(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】クロロフルオロアルケンを生成するための組成物及びプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 17/20 20060101AFI20240513BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20240513BHJP
C07C 17/25 20060101ALI20240513BHJP
B01J 23/26 20060101ALI20240513BHJP
B01J 21/04 20060101ALI20240513BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
C07C17/20
C07C21/18
C07C17/25
B01J23/26 Z
B01J21/04 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021507824
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019046084
(87)【国際公開番号】W WO2020036836
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-12
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュエフイ スン
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-064990(JP,A)
【文献】国際公開第2010/029893(WO,A1)
【文献】特表2010-529111(JP,A)
【文献】国際公開第2011/022260(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/060616(WO,A2)
【文献】特表2014-520070(JP,A)
【文献】特表2017-504604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/20
C07C 21/18
C07C 17/25
B01J 23/26
B01J 21/04
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロフルオロアルケンの作製方法であって、
式(1)の試薬
CF
xH
(3-x)(CF
yH
(2-y))
aCF
zH
(3-z)、(1)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、zは1、2、3の整数である)を、気相中、有効量の触媒の存在下、塩化水素化を行うのに十分な高温で、塩化水素(HCl)と接触させて、式(2)の化合物
CF
xH
(3-x)(CF
yH
(2-y))
a-1CF
mH
(1-m)=CCl
nF
pH
(2-n-p)、(2)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、mは0、1の整数であり、nは1、2の整数であり、pは0、1の整数であり、n+pは1、2の整数である)
を含む反応混合物を形成することを含み、
前記式(1)の試薬が、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記式(2)の化合物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、及び(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(E))からなる群から選択される、
方法。
【請求項2】
前記式(2)の化合物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))及び(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))の混合物を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が、酸化クロム、フッ化酸化クロム、クロムのオキシフッ化物、ハロゲン化クロム、アルミナ、フッ化アルミニウム、フッ化アルミナ、フッ化アルミニウム上の金属化合物、フッ化アルミナ上の金属化合物;マグネシウム、亜鉛、並びにマグネシウムと亜鉛及び/又はアルミニウムの混合物の酸化物、フッ化物、及びオキシフッ化物;酸化ランタン及びフッ化酸化ランタン;炭素、酸洗浄炭素、活性炭、三次元マトリックス炭素質材料;炭素に担持された金属化合物、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
クロロフルオロアルケンの作製方法であって、
式(3)の試薬
CF
xH
(3-x)(CF
bH
(2-b))
aCF
yH
(1-y)=CF
zH
(2-z)、(3)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、bは独立して0、1、2の整数であり、yは独立して0、1の整数であり、zは1、2の整数である)を、気相中、有効量の触媒の存在下、塩化水素化を行うのに十分な高温で、塩化水素(HCl)と接触させて、式(2)の化合物
CF
xH
(3-x)(CF
yH
(2-y))
a-1CF
mH
(1-m)=CCl
nF
pH
(2-n-p)、(2)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、mは0、1の整数であり、nは1、2の整数であり、pは0、1の整数であり、n+pは1、2の整数である)
を含む反応混合物を形成することを含み、
前記式(3)の試薬が、1,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン(HFC-1327cye)、又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)である、
方法。
【請求項5】
前記式(2)の化合物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、又は(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、酸化クロム、フッ化酸化クロム、クロムのオキシフッ化物、ハロゲン化クロム、アルミナ、フッ化アルミニウム、フッ化アルミナ、フッ化アルミニウム上の金属化合物、フッ化アルミナ上の金属化合物;マグネシウム、亜鉛、並びにマグネシウムと亜鉛及び/又はアルミニウムの混合物の酸化物、フッ化物、及びオキシフッ化物;酸化ランタン及びフッ化酸化ランタン;炭素、酸洗浄炭素、活性炭、三次元マトリックス炭素質材料;炭素に担持された金属化合物、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年8月13日に出願された米国出願第62/718,255号の利益を主張する。第62/718,255号の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ヒドロクロロフルオロカーボンの作製方法を目的とする。特に、本発明は、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(Z/E)などのクロロフルオロアルケンを作製するための選択的プロセスを目的とする。
