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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】シートベルトリトラクター
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/36 20060101AFI20240513BHJP
   B60R 22/41 20060101ALI20240513BHJP
   B60R 22/415 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B60R22/36
B60R22/41
B60R22/415
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021524357
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019079450
(87)【国際公開番号】W WO2020094448
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102018127909.4
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】グレッサー、アント―クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューク、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】クンツラー、フロリアン
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101011(JP,A)
【文献】特開平09-169256(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00461602(EP,A1)
【文献】西独国特許出願公開第02809395(DE,A)
【文献】特開2017-081512(JP,A)
【文献】国際公開第2018/108474(WO,A1)
【文献】特開2006-082801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/36
B60R 22/41
B60R 22/415
B60R 22/343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトリトラクターであって、
フレーム内に回転可能に支承され、シートベルトを巻き取ることができるベルト軸(23)と、
前記シートベルトの引出し方向に前記ベルト軸(23)をブロックするためのロック装置と、
前記ロック装置を制御するための歯を持つ制御ディスク(1)を備える制御装置と、
前記制御ディスク(1)の前記歯への係合方向に弾性荷重されている第1のロックレバー(3)を備える電動アクチュエーター(2)と、
ECLロックレバー(4)であって、前記ECLロックレバーが前記制御ディスク(1)の前記歯に係合していない位置で最初のシートベルトの引出しが行われている間、前記電動アクチュエーター(2)の前記第1のロックレバー(3)を第1の位置でブロックするECLロックレバー(4)と、
LCロックレバー(5)であって、第1の位置において規定のシートベルト引出し長さを超えていない場合は、前記LCロックレバーが前記制御ディスク(1)の歯に係合していない第1の位置で前記電動アクチュエーター(2)の前記第1のロックレバー(3)をブロックし、規定のシートベルト引出し長さを超えた場合は、前記第1のロックレバー(3)をブロックしない第2の位置に切替装置(8)によって移動されるLCロックレバー(5)と、を備えるシートベルトリトラクターにおいて、
前記LCロックレバー(5)及び/又は前記LCロックレバー(5)の支持プレート(6)がロック輪郭(7)を有しており、前記ロック輪郭(7)は、前記LCロックレバー(5)が前記第2の位置に配置されている場合、前記ECLロックレバー(4)が前記第1のロックレバー(3)を解除する第2の位置で前記ロック輪郭に当接するように形成されており、かつ、前記ロック輪郭(7)は、前記LCロックレバー(5)及び/又は前記支持プレート(6)と一体に形成されていることを特徴とする、シートベルトリトラクター。
【請求項2】
前記切替装置(8)は、前記ベルト軸(23)と連結されているカウンティングギアの形で実現されており、前記LCロックレバー(5)の動作を、前記シートベルト引出し長さに応じて制御することを特徴とする、請求項1に記載のシートベルトリトラクター。
