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特許7487172患者の頭部領域のデジタル撮像のための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】患者の頭部領域のデジタル撮像のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/51 20240101AFI20240513BHJP
【FI】
A61B6/51 500
A61B6/51 510
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021505819
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070843
(87)【国際公開番号】W WO2020025778
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】102018000007817
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】19179132.6
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514186227
【氏名又は名称】デ ゴッツェン ソシエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャーニ クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ロトンド ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】ネットティス コスタンティーノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェントゥリーノ ジャンフランコ
(72)【発明者】
【氏名】リナルディ ジェラルド
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-010687(JP,A)
【文献】特表2015-506196(JP,A)
【文献】国際公開第2009/133937(WO,A1)
【文献】特表2018-519026(JP,A)
【文献】特開2013-244146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の頭部領域のデジタル撮像のための装置であって、
X線照射のためのX線源と、
前記X線源で生成され、前記患者を透過するX線の検出のためのX線検出器であって、前記患者の頭部領域のパノラマ撮影とコンピュータ断層撮影の両方のための単一のX線検出器と、
前記X線源と前記X線検出器を搭載し、これらを互いに対峙するよう配置し、前記X線源と前記X線検出器との間の距離を変更するための調整手段を具備する回転アームと、
前記回転アームを支えるための支持構造であって、モータ駆動される並進および回転手段が、前記回転アームと前記支持構造の間に介在する支持構造と、
前記X線源、前記X線検出器、前記調整手段並びに前記並進および回転手段を制御する制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、大きな患者のための基本の動作モードと、小さな患者のための代替の動作モードでの前記装置の動作に適合され、前記代替の動作モードにおいて、前記回転アームに対して、前記X線源が固定される一方、前記X線検出器のみを前記X線源に向かって移動させることにより、前記X線源と前記患者の頭部領域の間の距離(SOD)が一定に保たれるのに対し、前記X線源と前記X線検出器の間の距離(SSD)が前記基本の動作モードで使用される距離と比較して縮小されており、線量率及び/又は露出時間もまた削減される
患者の頭部領域のデジタル撮像のための装置。
【請求項2】
前記X線源は、前記回転アームに固定されたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御ユニットが、さらに前記回転アームの回転軸を前記X線検出器の方向に移動させることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
コンピュータ断層撮影のために、前記回転軸が、撮像対象上に位置する仮想回転軸を周回する軌道上を移動させられることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記X線検出器は、前記回転アームに対して固定されているハウジング内を移動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記調整手段は、以下を含むグループから選択される前記X線検出器の位置決めのための手段を含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置:
前記回転アームの長手方向軸に対して、横方向の動作をするための手段を含む機構、
前記回転アームに対して旋回動作をするための手段を含む機構、
前記回転アームに取りつけられたベースと前記X線検出器の支持構造との間の距離を変更するためのクロスリンク機構、
前記X線検出器をガイド構造に沿ってX線源の方向に移動させる直線移動機構、および
これらの組合せ。
【請求項7】
