(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】α1-アンチトリプシン欠乏症の治療のための化合物とそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07D 239/36 20060101AFI20240513BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240513BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240513BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240513BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240513BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C07D239/36 CSP
A61K31/513
A61P7/00
A61P43/00 111
A61P11/00
A61P1/16
(21)【出願番号】P 2021534304
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 GB2019053552
(87)【国際公開番号】W WO2020120992
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-06
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521258382
【氏名又は名称】ゼット ファクター リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル ラムズデン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジョン フォックス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ アンドリュー ハンティントン
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0045344(US,A1)
【文献】国際公開第2008/143633(WO,A2)
【文献】国際公開第2001/052830(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/031987(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0167621(US,A1)
【文献】特表2007-530459(JP,A)
【文献】特表2007-528353(JP,A)
【文献】Meera Mallya at al.,Small Molecules Block the Polymerization of Z α1-Antitrypsin and Increase the Clearance of Intracellular Aggregates,J. Med. Chem.,2007年11月01日,50,pp. 5357-5363,10.1021/jm070687z
【文献】Marion Bouchecareilh et al.,Histone Deacetylase Inhibitor (HDACi) Suberoylanilide Hydroxamic Acid (SAHA)-mediated Correction of α1-Antitrypsin Deficiency,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL,2012年11月02日,VOL. 287, NO. 45,pp. 38265-38278,DOI 10.1074/jbc.M112.404707
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド:
【化1】
であるオキソピリミジニル-メチル-ベンズアミド誘導体。
【請求項2】
N-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド:
【化2】
であるオキソピリミジニル-メチル-ベンズアミド誘導体。
【請求項3】
N,N-ビス(メチル-d
3)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド:
【化3】
であるオキソピリミジニル-メチル-ベンズアミド誘導体。
【請求項4】
医薬的に許容される塩形
態の、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、及び医薬的に若しくは治療的に許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項6】
疾患又は障害の治療薬の製造における、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物の使用
であって、前記疾患又は障害がAATDである、使用。
【請求項7】
疾患又は障害の治療における使用のための、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物
を含む組成物であって、前記疾患又は障害がAATDである、組成物。
【請求項8】
Z A1AT分泌の誘導因子としての使用のための、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物
を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド、及び関連化合物、及びそれらの医療使用に関する。
【背景技術】
【0002】
α1-アンチトリプシン(A1AT)は、肝臓によって産生され、血液中に分泌されるセルピンスーパーファミリーのメンバーである。それは、さまざまなセリンプロテアーゼ、特に好中球エラスターゼを阻害する。A1ATの血中濃度が低いときに、過度の好中球エラスターゼ活性は、肺組織を分解し、そして慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器合併症をもたらす。
【0003】
血液中のA1ATの基準範囲は0.9~2.3g/Lである。これより低レベルは、A1ATをコードする、SERPINA1遺伝子の突然変異によって引き起こされる遺伝病である、α1-アンチトリプシン欠乏症(A1AD又はAATD)に特有である。AATDの最も一般的な原因であるZ突然変異は、成熟タンパク質(Z A1AT)における342位に対応する、A1AT(UniProtKB-P01009(A1AT_HUMAN))における366位でのグルタミン酸のリジンへの置換である。Z突然変異はA1ATの折り畳みに作用し、そしてわずかな画分だけが天然/活性状態を獲得する結果となる。残りは、異常な折り畳み構造のタンパク質として除去されるか、又は安定した重合体として肝臓に蓄積する。異常な折り畳みの結果として、Z突然変異のホモ接合保因者(ZZ)は、健常者の10~15%であるA1ATの血漿レベルを有し、保因者をCOPDにかかりやすくする。肝臓細胞内へのZ A1AT重合体の蓄積は、保因者を肝臓硬変症、肝臓癌及び他の肝臓病状にかかりやすくする。
【0004】
AATDの肺兆候のための現在の治療は、献血者の血漿から調製したA1AT濃縮物を使用した増強治療法に関与する。US FDAは4種類のA1AT製品:Prolastin、Zemaira、Glassia、及びAralast、の使用を承認した。投薬は週1回の静脈内注入を用いる。増強治療法が、COPDの進行を遅らせることが実証された。AATDの肝臓兆候(例えば、肝臓硬変症と癌)は、ステロイドと肝移植で治療される。肝臓兆候の治療を改善するための調査アプローチとしては、Z A1AT重合の阻害と、自食作用の活性化による重合体のクリアランスの増強とが挙げられる。肺及び肝臓兆候の両方の治療を改善するための調査アプローチは、Z A1ATの折り畳み及び分泌の改善に向けられている。
