(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】光変換インク組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240513BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/20 101
G09F9/30 349A
(21)【出願番号】P 2021055607
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039365
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514217912
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132,Yakchon-ro,Iksan-si Jeollabuk-do 570-977,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】カン,ドクキ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,セファ
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000803(JP,A)
【文献】特開2015-127733(JP,A)
【文献】特開2015-018131(JP,A)
【文献】特開2017-048355(JP,A)
【文献】特開2018-120134(JP,A)
【文献】国際公開第2016/010077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G09F 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドット、硬化性モノマー、及び非イオン性光酸発生剤を含み、
前記硬化性モノマーは、25℃で30cP以下の粘度を有する硬化性モノマー
から構成される、光変換インク組成物。
【請求項2】
前記硬化性モノマーは、25℃で30cP以下の粘度を有する単官能(メタ)アクリレート又は多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の光変換インク組成物。
【請求項3】
前記非イオン性光酸発生剤は、下記の化学式1で表される酸化合物を発生させるものである、請求項1に記載の光変換インク組成物:
【化1】
前記式中、Rは、C
1~C
4の脂肪族炭化水素基である。
【請求項4】
前記非イオン性光酸発生剤は、下記の化学式2~3で表される化合物のうちの一つ以上を含む、請求項1に記載の光変換インク組成物:
【化2】
前記式中、Rは、C
1~C
4の脂肪族炭化水素基である。
【請求項5】
前記非イオン性光酸発生剤は、全体組成物100重量%に対し、0.1~10重量%の量で含まれる、請求項1に記載の光変換インク組成物。
【請求項6】
散乱粒子、光重合開始剤、界面活性剤、及び酸化防止剤からなる群より選ばれる一つ以上を更に含む、請求項1に記載の光変換インク組成物。
【請求項7】
溶剤を1重量%以下の量で含むことを特徴とする、請求項1に記載の光変換インク組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光変換インク組成物の硬化物を含む光変換画素。
【請求項9】
請求項8に記載の光変換画素を含むカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項9に記載のカラーフィルタが備えられたことを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変換インク組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置に係り、より詳しくは、UV又はポストベーク工程で光特性の低下が生じないことから光特性に優れ、且つ高湿状態における長期信頼性に優れる光変換インク組成物、これを用いて形成されるカラーフィルタ、及び前記カラーフィルタを備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、白色光から赤色、緑色、及び青色の3種の色を抽出して微細な画素単位で機能させる薄膜フィルム型光学部品である。
【0003】
これに関して、近年、優れたパターン特性だけではなく、高い色再現率を示すために、量子ドットを含む自発光感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタの製造方法が提案された。
【0004】
通常知られた量子ドットを含む自発光感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィ方法は、コーティング、露光、現像、及び硬化によって色フィルタを形成する方法である。このようなフォトリソグラフィ方法は、色フィルタの精巧性や再現性の面では優れるものの、画素を形成するためにそれぞれの色に対してコーティング、露光、現像、及び硬化する過程がそれぞれ要求されることから製造工程及び手間並びにコストが増大し、且つ工程間の制御因子が多くなって歩留まりの管理が困難であるという不具合がある。
【0005】
このため、前記フォトリソグラフィ方法に代えて、赤色、緑色、及び青色を含む複数の色を一度に着色することができるインクジェット(inkjet)方法が提案されている。
【0006】
大韓民国登録特許第10-1475520号には、量子ドット、溶媒、及び高粘度の高分子添加剤を含むことでインクジェット法による量子ドットの吐出が可能であり且つ量子ドットの濃度を自在に調節できるのみならず、量子ドットのローディング(loading)量を低減できるインクジェットプリント用量子ドットインク組成物が開示されている。