前記調整手段がモータ駆動であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記X線源と前記患者の間に配置され、前記代替の動作モードにおいては前記基本の動作モードより大きく開いている一次コリメータを備えていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記X線源の放射強度が、前記代替の動作モードでは前記基本の動作モードと比較して削減されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記X線源の放射強度は、前記代替の動作モードにおいて、前記X線源のX線を生成する電流または電圧、あるいはその両方を減少させることで削減されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記X線源の放射強度は、前記基本の動作モードにおける前記X線源と前記X線検出器との間の距離に対する、前記代替の動作モードにおける前記X線源と前記X線検出器との間の距離の比率の2乗により低減されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記X線検出器の露出時間は、前記代替の動作モードでは前記基本の動作モードより短いことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
拡大率は、前記代替の動作モードと前記基本の動作モードで同じことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記基本の動作モードは大人用の動作モードで、前記代替の動作モードは子供用の動作モードであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記X線源と前記X線検出器の間の距離は、前記患者の身体的パラメータを特定するための検出手段の結果に従って調整されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記X線源は、前記X線源が移動している間に、前記X線源と前記患者または患者の位置決め手段、あるいはその両方と干渉する可能性を検出するための干渉検出手段を、または前記X線検出器は、前記X線検出器が移動している間に、前記X線検出器と前記患者または前記患者の位置決め手段、あるいはその両方と干渉する可能性を検出するための干渉検出手段を、あるいはその両方の干渉検出手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記干渉検出手段は、静電容量式距離センサ、超音波式距離センサ、光学式距離センサ、およびToF式光学センサを含むグループから選択されることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の頭部領域のデジタル撮像のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、歯科の撮像のためのパノラマX線断層撮影法とコンピュータ断層撮影法(=CT)の複合装置を開示している。この装置は、X線源とX線検出ユニットを備え、X線源で生成され、患者を透過するX線の検出のために、パノラマ用検出部分またはCT用検出器部分のいずれかを有する。装置はさらに回転アームを備え、回転アームに搭載されたX線源とX線検出器ユニットを互いに対峙するよう配置する。該回転アームは、支持部材により保持されている。駆動手段が設けられ、該回転アームに対して互いに対向するよう配置されたX線源とX線検出ユニットとの間の距離を変更できるようになっている。
【0003】
この既知の装置は、パノラマ撮影とCT撮影を実施することができ、前記装置がパノラマ撮影モードまたはCT撮影モードで操作されているかによって、最適な拡大率を提供する。この最適な拡大率は、X線源とX線検出器ユニットとの間隔を変更することによって達成される。
【0004】
この既知の装置は、通常の大きさの大人の患者に対してのみ最適である。しかしながら、体格の小さな人、特に、子供の撮像には、変更が必要になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2007/0030950号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この関連技術をもとに、本発明は、体格の小さな患者、特に子供に対しても最適化された頭部領域におけるデジタル撮像のための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のこの目的は、独立請求項に記載の特徴を備える装置によって達成される。好ましい実施形態および改良形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本装置は、患者の頭部領域のパノラマ撮影およびコンピュータ断層撮影の両方のための少なくとも一のX線検出器と、X線源、X線検出器、調整手段、並びに並進および回転手段を制御する制御ユニットを備える。制御ユニットは、装置の大きな患者用の基本の動作モードでの動作と、X線源とX線検出器との間の距離が、基本の動作モードで使用される距離と比較して縮小した、小さな患者用の代替の動作モードでの動作に適合されている。X線源とX線検出器の間の相対距離が縮小されることにより、線量率または露出時間、あるいはその両方を削減でき、それにより検査を受ける子供の放射線リスクも低減する。
【0009】
代替の動作モードのために、制御ユニットはX線源とX線検出器の両方を互いに接近するよう移動でき、それにより拡大率を維持することができる。
【0010】
一つの代替実施形態では、装置は、制御ユニットにより代替の動作モードにセットされ、X線検出器だけが回転アームに固定されたX線源に向かって移動する。したがって、回転アームは、X線検出器をX線源に向かって移動させる手段のみを具備している必要がある。
【0011】