【0005】
Elliottら(Protein Science, 2000, 9, 1274-1281)は、A1ATのX線結晶構造を記載し、Z A1AT重合に作用する剤を開発するための合理的な薬物デザインのための仮想標的である5つのくぼみを同定した。
Parfreyら(J. Biol. Chem., 2003, 278, 35, 33060-33066)は、Z A1AT重合に作用する剤を開発するための合理的な薬物デザインのための仮想標的である単一のくぼみを更に定義した。
Knauppら(J. Mol. Biol., 2010, 396, 375-383)は、ビス-ANS(4,4’-ジアニリノ-1,1’-ビナフチル-5,5’-ジスルホナート)が、1:1の化学量論及び700nMのKdで、Z A1ATに結合することができるが、野生型、A1AT(M)に結合できないことを示した。
【0006】
Changら(J. Cell. Mol. Med., 2009, 13, 8B, 2304-2316)は、Z A1AT重合を阻害する、Ac-TTAI-NH2を含めた一群のペプチドを報告した。
Burrowsら(Proc. Nat. Acad. Sci., 2000, 97, 4, 1796-1801)は、4-フェニル酪酸、グリセロール及びトリメチルアミンオキシドを含む一連の非選択的シャペロンが、細胞上清及びマウスモデルにおいてZ A1ATレベルを高めることができることを示した。
Bouchecareilhら(Journal of Biological Chemistry, 2012, 287, 45, 38265-38278)は、細胞からの野生型(M)及びZ A1ATの両方の分泌を増大させるためにヒストンデアセチラーゼ阻害剤、特にSAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)の使用を記載する。
【0007】
Berthelierら(PLOS ONE, May 11, 2015)は、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオグアノシンがインビトロにおいてZ A1AT重合を予防できることを実証した。
Mallyaら(J. Med. Chem., 2007, 50, 22, 5357-5363)は、インビトロにおいてZ A1ATの重合を遮断できる、N-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2,5-ジメチルチオフェン-3-スルホンアミドなどの一連のフェノールを記載している。
Huntington(XIIIth International Symposium on Proteinases, Inhibitors and Biological Control, 23 September 2012, and 7th International Symposium on Serpin Biology, Structure and Function, 1st April 2014)は、Z A1AT重合に作用する剤を開発するための合理的な薬物デザインのための仮想標的であるZ A1ATのX線結晶構造からのくぼみを考察した。
【0008】
US8,436,013B2は、マイクロモル範囲内で細胞からのZ A1ATの分泌を増強できるさまざまな構造を開示する。
CAS登録番号1797054-78-4及び1219580-65-0を有する化合物は、Aurora Building Blocksカタログに列挙されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様によると、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが提供される:
【化1】
【0010】
驚いたことに、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが、正しく折り畳まれた、したがって、活性なZ A1ATレベルを高めるのに高度に効果的である一方で、野性型(M)A1AT又はA1ATのSiiyama変異体の分泌に対して効果がないことを示すことを、我々は見つけた。
【0011】
本発明の別の態様によると、N-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが提供される:
【化2】
【0012】
驚いたことに、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが、正しく折り畳まれた、したがって、活性なZ A1ATレベルを高めるのに高度に効果的である一方で、野性型(M)A1AT又はA1ATのSiiyama変異体の分泌に対して効果がないことを示すことを、我々は見つけた。
【0013】
本発明の更なる態様によると、N,N-ビス(メチル-d
3)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが提供される:
【化3】
【0014】
驚いたことに、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが、正しく折り畳まれた、したがって、活性なZ A1ATレベルを高めるのに高度に効果的である一方で、野性型(M)A1AT又はA1ATのSiiyama変異体の分泌に対して効果がないことを示すことを、我々は見つけた。
本発明の化合物は、医薬的に許容される塩形態であっても、又は結晶形態であってもよい。
【0015】
「医薬的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の医薬的に許容されるモノ有機塩又は無機塩を指す。これには、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩及び硝酸塩などの無機酸の付加塩、又は酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモン酸塩及びステアリン酸塩などの有機酸の添加塩を挙げることもできる。例示的な塩としてはまた、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、重硫酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、ゲンチシン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、エタンスルホン酸塩及びベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。医薬的に許容される塩の他の例に関しては、Gould (1986, Int J Pharm 33: 201-217)を参照のこと。
【0016】
本発明の他の態様によると、本明細書中に記載した本発明の化合物を含む医薬組成物及び医薬的に又は治療的に許容される賦形剤又は担体が提供される。
「医薬的に又は治療的に許容される賦形剤又は担体」という用語は、有効成分の有効性又は生物学的活性を妨げず、かつ、(それが投与されるヒト又は動物のいずれかであり得る)ホストに対して毒性ではない固形若しくは液体の増量剤、希釈剤又はカプセル化材料を指す。特定の投与経路によって、例えば当該技術分野で周知のものなどのさまざまな医薬的に許容される担体が使用され得る。制限されることのない例としては、糖、デンプン、セルロース及びその誘導体、モルト、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝化溶液、乳化剤、等張食塩水、及び発熱物質を含まない水が挙げられる。
【0017】
すべての好適な投与様式が本発明により企図される。例えば、薬剤の投与は、経口、皮下、直接静脈内、低速点滴静注、持続点滴静注、静脈内又は硬膜外患者管理鎮痛法(PCA及びPCEA)、筋肉内、くも膜下腔内、硬膜外、大槽内、腹腔内、経皮、局所、経粘膜、頬側、舌下、経粘膜、吸入、鼻腔内、関節内、鼻腔内、直腸又は接内経路を介してもよい。
