(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240513BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240513BHJP
【FI】
A61B6/00 550M
A61B6/00 560
G06T7/00 612
(21)【出願番号】P 2021167597
(22)【出願日】2021-10-12
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小原 一誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 大輔
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-030355(JP,A)
【文献】特開2020-179031(JP,A)
【文献】特開2018-190045(JP,A)
【文献】特開平06-266688(JP,A)
【文献】特開2021-117926(JP,A)
【文献】特開2020-168200(JP,A)
【文献】特開2021-094219(JP,A)
【文献】特開昭60-177286(JP,A)
【文献】特開2021-149672(JP,A)
【文献】国際公開第2021/230000(WO,A1)
【文献】特開2020-003406(JP,A)
【文献】特開2023-008225(JP,A)
【文献】特開2021-086558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0156524(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58 、
G01T 1/00 - 7/12 、
G06N 3/00 - 3/12 、 7/08 -99/00 、
G06T 1/00 - 1/40 、 3/00 - 7/90 、
G06V10/00 -20/90 、30/418、40/16 、
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出装置に設けられる蛍光体に関する情報を含む複数の撮影情報に対応した複数の医用画像を用いたニューラルネットワークによる機械学習により得た複数の学習済みパラメータを記憶する記憶手段から、撮影に使用した放射線検出装置に対応する撮影情報に含まれる蛍光体に関する情報に基づいて選択された前記撮影に使用した放射線検出装置に対応する学習済みパラメータを読み出す読出手段と、
前記撮影に使用した放射線検出装置により取得された医用画像を、前記読出手段により読み出された学習済みパラメータを用いたニューラルネットワークに入力することにより前記取得された医用画像のノイズ低減処理を行う処理手段と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記読出手段は、外部に設けられた前記記憶手段から学習済みパラメータを読み出す請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記複数の撮影情報のそれぞれについて、撮影情報と読み出す学習済みパラメータの対応を示す対応情報を生成する生成手段をさらに備え、
前記読出手段は、前記対応情報を参照して、前記選択された前記撮影に使用した放射線検出装置に対応する学習済みパラメータを前記記憶手段から読み出す請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、ニューラルネットワークの構造に関する情報をさらに記憶し、
前記読出手段は、前記撮影に使用した放射線検出装置に対応する撮影情報に含まれる蛍光体に関する情報に基づいて選択された前記撮影に使用した放射線検出装置に対応する学習済みパラメータと前記ニューラルネットワークの構造に関する情報とを読み出す請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
放射線検出装置に設けられる蛍光体に関する情報を含む複数の撮影情報に対応した複数の医用画像を用いたニューラルネットワークによる機械学習により得た複数の学習済みパラメータを記憶する記憶手段から、撮影に使用した放射線検出装置に対応する撮影情報に含まれる蛍光体に関する情報に基づいて選択された前記撮影に使用した放射線検出装置に対応する学習済みパラメータであって、
前記撮影に使用した放射線検出装置により取得された医用画像を、前記選択された前記撮影に使用した放射線検出装置に対応する学習済みパラメータを用いたニューラルネットワークに入力することにより前記取得された医用画像のノイズ低減処理を行う処理手段を備える医用画像処理装置。
【請求項6】
前記撮影情報は、撮影解像度、前記放射線検出装置のピクセルピッチのうち少なくとも一つの情報を含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記撮影情報は、処理対象画像に関する情報を更に含み、
前記処理対象画像に関する情報は、画像のサイズ、画像の使用用途、前処理に関する情報のうち少なくとも一つの情報を含む請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
撮影に使用した放射線検出装置に対応する撮影情報に含まれる蛍光体に関する情報を含む複数の撮影情報のうちの1つをユーザに選択させる選択手段を更に備え、