一つの変形実施形態では、代替の動作モード用の距離は、回転軸の移動により縮小される。X線源は回転アームに対して固定されており、制御ユニットは、回転アームの回転軸をX線検出器の方向に向かってずらし、X線検出器をX線源に向かって移動させることで、その距離を縮小する。これにより、両動作モードにおける拡大率は変更せずに維持できる。
【0012】
変形実施例では、コンピュータ断層撮影の場合、回転軸を撮像対象上に位置する仮想回転軸を周回する軌道上を移動させることができるので、コンピュータ断層撮影のための特殊動作モードが使用できる。
【0013】
装置の安全性を向上させるため、X線検出器は、回転アームに対し固定されているハウジング内部で動かされる。
【0014】
調整手段は、以下を含むグループから選択されるX線検出器の位置決め手段を具備していてもよい。
-回転アームの長手方向軸に対して、横方向の動作をするための手段を含む機構、
-回転アームに対して旋回動作をするための手段を含む機構、
-回転アームに取りつけられたベースとX線検出器の支持構造との間の距離を変更するためのクロスリンク機構、
-X線検出器をガイド構造に沿って線源の方向に移動させる直線移動機構、および
-これらの組合せ。
X線検出器の横方向の動作を可能にする機構は、パノラマ撮影およびCT撮影モードに合わせたX線検出器の調整を可能にする。これは、旋回機構が線源とX線検出器の間の距離の調整に使用されている場合、X線検出器の横方向の移動の補正にも使用することができる。旋回動作のための機構には、素早い位置変更という追加的なメリットがある。同様のことがクロスリンク機構にも該当する。直進移動機構は位置変更のための速度は劣るが、特に安定性と信頼性は高い。
【0015】
調整手段は、基本的にモータ駆動であるから、オペレータがX線源とX線検出器の間の距離の調整を行う必要はない。
【0016】
装置は、代替の動作モードに必要となる、より広い線幅を考慮に入れるために、X線源と患者の間に配置され、かつ代替の動作モードでは基本の動作モードのときよりも大きく開く一次コリメータを具備していてもよい。
【0017】
実施例の一つでは、放射強度とそれに相応した吸収線量率は、代替の動作モードにおいては、X線を生成するX線源の電流および電圧の少なくとも一方を削減することで削減される。
【0018】
放射強度とそれに相応した吸収線量率は、特に、基本の動作モードにおけるX線源とX線検出器との間の距離に対する、代替の動作モードにおけるX線源とX線検出器との間の距離の比率の2乗により低減されるので、露出時間は変更することなく維持されていてよい。
【0019】
代替または追加として、X線検出器の露出時間が代替の動作モードでは基本の動作モードより短くなっている。
【0020】
拡大率は代替の動作モードでも基本の動作モードでも一般に同じであるため、医療スタッフには常に通常の拡大率の画像が提供される。
【0021】
基本の動作モードは大人用の動作モードで、代替の動作モードは子供用の動作モードでよいので、線量率を子供用に最適化できる。
【0022】
特定の実施形態においては、X線源は、X線源が移動している間、患者または患者の位置決め手段、あるいはその両方との干渉の可能性を検知するために干渉検出手段を、またはX線検出器は、X線検出器が移動している間、患者または患者の位置決め手段、あるいはその両方との干渉の可能性を検知するための干渉検出手段を、あるいはその両方を備えている。干渉検出手段は、装置の安全性を向上させる。X線源とX線検出器の間の距離は、最小に縮小することができるため、X線源とX線検出器の間の縮小された距離の最大の利点を利用できる。
【0023】
干渉検出手段は、静電容量式距離センサ、超音波式距離センサ、光学式距離センサ、ToF(Time-of-Flight)式光学センサまたはその他適切なセンサを含むグループから選択される。
【0024】
X線源とX線検出器との間の距離は、患者の身体的パラメータ特定のための検出手段の結果に従い調整されてもよい。したがって、X線源とX線検出器の間の距離は、個々の患者の個人的な必要性に応じて調整することができる。
【0025】
本発明のさらなる利点と特長は、例示的に本発明の実施形態を図面にもとづき詳細にわたって説明する、以下の発明の詳細な説明において開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1パノラマ撮影およびCT撮影のための装置の斜視図である。
図2】大人の患者を撮像しているときの図1の装置の動作を示す側面図である。
図3】子供を撮像しているときの図1の装置の動作を示す側面図である。
図4】子供用特別撮像モードの利点を示している。
図5】大人用動作モードで操作されている変形装置の側面図である。
図6】子供用動作モードで操作されている図5の変形装置の側面図である。
図7図5の装置を使って子供のCT撮影像が生成されているときの回転軸の軌道を示している。
図8図5の装置を使って子供のパノラマ画像が撮られているときの回転軸の軌道を示している。
図9】検出器移動機構の斜視図である。
図10図9の機構の一部の斜視図である。
図11図10の部分の下部からみた斜視図である。
図12】検出器移動のための別の機構の斜視図である。
図13】検出器移動のためのさらに別の機構の下から見た斜視図である。
図14】装置を操作している間に、発生するかもしれない干渉を示している。
図15】干渉検出器を装備した変形装置である。
図16】静電容量式干渉検出器の動作の原理を示している。
図17】超音波式干渉検出器の動作の原理を示している。
図18】光学距離検出器の動作の原理を示している。
図19】ToF式光学検出器の原理を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1パノラマ撮影とCT撮影のための複合装置の斜視図である。歯科パノラマ撮影は通常、歯列弓を追従する垂直な画像面である。それにより歯列弓全体の画像が形成される。パノラマ撮影は、なお顎関節(TMP)、静脈洞もしくは下顎骨または上顎骨も撮像できる。歯科CTは、一般に、歯列弓に沿った、選択された関心領域(ROI)の三次元画像の生成を目的とする。ROIは通常、一連の歯または少なくとも一本の歯を有する。CTは、頭部、特に耳、鼻、喉のあらゆる領域の撮影にも使用できる。
