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  • 特許-ポリマー製造のための反応構成及び手順 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ポリマー製造のための反応構成及び手順
(51)【国際特許分類】
   C08F 136/06 20060101AFI20240513BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20240513BHJP
   C08F 36/06 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C08F136/06
C08F2/01
C08F36/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020569200
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 IB2019054853
(87)【国際公開番号】W WO2019239309
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】102018000006303
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519463673
【氏名又は名称】ベルサリス エッセ.ピー.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルケッティ ジャンニ
(72)【発明者】
【氏名】レガッティエーリ ジョヴァンニ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103665217(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 136/06
C08F 2/01
C08F 36/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを製造するための溶液中での重合の手順であって、
ブタジエン、スチレン、イソプレン、アクリロニトリル、オレフィン又はジオレフィン及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数のモノマーと、70重量%から90重量%の間の量の1つ又は複数の溶媒と、触媒系とを、単一の混合セルが形成され、そこで前記重合が始まる第1の反応体積に、最終的に達成される転化率に対して20%から70%までの範囲の転化率が得られるまで連続的に供給する工程と、
前記第1の反応体積に連続して接続され、2つ以上の混合セルが形成され、その出口で前記モノマーの前記最終的に達成される転化率が得られる、少なくとも1つの第2の反応体積内で前記重合を進行させる工程とを含み、
前記第1の反応体積では、試薬混合物の平均滞留時間が、反応体積全体の前記平均滞留時間に対して10%から25%までの間隔内で変化することを特徴とする、ポリマーを製造するための重合手順。
【請求項2】
前記第1の反応体積では、比撹拌動力が、前記第1の反応体積の後続の反応体積の比撹拌動力よりも大きい、請求項1に記載のポリマーを製造するための重合手順。
【請求項3】
前記第1の反応体積では、前記比撹拌動力が2kW/mよりも大きい、請求項2に記載のポリマーを製造するための重合手順。
【請求項4】
前記第1の反応体積の後続の反応体積では、前記比撹拌動力が1kW/mから2kW/mの間である、請求項3に記載のポリマーを製造するための重合手順。
【請求項5】
前記反応体積全体の前記平均滞留時間が、通常、1時間から2時間の間である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマーを製造するための重合手順。
【請求項6】
前記第1の反応体積における前記モノマーの前記平均滞留時間が、前記反応体積全体の総滞留時間の15%から20%まで変化する、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマーを製造するための重合手順。
【請求項7】
前記モノマーが1,3-ブタジエンである、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマーを製造するための重合手順。
【請求項8】
前記溶媒がヘキサン、ペンタン、ヘプタン及びそれらの混合物から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリマーを製造するための重合手順。
【請求項9】