【請求項3】
前記カウンティングギアは、前記ベルト軸(23)によって駆動されるリングギア(9)を備え、前記リングギアは、リング状のカウンターギア(10)に対して偏心して配置されており、前記ベルト軸(23)の回転中に前記カウンターギア(10)の周囲を転動し、それによって前記カウンターギア(10)を減速された回転運動で駆動することを特徴とする、請求項2に記載のシートベルトリトラクター。
【請求項4】
前記カウンターギア(10)には、前記LCロックレバー(5)の動きを制御する少なくとも1つの切替カム(11)が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載のシートベルトリトラクター。
【請求項5】
前記カウンティングギアは、駆動する駆動歯車(12)と、前記駆動する駆動歯車(12)と噛み合う少なくとも1つの従動する被動歯車(13)とを有しており、
前記従動する被動歯車(13)は、切替輪郭(15)を有する回転可能なロッカースイッチ(14)上に配置されており、
前記駆動歯車(12)及び/又は前記被動歯車(13)は、少なくとも1つの切替カム(16)を有し、前記切替カムは、前記駆動歯車(12)と前記被動歯車(13)との規定の回転角位置で前記ロッカースイッチ(14)の切替動作を強制的に行い、それによって前記LCロックレバー(5)の動作を制御することを特徴とする、請求項2に記載のシートベルトリトラクター。
【請求項6】
前記シートベルト引出し長さに応じて前記カウンティングギアにより制御されるALR/ELR切替機構(17)が設けられていることを特徴とする、請求項2~5のいずれか一項に記載のシートベルトリトラクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の特徴を備えるシートベルトリトラクターに関する。
【0002】
基本的に、シートベルトリトラクターは車両において、車両のシートベルト装置のシートベルトを巻き取るために用いられる。そのために、シートベルトリトラクターは巻き取り方向に弾性予付勢されたベルト軸を有しており、このベルト軸は車両に固定されたフレームに回転可能に取り付けられている。さらに、シートベルトリトラクターは、ベルト引出し方向にベルト軸をブロックするためのロック装置を有しており、このロック装置は、車両減速度又はシートベルト引出し加速度が規定の限界値を超過する際に、それぞれ偏向可能な慣性質量を持つ適切なセンサー装置によって制御される。これにより、ベルト軸は、車両減速度及びシートベルト引出し加速度の限界値以下では、弾性予付勢に抗して送出し方向に回転可能であり、シートベルトが取り外されると、弾性予付勢によって自動的に巻き取り方向に駆動される。車両減速度を検出するセンサー装置は、偏向可能な慣性質量を有し、この慣性質量には第1のロックレバーが当接しており、慣性質量が偏向すると第1のロックレバーが偏向し、回転可能にベルト軸に支承されている制御ディスクの外歯に係合し、ロック装置を制御する。
【0003】
現代の車両には、電気的に制御可能なロック装置に対する要求が増加している。そのために、例えば独国特許第196 20 236 C2及び英国特許2 398 824 Bから、電磁石によって制御可能な第1のロックレバーを備え、周知の方法で制御ディスクの歯に係合させることによってロック装置を制御する電動アクチュエーターを設けることが公知である。この場合、慣性質量は外部の、例えばECUに配置されており、慣性による旋回運動によってアクチュエーターの制御に必要な信号を発生させる。
【0004】
独国特許第196 20 236 C2から公知の解決方法では、アクチュエーターが通電されると、第1のロックレバーがアクティブに制御ディスクの歯に係合し、それによってベルト軸がブロックされる。この解決方法には、電源供給が故障した場合に、ベルト軸がアクティブにブロックされなくなるという欠点がある。
【0005】
