(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】シートスライド装置及びシートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
B60N2/08
(21)【出願番号】P 2021024756
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(73)【特許権者】
【識別番号】517251797
【氏名又は名称】株式会社TF-METAL
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】谷口 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】黒田 俊介
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-117133(JP,A)
【文献】特開2015-083427(JP,A)
【文献】特開2016-165951(JP,A)
【文献】国際公開第2014/064848(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床面に車両前後方向に沿って配置固定されたロアレールと、
前記ロアレールに対して該ロアレールの長手方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、かつシートが取り付けられるアッパレールと、
前記アッパレール長手方向に直交する上下方向に移動して、前記ロアレールに対する前記アッパレールのスライド移動をロックするロック位置と、前記ロアレールに対する前記アッパレールのスライド移動を可能とするロック解除位置との間で移動可能なロック部材と、
前記アッパレールの内部に該アッパレールの長手方向に沿って延びて配置され、その両端に設けられた前記アッパレールに係止されるための一対の固定部と、その中央に設けられた前記ロック部材が係止されるための取付部と、前記一対の固定部と前記取付部の間でそれぞれ前記ロック部材をロック方向へ付勢するための第1ばね部及び第2ばね部とを有するばね部材と、
前記ばね部材の付勢力に抗して前記ロック部材を押圧して前記ロアレールに対する前記アッパレールのロックを解除可能とする操作レバーと、
を備え、
前記アッパレールは、左右一対の側壁を有し、該両側壁に該アッパレールの長手方向及び上下方向で重なるようにアッパレール長手方向に長い第1孔部と第2孔部が設けられ、
前記ばね部材の第1ばね部側の固定部は、リング状に形成されていると共に、外径が前記アッパレールの両側壁間の幅よりも大きく形成されて前記アッパレールの両側壁間で拡径する方向のばね力を有し、該ばね力によって前記第1孔部と第2孔部に嵌り込んで固定される第1嵌合部及び第2嵌合部を備えることを特徴とするシートスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートスライド装置であって、
前記アッパレールの一側壁に設けられた第1孔部は、上下幅が前記ばね部材のばね径よりも大きく形成され、
前記アッパレールの他側壁に設けられた第2孔部は、上下幅が前記ばね部材のばね径よりも小さく形成され、
前記第1嵌合部は、該第1孔部のアッパレール長手方向の両端部にそれぞれ当接するように前記第1孔部に嵌り込み、
前記第2嵌合部は、前記アッパレールの他側壁の内面と平行に延びて、前記第2孔部の上下方向の縁部にそれぞれ当接するように前記第2孔部に嵌り込む、
ことを特徴とするシートスライド装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシートスライド装置であって、
前記
第1ばね部材側の固定部は、六角形状または八角形状のリング状に形成され、前記第1嵌合部と第2嵌合部が前記六角形状又は八角形状の辺によって形成されていることを特徴とするシートスライド装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のシートスライド装置であって、
前記第1嵌合部は、前記第1ばね部に対してアッパレールの左右方向の軸周りに捩られた状態で前記第1孔部に嵌合され、この嵌合している状態では、前記第1ばね部側の部位が前記第1孔部の下面に当接すると共に、前記第1ばね部と反対側の部位が前記第1孔部の上面に当接することを特徴とするシートスライド装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のシートスライド装置であって、
前記第1嵌合部は、前記第1孔部に嵌合した際に、前記第1ばね部側の部位が前記第1孔部の下面に当接すると共に、前記第1ばね部と反対側の部位が前記第1孔部の上面に当接するようにアッパレール前後方向に対して傾斜して形成され、
前記第2孔部は、前記第1孔部に嵌合した前記第1嵌合部の傾斜角度に合わせてアッパレール前後方向に対して傾斜して形成されていることを特徴とするシートスライド装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のシートスライド装置であって、
前記第1嵌合部は、中央の直線部位を挟んだ前後位置に一対の傾斜部位を有し、前記直線部位と各傾斜部位によって台形状に形成されており、
台形状に形成された前記第1嵌合部が前記第1孔部に嵌入可能な位置にある際に、前記各傾斜部位の一部が、前記第1孔部に入り込んで該第1孔部の上下面に当接しても、前記第1孔部の長手方向の両端縁には当接しないように前記ばね部材の第1ばね部側の固定部が第1孔部に対して上下方向へ傾斜していることを特徴とするシートスライド装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のシートスライド装置であって、
前記リング状に形成された固定部の先端部には、前記アッパレールの側壁の内側へ延びた掴み部が形成されていることを特徴とするシートスライド装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のシートスライド装置であって、
第1孔部と第2孔部は、前記アッパレールの両側壁の上下方向において該アッパレールの開口端側の近傍に設けられていることを特徴とするシートスライド装置。
【請求項9】
請求項1に記載のシートスライド装置に用いられるばね部材の組付方法であって、
前記アッパレールに対してロック位置に置かれたロック部材に、ばね部材の取付部を係止し、これによって、前記ばね部材の第1ばね部側の固定部を、前記第1孔部と第2孔部が形成された前記アッパレールの左右の側壁に対してアッパレール上下方向における開口端側の外側に配置する第1工程と、
その後、前記第2嵌合部をアッパレールの他側壁の外側に配置した状態で、前記第1嵌合部を、アッパレールの一側壁の内面に沿って第1孔部方向へ移動させて、該第1嵌合部の一部を前記第1孔部に嵌め込む第2工程と、
次に、前記
第1ばね部側の固定部の第2嵌合部を第1嵌合部側へ撓み変形させつつ前記第2嵌合部をアッパレールの他側壁の内面に沿って移動させて、第2嵌合部の一部を前記第2孔部に嵌め込む第3工程と、
を有することを特徴とするシートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法。
【請求項10】
請求項9に記載のシートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法であって、
