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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】コーティングされたガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20240513BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240513BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240513BHJP
   B32B 17/00 20060101ALI20240513BHJP
   C03C 27/06 20060101ALI20240513BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20240513BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C03C17/36
B32B7/023
B32B9/00 A
B32B17/00
C03C27/06 101H
G02B5/26
G02B5/28
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021532157
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 GB2019053468
(87)【国際公開番号】W WO2020115507
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】1820002.2
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ポール
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ノッテ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ブレイル
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520982(JP,A)
【文献】特開2007-106668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C17/00-17/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層コーティングスタックを備える透明基板であって、前記コーティングスタックは、
(i)n個の機能金属層、mおよび
(ii)nプラス1(n+1)個の誘電体層、dを備え、ここで、前記誘電体層は、各機能金属層の前後に配置され、
ここで、nは、前記基板から数えたスタック中の機能金属層の総数であり、以上であり、
ここで、各誘電体層は、1つ以上の層を備え、
多層コーティングスタック中の各機能金属層の幾何学的層の厚さGmは、多層コーティングスタック中のその前に現れる各機能金属層の前記幾何学的層の厚さよりも大きく、すなわち、
Gmi+1>Gm
であり、
ここで、iは、前記基板から数えられる前記多層コーティングスタック内の前記機能金属層の位置であり、ここで、
各機能金属層mの前後に位置する各誘電体層dについて、各誘電体層の光学層の厚さ(opl)は、前記コーティングスタック内のその前に配置された誘電体層の光学層の厚さ(opln-1)以上であり、ただし、
前記コーティングスタックの第1誘電体層の前記光学層の厚さ(opl)の2倍は、前記コーティングスタックの第2誘電体層の前記光学層の厚さ(opl)よりも小さい、すなわち(2xopl)<oplであり、
前記コーティングスタックの最後の誘電体層の光学層の厚さ(opln+1)の2倍は、最後から2番目の誘電体層の光学層の厚さ(opl)よりも大きい、すなわち、(opl)<(opln+1)x2である、
多層コーティングスタックを備える透明基板。
【請求項2】
前記機能金属層は、銀を備える、請求項1に記載の透明基板。
【請求項3】
前記多層コーティングスタック内の機能金属層の数nは、から6を含む、請求項1または2に記載の透明基板。
【請求項4】
前記多層コーティングスタック内の前記機能金属層の数は、4を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項5】
各誘電体層は、TiOx、SnO、ZnO、ZAO、ZnO:Al、ZrOx、TiOx、Nb、Ta、In、Al、SiOまたは合金またはZnSnOx、InSnOx、および/またはシリコンの(酸)窒化物および/またはアルミニウムの(酸)窒化物および/またはそれらの合金を含むそれらの混合物から選択される材料の1つ以上の層を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項6】
前記多層コーティングスタックは、
第1の誘電体層、dと、
第1の機能金属層mと、
第2の誘電体層、dと、
第2の機能金属層mと、
第3の誘電体層、dと、
第3の機能金属層mと、
第4の誘電体層、dと、
を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項7】
前記多層コーティングスタックは、
第1の誘電体層、dと、
第1の機能金属層mと、
第2の誘電体層、dと、
第2の機能金属層mと、
第3の誘電体層、dと、
第3の機能金属層mと、
第4の誘電体層、dと、
第4の機能金属層mと、
第5の誘電体層、dと、
を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項8】
各機能金属層は、5~25nmの厚さを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項9】
前記第1の誘電体層d1は、前記透明基板からチタン(Ti)の酸化物に基づく層、および/または亜鉛(Zn)の酸化物に基づく層を順に備える、請求項6、7、または8に記載の透明基板。
【請求項10】
前記第2、第3、第4および第5の誘電体層d、d、dおよびdはそれぞれ、前記透明基板から、
(i)亜鉛(Zn)の酸化物に基づく層および
(ii)亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)の酸化物、および/またはスズ(Sn)の酸化物に基づく層、
を順に備える、請求項6、7、8または9に記載の透明基板。
【請求項11】
第3の誘電体層dは、チタン(Ti)の酸化物に基づく層をさらに備える、請求項10に記載の透明基板。
【請求項12】
第5の誘電体層dは、ジルコニウム(Zr)の酸化物に基づく層をさらに備える、請求項7から11のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項13】
前記第1の誘電体層dの光学層の厚さが30~70nmの範囲である、請求項6から12のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項14】
前記第2の誘電体層dの光学層の厚さは、60~180nmの範囲である、請求項6から13のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項15】
前記第3の誘電体層dの光学層の厚さは、70~200nmの範囲である、請求項6から14のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項16】
前記第4の誘電体層dの光学層の厚さは、80~220nmの範囲である、請求項6から15のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項17】
第5の誘電体層dの光学層の厚さは、45~120nmの範囲である、請求項6から16のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項18】
前記コーティングスタックは、NiCrに基づく1つ以上の層をさらに備える、請求項6から17のいずれか一項に記載の透明基板。
【請求項19】
前記NiCrに基づく層または各NiCrに基づく層は、1つ以上の銀機能層と直接接触している、請求項18に記載の透明基板。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の多層コーティングスタックを有する透明基板を組み込んだ二重グレージングユニット。