【背景技術】
【0003】
HFC-134a及びHFC-245faなどのヒドロフルオロカーボン(HFC)は、近年、潜在的に地球のオゾン層を損傷する可能性があるクロロフルオロカーボン(CFC)及びヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替品として使用されている。ヒドロフルオロカーボン(HFC)は、有効冷媒、消火剤、伝熱媒体、噴射剤、起泡剤、発泡剤、ガス状誘電体、滅菌剤担体、重合媒体、微粒子除去流体、分散媒、バフ研磨剤、置換乾燥剤、及び動力サイクル作動流体として使用されてきた。HFCは、成層圏オゾンの破壊には寄与しないが、「温室効果」に寄与、すなわち地球温暖化に寄与するので懸念されている。地球温暖化に寄与することから、HFCにも厳しい視線が注がれるようになっており、その広範な使用は制限されている。したがって、成層圏オゾンの破壊に寄与することなく、地球温暖化計数(GWP)も低い組成物が必要とされている。
【0004】
国際公開第2011/162341(A1)号は、HCFO-1234yfを生成するための気相プロセスにおける中間体としてHCFO-1224ydを生成する気相プロセスについて記載している。このプロセスは、触媒の存在下でHCFO-1214yaを水素化するために水素ガス(H2)を用いる。
【0005】
国際公開第2017/110851(A1)号は、HCFO-1224ydを生成するための液相プロセスについて記載している。このプロセスは、HCFC-234bbを脱塩化水素化するためにKOHなどの塩基性溶液を用いて、触媒の存在下で1224ydを形成する。出発物質234bbは、高価な材料である1234yfの塩素化によって作製された。このプロセスからは、大量の水性廃棄物が生じる。このプロセスから作製された1224yd生成物は、5.5%~6.4%の1224yd(E)異性体を含有する。1224yd(Z)異性体は、多くの用途に望ましい生成物である。このプロセスで生成される1224yd(E)は、所望の1224yd(Z)異性体に異性化するために更なる処理を必要とする。このプロセスからは、処分に多額の費用を必要とする膨大な廃棄物が生じ得る。その内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
既に特定されている国際公開公報の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国出願第62/718,255号
【文献】国際公開第2011/162341(A1)号
【文献】国際公開第2017/110851(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、それほど高価ではなくかつ生じる廃棄物が少ない、1224yd(Z)を生成するための高度に選択的なプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本発明の組成物及び1224(yd)(Z)を生成するための選択的なプロセスを含む方法を提供することにより、従来の慣行に関連する問題を解決することができる。「選択的」とは、少なくとも約30パーセント、約35~約40パーセント、場合によっては40パーセント超の試薬を1224(yd)(Z)に変換するプロセスを指すことを意味する。
【0010】
一実施形態では、クロロフルオロアルケンの作製方法であって、式(1)の試薬
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))aCFzH(3-z)、(1)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、zは1、2、3の整数である)を、気相中、有効量の触媒の存在下、塩化水素化を行うのに十分な高温で、塩化水素(HCl)と接触させることを含む、方法。得られた反応混合物は、式(2)の直鎖又は分枝鎖化合物
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))a-1CFmH(1-m)=CClnFpH(2-n-p)、(2)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、mは0、1の整数であり、nは1、2の整数であり、pは0、1の整数であり、n+pは1、2の整数である)
を含む。
別の実施形態では、クロロフルオロアルケンの作製方法であって、式(3)の試薬
CFxH(3-x)(CFbH(2-b))aCFyH(1-y)=CFzH(2-z)、(3)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、bは独立して0、1、2の整数であり、yは独立して0、1の整数であり、zは1、2の整数である)を、気相中、有効量の触媒の存在下、塩化水素化を行うのに十分な高温で、塩化水素(HCl)と接触させることを含む、方法。得られた反応混合物は、式(2)の直鎖又は分枝鎖化合物
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))a-1CFmH(1-m)=CClnFpH(2-n-p)、(2)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、mは0、1の整数であり、nは1、2の整数であり、pは0、1の整数であり、n+pは1、2の整数である)
を含む。
【0011】
別の実施形態では、クロロフルオロアルカンの作製方法であって、式(4)の試薬
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))aCFzH(3-z)、(4)
(式中、xは1~3の整数であり、aは0~3の整数であり、yは独立して0~2の整数であり、zは1~3の整数である)を、気相中、有効量の触媒の存在下、塩化水素化を行うのに十分な高温で、塩化水素(HCl)と接触させることを含む、方法。得られた反応混合物は、式(5)の直鎖又は分枝鎖化合物
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))aCClvF(z-v)H(3-z)、(5)
(式中、yは独立して0、1、2の整数であり、vは独立して1、2の整数であり、zは1、2の整数であり、vはz以下である)
を含む。
【0012】
