態において、本明細書に提供されるコンジュゲートは細胞増殖の阻害、例えば、細胞増殖速度の阻害、細胞増殖の予防、及び/又は細胞死の誘導に有用である。一般に、本明細書に記載されるとおりのコンジュゲートは癌細胞の細胞増殖を阻害し得るか、又は癌細胞の増殖の阻害及び/又は細胞死の誘導の両方を行い得る。一部の実施形態において、細胞増殖は本発明のコンジュゲートによる治療後に未治療の細胞と比較して少なくとも約25%、約50%、約75%、又は約90%低下する。一部の実施形態において、細胞周期停止マーカーのホスホヒストンH3(PH3又はPHH3)が本発明のコンジュゲートによる治療後に未治療の細胞と比較して少なくとも約50%、約75%、約100%、約200%、約400%又は約600%増加する。一部の実施形態において、細胞アポトーシスマーカーの切断型カスパーゼ3(CC3)が本発明のコンジュゲートによる治療後に未治療の細胞と比較して少なくとも50%、約75%、約100%、約200%、約400%又は約600%増加する。
【0167】
更には、一部の実施形態において、本発明のコンジュゲートは、サイズ(重量、表面積又は容積)の正味の値として計測するか、それとも時間に対する速度として計測するかに関わらず、複数種の腫瘍において腫瘍成長の阻害に有効である。
【0168】
一部の実施形態において、腫瘍のサイズは本発明のコンジュゲートによる治療後に約60%以上減少する。一部の実施形態において、腫瘍のサイズは、重量、及び/又は面積及び/又は容積で計測して少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%減少する。
【0169】
本教示の方法によって治療可能な癌は、概して哺乳類に起こる。哺乳類としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、フェレット、モルモット ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及びウシが挙げられる。様々な実施形態において、癌としては、限定はされないが、聴神経腫、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病(単球性、骨髄芽球性、腺癌、血管肉腫、星状細胞腫、骨髄単球性及び前骨髄球性)、急性T細胞白血病、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、気管支原性癌、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄球性白血病、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、異常増殖性変化(異形成及び化生)、胚性癌腫、子宮内膜癌、内皮肉腫、上衣腫、上皮癌、赤白血病、食道癌、エストロゲン受容体陽性乳癌、本態性血小板血症、ユーイング腫瘍、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、精巣胚細胞癌、神経膠腫、重鎖病、血管芽細胞腫、ヘパトーマ、肝細胞癌、ホルモン非感受性前立腺癌、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管内皮肉腫(lymphagioendotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ芽球性白血病、リンパ腫(ホジキン及び非ホジキン)、膀胱、乳房、結腸、肺、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、及び子宮の悪性腫瘍及び過剰増殖性障害、T細胞又はB細胞由来のリンパ性悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄性白血病、骨髄腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、乏突起膠腫、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、乳頭腺癌、乳頭癌、松果体腫、真性赤血球増加症、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、皮脂腺癌、セミノーマ、皮膚癌、小細胞肺癌、固形腫瘍(癌腫及び肉腫)、小細胞肺癌、胃癌、扁平上皮癌、滑膜腫、汗腺癌、甲状腺癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、精巣腫瘍、子宮癌、及びウィルムス腫瘍が挙げられる。他の癌としては、原発性癌、転移性癌、中咽頭癌、下咽頭癌、肝癌、胆嚢癌、胆管癌、小腸癌、尿路癌、腎癌、尿路上皮癌、女性生殖器癌、子宮癌、妊娠性絨毛性疾患、男性生殖器癌、精嚢癌、精巣癌、胚細胞腫瘍、内分泌腺腫瘍、甲状腺癌、副腎癌、下垂体癌、血管腫、骨及び軟部組織に由来する肉腫、カポジ肉腫、神経癌、眼癌、髄膜癌(meningial cancer)、膠芽腫、神経腫、神経芽細胞腫、シュワン腫、白血病などの造血器悪性腫瘍に由来する固形腫瘍、転移性黒色腫、再発性又は持続性卵巣上皮癌、卵管癌、原発性腹膜癌、消化管間質腫瘍、結腸直腸癌、胃癌、黒色腫、多形性膠芽腫、非扁平上皮非小細胞肺癌、悪性神経膠腫、上皮性卵巣癌、原発性漿液性腹膜癌、転移性肝癌、神経内分泌癌、難治性悪性腫瘍、トリプルネガティブ乳癌、HER2増幅乳癌、鼻咽腔癌(nasopharageal cancer)、口腔癌、胆道、肝細胞癌、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、非髄様甲状腺癌、再発性多形性膠芽腫、神経線維腫症1型、CNS癌、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、唾液腺癌、粘膜黒色腫、末端性/黒子性黒色腫、傍神経節腫、褐色細胞腫、進行転移性癌、固形腫瘍、トリプルネガティブ乳癌、結腸直腸癌、肉腫、黒色腫、腎癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、横紋筋肉腫(rhabdomysarcoma)、多発性骨髄腫、卵巣癌、膠芽腫、消化管間質腫瘍、マントル細胞リンパ腫、及び難治性悪性腫瘍が挙げられる。
【0170】
一実施形態において、本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート又は本明細書に記載されるとおりのコンジュゲートを含む製剤は、小細胞肺癌の治療に使用される。肺癌を有する患者の約12%~15%が小細胞肺癌を有する。転移性小細胞肺癌の生存率は低い。生存率は診断後5年で5%未満である。小細胞肺癌の米国での発生は約2万6000~3万例である。
【0171】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート又は本明細書に記載されるとおりのコンジュゲートを含む製剤は、HSP90を発現又は過剰発現する腫瘍を有する患者の治療に使用される。
【0172】
本発明のコンジュゲートの特徴は、腫瘍成長を阻害する、例えば遅延させ又は停止させる有効性は維持しつつ、生物にとって比較的低毒性であることである。本明細書で使用されるとき、「毒性」は、物質又は組成物が細胞、組織、生物又は細胞環境にとって有害又は有毒となる能力を指す。低毒性とは、物質又は組成物が細胞、組織、生物又は細胞環境にとって有害又は有毒となる能力の低下を指す。かかる毒性の低下又は低毒性は、標準測定値を基準としたものか、治療を基準としたものか、又は治療がない場合を基準としたものであり得る。例えば、本発明のコンジュゲートは、単独で投与した活性薬剤部分Zよりも低い毒性を有し得る。DM1を含むコンジュゲートについては、その毒性は単独で投与したDM1よりも低い。
【0173】
毒性は、更に対象の体重減少を基準として計測されてもよく、ここでは体重の15%超、20%超又は30%超の体重減少が毒性の指標となる。嗜眠及び全身倦怠感を含む患者の症状呈示の尺度など、毒性の他の尺度が計測されてもまたよい。好中球減少、血小板減少、白血球(WBC)数、全血球(CBC)数もまた、毒性の尺度であり得る。毒性の薬理学的指標としては、アミノトランスフェラーゼ(AST/ALT)値の上昇、神経毒性、腎損傷、GI障害などが挙げられる。一実施形態において、本発明のコンジュゲートは対象の体重の有意な変化を引き起こさない。本発明のコンジュゲートによる治療後に対象の体重減少は約30%、約20%、約15%、約10%、又は約5%未満である。別の実施形態において、本発明のコンジュゲートは対象のAST/ALT値の有意な増加を引き起こさない。本発明のコンジュゲートによる治療後に対象のAST又はALT値は増加が約30%、約20%、約15%、約10%、又は約5%未満である。更に別の実施形態において、本発明のコンジュゲートは、本発明のコンジュゲートによる治療後に対象のCBC又はWBC数の有意な変化を引き起こさない。本発明のコンジュゲートによる治療後に対象のCBC又はWBC値は低下が約30%、約20%、約15%、約10%、又は約5%未満である。
【0174】
併用療法
一部の実施形態において、本発明のコンジュゲート又は粒子は少なくとも1つの追加の活性薬剤と組み合わされる。活性薬剤は任意の好適な薬物であってもよい。コンジュゲート及び少なくとも1つの追加の活性薬剤は、同時に、逐次的に、又は任意の順序で投与することができる。コンジュゲート及び少なくとも1つの追加の活性薬剤は、適切である限り、異なる用量で、異なる投薬頻度で、又は異なる経路を介して投与され得る。
【0175】
いくつかの実施形態では、追加の活性薬剤は、本発明のコンジュゲートの生体内分布(すなわち、組織分布)に影響を与える。例えば、放射性物質は腎臓に蓄積し、腎臓や周囲の臓器に潜在的な放射性毒性の問題を引き起こす可能性がある。追加の活性薬剤は、腎臓の蓄積又は保持時間を低減させ得る。好ましくは、コンジュゲートの腎臓の更新(update)は減少するが、コンジュゲートの腫瘍取り込みは影響を受けない。腎臓と周囲の臓器はコンジュゲートの効果を低下させることなく保護される。1つの非限定的な例において、本発明のコンジュゲートは、少なくとも1つのアミノ酸又はその類似体と組み合わせて投与され得る。アミノ酸又はその類似体は、リジン(L-リジン又はD-リジン)又はアルギニン、あるいはそれらの組み合わせなどの正に帯電した塩基性アミノ酸であり得る。別の非限定的な例において、本発明のコンジュゲートは、HSP90阻害剤などの、HSP90に結合する活性薬剤と組み合わせて投与され得る。ガネテスピブやその誘導体/類似体など、「HSP90標的化部分」のセクションで説明されている任意のリガンドを使用することができる。別の非限定的な例において、本発明のコンジュゲートは、グルタミン酸一ナトリウム(MSG)又はグルタミン酸と組み合わせて投与され得る。さらに別の非限定的な例において、本発明のコンジュゲートは、アミホスチン(エチオール、WR-2721)、ウシゼラチン含有溶液ゲロフシン又はアルブミンフラグメントと組み合わせて投与され得る。アルブミンフラグメントは、3~50kDaの分子量を有し得る。
【0176】
追加の活性薬剤はまた、癌症状緩和薬であってもよい。症状緩和薬の非限定的な例としては、オクトレオチド又はランレオチド;インターフェロン、シプロヘプタジン(cypoheptadine)又は任意の他の抗ヒスタミン薬が挙げられる。一部の実施形態において、本発明のコンジュゲートは追加の活性薬剤との薬物相互干渉を有しない。一実施形態において、本発明のコンジュゲートはシトクロムP450(CYP)アイソザイムを阻害しない。CYPアイソザイムには、CYP3A4ミダゾラム、CYP3A4テストステロン、CYP2C9、CYP2D6、CYP1A2、CYP2C8、CYP2B6、及びCYP2C19が含まれ得る。追加の活性薬剤は本発明のコンジュゲートと同時に投与されてもよい。
【0177】