【0007】
しかし、前記量子ドットインク組成物は、塗膜の硬化を促進する別途の硬化促進成分が添加されておらず、塗膜が高湿状態で長期間露出すると信頼性が低下するという問題点があった。また、かかる問題点を解決するために通常の光重合開始剤を添加すると、UV又はポストベーク工程で生じたラジカルがQD表面と接触して表面酸化を引き起こし、これは量子ドットの光特性の低下につながり、光変換画素の光特性が低下するようになる。
【0008】
そこで、UV又はポストベーク工程で光特性の低下が生じないことから光特性に優れ、且つ高湿状態における長期信頼性に優れる光変換インク組成物の開発が切実に望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一目的は、UV又はポストベーク工程で光特性の低下が生じないことから光特性に優れ、且つ高湿状態における長期信頼性に優れる光変換インク組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記光変換インク組成物の硬化物を含む光変換画素を提供することである。
【0011】
本発明のまた他の目的は、前記光変換画素を含むカラーフィルタを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、前記カラーフィルタを備えた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一方、本発明は、量子ドット、硬化性モノマー、及び非イオン性光酸発生剤を含み、前記硬化性モノマーは、25℃で30cP以下の粘度を有する硬化性モノマーを含む、光変換インク組成物を提供する。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記硬化性モノマーは、25℃で30cP以下の粘度を有する単官能(メタ)アクリレート又は多官能(メタ)アクリレートを含んでよい。
本発明の一実施形態において、前記非イオン性光酸発生剤は、下記の化学式1で表される酸化合物を発生させるものであってよい。
【0015】
【0016】
前記式中、Rは、C1~C4の脂肪族炭化水素基である。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記非イオン性光酸発生剤は、下記の化学式2~3で表される化合物のうちの一つ以上を含んでよい。
【0018】
【0019】
前記式中、Rは、C1~C4の脂肪族炭化水素基である。
本発明の一実施形態において、前記非イオン性光酸発生剤は、全体組成物100重量%に対し、0.1~10重量%の量で含まれてよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、散乱粒子、光重合開始剤、界面活性剤、及び酸化防止剤からなる群より選ばれる一つ以上を更に含んでよい。
【0021】
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、溶剤を1重量%以下の量で含んでよい。
【0022】
他の一方で、本発明は、前記光変換インク組成物の硬化物を含む光変換画素を提供する。
【0023】
また他の一方で、本発明は、前記光変換画素を含むカラーフィルタを提供する。
【0024】
また他の一方で、本発明は、前記カラーフィルタが備えられた画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る光変換インク組成物は、UV又はポストベーク工程で光特性の低下が生じないことから光特性に優れ、且つ高湿状態における長期信頼性に優れる。また、本発明に係る光変換インク組成物は、溶剤を実質的に含まなくても低粘度の具現が可能であり且つ量子ドットの分散性に優れる。したがって、本発明に係る光変換インク組成物は、インクジェット印刷方式でカラーフィルタを製造する際に有効に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0027】
本発明においてある部材が他の部材の「上に」位置しているとするとき、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけではなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0028】
本発明においてある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特にこだわりなどない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでよいことを意味する。
【0029】
本発明の一実施形態は、量子ドット(A)、硬化性モノマー(B)、及び非イオン性光酸発生剤(C)を含み、前記硬化性モノマー(B)は、25℃で30cP以下の粘度を有する低粘度の硬化性モノマーを含む、光変換インク組成物に関する。
【0030】
量子ドット(A)
本発明の一実施形態において、前記量子ドットは、表面上に配位子層を有するものである。
【0031】
例えば、前記量子ドットは、表面上に下記の化学式4で表される化合物を含む配位子層を有するものであってよい。
【0032】
【0033】
前記式中、
R’及びR’’は、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシル基;フェニル基;又はチオール基で置換若しくは非置換のC1~C20のアルキル基であり、
R’とR”とは、同時に水素原子;フェニル基;又は非置換のC1~C20のアルキル基ではなく、
nは、1~20の整数である。
【0034】