前記読出手段は、前記選択手段で選択された撮影情報を取得する請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記撮影に使用した放射線検出装置と、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の医用画像処理装置と、
が通信可能に接続された放射線撮影システム。
【請求項10】
放射線検出装置に設けられる蛍光体に関する情報を含む複数の撮影情報に対応した複数の医用画像を用いたニューラルネットワークによる機械学習により得た複数の学習済みパラメータを記憶する記憶手段から、撮影に使用した放射線検出装置に対応する撮影情報に含まれる蛍光体に関する情報に基づいて選択された前記撮影に使用した放射線検出装置に対応する学習済みパラメータを読み出す読出工程と、
前記撮影に使用した放射線検出装置により取得された医用画像を、前記読出工程により読み出された学習済みパラメータを用いたニューラルネットワークに入力することにより前記取得された医用画像のノイズ低減処理を行う処理工程と、
を含む医用画像処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置、医用画像処理方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療画像診断や非破壊検査において、半導体材料によって構成される平面検出器(フラットパネルディテクタ:FPD)を用いた放射線撮影装置が広く使用されている。FPDを用いて撮影した画像に対して、ノイズを除去するなどの診断に適した画像処理を行う機能がある。なかには、機械学習を用いた画像処理も存在する。
【0003】
特許文献1には、処理対象画像の検査情報に関連づいた学習データを選択的に取得して、機械学習の推論を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機械学習を用いたノイズ低減処理においては、ノイズ特性に適した学習済みパラメータを選択的に取得して、機械学習の推論に使用することで、精度を向上することができる。ノイズ特性は撮影に使用した放射線検出装置の種類や、処理対象画像に対するフィルタ等の事前処理内容に依存する。特許文献1で用いている検査情報にはこれらの情報は含まれておらず、ノイズ特性に適した学習済みパラメータの選択が不可能である。
【0006】
あるいは、画像における照射野認識を行う場合も、撮影に使用した放射線検出装置の種類や、処理対象画像に対するフィルタ等の事前処理内容を考慮することにより認識の精度を向上させることができる。
【0007】
そこで本発明は、放射線検出装置の情報、処理対象画像の情報などの撮影情報を用いて学習済みパラメータを選択することにより精度の高い推論を行うことを目的の一つとする。
【0008】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の1つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の技術に係る医用画像処理装置の一つは、
放射線検出装置に設けられる蛍光体に関する情報を含む複数の撮影情報に対応した複数の医用画像を用いたニューラルネットワークによる機械学習により得た複数の学習済みパラメータを記憶する記憶手段から、撮影に使用した放射線検出装置に対応する情報に含まれる蛍光体に関する情報に基づいて選択された前記撮影に使用した放射線検出装置に対応する学習済みパラメータを読み出す読出手段と、
前記撮影に使用した放射線検出装置により取得された医用画像を、前記読出手段により読み出された学習済みパラメータを用いたニューラルネットワークに入力することにより前記取得された医用画像のノイズ低減処理を行う処理手段と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮影情報を用いて学習済みパラメータを選択することにより精度の高い推論を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態による放射線撮影システムの構成例を示す図。
【
図2】第1実施形態による撮影処理を示すフローチャート。
【
図3】第1実施形態による学習結果データの取得処理を示すフローチャート。
【
図4】第2実施形態による転送出力処理を示すフローチャート。
【
図5】第3実施形態による放射線撮影システムの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決部に必須のものとは限らない。
【実施例1】
【0013】
図1~3を参照して、本発明の実施形態による放射線撮影システムの構成および動作について説明する。
【0014】
図1は、第1実施形態による放射線撮影システムの構成例を示す図である。放射線撮影システムは、制御装置100、放射線検出装置110、操作部120、放射線科情報システム、表示部130、放射線発生装置140を備えている。制御装置100は、放射線検出装置110と放射線発生装置140を用いた放射線撮影を制御する。
【0015】