別の例では、本発明のコンジュゲートを中等用量の化学療法剤、例えばマイトマイシンC、ビンブラスチン及びシスプラチンと組み合わせてもよい(エリス(Ellis)ら著、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(Br J Cancer)、第71巻、第2号、p.366~370(1995年)(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)を参照)。
【0178】
さらに別の例において、患者は、最初に、薬学的有効量の非コンジュゲート活性薬剤を受け、その後、同じ活性薬剤を含む薬学的有効量のコンジュゲートを受けてもよい。
本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート又は本明細書に記載されるとおりのコンジュゲートを含有する製剤を使用して、治療用、予防用、又は診断用薬剤をそれを必要としている個体又は患者に組織選択的に送達することができる。例えば、本発明のコンジュゲートを使用して放射性物質が選択的な組織に送達される。これらの組織は腫瘍組織であり得る。投薬量レジメンは、最適な所望の反応(例えば、治療的又は予防的反応)がもたらされるように調整し得る。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、数回の分割用量を時間をかけて投与してもよく、又は治療状況の緊急性が指示するところに応じて用量を比例的に減量又は増量させてもよい。投薬量単位形態とは、本明細書で使用されるとき、治療する哺乳類対象への単位投薬量として適した物理的に個別の単位を指す;各単位が、所望の治療薬を生じるように計算された所定の分量の活性化合物を含有する。
【0179】
V.キット及びデバイス
本発明は、本発明の方法を好都合に及び/又は有効に実行するための種々のキット及びデバイスを提供する。典型的にはキットは、使用者による1又は複数の対象の複数回の治療の実施及び/又は複数回の実験の実施を可能にするのに十分な量及び/又は数の構成要素を含み得る。
【0180】
一実施形態において、本発明は、本発明のコンジュゲート又は本発明のコンジュゲートの組み合わせを任意選択で任意の他の活性薬剤と組み合わせて含む、インビトロ又はインビボで腫瘍細胞成長を阻害するためのキットを提供する。
【0181】
本キットは、包装及び説明書及び/又は製剤組成物を形成するためのデリバリー剤を更に含み得る。デリバリー剤には、生理食塩水、緩衝溶液、又は本明細書に開示される任意のデリバリー剤が含まれ得る。各構成成分の量は、一貫した再現可能な高濃度生理食塩水又は単純緩衝液製剤が実現するように変えることができる。構成成分もまた、ある期間にわたる及び/又は種々の条件下における緩衝溶液中のコンジュゲートの安定性を増加させるため変えることができる。
【0182】
本発明は、本発明のコンジュゲートを取り入れ得るデバイスを提供する。これらのデバイスは、それを必要としている対象、例えばヒト患者に即時送達するのに利用可能な安定製剤を含む。一部の実施形態において、対象は癌を有する。
【0183】
デバイスの非限定的な例としては、ポンプ、カテーテル、針、経皮パッチ、加圧嗅覚器送達デバイス、イオントフォレシスデバイス、多層マイクロ流体デバイスが挙げられる。これらのデバイスを利用することにより、本発明のコンジュゲートを単回、複数回又は分割投与レジメン(regiment)に従い送達し得る。デバイスを利用することにより、本発明のコンジュゲートを生体組織を通して、皮内に、皮下に、又は筋肉内に送達し得る。
【0184】
VI.定義
用語「化合物」は、本明細書で使用されるとき、示される構造体のあらゆる立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位元素を含むことが意図される。本願では、化合物はコンジュゲートと同義的に(interechangably)使用される。従って、コンジュゲートもまた、本明細書で使用されるとき、描かれる構造体のあらゆる立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位元素を含むことが意図される。
【0185】
本明細書に記載される化合物は不斉性であり得る(例えば1つ以上の立体中心を有する)。特に指示されない限り、エナンチオマー及びジアステレオマーなど、あらゆる立体異性体が意図される。非対称に置換された炭素原子を含む本開示の化合物は、光学活性形態又はラセミ体形態で分離することができる。光学活性出発物質から光学活性形態をどのように調製するかに関する方法は、ラセミ混合物の分割によるか又は立体選択的合成によるなど、当該技術分野において公知である。オレフィン類、C=N二重結合などの多くの幾何異性体もまた本明細書に記載される化合物に存在してもよく、かかる安定異性体は全て、本開示において企図される。本開示の化合物のシス及びトランス幾何異性体が記載され、異性体の混合物として又は別々の異性体型として分離され得る。
【0186】
本開示の化合物にはまた、互変異性型も含まれる。互変異性型は、単結合を隣接する二重結合と交換し、同時にプロトンが移動する結果として生じる。互変異性型は、同じ実験式及び全電荷を有する異性体プロトン化状態であるプロトトロピー互変異性体を含む。プロトトロピー互変異性体の例としては、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、アミド-イミド酸対、エナミン-イミン対、及びプロトンが複素環式系の2つ以上の位置を占めることができる環状型、例えば、1H-及び3H-イミダゾール、1H-、2H-及び4H-1,2,4-トリアゾール、1H-及び2H-イソインドール、及び1H-及び2H-ピラゾールが挙げられる。互変異性型は平衡状態であり、又は適切な置換によって一つの形態に立体的に固定される。
【0187】
本開示の化合物にはまた、中間体又は最終化合物中に存在する原子のあらゆる同位元素も含まれる。「同位元素」は、同じ原子番号を有するが、核内の中性子の数が異なる結果として質量数が異なる原子を指す。例えば、水素の同位元素にはトリチウム及び重水素が含まれる。
【0188】
本開示の化合物及び塩は、常法によって溶媒又は水分子と組み合わせて溶媒和物及び水和物を形成することにより調製し得る。
用語「対象」又は「患者」は、本明細書で使用されるとき、例えば、実験目的、治療目的、診断目的、及び/又は予防目的でコンジュゲートを投与し得る任意の生物を指す。典型的な対象としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、ハムスター、ラマ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳類)が挙げられる。
【0189】
用語「治療する」又は「予防する」は、本明細書で使用されるとき、ある疾患、障害及び/又は病態に罹り易い素因があり得るものの、まだその疾患、障害又は病態を有すると診断はされていない動物に疾患、障害又は病態が起こらないように防ぐこと;疾患、障害又は病態を阻害する、例えば、その進行を妨げること;及び疾患、障害、又は病態を軽減する、例えば、疾患、障害及び/又は病態の退縮を生じさせることを含み得る。疾患、障害、又は病態を治療するとは、鎮痛剤が疼痛の原因を治療しないにしてもかかる薬剤の投与によって対象の痛みを治療するなど、特定の疾患、障害、又は病態の少なくとも1つの症状を、例え根底にある病態生理が影響を受けないとしても改善することを含み得る。
【0190】
「標的」は、本明細書で使用されるとき、標的化されたコンストラクトが結合する部位を意味するものとする。標的はインビボ又はインビトロのいずれであってもよい。特定の実施形態において、標的は、白血病又は腫瘍(例えば、脳、肺(小細胞及び非小細胞)、卵巣、前立腺、乳房及び結腸の腫瘍並びに他の癌腫及び肉腫)に見られる癌細胞であり得る。なおも他の実施形態において、標的は、ハプテン、エピトープ、受容体、dsDNA断片、炭水化物又は酵素など、標的化部分又はリガンドが結合する分子構造を指し得る。標的はある種の組織、例えば、神経組織、腸組織、膵臓組織、肝臓、腎臓、前立腺、卵巣、肺、骨髄、又は乳房組織であってもよい。
【0191】
本方法又はコンジュゲートの標的となり得る「標的細胞」は、概して動物細胞、例えば哺乳類細胞である。本方法を用いて、インビトロで、即ち細胞培養で、又は細胞が動物組織の一部を形成するか若しくは他の形で存在するインビボで、生細胞の細胞機能を改変し得る。従って、標的細胞には、例えば、血液、リンパ組織、消化管の内側を覆う細胞、例えば口腔粘膜及び咽頭粘膜、小腸の絨毛を形成する細胞、大腸の内側を覆う細胞、動物の呼吸器系(鼻道/肺)の内側を覆う細胞(本発明の吸入によって接触させ得る)、真皮/表皮細胞、腟及び直腸の細胞、胎盤の細胞を含めた内臓器官の細胞及びいわゆる血液脳関門等が含まれ得る。一般に、標的細胞は少なくとも1種類のHSP90を発現する。一部の実施形態において、標的細胞は、HSP90を発現し且つ本明細書に記載されるコンジュゲートによって標的化される、及び本コンジュゲートの活性薬剤の放出によって影響を受ける細胞の近傍にある細胞であり得る。例えば、腫瘍に近接しているHSP90を発現する血管が標的であってもよく、一方、その部位で放出される活性薬剤は腫瘍に影響を及ぼすことになる。
【0192】
用語「治療効果」は当該技術分野で認識されており、薬理活性物質によって引き起こされる動物、詳細には哺乳類、より詳細にはヒトにおける局所又は全身作用を指す。従ってこの用語は、動物、例えばヒトの望ましい身体的又は精神的発達及び状態の増強における疾患、障害又は病態の診断、治癒、緩和、治療又は予防への使用が意図される任意の物質を意味する。
【0193】
用語「モジュレーション」は、当該技術分野で認識されており、反応の上方制御(即ち活性化又は刺激)、下方制御(即ち阻害又は抑制)、又はこれら2つを組み合わせで又は別々に指す。モジュレーションは、概して、治療される実体にとって内部又は外部であってもよいベースライン又は基準と比較される。
【0194】
「非経口投与」は、本明細書で使用されるとき、消化管(経腸)又は非侵襲性局所経路を介する以外の任意の方法による投与を意味する。例えば、非経口投与には、静脈内、皮内、腹腔内、胸膜内、気管内、骨内(intraossiously)、脳内、髄腔内、筋肉内、皮下、結膜下(subjunctivally)への、注射による、及び注入による患者への投与が含まれ得る。
【0195】
「局所投与」は、本明細書で使用されるとき、皮膚、開口部、又は粘膜への非侵襲性投与を意味する。局所投与は局所的に送達することができ、即ち、治療薬は全身曝露なしに、又は最小限の全身曝露で、送達領域に局所効果をもたらすことができる。一部の局所製剤は、例えば個体の血流への吸着によって全身作用をもたらすことができる。局所投与には、限定はされないが、皮膚及び経皮投与、頬側投与、鼻腔内投与、腟内投与、膀胱内投与、眼投与、及び直腸投与が含まれ得る。
【0196】
「経腸投与」は、本明細書で使用されるとき、胃腸管を通じた吸収による投与を意味する。経腸投与には、経口及び舌下投与、胃投与、又は直腸投与が含まれ得る。
「肺内投与」は、本明細書で使用されるとき、吸入又は気管内投与による肺内への投与を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「吸入」は、肺胞に空気を取り入れることを指す。空気の取り入れは口又は鼻から行われ得る。
【0197】
本明細書で同義的に使用されるとおりの用語「十分な」及び「有効な」は、1つ以上の所望の結果を実現するのに必要な量(例えば、質量、容積、投薬量、濃度、及び/又は時間)を指す。「治療有効量」は、少なくとも1つの症状又は特定の病態若しくは障害の計測可能な改善又は妨害を生じさせ、平均余命の計測可能な向上を生じさせ、又は患者のクオリティ・オブ・ライフを概して改善するのに要求される少なくとも最小限の濃度である。従って治療有効量は、具体的な生物学的に活性な分子及び治療する具体的な病態又は障害に依存する。抗体など、多くの活性薬剤の治療有効量は、当該技術分野において公知である。本明細書に記載される化合物及び組成物の、例えば特定の障害を治療するための治療有効量は、十分に医師などの当業者の技能の範囲内にある技法によって決定し得る。
