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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】安定した小細孔ゼオライト
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20240513BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20240513BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240513BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240513BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20240513BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/76 A
B01D53/94 228
F01N3/08 B
F01N3/035 A
F01N3/10 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020564149
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2019062246
(87)【国際公開番号】W WO2019219629
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】18020207.9
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ヤン・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒル・デ・プリンス
(72)【発明者】
【氏名】サム・スメット
(72)【発明者】
【氏名】スレープラサンス・プリンサナス・スレー
(72)【発明者】
【氏名】エルケ・ヤーネ・ユーネ・フェルハイエン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・アドリアーン・マルテンス
(72)【発明者】
【氏名】レーン・ファン・テンデロー
(72)【発明者】
【氏名】フランク-ヴァルター・シュッツェ
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529608(JP,A)
【文献】特開2017-048105(JP,A)
【文献】国際公開第2017/060694(WO,A1)
【文献】特表2016-500562(JP,A)
【文献】特表2009-536571(JP,A)
【文献】特開2017-039638(JP,A)
【文献】特開2015-155365(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134005(WO,A1)
【文献】特表2019-512377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
B01J 21/00-38/74
B01D 53/94
F01N 3/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
8個の四面体原子の最大孔径を有する、窒素酸化物の選択的触媒還元用の結晶性アルミノシリケートゼオライトであって、1グラム当たり2mmol未満の総プロトン含有量を有し、総プロトン含有量は、 H MAS NMRを介して、プロトン交換形態の焼成された乾燥ゼオライト上で測定される、結晶性アルミノシリケートゼオライトであって、該結晶性アルミノシリケートゼオライトの骨格型材料はAEI、CHA、LEV、ETL、ESV及びDDRから選択されている、窒素酸化物の選択的触媒還元用の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項2】
SARは5~50である、請求項1に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項3】
結晶性アルミノシリケートゼオライトであって、
前記結晶性アルミノシリケートゼオライトが、それぞれの酸化物として計算され、かつ前記結晶性アルミノシリケートゼオライトの総重量に基づいて、0.1~10重量%の濃度の少なくとも1つの遷移金属を含む、請求項1又は2に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項4】
前記少なくとも1つの遷移金属が、銅、鉄、及びこれらの混合物から選択される、請求項3に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項5】
前記少なくとも1つの遷移金属が、前記少なくとも1つの遷移金属を含む有機構造指向剤によって前記結晶性アルミノシリケートゼオライトの合成中に前記結晶性アルミノシリケートゼオライトに導入される、請求項3又は4に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項6】
前記結晶性アルミノシリケートゼオライトが、それぞれの金属として計算され、かつ前記結晶性アルミノシリケートゼオライトの総重量に基づいて、0~2重量%の濃度の少なくとも1つのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアルカリ又はアルカリ土類金属が、ナトリウム、カリウム、及びこれらの混合物から選択される、請求項6に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項8】
遷移金属のアルミニウムに対する原子比が、0.003~0.5の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項9】
平均結晶サイズが、0.3~7μmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項10】
NOを自動車の燃焼排気ガスから除去するプロセスであって、請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトが、NOの変換のためのSCR触媒活性材料として使用される、プロセス。
【請求項11】
自動車の燃焼排気ガスの処理に使用するための、NOの変換のためのSCR触媒活性材料を含む触媒基材モノリスであって、前記NOの変換のための前記SCR触媒活性材料が、請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトである、触媒基材モノリス。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトが、担体基材上のウォッシュコートの形態で存在する、請求項11に記載の触媒基材モノリス。
【請求項13】
前記担体基材が、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである、請求項12に記載の触媒基材モノリス。
【請求項14】
前記触媒基材モノリスが、押出触媒基材モノリスである、請求項11に記載の触媒基材モノリス。
【請求項15】
SCR触媒でコーティングされた微粒子フィルタを備える排気ガス浄化システムであって、SCR触媒活性材料が、請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトである、排気ガス浄化システム。
【請求項16】
PNA触媒を含む排気ガス浄化システムであって、PNA触媒活性材料が、請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトと、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの白金族金属と、を含む、排気ガス浄化システム。
【請求項17】
前記白金族金属がパラジウムであり、前記パラジウムが、Pdとして計算され、かつ前記結晶性アルミノシリケートゼオライトの総重量に基づいて、0.5~5重量%の濃度で存在する、請求項16に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項18】
ASC触媒を含む排気ガス浄化システムであって、ASC触媒活性材料が、請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトと、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの白金族金属と、を含む、排気ガス浄化システム。
【請求項19】
前記白金族金属が白金であり、前記白金が、前駆体塩の形態でウォッシュコートスラリーに添加され、担体モノリスに適用され、前記白金が、Ptとして計算され、かつウォッシュコート荷重の総重量に基づいて0.1~1重量%の濃度で存在する、請求項18に記載の排気ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、8個の四面体原子の最大孔径を有する水熱安定性結晶性アルミノシリケートゼオライトに関し、このゼオライトは、ゼオライトの総重量に基づいて、1グラム当たり2mmol未満の総プロトン含有量を有する。本発明は更に、還元剤としてのNHとの反応による窒素酸化物の選択的触媒還元(NH-SCR(selective catalytic reduction))のための方法を開示し、その水熱安定性ゼオライトが使用される。
【背景技術】
【0002】
近年及び将来の触媒開発の大きな要因は、道路(例えば、乗用車、トラック)及び非道路(例えば、船、列車)用途のためのますます厳格な、世界的な排出レベル規制である。希薄燃焼エンジンの排気ガスから窒素酸化物を除去する特定の場合には、厳重な排出レベル規制及び耐久性の必要性の増加により、より活性な、より選択的かつより安定な触媒に対するグローバルな必要性が存在する。これらの希薄燃焼エンジンの排気ガスから窒素酸化物(NO)を除去するための1つの有効な方法は、アンモニア(NH)による選択的触媒還元(SCR)である。NH-SCRでは、NO分子は、還元剤としてNHを使用してNに触媒的に還元される。アンモニアは、通常、危険性の少ない尿素溶液として供給され、これは触媒ユニット内でアンモニアに分解され、専用のリザーバ内で車両に充填及び貯蔵され得る。
【0003】
異なる候補触媒材料の中でも、遷移金属交換ゼオライトは、特に乗用車及び軽自動車において、NH-SCR触媒を最も良好に実施することが見出されている。ゼオライトは、多数の骨格構造において生成する、均一な細孔及び分子寸法のチャネルを有する高度に多孔性の結晶性アルミノシリケート材料である。これらは、各骨格型を定義する国際ゼオライト協会の構造委員会によって分類される。この委員会はまた、3つの大文字からなる骨格型コードを、全てのユニークかつ確認された骨格トポロジーに割り当てている。例えば、広く使用されているゼオライト群は、コードFAUが割り当てられたフォージャサイト(faujasite)骨格に属する。ゼオライトは、骨格型、並びに化学組成、原子分布、結晶サイズ、及び形態によって区別することができる。
【0004】
最大細孔口径の環サイズによって定義されるそれらの孔径によりゼオライトを分類することは一般的である。大きい孔径を有するゼオライトは12個の四面体原子の最大環サイズを有し、中程度の孔径を有するゼオライトは10個の最大孔径を有し、小さい孔径を有するゼオライトは8個の四面体原子の最大孔径を有する。既知の小細孔ゼオライトは、特にAEI、CHA(チャバザイト(chabazite))、ERI(エリオナイト(erionite))、LEV(レビン(evyne))、及びKFI骨格に属する。大きい孔径を有する例は、フォージャサイト(FAU)骨格型のゼオライトである。
【0005】
ゼオライトは、窒素及び水を形成するために、窒素酸化物とアンモニアとのいわゆる選択接触還元(SCR)において触媒として重要な役割を果たし、特に、銅及び鉄のようなカチオンがゼオライト細孔に含まれる場合に重要な役割を果たす。これらは、変換性能及び選択性に関して広範な温度範囲にわたって実行することができる。SCRプロセスは、化石燃料の燃焼から、特に定置式発電所及びディーゼルエンジンを動力源とする車両から生じる排気ガスを浄化するために広く使用されてきた。ゼオライトは天然に存在するが、SCR又は他の工業用途を目的としたゼオライトは通常は合成プロセスによって製造される。SCR又は他の工業用途に使用されるゼオライトは、1つの単一のゼオライト骨格型、連晶(intergrowth)、又は2つ以上のゼオライト骨格型及び/若しくは連晶の物理的混合物を含んでもよい。
【0006】
Rao及びThomasによって提案された分類に基づいて、ゼオライトに関連した異なる型の連晶は、エピタキシャル連晶と多型連晶であり、CNR Rao and JM Thomas:「Intergrowth Structures:The Chemistry of Solid-Solid Interfaces」,Acc Chem Res 1985,13,113-119を参照されたい。エピタキシーは、組成的又は構造的に異なるゼオライト相によるゼオライト結晶の配向表面連晶を含み、一方、層状材料中の個々のシートが異なる配列で積層されるときに多型が生じる。
【0007】
連晶として、多型は、ゼオライト結晶化におけるより一般的な現象である。結合のあらゆる不整合もなく、個々の結晶中の異なる構造的に均一なドメインの積層として描写することができる。2つ以上の型のドメインは、例えば、それらが異なる周期性を示すとき、構造的に関連し得る。これは、一般的なシートの代替的な積み重ねとして生じることが多い。
【0008】
具体的には、材料のABC-6ゼオライトファミリーについては、連晶としての多型がよく知られている。ABC-6ファミリーに属する材料は、例えば、チャバザイト、オフレタイト、エリオナイト、グメリナイト、ソーダライト、及びレビナイトである。ABC-6ファミリーのゼオライト材料の構造は、平面六員環(planar six-ring、6R)を含有する層の積層として表すことができる。1つの層中の6Rは、異なる仕方で次の層の6Rに接続することができる。層中の6Rの3つの異なる位置は、A、B、又はCとすることができる。異なる層中の6Rは、互いに平行に(位置A)、又は転位(位置B及びC)によって接続され得、その結果、ABC-6ファミリーに属する異なる骨格をもたらすことができる。例えば、オフレタイトはAABの積層配列を有する3つの接続層によって表すことができ、一方、エリオナイトはAABAACの配列を有する6つのユニークな層を含有する。これらの層の1つの層間にある積層欠陥は、いくつかの場所で積層配列がわずかに変更されていて、その積層欠陥は簡単に生成し、異なる骨格型の連晶をもたらす。OFFゼオライトのAAB積層配列がAABAACによってランダムに置き換えられている例、又はその逆の例は、ERI/OFF連晶と称され、ERI及びOFF骨格型は内部成長系列の端成分である。ゼオライトT及びZSM-34は、最も一般的な例である。チャバザイトと連晶することができる材料の例は、GME及びAEI骨格型のゼオライトである。ABC-6ファミリー内では、チャバザイト(AABBCC)とオフレタイト(AAB)との連晶などの他の連晶が理論的に可能である。
【0009】
国際公開第2018/091583(A1)号は、ERI/CHA連晶骨格型を有する結晶性ゼオライト、及びゼオライトを作製するためのプロセスを開示している。ゼオライトのERI含有量は、ERIとCHAとの総重量に基づいて、10~85重量%の範囲に及ぶ。ゼオライトは、CuOとして計算すると0.1~10重量%の銅、並びに純金属として計算すると0.1~5重量%の量で1つ以上のアルカリ金属カチオン及びアルカリ土類金属カチオンを更に含むことができる。ERI/CHA連晶骨格型によってゼオライトを作製するためのプロセスは、a)フォージャサイト骨格型のゼオライト、Cu-TEPA、及び塩基M(OH)を含む第1の水性反応混合物の調製と、b)シリカ供給源、アルミナ供給源、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物、臭化物、又は水酸化物、第四級アルキルアンモニウム塩、及び臭化ヘキサメトニウムを含む第2の水性反応混合物の調製と、c)その2つの反応混合物を組み合わせることと、d)その2つの反応混合物の組み合わせを加熱して、ERI/CHA連晶骨格型を有するゼオライトを得ることと、を含む。続いて、ERI/CHA連晶ゼオライトを焼成することができる。本発明によるゼオライトは、好適なSCR触媒である。
【0010】