本明細書において用いられるC1~C20のアルキル基は、炭素数1~20個からなる直鎖状若しくは分岐状の1価炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、n-デシルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記化学式4で表される化合物の具体例としては、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(WAKO社製)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(WAKO社製)、{2-[2-(カルボキシメトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸(WAKO社製)、2-[2-(ベンジルオキシ)エトキシ]酢酸、(2-(カルボキシメトキシ)エトキシ)酢酸(WAKO社製)、(2-ブトキシエトキシ)酢酸(WAKO社製)、カルボキシ-EG6-ウンデカンチオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
前記量子ドットは、化学式4で表されるポリエチレングリコール系配位子を含むことで量子ドットの光特性に優れ、且つ溶剤なしで後述する硬化性モノマーだけでも良好な分散特性を奏することができる。
前記化学式4で表される化合物は、量子ドットの総表面積に対し、5%以上の表面を覆っていてよい。
【0037】
このとき、前記化学式4で表される化合物の含量は、量子ドット1モルに対し、0.1~10モルであってよい。
【0038】
前記化学式4で表される化合物を含む配位子層は、0.1nm~2nmの厚さ、例えば、0.5nm~1.5nmの厚さを有してよい。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットとは、ナノ大きさの半導体物質を称するものであってよい。原子が分子をなし、分子がクラスタという小さい分子の集合体を構成してナノ粒子をなすが、このようなナノ粒子が半導体特性を呈しているときにこれを量子ドットという。前記量子ドットは、外部からエネルギーを受けて励起状態になると、当該量子ドットの自ら該当するエネルギーバンドギャップに応じたエネルギーを放出するようになる。例えば、本発明に係る光変換インク組成物は、かかる量子ドットを含むことにより、入射した青色光の緑色光及び赤色光への光変換が可能である。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットは、非カドミウム系量子ドットであってよい。
【0041】
前記非カドミウム系量子ドットは、光による刺激で発光し得る量子ドット粒子であれば特に限定されない。例えば、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素又はこれを含む化合物;及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものであってよく、これらは、単独で又は2種以上混合して用いてよい。
【0042】
具体的に、前記II-VI族半導体化合物は、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びHgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれるものであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記III-V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれるものであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
前記IV-VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれる一つ以上であってよいが、同様にこれらに限定されるものではない。
【0045】
これらに限定されるものではないが、前記IV族元素又はこれを含む化合物は、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる元素;及びSiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物からなる群より選ばれるものであってよい。
【0046】
前記量子ドットは、均質な(homogeneous)単一構造;コア-シェル(core-shell)、グラディエント(gradient)構造などのような二重構造;又はこれらの混合構造を有するものであってよい。好ましくは、前記量子ドットは、コア及びコアを覆うシェルを含むコア-シェル構造を有するものであってよい。
【0047】
具体的に、前記コア-シェルの二重構造において、それぞれのコアとシェルをなす物質は、前述した互いに異なる半導体化合物からなるものであってよい。例えば、前記コアは、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、及びInAlPSbからなる群より選ばれる一つ以上を含み、前記シェルは、ZnSe、ZnS、及びZnTeからなる群より選ばれる一つ以上を含んでよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
例えば、コア-シェル構造の量子ドットは、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/GaP/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、InP/ZnSeTe/ZnS、及びInP/MnSe/ZnSなどが挙げられる。