前記溶媒の量は、80重量%から90重量%の間である、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリマーを製造するための重合手順。
【請求項10】
連続して接続された1つ又は複数の反応器を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマーを製造するための重合手順を使用することによりポリマーを製造するための反応構成であって、
・第の反応器は、単一の混合セルであり、総反応体積に対して1/10から1/4まで変化する値に等しい反応体積を有し、前記総反応体積は、存在するすべての反応器の前記反応体積の合計であり、
・前記第1の反応器に連続して接続された後続の反応器はそれぞれ、2つ以上の混合セルが存在する反応体積を有することを特徴とする、反応構成。
【請求項11】
前記第1の反応器の前記反応体積が、総反応体積の1/8から1/5まで変化し、前記総反応体積が、存在するすべての反応器の前記反応体積の合計である、請求項10に記載の反応構成。
【請求項12】
反応器の数が2から5の範囲である、請求項10または11に記載の反応構成。
【請求項13】
前記第1の反応器が、単一のラシュトン半径流羽根車、又は2つ以上の水中翼軸流羽根車を有する撹拌装置を備えている、請求項10から12のいずれか一項に記載の反応構成。
【請求項14】
前記第1の反応器の後続の反応器が、2つ以上のラシュトン半径流羽根車を有する撹拌装置を備えている、請求項10から13のいずれか一項に記載の反応構成。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか一項に記載の反応構成を使用する、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマーを製造するための重合手順。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー、特にエラストマーを製造するための反応構成及び手順に関する。
【0002】
特に、出発モノマーは、好ましくは、ブタジエン、スチレン、イソプレン、アクリロニトリル、プロピレン又はエチレンから選択される。
【0003】
シス-1,4単位の高含有量のポリブタジエン(本明細書ではHCBRゴムと称する)を製造するための反応構成及び手順であることが好ましい。
【0004】
本明細書において、反応器内の平均滞留時間は、反応体積と、供給される体積流量との間の比率として計算される。
【0005】
本明細書において、反応体積とは試薬質量の体積を意味する。
【0006】
本明細書において、総反応体積は、手順中に存在するすべての反応体積の合計である。
【0007】
本明細書において、混合セルとは、撹拌装置を備えた反応体積の画分(fraction)を意味していて、この反応体積の画分は、均質な内部特性(粘度、密度、温度、化学種の濃度など)を有し、かつ、考慮される同じ反応体積内に存在する他の混合セルとは異なる特性を有する。
【0008】
混合セル内の均質な特性とは、混合セルの体積の少なくとも90%において、その特性の変動率が前記混合セル内の平均計算値の10%未満であることを意味する。
【0009】
本明細書において、転化率とは、反応環境に供給された試薬物質の量(重量)に対して重合反応によって消費された試薬物質の割合を意味する。
【0010】
本明細書では、比動力(specific power)とは、撹拌軸に吸収される力と反応体積との比率を意味する。
【0011】
本特許出願では、本文中に言及されているすべての動作条件は、明示的に記載されていなくても、好ましい条件として理解されるべきである。
【0012】
この説明の目的上、「含む(comprise)」又は「含む(include)」という用語には、「からなる(consist of)」又は「から本質的になる(essentially consisting of)」という用語も含まれる。
【0013】
この説明の目的上、特に指定がない限り、間隔の定義には常に限界値が含まれる。
【背景技術】
【0014】
エラストマーを製造するための従来のプラントでは、反応セクションは、等しい反応体積を有する1つ又は複数の撹拌垂直円筒タンクからなる、1つ又は複数の反応器を連続して備える。
【0015】
モノマー、溶媒、及び触媒系は、一緒に又は別々のラインによって、第1の反応器に供給され、そこで重合が開始され、後続の反応器で完了する。
【0016】
すべての反応器は、様々な回転速度で動作する1つ又は複数の撹拌装置を使用して撹拌されて、様々な成分を混合し、壁を清潔に保つ。
【0017】