【請求項21】
0°から60°までのa*およびb*の外部反射についての角度依存性は、5以下を含み、より好ましくは4.0以下、最も好ましくは、3.0以下を含む、請求項20に記載の二重グレージングユニット。
【請求項22】
3%の厚さ変化を伴うカラーシフトは、5以下、より好ましくは4.0以下、最も好ましくは、3.0以下を含む、請求項20または21に記載の二重グレージングユニット。
【請求項23】
1.9以上、より好ましくは2.0以上、最も好ましくは2.1以上の選択性をさらに含む、請求項20、21または22に記載の二重グレージングユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングを有する基板に関する。より具体的には、本発明は、コーティングを有する透明基板に関し、当該コーティングは、複数の層を備え、そのうちの複数は太陽放射および/または赤外線を反射する機能層を備える。
【背景技術】
【0002】
例えばガラスを備える透明な基板は、基板が例えば建物に設置されたときに、例えば建物の内部から放出される赤外線を反射することによって基板の放射率を低下させ断熱特性を達成するコーティング(「低放射率(low-e)コーティング」)および/またはその太陽光エネルギー透過率を低下させて過剰な量の太陽光エネルギー(熱)の侵入から内部の部屋を遮蔽するコーティング(「太陽光制御コーティング」)を提供し得る。
【0003】
ガラス基板に適用されたときにそのような低放射率(low-e)および/または太陽光制御を提供するコーティングは、例えば、スパッタリングなどの物理蒸着プロセスによって堆積され得る。スパッタされた低放射率および太陽光制御コーティングスタックは、通常、例えば、
「基板/ベース誘電体層シーケンス/[銀(Ag)/誘電体層シーケンス]」(aおよびbの誘電体シーケンスのそれぞれが必ずしも同じ厚さまたは組成を有するとは限らない)、
のような、繰り返しシーケンスで構成される。
【0004】
このタイプの層システムでは、銀層は主に赤外線(IR)反射層として機能するが、スペクトルの可視領域における透過率と反射特性に、同様に熱エネルギーとして放出されるエネルギー、つまりコーティングされたガラス基板の放射率と太陽光エネルギー透過率に、影響を与えるために、材料と厚さを適切に選択することにより、誘電体層(「DL」)層を使用し得る。
【0005】
反射は、ガラス基板を通しての視界に悪影響を及ぼす。この問題は、ガラス基板を通してのはっきりした視界がそれらの機能にとって重要である用途にとって特に重要である。
【0006】
さらに、ガラス製造業界からは、断熱特性と望ましい低放射率の観点で自動車および建築用グレージングの厳しい性能要件を満たすコーティングされたガラス基板に対する継続的な需要があり、その結果、さらに複雑化した層シーケンス(またはスタック)は、さまざまな誘電体材料に基づいてガラス基板をコーティングするために使用される。その結果、ガラス製造業界では、コーティングされた基板の誘電体シーケンスの数が2または3になることがより一般的になっている。
【0007】
例えば、国際公開第2011/020974号(WO2011/020974)には、少なくとも3つの金属機能層と金属機能層のいずれかの側に配置された4つの反射防止コーティングとの交互のアレイを備え、反射防止コーティングは複数の層をも備える、薄膜多層構造を有する透明ガラス基板が記載されている。
【0008】
米国特許第5,595,825号明細書(US 5,595,825)には、スペクトルの赤外線(IR)部分で反射特性を有する少なくとも3つのフィルムを備えるフィルムスタックでコーティングされた基板が開示されており、これは高い選択性、すなわち、Tの特定の値について、高い光透過率Tに対する日射透過率(SF)の比(T/SF)を有する。
【0009】
米国特許出願公開第2013/0057951号明細書(US2013/0057951)は、例えば銀およびn+1誘電体層に基づくn機能層を有する層システムを記載している。非常に重要なのは、スタック内に配置された吸収層である。
【0010】
米国特許出願公開第2017/0059753号明細書(US2017/0059753)は、少なくとも1つの吸収層を有する複数の金属機能層(例えば銀)を有するフィルムについても記載している。機能層は、位相調整層(誘電体層)に囲まれている。
【0011】
中国特許出願公開第102372447号明細書(CN102372447)は、米国特許出願公開第2017/0059753号明細書(US2011/0169402)と同様に、自動車および建築用ガラス用の4つの銀コーティング層を含有する低放射率ガラスを開示しているが、米国特許出願公開第2017/0059753号明細書(US2011/0169402)には、銀層および誘電体層の厚さに関係に関する具体的な教示は存在しない。
【0012】
同様に、米国特許出願公開第2014/0347722号明細書(US2014/0347722)、米国特許出願公開第2018/0194675号明細書(US2018/0194675)、および米国特許出願公開第2018/0194676号明細書(US2018/0194676)には、3つの銀層を有するコーティング層システムが記載されているが、いずれの文献にも本発明で指定された銀層と誘電体層との間の関係は教示されていない。
【0013】
しかしながら、スパッタされた誘電体層は、例えば銀などのスパッタされた金属層よりも厚く、堆積が遅いので、ガラス基板上への複雑な層シーケンスの堆積は、しばしば、生産コーティングプラントにおいて多数のカソードを必要とする。
【0014】
以前は、ガラス基板へのいくつかの複雑なコーティングスタックの堆積は、必要な厚さ、量、および順序のコーティング材料を堆積できる十分な数のカソードを実現するために、ガラス製造工場のコーティングラインに高価な拡張機能を設置することによって対処されていた。
【0015】
これにより、増築部に追加のポンプセクションも設置され、複数の反応性堆積プロセスを順番に実行することが可能となった。ただしこれは、必要なエンジニアリングの導入を完了するために、コーティングラインを通常長期間停止する必要があるため、多大な費用がかかり、多くの場合大きな混乱を伴う。新しいカソードとポンプの各セクションには、付属電源、真空ポンプ、コンベヤセクション、サービス、計測設備、および制御システムへの組み込みも必要である。このような変更は、多くの場合、下流のロジスティクスの再構築につながり、場合によっては新しい土木工事や建物の拡張にさえつながる。複数の金属層および/またはより複雑なスタックの要件がますます一般的になるにつれて、これらの問題は増加するように定められている。
【0016】
さらに、コーティングシーケンスで銀などの機能金属層の数を増やすと、コーティングされた基板の太陽光保護特性を最適化できるが、機能金属銀層の数を増やすと、ガラス基板の光透過率Tに悪影響を及ぼす。
【0017】
コーティングされた基板の層数の増加のさらなる効果は、異なる角度で見たときにコーティングの外側の色の反射に変化をもたらすことである。したがって、中間色および効率的な光透過性を提供するという点でガラス産業の要件を満たすだけでなく、必要な熱的および太陽光特性も提供することが可能なコーティングされたガラス基板の需要が存在する。
【0018】
したがって、本発明の目的は、適切な光学特性および熱特性を提供する、改良された透明なガラス基板を提供することである。
【0019】
すなわち、本発明は、例えば、保管、輸送、および使用中の通常の環境影響に耐えることが可能であり、必要な実質的中間色および光学特性を提供する、低放射率(low-e)および/または太陽光制御コーティングガラス基板を提供することを目的とする。
【0020】
本発明のさらなる目的は、コーティングされたガラス基板に、高い選択性、すなわち好ましくは2.0よりも大きい(ここで、選択性=二重グレージングユニット(DGU)の光透過率とg値との比)値、および低いシート抵抗に対応する、低い放射率値、すなわち好ましくは3%未満であり、を提供することである。コーティングされたガラス基板で調整された建物における二重グレージングユニット(DGU)の場合、コーティングされたガラスにおいて外部反射で均一な色を有することが非常に望ましい。これを達成し、優れた美的外観を示すには、コーティングされたガラス基板の外部反射の色の変化を、さまざまな視野角で観察したときに最小限に抑えることが重要である。
【0021】