【0028】
装置1は、垂直方向に伸長するポール3が取り付けられたベース2を保有する。ポール3には、昇降調節手段4が取り付けられており、装置1を、装置1で検査される患者の背の高さに調節するために、ポール3上を摺動できるようになっている。支持アーム5は昇降調節手段4に固定されている。支持アーム5は水平方向に伸長し、その一端に回転アーム6を保持している。モータ駆動された並進および回転手段7が、支持アーム5と回転アーム6の間に介在する。並進および回転手段7は、パノラマ撮影やCT撮影で要求される通りに、回転アーム6の回転または並進、あるいはその両方に使用できる。回転アーム6は特に回転軸8の周囲を回転することができ、回転軸8の位置の移動は、回転軸8に対して垂直な平面上のX方向およびY方向において可能である。
【0029】
回転アーム6の一方の端部には、X線源9が配置されている。X線源9は、調整手段10を使用して回転アーム6に沿って移動することができる。さらにX線検出器11が、回転アーム6のもう一方の端部に設けられている。X線検出器11は、デジタルエリアセンサであり、通常、フラットパネル検出器である。X線検出器11は調整手段12を使用して、回転アーム6に沿って移動可能である。
【0030】
調整手段10および12は、好ましくは回転アーム6に沿って並進運動を行うための手段であるが、回転アーム6に沿って位置を変更するための別の手段であってもよい。例えば、調整手段10と12は、軸回転運動を行う手段を有していてもよく、それによりX線源9とX線検出器11との間の相対的距離が変化する。
【0031】
X線源9は、レントゲン検査の間、通常は立った状態の患者14の頭部13を透過するX線を放射する。X線像を取得する間、患者14の頭部13は、頭部固定具15によって支持アーム5に対して固定位置に保持される。この目的のために頭部固定具15は、昇降調節手段4に取り付けられてもよい。頭部固定具15は、患者14が検査中、噛み押させてよい単純なバイトブロックでもよいが、X線像を取得する間、頭部13を既定の位置に固定するための別の手段を具備していてもよい。頭部固定具15は、例えば、患者14の頭部13をこめかみ領域で保持する手段を装備していてもよい。頭部固定具15の部材は、頭部固定具15が患者14、特に頭部13の大きさに適合できれば、固定されていても脱着式でもよい。
【0032】
装置1の操作は、制御ユニット16で制御されるが、これは、プロセッサといったプログラムの実行、データ移送と保存のための手段、および様々なインターフェースといった通常のコンポーネントを備えた一般的なコンピュータでよい。制御ユニット16は、装置1のコンポーネントに接続され、これらのコンポーネントの制御のプログラムを実行する。制御ユニット16は、例えば、並進および回転手段7に関わるモータを制御する。制御ユニット16は、X線源9は基本的にX線管であることから、X線源9の電流や電圧といったX線源9の操作パラメータも設定することができる。専門分野でよく知られるように、電流は、X線管から放射されるX線放射線の出力に影響を与え、電圧は放射されたX線放射のスペクトルに影響する。制御ユニット16はさらに、X線検出器11から取得した画像データの読込を行い、画像データを処理し、完成した画像をディスプレイ17に表示する。制御ユニット16は基本的に、コンピュータマウスまたはキーボードのような入力手段18を装備しており、オペレータが制御ユニット16にコマンドを入力することができるようになっている。ディスプレイ17もコマンド入力に使用されてもよい。例えば、ディスプレイ17は、画面上に表示されたコマンドメニューからオペレータがコマンドを選択できる、タッチスクリーンでもよい。制御ユニット16は、最終的に、調整手段10および12の制御にも適合されている。
【0033】
昇降調節手段4は通常、手動で操作される。X線画像を取得する前に、患者14が装置1に楽に立つことができるようにオペレータは昇降手段4の高さを調節する。
【0034】
装置1は、大人用動作モード、および図2および3をもとにさらに説明される子供用動作モードで操作可能である。
【0035】
図2は、検査される患者14が大人である基本の大人用動作モードを図示する。X線源9の陰極19から放射されるX線は、放射束20を形成する。放射束20の角度の拡がりは、X線源9の陰極19と患者14の間に配置され、かつ基本的にX線源9のハウジング22の中に設けられた一次コリメータ21により制限される。パノラマ撮影の場合は、放射束20は垂直方向に広がる扇形の放射束である一方、CTではいわゆるコーンビームが使用される。放射束20は、患者14を透過する。放射束20はさらに、X線検出器11のX線に感光する画素を保持し、かつ検出器平面24の正面に配置されたオプションの2次コリメータ23を通過する。2次コリメータ23は、X線検出器11のハウジング25内に配置することができる。
【0036】
画素は、X線を、関連づけられた感光要素によって検出され、電気信号に変換される可視光に変換する要素でよい、または到達したX線を直接電気信号に変換する要素でよい。これらの電気信号は、関連付けられたセンサ電子部品により画像データに変換される。画像データは、制御ユニット16により読み取られる。
【0037】
歯列弓のパノラマ画像を生成するためには、フラットエリアセンサの選択された領域のみが使用され、通常、2~3個の画素列のみであるが、CTにはX線検出器11の全ての画素、または少なくともX線検出器11の広範な領域が使用される。
【0038】