放射線検出装置110は、放射線発生装置140から照射され、被検者(図示しない)を通過した放射線を検出し、放射線に応じた画像データを出力する。なお、画像データを医用画像、放射線画像と言い換えることもできる。具体的には、放射線検出装置110は、被検者を透過した放射線を、透過放射線量に相当する電荷として検出する。例えば、放射線検出装置110には、放射線を電荷に変換するa-Seなどの放射線を直接的に電荷に変換する直接変換型センサや、放射線を可視光に変換するCsIなどのシンチレータとa-Siなどの光電変換素子を用いた間接型センサが用いられる。さらに、放射線検出装置110は、検出された電荷をA/D変換することにより、画像データを生成し、制御装置100へ出力する。
【0016】
制御装置100は、例えば、有線または無線のネットワークもしくは専用線で放射線検出装置110と接続されている。放射線検出装置110は、放射線発生装置140で発生した放射線を撮影し、画像データを制御装置100に出力する。制御装置100は、コンピュータ上で動作するアプリケーション機能を有している。すなわち、制御装置100は、1つ以上のプロセッサーとメモリを有し、該プロセッサーがメモリに格納されたプログラムを実行することにより、以下で説明される各機能部を実現する。但し、各機能部の一部あるいはすべてが、専用のハードウエアにより実現されてもよい。制御装置100は、放射線検出装置110から出力された画像データに対して画像処理を行ない、画像を生成し、表示部130に表示する。操作部120は、操作者からの指示を受け付ける。また、制御装置100は、各構成要素を制御する機能を有している。制御装置100は、放射線検出装置110の動作を制御しつつ、表示部130へ画像を出力したり、表示部130を用いたグラフィカルユーザインターフェースを提供したりする。
【0017】
制御装置100は、放射線発生装置140が放射線を発生するタイミングと放射線の撮影条件を制御する。制御装置100において、画像取得部101は、放射線検出装置110が画像データを撮影するタイミングと出力するタイミングを制御する。撮影情報入力部104は、撮影情報を取得する第1の取得部の一例である。本実施形態の撮影情報入力部104は、操作者が操作部120から手動入力した撮影情報を入力する、または、画像取得部101から撮影情報を取得してユーザに操作部120を用いて選択させる。撮影情報入力部104に入力された撮影情報は、放射線検出装置110が撮影した画像データと関連付けて管理される。
【0018】
学習結果データ取得部105は、学習結果データ記憶部106から学習結果データを読み出す。学習結果データ記憶部106は、教師画像を用いた機械学習により得られた学習結果データを記憶する。また、学習結果データ記憶部106は、撮影情報と読み出す学習結果データの対応を示す対応情報を記憶する。また、学習結果データ取得部105は、撮影情報に含まれる種々の単語および単語の組み合わせと、学習結果データ記憶部106に記憶されている学習結果データとを紐づける情報を読み出す。したがって、学習結果データ取得部105は、撮影情報に含まれている単語に基づいて、画像処理部102(推論処理部103)の処理が使用する学習結果データを取得することができる。また、対応情報を参照して、選択された撮影情報に対応する学習結果データを学習結果データ記憶部106から読み出すことができる。すなわち、学習結果データ取得部105は、予め機械学習によって取得した学習結果データを記憶する記憶部(学習結果データ記憶部106)から、上記撮影情報に基づいて選択された学習結果データを読み出す読出部の一例である。
【0019】
画像取得部101は、第1の取得部(撮影情報入力部104)により取得された撮影情報に基づいて取得された医用画像を取得する第2の取得部の一例である。本実施形態では医用画像として、放射線検出装置110で撮影された放射線画像が取得される。画像処理部102は、放射線検出装置110から出力された画像データに対して、コントラスト調整などの画像処理を行う。また、画像処理部102は、放射線検出装置110から出力された画像に対して、トリミングや回転といった画像処理を行なうこともできる。推論処理部103は、ノイズ低減などの、機械学習による学習結果データを用いた推論処理を行う。画像処理部102は、推論処理部103として、ノイズ低減以外にも、照射野認識、階調処理など目的に応じた複数の推論処理部を有するようにしてもよい。画像処理部102は、画像処理後の画像を表示部130に表示させる。画像処理部102および推論処理部103は、取得された医用画像を読出部(学習結果データ取得部105)により読み出された学習結果データを用いて処理する処理部の一例である。
【0020】
次に、
図2のフローチャートに従い、第1実施形態による放射線画像処理を説明する。
【0021】
ステップS201において、撮影情報入力部104は、操作部102から取得した複数の撮影情報のうち1つをユーザに選択させ、検査対象として設定する。かかる処理は例えば、取得された複数の撮影情報をリスト形式で表示し、該リストから1つの撮影情報を選択するユーザの操作入力に応じて、当該選択された撮影情報が検査対象として設定することで実現される。なお、操作部120からユーザが撮影情報を直接入力するようにしてもよい。
【0022】