前記ばね部材の第1ばね部側の固定部は、予めアッパレールの前後方向に対して上下方向へ傾斜状に形成されていると共に、該固定部の第1嵌合部は、中央の直線部位を挟んだ前後位置に一対の傾斜部位を有し、前記直線部位と各傾斜部位によって台形状に形成され、
前記第2工程では、第1嵌合部をアッパレールの一側壁の内面に沿って移動させて、第1嵌合部の一部を第1孔部に嵌め込むと、前記第1嵌合部の各傾斜部位の一部が第1孔部の上下面に当接した状態となり、
前記第3工程では、第2嵌合部を第1嵌合部側へ撓み変形させつつ前記第2嵌合部をアッパレールの他側壁の内面に沿って第2孔部方向へ固定部の拡径方向のばね力に抗して移動させると、前記第1嵌合部の各傾斜部位が第1孔部にさらに深く嵌り込んで第1孔部の上下面と各傾斜部位との接触位置の間隔が広がることで、第1孔部に対する固定部の傾斜角度が小さくなる方向に捩られることを特徴とするシートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載のシートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法であって、
前記第2工程において、アッパレールの開口端側に、該アッパレールの一側壁に連続するガイド治具を配置して、該ガイド治具によって第1嵌合部をアッパレール一側壁の内面に沿う位置まで水平方向から押圧し、この状態で第1嵌合部を第1押し込み治具によって上下方向から押し込んで前記アッパレール一側壁の内面に沿って移動させて第1嵌合部の一部を第1孔部に嵌め込み、
前記第3工程において、アッパレールの開口端側にアッパレール他側壁に沿って上下方向に移動する第2押し込み治具を配置し、この第2押し込み治具によって、固定部の先端部を第1嵌合部側へ撓み変形させて第2嵌合部をアッパレール他側壁の内面に沿う位置まで押圧しつつ第2嵌合部をアッパレール他側壁の内面に沿って第2孔部方向へ移動させて第2嵌合部を第2孔部に嵌め込こむことを特徴とするシートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法。
【請求項12】
請求項11に記載のシートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法であって、
前記第2押し込み治具は、先端部に傾斜状のガイド面を有し、
前記第2嵌合部は、前記アッパレール両側壁の内側に延びる掴み部を有し、
第2嵌合部がアッパレールの開口端の外側にある状態で、前記ガイド面を前記掴み部と前記アッパレール他側壁との間に、前記
アッパレールの開口端の外側から押し込んで第2嵌合部を第1嵌合部側へ撓み変形させつつ第2嵌合部をアッパレールの他側壁の内面に沿って移動させ、そのまま第2嵌合部を第2孔部に嵌合する位置まで押し込むことを特徴とするシートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートスライド装置及びシートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるシートスライド装置としては、以下の特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
このシートスライド装置は、車両の床面に固定された固定レールと、固定レールに摺動可能に取り付けられた可動レールと、可動レールを固定レールの任意の位置に固定可能なロック機構と、を有している。ロック機構は、ロックプレートがバネ部材によって固定レールに対する可動レールの固定(ロック)する方向にバネ部材によって付勢されている。
【0004】
そして、操作レバーをバネ部材の付勢力に抗して所定の解除方向に操作する(例えば引き上げる)ことにより、ロックプレートを持ち上げて固定レールに対する可動レールの固定を解除するようになっている。
【0005】
バネ部材は、1本の金属製線材を折り曲げて形成されており、可動レールの内部に長手方向に沿って配設されて、中央部にロックプレートが係止されていると共に、長手方向の前端部と後端部が可動レールに固定されている。つまり、前端部は、折り返し状に折曲形成されて、その一部が可動レールの一側壁に形成された穴部に嵌り込んで固定されている。一方、後端部は、三次元的に折曲形成されて、第1バネ部に設けられたテーパ部のL字形状に折曲された角部が可動レールの他側壁に設けられた穴部に嵌り込んでいると共に、先端部の座部が可動レールの一側壁の内面に内側から弾接して固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような特許文献1のシートスライド装置にあっては、バネ部材の後端部の固定手段としてテーパ部の角部が可動レールの穴部に嵌り込んで固定されているものの先端部の座部は単に可動レールの一側壁の内面に弾接しているだけでフリーな状態になっている。このため、座部の上下位置がばらつき易くなることから、バネ部材全体の姿勢が不安定になり、ロックプレートに対して安定した付勢力を付与することができないおそれがある。
【0008】
また、バネ部材のロック方向への付勢力を強くするため、バネ部材の第1バネ部の中間を支持する第1支持部を設けて第1バネ部が弓なりに弾性変形するようになっていることから、組付作業が煩雑になり作業能率の低下を招いている。
【0009】
本発明は、前記従来の技術的課題に鑑みて案出されたもので、組付後におけるロックばね全体の安定した姿勢を確保してロックプレートに対する安定した付勢力と、組付性の向上が図り得るシートスライド装置と、該シートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様の一つは、車両の床面に車両前後方向に沿って配置固定されたロアレールと、前記ロアレールに対して該ロアレールの長手方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、かつシートが取り付けられるアッパレールと、前記アッパレール長手方向に直交する上下方向に移動して、前記ロアレールに対するして前記アッパレールのスライド移動をロックするロック位置と、前記ロアレールに対する前記アッパレールのスライド移動を可能とするロック解除位置との間で移動可能なロック部材と、前記アッパレールの内部に該アッパレールの長手方向に沿って延びて配置され、その両端に設けられた前記アッパレールに係止されるための一対の固定部と、その中央に設けられた前記ロック部材が係止されるための取付部と、前記一対の固定部と前記取付部の間でそれぞれ前記ロック部材をロック方向へ付勢するための第1ばね部及び第2ばね部とを有するばね部材と、前記ばね部材の付勢力に抗して前記ロック部材を押圧して前記ロアレールに対する前記アッパレールのロックを解除可能とする操作レバーと、を備え、
前記アッパレールは、左右一対の側壁を有し、該両側壁に該アッパレールの長手方向及び上下方向で重なるように前後方向に長い第1孔部と第2孔部が設けられ、
前記ばね部材の第1ばね部側の固定部は、リング状に形成されていると共に、外径が前記アッパレールの両側壁間の幅よりも大きく形成されて前記アッパレールの両側壁間で拡径する方向のばね力を有し、該ばね力によって前記第1孔部と第2孔部に嵌り込んで固定される第1嵌合部及び第2嵌合部を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一つの態様によれば、ばね部材の端部に設けられた固定部のアッパレールに対する上下方向の固定姿勢位置が安定化すると共に、組付作業能率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のシートスライド装置が取り付けられたシートの一例を示す説明図である。
【