これに対して、英国特許第2 398 824 Bから公知の、出願人の解決方法は、別の原理に基づいている。ここでは、第1のロックレバーが、ばねによって制御ディスクの歯の係合方向に弾性荷重されており、アクチュエーターに通電されると、歯の係合位置から引き戻される。これにより、アクチュエーターが通電されていない場合、ひいては電源供給が故障した場合も、ベルト軸は自動的にシートベルトの引出し方向にブロックされており、乗員は、事故の際に電源供給とは無関係に拘束される。この原理は、アクチュエーターを常時通電状態にするという欠点の他に、電源供給が開始されないと乗員がシートベルトを掛けられないという欠点がある。というのも、この場合、制御ディスクに係合している第1のロックレバーによってベルト軸がブロックされているからである。従って、この欠点を回避するため、この解決方法では、さらにもう1つのロックレバーを設ける必要があり、以下では、このレバーをエクストラクションコンフォートレバー(ECLロックレバー)と呼ぶ。ECLロックレバーは、シートベルト装着プロセスの第1の引出し動作の間、アクチュエーターの第1のロックレバーをブロックし、シートベルトの僅かな引込み動作の後に続いて第1のロックレバーを再び解除する。ECLロックレバーは、本出願人のシートベルトリトラクターでは、摩擦結合によってベルト軸に接続されている摩擦ドラグレバーとして実施されており、これにより、シートベルトの第1の引出し動作の間、アクチュエーターの第1のロックレバーをブロックする位置に強制的に押しやられる。シートベルトバックルをロックすると、シートベルトは僅かなベルト長さだけ常に引き込まれるため、ベルト軸は巻き取り方向に回転する。この動きは、第1のロックレバーをブロックする位置から第1のロックレバーを解除する位置にECLロックレバーを戻すために利用される。ECLロックレバーが、続けてアクチュエーターの第1のロックレバーを意図せずに再ブロックしないようにするため、もう1つのロックばねが設けられており、このロックばねは、第1の切替装置によって、第1のロックレバーをブロックする位置にECLロックレバーが戻るのを阻止する位置に動かされる。
【0006】
シートベルトリトラクターのさらなる問題は、リクライニング可能なシートバックレストに座席内蔵されているアセンブリであり、この場合、バックレストの傾きを調整する際にシートベルトリトラクターのロック装置が、第1のロックレバーの偏向によって意図せずに制御されるおそれがある。これによって生じるロック装置の制御により、ベルト軸が引出し方向にブロックされると、ベルト軸のブロックによってシートベルトの引出しもブロックされるため、バックレストをそれ以上調整することができなくなる。この問題を回避するため、シートベルトが装着されていない状態では、車両感応型センサー装置によってロック装置の制御を意図的に非作動させて、バックレストの傾斜を調整できるようにし、特に乗員が後部座席に乗り込む際にバックレストが前方に倒れるようにしなければならない。このような車両感応型センサー装置のカットオフは、「ロックキャンセラー」(略号LC)とも呼ばれる。そのためにLCロックレバーが設けられており、このLCロックレバーは、シートベルトが引き込まれている場合に第1の位置でアクチュエーターの第1のロックレバーをブロックし、規定のシートベルト引出し長さ以降は切替装置によって第1の位置からロックレバーを解除する第2の位置に移行する。
【0007】
本発明の課題は、ロック装置の制御ディスクの係合方向に弾性荷重されている第1のロックレバーを備える電気制御式アクチュエーターと、シートベルトの最初の引出し時に第1のロックレバーをブロックするECLロックレバーと、制御ディスクが係合位置外にある場合に規定のシートベルト引込み長さから第1のロックレバーをブロックするLCロックレバーと、を備えるシートベルトリトラクターを提供することであり、このシートベルトリトラクターは簡略化された構造を有することが望まれる。
【0008】
この課題を解決すために、請求項1の特徴を備えるシートベルトリトラクターが提案される。その他の好ましい発展形態は、従属請求項、図面及びそれに属する説明に示されている。
【0009】
本発明の基本的考え方に基づき、LCロックレバー及び/又はLCロックレバーの支持プレートはロック輪郭を有しており、このロック輪郭は、LCロックレバーが第2の位置に配置されている場合、ECLロックレバーが第1のロックレバーを解除する第2の位置でロック輪郭に当接するように成形されている、ことが提案される。
【0010】
提案されている解決方法の利点は、ロック輪郭を持つLCロックレバーが相応に成形されており、このLCロックレバーはいずれにせよ行われる切替動作によって、これがロック面を形成する位置に運ばれ、このロック面にはELCロックレバーが、シートベルトの引出しと装着が行われ、シートベルトが僅かに引き込まれ、それによってベルト軸が戻された後に、ロック状態で当接することにある。これにより、ECLロックレバーをブロックするために従来設けられていたロックばねと、それに属する切替装置を省略することができ、その代わりにLCロックレバーが、その形状と、いずれにせよ設けられる切替装置によって強制的に行われる切替動作によって、ECLロックレバーを固定するために使用される。非常に短いシートベルト引出し長さにLCロックレバーの切替点があるため、LCロックレバー又はLCロックレバーとロック輪郭が配置された支持プレートは、非常に短いシートベルト引出し長さの引出し後にすでに第2の位置に移動し、それによって、例えば子供がシートベルトを締める場合など、シートベルト引出し長さが非常に短くても、僅かな引込み動作の後では、第1のロックレバーが再度のブロックされるのをECLロックレバーは阻止する。