AFX/CHA構造を有する連晶ゼオライトは、Y Naraki,K Ariga,K Nakamura,K Okushita and T Sano:「ZTS-1 and ZTS-2:Novel intergrowth zeolites with AFX/CHA structure」,Microporous Mesoporous Mater 2017,254,160-169に開示されている。二重構造指向剤(デュアル-SDA(structure-directing agent))アプローチを使用して、新規AFX/CHAアルミノシリケート連晶ゼオライトZTS-1及びZTS-2を合成した。1,10-(1,4-ブタンジイル)ビス(1-アゾニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタン)ジカチオン(Dab-42+)及びN,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムカチオン(TMAda)を、それぞれAFX及びCHA相の有機構造指向剤(organic structure-directing agent、OSDA)として使用して、ZTS-1を得た。得られた材料を、粉末X線回折(X-ray diffraction、XRD)、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)、誘導結合プラズマ原子発光分光法(coupled plasma atomic emission spectroscopy、ICP-AES)、電子回折、高解像度透過型電子顕微鏡(high-resolution transmission electron microscopy、HRTEM)、固体13C双極性脱共役マジック角回転核磁気共鳴(13C DD/MAS NMR)、熱重量分析及び示差熱分析(thermogravimetric and differential thermal analysis、TG/DTA)、CHN分析、並びにN吸着によって特性化した。これらの特性化の組み合わせ結果及びDIFFaXシミュレーションの結果は、ZTS-1のAFX/CHA比が、80~85%のAFXと15~20%のCHAであること(ユニットセルの数に基づく)を示していた。水熱合成パラメータの単純な変動によるAFX/CHA比の制御は、困難であることが判明している。Cu担持ZTS-1の触媒性能を、NHによるNOの選択的触媒還元(NH-SCR)において試験し、Cu担持AFX触媒と比較して、そのより高い水熱安定性を確認した。ZTS-2は、TMAdaの代わりにKを使用して、ZTS-1で使用されたものとは完全に異なる合成条件下で合成した。ZTS-2のAFX/CHA比は15~20% AFX及び80~85% CHAと推定され、上記の比率を制御する可能性を強く示している。
【0011】
連晶材料の多くは、それらの相純末端メンバーと比較して、特別な触媒特性、収着特性、又は分子分離特性を示す。
【0012】
広範な用途において、改善された触媒活性及び選択性の次に、改善された水熱安定性を有する新たなゼオライト材料の探索が進行中である。例えば、化石燃料の燃焼から生じる、具体的には、定置型発電所から、及びディーゼルエンジンを搭載した車両から生じる排気ガスを浄化するために、選択触媒還元(SCR)が広く使用されている。銅及び/又は鉄が担持されたゼオライトは、SCR触媒活性材料として重要な役割を果たし、アンモニアを使用して有害な一酸化窒素を還元して、窒素ガスと水とを形成する。
【0013】
NH-SCR触媒活性材料に対する水熱安定性要件は、特にこの触媒機能が、運転中又は再生中の温度が最高900°に達し得る微粒子濾過装置の上流、下流、又は微粒子濾過デバイス内に組み込まれる場合、厳しいものである。
【0014】
ゼオライトがいくつかの異なるヒドロキシル基を有することは、当業者には既知である。架橋ヒドロキシル基(SiOHAl基)は、ほとんどの型のゼオライト上で観察される。加えて、2つの異なる種類のシラノール基(Si-OH基)は、通常、ゼオライト上に存在し、外側表面上のヒドロキシル基(OH基)は、不完全な縮合又は格子原子の除去から生じる構造的欠陥上でゼオライト結晶及びOH基を終端させる。これは、例えば、PA Jacobs,EM Flanigan,JC Jansen and H van Bekkum(eds.):「Introduction to Zeolite Science and Practice」,Elsevier,2nd Edition 2001,Chapter 8,5,2,1「Surface hydroxyl groups」,p.370に記載されている。
【0015】
更に、ゼオライト中のシラノール基の量は、ゼオライトの水熱安定性に影響を及ぼすことが知られている。
【0016】
国際公開第2017/204212(A1)号は、シリカのアルミナに対するモル比に応じて、高度に結晶性であり、特定の範囲内のシラノールのケイ素に対するモル比を有する、CHA型ゼオライトを開示している。シラノール含有量は、4kHの回転速度で300MHzのH-NMRによって決定される。最大1.5~2.5ppmのピークをフィッティングすることにより、生NMRデータを分析し、この最大値が、シラノール(Si-OH)ピークに割り当てられる。シラノール含有量の絶対量は、曲線較正法によって得られる。ケイ素含有量は、ケイ素に対応する蛍光X線ピークの強度を測定することによって決定される。この強度は、ケイ素含有量を計算するために較正曲線と比較される。蛍光X線測定により得られたゼオライトのケイ素含有量(mol/g)に対するH-NMRにより測定したゼオライトのシラノール基含有量(mol/g)をSiOH/Si比とした。シリカのアルミナに対するモル比が10~20である場合、シラノール基のケイ素に対するモル比は、0.15×10-2~0.50×10-2である。シリカのアルミナに対するモル比が20~35である場合、シラノール基のケイ素に対するモル比は、0.15×10-2~1.10×10-2である。シリカのアルミナに対するモル比が35~45である場合、シラノール基のケイ素に対するモル比は、0.15×10-2~1.65×10-2である。シリカのアルミナに対するモル比が45~55である場合、シラノール基のケイ素に対するモル比は、0.15×10-2~1.80×10-2である。高温環境におけるゼオライトの骨格構造の崩壊は、シラノール種の含有量の増加と相関する。本発明に記載されるCHA型のゼオライトは、CHAに熱処理又は水熱処理中に骨格の崩壊に耐えさせ、したがって、高い耐熱性を示す、Si-OH/Siの特定の範囲を満たすとされている。この特性のために、これらのCHAゼオライト及びCHAゼオタイプは、触媒又は触媒担体として、特に窒素酸化物還元触媒又はその担体として好適である。国際公開第2017/204212(A1)号に開示されるCHAゼオライト及びCHAゼオタイプは、ナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属を含み、これらはまた、アンモニウム又はプロトン型ゼオライトのいずれかを得るためにアンモニウムカチオンとイオン交換されてもよい。しかしながら、本開示は、銅又は鉄などの遷移金属を含むCHAゼオライト及びCHAゼオタイプについては、この開示は言及しない。
【0017】
国際公開第2017/026484(A1)号は、Y構造を有する結晶性アルミノシリケートにおいて構造変換を誘導することなくAEIゼオライトの製造方法を開示している。この方法は、アルミナ供給源、シリカ供給源、構造指向剤、ナトリウム供給源、及び水を含有する組成物を結晶化するための結晶化工程を有することを特徴とし、結晶性アルミノシリケートのアルミナ供給源及びシリカ供給源の総重量に対する重量比が、0~10重量%であり、以下の条件のうちの少なくとも1つが満たされ、すなわち(a)組成物中の水酸化物イオンのシリカに対するモル比が、0.45以上であることと、(b)組成物が、(CHRNで表されるカチオンを含有し、式中、Rが、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、アルキル基が、1つ以上の置換基を含んでもよいことと、(c)結晶化時間が、80時間以上であることである。この方法により得られるAEI型ゼオライトは、3×10-2以下のシラノール対ケイ素比(SiOH:Si)を有する。国際公開第2017/026484(A1)号に提供される実施例は、SiOH:Si比が、0.60~0.95×10-2であることを示している。シラノール含有量は、H-NMRによって測定され、シラノール含有量は、国際公開第2017/204212(A1)号について上述した蛍光X線ピークの強度を測定することによって決定される。
【0018】
国際公開第2017/026484(A1)号に開示されるAEIゼオライト及びAEIゼオタイプは、ナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属を含み、これらはまた、アンモニウム又はプロトン型ゼオライトのいずれかを得るためにアンモニウムカチオンとイオン交換されてもよい。AEIゼオライト及びAEIゼオタイプはまた、銅及び鉄から選択される少なくとも1つの遷移金属を含有してもよい。これらの高い耐熱性により、これらは窒素酸化物変換触媒として使用することができる。
【0019】
M Houlleberghs,A Hoffmann,D Dom,CEA Kirschhock,F Taulelle,JA Martens and E Breynaert:「Absolute Quantification of Water in Microporous Solids with H Magic Angel Spinning NMR and Standard Addition」,Anal Chem 2017,89,6940-6943において、微多孔質材料、特にゼオライト中の絶対含水量を測定するための方法が記載されている。ゼオライトサンプルの含水量は、水の標準添加及びH NMRによって測定した。ゼオライトサンプルを4mmのZrOローターに充填し、その後、既知の水のアリコートをローターに添加した。サンプルの全ての水和工程のH NMRスペクトルを測定することにより、線形相関関数(y=Ax+B)を決定でき、式中、yはHOピークのH NMR表面積であり、xはHのモルとして計算された、添加されたHOの量であり、Bは初期サンプルの総プロトン含有量に依存する切片である。勾配A(カウント/モルH)及び補正切片Bを組み合わせて、HOピークの絶対プロトン含有量(モルH/gサンプル)を決定することができる。元のサンプルの含水量を具体的に得るために、サンプルの全ての水和工程のH NMRスペクトルの表面積は、ブレンステッド酸プロトン、シラノール、アルミノールなどの非HO種に対して補正されねばならない。これらの残留信号の表面積を得るために、ZrOローター含有サンプルを真空下(<1mbar)、60℃で16時間乾燥させ、Nでフラッシングした後にキャップする。続いて、残留ピークの表面積をH NMRを用いて測定し、サンプルの全ての水和工程のH NMRスペクトルの表面積を補正して、切片Bの正しい値を得る。
【0020】
米国特許第2018/0127282(A1)号は、少なくとも以下の工程:i)少なくとも1つの水供給源、1つの銅供給源、1つのポリアミン、Y四価元素の1つの供給源、X三価元素の1つの供給源、唯一のOSDAとしてのテトラエチルアンモニウムカチオン、及びアルカリ土類又はアルカリ土類(A)カチオンの1つの供給源を含有する混合物の調製であって、合成混合物が、以下のモル組成:YO:a X:b OSDA:c A:d HO:e Cu:fポリアミンを有する、混合物の調製、ii)i)で得られた混合物の反応器内での結晶化、iii)ii)で得られた結晶質材料の回収、を含む、銅原子を含有するシリコアルミネート形態のCHAゼオライト構造を有する材料の直接的な合成プロセスを開示している。好ましくは、YはSiであり、XはAlであり、ポリアミンはテトラエチレンペンタミンである。パラメータa~fは、広い範囲で変化し得る:aは0.001~0.2の範囲、bは0.01~2の範囲、cは0~2の範囲、dは1~200の範囲、eは0.001~1の範囲、そしてfは0.001~1の範囲に及ぶ。米国特許第2018/0127282(A1)号に提供される実施例では、合成混合物は撹拌下に維持され、次いで、水の一部が蒸発し、静的条件下で結晶化が行われる。実施例に開示されるチャバザイトは、最高450℃の良好なNOx変換率を示しているが、温度が500℃に上昇したとき、NOx変換率は大幅に低下する。米国特許第2018/0127282(A1)号は、500℃を超えるチャバザイトの水熱安定性については言及しておらず、SiOH、AlOH、SiOHAl、又は他のプロトン含有基の含有量についても言及していない。
【0021】
米国特許第2015/0151286(A1)号は、CHA骨格構造、約10~約30のシリカ対アルミナのモル比(SAR)、及びその場遷移金属を有する組成物を開示しており、ゼオライト物質は、本質的にアルカリを含有しない。ゼオライトは、a)少なくとも1つのアルミナの供給源と、b)シリカの少なくとも1つの供給源と、c)遷移金属アミン有機テンプレート剤と、d)別個の第2の誘起テンプレート剤とを含む反応混合物を調製することであって、第1及び第2のテンプレート剤のそれぞれが、CHA骨格構造を形成するのに好適であり、反応混合物が、アルカリ金属を本質的に含有しない、反応混合物を調製することと、反応混合物を結晶化条件で十分な時間加熱して、CHA骨格を有し、遷移金属を含有するゼオライト結晶を形成することと、によって合成される。遷移金属は、好ましくは銅である。第1の有機テンプレート剤は、遷移金属アミン錯体、好ましくは銅テトラエチレンペンタミンである。第2の有機テンプレート剤は、2つの任意に置換されたヒドロカルビル基、2~4個の炭素原子を有するアルキル基、及び少なくとも3個の炭素原子と窒素原子とを有する環状ヒドロカルビル基を有する有機アンモニウムイオンである。好ましい第2の有機テンプレート剤は、ベンジルトリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、1-アダマンチルトリメチルアンモニウム、及びN,N,N-トリエチルシクロヘキシルアンモニウムカチオンである。反応混合物は、通常、室温で数分間撹拌(stir)又は撹拌(agitate)される。水熱結晶化は、通常、自己圧力下で、約100~200℃の温度にて数日間継続して行われる。開示された合成方法はワンポット法である。しかしながら、米国特許第2015/0151286(A1)号は、ゲル成分(ケイ素供給源、アルミニウム供給源、テンプレート、遷移金属、及び水)のモル比の範囲を開示しているのみだが、正確な範囲は開示していない。米国特許第2015/0151286(A1)号の方法によって得られたチャバザイトを、唯一のテンプレート剤としてCu-TEPAを使用して合成したチャバザイトと比較する。米国特許第2015/0151286(A1)号に従って合成されたチャバザイトは、比較例と比べて、150~500°である、考慮される全温度範囲にわたって改善されたNOx変換率を示している。しかしながら、350℃を超えると、比較例よりもはるかに高いままである場合でも、米国特許第2018/0151286(A1)号によるチャバザイトのNOx変換率は著しく低下する。この開示は、500℃を超えるチャバザイトの水熱安定性については言及しておらず、SiOH、AlOH、SiOHAl、又はその他のプロトン含有基の含有量についても言及していない。
【0022】
国際公開第2017/080722(A1)号は、フォージャサイト骨格型のゼオライトと、Cuテトラエチレンペンタミン(Cu-TEPA(Cu tetraethylenepentamine))と、テトラエチルアンモニウムカチオンを含まない少なくとも1つの化合物M(OH)xとを含む反応混合物を調製することと、反応混合物を加熱して、銅含有小細孔ゼオライトを形成することと、を含む、銅含有小細孔ゼオライトのワンポット合成を開示している。M(OH)xは、アルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物である。開示された方法によれば、合成ゲルは撹拌されるが、結晶化は静的条件下で行われる。国際公開第2017/080722(A1)号は、この方法により得ることができるゼオライトのNOx変換については言及しておらず、それらの水熱安定性又はSiOH、AlOH、SiOHAl若しくは他のプロトン含有基の含有量についてもいずれも言及していない。
【0023】
両方とも同じパテントファミリーに属する米国特許出願第2016/0107119(A1)号及び米国特許出願第2018/0021725(A1)号は、選択された濃度のアルカリイオン又はアルカリ土類イオン及びより低い濃度のCuイオンを含有するチャバザイト構造を有するCu交換ゼオライト触媒、並びにチャバザイトを作製するためのプロセスを開示している。これらの触媒は、低減されたライトオフ温度を示し、したがって、NOガスの低温変換の向上をもたらす。更に、これらのチャバザイトは、従来のNO還元触媒と比較して高い選択性値を示す。
【0024】
米国特許出願第2016/0107119(A1)号は、NOx還元触媒の製造プロセスを特許請求しており、ここでは、合成チャバザイトが、まず、約0.01~約5重量%以下の濃度でアルカリ又はアルカリ土類金属イオンで充填され、続いて合成ゼオライトが、銅イオンで約0.01~約2重量%以下の濃度に充填される。このようにして得られたチャバザイトは、低温活性及び高温活性の両方の向上を示す。