図2】本発明のシートスライド装置の分解斜視図である。
【
図3】本発明のシートスライド装置に用いられるばね部材の斜視図である。
【
図4】本発明のシートスライド装置におけるばね部材とアッパレールとロック部材と操作ハンドルとの関係を模式的に示した説明図である。
【
図5】ばね部材の固定部を第1、第2孔部に嵌合する状態を示し、(a)は第1孔部の形状を示すと共に、該第1孔部に固定部の第1嵌合部の一部が嵌合された初期の状態を示し、(b)は第1孔部に第1嵌合部の一部が最終的に固定された状態を示し、(c)は第2孔部の形状を示すと共に、第2孔部に固定部の第2嵌合部の一部が固定された状態を示す概略図である。
【
図6】ばね部材の固定部の第1嵌合部を第1孔部に対して嵌合固定する固定工程を示し、(a)は第1嵌合部を第1孔部に対して治具を用いて固定する初期状態を示し、(b)は(a)のA-A線断面図、(c)は第1嵌合部を第1孔部に対して治具を用いて嵌合した状態を示し、(d)は(c)のB-B線断面図である。
【
図7】固定部の第2嵌合部を第2孔部に対して嵌合固定する固定工程を示し、(a)は第2嵌合部を第2孔部に対して治具を用いて嵌合する初期の状態を示し、(b)は(a)のC-C線断面図、(c)は第2嵌合部を第2孔部方向へ治具を用いて押し込む状態を示し、(d)は(c)のD-D線断面図、(e)は第2嵌合部を第2孔部に嵌合した状態を示し、(f)は(e)のE-E線断面図である。
【
図8】アッパレールの第1、第2孔部にばね部材の固定部を固定する前の要部平面図を示している。
【
図9】アッパレールの第1、第2孔部にばね部材の固定部が固定された要部平面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るシートスライド装置の実施形態と該シートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法の工程を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は車両のシート2に本発明のシートスライド装置1が取り付けられた状態を模式的に示した説明図、
図2は本発明のシートスライド装置1の分解斜視図、
図3は本発明のシートスライド装置1に用いられるロックばねであるばね部材8の斜視図、
図4は本発明のシートスライド装置1におけるばね部材8とアッパレール4とロック部材6と操作ハンドル7との関係を模式的に示した説明図である。
【0015】
なお、本明細書中における「上下方向」とは、シートスライド装置1が車両の床面に固定された状態での上下方向であり、車両の床面に直交する方向、すなわち車両の高さ方向である。また、本明細書中における「前後方向」とは、シートスライド装置1が固定される車両の前後方向であり、例えば
図1及び
図3における左右方向(
図1及び
図3においては紙面左側が前方)と一致するものとする。
【0016】
図1及び
図2においては、前述した上下方向、前後方向を矢印で示している。
図2~
図4においては、前述した上下方向、前後方向に加え、車両の幅方向も矢印で示している。
【0017】
シートスライド装置1は、
図1に示すように、シート2の下部に取り付けられると共に、車体01のフロア面02上に固定される。
【0018】
すなわち、シートスライド装置1は、
図1及び
図2示すように、車両のフロア面02上に車両前後方向に沿って配置固定される金属製のロアレール3と、ロアレール3に対してロアレール長手方向に沿ってスライド可能(摺動可能)に取り付けられた金属製のアッパレール4と、アッパレール4がロアレール3内をスライドする際の摩擦抵抗を低減する複数対のスライドガイド部材5、5と、ロアレール3に対してアッパレール4を任意の位置に固定(ロック)可能な金属製のロック部材6と、ロック解除方向への操作によりロック部材6よるロックを解除する金属製の操作ハンドル7と、ロアレール3に対してアッパレール4が固定される方向に操作ハンドル7及びロック部材6を付勢する付勢部材としてのロックばねであるばね部材8と、を有している。
【0019】
ロアレール3は、例えば高張力鋼からなる鋼板に曲げ加工を施して形成されている。アッパレール4は、例えば高張力鋼からなる鋼板に曲げ加工を施して形成されている。ロック部材6は、例えば鋼板に機械加工を施して形成されている。操作ハンドル7は、例えば鋼管からなる円筒状の部材にプレスや曲げ加工等を施して形成される。ばね部材8は、弾性的な金属線材によって形成される。
【0020】
ロアレール3にアッパレール4とロック部材6等を組み込んだ組立体は、シート2と床面との間に左右一対で一組として、それぞれ車両前後方向に沿って平行に配置される。これら一対の組立体は、1つの操作ハンドル7によって連係されている。つまり、一対の組立体の各ロアレール3と各アッパレール4は、それぞれロック部材6によってロックされるものの、操作ハンドル7によって同時にロックを解除可能になっている。
【0021】
以下では、便宜上、左右一対の組立体のうち一方側の組立体について説明する。
【0022】
ロアレール3は、
図1及び
図2に示すように、車体01のフロア面02に対向するロアレール底壁10とロアレール底壁10の幅方向の両端縁から立ち上がった一対のロアレール外側壁11とを有して上部が開口する断面U字形状のロアレール本体部12と、各ロアレール外側壁11の先端から内側水平方向に向かってそれぞれ延出した一対のロアレール上壁13と、各ロアレール上壁13の先端からロアレール底壁10に向かって折り返し状に折り曲げられて延出した一対のロアレール内側壁14と、を備えている。
【0023】
ロアレール内側壁14は、下端部に複数のロアレールロック歯15が形成されている。各ロアレールロック歯15は、ロアレール内側壁14にロアレール長手方向に沿って櫛歯状に複数並んで形成されている。各ロアレールロック歯15は、例えば、ロアレール3の前端位置からほぼ中央位置までの範囲に形成されている。
【0024】
なお、対向する一対のロアレール内側壁14の間の距離は、ロアレール3に収容されるアッパレール4がスライド可能となるように設定される。
【0025】
アッパレール4は、
図2に示すように、アッパレール頂壁16と、アッパレール頂壁16両側の一対のアッパレール側壁17a、17bとを有して下部が開口する断面逆U字形状のアッパレール本体部18と、各アッパレール側壁17a、17bの下端から外側へ折り返し状に折曲されて上方へ延出する一対のアッパレール屈曲壁19と、を備えている。
【0026】
アッパレール頂壁16は、シート2の下部に設けた図示せぬサイドブラケットに図示せぬボルト等によって固定される。つまり、アッパレール4には、シート2が取り付けられている。
【0027】
各アッパレール側壁17a、17bには、後述するロック部材6のロック孔24の数に対応する数の複数のアッパレールロック歯20が形成されている。各アッパレールロック歯20は、それぞれのアッパレール側壁17のアッパレール長手方向のほぼ中央位置に、アッパレール長手方向の等間隔位置に複数個並んで形成されている。
【0028】
各アッパレール屈曲壁19は、各アッパレール側壁17の下端に一体に結合された平坦な下端壁19aを有している。この下端壁19aは、アッパレール4の長手方向に沿って延びている。また下端壁19aから外側に延びたアッパレール屈曲壁19の先端部は、アッパレール4をロアレール3に組み付けた際に、ロアレール外側壁11とロアレール内側壁14との間に入り込んでいる。同時に、ロアレール内側壁14は、アッパレール屈曲壁19とアッパレール側壁17との間に入り込んでいる。
【0029】