ステップS202で、制御装置100は設定された撮影情報に従って放射線検出装置110に対して準備状態へと遷移させるための信号を送信することにより検査を開始する。この信号に応じて、例えば放射線検出装置110は、主制御回路によりバイアス電源を制御し、2次元撮像素子にバイアス電圧を印加する。その後、画素に蓄積した暗電流信号を読み出すため、駆動回路により画素アレイから画像信号を読み出す初期化を行う。初期化の終了後、放射線検出装置110は、放射線画像を得るための準備が整った状態であることを示す状態情報を制御装置100に送信する。また、制御装置100(撮影情報入力部104)は、ステップS203で選択された撮影情報に基づいて放射線発生装置140の動作パラメータ(管電圧など)を設定する。制御装置100は、放射線検出装置110からの状態情報により撮影準備が整ったことの通知を受けると、放射線発生装置140に曝射許可を通知する。
【0023】
ステップS203では、画像取得部101が、放射線検出装置110によって撮影された放射線画像を取得する。より具体的には、例えば、曝射許可を通知された放射線発生装置140が曝射ボタンの操作に応じて放射線を照射すると、放射線検出装置110の駆動回路は照射された放射線を検出して得られた画像信号を読出し回路により読み出し、放射線画像を生成する。放射線検出装置110は制御装置100へ生成した放射線画像を送信する。制御装置100の画像取得部101は、この放射線画像を受信する。こうして、制御装置100の撮影情報入力部104と画像取得部101は、撮影情報に基づいて、放射線撮影の動作を制御し、該放射線撮影により得られた放射線画像を、撮影情報に基づいて撮影された放射線画像として取得するための制御部として機能する。
【0024】
一方、ステップS204において、学習結果データ取得部105は、ステップS203で選択された撮影情報に基づいて、学習結果データ記憶部106から選択的に学習結果データを取得する。ステップS204の処理の詳細は
図3のフローチャートにより後述する。ここで、撮影情報とは、例えば、放射線検出装置に関する情報、処理対象画像に関する情報、などがある。例えば、放射線検出装置に関する情報は、放射線検出装置に含まれる蛍光体に関する情報、放射線検出装置の撮影解像度、放射線検出装置のピクセルピッチ、放射線検出装置の駆動モードなどを含む。また、処理対象画像に関する情報は画像のサイズ、画像の使用用途、前処理に関する情報を含む。例えば、画像のサイズは、フルサイズ、1/8、1/4、1/2などであらわされ、画像の使用用途は、プレビュー、転送出力などであらわすことができる。すなわち、処理対象画像に関する情報は、1/8間引きプレビュー画像、1/4間引きプレビュー画像、1/2間引きプレビュー画像、間引きなしフルサイズ画像、転送出力画像、などの情報を含む。また、撮影情報は、撮影に使用した放射線検出装置に関する情報と、処理対象画像に関する情報、の少なくとも1つの情報を含む。なお、ステップS204の処理は、ステップS203の処理(放射線画像の取得)と並行して実行され得る。
【0025】
ステップS205において、画像処理部102は、画像取得部101が取得した放射線画像に対して画像処理を実行する。このとき、ステップS204で取得した学習結果データを用いて、推論処理部103が機械学習による推論処理を実行する。推論処理部103は、例えば、画像のノイズ低減を行う処理、画像上に重畳するアノテーション等の表示内容を決定するアノテーション処理、あるいは、階調処理などを行う。また、診断画像処理は、そのような処理結果または選択された学習結果データを判別することができる情報を表示部130に表示するようにしてもよい。
【0026】
ステップS206において、制御装置100は、操作者の入力操作に応じて当該検査を終了する。
【0027】
次に、
図3のフローチャートを参照して、学習結果データ取得部105による学習結果データの取得処理(ステップS204の処理)を説明する。
【0028】
ステップS301において、学習結果データ取得部105は、ステップS203で決定した撮影情報を取得する。
【0029】
ステップS302で、学習結果データ取得部105は、ステップS301で取得された撮影情報に応じた学習結果データを選択する。
【0030】
そして、ステップS303において、学習結果データ取得部105は、ステップS302で選択した学習結果データを学習結果データ記憶部106から読み出し、例えば推論処理部103が利用できるように展開して、不図示の保持部に保持する。
【0031】
以上のように第1実施形態によれば、撮影情報に対応する学習結果データを学習結果データ記憶部106から選択的に取得するため、精度の高い推論を行うことができる。また、画像処理部102は、最適な学習結果データを用いたノイズ低減処理を実現できる。結果、所望とする医用画像処理が実施されることになり診断能が向上する。
【実施例2】
【0032】
第1の実施形態では撮影時のフローについて説明したが、制御装置で撮影した医用画像は一般的に院内ネットワークに接続された画像確認用の外部デバイスに出力されて、診断等に用いられる。ここでは第1の実施形態において完了した検査が存在する状態で、医用画像をPACSやプリンタ等の外部デバイスで出力する際のフローについて説明する。
図4のフローチャートを参照して、第2の実施形態における放射線撮影システムが実施する処理の手順を説明する。
【0033】
ステップS401において、撮影情報入力部104は、操作部102から取得した複数の検査終了済み撮影情報のうち1つをユーザに選択させ、転送出力対象として設定する。かかる処理は例えば、取得された複数の検査終了済み撮影情報をリスト形式で表示し、該リストから1つの検査終了済み撮影情報を選択するユーザの操作入力に応じて、当該選択された検査終了済み撮影情報が転送出力対象として設定することで実現される。なお、操作部120からユーザが検査終了済み撮影情報を直接入力するようにしてもよい。