薬剤は、個別の投薬単位で処方され得るので、薬局の技術分野で周知の任意の方法で調製されることができる。
【0018】
すべての好適な医薬剤形が企図される。薬剤の投与は、即時放出、徐放、遅延放出、制御放出、持続放出などとして投与される、例えば、経口液剤及び懸濁液、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、発泡錠、経粘膜フィルム、坐剤、頬側製品、経口粘膜保持性製品、局所用クリーム、軟膏剤、ゲル、フィルム及びパッチ、経皮パッチ、乱用抑止製剤及び耐乱用製剤、無菌溶液、非経口用の懸濁液及びデポー剤などの形態であってもよい。
【0019】
本発明の別の態様は、疾患又は障害の治療薬の製造における、本明細書中にで定義される本発明の化合物の使用である。
本発明の更なる態様は、Z A1AT分泌の誘導因子としての使用のための本発明の化合物である。
疾患又は障害の治療における使用のための、本明細書中に定義される本発明の化合物が更に提供される。
【0020】
本発明はまた、それを必要としている患者に、本明細書中に定義される本発明の化合物又は医薬組成物を投与するステップを含む、疾患又は障害を治療する方法を包含する。
本発明は更に、Z A1AT分泌の誘導因子としての本発明の化合物の使用を包含する。その使用は、疾患又は障害の治療におけるものであってもよい。更に又はその代わりに、その使用は、インビトロにおける、例えば、インビトロアッセイにおけるものであってもよい。
【0021】
本発明の関連態様による治療に好適な疾患又は障害は、A1ATの低い血漿レベルを特徴とするもの、例えばAATD、である。
本記載における数値範囲の使用は、当該範囲内の全ての個々の整数及び所定の範囲の最も広い範囲内の上限と下限の組合せを本発明の範囲内に含むことを明らかに意図する。
【0022】
本明細書に使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(comprising)」と「から成る(consisting of)」の両方の意味として読むべきである。結果として、本発明が、「活性成分として化合物を含む医薬組成物」に関する場合、当該技術は、他の活性成分が存在し得る組成物と、定義される1の活性成分のみから成る組成物の両方をカバーすることを意図する。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書に使用される技術及び科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。同様に、本明細書に言及される全ての刊行物、特許出願、全ての特許及び全ての他の引用文献は、(法的に許容される場合に)本明細書に援用される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド:
【化1】
であるオキソピリミジニル-メチル-ベンズアミド誘導体。
(項目2)
N-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド:
【化2】
であるオキソピリミジニル-メチル-ベンズアミド誘導体。
(項目3)
N,N-ビス(メチル-d
3
)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド:
【化3】
であるオキソピリミジニル-メチル-ベンズアミド誘導体。
(項目4)
医薬的に許容される塩形態又は結晶形態の、項目1~3のいずれか一項に記載の化合物。
(項目5)
項目1~4のいずれか一項に記載の化合物、及び医薬的に若しくは治療的に許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物。
(項目6)
疾患又は障害の治療薬の製造における、項目1~4のいずれか一項に記載の化合物の使用。
(項目7)
疾患又は障害の治療における使用のための、項目1~4のいずれか一項に記載の化合物。
(項目8)
Z A1AT分泌の誘導因子としての使用のための、項目1~4のいずれか一項に記載の化合物。
(項目9)
項目1~4のいずれか一項に記載の化合物、又は項目5に記載の医薬組成物を、それを必要としている患者に投与するステップを含む、疾患又は障害の治療方法。
(項目10)
疾患又は障害の治療における、項目1~4のいずれか一項に記載の化合物の使用。
(項目11)
Z A1AT分泌の誘導因子としての、項目10に記載の使用。
(項目12)
前記使用がインビトロにおけるものである、項目10又は項目11のいずれかに記載の使用。
(項目13)
前記疾患又は障害がAATDである、項目6に記載の使用、項目7に記載の使用のための化合物、項目9に記載の治療方法、又は項目10~12のいずれか一項に記載の使用。
ここに、本発明の個別の制限されることのない例が、以下に、次の図面に関して記載される:
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、Z A1ATプラスミドを含有するHEK-EBNA細胞を使用したインビトロA1AT細胞分泌アッセイにおけるN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの用量依存効果を示すグラフである。ビヒクルと10μMのSAHAが対照として各プレート上で試験された。X軸は細胞のさまざまな処理;ビヒクル、SAHA及び漸増濃度のN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを示し、Y軸は細胞上清中のA1ATの濃度(ng/ml単位)である。
【
図2】
図2は、M A1ATプラスミドを含有するHEK-EBNA細胞を使用したインビトロA1AT細胞分泌アッセイにおける10μMのN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの効果を示すグラフである。ビヒクルと10μMのSAHAが対照として試験された。X軸は細胞のさまざまな処理;ビヒクル、SAHA及びN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを示し、Y軸は細胞上清中のA1ATの濃度(ng/ml単位)である。
【
図3】
図3は、Siiyama A1ATプラスミドを含有するHEK-EBNA細胞を使用したインビトロA1AT細胞分泌アッセイにおける1及び10μMのN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの効果を示すグラフである。ビヒクルと10μMのSAHAが対照として試験された。X軸は細胞のさまざまな処理;ビヒクル、SAHA及び2種類の濃度のN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを示し、Y軸は細胞上清中のA1ATの濃度(ng/ml単位)である。
【
図4】
図4は、ヒトZ A1ATを発現するマウス(huZマウス)におけるZ A1ATレベルに対するN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの効果を示すグラフである。マウスは、連続した14日間にわたり経口強制投与によって1日2回、ビヒクル、5、15及び50mg/kgのN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドで処理された。血液を-12、-7及び-5日目に採取し、そして、血漿を調製して、ヒトZ A1ATの循環基礎レベルを測定した。試験の最後の3日間(12、13及び14日目)に回収された血漿サンプルを使用して、基礎レベルと比較した、循環ヒトZ A1ATレベルに対するN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド処理の効果を測定した。X軸はmg/kg単位のN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの処理用量であり、Y軸は各処理群に関して、基礎レベルと比較して、ヒトZ A1ATの平均パーセンテージレベルである。
【
