(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】高周波増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 3/60 20060101AFI20240513BHJP
H03F 3/189 20060101ALI20240513BHJP
H03H 7/01 20060101ALI20240513BHJP
H01P 5/02 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H03F3/60
H03F3/189
H03H7/01 A
H01P5/02 603E
(21)【出願番号】P 2021130711
(22)【出願日】2021-08-10
【審査請求日】2023-04-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】國玉 博史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 卓矢
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111600554(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-0824773(KR,B1)
【文献】特表2013-524626(JP,A)
【文献】特開2011-055152(JP,A)
【文献】特開平06-334449(JP,A)
【文献】特開平01-264407(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104300925(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0105384(US,A1)
【文献】特開2013-055405(JP,A)
【文献】特開平05-243873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0205349(US,A1)
【文献】特開平02-260905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
H03H 7/01
H01P 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに逆相の高周波信号を増幅する2つの増幅器によりプッシュプル回路が構成される高周波増幅器であって、
前記2つの増幅器は出力トランスを介して負荷に接続され、
前記増幅器側から負荷側を見込んだ高周波に対するインピーダンスを調整するインピーダンス調整部
を備え、
前記インピーダンス調整部は、
前記出力トランスの1次側に分布定数回路
を構成するとともに、前記分布定数回路と前記負荷との間に集中定数回路
を構成し、
前記分布定数回路は、高調波と共振する線路長の伝送線路を備え、
前記集中定数回路は、前記分布定数回路の高調波以外の高調波、及び基本波と共振する共振回路を備え、
前記分布定数回路の伝送線路は、偶数次高調波を零インピーダンスにインピーダンス調整するオープンスタブであり、
前記集中定数回路の共振回路は、基本波
を誘導性負荷とし、奇数次高調波を高インピーダンス
の誘導性負荷にインピーダンス調整
し、
前記インピーダンス調整部はF級動作のインピーダンス調整を行い、
前記インピーダンス調整部において、
前記オープンスタブは、一端を開放端とし、他端を前記出力トランスの1次側コイルと前記増幅器との間に接続され、
前記誘導性負荷の共振回路は、
前記出力トランスに直列接続されたインダクタと、前記出力トランスに並列接続されたキャパシタで構成され、前記出力トランス側に設けられる、
高周波増幅器。
【請求項2】
前記誘導性負荷は、前記出力トランスの漏れインダクタンスと2次側のキャパシタとにより構成される、
請求項1に記載の高周波増幅器。
【請求項3】
前記誘導性負荷は、前記出力トランスの1次側に直列接続されたインダクタと、前記出力トランスの1次側又は2次側に並列接続されたキャパシタとにより構成される、
請求項1に記載の高周波増幅器。
【請求項4】
前記誘導性負荷は、前記出力トランスの2次側に直列接続されたインダクタと、前記出力トランスの2次側に並列接続されたキャパシタとにより構成される、
請求項1に記載の高周波増幅器。
【請求項5】
前記オープンスタブは、一端は開放端であり、各高調波の1/4波長の線路長を備える伝送線路である、
請求項1~4の何れか一つに記載の高周波増幅器。
【請求項6】
前記分布定数回路は、GND層と誘電体の基板層の多層基板で構成され、
前記基板層内に2次高調波を零インピーダンスにインピーダンス調整するオープンスタブを設ける、
請求項1~4の何れか一つに記載の高周波増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、F級増幅器、逆F級増幅器の高周波増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅器において、トランジスタの瞬時消費電力は瞬時電流と瞬時電圧の積で表され、瞬時消費電力のRF一周期積分値の時間平均はトランジスタの時間平均消費電力となる。
【0003】
A級増幅器は、トランジスタのドレイン端子における電流と電圧は互いに逆相の正弦波であり、A級動作では電流・電圧波形の重なり部分は大きい。そのため増幅器の効率は低い。B級動作は、ドレイン電流をバイアスにより半波整流波形とし、ドレイン電圧を正弦波電圧とする。ドレイン電圧を正弦波電圧としたB級動作では電流・電圧波形の重なり部分は小さくなるものの、重なりは無くならない。増幅器の高効率化には、ドレイン電圧とドレイン電流との関係において、瞬時電圧と瞬時電流とが同時に存在しない状態とすることが求められる。
【0004】
増幅器の高効率化において、時間領域の電圧・電流関係によって高効率化を図る増幅器としてD級増幅器やE級増幅器が知られ、周波数領域の電圧・電流関係によって高効率化を図る増幅器としてF級増幅器、逆F級増幅器が知られている。
【0005】
トランジスタに流れる半波整流電流の周波数成分は、コサイン関数の基本波と偶数次の高調波である。三角関数列は直交関数列であるため、周波数が互いに異なる電流と電圧が同時に存在しても瞬時電力の周期積分値は零となり、電力消費は発生しない。トランジスタのドレイン端子の電圧を、電流と逆相関係にある基本波と奇数次高調波とすることにより、基本波に関して力率100%の電力が発生し、全ての高調波で電力消費が零となる。
【0006】
F級増幅器のF級負荷回路は、全ての高調波で電力消費が零となる電流・電圧関係において、トランジスタの出力端子から負荷側を見た負荷インピーダンスを、偶数次高調波で短絡とし、奇数次高調波で開放とする。これにより、電流高調波は偶数次高調波のみとなり、電圧高調波は奇数次高調波のみとなる。
【0007】
図13(a)、(b)はF級増幅器の構成例を示し、直流給電回路と負荷回路とから構成される。負荷回路は、負荷インピーダンスが偶数次高周波で零、奇数次高周波で無限大となる様に設計される。
【0008】
図13(a)のF級増幅器101Aは、直流給電回路102Aと、直流給電回路102Aを構成するLDMOSのドレイン端と負荷106Aとの間の出力ラインに直列接続された伝送線路103A、及び出力ラインに対して並列に接続された並列共振回路104Aを備える。伝送線路103Aの伝送線路長L
1は、基本波の波長の波長λ
1の1/4の長さである。並列共振回路104Aは、基本周波数に対してインピーダンスを開放状態とし、高周波数に対してインピーダンスを短絡状態とする。伝送線路103Aは、奇数次高調波に対しては伝送線路のインピーダンス変換により開放状態とし、偶数次高調波に対しては伝送線路のインピーダンス変換が働かず短絡状態のままとする。(特許文献1)