【0034】
ステップS402で、操作部120でユーザが選択した検査終了済み撮影情報の転送出力処理を開始する。
【0035】
ステップS403では、画像取得部101が、不図示の画像保存部から、検査終了済み撮影情報に関連付けられた放射線画像を取得する。
【0036】
一方、ステップS404において、学習結果データ取得部105は、ステップS403で選択された撮影情報に基づいて、学習結果データ記憶部106から選択的に学習結果データを取得する。
【0037】
ステップS405において、画像処理部102は、画像取得部101が取得した放射線画像に対して転送出力画像処理を実行する。このとき、ステップS404で取得した学習結果データを用いて、推論処理部103が機械学習による推論処理を実行する。推論処理部103は、例えば、転送出力画像のノイズ低減を行う処理、転送出力画像上に重畳するアノテーション等の表示内容を決定する処理、などを行う。なお、転送出力では出力先で高精細モニタ等の画面で画像確認が行われるなどの用途の違いから、プレビュー時とは異なる画像処理が実施されると想定される。そのため、例えば、プレビューは速度を優先する学習結果データを用いるが、転送出力では画質を優先する学習結果データを用いる等の使い分けができる。
【0038】
ステップS406において、制御装置100は、転送出力検査を終了する。
【0039】
以上のように第2実施形態によれば、転送処理においても、転送処理に適した最適な学習結果データを用いた精度の高い推論を行うことができる。また、最適な学習結果データを用いたノイズ低減処理を実現できる。
【実施例3】
【0040】
第1実施形態では、制御装置100が学習結果データ記憶部106を有する構成(
図1)を説明したが、これに限られるものではない。制御装置100と通信可能に接続された外部記憶装置に学習結果データ記憶部106を設けてもよい。
図5は、第3実施形態による放射線撮影システムの構成例を示すブロック図である。
図5において、学習結果データ記憶部106が、制御装置100の外部に設けられた外部記憶装置200に配置されている。なお、
図5において、第1実施形態と同様の構成には同一の参照番号を付してある。外部記憶装置200としては、例えば、ネットワークストレージ、外部のコンピュータ、クラウド、等があげられる。
【0041】
制御装置100が学習結果データを取得するには、制御装置100と外部記憶装置200との間で通信を行うことが必要となるが、この通信の形態は、有線、無線などいかなるものであってもよい。
【0042】
以上のような第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、撮影情報に対応する学習結果データを選択的に取得するため、医用画像装置の操作性を向上することが可能となる。また、第3実施形態では、さらに、学習結果データを別施設の制御装置100と共有することができるため、最新の学習結果データを配信、管理することが容易となる。
【実施例4】
【0043】
第1の実施形態では撮影情報を使用したノイズ低減処理の学習結果データの取得について説明したが、すくなくとも1つの撮影情報に含まれる情報を利用した学習結果データの取得を行う構成であれば、画像処理部102は他の機械学習を使用した画像処理であってもよい。例えば、放射線検出装置のサイズに従って、撮影される頻度が高い被写体の医学的部位が異なる。したがって、学習結果データ取得部105は放射線検出装置のサイズに依存した学習結果データを取得することで、機械学習を使用した照射野認識処理の精度向上が見込まれる。
【0044】
以上のような第4実施形態によれば、第1実施形態と同様に、撮影情報に対応する学習結果データを選択的に取得するため、医用画像装置の操作性を向上することが可能となる。
【実施例5】
【0045】
第1の実施形態では撮影情報を使用した学習結果データの取得について説明したが、重みパラメータだけでなく、機械学習の推定に使用するニューラルネットワークの構造に関する情報も取得する構成であってもよい。例えば、推定処理時間を短縮するための速度を優先した第1のニューラルネットワークと、画質を優先した第2のニューラルネットワークを学習結果データ記憶部106に記憶する。このとき、学習結果データ取得部105は処理対象画像が表示速度を優先するプレビュー画像の場合、第1のニューラルネットワークの構造に関する情報を含む学習結果データを取得する。また、画質を優先する転送出力画像の場合、第2のニューラルネットワークの構造に関する情報を含む学習結果データを取得する。
【0046】
以上のような第5実施形態によれば、第1実施形態と同様に、撮影情報に対応するニューラルネットワークの構造に関する情報を選択的に取得するため、精度の高い推論を行うことができる。また、医用画像装置の操作性を向上することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
100 制御装置
101 画像取得部
102 画像処理部
103 推論処理部
104 撮影情報入力部
105 学習結果データ取得部
106 学習結果データ記憶部
110 放射線検出器
120 操作部
130 表示部
140 放射線発生装置
200 外部記憶装置