図5】
図5は、Z A1ATプラスミドを含有するHEK-EBNA細胞を使用したインビトロA1AT細胞分泌アッセイにおけるN,N-(ビス-メチル-d
3)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの用量依存効果を示すグラフである。ビヒクルと10μMのSAHAが対照として各プレート上で試験された。X軸は細胞のさまざまな処理;ビヒクル、SAHA及び漸増濃度のN,N-(ビス-メチル-d
3)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを示し、Y軸は細胞上清中のA1ATの濃度(ng/ml単位)である。
【
図6】
図6は、Z A1ATプラスミドを含有するHEK-EBNA細胞を使用したインビトロA1AT細胞分泌アッセイにおけるN-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの用量依存効果を示すグラフである。ビヒクルと10μMのSAHAが対照として各プレート上で試験された。X軸は細胞のさまざまな処理;ビヒクル、SAHA及び漸増濃度のN-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを示し、Y軸は細胞上清中のA1ATの濃度(ng/ml単位)である。
【
図7】
図7A及びBは、分離及びトリプシンを用いた処理後のZ A1ATのウエスタンブロットを示す。Z A1ATは、10日間にわたる1日2回の経口強制投与によって200mgKgの投薬レベルにてN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを用いた1匹の野性型(15.5b)と3匹のHuZマウス(22.1e、24.1a、24.1b)の処理後に単離された。各ウエスタンブロットはマウスの識別子を用いてラベルされる。ゲルのレーンは表4に従ってラベルされる。タンパク質バンドは、「C」-複合体、「NA」-天然のアンチトリプシン、及び「CA」-切断されたアンチトリプシンとラベルされる。
【実施例】
【0025】
実施例1:N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド
N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを以下の一連の合成手順を用いて調製した。
【0026】
(a)tert-ブチル4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンゾアートの合成
【化4】
【0027】
ピリミジン-4(3H)-オン(5g、32mmol)とセシウムカルボナート(50.85g、156mmol)を室温にて10分間にわたりジメチルホルムアミド(50ml)中で撹拌した。tert-ブチル4-(ブロモメチル)ベンゾアート(14.11g、52mmol)を加え、そして、反応物を3時間撹拌した。反応物を水で希釈し、そして、得られた黄色の沈殿物を濾過によって回収した。未精製の生成物をシリカによるカラムクロマトグラフィーによって精製し、酢酸エチル/ヘキサン(30%から33%)を用いて溶出して、tert-ブチル4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンゾアートを得た。Tlc Rf 0.2 1:1 酢酸エチル/ヘキサン。
【0028】
(b)4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)安息香酸の合成
【化5】
【0029】
Tert-ブチル4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンゾアート(10g、35mmol)をジクロロメタン(50ml)中に溶解し、そして、トリフルオロ酢酸(70ml)をゆっくり加えた。反応物を室温にて3時間撹拌した。反応物を減圧下で濃縮し、そして、得られたオイルをジエチルエーテル(300ml)と共に室温にて20分間撹拌した。得られた固形物を濾過によって回収し、ジエチルエーテルで洗浄し(2×30ml)、そして、真空中で乾燥させて、4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)安息香酸を得た。
【0030】
(c)N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの合成
【化6】
【0031】
4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)安息香酸(16g、69mmol)とN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(18g、139mmol)を、窒素下、0℃にて10分間、テトラヒドロフラン(100ml)中で撹拌した。次に、反応物を室温まで温めた。トリエチルアミン(21.11g、208mmol)とジメチルアミン(テトラヒドロフラン中の2M溶液、69mmol)を加え、そして、反応物を2時間撹拌した。反応物を減圧下で濃縮し、そして、残渣を、ジクロロメタン中の4% メタノールで溶出するシリカによるカラムに供した。画分を含有する製品を濃縮して、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを得た。
【0032】
Tlc Rf 0.8 ジクロロメタン中の10% メタノール。
m/z: 257.96(理論値258.12)
1H NMR (400 MHz, d6 DMSO) δ 8.69 (1H, s), 7.94 (1H, d), 7.38 (4H, m), 6.44 (1H, d), 5.13 (2H, s), 2.96 (3H, br s), 2.87 (3H, br s)。
【0033】
また、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを、ステップa)と同様の様式で、4-(ブロモメチル)-N,N-ジメチルベンズアミドを用いたピリミジン-4(3H)-オンのアルキル化によっても調製できる。
【化7】
【0034】
実施例2:N-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド
【化8】
【0035】
N-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを、ステップcのジメチルアミンの代わりにメチルアミンを使用して、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドと同様に調製した。
【0036】
m/z: 242.90(理論値243.10)
1H NMR (400 MHz, d6 DMSO) δ 8.69 (1H, s), 8.42 (1H, br m), 7.94 (1H, d), 7.79 (2H, d), 7.37 (2H, d), 6.43 (1H, d), 5.13 (2H, s), 2.77 (3H, s)。
【0037】
実施例3:N,N-(ビス-メチル-d
3)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド
【化9】
【0038】
N,N-(ビス-メチル-d3)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを、ステップcのジメチルアミンの代わりにd6-ジメチルアミンを使用して、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドと同様に調製した。
【0039】
Tlc Rf 0.8 ジクロロメタン中の10% メタノール。
1H NMR (400 MHz, d6 DMSO) δ 8.69 (1H, s), 7.94 (1H, d), 7.38 (4H, m), 6.44 (1H, d), 5.13 (2H, s)。
【0040】
実施例4:HEK-Z細胞を使用したA1AT細胞分泌アッセイにおける本発明の化合物の活性
方法