X線源9の陰極19とX線検出器11の検出器平面24の間の距離が、いわゆるX線源とX線検出器間の距離(=SSD)である。陰極19と頭部13の内部の撮像対象26の間の距離は、いわゆるX線源と対象物間の距離(=SOD)である。パノラマ撮影の場合は、対象物26は、パノラマ撮影法により撮像される歯列弓の1箇所を通る垂線である。歯科CTの場合は、対象物26は、一本の歯または歯列を中心にした通常は円柱状のROI(関心領域)の垂軸でよく、それから3次元画像がCTを使用して生成される。CTの場合、対象物26は回転軸8と一致する。SODに対するSSDの比率が、拡大率を決定する。
【0039】
図3は、装置1の代替の子供用動作モードを図示したものである。子供用動作モードでは、X線源9とX線検出器11の相対的距離が、調整手段10および12を使用することにより縮小される。図3では、SSDとSODの双方が、同じ係数で縮小されているため、拡大率は維持されているが、これは必須条件ではない。また、X線源9もしくはX線検出器11、またはその両方を非対称な形で移動させることも可能である。X線源9とX線検出器11の間の相対的距離の縮小は、縮小したSSDr と SODrとなる。
【0040】
代替の子供用動作モードの利点は図4に示されている。実線は、大人用動作モードの間の放射束20を、破線は子供用動作モードでの放射束20を図示している。簡略化のために、SSDとSODの両方が図3のように同じ係数で縮小されている。
【0041】
一定の信号ノイズ比率を得るために、一定量の放射エネルギー(ジュール=J)がX線検出器11の各画素に集積されなければならない。SSDが縮小すると、X線検出器11のX線源9から見た角度の広がりは、大きく見える。X線源9の放射強度(ワット/ステラジアン)が一定であるとすると、一定のSN比を得るために必要なエネルギー量は、大人用動作モードと比較して短時間で得られる。一方、露出時間が一定に維持されると、放射強度は削減できる。図4のようにSODが縮小されず、一定に維持されるなら、削減された放射強度は、頭部13により吸収された放射線の吸収線量率(J/kg秒=グレイ/秒)の低減となる。低い吸収線量率は、高い線量率より危害が低くなるため、吸収線量率の低減は好ましいとされる。SODが一定に保たれる場合、放射強度の削減、これによる吸収線量率の低減は、(SSD/SSD)に比例する。このSSDは、縮小されたSSDである。SODもSODも縮小されると、X線源9から見た対象物26もより大きく見えるため、線量率の低減は弱まる。したがって、線量率の削減は、ほぼ(SOD/SOD)(SSD/SSD)にほぼ比例することになる。SODとSSDが同じ係数で削減され、放射強度がこの係数の二乗で削減された場合、吸収される線量率は変化しない。
【0042】
注記すべきは、吸収線量率の大幅な削減は、X線検出器11を対象物26に可能な限り近づけることによって得られる点である。例えば、SSD/SSD=0.85が15%の減少に相応する場合、吸収線量率は約30%低減されることになる。
【0043】
実務においては、放射強度とそれに相応する吸収線量率は、X線源9の電流を下げることで低減される。注記すべきは、子供の体内の硬組織の光学的厚みは大人のそれよりも薄いことを考慮に入れた上で、線量率を、X線源9の電圧を低下させることでも低減できる点である。
【0044】
SODが図4に示すように縮小された場合、一次コリメータ21は子供用動作モードでは、より広く開かれねばならず、患者14を透過する放射束の光路は、図4に見て取れるように、大人用操作―モードと子供用動作モードでは異なる。図4よりさらに見て取れるように、両放射束の破線と実線は対象物26の線と同じ個所で交差している。対象物26の断面は結果として、検出器平面24の同じ画素で撮像される。対象物26の空間分析能は従って基本的に変化しないまま維持されてよい。さらに注記すべき点は、X線源9と検出器平面24のどちらも、回転軸8に対して対称に移動することから、子供用動作モードでの拡大率は、大人用動作モードにおけるそれと同じであることである。
【0045】
2次コリメータ23は省略してもよい。
【0046】
図1に示した実施形態では、調整手段10および12はモータ駆動で、制御ユニット16で操作される。しかしながら、簡略化した実施例においては、調整手段10および12は、オペレータが手動で、例えば、X線源9またはX線検出器11、あるいはその両方を回転アーム6に沿ったマーク位置まで移動させることで、操作するのでもよい。この場合、装置は、制御ユニット16にX線源9またはX線検出器11、あるいはその両方の適切な位置の確認を可能にする位置決め検出器を具備していてもよい。制御ユニット16は、その場合、選択したSSDに合わせてX線源9の操作パラメータを適用できる。例えば、SSDが縮小される場合、放射強度はそれに従って削減できる。
【0047】
図5および6は、もう一つの変形実施形態を示している。図5および6に示した実施形態は、X線源9とX線検出器11の間の距離の調整のために、拡張ハウジング27を備えており、X線検出器11がその中で並進できるようになっている。変形実施形態においては、X線源9は回転アーム6に固定されており、回転アーム6自身は、SODを縮小するためにX線源9と共に動かされる。同時にX線検出器11は、ハウジング27内でX線源9に向かって移動され、SSDも縮小される。
【0048】
回転アーム6の動作は、並進および回転手段7によって、特に、回転軸8をX方向およびY方向に移動させることによって実施できる。X線源9が回転アーム6と一緒に移動すると、回転軸8は、対象物26の中心にはもはや位置せず、偏心位置に移動している。これは子供用動作モードにおける回転アーム6の動作に影響しうる。
【0049】
図7は、大人用および子供用動作モードにおけるCT撮影の間の、回転アーム6の動作を示している。図7は特に、子供用動作モードで対象物26をCTスキャンしているときの、X線源9、X線検出器11、放射束20の中心28の異なるポジションを示している。