【0011】
さらに、切替装置が、ベルト軸と連結されているカウンティングギアの形で実現されており、LCロックレバーの動作をシートベルト引出し長さに応じて制御することが提案される。このカウンティングギアにより、LCロックレバーの制御は純粋に機械式に行われるため、低コストで実現することが可能になる。
【0012】
さらに、カウンティングギアは、ベルト軸によって駆動されるリングギアを備え、このリングギアはリング状のカウンターギアに対して偏心して配置されており、ベルト軸の回転中にカウンターギアの周囲を転動し、それによってカウンターギアを減速された回転運動で駆動することが提案される。提案されたカウンティングギアの形状により、シートベルトリトラクターのコンパクトな構造が可能になり、減速は、リングギア及びカウンターギアの歯数ならびに駆動されるリングギアの偏心の測定によって非常に簡単に調整設定することができる。
【0013】
さらに、カウンターギアには、LCロックレバーの動きを制御する少なくとも1つの切替カムが設けられていることが提案される。カウンターギアは、カウンティングギアにおいて減速された回転運動を実行し、これにより、カウンターギアに配置されている切替カムが円形の、場合によっては波形の送り動作を実行し、この送り動作はLCロックレバーの切替えに用いられる。
【0014】
あるいは、カウンティングギアは、駆動する駆動歯車と、駆動歯車と噛み合う少なくとも1つの従動する被動歯車を有していてもよく、従動する被動歯車は、切替輪郭を有する回転可能なロッカースイッチ上に配置されており、駆動歯車及び/又は被動歯車は、少なくとも1つの切替カムを有し、この切替カムは、駆動歯車と被動歯車の規定の回転角位置でロッカースイッチの切替動作を強制的に行い、それによってLCロックレバーの動作を制御する。ロッカースイッチの動き、ひいてはLCロックレバーの動きは、1つ以上の切替カムを介して、2つのギアが互いに押し合うことによって生じ、ロッカースイッチの回転運動が相対的な動きを可能にし、それによって切替動作を可能にする。
【0015】
さらに、シートベルト引出し長さに応じてカウンティングギアにより制御されるALR/ELR切替機構が設けられていることが提案される。提案されている解決方法により、すでに設けられているカウンティングギアは、チャイルドシートを拘束するために設けられているALR/ELR切替機構の切替えのために追加的に使用される。これにより、シートベルトリトラクターに、非常に少ない手間でさらなる追加機能を与えることができる。
【0016】
以下に、添付の図を参照しながら、好ましい実施形態に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】シートベルト引出し動作中にELCロックレバーとLCロックレバーがさまざまな位置をとる第1の実施形態に基づくシートベルトリトラクターを示す。
図2】シートベルト引出し動作中のALRモードの作動解除時において、さまざまな位置をとるLCロックレバー及びELR/ALR切替機構を備える本発明に基づく図1によるシートベルトリトラクターを示す。
図3】ALRモードの作動時において、さまざまな位置をとるLCロックレバー及びELR/ALR切替機構を備える本発明に基づくシートベルトリトラクターを示す。
図4】第2の実施例による本発明に基づくシートベルトリトラクターの展開図である。
図5】さまざまな位置をとるECLロックレバーとLCロックレバーを備える図4の第2の実施例による本発明に基づくシートベルトリトラクターを示す。
図6】さまざまな位置をとる図1のECLロックレバーとLCロックレバーのロック輪郭を示す。
図7図1~3による本発明に基づくシートベルトリトラクターの展開図である。
図8】2つの異なる角度から見たLCロックレバーの拡大図である。
図9】さまざまなシートベルト引出し長さでの第2の実施例に基づく代替の実施形態を示す。
図10】第2の実施例に基づくシートベルトリトラクターの展開図である。
【0018】