コーティングされたガラス基板の製造では厚さの変動が発生し得るため、建物のファサードの均一な色の外観を確保するために、コーティングされたガラス基板をはめこんだ二重グレージングユニットを同じものに取り付けたときにコーティングの厚さの変動に関連する色の変動を最小限に抑えることが非常に重要である。
【0022】
したがって、要約すると、本発明は、上記で詳述した従来技術のプロセスおよび製品に関連する問題に対処すること、およびガラス産業が必要とする光学特性、例えばヘイズ、光透過率、および特に重要な色、を満たす経済的に効率的で商業的に望ましいコーティングされたガラス基板を提供しようとすることを目的とする。
【0023】
したがって、本発明の第一の態様によれば、
多層コーティングスタックを備える透明基板であって、当該コーティングスタックは、
(i)n個の機能金属層、m、と、
(ii)nプラス1(n+1)個の誘電体層、dと、を備え、ここで、当該誘電体層は、各機能金属層の前後に配置され、
ここで、nは、当該基板から数えたスタック中の機能金属層の総数であり、3以上であり、
ここで、各誘電体層は、1つ以上の層を備え、
多層コーティングスタック中の各機能金属層の幾何学的層の厚さGmは、多層コーティングスタック中のその前に現れる各機能金属層の当該幾何学的層の厚さよりも大きく、すなわち、
Gmi+1>Gm
であり、
ここで、iは、当該基板から数えられる当該多層コーティングスタック内の当該機能金属層の位置であり、ここで、
各機能金属層mの前後に位置する各誘電体層dについて、各誘電体層の光学層の厚さ(opl)は、当該コーティングスタック内のその前に配置された誘電体層の光学層の厚さ(opln-1)以上であり、ただし、
当該コーティングスタックの第1誘電体層の当該光学層の厚さ(opl)の2倍は、当該コーティングスタックの第2誘電体層の当該光学層の厚さ(opl)よりも小さい、すなわち(2xopl)<oplであり、
当該コーティングスタックの最後の誘電体層の光学層の厚さ(opln+1)の2倍は、最後から2番目の誘電体層の光学層の厚さ(opl)よりも大きい、すなわち、(opl)<(opln+1)x2である、
多層コーティングスタックを備える透明基板、を提供する。
【0024】
すなわち、例えば、本発明に関連して、多層コーティングスタックが3つの銀層を備えるとき、各誘電体の光学層の厚さは、次のように表され得る。
(2xopl)<opl≦opl<(opln+1x2)
ここで、nは3であり、機能金属銀層の数に等しい。
【0025】
多層コーティングスタックが4つの銀層を備えるとき、各誘電体の光学層の厚さは、次のように表され得る。
(2xopl)<opl≦opl≦opl<(opln+1x2)
ここで、nは4であり、機能金属銀層の数に等しい。
【0026】
多層コーティングスタックが5つの銀層を備えるとき、各誘電体の光学層の厚さは、次のように表され得る。
(2xopl)<opl≦opl≦opl≦opl<(opln+1x2)
ここで、nは5であり、機能金属銀層の数に等しく、多層コーティングスタックが6つの銀層を備えるとき、各誘電体の光学層の厚さは次のように表され得る。
(2xopl)<opl≦opl≦opl≦opl≦opl<(opln+1x2)
ここで、nは5であり、機能金属銀層の数に等しい、などである。
【0027】
本発明の第1の態様に関して、機能金属層は銀または金を備え得るが、機能金属層は銀を備えることが好ましい。
【0028】
本発明による多層コーティングスタック内の機能金属層の数は、好ましくは3から6を含み得る。より好ましくは、多層コーティングスタック内の機能金属層の数は、4から6を含む。しかしながら、最も好ましくは、多層コーティングスタック内の機能金属層の数は4を含む。
【0029】
本発明の第1の態様による透明基板のコーティングスタックに関して、各誘電体層は、TiOx、SnO、ZnO、ZAO、ZnO:Al、ZrOx、TiOx、Nb、Ta、In、Al、SiOまたは合金またはそれらの混合物、例えばZnSnOx、InSnOxおよび/またはシリコン(酸)窒化物および/またはアルミニウム(酸)窒化物および/またはそれらの合金、から選択される材料の1つ以上の層を備える。機能金属層とコーティングスタック内の後続の誘電体層との間に、Ni、Cr、W、Nb、Ti、Vまたは合金および混合物、例えば、NiCrまたはNiV、の1つ以上を含む群から選択される吸収層を、任意で適用する。吸収層は、好ましくは、コーティングスタックの光およびエネルギー透過を調節するために使用される。しかしながら、さらに、吸収層は、バリア層としても使用され得る。
【0030】
本発明に関連して、コーティングスタックは、Δa*、Δb*≦5の二重グレージングユニット(DGU)に配置されたとき、外部反射に対して0°~60°間の角度カラーシフトを有することが好ましい。これは、最大60°までのすべての表示角度において、0°視野へのカラーシフトがa*およびb*について5未満であることを意味する。
【0031】
より好ましくは、コーティングスタックは、Δb*≦4の二重グレージングユニット(DGU)に配置されたとき、外部反射の0°~60°の角度カラーシフトを有する。最も好ましくは、コーティングスタックは、Δa*、Δb*≦3の二重グレージングユニット(DGU)に配置されたとき、外部反射の0°~60°の角度カラーシフトを有する。
【0032】
また、本発明に関して、コーティングスタックは、Δa*について5以下、Δb*について5以下の、1つの誘電体または金属層に対して3%(またはそれ以上)の厚さの変動を伴う二重グレージングユニット(DGU)中に存在するとき、外部反射に対するカラーシフトを有することが好ましい。つまり、コーティングスタック内の1つの誘電体または金属層がターゲットの厚さを3%変化させた場合、観察されるカラーシフトはa*および/またはb*について5未満である。
【0033】
より好ましくは、本発明に関連して、コーティングスタックは、Δa*について4以下、Δb*について4以下の、1つの誘電体または金属層の厚さの変動が3%(またはそれ以上)の二重グレージングユニットDGUに存在するとき、外部反射のカラーシフトを有することが好ましい。
【0034】
最も好ましくは、本発明に関連して、コーティングスタックは、Δa*について3以下、Δb*について3以下の、1つの誘電体または金属層の厚さの変動が3%(またはそれ以上)の二重グレージングユニットDGUに存在するとき、外部反射のカラーシフトを有することが好ましい。
【0035】
さらに、本発明の第1の態様に関連して、多層コーティングスタックが
第1の誘電体層、dと、
第1の機能金属層mと、
第2の誘電体層、dと、
第2の機能金属層mと、
第3の誘電体層、dと、
第3の機能金属層mと、
第4の誘電体層、dと、
を備える、透明な基板を提供し得る。
【0036】
本発明の第1の態様のこの実施形態に関連して、第1、第2、および第3の機能金属層は、それぞれ銀の層を備え得る。
【0037】
また、本発明の第1の態様のこの実施形態に関連して、ガラス基板に最も近い第1の誘電体層dは、ガラス基板から、チタン(Ti)の酸化物に基づく層を順番に備え得、あるいは、ガラス基板に最も近い第1の誘電体層dは、ガラス基板から、チタン(Ti)の酸化物に基づく層および/または亜鉛(Zn)の酸化物に基づく層を順番に備え得る。
【0038】
さらに、第2の誘電体層dは、ガラス基板から、亜鉛の酸化物に基づく層、および亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)の酸化物に基づく層を順番に備え得る。
【0039】
第3の誘電体層dは、好ましくは、ガラス基板から、亜鉛(Zn)の酸化物に基づく層、および/または亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)の酸化物に基づく層を順番に備え得る。第3の誘電体はまた、ジルコニウム(Zr)の酸化物に基づく層、および/またはチタンの酸化物に基づく層をも備え得る。第3の誘電体層は、チタンの酸化物に基づく層の上方に位置する亜鉛の酸化物に基づく層をさらに備え得る。
【0040】
第3の金属層と第4の誘電体層シーケンスとの間に、NiCrの吸収層も提供され得る。NiCrの層は、好ましくは、多層コーティングスタックの光透過率を調整するために提供され得る。
【0041】
結果として、多層コーティングスタックは、好ましくは、
第1の誘電体層、dと、
第1の機能金属層mと、
第2の誘電体層、dと、
第2の機能金属層mと、