各アッパレール屈曲壁19には、アッパレール長手方向のほぼ中央位置に、開口部21が形成されている。開口部21は、アッパレール長手方向に沿って長方形状に形成されて、アッパレールロック歯20と重なり合う位置に形成されている。
【0030】
各スライドガイド部材5は、
図2に示すように、棒状のリテーナ22と、リテーナ22の前後端にそれぞれ二つずつ回転可能に保持された鋼球23と、を有している。
【0031】
スライドガイド部材5は、ロアレール外側壁11とアッパレール屈曲壁19との間に配置されている。スライドガイド部材5は、左右両側の上下に1つずつ、合計4つ配置されている。
【0032】
スライドガイド部材5は、アッパレール4がロアレール3内をスライドする際の摩擦抵抗を低減して、ロアレール3に対してアッパレール4を滑らかにスライド移動可能とするものである。
【0033】
ロック部材6は、
図2及び
図4に示すように、矩形板状の金属板からなり、複数のロック孔24が両側に並んで形成されている。また、ロック部材6は、前端縁の中央位置と後端縁の中央位置のそれぞれに一対の係り止め孔25が形成されている。この各係り止め孔25は、傾斜状に切り欠かれて、ばね部材8の後述する第1取付部26の前後端に有する一対の立ち上がり部26a、26bが下側から嵌入して係り止めされる。これによって、ロック部材6は、第1取付部26に取り付け固定されている。
【0034】
ロック部材6は、前述したばね部材8の第1取付部26に取り付けられて、アッパレール4のアッパレール長手方向のほぼ中央位置に配置される。
【0035】
ロック部材6は、アッパレール長手方向に直交する上下方向に移動可能であり、ばね部材8の上方へのばね力によってロック孔24にロアレールロック歯15及びアッパレールロック歯20が入り込んだロック位置を維持することで、アッパレール4がロアレール3上に固定されたロック状態を実現するものである。このロック状態では、ロアレール3に対するアッパレール4のスライドが禁止される。ロック部材6は、ばね部材8のばね力に抗してロック孔24からロアレールロック歯15及びアッパレールロック歯20が抜け出したロック解除位置になると、アッパレール4がロアレール3上に固定されていないロック解除状態を実現する。このロック解除状態では、ロアレール3に対するアッパレール4のスライドが許可される。
【0036】
ばね部材8は、
図2及び
図3に示すように、例えば1本の金属製線材を折り曲げて形成されたものであって、その全長でほぼ一定のばね径である直径Dが設定されている。ばね部材8は、長手方向の前後両端部がアッパレール4に対して固定されている。
【0037】
ばね部材8は、
図3に示すように、ロック部材6が取り付けられる中央の第1取付部26と、第1取付部26から車両後方側に延びる第1ばね部27と、第1ばね部27の車両後方端縁に接続されたリング状の後端固定部28と、第1取付部26から車両前方側に延びる第2ばね部29と、ばね部材8の前端部(車両前方側端)であって、第2ばね部29の車両前方側の端縁が接続される前端固定部30と、前端固定部30から折り返し状に折り曲げられて、車両後方側へ延びる第3ばね部31と、第3ばね部31の車両後方側の端縁に接続され、ほぼ直角状に折り曲げられた第2取付部32と、を有している。
【0038】
第1取付部26は、ばね部材8の長手方向のほぼ中央に位置し、ロック部材6の下面側を支持するように配置されていると共に、前後端にロック部材6の各係り止め孔25,25に嵌入して係り止めする一対の立ち上がり部26a、26bを有している。
【0039】
第1ばね部27は、第1取付部26から車両後方側に延びるように形成され、ロック状態を実現する位置にロック部材6をロック位置(上方位置)に保持させようとするばね力(付勢力)を有している。
【0040】
後端固定部28は、
図3に示すように、第1ばね部27の車両後方側の端縁に接続されて、アッパレール4の両側壁17a,17bに形成された第1、第2孔部37,38に固定される。後端固定部28は、後述するように、第1、第2孔部37,38に固定された状態で第1ばね部27にロック部材6をロック方向(上方向)へ付勢するばね力を付与するようになっている。
【0041】
図5はばね部材の固定部(後端固定部28)を第1、第2孔部に嵌合する状態を示し、(a)は第1孔部の形状を示すと共に、該第1孔部に固定部の第1嵌合部の一部が嵌合された初期の状態を示し、(b)は第1孔部に第1嵌合部の一部が最終的に固定された状態を示し、(c)は第2孔部の形状を示すと共に、第2孔部に固定部の第2嵌合部の一部が固定された状態を示す概略図である。なお、
図6(b)等に示すように、アッパレール4は、アッパレール頂壁16を下側にした状態、すなわち、上部が開口する状態で組付けが行なわれる。したがって、
図5中において上方がアッパレール4の開口側、下方がアッパレール頂壁16側となる。
【0042】
具体的に説明すれば、第1孔部37は、
図5(a)(b)及び後述する
図6、
図7に示すように、アッパレール一側壁17aの後端部側で、アッパレール屈曲壁19の下端壁19aの近傍に配置されている。また、第1孔部37は、アッパレール長手方向に沿って細長い矩形状に形成されていると共に、アッパレール一側壁17aとほぼ平行に形成されている。第1孔部37は、上下方向の幅Wがばね部材8(後端固定部28)の直径Dよりも大きく形成されている。第1孔部37は、長手方向の長さLが固定部28の後述する第1嵌合部33の第1直線部位33bよりも長く形成されている。
【0043】
第2孔部38は、
図5(c)及び
図6、
図7に示すように、アッパレール長手方向及び上下方向で重なるように、第1孔部37と対向したアッパレール他側壁17bの下端壁19bの近傍に配置されている。第2孔部38は、アッパレール長手方向に沿って細長く矩形状に形成されていると共に、
図5(c)に示すように、アッパレール他側壁17bと平行ではなくアッパレール4の前側から後端部4a方向へ所定角度で下り傾斜状に形成されている。第2孔部38は、上下方向の幅W1がばね部材8(後端固定部28)の直径Dよりも小さく形成されている。第2孔部38は、長手方向の長さL1が固定部28の後述する第2嵌合部34の第2直線部位34bより長く形成されていると共に、長手方向の長さL1は第1長孔37の長手方向の長さLよりもわずかに長く形成されている。第2孔部38の傾斜角度は、後述する第1嵌合部33の傾斜角度とほぼ同じ角度に設定されている。
【0044】
後端固定部28は、
図3に示すように、全体が多角形に折曲されたリング状に形成され、この実施形態では六角形のリング状に形成されている。なお、八角形でもよい。後端固定部28は、第1孔部37に嵌合固定される第1嵌合部33と、第2孔部38に嵌合固定される第2嵌合部34と、を備えている。
【0045】
後端固定部28は、
図5(a)に示すように、第1嵌合部33及び第2嵌合部34を含めた全体が第1ばね部27との結合箇所から後方へ所定角度で下り傾斜に形成されている。なお、
図5は、上述したように、アッパレール4を上下逆向きに配置しているため、アッパレール頂壁16が下方にあり、開口端が上方となる。そのため、実際には、第1ばね部27との結合箇所から後方へ所定角度で上り(アッパレール頂壁16側へ近付くように)傾斜している。
【0046】
第1嵌合部33は、
図3に示すように、平面視で台形枠状に形成されており、第1ばね部27の後端縁に接続された第1傾斜部位33aと、第1傾斜部位33aの端縁から延びた第1直線部位34bと、第1直線部位33bの端縁から延びた第2傾斜部位33cと、を有している。
【0047】