図1に示されているのは、図7でのみ確認できるベルト軸23を備えるシートベルトリトラクターであり、このベルト軸は図示されていないフレーム内に回転可能に支承されている。フレームは、ベルト軸23の支持の他に、周知の方法でシートベルトリトラクターを車両に固定するためにも用いられる。ベルト軸23にはシートベルトを巻き取ることができ、引出し方向は図1の矢印Aで示され、引込み方向は図2及び3の矢印Bで示されている。
【0019】
ベルト軸23には制御ディスク1が設けられており、その外周には、半径方向の外側へ向いている歯(図示されていない)が設けられている。この歯は、シートベルトの巻き取り方向にベルト軸に対して弾性荷重されており、ベルト軸に対して相対的に回転運動を行うことによって、ベルト軸に支承されているロック爪の形のロック装置(図示されていない)に、フレームに固定された歯への作動動作を強制する。さらに、シートベルトリトラクターの半径方向の外側には電動アクチュエーター2が設けられており、これは回転可能に支承されている第1のロックレバー3を有しており、第1のロックレバーには、ばね18によって制御ディスク1の歯の係合方向に弾性荷重されている。アクチュエーター2はさらに電磁石を有しており、この電磁石に通電されると第1のロックレバー3が歯への係合位置から旋回して離脱するため、電磁石の通電時には制御ディスク1が自由に回転可能であり、ベルト軸はブロックされていない。従って、電源供給が停止した際には、第1のロックレバー3が旋回して自動的に制御ディスク1の歯に係合することで、ベルト軸23をブロックして乗員を拘束することができる。車両のイグニションがオンになる前は電源供給がないことから、アクチュエーター2には通電されないため、第1のロックレバー3はばね18によって制御ディスク2の歯の中に引き込まれ、その結果、ベルト軸23はシートベルトの引出し方向にブロックされることになるだろう。これを回避するため、「エクストラクションコンフォートレバー」が設けられており、以下ではこれをECLロックレバー4と呼ぶ。このECLロックレバー4は、ベルト軸23に直接又は間接的に摩擦結合で接続されている摩擦ドラグレバーによって実現されており、リングスプリングとリング上の開放突出部によってベルト軸23に割り当てられている段に摩擦結合によって固定されている。
【0020】
ECLロックレバー4は、矢印方向Aへのシートベルトの引出しと、それによって生じる矢印方向Cへのベルト軸23の回転によって反時計回りに旋回し、それにより制御ディスク1に向いた側の、第1のロックレバー3の上面に当接する。従って、第1の引出し動作の間、アクチュエーター2の第1のロックレバー3は、ばね18によって付勢されるばね力にもかかわらず、制御ディスク1の歯への係合動作に対して阻止されるため、シートベルトを自由に引き出すことができる。
【0021】
さらに、旋回可能に支承されている支持プレート6から半径方向の外側へ延びるLCロックレバー5が設けられている。また、支持プレート6には、半径方向に突出した指の形のロック輪郭7と、凹部のある切替レバー21が設けられている。ベルト軸には、リングギア9と、リングギア9に対して偏心して配置されているカウンターギア10とを備えるカウンティングギアの形の切替装置8が設けられている。リングギア9は、シートベルトの引出し動作中にカウンターギア10を転動し、このとき矢印方向Eの時計回りに送り動作を実施する。カウンティングギアのリングギア9には、さらに第1の切替カム11と第2の切替カム19が設けられている。
【0022】
図1の左図aに示されているように、LCロックレバー5はシートベルト引出し開始前の初期位置には同様に制御ディスク1に向いた側の、第1のロックレバー3の上面に当接しており、それによって制御ディスク1の歯への係合動作に対して第1のロックレバー3をブロックする位置にある。これにより、シートベルトは、例えばバックレストの傾斜を調整するために引き出して、再び引き込むことが可能になる。実質的に、アクチュエーター2は作動停止している。リングギア9は、第1の切替カム11によって、LCロックレバー5の支持プレート6の切替レバー21の凹部に係合する。リングギア9は、シートベルトの引出し動作中に矢印方向Eに回転するので、このとき支持プレート6はLCロックレバー5と共に、第1の切替カム11が切替レバー21の凹部に係合することによって反時計回りに矢印方向Gへ旋回運動するように強制される。この支持プレート6の旋回運動により、LCロックレバー5は、第1のロックレバー3の上面から離れて図bの位置に旋回し、ロック輪郭7は、以下に詳しく説明するECLロックレバー4のブロックに対して重要な規定位置に達する。
【0023】