【0198】
本明細書では同義的に使用されるとおりの用語「生物活性薬剤」及び「活性薬剤」には、限定なしに、身体で局所的又は全身的に作用する生理活性又は薬理活性物質が含まれる。生物活性薬剤は、疾患又は病気の治療(例えば治療用薬剤)、予防(例えば予防用薬剤)、診断(例えば診断用薬剤)、治癒又は緩和に使用される物質、身体の構造又は機能に影響を及ぼす物質、又は所定の生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性になる又は活性が高くなるプロドラッグである。
【0199】
用語「プロドラッグ」は、インビトロ及び/又はインビボで生物学的に活性な形態に変換される、有機小分子、ペプチド、核酸又はタンパク質を含めた薬剤を指す。プロドラッグは、ある状況において親化合物(活性化合物)よりも投与が容易であり得るため有用であり得る。例えば、プロドラッグは経口投与によるバイオアベイラビリティがあり得るが、親化合物はない。プロドラッグはまた、親薬物と比較して医薬組成物中における溶解度が向上したものであり得る。プロドラッグはまた、親よりも毒性が低いものであり得る。プロドラッグは、酵素的過程及び代謝加水分解を含め、様々な機構によって親薬物に変換され得る。ハーパー,N.J.(Harper,N.J.)、1962年、薬物潜在化(Drug Latentiation)、ユッカー(Jucker)編、薬物研究の進歩(Progress in Drug Research)、第4巻、p.221~294;モロゾウィッチ(Morozowich)ら著、1977年、身体有機成分のプロドラッグ設計への応用(Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design)、E.B.ロシュ(E.B.Roche)編、プロドラッグ及び類似体によるバイオ医薬品特性の設計(Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs)、米国薬剤師会(APhA);アカデミー・オブ・ファーマシューティカル・リサーチ・アンド・サイエンス(Acad.Pharm.Sci.);E.B.ロシュ(E.B.Roche)編、1977年、薬物設計、理論及び応用における薬物のバイオリバーシブル担体(Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application)、米国薬剤師会(APhA);H.バンドゲーアード(H.Bundgaard)編、1985年、プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)、エルゼビア(Elsevier);ワン(Wang)ら著、1999年、ペプチド薬物の送達改善に向けたプロドラッグアプローチ(Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug)、カレント・ファーマシューティカル・デザイン(Curr.Pharm.Design.)、第5巻、第4号、p.265~287;パウレッティ(Pauletti)ら著、1997年、ペプチドバイオアベイラビリティの向上:ペプチドミメティクス及びプロドラッグ戦略(Improvement in peptide bioavailability:Peptidomimetics and Prodrug Strategies)、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Adv.Drug.Delivery Rev.)、第27巻、p.235~256;ミズン(Mizen)ら著、1998年、βラクタム系抗生物質の経口送達用プロドラッグとしてのエステルの使用(The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of β-Lactam antibiotics)、ファーマシューティカル・バイオテクノロジー(Pharm.Biotech.)、第11巻、p.345~365;ガイニョー(Gaignault)ら著、1996年、プロドラッグ及びバイオプリカーサの設計I.担体プロドラッグ(Designing Prodrugs and Bioprecursors I.Carrier Prodrugs)、ザ・プラクティス・オブ・メディシナル・ケミストリー(Pract.Med.Chem.)、p.671~696;M.アスガルネジド(M.Asgharnejad)、2000年、プロドラッグによる経口薬物輸送の改善(Improving Oral Drug Transport Via Prodrugs)、G.L.アミドン(G.L.Amidon)、P.I.リー(P.I.Lee)及びE.M.トップ(E.M.Topp)編、製剤系の輸送プロセス(Transport Processes in Pharmaceutical Systems)、マルセル・デッカー(Marcell Dekker)、p.185~218;バラント(Balant)ら著、1990年、種々の投与経路による薬物吸収を改善するためのプロドラッグ(Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ドラッグ・メタボリズム・アンド・ファーマコキネティクス(Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.)、第15巻、第2号、p.143~53;バリマネ(Balimane)及びシンコ(Sinko)著、1999年、ヌクレオシド類似体の経口吸収におけるマルチトランスポーターの改善(Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues)、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Adv.Drug Delivery Rev.)、第39巻、第1-3号、p.183~209;ブラウン(Browne)著、1997年、ホスフェニトイン(セレビックス)(Fosphenytoin(Cerebyx))、クリニカル・ニューロファーマコロジー(Clin.Neuropharmacol.)、第20巻、第1号、p.1~12;バンドゲーアード(Bundgaard)著、1979年、薬物のバイオリバーシブル誘導体化-原理と薬物の治療効果の改善に向けた適用性(Bioreversible derivatization of drugs--principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs)、Arch.Pharm.Chemi.、第86巻、第1号、p.1~39;H.バンドゲーアード(H.Bundgaard)編、1985年、プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)、ニューヨーク:エルゼビア(Elsevier);フライシャー(Fleisher)ら著、1996年、経口薬物送達の改善:溶解度制限がプロドラッグの使用によって解消される(Improved oral drug delivery:solubility limitations overcome by the use of prodrugs)、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Adv.Drug Delivery Rev.)、第19巻、第2号、p.115~130;フライシャー(Fleisher)ら著、1985年、腸内酵素ターゲティングによる胃腸管吸収の改善に向けたプロドラッグの設計(Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting)、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods Enzymol.)、第112巻、p.360~81;ファークワー・D(Farquhar D)ら著、1983年、生物学的に可逆的なリン酸塩保護基(Biologically Reversible Phosphate-Protective Groups)、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(J.Pharm.Sci.)、第72巻、第3号、p.324~325;ハン・H.K.(Han,H.K.)ら著、2000年、薬物送達を最適化するための標的化プロドラッグ設計(Targeted prodrug design to optimize drug delivery)、製薬科学者協会ファームサイ(AAPS PharmSci.)、第2巻、第1号、p.E6;サヅカ・Y(Sadzuka Y.)、2000年、有効なプロドラッグリポソーム及び活性代謝産物への変換(Effective prodrug liposome and conversion to active metabolite)、カレント・ドラッグ・メタボリズム(Curr.Drug Metab.)、第1巻、第1号、p.31~48;D・M・ランバート(D.M.Lambert)、2000年、プロドラッグ担体としての脂質の原理及び応用(Rationale and applications of lipids as prodrug carriers)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(Eur.J.Pharm.Sci.)、第11巻、補遺2、p.S15~27;ワン・W(Wang,W.)ら著、1999年、ペプチド薬物の送達改善に向けたプロドラッグアプローチ(Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drugs)、カレント・ファーマシューティカル・デザイン(Curr.Pharm.Des.)、第5巻、第4号、p.265~87。
【0200】
用語「生体適合性」は、本明細書で使用されるとき、任意の代謝産物又はその分解産物と共に、概して被投与者にとって非毒性の、且つ被投与者にいかなる重大な有害作用も引き起こさない材料を指す。一般的に言えば、生体適合性材料は、患者への投与時に重大な炎症反応又は免疫反応を誘発しない材料である。
【0201】
用語「生分解性」は、本明細書で使用されるとき、概して、生理条件下で分解し又は侵食されて、対象によって代謝、排出、又は排泄可能なより小さい単位又は化学種になる材料を指す。分解時間は組成及び形態の関数である。分解時間は数時間~数週間であり得る。
【0202】
用語「薬学的に許容可能」は、本明細書で使用されるとき、妥当な医学的判断の範囲内で、米国食品医薬品局などの機関のガイドラインに従い合理的なリスク対効果比に見合った過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症のないヒト及び動物の組織との接触における使用に好適な化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。「薬学的に許容可能な担体」は、本明細書で使用されるとき、インビボで組成物の送達を促進する医薬製剤の全ての構成成分を指す。薬学的に許容可能な担体としては、限定はされないが、希釈剤、保存剤、結合剤、滑沢剤、崩壊薬、膨潤剤、充填剤、安定剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0203】
用語「分子量」は、本明細書で使用されるとき、概して材料の質量又は平均質量を指す。ポリマー又はオリゴマーの場合、分子量は、バルクポリマーの相対的平均鎖長又は相対的鎖質量を指し得る。実際には、ポリマー及びオリゴマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又は毛細管粘度測定法を含めた様々な方法で推定し又は特徴付けることができる。GPC分子量は、数平均分子量(M)とは対照的に、重量平均分子量(M)として報告される。毛細管粘度測定法は、特定の一組の濃度、温度、及び溶媒条件を用いた希釈ポリマー溶液から決定される固有粘度として分子量の推定値を提供する。