【0050】
図2と3に示した実施形態において、回転軸8は、大人用動作モードと子供用動作モードでCT画像を生成するために固定されたまま維持され、回転アーム6は基本的に固定された回転軸8の周囲180°にわたって回転し、X線源9とX線検出器11は回転軸8の周囲で半円運動を行う。図5および6に示す変形実施形態の子供用動作モードにおいては、回転軸6は、X線源9とX線検出器11が仮想回転軸29の周囲を回転運動するように動かされてもよい。仮想回転軸29の周囲の動作は、回転軸8を円形軌道30に沿って移動させることで達成される。円形軌道30は、仮想回転軸29を中心とし、回転軸8の円形軌道30上の位置を示す回転角φは、回転軸8の周りを回転する回転アーム6による軸回転角αと同位相である。この円形軌道30に沿った特殊な動作によって拡大率が維持される。しかしながら、図5および6に示した変形実施形態の子供用動作モードにおいて、検出器平面24を回転軸8に向かって移動させ、回転軸の位置は変更せずに、回転アーム6を回転軸8の周囲で回転させることで、拡大率を変更することも可能である。
【0051】
図8は、パノラマ撮影時の回転アーム6の動作を示している。図7に示されるように、大人の歯列弓31および子供の歯列弓32のパノラマ撮影を行う間の、X線源9、X線検出器11および放射束20の線束中心28が様々な位置で図示されている。パノラマ撮影の間、線束20の線束中心28が、それぞれの歯列弓31又は32に対して基本的に直角になるように回転軸8を移動させる。回転軸8はさらに、撮像される垂直に配置した平面に対する拡大率が変わらないように移動される。図5および6の実施形態が使用される場合、回転軸8は、大人の歯列弓31を撮影するために大人用動作モードで軌道33に沿って動かされる。子供を検査する場合には、X線源9とX線検出器11の間の距離は、回転軸8をずらし、X線検出器11を回転アーム6に沿ってX線源9に向かって移動させることで縮小され、変更された軌道34となる。この軌道34に沿った特定の動きにより拡大率が維持される。しかしながら、図5および6に示した変形実施形態の子供用動作モードにおいて、検出器平面24を回転軸8に向かって移動させ、軌道33を子供用動作モードでも使用することで、拡大率を変更することも可能である。この場合、拡大率は好ましくは10%又は20%以内で縮小される。
【0052】
完全を期すために注記すると、図2および3による実施形態は、歯列弓が同じ、またはほぼ同じであることを前提として、基本的に大人用動作モードと子供用動作モードの両方に同じ軌道を使用している。
【0053】
X線検出器11の動作は、異なる機構によって実施できる。
【0054】
図9は、X線検出器11のハウジング27内で、X線検出器11と一緒に回転並進を実施する機構35の斜視図である。機構35は、回転アーム6の長手方向の軸36に対して垂直に配置されている。回転アーム6の長手方向の軸36は、通常、放射束20の線束中心28に並行である。機構35のベースプレート37が、回転アーム6の長手方向の軸36に対して垂直に配置されている。ガイドレール38がベースプレート37に固定されている。ガイドブロック39はガイドレール38上を摺動できるので、可動プレート40がベースプレート37に沿って移動できる。可動プレート40の動作の制御に、モータプレート41がベースプレート37の一方の端部に固定されている。モータプレート41は、レール38に沿って伸びる送りねじ43を駆動する並進モータ42を保持している。送りねじ43にはスリーブ型送りねじナット44がかみ合っており、送りねじ43が回転すると、これに沿ってスリーブ型送りねじナット44が移動する。スリーブ型送りねじナット44は、送りねじブロック45に取り付けられており、これがさらに可動プレート40に取りつけられている。モータ42が送りねじ43を駆動すると、可動プレート40はこれによりガイドレール38に沿って動く。
【0055】
可動プレート40は、機構35の他のパーツを保持する延長プレート46を保持している。これらのパーツは図10に見て取れる。延長プレート46の反対側の端部には、複数の軸受47が設けられ、その各々がガジオン48を保持している。各ガジオン48の一端には、ベルトプーリ49が取り付けられている。2つのベルトプーリ49は、両ベルトプーリ49の間でカムベルト50の一方の面に配置されたアイドラープーリ51によりテンションがかかったカムベルト50を引っ張っている。カムベルト50の反対側の部分では、固定プレート52と駆動プレート53が、カムベルト50を圧着している。送りねじブロック54は駆動プレート53に取り付けられている。送りねじブロック54は、送りねじ56に嵌められたスリーブ型送りねじナット55を保持している。送りねじ56の駆動のために、モータプレート57が延長プレート46の一端に固定されている。モータプレート57は、送りねじ56を駆動する回転モータ58を保持している。モータ58は、送りねじ56を回転させ、駆動プレート53と固定プレート52が、カムベルト50と一緒に動かされる。カムベルト50の動きが、ガジオン48の回転を引き起こす。
【0056】
図11から見て取れるように、ガジオン48の回転は、延長プレート46下部の、ガジオン48のもう一方の端部に搭載された旋回アーム59の旋回動作となる。旋回アーム59のもう一方の端部は、旋回プレート61によって保持された軸受60に係止されている。旋回プレート61は最終的にX線検出器11を保持する。旋回プレート61には複数の溝62が設けられており、ガジオン48のヘッドが旋回プレート61を通過できるようになっている。
【0057】