【0009】
図13(b)のF級増幅器101Bは、直流給電回路102Bと、直流給電回路102Bの直流電源とLDMOSのドレイン端との間の直流給電ラインに接続された伝送線路103Bと、ドレイン端と負荷106Bとの間に直列に接続された直列共振回路104Bを備える。なお、
図13(b)の直列共振回路104Bは、インダクタLoとキャパシタCoとが直列接続された共振回路である。
【0010】
伝送線路103Bの伝送線路長L1は基本波の波長λ1の1/4の長さであり、一端はキャパシタンスにより高周波的に短絡され、第2高調波に対しては1/2波長、第3高調波に対しては3/4波長に相当するため、第2高調波に対しては短絡、第3高調波に対しては開放の負荷条件が充たされる。(特許文献2)。
【0011】
逆F級負荷回路は、F級負荷回路とは逆に、負荷インピーダンスを偶数次高調波で開放し、奇数次高調波で短絡する。これにより、電流高調波は奇数次高調波のみとなり、電圧高調波は偶数次高調波のみとなる。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平09-266421号公報
【文献】特開平11-234062号公報
【文献】国際公開第2013/157298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
F級増幅器は、全ての高調波で電力消費が零となる電流・電圧関係の要件を充たすために、偶数次高調波を短絡し、奇数次高調波を開放する負荷インピーダンス条件が求められる。従来構成のF級増幅器は、負荷インピーダンス条件を満たすために、伝送線路長L1が基本波の波長λ1の1/4の長さ(λ1/4)の伝送線路を備える。
【0014】
逆F級増幅器は、奇数次高調波を短絡し、偶数次高調波を開放する負荷インピーダンス条件が求められる。従来構成の逆F級増幅器においても、逆F級増幅器の負荷インピーダンス条件を充たすために、基本波の1/4波長伝送線路によるインピーダンス変換が行われる。
【0015】
従来のF級増幅器及び逆F級増幅器は、増幅器の回路サイズが大型化するという問題がある。回路サイズの大型化として以下の要因がある。
【0016】
(a)基本波の1/4波長伝送線路の線路長による大型化
F級増幅器及び逆F級増幅器において、トランジスタ出力の周波数f1(=c(光速)/λ1)が低周波数で、基本波の波長λ1が長い場合には、基本波の1/4波長伝送線路の伝送線路長L1は長くなるため、増幅器の回路サイズが大型化するという問題がある。
【0017】
(b)基本波の1/4波長伝送線路の導体幅による大型化
また、直流給電ラインに基本波の1/4波長伝送線路を設けた構成では、基本波の1/4波長伝送線路の導体幅は給電電力に応じた幅が必要であり、給電電力の増大に伴って基本波の1/4波長伝送線路の導体幅は増大する。導体幅の増大は、増幅器の回路サイズを大型化する要因となる。
【0018】
(c)高調波のスタブの線路長による大型化
分岐した伝送線路(スタブ)で構成される共振回路において、高調波の波長λn(nは高調波次数)が長い場合には分岐した伝送線路(スタブ)の線路長は長くなるため、増幅器のサイズが大型化するという問題がある。
【0019】
したがって、F級増幅器及び逆F級増幅器の高周波増幅器は、増幅器の回路サイズが大型化するという課題がある。本発明は前記した従来の課題を解決して、回路サイズを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の高周波増幅器は、高周波信号を増幅する増幅器と、増幅器側から負荷側を見込んだ高周波に対するインピーダンスを調整するインピーダンス調整部を備える。インピーダンス調整部は、基本波の1/4波長伝送線路を不要とする構成により、基本波および高調波をインピーダンス調整してフィルタリングを行う。基本波の1/4波長伝送線路を不要とする構成により、基本波の1/4波長伝送線路の線路長及び導体幅による大型化を解決する。
【0021】
本発明の高周波増幅器のインピーダンス調整部は、分布定数回路と集中定数回路とを備えた構成とする。分布定数回路は、高調波と共振する線路長の伝送線路を備え、集中定数回路は、分布定数回路の高調波以外の高調波、及び基本波と共振する共振回路を備える。分布定数回路の伝送線路は、その一端を開放端であり、各高調波と共振する線路長を有したオープンスタブで構成される。
【0022】
また、インピーダンス調整部は、高調波において長い線路長を要するスタブを用いた分布定数回路に代えて、集中定数回路を用いた構成によりインピーダンス調整することにより、高調波のスタブの線路長による大型化を解決する。
【0023】
本発明の高周波増幅器は、周波数領域の電圧・電流関係によって高効率化を図る構成として、F級増幅器あるいは逆F級増幅器を適用することができる。
【0024】
(F級増幅器の高周波増幅器)
全ての高調波で電力消費が零となる電流・電圧関係において、F級増幅器のインピーダンス条件は、トランジスタの出力端子から負荷側を見た負荷インピーダンスが、偶数次高調波で短絡状態であり、奇数次高調波で開放状態である。このF級増幅器のインピーダンス条件により、電流高調波は偶数次高調波のみとなり、電圧高調波は奇数次高調波のみとなる。
【0025】
F級増幅器の高周波増幅器が備えるインピーダンス調整部において、分布定数回路の伝送線路は、偶数次高調波を零インピーダンスにインピーダンス調整するオープンスタブであり、集中定数回路の共振回路は、基本波及び奇数次高調波を高インピーダンスにインピーダンス調整する誘導性負荷である。この構成により、インピーダンス調整部はF級動作のインピーダンス調整を行う。F級増幅器の高周波増幅器は、分布定数回路において偶数次高調波をオープンスタブによりインピーダンス調整を行い、集中定数回路において奇数次高調波を誘導性負荷によりインピーダンス調整を行う。
【0026】
基本波をインピーダンス調整する誘導性負荷を集中定数回路の共振回路で構成することにより基本波の1/4波長の伝送線路を不要とし、基本波の1/4波長の伝送線路の線路長や導体幅による回路サイズの大型化を抑制する。
【0027】
誘導性負荷を構成する共振回路は、分布定数回路の出力側のノードと負荷の入力側のノードとの間に接続されたインダクタと、負荷の入力側のノードと接地端との間に接続されたキャパシタで構成される。
【0028】
共振回路が分岐した伝送線路(スタブ)で構成される場合には、高調波の波長λn(nは高調波次数)が長い場合には分岐した伝送線路(スタブ)の線路長は長くなり、回路サイズが大型化する要因となる。本発明によるF級増幅器は、共振回路が集中定数回路で構成されるため、この大型化の問題は回避される。
【0029】
基本波の伝送線路に次いで線路長が長い伝送線路は、2次高調波を零インピーダンスにインピーダンス調整する分岐した伝送線路(スタブ)である。集中定数回路は、分布定数回路が備える2次高調波に対応するオープンスタブに代えて、2次高調波を零インピーダンスにインピーダンス調整する共振回路を備える。これにより線路長が長い伝送線路(スタブ)を不要とする。
【0030】
(逆F級増幅器の高周波増幅器)
全ての高調波で電力消費が零となる電流・電圧関係において、逆F級増幅器のインピーダンス条件は、トランジスタの出力端子から負荷側を見た負荷インピーダンスが、奇数次高調波で短絡状態であり、偶数次高調波で開放状態である。このF級増幅器のインピーダンス条件により、電流高調波は奇数次高調波のみとなり、電圧高調波は偶数次高調波のみとなる。
【0031】