第2嵌合部34は、同じく平面視で台形枠状に形成されており、第2傾斜部位33cの端縁から延びた第3傾斜部位34aと、第3傾斜部位34aの端縁から延びた第2直線部位34bと、第2直線部位34bの端縁から延びた第4傾斜部位34cと、を有している。
【0048】
固定部28は、第1嵌合部33と第2嵌合部34のそれぞれの台形形枠状を形成する各傾斜部位33a、33c、34a、34cと各直線部位33b、34bとによって全体が六角形のリングに形成されている。
【0049】
第4傾斜部位34cの端縁には、第1ばね部27にほぼ平行に延びたほぼ直線状の掴み部35が接続されている。掴み部35は、後述するアッパレール4の第2孔部38に第2嵌合部34を第2押し込み治具52によって固定する際に利用するものである。
【0050】
第2ばね部29は、
図3及び
図4に示すように、第1取付部26から車両前方側に延びるよう形成されている。第2ばね部29は、湾曲状に折り曲げられて、ロック部材6に対して前述したロック状態を実現する位置(上方位置)に保持しようとするばね力を有している。第2ばね部29は、アッパレール他側壁17bに沿って車両前方側へ延びるように配置され、その前端固定部30がアッパレール他側壁17bの前端部に形成された図外の固定用孔に嵌合固定されている。
【0051】
前端固定部30は、
図3に示すように、第2ばね部29の車両前方側の端部及び第3ばね部31が接続されている。
【0052】
第3ばね部31は、
図3に示すように、前端固定部30から車両後方側に延びるよう形成されている。第3ばね部31は、第2ばね部29に対して左右方向に開く方向に付勢力を有して、前端固定部30がアッパレール他側壁17bから外れないようにばね力を有しているとともに、第2ばね部29に対して上方に開く方向に付勢力を有して、操作ハンドル7の後述するレール挿入部40を初期位置に向けて変位させるばね力を有している。前記初期位置とは、
図4に示すように、操作ハンドル7のレール挿入部40の先端部40aがロック部材6から離間した状態となってロック部材6がロック状態となるような位置である。すなわち、第3ばね部31は、アッパレール4のロアレール3に対する固定を解除する方向とは逆方向にレール挿入部40を付勢する。さらに言えば、第3ばね部31は、レール挿入部40を前述したロック状態を実現する位置に保持しようとするばね力を有している。
【0053】
第2取付部32は、
図3及び
図4に示すように、第3ばね部31の車両後方側の端部からほぼ直角方向に折り曲げられて車両幅方向へ沿って延びるよう形成されている。第2取付部32は、操作ハンドル7(レール挿入部40)に形成された後述するスリット42に取り付けられる部分である。
【0054】
操作ハンドル7は、
図2に示すように、シート2の幅方向に沿って延びる把持部39と、この把持部39の両端部において各レール3、4の長手方向に沿って延びるレール挿入部40と、把持部39とレール挿入部40とを段差をもって接続する中間接続部41と、を有している。操作ハンドル7は、断面円形でパイプ状の棒材に曲げ加工やプレス加工等を施して形成され、全体として平面視でほぼU字形状を呈している。
【0055】
レール挿入部40は、スリット42に第2取付部32を挿入して取り付けることで、
図4中に矢印で示すように、第3ばね部31から初期位置側に向けたばね力Fsが作用する。そのため、レール挿入部40は、アッパレール頂壁16から下方に向けて切り起こされた支持突起部43に常に押し付けられた状態となる。
【0056】
レール挿入部40は、把持部39を上方へ持ち上げると支持突起部43を支点として先端部40aが
図4中、下方へ移動してロック部材6を押し下げて前述したロック解除状態を実現する。
【0057】
レール挿入部40は、断面矩形となるように断面円形でパイプ状の棒材にプレス加工を施してなる。レール挿入部40は、プレス加工前、細長い中空形状(筒状)となっている。また、レール挿入部40は、プレス加工後、先端部40aが偏平に押し潰されている。この先端部40aは、断面円形でパイプ状の棒材の端部であり、前述したロック解除状態のときに、ロック部材6に押し付けられる部分となる。レール挿入部40は、アッパレール4の内側に挿入されて長手方向での位置決めがなされている。
【0058】
スリット42は、
図2、
図4に示すように、レール挿入部40の長手方向(ロアレール長手方向)に対して直交するよう形成されている。スリット42は、機械加工等によってレール挿入部40の壁面(側面及び底面)の一部を切り取ってできる孔である。スリット42には、ばね部材8の第2取付部32が取り付けられる。
〔ばね部材の組付方法(固定部の固定方法)〕
図6は、ばね部材の固定部の第1嵌合部を第1孔部に対して嵌合固定する固定工程を示し、(a)は第1嵌合部を第1孔部に対して治具を用いて固定する初期状態を示し、(b)は(a)のA-A線断面図、(c)は第1嵌合部を第1孔部に対して治具を用いて嵌合した状態を示し、(d)は(c)のB-B線断面図である。
【0059】
図7は、固定部の第2嵌合部を第2孔部に対して嵌合固定する固定工程を示し、(a)は第2嵌合部を第2孔部に対して治具を用いて嵌合する初期の状態を示し、(b)は(a)のC-C線断面図、(c)は第2嵌合部を第2孔部方向へ治具を用いて押し込む状態を示し、(d)は(c)のD-D線断面図、(e)は第2嵌合部を第2孔部に嵌合した状態を示し、(f)は(e)のE-E線断面図である。
【0060】
図8はアッパレールの第1、第2孔部にばね部材の固定部を固定する前の要部平面図を示している。
【0061】
図9はアッパレールの第1、第2孔部にばね部材の固定部が固定された後の要部平面図を示している。
【0062】
以下、
図5~
図9に基づいて、ばね部材8の固定部28の第1嵌合部33と第2嵌合部34を、第1孔部37と第2孔部38に嵌合固定する方法(組付方法)について説明する。
【0063】
まず、
図8に示すように、所定の基台上に逆さまに配置したアッパレール4の内部に、ロック部材6を各アッパレールロック歯20に各ロック孔が挿入されたロック位置に配置し、次いで、ばね部材8を上方から挿入し、
図8において第1取付部26を中心に時計方向に回転させるようにして、第1取付部26の一対の立ち上がり部26a、26bを一対の係り止め孔25に係り止めする。これにより、
図8に示すように、ばね部材8の第1ばね部27と第2ばね部29は、それぞれアッパレール一側壁17aの内面とアッパレール他側壁17bの内面にそれぞれ沿った位置に配置される。なお、この状態における第1ばね部27及び第2ばね部29は、前後端固定部28,30が自由状態であることからロック部材6にロック方向へのばね力を付与していない。
【0064】
この状態では、後端固定部28の第1嵌合部33と第2嵌合部34が、アッパレール4の開口の外側にあり、開口端側である各下端壁19a、19bの上方に跨って配置されている(第1工程)。
【0065】
このロック部材6とばね部材8の係合状態を図外の冶具にて維持した状態で、第1嵌合部33には、
図5(a)に示すように、第1嵌合部33を第2嵌合部34方向へ水平に押し出すガイド治具50と、アッパレール頂壁16側へ垂直に押し込む第1押し込み治具51を当接させる。つまり、第1嵌合部33の第1直線部位33bの外側縁にガイド治具50が水平方向から当接しつつ第1嵌合部33の上端縁に第1押し込み治具51が当接している。ガイド治具50は、
図6(a)~(d)に示すように、横断面ほぼ正方形状に形成されて、その平坦な一側面50aが第1直線部位33bの外端縁に当接している。一方、第1押し込み治具51は、横断面ほぼ長方形状に形成されて、その長方形の平坦な先端面51aが第1嵌合部33の上端縁に当接している。
【0066】
ここで、ガイド治具50は、