HEK-Z細胞、つまりヒトZ A1AT遺伝子を用いて安定して形質移入したヒト胎児腎臓細胞株)を、5%のCO2を含有する加湿した雰囲気下、37℃にて一晩、96ウェルプレート(200μlの培地/ウェルを伴った3.0×105細胞/ml)内で平板培養した。インキュベーション後に、細胞を200μlの無血清培地で3回洗浄し、そして、培地を、200μlの最終量で37℃のインキュベータ内で48時間にわたり、ビヒクル、10μMのスベラニロヒドロキサム酸(SAHA)、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド(10、33、100及び333nMの濃度にて)、N,N-(ビス-メチルd3)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド(10、33、100及び333nMの濃度にて)又はN-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド(10、33、100及び333nMの濃度にて)のいずれかを含有する無血清培地を使用した四連の処理で置換した。インキュベーションステップの終了時点で、上清をウェルから取り出し、1000×g、4℃にて10分間遠心分離し、そしてそれを製造業者の取扱説明書に従ってELISA(ヒトSerpin A1/α1-アンチトリプシン・デュオセットELISA、R& D Systems, DY1268)によってヒトA1ATレベルに関してアッセイした。
【0041】
簡単に言えば、96ウェルプレートを、室温にて一晩、ヒトA1AT捕捉抗体(ストックからの1:180希釈、100μlの最終量/ウェル)でコートした。次に、その捕捉抗体を取り除き、ウェルを300μlの洗浄バッファー(PBS中0.05%のTween20)で3回洗浄し、次に、200μlの試薬希釈物(PBS中25%のTween20)を各ウェルで室温にて1時間インキュベートした。次に、希釈サンプル、基準(125、250、500、1000、2000、4000及び8000pg/mlのA1AT)又はブランクを二連で各ウェルに加え、プレートをプレートシーラーで覆い、そして室温にて2時間静置した。サンプルインキュベーションステップの終了時点で、サンプルを取り除き、すべてのウェルを先のとおり洗浄し、100μlの検出抗体(ストックからの1:180希釈)を各ウェルに加え、室温にて更に2時間インキュベートした。検出抗体を伴ったインキュベーションに続いて、上清を取り除き、ウェルを先のように洗浄し、そして、100μlのストレプトアビジン-HRP溶液(ストックから1:200希釈)を暗所内、20分間で各ウェルに加えた。その後、50μlの停止溶液(2MのH2SO4)を加え、それぞれのウェルの吸光度(OD)を、マイクロプレートリーダーを使用してそれぞれのウェルから570nmのブランクを差し引いて450nmにて読み取った。4パラメーターロジスティック曲線を、GraphPad Prism7を使用して作図し、そして、検量線からの補間及び適切な希釈係数を掛けることによって各サンプルのA1AT濃度を決定した。
【0042】
結果
形質移入HEK-EBNA細胞から培地中に分泌されたA1ATの量をELISAによって計測した。すべてのインビトロA1AT分泌実験に関して、10μMのSAHAを陽性対照として使用した。
【0043】
図1のデータは、ELISAによって計測されるように、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが用量依存性様式でZ A1ATの分泌を刺激することを示す。
図5のデータは、ELISAによって計測されるように、N,N-(ビス-メチル-d
3)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが用量依存性様式でZ A1ATの分泌を刺激することを示す。
図6のデータは、ELISAによって計測されるように、N-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが用量依存性様式でZ A1ATの分泌を刺激することを示す。
【0044】
実施例5:HEK-M細胞を使用したA1AT細胞分泌アッセイにおける本発明の化合物の活性
方法
HEK-M細胞、つまりヒトM A1AT遺伝子を用いて安定して形質移入したヒト胎児腎臓細胞株)を、5%のCO2を含有する加湿した雰囲気下、37℃にて一晩、96ウェルプレート(200μlの培地/ウェルを伴った3.0×105細胞/ml)内で平板培養した。インキュベーション後に、細胞を200μlの無血清培地で3回洗浄し、そして、培地を、200μlの最終量で37℃のインキュベータ内で48時間にわたり、6回の反復で、ビヒクル、10μMのスベラニロヒドロキサム酸(SAHA)又は本発明の化合物(10μMにて)のいずれかを含有する無血清培地で置換した。インキュベーションステップの終了時点で、上清をウェルから取り出し、1000×g、4℃にて10分間遠心分離し、そしてそれを製造業者の取扱説明書に従ってELISA(ヒトSerpin A1/α1-アンチトリプシン・デュオセットELISA、R& D Systems, DY1268)によってヒトA1ATレベルに関してアッセイした。
【0045】
簡単に言えば、96ウェルプレートを、室温にて一晩、ヒトA1AT捕捉抗体(ストックからの1:180希釈、100μlの最終量/ウェル)でコートした。次に、その捕捉抗体を取り除き、ウェルを300μlの洗浄バッファー(PBS中0.05%のTween20)で3回洗浄し、次に、200μlの試薬希釈物(PBS中25%のTween20)を各ウェルで室温にて1時間インキュベートした。次に、希釈サンプル、基準(125、250、500、1000、2000、4000及び8000pg/mlのA1AT)又はブランクを二連で各ウェルに加え、プレートをプレートシーラーで覆い、そして室温にて2時間静置した。サンプルインキュベーションステップの終了時点で、サンプルを取り除き、すべてのウェルを先のとおり洗浄し、100μlの検出抗体(ストックからの1:180希釈)を各ウェルに加え、室温にて更に2時間インキュベートした。検出抗体を伴ったインキュベーションに続いて、上清を取り除き、ウェルを先のように洗浄し、そして、100μlのストレプトアビジン-HRP溶液(ストックから1:200希釈)を暗所内、20分間で各ウェルに加えた。その後、50μlの停止溶液(2MのH2SO4)を加え、それぞれのウェルの吸光度(OD)を、マイクロプレートリーダーを使用してそれぞれのウェルから570nmのブランクを差し引いて450nmにて読み取った。4パラメーターロジスティック曲線を、GraphPad Prism7を使用して作図し、そして、検量線からの補間及び適切な希釈係数を掛けることによって各サンプルのA1AT濃度を決定した。
【0046】
結果
形質移入HEK-EBNA細胞から培地中に分泌されたA1ATの量をELISAによって計測した。すべてのインビトロA1AT分泌実験に関して、10μMのSAHAを陽性対照として使用した。
図2のデータは、ELISAによって計測されるように、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが10μMにてM A1ATの分泌を刺激しないことを示す。対照的に、陽性対照である10μMのSAHAはM A1AT分泌の増大を刺激する。
【0047】
実施例6:HEK-Siiyama細胞を使用したA1AT細胞分泌アッセイにおける本発明の化合物の活性
稀なSiiyama突然変異(Ser53からPhe、成熟A1ATナンバリング)を、AATDを患っている日本人男性で同定した(Seyamaら、J Biol Chem (1991) 266:12627-32)。Ser53は、保存されたセルピン残基の1つであり、A1AT分子の内部コアの組織化に重要であると考えられる。タンパク質の保存された骨格における無電荷極性アミノ酸から大きな非極性アミノ酸への変更は、Siiyama A1ATの折り畳み及び細胞内プロセシングに影響する。
【0048】
方法