逆F級増幅器の高周波増幅器が備えるインピーダンス調整部において、分布定数回路の伝送線路は、奇数次高調波を零インピーダンスにインピーダンス調整するオープンスタブであり、集中定数回路の共振回路はインダクタとキャパシタからなる共振回路である。集中定数回路は容量性負荷とし、基本波を誘導性負荷にインピーダンス調整し、偶数次高調波を高インピーダンスにインピーダンス調整する。この構成により、インピーダンス調整部は逆F級動作のインピーダンス調整を行う。逆F級増幅器の高周波増幅器は、偶数次高調波を集中定数回路の容量性負荷によりインピーダンス調整を行い、奇数次高調波を分布定数回路のオープンスタブによりインピーダンス調整を行う。
【0032】
集中定数回路の共振回路は、基本波を誘導性負荷とし、偶数次高調波を容量性にインピーダンス調整する容量性負荷を構成する。これにより基本波の1/4波長の伝送線路を不要とし、基本波の1/4波長の伝送線路の線路長や導体幅による回路サイズの大型化を抑制する。
【0033】
集中定数回路において、容量性負荷を構成する共振回路は、分布定数回路の出力側のノードと接地端との間に接続されたキャパシタと、負荷に対して直列接続されたインダクタで構成される。
【0034】
共振回路が分岐した伝送線路(スタブ)で構成される場合には、高調波の波長λn(nは高調波次数)が長い場合には分岐した伝送線路(スタブ)の線路長は長くなり、回路サイズが大型化する要因となる。逆F級増幅器において、容量性負荷の共振回路は、基本波のみを誘導性負荷とし、偶数次高調波を高インピーダンスにインピーダンス調整する。これにより線路長が長い伝送線路(スタブ)を不要とし、回路サイズが大型化する問題を回避する。
【0035】
逆F級増幅器において、基本波の伝送線路に次いで線路長が長い伝送線路は、3次高調波を零インピーダンスにインピーダンス調整する分岐した伝送線路(スタブ)である。集中定数回路は、分布定数回路が備える3次高調波に対応するオープンスタブに代えて、3次高調波を零インピーダンスにインピーダンス調整する共振回路を備える。
【0036】
本発明の高周波増幅器は、プッシュプル構成に適用して、大出力で小歪みの出力が得られる。
【0037】
(F級増幅器のプッシュプル回路)
本発明の高周波増幅器において、F級増幅器のプッシュプル構成は、互いに逆相の高周波信号を増幅する2つの増幅器によりプッシュプル回路が構成され、2つの増幅器は出力トランスを介して負荷に接続される。
【0038】
インピーダンス調整部の誘導性負荷は複数の形態により構成することができる。
(a)誘導性負荷の第1の形態
誘導性負荷の第1の形態は、出力トランスの漏れインダクタンスと2次側に並列接続されたキャパシタとにより構成される。
(b)誘導性負荷の第2の形態
誘導性負荷の第2の形態は、出力トランスの1次側に直列接続されたインダクタと、出力トランスの1次側又は2次側に並列接続されたキャパシタとにより構成される。
(c)誘導性負荷の第3の形態
誘導性負荷の第3の形態は、出力トランスの2次側に直列接続されたインダクタと、出力トランスの2次側に並列接続されたキャパシタとにより構成される。
【0039】
(逆F級増幅器のプッシュプル回路)
本発明の高周波増幅器において、F級増幅器のプッシュプル構成は、互いに逆相の高周波信号を増幅する2つの増幅器によりプッシュプル回路が構成され、2つの増幅器は出力トランスを介して負荷に接続される。インピーダンス調整部の容量性負荷の一形態は出力トランスの1次側又は2次側に接続されるインダクタとキャパシタの共振回路により構成される。
【0040】
(多層構成)
本発明の高周波増幅器において、伝送線路を多層基板の誘電体層に設ける形態とすることができる。
【0041】
(a)多層基板の第1の形態
多層基板の第1の形態において、分布定数回路はGND層と誘電体の基板層の多層基板により構成され、基板層内に2次高調波を零インピーダンスにインピーダンス調整するオープンスタブが設けられる。
【0042】
(b)多層基板の第2の形態
多層基板の第2の形態において、分布定数回路はGND層と誘電体の基板層の多層基板で構成され、基板層内に3次高調波を零インピーダンスにインピーダンス調整するオープンスタブを設けられる。
【0043】
オープンスタブを誘電体内に設けることにより、伝送線路の線路長は短縮され、回路サイズが小型化される。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、F級増幅器及び逆F級増幅器の高周波増幅器の増幅器の回路サイズを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の高周波増幅器の概略構成を説明するための図である。
【
図2】本発明のF級増幅器の高周波増幅器を説明するための図である。
【
図3】F級増幅器の高周波増幅器が備える誘導性負荷の回路例を示す図である。
【
図4】プッシュプル構成によるF級増幅器の高周波増幅器の構成例を説明するための図である。
【
図5】プッシュプル構成によるF級増幅器の高周波増幅器の構成例を説明するための図である。
【
図6】プッシュプル構成によるF級増幅器の高周波増幅器の構成例を説明するための図である。
【
図7】プッシュプル構成によるF級増幅器の高周波増幅器の構成例を説明するための図である。
【
図8】本発明の逆F級増幅器の高周波増幅器を説明するための図である。
【
図9】逆F級増幅器の高周波増幅器が備える容量性負荷の回路例を示す図である。
【
図10】プッシュプル構成による逆F級増幅器の高周波増幅器の構成例を説明するための図である。
【
図11】プッシュプル構成による逆F級増幅器の高周波増幅器の構成例を説明するための図である。
【
図12】本発明の高周波増幅器の多層構成を説明するための図である。
【
図13】従来のF級増幅器の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、
図1を用いて本発明の高周波増幅器の概略構成を説明し、
図2を用いて本発明のF級増幅器の高周波増幅器を説明し、
図3を用いて誘導性負荷の回路例を説明し、
図4~
図7を用いてプッシュプル構成によるF級増幅器の高周波増幅器を説明し、
図8を用いて本発明の逆F級増幅器の高周波増幅器を説明し、
図9を用いて容量性負荷の回路例を説明し、
図10~
図11を用いてプッシュプル構成による逆F級増幅器の高周波増幅器を説明し、
図12を用いて本発明の高周波増幅器の多層構成を説明する。
【0047】
[本発明の概略構成]
図1(a)は本発明の高周波増幅器の概略構成を説明するための図であり、
図1(b)は本発明のF級増幅器による高周波増幅器の概略構成を示し、
図1(c)は本発明の逆F級増幅器による高周波増幅器の概略構成を示している。
【0048】
(高周波増幅器の概略構成)
図1(a)において、高周波増幅器1は、高周波信号を増幅する増幅器2と、増幅器2側から負荷6側を見込んだ高周波に対するインピーダンスを調整するインピーダンス調整部3を備える。インピーダンス調整部3は、基本波および高調波をインピーダンス調整してフィルタリングを行う。インピーダンス調整部3は、基本波の1/4波長伝送線路を備えない構成であり、基本波の1/4波長伝送線路を不要とする構成により、基本波の1/4波長伝送線路の線路長及び導体幅による大型化を抑制する。
【0049】
インピーダンス調整部3は、分布定数回路4と集中定数回路5とを備える。分布定数回路4は、高調波と共振する線路長の伝送線路を備える。集中定数回路5は、分布定数回路4がインピーダンス調整する高調波を除く高調波、及び基本波と共振する共振回路を備える。分布定数回路4の伝送線路は、一端が開放端のオープンスタブの伝送線路で構成される。
【0050】
インピーダンス調整部3は、高調波において長い線路長を要するスタブを用いたインピーダンス調整に代えて、集中定数回路を用いたインピーダンス調整を行う。これにより、長い線路長を要するスタブを不要とする。
【0051】
(a)F級増幅器による高周波増幅器の概略構成