【0049】
前記量子ドットは、湿式化学工程(wet chemical process)、有機金属化学蒸着工程(MOCVD、metal organic chemical vapor deposition)、又は分子線エピタキシ工程(MBE、molecular beam epitaxy)によって合成されてよいが、これらに限定されるものではなく、湿式化学工程(wet chemical process)によって合成したほうがより光特性に優れる量子ドットが得られるため、好ましい。
【0050】
前記湿式化学工程とは、有機溶剤に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法である。湿式化学工程では、結晶が成長するときに有機溶剤が自然に量子ドット結晶の表面に配位し、分散剤の役割をして結晶の成長を調節するようになるので、有機金属化学蒸着工程や分子線エピタキシのような気相蒸着法よりも容易且つ低廉な工程によってナノ粒子の成長を制御することができる。そのため、前記湿式化学工程を用いて前記量子ドットを製造したほうが好ましい。
【0051】
湿式化学工程によって量子ドットを製造する場合、量子ドットの凝集を抑え且つ量子ドットの粒子の大きさをナノレベルに制御するために有機配位子が用いられる。このような有機配位子としては、一般的にオレイン酸が用いられてよい。
【0052】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットの製造過程で用いられたオレイン酸は、前記化学式4で表されるポリエチレングリコール系化合物によって配位子交換方法により置き換えられる。
【0053】
前記配位子交換は、本来の有機配位子、すなわちオレイン酸を有する量子ドットを含有する分散液に、交換したい有機配位子、すなわち化学式4で表されるポリエチレングリコール系化合物を添加しこれを常温~200℃で30分~3時間撹拌して、化学式4で表されるポリエチレングリコール系化合物が結合された量子ドットを収得することで行われてよい。必要に応じて前記化学式4で表されるポリエチレングリコール系化合物が結合された量子ドットを分離し精製する過程を更に行ってもよい。
【0054】
前記量子ドットは、光変換インク組成物の全体100重量%に対し、1~40重量%、好ましくは、2~30重量%の範囲で含まれてよい。前記量子ドットが前記範囲内で含まれると、発光効率に優れ、且つコーティング層の信頼性に優れるという利点がある。前記量子ドットが前記範囲未満で含まれると、緑色光及び赤色光の光変換効率が不十分になることがあり、また前記範囲を超えると、相対的に青色光の放出が低下して色再現性が落ちる問題が生じることがある。
【0055】
硬化性モノマー(B)
本発明の一実施形態において、前記硬化性モノマー(B)は、25℃で30cP以下の粘度、例えば、5~30cPの粘度を有する硬化性モノマー、すなわち低粘度の硬化性モノマーを含む。
【0056】
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、硬化性モノマーとして低粘度の硬化性モノマーを含むことで良好な表面硬化性と塗膜特性を有し且つインクジェット印刷に適合した低粘度を奏することができる。
【0057】
前記低粘度の硬化性モノマーは、25℃で30cP以下の粘度を有する単官能(メタ)アクリレート又は多官能(メタ)アクリレートを含んでよい。
【0058】
例えば、前記低粘度の硬化性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの単官能アルキル(メタ)アクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートなどのアルキレン鎖を有する2官能(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート;イソボニル(メタ)アクリレート;アクリロイルモルホリン;グリシジルメタクリレートなどを用いてよい。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いてよい。
【0059】
前記硬化性モノマー(B)は、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、20~90重量%、好ましくは、30~80重量%の範囲で含まれてよい。前記硬化性モノマーが前記範囲内で含まれると、画素部の強度や平滑性の面で好ましいという利点がある。前記硬化性モノマーが前記範囲未満で含まれると、画素部の強度がやや低下することがあり、また、前記硬化性モノマーが前記範囲を超えて含まれると、平滑性がやや低下することがあるため、前記範囲内で含まれることが好ましい。
【0060】
非イオン性光酸発生剤(C)
本発明の一実施形態において、前記非イオン性光酸発生剤(C)は、光又は放射線の作用によって酸を発生させることができる化合物であって、量子ドットの表面酸化を引き起こさないため量子ドットの光特性の低下を生じさせなくて済む。
【0061】
前記非イオン性光酸発生剤は、下記の化学式1で表される酸化合物を発生させるものであってよい。
【0062】
【0063】
前記式中、Rは、C1~C4の脂肪族炭化水素基である。
【0064】
本明細書において用いられるC1~C4の脂肪族炭化水素基は、炭素数1~4個からなる直鎖状若しくは分岐状の1価炭化水素であって、炭素-炭素単結合だけで構成されるものや、一つ以上の炭素-炭素二重結合又は三重結合を有するものも含む概念である。例えば、C1~C4の脂肪族炭化水素基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、エチレニル、プロペニル、ブテニル、アセチレニル、プロピニル、ブチニルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