第3の誘電体層、dと、
第3の機能金属層mと、
吸収層aと、
第4の誘電体層dと、
を備え得る。
【0042】
さらに、第4の誘電体層は、亜鉛(Zn)の酸化物に基づく層、および/または亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)の酸化物に基づく層を備え得る。
【0043】
さらに、本発明の第1の態様に関連して、多層コーティングスタックが、
第1の誘電体層、dと、
第1の機能金属層mと、
第2の誘電体層、dと、
第2の機能金属層mと、
第3の誘電体層、dと、
第3の機能金属層mと、
第4の誘電体層dと、
第4の機能金属層mと、
第5の誘電体層dと、
を備える透明な基板を提供し得る。
【0044】
本発明の第1の態様のこの実施形態に関連して、第1、第2、第3および第4の機能金属層は、銀の層を備え得る。
【0045】
また、第1、第2、第3および第4の誘電体層は上記の通りであり得、第5の誘電体層は、亜鉛(Zn)の酸化物に基づく層、および/または亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)の酸化物に基づく層を備え得る。
【0046】
第3の金属層と第4の誘電体層シーケンスとの間に、NiCrの吸収層も提供され得る。NiCrの層は、好ましくは、多層コーティングスタックの光透過率を調整するために提供され得る。同様に、第4の金属層と第5の誘電体層シーケンスとの間に、NiCrの吸収層も提供され得る。
【0047】
結果として、多層コーティングスタックは、好ましくは、
第1の誘電体層、dと、
第1の機能金属層mと、
第2の誘電体層、dと、
第2の機能金属層mと、
第3の誘電体層、dと、
第3の機能金属層mと、
吸収層aと、
第4の誘電体層dと、
第4の機能金属層mと、
吸収層aと、
第5の誘電体層dと、
を備え得る。
【0048】
さらに、本発明の第1の態様に関連して、各機能金属層は、5~25nmの厚さを備え得る。より好ましくは、各機能金属層は、6~23nmの厚さを備え得る。最も好ましくは、各機能金属層は、8~21nmの間の厚さを備え得る。
【0049】
好ましくは、本発明の第1の態様に関して、第1の誘電体層dは、ガラス基板から、チタン(Ti)の酸化物に基づく層、および/または亜鉛(Zn)の酸化物に基づく層を順番に備える。
【0050】
また、本発明の第1の態様に関連して、第2、第3、第4および第5の誘電体層d、d、dおよびdはそれぞれ、好ましくは、ガラス基板から
(i)亜鉛(Zn)の酸化物に基づく層および/またはNiCrに基づく吸収層;および
(ii)亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)の酸化物、および/またはスズ(Sn)の酸化物に基づく層を、
順番に備え得る。
【0051】
NiCrに基づく吸収層もまたコーティングスタックに存在し得る。コーティングスタックは、好ましくは、機能金属層と直接接触し得、亜鉛(Zn)の酸化物に基づく層の代わりに使用され得る。
【0052】
第3の誘電体層dは、チタン(Ti)の酸化物に基づく層を備えることも好ましい。
【0053】
第5の誘電体層dは、ジルコニウム(Zr)の酸化物に基づく層をさらに備え得る。
【0054】
また、本発明の第1の態様に関して、第1の誘電体層dの光学層の厚さは、好ましくは30~70nmの範囲である。光学層の厚さは、材料の屈折率(550nmの波長で測定)と材料の幾何学的層の厚さとの積に等しい。
【0055】
すなわち、本発明の第1の態様に関して、第1の誘電体層dの光学層の厚さの2倍は、好ましくは、第2の誘電体層の光学層の厚さd未満である、すなわち、(2xd)<dである。
【0056】
第2の誘電体層dの光学層の厚さは、好ましくは60~180nmの範囲である。また、第2の誘電体層の光学層の厚さdは、好ましくは、第3の誘電体層の光学層の厚さd以下、すなわち、d≦dである。
【0057】
第3の誘電体層dの光学層の厚さは、好ましくは70~200nmの範囲である。また、第3の誘電体層の光学層の厚さdは、好ましくは、第4の誘電体層の光学層の厚さd以下、すなわち、d≦dである。
【0058】
第4の誘電体層dの光学層の厚さは、好ましくは80~220nmの範囲である。第5の誘電体層dの光学層の厚さは、好ましくは45~120nmの範囲である。
【0059】
すなわち、本発明の第1の態様に関して、第4の誘電体層dの光学層の厚さは、好ましくは、第5の誘電体層dの光学層の厚さの2倍未満、すなわちd<(2xd)である。
【0060】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による多層コーティングスタックを有する透明基板を組み込んだ二重グレージングユニットが提供される。本発明の第1の態様による透明基板および多層コーティングスタックに関する上記のすべての特徴は、本発明の第2の態様による二重グレージングユニットにも適用されることが好ましい。
【0061】
本発明の第1および第2の態様に関して、透明基板がガラスを備えることが好ましく、より好ましくはフロートガラスを備える。
【0062】
さらに、本発明の第2の態様による二重グレージングユニットに関して、二重グレージングユニットは、1.9以上の選択性を備え得る。より好ましくは、グレージングユニットの選択性は、2.0以上である。最も好ましくは、グレージングユニットの選択性は、2.1以上である。選択性は、二重グレージングユニット(DGU)の光透過率とg値(総エネルギー透過率)との比である。光透過率およびg値は、参照により本明細書に組み込まれる標準EN 410に従って計算される。
【0063】
また、本発明の第2の態様による二重グレージングユニットに関して、二重グレージングユニットは、好ましくは、5以下、より好ましくは4.0以下、最も好ましくは、3.0以下を含む、0°から60°までのa*およびb*外部反射の角度依存性を示す。
【0064】
さらに、本発明の第2の態様による二重グレージングユニットは、好ましくは、5以下、より好ましくは4.0以下、最も好ましくは、3.0以下の1つの層について3%の厚さ変化を伴うカラーシフトをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0065】
ここで、本発明の実施形態は、非限定的な例として、以下の図1から5を参照して、本明細書で説明される。
【0066】
図1】二重グレージングユニットの断面図である。
図2】例1に従ってコーティングされたガラスで作成された、標準的な二重グレージングユニット(DGU)対b*の外部反射の角度依存性(度単位)を表したグラフである。
図3】例2に従ってコーティングされたガラスで作成された、標準的な二重グレージングユニット(DGU)対b*の外部反射の角度依存性(度単位)を表したグラフである。
図4】例3に従ってコーティングされたガラスで作成された、標準的な二重グレージングユニット(DGU)対a*の外部反射の角度依存性(度単位)を表したグラフである。
図5】例4に従ってコーティングされたガラスで作成された、標準的な二重グレージングユニット(DGU)対a*の外部反射の角度依存性(度単位)を表したグラフである。
【0067】
図2および3では、b*はCIELAB色空間による青から黄色への色の変化を表し、図4および5では、a*はCIELAB色空間による緑から赤への色の変化を表す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
詳細を表1に示す以下の例では、ACおよび/またはDCマグネトロン(またはパルスDC)スパッタリングデバイスを使用して、必要に応じて中周波スパッタリングを適用して、コーティングを厚さ6mmの標準フロートガラス板に90%の範囲の光透過率で堆積した。
亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)の酸化物の誘電体層は、アルゴン/酸素(Ar/O)スパッタ雰囲気で、亜鉛-スズターゲット(重量比Zn:Sn約50:50)から反応的にスパッタされた。
酸化チタン(TiO)層は、金属チタン(Ti)または導電性酸化物チタン(TiO)ターゲットから、アルゴン/酸素(Ar/O)スパッタ雰囲気で堆積された。
ZnO:Al成長促進層は、Ar/Oスパッタ雰囲気中で、Alドープ亜鉛金属ターゲット(アルミニウム(Al)含有量約2重量%)からスパッタされた。
すべての例で実質的に純粋な銀(Ag)からなる機能層は、酸素を添加せず、残留酸素分圧が10-4mbar未満のアルゴン(Ar)スパッタ雰囲気で、銀ターゲットからスパッタされた。