F級動作において、基本波及び偶数次高調波の合成で表される半波整流の電流波形は、直流給電回路及び奇数次高調波に対する負荷インピーダンスを高インピーダンスとすることにより得られ、電流と逆相の基本波及び奇数次高調波の合成で表される矩形の電圧波形は、偶数次高調波に対する負荷インピーダンスを零とすることにより得られる。このとき、電流と電圧の積は零となるため増幅器のトランジスタでの電力消費は零となる。F級動作のインピーダンス条件は、トランジスタから負荷側を見込んだ高周波に対するインピーダンスが、偶数次高調波で短絡であり、奇数次高調波で高インピーダンスであり、基本波の電流・電圧が互いに逆相である。
【0052】
F級増幅器は、インピーダンス調整部において、トランジスタの出力端から負荷側を見込んだ高周波に対するインピーダンスがF級動作のインピーダンス条件を充たすように高調波処理を行う。
【0053】
図1(b)を用いてF級増幅器による高周波増幅器1aの概略構成を説明する。
高周波増幅器1aによるF級動作において、増幅器2から負荷6側を見込んだ高周波に対する負荷インピーダンス条件は、偶数次高調波で短絡、奇数次高調波で高インピーダンスである。負荷インピーダンスを偶数次高調波で短絡とする条件は分布定数回路4aにより達成され、負荷インピーダンスを奇数次高調波で高インピーダンスとする条件は集中定数回路5aにより達成される。
【0054】
分布定数回路4aは一端が開放端のオープンスタブの伝送線路により構成される。オープンスタブは偶数次高調波と共振する線路長を有し、偶数次高調波を短絡状態とするインピーダンス調整を行う。集中定数回路5aは誘導性負荷の共振回路によりが構成され、共振回路は奇数次高調波を高インピーダンス状態とするインピーダンス調整を行う。基本波に対する整合を行う整合回路8をインピーダンス調整部3と負荷6との間に設けても良い。
【0055】
(b)逆F級増幅器による高周波増幅器の概略構成
逆F級動作のインピーダンス条件は、トランジスタから負荷側を見込んだ高周波に対するインピーダンスが、奇数次高調波で短絡であり、偶数次高調波で高インピーダンスであり、基本波の電流・電圧が互いに逆相である。
【0056】
逆F級増幅器は、インピーダンス調整部において、トランジスタの出力端から負荷側を見込んだ高周波に対するインピーダンスが逆F級動作のインピーダンス条件を充たすように高調波処理を行う。
【0057】
図1(c)を用いて逆F級増幅器による高周波増幅器1bの概略構成を説明する。
高周波増幅器1bによる逆F級動作において、増幅器2から負荷6側を見込んだ高周波に対するインピーダンス条件は、奇数次高調波で短絡、偶数次高調波で高インピーダンスである。
【0058】
負荷インピーダンスを奇数次高調波で短絡とする条件は分布定数回路4bにより達成され、負荷インピーダンスを偶数次高調波で高インピーダンスとする条件は集中定数回路5bにより達成される。
【0059】
分布定数回路4bは一端が開放端のオープンスタブの伝送線路により構成される。オープンスタブは奇数次高調波と共振する線路長を有し、奇数次高調波を短絡状態とするインピーダンス調整を行う。集中定数回路5bは基本波に対して所定の誘導性負荷とし、偶数次高調波に対して容量性負荷とする共振回路により構成され、共振回路は偶数次高調波を高インピーダンス状態とするインピーダンス調整を行う。基本波に対する整合を行う整合回路8をインピーダンス調整部3と負荷6との間に設けても良い。
【0060】
[F級増幅器による高周波増幅器の構成例]
図2(a),(b)はF級増幅器による高周波増幅器の構成例(1A,1B)を示している。F級増幅器1Aは2次高調波のインピーダンス調整をオープンスタブにより行う構成であり、F級増幅器1Bは2次高調波のインピーダンス調整を集中定数回路により行う構成である。なお、図中のLdaは直流インダクタンスを示し、Cdaは直流カットキャパシタンスを示している。
【0061】
(a)F級増幅器1A
図2(a)において、F級増幅器1Aは増幅器2とインピーダンス調整部3Aにより構成される。増幅器2は、LDMOSのドレイン電圧を直流電圧Vdcでバイアスし、得られる方形波状の電圧波形の高調波成分をインピーダンス調整部3Aで除いた後、負荷6に出力する。インピーダンス調整部3Aは、偶数次高調波に対するインピーダンスを短絡して零とする分布定数回路4Aと、基本波を誘導性負荷とし、奇数次高調波に対するインピーダンスを高インピーダンスの誘導性負荷とする集中定数回路5Aとにより構成される。増幅器2の出力端から負荷6側を見込んだ高周波に対するインピーダンスがF級動作のインピーダンス条件を充たす高調波処理が行われる。
【0062】
(a1)分布定数回路4A
分布定数回路4Aは、オープンスタブの伝送線路により偶数次高調波に対するインピーダンスを短絡する。オープンスタブの一端は開放端であり、線路長は偶数次高調波の各波長λn(nは偶数)の1/4波長のλn/4である。
【0063】
オープンスタブの線路長を偶数次高調波の波長λn(nは偶数)の1/4波長とすると、オープンスタブの一方の電圧波形は節となり零となるため、オープンスタブの開放端側とは逆の増幅器2の出力端A側における偶数次高調波は短絡状態となる。
【0064】
偶数次高調波成分は高次数ほど小さくなるため、F級動作のインピーダンス条件の充足は有限個の偶数次高調波で足りる。また、n次高調波の線路長Lnを有したオープンスタブは、n次高調波の奇数倍の高調波についてもインピーダンスを短絡させるため、限定された個数のオープンスタブであってもF級動作のインピーダンス条件を実効的に充たすことができる。
【0065】
例えば、n=2,4,8としたとき、2次高調波(周波数f2)、4次高調波(周波数f4)、及び8次高調波(周波数f8)に対応する線路長L2,L4,L8の3本のオープンスタブを用いることにより、2次高調波、4次高調波、6次高調波、8次高調波、10次高調波、12次高調波までの偶数次高調波のインピーダンスを短絡することができる。
【0066】
2次高調波のオープンスタブの線路長L2は波長λ2の1/4波長λ2/4であり、基本波の波長λ1の1/4波長λ1/4の2分の1の長さである。
4次高調波のオープンスタブの線路長L4は波長λ4の1/4波長λ4/4であり、基本波の波長λ1の1/4波長λ1/4の4分の1の長さである。
8次高調波のオープンスタブの線路長L8は波長λ8の1/4波長λ8/4であり、基本波の波長λ1の1/4波長λ1/4の8分の1の長さである。
【0067】
2次高調波の線路長L2のオープンスタブは2次高調波に加えて、2次高調波の3倍の6次高調波、及び2次高調波の5倍の10次高調波についてもインピーダンスを短絡する。4次高調波の線路長L4のオープンスタブは4次高調波に加えて、4次高調波の3倍の12次高調波、4次高調波の5倍の20次高調波についてもインピーダンスを短絡する。8次高調波の線路長L8のオープンスタブは8次高調波に加えて、8次高調波の3倍の24次高調波、8次高調波の5倍の40次高調波についてもインピーダンスを短絡する。
【0068】
したがって、2次高調波、4次高調波、及び8次高調波に対応する線路長L2,L4,L8の3本のオープンスタブを用いることにより、2次高調波、4次高調波、6次高調波、8次高調波、10次高調波、12次高調波までの偶数次高調波のインピーダンスを短絡することができる。
【0069】
(a2)集中定数回路5A
集中定数回路5Aは誘導性負荷により奇数次高調波に対するインピーダンスを高インピーダンスとする。誘導性負荷は直列接続されたインダクタLfと負荷に並列接続されたキャパシタCfにより構成される。LC回路の誘導性負荷は、周波数f1の基本波のインピーダンスが所定の誘導性負荷となるように設定することにより、奇数次高調波についてもインピーダンスを誘導性の高インピーダンスとする。
【0070】
(b)F級増幅器1B
図2(a)に示すF級増幅器1Aの構成例では、分布定数回路4Aにおいて、2次高調波、4次高調波、及び8次高調波に対するインピーダンスをオープンスタブの伝送線路で短絡している。これに対して