本発明の一実施形態において、前記非イオン性光酸発生剤は、下記の化学式2~3で表される化合物のうちの一つ以上を含んでよい。
【0066】
【0067】
前記式中、Rは、C1~C4の脂肪族炭化水素基である。
本発明の一実施形態において、前記非イオン性光酸発生剤は、下記の化学式5~化学式8で表される化合物のうちの一つ以上を含んでよい。
【0068】
【0069】
本発明の一実施形態において、前記非イオン性光酸発生剤は、全体組成物100重量%に対し、0.1~10重量%、好ましくは、0.1~5重量%の量で含まれてよい。前記非イオン性光酸発生剤が0.1重量%未満の量で含まれると、パターン形成のための必要とする露光量が増加して感度が低下することがあり、また10重量%超の量で含まれると、表面粗さが増加することがある。
【0070】
散乱粒子(D)
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、散乱粒子(D)を更に含んでよい。
【0071】
前記散乱粒子は、量子ドッからで放出された光の経路を増加させて全体的な光効率を高める役割をする。
【0072】
前記散乱粒子としては、通常の無機材料を用いてよく、好ましくは、金属酸化物を用いてよい。
【0073】
前記金属酸化物は、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Mo、Cs、Ba、La、Hf、W、Tl、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Sb、Sn、Zr、Nb、Ce、Ta、In、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた1種の金属を含む酸化物であってよいが、これらに限定されない。
【0074】
具体的に、Al2O3、SiO2、ZnO、ZrO2、BaTiO3、TiO2、Ta2O5、Ti3O5、ITO、IZO、ATO、ZnO-Al、Nb2O3、SnO、MgO、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた1種であってよい。必要に応じて、アクリレートなどの不飽和結合を有する化合物で表面処理された材質も用いてよい。
【0075】
散乱粒子は、50~1000nmの平均粒径を有してよく、好ましくは、100~500nm、より好ましくは、150~300nmの範囲の平均粒径を有してよい。このとき、粒子の大きさが小さ過ぎると、量子ドットから放出された光の十分な散乱効果を期待することができず、これと逆に大き過ぎると、組成物中に沈んだりして均一な品質の光変換層表面を得ることができないため、前記範囲内で適宜調節して用いる。
【0076】
本発明において平均粒径とは、数平均粒径のことであってよく、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)によって観察した像から求めることができる。具体的に、FE-SEM又はTEMの観察画像から幾つかのサンプルを抽出し、これらのサンプルの径を測定して算術平均した値から得ることができる。
【0077】
前記散乱粒子は、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.5~20重量%、好ましくは、1~15重量%の範囲で含んでよい。前記散乱粒子が前記範囲内で含まれると、発光強さの増加効果が極大化するため好ましい。なお、前記範囲未満で含まれると、得ようとする発光強さの確保が多少難しくなることがあり、また前記範囲を超えると、青色照射光の透過度が低下するため発光効率に問題が生じることがある。
【0078】
光重合開始剤(E)
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、光重合開始剤(E)を更に含んでよい。
【0079】
本発明の一実施形態において、前記光重合開始剤(E)は、前記硬化性モノマーを重合させ得るものであれば、その種類は特に制限されずに用いてよい。特に、前記光重合開始剤は、重合特性、開始効率、吸収波長、入手性、価格などの観点から、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシム系化合物、チオキサントン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物などを用いることが好ましく、特に、アシルホスフィンオキサイド系化合物が好ましい。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてよい。
【0080】
前記アセトフェノン系化合物の具体的な例としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0081】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0082】
前記トリアジン系化合物の具体的な例としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0083】
前記ビイミダゾール系化合物の具体的な例としては、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール又は4,4’,5,5’位のフェニル基がカルボアルコキシ基によって置換されているビイミダゾール化合物などが挙げられる。これらのうち、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールが好ましく用いられる。
【0084】