反応セクションに関する主な懸念は、重合反応器内のファウリングの形成である。形成されるポリマーは非常に粘性が高く、タンクを汚す。特に、流動性が少ない領域や、モノマー及び活性触媒系の供給物の存在下では、所望のポリマー分子量よりも高分子量のポリマー鎖が形成されることがあり、このポリマー鎖は溶媒に不溶であるため、反応器及び撹拌器の壁に堆積する傾向がある。ファウリングが非常に顕著であるため、第1の反応器は数日間(場合によっては30日未満)の運転後に、実質的に使用不能になることがある。
【0018】
ファウリングは、生成物の品質及び重合プラントの管理にとって、そのサービスファクターを低下させ、化学的及び/又は機械的洗浄のために頻繁に運転停止が必要となる重大な要因である。
【0019】
公知の技術では、ファウリングの形成を制限する化学物質か、又は使用される触媒系の活性を変更する化学物質か、どちらかを使用することにより、ファウリングを化学的に低減するための技術的解決策を見出すことが可能である。
【0020】
中国特許出願公開第101580560号明細書は、ブタジエンの重合のためのニッケル化合物と、有機アルミニウム化合物と、ホウ素錯体とに基づく触媒系について記載しており、ゴム上でのゲルの形成を減少させることを目的としている。
【0021】
米国特許出願公開第2006/047033号明細書は、有機ニッケル化合物と、有機アルミニウム化合物と、フッ素及びアルキル化ジフェニルアミンを含む化合物とを含む触媒系を使用して、シス-1,4-ポリブタジエンを形成するための方法を記載している。後者は脂肪族溶剤への溶解性を高め、沈殿を減少させ、したがって、ファウリング堆積物の形成を減少させる。
【0022】
米国特許第5565533号明細書は、エラストマーであるEPM及びEPDMなどのエチレンコポリマーの形成のための方法を記載している。この方法は、特別な添加剤や触媒を使用せずに、ファウリング堆積物の形成を減少させる。1-ブテンを過剰に使用することにより、ファウリングの形成が回避される。
【0023】
米国特許第5109082号明細書は、ゲル形成が低減された適切な触媒系の存在下で、有機溶媒中で1,3ブタジエンを重合することによってシス-1,4-ポリブタジエンを製造する手順を記載している。この目的のために、有機溶媒中に、又は1,3ブタジエンを含む有機溶液中に分散された濾過水を含む抑制剤が使用される。
【0024】
米国特許第5417930号明細書は、反応器内のファウリングの形成及び堆積の回避が可能な形状を有するエラストマーの重合のための新しい反応器を記載している。
【0025】
米国特許第3513149号明細書は、適切な触媒系の存在下で、1,3-ブタジエンを重合してシス-ポリブタジエンを形成するための方法を記載している。この方法は、定常状態で連続的に作動する単一の重合領域内で、ポリマー/モノマー重量比が少なくとも9の状態で、ゲルの形成がごくわずかになるように実施される。
【0026】
米国特許第3549609号明細書は、ポリマーのコールドフローを改善することを目的とする1,3ブタジエンの重合方法を記載しており、この方法では、トルエン、ブタジエン、及び触媒系が、ポリマーの形成を避けるために非常に短時間(1分未満)タンク内で激しく混合され、次いで、連続して並列に接続された一連の反応器に送られる。
【0027】
中国特許出願公開第1051566号明細書は、連続的な塊状重合によって、シス-1,4ポリブタジエン又はブタジエン及び他のジエンコポリマーを調製する方法を記載している。前記方法により、希土類触媒系の使用が提供され、炭化水素及び液体ブタジエン媒体中の触媒混合物が連続的にプレミキサに供給され、次いで、重合のために20~100%の転化率になるまで単一軸又は二軸スクリュー押出機に送られる。
【0028】
中国特許出願公開第101885794号明細書は、機械的特性が改善され、ファウリング形成が低減された高シス-ポリブタジエンゴム(HCBR)の合成方法について記載している。この方法では、触媒系熟成プレ反応器が使用され、従来の重合反応器の上流に、全モノマーの一部のみが供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
出願人は、ポリマー製造プラントの反応セクションの構成を変更することにより、ファウリングの形成を大幅に減少させ、プラントの運転及び最終生成物の品質を大幅に向上させることが可能であることに気づいた。
【課題を解決するための手段】
【0030】
したがって、本発明は、ポリマーを製造するための溶液中での重合の手順であって、本手順は、
-1つ又は複数のモノマーと、70重量%から90重量%の間(好ましくは80重量%から90重量%の間)の量の1つ又は複数の溶媒と、触媒系とを、単一の混合セルが形成され、そこで重合が始まる第1の撹拌反応体積に、最終的に達成される転化率に対して20%から70%までの範囲の転化率が得られるまで連続的に供給する工程と、
-前記第1の反応体積に連続して接続され、2つ以上の混合セルが形成され、その出口で前記モノマーの前記最終転化率が得られる、少なくとも1つの第2の撹拌反応体積で重合を進行させる工程とを含み、