【0025】
米国特許出願第2018/0021725(A1)号は、2重量パーセント未満の銅金属を含有し、Na、Li、K及びCaから選択される少なくとも1つの金属を組み込む合成チャバザイトを特許請求している。このチャバザイトは、合成チャバザイトをナトリム型で製造し、ナトリウムをアンモニウム交換し、続いて、アンモニウムイオンを単一のアルカリ又はアルカリ土類金属と交換し、ゼオライトを焼成し、最終的にある量のアルカリ又はアルカリ土類金属を銅と交換することにより製造される。銅交換後、ゼオライトは水熱エージングされる。最終的なチャバザイトゼオライトの銅含有量は、0重量%超~2重量%である。
【0026】
米国特許第2016/0107119(A1)号及び米国特許第2018/0021725(A1)号の両方は、低銅含有量と低アルカリ又はアルカリ土類金属含有量との組み合わせが、チャバザイトがNO変換活性の向上を示す温度範囲に寄与することを示している。しかしながら、両方の出願は、開示されたチャバザイトの水熱安定性又は安定性に関与し得る要因については言及していない。
【0027】
特にSCR用途での使用に関して、良好なNO変換率及び高い耐熱性を有する新たなゼオライトの絶え間ないニーズがある。したがって、本発明の目的は、改善された選択性、活性、及び水熱安定性を示すゼオライト、並びにこれらのゼオライトが触媒として使用される、自動車の燃焼排気ガスからNOを除去するプロセスを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明者らは、ここで、驚くべきことに、8個の四面体原子の最大孔径を有する結晶性アルミノシリケートゼオライトを見出し、このゼオライトが、1グラム当たり2mmol未満の総プロトン含有量を有する。
【0029】
本発明による新規結晶性アルミノシリケートゼオライト、及びこれらのゼオライトが触媒として使用される、自動車の燃焼排気ガスからNOを除去するためのプロセスは、以下に説明され、本発明は、以下に示される全ての実施形態を個々に、かつ互いに組み合わせて包含する。
【0030】
本発明で使用するとき、「相純ゼオライト」という用語は、ただ1つの結晶構造を有する結晶から構成されるゼオライトを指し、すなわち、その結晶は他の結晶構造を含有しない。
【0031】
結晶構造とは、結晶性材料中の原子、イオン、又は分子の秩序ある配置に関する記述である。秩序構造は、構成粒子の固有の性質から発生し、物質内の三次元空間の主方向に沿って繰り返される対称パターンを形成する。したがって、「結晶」は、その構成要素が結晶構造に配置されている固体材料を表す。
【0032】
「結晶性物質」は結晶で構成される。
【0033】
「骨格型」とも称される「ゼオライト骨格型」は、四面体に配位した原子のコーナー共有ネットワークを表す。
【0034】
「CHA骨格型材料」は、CHA骨格型を有するゼオライト材料である。同じことを、「ERI骨格型材料」、「AEI骨格型材料」、及び他のゼオライト骨格型材料についても準用する。多くの場合、ゼオライト骨格型材料は、「ゼオタイプ」又は「アイソタイプ骨格構造」と称される。ゼオタイプ又はアイソタイプ骨格構造のそれぞれの一般的な定義は、これがゼオライトの構造に基づいて人工材料のファミリーのいずれかを論じることである。したがって、「ゼオタイプ」、「アイソタイプ骨格構造」、及び「ゼオライト骨格型材料」という用語は、同義的に使用される。周知のゼオタイプは、例えば、AEIゼオタイプであるSSZ-39、及びCHAゼオタイプであるSSZ-13である。
【0035】
ゼオライトの「連晶」は、少なくとも2つの異なるゼオライト骨格型、又は同じ骨格型の2つの異なるゼオライト組成物を含む。
【0036】
「表面連晶」ゼオライトでは、一方の骨格構造が他方の骨格構造の上で成長する。したがって、「表面連晶」は、「連晶」の種を表し、「連晶」は属である。
【0037】
「混合物」は、混合されるが化学的に組み合わされない2つ以上の異なる物質からなる材料である。本発明では、混合物用の2つ以上の異なる物質はゼオライトである。
【0038】
驚くべきことに、ゼオライトの総プロトン含有量は、シラノール対ケイ素含有量よりもゼオライトの水熱安定性のためのより良好な指標であることが見出された。総プロトン含有量は、以下に更に説明するように、それぞれの乾燥ゼオライトの焼成された乾燥プロトン形態で測定することができる。焼成されたゼオライトの乾燥プロトン形態は、以降、「プロトン交換形態の焼成乾燥ゼオライト」又は「焼成された乾燥Hゼオライト」とも称される。1グラム当たり2mmol未満、好ましくは1グラム当たり1.8mmol未満、より好ましくは1グラム当たり1.6mmol未満、更により好ましくは1グラム当たり1.3mmol未満の総プロトン含有量を有する本発明によるゼオライトは、800℃以上の大幅に改善された水熱安定性を示す。しかしながら、本発明によるゼオライトが、以下に記載されるように、a)銅及び/若しくは鉄のような遷移金属、並びに/又はb)アルカリ及び/若しくはアルカリ土類金属を含み、800℃以上で対応する焼成された乾燥H形態として水熱安定性であることが重要である。
【0039】
「ゼオライト」又は「本発明によるゼオライト」という用語は、これらが実質的にアルカリ、アルカリ土類及び遷移金属を含有しないかどうか、又は以下に記載されるように金属を含むかどうかに関係なく、8個の四面体原子の最大孔径及び本明細書に開示されるゼオライトの総重量に基づいて、1グラム当たり2mmol未満の総プロトン含有量を有する全ての結晶性アルミノシリケートゼオライトを指す。
【0040】
科学の世界では、「遷移金属」という用語は、周期表の3~12族の金属を指す。この定義はまた、白金族金属のルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金も含む。しかしながら、白金族金属(platinum group metal、PGM)は、多くの場合、遷移金属間の特定のサブグループであると考えられる。また、燃焼排気浄化技術分野では、「遷移金属」という用語は、ほとんどは、白金族金属以外の遷移金属、特に周期律表の第4周期の遷移金属を指し、白金族金属は、このように明示的に命名されている。この一般的な慣習によれば、本発明における「遷移金属」という用語は、PGM金属以外の金属を指し、好ましくは第4周期の遷移金属、より好ましくは銅及び鉄を指す。白金族金属は、このように明示的に命名される。
【0041】
8個の四面体原子の最大孔径を有する好適な結晶性アルミノシリケートゼオライトは、例えば、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、BIK、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、ESV、ETL、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、並びにこれらの骨格型のうちの少なくとも1つを含有する混合物及び連晶から選択されるゼオライト骨格型材料である。
【0042】
本発明の一実施形態では、ゼオライトは、AEI、AFT、AFX、CHA、DDR、ERI、ESV、ETL、KFI、LEV、UFI、並びにこれらの混合物及び連晶から選択される。好ましくは、ゼオライトは、AEI、CHA、AFX、並びにこれらの骨格型のうちの少なくとも1つを含有する混合物及び連晶から選択される。特に好ましい実施形態では、ゼオライトはAEIである。
【0043】
一実施形態では、これらの骨格型のうちの少なくとも1つを含有する「混合物及び連晶」は、上で列挙したゼオライト骨格型、例えば、CHA及びAEIの物理的混合物、KFI及びESVの物理的混合物、LEV、ERI、及びBIKの物理的な混合物、ERI及びCHAの連晶、又はAFX及びCHAの連晶のみからなる。
【0044】
別の実施形態では、「これらの骨格型のうち少なくとも1つを含有する混合物及び連晶」は、上で列挙したゼオライト骨格型のうちの少なくとも1つを含むが、他のゼオライト骨格型も含む。例は、CHA及びGMEの物理的混合物、又はERI及びOFFの連晶である。
【0045】
上で列挙したゼオライト骨格型材料の例示的なアイソタイプ骨格構造を表1に列挙する。
【0046】
【表1-1】
【0047】
【表1-2】
【0048】
【表1-3】
【0049】
8個の四面体原子の最大孔径を有するアルミノシリケートを合成する方法は、当業者に既知である。
【0050】
総プロトン含有量は、H MAS NMRを介して、プロトン交換形態の焼成された乾燥ゼオライト上で測定され、「MAS NMR」は、「磁気角スピニング核磁気共鳴」を表す。
【0051】
H MAS NMR測定の前に、ゼオライトは、それらの磁気特性のためにNMR測定を妨害するアルカリ及び/又はアルカリ土類金属並びに遷移金属を実質的に含まない必要がある。当業者は、どの要素がNMR測定を妨害するかを知っている。このような要素は、以下に記載されるようにイオン交換によって排除することができる。
【0052】
「アルカリ及び/又はアルカリ土類金属を実質的に含まない」とは、ゼオライトが、純粋なアルカリ及び/又はアルカリ土類金属として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0.3重量%未満の金属を含むことを意味する。一実施形態では、ゼオライトは、いかなるアルカリ及び/又はアルカリ土類金属も全く含まない。この場合、これらの金属の含有量は、明らかな理由から0重量%である。別の実施形態では、ゼオライトは、純粋な金属として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0超~0.3重量%、好ましくは0.005~0.3重量%の範囲のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属を含む。アルカリ又はアルカリ土類金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びこれらの混合物から選択される。好ましくは、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属は、ナトリウム、カリウム、及びこれらの混合物から選択される。当業者は、アルカリ及びアルカリ土類金属の含有量をAASによって測定することができ、特許請求の保護範囲を逸脱することなく、この知識を適用することができることを知っている。
【0053】
「遷移金属を実質的に含まない」とは、ゼオライトが、それぞれの酸化物として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0.08重量%未満の少なくとも1つの遷移金属を含み、これはICPによって測定することができることを意味する。少なくとも1つの遷移金属は、周期表の3族~12属の元素から選択される。好ましくは、少なくとも1つの遷移金属は、銅、鉄、及びこれらの混合物から選択される。この場合、遷移金属含有量は、それぞれCuO又はFeとして計算される。一実施形態では、ゼオライトは、いかなる遷移金属も全く含まない。この場合、これらの金属の含有量は、明らかな理由から0重量%である。別の実施形態では、ゼオライトは、遷移金属を含み、好ましくは、それぞれの酸化物として計算され、かつ焼成された乾燥ゼオライトの総重量に基づいて、0超~最大0.08重量%の範囲で遷移金属を含む。
【0054】
したがって、焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトは、
a)純粋な金属として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0重量%のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属と、それぞれの酸化物として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0重量%の遷移金属を含有し得るか、あるいは、
b)純粋な金属として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0重量%のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属と、それぞれの酸化物として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0超かつ最大0.08重量%の遷移金属を含有し得、
c)純粋な金属として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0超~0.3重量%の範囲のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属と、それぞれの酸化物として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0重量%の遷移金属を含有し得るか、あるいは
d)純粋な金属として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0超~0.3重量%の範囲のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属と、それぞれの酸化物として計算され、かつ焼成された乾燥プロトン交換ゼオライトの総重量に基づいて、0超かつ最大0.08重量%の遷移金属を含有し得る。
【0055】
H MAS NMR測定を行う手順は、以下のとおりである。
作製されたままのゼオライトは、500~650℃の温度で4~10時間、好ましくは8時間、0.5~1℃/分の加熱速度で、空気中で焼成される。「作製されたままのゼオライト」は、合成後に得られるゼオライトである。
【0056】
焼成後、アルカリ、アルカリ土類及び/又は遷移金属を除去するためにイオン交換が行われる。イオン交換は、焼成ゼオライトをアンモニウム塩、好ましくは塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム又は硝酸アンモニウムで処理することによって行われる。焼成ゼオライトを水性アンモニウム塩溶液中に懸濁し、撹拌しながら還流下で、好ましくは3~5時間加熱した後、遠心分離する。0.9~1.1グラムのゼオライトを、0.45~0.55Mのアンモニウムイオン濃度を有する水性アンモニウム塩溶液100mL中に懸濁させることが好適である。イオン交換と遠心分離との組み合わせは、多くの回数繰り返すことができる。好ましくは、この組み合わせは、合計で3回実施される。イオン交換と遠心分離とを、例えば3回繰り返して、典型的には、0~0.3重量%のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属の含有量及び0~0.08重量%の遷移金属含有量を有するゼオライトを産出し、これらの金属含有量の測定及び計算は上述のように行われる。
【0057】
次いで、固体イオン交換ゼオライトを回収し、脱イオン水で洗浄し、遠心分離により回収する。続いて、ゼオライトを25℃~80℃の温度で2~36時間乾燥させる。好ましくは、乾燥工程は、60℃で8時間行われる。
【0058】
乾燥工程に続いて、1分当たり0.5~1℃の加熱速度で、600℃~650℃の温度で4~8時間、空気中で焼成する。好ましくは、この焼成は、1分当たり1℃の加熱速度で、650℃で8時間行われる。
【0059】
最後に、ゼオライトを4mmのジルコニア固体NMRローターに充填し、真空下(<1mbar)、90℃±1℃で30分間±5分間、200℃±5℃で16~29時間乾燥させる。真空乾燥後に得られるゼオライトは、上記のように、「プロトン交換された形態の焼成ゼオライト」である。この材料では、プロトン含有量の決定のために、H MAS NMRが行われる。
【0060】
H MAS NMRスペクトルの積分面積の絶対定量化を、Houlleberghsら(2017)に記載されるように、標準添加法を介して実行し、Hの絶対量(mmol/g)を得た。既知量の脱イオンHOを、充填されたローター内の乾燥ゼオライトに添加した。サンプル全体にわたる水の均質な分布は、キャップ付きローターを323~343Kの温度で10~20時間、好ましくは333Kで16時間加熱することによって達成した。H MAS NMR実験は、乾燥したサンプルと同じ方法で実施した。この手順は、5つの異なるHO量で行われた。絶対定量化のために、追加のHO量と共に焼成された乾燥H-ゼオライト及びゼオライトの全ての測定及び前処理が、正確に同じ方法で実施されることが重要である。(脱)水ゼオライトサンプルの積分されたH NMR信号と、添加されたHの量(molH)との間で線形相関が得られた。このようにして、乾燥スペクトルのH NMRスペクトルの積分面積を、絶対量のプロトン(mmol/g)で変換することができる。プローブの調整及び整合は、線形相関関数を取得するときの精度及び再現性を最大化するために、(脱)水状態間の同等のQ(品質)因子を確実にするために、ベクトルネットワークアナライザを使用して実施した。全てのサンプルのQ因子、焼成された乾燥H-ゼオライト及び水和ゼオライトは、10%変化し得る。