【0204】
用語「小分子」は、本明細書で使用されるとき、概して、2000g/mol未満の分子量、1500g/mol未満、1000g/mol未満、800g/mol未満、又は500g/mol未満の有機分子を指す。小分子は非ポリマー性及び/又は非オリゴマー性である。
【0205】
用語「親水性」は、本明細書で使用されるとき、水と容易に相互作用する強極性基を有する物質を指す。
用語「疎水性」は、本明細書で使用されるとき、水に対する親和性を欠く;撥水して水を吸収しないとともに水中に溶解又は混合しない傾向をもつ物質を指す。
【0206】
用語「親油性」は、本明細書で使用されるとき、脂質に対する親和性を有する化合物を指す。
用語「両親媒性」は、本明細書で使用されるとき、親水性特性と親油性(疎水性)特性とを合わせ持つ分子を指す。「両親媒性材料」は、本明細書で使用されるとき、疎水性又は高疎水性のオリゴマー又はポリマー(例えば生分解性オリゴマー又はポリマー)と親水性又は高親水性のオリゴマー又はポリマーとを含有する材料を指す。
【0207】
用語「標的化部分」は、本明細書で使用されるとき、特定の場所に結合する又はそこに局在化する部分を指す。部分は、例えば、タンパク質、核酸、核酸類似体、炭水化物、又は小分子であり得る。場所は、組織、特定の細胞型、又は細胞内コンパートメントであり得る。一部の実施形態において、標的化部分は選択の分子に特異的に結合することができる。
【0208】
用語「反応性カップリング基」は、本明細書で使用されるとき、第2の官能基と反応して共有結合を形成する能力を有する任意の化学官能基を指す。反応性カップリング基の選択は当業者の能力の範囲内である。反応性カップリング基の例としては、第一級アミン類(-NH)及びアミン反応性連結基、例えば、イソチオシアネート類、イソシアネート類、アシルアジド類、NHSエステル類、塩化スルホニル類、アルデヒド類、グリオキサール類、エポキシド類、オキシラン類、炭酸塩類、ハロゲン化アリール類、イミドエステル類、カルボジイミド類、無水物類、及びフルオロフェニルエステル類などを挙げることができる。これらの多くはアシル化又はアルキル化のいずれかによってアミン類にコンジュゲートする。反応性カップリング基の例としては、アルデヒド類(-COH)及びアルデヒド反応性連結基、例えば、ヒドラジド類、アルコキシアミン類、及び第一級アミン類を挙げることができる。反応性カップリング基の例としては、チオール基(-SH)及びスルフヒドリル反応基、例えば、マレイミド類、ハロアセチル類、及びピリジルジスルフィド類を挙げることができる。反応性カップリング基の例としては、光反応性カップリング基、例えばアリールアジド類又はジアジリン類などを挙げることができる。カップリング反応には、触媒、熱、pH緩衝液、光、又はこれらの組み合わせの使用が含まれ得る。
【0209】
用語「保護基」は、本明細書で使用されるとき、所望の官能基をある種の反応条件から保護するため別の所望の官能基に付加され及び/又はそれを置換し、及び所望の官能基を脱保護し又はそれを露出させるため選択的に除去及び/又は置換され得る官能基を指す。保護基は当業者に公知である。好適な保護基としては、グリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)、有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)、1991年に記載されるものを挙げることができる。酸感受性保護基としては、ジメトキシトリチル(DMT)、tert-ブチルカルバメート(tBoc)及びトリフルオロアセチル(tFA)が挙げられる。塩基感受性保護基としては、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、イソブチリル(isobutyrl)(iBu)、ベンゾイル(Bz)及びフェノキシアセチル(pac)が挙げられる。他の保護基としては、アセトアミドメチル、アセチル、tert-アミルオキシカルボニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、2-(4-ビフェニリル)-2-プロピルオキシカルボニル((2-(4-biphεnylyl)-2-propy!oxycarbonyl)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、tert-ブチルtert-ブチルオキシカルボニル、l-カルボベンゾキサミド(carbobenzoxamido)-2,2.2-トリフルオロエチル、2,6-ジクロロベンジル、2-(3,5-ジメトキシフェニル)-2-プロピルオキシカルボニル、2,4-ジニトロフェニル、ジチアスクシニル、ホルミル、4-メトキシベンゼンスルホニル、4-メトキシベンジル、4-メチルベンジル、o-ニトロフェニルスルフェニル、2-フェニル-2-プロピルオキシカルボニル、α-2,4,5-テトラメチルベンジルオキシカルボニル、p-トルエンスルホニル、キサンテニル、ベンジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、p-ニトロベンジルエステル、p-ニトロフェニルエステル、フェニルエステル、p-ニトロカーボネート、p-ニトロベンジルカーボネート、トリメチルシリル及びペンタクロロフェニルエステルが挙げられる。
【0210】
用語「活性化エステル」は、本明細書で使用されるとき、アルキルが良好な脱離基であり、アミノ基を担持する分子による求核攻撃に対する感受性をカルボニルに付与するカルボン酸のアルキルエステルを指す。従って活性化エステルはアミノリシスを起こし易く、アミンと反応してアミドを形成する。活性化エステルはカルボン酸エステル基-COR[式中、Rは脱離基である]を含有する。
【0211】
用語「アルキル」は、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含めた飽和脂肪族基のラジカルを指す。
【0212】
一部の実施形態において、直鎖又は分枝鎖アルキルはその骨格に炭素原子を30個以下(例えば、直鎖についてC~C30、分枝鎖についてC~C30)、20個以下、12個以下、又は7個以下有する。同様に、一部の実施形態においてシクロアルキル類はその環構造に3~10個の炭素原子を有し、例えば環構造に5、6又は7個の炭素を有する。本明細書、実施例、及び特許請求の範囲全体を通じて用いられるとおりの用語「アルキル」(又は「低級アルキル」)は、「非置換アルキル類」及び「置換アルキル類」の両方を含むことが意図され、このうちの後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素を置換する1つ以上の置換基を有するアルキル部分を指す。かかる置換基としては、限定はされないが、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオ酢酸塩、又はチオギ酸塩など)、アルコキシル、ホスホリル、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩(a hosphinate)、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、硫酸塩、スルホン酸塩、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。
【0213】
炭素の数が特に指定されない限り、「低級アルキル」は、本明細書で使用されるとき、上記に定義するとおりの、但しその骨格構造に1~10個の炭素、又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」も同様の鎖長を有する。一部の実施形態において、アルキル基は低級アルキル類である。一部の実施形態において、本明細書においてアルキルとして指定される置換基は低級アルキルである。
【0214】
当業者は、炭化水素鎖上の置換された部分が、適切な場合にはそれ自体置換されていてもよいことを理解するであろう。例えば、置換アルキルの置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、チオール類、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホン酸塩及びホスフィン酸塩を含む)、スルホニル(硫酸塩、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホン酸塩を含む)、及びシリル基、並びにエーテル類、アルキルチオ類、カルボニル類(ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸塩類、及びエステル類を含む)、-CF、-CNなどを挙げることができる。シクロアルキル類も同様に置換されていてもよい。
【0215】
用語「ヘテロアルキル」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、直鎖又は分枝鎖、又は環状炭素を含有するラジカル、又はこれらの組み合わせを指す。好適なヘテロ原子としては、限定はされないが、O、N、Si、P、Se、B、及びSが挙げられ、ここで亜リン酸及び硫黄原子は任意選択で酸化されており、及び窒素ヘテロ原子は任意選択で四級化されている。ヘテロアルキル類は、アルキル基に関して上記に定義したとおり置換されていてもよい。
【0216】
用語「アルキルチオ」は、硫黄ラジカルが付加された上記に定義するとおりのアルキル基を指す。一部の実施形態において、「アルキルチオ」部分は、-S-アルキル、-S-アルケニル、及び-S-アルキニルのうちの1つによって表される。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、及びエチルチオを挙げることができる。用語「アルキルチオ」はまた、シクロアルキル基、アルケン及びシクロアルケン基、及びアルキン基も包含する。「アリールチオ」は、アリール又はヘテロアリール基を指す。アルキルチオ基は、アルキル基に関して上記に定義したとおり置換されていてもよい。
【0217】
用語「アルケニル」及び「アルキニル」は、長さ及び可能な置換が上記に記載したアルキル類と同様の、但し少なくとも1つのそれぞれ二重結合又は三重結合を含有する不飽和脂肪族基を指す。
【0218】
用語「アルコキシル」又は「アルコキシ」は、本明細書で使用されるとき、酸素ラジカルが付加されている上記に定義するとおりのアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、及びtert-ブトキシが挙げられる。「エーテル」は、2つの炭化水素が酸素によって共有結合的に連結したものである。従って、当該のアルキルにエーテルを付与するアルキルの置換基は、-O-アルキル、-O-アルケニル、及び-O-アルキニルのうちの1つによって表され得るなど、アルコキシルであるか、又はそれに似ている。アロキシは-O-アリール又はO-ヘテロアリールによって表すことができ、ここでアリール及びヘテロアリールは以下に定義するとおりである。アルコキシ及びアロキシ基は、アルキルに関して上記に記載したとおり置換されていてもよい。
【0219】
用語「アミン」及び「アミノ」は当該技術分野で認識されており、非置換型及び置換型の両方のアミン、例えば、一般式:
【0220】
【化30】
【0221】