第1の反応体積では、試薬混合物の平均滞留時間が、反応体積全体の平均滞留時間に対して10%から25%までの間隔内で変化することを特徴とする。
【0031】
反応体積全体の平均滞留時間は、通常、1時間から2時間の間である。
【0032】
さらなる実施形態では、本発明は、連続して接続された1つ又は複数の撹拌反応器を備えるポリマーの製造のための反応構成であって、前記構成は、
・前記第1の撹拌反応器は、単一の混合セルであり、総反応体積に対して1/10から1/4まで変化する値に等しい反応体積を有し、前記総反応体積は、存在するすべての反応器の前記反応体積の合計であり、
・連続して接続された、前記第1の反応器の後続の反応器が、それぞれ2つ以上の混合セルが存在する反応体積を有することを特徴とする。
【0033】
したがって、公知の技術で使用される解決策に関して、本発明は、化学的手段(例えば、中国特許出願公開第101580560号明細書、米国特許出願公開第2006/047033号明細書、米国特許第5565533号明細書、米国特許第5109082号明細書などに記載されているような特定の触媒又は溶媒を使用すること)によってではなく、反応セクションのための特定の構成を使用することによって、重合反応器内のファウリングの形成に関連する技術的問題を克服することを目的とする。この構成はまた、第1の反応器が、単に、滞留時間が非常に短い(通常、1分未満の)プレミキサではないという点で、又は、重合は行われないが、触媒系の形成、活性化もしくは熟成のみが行われ、続いて重合反応器に供給されるモノマーの一部と接触させて配置するプレ反応器ではないという点で、公知の技術(米国特許第5417930号明細書、米国特許第3513149号明細書、米国特許第3549609号明細書、中国特許出願公開第101885794号明細書)で使用される構成とは異なる。本発明によれば、重合は第1の反応器で行われる。さらに、記載及び特許請求された構成は、当業者が一連の混合反応器を作成する目的、及びそれらの製造、設置、メンテナンスのための費用を最小限にする目的で行う必要があるため、連続して接続された1つ又は複数の実質的に同一の反応器の使用を提供するものではない。記載及び特許請求された構成は、特定の第1の反応器の使用を提供するものであり、その第1の反応器は、体積、平均滞留時間、及び撹拌システムによって、連続して配置された後続の反応器とは実質的に異なる。
【0034】
したがって、本発明に記載されているように、重合反応が起こる新しい反応構成を使用することにより、従来技術で報告されていること、又は当業者が行う必要があることとは実質的に異なり、従来技術で通常使用されるものに対して同じ総反応体積を使用するにもかかわらず、反応器内のファウリングの形成につながる現象が予想外に大幅に減少する。それにより、生成物の品質及びプラントの管理を向上させることが可能になり、ひいては、対処する技術的問題の解決策となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、ポリマー製造の手順のための従来技術の通常の反応セクションの構成を示しており、モノマー(1)、溶媒(2)及び触媒系(3)が第1の反応器(A)に供給され、続いて第2の反応器(B)に連続して供給される。2つの反応器は、同じ反応体積(A=B)を有する。2つの反応器は、それぞれ3つの遠心羽根車を備えた撹拌器システム(図示せず)を備えており、流体に伝達される比動力は、約1.6kW/mである。
図2図2は、本発明による反応セクションの構成の好ましい形態を示しており、重合セクションは、連続して接続された2つの異なる反応体積(A及びB)によって形成されている。第1の反応体積(A)は、総反応体積(A+B)の1/6に等しい。総反応体積(A+B)は、図1に示す総反応体積(A+B)に等しい。第1の反応器は、単一のラシュトン半径流羽根車を有する撹拌装置(図示せず)を備えており、流体に伝達される比動力は、約2.2kW/mである。第2の反応器は、5つのラシュトン遠心羽根車を有する撹拌装置(図示せず)を備えており、流体に伝達される比動力は、約1.6kW/mである。
【発明の詳細な説明】
【0036】
本発明のさらなる目的及び利点は、本発明の好ましい実施形態を表す非限定的な実施例によって純粋に提供される以下の説明及び添付の図面から、より明確になるであろう。
【0037】
出願人は、図1及び図2も参照して、本特許出願の主題である手順を詳細に説明している。
【0038】