図6(a)(b)に示すように、第1嵌合部33の第1直線部位33bを、ガイド治具50の平坦な一側面50aで第2嵌合部34方向へ水平に押圧して第1直線部位33bがアッパレール一側面17aの内面に沿う位置まで押圧する。
【0067】
続いて、第1押し込み治具51が、
図6(c)(d)に示すように、第1嵌合部33の上端縁を第1押し込み治具51の平坦な先端面51aで下方向へ押し込む。そうすると、第1嵌合部33は、第1直線部位33bがアッパレール一側壁17aの内面に摺動しつつ第1孔部37まで移動して該第1孔部37内に嵌り込む(第2工程)。
【0068】
このとき、後端固定部28は、
図6(c)(d)に示すように、第2嵌合部34が一方の下端壁19b上に当接された状態を維持し、第1嵌合部33が下方に移動して傾いた状態になっている。また、第1ばね部27は、左右方向でアッパレール一側壁17aに沿う位置に戻ろうとばね力が作用していることから、第1嵌合部33が第1孔部37に対向すると第1嵌合部33が該第1孔部37内に嵌り込む。そして、第1孔部37に嵌り込んだ第1嵌合部33は、
図5(a)に示すように、第1傾斜部位33aの一部の上端縁が第1孔部37の上面に、第2傾斜部位33cの一部の下端縁が第1孔部37の下面に当接した状態になる。また、この状態では、第1傾斜部位33aと第2傾斜部位33cは、第1孔部37のアッパレール4の前後方向の前後端縁に当接していない。
【0069】
次に、
図7(a)(b)に示すように、第2押し込み治具52を、下端壁19bの上面に載置されている掴み部35とアッパレール他側壁17bの内面との間に挿入するように上下方向から挿入する。この第2押し込み治具52は、先端部が先端先細り状の傾斜状に切り欠かれて、鋭角な先端縁52aと、該先端縁52aから延びた傾斜したガイド面52bと、を有している。最初に、第2押し込み治具52の傾斜したガイド面52dによって、掴み部35が下方へ押され、第2嵌合部34が開口端側である下端壁19bの上面に当接する。
【0070】
続いて、
図7(c)(d)に示すように、第2押し込み治具52を下方へ押すと、平坦な背面52cがアッパレール他側壁17bの内面に沿って下方へ摺動しつつガイド面52bが掴み部35を一側壁17a方向へ押圧する。そうすると、後端固定部28は、第2嵌合部34が開口端側である下端壁19bの上面に当接していることから、第2押し込み治具52の傾斜したガイド面52dによって、掴み部35が第1嵌合部33側に押されて、自身の拡径方向の弾性力に抗して縮径変形する。そして、第2嵌合部34の第2直線部位34bがアッパレール他側壁17bの内面の位置まで縮径すると、
図7(e)(f)及び
図9に示すように、第2嵌合部34の第2直線部位34bがアッパレール他側壁17bの内面に沿って図中下方へ摺動する。その後、第2嵌合部34の第2直線部位34bが第2孔部38に対向する位置まで移動すると、第2嵌合部34の第2直線部位34bが、第2孔部38に拡径方向の弾性力によって嵌合する(第3工程)。
【0071】
このとき、第2孔部38は、上下方向幅W1が第2嵌合部34の直径Dよりも小さく形成されていることから、第2嵌合部34の第2直線部位34bは第2孔部38の上下面の内側縁部(角部)に係合し、第2孔部38に深く入り込むことなく外周部の一部が浅く嵌り込んだ状態になる。これによって、第1嵌合部33には第1孔部により深く嵌り込む方向へ強い弾性力が作用する。
【0072】
したがって、第1嵌合部33は、
図5(b)に示すように、後端固定部28の拡径方向の弾性力で第1直線部位33bを含む第1、第2傾斜部位33a、33cが第1孔部37内にさらに深く入り込み、第1孔部37の水平形状に倣って水平状態に変形しようとする。そして、第1、第2傾斜部位33a、33cが、第1孔部37の長手方向の両端縁37a、37bに当接して固定される。(
図5(c)、
図9の状態)。
【0073】
したがって、後端固定部28は、左右の2点である第1、第2嵌合部33、34が各孔部37,38を介してアッパレール4の両側壁17a、17bに強固に固定される。このため、アッパレール4に対するばね部材8の後端部の上下方向の固定姿勢位置が安定する。
【0074】
そして、前述のように、第1嵌合部33の第1、第2傾斜部位33a、33cが第1孔部37に深く入り込んだ状態になると、第1嵌合部33に連続する第1ばね部27には左右方向の軸周りに追加の捩りばね力が発生する。
【0075】
すなわち、アッパレールの長手方向と平行に形成された第1孔部37に対して傾斜した第1嵌合部33が、第1孔部37に深く入り込むと、傾斜した第1嵌合部33が水平状態に近づく方向に変形することで、第1嵌合部33に連続する第1ばね部27が一緒に
図5(b)の矢印で示すように反時計方向に捩じられる。
【0076】
これによって、第1ばね部27は、
図5(b)の矢印で示すように下方向へのさらなるばね力、つまり、助勢力が加わってロック部材6をロック方向へ付勢する強いばね力が付与される。なお、この
図5(b)では、第1嵌合部33と第2嵌合部34が、各第1、第2孔部37,38に嵌入した状態で、第1ばね部27に図中下方向のばね力として説明しているが、シートスライド装置を車両に装着した状態では、当然ながら前記第1ばね部27には上方向の付勢力、つまりロック部材6をロック方向へ付勢するばね力となる。
【0077】
このように、ばね部材8は、第1ばね部27に各孔部37,38と固定部28を介してロック方向への付勢力(助勢力)が付与されることから、第1ばね部27に他の方法でばね力を付与する必要がなくなる。
【0078】
すなわち、前記公報記載の従来技術では、ばね部材がロック部材に対して付勢力を付与するために第1ばね部の軸方向の中間部分を支持する複数の支持部を設けて弓なりに変形させる必要があった。
【0079】
しかし、本実施形態では、第1嵌合部33が第1孔部37に深く入り込んだ際に、アッパレール4の左右の軸周りに捩られた状態となることから、第1ばね部27自体にロック部材6をロック方向へ付勢するより強いばね力が発生する。
【0080】
この結果、第1ばね部27の途中を支持する複数の支持部が不要になるので、製造作業と組立作業能率の向上が図れる。
【0081】
また、第1嵌合部33の第1、第2傾斜部位33a、33cが、第1孔部37の前後の上端縁37a及び下端縁37bに強く当接して上下方向の移動が規制されるため、第1嵌合部33はアッパレール前後方向だけでなく上下方向への移動も規制されて確実に位置決めされる。
【0082】
第2孔部38が、第1孔部37に嵌り込んだ第1嵌合部33に傾斜に合わせて傾斜して形成されているため、第2嵌合部34は、前述のように、第2孔部38に入り込んだ際に、第2嵌合部34の第2直線部位34bが第2孔部38に確実に嵌り込んで位置決めされる。
【0083】
また、第1嵌合部33が第1孔部37に深く入り込むと、第1嵌合部33(後端固定部28)が反時計方向へ捩られて第1ばね部27にロック方向のばね力を付与することから、第1嵌合部33を当初から大きく捩った状態で第1孔部37に嵌め込む場合に比較して組付作業が容易になる。
【0084】
しかも、第1、第2嵌合部33,34は、後端固定部28の拡径方向のばね力を利用して第1、第2孔部37,38に嵌め込み固定することができるので、組付作業が容易になる。また、この組付動作が簡素化できるので、自動化が可能になる。
【0085】
また、本実施形態では、第2孔部38の上下幅W1を、ばね部材8の直径Dよりも小さくしているので、第3工程中における第2嵌合部34の第2孔部38へ嵌り込む際に、左右方向の移動量を小さくできる。したがって、後端固定部28の拡径方向の強いばね力によって第1嵌合部33を第1孔部37内へ深く嵌め込むことが可能になる。