[式中、R、R10、及びR’10は、各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、-(CH-Rを表し、又はR及びR10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環状構造に4~8個の原子を有する複素環を完成させ;Rは、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環又は多環を表し;及びmは0又は1~8の範囲の整数である]によって表すことのできる部分を指す。一部の実施形態において、R又はR10のうちの一方のみがカルボニルであってもよく、例えば、R、R10及び窒素は一緒になってイミドを形成しない。なおも他の実施形態において、用語「アミン」にはアミド類は包含されず、例えばR及びR10のうちの一方がカルボニルを表す。更なる実施形態において、R及びR10(及び任意選択でR’10)は、各々独立して、水素、アルキル又はシクロアルキル(cycloalkly)、アルケニル又はシクロアルケニル、又はアルキニルを表す。従って、用語「アルキルアミン」は、本明細書で使用されるとき、上記に定義するとおりの、(アルキルに関して上記に記載したとおり)置換されている又は置換されていないアルキルが付加されているアミン基を意味し、即ち、R及びR10のうちの少なくとも一方がアルキル基である。
【0222】
用語「アミド」は当該技術分野でアミノ置換カルボニルと認識されており、一般式:
【0223】
【化31】
【0224】
[式中、R及びR10は上記に定義するとおりである]によって表すことのできる部分を含む。
「アリール」は、本明細書で使用されるとき、C~C10員の芳香族、複素環式、縮合芳香族、縮合複素環式、二芳香族、又は二複素環式環系を指す。広義の「アリール」には、本明細書で使用されるとき、0~4個のヘテロ原子、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジンなどを含み得る5、6、7、8、9、及び10員単環芳香族基が含まれる。環状構造にヘテロ原子を有するこれらのアリール基はまた、「アリール複素環」又は「ヘテロ芳香族」とも称され得る。芳香環は1つ以上の環位置で、限定はされないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ(又は四級化アミノ)、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、-CF、-CN;及びこれらの組み合わせを含めた1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0225】
用語「アリール」にまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通する2つ以上の環式環(即ち「縮合環」)を有する多環式環系も含まれ、ここでこれらの環のうちの少なくとも1つが例えば芳香族であり、他の1つ又は複数の環式環が、シクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類及び/又は複素環であってもよい。複素環の例としては、限定はされないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aHカルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3 b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル及びキサンテニルが挙げられる。これらの環の1つ以上は、「アリール」に関して上記に定義したとおり置換されていてもよい。
【0226】
用語「アラルキル」は、本明細書で使用されるとき、アリール基(例えば、芳香族基又はヘテロ芳香族基)で置換されているアルキル基を指す。
用語「炭素環」は、本明細書で使用されるとき、環の各原子が炭素である芳香環又は非芳香環を指す。
【0227】
「複素環」又は「複素環式」は、本明細書で使用されるとき、3~10個の環原子、例えば5~6個の環原子を含有し、炭素と、各々が非過酸化物酸素、硫黄、及びN(Y)[式中、Yは存在しないか又はH、O、(C~C10)アルキル、フェニル又はベンジルである]から選択される1~4個のヘテロ原子とからなり、及び任意選択で1~3個の二重結合を含有し、及び任意選択で1つ以上の置換基によって置換されている単環式又は二環式環の環状炭素又は窒素を介して結合した環状ラジカルを指す。複素環の例としては、限定はされないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキセパニル、オキセタニル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル及びキサンテニルが挙げられる。複素環式基は、任意選択で、1つ以上の位置においてアルキル及びアリールに関して上記に定義したとおりの1つ以上の置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、-CF3、及び-CNによって置換されていてもよい。
【0228】
用語「カルボニル」は当該技術分野で認識されており、一般式:
【0229】
【化32】
【0230】
[式中、Xは結合であるか又は酸素若しくは硫黄を表し、及びR11は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、又はアルキニルを表し、R’11は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、又はアルキニルを表す]によって表すことができるような部分を含む。式中、Xが酸素であり、及びR11又はR’11が水素でない場合、この式は「エステル」を表す。式中、Xが酸素であり、及びR11か上記に定義するとおりである場合、この部分は本明細書ではカルボキシル基と称され、特にR11が水素である場合、この式は「カルボン酸」を表す。式中、Xが酸素であり、及びR’11が水素である場合、この式は「ギ酸塩」を表す。一般に、上記の式の酸素原子が硫黄に置き換えられる場合、この式は「チオカルボニル」基を表す。式中、Xが硫黄であり、及びR11又はR’11が水素でない場合、この式は「チオエステル」を表す。式中、Xが硫黄であり、及びR11が水素である場合、この式は「チオカルボン酸」表す。式中、Xが硫黄であり、及びR’11が水素である場合、この式は「チオギ酸塩」を表す。他方で、式中、Xが結合であり、及びR11が水素でない場合、上記の式は「ケトン」基を表す。式中、Xが結合であり、及びR11が水素である場合、上記の式は「アルデヒド」基を表す。
【0231】
用語「モノエステル」は、本明細書で使用されるとき、ジカルボン酸の類似体を指し、ここでカルボン酸の一方はエステルとして官能化され、且つ他方のカルボン酸は遊離カルボン酸又はカルボン酸の塩である。モノエステルの例としては、限定はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸及びマレイン酸のモノエステルが挙げられる。
【0232】
用語「ヘテロ原子」は、本明細書で使用されるとき、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を意味する。ヘテロ原子の例は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄及びセレンである。他の有用なヘテロ原子としては、ケイ素及びヒ素が挙げられる。
【0233】
本明細書で使用されるとき、用語「ニトロ」は-NOを意味する;用語「ハロゲン」は-F、-Cl、-Br又は-Iを指示する;用語「スルフヒドリル」は-SHを意味する;用語「ヒドロキシル」は-OHを意味する;及び用語「スルホニル」は-SO-を意味する。
【0234】
用語「置換されている」は、本明細書で使用されるとき、本明細書に記載される化合物の許容されるあらゆる置換基を指す。最も広義には、許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分枝状及び非分枝状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、限定はされないが、ハロゲン、ヒドロキシル基、又は任意の数の炭素原子、例えば1~14個の炭素原子を含む任意の他の有機基が挙げられ、及び任意選択で、線状、分枝状、又は環状構造フォーマットの酸素、硫黄、又は窒素基などの1つ以上のヘテロ原子が挙げられる。代表的な置換基としては、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C~C20環式、置換C~C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、及びポリペプチド基が挙げられる。
【0235】
窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物の水素置換基及び/又は任意の許容される置換基を有し得る。「置換」又は「置換されている」は、かかる置換が置換原子及び置換基の許容される原子価に従うものであり、及びその置換によって安定化合物、即ち、例えば転位、環化、又は脱離による転換が自然に起こることのない化合物がもたらされるという黙示的な条件を含むことが理解される。
【0236】
広義の態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分枝状及び非分枝状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば本明細書に記載されるものが挙げられる。適切な有機化合物について許容される置換基は1つ以上であってもよく、及び同じであっても又は異なってもよい。窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物の水素置換基及び/又は任意の許容される置換基を有し得る。
【0237】
様々な実施形態において、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択され、これらの各々は任意選択で1つ以上の好適な置換基によって置換されている。一部の実施形態において、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択され、ここでアルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンの各々は、更に1つ以上の好適な置換基によって置換されていてもよい。
【0238】
置換基の例としては、限定はされないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、チオケトン、エステル、ヘテロシクリル、-CN、アリール、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル類、カルボキサミド、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、シアノ、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられる。一部の実施形態において、置換基は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、及びニトロから選択される。
【0239】
用語「共重合体」は、本明細書で使用されるとき、概して、2つ以上の異なるモノマーで構成される単一のポリマー材料を指す。共重合体は、任意の形態、例えば、ランダム、ブロック、又はグラフト共重合体であってもよい。共重合体は、キャッピングされた末端基又は酸性末端基を含め、任意の末端基を有し得る。
【0240】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、概してアミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書で使用されるとき、この用語はまた、1つ以上のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体若しくは修飾された誘導体であるか又は非天然アミノ酸であるアミノ酸ポリマーにも適用される。本明細書において一般的に使用されるとおりの用語「タンパク質」は、三次及び/又は四次構造を作り出すのに十分な鎖長のポリペプチドを形成するように互いにペプチド結合によって連結されたアミノ酸のポリマーを指す。用語「タンパク質」は、定義上、小さいペプチドを除外し、小さいペプチドはタンパク質と見なすのに必要な必須の高次構造を欠いている。