機構35は、パノラマ撮影又はCT撮影の目的で、X線検出器11の位置調整を行うために、X線検出器11を回転アーム6の長手方向軸36に対して横方向に移動するのに使用できる。機構35はさらに、旋回プレート61が回転アーム6の長手方向の軸36の方向に動くように、旋回アーム59を軸回転させることで、X線源9とX線検出器11の間の距離の調整に使用できる。旋回アーム59は、180°軸回転させるのが好ましいが、より小さな角度の軸回転でもよい。この場合、横方向の移動は、レール38に沿った相応する横方向の移動で補正することができる。
【0058】
機構35の主な利点は、X線検出器11を比較的素早くX線源9の方向に移動できる点で、なぜなら、旋回アーム59を180°回転させるためには、スリーブ型送りねじナット55は短い距離を移動するのみでよく、旋回アーム59の回転により移動する距離は、旋回アーム59の長さの2倍であるからである。もう一つの利点は、機構35では、パノラマ撮影およびCT撮影の要求に応じてX線検出器11の位置を調整する目的で、X線検出器11の横方向の移動も可能な点である。
【0059】
図12は、X線源9とX線検出器11の間の距離が、クロスリンク機構63の使用により変更される代替機構を示している。クロスリンク機構63は、回転アーム6の長手方向軸36に対して垂直に配置したベース64を具備する。2本の平行なレール65がベース64に取り付けられている。スライドブロック66はレール65上に搭載されており、その一端がスライドブロック66に可動式に取り付けられた支柱68を含む折り畳みサポート67を保持している。支柱68のうち2本は、中央のクロスベアリング69によって相互に接合されており、そのもう一端では、X線検出器11を搭載することができるサポートプレート71を保持する支持ブロック70を保持している。折り畳みサポート67は、ベース64に搭載されたモータ72で駆動される。モータ72は、トラバース75に嵌め付けられたナット74とかみ合う送りねじ73を駆動する。トラバース75は、各々のレール65のもう一方の端部に搭載された一対のスライドブロック66に接続されている。
【0060】
クロスリンク機構63も、X線検出器11の素早い動きを可能にしている。なぜなら、ナット74が送りねじ73に沿って、サポートプレート71の距離の半分に相応する距離のみを移動するだけでよく、それによりX線検出器11はX線源9に向かって動くからである。
【0061】
図13は、X線源9とX線検出器11の間の距離の変更に用いることができる直線運動機構76を示す。直線運動機構76は、レール78を備えたベース77を具備する。ベース77は、モータサポート79も保持し、これがまたモータ80を保持している。モータ80は、回転アーム6の長手方向軸36に沿って伸び、トラバース83で保持されナット82とかみ合う送りねじ81を駆動する。トラバース83は、両レール78の間にわたり、レールに搭載されたスライドブロック84により保持されている。X線検出器11は、回転アーム6の長手方向軸36が送りねじ81に沿って伸びるように、トラバース83に搭載されている。
【0062】
この直線運動機構76の特記すべき利点は、直線運動機構76が特に安定性と信頼性が高いことである。
【0063】
注記すべきは、説明されているこれらの機構は組み合わせてもよい点である。
【0064】
さらに注記すべきは、子供用動作モードは小柄な大人にも使用できる点である。また、いくつかの異なる動作モードを、被験者である患者14の背の高さに合わせて適用することも可能である。各々の動作モードは、装置1を患者14それぞれの大きさに合わせるためにX線源9とX線検出器11の間の異なる距離を利用する。装置1はまた、患者の大きさを特定し、この特定の結果に応じて、異なるステップで、または連続して距離を調整するための検出手段が具備されていてもよい。これらの検出手段が、頭部13または患者14の物理的パラメータの1つ以上を特定する目的に適合されていてもよい。これらのパラメータは、例えば、患者14の体重、患者14の身長、頭部13のサイズ等、あらゆる適切なパラメータでありうる。これらのパラメータは、検出手段が具備されていなかったり、十分な検出手段が具備されていなかったりする場合は、装置1のオペレータにより手動で入力されてもよい。制御ユニット16は、その場合、選択したSSDに合わせてX線源9の操作パラメータを適用できる。例えば、SSDが縮小されると、放射強度は、X線源の電流を下げることにより、相応して削減できる。
【0065】
SSDが可能な限り縮小されると、干渉が起こる可能性がある。特に、X線検出器11のハウジング25が、図14に示すように、頭部13または頭部固定具15と干渉する可能性がある。これは特に、頭部固定具15が突出したこめかみ支持具85を装備していることがあるためである。図14には、こめかみ支持具85が閉じて頭部に接触している状態と、開いて頭部13より離れている状態のこめかみ支持具85が図示されている。開いた位置は破線で、閉じた位置は実線で示している。
【0066】
図15から見て取れるように、こめかみ支持具85は、耳の上方87、頭部13の相反する側に接触する二つの接触部分86を有する。接触部分86はそれぞれ支部88で保持され、その下端は、ベース90に配置されたピボット軸受け89で支持されている。ベース90はさらに顎支持具91または走査プロセスの間歯列の位置を固定する目的で、患者14が検査の間、噛み押さえるバイトブロック92、あるいはその両方を保持していてもよい。
【0067】
図14に示すように、こめかみ支持具85の開閉時の位置が明確に定まっていないため、X線検出器11のハウジング25とこめかみ支持具85との干渉が起きる可能性がある。さらに、頭部13の特異な形により、X線検出器11のハウジング25と患者14の頭部13との干渉が起きる可能性がある。例えば、患者14の後頭部13がまれに突出しているために、走査軌道に沿ったハウジング25の動きを妨げることがありうる。
【0068】