銀ベースの機能層の上方にある、ZAOとも呼ばれるAlドープ酸化亜鉛のバリア層は、酸素を添加しない純粋アルゴン(Ar)スパッタ雰囲気で、導電性酸化物ターゲットであるZnO:Alターゲットからスパッタされた。
銀ベースの機能層の直上に位置するNiCrの層(吸収層および/またはバリア層として機能し得る)は、純粋なアルゴンスパッタ雰囲気で金属NiCrターゲットからスパッタされた。
【0069】
【表1】
【0070】
表1は、本発明による比較コーティングガラス板およびコーティングガラス板の層シーケンスの詳細を、光透過率(T)、g値、選択性、角度0°~60°測定でのカラーシフトΔa*、Δb*、および厚さの変動が3%の場合のカラーシフトΔa*、Δb*の観点からの各層シーケンスの結果とともに提供する。すべての値は二重グレージングユニット(DGU)の値である。カラーシフトは常に外部反射のシフトである。各例について、層は、各列の上部の層から始まり、示されている順序で6mmのフロートガラス板に堆積された。
【0071】
色特性-各サンプルの色特性は、確立されたCIE LAB L*、a*、b*座標を使用して測定および報告された(例えば、本明細書が参照により援用する国際公開第2004/063111号(WO2004/063111A1)の段落[0030]および[0031]に記載されている)。
【0072】
コーティングの光学層の厚さが提供される以下の例では、光学層の厚さは、TiOxの屈折率値2.45、ZnO:Al、ZAOの屈折率2.07、およびZnSnOxの屈折率2.07を使用して決定される。
【実施例
【0073】
(実施例1)
実施例1に記載のコーティングシーケンスを、以下のように調製した。6mmのフロートガラス板に、第1の酸化チタン(TiO)層を適用して、46.6nmの光学層の厚さoplを有する第1の誘電体コーティングシーケンスを形成した。次に、酸化チタン(TiO)層の上に、光学的厚さ7.3nmを有するアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)の層を適用した。その結果、第1の誘電体層は、53.9nmの光学的厚さoplで形成される。次に、ZnO:Al層の上に、第1の銀機能層(Ag層1)を、9.3nmのコーティング厚さになるまで適用した。次に、4.1nmの光学層の厚さを有するアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)のバリア層を第1の銀機能層(Ag層1)上に堆積させて、136.6nmの光学層の厚さを適用した後続のスズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の第2のコーティング層シーケンスから、第1の銀機能層を保護した。その結果、組み合わせた光学層の厚さoplが140.7nmである、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の層とアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)とを備える、第2の誘電体層シーケンスを形成した。次に、第2の銀機能層(Ag層2)を、11.5nmの厚さで第2の誘電体層の上方に適用した。これに、光学層の厚さが4.1nmであるアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第2のバリア層が再び続き、第2の銀機能層(Ag層2)の上方に適用された。次に、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第2のバリア層を、64.2nmの光学層の厚さで、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の第2の誘電体コーティング層でコーティングした。第2の酸化チタン(TiO)層を適用して、71.1nmの光学層の厚さのコーティングを形成した。第2のアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)を7.3nmの光学的厚さで酸化チタンにコーティングし、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の層、酸化チタン(TiO)の層、アルミニウムドープ酸化亜鉛層(ZnO:Al)から形成された、146.7nmの光学層厚oplを備える、第3の誘電体層シーケンスを完成させた。次に、第3の誘電体層シーケンスの上方に、厚さ15.6nmの第3の銀機能層(Ag層3)を適用した。再び、4.1nmの光学層の厚さを有するアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層を、第3の銀機能層(Ag層3)の上に適用し、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第3層の上方に、光学層の厚さが159.4nmのスズおよび酸化亜鉛の第3層(ZnSnO)を適用して、組み合わせた光学層の厚さoplが163.5nmの第4の誘電体層シーケンスを形成した。次に、厚さ17.4nmの第4の銀機能層(Ag層4)を、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の第3の層の上方に適用した。再び、光学層の厚さが4.1nmのアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層を、第4の銀機能層(Ag層4)の上方に堆積した。最後に、光学層の厚さが82.8nmのスズおよび酸化亜鉛の第4層(ZnSnO)を、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第4層の上方に適用して、86.9nmの組み合わせた光学層の厚さoplを有する第5誘電体シーケンスを完成させた。したがって、例えば1で表される層シーケンスは、銀機能層の光学層の厚さおよび幾何学的層の厚さに関して、次のように表し得る。
ガラス/TiO、opl=46.6nm/ZnO:Al、opl=7.3nm/Ag 9.3nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=136.6nm/Ag 11.5nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=64.2nm/TiO、opl=71,1nm/ZnO:Al、opl=7.3nm/Ag 15.6nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO 159.4nm/Ag 17.4nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=82.8nm。
【0074】
上記および以下の例に関連して表される「opl」値は、材料の光学層の厚さであり、材料の屈折率と波長550nmで測定された材料の幾何学的層の厚さとの積に基づいている。
【0075】
5つの誘電体層シーケンスop1からoplのそれぞれの光学層の厚さは、以下のように要約され得る。
opl=53.9nm、opl=140.7nm、opl=146.7nm、opl=163.5nm、opl=86.9nm。
【0076】
さらに、実施例1に関して、各銀機能層dAgの厚さは、ガラス基板までの銀機能層の距離が増加するにつれて増加する。すなわち、例えば、第2の銀機能層dAgの厚さは、第1の銀機能層dAgの厚さよりも大きい。
【0077】
その結果、実施例1に関して、本発明によれば、以下の関係、
(i)銀機能層の厚さに関して、
dAg<dAg<dAg<dAg
(ii)各銀機能層の前、後、およびそれらの間の組み合わせた誘電体層シーケンスの厚さに関して、
(oplx2)<opl<opl<opl<(oplx2)
が満たされる。
【0078】