【0241】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」は、線状又は環状コンホメーションの、及び一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを指して同義的に使用される。これらの用語は、ポリマーの長さに関する限定と解釈されてはならない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの公知の類似体、並びに塩基、糖及び/又はリン酸部分(例えばホスホロチオエート骨格)が修飾されたヌクレオチドを包含し得る。一般に、特記されない限り、特定のヌクレオチドの類似体は同じ塩基対合特異性を有する;即ち、Aの類似体はTと塩基対合し得る。用語「核酸」は、一続きの少なくとも2つの塩基-糖リン酸モノマー単位を指す専門用語である。ヌクレオチドは核酸ポリマーのモノマー単位である。この用語には、メッセンジャーRNA、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部又はウイルスに由来する遺伝物質の形態のデオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)が含まれる。アンチセンス核酸は、DNA及び/又はRNA配列の発現を妨げるポリヌクレオチドである。用語の核酸は、一続きの少なくとも2つの塩基-糖リン酸の組み合わせを指す。天然核酸はリン酸骨格を有する。人工核酸は他のタイプの骨格を含有し得るが、天然核酸と同じ塩基を含有し得る。この用語にはまた、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、及び天然核酸のリン酸骨格の他の変形例も含まれる。
【0242】
タンパク質、ポリペプチド又は核酸の「機能的断片」は、配列が完全長タンパク質、ポリペプチド又は核酸と同一でないが、なおも完全長タンパク質、ポリペプチド又は核酸のとおりの少なくとも1つの機能を保持しているタンパク質、ポリペプチド又は核酸である。機能的断片は、対応する天然分子より多い、少ない、又は同じ数の残基を有することができ、及び/又は1つ以上のアミノ酸又はヌクレオチド置換を含有することができる。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸とのハイブリダイズ能力)を決定する方法は当該技術分野において周知である。同様に、タンパク質機能を決定する方法も周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルタ結合法、電気泳動移動度シフト、又は免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA切断はゲル電気泳動によってアッセイすることができる。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、免疫共沈降、2ハイブリッドアッセイ又は例えば遺伝的若しくは生化学的相補性によって決定することができる。例えば、フィールズ(Fields)ら著、1989年、ネイチャー(Nature)、第340巻、p.245~246;米国特許第5,585,245号明細書及び国際公開第98/44350号を参照のこと。
【0243】
本明細書で使用されるとき、用語「リンカー」は、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄等)を含有し且つ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15,16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50原子長であり得る炭素鎖を指す。リンカーは、限定はされないが、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル(alkynl)、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオール、及びウレイド基を含め、様々な置換基によって置換されていてもよい。当業者は、これらの基の各々も同様に置換されていてもよいことを認識するであろう。リンカーの例としては、限定はされないが、pH感受性リンカー、プロテアーゼ切断可能ペプチドリンカー、ヌクレアーゼ感受性核酸リンカー、リパーゼ感受性脂質リンカー、グリコシダーゼ感受性炭水化物リンカー、低酸素感受性リンカー、光切断可能リンカー、熱不安定性リンカー、酵素切断可能リンカー(例えば、エステラーゼ切断可能リンカー)、超音波感受性リンカー、及びX線切断可能リンカーが挙げられる。
【0244】
用語「薬学的に許容可能な対イオン」は薬学的に許容可能なアニオン又はカチオンを指す。様々な実施形態において、薬学的に許容可能な対イオンは薬学的に許容可能なイオンである。例えば、薬学的に許容可能な対イオンは、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グロクロン酸塩(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(即ち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))から選択される。一部の実施形態において、薬学的に許容可能な対イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、及び乳酸塩から選択される。詳細な実施形態において、薬学的に許容可能な対イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、及びリン酸塩から選択される。
【0245】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、本組成物に使用される化合物中に存在し得る酸性基又は塩基性基の塩を指す。塩基性の性質の本組成物に含まれる化合物は、様々な無機酸及び有機酸と種々の塩を形成することが可能である。かかる塩基性化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩の調製に使用し得る酸は、非毒性の酸付加塩を形成するもの、即ち、薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩であり、限定はされないが、硫酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グロクロン酸塩(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(即ち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))である。アミノ部分を含む本組成物に含まれる化合物は、上述の酸に加え、様々なアミノ酸と薬学的に許容可能な塩を形成し得る。酸性の性質の本組成物に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容可能なカチオンと塩基性塩を形成する能力を有する。かかる塩の例としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩、及び鉄塩が挙げられる。
【0246】
本明細書に記載される化合物が酸付加塩として得られる場合、その酸性塩の溶液を塩基性化することにより遊離塩基を得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、塩基化合物から酸付加塩を調製する従来手順に従い遊離塩基を好適な有機溶媒中に溶解し、その溶液を酸で処理することにより、付加塩、特に薬学的に許容可能な付加塩を作製することができる。当業者は、非毒性の薬学的に許容可能な付加塩の調製に用い得る様々な合成方法を認識しているであろう。
【0247】
薬学的に許容可能な塩は、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸(proprionic acid)、ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、及びウンデシレン酸から選択される酸から誘導され得る。
【0248】
用語「生物学的に利用可能」は当該技術分野で認識されており、それ、又は投与量の一部が、それを投与する対象又は患者によって吸収され、取り込まれ、又は他の形で生理学的に利用可能であることを可能にする本発明の一形態を指す。
【0249】
以下の実施例は本発明を限定するのでなく、例示するよう意図されることが理解されるであろう。前述の説明及び例の様々な他の実施例及び変形例が、当業者には本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本開示を読んだ後に明らかであろうとともに、かかる実施例又は変形例は全て添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。本明細書に引用する全ての刊行物及び特許は、本明細書によって全体として参照により援用される。
【0250】
以下の実施例において、いくつかのコンジュゲートが、Lu-175などの非放射性金属を使用して調製され特徴解析されていることが理解されよう。対応する放射性Lu-177アナログを、既知の方法を使用して容易に調製することができ、Lu-175コンジュゲートの分布データがLu-177アナログを表すことは、その分野の当業者には明らかであろう。
【0251】
実施例
実施例1:コンジュゲートの合成
本発明のコンジュゲートは、任意の好都合な方法を用いて調製し得る。合理的な手法では、本コンジュゲートは、その個別の構成成分、標的化部分、場合によってはリンカー、及び活性薬剤部分から構築される。これらの構成成分は、当該技術分野において公知のとおり、互いに官能基を介して共有結合的に結合させることができ、ここでかかる官能基は構成成分上に存在してもよく、又は1つ以上のステップ、例えば酸化反応、還元反応、開裂反応などを用いて構成成分上に導入されてもよい。医薬コンジュゲートの作製のため構成成分を共に共有結合的に結合するのに使用し得る官能基としては、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アミノなどが挙げられる。共有結合性の連結をもたらすように修飾される種々の構成成分の特定の一部分は、当該構成成分の所望の結合活性を有害に妨げることが実質的にないように選択されることになり、例えば活性薬剤部分については、十分な大きさの所望の薬物活性が確保されるように、標的結合活性に影響を及ぼさない領域が修飾されることになる。必要及び/又は所望に応じて、構成成分上の特定の部分が当該技術分野において公知のとおり遮断基を使用して保護されてもよく、例えば、グリーン及びワッツ(Green & Wuts)著、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1991年を参照のこと。
【0252】
或いは、コンジュゲートは、候補コンジュゲートの大規模ライブラリを作製する公知のコンビナトリアル方法を用いて作製することができ、次にはライブラリがスクリーニングされて、薬物動態プロファイルを有する二機能性の分子が同定され得る。或いは、コンジュゲートは、医薬品化学並びに標的化部分及び活性薬剤部分に関する公知の構造-活性関係を用いて作製してもよい。詳細には、この手法は、どこで2つの部分をリンカーにつなぎ合わせるべきかに関する洞察を提供するであろう。
【0253】
コンジュゲート1は、次のスキームに従って合成することができる。
【0254】
【化33】
【0255】