前記オキシム系化合物の具体的な例としては、o-エトキシカルボニル-α-オキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられ、市販品として、BASF社製のIrgacure OXE 01、OXE 02が代表的なものである。
【0085】
前記チオキサントン系化合物としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0086】
前記アシルホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、チバスペシャリティケミカルズ社製のIrgacure-819などが挙げられる。
【0087】
前記光重合開始剤は、前記非イオン性光酸発生剤と光重合開始剤の総量100重量%に対し、50重量%以下の量で含まれてよい。前記光重合開始剤が前記非イオン性光酸発生剤と光重合開始剤の総量100重量%に対し、50重量%超の量で含まれると、量子ドットの表面酸化を引き起こして量子ドットの光特性を低下させることがある。
【0088】
前記光重合開始剤は、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.01~20重量%、好ましくは、0.5~15重量%の範囲で含まれてよい。前記光重合開始剤が前記範囲内で含まれると、前記光変換インク組成物が高感度化して露光時間が短縮することで生産性が向上するため好ましい。また、本発明に係る光変換インク組成物を用いて形成した画素部の強度と前記画素部の表面での平滑性が良好になるという利点がある。
【0089】
前記光重合開始剤(E)は、本発明に係る光変換インク組成物の感度を向上させるために、光重合開始補助剤(e1)を更に含んでよい。前記光重合開始補助剤が含まれると、感度が一層高められて生産性が向上するという利点がある。
【0090】
前記光重合開始補助剤(e1)は、例えば、アミン化合物、カルボン酸化合物、及びチオール基を有する有機黄化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましく用いられてよいが、これらに限定されるものではない。
【0091】
前記光重合開始補助剤(e1)は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜追加して用いてよい。
【0092】
添加剤(F)
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、前記した成分の他、添加剤(F)を更に含んでよい。
【0093】
前記添加剤は、界面活性剤、酸化防止剤、熱酸発生剤、分散剤、充填剤、硬化剤、密着促進剤などであってよく、これらは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてよい。
【0094】
前記界面活性剤は、本発明に係る光変換インク組成物の被膜形成性をより向上させるために用いてよく、好ましくは、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などを用いてよい。
【0095】
前記シリコン系界面活性剤としては、例えば、市販品としてのダウコーニング東レシリコーン社製のDC3PA、DC7PA、SH11PA、SH21PA、SH8400などや、GE東芝シリコーン社製のTSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4446、TSF-4460、TSF-4452などがある。前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、市販品としての大日本インキ化学工業社製のメガファックF-470、F-471、F-475、F-482、F-489、F-554などがある。
【0096】
前記の例示された界面活性剤は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いてよい。
【0097】
前記添加剤は、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.05~10重量%、具体的に、0.1~10重量%、より具体的に、0.1~5重量%の範囲で用いてよいが、これに限定されるものではない。
【0098】
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、溶剤を実質的に含まず、含むとしても光変換インク組成物の全体100重量%に対し、1重量%以下の量で含んでよい。本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、溶剤を含まない無溶剤型であるか、1重量%以下の極少量含む低溶剤型であるにも拘わらず、量子ドットの光特性及び分散性に優れ、且つ低粘度の具現が可能である。
【0099】
また、本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、樹脂成分を実質的に含まず、含むとしても光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.5重量%以内で含んでよい。本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、樹脂成分を含まないことで低い粘度を具現することができ、インクのノズルジェッティング特性に優れる。
【0100】
本発明の一実施形態は、上述した光変換インク組成物の硬化物を含む光変換画素に関する。
【0101】
また、本発明の一実施形態は、上述した光変換画素を含むカラーフィルタに関する。