【0061】
H MAS NMR実験は、273~303Kの温度、好ましくは293Kで行われる。測定は、4mm H/X/Yマジック角スピン(magic angle spinning、MAS)固体プローブを備えた500MHz分光計(11.7Tの静磁場)上で実施する。サンプルを10kHzで回転させた。Hスペクトルは、π/2フリップ角及び5秒の繰り返し遅延を使用して記録した。アダマンタンを、テトラメチルシラン(tetramethylsilane、TMS)を基準とする化学シフトについての外部二次基準として使用した。得られたスペクトルは、スピニングサイドバンドの形状に従って適切に位相合わせされた。ベースラインを、主信号とその隣接するスピニングサイドバンドとの間の最小値に従って手動で補正した。Hスペクトルを、Bruker Topspin 3.5ソフトウェアを使用して、20~-8ppmで積分した。
【0062】
H MAS NMR測定を実行するために、合成ゼオライトの全量を上記に記載されたような手順に供する必要はない。HMR測定のために少量の合成収量のみを使用し、特に加熱、焼成、及び任意にイオン交換に関して、以下に記載されるような大量の収量を処理することが有利である。
【0063】
ゼオライトを合成するための既知の方法は、シリカ供給源とアルミナ供給源とを含む反応混合物の調製と、それらを組み合わせることと、を含む。反応混合物は、一般に、アルカリ及びアルカリ土類金属水酸化物並びに構造指向剤を含む。別個のケイ素供給源及びアルミナ供給源を使用する代わりに、ゼオライトの合成のためのいくつかの既知のプロセスは、フォージャサイトなどの前駆体ゼオライトを使用し、これはアルカリ及びアルカリ土類金属水酸化物と構造指向剤と組み合わせて、チャバザイトなどの他のゼオライトの合成を可能にする。
【0064】
ケイ素供給源及びアルミナ供給源、少なくとも1つのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、少なくとも1つの構造指向剤(SDA)及び水を含む反応混合物を、以降「ゲル」と称する。8個の四面体原子の最大孔径を有する結晶性アルミノシリケートゼオライトを合成するのに好適なゲルであって、ゼオライトが、1グラム当たり2mmol未満の総プロトン含有量を有し、以下のモル組成を有し、
SiO:a Al:b SDA1:c Me(OH):d HO、
式中、
aは、0.01~0.05、好ましくは0.012~0.043の範囲に及び、
bは、0.02~0.5、好ましくは0.03~0.45の範囲に及び、
Me(OH)は、アルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物であり、
式中、
Meは、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Ba、及びこれらの混合物から選択され、
Li、Na、K、Rb、Csから選択されるアルカリ金属の場合、n=1であり、
Ca、Mg、Sr、Baから選択されるアルカリ土類金属の場合、n=2であり、
n=1の場合、cは0.1~1.2の範囲に及び、
n=2の場合、cは0.05~0.6の範囲に及び、
積cnは、0.1~1.2の範囲に及び、
dは、30~70の範囲に及ぶ。
【0065】
積cnは、OH基のモル量を表している。これは、アルカリ金属水酸化物のみが使用されるか、アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物との混合物のアルカリ土類金属水酸化物のみが使用されるかどうかにかかわらず、0.1~1.2の範囲に及ぶ。
【0066】
任意に、ゲルは、SDA2と称される第2のSDA、並びに/又はグリセロール、臭化ヘキサメメトニウムブロミドなどの他の有機成分、並びに/又はアルカリ及び/若しくはアルカリ土類金属の塩、好ましくはそれらのハロゲン化物を更に含んでもよい。
【0067】
当業者は、どの第2のSDA、他の有機成分、並びにアルカリ及びアルカリ土類金属の塩がゼオライトの合成に使用することができるかを知っている。当業者は、請求項の範囲から逸脱することなく、この知識を適用することができる。
【0068】
シリカ供給源、アルミナ供給源、又は前駆体ゼオライトを含む上記の反応混合物、すなわち、ゲルは、通常、撹拌され、任意にその後エージングされ得る。続いて、反応混合物を70℃~190℃の温度で2時間~25日間加熱し、洗浄し、60℃~80℃の温度で8~36時間乾燥させる。好ましい実施形態では、シリカ供給源、アルミナ供給源又は前駆体ゼオライトを含む反応混合物を、20~40℃、好ましくは室温(25℃)の温度で10~50分間撹拌する。続いて、反応混合物を、静的又は動的条件下、70℃~190℃の温度で2時間~25日間加熱する。その後、形成されたゼオライトを、400℃~850℃又は4~10時間、好ましくは550℃~750℃、更により好ましくは550℃~650℃の温度で6~8時間焼成する。
【0069】
既に述べたように、これらの方法は、当業者に既知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく適用することができる。
【0070】
8個の四面体原子の最大孔径を有しており、1グラム当たり2mmol未満の総プロトン含有量を有する結晶性アルミノシリケートゼオライトを得るための重要な因子は、
a)ゲル中の O:SiO のモル比を、30~70にすること、及び
b)反応混合物を上述した静的又は動的条件で加熱することであることに留意する必要がある。
【0071】
好ましい実施形態では、反応混合物、すなわちゲルは、工程a)とb)との間、すなわち加熱前に、20~40℃の温度で10~50分間撹拌される。
【0072】
上述したように、アルカリ、アルカリ土類金属及び遷移金属カチオンは、イオン交換反応によってゼオライトから除去されるか、又はゼオライトに導入され得ることが周知である。これらのイオン交換反応は、それぞれアルカリ及びアルカリ土類金属カチオンの導入及び遷移金属カチオンの導入のために例示的に記載される。当業者は、これらのイオン交換反応をどのように適応させて、所望のカチオン含有量を有するゼオライトを得るかを知っている。記載される反応はまた、アンモニウムカチオンの導入によって金属カチオンが除去され、その後、焼成中にその熱分解が行われる工程も含む。
【0073】
銅は、例えば、イオン交換によって導入することができる。第1の工程では、アルカリ又はアルカリ土類金属カチオンをゼオライト骨格から除去するために、アルカリ又はアルカリ土類金属カチオンを、NH カチオンと置き換えることによってアンモニウム交換が実行される。第2の工程では、NH は、銅カチオンによって置き換えられる。同様に、得られる銅含有小細孔ゼオライトの銅含有量は、銅塩の量及び実行されるイオン交換手順の回数により容易に制御することができる。
【0074】
アンモニウムカチオン及び銅カチオンをそれぞれ導入する方法は、当業者に周知である。これらは、特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明による焼成ゼオライトに適用することができる。例えば、アンモニウムカチオンは、液体イオン交換を介して容易に導入することができ、また、銅カチオンもまた、液体イオン交換、溶液滴下含浸(incipient wetness impregnation)又は固体イオン交換を介して容易に導入することができる。
【0075】
方法は、以降に例示的に提示される。これらの方法は、a)銅及び/若しくは鉄のような遷移金属を担持する、並びに/又はb)アルカリ及び/若しくはアルカリ土類金属を担持する、本発明によるゼオライトを得るために適用可能である。H MAS NMR測定が行われる場合、測定のためのゼオライトサンプルの調製用に、上記のイオン交換手順を実施しなければならない。
【0076】
液体イオン交換
NH 液体イオン交換は、還流条件下、水性懸濁液中で100℃にて実行することができる。ゼオライト1g当たり、0.5MのNHCl水溶液又はNHNO水溶液100mLを使用する。
【0077】
Cu2+液体イオン交換は、室温で20時間実行される。1gのゼオライト当たり0.03gのCuに相当する、1gのゼオライト当たり、100mLの酢酸銅(Cu(Ac))水溶液、硝酸銅(Cu(NO)水溶液又は塩化銅(CuCl)水溶液を使用する。この手順は、所望の銅含有量を達成するために複数回繰り返すことができる。
【0078】
液体イオン交換における銅対ゼオライト比は、最終ゼオライトの所望の銅含有量に従って調整することができることは、当業者にとって明白である。一般に言えば、より高い銅含有量を有する水溶液は、より高い銅含有ゼオライトをもたらす。当業者は、例えば、本発明による銅含有ゼオライトを得るために、1gのゼオライト当たり0.03~0.1gの銅の銅含有量を有する銅塩水溶液を選択してもよく、Cu含有ゼオライトは、CuOとして計算され、かつゼオライトの総重量に基づいて、0.1~10重量%のCu含有量を有する。どの1gのゼオライト当たりの銅濃度を選択すべきであるか、またその手順をどのように繰り返すかは、特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者によって容易に決定することができる。
【0079】
任意に、アンモニウム交換ゼオライトは、アンモニウムイオンを分解するために熱処理を受けることができる。続いて、銅交換を上記のように行うことができる。
【0080】
溶液滴下含浸
酢酸銅(Cu(Ac))水溶液、硝酸銅(Cu(NO)水溶液又は塩化銅(CuCl)水溶液を、ゼオライト細孔容積と等しい容積で使用する。酢酸銅、塩化物又は硝酸塩の量は、ゼオライト中で好ましい銅の量と等しい。溶液滴下含浸は、室温で行われる。その後、銅交換ゼオライトを60~70℃の温度で8~16時間乾燥させ、続いて混合物を550~900℃の範囲の温度に加熱する。
【0081】
固体イオン交換
好適な銅塩は、例えば、酢酸銅(Cu(Ac))、硝酸銅(Cu(NO)、塩化銅(CuCl)、酸化銅(II)(CuO)、酸化銅(I)(CuO)、及びアセチルアセトネート(Cu(acac))である。銅塩とゼオライトとを乾燥状態で混合し、その後、混合物を550~900℃の範囲の温度に加熱する。金属ドープゼオライトを製造するプロセスは、例えば、米国特許出願第2013/0251611(A1)号に開示されている。このプロセスは、特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明のゼオライトに適用され得る。
【0082】
ゼオライトに鉄を導入することは、銅の導入について記載したのと同じ方法で実行することができる。鉄イオン交換に好適な塩は、Fe2+又はFe3+塩、好ましくはFe3+塩、例えばFeCl、Fe(SO、Fe(NO、及びFe(Ac)であり得る。
【0083】
同様に、アルカリ又はアルカリ土類金属は、互いに対して、又はNH に対して交換することができる。これらの金属を導入するのに好適なアルカリ又はアルカリ土類金属化合物は、それぞれの水酸化物、例えばNaOH及びKOHである。アルカリ又はアルカリ土類金属の量を低減すると、ゼオライトはNHCl水溶液と混合され、沸点まで加熱される。ゼオライトを濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、次いで乾燥させる。この手順を1回以上繰り返すと、アルカリ又はアルカリ土類金属カチオンの含有量が更に低減される。上記のNH 湿式イオン交換、続いて、他のアルカリ又はアルカリ土類金属カチオンとの液体イオン交換を行うことも可能である。このような液体イオン交換で使用することができる好適なアルカリ又はアルカリ土類金属塩は、当業者に周知である。これらは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムの塩化物、臭化物硝酸塩、硫酸塩及び酢酸塩を含み、カチオンに応じて、SCRで使用するために最終的なゼオライトに導入されるべきである。アルカリ又はアルカリ土類金属カチオン及び銅カチオンを導入するための交換工程を組み合わせることも可能である。銅カチオン及びアルカリ又はアルカリ土類金属カチオンの両方が導入される場合、
1.アルカリ又はアルカリ土類金属カチオンを最初に導入し、続いて銅カチオンを導入すること、
2.銅カチオンを最初に導入し、続いてアルカリ又はアルカリ土類金属カチオンを導入すること、あるいは
3.アルカリ又はアルカリ土類金属カチオン及び銅カチオンを同時に導入することが可能である。
【0084】
アルカリ及びアルカリ土類金属カチオン及び銅の両方を導入するための3つの選択肢のうちのどの1つが選択されるかは、これらのカチオンがゼオライト内のどこに配置されるべきか、及び配置され、このように得られるゼオライトのどの使用が意図されるかに依存する。当業者は、日常的な実験によってこれらの3つの選択肢の最も好適なものを見つけ出す方法を知っている。当業者は、特許請求の保護範囲を逸脱することなく、この知識を利用することができる。
【0085】
本発明の一実施形態では、NH 液体イオン交換が最初に行われ、Cu2+及び/又はFe3+液体イオン交換、溶液滴下含浸又は固体状態交換が続く。任意に、少なくとも1つの遷移金属の導入前又は導入後のいずれかで、アルカリ又はアルカリ土類金属を追加的に導入することができる。
【0086】
別の実施形態では、NH 液体イオン交換は、合成中にゼオライトに導入された遷移金属、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の濃度を低減又は完全に除去するために実行され、続いて上記のようにNH イオンを分解する。更に、上述のイオン交換技術を使用して、金属カチオン、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属カチオンの1つの群の濃度を低減し、別の群の金属カチオン、例えば、Cu2+及び/又はFe3+イオンなどの遷移金属カチオンを導入することができるか、又はその逆に使用することができる。
【0087】
一般に、ゼオライトの合成方法は、アルカリ又はアルカリ土類金属の化合物、例えば、NaOH又はKOHのような水酸化物の使用を含む。更に、本方法は、SDA又はOSDAとしても知られる構造指向有機剤の使用を必要とし、これは、チャバザイトの合成のための、例えば周知のOSDA Cu-テトラエチレンペンタミン(Cu-TEPA)を含み得る。
【0088】
したがって、本発明の一実施形態では、少なくとも1つの遷移金属は、少なくとも1つの遷移金属を含む有機構造指向剤によるゼオライトの合成中に、本発明によるゼオライトに導入される。好ましい実施形態では、有機構造指向剤は、Cu-TEPAであり、Cu-TEPAによって合成される本発明によるゼオライトはチャバザイトである。
【0089】
本発明の発明者らは、その後、遷移金属、例えばCu及び/又はFeを含む場合、ゼオライトの焼成された乾燥プロトン形態の総プロトン含有量とそれらの水熱安定性との間に強い相関があることを見出した。上記で定義したゼオライトの焼成された乾燥プロトン形態の総プロトン含有量、すなわち、20~-8ppmのH MAS NMRスペクトルの面積が2mmol/g未満であるならば、そのときは、対応する銅及び/又は鉄担持ゼオライトは、水熱安定性である。ゼオライトの「水熱安定性」は、特定の期間にわたって分解することなく、高温の水含有雰囲気に耐える能力である。水熱安定性の測定は、異なる温度及び含水量で、かつ異なる期間にわたって行うことができることは周知である。ゼオライトの水熱安定性の典型的な測定は、10~15体積%のHOの含水量の空気中で約600℃~900℃の温度で1~5時間行う。本発明によるゼオライトは、10~15体積%のHOを含む空気雰囲気中で、2~4時間にわたって処理された、少なくとも700℃の水熱安定性を示す。
【0090】
本発明の一実施形態では、本発明によるゼオライトのシリカのアルミナに対するモル比(SiO/Al)は、5~50、好ましくは12~30の範囲に及ぶ。以下、シリカのアルミナに対するモル比をSARと略記する。
【0091】
本発明の一実施形態では、本発明によるゼオライトは、それぞれの酸化物として計算され、かつゼオライトの総重量に基づいて、0.1~10重量%の濃度の少なくとも1つの遷移金属を含む。少なくとも1つの遷移金属は、周期表の3族~12属の元素から選択される。好ましくは、少なくとも1つの遷移金属は、銅、鉄、及びこれらの混合物から選択され、更により好ましくは、少なくとも1つの遷移金属は、銅である。この場合、遷移金属含有量は、それぞれ、CuO又はFeとして計算される。一実施形態では、少なくとも1つの遷移金属は、それぞれの金属酸化物として計算され、かつゼオライトの総重量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは0.5~6重量%、最も好ましくは0.7~4.5重量%の量で存在する。
【0092】