別の実施形態は、式(1)の試薬が、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、式(2)の化合物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、及び(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(E))からなる群から選択される、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0013】
別の実施形態は、式(2)の化合物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))及び(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))の混合物を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0014】
別の実施形態は、反応混合物から式(2)の化合物を回収することを更に含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0015】
別の実施形態は、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))の少なくとも一部を反応に再利用することを更に含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0016】
別の実施形態は、生成された3-クロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-235cb)の少なくとも一部を再利用して反応に戻すことを更に含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0017】
別の実施形態は、触媒が、酸化クロム、フッ化酸化クロム、クロムのオキシフッ化物、ハロゲン化クロム、アルミナ、フッ化アルミニウム、フッ化アルミナ、フッ化アルミニウム上の金属化合物、フッ化アルミナ上の金属化合物;マグネシウム、亜鉛、並びにマグネシウムと亜鉛及び/又はアルミニウムの混合物の酸化物、フッ化物、及びオキシフッ化物;酸化ランタン及びフッ化酸化ランタン;炭素、酸洗浄炭素、活性炭、三次元マトリックス炭素質材料;炭素に担持された金属化合物、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0018】
別の実施形態は、触媒が、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化クロム(Cr2O3)、亜鉛ドープ化酸化クロム、又は酸化アルミニウム(Al2O3)に担持された酸化クロムである、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0019】
別の実施形態は、式(1)の試薬のモル数及び式(2)の化合物のモル数の合計に対する塩化水素のモル比が、約0.2:1~約10:1である、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0020】
別の実施形態は、反応混合物を形成させるのに十分な高温が150℃~500℃である、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0021】
別の実施形態は、式(3)の試薬が、1,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン、(HFC-1327cye)又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)である、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0022】
別の実施形態は、式(2)の化合物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン(HCFC-1326yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン(HCFC-1326yd(E))、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、又は(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))である、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0023】
別の実施形態は、式(3)の試薬の少なくとも90パーセントが、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))に変換される、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0024】
別の実施形態は、
式(5)の化合物を、気相で脱ハロゲン化水素触媒と、又は液相中で苛性剤と、式(6)の化合物
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))a-1CFmH(1-m)=CClnFpH(2-n-p)、(6)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは0、1、2の整数であり、yは独立して0、1、又は2であり、mは0、1の整数であり、nは1、2の整数であり、pは0、1の整数であり、n+pは1、2の整数である)
を含む反応混合物を形成するのに十分な高温で接触させることを更に含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0025】
一実施形態は、前述のプロセスの任意の組み合わせによって生成される組成物を含む、組成物に関する。
【0026】
別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))、(Z)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、及び(E)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0027】
別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))、(Z)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、(E)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、及び1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0028】