本発明に係る光変換インク組成物のパターン形成方法は、上述した光変換インク組成物をインクジェット方式で所定の領域に塗布するステップ、及び該塗布された光変換インク組成物を硬化させるステップを含んでなる。
【0102】
先ず、本発明に係る光変換インク組成物をインクジェット噴射機に注入して基板の所定の領域をプリントする。
【0103】
前記基板は制限されず、一例として、ガラス基板、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、芳香族ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板、Al基板、GaAs基板などの表面が平坦な基板などが挙げられる。これらの基板は、シランカップリング剤などの薬品による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング処理、スパッタリング処理、気相反応処理、真空蒸着処理などの前処理を施してよい。基板としてシリコン基板などを用いる場合、シリコン基板などの表面には、電荷結合素子(CCD)、薄膜トランジスター(TFT)などが設けられてよい。また、隔壁マトリックスが設けられてもよい。
【0104】
インクジェット噴射機の一例であるピエゾインクジェットヘッドから噴射され基板上で適切な相(phase)を形成するために、粘度、流動性、量子ドット粒子などの特性がインクジェットヘッドと釣り合う必要がある。本発明で用いられたピエゾインクジェットヘッドは特に制限されないが、約10~100pL、好ましくは、約20~40pLの液滴大きさを有するインクを噴射する。
【0105】
本発明に係る光変換インク組成物の粘度は、25℃で約3~30cPが好適であり、より好ましくは、7~20cPの範囲で調節される。
【0106】
本発明の一実施形態に係るカラーフィルタは、前記パターン形成方法によって形成される着色パターン層を含む。すなわち、カラーフィルタは、基板上に上述した光変換インク組成物を所定のパターンで塗布した後に硬化させて形成される着色パターン層を含むことを特徴とする。カラーフィルタの構成及び製造方法は、当該技術分野において周知であるので、その詳しい説明を省略する。
【0107】
本発明の一実施形態は、上述したカラーフィルタが備えられた画像表示装置に関する。
【0108】
本発明に係るカラーフィルタは、通常の液晶表示装置(LCD)だけでなく、エレクトロルミネッセンス表示装置(EL)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出表示装置(FED)、有機発光素子(OLED)などの各種の画像表示装置に適用可能である。
本発明に係る画像表示装置は、上述したカラーフィルタを備えたことを除いては、当該技術分野において周知の構成を含む。
【0109】
以下、実施例、比較例及び実験例によって本発明をより具体的に説明することにする。なお、これらの実施例、比較例及び実験例は、単に本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではないことは当業者にとって自明である。
【0110】
合成例1:量子ドット(Q-1)の合成
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)、及び1-オクタデセン(1-octadecene)20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換した。280℃で加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)及びトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を素早く注入し、1分間反応させた。
【0111】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mlを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中のセレニウム(Se/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSeコア-シェルを形成させた。
【0112】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInP/ZnSeコア-シェル溶液2mlを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSe/ZnSコア-シェル構造の沈殿物を収得した。得られたナノ量子ドットの光発光スペクトルの最大発光ピークは535nmを示した。
【0113】
先に収得した量子ドット溶液5mLを遠心分離チューブに入れ、エタノール20mLを入れて沈澱させた。遠心分離によって上層液は捨て、沈殿物に2mLのクロロホルムを入れて量子ドットを分散させた後、0.50gの(2-ブトキシエトキシ)酢酸を入れ、窒素雰囲気下、60℃で加熱しながら一時間反応させた。
次いで、反応物に25mLのn-ヘキサンを入れて量子ドットを沈澱させた後、遠心分離を実施して量子ドット(Q-1)を得た。
【0114】
製造例1:量子ドット分散液(A-1)の製造
量子ドット(Q-1)47.6重量部と希釈液として低粘度モノマーのイソボルニルアクリレート52.4重量部とを混合し、窒素雰囲気下、60℃で加熱しながら4時間反応させて、量子ドット分散液(A-1)を製造した。
【0115】
製造例2:量子ドット分散液(A-2)の製造
量子ドット(Q-1)47.6重量部と希釈液として低粘度モノマーの1,6-ヘキサンジオールジアクリレート52.4重量部とを混合し、窒素雰囲気下、60℃で加熱しながら4時間反応させて、量子ドット分散液(A-2)を製造した。
【0116】
製造例3:量子ドット分散液(A-3)の製造