一実施形態では、少なくとも1つの遷移金属は、それぞれのゼオライトの合成中に、例えば遷移金属カチオンを含むOSDAによって導入される。この場合、焼成後に得られるゼオライトの遷移金属含有量は、ゼオライトの意図される使用に従って調整することができる。「調整する」とは、遷移金属含有量が影響を受けずに残され得るか、又は少なくとも1つの遷移金属の一部をイオン交換によって除去され得るか、又は追加の遷移金属がゼオライトに導入され得ることを意味する。
【0093】
別の実施形態では、少なくとも1つの遷移金属は、ゼオライトの合成後に導入される。この場合、少なくとも1つの遷移金属の充填は、好ましくは、焼成工程後に得られるゼオライト上に行われる。
【0094】
本発明の一実施形態では、本発明によるゼオライトは、純粋な金属として計算され、かつゼオライトの総重量に基づいて、0~2重量%、好ましくは0.001~0.5重量%の濃度の少なくとも1つのアルカリ又はアルカリ土類金属を含む。
【0095】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのアルカリ又はアルカリ土類金属は、それぞれのゼオライトの合成中に、例えばアルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩などによって導入される。この場合、追加のアルカリ又はアルカリ土類金属を導入しないことが好ましい。ゼオライトの合成に使用することができ、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物は、当業者に既知である。これらは、特許請求の範囲から逸脱することなく使用することができる。
【0096】
代替的な実施形態では、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属は、上記のイオン交換法を介してゼオライトの合成後に導入され得る。
【0097】
アルカリ及び/又はアルカリ土類金属が導入される場合、少なくとも1つのアルカリ又はアルカリ土類金属カチオンの導入は、上記に説明したように、少なくとも1つの遷移金属カチオンの導入後、導入前に、又はそれと同時に行うことができる。当業者は、イオン交換によるそれぞれのカチオンの導入にどのアルカリ又はアルカリ土類金属塩が好適であるかを知っている。当業者は、請求項の範囲から逸脱することなく、この知識を適用することができる。
【0098】
少なくとも1つのアルカリ又はアルカリ土類金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選択される。好ましい実施形態では、アルカリ又はアルカリ土類金属は、ナトリウム、カリウム、及びこれらの混合物から選択される。より好ましくは、アルカリ金属は、カリウムである。
【0099】
本発明の一実施形態では、本発明によるゼオライトは、上記のように合成中又はイオン交換を介してのいずれかで導入され得る少なくとも1つの遷移金属を含む。遷移金属のアルミニウムに対する原子比は、0.003~0.5の範囲である。遷移金属は、好ましくは、上述のように、銅、鉄、及びこれらの混合物から選択される。当業者は、イオン交換によって導入される遷移金属の量をどのように調整して、所望の遷移金属のアルミニウムに対する比を得るかを知っている。当業者は、請求項の範囲から逸脱することなく、この知識を適用することができる。
【0100】
本発明の一実施形態では、ゼオライトは、0.3~7μmの、例えば、0.5~2.5μm又は2.5~5μmの、平均結晶サイズ及び/又はD90結晶サイズを有する。結晶サイズは、個々の結晶(双晶を含む)に基づくが、結晶の凝集を含まない。結晶サイズは、3次元結晶の最長対角線の長さである。結晶サイズの直接測定は、SEM及びTEMなどの顕微鏡法を使用して行うことができる。例えば、SEMによる測定は、高倍率(典型的には、1000倍~10,000倍)で材料の形態を調べることを伴う。SEM法は、個々の粒子が1000倍~10,000倍の倍率で視野全体に適度に均一に広がるように、好適なマウント上にゼオライト粉末の代表的な部分を分配することによって実施することができる。この集団から、無作為な個々の結晶(例えば、50~200個)の統計的に有意なサンプルを検査し、個々の結晶の最も長い対角線を測定し、記録する。(明らかに大きい多結晶凝集体である粒子は、測定値に含めるべきではない。)これらの測定値に基づいて、サンプル結晶サイズの算術平均を算出する。
【0101】
本発明によるゼオライトは、自動車の燃焼排気ガスからNOを除去するためのプロセスにおいて使用することができる。SCR(選択的触媒還元)としても知られるこのプロセスでは、これらのゼオライトは、NOの変換のための触媒活性材料として使用される。NOの変換は、内燃機関の希薄燃焼運転中に特に必要である。したがって、NOxの変換のための触媒活性材料としての本発明によるゼオライトの使用は、ディーゼル及びガソリンエンジンの両方において、特に希薄燃焼運転下でDeNO活性が必要とされるときに適用可能である。
【0102】
SCR触媒活性材料として使用されるゼオライトは、最初にSCR反応が起こることを可能にするために、少なくとも1つの遷移金属の存在、特に、銅及び/又は鉄の存在を必要とする。
【0103】
上述したように、本発明によるゼオライトは、SCR触媒の調製に使用することができる。更に、それらは好適なイオン交換体である。それらはまた、分子篩として、かつ広範な反応において触媒として使用することもできる。ゼオライトの周知の使用としては、例えば、流動接触分解、水素分解、炭化水素変換反応、再処理方法、及び熱蓄積が挙げられる。
【0104】
本発明において、「触媒」又は「触媒系」は、触媒活性材料及び担体、ハウジングなどを含む排気浄化システムの構成要素を指す。このような触媒系は、多くの場合、「モノリス」と呼ばれる。触媒活性材料は、有害な排気ガスの非危険性ガスへの変換をもたらす化学化合物又は化合物の混合物である。SCR触媒活性材料、例えば、NOをN及びHOに変換する。
【0105】
以降、以下の略語を、自動車の排気浄化システムに、主に希薄燃焼エンジンに使用される触媒に使用される。
【0106】
【表2】
【0107】
これらの触媒系、すなわち、SCR、DOC、DPF、SDPF、CDPF、LNT、PNA及びASCは、互いに独立して、異なる寸法及び形態を有する1つ以上のモノリスから構成することができる。
【0108】
本発明の一実施形態では、触媒基材モノリスは、自動車の燃焼排気ガスの処理に使用するための、NOの変換のためのSCR触媒活性材料を含み、NOの変換のためのSCR触媒活性材料は、本発明によるゼオライトである。
【0109】
主に希薄燃焼エンジンによって駆動される車両の排出物は、粒子排出物に加えて、特に一次排出物、すなわち一酸化炭素CO、炭化水素HC、及び窒素酸化物NOを含有する。最大15体積%の比較的高い酸素含有量に起因して、一酸化炭素及び炭化水素は、酸化によって無害になり得るが、窒素酸化物を還元して窒素にするのは、はるかに困難である。
【0110】
SCR触媒活性材料は、例えば、固体昇華によって得ることができる。この目的のために、ゼオライトと、遷移金属塩との、好ましくは銅若しくは鉄塩との、又は銅塩と鉄塩との混合物との乾燥した完全混合物が、「固体イオン交換」で上述したように作製される。次いで、混合物を550~900℃の温度に加熱し、それにより遷移金属塩が金属(例えば、銅若しくは鉄)に、又は金属イオン(例えば、銅若しくは鉄イオン)に分解する。続いて、その混合物を、それぞれのゼオライト骨格型材料中への銅の固体昇華を達成するのに十分な温度及び時間、加熱する。
【0111】
次いで、このようにして得られた粉末を水に分散させ、バインダーと混合する。好適なバインダーは、Al、Zr、Ti、又はSi、例えばベーマイト及びシリカゲルの酸化物に基づく。その後、水、バインダー、及び小細孔ゼオライト材料を含むこの混合物は、それぞれ撹拌又は均質化するだけでよく、担体基材をコーティングするためにコーティング懸濁液として直接適用することができる。コーティング懸濁液は、以下、「ウォッシュコート」と称する。
【0112】
代替的な実施形態では、本発明によるSCR触媒活性材料は、「液体イオン交換」で上述したように、水溶性遷移金属塩、好ましくは銅若しくは鉄塩、又はこれらの混合物を水に添加し、続いてこの塩溶液をゼオライト粉末に添加することによって製造することができる。特に好適な銅塩は、酢酸銅である。この液体イオン交換後、このようにして得られたゼオライト骨格型材料を含有する遷移物を次いで水に分散させ、バインダーと混合して、上述のウォッシュコートを形成する。
【0113】
典型的には、担体基材上のウォッシュコート荷重は、120~250g/Lの範囲である。
【0114】
本発明によるSCR触媒活性材料のいくつかの実施形態では、SCR触媒は、担体基材上のコーティングの形態で、すなわち、担体基材上のウォッシュコートとして存在する。担体基材は、それぞれ、いわゆるフロースルー基材又はウォールフローフィルタであることができる。
【0115】
いずれの担体基材も、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、コージライト、金属又は金属合金などの不活性材料からなり得る。かかる担体基材は、当業者には周知であり、市場で入手可能である。
【0116】
他の実施形態では、担体基材は、それ自体、触媒活性であってもよく、触媒活性材料、例えばSCR触媒活性材料を含むことができる。この目的に好適なSCR触媒活性材料は、基本的に、当業者に既知の全ての材料、例えば、混合酸化物に基づく触媒活性材料、又は銅交換ゼオライト化合物に基づく触媒活性材料である。バナジウム、チタン、及びタングステンの化合物を含む混合酸化物は、この目的に特に好適である。
【0117】
触媒活性材料に加えて、これらの担体基材はマトリックス成分を含む。触媒基材の製造のために他の方法で使用される全ての不活性材料は、この文脈において、マトリックス成分として使用することができる。例えば、シリケート、酸化物、窒化物、又は炭化物であり、特に好ましくは、マグネシウムアルミニウムシリケートである。
【0118】
本発明によるSCR触媒の他の実施形態では、触媒それ自体が、担体基材の一部を形成し、例えばフロースルー基材又はウォールフローフィルタの一部として形成する。かかる担体基材は、上記マトリックス成分を更に含む。
【0119】
本発明によるSCR触媒活性材料を含む担体基材は、排気ガス浄化の際に使用することができる。あるいは、それらは、触媒活性材料、例えばSCR触媒活性材料でコーティングすることができる。これらの材料がSCR触媒活性を示す限りは、上記のSCR触媒活性材料は好適な材料である。
【0120】
一実施形態では、触媒活性担体材料は、10~95重量%の少なくとも1つの不活性マトリックス成分と5~90重量%の触媒活性材料とを混合し、続いて既知のプロトコルに従ってその混合物を押し出すことによって製造される。既に上記したように、触媒基材の製造に通常使用される不活性材料を、この実施形態ではマトリックス成分として使用することができる。好適な不活性マトリックス材料は、例えば、シリケート、酸化物、窒化物、及び炭化物であり、特に好ましくはマグネシウムアルミニウムシリケートである。このようなプロセスによって得られる触媒活性担体材料は、「押出触媒基材モノリス」として知られている。
【0121】
不活性担体基材上又は単独で触媒活性である担体基材上への触媒活性触媒の適用、並びに担体基材上への触媒活性コーティングの適用(当該担体基材は本発明による触媒を含む)は、当業者に既知の製造プロセスに従って、例えば、広く使用されているディップコーティング、ポンプコーティング、及び吸引コーティング、その後の熱的後処理(焼成)によって、実施することができる。
【0122】
当業者は、ウォールフローフィルタの場合、それらの平均孔径及び本発明による触媒の平均粒径は、このようにして得られたコーティングがウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔質壁上に配置される(オンウォールコーティング)ように、互いに調整できることを知っている。しかしながら、平均孔径及び平均粒径は、本発明による触媒がウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔質壁内に配置されるように、互いに調整されることが好ましい。この好ましい実施形態では、細孔の内面は、コーティングされる(インウォールコーティング)。この場合、本発明による触媒の平均粒径は、ウォールフローフィルタの細孔内に入り込むことができる程十分に小さいものである必要がある。
【0123】
本発明による触媒は、希薄燃焼エンジン、特にディーゼルエンジンの排気浄化に有利に使用され得る。それらは、排気ガス中に含まれる窒素酸化物を無害な化合物である窒素及び水に変換する。
【0124】
一般的に知られているディーゼルエンジン用の排気ガス浄化システムは、多くの場合、排気ガスの経路において、一酸化窒素及び炭化水素、並びに任意に一酸化窒素に関して酸化機能を有する酸化触媒(DOC)と、前述の選択触媒還元型触媒(SCR)と、を配置することによって形成され、尿素水溶液若しくはアンモニア水溶液又はガス状アンモニアを供給するための噴霧手段が、前述の酸化触媒の下流かつ前述の選択接触還元型触媒の上流に配置されることを特徴としている。当業者は、DOC触媒がまた、受動NOx吸着触媒(passive NOx adsorber catalyst、PNA)又はNO収蔵触媒(NO storage catalyst、NSC)で置き換えられてもよく、これらは、それぞれ、低温で排気ガスからNOを収蔵し、かつ高温でNOxを熱的に脱離させることができる(PNA)か、又はリッチな排気ガス(ラムダ<1)のような還元体若しくは燃料のような他の還元剤によってNOを直接還元することができる(NSC)ことを知っている。PNA又はNSC触媒はまた、好ましくは、一酸化炭素及び炭化水素の酸化、並びに任意に一酸化窒素の酸化のための触媒機能も含有する。更に、煤煙を除去するためのディーゼル微粒子フィルタ(DPF)は、しばしば、DOC(又はNSC)触媒及びSCR触媒と共にシステム内に配置される。これらの配置では、可燃性粒子成分はDPF上に堆積され、そこで燃焼される。かかる配置は、例えば、欧州特許第1992409(A1)号に開示されている。かかる触媒の広く使用されている配置は、例えば(上流から下流まで):
(1)DOC+(NH)+SCR
(2)DOC+DPF+(NH)+SCR
(3)DOC+(NH)+SCR+DPF
(4)DOC+(NH)+SCR+DOC+DPF
(5)DOC+(NH)+SDPF+(NH opt)+SCR
(6)DOC+CDPF+(NH)+SCR
(7)(NH)+SCR+DOC+CDPF(NH opt.)+SCR
(8)(NH)+SCR+DOC+SDPF(NH opt.)+SCR
(9)(NH)+SCR+ASC
(10)DOC+(NH)+SCR+SDPF+(NH opt.)+SCR
(11)DOC+(NH)+SDPF+SCR+(NH opt.)+SCR
【0125】
上記例(1)~(11)において、(NH)は、尿素水溶液、アンモニア水溶液、カルバミン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム又はSCR反応を介してNOを選択的に還元する別の還元剤が噴霧によって還元剤として供給される位置を表している。自動車の排気ガス浄化システムにおけるかかる尿素化合物又はアンモニア化合物の供給は、当技術分野において良く知られている。実施例5、7、8、10及び11における(NH opt.)は、尿素又はアンモニア化合物の第2の供給源が任意であることを意味する。本発明による高熱安定性ゼオライトを含有する触媒は、好ましくはエンジンに近接して、又はDPFに近い位置に配置されることが好ましく、これは、ここでは温度がシステム内で最高であるためである。好ましくは、本発明のゼオライト材料は、システム10及び11のようにフィルタに密接に配置されたSDPF又は触媒上で使用され、ここで、1つのSCR触媒は、これらの2つの触媒の間に追加のNHを添加することなく、SDPFのすぐ上流又は下流に位置している。また、エンジンに密接に結合されたシステム7~9の第1のSCR触媒は、本発明の好ましい実施形態である。
【0126】
したがって、本発明は、更に、排気ガスを本発明による触媒上に通すことを特徴とする、希薄燃焼エンジンの排気ガスを浄化するための方法に言及する。希薄燃焼エンジンは、一般に酸素リッチ燃焼条件下で運転されるディーゼルエンジンであるが、希薄(すなわち、ラムダ>1を有する酸素リッチ雰囲気)で部分的に運転されるガソリンエンジンである。このようなガソリンエンジンは、例えば、希薄なGDIエンジン又はガソリンエンジンであり、これらは、コールドスタートのようなエンジンの特定の動作点又は燃料カットイベント中のみ希薄動作を使用する。本発明によるゼオライトの高い熱安定性により、これらのゼオライトは、ガソリンエンジンの排気システムにおいても使用され得る。この場合、本発明によるPNA、SCR、又はASC触媒は、3種類の触媒(three way catalyst、TWC)又はガソリン微粒子フィルタ(gasoline particulate filter、GPF)のようなガソリンエンジンからの排気排出を浄化するために典型的に使用される後処理構成要素と組み合わせて配置され得る。これらの場合、上述のシステムレイアウト1~11は、DOC触媒をTWC触媒に、及びDPF又はCDPFをGPFに置き換えることによって修正される。これらのシステムの全てにおいて、ガソリンエンジンは、TWC触媒上で動作中にアンモニアをその場で生成することができるため、アンモニアの投入は任意であり、これにより、SCR触媒の上流の尿素又はアンモニア若しくは別のアンモニア前駆体の注入は必要とされない場合がある。PNAがこれらのシステムで使用される場合、PNAは、好ましくは、早期の発熱を有するようにエンジンに近いシステム内の第1の触媒として配置されることが好ましい。PNAはまた、触媒の熱損傷を防止するために床下位置に位置してもよい。これらの位置では、排気温度は900℃を超えないように制御することができる。