別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))、(Z)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、(E)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、及び1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0029】
本発明の別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))、(Z)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、(E)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、3-クロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-235cb)、及び1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0030】
本発明の別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))、(Z)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、及び(E)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、及び3-クロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-235cb)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0031】
本発明の別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、及び(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(E))、及び1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244eb)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0032】
本発明の別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、及び(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(E))、及び1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244fa)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0033】
本発明の別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、及び(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(E))、及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0034】
本発明の別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、及び(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(E))、及び1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0035】
本発明の別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、及び(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(E))、及び1,1,2-トリクロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-224ba)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0036】
本発明の別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))、(Z)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、(E)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、(Z)-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1223xd(Z))、及び(E)-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1223xd(E))を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0037】
本発明の別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))、(Z)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、(E)-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、及び1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0038】
本発明の別の実施形態は、組成物が、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(E))、及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0039】
本発明の別の実施形態は、組成物が、1,1,1,2,2,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-236cb)、3-クロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-235cb)、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、及び(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0040】
本発明の別の実施形態は、組成物が、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234ze)、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(E))、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244eb)、及び1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)を含む、前述の実施形態の任意の組み合わせに関する。
【0041】
本発明の実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。本発明の他の特徴及び利点は、例として本発明の原理を例示する添付図面と併せてなされる、以下のより詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、クロロフルオロアルカン、フッ素化アルカン、及びフッ素化アルケンを塩化水素化して、クロロアルカン、クロロフルオロアルカン、クロロフルオロアルケン、及びクロロアルケンを形成するための気相プロセスを提供する。本発明は、クロロフルオロアルカンのクロロフルオロアルケンへの変換を更に提供する。
【0043】
本発明は、更に、地球温暖化係数(GWP)の低い、洗浄剤、冷媒、発泡剤、溶媒、及びエアロゾルとして有用な、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1224yd)などの化合物を提供する。
【0044】
一実施形態では、式(1)の試薬
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))aCFzH(3-z)、(1)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、zは1、2、3の整数である)を、気相中、有効量の触媒の存在下、塩化水素化を行うのに十分な高温で、塩化水素(HCl)と(接触させる)。得られた反応混合物は、式(2)の直鎖又は分枝鎖の塩化水素化された化合物
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))a-1CFmH(1-m)=CClnFpH(2-n-p)、(2)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、mは0、1の整数であり、nは1、2の整数であり、pは0、1の整数であり、n+pは1、2の整数である)
を含む。
【0045】
一実施形態では、式(3)の試薬
CFxH(3-x)(CFbH(2-b))aCFyH(1-y)=CFzH(2-z)、(3)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、bは独立して0、1、2の整数であり、yは独立して0、1の整数であり、zは1、2の整数である)を、気相中、有効量の触媒の存在下、塩化水素化を行うのに十分な高温で、塩化水素(HCl)と接触させる。得られた反応混合物は、式(2)の直鎖又は分枝鎖の塩化水素化された化合物
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))a-1CFmH(1-m)=CClnFpH(2-n-p)、(2)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、mは0、1の整数であり、nは1、2の整数であり、pは0、1の整数であり、n+pは1、2の整数である)
を含む。
【0046】
一実施形態では、式(4)の試薬
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))aCFzH(3-z)、(4)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは0、1、2の整数であり、zは1、2、3の整数である)を、気相中、有効量の触媒の存在下、塩化水素化を行うのに十分な高温で、塩化水素(HCl)と接触させる。得られた反応混合物は、式(5)の直鎖又は分枝鎖の塩化水素化された化合物
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))aCClvF(z-v)H(3-z)、(5)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、vは1、2の整数であり、zは1、2の整数であり、vはz以下である)
を含む。
【0047】
一実施形態では、式(5)の試薬
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))aCClvF(z-v)H(3-z)、(5)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは独立して0、1、2の整数であり、vは1、2の整数であり、zは1、2の整数であり、vはz以下である)を、気相で脱ハロゲン化水素触媒と、又は液相で苛性剤と接触させる。得られた反応混合物は、式(6)の化合物
CFxH(3-x)(CFyH(2-y))a-1CFmH(1-m)=CClnFpH(2-n-p)、(6)
(式中、xは1、2、3の整数であり、aは0、1、2、3の整数であり、yは0、1、2の整数であり、yは独立して0、1、又は2であり、mは0、1の整数であり、nは1、2の整数であり、pは0、1の整数であり、n+pは1、2の整数である)
を含む。
【0048】
一実施形態は、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)を1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(Z/E)(HCFO-1224yd(Z/E))に変換するための気相プロセスを含む。HCFO-1224yd(Z/E)は、主にHCFO-1224yd(Z)を生成する極めて選択的なプロセスで生成される。HCFO-1224ydは、本明細書で使用するとき、異性体、HCFO-1224yd(E)又はHCFO-1224yd(Z)、並びにそのような異性体の任意の組み合わせ又は混合物を指す。1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)の1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(Z/E)(HCFO-1224yd(Z/E))への変換をスキーム(7)に示す。
【0049】
【0050】
一実施形態は、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)を1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(Z/E)(HCFO-1224yd(Z/E))に変換するための気相プロセスを含む。HCFO-1224yd(Z/E)は、主にHCFO-1224yd(Z)を生成する極めて選択的なプロセスで生成される。HCFO-1224ydは、本明細書で使用するとき、異性体、HCFO-1224yd(E)又はHCFO-1224yd(Z)、並びにそのような異性体の任意の組み合わせ又は混合物を指す。1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)の1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(Z/E)(HCFO-1224yd(Z/E))への変換をスキーム(8)に示す。