【0086】
後端固定部28は、六角形状のリング状に形成され、第1嵌合部33と第2嵌合部34が六角形状の辺によって形成されて、全体に簡単な形状になるので成形加工作業が容易になりコストの低減化が図れる。
【0087】
なお、後端固定部28を八角形状のリング状に形成した場合も、形状が簡単になるので成形加工作業が容易になる。
【0088】
第1孔部37と第2孔部38は、アッパレール4の両側壁17a、17bの上下方向において該アッパレール4の開口端側の近傍に設けられている。したがって、後端固定部28の各孔部37,38への嵌め込み固定は、アッパレール4の両側壁17a、17bの開口端側(下端壁19a、19b側)から行うため、この嵌め込み作業が容易になる。
【0089】
後端固定部28の第1嵌合部33と第2嵌合部34を、ガイド治具50と第1、第2押し込み治具51,52を用いて各孔部37,38に嵌め込むことができるので、後端固定部28を組付ける作業の自動化が図れる。
【0090】
また、第2押し込み治具52は、第2嵌合部34を他側壁17bの内面まで押圧する機能と第2嵌合部34を他側壁17bの内面に沿って第2孔部38方向へ移動させる機能の2つの機能を有することから別途ガイド治具を設ける必要がなく、この点でコストの低減化が図れる。
【0091】
特に、掴み部35をアッパレール他側壁17bの内側に設け、上下方向に移動する第2押し込み治具52の傾斜したガイド面52bによって、掴み部35を介して固定部28を縮径しつつ第2嵌合部34を第2孔部38方向へ移動させることが可能になるので、冶具を左右方向に移動させる必要がなく時間短縮による組付作業効率の向上が図れる。
【0092】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば第1、第2孔部37,38の形成位置を各側壁17a、17bの上下方向の任意に変更できる。また、第2孔部38を、他側壁17bを貫通させずに溝状に形成することも可能である。さらに、第1孔部37は、アッパレール長手方向と平行である必要はなく、第2孔部38のように傾斜していてもよい。
【0093】
また、前述の実施形態では、固定ばね8の後端固定部28に第1嵌合部33及び第2嵌合部34を設けて、アッパレール4の両側壁17アッパレール、17bに嵌め込むように固定しているが、固定ばね8の前端固定部30に、同様に、第1嵌合部33及び第2嵌合部34を設けて、アッパレール4の両側壁17アッパレール、17bに嵌め込むように固定してもよい。
【0094】
以上説明した実施形態に基づくシートスライド装置及びシートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0095】
その1つの態様として、車両の床面に車両前後方向に沿って配置固定されたロアレールと、前記ロアレールに対して該ロアレールの長手方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、かつシートが取り付けられるアッパレールと、前記アッパレール長手方向に直交する上下方向に移動して、前記ロアレールに対する前記アッパレールのスライド移動をロックするロック位置と、前記ロアレールに対する前記アッパレールのスライド移動を可能とするロック解除位置との間で移動可能なロック部材と、前記アッパレールの内部に該アッパレールの長手方向に沿って延びて配置され、その両端に設けられた前記アッパレールに係止されるための一対の固定部と、その中央に設けられた前記ロック部材が係止されるための取付部と、前記一対の固定部と前記取付部の間でそれぞれ前記ロック部材をロック方向へ付勢するための第1ばね部及び第2ばね部とを有するばね部材と、前記ばね部材の付勢力に抗して前記ロック部材を押圧して前記ロアレールに対する前記アッパレールのロックを解除可能とする操作レバーと、を備え、
前記アッパレールは、左右一対の側壁を有し、該両側壁に該アッパレールの長手方向及び上下方向で重なるようにアッパレール長手方向に長い第1孔部と第2孔部が設けられ、前記ばね部材の第1ばね部側の固定部は、リング状に形成されていると共に、外径が前記アッパレールの両側壁間の幅よりも大きく形成されて前記アッパレールの両側壁間で拡径する方向のばね力を有し、該ばね力によって前記第1孔部と第2孔部に嵌り込んで固定される第1嵌合部及び第2嵌合部を備える。
【0096】
この発明の態様によれば、リング状の固定部のアッパレールの左右両側壁側に位置する左右の2点部位が、アッパレールの左右側壁の各孔部にそれぞれ弾性的に嵌り込んで固定されることから、固定部のアッパレールに対する上下方向の固定姿勢位置が安定する。
【0097】
さらに好ましくは、前記アッパレールの一側壁に設けられた第1孔部は、上下幅が前記ばね部材のばね径よりも大きく形成され、前記アッパレールの他側壁に設けられた第2孔部は、上下幅が前記ばね部材のばね径よりも小さく形成され、
前記第1嵌合部は、該第1孔部のアッパレールの長手方向の両端部にそれぞれ当接するように前記第1孔部に嵌り込み、前記第2嵌合部は、前記アッパレールの他側壁の内面と平行に延びて、前記第2孔部の上下方向の縁部にそれぞれ当接するように前記第2孔部に嵌り込んでいる。
【0098】
この発明の態様によれば、第1嵌合部が第1孔部のアッパレール前後方向の両端部に当接することによって、アッパレール長手方向の位置決めが可能になる。また、第2孔部の上下方向の縁部にそれぞれ当接するように第2嵌合部が第2孔部に嵌り込むようにしたことから、固定部のアッパレールに対する固定位置が確定されて、上下にずれることがなくなる。
【0099】
さらに好ましくは、前記固定部は、六角形状または八角形状のリング状に形成され、前記第1嵌合部と第2嵌合部が前記六角形状又は八角形状の辺によって形成されている。
【0100】
この発明の態様によれば、固定部が六角形状又は八角形状のリング状になっていることから、簡単な形状になるので成形加工作業が容易になりコストの低減化が図れる。
【0101】
さらに好ましくは、前記第1嵌合部は、前記第1ばね部に対してアッパレールの左右方向の軸周りに捩られた状態で前記第1孔部に嵌合され、この嵌合している状態では、前記第1ばね部側の部位が前記第1孔部の下面に当接すると共に、前記第1ばね部と反対側の部位が前記第1孔部の上面に当接するようになっている。
【0102】
前記公報記載の従来技術では、ばね部材がロック部材に対して付勢力を付与するために第1ばね部の軸方向の中間部分を支持する複数の支持部を設けて弓なりに変形させる必要があった。しかし、この発明の態様によれば、第1嵌合部がアッパレールの左右の軸周りに捩られた状態で嵌合することから、第1ばね部を弓なりに変形させることができ、ロック部材をロック方向へ付勢する付勢力を強くめることが可能になる。
【0103】
また、第1嵌合部の前後部位が、第1孔部の上下面に当接して上下方向の移動が規制されるため、第1嵌合部はアッパレール前後方向だけでなく上下方向への移動も規制されて確実に位置決めされる。
【0104】
さらに好ましくは、前記第1嵌合部は、前記第1孔部に嵌合した際に、前記第1ばね部側の部位が前記第1孔部の下面に当接すると共に、前記第1ばね部と反対側の部位が前記第1孔部の上面に当接するようにアッパレール前後方向に対して傾斜して形成され、前記第2孔部は、前記第1孔部に嵌合した前記第1嵌合部の傾斜角度に合わせてアッパレール前後方向に対して傾斜して形成されている。
【0105】
この発明の態様によれば、第2孔部は、第1嵌合部の傾斜角度に合わせて傾斜していることから、第2嵌合部が第2孔部に確実に嵌り込んで位置決めされる。
【0106】