【0127】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態では、還元剤としてアンモニアが使用される。必要とされるアンモニアは、例えば、上流窒素酸化物吸蔵触媒(「リーンNOトラップ」-LNT)によって微粒子フィルタの上流側の排気浄化システム内に形成され得る。この方法は「パッシブSCR」として知られている。
【0128】
あるいは、アンモニアを、適切な形態で、例えば、尿素、カルバミン酸アンモニウム、又はギ酸アンモニウムの形態で供給することができ、必要に応じて排気ガス流に添加することができる。広く普及している方法は、尿素水溶液と共に運び、必要に応じて上流インジェクターを介して本発明による触媒に投入する方法である。
【0129】
したがって、本発明はまた、希薄燃焼エンジンから放出される排気ガスを浄化するためのシステムにも言及し、そのシステムは、好ましくは担体基材上のコーティングの形態で又は担体基材の成分として本発明による触媒と、尿素水溶液のためのインジェクターと、を含み、そのインジェクターは、本発明の触媒の上流に配置されることを特徴としている。
【0130】
例えば、窒素酸化物が一酸化窒素と二酸化窒素との1:1混合物で存在する場合、又は両方の窒素酸化物の比が1:1である場合、アンモニアとのSCR反応がより急速に進行することは、SAE-2001-01-3625から知られる。希薄燃焼エンジンからの排気ガスは、一般に、二酸化窒素を超える過剰な一酸化窒素を含有するため、このSAEの論文は、酸化触媒によって二酸化窒素の量を増加させることを示唆している。本発明による排気ガス浄化プロセスは、標準的なSCR反応において、すなわち窒素酸化物の不在下においてだけではなく、急速なSCR反応において、すなわち一酸化窒素の一部が二酸化窒素に酸化されているときにも適用することができ、したがって、理想的には一酸化窒素と二酸化窒素の1:1混合物を提供する。
【0131】
したがって、本発明はまた、希薄燃焼エンジンからの排気ガスを浄化するためのシステムに関するものであり、そのシステムは、酸化触媒、尿素水溶液のためのインジェクター、及び本発明による触媒を、好ましくは、担体基材上のコーティングの形態で、又は担体基材の成分として含むことを特徴としている。
【0132】
本発明による排気ガス浄化システムの好ましい実施形態では、担体支持材料上に担持された白金が、酸化触媒として使用される。
【0133】
好適な材料として当業者に既知である白金及び/又はパラジウムのための任意の担体材料は、特許請求の範囲から逸脱することなく使用することができる。材料は、30~250m/g、好ましくは50~200m/g(DIN 66132により測定)のBET表面積を示す。好ましい担体基材材料は、アルミナ、シリカ、二酸化マグネシウム、チタニア、ジルコニア、セリア、及びこれらの酸化物のうちの少なくとも2つを含む混合物並びに混合酸化物である。特に好ましい材料は、アルミナ及びアルミナ/シリカ混合酸化物である。アルミナを使用する場合、好ましくは、例えば酸化ランタンによって安定化される。
【0134】
排気ガス浄化システムは、次の順序で配置され、すなわち、排気ガス浄化システムの流れ方向において、酸化触媒が最初に配置され、続いて尿素水溶液のためのインジェクター、最後に本発明による触媒が配置される。
【0135】
当業者は、排気ガス浄化システムが追加の触媒を含み得ることを知っている。微粒子フィルタは、例えば、DOCのいずれかと結合されてもよく、したがって、CDPFを形成するか、又はSCRと結合されて、したがってSDPFを形成することができる。
【0136】
本発明の一実施形態では、排気ガス浄化システムは、SCR触媒でコーティングされた微粒子フィルタを含み、SCR触媒活性材料は、本発明による結晶性アルミノシリケートゼオライトである。
【0137】
本発明による結晶性アルミノシリケートゼオライトは、フィルタ壁の壁(ウォールフロー基材)又はフィルタ壁の表面上にコーティングすることができる。また、インウォールコーティング及びオンウォールコーティングの組み合わせも可能である。ウォールフローフィルタは、本発明によるゼオライトを用いて、フィルタの全長にわたって、又は入口から部分的にのみ、又は出口からのみコーティングされ得る。このようなフィルタにゼオライトを適用する方法は、国際公開第2017/178576(A1)号、国際公開第2018/029330(A1)号及び国際公開第2018/054928(A1)号に開示されている。これらの方法は、参照により組み込まれる。
【0138】
更に、排気ガス浄化システムは、PNAを含んでもよい。PNAは、低温でNOを吸着するNO吸蔵デバイスである。排気温度が上昇すると、収蔵されたNOは、下流触媒、すなわち、アンモニア、通常は尿素水溶液の形態であるSCR触媒、又は活性なバリウム系NSC上で窒素に還元される。NSCは、NO吸蔵触媒である。
【0139】
いくつかのPNA型触媒では、貴金属とゼオライトとの組み合わせが、NO捕捉に使用される。貴金属は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、及びこれらの混合物から選択される白金族金属である。貴金属は、パラジウム、白金、及びこれらの混合物から選択され、より好ましくは、貴金属はパラジウムである。白金族金属又は混合物の総量は、それぞれの白金族金属として計算され、かつゼオライトの総重量に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは0.05~5重量%、更により好ましくは0.1~3重量%の濃度で存在する。好ましい実施形態では、白金族金属はパラジウムであり、これは、Pdとして計算され、かつゼオライトの総重量に基づいて、0.5~5重量%の濃度で存在する。このようなPNAでは、NO捕捉効率は、Pdの核性及び酸化状態によって影響を受ける。Pdの分散及び低酸化状態は、NO吸着を促進する。NO放出温度はゼオライト構造に依存し、小細孔ゼオライトに関しては高く、大細孔ゼオライトに関しては最低である。
【0140】
本発明の一実施形態では、排気浄化システムは、PNA触媒を含み、PNA触媒活性材料は、本発明による結晶性アルミノシリケートゼオライトと、パラジウム、白金、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの貴金属とを含む。
【0141】
白金族金属は、上記の好適なPGM前駆体塩のイオン交換を介して、又はゼオライトの溶液滴下含浸処理を介して、又はPGM塩溶液を水性ウォッシュコートスラリーに注入することによって、PNAに導入され得る。当業者は、好適な貴金属前駆体塩が、それぞれの貴金属の硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、及びアミン型錯体であることを知っている。当業者は、請求項の範囲から逸脱することなく、この知識を適用することができる。
【0142】
排気ガス浄化システムは、アンモニア酸化触媒(ammonia oxidation catalyst、ASC)を更に含んでもよい。ASCが好ましくはSCRの下流に位置することは、認識可能な量のNHが動的駆動条件に起因してSCRを残すため、SCRの下流に位置することが、当業者には周知である。したがって、アンモニアも排出規制ガスであるため、SCRを出る余剰のアンモニアの変換は必須である。アンモニアの酸化は、主生成物としてNOの生成をもたらし、その結果、排気システム全体のNOの総変換に悪影響を与える。したがって、ASCは、SCRの下流に配置されて、追加のNOの放出を緩和することができる。ASC触媒は、SCR機能と主要NH酸化機能とを組み合わせている。ASCに入るアンモニアは、NOに部分的に酸化される。新たに酸化されたNO及びまだ酸化されていないASC内部NHは、その結果、通常のSCR反応スキームに続いてNと反応することができる。そうすることで、ASCは、それらを平行機構でNに変換することによって、微量のアンモニアを除去することができる。
【0143】
本発明の一実施形態では、排気浄化システムは、ASC触媒を含み、ASC触媒活性材料は、本発明による結晶性アルミノシリケートゼオライトと、白金、パラジウム、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの白金族金属とを含む。
【0144】
白金族金属は、ASC中の酸化触媒として使用され、ゼオライトはSCR機能に使用され得る。貴金属は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、及びこれらの混合物から選択される白金族金属である。貴金属は、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物から選択され、より好ましくは、貴金属は白金である。好ましい実施形態では、白金族金属は、前駆体塩の形態でウォッシュコートスラリーに添加され、担体モノリスに適用される。白金族金属又は、それぞれの白金族金属として計算され、かつウォッシュコート荷重の総重量に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは0.05~5重量%、更により好ましくは0.1~3重量%の濃度で存在する。好ましい実施形態では、白金族金属は白金であり、これは、Ptとして計算され、かつウォッシュコート荷重の総重量に基づいて、0.1~1重量%の濃度で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0145】
図1図16は、実施形態のSEM画像を示す。以下の略語を使用する。
HV=高真空
CBS=同心後方散乱検出器
WD=作動距離
mag=倍率
HFW=水平視野幅
全ての実施形態では、CBSを検出器として使用した。
【0146】
図1】実施形態1:AEIゼオライト(GV116)のSEM画像である。 最大水熱安定性:800℃ HV:1.00kV WD:4.6mm Mag:159960倍 HFW:1.87μm
図2】実施形態2:AEIゼオライト(MD155)のSEM画像である。 最大水熱安定性:850℃ HV:2.00kV WD:4.5mm Mag:12000倍 HFW:24.9μm
図3】実施形態3:AEIゼオライト(GV191)のSEM画像である。 最大水熱安定性:900℃ HV:2.00kV WD:4.6mm Mag:50000倍
図4】実施形態4:AEIゼオライト(GV198)のSEM画像である。 最大水熱安定性:900℃ HV:2.00kV WD:4.2mm Mag:24000倍
図5】実施形態5:AEIゼオライト(GV228)のSEM画像である。 最大水熱安定性:900℃ HV:2.00kV WD:4.9mm Mag:100000倍 HFW:2.98μm
図6】実施形態6:CHAゼオライト(ZS5-GH008)のSEM画像である。 最大水熱安定性:800℃ HV:2.00kV WD:4.4mm Mag:500000倍 HFW:5.97μm
図7】実施形態7:CHAゼオライト(ZS5-GH0087)のSEM画像である。 最大水熱安定性:850℃ HV:2.00kV WD:4.2mm Mag:60000倍 HFW:4.97μm
図8】実施形態8:CHAゼオライト(GV251)のSEM画像である。 最大水熱安定性:900℃ HV:2.00kV WD:4.6mm Mag:40000倍
図9】実施形態9:LEVゼオライト(MD101)のSEM画像である。 最大水熱安定性:700℃ HV:1.00kV WD:5.2mm Mag:60000倍 HFW:4.97μm
図10】実施形態10:LEVゼオライト(GV118)のSEM画像である。 最大水熱安定性:750℃ HV:1.00kV WD:5.6mm Mag:80102倍 HFW:3.73μm
図11】実施形態11:LEVゼオライト(GV175)のSEM画像である。 最大水熱安定性:900℃ HV:1.00kV WD:4.6mm Mag:5000倍 HFW:59.7μm
図12】実施形態12:ERI/CHAゼオライト(ZS5-GH0023)のSEM画像である。 最大水熱安定性:800℃ HV:2.00kV WD:4.2mm Mag:50000倍 HFW:5.97μm
図13】実施形態13:ETLゼオライト(SK120)のSEM画像である。 最大水熱安定性:850℃ HV:1.00kV WD:4.7mm Mag:79996倍
図14】実施形態16:KFIゼオライト(GV009)のSEM画像である。 最大水熱安定性:800℃ HV:1.00kV WD:5.4mm Mag:28775倍 HFW:10.4μm
図15】実施形態17:UFIゼオライト(GV051)のSEM画像である。 最大水熱安定性:800℃ HV:2.00kV WD:3.9mm Mag:100000倍 HFW:2.98μm
図16】実施形態18:AFXゼオライト(SPSS076)のSEM画像である。 最大水熱安定性:800℃ HV:2.00kV WD:5.2mm Mag:100000倍 HFW:2.98μm
図17】実施形態1~18のプロトン含有量に対する水熱安定性である。
図18】実施形態1~18のシラノールプロトン(Si-OH)及び水熱安定性である。
図19】実施形態1~18のアルミノールプロトン(Al-OH)及び水熱安定性である。
図20】実施形態1~18のブレンステッド酸点(BAS)及び水熱安定性である。
【発明を実施するための形態】
【0147】
実施形態
実施形態1:AEIゼオライト(GV116)の合成
37.1 SiO:1 Al:5.6 SDA:32.2 NaOH:1115 HOの組成を有する合成ゲルを、19.48gのN,N-ジメチル,3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(HO中18重量%)を、2.21gのNaOHペレット、44.38gの脱イオンHO、27.51gのケイ酸ナトリウム(Merck、7.5~8.5重量%のNaO、25.5~28.5重量%のSiO)及び2.19gのCBV-500(Zeolyst)と、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で20分間撹拌した後、静的条件下、135℃で7日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、12.3のSARを有するAEI骨格型を有する。
【0148】
実施形態1のSEM画像を、図1に示す。
【0149】
実施形態2:AEIゼオライト(MD155)の合成
79.4 SiO:1 Al:13.8 SDA:44 NaOH:2216 HOの組成を有する合成ゲルを、24.1gのN,N-ジメチル,3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(HO中18重量%)を、0.128gのNaOHペレット、37.8gの脱イオンHO、32.5gのケイ酸ナトリウム(Merck、7.5~8.5重量%のNaO、25.5~28.5重量%のSiO)及び1.11gのCBV-500(Zeolyst)と、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で20分間撹拌した後、静的条件下、135℃で7日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、15.6のSARを有するAEI骨格型を有する。
【0150】
実施形態2のSEM画像を、図2に示す。
【0151】
実施形態3:AEIゼオライト(GV191)の合成
79.4 SiO2:1 Al:13.8 SDA:44.1 NaOH:3835 HOの組成を有する合成ゲルを、13.02gのN,N-ジメチル,3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(HO中20.46重量%)を、0.079gのNaOHペレット、60.49gの脱イオンHO、20gのケイ酸ナトリウム(Merck、7.5~8.5重量%のNaO、25.5~28.5重量%のSiO)及び0.684gのCBV-500(Zeolyst)と、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で20分間撹拌した後、静的条件下、135℃で7日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、17のSARを有するAEI骨格型を有する。