図2(b)に示すF級増幅器1Bの構成例は、分布定数回路4Aの伝送線路の一部を集中定数回路に置き換えた構成である。増幅器2はF級増幅器1Aと同様の構成とすることができる。
【0071】
(b1)分布定数回路4B
インピーダンス調整部3Bは、偶数次高調波に対するインピーダンスを短絡して零とする分布定数回路4Bと、基本波のインピーダンスを所定の誘導性負荷とし、奇数次高調波に対するインピーダンスを誘導性の高インピーダンスとする集中定数回路5Ba、及び偶数次高調波(
図2(b)では2次高調波)に対するインピーダンスを短絡する集中定数回路5Bbとにより構成され、増幅器2の出力端から負荷6側を見込んだ高周波に対するインピーダンスがF級動作のインピーダンス条件を充たす高調波処理が行われる。
【0072】
偶数次高調波に対するインピーダンスを短絡するオープンスタブのうちで線路長が最も長いオープンスタブは2次高調波に対するものである。分布定数回路4Bは、F級増幅器1Aの分布定数回路4Aが備える2次高調波に対するオープンスタブを除き、6次高調波に対するオープンスタブを付加した構成とする。
【0073】
(b2)集中定数回路5B
一方、集中定数回路5Bは、奇数次高調波に対するインピーダンスを誘導性の高インピーダンスとする集中定数回路5Baと、2次高調波を短絡する集中定数回路5Bbを備える。集中定数回路5Bbは、分布定数回路4Bから除いた2次高調波に対するオープンスタブの伝送線路を代替する構成である。集中定数回路5Bbは、インダクタLf2とキャパシタCf2の直列回路で構成され、2次高調波を短絡する。F級増幅器1Bは、線路長が長いオープンスタブを除くことにより回路サイズの小型化が図られる。
【0074】
基本波の周波数が低い場合には、偶数次高調波に対するインピーダンスを短絡するオープンスタブの線路長も長くなるため、更に高次の偶数次高調波についても線路長が長いオープンスタブに代えて集中定数回路に置き換えることにより、回路サイズの小型化が図られる。
【0075】
[誘導性負荷の形態例]
誘導性負荷の形態例1~4について
図3を用いて説明する。
(a)形態例1
形態例1の誘導性負荷は、出力トランス17Aの漏れインダクタンスLeと、出力トランス17Aの2次側に並列接続されたキャパシタCfとにより構成される。なお、出力トランス17Aの結合係数k、出力トランスの自己・相互インダクタンスの合計をLとしたとき、漏れインダクタンスLeはLe=(1-k)Lで表される。
【0076】
(b)形態例2
形態例2の誘導性負荷は、出力トランス17Bの1次側に直列接続されたインダクタLfと、出力トランス17Bの2次側に並列接続されたキャパシタCfとにより構成される。
【0077】
(c)形態例3
形態例3の誘導性負荷は、出力トランス17Cの1次側に直列接続されたインダクタLfと、出力トランス17Cの1次側に並列接続されたキャパシタCfとにより構成される。
【0078】
(d)形態例4
形態例4の誘導性負荷は、出力トランス17Dの2次側に直列接続されたインダクタLfと、出力トランス17Dの2次側に並列接続されたキャパシタCfとにより構成される。
【0079】
[F級増幅器によるプッシュプル構成の高周波増幅器]
本発明の高周波増幅器は、互いに逆相の高周波信号を増幅する2つの増幅器を用いたプッシュプル構成とし、高出力で、歪みが小さい出力を得ることができる。F級増幅器のプッシュプル構成の2つの増幅器は出力トランスを介して負荷に接続される。以下、F級増幅器によるプッシュプル構成の高周波増幅器において、前記した誘導性負荷の各形態を適用した構成例を示す。
【0080】
(a)構成例1
図4は高周波増幅器の構成例1を示している。構成例1は前記した誘導性負荷の形態例1を適用した構成である。
【0081】
構成例1の高周波増幅器11Aは、増幅器12Aとインピーダンス調整部13Aとを備え、増幅器12A及びインピーダンス調整部13Aは対を成す構成によりプッシュプル回路を形成する。
【0082】
増幅器12Aは増幅器12Aaと増幅器12Abの2つの増幅器(LDMOS)を備える。増幅器12Aa及び増幅器12Abは、出力トランス17Aのインダクタを介して直流電圧Vdcによりバイアスされ、互いに逆相の高周波信号をゲート信号として入力することにより増幅動作を互いに逆相で行う。増幅器12Aは増幅器12Aaと増幅器12Abの2つの増幅器を1つのパッケージ内に設ける構成でもよい。
【0083】
インピーダンス調整部13Aを構成する分布定数回路14Aは、偶数次高調波を短絡する分布定数回路14Aa及び分布定数回路14Abの2つの分布定数回路を備える。分布定数回路14Aa及び分布定数回路14Abは対を成す構成によりプッシュプル回路を形成し、それぞれ偶数次高調波を短絡する複数本のオープンスタブを備える。
図4に示す構成例1では、分布定数回路14Aa及び分布定数回路14Abは、2次高調波を短絡する線路長がλ
2/4のオープンスタブ、4次高調波を短絡する線路長がλ
4/4のオープンスタブ、及び8次高調波を短絡する線路長がλ
8/4のオープンスタブの3本のオープンスタブをそれぞれ備える。
【0084】
インピーダンス調整部13Aを構成する集中定数回路15Aは、出力トランス17Aの漏れインダクタンスと、2次側コイルに並列接続されたキャパシタCfとにより構成され、奇数次高調波を高インピーダンスにインピーダンス調整する誘導性負荷を形成する。
【0085】
インピーダンス調整部13Aの出力端は整合回路18Aを介して負荷16Aに接続される。整合回路18Aは基本波に対して整合を行う回路であり、出力トランス17Aの2次側に直列接続されたインダクタLoと、負荷に対して並列接続されたキャパシタCoとにより構成される。負荷16Aとして50ohmの例を示しているが、一例であってこれに限られるものはない。
【0086】
(b)構成例2
図5は高周波増幅器の構成例2を示している。構成例2は前記した誘導性負荷の形態例2を適用した構成である。
【0087】
構成例2の高周波増幅器11Bは、増幅器12Bとインピーダンス調整部13Bとを備え、増幅器12B及びインピーダンス調整部13Bは対を成す構成によりプッシュプル回路を形成する。
【0088】
増幅器12Bは増幅器12Baと増幅器12Bbの2つの増幅器(LDMOS)を備える。増幅器12Ba及び増幅器12Bbは、出力トランス17Bのインダクタを介して直流電圧Vdcによりバイアスされ、互いに逆相の高周波信号をゲート信号として入力することにより増幅動作を互いに逆相で行う。増幅器12Bは増幅器12Baと増幅器12Bbの2つの増幅器を1つのパッケージ内に設ける構成でもよい。
【0089】
インピーダンス調整部13Bを構成する分布定数回路14Bは、偶数次高調波を短絡する分布定数回路14Ba及び分布定数回路14Bbの2つの分布定数回路を備える。分布定数回路14Ba及び分布定数回路14Bbは対を成す構成によりプッシュプル回路を形成し、それぞれ偶数次高調波を短絡する複数本のオープンスタブを備える。
図5に示す構成例2では、分布定数回路14Ba及び分布定数回路14Bbは、2次高調波を短絡する線路長がλ
2/4のオープンスタブ、4次高調波を短絡する線路長がλ
4/4のオープンスタブ、及び8次高調波を短絡する線路長がλ
8/4のオープンスタブの3本のオープンスタブをそれぞれ備える。
【0090】
インピーダンス調整部13Bを構成する集中定数回路15Bは、出力トランス17Bの1次側に直列接続されたインダクタLfと出力トランス17Aの2次側に並列接続されたキャパシタCfとにより構成され、奇数次高調波を高インピーダンスにインピーダンス調整する誘導性負荷を形成する。
【0091】
インピーダンス調整部13Bの出力端は整合回路18Bを介して負荷16Bに接続される。整合回路18Bは基本波に対して整合を行う回路であり、出力トランス17Bの2次側に直列接続されたインダクタLoと負荷に対して並列接続されたキャパシタCoとにより構成される。負荷16Bとして50ohmの例を示しているが、一例であってこれに限られるものはない。