TM5(242mg、0.419mmol、トリフルオロ酢酸(TFA)塩、1.20当量)及び2-[4,7,10-トリス(2-tert-ブトキシ-2-オキソ-エチル)-1,4,7,10-テトラザシクロドデカ-1-イル]酢酸(200mg、0.349mmol)をバイアルに入れ、DMF(1mL)に溶解し、HATU(198mg、0.524mmol、1.50当量)、続いてジイソプロピルエチルアミン(135mg、1.05mmol、182μL、3.00当量)を加えた。3時間後、追加のジイソプロピルエチルアミン(135mg、1.05mmol、182μL、3.00当量)を加えた。懸濁液を室温で16時間撹拌した。粗製物を逆相クロマトグラフィー(0.1%TFAを含む10~60%MeCN/水)で精製した。純粋な画分をプールし、溶媒を蒸発させ乾固物を得た。
【0256】
残留物をTFA(5mL)に溶解した。溶液を室温で16時間撹拌した。粗製物を分取HPLC(0.1%TFAを含む20~60%MeCN/水)で精製した。純粋な画分をプールし、溶媒を蒸発させ乾固物を得た。
【0257】
塩化ルテチウム(III)(118mg、0.42mmol、1.20当量)をバイアルに入れ、0.05N HCl(10mL)に溶解した。0.2N NaOAcをpH=4.5になるまで加えた後、精製した残留物(496mg、0.35mmol)を加え、溶液を90℃で30分間加熱した。コンビフラッシュ(2%AcOHを含む5~40%MeCN/水)で精製して、コンジュゲート1を凍結乾燥粉末として得た(86mg、22%収率)。
【0258】
コンジュゲート2~8は、次の方法で合成することができる。
【0259】
【化34】
【0260】
各b-アラニン-AA1-AA2-AA3-(トリ-tBu DOTA)構築物を、標準的なFmoc条件を使用した固相ペプチド合成によって作成した。必要に応じて、2-クロロトリチル樹脂上のFmoc-ベータ-アラニンに、AA1、AA2、AA3のそれぞれについてFmoc-サルコシン、Fmoc-D-グルタミン酸γ-tert-ブチルエステル、又はFmoc-ε-Boc-D-リジンのいずれかを結合させ、最後にトリ-tert-ブチルDOTAに結合させた。ペプチドをジクロロメタン中の1%TFAで樹脂から切断し、分取HPLCで精製した。
【0261】
【化35】
【0262】
バイアルにTM5(1当量)、保護されたトリペプチドリンカー(1当量)、及びHATU(1.1当量)を入れた。DMF(10容量)及びジイソプロピルエチルアミン(3当量)を加え、反応物を室温で4時間撹拌し、続いて分取HPLCにより精製した。生成物を蒸発乾固し、トリフルオロ酢酸(10容量)を加えた。LCMSが完全な脱保護を示すまで反応物を室温で撹拌し、1時間後も脱保護がまだ不完全である場合は50℃に加熱した。脱保護が完了した後、すべてのTFAを真空下で除去し、残留物を最小量のDMFに溶解し、分取HPLCで精製した。
【0263】
【化36】
【0264】
0.05N HCl中の塩化ルテチウム(III)の10mg/mL溶液の溶液を調製し、0.2M NaOAc(6mL)を添加して、pH4.5の6.25mg/mL塩化ルテチウム(III)の溶液を得た。ペプチド(0.05mmol)をDMF(100μL)に溶解し、上記の塩化ルテチウム(III)溶液4.5mL(28.1mg、0.10mmol)を加えた。溶液を90℃で15分間加熱し、次に室温に冷却し、分取HPLCにより精製して生成物を得た。
【0265】
コンジュゲート9の合成
【0266】
【化37】
【0267】
2-クロロトリチル樹脂(3.70g、0.54mmol/gローディング、2.00mmol)にロードされたFmoc-ベータ-アラニンをLiberty Blueペプチドシンセサイザーにロードし、Fmoc-D-グルタミン酸γ-tert-ブチルエステル(DMF中0.4M、12mL、4.8mmol)、DIC(DMF中0.5M、10mL、5mmol)及びシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル(DMF中1M、5mL、5mmol)と、60℃で20分間結合させた。樹脂を過剰のDMF、次にジクロロメタンで洗浄し、続いてニートTFA(20mL)で20分間処理した。TFAを排出し、樹脂をジクロロメタン(2×20mL)で洗浄し、TFA/ジクロロメタンが合わさった溶液を真空下で濃縮した。残留物を、50gのIsco Cl8カラムにロードし、0.1%TFAを含む水中の25%~80%のアセトニトリルで溶出することにより精製し、Fmoc-D-グルタミン酸-ベータ-アラニン(692mg、1.57mmol、78%収率)を得た。
【0268】
【化38】
【0269】
バイアルにTM5 HCl塩(505mg、1.01mmol)、Fmoc-D-グルタミン酸-ベータ-アラニン(210mg、0.48mmol)、及びHATU(385mg、1.01mmol)を入れた。DMF(5mL)及びジイソプロピルエチルアミン(0.50mL)を加え、反応物を50℃で1時間撹拌した。反応物を室温に冷却し、次にDBU(0.75mL)を加えた。反応物をさらに30分間撹拌し、次に酢酸(2mL)で酸性化し、分取HPLCにより精製し、0.1%TFAを含む水中の5%~45%のアセトニトリルで溶出して、TM5-DGlu-ベータ-アラニン-TM5をTFA塩として得た(596mg、0.410mmol、86%収率)。
【0270】
【化39】
【0271】
バイアルに(R)-tBu-DOTAGA(Levyら、Org.Process Res.Dev.2009,13,535-542)(545mg、0.777mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(296mg、1.54mmol)、及びN-ヒドロキシスクシンイミド(179mg、1.56mmol)を入れた。ジクロロメタン(10mL)及びジイソプロピルエチルアミン(0.81mL、4.67mmol)を加え、反応物を室温で24時間撹拌した。次に、反応物を追加のジクロロメタン(15mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム(3×15mL)及びブライン(10mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥させ、溶媒を真空下で除去して、(R)-tBu-DOTAGA NHSエステル(610mg、0.764mmol、98%収率)を黄色の固体として得、これをさらに精製することなく使用した。
【0272】
【化40】
【0273】
バイアルにTM5-DGlu-ベータ-アラニン-TM5 TFA塩(60.0mg、41.3μmo1)及び(R)-tBu-DOTAGA NHSエステル(63.0mg、78.9μmo1)を入れた。DMF(3mL)及びジイソプロピルエチルアミン(0.50mL)を加え、溶液を50℃で30分間撹拌した。反応混合物を分取HPLCにより精製し、0.1%TFAを含む水中の5%~55%のアセトニトリルで溶出して、TM5-DGlu((R)-tBu-DOTAGA)-ベータ-アラニン-TM5をTFA塩として得た(46.7mg、26.0μmol)。
【0274】
【化41】
【0275】
バイアルにTM5-DGlu((R)-tBu-DOTAGA)-ベータ-アラニン-TM5 TFA塩(46.7mg、26.0μmo1)を入れ、これをTFA(2mL)に溶解した。反応物を40℃で1時間撹拌し、次にすべてのTFAを真空下で除去した。アセトニトリル(2mL)及びトルエン(2mL)を加え、溶媒を再び真空下で除去して、過剰なTFAを確実に除去した。残留物をDMF(0.5mL)に溶解し、pH4.5のHCl/酢酸緩衝液(1.5mL)中の塩化ルテチウム(III)(9.3、33.1μmo1)溶液を加えた。0.2N酢酸ナトリウム(1mL)を加え、溶液を90℃で30分間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物を分取HPLCにより精製し、0.1%TFAを含む水中5%~35%のアセトニトリルで溶出して、コンジュゲート9を得た(30.7mg、17.6μmo1、67%収率)。
【0276】
コンジュゲート10の合成
【0277】
【化42】
【0278】
Liberty Blueペプチドシンセサイザーに、2-クロロトリチル樹脂(3.70g、0.54mmol/g、2.00mmol)にロードしたFmoc-ベータ-アラニンを入れた。その後、Fmoc-D-グルタミン酸γ-tert-ブチルエステル×3、[2-(2-(Fmoc-アミノ)エトキシ)エトキシ]酢酸、及び5-アジドペンタン酸と標準条件下で結合させ、続いてジクロロメタン(40mL)中2%TFAで20分間切断し、真空下ですべての溶媒を除去して、粗ペプチドを得た。材料を100gのC18Iscoゴールドカラムにロードし、0.1%TFAを含む水中25%~85%アセトニトリルで溶出して、5-アジドペンタノエート-AEEA-[DGlu(tBu)]3-bAla-OHを得た(717mg、0.783mmol、39%収率)。
【0279】
【化43】
【0280】
フラスコに、Boc-1,3-ジアミノプロパン(3.40g、19.5mmol)及び炭酸ナトリウム(2.07g 19.5mmol)を入れた。THF(25mL)及び臭化プロパルギル(トルエン中の80%溶液、2.17mL、19.5mmol)を加え、反応物を60℃で1時間撹拌した。次に、反応物を室温に冷却し、水(50mL)を加え、混合物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機層が合わさったものをMgSCで乾燥させ、すべての溶媒を真空下で除去した。残留物をジクロロメタン(25mL)及びジイソプロピルエチルアミン(5mL)に溶解した。Fmoc-OSu(6.58g、19.5mmol)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。次に、反応物を120gのシリカゲルカラムにロードし、ヘプタン中0%~100%の酢酸エチルで溶出して、60を得た(2.95g、6.79mmol、35%収率)。
【0281】
【化44】
【0282】
フラスコに、4-(p-ヨードフェニル)酪酸(600mg、2.07mmol)、DCC(427mg、2.07mmol)、及びN-ヒドロキシスクシンイミド(238mg、2.07mmol)を入れた。ジクロロメタン(6mL)を加え、反応物を室温で4時間撹拌した。ショートセライトパッドを通して反応混合物を濾過し、パッドをジクロロメタン(5mL)ですすぎ、真空下で溶媒を除去して、粗4-(p-ヨードフェニル)酪酸NHSエステルを得た。これに、DMF(8mL)、4-アミノ酪酸(525mg、5.19mmol)、及びジイソプロピルエチルアミン(2mL)を加えた。反応物を室温で24時間撹拌し、次に100gのC18Iscoゴールドカラムにロードした。0.1%TFAを含む水中15%~85%のアセトニトリルで溶出して、70を得た(560mg、1.49mmol、72%収率)。
【0283】
【化45】
【0284】
フラスコに60(841mg、1.93mmol)を入れ、これをアセトニトリル(10mL)及びトリエチルアミン(2.5mL)に溶解した。反応物を60℃で1時間撹拌し、LCMSにより完全なFmoc脱保護が確認した。反応混合物を室温に冷却し、すべての溶媒を真空下で除去した。残留物に、DMF(5mL)中の70(330mg、0.880mmol)及びHATU(470mg、1.25mmol)の溶液を加えた。ジイソプロピルエチルアミン(1mL)を加え、反応物を24時間撹拌した。反応混合物を50gのC18Iscoゴールドカラムにロードし、0.1%TFAを含む水中10%~70%のアセトニトリルで溶出して、80を得た(474mg、0.832mmol、94%収率)。
【0285】
【化46】
【0286】
バイアルに、TM5 HCl塩(248mg、0.496mmol)、5-アジドペンタノエート-AEEA-[DGlu(tBu)](306mg、0.334mmol)、及びHATU(176mg、0.468mmol)を入れた。DMF(5mL)及びジイソプロピルエチルアミン(1mL)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。5%炭酸ナトリウム水溶液(1mL)を加え、反応物を60℃で1時間加温した。1時間後、反応混合物を酢酸(1mL)で酸性化し、反応混合物を分取HPLCにより精製し、0.1%TFAを含む水中35%~75%のアセトニトリルで溶出した。生成物を含む画分を真空下で乾燥させ、残留物にトリフルオロ酢酸(5mL)を加えた。反応物を1時間撹拌し、過剰のTFAを真空下で除去した。水(10mL)を加え、溶液を凍結乾燥させて、90を得た(430mg、0.328mmol、98%収率)。