図1に示す二重グレージングユニット(DGU)1を、例1に示すようにコーティング5を備えた6mmガラスシート2を使用して調整した。すなわち、実施例1に詳述されるようなコーティングを施した厚さ6mmのフロートガラスシート2を、第2の厚さ4mmのコーティングされていないフロートガラスシート3と組み立てた。2枚のガラスシート2、3は、コーティングされたガラスシート2のコーティングされた側5が間隙8に面するように組み立てた(取り付け時にDGUの位置2と呼ばれる)。すなわち、コーティングされたガラスシート2は、コーティングされていないガラスシート3よりも外部環境10に近く、断熱二重グレージングユニットを形成する。ガラスシートは、それらの間に16mmの間隙距離を置いて配置され、間隙ギャップ8は、90%のアルゴンガスおよび10%の空気充填で満たされた。したがって、コーティングされたガラスシート2のコーティングされていない面4は位置1に存在し、第2のガラスシート3の2つのコーティングされていない面6および7はそれぞれ位置3および4に存在した。位置2にlow-eコーティングを施した二重グレージングの特性を、EN 410に従って測定した。結果は、表2のとおりである。
【0079】
【表2】
【0080】
表2において、選択性の値は、二重グレージングユニットの光透過率とg値との比に等しく、各値は、参照により本明細書に組み込まれるEN410を使用して計算される。
【0081】
本発明による実施例1のコーティングで調製されたDGUの外部反射の差は、a*およびb*に関して、0°および60°の視野角について、Δa*=1.0およびΔb*=2.9であることがわかった。例1のb*対視野角の変化のグラフ表示を図2に示す。これは、例1で使用したコーティングが必要な限定内にあることを示している。
【0082】
また、本発明による実施例1のコーティングで調整されたDGUに関して、3%の厚さ変化を伴うカラーシフトは、Δa*=2.5およびΔb=*2.8の場合である。すなわち、本発明によるコーティングを使用して調製されたDGUのΔa*およびΔb*の値は、許容限界が5以内であり、また好ましくは限界が4以内であり、特に好ましくは限界が3以内である。
【0083】
(比較例2)
例2に記載のコーティングシーケンスは、以下のように調製された。6mmのフロートガラス板に、第1の酸化チタン(TiO)層を適用して、光学層の厚さが80.9nmの第1の誘電体コーティングシーケンスoplを形成した。次に、酸化チタン(TiO)層の上に、第1の銀機能層(Ag層1)を14nmのコーティング厚さまで適用した。次に、4.1nmの光学層の厚さを有するアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)のバリア層を第1の銀機能層(Ag層1)上に堆積させて、第1の銀機能層を、151.1nmの光学層の厚さで適用されたその後のスズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の第2のコーティング層シーケンスから保護した。その結果、組み合わせた光学層の厚さが155.2nmの、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の層とアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)とを備える第2の誘電体層シーケンスを形成した。次に、第2の銀機能層(Ag層2)を、14nmの厚さで、第2の誘電体層の上方に適用した。これに再び、第2の銀機能層(Ag層2)の上方に適用された、4.1nmの光学層の厚さを有するアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第2のバリア層が続く。次に、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第2のバリア層を、78.7nmの光学層の厚さを有するスズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の第2の誘電体コーティング層でコーティングした。第2の酸化チタン(TiO)層を適用して、光学層の厚さが73.5nmのコーティングを形成し、156.3nmの組み合わせた光学層の厚さを備える、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層、スズのおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の層、および酸化チタン(TiO)の層から形成された第3の誘電体層シーケンスoplを完成させた。次に、第3の誘電体層シーケンスの上方に、厚さ14nmの第3の銀機能層(Ag層3)を適用した。再び、4.1nmの光学層の厚さを有するアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層を第3の銀機能層(Ag層3)の上に適用し、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第3層の上方に、130.4nmの光学層の厚さを有するスズおよび酸化亜鉛(ZnSnOx)の第3層を適用して、134.6nmの組み合わせ光学層の厚さを有する第4の誘電体層シーケンスoplを形成した。次に、厚さ14nmの第4の銀機能層(Ag層4)を、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の第3の層の上方に適用した。再び、光学層の厚さが4.1nmのアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層を、第4の銀機能層(Ag層4)のコーティングの上方に堆積した。最後に、光学層の厚さが76.6nmのスズおよび酸化亜鉛の第4の層(ZnSnO)を、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第4の層の上方に適用して、80.7nmの組み合わせた光学層厚さを有する第5の誘電体シーケンスoplを完成させた。
【0084】
したがって、例2の層シーケンスは、次のように表され得る。
ガラス/TiO、opl=80.9nm/Ag 14nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=151.2nm/Ag 14nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=78.7nm/TiO、opl=73.5nm/Ag 14nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO 130.4nm/Ag 14nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=76.6nm
【0085】
比較例2における5つの誘電体層シーケンスopからoplのそれぞれの光学層の厚さは、以下のように要約され得る。
opl=80.9nm、opl=155.2nm、opl=156.3nm、opl=134.5nm、opl=80.7nm
【0086】
したがって、比較例2の場合、銀機能層の厚さに関する以下の関係は満たされない。
dAg<dAg<dAg<dAg
【0087】
代わりに、比較例2の銀機能層の厚さに関して、以下の関係が存在する。
dAg=dAg=dAg=dAg
つまり、各銀機能層の厚さはすべての層で同じである。
【0088】
また、比較例2の場合、各銀機能層の前、後、およびそれらの間の組み合わせた誘電体層シーケンスの厚さにする、次の関係
(oplx2)<opl<opl<opl<(oplx2)
は、満たされておらず、代わりに、第1の誘電体層の光学的厚さの2倍(oplx2)が第2の誘電体層oplの光学的厚さよりも大きく、組み合わせた光学的厚さ層oplは、組み合わせた光学的厚さ層oplよりも大きい。
【0089】
したがって、比較例2の場合、組み合わせた光学層の厚さの間に以下の関係が存在する。
(oplx2)>opl<opl>opl<(oplx2)
【0090】
図1に示されるような二重グレージングユニット(DGU)1を、比較例2に記載されるようにコーティング5を有する6mmガラスシート2を使用して調製した。すなわち、例2に詳述されるようなコーティングを施した厚さ6mmのフロートガラスシート2を、第2の厚さ4mmのコーティングされていないフロートガラスシート3と組み立てた。2枚のガラス2、3は、コーティングされたガラス2シートのコーティングされた側5が間隙8に面するように組み立てられ(取り付け時に、DGUの位置2と呼ばれる)、コーティングされたガラスシート2は、コーティングされていないガラスシート3よりも外部環境10に近く、断熱二重グレージングユニットを形成する。ガラスシートは、それらの間に16mmの間隙距離を置いて配置され、間隙ギャップ8は、90%のアルゴンガスおよび10%の空気充填で満たされた。したがって、コーティングされたガラスシート2のコーティングされていない面4は位置1に存在し、第2のガラスシート3の2つのコーティングされていない面6および7はそれぞれ位置3および4に存在した。比較例2の位置2にlow-eコーティングを施した二重グレージングの特性は、EN410に従って測定された。結果は表3のとおりである。