このような干渉は、患者の頭部13またはこめかみ支持具85を直接測定することによって避けうる。このような測定には、定規やノギスといった機械的な測定工具を使用できる。またLiDARをはじめとする光学レーザー走査技術も使用できる。さらに別の方法として、頭部13の大きさおよびこめかみ支持具85の位置を特定するために、カメラの使用とそれに続く画像認識がある。この場合、画像認識が安全にこめかみ支持具85の位置を認識できるよう受動光マーカーをこめかみ支持具85に配置できる。こめかみ支持具85の位置は、その位置が無線発振器によって発信され受信されることで検出される、パッシブ型無線マーカーを使っても特定できる。ベース90は、最終的に支部88の角度位置を検出する位置エンコーダを装備していてもよい。これらの手段の中からの一つ、またはこれらの手段の組合せを使用することで、パノラマ撮影またはCTを開始する前に、頭部13の大きさが特定することができる。
【0069】
頭部13の大きさの特定のあらゆる対策にも関わらず、撮像プロセスにおける干渉のリスクは残る。X線検出器11が干渉検出器93を具備している場合、この干渉のリスクを低減、または干渉を回避できる。そのような干渉検出器93は、例えばハウジング25内の検出器平面24上に配置できる。なぜなら頭部13の突出部分やこめかみ支持具85は、そもそもパノラマ撮影やCT撮影でその画像を生成する歯列よりも上方に位置しているからである。
【0070】
X線源9との干渉を避けるため、X線源9は干渉検出器94を具備していてもよい。
【0071】
以下では、干渉検出器93および94の異なる可能な実施形態を記述する。簡略にするため、説明は、X線検出器11およびハウジング25の周りの領域のみを言及しているが、X線源9やハウジング22の周りの領域にも当てはまる。
【0072】
図16は、静電容量式距離センサ95が干渉検出に使用されている実施形態を示す。静電容量式距離センサ95は、センサ電子部品97に繋げられた2つの電極96を含み、センサ電子部品は制御ユニット16で読み取ることができる。
【0073】
電極96は電磁場98を生成するが、物体、つまり頭部13またはこめかみ支持具85が電極96に接近するとこれが乱れる。それにより、電極96の静電容量が変化し、ハウジング25と頭部13またはこめかみ支持具85の衝突が差し迫っていることが、センサ電子部品97により、従って制御ユニット16によって検出される。
【0074】
図17は、超音波式距離センサ99が干渉の検出のために使用されている別の実施形態を示している。例示した超音波式距離センサ99のセンサ電子部品97は、頭部13またはこめかみ支持具85で反射される超音波信号101を発信および受信する超音波トランシーバ100を操作する。超音波信号101のToFが測定され、これが超音波トランシーバ100と頭部13またはこめかみ支持具85の間の距離の特定に使用される。センサ電子部品97も、結果的に、差し迫っている衝突を検出することができる。
【0075】
図18は、光学式距離センサ102が干渉の検出に使われている別の実施形態を示す。光学式距離センサ102は、三角測量法の原理をベースにしている。光学式距離センサ102は、例えばレーザーやLEDといった光束104を発する光源103を含む。光束104は、頭部13またはこめかみ支持具85によって反射されうる。反射された光105は、光位置センサ106に当たる。光位置センサ106に当たった反射光の位置情報は、センサ電子部品97によって、光学式距離センサ102と頭部13またはこめかみ支持具85との間の距離を特定するのに利用される。この実施形態のセンサ電子部品97は、結果として差し迫っている衝突を検出できる。
【0076】
図19は、ToF式光学センサ107が干渉の検出に使用されている第4の実施形態を示す。ToF式光学センサ107は、光のパルス109を出す光源108を含む。光のパルス109は、頭部13またはこめかみ支持具85で反射され、光検出器110で受信される。ToFはセンサ電子部品97で測定され、この測定値に基づき、光源108と光検出器110の間で光のパルス109が移動した距離を特定できる。
【0077】
光学システムの利点は、結果が、温度や湿度といった環境条件とは無関係な点である。
【0078】
図16から図19に示した干渉検出器93の例は、これらに制限するものと理解されてはならない。例えば、カメラの視野角内での対象物との干渉リスクを認識するために、カメラデータから画像を処理する視覚系など、他のいかなる距離センサも考慮に入れられる。
【0079】
最後にさらに注記すべきなのが、本発明はここにおいては、歯科撮像装置に関して記述されている点である。しかしながら、本発明は、基本的に、患者14の頭部13のあらゆる領域の撮像に使用される装置、例えば、パノラマ撮影によって下顎骨または上顎骨、顎関節、または静脈洞の撮像のために、またはCTにより、特に患者14の耳の周りの領域、鼻、喉の撮像といった頭部13の他のいかなる領域の撮像のために、あるいはその両方の目的に使用される装置に利用できる。
【0080】
本明細書の発明の詳細な説明および請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数は複数を包括的に含むものとする。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上他の意味に解す場合を除き、複数ならびに単数であることを意図していると理解されるべきである。
【0081】
本発明の特定の観点、実施形態または例に関連して記述されている特長、整数、特性、コンポーネントまたはグループは、これらと矛盾しない限り、ここに記載されている他のいかなる観点、実施形態または例に適用可能と理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19