【0152】
実施形態3のSEM画像を、図3に示す。
【0153】
実施形態4:AEIゼオライト(GV198)の合成
79.4 SiO:1 Al:13.8 SDA:44.1 NaOH:148 グリセロール:3835 HOの組成を有する合成ゲルを、13.02gのN,N-ジメチル,3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(HO中20.46重量%)を、0.079gのNaOHペレット、60.49gの脱イオンHO、20gのケイ酸ナトリウム(Merck、7.5~8.5重量%のNaO、25.5~28.5重量%のSiO)、0.684gのCBV-500(Zeolyst)、及び16.5gのグリセロール(Sigma-Aldrich)と、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で20分間撹拌した後、静的条件下、135℃で7日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、18.7のSARを有するAEI骨格型を有する。
【0154】
実施形態4のSEM画像を、図4に示す。
【0155】
実施形態5:AEIゼオライト(GV228)の合成
79.3 SiO2:1 Al:13.8 SDA:44.0 NaOH:2450 HOの組成を有する合成ゲルを、20.33gのN,N-ジメチル,3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(HO中20.46重量%)を、0.12gのNaOHペレット、47.24gの脱イオンHO、31.24gのケイ酸ナトリウム(Merck、7.5~8.5重量%のNaO、25.5~28.5重量%のSiO)及び1.07gのCBV-500(Zeolyst)と、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で20分間撹拌した後、静的条件下、135℃で7日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、11.6のSARを有するAEI骨格型を有する。
【0156】
実施形態5のSEM画像を、図5に示す。
【0157】
実施形態6:CHAゼオライト(ZS5-GH0088)の合成
撹拌しながら、37.9gのテトラエチレンペンタミン(0.2モル、Sigma-Aldrich)を、200gのHO中の50gのCuSO・5HO(0.2モル、Sigma-Aldrich)からなる溶液(1M溶液)に添加することによって、銅-テトラエチレンペンタミン錯体(Cu-TEPA)を合成した。その溶液を、国際公開第20170/80722(A1)号に記載されるように、室温で2時間撹拌し続けた。
【0158】
SAR=30(Si/Al=15)を有する62gのゼオライトY(CBV-720、Zeolyst International)を、335mLの2.0M水酸化ナトリウム溶液中に室温で懸濁した。この溶液に、1MのCu-TEPA溶液を31mL添加した。この懸濁液を15分間撹拌し、次いで密閉したPPボトル中で、95℃で48時間静置し、これをアルミノシリケート溶液1と称する。
【0159】
アルミノシリケート溶液2を以下のように調製した。5.79gのアルミニウム-トリ-sec-ブトキシド(Fluka)を、撹拌しながら、PPボトル中の256.87gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35重量%、Sigma-Aldrich)に添加した。この混合物を機械的に10分間撹拌した。この溶液に、112.81gのLudox AS-40(Sigma-Aldrich)を撹拌しながら滴加した。5.19gの塩化カリウム(LabChem)をゆっくりと添加した。この溶液は、室温で、密閉したPPボトル中で24時間撹拌したままにし、液体ゲルを形成させた。このゲルを、撹拌せずに室温で更に48時間エージングさせた。エージング工程後、アルミノシリケート溶液2を、アルミノシリケート溶液1に室温で一度に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわち1 SiO/0.025 Al/0.39 NaOH/0.041 KCl/0.02 Cu-TEPA/0.36テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)/20.75 H0を有する。得られた混合物を15分間激しく撹拌することによって均質化し、その後、ステンレス鋼製オートクレーブに移した。この混合物を、動的条件下、150℃で4日間加熱した。固体生成物を、濾過し、洗浄し、60℃で16時間乾燥させることにより回収した。そのゼオライトを550℃まで1℃/分の温度勾配で8時間焼成した。
【0160】
実施形態6のSEM画像を、図6に示す。
【0161】
実施形態7:CHAゼオライト(ZS5-GH0087)の合成
撹拌しながら、37.9gのテトラエチレンペンタミン(0.2モル、Sigma-Aldrich)を、200gのHO中の50gのCuSO・5HO(0.2モル、Sigma-Aldrich)からなる溶液(1M溶液)に添加することによって、銅-テトラエチレンペンタミン錯体(Cu-TEPA)を合成した。この溶液を、国際公開第2017/080722(A1)号に記載のように室温で2時間撹拌し続けた。
【0162】
SAR=30(Si/Al=15)を有する61.99gのゼオライトY(CBV-720、Zeolyst International)を、335mLの2.0M水酸化ナトリウム溶液中に室温で懸濁した。この溶液に、1MのCu-TEPA溶液を31mL添加した。この懸濁液を15分間撹拌し、次いで密閉したPPボトル中で、95℃で48時間静置し、これをアルミノシリケート溶液1と称する。
【0163】
アルミノシリケート溶液2を以下のように調製した。5.80gのアルミニウム-トリ-sec-ブトキシド(Fluka)を、撹拌しながら、PPボトル中の256.92gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35重量%、Sigma-Aldrich)に添加した。この混合物を機械的に10分間撹拌した。この溶液に、112.84gのLudox AS-40(Sigma-Aldrich)を撹拌しながら滴加した。この溶液は、室温で、密閉したPPボトル中で24時間撹拌したままにし、液体ゲルを形成させた。このゲルを、撹拌せずに室温で更に48時間エージングさせた。エージング工程後、アルミノシリケート溶液2を、アルミノシリケート溶液1に室温で一度に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわち1 SiO/0.025 Al/0.39 NaOH/0.02 Cu-TEPA/0.36 TEAOH/20.75 H0を有する。得られた混合物を、激しく撹拌して15分間均質化し、その後、ステンレス鋼オートクレーブに移した。この混合物を、動的条件下、150℃で4日間加熱した。固体生成物を、濾過し、洗浄し、60℃で16時間乾燥させることにより回収した。そのゼオライトを550℃まで1℃/分の温度勾配で8時間焼成した。
【0164】
実施形態7のSEM画像を、図7に示す。
【0165】
実施形態8:CHAゼオライト(GV251)の合成
撹拌しながら、37.9gのテトラエチレンペンタミン(0.2モル、Sigma-Aldrich)を、200gのHO中の50gのCuSO・5HO(0.2モル、Sigma-Aldrich)からなる溶液(1M溶液)に添加することによって、銅-テトラエチレンペンタミン錯体(Cu-TEPA)を合成した。この溶液を、国際公開第2017/080722(A1)号に記載のように室温で2時間撹拌し続けた。
【0166】
22.74gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35重量%、Sigma-Aldrich)をガラスビーカーに添加した。この溶液に、8.51gのLudox AS-40(Sigma-Aldrich)を撹拌しながら滴加した。その後、3.03gのヘキサメトキシニウムブロミド(Acros)、29.4gの0.21M塩化カリウム溶液(LabChem)、30gの1.13M水酸化ナトリウム溶液(Fisher Scientific)、1.79gのCBV-500(Zeolyst)、及び2.75gの1M Cu-TEPA溶液を、撹拌しながらゆっくりと添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.043 Al/0.46 NaOH/0.08 KCl/0.04 Cu-TEPA/0.73 TEAOH/0.11 RBr/62 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。得られた混合物を10分間激しく撹拌しながら均質化し、その後、動的条件下、160℃で168時間加熱した。固体生成物を、遠心分離により回収し、脱イオンHOで洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、17.2のSARを有するCHA骨格型を有する。
【0167】
実施形態8のSEM画像を、図8に示す。
【0168】
実施形態9:LEVゼオライト(MD101)の合成
組成309 SiO:1 Al:17.5 SDA:7.0 NaOH:186 HOを有する合成ゲルを、2.13gの脱イオンHOを、1.31gのNaCl(Fisher Scientific)、14.71gの水酸化コリン(HO中46重量%)及び6.9gのCBV-720(Zeolyst)と、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で20分間撹拌した後、静的条件下、125℃で7日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、16.8のSARを有するLEV骨格型を有する。
【0169】
実施形態9のSEM画像を、図9に示す。
【0170】
実施形態10:LEVゼオライト(GV118)の合成
組成20.3 SiO:1 Al:10.1 SDA:1 NaOH:101 HOを有する合成ゲルを、14.9gのジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(Aldrich、HO中40重量%)を、0.2gのNaOHペレット、0.77gの水酸化アルミニウム(BDH)及び6gのシリカ(Cab-O-Sil M5)と、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で20分間撹拌した後、動的条件下、150℃で3日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、18.7のSARを有するLEV骨格型を有する。
【0171】
実施形態10のSEM画像を、図10に示す。
【0172】
実施形態11:LEVゼオライト(GV175)の合成
組成27.5 SiO:1 Al:8.8 SDA:3.4 NaOH:1090 HOを有する合成ゲルを、25.32gのLudox SM-30(Aldrich)を、6.31gの1-アダマンチルアミン(97重量%、Aldrich)、68.48gの圧イオンHO、0.87gのアルミン酸ナトリウム(Riedel-de Haen、41%のNaO、54%のAl)、及び3.94gの脱イオンHO中0.16gのNaOHと、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で30分間撹拌した後、動的条件下、180℃で6日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、23.6のSARを有するLEV骨格型を有する。
【0173】
実施形態11のSEM画像を、図11に示す。
【0174】
実施形態12:ERI/CHAゼオライト(ZS5-GH0023)の合成
撹拌しながら、37.9gのテトラエチレンペンタミン(0.2モル、Sigma-Aldrich)を、200gのHO中の50gのCuSO・5HO(0.2モル、Sigma-Aldrich)からなる溶液(1M溶液)に添加することによって、銅-テトラエチレンペンタミン錯体(Cu-TEPA)を合成した。この溶液を、国際公開第2017/080722(A1)号に記載のように室温で2時間撹拌し続けた。
【0175】
SAR=30(Si/Al=15)を有する310gのゼオライトY(CBV-720,Zeolyst International)を、1674mLの2.0M水酸化ナトリウム溶液中に室温で懸濁した。この溶液に、1MのCu-TEPA溶液を155mL添加した。この懸濁液を15分間撹拌し、次いで密閉したPPボトル中で、95℃で48時間静置し、これをアルミノシリケート溶液1と称する。アルミノシリケート溶液2を以下のように調製した。29.09gのアルミニウム-トリ-sec-ブトキシド(Fluka)を、撹拌しながら、PPボトル中の1284.4gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35重量%、Sigma-Aldrich)に添加した。この混合物を機械的に10分間撹拌した。この溶液に、564.20gのLudox AS-40(Sigma-Aldrich)を、撹拌しながら滴加し、その後170.60gの臭化ヘキサメトニウム(Acros)を一度に添加した。別の25.83gの塩化カリウム(LabChem)この溶液は、室温で、密閉したPPボトル中で24時間撹拌したままにし、液体ゲルを形成させた。このゲルを、撹拌せずに室温で更に48時間エージングさせた。
【0176】
エージング工程後、アルミノシリケート溶液2を、アルミノシリケート溶液1に室温で一度に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわち1 SiO/0.025 Al/0.39 NaOH/0.041 KCl/0.02 Cu-TEPA/0.36 TEAOH/0.18 RBr/20.75 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。得られた混合物を15分間激しく撹拌することによって均質化し、その後、ステンレス鋼製オートクレーブに移した。この混合物を、動的条件下、150℃で4日間加熱した。固体生成物を、濾過し、洗浄し、60℃で16時間乾燥させることにより回収した。そのゼオライトを750℃まで1℃/分の温度勾配で8時間焼成した。
【0177】
実施形態12のSEM画像を、図12に示す。
【0178】
実施形態13:ETLゼオライト(SK120)の合成
組成30 SiO:1 Al:5.1 SDA:11.7 RbOH:1394 HOを有する合成ゲルを、0.52gの水酸化アルミニウム(BDH)を、8mLのRbOH溶液(HO中50重量%)、6gのシリカ(Cab-O-Sil M5)、75gの脱イオンHO、及び6.2gのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)(HO中25重量%)と、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で30分間撹拌した後、動的条件下、180℃で5日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、15.6のSARを有するETL骨格型を有する。
【0179】
実施形態13のSEM画像を、図13に示す。
【0180】
実施形態14:ESVゼオライト(SKES009)の合成
25 SiO2:1 Al:6.2 SDA:20.6 NaOH:999 HOの組成を有する合成ゲルを、5.81gのSDA(N,N-ジメチルピペリジニウムブロミドを、1.20gのNaOHペレット、26.62gのケイ酸ナトリウム(Merck、7.5~8.5重量%のNaO、25.5~28.5重量%のSiO)、3.19gの硫酸アルミニウム(Vel、Al(SO・18HO)、及び68.89gのHOと、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で20分間撹拌した後、静的条件下、170℃で6日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、17.3のSARを有するESV骨格型を有する。
【0181】
実施形態15:DDRゼオライト(GV176)の合成