【0091】
【表3】
【0092】
表3において、選択性値は、二重グレージングユニットの光透過率とg値との比に等しく、各値は、参照により本明細書に援用されるEN410を使用して計算される。
【0093】
比較例2に従って、0°および60°の視野角についてのコーティングで調製されたDGUの外部反射の差は、a*およびb*に関して、Δa*=3.9およびΔb*=9.4であることが見出された。例2のb*対視野角の変化のグラフ表示を図3に示す。
【0094】
また、例2のコーティングで調製されたDGU(本発明によるものではない)に関して、3%の厚さ変化を伴うカラーシフトは、Δa*=6.2およびΔb*=8.0の場合である。すなわち、比較例2に詳述されたコーティングを使用したDGUのΔa*およびΔb*の値は、許容限界である5をはるかに超えている。
【0095】
(例3)
比較例3に記載のコーティングシーケンスを、以下のように調製した。6mmのフロートガラス板に、第1の酸化チタン(TiO)層を適用して、53.9nmの光学層の厚さoplを有する第1の誘電体コーティングシーケンスを形成した。次に、酸化チタン(TiO)層の上に、第1の銀機能層(Ag層1)を11.3nmのコーティング厚さで適用した。次に、光学層の厚さが4.1nmのアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)のバリア層を第1の銀機能層(Ag層1)上に堆積させて、第1の銀機能層を、165.6nmの光学層の厚さで適用されたその後のスズおよび酸化亜鉛(ZnSnOx)の第2のコーティング層シーケンスから保護した。その結果、169.7nmの組み合わせた光学層の厚さoplを有するスズおよび酸化亜鉛(ZnSnOx)の層とアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層とを備える、第2の誘電体層シーケンスを形成した。次に、第2の銀機能層(Ag層2)を、14.6nmの厚さで第2の誘電体層の上方に適用した。これに、光学層の厚さが4.1nmである、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第2のバリア層が再び続き、第2の銀機能層(Ag層2)の上方に適用した。次に、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第2のバリア層を、51.8nmの光学層の厚さまで、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の第2の誘電体コーティング層でコーティングした。第2の酸化チタン(TiO)層を適用して、80.9nmの光学層の厚さのコーティングを形成し、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の層、酸化チタン(TiO)の層から形成された、136.8nmの光学層厚さoplを備える、第3の誘電体層シーケンスを完成させた。次に、第3の誘電体層シーケンスの上方に、厚さ15nmの第3の銀機能層(Ag層3)を適用した。再び、4.1nmの光学層の厚さを有するアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層を、第3の銀機能層(Ag層3)の上に適用し、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第3層の上方に、光学層の厚さが128.3nmのスズおよび酸化亜鉛の第3層(ZnSnO)を適用して、組み合わせた光学層の厚さoplが132.4nmである第4の誘電体層シーケンスを形成した。次に、厚さ15.5nmの第4の銀機能層(Ag層4)を、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の第3の層の上方に適用した。再び、光学層の厚さが4.1nmのアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層を、コーティングされた第4の銀機能層(Ag層4)の上方に堆積した。最後に、光学層の厚さが31.1nmのスズおよび酸化亜鉛の第4層(ZnSnO)を、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第4層の上方に適用して、35.2nmの組み合わせた光学層の厚さoplを有する第5誘電体シーケンスを完成させた。
【0096】
したがって比較例3の層シーケンスは、次のように表され得る。
ガラス/TiO、opl=53.9nm/Ag 11.3nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=165.6nm/Ag 14.6nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=51.8nm/TiO、opl=80.9nm/Ag 15nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO 128.3nm/Ag 15.5nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=31.1nm.
【0097】
5つの誘電体層シーケンスop1からoplのそれぞれについて組み合わせた光学層の厚さは、以下のように要約され得る。
opl=53.9nm、opl=169.7nm、opl=136.8nm、opl=132.4nm、opl=35.2nm
【0098】
銀の機能層に関して、次の関係が存在する。
dAg<dAg<dAg<dAg
【0099】
しかしながら、各銀機能層の前、後、およびそれらの間の組み合わせた誘電体層シーケンスの厚さに関して、実施例1について観察された関係、すなわち、
(oplx2)<opl<opl<opl<(oplx2)
は、比較例3では満たされていないが、代わりに、第2の誘電体シーケンス層op1の組み合わせた光学的厚さは、組み合わせた光学的厚さ層op1の2倍よりも小さく、組み合わせた光学的厚さ層oplは、組み合わせた光学的厚さ層oplよりも大きく、組み合わせた光学的厚さ層oplは、組み合わせた光学的厚さ層oplよりも大きい。すなわち、比較例3について、組み合わせた光学的厚さ層の厚さop1からoplについて、以下の関係が観察される。
(oplx2)>opl>opl>opl<(oplx2)
【0100】
図1に示す二重グレージングユニット(DGU)1を、比較例3に示すようにコーティング5を備えた6mmガラスシート2を使用して調整した。すなわち、例3に詳述されるようなコーティングを施した厚さ6mmのフロートガラスシート2を、第2の厚さ4mmのコーティングされていないフロートガラスシート3と組み立てた。2枚のガラスシート2、3は、コーティングされたガラスシート3のコーティングされた側5が間隙8に面するように組み立てた(取り付け時にDGUの位置2と呼ばれる)。すなわち、コーティングされたガラスシート5は、コーティングされていないガラスシート3よりも外部環境10に近く、断熱二重グレージングユニットを形成する。ガラスシートは、それらの間に16mmの間隙距離を置いて配置され、空間ギャップ8は、90%のアルゴンガスおよび10%の空気充填で満たされた。したがって、コーティングされたガラスシート2のコーティングされていない面4は位置1に存在し、第2のガラスシート3の2つのコーティングされていない面6および7はそれぞれ位置3および4に存在した。比較例3の位置2にlow-eコーティングを施した二重グレージングの特性を、EN 410に従って測定した。結果は、表4のとおりである。
【0101】
【表4】
【0102】
表4において、選択性の値は、二重グレージングユニットの光透過率とg値との比に等しく、各値は、参照により本明細書に組み込まれるEN410を使用して計算される。
【0103】
比較例3に従ってコーティングで調製したDGUの、視野角が0°および60°の場合のa*およびb*に関する外部反射の差は、Δa*=12.1およびΔb*=1.7であることが見出された。例3のa*対視野角の変化のグラフ表示を図4に示す。
【0104】