HEK-Siiyama細胞、つまりヒトSiiyama A1AT遺伝子を用いて安定して形質移入したヒト胎児腎臓細胞株)を、5%のCO2を含有する加湿した雰囲気下、37℃にて一晩、96ウェルプレート(200μlの培地/ウェルを伴った3.0×105細胞/ml)内で平板培養した。インキュベーション後に、細胞を200μlの無血清培地で3回洗浄し、そして、培地を、200μlの最終量で37℃のインキュベータ内で48時間にわたり、8回の反復で、ビヒクル、10μMのスベラニロヒドロキサム酸(SAHA)又は本発明の化合物(1又は10μMにて)のいずれかを含有する無血清培地で置換した。インキュベーションステップの終了時点で、上清をウェルから取り出し、1000×g、4℃にて10分間遠心分離し、そしてそれを製造業者の取扱説明書に従ってELISA(ヒトSerpin A1/α1-アンチトリプシン・デュオセットELISA、R& D Systems, DY1268)によってヒトA1ATレベルに関してアッセイした。
【0049】
簡単に言えば、96ウェルプレートを、室温にて一晩、ヒトA1AT捕捉抗体(ストックからの1:180希釈、100μlの最終量/ウェル)でコートした。次に、その捕捉抗体を取り除き、ウェルを300μlの洗浄バッファー(PBS中0.05%のTween20)で3回洗浄し、次に、200μlの試薬希釈物(PBS中25%のTween20)を各ウェルで室温にて1時間インキュベートした。次に、希釈サンプル、基準(125、250、500、1000、2000、4000及び8000pg/mlのA1AT)又はブランクを二連で各ウェルに加え、プレートをプレートシーラーで覆い、そして室温にて2時間静置した。サンプルインキュベーションステップの終了時点で、サンプルを取り除き、すべてのウェルを先のとおり洗浄し、100μlの検出抗体(ストックからの1:180希釈)を各ウェルに加え、室温にて更に2時間インキュベートした。検出抗体を伴ったインキュベーションに続いて、上清を取り除き、ウェルを先のように洗浄し、そして、100μlのストレプトアビジン-HRP溶液(ストックから1:200希釈)を暗所内、20分間で各ウェルに加えた。その後、50μlの停止溶液(2MのH2SO4)を加え、それぞれのウェルの吸光度(OD)を、マイクロプレートリーダーを使用してそれぞれのウェルから570nmのブランクを差し引いて450nmにて読み取った。4パラメーターロジスティック曲線を、GraphPad Prism7を使用して作図し、そして、検量線からの補間及び適切な希釈係数を掛けることによって各サンプルのA1AT濃度を決定した。
【0050】
結果
形質移入HEK-EBNA細胞から培地中に分泌されたヒトA1ATの量をELISAによって計測した。すべてのインビトロA1AT分泌実験に関して、10μMのSAHAを陽性対照として使用した。
図3のデータは、ELISAによって計測されるように、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが1又は10μMにてSiiyama A1ATの分泌を刺激しないことを示す。対照的に、陽性対照である10μMのSAHAはSiiyama A1AT分泌の増大を刺激する。
【0051】
実施例7:huZマウスにおけるN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの活性
huZマウス(PiZZマウスとも呼ばれる)は、2つの別々のグループDycaicoら(Science (1988) 242:1409-12)及びCarlsonら(J. Clin Invest (1989) 83:1183-90)によって開発された、ヒトA1AT遺伝子のZ変異体の複数のコピーを含むトランスジェニックマウス系統である。PiZZマウスは、C57Bl/6バックグラウンドによるものであって、肝臓組織でヒトZ A1ATタンパク質を発現する。この試験に使用されるマウスは、Carlsonと同僚(形質転換系統Z11.03)の子孫に由来する。HuZマウスを、血漿中のZ A1ATの循環レベルの増強に対する化合物の効果又は肝臓と関連肝臓病変におけるZ A1AT重合体の蓄積に対する化合物の効果のいずれかを評価するツールとして使用した。
【0052】
方法
200~600μg/mlの基礎ヒトA1AT血漿レベルを有するHuZマウス(n=4/群;雄又は雌)を、連続した14日間にわたり経口強制投与で1日に2回、ビヒクル又は5mg/kg、15mg/kg若しくは50mg/kgにてN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドのいずれかで処理した。マウスには、飼料(標準的なマウス飼料、SAFE食)及び水の自由摂取で利用させた。試験14日目に、各マウスは終了手順の1時間前に投与を受けた。投薬前-12、-7及び-5日目及び投薬12、13及び14日目に各マウスから、血液を尾静脈から採血した。血液をEDTAが入っているマイクロキュベット(microvettes)内に回収し、そして、2700×g、4℃にて10分間の遠心分離によって血漿を調製した。血漿を等分し、そして、生物分析まで-80℃にて保存した。投薬前-12、-7及び-5日目からの血漿サンプルを、各マウスに関するヒトZ A1ATの平均基礎レベルを測定するのに使用した。試験の最後の3日の投薬日(12、13及び14日目)に回収した血漿サンプルを、ヒトZ A1ATレベルを計測し、そして、各マウスの基礎レベルと比較することによってZ A1AT分泌に対するN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの効果を決定するのに使用した。マウス血漿サンプル中のヒトZ A1ATレベルを、製造業者の取扱説明書に従ってELISA(ヒトSerpin A1/α1-アンチトリプシン・デュオセットELISA、R& D Systems, DY1268)によって計測した。
【0053】
簡単に言えば、96ウェルプレートを、室温にて一晩、ヒトA1AT捕捉抗体(ストックからの1:180希釈、100μlの最終量/ウェル)でコートした。次に、その捕捉抗体を取り除き、ウェルを300μlの洗浄バッファー(PBS中0.05%のTween20)で3回洗浄し、次に、200μlの試薬希釈物(PBS中25%のTween20)を各ウェルで室温にて1時間インキュベートした。次に、希釈サンプル、基準(125、250、500、1000、2000、4000及び8000pg/mlのA1AT)又はブランクを二連で各ウェルに加え、プレートをプレートシーラーで覆い、そして室温にて2時間静置した。サンプルインキュベーションステップの終了時点で、サンプルを取り除き、すべてのウェルを先のとおり洗浄し、100μlの検出抗体(ストックからの1:180希釈)を各ウェルに加え、室温にて更に2時間インキュベートした。検出抗体を伴ったインキュベーションに続いて、上清を取り除き、ウェルを先のように洗浄し、そして、100μlのストレプトアビジン-HRP溶液(ストックから1:200希釈)を暗所内、20分間で各ウェルに加えた。その後、50μlの停止溶液(2MのH2SO4)を加え、それぞれのウェルの吸光度(OD)を、マイクロプレートリーダーを使用してそれぞれのウェルから570nmのブランクを差し引いて450nmにて読み取った。4パラメーターロジスティック曲線を、GraphPad Prism7を使用して作図し、そして、検量線からの補間及び適切な希釈係数を掛けることによって各サンプルのA1AT濃度を決定した。
【0054】
結果
ヒトZ A1ATの循環レベルに対するN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの効果をhuZマウスモデルで評価した。マウスを、連続した14日間にわたり5、15又は50mg/kgにて1日2回、経口強制投与によって処理した。
図4のデータは、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドが、huZマウスにおけるベースライン濃度と比較して、用量依存性様式でヒトZ A1ATの分泌を刺激することを示す。
【0055】