組成30.5 SiO:1 Al:12.9 SDA:3.8 NaOH:1528 HOを有する合成ゲルを、20.37gのLudox SM-30(Aldrich)を、6.71gの1-アダマンチルアミン(97重量%、Aldrich)、73.07gの脱イオンHO、0.63gのアルミン酸ナトリウム(Riedel-de Haen、41%のNaO、54%のAl)、及び4.23gの脱イオンHO中0.17gのNaOHと、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で30分間撹拌した後、動的条件下、180℃で6日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、29.1のSARを有するDDR骨格型を有する。
【0182】
実施形態16:KFIゼオライト(GV009)の合成
組成11 SiO:1 Al:5.2 K:0.1 Sr:152 HOを有する合成ゲルを、3.96gの水酸化アルミニウム(BDH)、7.46gのKOH(VWR)、12.54gの脱イオンHO、41.98gのLudox HS-40(Aldrich)、及び31.92gの脱イオンHO中に溶解した0.52gのSr(NO(Acros)を、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で20分間撹拌した後、静的条件下、150℃で7日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、8.2のSARを有するKFI骨格型を有する。
【0183】
実施形態16のSEM画像を、図14に示す。
【0184】
実施形態17:UFIゼオライト(GV051)の合成
16.2 SiO2:1 Al:16.4トリエタノールアミン(TEA):2.2トリメチルアルミニウム(TMA):361 HOの組成を有する合成ゲルを、17.43gのTEAOH(HO中35重量%、Aldrich)、1.25gのアルミニウム-sec-ブトキシド(Fluka)、6.16gのLudox As-40(Aldrich)、及び0.21gの脱イオンHOの混合物を最初に調製することによって作製し、これを、静的条件下、95℃で18時間加熱する。その後、撹拌しながら、1.16gの脱イオンHO中の0.6gのTMAClを第1の混合物に添加する。ゲルを室温で30分間撹拌した後、静的条件下、150℃で4日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、17.4のSARを有するUFI骨格型を有する。
【0185】
実施形態17のSEM画像を、図15に示す。
【0186】
実施形態18:AFXゼオライト(SPSS076)の合成
30.8 SiO:1 Al:2.9 SDA:23.4 Na:939 HOの組成を有する合成ゲルを、48.86gの脱イオンHO、1.32gのNaOHペレット、20.95gのケイ酸ナトリウム(Merck、7.5~8.5重量%のNaO、25.5~28.5重量%のSiO)、2.09gのCBV-500(Zeolyst)、及び5.05gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]-オクタン-C4-diquatジブロミドを、撹拌しながら混合することによって調製した。ゲルを室温で40分間撹拌した後、動的条件下、150℃で5日間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で16時間乾燥させた。生成されたゼオライトは、8.9のSARを有するAFX骨格型を有する。
【0187】
実施形態18のSEM画像を、図16に示す。
【0188】
実施形態19:プロトン含有量の決定
作製されたゼオライトを、1℃/分の加熱速度で、550℃で8時間空気中で焼成した。その後、焼成されたゼオライトを0.5MのNHCl溶液(サンプル1g当たり100mL)中に懸濁し、還流条件下で4時間維持した。この手順を2回繰り返し、続いて空気中60℃で16時間の乾燥工程を行う。その後、ゼオライトを、1℃/分の加熱速度で、650℃で8時間空気中で焼成した。最後に、サンプルを4mmのジルコニア固体NMRローターに充填し、真空下(1mbar)、90℃で30分間、200℃で16時間乾燥させた。Nガスでフラッシングした後、ローターを密封した。
【0189】
H MAS NMR実験を、4mm H/X/Yマジック角スピン(MAS)固体プローブを備えた500MHz分光計(11.7Tの静磁場)上で、295Kで実施した。サンプルを10kHzで回転させた。Hスペクトルは、π/2フリップ角と共に2.95μ秒のパルス長及び5秒の繰り返し遅延を使用して記録した。アダマンタンを、TMSを基準とする化学シフトについての外部二次基準として使用した。Hスペクトルを、Bruker Topspin 3.5ソフトウェアを使用して、20~-8ppm(2~-8ppm)で積分した。積分面積の絶対定量化を、M Houlleberghs,A Hoffmann,D Dom,CEA Kirschhock,F Taulelle,JA Martens and E Breynaert:「Absolute Quantification of Water in Microporous Solids with H Magic Angel Spinning NMR and Standard Addition」,Anal Chem 2017,89,6940-6943」に記載されるように実施した。
【0190】
実施形態20:水熱安定性の決定
作製されたゼオライトを、1℃/分の加熱速度で、550℃で8時間空気中で焼成した。0.5MのNHCl溶液は、13.4gのNHCl(MP Biomedicals LLC)を500mLの脱イオンHOに溶解させることによって作製する。焼成されたゼオライトを0.5MのNHCl溶液中に懸濁し(100mL中1gのゼオライト)、撹拌しながら還流条件下で4時間加熱し、続いて遠心分離する。イオン交換と遠心分離の組み合わせを3回行った。固体生成物を、遠心分離により回収し、脱イオン水で洗浄し、60℃で24時間乾燥させた。300mLの脱イオン水及び0.28gの酢酸銅(Sigma-Aldrich)の溶液を、PPボトル中で調製した。3グラムのゼオライトをこの溶液に添加する。懸濁液を室温で撹拌し、閉じたPPボトル内で20時間にわたって実施する。その後、その銅交換形態のゼオライトを、遠心分離によって回収する。この手順を2回繰り返す。次いで、最終材料を遠心分離により脱イオン水で洗浄し、60℃で48時間乾燥させる。水熱安定性は、Cu担持ゼオライト触媒ペレットを、空気流(2mL/分)下の石英管内で、5℃/分の加熱速度で12体積%の絶対湿度で3時間、900℃に加熱することによって決定した。冷却は、40mL/分の乾燥窒素流下で実施した。この実験の前に、粉末を125~250μmの粒径にペレット化して、石英管の圧力の蓄積を回避した。
【0191】
プロトン含有量-分解
スペクトルを分解するとき、ベースラインは、Topspin 3.5ソフトウェアに組み込まれた三次スプライン補間法によって補正される。分解は、ローレンツ曲線を使用して、DmFitソフトウェア(バージョン「dmfit/release #20180327」)を使用して実施される。1~2ppmの間に適合された信号は、シラノール種として定義され、2~3.5ppmの信号は、アルミノール種又は他の欠陥関連部位として定義され、3.5~5ppmの信号は、ブレンステッド酸点として定義される。
【0192】
Si-OH領域の絶対定量化は、H MAS NMR検出と水の標準添加法との組み合わせにより確実にされた。乾燥スペクトルを使用して、全スペクトル表面積及びSi-OH領域表面積を得た。次いで、既知の量の水を充填されたローターに添加し、その後、キャップされたローターを333Kで一晩平衡化して、サンプル全体にわたる水の均質な分布を確保することによって、ローター内の乾燥サンプルを既知量の水で水和させた。水添加(x)に対してプロットされた(脱)水ゼオライトサンプル(y)の積分H NMR信号を示すサンプル依存性線形相関関数(y=Ax+B)を得た。絶対Si-OH含有量は、サンプルの重量及びスキャン数について補正された、勾配A及びSi-OH表面積を使用して導き出すことができる。プローブの調整及び整合は、サンプルごとに線形相関関数を取得するときの精度及び再現性を最大化するために、(脱)水状態間の同等のQ因子を確実にするために、ベクトルネットワークアナライザを使用して実施した(M Houlleberghs,A Hoffmann,D Dom,CEA Kirschhock,F Taulelle,JA Martens and E Breynaert:「Absolute Quantification of Water in Microporous Solids with H Magic Angel Spinning NMR and Standard Addition」,Anal Chem 2017,89,6940-6943」)。
【0193】
【表3】
【0194】
図17は、実施形態1~18のプロトン含有量に対する水熱安定性を示す。
【0195】
Cu含有量は、CuOとして計算される。
【0196】
【表4】
【0197】
全ての実施形態1~18は、それぞれのゲル組成を示す。表3において、ゲルのそれぞれの成分のモル量は、1molのSiOと称されている。
【0198】
SDA1は、それぞれの実施形態のゲル組成の最初に命名されたSDA(構造指向剤)であり、SDA2は、存在する場合、第2のものである。
【0199】
Me1は、最初に列挙された金属水酸化物Me(OH)のモル量を指す。実施形態1~18では、Me(OH)は、常にアルカリ金属水酸化物を扱った。したがって、Me1のモル量は、それぞれのアルカリ金属水酸化物のモル量と同一である。
【0200】
Me2は、2番目に列挙されたアルカリ又はアルカリ土類金属成分の金属のモル量を指す。
【0201】
RBrは、ヘキサメトニウムブロミドを表す。
【0202】
Cu含有量は、CuOとして計算される。
【0203】
実施形態21:NH-SRC触媒活性の決定
実施形態21に記載の900℃での水熱エージング後のNH-SCR活性を、実施形態3、5、8、13及び15からのゼオライトについて測定する(表2を参照されたい)。圧縮ゼオライト粉末からなる触媒ペレット(125~250μm)を、オンラインの反応生成物分析を備えている石英固定床管状連続流通反応器に充填する。最初に、触媒を、シミュレートした空気流条件下、すなわち触媒試験の最高温度である450℃において、5%O及び95%N下で、前処理する。前処理後、触媒温度を150℃に低下させる。NH-SCR性能を評価するための典型的なガス組成は、500ppmのNO、450ppmのNH、5%のO、2%のCO、2.2%のHOからなる。ガス時空間速度(GHSV)は、0.5cmの触媒床及び250mL/分のガス流で得られる30000h-1に固定される。温度は一定の温度勾配、50℃間隔で、150から450℃まで段階的に上昇させる。60~120分の等温期間が予測され、各温度プラトーにおいて反応生成物をサンプリングする。150℃への戻り点により試験中の触媒性能の劣化を検出することができる。
【0204】
【表5】
【0205】
比較例1
銅有機金属錯体をその場で調製するために、1122.2mgの硫酸銅(CuSO)の水溶液を、266.2mgのテトラエチレンペンタミン(TEPA)と混合し、得られた混合物を2時間撹拌した。その後、9487.3mgのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)水溶液(水中35重量%)及び1150.1mgの20重量%のNaOHの水溶液を添加し、得られた混合物を15分間撹拌した。最後に、FAU構造(CBV-720、SAR=21)を有するゼオライト3608.5mgを合成混合物に導入し、所望のゲル濃度が達成されるまで過剰な水を蒸発させるのに必要な時間にわたって撹拌した。ゲルの最終組成は、SiO:0.047 Al:0.022 Cu(TEPA)2+:0.4 TEAOH:0.1 NaOH:4 HOである。得られたゲルを、テフロンライナーでオートクレーブに移した。
【0206】
結晶化は、160℃で7日間、静的条件下で行った。固体生成物を濾過し、豊富な水ですすぎ、100℃で乾燥させた後、550℃で4時間、空気中で焼成して有機残渣を除去した。
【0207】
プロトン含有量:2.2mmol/g
得られたゼオライトは、900℃の水熱エージング後に水熱安定性ではなかった。
【0208】
比較例2
380.2mgの20重量%のCuSO水溶液を、90.2mgのテトラエチレンペンタミン(TEPA)と混合し、2時間撹拌した。次いで、1578.0mgのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)水溶液(35重量%)及び230.1mgのNaOHの水溶液(HO中20重量%)を添加し、得られた混合物を15分間撹拌した。最後に、FAU構造(CBV-720、SAR=21)を有するゼオライト601.3mgを合成混合物に導入し、所望のゲル濃度が達成されるまで過剰な水を蒸発させるのに必要な時間にわたって撹拌した。ゲルの最終組成は、SiO:0.047 Al:0.045 Cu(TEPA)2+:0.4 TEAOH:0.1 NaOH:4 HOである。得られたゲルを、テフロンライナーでオートクレーブに移した。
【0209】
結晶化は、160℃で7日間、静的条件下で行った。固体生成物を濾過し、豊富な水ですすぎ、100℃で乾燥させた後、550℃で4時間、空気中で焼成して有機残渣を除去した。
【0210】
プロトン含有量:2.5mmol/g
得られたゼオライトは、900℃の水熱エージング後に水熱安定性ではなかった。
【0211】
比較例3
234.0mgの20重量%のCuSO水溶液を、53.2mgのテトラエチレンペンタミン(TEPA)と混合し、2時間撹拌した。次いで、959.1mgのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)水溶液(35重量%)及び225.1mgのNaOHの水溶液(HO中20重量%)を添加し、得られた混合物を15分間撹拌した。最後に、FAU構造(CBV-720、SAR=21)を有するゼオライト365.3mgを合成混合物に導入し、所望のゲル濃度が達成されるまで過剰な水を蒸発させるのに必要な時間にわたって撹拌した。ゲルの最終組成は、SiO:0.047 Al:0.045 Cu(TEPA)2+:0.4 TEAOH:0.2 NaOH:13 HOである。得られたゲルを、テフロンライナーでオートクレーブに移した。
【0212】
結晶化は、160℃で7日間、静的条件下で行った。固体生成物を濾過し、豊富な水ですすぎ、100℃で乾燥させた後、550℃で4時間、空気中で焼成して有機残渣を除去した。
【0213】
プロトン含有量:2.2mmol/g
得られたゼオライトは、900℃の水熱エージング後に水熱安定性ではなかった。
【0214】
比較例4
a)Cu-テトラエチレンペンタミン錯体(Cu-TEPA)の合成:37.9gテトラエチレンペンタミン(0.2モル)を、200gのHO中、50gのCuSO・5HO(0.2モル)からなる溶液(1M溶液)に撹拌しながら添加し、室温で2時間撹拌した。
b)SAR=30(Si/Al=15)を有する3gのゼオライトY(CBV720、Zeolyst Internationalにより供給)を、27mLの1.2M水酸化ナトリウム溶液中に室温で懸濁した。この溶液に、1MのCu-TEPA溶液を1.5mL添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわち1 SiO/0.033 Al/0.033 Cu-TEPA/0.70 NaOH/34 HOを有した。懸濁液を室温で10分間撹拌した後、95℃のオーブンに移し、7日間静置した。室温まで冷却した後、粉末を濾過によって母液から分離し、脱塩水で洗浄し、60℃で12時間乾燥させた。生成したゼオライトは、4.3のSi/Al比及びCuOとして計算された、7.5重量%のCuO含有量を有するX線回折(図1参照)に従って、CHA骨格型コードを有すると決定した。
【0215】
プロトン含有量:4.02mmol/g
得られたゼオライトは、900℃の水熱エージング後に水熱安定性ではなかった。
【0216】
【表6】
【0217】
比較例を、900℃でのそれらの水熱安定性について試験した。
【0218】
表5:実施例1~18の総プロトン含有量、水熱安定性、ブレンステッド酸点(BAS)、シラノールプロトン(Si-OH)、アルミノールプロトン(Al-OH)、及び残留プロトンを示す。
【0219】
当業者は、ゼオライトが、特定の部位、すなわちブレンステッド酸点(BAS)、又はシラノール基(Si-OH)、又はアルミノール基(Al-OH)に明確に割り当てられ得るプロトンを含むことを知っている。更に、特定の部位に明確に割り当てることができないプロトンが存在する。これらのプロトンは、以降、「残留プロトン」と称される。
【0220】
データは、ゼオライトの水熱安定性を評価する際に、プロトンの総量、すなわちBAS、Si-OH、Al-OH及び残留プロトンの合計を考慮しなければならないことを明確に示している。
【0221】
【表7】
【0222】
BAS、Si-OH、Al-OH、残留プロトン及び総プロトン含有量は、mmol/gゼオライトで示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20