また、例3のコーティングで調製したDGUに関して、3%の厚さ変化を伴うカラーシフトは、Δa*=10.6およびΔb*=3.2の場合である。すなわち、比較例3に詳述されたコーティングを使用したDGUのΔa*の値は、許容限界である5をはるかに超えている。
【0105】
(実施例4)
例4に記載のコーティングシーケンスを、以下のように調製した。6mmのフロートガラス板に、第1の酸化チタン(TiO)層を適用して、55.1nmの光学層の厚さoplを有する第1の誘電体コーティングシーケンスを形成した。次に、酸化チタン(TiO)層の上に、第1の銀機能層(Ag層1)を8.9nmのコーティング厚さで適用した。次に、光学層の厚さが4.1nmのアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)のバリア層を第1の銀機能層(Ag層1)上に堆積させて、第1の銀機能層を、132.5nmの光学層の厚さで適用されたその後のスズおよび酸化亜鉛(ZnSnOx)の第2のコーティング層シーケンスから保護した。その結果、136.6nmの組み合わせた光学層の厚さoplを有するスズおよび酸化亜鉛(ZnSnOx)の層とアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)とを備える、第2の誘電体層シーケンスを形成した。次に、第2の銀機能層(Ag層2)を、12nmの厚さで第2の誘電体層の上方に適用した。これに、光学層の厚さが4.1nmである、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の第2のバリア層が再び続き、さらなる銀機能層(Ag層2)の上方に適用した。次に、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZAO)の層を、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnOx)の層で68.3nmの厚さにコーティングした。次に、厚さ74.7 nmの酸化チタン(TiO)の層を適用して、組み合わせた光学層の厚さ147.1nmを有する第3の誘電体層シーケンスoplを形成した。次に、第3の誘電体層シーケンスの上方に、厚さ14.5nmの第3の銀機能層(Ag層3)を適用した。次に、銀の層上に、コーティングの透過を減らすために、厚さ0.3nmのニッケルクロムの吸収層を適用した。光学層の厚さが163.5nmのスズおよび酸化亜鉛の第3層(ZnSnO)を、NiCr層の上方に置き、組み合わせた光学層の厚さoplが163.5nmの第4の誘電体層シーケンスを形成した。次に、厚さ16.9nmの第4の銀機能層(Ag層4)を、スズおよび酸化亜鉛(ZnSnO)の第3の層の上方に適用した。再び、光学層の厚さが0.8nmのニッケルクロムの層を、第4の銀層の上方に適用した。最後に、光学層の厚さが84.9nmのスズおよび酸化亜鉛の第4層(ZnSnO)を適用して、86.9nmの組み合わせた効果的な光学層の厚さoplを有する第5誘電体シーケンスを完成させた。
【0106】
したがって、例えば1で表される層シーケンスは、銀機能層の光学層の厚さおよび幾何学的層の厚さに関して、次のように表され得る。
ガラス/TiO、opl=55.1nm/Ag 8.9nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=132.5nm/Ag 12 nm/ZAO、opl=4.1nm/ZnSnO、opl=68.3nm/TiO、opl=74.7nm/Ag 14.5nm/NiCr 0.3nm/ZnSnO 163.5nm/Ag 16.9nm/NiCr 0.8nm/ZnSnO、opl=84.9nm.
【0107】
5つの誘電体層シーケンスop1からoplのそれぞれの光学層の厚さは、以下のように要約され得る。
opl=55.1nm、opl=136.6nm、opl=147.1nm、opl=163.5nm、opl=84.9nm。
さらに、例4に関して、各銀機能層の厚さdAgは、ガラス基板までの銀機能層の距離が増加するにつれて増加する。すなわち、例えば、第2の銀機能層dAgの厚さは、第1の銀機能層dAgの厚さよりも大きい。
【0108】
その結果、本発明による例4に関して、以下の関係が満たされる。
(i)銀機能層の厚さに関して、
dAg<dAg<dAg<dAg
(ii)各銀機能層の前、後、および間の結合された誘電体層シーケンスの厚さに関して、
(oplx2)<opl<opl<opl<(oplx2)。
【0109】
図1に示す二重グレージングユニット(DGU)1を、例4に示すようにコーティング5を備えた6mmガラスシート2を使用して調整した。すなわち、例4に詳述されるようなコーティングを施した厚さ6mmのフロートガラスシート2を、第2の厚さ4mmのコーティングされていないフロートガラスシート3と組み立てた。2枚のガラスシート2、3は、コーティングされたガラスシート3のコーティングされた側5が間隙8に面するように組み立てた(取り付け時にDGUの位置2と呼ばれる)。すなわち、コーティングされたガラスシート5は、コーティングされていないガラスシート3よりも外部環境10に近く、断熱二重グレージングユニットを形成する。ガラスシートは、それらの間に16mmの間隙距離を置いて配置され、間隙ギャップ8は、90%のアルゴンガスおよび10%の空気充填で満たされた。したがって、コーティングされたガラスシート2のコーティングされていない面4は位置1に存在し、第2のガラスシート3の2つのコーティングされていない面6および7はそれぞれ位置3および4に存在する。位置2にlow-eコーティングを施した二重グレージングの特性を、EN 410に従って測定した。結果は、表5のとおりである。
【0110】
【表5】
【0111】
表5において、選択性の値は、二重グレージングユニットの光透過率とG値との比に等しく、各値は、参照により本明細書に組み込まれるEN410を使用して計算される。
【0112】
比較例4に従ってコーティングで調製したDGUの、視野角が0°および60°の場合のa*およびb*に関する外部反射の差は、Δa*=2.2およびΔb*=2.5であることが見出された。例4のa*対視野角の変化のグラフ表示を図5に示す。
【0113】
また、例4のコーティングで調製したDGUに関して、3%の厚さ変化を伴うカラーシフトは、Δa*=2.9およびΔb*=2.3の場合である。すなわち、本発明によれば、例4のコーティングを使用して調製されたDGUのΔa*およびΔb*の値は、許容限界5の範囲内であり、また好ましくは限界4の範囲内であり、さらに特に好ましくは限界3の範囲内である。
【0114】
(結果の要約)
したがって、上記の結果から、本発明に従って作製されたコーティングガラスシート(すなわち、実施例1および4)は、高い選択性2.18および2.17を有する良好な太陽光制御性能を提供することが分かる。また、実施例1と実施例4はどちらも、ファサードに配置したときに、異なる視野角で外側の色がわずかに変化することを示している。どちらの例でも、二重グレージングユニットに配置したときの異なる視野角での色の変化が好ましく、Δa*とΔb*の値は3.0未満である。
【0115】
二重グレージングユニット(DGU)の製造に関して、コーティング層の厚さが変化するにつれて色の変化が少ないことを示すDGUを提供できることは、本発明に関連する重要な利点である。実施例1および4の両方について、コーティングスタックシーケンスの第4の誘電体層の厚さの変動が3%である場合、Δa*およびΔb*の両方について3未満の変化があった。
【0116】
対照的に、比較例2では、すべての銀層が同じ厚さであり、また、本発明に必要な各誘電体層の光学的厚さの関係が満たされておらず、選択性は2.07であり、DGUに形成されたときの異なる視野角(0°-60°)でのコーティングされた基板のカラーシフトは、b*では5を超え、実際にはΔb*=9.4である。例2の第2の誘電体層の3%の厚さ変化による色の変化も5を超え、それぞれΔa*=6.2およびΔb*=8.0である。
【0117】
比較例3では、本発明による誘電体層に必要な光学的厚さの関係もまた満たされていない。代わりに、例3の誘電体層の光学層の厚さは、ガラス基板から離れるにつれて、増加するかわりに減少する。さらに、選択性は2.13であり、例3に従ってコーティングされたガラスで形成されたDGUのさまざまな視野角(0°~60°)でのカラーシフトは、a*では5を超え、実際にはΔa*=12.1である。最後に、例3のa*の第4の誘電体層で3%の厚さの変化で記録された色の変化も5を超え、Δa*=10.6の値である。
図1
図2
図3
図4
図5