実施例8:マウスにおけるN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの薬物動態
N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを、静脈内に(2mg/kg)又は強制投与によって経口的に(10mg/kg)雄C57BI/6マウスに投与した。水で希釈した全血を、投薬後最長24時間のタイムコースにわたりこれらの投与済動物から調製して、薬物の血中濃度がUPLC-MS/MSによって計測されることを可能にした。計測した薬物濃度は、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドに関する以下のパラメーターの計算を可能にした:
【0056】
血中半減期(t1/2)=1.9時間
観察されたクリアランス=7.8ml/分/kg
分布容量(Vz)=1.3l/kg
経口Cmax=9311ng/ml
AUCall=15551ng.h/ml
AUCINF=15564ng.h/ml
経口生物学的利用能(F, AUCINF)=73%
【0057】
実施例9:ラットにおける本発明の化合物の薬物動態
化合物を、静脈内に(2mg/kg)又は強制投与によって経口的に(10mg/kg)Sprague Dawleyラットに投与した。水で希釈した全血を、投薬後最長24時間のタイムコースにわたりこれらの投与済動物から調製して、薬物の血中濃度がUPLC-MS/MSによって計測されることを可能にした。
N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの投与後に計測された化合物レベルは、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドに関する以下のパラメーターの計算を可能にした:
【0058】
血中半減期(t1/2)=55分
観察されたクリアランス=10.6ml/分/kg
分布容量(Vz)=0.84l/kg
経口Cmax=5326ng/ml
経口AUCINF=16465ng.h/ml
経口生物学的利用能(F)=104 %
【0059】
N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの10mg/kgの経口投薬後の様々な時点におけるN-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの血漿レベルは、表1に示したとおりのものであった。
【0060】
【0061】
N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの2mg/kgのiv投薬後の様々な時点におけるN-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの血漿レベルは、表2に示したとおりのものであった。
【0062】
【0063】
N-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの投与後に計測された化合物レベルは、N-メチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドに関する以下のパラメーターの計算を可能にした:
【0064】
血中半減期(t1/2)=63分
観察されたクリアランス=10.6ml/分/kg
分布容量(Vz)=1.0l/kg。
【0065】
N,N-ビス(メチル-d3)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの投与後に計測された化合物レベルは、N,N-ビス(メチル-d3)-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドに関する以下のパラメーターの計算を可能にした:
【0066】
血中半減期(t1/2)=52分
観察されたクリアランス=10.6ml/分/kg
分布容量(Vz)=0.72l/kg
【0067】
実施例10:本発明の化合物のマウス、ラット及びヒト肝細胞での安定性
本発明の化合物の固有クリアランス(CLint)と半減期を、冷凍保存した雄C57BL6マウス肝細胞の肝細胞懸濁液、冷凍保存したラット肝細胞の肝細胞懸濁液又は冷凍保存したヒト肝細胞の混合肝細胞懸濁液において計測した。簡単に言えば、化合物を37℃にて時間経過を通して肝細胞懸濁液と共にインキュベートし、そして、それぞれの時点にて残留している化合物を質量分析法(UPLC-MS/MS)によって評価した。マウス、ラット及びヒト肝細胞のCLintは、すべての化合物に関して<3μl/分/106個細胞であった。マウス、ラット及びヒト肝細胞における半減期は、すべての化合物に関して>460分間であった。
【0068】
実施例11:本発明の化合物の血漿タンパク質結合
本発明の化合物が、ヒト、ラット又はマウス血漿中の例えば、アルブミンやα-1酸性糖タンパク質などの血漿タンパクに結合する程度を、迅速平衡透析法によって測定した。化合物を5μMで、37℃にて4時間インキュベートした。マウス血漿中でN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドに結合する血漿タンパクは37.3%であり、ラット血漿では14.8%であり、及びヒト血漿では30.6%であった。
【0069】
実施例12:チトクロームP450遺伝子に対する本発明の化合物の活性
特異的プローブ基質と組み合わせたE.コリ(E. coli)CYPEX膜を使用して、Weaverら, 2003, Drug Metab Dispos 31:7, 955-966に記載の方法を使用することにより本発明の化合物による個々のCYPの阻害を評価した。結果を表3に示す。
【0070】
【0071】
実施例13:HERGチャンネルに対する本発明の化合物の活性
本発明の化合物を、Patchliner自動パッチクランプを使用した心臓カリウム(hERG)チャンネルの阻害に関して試験した。6点の濃度応答曲線を、100μMの最大最終試験濃度のハーフログ段階希釈を使用して作成した。IC50値を濃度応答データの4パラメーターロジスティックのあてはめから得た。N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドは、100μMにおける7%の阻害によりIC50>100μMを有することを示した。基準化合物値は、文献(Elkinsら, 2013 J. Pharm. Tox. Meth. 68:11-122)に示されたそれらと一致していた。
【0072】
実施例14:酵素、イオンチャンネル及び受容体のパネルに対する本発明の化合物の活性
本発明の化合物を、DiscoverX Safety47(商標)パネルに対して試験した。N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドは、10μMにて並外れた標的クリーンオフ・プロファイルを示した。この濃度にて標的は25%超まで阻害されなかった。
【0073】
実施例15:本発明の化合物の水溶解性
透明な溶液が形成されるまで水の量を]増やしながら、本発明の化合物を5分間撹拌した。この方法を使用すると、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドの溶解性は100mg/ml超であった。
【0074】
実施例16:細菌を用いた復帰突然変異試験における本発明の化合物の活性
細菌を用いた復帰突然変異試験の目的は、栄養要求性成長から原栄養性成長へと指定の菌株を復帰させるその能力によって試験品目の突然変異の可能性を評価することである。そのアッセイは特定のヒスチジン又はトリプトファン遺伝子座での点(遺伝子)突然変異を検出し、そしてそれは、これらの生物体のゲノムにおける塩基対置換又はフレームシフト突然変異を引き起こす化合物によって誘発され得る。哺乳類の代謝を模倣するために、外来性の哺乳類酸化代謝系(S-9ミックス、Aroclor1254処理ラットの肝臓由来の肝臓のポスト-ミトコンドリア画分)の存在下及び不存在下でアッセイを実施した。試験方法は、細菌を用いた突然変異試験のための確立された手順に基づいた。