本発明の主題である手順は、好ましくはブタジエンと、スチレンと、イソプレンと、アクリロニトリルと、プロピレン又はエチレンなどのオレフィンと、ジオレフィンと、それらの混合物とから選択されるモノマーから出発するポリマーを製造することを目的としている。本発明で使用される反応溶媒は、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン及びそれらの混合物から選択される。ヘキサン及びペンタンが好ましい。1,4シス単位(HCBR)の高含有量を有するポリブタジエンを製造する手順が好ましい。
【0039】
1つ又は複数のモノマーと、70重量%から90重量%の間、好ましくは80重量%から90重量%の間の量の1つ又は複数の溶媒と、触媒系とを、第1の撹拌反応体積に供給し、第1の撹拌反応体積では、ポリマーの製造のために溶液中で重合が始まる単一の混合セルが形成される。前記第1の反応体積では、試薬混合物は、最終的に達成される転化率に対して20%から70%までの範囲の転化率が得られるまで残留する。
【0040】
部分的に反応した反応混合物は、2つ以上の混合セルが形成される第1の反応体積の後続の撹拌反応体積内で重合を継続する。
【0041】
重合は、2つ以上の混合セルが形成される少なくとも1つの第2の撹拌反応体積で継続される。
【0042】
第1の反応体積では、試薬混合物の平均滞留時間は、反応体積全体の平均滞留時間に対して10%から25%までの間隔内で変化する。
【0043】
反応体積全体の平均滞留時間は、通常、1時間から2時間の間である。
【0044】
好ましくは、第1の反応体積内の混合物の平均滞留時間は、15%から20%までの間隔内で変化し、より好ましくは、それは、反応体積全体の総滞留時間の15%に等しい。
【0045】
第1の反応体積では、撹拌の比動力は、好ましくは、第1の反応体積の後続の体積の撹拌の比動力よりも大きい。
【0046】
第1の反応体積では、撹拌の比動力は、好ましくは2kW/mより大きく、その後続の反応体積では、撹拌の比動力は、1kW/mから2kW/mの間である。
【0047】
本特許出願のさらなる主題は、連続して接続された1つ又は複数の撹拌反応器を含むポリマーを製造するための反応構成であって、
・前記第1の撹拌反応器は、単一の混合セルであり、総反応体積に対して1/10から1/4まで変化する値に等しい反応体積を有し、前記総反応体積は、存在するすべての反応器の前記反応体積の合計であり、
・第1の反応器に連続して接続された後続の反応器はそれぞれ、2つ以上の混合セルが存在する反応体積を有することを特徴とする反応構成である。
【0048】
好ましくは、第1の反応器の反応体積は、総反応体積の1/8から1/5まで変化し、より好ましくは、総反応体積の1/6に等しく、総反応体積は、存在するすべての反応器の反応体積の合計である。
【0049】
反応器の数は、好ましくは2から5、より好ましくは2から3である。
【0050】
第1の反応器の後続の反応器は、好ましくは互いに等しく、同じ反応体積を有し、同じ撹拌装置を備えている。
【0051】
記載及び特許請求される反応構成は、好ましくは、本特許出願の主題である手順を実施するために使用される。
【0052】
前述のように、第1の反応体積は単一の均質な混合セルであり、後続の反応体積はそれぞれ複数の混合セルを有している。
【0053】
反応器内、ひいては個々の反応体積内に混合セルを作成するために、撹拌装置が存在する。撹拌装置の構成は、単一の均質な混合セル、又は均質であるが互いに異なる複数の混合セルの形成に影響を及ぼす。
【0054】
当業者に知られているように、単一の混合セルを作成するために、第1の反応器で使用される羽根車のタイプは、例えば、単一のラシュトン半径流羽根車、又は同じ軸に接続された2つ以上の水中翼軸流羽根車、あるいは同等の解決策であり得る。第1の反応器の撹拌装置から流体に伝達される比動力は、後続の反応器で使用されるものより大きくなければならず、好ましくは2kW/mより大きくなければならない。第1の反応器に連続して互いに接続された後続の反応器は、反応体積を各反応器のための1つ又は複数の混合セルに分割する撹拌装置を備えている。当業者に知られているように、複数の混合セルを作成するために、第1の反応器の後続の反応器で使用される羽根車のタイプは、例えば、2つ以上のラシュトン半径流羽根車、又は同等の解決策を含み得る。第1の反応器の後続の反応器に存在する撹拌装置から流体に伝達される比動力は、第1の反応器で使用されるものより劣り、好ましくは1kW/mから2kW/mの間である。さらに、第1の反応器及び後続の反応器の両方に、反応器の壁を掻き取る機能を有する第2の撹拌装置(壁スクレーパー)を任意に装備することができる。さらに、第1の反応器及び後続の反応器の両方は、温度を制御するための熱交換システムを任意に装備することができ、これは、外部ジャケット、外部巻管、溶接された外部半管、内部コイル、外部熱交換器、又は当技術分野で従来から使用されている当業者に知られている他の装置の中から選択することができる。
【0055】