【0092】
(c)構成例3
図6は高周波増幅器の構成例3を示している。構成例3は前記した誘導性負荷の形態例3を適用した構成である。
【0093】
構成例3の高周波増幅器11Cは、増幅器12Cとインピーダンス調整部13Cとを備え、増幅器12C及びインピーダンス調整部13Cは対を成す構成によりプッシュプル回路を形成する。
【0094】
増幅器12Cは増幅器12Caと増幅器12Cbの2つの増幅器(LDMOS)を備える。増幅器12Ca、12Cbは、出力トランス17Cのインダクタを介して直流電圧Vdcによりバイアスされ、互いに逆相の高周波信号をゲート信号として入力することにより増幅動作を互いに逆相で行う。増幅器12Cは増幅器12Caと増幅器12Cbの2つの増幅器を1つのパッケージ内に設ける構成でもよい。
【0095】
インピーダンス調整部13Cを構成する分布定数回路14Cは、偶数次高調波を短絡する分布定数回路14Ca及び分布定数回路14Cbの2つの分布定数回路を備える。分布定数回路14Ca及び分布定数回路14Cbは対を成す構成によりプッシュプル回路を形成し、それぞれ偶数次高調波を短絡する複数本のオープンスタブを備える。
図6に示す構成例3では、分布定数回路14Ca及び分布定数回路14Cbは、2次高調波を短絡する線路長がλ
2/4のオープンスタブ、4次高調波を短絡する線路長がλ
4/4のオープンスタブ、及び8次高調波を短絡する線路長がλ
8/4のオープンスタブの3本のオープンスタブをそれぞれ備える。
【0096】
インピーダンス調整部13Cを構成する集中定数回路15Caは、出力トランス17Cの1次側に直列接続されたインダクタLfと出力トランス17Cの1次側と接地端(GND)との間に並列接続されたキャパシタCfとにより構成され、奇数次高調波を高インピーダンスにインピーダンス調整する誘導性負荷を形成する。また、
図6(b)に示すように、集中定数回路15CbのキャパシタCfは、出力トランス17Cの1次側コイルに対して並列接続した構成としてもよい。
【0097】
出力トランス17Cの2次側の出力端は整合回路18Cを介して負荷16Cに接続される。整合回路18Cは基本波に対して整合を行う回路であり、直列接続されたインダクタLoと並列接続されたキャパシタCoにより構成される。負荷16Cとして50ohmの例を示しているが、一例であってこれに限られるものはない。
【0098】
(d)構成例4
図7は高周波増幅器の構成例4を示している。構成例4は前記した誘導性負荷の形態例4を適用した構成である。
【0099】
構成例4の高周波増幅器11Dは、増幅器12Dとインピーダンス調整部13Dとを備え、増幅器12D及びインピーダンス調整部13Dは対を成す構成によりプッシュプル回路を形成する。
【0100】
増幅器12Dは増幅器12Daと増幅器12Dbの2つの増幅器(LDMOS)を備える。増幅器12Da、12Dbは、出力トランス17Dのインダクタを介して直流電圧Vdcによりバイアスされ、互いに逆相の高周波信号をゲート信号として入力することにより増幅動作を互いに逆相で行う。増幅器12Dは増幅器12Daと増幅器12Dbの2つの増幅器を1つのパッケージ内に設ける構成でもよい。
【0101】
インピーダンス調整部13Dを構成する分布定数回路14Dは、偶数次高調波を短絡する分布定数回路14Da及び分布定数回路14Dbの2つの分布定数回路を備える。分布定数回路14Da及び分布定数回路14Dbは対を成す構成によりプッシュプル回路を形成し、それぞれ偶数次高調波を短絡する複数本のオープンスタブを備える。
図7に示す構成例では、分布定数回路14Da及び分布定数回路14Dbは、2次高調波を短絡する線路長がλ
2/4のオープンスタブ、4次高調波を短絡する線路長がλ
4/4のオープンスタブ、及び8次高調波を短絡する線路長がλ
8/4のオープンスタブの3本のオープンスタブをそれぞれ備える。
【0102】
インピーダンス調整部13Dを構成する集中定数回路15Dは、出力トランス17Dの2次側に直列接続されたインダクタLfと2次側に並列接続されたキャパシタCfとにより構成され、奇数次高調波を高インピーダンスにインピーダンス調整する誘導性負荷を形成する。
【0103】
インピーダンス調整部13Dの出力端は整合回路18Dを介して負荷16Dに接続される。整合回路18Dは基本波に対して整合を行う回路であり、直列接続されたインダクタLoと負荷に対して並列接続されたキャパシタCoとにより構成される。負荷16Dとして50ohmの例を示しているが、一例であってこれに限られるものはない。
【0104】
[逆F級増幅器による高周波増幅器の構成例]
図8(a),(b)は逆F級増幅器による高周波増幅器の構成例(1C,1D)を示している。構成例1Cは3次高調波のインピーダンス調整をオープンスタブにより行う構成であり、構成例1Dは3次高調波のインピーダンス調整を集中定数回路により行う構成である。なお、図中のLdaは直流インダクタンスを示し、Cdaは直流カットキャパシタンスを示している。
【0105】
(a)逆F級増幅器1C
図8(a)において、逆F級増幅器1Cは増幅器2とインピーダンス調整部3Cにより構成される。増幅器2は、LDMOSのドレイン電圧を直流電圧Vdcでバイアスし、得られる方形波状の電流波形の高調波成分をインピーダンス調整部3Cで除いた後、負荷6に出力する。
【0106】
インピーダンス調整部3Cは、奇数次高調波に対するインピーダンスを短絡して零とする分布定数回路4Cと、偶数次高調波に対するインピーダンスを高インピーダンスとし、基本波に対して所定の誘導性負荷とする容量性負荷の集中定数回路5Cとにより構成される。増幅器2の出力端から負荷6側を見込んだ高周波に対するインピーダンスが逆F級動作のインピーダンス条件を充たす高調波処理が行われる。
【0107】
(a1)分布定数回路4C
分布定数回路4Cは、オープンスタブの伝送線路により奇数次高調波に対するインピーダンスを短絡する。オープンスタブの一端は開放端であり、線路長は奇数次高調波の各波長λn(nは奇数)の1/4波長のλn/4である。
【0108】
オープンスタブの線路長を奇数次高調波の波長λn(nは奇数)の1/4波長とすると、オープンスタブの開放端の電圧波形は腹となって開放状態となり、オープンスタブとの接続端となる増幅器2の出力端Aにおける奇数次高調波は短絡状態となる。
【0109】
奇数次高調波成分は高次数ほど小さくなるため、逆F級動作のインピーダンス条件の充足は有限個の奇数次高調波で足りる。
【0110】
例えば、n=3,5,7としたとき、3次高調波(周波数f3)、5次高調波(周波数f5)、及び7次高調波(周波数f7)に対応する線路長L3,L5,L7の3本のオープンスタブを用いることにより、3次高調波、5次高調波、7次高調波の奇数次高調波のインピーダンスは短絡される。
【0111】
n次高調波の線路長Lnを有したオープンスタブは、n次高調波の奇数倍の高調波についてもインピーダンスを短絡させるため、限定された個数のオープンスタブであっても逆F級動作のインピーダンス条件を実効的に充たすことができる。
【0112】
3次高調波のオープンスタブの線路長L3は波長λ3の1/4波長λ3/4であり、基本波の波長λ1の1/4波長λ1/4の3分の1の長さである。
5次高調波のオープンスタブの線路長L5は波長λ5の1/4波長λ5/4であり、基本波の波長λ1の1/4波長λ1/4の5分の1の長さである。
7次高調波のオープンスタブの線路長L7についても同様であり、基本波の波長λ1の1/4波長λ1/4の7分の1の長さである。
【0113】
n次高調波の線路長Lnを有したオープンスタブは、n次高調波の奇数倍の高調波についてもインピーダンスを短絡させるため、限定された個数のオープンスタブであっても逆F級動作のインピーダンス条件を実効的に充たすことができる。奇数倍の高調波の関係を利用すれば、3次高調波のオープンスタブにより9次高調波のオープンスタブを省略することができる。これによれば、3次高調波、5次高調波、7次高調波に対応する線路長L3,L5,L7の3本のオープンスタブを用いることにより、3次高調波、5次高調波、7次高調波、9次高調波までの奇数次高調波のインピーダンスを短絡することができる。