【0287】
【化47】
【0288】
バイアルに80(50mg、88μmo1)及び90(90mg、75μmo1)を入れ、DMF(4mL)を加えた。0.2N AcOH(0.3mL)中の硫酸銅(II)(15mg、94μmo1)の溶液を加え、続いて0.2N NaOAc(0.4mL)中のアスコルビン酸ナトリウム(38mg、192μmo1)の溶液を加えた。反応混合物を50℃に加温し、この温度で3時間撹拌した。次に、反応混合物を室温に冷却し、分取HPLCによって精製し、0.1%TFAを含む水中15%~65%のアセトニトリルで溶出して、100を得た(72mg、41μmo1、54%収率)。
【0289】
【化48】
【0290】
バイアルに10(76mg、43μmo1)を入れ、これをTFA(2mL)に溶解した。反応物を室温で30分間撹拌し、次にすべての過剰なTFAを真空下で除去した。残留物に、DMF(3mL)中の(R)-tBu-DOTAGA NHSエステル(63mg、79μmo1)の溶液を加えた。ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL)を加え、反応物を50℃で2時間撹拌した。次に、反応混合物を室温に冷却し、分取HPLCによって精製し、0.1%TFAを含む水中15%~45%のアセトニトリルで溶出して、11を得た(52.8mg、22.5μmo1、52%収率)。
【0291】
【化49】
【0292】
110(52.8mg、22.5μmo1)を入れたバイアルにTFA(2mL)を加えた。溶液を40℃で1時間加熱した後、すべての溶媒を真空下で除去した。アセトニトリル(2mL)及びトルエン(2mL)を加え、溶媒を再び真空下で除去して、過剰なTFAを確実に除去した。pH4.5のHCl/酢酸緩衝液(1.5mL)中の塩化ルテチウム(III)(9.3mg、33.1μmo1)の溶液を加えた。0.2N酢酸ナトリウム(1mL)を加え、溶液を90℃で30分間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物を分取HPLCにより精製し、0.1%TFAを含む水中5%~45%のアセトニトリルで溶出して、コンジュゲート10を得た(35.6mg、15.5μmo1、68%収率)。
【0293】
コンジュゲート2及び10のルテチウム-177アナログを以下のように調製した。各キレート剤のTFA脱保護後、酢酸アンモニウム緩衝液(pH6)を用いて分子を溶液にし、HCl中の所望の活性のLu-177と混合した。どちらの場合も、開始バッファーの量は、Lu-177を添加してもpHをpH6に維持するのに十分であった。次に、反応物を37℃で45分間(+/-15分間)インキュベートした。インキュベーションが完了した後(反応物の少量のサンプルをC18 Sep Pakで分析した)、予め調整されたC18 Sep Pakを使用して精製を行った。Sep Pakを5%エタノール溶液で溶出することにより、標識されていない物質を除去した。最終生成物は、50%エタノール溶液でSep Pakから溶出された。真空遠心分離によりエタノールを生成物から除去した。次に、標識された分子を生理食塩水中で所望の容量にして、コンジュゲート2及び10のそれぞれのLu-177バージョンを得た。
【0294】
実施例2:コンジュゲートを使用したインビトロ試験
HER2分解アッセイ:
BT474細胞を1ウェルあたり12,000細胞でプレーティングし、37℃、5%COで20~24時間インキュベートする。細胞のインキュベーション後、化合物をDMSOで5mMのストック濃度に再構成する。次に、DMSOに10ポイント希釈した化合物プレートを用意する。次に、2uLのこれらの希釈液を細胞に添加して、5uMから0.0003uMの最終使用濃度にする。化合物及び細胞を16時間インキュベートする。次に、培地を除去し、細胞を洗浄し、溶解し、ELISAによってヒト総EbB2/Her2レベルを分析する。
【0295】
HSP90結合:
HSP90へのコンジュゲートの結合を、HSP90αアッセイキットで研究する。HSP90αアッセイキットは、蛍光偏光を使用してHSP90α阻害剤を同定するように設計されている。このアッセイは、精製された組換えHSP90αへの結合に対する蛍光標識ゲルダナマイシンの競合に基づいている。HSP90αアッセイキットの鍵は、蛍光標識されたゲルダナマイシンである。蛍光標識されたゲルダナマイシンは、HSP90α酵素を含む試料とインキュベートされ、蛍光偏光の変化を生成する。この変化は、蛍光リーダーを使用して測定できる。
【0296】
実施例3:コンジュゲートを使用したインビボ試験
H460マウスの腫瘍及び血漿の薬物動態:
NCI-H460担癌マウス(肺癌)の腫瘍及び血漿における24時間及び48時間でのコンジュゲート蓄積。コンジュゲート1を25mg/kgで静脈内投与した。腫瘍及び血漿中のコンジュゲート1レベルを1時間、24時間、及び48時間で測定し、表1に示す。
【0297】
【表2】
【0298】
オスSDラットにおける5mg/kg用量(IV経由)でのコンジュゲート1の血漿プロファイルが得られた。コンジュゲート1からのルテチウムの血漿プロファイルも測定された。結果を以下の表に示す。
【0299】
【表3】
【0300】
コンジュゲートの生体内分布を研究した。コンジュゲート1を健康なラットに5mg/kgで投与した。ラットの脾臓、腎臓、脳、肝臓及び骨髄におけるコンジュゲート1及びコンジュゲート1からのルテチウムの量を測定した。結果を以下の表に示す。
【0301】
【表4A】
【0302】
【表4B】
【0303】
他の研究では、コンジュゲートの生体内分布をH460及びH69腫瘍モデルで研究した。
コンジュゲート1、コンジュゲート2及びコンジュゲート3は5mg/kgで投与された。図1Aは、H460腫瘍モデルの腫瘍及び肝臓におけるコンジュゲート1レベルを示す;図1Bは、H69腫瘍モデルの腫瘍及び肝臓におけるコンジュゲート1レベルを示す;図1Cは、H460腫瘍モデルの腫瘍、肝臓、及び腎臓におけるコンジュゲート1レベルを示す。コンジュゲート1の生体内分布研究は、24時間での腫瘍:肝臓比が0.1~1であり、腫瘍:腎臓比が約2であることを示している。
【0304】
図2Aは、H69腫瘍モデルの腫瘍及び肝臓におけるコンジュゲート2レベルを示す;図2Bは、H460腫瘍モデルの腫瘍、肝臓、及び腎臓におけるコンジュゲート2レベルを示す。コンジュゲート2の生体内分布研究は、24時間での腫瘍:肝臓比が9~50であり、腫瘍:腎臓比が0.4であることを示している。結果は以下の表にも示されている。
【0305】
【表5A】
【0306】
【表5B】
【0307】
図3Aは、H69腫瘍モデルの腫瘍及び肝臓におけるコンジュゲート3レベルを示す;図3Bは、H460腫瘍モデルの腫瘍、肝臓、及び腎臓におけるコンジュゲート3レベルを示す。結果は以下の表にも示されている。
【0308】
【表6A】
【0309】
【表6B】
【0310】
コンジュゲート1及びコンジュゲート2の24時間でのコンジュゲート腫瘍レベル、24時間での腫瘍:肝臓比、及び24時間での腫瘍:腎臓比も以下の表にまとめられている。
【0311】
【表7】
【0312】
コンジュゲート1の腫瘍取り込みはコンジュゲート2よりも著しく高いが、腫瘍:肝臓比はコンジュゲート2の方が優れている。コンジュゲート1とコンジュゲート2の腫瘍保持率は類似している。どちらの化合物も血漿から急速に除去されるが、コンジュゲート2はこの点でわずかに優れている。
【0313】
さらなる研究では、コンジュゲート及びアミノ酸をそれぞれマウスに投与する。アミノ酸と同時投与されたコンジュゲートの組織分布を、単独で投与されたコンジュゲートの組織分布と比較する。
【0314】
さらに別の研究では、コンジュゲート及びHSP90リガンド又は阻害剤をそれぞれマウスに投与する。HSP90リガンド又は阻害剤と同時投与されたコンジュゲートの組織分布を、単独で投与されたコンジュゲートの組織分布と比較する。
【0315】
同様の研究において、化合物を0.5mg/kgの用量でマウスに投与した。腫瘍、腎臓、及び肝臓のLuレベルを測定した。腫瘍、腎臓、肝臓の平均Luを計算した(以下の表8を参照)。コンジュゲート9及びコンジュゲート10の腫瘍取り込みは、コンジュゲート1及びコンジュゲート2よりも著しく高い。
【0316】
【表8】
【0317】
実施例4:コンジュゲートの透過性の決定
コンジュゲートが細胞に入り込む能力を試験するために、人工膜透過性アッセイ(「PAMPA」)を使用する。PAMPAは、受動輸送メカニズムによって細胞に入り込む薬物のin vivo薬物透過性を予測するための有用なツールである。PAMPAアッセイと組み合わせてLC/MSを使用し、コンジュゲートが細胞に浸透する能力を決定する。
【0318】
プレコートしたPAMPAプレートを少なくとも30分間室温まで加温してからアッセイ成分を添加する。
試験するコンジュゲートを用いてストック溶液を調製する。作業溶液を作成するために、50μLのDMSO中の100μMストック+950μLのPBS又は50μLの200μMストックを96ディープウェルプレートに添加し、それぞれ最終濃度5μM又は最終濃度10μMにする。試験する各コンジュゲートを含む300μLの作業溶液をドナーPAMPAプレートの適切なウェルに加える。200μLのPBSをアクセプターPAMPAプレートの対応するウェルに加える。
【0319】
アクセプタープレートをドナープレートの上に降ろし、5時間インキュベートする。5時間後、50μLのアリコートを各プレートの各ウェルから取り出し、新しい96ディープウェルプレートに添加する。
【0320】
所定の内部標準対照化合物を含む100μLのメタノールを各アリコートに添加し、LC/MSで分析する。各コンジュゲートの透過性を計算する。
実施例5:Lu-177コンジュゲート2の生体内分布研究
放射性コンジュゲートの蓄積を、NCI-H460担癌マウス(肺癌)の腫瘍、血漿、及び健康な組織で測定した。この研究の目的は、Hsp90-DOTA-Lu177、コンジュゲート2の放射性Lu177アナログ(Lu-177を有し、177Lu-2又は177Lu-コンジュゲート2とも呼ばれる)、及びコンジュゲート10の放射性Lu177アナログ(Lu-177を有し、177Lu-10又は177Lu-コンジュゲート10とも呼ばれる)の、NCl-H460NSCLC腫瘍を担持するメスヌードマウスにおけるex vivo生体内分布を、ガンマカウンターを使用したシンチグラフィーにより決定することであった。担癌動物に放射性177Lu-2又は177Lu-10のいずれかの生理食塩水溶液を注射し、一定期間後、動物を安楽死させ、Perkin Elmer 2470 WIZARDガンマカウンターを用いたex vivoガンマカウントのために、腫瘍及び他の組織サンプルを採取した。各組織について、組織1グラムあたりの注射量の割合%ID/gを計算した。
【0321】
177Lu-2の場合、静脈内投与による用量は3.7MBqであり、6時間の時点でex vivoガンマカウントを行った(5匹のマウス、表9のデータ)。取り込みが最も高かった組織は腎臓と腫瘍であった。%ID/gの中央値はそれぞれ4.29及び1.21であった。
【0322】
【表9】
【0323】
177Lu-10の場合、静脈内投与による用量は3.7MBqであり、24時間及び72時間の時点でex vivoガンマカウントを行った(時点あたり5匹のマウス、表9のデータ)。取り込みが最も高かった組織は腎臓と腫瘍であった。%ID/gの中央値はそれぞれ4.29及び1.21であった。
【0324】
【表10】
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B