第1の反応器の反応温度は60℃に等しくてもよく、最後の反応器の出口での最終温度は110℃に等しくてもよい。
【0056】
図2では、出願人は、本特許出願の主題である手順及び反応セクションを詳細に説明している。
【0057】
ただし、以下の説明は、図2に示す反応体積間の比率に限定されるものではない。
【0058】
モノマー(1)、溶媒(2)及び触媒系(3)は、重合が始まる第1の反応体積(A)内に供給される。次いで、重合は、第2の反応体積(B)で継続され、その出口でモノマーの最終転化率の値に到達する。第1の反応体積は、10%から25%、好ましくは15%から20%までの間隔内で変化する混合物の平均滞留時間を有し、より好ましくは、それは、反応体積全体の平均滞留時間の15%に等しい。
【0059】
これは、モノマーを含む試薬質量が、第2の反応器(B)の反応体積における試薬質量の滞留時間よりも著しく短い時間、第1の反応器(A)の反応体積に残留することを意味する。
【0060】
第1の反応器(A)の反応体積は、総反応体積の1/6に等しく、総反応体積は、存在するすべての反応器の反応体積の合計である。
【0061】
第1の反応体積では、モノマーは、20%から70%までの転化率を得る。後続の反応体積では、転化が継続され、出口で90%を超える最終値に達する。
【0062】
説明及び特許請求された反応手順及びシステムにより、特に第1の反応体積で形成されるファウリングの形成に関する問題が解決できる。
【0063】
出願人は、このようにして、運転期間に延長があること、及び生成物の品質が向上することに気づき、最先端の工業プラントには一般的なことだが、第1の反応器のためのバックアップ反応器の設置の回避がせいぜい可能であることに気づいた。
【0064】
ここで、本発明の適用についていくつかの例が説明されているが、これらは、純粋に説明的であり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明による好ましい実施形態を表すものである。
【0065】
比較例1
プラントのレイアウトは、50立方メートル(直径:2.8m、下部TL接線から上部TL接線までの楕円形のヘッドの高さ:7.3m)の2つの撹拌反応器で構成され、それぞれが連続して接続されている。
第1の反応器には、溶媒37,000kg/h、80重量%のシクロヘキサンと20重量%の通常のヘキサンとの混合物、20℃で5,000kg/hの1,3-ブタジエン、及び以下の特徴を持つ触媒錯体からなる流れ(stream)が供給される。
(a)HO/Nd=0.001/1のモル比及び総バーサチック酸/Nd=0.4のモル比を特徴とするネオジムバーサテート(n-ヘキサン中の40重量%溶液)
(b)ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAH)
(c)ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)
(d)モル比 Nd/Al/Cl=[1/4/4mmolNd/kg ブタジエン=[2.0]mmol/kg
【0066】
各反応器には、6枚の垂直ブレードを備えた直径1.6mの3基のラジアルタービンを有する撹拌器が装備され、回転速度が毎分50回転であり、80kWのモータが搭載されている。また、毎分10回転の回転速度を有し、10kWのモータが搭載された、反応器の壁を掻き取る第2の撹拌器も存在する。
【0067】
HCBRを形成するためのブタジエンの重合は、断熱モードで進行し、ブタジエンの最終転化率は98%である。このように形成されたプラントは、反応器内にファウリングが多く形成されて、それが関連して第1の反応器の撹拌器が詰まったために、3週間運転した後に停止した。
【0068】
実施例1
プラントのレイアウトは2つの反応器を提供する。第1の撹拌反応器の寸法は、15立方メートル(直径:2.8m、TL-TLの高さ:1.7m)、連続して続く第2の撹拌反応器の寸法は、85立方メートル(直径:2.8m、TL-TLの高さ:13m)である。第1の反応器には、6枚の垂直ブレードを有する直径1.6mのラジアルタービン1基からなる撹拌器が装備され、回転速度が毎分60回転であり、45kWのモータが搭載されている。第2の反応器には、6枚の垂直ブレードを備えた直径1.6mの5基のラジアルタービンを有する撹拌器が装備され、回転速度が毎分50回転であり、140kWのモータが搭載されている。また、毎分10回転の回転速度を有し、10kWのモータが搭載された、反応器の壁を掻き取る第2の撹拌器もある。比較例1に記載された流れは、第1の反応器に供給される。HCBRを形成するためのブタジエンの重合は、断熱的に進行し、ブタジエンの最終転化率は98%である。このように形成されたプラントは、いずれの撹拌器においても詰まりが見られずに6週間運転される。
図1
図2