図1の左図aには、引出し動作開始時の位置にあるシートベルトリトラクターが示されている。LCロックレバー5とECLロックレバー4は、第1のロックレバー3の上面にあり、従ってアクチュエーター2の作動を停止している。次のシートベルトの引出し動作中、ベルト軸は矢印方向Cに回転し、それによってECLロックレバー4を、第1のロックレバー3をブロックする図cの位置へと強制的に押しやる。同時に、LCロックレバー5は、反時計回りに矢印方向Gへと動かされ、第1のロックレバー3を解除する図cの位置へ強制的に押しやられる。乗員がシートベルトを締めると、シートベルトは、必ず、図1の右図の矢印方向Bに僅かに再度引き込まれ、それによって、ベルト軸23が矢印方向Dへ時計回りに回転し、ECLロックレバー4が同時に時計回りに旋回する。これにより、ECLロックレバー4は、アクチュエーター2の第1のロックレバー3を解放し、アクチュエーター2は、対応の信号を受けて、ベルト軸23をブロックするために第1のロックレバー3の先端によって制御ディスク1の歯に係合することができる。さらに、これによってECLロックレバー4が、LCロックレバー5又はこれに割り当てられている支持プレート6のロック輪郭7の正面に当接する位置に達し、それによってECLロックレバーは、第1のロックレバー3をブロックする位置への逆回転動作に対して阻止される。この位置は、右図dに示されている。従って、ECLロックレバー4のブロックは、支持プレート6に配置されているロック輪郭7を備えるLCロックレバー5によって行われ、LCロックレバー5の先行動作を意図的に利用して、ロック輪郭7を規定の位置に動かし、この位置には、ECLロックレバー4が引き続きシートベルトの引込み動作によって阻止状態で当接する。LCロックレバー5は、シートベルトが引き込まれる際にアクチュエーター2をブロックする機能に基づいて、シートベルトが規定の長さまで引き出されると、いずれにせよブロックしている位置から出て、第1のロックレバー3を解放する位置まで動かされるため、この動きは、本発明に基づく解決方法によって同時に、規定の位置でシートベルトの引出しが行われた後にECLロックレバー4のためのロック輪郭7を実現又は提供する目的にも利用することができる。
【0024】
図2には、追加的に、シートベルトリトラクターに設けられているALR/ELR切替機構17の機能が詳しく示されている。ALR/ELR切替機構17は、切替輪郭15を持つロッカースイッチ14を有しており、ALRロックレバー16は突出しているピンによってこのロッカースイッチに係合する。左図において、ALRロックレバー16は制御ディスク1の歯に係合しているため、シートベルトによって引張張力が加えられると、ベルト軸23が自動的に引出し方向にブロックされる。さらに、ロッカースイッチ14には切替レバー20が設けられており、この切替レバーは、シートベルト引き込み動作と、それによって生じるカウンティングギアの動作とによって、LCロックレバー5の支持プレート6の切替レバー21に当接する。さらなる引込み動作では、支持プレート6の切替レバー21が矢印方向Hへの旋回運動を実行し、それによってALR/ELR切替機構17の切替レバー20を矢印方向Iへ強制的に旋回運動させる。これによって同様に矢印方向Iへ強制されるロッカースイッチ14の旋回運動により、ALRロックレバー16は、切替輪郭15に係合しているピンによって、制御ディスク1の歯から出て、矢印方向Jへの旋回運動を強制されるので、その後、制御ディスク1はベルト軸と一緒に引出し方向へ自由に回転することができる。
【0025】
図3には、ALR/ELR切替機構17の逆方向の動作経過が示されており、ここでは、ロッカースイッチ14の切替レバー20が、リングギア9の第2の切替カム19の正面摺動によって矢印方向Lへの旋回運動を強制される。同時に、ALRロックレバー16は、それによって制御ディスク1の歯への係合方向に、矢印方向Kへの旋回運動を強制される。
【0026】
図4及び5には、カウンティングギアの代替の実施形態による本発明に基づくシートベルトリトラクターが示されている。このカウンティングギアには、駆動歯車12と、駆動歯車12に噛み合う3つの被動歯車13が含まれている。被動歯車13は、それぞれ1つの切替カム11、19を有しており、それぞれ1つの切替輪郭15を備える2つの異なるロッカースイッチ14上に配置されている。この場合、ロッカースイッチ14の切替動作は、切替カム11と19が、例えばカウンターギアの空隙などの対応輪郭に衝突することによって引き起こされる。
【0027】