【0051】
【0052】
一実施形態は、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)を1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(Z/E)(HCFO-1224yd(Z/E))に変換するための気相プロセスを含む。HCFO-1224yd(Z/E)は、主にHCFO-1224yd(Z)を生成する極めて選択的なプロセスで生成される。HCFO-1224ydは、本明細書で使用するとき、異性体、HCFO-1224yd(E)又はHCFO-1224yd(Z)、並びにそのような異性体の任意の組み合わせ又は混合物を指す。1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)の1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(Z/E)(HCFO-1224yd(Z/E))への変換をスキーム(9)に示す。
【0053】
【0054】
いくつかの実施形態では、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(Z/E)(HCFO-1224yd(Z/E))に更に変換するために、3-クロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-235cb)を再利用して反応に戻してもよい。いくつかの実施形態では、苛性剤と反応させることにより又は脱フッ化水素触媒で脱フッ化水素化することにより、3-クロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-235cb)は1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(Z/E)(HCFO-1224yd(Z/E))に変換され得る。
【0055】
一実施形態は、塩化水素化反応によって1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)を1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)に変換するための気相プロセスを含む。反応は、スキーム(10)として以下に示す。
【0056】
【0057】
前述の塩化水素化反応スキームは、約150℃~約500℃、約175℃~約400℃、約200℃~約350℃、及び/又は約200℃~約300℃の温度で、塩化水素化触媒を含有する反応ゾーンにおいて気相中で実施され得る。接触時間は、典型的には、約1~約450秒間及び/又は約10~約120秒間である。
【0058】
いくつかの実施形態では、前述の反応スキームにおいて使用するのに好適な塩化水素化触媒は、気相クロム又は酸化アルミニウム触媒を含む。一実施形態では、塩化水素化触媒は、酸化アルミニウム(Al2O3)を含む。一実施形態では、塩化水素化触媒は、酸化クロム(Cr2O3)を含む。一実施形態では、塩化水素化触媒は、酸化アルミニウムに担持された酸化クロムを含む。一実施形態では、塩化水素化触媒は、亜鉛ドープ化酸化クロムを含む。好適な触媒としては、酸化クロム、フッ化酸化クロム、クロムのオキシフッ化物、ハロゲン化クロム、アルミナ、フッ化アルミニウム、フッ化アルミナ、フッ化アルミニウム上の金属化合物、フッ化アルミナ上の金属化合物;マグネシウム、亜鉛、並びにマグネシウムと亜鉛及び/又はアルミニウムの混合物の酸化物、フッ化物、及びオキシフッ化物;酸化ランタン及びフッ化酸化ランタン;炭素、酸洗浄炭素、活性炭素、三次元マトリックスの炭素質材料;並びに炭素に担持された金属化合物が挙げられるが、これらに限定されない。金属化合物は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、クロム、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、銅、亜鉛、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属の酸化物、フッ化物、及びオキシフッ化物である。触媒は、所望の反応スキームに影響を及ぼすのに十分な時間、接触させる。
【0059】
前述の反応スキームで使用される反応圧力は、大気圧未満、大気圧、又は大気圧超であり得る。一実施形態では、塩化水素化は、大気圧超(すなわち、1気圧を超える圧力)で実施される。一実施形態では、塩化水素化は、実質的に大気圧で実施される。いくつかの実施形態では、反応は、0~100、0~50、0~30、1~25、5~20、又は7~15ポンド/平方インチゲージ(psig)の圧力で実施され得る。
【0060】
前述の反応スキームにおいて使用される反応混合物の有機成分に対する塩化水素のモル比は、約0.2:1~約10:1、約0.3:1~約5:1、又は約0.4:1~約2:1であり得る。
【0061】
前述の反応スキームの触媒塩化水素化は、任意に、追加の気体を含んでもよい。1つ以上の追加の気体を加えて、触媒の寿命を延長してもよい。いくつかの実施形態では、全気体に基づく追加の気体のモル分率は、約0.1モルパーセント~約3モルパーセント、約0.2モルパーセント~約2モルパーセント、約0.5モルパーセント~約1.5モルパーセント、約1モルパーセント~約1.5モルパーセント、約1.5モルパーセント~約2モルパーセント、約2モルパーセント~約3モルパーセント、又は約2.2モルパーセント~約2.5モルパーセントである。一実施形態では、追加の気体は酸素(O2)を含む。
【0062】
前述の反応スキームにおいて使用される追加の気体は、1つ以上の不活性気体を含んでよい。いくつかの実施形態では、反応は、窒素、ヘリウム、及び/又はアルゴン下で実施される。いくつかの実施形態では、反応器雰囲気として使用される気体は、実質的に全ての水を除去するために予め乾燥させてもよい。一実施形態では、反応は、乾燥窒素下で実施される。
【0063】
気相フッ素化反応器の反応ゾーンからの流出物は、典型的には、HCl、HF、HCFO-1224yd、HCFC-235cb、HFC-236ea、HFC-236cb、1223xd、及びHFO-1225yeのうちの1つ以上を含む。
【0064】