【0075】
N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを、S-p9ミックスの存在下及び不存在下、全株において最大で5000μg/プレートのガイドライン規制上の最大投薬レベルまで試験した。
毒性の証拠はなく、さらに、沈殿もなかった。
【0076】
プレート組み入れ条件下、S-9ミックスの存在下又は不存在下において、あらゆる菌株及びあらゆる投薬量のN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドにおいて、定義された倍数増加を超える(TA98、TA100若しくはWP2 uvrAに関しては関連陰性対照値の2倍又はTA1535又はTA1537に関しては関連陰性対照値の3倍までの)、復帰数の増加はなかった。
この試験条件下、N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドは変異原性ではなかった。
【0077】
実施例17:インビトロ小核アッセイにおける本発明の化合物の活性
インビトロ小核アッセイの目的は、(その状況がTK6細胞の細胞質中の小核の形成につながる)試験品目が染色体若しくは紡錘体の傷害を引き起こすか、又は細胞周期を妨げる能力を評価することである。染色体異常は多くのヒト遺伝病の根拠であると認識されている。小核(MN)は、細胞質中に残留し、かつ、新たに形成された細胞の核内に組み込まれていない染色体断片又は全染色体の結果である。これらは、分裂紡錘に結合できない動原体を欠く断片につながる染色体への損傷;染色体のそれへの結合又は細胞分裂による他の干渉を予防する紡錘器官への損傷から生じる。哺乳類の代謝を模倣するために、外来性の哺乳類酸化代謝系(S-9ミックス、Aroclor1254処理ラットの肝臓由来の肝臓のポスト-ミトコンドリア画分)の存在下及び不存在下でアッセイを実施した。細胞を試験品目に3時間にわたり晒し、そして、処理開始の44時間後にサンプリングした。多くの化学物質が長期間の処理後に陽性効果を発揮するだけだと報告されたので、S-9ミックスの不存在下における27時間の連続処理もまた含まれた。これは、アッセイで使用した培養細胞の平均世代時間の1.5~2.0倍と同等であった。試験方法はインビトロ小核試験のための確立された手順に基づいた。
【0078】
N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを、すべての処理において最大で1mM(260mg/mL)の規制最大投薬レベルまで試験した。沈殿はなく、かつ、27時間の処理においてのみ、ほんのわずかな細胞毒性があった。260mg/mLでの細胞数(RICC)の相対的増加は、同時陰性対照と比較したときに、3時間処理を伴うS-9ミックスの存在下で105%であり、3時間処理を伴ったS-9ミックスの不存在下で98%であり、及び27時間処理を伴ったS-9ミックス不存在下で74%であった。
【0079】
3時間処理を伴ったS-9ミックスの存在下又は3時間若しくは27時間処理を伴ったS-9ミックスの不存在下では、パーセンテージMN(%MN)における統計的に有意な増大はなかった。3時間処理を伴ったS-9ミックスの不存在下では、有意な傾向が存在しなかったが、統計的に有意な増大が存在せず、かつ、すべての% MNカウントが十分にHCDの95%対照限界内にある場合、これは関連性がないと考えられた。
【0080】
N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドは、この試験の条件下、S9ミックスの存在下又は不存在下において染色体異常誘発性でもなく、又は異数性誘発性でもなかった。
【0081】
実施例18:huZマウスにおける本発明の化合物の存在下で分泌されたヒトZ A1ATによるトリプシン阻害
本実験の目的は、化合物N,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミド(22.1e、24.1a、24.1b)で処理した3種類のHuZマウスからヒトZ A1ATを精製すること、次に、増量トリプシンとの反応によってA1ATの活性を試験することであった。トリプシンとA1ATの反応を、抗ヒトA1AT抗体を用いて調査したウエスタンブロット法によって分析した。同じ化合物(15.5b)によって処理した野性型マウスからの対照血漿もまた試験に含まれた。
【0082】
方法
マウスを、連続した10日間にわたり経口強制投与によって1日2回、200mg/kgのN,N-ジメチル-4-((6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)メチル)ベンズアミドを用いて処理した。マウスには、飼料(標準的なマウス飼料、SAFE食)及び水の自由摂取で利用させた。試験10日目に、各マウスは終了手順の3.5~4.5時間前に投与を受けた。血液を心臓の穿刺によって各マウスから採血し、EDTA 25が入った試験管内に回収し、そして、2700×g、4℃にて10分間の遠心分離によって血漿を調製した。血漿を等分し、そして、分析に先立って-80℃にて保存した。
【0083】
100μlのマウス血漿を、精製に先立ち20mMのTris、150mMのNaCl、5mMのEDTA、pH7.4(反応及び洗浄バッファー)で300μlまで希釈した。次に、洗浄したα1-アンチトリプシン選択ビーズ(150μl)(GE Life Sciences)を血漿に加え、ロッカーにより30分間混合した。次に、ビーズを、スピンカラム(Thermo Scientific)を使用した遠心分離によって血漿と分離した。次に、5×100μlの反応バッファーでビーズを洗浄した後、3×100μl(20mMのTris、150mMのNaCl、0.6MのMgCl2、5mMのEDTA、pH7.4)を用いてビーズからA1ATを溶出した。A1ATを300μlの反応バッファー中に直接溶出して、A1ATが凝集しないようにした。血漿及び血漿上清中の残留A1ATを、ヒトserpinA1 ELISA(ヒトSerpin A1/α1-アンチトリプシン・デュオセットELISA、R& D Systems, DY1268)を使用して定量化して、ヒトA1ATの減少を確認した。溶出画分の濃度もまた計測した。溶出A1ATの量を、0.45の吸光係数を使用したA280で計測することによって決定した。
【0084】
溶出A1ATの活性を、トリプシンと複合体を形成する能力を評価することによって試験した。反応混合物を表4にあるように調整した。反応物を、1μlの1mM フッ化4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニル塩酸塩の添加前に5分間インキュベートした。更に10分後、21μlのSDSサンプルバッファーを加え、5分間煮沸した。サンプルを10%のSDSゲル上で泳動し、ニトロセルロース膜上にブロットした。次に、その膜をPBS 0.1% トリトンx-100、5%の脱脂乳粉末でブロッキングし、その後、ウサギ抗ヒトα-1アンチトリプシン抗体(AbD serotec 0640-5039)を用いて4℃にて一晩調査した。その膜をPBS、0.1%のトリトンX-100、0.1%の脱脂乳で洗浄した後に、ブロットを抗ウサギIgG HRPコンジュゲートで調査した。その膜の更なる洗浄後に、ブロットをSuperSignal West pico PLUS化学発光基質(Thermo Scientific)を使用して現像した。結果を
図7A及びBに示す。
【0085】
【0086】
結果
図7A及びBのデータは、野性型対照マウスからの血漿中にヒトA1ATが検出できなかったことを示す(15.5b-
図7Bを参照)。ヒトZ A1ATをhuZマウスからの他の3種類のサンプル中で検出した(
図7A及びBを参照)。増量したトリプシンとの反応では、すべてのサンプルが、天然のバンド(「NA」と標識される)の減少と複合体(「C」)又は切断バンド(「CA」)の発生によって示されるトリプシンとの完全な反応を実証し、そして、溶出画分中のZ A1ATが天然型であり、かつ、完全に活性であることを示唆した。