【0114】
(a2)集中定数回路5C
集中定数回路5Cは容量性負荷であり、負荷に対して直列接続されたインダクタLfと並列接続されたキャパシタCfにより構成され、偶数次高調波に対するインピーダンスを高インピーダンスとし、基本波に対しては所定の誘導性負荷とする。キャパシタCfは、図中の破線で示すように、出力端Aと接地端との間に直列接続してもよい。
【0115】
(b)逆F級増幅器1D
図8(b)において、逆F級増幅器1Dは増幅器2とインピーダンス調整部3Dにより構成される。増幅器2は、LDMOSのドレイン電圧を直流電圧Vdcでバイアスし、得られる方形波状の電流波形に含まれる高調波成分をインピーダンス調整部3Dで除いた後、負荷6に出力する。
【0116】
図8(a)に示す逆F級増幅器1Cの構成例では、分布定数回路4Cにおいて、3次高調波、5次高調波、及び7次高調波に対するインピーダンスをオープンスタブの伝送線路で短絡している。これに対して、
図8(b)に示す逆F級増幅器1Dの構成例では、逆F級増幅器1Cの構成例の分布定数回路4Cが備える伝送線路の内、3次高調波に対するインピーダンスについてオープンスタブの伝送線路を集中定数回路に置き換え、残りの5次高調波、7次高調波、及び9次高調波に対するインピーダンスについては、逆F級増幅器1Cの構成例と同様にオープンスタブの伝送線路の分布定数回路4Dで構成している。増幅器2は逆F級増幅器1Cと同様の構成とすることができる。
【0117】
(b1)インピーダンス調整部3D
図8(b)に示す逆F級増幅器1Dの構成例において、インピーダンス調整部3Dは、出力端Aから負荷6側を見込んだインピーダンスについて、奇数次高調波(5次高調波、7次高調波、及び9次高調波)に対するインピーダンスを短絡して零とする分布定数回路4Dと、偶数次高調波に対するインピーダンスを開放して高インピーダンスとし、基本波に対して所定の誘導性負荷とする容量性負荷5Daと、3次高調波に対するインピーダンスを短絡する直列共振回路5Dbにより構成され、増幅器2の出力端Aから負荷6側を見込んだ高周波に対するインピーダンスが逆F級動作のインピーダンス条件を充たす高調波処理が行われる。このとき、容量性負荷5Da及び直列共振回路5Dbは、集中定数回路5Dを構成している。
【0118】
(b2)分布定数回路4D
奇数次高調波に対するインピーダンスを短絡するオープンスタブのうちで線路長が最も長いオープンスタブは3次高調波に対するものである。分布定数回路4Dは、逆F級増幅器1Cの分布定数回路4Cが備える3次高調波に対するオープンスタブを除く構成であり、これにより線路長が長いオープンスタブの長さを省いて回路サイズを小型化する。
【0119】
分布定数回路4Dは、分布定数回路4Cと同様に、オープンスタブの伝送線路により奇数次高調波に対するインピーダンスを短絡する。オープンスタブの一端は開放端であり、線路長は奇数次高調波の各波長λn(nは奇数)の1/4波長のλn/4である。分布定数回路4Dは、3次高調波に対するオープンスタブを備えていないため、5次高調波、7次高調波に対するオープンスタブに加えて、分布定数回路4Cでは省いていた9次高調波に対するオープンスタブを備える。
【0120】
オープンスタブの線路長を奇数次高調波の波長λn(nは奇数)の1/4波長とすると、オープンスタブの開放端の電圧波形は腹となって開放状態となり、オープンスタブとの接続端となる増幅器2の出力端Aにおける奇数次高調波は短絡状態となる。
【0121】
(b3)集中定数回路5D
集中定数回路5Dは、容量性負荷5Da及び直列共振回路5Dbを備える。容量性負荷5Daは容量性負荷であり、負荷に対して直列接続されたインダクタLfと並列接続されたキャパシタCfにより構成され、偶数次高調波に対するインピーダンスを高インピーダンスとし、基本波に対しては所定の誘導性負荷とする。
【0122】
キャパシタCfは、図中の破線で示すように、出力端Aと接地端との間に直列接続してもよい。直列共振回路5Dbは、インダクタLf3とキャパシタCf3の直列回路により構成され、3次高調波に対するオープンスタブの伝送線路に代えて集中定数回路を用いて周波数f3の3次高調波に対するインピーダンスを短絡する。
【0123】
逆F級増幅器1Dは、線路長が長いオープンスタブを除くことにより回路サイズの小型化が図られる。基本波の周波数が低い場合には、奇数次高調波に対するインピーダンスを短絡するオープンスタブの線路長も長くなるため、更に高次の奇数次高調波についても線路長が長いオープンスタブに代えて集中定数回路に置き換えることにより、回路サイズの小型化が図られる。
【0124】
[容量性負荷の形態例]
容量性負荷の形態例1、2について
図9を用いて説明する。
図9(a)~
図9(c)は形態例1を示し、
図9(d)は形態例2を示している。
(a)形態例1
形態例1の容量性負荷は、出力トランス17Eのコイルに対して直列接続されるインダクタLfと、出力トランス17Eの1次側コイルに対して並列接続されるキャパシタCfにより構成される。
図9(a)に示す例は、インダクタLfが出力トランス17Eの1次側コイルに対して直列接続される構成例であり、
図9(b)に示す例は、インダクタLfが出力トランス17Eの2次側コイルに対して直列接続される構成例である。
図9(c)に示す例は、インダクタLfが出力トランス17Eの1次側コイルに対して直列接続され、キャパシタCfが1次側コイルの両端においてそれぞれ接地端に接続される構成例である。インダクタLfは、トランスのリーケージインダクタを利用してもよい。
(b)形態例2
形態例2の容量性負荷は、出力トランス17Fの2次側において、出力トランス17Fのコイルに対して直列接続されたインダクタLfと、並列接続されたキャパシタCfにより構成される。
図9(d)は形態例2を示している。
【0125】
[逆F級増幅器によるプッシュプル構成の高周波増幅器]
本発明の高周波増幅器は、逆F級増幅器においても互いに逆相の高周波信号を増幅する2つの増幅器を用いたプッシュプル構成とし、高出力で歪みの小さい出力を得ることができる。逆F級増幅器のプッシュプル構成の2つの増幅器は出力トランスを介して負荷に接続される。以下、逆F級増幅器によるプッシュプル構成の高周波増幅器において、前記した誘導性負荷の各形態を適用した構成例を示す。
【0126】
(a)構成例5
図10は高周波増幅器の構成例5を示している。構成例5は容量性負荷の形態例1を適用した構成である。なお、ここではインダクタLfは出力トランス17Eの両端に設けた構成を示している。
【0127】
構成例5の高周波増幅器11Eは、増幅器12Eとインピーダンス調整部13Eとを備え、増幅器12E及びインピーダンス調整部13Eは、対構成とすることによりプッシュプル回路を形成する。
【0128】
増幅器12Eは増幅器12Eaと増幅器12Ebの2つの増幅器(LDMOS)を備える。増幅器12Ea、12Ebは、出力トランス17Eの1次側のインダクタを介して直流電圧Vdcによりバイアスされる。増幅器12Eaと増幅器12Ebは、互いに逆相の高周波信号がゲート信号として印加されることにより増幅動作を互いに逆相で行い、プッシュプル動作を行う。
【0129】
インピーダンス調整部13Eは分布定数回路14Eと集中定数回路15Eとを備える。分布定数回路14Eは、奇数次高調波を短絡する分布定数回路14Ea及び分布定数回路14Ebの2つの分布定数回路を備える。分布定数回路14Ea及び分布定数回路14Ebは、対を成す構成によりプッシュプル回路を形成し、それぞれ奇数次高調波を短絡する複数本のオープンスタブを備える。