所望のHCFO-1224yd(Z)、及びそのHFとの混合物は、当該技術分野において公知の方法(例えば、蒸留)によって反応混合物から分離することができる。塩化水素化反応に使用される触媒はまた、典型的には、HCFO-1224yd(Z)からHCFO-1224yd(E)への及び/又はHCFO-1224yd(E)からHCFO-1224yd(Z)への異性化に好適な触媒である。平衡濃度の又は平衡濃度を超えるHCFO-1224yd(E)の濃度を維持するために、異性体間の平衡濃度に達する又は超えるようにHCFO-1224yd(E)を反応に戻してもよく、それによって、HCFO-1224yd(E)の更なる形成が抑制されて、所望のHCFO-1224yd(Z)異性体に有利に働く。いくつかの実施形態では、HCFO-1224yd(E)の濃度が平衡濃度を超えるようにHCFO-1224yd(E)を反応に戻すことによって、HCFO-1224yd(E)の一部をHCFO-1224yd(Z)に異性化し得る。いくつかの実施形態では、これによって、HCFO-1224yd(Z)異性体の全体的な選択率が90パーセント超、92パーセント超、95パーセント超、及び/又は97パーセント超になる。
【0065】
いくつかの実施形態では、全体的な収率を増加させるために、HCFC-235cbなどの中間体及び未反応のHFO-1225yeを反応に戻してもよい。いくつかの実施形態では、HFO-1225yeのHCFO-1224yd(Z)への全体的な変換率は、80パーセント超、85パーセント超、及び/又は90パーセント超であってよい。
【0066】
一実施形態において、本発明のプロセスは、約7~約95パーセント、場合によっては、約40~約90パーセントのHCFO-1224(yd)(Z)を含み、残りは、1225ye(Z)、1225ye(E)、及び236cbからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を含む、組成物を生成することができる。HCFO-1224(yd)(Z)よりも低い沸点を有する追加の化合物は、改善された冷蔵性能を付与することができる。
【0067】
本発明のプロセスの適用において使用される反応器、蒸留塔及びそれらに付属する供給ライン、流出ライン、並びに関連ユニットは、フッ化水素及び塩化水素に対して耐性のある材料で構築されなければならない。フッ素化の分野で周知である構築物の典型的な材料としては、ステンレス鋼(特にオーステナイト系)、周知の高ニッケル合金、例えば、Monel(商標)ニッケル銅合金、Hastelloy(商標)ニッケル系合金、及びInconel(商標)ニッケルクロム合金など、並びに銅覆鋼が挙げられる。
【0068】
代替的実施形態では、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)及び/又は1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)を、HCFO-1224ydを生成するための出発試薬として1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)の代わりに又はそれと組み合わせて使用してもよい。
【0069】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
酸化クロム触媒JM62-3によるHFO-1225yeの1224ydへの塩化水素化
8mLの12~20メッシュのJohnson Matthey酸化クロム触媒を、1/2インチのHastelloy C 227反応器に装填した。触媒を250℃で2時間乾燥させ、次いで、300℃~425℃の温度でHF処理により活性化した。次いで、HCl及びHFO-1225yeを、大気圧で反応器に供給した。反応条件を以下の表1に列挙する。反応器からの気流をGC及びGC-MSによって分析した。試験の結果も表1に示す。この反応では、より高いHFO-1225yeの変換率及びより優れた1224ydの収率が得られた。
【0071】
【0072】
【0073】
(実施例2)
酸化クロム触媒JM62-3による236eaの1224ydへの塩化水素化
8mLの12~20メッシュのJohnson Matthey酸化クロム触媒を、1/2インチのHastelloy C 227反応器に装填した。触媒を250℃で2時間乾燥させ、次いで、300℃~425℃の温度でHF処理により活性化した。次いで、HCl及び236eaを、大気圧で反応器に供給した。反応条件を以下の表2に列挙する。反応器からの気流をGC及びGC-MSによって分析した。試験の結果も表2に示す。この反応では、より高い236eaの変換率及びより優れた1224ydの収率が得られた。
【0074】
【0075】
【0076】
(実施例3)
酸化クロム触媒JM62-3による245ebの塩化水素化
実施例1での236eaとの反応を行った後、反応器をN2でパージして、236ea反応物から有機物を除去した。次いで、HCl及び245ebを、大気圧で反応器に供給した。反応条件を以下の表3に列挙する。反応器からの気流をGC及びGC-MSによって分析した。試験の結果も表3に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
(実施例4)
BASF 4126 Al2O3による236eaの1224ydへの塩化水素化
2mLの12~20メッシュのBASF 4126 Al2O3触媒を、1/2インチのHastelloy C 227反応器に装填した。触媒を250℃で2時間乾燥させ、次いで、300℃~425℃の温度でHF処理により活性化した。次いで、HCl及び236eaを、大気圧で反応器に供給した。反応条件を以下の表3に列挙する。反応器からの気流をGC及びGC-MSによって分析した。試験の結果も表4に示す。この反応では1224ydが作製された。
【0081】
【0082】
【0083】
(実施例5)
酸化クロム触媒JM62-3による236cbの235cb及びHCFO-1224ydへの塩化水素化
2mLの12~20メッシュのJohnson Matthey酸化クロム触媒を、1/2インチのHastelloy C 227反応器に装填した。触媒を250℃で2時間乾燥させ、次いで、300℃~425℃のHF処理により活性化した。次いで、HCl及び236cbを、大気圧で反応器に供給した。反応条件を以下の表2に列挙する。反応器からの気流をGC及びGC-MSによって分析した。試験の結果も表5に示す。この反応では、より高い236cbの変換率及びより優れた235cb及び1224ydの収率が得られた。
【0084】
【0085】
【0086】
本発明を1つ以上の実施形態を参照して説明してきたが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができ、その要素の代わりに同等物を使用することができることが理解されるであろう。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むことが意図される。加えて、詳細な説明で特定された全ての数値は、正確な及び近似的な値が両方とも明示的に特定されているかのように解釈されるものとする。