さらに好ましくは、前記第1嵌合部は、中央の直線部位を挟んだ前後位置に一対の傾斜部位を有し、前記直線部位と各傾斜部位によって台形状に形成されており、前記台形部位が前記第1孔部に嵌入可能な位置にある際に、前記各傾斜部位の一部が、前記第1孔部に入り込んで該第1孔部の上下面に当接しても、前記第1孔部の長手方向の両端縁には当接しないように前記ばね部材の第1ばね部側の固定部が第1孔部に対して上下方向へ傾斜している。
【0107】
この発明の態様によれば、第1嵌合部の一対の傾斜部位を第1孔部内に深く嵌入させると、固定部は第1ばね部に対してアッパレール左右方向の軸周りに捩った状態で嵌合させることになり、第1ばね部に対してロック方向への助勢力が加わって強い付勢力を確保維持することが可能になる。
【0108】
さらに好ましくは、リング状に形成された前記固定部の先端部には、前記アッパレールの側壁の内側へ延びた掴み部が形成されている。
【0109】
この発明の態様によれば、第2嵌合部を、対応する第2孔部に嵌め込む際に、掴み部を利用して第2嵌合部を第1嵌合部方向へ撓ませて固定部全体を縮径変形させながら第2孔部に嵌合させることができる。したがって、固定部の各孔部への嵌め込み作業が容易になる。
【0110】
さらに好ましくは、第1孔部と第2孔部は、前記アッパレールの両側壁の上下方向において該アッパレールの開口端側の近傍に設けられている。
【0111】
この発明の態様によれば、固定部の各孔部への嵌め込みは、アッパレールの両側壁の開口端側から行うため、この嵌め込み作業が容易になる。
【0112】
別の好ましい態様として、シートスライド装置に用いられるばね部材の組付方法であって、
前記アッパレールに対してロック位置に置かれたロック部材に、ばね部材の取付部を係止し、これによって、前記ばね部材の第1ばね部側の固定部を、前記第1孔部と第2孔部が形成された前記アッパレールの左右の側壁に対してアッパレール上下方向における開口端側の外側に配置する第1工程と、
その後、前記第2嵌合部をアッパレールの他側壁の外側に配置した状態で、前記第1嵌合部を、アッパレールの一側壁の内面に沿って第1孔部方向へ移動させて、該第1嵌合部の一部を前記第1孔部に嵌め込む第2工程と、
次に、前記固定部の第2嵌合部を第1嵌合部側へ撓み変形させつつ前記第2嵌合部をアッパレールの他側壁の内面に沿って移動させて、第2嵌合部の一部を前記第2孔部に嵌め込む第3工程と、
を有している。
【0113】
この発明の態様によれば、固定部の拡径方向のばね力を利用して第1、第2嵌合部を第1、第2孔部に嵌め込み固定することができるので、組付作業が容易になる。また、この組付動作が簡素化できるので、自動化が可能になる。
【0114】
また、第2孔部の上下幅をばね部材のばね径よりも小さくしているので、前記第3工程中における第2嵌合部の第2孔部へ嵌り込む際に、左右方向の移動量が小さくできることから、拡開方向の強いばね力によって第1嵌合部を第1孔部内へ深く嵌め込むことが可能になる。
【0115】
さらに好ましくは、シートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法であって、
前記ばね部材の第1ばね部側の固定部は、予めアッパレールの前後方向に対して上下方向へ傾斜状に形成されていると共に、該固定部の第1嵌合部は、中央の直線部位を挟んだ前後位置に一対の傾斜部位を有し、前記直線部位と各傾斜部位によって台形状に形成され、
前記第2工程では、第1嵌合部をアッパレールの一側壁の内面に沿って移動させて、第1嵌合部の一部を第1孔部に嵌め込むと、前記第1嵌合部の各傾斜部位の一部が第1孔部の上下面に当接した状態となり、
前記第3工程では、第2嵌合部を第1嵌合部側へ撓み変形させつつ前記第2嵌合部をアッパレールの他側壁の内面に沿って第2孔部方向へ固定部の拡径方向のばね力に抗して移動させると、前記第1嵌合部の各傾斜部位が第1孔部にさらに深く嵌り込んで第1孔部の上下面と各傾斜部位との接触位置の間隔が広がることで、第1孔部に対する固定部の傾斜角度が小さくなる方向に捩られるようにする。
【0116】
この発明の態様によれば、第2嵌合部の第2孔部への入り込みを利用して第1嵌合部の各傾斜部位が第1孔部内にさらに深く嵌め込まれると、第1嵌合部に捩りばね力を発生させるため、つまり、第1ばね部にロック部材をロック方向へ付勢する捩りばね力(助勢力)が付与されることから、第1嵌合部を当初から大きく捩った状態で第1孔部に嵌め込む場合に比較して組付作業が容易になる。
【0117】
さらに好ましくは、シートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法であって、
前記第2工程において、アッパレールの開口端側に、該アッパレールの一側壁に連続するガイド治具を配置して、該ガイド治具によって第1嵌合部をアッパレール一側壁の内面に沿う位置まで水平方向から押圧し、この状態で第1嵌合部を第1押し込み治具によって上下方向から押し込んで前記アッパレール一側壁の内面に沿って移動させて第1嵌合部の一部を第1孔部に嵌め込み、
前記第3工程において、アッパレールの開口端側にアッパレール他側壁に沿って上下方向に移動する第2押し込み治具を配置し、この第2押し込み治具によって、固定部の先端部を第1嵌合部側へ撓み変形させて第2嵌合部をアッパレール他側壁の内面に沿う位置まで押圧しつつ第2嵌合部をアッパレール他側壁の内面に沿って第2孔部方向へ移動させて第2嵌合部を第2孔部に嵌め込こむようにした。
【0118】
この発明の態様によれば、固定部の第1嵌合部と第2嵌合部のそれぞれをガイド治具と第1、第2押し込み治具を用いて第1、第2孔部に嵌め込むことができるので、かかる組付作業の自動化が図れる。
【0119】
また、第2押し込み治具は、掴み部を介して第2嵌合部を第1嵌合部方向へ押圧してアッパレール他側壁の内面まで押圧する機能と、第2嵌合部をアッパレール他側壁の内面に沿って第2孔部方向へ移動させる機能の2つの機能を有することから別途ガイド治具を設ける必要がなく、この点でコストの低減化が図れる。
【0120】
さらに好ましくは、シートスライド装置に用いられるロックばねの組付方法であって、
前記第2押し込み治具は、先端部に傾斜状のガイド面を有し、
前記第2嵌合部は、前記アッパレール両側壁の内側に延びる掴み部を有し、第2嵌合部がアッパレールの開口端の外側にある状態で、前記ガイド面を前記掴み部と前記アッパレール他側壁との間に、前記開口端の外側から押し込んで第2嵌合部を第1嵌合部側へ撓み変形させつつ第2嵌合部をアッパレールの他側壁の内面に沿って移動させ、そのまま第2嵌合部を第2孔部に嵌合する位置まで押し込むようにした。
【0121】
この発明の態様によれば、第2押し込み治具に傾斜状のガイド面を形成することによって、掴み部を介して固定部を縮径しつつ第2嵌合部を第2孔部方向へ移動させることが可能になるので、時間短縮による組付作業効率の向上が図れる。
【符号の説明】
【0122】
1…シートスライド装置、3…ロアレール、4…アッパレール、7…操作ハンドル、8…ばね部材、16…アッパレール頂壁、17a…一側壁、17b…他側壁、19…アッパレール屈曲壁、19a・19b…下端壁、26…第1取付部(取付部)、28…後端固定部(固定部)、33…第1嵌合部、33a…第1傾斜部位、33b…第1直線部位、33c…第2傾斜部位、34…第2嵌合部、34a…第3傾斜部位、34b…第2直線部位、34c…第4傾斜部位、35…把持部、37…第1孔部、37a…上端縁、37b…下端縁、38…第2孔部、D…ばね部材の直径(ばね径)、L…第1孔部の長手方向の長さ、W…第1孔部の長手方向長さ、W1…第2孔部の長手方向長さ。