図6は、ECLロックレバー4とLCロックレバー5の位置とロック輪郭7を側面から見た図であり、相互の位置関係、及びアクチュエーター2の第1のロックレバー3に対する位置関係a、c、dが示されている。左図aでは、ECLロックレバー4とLCロックレバー5が第1のロックレバー3の上面に当接して、第1のロックレバーをブロックする位置にあり、それによって第1のロックレバーが制御ディスク1の歯の中に旋回運動するのを阻止している。シートベルトのさらなる引出し動作中にLCロックレバー5が旋回することで、このLCロックレバーは、ECLロックレバー4の側面を弾性変形させながら、ECLロックレバー4をロック輪郭7によって側面から覆う位置に達し、図1の図cにおいてECLロックレバー4の後部に配置されることになる。従って、LCロックレバー5は、ロック輪郭7と共に、ECLロックレバー4をブロックするための一種の準備位置にある。次にシートベルトが僅かなベルト長さだけ再び引き込まれると、ECLロックレバー4が回転し、その弾性変形によってLCロックレバー5のロック輪郭7の正面で、図dの位置に自動的に噛み合う。その結果、次に、ECLロックレバー4は、第1のロックレバー3をブロックする位置への逆回転動作に対して阻止される。
【0028】
ECLロックレバー4とLCロックレバー5は、ロック輪郭7が第1のロックレバー3をブロックする位置においてECLロックレバー4の側面に位置しており、その際にロックレバー4又は5のいずれかが弾性変形することがないように形成されている。そのために、ECLロックレバー4は僅かなオフセット、又は小さな段を有し、弾性変形することなく重なり合う配置を可能にしている。ロック輪郭7は、その後からシートベルトの引出し動作中に第1のロックレバー3に向かって下方へ旋回することにより、段又はオフセットの理由からECLロックレバー4を押しのけることになる。ECLロックレバー4には、これにより実質的に弾性によってプリテンションがかけられる。次に、この弾性プリテンションは、ECLロックレバー4の旋回運動中、ECLロックレバー4を自動的にブロックする動作になる。
【0029】
図8には、LCロックレバー5の拡大図が2つの異なる視点から示されている。LCロックレバー5は、ロック輪郭7として作用する指の側面にフェーズ22を有しており、このフェーズはECLロックレバー4に対する相対運動を容易にするため、LCロックレバー5の摺動をECLロックレバー4のロック輪郭7によって可能にする。
【0030】
図9及び10には、本発明の第2の実施例に基づくシートベルトリトラクターが示されている。ECLロックレバー4は、ここでも同様に摩擦ドラグレバーとして使用され、これはベルト軸23の開放された段付部にリングスプリングによって固定されることにより、摩擦力を超えるまでベルト軸23の動きを摩擦に基づいて実現する。
【0031】
図9及び10の実施例では、LCロックレバー5とALR/ELR切替機構17の形状が異なっている。ここでは同様に、LCロックレバー5が、横方向に突出したアームの形のロック輪郭7を持つ旋回可能な支持プレート6によって形成されている。LCロックレバー5の動きは、同様に、切替カム11が設けられているリングギア9の被駆動回転運動によって制御される。ALR/ELR切替機構17は、同様に、突出したアーム25を持つロッカースイッチ14を有しており、このロッカースイッチは、ピン24上に旋回可能に支承されているALRロックレバー16と共同作用している。ELRモードからALRモードに切り替えるためのロッカースイッチ14の動きは(位置が図9の図c及びdに示されている)、ロッカースイッチ14の突出したアーム15に取り付けられている制御カム19の摺動によって制御される。この動きにより、ロッカースイッチ14はALRロックレバー16と共に制御ディスク1の歯に係合し、切替レバー20によってCLロックレバー5の切替レバー21の延長部に当接する。続いて、シートベルトが、この位置から開始して切替カム11がロックレバー21を過ぎるまで再び引き込まれると、切替カム11はロックレバー21を図dの位置から図aの位置に強制的に旋回させる。ロックレバー21は同時に延長部を介してロッカースイッチ14に当接するので、ロッカースイッチ15及びその上にあるALRロックレバー16も旋回運動を強制され、これにより、ALRロックレバー16は制御ディスク1の歯から外れる。その結果、シートベルトリトラクターはALRモードからELRモードに切り替えられる。
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図8
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図10