量子ドット(Q-1)47.6重量部と希釈液として高粘度モノマーのジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート52.4重量部とを混合し、窒素雰囲気下、60℃で加熱しながら4時間反応させて、量子ドット分散液(A-3)を製造した。
【0117】
製造例4:散乱粒子分散液(D-1)の製造
散乱粒子として粒径210nmのTiO2(石原産業社製のCR-63)70.0重量部、分散剤としてDISPERBYK-2001(BYK社製)4.0重量部、及び希釈液として低粘度モノマーの1,6-ヘキサンジオールジアクリレート26重量部をビーズミルにて12時混合及び分散して、散乱粒子分散液(D-1)を製造した。
【0118】
実施例及び比較例:光変換インク組成物の製造
下記の表1及び表2の組成でそれぞれの成分を混合して光変換インク組成物を製造した(重量%)。
【0119】
【0120】
【0121】
A-1:製造例1で製造された量子ドット分散液(希釈液としてイソボルニルアクリレートを含む)
A-2:製造例2で製造された量子ドット分散液(希釈液として1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを含む)
A-3:製造例3で製造された量子ドット分散液(希釈液としてジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートを含む)
B-1:イソボルニルアクリレート(粘度:5~10cP、25℃)
B-2:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(粘度:5~10cP、25℃)
B-3:ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート(粘度:400~600cP、25℃)
C-1:下記の化学式5で表される化合物
【0122】
【0123】
C-2:下記の化学式7で表される化合物
【0124】
【0125】
D-1:製造例4で製造された散乱粒子分散液
E-1:TPO(BASF社製)
F-1:F-554(DIC社製)。
【0126】
実験例:
前記実施例及び比較例で製造された光変換インク組成物を用いて下記のように光変換コーティング層を製造し、このときの膜厚、輝度、分散性、高湿条件信頼性、及び粘度を下記のような方法にて測定し、その結果を下記の表3及び表4に表した。
【0127】
<光変換コーティング層の製造>
実施例及び比較例で製造されたそれぞれの光変換インク組成物をインクジェット方式で5cm×5cmガラス基板の上に塗布した後、紫外線光源としてg、h、i線をいずれも含有する1kWの高圧水銀灯を用いて1000mJ/cm2で照射後、180℃の加熱オーブンで30分間加熱して、光変換コーティング層を製造した。
【0128】
(1)膜厚
前記で製造された光変換コーティング層の膜厚を、膜厚測定器(Dektak 6M、Vecco社製)を用いて測定した。
【0129】
(2)輝度
前記で製造された光変換コーティング層を青色(blue)光源(XLamp XR-E LED、Royal blue 450、Cree社製)の上に位置させた後、輝度測定器(CAS140CT Spectrometer、Instrument systems社製)を用いて、青色光の照射時の輝度を測定した。
【0130】
(3)分散性
前記光変換インク組成物の製造過程で、散乱粒子を投入する前の液状試料を目視にて確認して、下記の評価基準に従い評価した。
<評価基準>
○:透明な状態
×:混濁している状態
(4)高湿条件信頼性
前記で製造された光変換コーティング層に対し、高湿条件による発光効率特性の変化を下記の数学式1にて確認した。具体的に、前記光変換コーティング層を12時間85%の高湿条件で放置し、放置前後の発光効率を測定して、下記に数学式1にて発光効率保持率を求めた。
〔数学式1〕
発光効率保持率(%)={(高湿条件放置後の発光効率)/(高湿条件放置前の発光効率)}×100
高湿条件信頼性は下記の評価基準に従い評価した。
<評価基準>
○:発光効率保持率が90%以上
×:発光効率保持率が90%未満。
【0131】
(5)粘度
前記光変換インク組成物の粘度を、R型粘度計(VISCOMETER MODEL RE120L SYSTEM、東機産業株式会社製)を用い、回転数20rpm、温度25℃の条件で測定した。
【0132】
【0133】
【0134】
前記表3~表4に表したように、本発明に係る非イオン性光酸発生剤を含み、硬化性モノマーとして25℃で30cP以下の粘度を有する硬化性モノマーを含む、実施例の光変換インク組成物は、分散性が良好であり、UV工程後に光特性の低下が生じないことから光特性に優れ、且つ高湿状態における長期信頼性に優れることを確認した。一方、非イオン性光酸発生剤を含まないか、硬化性モノマーとして25℃で30cP超の粘度を有する硬化性モノマーを含む比較例の光変換インク組成物は、分散性が低下したり、UV工程後に光特性の低下が生じたり、又は高湿状態における長期信頼性が低下したりすることを確認することができた。
【0135】
以上、本発明の特定の部分について詳しく記述したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、このような具体的な記述は単に好適な具現例であるに過ぎず、これらによって本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容を基に本発明の範疇内で種々の応用および変形を行うことが可能であろう。
【0136】
したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とその等価物によって定義されると言えよう。