図10に示す構成例5では、分布定数回路14Ea及び分布定数回路14Ebは、3次高調波を短絡する線路長がλ
3/4のオープンスタブ、5次高調波を短絡する線路長がλ
5/4のオープンスタブ、及び7次高調波を短絡する線路長がλ
7/4のオープンスタブの3本のオープンスタブをそれぞれ備える。
【0130】
集中定数回路15Eは、出力トランス17Eの1次側に直列接続されたインダクタLfと、並列接続されたキャパシタCfにより構成され、基本波に対して所定の誘導性負荷とし、偶数次高調波に対して高インピーダンスにインピーダンス調整する容量性負荷を形成する。
【0131】
インピーダンス調整部13Eの出力端は整合回路18Eを介して負荷16Eに接続される。整合回路18Eは基本波に対して整合を行う回路であり、直列接続されたインダクタLoと並列接続されたキャパシタCoにより構成される。負荷16Eとして50ohmの例を示しているが、一例であってこれに限られるものはない。
【0132】
(b)構成例6
図11は高周波増幅器の構成例6を示している。構成例6は容量性負荷の形態例2を適用した構成である。
【0133】
構成例6の高周波増幅器11Fは、増幅器12Fとインピーダンス調整部13Fとを備え、増幅器12F及びインピーダンス調整部13Fは、対構成とすることによりプッシュプル回路を形成する。高周波増幅器11Fの構成は、容量性負荷を構成する集中定数回路15Fの形態を除いて高周波増幅器11Eの構成と同様である。
【0134】
増幅器12Fは増幅器12Faと増幅器12Fbの2つの増幅器(LDMOS)を備える。増幅器12Fa、12Fbは、出力トランス17Fの1次側のインダクタを介して直流電圧Vdcによりバイアスされる。増幅器12Faと増幅器12Fbは、互いに逆相の高周波信号がゲート信号として印加されることにより増幅動作を互いに逆相で行い、プッシュプル動作を行う。
【0135】
インピーダンス調整部13Fは分布定数回路14Fと集中定数回路15Fとを備える。分布定数回路14Fは、奇数次高調波を短絡する分布定数回路14Fa及び分布定数回路14Fbの2つの分布定数回路を備える。分布定数回路14Fa及び分布定数回路14Fbは対を成す構成によりプッシュプル回路を形成し、それぞれ奇数次高調波を短絡する複数本のオープンスタブを備える。
図11に示す構成例6では、分布定数回路14Fa及び分布定数回路14Fbは、3次高調波を短絡する線路長がλ
3/4のオープンスタブ、5次高調波を短絡する線路長がλ
5/4のオープンスタブ、及び7次高調波を短絡する線路長がλ
7/4のオープンスタブの3本のオープンスタブをそれぞれ備える。
【0136】
集中定数回路15Fは、出力トランス17Fの2次側に直列接続されたインダクタLfと並列接続されたキャパシタCfにより構成され、基本波に対して所定の誘導性負荷とし偶数次高調波に対して高インピーダンスにインピーダンス調整する容量性負荷を形成する。
【0137】
インピーダンス調整部13Fの出力端は整合回路18Fを介して負荷16Fに接続される。整合回路18Fは基本波に対して整合を行う回路であり、直列接続されたインダクタLoと並列接続されたキャパシタCoにより構成される。負荷16Fとして50ohmの例を示しているが、一例であってこれに限られるものはない。インダクタLfはインダクタLoに含めた構成としてもよい。
【0138】
[高周波増幅器の多層構造]
本発明の高周波増幅器を多層構造の適用により構成し、多層構造を構成する多層基板に分布定数回路の伝送線路を配置する。多層構造としてストリップライン構造及びマイクロストリップライン構造を用いることができる。
図12は多層基板の構成例を示している。
【0139】
(a)ストリップライン構造
図12(a)の多層基板は、上下面をGND層とし、上下のGND層の間の内層に基板材を挟むストリップライン構造であり、内層に伝送線路を配置する。ストリップライン構造では、波長短縮率vf(=1/√ε
r)は基板材の比誘電率ε
rに依存するため、高誘電体の基板材を用いることにより伝送線路の長さを短縮することができる。本発明の高周波増幅器では、2次高調波に用いるオープンスタブの伝送線路TL2の線路長が最も長いため、この伝送線路TL2をストリップライン構造の内層の基板材内に配置することにより、回路サイズの小型化に寄与することができる。
【0140】
(b)マイクロストリップライン構造
図12(b)の多層基板は、裏面をGND層とし、GND層の上層に基板材を設けたマイクロストリップライン構造であり、基板材内と基板上の表層である空気層に伝送線路を配置する。
【0141】
マイクロストリップライン構造では、空気層と基板の実効比誘電率εr'は基板材の比誘電率εrの0.6~0.8倍であるため、ストリップライン構造とする場合よりも線路長は長くなる。一方、4次高調波や8次高調波に用いるオープンスタブの伝送線路TL4、TL8は、2次高調波の伝送線路TLよりも線路長が短いため、実効比誘電率εr'が小さい空気層に伝送線路を配置したマイクロストリップライン構造では、伝送線路TL4、TL8の線路長は2次高調波の伝送線路TLの線路長を超えることはなく、回路サイズの小型化に対する影響は小さい。
【0142】
(c)積層構造
図12(c)は、ストリップライン構造とマイクロストリップライン構造とを積層した多層構造を示している。
【0143】
この多層構造では、上面GND層と下面GND層の間に基板材を挟み、基板材内に線路長が長い伝送線路TL2を配置したストリップライン構造と、ストリップライン構造の上面GND層を裏GND層とし、裏GND層上の基板材の上面に線路長が短い伝送線路TL4,TL8を配置したマイクロストリップライン構造とを積層することにより多層に形成される。伝送線路TL2と伝送線路TL4,TL8とは、多層貫通ビアホールを介して接続される。
【0144】
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本発明に係る広帯域RF電源の一例であり、本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の高周波増幅器は、半導体製造装置や液晶パネル製造装置等に用いられる高周波電源(RFジェネレータ)に適用することができる。
【符号の説明】
【0146】
1、1a、1b 高周波増幅器
1A、1B F級増幅器
1C 逆F級増幅器
1D 逆F級増幅器
2 増幅器
3、3A、3B、3C、3D インピーダンス調整部
4、4A、4B、4C、4D 分布定数回路
4a、4b 分布定数回路
5、5A、5B、5C、5D 集中定数回路
5Ba、5Bb 集中定数回路
5Da 容量性負荷
5Db 直列共振回路
5a 集中定数回路
5b 集中定数回路
6 負荷
8 整合回路
11A、11B、11C、11D、11E、11F 高周波増幅器
12A、12B、12C、12D、12E、12F 増幅器
12Aa、12Ab 増幅器
12Ba、12Bb 増幅器
12Ca、12Cb 増幅器
12Da、12Db 増幅器
12Ea、12Eb 増幅器
12Fa、12Fb 増幅器
13A、13B、13C、13D、13E、13F インピーダンス調整部
14A、14B、14C、14D、14E、14F 分布定数回路
14Aa、14Ab 分布定数回路
14Ba、14Bb 分布定数回路
14Ca、14Cb 分布定数回路
14Da、14Db 分布定数回路
14Ea、14Eb 分布定数回路
14Fa、14Fb 分布定数回路
15A、15B、15C、15D、15E、15F 集中定数回路
16A、16B、16C、16D、16E、16F 負荷
17A、17B、17C、17D、17E、17F 出力トランス
18A,18B、18C、18D、18E、18F 整合回路
101A、101B F級増幅器
102A、102B 直流給電回路
103A、103B 伝送線路
104A 並列共振回路
104B 直列共振回路
106A、106B 負荷
TL、TL2、TL4、TL8 伝送線路